白銀翼の彼方
しばらく違う所に書いていたのですが、思いきってここに載せてみようと思いました。
ヘタクソですが長い目で見てやって下さい。
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>> 50
神崎の銃を見てアルミは自分の背中に隠した銃を手で確認した。これを使わずに済めば良いが…。
『おい。地下室の入り口はどこなんだ。』そう聞くとミッキーは両手を上げた。外国人が良くやる呆れた時に使うポーズだ。
『そう慌てなさんな。そこの角を曲がった所だよ。』それを聞いて歩みを早めた。そして入り口の前まで来た。
『ここから降りれば地下室に行ける。後はアンタ達で行きな。私はこれ以上は行けないよ。』地下室がわかれば後は助けるだけだ。
『ありがとう。本当に助かった。後は俺らで行くよ。』握手をした。
『それじゃ頑張って。』ミッキーは今来た廊下を戻って行った。しかしここに来て余りに見張りがいない。どうしたのだろう…。まさか待ち構えているのか…。
『神崎それじゃ降りるぞ。』神崎は親指を立てOKのサインを出した。地下室に向かう階段を一歩づつ確認しながら降りて行く。そして最後の一段になった。そっと覗くと奥に扉が見えた。
『あそこのようだな。』小声で神崎が言った。そこには誰もいない。俺達は扉の近くまで近づいた。そして取っ手に手をかけまわしてみた。すると扉はガチャッと開いた。開いた扉の隙間から中を覗くと中は真っ暗で何も見えない。
『マーナ…マーナ。』小声で呼ぶが返事がない。俺達は意を決して中に飛び込んだ。だがそこは真っ暗で誰もいないようだった。壁を探り電気のスイッチを探した。手先にスイッチらしき物が当たった。スイッチを入れてみた。明かりがつき部屋全体が見えた。しかしそこにはマーナの姿は無かった。すると階段の方から足音が響いて来た。神崎は素早く銃を構えた。アルミも少し遅れて銃に手を置いた。ヤツらだったら撃つしかないのかとアルミは思った。だが目の前に現れたのはミッキーだった。
>> 51
ミッキーは血相をかいて降りて来た。
『おいアンタらマーナって娘は連れ出されたみたいだよ。』アルミ達は驚いた。
『何、いつの間に連れ出されたんだ…。分かるか…。』と訪ねるとミッキーは答えた。
『あー聞いたよ。アンタらが来た時丁度入れ違いで出ていったって見張りのヤツらが言っていた。』わざわざ聞いてくれたようだった。
『どこに向かったかまではわからないのだろうな…。』とアルミは訪ねた。すると頭を縦に振った。そこまではさすがにわからなかったようだ。もしかしたら神崎が閉じ込められた所かもしれない。そこに行ってみるしかないな。その前にエドワードに連絡しておかないと。無線機を鳴らすとすぐに応答があった。
『どうしたマーナに何かあったのか…。』エドワードすでに待機しているようだった。
『実はマーナが連れ出されていたのだ。だからここには居ない。』エドワードの溜め息が聞こえた。すると神崎が割り込むように言った。
『宝を取り返すなら今のうちではないのか…。』そう言われればその通りである。ミッキーに尋ねてみた。
『宝の在処はわからないか…。ホイルの隠しそうな所があるだろう。』ミッキーはニコリと笑い言った。
『それならいつも大切な物を直している場所ならあるよ。そこに隠しているのでは無いかな…。』興奮しているようだった。
『取り返すなら今だ。見張りも少ない。』神崎の言葉に決意した。そしてエドワードに1つの作戦を伝える事にした。
『エドワード頼みがある。オトリになってくれないか…。』エドワードは引きつった声をだした。
『なんだと…。バカを言うなそんな事をしたら捕まるぞ。』当たり前の事だが見張りの気をエドワードに持って行く事で屋敷内の警戒が薄くなるはず。アルミは改めてエドワードに頼み直した。
>> 52
『エドワードお前が外でちょっと騒いでくれたら多分見張りがそっちに気が向くはずだ。その間に俺達で宝を取り返す。どうだやってくれないか…。』しばらくの沈黙があり返事があった。
『わかった。どうすれば良いのだ…。』アルミは答えた。
『まず業者の搬入口近くでどうでも良い騒いでくれ…。』と言いかけたらミッキーが話をはさんできた。
『なあ…そんな事するより私が警報鳴らした方が早いんじゃない…。その後エドワードだっけ…その人に逃げてもらった方が効果的だと思うのだけど…。』確かにその方が良いな。神崎を見ると言いたい事がわかったのか頷いた。エドワードにはしばらく待って貰ってアルミ達は話し合った。結果ミッキーに警報装置を鳴らしてもらい、森の方に逃げた事にしてもらいエドワードには近くでバレないよう隠れてもらう事にした。その事をエドワードに伝え作戦を実行する事にした。
『それじゃミッキー頼んだ。でもその前に宝のありそうな場所を教えてくれ。』俺達はミッキーを見ると手を差し出してきた。忘れていた。彼女は金で動いてくれていたのだ。アルミは財布から幾らかの紙幣を出し手渡した。納得したのかミッキーは教えてくれた。それは2階にあるホイルの部屋の書棚の後ろに隠し部屋があるらしくそこに有るだろうと言う事だった。しかし良くそんな事を知っていると思った。かなり内部の事情を調べてある。何者なのだろうか…。疑いはしていたが今は頼りは彼女しかいないのだ。
だが後でとんでもない事になるとはその時まで知るよしもなかった。
俺達は作戦を実行する為各持ち場についた。アルミが作戦開始の合図を出した。屋敷の中に警報装置の音が鳴り響いた。
>> 53
警報装置が鳴り響く。ホイルの手下共が屋敷中走り回っている。ミッキーがそこで裏側から森に逃げたと言いそちらに気を引いた。その隙を見てアルミ達は2階に向かった。2階の奥にホイルの部屋があった。途中手下共に会いはするが服装のせいもあり誰も気づかなかった。扉に手を掛け神崎は銃を構えた。開けた瞬間部屋の中に銃を向けた。そこには窓の近くに大きな机が有りそれに似合うように大きな椅子があった。右側に書棚が有る。アルミ達はそこに近づき書棚のどこかに有るスイッチを探した。それは意外に簡単に見つかった。本自体がレバーになっていて並んでいる本の中にあった。題名はその物ズバリ【スイッチレバー】そんなに安易で良いのだろうか…。引くと書棚が横に動き奥の部屋が現れた。そこには何も無くガランとしていた。ただ奥に金庫が有りアルミはそれを調べてみた。扉にレバーが有りそれを触ってみた。ガチャンと音をたて開いた。カギがかかってなかったようだ。おかしいとは思ったが開けてみた。中には色々な宝石や重要そうな書類が入っていた。その中にグリーンダイヤがあった。しかし1個だけしかなかった。それを手にした時だった。後ろから声がした。アルミ達は振り返った。そこに立っていたのは燐銘だった。
『残念だったわね。貴方達の動きはバレバレだったのよ。貴方達監視カメラって知っているかしら。』笑いながら銃を向けて来た。まさかミッキーは俺達を填めたのか…。辺りを見渡したがミッキーの姿が無い。
『アルバート様お探しの方はこの人かしら…。』そう言うと後ろ手にされたミッキーを連れて手下が出てきた。
『何をするんだ。その人は関係ない。放すんだ。』アルミは叫んだ。しかし燐銘は笑って言った。
『こいつが手引きしたのも全部知っているのよ私達。そんなヤツが何故関係ないのかな…。』燐銘は改めて銃を向けて来た。
>> 54
アルミが少し動いた。バーンと銃声が響く。アルミの後ろ壁に穴が開いて煙りが上がる。
『無駄だよ。今はワザと外したけど今度は外さないよ。』燐銘のこの自信はかなりの腕前なんだろう。
『わかったから彼女を放してやってくれ…。これは返すから…。』アルミはタートルダイヤを見せた。燐銘達が一瞬それを見た時、神崎が身構え動いた。あっという間に燐銘の銃を蹴り上げて持っていた銃を頭に突き付けた。手下はうろたえた。
『お前達その人を離せコイツがどうなっても良いのか…。』神崎の凄みに手下はたじろぐ。しかし燐銘はまったく動揺していない。
『私を放した方が良いと思うわよ。今こちらに他の連中がやって来るからね。』その言葉を聞いた神崎が言った。
『俺に任せろ。お前はとにかく逃げろ。』アルミはそれを聞いて頷いた。アルミはそしてその部屋を出た。手下は手出しが出来ずこっちを見ている。
『お前達の相手は俺がしてやる。アルミ早く逃げろ。』神崎がそう言うとアルミは走り出した。階段を降りた時銃声が響く。どうした。神崎は大丈夫か…。至る所から手下共が集まって来る。しかし誰もアルミには気付いていない。アルミは裏口から屋敷の外に出て無線機を取り出しエドワードに連絡をとった。
『エドワード聞こえるか…。』何度か連絡すると応答があった。
『どうした…。何かあったのか…。銃声がしたが…。』エドワードは驚いたような声で言った。
『その事は後だ。今どこにいるのだ…。』アルミが聞くとエドワードはこう言った。
『お前の目の前だよ。』エドワードはニッコリ笑いながら立ち上がった。エドワードは近くの森の中に隠れていたのだ。アルミはエドワードの方に駆け寄った。
>> 55
その頃神崎は燐銘を人質にして手下共と睨み合っていた。
『いい加減その人を離せ。』神崎は壁目掛けて銃を撃った。
『俺は本気だぞ。コイツを撃つ事など簡単だ。早く離せ。』手下共は見合わせてミッキーを放した。ミッキーは神崎に近寄ってきた。
『ミッキー扉を閉めろ。』神崎がそう言うと扉を閉めた。
『取り敢えずコイツを縛り上げよう。』近くにあったロープで燐銘を縛った。
『アンタらこんな事しても逃げられないよ。ほらどんどん人が集まって来ているよ。』燐銘は脅したつもりだったが神崎は平然な顔をしている。
『お前が居るんだアイツらも簡単には手出しは出来まい。脅しのつもりなら無駄だ。』そう言うと銃を燐銘に向けた。
『ミッキーさてこれからが大変だぞ。どうしたもんか…。まずここから出ないとな。』神崎が言うとミッキーが答えた。
