白銀翼の彼方
しばらく違う所に書いていたのですが、思いきってここに載せてみようと思いました。
ヘタクソですが長い目で見てやって下さい。
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それは1つのメールから始まった。私の名前はフォード・アルバート通称アルミだ。石油会社の御曹司で37歳の男である。そのメールは昔から仲の良かった、今で言うセレブなヤツらだ。【久しぶりにパーティーをする】からとメールがあった。最近まで多忙だったが、今は大して忙しく無い為、【了解】と返信した。
『爺、爺。』机の上にある内線用のボタンを押しながら呼んだ。すぐに返事はあった。
『はい。なんでしょうか…。そちらに行きます。しばらくお待ちを。』落ち着いている声だ。すると扉が開き爺が現れた。
『すぐに車の準備して欲しいのだが。』パーティーに行く為出かけるのだ。
『かしこまりました。』そう言うと部屋を出て行った。爺は父親が幼少の頃からこの屋敷に仕えている執事である。初老を迎えたばかりであるがそれを思わせない。そして、5分ほど経っただろうか、爺が現れた。
『坊ちゃん準備が出来ました。』どうやら下に秘書が来たようだ。
『わかった。今から出かける。』扉を開け玄関に向かった。
>> 1
爺が玄関まで送るとそこには秘書が立っていた。
『いってらっしゃいませ。』爺が頭を下げた。玄関を出るとそこには長さ10mはあるだろう高級車が止まっていた。運転手が小走りでドアの前に立ちドアを開いた。アルミと秘書は乗り込んだ。とても中は広く後部座席は向かい合わせになっている。扉が閉まり運転手が乗り込む。空飛ぶ絨毯のように車はすーっと動き出した。
空港までは30分ほどで着く。今日は意外と空港までの道は空いていた。窓の外には2羽の鳥が飛んでいた。
車はVIP専用の搭乗口の前に止まった。それはジェット機まで直接繋がっている。煩わしい搭乗の手続きが必要ないのである。この飛行機会社の株主である特権である。ジェット機に乗り込み席に着いた。しばらくするとアナウンスが流れた。
『只今、機体の再チェック中であります。もうしばらくお待ち下さい。』それを聞きアルミぐうっと背伸びをした。久しぶりにみんなに会える。意外にワクワクしているアルミであった。まもなくして再びアナウンスが流れた。
『大変お待たせいたしました。只今より出発いたします。シートベルトをお締め下さい。』アルミは微かに笑った。皆に会える喜びが表に出たのであろう。しかしこの後とんでもない事が起きるとアルミは知るよしもなかった。
>> 2
機長から続いてアナウンスが流れた。
『大変お待たせいたしました。本機は離陸予定より1分遅れで出発します。』周りは少し風が強いようだ。嵐が近づいているのだろうか…。ジェットの音が少しづつ大きくなって行く。最大になった瞬間シートに押し付けられ体中にGがかかる。
機体が滑走路を走り出した。どんどんと地面から離れて行く。アルミは思った。何故こんな鉄の塊が空を飛べるのか…。改めて人間の凄さに脅かされる。関心しながら外を見ながら微笑んだ。
『アルミ様。到着は約1時間後です。』低調に話してきた彼が秘書である神崎昇である。彼は私の一切のスケジュールを把握してくれている。今回は彼に少々無理を言ってスケジュールを開けて貰った。彼はスケジュール帳をめくりながら言った。
『しかし、いつもいつも無理をおっしゃる。なんとか開けましたが、終わってから大変ですよ。本当にお願いしますよ。』仏頂面しながら言った。
『わかっているよ。ちゃんとやるから、君も今日は楽しんでくれ。』神崎は眉間にシワを寄せながらスケジュール帳をめくっている。
『そうおっしゃいますが、後の事考えると楽しめません。』無理を言い過ぎたかな…。ジェット機は安定したのか、シートベルト解除OKのサインが点いた。
>> 3
ジェット機は安定した飛行をしていた。隣では神崎が1人ぶつぶつ言っていた。うるさくて頭にくるが、彼に少々無理をさせたからここは我慢しておこう。しばらく経ったその時機体が激しく揺れた。〈何事だ、何があったのだ〉とアルミが思ってみると機内アナウンスが流れた。
『只今、乱気流に入り多少機体が揺れますが航行に支障はありません。シートベルトをお締め下さい。』機体は激しくまだ揺れている。
『やはり嵐でも来るのか…。天気予報では言ってなかったのだがな…』空の天候は急に変わる事もあるのだろう。
『た‥確か…い言ってなかった…で‥す』あまりの揺れの激しさに言葉になって無い。その時嫌な感が働いた。大概この感は当たるのだ。〈さっきのアナウンスの声違ったような〉アルミは違和感を感じてシートベルトを外し有無も言わずコックピットの方に駆け出していた。
『アルバート様…。お‥お待ちを…』』神崎が呼び止めるが聞こえていなかった。
>> 4
コクピットに向かって左右に揺れ座席を掴みながら前に進んで行く。そして扉までたどり着くとアルミはコクピットの扉を叩き叫んだ。
『おいっどうした…。何かあったのか…。』コクピットの中からは何も聞こえてこない。
『おいっここを開けろ、おいっおいっ。聞こえないのか、開けろ。』やはり中からは何も聞こえてこない。機体が激しく揺れた。左側の壁に激しくぶつかりながら、体勢を取り直してコクピットの扉を蹴飛ばした。しかし簡単には開かない。もう一度勢いをつけ蹴飛ばした。すると扉はバーンと音をたてて開いた。その扉の向こうには、見るも無残な光景が広がっていた。
『これは、いったいどういう事なんだ…。』とんでもない事が起きている。そう思っていると後ろに気配を感じ振り返ろうした瞬間、後頭部に激しい痛みを感じアルミは気を失った。
周りで数人の男達の声が微かに聞こえてくる。後頭部に激痛が走る。
『うっ何が…おきた…。』と頭を抱えながら起き上がると、1人の男が近づいてきた。
『お目覚めですかアルバート様。』その男は160㎝ぐらいで黒い衣装にサングラス、まるでドラマに出てくるマフィアのようだ。
『お前ら何者だ。』まだ頭が痛む。
『お初にお目にかかります。サザナともうします。』意外に声が甲高い。
『ある人の依頼であなた様をある場所にお連れするよう言われております。』今まで気が付かなかったが、機体は先ほどと打って変わって全く揺れていない。やはり揺れていたのは機長達が殺されたせいだったのだ。先ほどのコクピットの光景を思いだし、身震いした。このジェット機はハイジャックされたのかもしれない。
>> 5