『この部屋は別の出口があるはずよ。部屋を探してみましょう。』そう言って部屋の中を調べ出した。神崎とミッキーは部屋の隅々を調べた。壁の所に小さい文字で【出口】と書いたスイッチがあった。押してみると壁が動きだし階段が現れた。
『これだな。さぁ出よう。しかしなぜこんなにわかりやすく書いてあるのだろう…。』不思議には思ったが神崎は燐銘を引っ張って階段をおり始めた。その後をミッキーもついて降りた。その階段は下の階まで続いていた。そしてそれは調理場の冷蔵庫に出た。扉をそっと開け辺りを見渡した。そこにはこの騒ぎで料理人達が騒いでいた。彼らはこちらには気付いていない。それを見計らって神崎が飛び出し彼らを気絶させた。神崎が手招きするとミッキーは燐銘を連れて冷蔵庫から出て来た。
>> 56
調理場から搬入口を出る。ここまで来たら誰もいない。燐銘を捕らえたまんまで業者のトラックに近づく。そしてトラックの荷台に燐銘を入れた。
『しばらくここでジッとしてな。』燐銘は神崎達を睨みつけ唾を吐いた。
『アンタらこんな事してタダで済むと思っているのかい。すぐに私の部下達がやってくるよ。』荷台の壁を蹴りながら暴れていた。
『話はそれだけか…。捕まえられたお前がドジなんだよ。それじゃな。』神崎はトラックの荷台の扉を閉じた。
『さぁミッキー行くぞ。助手席に乗れ。』2人はトラックに乗り込んだ。動き出すと同時に銃声が響いた。トラックに当たった音がする。そしてミラーが割れた。
『危ないな。荷台にアイツも乗っているというのに…。何も考えてないか、それとも捕まった者の事など関係ないのか…。』トラックは門ぬけ森の道に出た。
その頃アルミ達は森の中で隠れて話をしていた。経緯を話し逃げて来た事を言った。これからどうするか話し合う事にした。
『エドワードこれからどうする…。』それを聞いて答えた。
『俺の意見としてはマーナを取り戻したい。だからもう1つの屋敷に行きたいのだが…。』そう言ってアルミを見つめた。その意見にアルミは頷いた。
『俺もそうしたいと思っていた。まずは屋敷を目指そう。しかし場所がわからない…。』ふと見上げると1台のトラックが走って来る。良く見ると運転席に神崎が乗っている。それに気付きアルミ達は走り出した。
『あれは神崎じゃないか。逃げられたんだな。』エドワードにアルミは話しかけた。それに頷きながら2人はトラックへと走った。
>> 57
突然トラックの前に人が出て来た。急ブレーキを踏み前を見るとアルミとエドワードだった。ウィンドウを下ろすと神崎は言った。
『お前ら死ぬ気か…。危なく引くところだったぞ。』馬鹿笑いしながら神崎は言った。
『無事逃げられたのだな。良かったこんなすぐに会えるなんて。』アルミは神崎達の無事にホッとした。
『ところで今から神崎の捕らえられた場所に行こうと思うのだが連れて行ってくれないか…。多分マーナがそこに捕らえられていると思うのだ。』アルミはそう言った。エドワードも詰め寄った。
『それは構わないが…それなら後ろに居る荷物に聞いてくれないか…。』また神崎は笑った。アルミ達は後ろに回って扉を開けると縛られた燐銘がいた。アルミ達は驚いたがつい笑い出した。
『何がおかしい。笑いたければ笑え。』燐銘は怒鳴ったがもう諦めているのか、横を向いてしまった。
『悪い悪いまさか君が捕らわれているとはねぇ。』そういうとクスッと笑った。燐銘はアルミを睨み付けた。頭掻きながらアルミは燐銘に訪ねた。
『君はマーナがどこにいるのか知らないか…。』しばらくの沈黙があり返事をしない。
『おい。一度戻らないか…。』神崎が言った。アルミは考えて答えた。
『わかった。一度戻ろう。』全員が賛成した。
『じゃダンの店に行こう。また準備を整えたいしな。』すぐにアルミ達は答えた。
『そうしよう。ところで俺達はどこに乗ったら…。』アルミが言うと神崎はニヤニヤしながら荷台を指差した。中で半ば諦めている燐銘を見ると荷台に乗り込んだ。近くで車が近づく音が聞こえてきた。
『ヤバい。ヤツらが追ってきたな。急ぐぞ。しばらく我慢しろよ。』そう言って扉を閉めた。そしてトラックは動き出した。
>> 58
トラックをしばらく走らせた。カーブがありそこに脇道がありそちらに曲がった。すぐにトラックを隠すのに適した場所があったのでそこに止めた。窓から追跡する車が通り過ぎる事を祈りながら見ていた。すると数台の車が通り過ぎて行った。
『やったな。なんとか撒いたようだ。』神崎はミッキーを見た。ミッキーはニッコリ微笑むと言った。
『さてと後はどうするの…。とりあえず後ろの2人に聞いてみようか…。』そう言って神崎とミッキーはトラックを降りた。そして荷台の方に行き扉を開いた。中ではアルミが銃を持ち身構えていた。
『おいおい。撃つなよ。なんとか追っ手は撒いたようだが今からどうする…。』神崎が聞くとエドワードが言った。
『俺は今すぐにでも助けに行きたい。アルミお前はどう思っているのだ…。』アルミはしばらく考え込んだ。そして答えた。
『エドワードの気持ちは良くわかるが、ここは一度体制を整えて出直した方が良いと思う。』アルミの言葉にエドワードも考え込んだ。
『俺もその方が良いと思うぞ。まだこの辺りには追っ手がいるだろうから目立った行動はマーナの救出が困難になるだけだと思う。』神崎の言葉にお互い思いを巡らせ顔を見合わせた。その奥で燐銘は黙って聞いていた。
『そうだな。急いで事を仕損じるって言うしそうした方が良さそうだな。』エドワードの言葉に全員が頷いた。
『じゃ一度体制を整えて出直しだ。ではダンの店に行こう。とりあえず街の近くに行ってそこからは歩いて行こう。』アルミはそう言ってエドワードの肩を叩いた。
『ちょっと待て。コイツはどうする…。』神崎がそう言って燐銘を指差した。〈そうだコイツをどうするかを考えていなかった〉そう思っているとミッキーが言った。
『燐銘は内部の事いっぱい知っているから色々聞いてみたら。』アルミ達は確かにそうだと思った。そして一同はダンの店を目指す事にした。
>> 59
街の近くに着いた。辺りにはホイルの手下達は居ないようだ。神崎が荷台を開けた。
『アルミ俺が別の車を取って来るからここで待っていろ。』神崎が言うとエドワードが言った。
『1人で大丈夫か…。』それは愚問だった。
『おい俺を誰だと思っているのだ。神崎昇だぞ。心配は無用だ。』エドワードは申し訳ない顔をした。確かに元グリーンベレー1人で十分だった。
『私も一緒に行って良い…。』ミッキーが割って入って言った。アルミは思った。〈この2人もしかしたら…まさかな…〉そんな思いを巡らせていると神崎が答えた。
『付いて来るのは構わないが邪魔はするなよ。』神崎はそう言うと走ってダンの店に向かった。残されたアルミ達は荷台に腰掛けて煙草を吹かした。荷台の奥にいる燐銘を見た。まだ拗ねているようだ。
『おい。アンタも吸うかい…。』アルミが尋ねると頭を横に振った。
『私は煙草は吸わないよ。煙草の吸いすぎは体に良くないよ。』と意外な事言われた。
『他人の心配より自分の立場を心配した方が良くないか…。』アルミ達は笑った。燐銘はまたふてくされて後ろを向いた。どれぐらい経っただろう遠くから車の音がした。アルミは草陰に身を潜めて覗いた。それは神崎だった。そしてアルミ達の前に止まった。
『待たせたな。それじゃ行こうぜ。』神崎は1人だった。燐銘を荷台から下ろし車の後ろに乗せようと扉を開けた。その瞬間目の前に大きな影が現れアルミにのしかかった。アルミは目を開けるとそれはアギトだった。顔中を舐めまわしてくる。
『おい止めろ。くすぐったい。』なんとかアギトを引き離すと改めて燐銘を乗せた。
>> 60
アルミ達はダンの店に向かっていた。
『おい。何でコイツがここに居るんだ…。』アルミが尋ねると神崎は少し笑いながら言った。
『最初にダンの店に行って車の手配をしたのだがコイツがなかなか離れなくてな…。仕方なく連れて来た。だってよ最初は乗せなかったのだがずっと走ってついて来るから可哀想になってな…。』言われてみればそこまでされたら仕方ないかとアルミは納得した。
『だがなぜ付いて来たかやっと分かったよ。アルミお前に会いたかったのさ。さっきの行動見て良く分かったよ。多分俺に付いたお前の匂いに反応したのだろう…。』そう言っている側でアギトはアルミに抱かれて嬉しそうにしている。
『よほどお前の事が好きなんだろうな。』神崎がからかうように言った。アルミは思った。〈こんな風に女性にも愛されたいな〉そう思いながらアギトの頭を撫でた。
そう言っている内にダンの店に着いた。車を降り燐銘を連れて中に入った。店の中にはカウンターにクルミがちょこんと座っていた。奥の席には見知らぬ男がダンと話していた。するとこちらに気が付いて話しかけてきた。
『お前ら無事だったんだな。良かった。』心配してくれていたようだ。
『なんとか無事だったよ。危なかったけどな。ところであの男は誰なんだ…。』エドワードが尋ねた。ダンが話そうとするとその男は立ち上がりこちらに歩いてきた。
『よっ。俺の名はガイだ。色々な所を旅している遊人だよ。よろしくな。今ダンの旦那にこの街の事を聞いていた所だ。楽しくなるような事はないかい…。』黒い服を着て肩にはショルダーが片方に付いていた。あまりに唐突に話されたので皆は黙って見るだけだった。
>> 61
周りの様子にガイは気が付いた。
『おっとすまぬ1人で一方的に話してしまった。みんなそんなに退かなくても…。ところでその人何故縛られているのだ…。何かやったのか…。』ガイはまたも1人で話している。
『ちょっと訳あってね。』とアルミが言うとガイは頭を捻っていた。
『訳あってって普通縛らないでしょう…。』ガイはハッとした顔をして口にチャックの仕草をした。そして奥の席に戻って行った。
『しかし今からどうするかだ…。あの屋敷に…。』とアルミが言いかけるとエドワードが止めた。ガイがジッとこちらを見ていたからだ。
『ここでは話にくいだろうから奥の部屋を使え。』ダンが言った。ガイを見ると悔しそうな顔していた。アルミ達は奥の部屋に入って行った。
『話を続けようさて屋敷にはどうやって入るかだが…。神崎どうすれば良いのだ…。』尋ねると神崎は答えた。
『あの時はあまり見張りもいなかったから簡単に脱出できたが今回は見張りも増えていると思う。まずは偵察してからの方が良いとは思うが…。』神崎はそう答えた。アルミは考えて言った。
『そうだな。とにかく屋敷の事を調べてみないとな。』それを聞いていたミッキーが提案してきた。
『私ならあそこの事は少しはわかるよ。だから私も連れて行ってよ。』神崎を見てミッキーは同意を求めた。少しでも役にたってもらえればこれにこした事はない。アルミは賛同した。
『それなら一緒に来てくれ。』と言うと後ろから声がした。
『面白そうだな…。俺も連れて行け。絶対役にたつぜ。』いつの間にかガイがそこにいた。
『おいアンタは関係ないだろう。』エドワードが強く言った。
『なんだよ。俺結構役にたつぜ。なんなら試してみるか…。』ガイは構えて見せた。その構えは日本に伝わる古武術であった。それを見た神崎はハッとした。昔一度だけ勝負して負けた男がいた。その男の構えにそっくりだった。それがキッカケになりグリーンベレーになったようなものだ。一番になる為に。
>> 62
『その構えは…。』神崎が言うとガイは不思議そうな顔をした。
『なんだお前知っているのか…。』その問に神崎は答えた。
『昔一度な…。そいつの名前は藤堂…。藤堂鉄馬だ。』それを聞いたガイは驚いた。
『マジかよ。俺の兄弟子じゃないかと言うか俺の兄貴だよ。俺の名前は藤堂凱だ。こんな所で兄貴を知っている奴に出くわすとはな。』ガイの言葉に驚いた。
『そうか。それで藤堂はどうしているのだ…。』神崎の問に悲しそうな顔をするガイは言った。
『兄貴は2年前に死んだよ。アイツに殺された…。そうだよあの屋敷に居るサザナって野郎にな…。多分不意をつかれたのだろう…。』アルミ達は驚いた。この呑気そうにしていたガイの目が憎しみに変わっていたのだ。皆は恐怖を感じた。
『そんな事になっていたのか…。まさかお前その復讐の為に…。』神崎の言葉を聞いてガイはニッコリと笑った。
『そんな訳無かろう。俺はただ楽しい事を探しているだけだよ。』と言いながらおどけてみせる。その心の裏に何があるかは今のアルミ達にはわからなかった。
『しみったれた話はここまでにしてどうするんだ…。俺を連れてってくれるのか…。』ガイはアルミ達に聞いた。しばらく考えてアルミは言った。
『ではマーナ救出を手伝ってくれ。よろしくな。』そう言うとガイは叫んだ。
『ヨッシャ。バリバリ楽しんでやるぜ。』ガッツポーズをしながら喜んだ。
『おいおい。遊びじゃ無いのだから…。』アルミは呆れ顔で言うとガイは申し訳なさそうにした。
『まずはどう侵入するかだが何か良い案は無いだろうか…。』アルミの問にミッキーは言った。
『夕方の6時に交代する際見張りの数が少なくなるよ。その時にしたら良いのではないかな…。』さすがに内部に詳しいだけはある。だが燐銘が急に笑い出した。
『何がおかしい。』アルミが怒った風に言った。
『アルバートさん。あの騒ぎの後にそんな簡単に入れる訳無いでしょう…。いつもより厳重になっているはずよ。』確かに燐銘の言う通りだった。しかし他に方法は無い。アルミ達は再び考え込んだ。そしてしばらくの沈黙が続いていた。
>> 63
突然アギトが吠えだした。すると小型のサルが入って来たのだ。リスザルのようだ。
『おい“赤穂”どこに行っていたのだ探したぞ。』それはガイの連れていたサルであった。
『なんだその持っているのは…。』赤穂の持っているのを見た。それは酒瓶だった。ダンの店の酒を勝手に飲んでいたみたいだ。少し酔っているのかフラフラしていた。そしてガイの肩にスルスルと登りしがみついた。アギトは唸っている。クルミがアギトを抱き寄せ落ち着かせた。
『また呑んでいるのか…少しは控えろ。あっそうだコイツに偵察させるか…。』とガイは言ったが赤穂に偵察させても結果はわからない。
『ガイさんよ。偵察させてもサルの言葉がわかるのか…。』ダンが聞くとガイは笑い出した。
『わかる訳無かろう。』やっぱり呑気な奴だ。
『しかし良く盗みはするけどな。』本気でそんな事を言っているのだろうか…。
『ふざけるのはよしてくれ。俺達は真剣に話をしているのだ。邪魔するなら出て行ってくれ。』アルミの言葉に申し訳なさそうにガイは頭をかいた。
『すまない。しかしコイツの盗みの腕を活かせばマーナ救出もやりやすいと思うがね。』と自信あり気にガイは言った。
『例えば閉じ込められた部屋の鍵をコイツに盗まさせたらどうだ…。』ガイの自信満々に言った。確かに良い方法である。アルミ達は再び話あった。
『それなら俺達と一緒に来てくれ。』神崎がそう言った。
『アルミお前にはここで俺達の連絡を待っていて欲しい。』アルミは言い返した。
『俺も行く。マーナを助けたいのだ。』それを聞き神崎は答えた。
『アルミの言う事はわかるがまずは本当に居るのか調べてくる。それからだよ乗り込むのはね。』それを聞いてアルミは仕方なく納得した。
『全員が捕まってしまったら元も子もないからな…。分かってくれるなアルミ。』神崎が言った。まずは神崎達に任せる事にした。
>> 64
神崎達が屋敷に向かった。後に残されたアルミ達はダンの店で話をしていた。
『どうなんだろう…。マーナはあの屋敷の方に居るのだろうか…。居なかったらどこに連れていかれたのだろう…。』エドワード心配そうにそう言った。アルミは煙草を吹かしながら答えた。
『それを今神崎達が調べに行ってくれているのだ…。しばらく待とう。』小さくエドワードは頷いた。アルミはチラッと燐銘を見た。〈コイツは知らないのだろうか…〉と思った。
『なあお前は何か知らないのか…。』そう聞くと燐銘はそっぽを向いた。
『アンタらに教える訳無いでしょう。』燐銘がそう言うとエドワードが燐銘の胸倉を掴んで殴りかかった。すかさずアルミが止めた。
『エドワード気持ちはわかるが止めろ。殴っても何も始まらない。』エドワードは悔しそうに後ろを向いた。
『面白い代物があるが試してみるか…。』ダンが小さな袋をチラつかした。
『これには自白剤が入っている。ある裏のルートで手に入れた物だ。どうだ試してみるか…。』エドワードは有無も言わずその薬を奪うように取った。そして燐銘に近づいてそれを飲まそうとした。嫌がる燐銘の鼻を摘み息苦しさで口を開けた瞬間に薬を入れた。するとゴクンと飲み込んだ音がした。
『エドワード強引だな…。』ダンは呆れた風に言った。しかし薬を出したのはダンなのだ。アルミはただそれを見ているだけだった。
『どれぐらい経ったら効果が出てくるのだ…。』エドワードは尋ねた。
『多分10分もすれば効果が出てくるはずだ…。』ダンはそう答えた。そして10分が経った。
『そろそろ効果が出るはずだ…。何か質問してみたらどうだ。』ダンがそう言うとしばらく考えた末にエドワードは質問した。
『お前は…女か…。』意外な質問にアルミ達は爆笑した。
>> 65
その頃屋敷に向かった神崎達は目の前まで来ていた。
『屋敷が見えて来たな。』ガイが言うとミッキーが答えた。
『こっちに裏口があるはずよ。』ミッキーは屋敷の奥の方を指差した。その先を神崎達は見た。確かにそちらの方に扉らしき物が見えた。
『俺達で近づいたらバレてしまうな…。』神崎は考え込んでしまった。沈黙を破ったのはガイだった。
『俺なら顔割れてないぜ。俺が観光に来た人が屋敷に迷ったように近づけば疑われないと思うのだが…。どう思う…。』ガイの意見に反対する者はいなかったが神崎は言った。
『しかしそれでは肝心のマーナが居るか調べるには無理があると思うのだが…。』ガイはハッとした肝心な事を忘れていた。
『それならガイが言ったようにして見張りのヤツらの気を引いている内に屋敷に忍び込むっていうのはどうかしら…。』ミッキーが言った。それを聞いて神崎達はミッキーにしては良い事を言うと思った。
『その手があるな。それではガイは言った通りに観光に来て迷った人のフリをしてくれ。後の皆はその隙を見計らって屋敷に侵入する。それで良いな…。』と神崎が皆に言った。その近くで赤穂が鳴き叫ぶ。〈どうした…〉皆がそう思った。すると屋敷から一台の車が出て来たのだ。それは黒い外車で多分ホイルの車だろう。ガラスは黒のスモークで中は見えなかった。〈もしかしたらあの中にマーナが乗っているかもしれない〉と神崎は思った。するとガイが口笛をピッと鳴らした。空の彼方に何かが見えた。鷹のようだ。それはガイの差し出した腕にとまった。
『よし疾風あの車をつけろ…。』そう言うとその鷹は再び飛び立って車を追いかけるように飛んでいった。
『なんだあの鳥は…。』神崎が尋ねるとガイはニヤリと笑った。
『アイツは疾風。俺の相棒だ。ヤツにあの車の追跡は任せて俺達はさっきの作戦を実行しようぜ。』ガイはそう言うとまたニヤリと笑った。
>> 66
遥か彼方にそれは消えて行った。
『ガイあの鳥に任せて大丈夫なのか…。』神崎が尋ねるとガイはまたまたニヤリと笑った。
『大丈夫心配するな。アイツには発信機が付いているからな。どこに行ってもこれがあれば居場所はすぐにわかる。』自信タップリにガイが説明する。手には受信機を持っていた。
『一体アンタは何者なんだ…。』神崎の問にガイは黙っている。
『まあそんな事より作戦を実行しないのか…。』話をそらしそう言った。
『そうだったな。作戦を開始しよう。ガイ頼むぞ。』神崎の言葉にガイは頷き走り出した。