周りを見渡せば5人いる。秘書の神崎は泡を吹いてシートに倒れている。多分私と同じように気絶させられているのだろう。5人の手には銃と言うよりマシンガンほどの自動小銃を持っている。いったい何者なんだろう…。アルミは色々巡らしてみたが思いつかない。その時サザナが話し掛けてきた。
『アルバート様。今からあなた様をお連れする場所ですが太平洋に浮かぶ島、通称ナインアイランドと呼ばれる島です。ご存じですかな。』そう言われると思い出すように言った。
『ナインアイランドだと…。』思い出していた。名前の通り9つの島から出来ている所だ。幼少の頃何度か訪れた所だ。しかし誰がこんな事をするのだろう…。未だに思いつかない。黒装束の大柄な男が2人近づいて来て、アルミの両脇を抱えシートに座らせた。その時機内アナウンスが聞こえてきた。
『サザナ様、後20分ほどで着きます。』忘れていた。コックピットにはもう1人居たのだ。男達は合わせて6人居るのだ。
『まもなくつくそうです。それまでおとなしくして下さい。下手な真似したらこれが火を吹きますよ。』と銃をこちらに向けて言った。相変わらず甲高い声だとアルミは思った。
>> 6
窓の外を眺めていると、微かに島らしき物が見えてきた。島は9つに別れてはいるが真ん中に大きな島があり、その周りに小さな島がある。大きさは東京ドームが9つほどの大きさはある。まだそれよりは大きいと思う。海岸線は白い砂浜で、海水浴には適した所だ。幼少の頃、従兄弟と泳いだ記憶がある。貝殻で足を切り大騒ぎになった。海で切るともの凄く血が出たように思えるがさほど出てはいない。その時の傷は微かだが足に残っている。足を触りながら窓の外に見える島を眺めていた。アナウンスが流れた。
『着陸します。シートベルトを絞めて下さい。』そう言うと機体が傾いて白浜の反対側にある、滑走路へと降りていった。しかしここでいったい誰が待っているのだろう。そう思いながら後ろの席を見ると神崎が伸びたまま座っている。思わず笑ってしまった。何故かこんな状況なのだが、落ち着いている自分に驚いている。黒装束の男達が一斉にこちらを見た。光に反応するペンギンのようだ。それは光を追っかけてペンギンが頭を振るのだ。そんなテレビを前見た覚えがある。ジェットは滑走路に静かに着陸した。今ジェットを操縦している男はかなりの腕だと思う。こんなに静かに着陸したのは初めてであった。大概はかなり揺れるもんである。ジェット機は静かにターミナルの方に近づいて行った。
>> 7
ジェット機は滑走路にあるAゲートに着いた。人口約1000人ほどの島にしては立派な空港である。
『さぁアルバート様着きました。降りて貰いましょう。』後ろでノビていた神崎も起こされたのだろう。辺りをキョロキョロしながら両脇を抱えられ立っている。今にも泣き出しそうだ。普段はメガネの端を持ちながらガミガミ言っている奴とは思えない。
『そいつは例の場所に連れて行け。アルバート様はこちらに…。』そう言うと搭乗口の方へ歩きだした。ジェット機を降りターミナルの方に歩いた。そこには真っ黒なワゴン車が止まっていた。黒装束の1人がスライドする後部のドアを開けた。やはり映画のマフィアのようだ。
ジェット機の方を見ると後から降りて来た神崎が発見された宇宙人のように、もう1台あるワゴン車の方に連れて行かれていった。彼はどこに連れて行くのだろう…。それにしても彼にとっては災難である。私がスケジュールを変えなければこんな事になって無いはずだ。
『さぁお乗りください。』言う通り中に乗り込むと奥の席に座らされた。ワゴン車は空港を出て街というか村の中にある道を森の方へ走って行った。森は島の中央に広がっていて南国の島で見かけるような光景である。しばらく行くと視界が広がり、そこにはヨーロッパ風の屋敷が見えてきた。
『俺の屋敷より小さいな。』とアルミは呟いた。
>> 8
ワゴン車は屋敷の玄関先に止まった。黒装束の男がドアを開けた。サザナがドアの前に現れ左手を右から左に動かした。レストランでウェーターがやる仕草だ。
『こちらにどうぞ。ご主人様がお待ちかねです。お降り下さい。』アルミはワゴン車を降り屋敷の玄関の前まで連れていかれた。そこで改めて屋敷を見渡しながら〈やはり俺の屋敷の方がデカい〉と思った。ある意味負けず嫌いなのだろう。
前もこんな事があった。セレブ仲間であるホテル王の御曹司エドワードとゴルフの勝負した時だった。2打差で負けてしまい次の日からプロ付けて猛練習続けた。
『エドに負けるなど許されない。絶対に勝ってみせる。』その成果もあり次の勝負は見事に1打差で勝利した。
目の前の扉が開き屋敷の中に通された。入り口の近くにはヨーロッパの騎士の鎧が立っていて、屋敷の中は色んな美術品で埋め尽くされていた。
そして奥方へ通された。またそこには扉がありサザナが扉を開けた。奥には壁一面に巨大なモニターがあった。そしてどこかにあるであろうスピーカーから声が聞こえてきた。
『アルバート君よくいらした。まあそこの椅子に掛けたまえ。』その声は低く体に響くほどである。これもまたマフィアのボスって感じだ。
『君に来て貰ったのは言うまでも無い君が持っているタートルダイヤモンドを頂きたい。』アルミは驚いた。
>> 9
『タートルダイヤだと。あれは我が家に伝わる家宝だ。何故そんな物が必要なんだ。』アルミは叫んだ。
『フフフあれには伝説がある。ご存じかな…。』謎の男は笑いながらいった。昔父親が1つの箱を金庫の中から取り出し私の前に置き蓋を開け話してくれた事を思い出した。
その中にはタートル(亀)の形をした宝石が入っていた。それは薄い緑色をしている。いわゆるグリーンダイヤモンドである。窓から差し込む光に輝いていた。それは数十億する品物で我が家代々伝わる物である。
『アルミよ。これその物もかなりの価値はあるのだが、これには言い伝えがあるのだ。お前にもそろそろ教えておかなければならないな。』2人はソファーに腰掛けた。父親は一度深い呼吸をして話の続きを話し出した。
『今から1000年ほど前の話だ。ある騎士が戦に向かうため馬を走らせていた。ところが彼らの前に出てきた兎に馬が驚きその騎士は落馬してしまった。頭を強く打ったせいで気絶してしまった。目を覚ました時目の前には白銀色した犬がその騎士を眺めていた。その犬はある場所に騎士を連れて行った。そこには眩いばかりの宝がありその中にあったのがこのタートルダイヤであった。振り返って見ると犬はいなくなっていた。その後騎士は戦いに勝利し莫大な富を手に入れた。それ以来これを持つ者富得ると言われている。』そう言うと蓋を閉めた。
『だがこの伝説には続きがあるのだ。』煙草に火を付け話し出した。
>> 10