『後は上手くやってくれよ。』と言いながら屋敷の方へ消えて行った。残された神崎達は様子を伺いながら屋敷の裏口の方へ近づいた。表の方ではガイが上手くやっているのか騒がしくなってきた。扉を開けようとノブを回したが中からカギがかかっているのか開かない。すると足元に気配を感じた。神崎が足元を見ると赤穂が居てクルッと回った。そしてスルスルと屋敷の壁を登って行って2階の開いていた窓から中に入って行った。しばらくするとカギの開く音がした。すると扉が開いた。扉の隙間から赤穂がこちらを覗いていた。
『お前が開けてくれたのかありがとうな。』赤穂を持ち上げそう言った。
『では早速中に入りますか。ミッキーちゃんと付いて来いよ。』と神崎が言うとミッキーはピースサインをした。
『大丈夫ちゃんと付いて行くから心配しないで。』神崎はその言葉を聞くと懐から銃を取り出し構え屋敷の中へ入って行った。屋敷の中は静まり返っていた。ガイが上手くやっているおかげだろう。辺りを警戒しながら神崎達は進んで行く。しばらく行くとそこには警備室があった。神崎はそこに入る事にした。そっと扉を開けてみると中には2人の男がいた。まだこちらに気付いていない。神崎はスッと中に入り手前に居た男を倒し奥に居る男に銃を向けた。
>> 67
銃を構えたまま神崎はミッキーを見た。
『ミッキーそいつを縛ってくれ。』それを聞いてミッキーは辺りを探りロープを見つけた。それで倒れた男を縛った。その男は気絶したままだった。そして口にガムテープを貼った。銃を向けられている男は恐怖に震えている。その男に神崎は聞いた。
『ここに女の子が連れて来られているはずだが…。どこに居るか教えろ。』そう言って銃を突きつける。その男は恐怖のあまり言葉にならない。そして1つの画面を指差した。そこにはマーナでは無い女の子が捕らわれていた。
『あの子では無い。他に居るはずだ。』男に問いただすが首を振りこう言った。
『あ‥あの子だけだ今ここに居るのは…。』必死にその男は言った。神崎はそいつの目をジッと見た。男は嘘はついてはいないとわかった。神崎はそういう能力もあるようだ。そして男の方を見たかと思った瞬間男は倒れた。神崎が一瞬の内に気絶さしたみたいだ。その男も縛り上げた。
『ミッキー困ったな…。ここには居ないようだ。アルミ達に知らせよう。』そう言ってその部屋を出ようとした。すると画面の1つにガイが暴れているのが見えた。ヤバいなこれは…。急いで逃げないとな。扉を開き辺りを伺い飛び出した。そして来た道を戻り裏口にたどり着いた。外は静かになっていた。ガイのヤツ大丈夫なんだろうか…。神崎は思いながら外へと飛び出した。アルミ達が居る所まで走った。そこでアルミ達はジッとこちらを伺いながら待っていた。
『神崎どうだった…。マーナは居たのか…。』その答えに頭を横に振った。
『中には居なかった。その代わり見知らぬ女の子が捕らわれていたよ。なぜ捕らわれているのかはわからないが…。関係ない話だな。』その話を聞いたアルミは何か引っかかっていた。その子を助けなければならないと何故か思った。
>> 68
アルミは神崎に近づき言った。
『何か気になるんだ…その子を助けなければならないと思うのだが…協力してもらえないか…。』それに対してエドワード言った。
『マーナはどうするのだ…。お前の妹だぞ。ほっといて他の子を助けるなんて馬鹿げてる。俺は認め無いぞ。』エドワードは凄い勢いで言った。それを聞いてアルミは困った風で頭を掻いた。アルミは頭の中で誰かが助けなさいと言っているようで仕方なかった。
『わかった。この件は俺だけでなんとかする。エドワード達は引き続きマーナの行方を調べてくれ。』すると後ろから声がした。
『その子を助けるのは俺に手伝わしてくれ。』そう言ったのはガイだった。
『ガイ無事だったのだな。かなり暴れていたみたいだったが…。』アルミはホッとした顔をした。
『無理に手伝ってくれなくても良いのだぞ。これは全く意味なくやるのだからな…。』アルミは下向きがちにそう言った。
『それじゃ俺達はマーナの情報を調べる為一度ダンの店に戻る。アルミ気を付けろよ。無理ならすぐ逃げろよ。じゃお互い頑張ろう。』そう言ってエドワード達はダンの店に帰ろうとした。その時ガイが声を掛けた。
『お前ら何か忘れていないか…。』そう言って受信機を見せた。皆はそれを見てハッとした。完全に忘れていたのだ。ガイが鷹を放った事を…。
『忘れていた。車を追いかけて飛ばしてくれてたのだったな。それがあれば何かわかるかも知れないな…。』そう言ってエドワードはそれを受け取った。詳しい説明をガイから聞き改めてダンの店に向かって行った。アルミは屋敷を見つめていた。
『オイどうした…。何を考えているんだ…。』ガイの言葉にゆっくり振り向きアルミは言った。
『いったい俺達はいつまでこんな事をしていなければならないのだろうか…。出会ったばかりの君に言っても仕方ない事だけどな…。』森には小鳥の鳴く声だけがただ響いていた。
>> 69
アルミは何もかも嫌になりそうな気持ちになりそうだった。
『何そんな辛気くさい顔しているんだ…。助けに行くのだろう…。俺が付いているぜ。元気だせ…良いな。』ガイの明るい言葉にアルミは笑顔を見せた。
『そうだなガイの言う通りだ。さぁ行こう。』アルミ達は再び屋敷に向かった。先ほど入った裏口から入り中を伺う。辺りには人の気配は無い。そのまま警備室に向かった。扉を開け中を見た。2人の男が縛られて気絶していた。神崎がやった事は知っていた。警備室のモニターをチェックすると1つの画面に捕らわれている女の子が目に入った。
『この子だな。いったいこれはどこなんだ…。』アルミがそう言うとガイが答えた。
『多分これは地下ではないか…。モニターの上に“B1”と書いてある。』アルミは改めて見ると確かに“B1”と書いてあった。
『じゃ地下に行ってみよう。』アルミ達は地下を目指した。赤穂が先頭を招くように走る。その後をついて行く。
『多分コイツは場所が分かっている。』ガイはそう言った。すると目の前に地下への階段が見えた。そこを降りて行く。降りた所に扉がありアルミ達は前に立った。ノブを回すが開かない。するとガイは懐から何かを出した。それを鍵穴に突っ込みガチャガチャとしたと思うと扉が開いた。そして中を見ると1人の女の子が座っていた。こちらを振り向くと驚いたように言った。
『ガイじゃない。どうしてここに…。助けに来てくれたの…。』アルミは驚いた。この2人は知り合いなのか…。
『姫ご無事で何よりです。助けに参りました。さぁここを出ましょう。』ガイが言うとその姫はこう尋ねた。
『その方はどなた…。』ガイはその言葉に答えた。
『この方はアルミと言って偶然出会った者で今回彼に手伝ってもらいここまで来ました。』その姫は頷きながら立ち上がりました。
『私の名前はミツキ・エル・フォード。タミヤ王国の王女です。この度はありがとうございます。』そう言って手を差し出した。アルミはその手を取り握手をした。
『アルミだ。よろしく。まあそんな堅苦しい話は後にしてここを出よう。』そう言ってアルミ達はその部屋を出た。
>> 70
部屋を出た途端に赤穂が現れミツキに飛びついた。
『あっ赤穂じゃない。アナタも来てくれていたのね。』頭を撫でると嬉しそうに鳴く。
『姫じゃれている場合では無いですよ。まずは逃げないと…。さぁ行きましょう。』ガイが丁寧に言った。アルミは走りながら尋ねた。
『ガイ。姫様とはどんな関係なんだ…。』ガイはその質問に困った顔をした。何かあるに違いない。間を置いてガイは答えた。
『それはな…。俺はな姫の親衛隊隊長さ。』息切れ一つつかないで答えてくれた。しかし浮かない顔をガイはしていた。それを見て何かあるに違いないとアルミは思った。屋敷の裏口を抜けて森の方に逃げた。しばらくすると屋敷の方からベルの音が鳴り響いた。今になって居なくなった事に気が付いたようだった。その騒ぎの中アルミ達は森の奥へ入って行った。
『もうここまで来たら大丈夫だろう…。ここで少し休もう。』ガイの言葉に一同は賛成し足を止めた。
『本当にありがとうございました。おかげで助かりました。このお礼は必ずさせてもらいます。』ミツキはそう言ってニコリと笑った。まるでお人形のような可愛いらしい笑顔だった。しかし何故お姫様が屋敷に捕らわれていたのだろう…。何かあったに違いない。ガイにそれとなく聞いてみた。
『ガイ…もしかしたらこのお姫様を助ける為にこの島に来たのか…。』苦笑いしてガイは言った。
『実はな…そうなんだ。姫が誘拐された事を隠す為おどけて見せてたのだ。あの時我々は油断していた…。』言いにくいのか言葉に詰まる。
『ガイ余り気にしないで…。アナタが悪い訳では無いのですから。私が話しましょう。』ミツキは高貴な語り口で話し出した。
『私共は訳があってこの島にやって来ました。ここに来てホテルでゆっくりとしていました。もちろんガイもいました。食事の時間になり部屋に食事が届けられました。私共がその料理を食べ終わった頃運ばれてきた台の一部から煙りが立ち込め私は急に意識が無くなり気が付いたらあの部屋に閉じ込められていました。』ミツキはそう言ってガイを見た。
『俺は食事に何か入っていないかまでは調べたのだが…台に仕掛けがあるとは考えていなかったのだ…。』ガックリとして悔しがった。
>> 71
それを見つめながらミツキは言った。
『ガイ本当にアナタの性では無いのだから気にしないで…。』ガックリとしたガイは顔を起こしミツキを見つめた。
『そうだ。俺もそう思う。予測して無い事はいくらでも起こるもんだ。実際俺はこの何日か毎日のように色んな事が起きているからな。』アルミはそう言ってガイの肩を叩いた。
『それはそうなんだが…。』よほど悔しかったのだろう。ミツキはすっと立ち言った。
『さあ行きましょう。ここに居ても仕方ないですから…。』アルミ達は再びミツキを見た。
『そうだな。まずは安全な場所に行った方が良いな…。しかしその前に聞いておきたいのだが…。君達はこの島に何しに来たのだ…。』アルミは疑問になっていた事を尋ねた。ミツキ達は困った顔をしているがその疑問に答えた。
『それはあの屋敷のホイル氏に招待されたのです。彼とはかなり前から貿易を通じて面識は有りました。我が国の鉱石であるダイヤモンドの取引で彼はかなりの財を手に入れたのです。そのお礼と言う事で招待されたのです。しかしあのような事が起きてしまったのです。そして彼の本当の目的は我が国の宝ブルーダイヤ〔ブルーウルフ〕なのです。それを見せるのも今回来た訳でも有りますが…。』グリーンダイヤにブルーダイヤこれは何か有るに違いないとアルミは思った。
『グリーンダイヤには言い伝えがあります。それは私の先祖が戦で戦っている時不意に後ろから敵に襲われた時助けてくれたのがアキ・ラ・アルフォートと言う騎士だったそうです。それが縁で彼からもらったのがこのグリーンダイヤだったのです。』意外な所で何かが繋がった。
『それは本当の話なのか…。』アルミは驚いて聞いた。
『ええ本当の話です。嘘をついても仕方有りません。何故そんなに驚かれるのです…。』キョトンとしてミツキは尋ねた。
『その騎士は俺の先祖にあたる人だ。』その言葉に今度はミツキ達が驚いた。
>> 72
『ではアナタはアルフォート社のご子息なのですね。兼ねてから存じていました。こんな所で会えるとは思いませんでした。それにアルフォート家が騎士の子孫である事も存じていました。それがアナタとは…。とても嬉しく思います。』驚きの中ミツキはそう言った。
『不思議ですね。俺の頭の中でアナタを助けろと言う声がしたのです。』アルミは歩きながらそう言った。
『それでは我が家系はまたアルフォート家に助けてもらった事になるのですね。これはやはり神様のイタズラなのかしら…。』クスクス笑った。
『神様のイタズラって…。』アルミは困った顔をしながら苦笑いした。
『でもこれも何かの縁かもしれません。アルミさんよろしくお願いします。』頭をペコリと下げた。
『あらっ森を抜けそうですね。これからどこに行くのですか…。』急に違う話を言い出した。
『えっ…あっこの島にある酒場に行くつもりです。そこの店のマスターは良い人で俺達を助けてくれています。姫様が行くにはちょっと問題あるかもしれませんが…。』ちょっと皮肉っぽく言った。
『構いません。そこに連れて行って下さい。そう言う所に行ってみたかったのです。特に酒場なんて…。私はあまり世間の事はわかりません。いつも自分の屋敷の中…。この島に来たのもずっと反対されていたのです。結果こんな事になってしまいましたが…。』少しうつむき加減にミツキは言った。
『姫…本当に大丈夫ですか…。かなり汚い所ですよ。そんな所に行かせる訳には…。またどんな危険が待っているか…。』ガイはそう言ってミツキの前に立つ。その肩の上では赤穂が飛び跳ねながら鳴いている。
『大丈夫です。何事も経験です。それにあの地下室に閉じ込められていたのですよ。それに比べたら…。そうでしょう…。』確かにそうだとアルミも思った。ミツキはまたニッコリと笑った。森を抜け道に出た。辺りを見渡したが怪しい者はいなそうだ。足早にダンの店を目指した。
>> 73
目の前にダンの店が見えて来た。店の外ではアギトがくるまって寝ていた。気配を感じたのか、顔を上げ嬉しそうに尻尾を振り出した。そしてアルミの方に駆け出し飛びついてきた。ガイの肩に居た赤穂は慌てたように背中に回り様子を伺った。外が騒がしくなったのが分かったのか、クルミが扉を開け顔を覗かせた。
『よっクルミ。帰って来たよ。』アルミがそう言うとクルミが駆け寄り抱きついた。クルミの頭を撫でながら言った。
『みんなは中に居るのかい…。』それを聞いてクルミは頷いた。そして後ろに居る姫を見て不思議そうな顔をした。
《その人は誰なの…》そう手話で聞いて来た。
『詳しい事は中に入ってからだ。』そう言うと店の扉を開いた。中にはエドワード達が1つのテーブルに固まり何かを話していた。ダンはカウンターの中で洗い物をしていた。
『よっアルミ無事だったのか。今皆で噂していたんだよ。』冗談混じりにエドワードがそう言うとその横に座っていた神崎が続けて話してきた。
『その後ろに居るのはアルミが助けた女の子かい…。』そう尋ねるとアルミは後ろ振り返ってミツキを前に出して言った。
『そうだよ。彼女はミツキだ。』そう言うとミツキは頭を下げ改めて自己紹介をした。
『私はタミヤ王国の王女でミツキ・エル・フォードです。よろしくね。』そう言って店の中を見渡した。
『素敵なお店ですね。アナタがここの店主さんですか…。』とダンに向かって言った。ダンは不意に聞かれた為慌ててタオルで濡れた手を拭きカウンターから出て来て挨拶をした。
『褒めてもらえるとは嬉しいね。俺はダン。ダン・カービィだ。よろしくな。』そう言うと手を差し出した。それを見てミツキも手を出し握手をした。
『ところで飲み物を頂けませんか…。ここまで逃げて来るのに喉が渇いてしまいました…。』すると慌ててダンはカウンターに入り冷蔵庫の中からジュースを取り出しコップに注いだ。それをミツキの前に出した。
『ありがとうございます。』そう言ってコップを受け取り一気に飲み干した。皆はそれをポカンとして見ていた。
>> 74
ダンはそれを見ながら言った。
『よっぽど喉が渇いていたのだろうな…。もう一杯飲むかい…。』尋ねるとミツキはコップ差し出した。
『お願いします。喉が渇いてしまって…。』地下室では何も口にしていなかったのだろうかと皆は思っていた。ダンが再びコップにジュースを注ぎミツキに手渡した。
『もしかしてお腹も空いているんじゃないかい…。』そう尋ねるとミツキはお腹を押さえながら言った。
『実はペコペコなんですよ。』舌出して恥ずかしそうに言った。すると店の奥に座っていた女性が立ち上がった。
『私が作って差し上げますわ。』どこかで見た事のある人だった。
『あっサツキさん。』アルミはつい叫んでしまった。ここに居るはずの無い人が居るのだ。驚くのも当然である。ここに来る前に立ち寄って来た喫茶店のママが何故か目の前に居る。アルミは不思議に思って尋ねた。
『何故ここに居るのですか…。』それ聞いてサツキが答えた。
『旦那がここに来ていてこっちに来るように言われて店を休みにして来ました。シュウトはほらそこに…。』アルミは脚に痛みを感じた。そうシュウトが脚に蹴りを入れていたからだった。
『この野郎またやったな。相変わらず元気だな。』頭をぐっと押さえた。するとシュウトはニッコリと笑った。
『では厨房を使って良いかしら…。』サツキはダンに言った。
『どうぞどうぞ。』そう言いながら厨房にサツキを連れて入って行った。この店は初めて来た時は意外に広く思っていたが今は妙に狭く感じられる。これだけの人数が居るのだから当たり前なのだろうが…。アルミは急に1つの事を思い出し言った。
『そう言えばマーナの行方はわかったのか…。』そうエドワードに尋ねた。
『この受信機を調べたらガイの鳥は島の中央にある山の所に居るのだが…。』それを聞いてアルミは家宝の眠る洞窟を思い出していた。
『まさかあの洞窟に居るのだろうか…。それなら早速行ってみよう。』それを聞いていたミツキが話して来た。
『洞窟ってあの洞窟ですか…。』ミツキの言葉に全員が振り返った。
>> 75
『あの洞窟は私がまだ小さかった時行った記憶があります。ただ良くは覚えてはいませんが父上からその後聞いたのですがあそこには狼の像がありその奥には宝が眠っていると言っていました。ただ簡単には開かないとも言っていました。』ミツキの言葉は信じられない事にアルフォート家の言い伝えに似ていた。
『その話我が家の言い伝えと類似している。やはり先祖の関係は間違いないのかも…。』アルミはそう言った。
『そうなんですか…。ではあの洞窟に宝が眠っているのですね。だからホイルさんはブルーダイヤの事を欲しがっていたのですね。我が家の言い伝えではこれが開ける為のキーになるって言ってましたから…。』何げに言ったがアルフォート家の2つのダイヤ、フォード家の1つのダイヤがなければ扉は開かないと言う事になる。そうアルミが思っていたら店の扉がギィっと開いた。
『こんにちは。ダン俺だよ。』顔を覗かせたのはサツキの旦那で渡辺謙一郎だった。
『パパ―。』シュウトが駆け寄る。満面の笑みを浮かべ謙一郎はシュウトを抱き上げた。厨房からサツキとダンが顔を出す。
『あっパパやっと来たのね。随分待たされたわよ。』口を尖らせて言った。その横でダンが手を上げる。
『すまんすまん。契約にちょっと手間取ってな。無事契約出来たよ。』頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。何かに気付いたかのようにアルミ達を見る。
『アルミなんでお前がここに…。それにエドワードまで…。』驚いた顔をしている。アルミは謙一郎に近づいて今までの事を話した。しばらく経って厨房から料理を持ってサツキ達が出てきてテーブルに並べた。色々な料理が並んでいる。ミツキは満面の笑みを料理を食べ始めた。
『皆さんの分もあるからどんどん食べな。』とダンが言った。さすがに皆もお腹が空いていたのだろう凄い勢いで食べ始めた。テーブルを囲んでの食事は久しぶりだなとアルミは思っていた。食事も大体終わった頃エドワードが話し出した。
『アルミ食事も済んだ事だしそろそろマーナ救出の話をしたいのだが…。』そう言って周りの意見を伺った。
>> 76
食べ終えた食器を片付けながら話をし始めた。
『とりあえず洞窟に行って見るしかないけど…。』それしかないと皆思った。
『おいおいあの洞窟に行くのかい…。あそこは止めとけどんな事になっても知らんぞ。』謙一郎はそう言って首を振る。
『どうしたあそこに何かあるのか…。』アルミが尋ねた。謙一郎は険しい顔をした。言いにくいのかなかなか話してくれない。