煙草の煙が入道雲のように立ち込める。そして続きを話し始めた。
『富と名誉を手に入れた騎士は、その後どんな人にも慕われ過ごしていた。だがその富と名誉を得たのはタートルダイヤである事が世間で噂になっていた。それ故に奪いに来る物が増えた。危機を感じた騎士は身を隠しそれで得た宝をどこかに隠したと言われている。』そして煙草を吸い煙をはいた。
『それを隠した場所は分かってはいないがその騎士は我が家の先祖で名はアキ・ラ・アルバートだ。我が家の家紋にはタートルを囲む星が8つある。多分これが宝の在処を記しているのではないかと言い伝えられている。しかしその場所には守り神がいて誰もはいる事ができない。これが入るためのキーであるでは無いかと言われている。アルミよ忘れるで無いこの言葉を…。【白銀の狼の涙落ちる時緑色に輝くそして扉は開かれる】わかったな。』アルミは頷いた。
『わかった忘れない。』そう言った事を思い出していた。
突然、目の前のスクリーンがつきそこに2人の人影が映し出された。1人はさっきから話している男だろう。そしてもう1人はかなりグラマーでまるでモデルのような女性のようだ。そして男は話し出した。
『アルバート君だいたいの事は分かっていると思うが…。私にその宝石渡して貰いたい。』彼の声は体に響く。
『何故俺がお前に我が家の家宝を渡さなければならない』アルミは立ち上がって叫んだ。
『いや別に彼がどうなっても良ければですけどね』さっきスクリーンに映った謎の女が言った。
>> 11
目の前の画面が変わり、そこには鉄格子にしがみつき泣き叫んでいる神崎が映し出された。スピーカーからその声は聞こえてはいない。すっかり忘れていた。神崎が居たことを…色々あり過ぎて自分の事しか考えていなかった。神崎スマンと心で謝った。しばらくすると元の画面に戻り、2人が現れた。そして謎の男が話出した。
『さあ、どうします…。彼の運命は貴方次第ですよ。渡して貰えますよね。』アルミは考えていた。彼の命と我が家の家宝、渡す価値はあるのだろうか…。何を考えているのだ俺は…。どんな人間でもお金には変えられない。だが先祖代々守って来た物をそう簡単に渡して良いものか…。えーい何とかなる。そう思うとアルミは話し出した。
『分かった。渡そう。彼には決して手を出すな。しかし今は持っていないぞ。』それを聞いて謎の女が話し出した。
『それはわかっているわ。今から3日後までに持って来て貰いましょう。よろしくて。』そう言うと男の方が続けて話しをしだした。
『アルバート君わかっていると思うが彼の命は君にかかっている。』そういうとスクリーンの下に小さく神崎の映っている画面がまた出てきた。叫び疲れたのか、彼は牢の奥で体育座りをして下向きに何かブツブツ言っているようだった。〈大丈夫だ俺が何とかする待っていろよ神崎…。すぐ戻って来るから〉と心で違うアルミだった。神崎は体が小刻みに揺れていた。
>> 12
『わかってらっしゃると思いますが変な真似はしてもらったら困りますよ。こっちには貴方に言っていない事もありますしね。まあ彼をまずは助けてやって下さい。』一体何を言おうとしているのだ…。まだ言って無い事とは何なんだ。ただ頭が混乱するだけだ下手な事出来ないようだな。
『わかっている。そんな事はしない。ジタバタしてもしかたない。それより一番聞きたいのはお前はいったい誰なんだ。それと言って無い事ってなんだ。』そういうとスクリーンを睨みつけた。しかし男は笑うだけだった。しばらく笑ったかと思ったら男は話し出した。
『いずれ分かりますよ。では3日後にお会いしましょう。あっそれと貴方に彼女を付けさせて貰いますよ。私の優れた部下で最愛の人だ。誤魔化しはできませんよ。』と男が言った後スクリーンはプツンと消えた。
『おい待て…。ちゃんと答えろ…。』そう言ったが返事はなかった。そこにサザナが現れた。
『アルバート様では行きましょうか。』そう言うと玄関の方に歩いて行く。すると玄関の扉が開いた。そこに立っていたのは先ほどスクリーンに映っていた女だ。そして話し出した。
『さあ、私がお供させて貰いますわ。変な真似はしないで下さいね。私の名前は李燐銘。誤魔化しはできませんわ。』そう言うと振り返ってワゴン車に向かって歩いていく。その後に続いてアルミも歩いていった。
>> 13
例のごとく黒装束の男がドアを開けた。燐銘は後ろを振り返り誘導する仕草をした。乗り込み奥に座らされた。ふっと窓の外を見るとどこから来たのだろう、子猫がクリーミングをしている。こちらを見ると立ち上がり一声上げてこちらを見ている。毛はショートで薄茶色をしている。日本で言うドラ猫みたいな子猫である。ただ良く見ると目の色が緑色である。突然子猫は何かに反応して茂みの方へ走って行った。ワゴン車は動き出し空港へ向かって行く。すると燐銘が話し出した。
『アルバート様お宝が隠されている場所はご存知ですの…』そう聞いてきた。ある場所はなんとなくわかっていたが確信はない。その時父親の言っていた事を思い出していた。もしかしたら…。
『貴方も気付いているかしら、そうこの島こそがお宝を隠した場所ですわ。だから今私達はここに居るわけですの。』そう言われたとぼけてみせたが実際は驚いた。ワゴン車はまた森の道を抜けて行く。良く見ると遠くに山が見えていた。〈この島のどこかに先祖が隠した宝が本当にあるのだろうか…隠すほどの宝どの位なのだろう…俺もこいつらと変わらないな〉と思いながら少し笑った。だが我が家の家紋は確かに9の数字と関係はあると思う。もしかしたらこの島で間違いないのかもしれない。そう思っているとまた話して来たた。
『あの山こそ宝が隠された場所ですわ。だいたいの場所はわかっていますのよ。今から楽しみしているのよお宝を手に入れる事を。』そして高々と笑った。
- << 16 アルミは山を見つめていた。横では笑い過ぎたのか燐銘が噎せている。〈あの山のどこかにあるのか?父親の言った最後の言葉も気になる。まあなんとかして神崎を助けなければならない。どうしたら良いものか…えーいなんとかなる、ならなきゃ困る絶対にな…〉見ていた山の中腹辺りに一瞬光った物が見えた気がした。 しばらくすると森を抜け出していた。するとずっと黙っていたサザナが助手席から振り返り話し出した。 『間もなく空港に着きます。』そういうとまた前をむいた。すると前から白い車が迫って来た。その白い車は高級車で我が家に来た車ほど長くはなかった。そして我々の車の横を土埃をあげながら通り過ぎた。 言ってなかったがここはリゾート地で沢山の人が訪れている。と言ってもセレブな人が主である。島の一部にリゾートホテルがある。この島のほとんどの人が従業員である。〈そう言えばホテルの名前に【タートルマリナーズ】と言うホテルがあったな。何か関係があるのだろうか…〉ワゴン車は空港のターミナル前に止まった。ドアが開き下ろされターミナルへ連れて行かれた。そこで意外な事を言って来た。 『私達はここでお別れです。』サザナがそう言った。〈一緒に来るかと思ったのだが彼らの仕事はここまでなんだろう…〉そうしたら深々と頭を下げるとワゴン車の方へ歩いて行った。ワゴン車の前にたち再び振り返りぽそりと言った。 『3日後お待ちしております。』そう言うとワゴン車に乗り込んでいった。