『謙一郎なんなんだよ…。教えてくれ。そうしないと事が進まない…。』エドワードが強い口調で言った。
『実はな俺もあの近くにコーヒーの木を求め探していた時だ…。探している内に夜になってしまいあの洞窟に入って行ったんだ。雨が降っても大丈夫だと思い泊まる事にした。』一同はその話に聞き入っていた。
『あそこには魔物が住んでいる…。』謙一郎は思い出したのか身震いした。
『魔物なんて…。何言っているのだ。そんな物居るわけないだろう…。』アルミは笑いながら言った。
『いや居たんだって俺が眠ろうと横になった。すると洞窟の奥の方から唸り声が聞こえてきたのだ。そちらの方を見ると光る目が2つあった。それなら俺も驚きもしない…。その目が2つから4つになり、また4つが8つになったのだ…。俺は慌ててその洞窟から逃げたよ。次の朝街の人に聞いたら昔からあそこには何か得たいの知れない何かが住んでいると言っていた。』謙一郎は体を振るわせ言っている。
『あーその話は俺も知っているぜ。あの洞窟を守る何かがいるってね。あそこには宝が眠っていて、それを盗りに来る者から守る為に居るってね。』ダンがそう言った。
『そうか…。しかし俺達も一度あそこには行ったがホイルの一味が居て何かをしていた。ただ全てを見た訳では無いが…。』アルミはそう言いながらエドワードを見た。
『しかし今はあそこに行ってみるしか無いからな…。』エドワードは立ち上がり言った。するとガイが割り込んできた。
『行くならこのガイ様も行くぜ。』胸をポンポンと叩きながら言った。
『それは助かる。じゃ一緒に来てくれ。』アルミは頭を下げた。
『おいおい止めとけって…。何があっても知らないぞ。』謙一郎は本当に怖かったのか真剣に言っている。
>> 77
皆がもめている中1人店の奥で座っている燐銘が話しかけてきた。
『アンタら話合うのは良いが私の事忘れていないかい…。』皆が話すのを止め燐銘を見る。
『おーすまんお前いたんだな…。お腹空いたろこれを食べろ。』皆に出した食事をいくつか取り燐銘の前に神崎が出す。
『いい加減にしなよ。こんな格好でどうやって食べる…。』燐銘は怒った。それ見てアルミが近づいて言った。
『申し訳ないが簡単に縄を解く訳にはいかない。こっちの質問に答えてもらおう…。』アルミは燐銘に聞いた。
『ホイルはあの洞窟で何をしようとしている…。それにマーナは本当はどこに居るのだ…。』燐銘は横を向く。アルミは呆れたように両手をあげ困った顔をする。
『それなら食事は無しだな…。』神崎が食事を引っ込めようとした。
『ちょっと待って…。』燐銘は慌ててこっちを向き言った。
『何なんか言ったか…。』神崎はわざとらしく言う。
『ちゃんと話すから…。』燐銘は涙目で訴える。
『えっ聞こえないな…。なんだって…。』神崎は意地悪に言った。そしてアルミとエドワードをチラリと見てニヤリと笑う。
『話すがその前にあれに行きたい…。』燐銘は濁した言い方で言う。
>> 78
『あれってなんだ…。』神崎がまたワザとらしく言った。
『可哀想ではないですか…。ちゃんと行かしてやったらどうですか…。』言ったのはミツキだった。
『そうだ。行かしてやれ。』続いてガイもそう言った。
『そうだな意地悪はここまでで行かしてやるか…。しかしこれをはめてから行ってもらうぞ。』手には手錠が握られていた。燐銘はしぶしぶ手を出した。
『じゃ俺が連れて行く。』ダンが燐銘を連れて行く。そして何故かアルミ達を見るとウィンクした。アルミはなんの事かその時はわからなかった。
『近くにいちゃレディーに失礼だから終わったらノックしろ良いな。』ダンが紳士らしい事を言った。しばらくしても扉を叩く音がしない。まさかとアルミは思った。そしてダンに尋ねた。
『まさか逃げたって事無いよな…。』試しに扉を叩いて声をかけたが中から返事が来ない。
『ダンこの扉はこちらから開ける事は出来るのか…。』ダンは答えた。
『鍵で開くが…。取ってくる。』そう言って奥の部屋に入り鍵を持ってきた。その鍵で扉を開けてみた。居るはずの燐銘がいない。
『しまった逃げられた…。』アルミがそう叫んだ。
>> 79
慌てて皆が駆け寄り中を覗く。確かに燐銘の姿が無かった。そんな皆の後ろでダンが笑った。
『どうした…。何故笑っている…。』不思議に思いアルミは聞いた。
『そりゃそうさ。俺がワザと逃がしたのだから…。』ダンはニヤリとする。
『逃がしただと…。』エドワードがダンを掴み食ってかかった。
『おいおい慌てるな…。これだよこれ…。』ダンは手に持っていた機械を見せた。
『それは受信機のようだが…。それがどうしたと言うのだ…。』アルミは不思議そうに言った。
『おいおいまだ分からないのか…。』ダンは困った顔をした。するとサツキが言った。
『それってもしかしたら燐銘と言う人に発信機を付けているって事かしら…。』アルミはやっとわかった。そしてダンがさっきウィンクした意味も。
『そう言う事か…。さすがダンだな。いつの間に着けたんだ…。』神崎はダンに近づいて肩をポンと叩いた。その言葉で全員がわかった。
『そうだ。これで後は追跡すればホイルの居所がわかるって寸法だ。』ダンは自慢げに言った。
『ワザと燐銘を逃がしホイルを見つけ出しマーナを助け出す。一石二鳥作戦だな。いや一石三鳥だな。』ガイは笑いながら言った。
>> 80
皆の冷ややかな視線に気が付いたのかガイは黙った。
『では早速行きますか。』エドワードが言う。
『ちょっとまてなら俺が飛ばした疾風はどうなるんだ…。』ガイがそう言った。
『確かにそうだな。せっかく飛ばしてあの車の行方を突き止めているのだ、無駄には出来ない。なら二手に別れてやるしかないな…。』アルミは周りを見た。皆が頷いている。
『その案のった。』ガイが手をあげた。
『俺は燐銘を追いかける。エドワードはどうする…。』アルミが聞くとそれに答えた。
『俺は洞窟の方に行ってみる。』エドワードはアルミを見た。
『神崎。お前はエドワードと一緒に行ってくれ。護衛になれるからな。俺はガイと行く。』2つのグループに別れた。
『お前ら本当に気をつけろよ。ホイルの噂はあまり良くないからな。命の保証だってないのだからな…。だから俺は行かないぞ。』謙一郎はそう優しく言ってくれた。
『パパカッコ悪い。』シュウトはふざけて言う。
『ダメでしょうそんな事言ったら…。』サツキが少し怒った風に言う。
>> 81
『シュウト。パパは君の為を考えて行かないのだよ。だから別にカッコ悪くは無い。かえってパパは凄いのだよ。』シュウトの目線に落としてアルミは言った。シュウトはわかったのかニッコリ笑って言った。
『そうかパパはカッコ良いのか。』サツキと謙一郎はアルミを見て頭を下げた。
『では行きますか。お互い頑張ろう。』アルミの言葉に皆ガッツポーズをした。そしてお互いの目指してダンの店を出た。アルミが振り返るとクルミとミツキが手を振っている。その横で謙一郎の家族とダンがこちらを見ている。そしてシュウトがピースサインを出した。ピースサインは幸せを祈るマジナイだ。知ってか知らずか笑いながら出していた。アルミは心の中で成功する事を祈った。
『さてと燐銘はどちらに向かっているのかな…。』とアルミはダンから渡された受信機を見た。
『この方向だと海に向かっているな…。まだ動いているな。やはり海に向かっている。何があるんだこっちには…。』アルミは受信機を見ている。
『俺が来た時その方向にホテルがあったと思うが…。確か「タートルマリナーズ」ってホテルが…。』ガイは思い出して言った。
>> 82
『あっ確かにそのホテルがあるな。そこに向かっているのか…。』アルミは考えていた。確かこの島に来た時に見たホテルだった。あの時不思議な感覚を覚えていた。名前からにしても家宝と似ているからかもしれないが…。
『とりあえずそこに向かってみよう…。』アルミはそう言った。森の中に入ると辺りでは鳥の鳴く声が聞こえてくる。それに反応して赤穂がキョロキョロしている。ガイが受信機を見ると燐銘はやはりそのホテルに向かっている。そこにマーナは居るのだろうか…。無事なら良いのだが…。アルミはそう思いながら歩く。森を抜け海側にあるホテル街に出た。そこには様々なホテルが建ち並ぶ。その中で一際目立つのが俺達が目指しているホテルだ。
『おい。あのホテルだな。』アルミが言う。
『ああ。あのホテルだ。』ガイは答えた。
『あとはどう忍び込むかだ…。』アルミが言うとガイは笑いながら言った。
『気にする事はない。堂々と正面から入れば良い。』ガイは大笑いしながらアルミの肩を叩く。
『そんな事したらバレるではないか…。』アルミは困った顔をした。
『だから良いのさ。』ガイは意味ありげに言った。
>> 83
『正面切って入るなんてそんな馬鹿な…。そんな事したらすぐ見つかってどうなるか…。』アルミは驚いている。それを見てガイはニヤリとしていた。
『おいおい良く考えてみろ。俺達が入って行っても奴らのアジトに行く訳では無い。奴らも俺達が来ているとは思っていないだろうからな。盲点をつくって訳だ。それに見つかったとしても簡単に手出しは出来まい。そう言う事だよ。』ガイの言っている事は確かだがもし見つかったら…アルミは不安な気持ちでいた。
『さぁ行こう。』ガイは力が有り余っているのか元気いっぱいである。
ホテルの正面にある大きな扉から入って行った。するとエレベーターの所に燐銘が立っていた。
『おい。アルミ見ろよ。あそこに居るぞ。』ガイが顔を寄せて言う。
『本当だ。あんな所に…。どの階に行くんだ…。』アルミ達は気付かれないようにエレベーターの方に近づく。燐銘が乗り込み上がって行った。アルミはすかさず階を表示する所を見ていた。それは最上階まで上がって行った。ガイがアルミを見て言った。
『隣りのエレベーターがある。さあ行こう。』アルミは頷き乗り込んだ。
>> 84
エレベーターは最上階まで上がって行く。そして最上階に着き扉が開く。周りを伺いながら降りる。しかしどこにも燐銘の姿は無い。
『ここからどうする…。調べるにもかなりの部屋がある…。』アルミは困った顔をした。それを見てガイは言った。
『その点は大丈夫。この受信機で調べたらわかる。さてさてどこにいるかな…。こっちだな。』ガイは右側の方を指差した。受信機を見ると点滅した光が段々と近づいている。ある部屋の前まで来たら受信機の真ん中で光が点滅していた。
『多分この部屋に違いない。と言うよりこの部屋だな。』ガイは小声で言った。
『しかし中に居るのが分かってもいきなり入ったらマーナが危ないと思うのだが…。』アルミが言うとガイは肩に乗っていた赤穂を下ろし近くにある窓を開けた。良く見ると赤穂は何かを背負っている。スルスルと窓の隙間から赤穂は外に出て行った。ガイは受信機にあるボタンを押すと画面の中に映像が出てきた。
『おっここは…。部屋の中が見える。』アルミは言った。
『そう。赤穂が背負っていたのは小型のカメラだ。バッチリ映っているな。』アルミ達は画面をジッと見た。
>> 85
『おっ見えるぞ。誰か居るかな…。』ガイはそう言うとズームを変えた。
『奥に誰か居るみたいだな…。一人は燐銘のようだが…。あの黒い服の男は誰だ…。』ガイが言うとアルミは受信機を奪い見た。
『これはサザナだ。間違い無い。あの感じはサザナだ。他に誰かいないのか…。2人が立ち上がった。出掛けるみたいだ。ヤバい隠れないと…。』アルミ達は廊下の突き当たりの影になっている所に身を潜めた。
燐銘とサザナは廊下に出てエレベーターの方に向かっていた。しかしエレベーターには乗らずもう1つの部屋をノックした。しばらくして扉が開いた。そこには部下らしき男が立っていた。頭を下げると中に入るように手を部屋の方に差した。2人は中に入って行く。そして扉が閉まった。
『くそっ中が見えなかった。』アルミが悔しがる。それを見てガイが窓の方に近づく。そこには赤穂がいた。ガイは赤穂に何か言っている。すると赤穂はわかったようにまた窓の外に出て行った。ガイはアルミを見た。
『その受信機を見ろ。奴らの部屋が映るはずだ。』アルミとガイは受信機をまた見た。そこにはさっきの部屋が映っていた。
>> 86
部屋の中には先ほどの2人と後何人かいる。その奥にどっしりと座っている男がいる。
『あれは間違い無いホイルだ。俺の父親とそっくりだから間違えはしない。』アルミはそう言った。
『皆が揃っているのならばもしかしたらここにマーナが居るのでは…。』ガイが言うとアルミは振り返った。
『見る感じではどこにもいないようだが…。』アルミは悔しがる。
『どうしたら良いか…。』アルミ達は悩んでいた。ガイは受信機を見ながらアルミに言った。
『おい皆が動いて奥の部屋に行ったぞ。あっ誰かを連れて出て来た。』確かに受信機に映っていた。
『あっマーナ…マーナだ。間違いないマーナだよ。やはりここに居たのか…。』アルミは走り出した。
『おいっ…。待て…。』ガイも走り出しアルミを止めた。
『何故止める…。マーナを助けないと…。』アルミは怒りに燃えていた。
『待てよ。いきなり入って助けられる訳ないだろう…。居場所はわかったのだから作戦を考えてからの方が良いに決まっている…。だから待て…。』ガイはアルミを思い留めさした。ガイは考えていたのか作戦の1つを語った。
>> 87
ガイはアルミに近寄りずっと考えていたのかニヤニヤしながら話し出した。
『まずはここのボーイの服を盗んで食事を運びそこでヤツらからマーナを救う方法だ。』ガイは自慢げにその作戦を話した。
『だが、そう簡単に服なんて盗めるのか…。だいたいそれで本当に上手くいくのか…。』アルミは呆れた顔をした。
『あのな、俺の作戦に失敗なんてない。ならお前何か他に考えがあるのか…。』ガイはムッとして言い返して来た。アルミも他に考えがある訳でもない為申し訳無さそうにしていた。するとエレベーターがチンッと言って開いた。
『あっあれ…。あれはボーイだよ。』アルミとガイはお互い見合った。その後の2人の行動は物凄く速かった。あっという間にボーイを捕まえてさっきの所まで引っ張って来た。ボーイは怯えている。ガイはそのボーイにお金を渡し一時的に服を借りた。ボーイはニヤニヤしながら非常階段の扉を開けこちらに手を挙げた。
『これで服は調達出来た。後は突入するのみ。』ガイはやる気満々である。そしてボーイの服に着替えた。アルミは腰にある銃を確認した。
『ところで俺はどうしたら良いかな…。』アルミが聞くとガイはカートの下を指差した。
>> 88
アルミは嫌そうな顔をした。
『何故俺がこんな所に…。俺は絶対嫌だ。』ガイは困った顔した。
『おいおいそう言ってもどうするんだ…。マーナを助けるのだろう…。』ガイはアルミをなだめた。アルミはしばらく考えていた。アルミは何かを悟ったかのように言った。
『そうだよな。マーナを助ける為だ。こんな事でもめても仕方ない。わかった。』そう言ってカートの下に隠れるように乗り込んだ。
『アルミ…。俺があの部屋に普通に入る。そして俺が食事をテーブルに置いてからワザと食事を落とす…。それが合図だ…わかったな。』ガイが言うとアルミは返事をした。
『ああわかった。上手くやってくれよ…。』その返事を聞いてからガイは帽子を深く被り気合いを入れるように太ももを二度パンパンと叩いた。そしてカートを握り締めホイル達の部屋に向かって押して行った。扉の前に立ち横にあるベルのボタンを押した。
『いよいよだぞ。ガイ頼んだぞ。』アルミが言うとガイは答えた。
『わかっている。任せてお前は隠れていろ…。』しばらくすると扉が開いた。手下が辺りを見渡し手招いた。
『入れ…。』無愛想な言い方だ。ガイはカートを押して中に入って行った。
>> 89
ガイはカートを押しテーブルの近くまで行った。部屋の中を見渡すと手下は3人で、後は燐銘とサザナそしてホイルの6人だ。ガイはタイミングを考えながらテーブルに食事を置いていった。そして最後の一皿になった。その時である。サザナの携帯電話が鳴った。
『はい。どうした…。うんうん。何…。分かった。』サザナが電話を切る。
『どうした…。』ホイルが訪ねた。
『はい。実は洞窟の方でトラブルがあったようです。』サザナが言った。
『何…。食事は後だ。洞窟に行くぞ。』ホイル達はそう言うと立ち上がった。
『こいつはどうします…。』サザナが訪ねるとホイルが言った。
『連れて行く。さあ行くぞ…。』そう言って部屋を出ようとした。するとガイが食器を落とした。全員が振り返った。そうガイの合図だった。そしてアルミはカートから飛び出し銃を構えた。
『動くな…。手を挙げろ…。』不意を付かれたせいかホイル達は手を挙げた。
『お兄ちゃん…。』マーナは泣き叫んだ。
『マーナ助けに来たよ…。さあマーナを離せ…。』アルミはホイルに銃を向ける。しかし1人いない事に気が付いていなかった。不意に後ろから衝撃がアルミを襲った。
>> 90
思わず銃を落としてしまった。振り返るとそこにはサザナが立っていた。落とした銃を燐銘が拾ってこちらにむけた。その時ガイが動いた。近くに居た手下を一瞬の内に蹴り倒し燐銘の銃を蹴り飛ばした。そしてナイフと言うより短めの刀らしき物を燐銘の喉元に突きつけた。だが残り手下とサザナがこちらに銃を向けた。
『はいはい。残念でした。その物騒な物を置いてもらいましょう。』サザナがアルミの頭に銃を向け直した。ガイは仕方なく刀を床に投げた。
『本当に残念でしたね。後もう少しだったのにね。』ホイルがニコニコしながら言った。
『あなた達には眠ってもらいましょう…。』そう言うとサザナと燐銘はアルミ達にスプレーを吹きかけた。催眠ガスの入ったスプレーなのだろうアルミとガイはその場に倒れた。
『お兄ちゃん…。お兄…ゃん…。』マーナの叫び声が倒れ薄れていくアルミに聞こえていた。そしてどのぐらい経ったのだろうアルミは目を覚ました。
『うう…。ちきしょう…。縛られている…。ガイは…。おいガイ…。ガイ居るか…。』アルミは辺りを見渡すとガイは窓の近くで倒れていた。
>> 91
縛られている為動きにくいがアルミはガイの近くまでなんとか寄った。そしてガイに呼び掛けた。
『おい起きろ…。起きろって。』アルミは怒鳴った。するとガイはようやく目を覚ました。
『うう…。あっアルミ。ヤツらは…。』そうガイは尋ねた。辺りは誰も居ない。とうの昔に部屋を出て行ったのだろう。
『ガイこのロープほどけるか…。』アルミは後ろ手に縛られた所見せた。
『アルミ大丈夫だ。こんな紐簡単に外せるさ。』そう言うとガイは何かし始めた。ゴキゴキと凄い音がしたかと思うとスルスルと自分のロープを解いた。
『俺にとっちゃこんなもん簡単さ。』鼻高々にガイは言った。そして足のロープも解いた。その後アルミに近寄りアルミのロープを解き始めた。ロープが解け2人は部屋を調べ始めた。やはり誰も居なかった。
『さっき洞窟が何とか言っていたな…。』ガイが思い出したように言った。
『ああ…。確かにそう言っていた。多分あの洞窟だろう…。行ってみるしかないな…。その前に…。』アルミは携帯を取り出しどこかにかけた。
『もしもし…。エドワードか…。俺だアルミだ…。』アルミはエドワードの言葉に固まった。
>> 92
『どうした…。何があったんだ…。』ガイはアルミに近づいて言った。
『神崎が…神崎が死んだ…。』アルミはそこに座り込んだ。
『何…。神崎が死んだだと…。』ガイが聞くとアルミは顔を上げ言った。
『エドワードがそう言った…。間違い無い。だがはっきりした事は会ってからと言っていた。』アルミは力なく立ち上がった。
『なら急いで洞窟に行くぞ。アルミボーっとしている暇無い行くぞ…。』ガイはそう言うとアルミの頬を叩いた。アルミは顔を押さえガイを見た。