>> 14
アルミは山を見つめていた。横では笑い過ぎたのか燐銘が噎せている。あの山のどこかにあるのか?父親の言った最後の言葉も気になる。まあなんとかして神崎を助けなければならない。どうしたら良いものか…えーいなんとかなる、ならなきゃ困る絶対にな。見ていた山の中腹辺りに一瞬光った物が見えた気がした。しばらくすると森を抜け出していた。するとずっと黙っていたサザナが助手席から振り返り話し出した。
『間もなく空港に着きます。』そういうとまた前をむいた。すると前から白い車が迫って来た。その白い車は高級車で我が家に来た車ほど長くはなかった。そして我々の車の横を土埃をあげながら通り過ぎた。言ってなかったがここはリゾート地で沢山の人が訪れている。と言ってもセレブな人が主である。島の一部にリゾートホテルがある。この島のほとんどの人が従業員である。そう言えばホテルの名前に【タートルマリナーズ】と言うホテルがあったな。何か関係があるのだろうか…ワゴン車は空港のターミナル前に止まった。ドアが開き下ろされターミナルへ連れて行かれた。そこで意外な事を言って来た。
『私達はここでお別れです。』サザナがそう言った。一緒に来るかと思ったのだが彼らの仕事はここまでなんだろう。そうしたら深々と頭を下げるとワゴン車の方へ歩いて行った。ワゴン車の前にたち再び振り返りぽそりと話した。
『3日後お待ちしております。』そう言うとワゴン車に乗り込んでいった。
>> 14
例のごとく黒装束の男がドアを開けた。燐銘は後ろを振り返り誘導する仕草をした。乗り込み奥に座らされた。ふっと窓の外を見るとどこから来たのだろう…
アルミは山を見つめていた。横では笑い過ぎたのか燐銘が噎せている。〈あの山のどこかにあるのか?父親の言った最後の言葉も気になる。まあなんとかして神崎を助けなければならない。どうしたら良いものか…えーいなんとかなる、ならなきゃ困る絶対にな…〉見ていた山の中腹辺りに一瞬光った物が見えた気がした。
しばらくすると森を抜け出していた。するとずっと黙っていたサザナが助手席から振り返り話し出した。
『間もなく空港に着きます。』そういうとまた前をむいた。すると前から白い車が迫って来た。その白い車は高級車で我が家に来た車ほど長くはなかった。そして我々の車の横を土埃をあげながら通り過ぎた。
言ってなかったがここはリゾート地で沢山の人が訪れている。と言ってもセレブな人が主である。島の一部にリゾートホテルがある。この島のほとんどの人が従業員である。〈そう言えばホテルの名前に【タートルマリナーズ】と言うホテルがあったな。何か関係があるのだろうか…〉ワゴン車は空港のターミナル前に止まった。ドアが開き下ろされターミナルへ連れて行かれた。そこで意外な事を言って来た。
『私達はここでお別れです。』サザナがそう言った。〈一緒に来るかと思ったのだが彼らの仕事はここまでなんだろう…〉そうしたら深々と頭を下げるとワゴン車の方へ歩いて行った。ワゴン車の前にたち再び振り返りぽそりと言った。
『3日後お待ちしております。』そう言うとワゴン車に乗り込んでいった。
>> 16
そのころ謎の男は慌ただしく動き回っていた。
『おい。そこは違うだろう。』もう1人の男に叫んでいる。
『でもこうした方がよろしいかと…』その男は丁寧に答えた。しばらく沈黙があり謎の男は言った。
『まあそれで良いか。しかしどうなるかな…』と言うと部屋を出て行った。屋敷の前には数台の車が止まっている。すべて高級車である。
一方アルミはジェット機の中にいた。こちらに乗って来たジェット機と同じうようだ。あの時の惨劇を思い出していた。だが何事も無かっように飛ぶ準備をしている。〈パイロット達はどうなっただろう…〉すると横に座っていた燐銘が話してきた。
『わかっていると思うけど、馬鹿な真似はしないでね。ところで貴方独身なの…』何を急にそんな事を聞いてくる。〈訳がわからん〉そう思いながらもつい頷いた。女は笑いながら言った。
『素直ね。そんなところ可愛いわ。』と言うとすっと立ち後ろの方へ歩いて行った。〈今なら逃げるチャンスもあるが、奴らは銃を持っている。やっぱり下手な真似は出来ないな…〉アナウンスが流れ出発を告げた。窓の外を見ると夕日がオレンジ色に空を染めていた。疲れていたのか、いつの間にか寝てしまった。どれぐらい経ったのか、窓の外は暗闇に包まれていた。〈まだ眠たい今どの辺りを飛んでいるのだろう〉と思いながらまた眠り落ちた。
『ア‥ミ‥ま…ルミ様』遠くで誰かが呼んでいる。ここはどこだ…俺はいったい…ここは森の中…何かが近づい来る。あれは犬…いや狼。その狼は白銀色に輝いていた。
>> 17
狼はしばらく見つめていたが後ろ向き付いて来いと言いたげに歩いて行く。その後を付いて行く。森は白い光に包まれていた。そこを抜けると目の前には山肌に大きな洞窟があった。その中に狼は入って行く。待てここはどこなんだ。お前いったい…と思った瞬間また遠くから声が聞こえてアルミは目を覚ました。目の前には燐銘が顔を覗き込んでいた。どうやら夢を見ていたのだった。これは小さな頃から良く見る夢である。いつも洞窟に入ると目が覚める。我が家に伝わる話のようでもあるが良くはわからない。窓の外を見るとジェット機はどうやら空港に着いたようである。
『アルバート様ここからは貴方には1人で行動してもらいますわ。ただこれを着けてもらいますけどね。』そう言うと腕にブレスレットのような発信機を着けられた。引っ張ってみたが取れそうに無いようだ。〈別にこんな物着けなくても逃げはしないのに神崎が人質になっているのだから…〉
『今からどうしたら良いのだ。あれもそう簡単には持って来れるかわからんしな。事情を説明してなんとか持っては来るが…』そう言いながらジェット機を降りて行った。ゲートを抜けて目の前には高級車が止まっている。そこまで来たら燐銘が話した。