『今ここで悲しんでいても仕方ないだろう…。本当に死んだかどうかもわからないのだろう…。なら行くぞ。』ガイはアルミを掴み言った。アルミは思い直したのかガイに言った。
『わかった…。洞窟に向かおう…。』アルミ達は扉を開け部屋を後にした。
ホテルを出ると森の中にある洞窟を目指した。森を入り急にアルミは尋ねた。
『なあさっきどうやってロープを取ったんだ…。』アルミはずっと気になっていた。
『あっあれは骨を外しただけだ。俺はこんな事もあると思い訓練していた。やっと約にたてたな。』ガイは微笑んだ。
>> 93
木の生い茂る中アルミ達は洞窟に向かっていた。その頃ホイル達はちょうど洞窟に着いていた。
『ホイル様着きました。』サザナは車のドアを開けて言った。すると手下の1人が走り寄って来た。
『ところで何が起きたと言うのだ…。』ホイルは洞窟を見ながら言った。
『実は洞窟に侵入者が入りまして…。』手下はそう言うと申し訳なさそうに言った。そして今まであった事を話した。
『しかしその者の姿が見あたらなくて…。今辺りを探しています。』手下は頭を下げ洞窟に走って行った。ホイルは顎を触りながら洞窟に歩き出した。
ホイル達が洞窟に入ってからしばらく経った頃アルミ達はエドワードとの待ち合わせ場所辺りに来ていたのである。
それは最初に洞窟に来た時に隠れた場所だった。辺りを見渡すと木の陰にエドワードが隠れていた。
『エドワード何があったと言うのだ…。』アルミが尋ねるとエドワードは静かに話し出した。
『俺達は受信機を頼りにここまで来た。すると洞窟の近くの木にガイの鳥がとまっていた。辺りを見るとあの車が停まっていた。それで神崎が調べると言って車に近づいた。しばらく調べて戻って来た。』エドワードは話を続けた。
>> 94
神崎が言うには車には何も無かった。だから洞窟の中に入って調べてみようと言い出した。俺も一緒について中に入った。洞窟の中は思ったより広く入り口には見張りが2人居て銃を持っていた。気付かれ無いように近づいて神崎がその2人を倒した。ところが1人が神崎に発砲したのだ。神崎はどこかを撃たれたのかそのまま倒れた。倒れた神崎は俺に逃げるよう言った。すると中から発砲を聞きつけた何人かが出て来た。神崎はなんとか食い止めるから逃げろと言った。俺は後ろ髪を引かれる思いでこちらまで逃げた。その時銃声が鳴り響いた。振り返ると神崎が再び倒れていくのが見えた。その後はわからない…。』エドワードは涙を流しているのか目の下を拭いた。
『あの神崎が…。』アルミは言葉を失った。それを見てガイが言った。
『その後はどうなった…。見ていたのか…。』エドワードは頭を横に振った。
『ならまだ生きているかもしれないだろうが…。泣く前にもう一度洞窟を調べて見るしかないだろう…。』ガイは少し怒った風に言った。アルミとエドワードはガイを見た。
>> 95
『そうだよエドワード…。まだ死んだとは限らない。行こう…。』アルミが言うとエドワードは立ち上がり大きく頷いた。アルミ達は洞窟に近づいた。入り口辺りでは何人かが辺りを調べている。良く見ると血の後がある…。だが調べている所をみると神崎は逃げたのかもしれない…。アルミは神崎が生きていると思った。洞窟の前に車が何台か停まっている。
『やはりここにホイルが来ているな…。どうする…。』アルミが尋ねるとガイが答えた。
『俺の考えだが先に神崎を探した方が良いと思うのだが…。』アルミ達は振り返りガイを見た。すると森の方で何かが動いた。ガイの肩の上にいた赤穂が飛び跳ねた。その方向を見るといきなりアルミに何かが飛びかかって来た。それは顔を舐めまわして来た。良く見るとアギトだった。
『どうしたアギト…。なぜここにいるのだ…。』アルミが不思議に思うとアギトが服を引っ張り出した。どこかに連れて行こうとしていた。アルミ達はとりあえずアギトについて行く事にした。アギトは森の奥に入って行く。すると草陰から音がした。アルミ達は身構えた。
『神崎…。生きていたのか…。』そうそこには神崎が隠れていたのだ。
>> 96
肩を押さえながら神崎が座っていた。アギトは横に座り心配そうに見ている。
『神崎大丈夫だったのか…。てっきり殺されたかと…。』エドワードがそう言うと苦笑いしながら神崎は言った。
『ふん…。そう簡単に人を殺すな…。俺は不死身だ。弾がかすっただけだ。』するとエドワードが言った。
『でもあの時銃声の後倒れたでは無いか…。てっきり撃たれたと思っていた…。』その言葉に神崎は信じられない事を言った。
『あれは逃げようと思って下がったら足を何かに引っかかってしまい倒れただけだ。』神崎は笑いながら言った。
『神崎笑い事じゃないぞ。こいつはお前が死んだと思い泣いていたのだぞ…。』アルミがそう言いかけるとエドワードが口を押さえるようにした。それを見て皆は笑った。一時の平穏であった。急にアギトが唸り出した。その方向を見ると4~5人の手下が近づいていた。
『ちっ隠れろ…。』ガイはそう言った。アルミ達は素早く身を隠した。手下共は辺りを伺いながら近づいて来る。マズいとアルミが思っていると神崎とガイが動いた。
>> 97
残り2人が銃を向け撃つのが早いかどうかと思った瞬間ガイと神崎の蹴りが2人を倒していた。しかし倒れる時に手下は指に力が入ったのか銃声が森に響いた。
『マズいヤツらに気付かれた…。逃げよう…。』そう神崎が言うとアルミ達は森の奥の方に逃げた。手下はまだこちらには気づいていなかった。
『この辺りなら気付かれないだろう…。』神崎は怪我した所を押さえながら言った。
『ここまで来てまた下がらなければならないなんて…。』アルミはぼそりと言った。
『マーナは大丈夫だろうか…。』エドワードの言葉にアルミは神崎の事でいっぱいで話すのを忘れていた。
『マーナはホテルに居た。』エドワードは驚き辺りを見渡した。
『マーナはどこだ…。助けたのだろう…。』食いつくように言った。
『いや…。』アルミは申し訳なさそうに答えた。
『エドワードお前達が洞窟を離れた時マーナは連れて来られたはずだ。』エドワードは落胆の色を落とせなかった。辺りが少し騒がしくなって来た。手下達が近づいて来たのだ。ガイは素早く音のする方へ走った。
『おい…待て。』アルミはガイを止めようとしたが視界から消えた。
>> 98
アルミ達は見合ってからガイの後を追った。しばらく走るとそこにはすでに手下共を倒しているガイが居た。
『遅いぞ…。やられる前にやれだ。』手下3人が倒れていた。落ちていた銃を拾いアルミへ投げ渡した。いきなりだったのか落としそうになった。それを見て皆が笑った。神崎は怪我した所を布みたいな物で縛っていた。するとガイが何かに気づきシッと口に人差し指をおいた。
『おい…。ヤツらは居たか…。』そこに現れたのはサザナだった。2人の大柄な男を連れて歩いてこちらに近づいてくる。
『どうする…。やるか…。』神崎は小声で言った。皆の頭の中ではガイの言った言葉が響いていた。《やられる前にやれ》誰ともなく一斉にサザナ達の前に出た。
『おやおや皆さんお揃いで…。』サザナはたじろぐ事もなくそう言った。そして持っていた銃を空に向け撃った。多分仲間を呼んだのだろう。その時ガイが動いた。右側に居た男に向かって回し蹴りを繰り出した。だがその男は片手で受け赤子を扱うように跳ね飛ばした。ガイは飛ばされ転がる。すると左側の男がアルミに向かって殴りかかって来た。アルミは一瞬の出来事に慌てて顔の前をガードした。
>> 99
しかし何の衝撃も来ない。腕の隙間から覗くと神崎が立っていた。横にはふらつく男が居た。
『お前達は下がっていろ。コイツらは俺達が倒す…。』神崎は構えたまま言った。アルミとエドワードは少し下がった。すると神崎とガイはサザナ達に向かって行った。激しい闘いが始ままった。ガイが腰にある刀を抜いた。目に止まらぬ早さで右側の男に切り込んだ。大柄の割に動きが早くガイの刀をよけた。
『あま―い。』その怒鳴り声が響いたと同時に男は崩れるように倒れた。実は刀を振った後、後頭部に蹴りを入れていたのだ。その横では神崎がもう一人の男に下から突き上げるようにパンチを喰らわしていた。
『さすがですね。目に止まらない早業…。驚きました。』サザナは相変わらず落ち着いている。左側の男はふらついてはいたがまた構えた。再び神崎が連続して蹴りを入れる。男はかわしながらパンチを出して来た。それを受け止めるように神崎は腕を持ち捻った。男は宙に舞い頭から落ちた。すかさず鳩尾に肘を落とすと男は気を失った。
『残るはお前だけだな。サザナ…。』ガイは指差した。すると銃声が鳴り響いた。手下共がやって来たのだ。
- << 101 銃弾が足下に当たる。アルミ達は四方に散った。そして奪った銃で撃ち返した。手下の何人かに当たり倒れる。しかしまだ手下共は増える。サザナは笑いながら言った。 『残念だな…。俺は倒せない…。』ガイがそれを聞くとまたサザナに向かって走って行った。サザナがガイに向けて銃を撃った。だが右に避け当たらない。 『サザナお前こそあま~い。喰らえ~。』刀を横に振った。サザナは避け銃を撃った。ガイはしゃがみ今度は斜めに斬りつけた。サザナは片手でそれを受けた。金属同士をぶつけるような音がした。サザナの腕には金属製の小手がはめられていた。その頃周りの手下共をアルミ達は次から次と倒していた。そして最後の1人を神崎が蹴り飛ばした。 『残るはヤツのみ…。』神崎が言うとガイの近くに寄った。 『コイツは俺が倒す。お前らは下がっていろ…。兄貴の仇だ…。』ガイは片手を横に上げて言った。 『兄貴だと…。』サザナが尋ねた。 『俺の兄の名は藤堂鉄馬。知らないとは言わせないぞ。』ガイは構え直した。 『ふはははは…。あの馬鹿な男の事か…。』サザナは笑いながら構えた。
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