『あと2日ですわ。それまでに連絡いただきたくてよ。よろしくて決して変な真似はしては困りますわよ。それではこの辺で、ご機嫌よう。』そう言うと近くにある車に乗り込んで行った。
>> 18
車に乗り込んだ、アルミは1人考えていた。そうそれは幼少の頃から見るあの夢の事を。何故あんな夢を見るのだろうか…父親から聞く前から見ていた。聞いた時はさすがに驚いた。しかしいつも洞窟に入った所で目が覚める。あの後どうなるのかは今だにわからない。何か伝えようとしているのだろうか。まあどっちにしてもわからないのだから仕方ない。
窓の外チラチラと朝日が見え始めていた。間もなく屋敷に着いた。車を降り屋敷に入って行く。そこには爺が出迎えに小走りで出てきた。
『お坊ちゃま。今日お帰りでしたか。お帰りは明後日ではなかったのでは。』爺は不思議そうに言ってきた。
『いや訳あって帰って来た。』そう言うと自分の部屋に向かった。部屋の扉を開けるとそこには父親が立っていた。
『父上何故ここに。』そう言うと自分の荷物を机の上に置いた。
『いやお前にあった事は知っている。』そう言うとソファーに腰掛けた。煙草に火を付けまた話し出した。
『我が家の家宝を狙う者は今まで何人もいた。ただ今回のように人質取られるは2回目だ。』どう言う事だ2回目って…それに何故神崎が人質になった事を知っているのだ。
『父上どう言う事ですか…2回目とは。それに何故ご存知で。』そう言うと身を乗り出した。父親は深く腰掛け直して話しだした。
『まあ仕方ないなまだお前は小さかったからな。』小さな頃俺の身に何があったんだ。そう思いながら話に耳を傾けた。
>> 19
『それはお前が4才だった頃。海で遊んでいた時私達もバーベキューの準備でお前の事を良く見ていなかった。気が付くと居なくなっていた。私達は無我夢中で探し続けた。結局日も沈み捜索が困難になった為ホテルに引き上げた。』引き続き話した。
『ホテルに帰ると手紙がドアに挟まっていた。慌てて手紙を開けて見ると【お前の息子を誘拐した。助けたければ、タートルダイヤを渡せ。連絡を待て】と書いてあった。それから1時間ほど経って犯人から連絡があった。お前を助ける為だ、家宝を持って指定された森の大きな木がある場所に行った。そこにはメモがあって【そこから北に歩いて崖まで行け】と書いてあった。』そう言うとまた煙草に火を付け話した。良く吸うなと思いつつ話しを聞いた。
『またそこにはメモが有り【そこから下に落とせ。確認次第子供を解放する。連絡を待て】と書いてあった。信じ難いがお前の為そこから投げた。ホテルに帰り連絡を待った。30分経って連絡があった。最初の大きな木の所に解放したとな。だがお前はそこにいなかった。何故ならお前はそこから1人で山にある洞窟に歩いて行っていて、そこで泣き疲れたのか寝ていたよ。何故そこに行ったかは良くわからない。』そう言うと立ち上がり窓に向かって行った。そこで外を眺めながら話した。
『だがなアルミお前に言ってはいない事がある。実は…』と言うと口ごもった。
『それはなんなんですか父上。』我慢しきれず叫んだ。
『まあそう慌てるな。ちゃんと話すから。』そう言いながらこちらを向いた。
>> 20
振り返った父親を見つめながらアルミは1つ疑問に思った。それはタートルダイヤが現に我が家にある事だ。何故かわからず父親が話す前に聞いた。
『でもおかしですよ。タートルダイヤは現に我が家にあるではないですか。どう言う事ですか。』それを聞いた父親は苦笑いをしながら言った。
『だから慌てるな今話す。それは我が家の家宝は2つあったのだ。その1つを渡したのだ。』驚く事を父親は言った。
『2つある…それはいったい…』まだ意味が把握出来ない。
『だから人の話を聞け。元々2つで1つになっていたのだ。2つのタートルがお互いお腹を付けた状態であった。しかしその事は我が家の者以外は誰も知らない。それを利用しただけだ。』そう言いながらまた外を見直した。
『前、お前に話した話を覚えているか。あの話の後に続く話がある。それは【2つが揃った時真実の扉が開かれる】だ。我が家は代々亡くなる間際に伝えるようになっている。そうする事によって我が家は安泰だった訳だ。他に漏らさない為の策だろう。』話疲れたのかソファーに腰掛けそこに置いてあったコーヒーを飲んだ。
『だからここにあるのだ。』意味がわかった。
『なら何故神崎が人質になった事をご存知なんですか。』もう1つの疑問を聞いた。
『それは神崎が連絡をくれたのだ。』何を言っているのだ。頭が混乱してきたぞ。
『彼はお前に付けたボディガードだ。こうなる事はわかっていたからな。前のようにならぬよう見晴らせていた。だが彼が人質になるとは思わなかったが。』少し笑いながら続きを話した。
>> 21
我々の部屋に爺が入って来た。コーヒーの代わりを持って来たようだ。目の前のカップにコーヒーをついで出て行く。2人共少し飲んで続きを話し出した。
『神崎は多分今頃抜け出しているだろう。』驚きはしたが話を聞いた。
『彼は元グリーンベレーだったからどんな事にも対応がきく。だから今はヤツの事を調べている頃だろう。』それを聞いてアルミは言った。
『だったらもう渡さなくて良いという事ですよね。』それを聞いて父親は首を横に振った。
『それがそう言う訳には行かなくなった。それはマーナが誘拐された。』父親は肩を落とした。マーナはアルミと一回り下に生まれた妹である。
『マーナが…。今はイギリスに留学しているはず。それが何故に。』と言いながらテーブルに両手を叩きつけ。
『お前が出た日に1本の電話があったそれはヤツからの電話だった。【マーナを誘拐した帰して欲しかったらダイヤを渡せ。わかったな兄さん】と言って電話は切れた。多分そこまで計算に入れていたのであろう。』と言うと深くうなだれた。
『兄さん…どういう事なんです父上。あの男の事ご存知なんですか。それにマーナが誘拐されるなんて…教えて下さい父上。』凄い剣幕でアルミは叫んだ。
『私には双子の弟がいる。しかし我が家は代々長男が後を継ぐ事になっている。だからお前も継承する事になる。だが我らは双子。同じ時に生まれ育って来た。しかし弟は私より少し生まれるのが遅かった事で色んな戒めを受けてきた。今回の事は私にたいしての仕返しなんだろう。』そう言うと背もたれに倒れこんだ。
>> 22
父親の言う事は全て驚きの事ばかりだ。まずは、神崎が俺のボディガードである事。その上元グリーンベレーだと言う事。それからマーナが誘拐された事。あと、謎の男が父親の双子の弟だったという事。驚かされる事ばかりだ。本当に現実なのか…夢であって欲しい。そう思っていると父親が口を開いた。
『お前も混乱しているだろう。まずは神崎の事を話そう。あれは私が商談でイギリスに行った時の話だ。私が商談が終わり帰ろうとした時数人の男達に囲まれどうする事も出来ない状態になっていた。狙いは我が家の家宝だ。何度か逃げようとしたがダメだった。ところがその男達の1人ガタンと倒れた。その後ろに立っていたのが神崎だった。瞬く間に男達を倒し、私を助けてくれた。それを期に何度か会うようになった。お互いの事を話、する事でどのような人物かがわかった。その後お前に代を譲った所でお前の全てを彼に託す事にした。信頼のおける男だよ。お前が小さかった時の過ちを繰り返したくなっかったしな。』今思うとたまにだが鋭い目をする時もあった。ただそれは俺のワガママに機嫌が悪いのかと思っていた。あれは何も起こらないようにと見張っていたのか…今頃あの島で謎の男の…いや俺の叔父さんの事を調べているのだろうか…。もしかしてマーナの居場所もわかっているのかもしれない。父親は顎を触りながら続きの話をし始めた。
>> 23
俺は叔父がいる事を今の今まで知らなかった。それが何故なのか父親の話でわかるはず。話を黙ってきいた。
『私達は双子として生まれ育った。しかし20歳になった時、父親が私だけを呼んだ。そして我が家の秘密を知る事になる。弟は知らない物だと思っていたがあの時聞いていただろう。それからだった思う。自分の事を呪い私達の事を怨んだ。そして我慢出来ず家を出て行った。それきり行方は分からなかった。しかし最近中国にいるらしい事がわかった。』そう言った父親は少し涙を浮かべているように見えた。
『大体の事はわかったよ。しかし何が目的なんだろうか。やはり手に入れて先祖の宝が目的なんだろうか。わかっておいでか父上は…。』そう問いかけると首を横に振った。現実わかる筈がない。
『お前が言う通りかも知れないが、私に対しての怨みをこういった形でしているのかもしれない。』目から流れた涙を拭っていた。
『もう1つ言っておきたい。それはお前が小さい時誘拐された時の事だ。』すぐに言い返した。
『それは先程言われたではないですか。』父親は答えた。
『あれが全てではない。確かに洞窟でお前は見つかった。だが何故そこに行ったのか分からなかった。その時お前の体には動物のような毛がついていた。それは犬の毛だった。もしかしたらお前は犬に助けられたのかもしれない。あの島は我が家に何か関係があるのかもしれない…。そしてその時の犯人が弟だっただという事だ。』アルミは驚いた。そして謎の男いや叔父と李燐銘が言って事を思い出していた。
>> 24
父親は立ち上がって自分の部屋に歩いて行った。しばらく経って箱を持って帰ってきた。その箱差し出し手渡した。
『さぁこれを持って行け、そしてマーナを助けてやってくれ。』そういうとアルミの肩を叩いて笑顔で頷いた。
『わかった。必ず助けだしてきます父上。』決意をして頷く。そしてあの島へと向かった。
その頃神崎はというと島にある屋敷の近くまで来ていた。最初に捕まって入れられた所は見張りが薄く簡単に抜け出していた。森の中向かっていて山肌にある洞窟を見つけ辺りを伺いながら入っていった。中は意外にも明るく良く見れば両側に松明があり誰かいるようだった。
『おいおいここはいったいどうなっているのだ。あれは…それにアイツは…』目の前の光景に驚いていた。後ろに気配が振り返るとそこには…
一方空港に向かっていたアルミは携帯をかけていた。
『もしもし俺だ。今から寄りたいのだが。うんうん、分かった。ならいつもの場所に来てくれ。あー分かった。じゃ後で。』そういうと携帯を切った。ヤツに会うのも久しぶりだな元気だろうか。さっきの声を聞けば元気なんだろうがな。待ち合わせ場所は昔から良く寄っていた【人に優しく】と言う喫茶店で、色々な人達が集まる。そこの店主はサツキと言い、息子のシュウトはわんぱく盛りだ。何故か俺が来ると足を蹴って逃げる。今だに何がしたいのか良くわからない。そして中に入るとウェイトレスのミユちゃんが出迎えてくれた。
『先程からお待ちかねですよ。あちらです。』手で示された方を見るとそこに1人の男が待っていた。
『よっアルミ』と言ったのはエドワードだった。
>> 25
『まあ座れよ。それにしても久しぶりだな。』2人は向かい合って座った。ミユが注文を取りに来た。
『いつもので良いか。じゃいつもの2つ。』とピースサインのように腕を突き出した。いつものとはコーヒーとトーストのセットである。注文を聞くと厨房の方へ歩いて行った。その影ではシュウトがこっちを伺っていた。また蹴りにくるのだろうか。まあそれより話だ。そして話そうとしたと同時にしゃべり出した。2人はお互いを見て笑い出した。そしてエドワードが話した。
『で話とはなんだ。たいした事じゃなきゃ呼んだりしないだろうけど。』と言いながら厨房の方をチラッとみた。腹減っていたのか。
『そうなんだ。実はマーナが誘拐された。』それを聞いてエドワードは驚き叫んでいた。
『誘拐。マーナが。何故に。』エドワードはかなり動揺している。
『まあ慌てるな。まだはっきりした事は分かってないのだが、。今から助けるためある島に行く。』そう話していたがアルミは話すのを止めた。ミユが*いつものを持ってやって来たのだ。2人の前に置くと軽く会釈をしてその場を去った。良く厨房を見るとシュウトがいない。どこに行ったのだろう。そんな事はどうでも良い。
『まずは食べようここのトーストは美味いからな。それにこのコーヒーは格別だ。』そう言ってトーストをほうばった。良く良く考えるとずっと何も食べていない。ひと通り食べやっと話し出した。
『多分マーナは大丈夫だ。近くに神崎がいる。なんとかしてくれるだろう。』エドワードは不思議そうな顔をしている。そりゃそうだ俺だって未だに信じらんない。だから父親から聞いた話を話す事にした。
>> 26
『ほぉーそう言う事か。なかなか複雑だな。しかし困ったもんだな。』愕然とする2人だが全てを聞いたエドワードは思っていた。本当にマーナは誘拐されたのだろうか。そう思って話した。
『なぁ本当に誘拐されているのか。俺はちょっと引っかかるな。』そう言うとアルミはわかっていたのかこう答えた。
『そうかお前もそう思うか。さっき神崎の事は言ったが、もし誘拐されていたら助けてくれるだろう。しかしそうでなければわざわざあの島に行く必要が無くなる。そこでお前に頼みたいのだ。マーナを見に行って欲しい。俺はご覧の通り見張られている。』腕に着いたブレスレットみたいな発信機を見せた。そしてお互い見つめ合い頷いた。そしてエドワードは言った。
『わかった。俺が見てきてやるぜ。大事なフィアンセだからな。もし誘拐されてなかったら連絡するぜ。』そう言ったエドワードは男らしかった。続いてアルミは話した。
『それともう一つ頼みたいのだ。それは叔父の事を調べて欲しいのだ。それによって何か手だてが見つかるかもしれない。』そう言うと残りのトーストをほうばった。しかしこれからどうなるのだろうか、神のみぞ知るってこの事だな。アルミは新たに決意を決めるのであった。
『じゃ頼んだぞ。連絡してくれ。』そう言うと伝票を取ってレジに向かった。痛い。出たシュウトが隙を伺って蹴りを入れて来た。サツキは申し訳なさそうに頭を下げている。
『その元気だ。お母さんを守るんだぞ。』アルミはシュウトの頭をぐしゃぐしゃっとした。
>> 27
シュウトはアルミを見上げ照れくさそうに笑った。その横でサツキは微笑んでいた。何故ここに来るようになったかと言うと、彼女の旦那はアルミの親友で8年前に脱サラしてこの店を開いた。オープンしてからここには良く来ている。彼は美味いコーヒーの事を調べる為今はブラジルの方に行っている。確かにここのコーヒーは美味い。シュウトは普段遊んでもらえない分こういう行動で示しているのかもしれない。
アルミは店を出てエドワードに手を上げた。こちらに向かってピースサインを出している。お返しにピースサインを返した。そして車に乗り込みまた携帯をかけた。そう燐銘にかけたのだ。
『もしもし俺だ。例の物を持ってきた。あっそうだ。今から空港に向かう。そうだな3時には着くと思う。わかった。3時半だな。』そう言うと携帯を切った。
しかしあのメール以来色々な事が起きる。何がなんだかわからなくなる。我が家の宝タートルダイヤを巡って人と人の争い。なんて醜い事なんだ。ヤツの欲しがっている物は地位なのか、宝なのか、それとも父親に対しての恨みなのかわからない。人間は自分の為ならなんでもしてしまう恐ろしい動物である。今更ながら自分を含めて嫌になる。またあの島に行く。本当にあの島に先祖が隠した宝があるのだろうか…。それはいったいなんだろうか…。結局そんな事を考える俺も嫌な人間だ。ただジッと空を見つめていた。待っていろお前の思うままにはさせないからな。そう決意した。
>> 28
空港の中にある待合室に1人アルミは座っていた。腕時計を見ると待ち合わせまであと5分ちょっとイライラしていた。すくっと立って喫煙所の所で煙草を吸い始めた。最近はどこに行っても禁煙ばかりだ。体に良く無いがついつい吸ってしまう。また腕時計を見た。そろそろ時間だ、待合室に戻ろうとすると胸に入れていた携帯が震えている。見るとエドワードからだった。
『もしもし俺だ。うん。何そうか、残念だが仕方ないな。わかった。それじゃ。』残念だがやはりマーナは誘拐されているようだった。しかしまだはっきりした訳ではない。引き続き調べてくれるから任せるしかない。しばらくすると2人の男を連れて燐銘が現れた。時間ぴったりだった。
『待たせたかしら。じゃ早速行きましょうか。』そういうと搭乗口に向かった。乗り込んだジェット機はまたあの島を目指し飛び立った。
『さて例の物を見せていただきますわ。こちらに渡してもらえるかしら。』そう言うとアルミは言い返した。
『お前達にこれを渡すのは、人質を解放してからだ。2人共な。』意味ありげに言った。すると笑いながら燐銘は言った。
『ご存知のようね。ても今は1人ですけどね。』一瞬驚きもしたがやはり神崎は抜け出したのだ。そして冷静に話を聞いた。
『貴方の秘書の神崎だったかしらあの人いつの間にか居なくなったのよ。なんなのあの方は…まあもう1人いるから別によろしくてよ。』その話を聞いてアルミは言い返した。
『お前らの好きにはさせない‥ぞ…』意識が遠のいて行く。また後頭部を殴られたようだ。アルミは意識を失った。
>> 29
『ううう…』後頭部が痛む。すると声が聞こえて来た。
『あら、お目覚めかしら。もう少しで着きますわ。』その声は燐銘の声だ。どれぐらい経ったのだろうか。窓の外にはナインアイランドが見えていた。空港に着いたジェット機は搭乗口に寄りそしてアルミ達は降りて行く。
『何している。何故止まる。』不意に立ち止まりこちらを向く燐銘は言った。
『貴方はもう必要ないわよ。ここまで結構よ。ふふっ』何を言っているのだ。俺は我が家の宝…無い。しまった気絶している隙に取られている。
『おい。汚いぞお前ら。宝はどうした。そんな事より人質は無事なんだろうな。マーナは本当に無事なんだろうな。』すぐに返事があった。
『そんなに興奮しなくてよろしくてよ。時間を見てちゃんと解放しますわ。アルミ様が何もしなければね。』約束は守ってくれるようだ。
『そんな事はわかっている。何もしない。だからマーナが無事か教えてくれ。』そう言うと燐銘は携帯を掛け誰かと言うか、俺の叔父にだろうが。そして携帯の画面をこちらに向けた。するとそこにはマーナが映っていた。
『マーナ…。おいマーナ。俺だお兄ちゃんだ。聞こえているか。』そう言うとマーナはピクリと動いた。目隠しをされていて俺の声に気付いて動いたのだ。エドワードには調べて貰っていたが、やはりマーナは捕らえられていた。
『お兄ちゃん。助けてよ。マーナ怖いよ。』悲痛の叫びが聞こえていた。すると画面が動いてそこに映ったのは父親…。いや違うそれはコイツらのボスで俺の叔父だ。本当にソックリである。そして話し出した。
『久しぶりだなアルミ。そう言ってもお前は覚えていないだろうがな。』不適に笑った。
>> 30
そう小さな頃俺は誘拐されたらしい。そう言えばたまに見る夢はその時の記憶なのかもしれない。あの白銀の狼はなんなんだろう。そう言えば俺の体に狼の毛がついていたって事はその時の記憶なのかもしれない。
『もう知っているかもしれないがお前を誘拐しアルバート家の宝を頂いたのは私だ。今回は単なるきっかけに過ぎない。』不適に笑う。
『だがあれ以来不可思議な事があった。それは夢の中で狼が出てきて私に話した。【我は2つで1つ真実は1つではわからない】と言う夢をなんども見た。それが気になり我が家の謎解きをしてきた。それで今回事を実行する事にした。お前にはここまで言っておく。またいつか会おう。それでは。』そう言うと携帯は切れた。燐銘は携帯を取り上げ言った。
『まあそういう事だから宜しくて。貴方はここまでですわ。』そう言うとワゴン車に乗り込みこちらに向かってウィンクをした。ワゴン車はそこから立ち去った。
1人残され途方に暮れた。どうしたら良いのだ。このままジッとしていても仕方ない。ヤツの屋敷に向かうか。歩き出した時後ろから声がした。
『アルバート様。お待ち下さい。』その声に振り返るとそれは神崎であった。少し息切れしている。多分ここまで走って来たのだろう。
『神崎、大丈夫だったのか。』そう言うと神崎はコクリと頭を下げた。
『アルバート様。私の事はもうお分かりと思いますがその事は後で話します。取り敢えず私と一緒に来て下さい。』改めて神崎を見ると今まで気が付かなかったがしっかりした体格と目つきをしている。さすが元グリーンベレーである。神崎の言うがままについて行った。
>> 31
神崎の後をついて行きながら話をした。
『神崎無事に出れたのだな。良かった。一時はどうなるか不安で焦ったよ。父親に君の事を聞いて安心したけど。それにしてもビックリだよ。君が俺のボディガードだったとは。しかし何故ジェット機でジャックされた時何もしなかったのだ。と言うより何故やられたのだ。』不思議に思っていた事を言ってみた。
『アルバート様。いやアルミ今からは対等に話させてもらうよ。今は移動中だもう少ししたら着くそこで話そう。こっちだ。』そうすると目の前に少し古びた小屋が見えてきた。南国風の小屋でゆっくりしたくなる。神崎はその小屋の扉を開け手招きをした。そして中に入って行った。その中は思ったより広く真ん中にテーブルがあり椅子が2つあった。
『まあそこに座ってくれ。コーヒーで良いか。』その答えに頭を下げた。神崎はコンロに火をつけ、煙草を近づけ火をつけた。そしてヤカンを置いた。煙草の煙りをフーと吐きながら話し出した。
『あの時俺は秘書の神崎になっていて普段の周りへのアンテナが途切れていた。気がついたらあの様よ。しかし元々こうなる事はわかっていたから後はワザと弱い振りしたんだけどな。そうやって相手を油断させるってワケさ。敵を欺くには味方からってね。』ヤカンが沸いた。それを持ちコーヒーカップに注ぐ。それを持ってテーブルに来た。カップを置き椅子に腰掛けた。
『まあ飲みながら話そう。砂糖はいらないんだよな。俺は甘いのが好きでいっぱい入れるが、ブラックは苦くないのか。』笑いながら砂糖をカップにたっぷり入れている。俺からすれば逆に甘すぎないのかって思う。
>> 32
まあここでわかった事は神崎が甘党である事だ。コーヒーを飲んでいると神崎が真面目な顔になり話しを始めた。
『ここで色々と調べ回った。』今まであった事を話してくれた。
『まず捕らわれていた場所なんだがヤツ…いやお前の叔父さんの屋敷近くにあるもう1つの屋敷に連れて行かれた。そこの地下にある部屋に閉じ込められていた。そこは昔のワイン倉庫だと思う。ワインがまだいっぱい並んでいた。そこはたいして抜け出すのに時間は掛からなかったよ。しかしカメラで監視されている事に気がついた。だから芝居をしていた。我ながら上手く出来たと思ったぜ。』自慢げにこっちを見てニヤリと笑った。確かに俺自身も完全に騙されていた。
『カメラにパターンがありそれを利用して扉をこじ開け脱出したのだが、おかしいのだ…』話しをいったんやめアルミを見る。
『見張りが全くいないのだ。難なく外にでた。もしやこれは全てヤツの計算の内でこうなっても良いように、次の手だてがあるとすぐに気が付いた。そこで連絡を取ってわかったのだがマーナが誘拐されたいた。』唇をグッと噛み締めた。
『そこで俺はまず近くにある街に向かった。しかし途中で道がわからなくなりさ迷っていた。油断してしまったのか足を滑らせ転がり落ち気を失って気が付くと俺はここに…』と言いかけると不意に扉がガチャと空きそこに現れたのは1人の少女と犬と言うより狼であった。神崎は手招きをすると中につかつか入って来た。狼は見た目より大人しくアルミに近寄り体を擦り寄せた。この感じ…どこかで…アルミは思いを巡らした。
>> 33
その少女は色黒で南国に住んでいる子供らしく目はクルッとしてなんとも可愛いらしい。しかしこの子供は誰なんだ。すると神崎が口を開いた。
『アルミこの子は怪我をした俺を助けてくれたのだ。ただ彼女は口が利けない。名前は【クルミ】だ。』不思議に思った。話しが出来ないのにどうやって聞いたのだろう。そう思っていたがとりあえず神崎の話を聞く事にした。すぐ答えはわかった。
『さっきの続きだが、この子が俺を見つけ人を呼び助けてくれたのだ。』なるほどそれでその人達に聞いたのか…。この子は1人でイヤ狼と一緒に住んでいるのだろうか…。親はどうしたのだろうか…。その答えもすぐにわかった。
『この子の両親は2年前漁に出て船の事故で亡くなっている。今は周りの人に助けて貰いながら1人でここに住んでいる。』可哀想な事だ。こんな年端もいかない子供が1人で生きているなんて…。少し涙ぐんだ。
『この子の事はこれぐらいにして続きだが、怪我もたいした事無かったから俺は街の人に叔父さんの事を聞いて回った。それでわかったのは彼等の組織はかなりの力があるのだ。裏社会では有名な組織【ブラックシャーク】だったのだ。そのボスがお前の叔父さんだ。名前を【ホイル】と言う。』一度聞いた事があった。彼等は己の利益の為には手段を選ばない。世界中の人々から恐れられていた。そのボスが叔父だとは…。そして初めてわかった叔父の全てだった。
『それから何故この島に彼等が居るかって事だが、そうこの島こそ彼等のアジトだったのだ。そしてこの近くに遺跡らしき洞窟があるのだが…』と言うと話を止めるようにクルミが神崎に近づいて何かいいたげに服の裾を引っ張った。
>> 34
クルミはアルミを指差した。彼女は何かを伝えたいのだろう。すると手話をし始めだした。それを見てアルミは言いたい事がわかった。意外にも福祉に興味があり手話の勉強をしていたのだ。そしてそれは俺がしているペンダントを見て《それをどうして持っている》と言っているようだ。そう俺はこのペンダントをずっとはめている。10才の頃病弱だった母親からもらったものだ。母親は亡くなる前に俺を呼びこう言った。
『アルミこれを付けなさい。これは貴方を守ってくれるわ。ママはもしかしたら居なくなっちゃうかもしれない。男の子だから泣いたりしたらダメよ。強くなくっちゃ。それをママだと思って強く生きるのよ。それは将来必ず必要になるはず。貴方が持っているべきなの。困った時それを思い出して。』意味ありげな言葉を残した、その3日後母親は亡くなった。それから肌身離さず付けていた。シルバーで出来た狼のペンダントだ。目はグリーンの宝石、多分タートルダイヤだろう。思いに更けているとクルミがまた手話をしてこう言っている。《その形をこの島で見た。私に付いて来て》そう言っている。アルミは付いて行く事にした。
『神崎、クルミがこのペンダントの事で何か分かっているようだ。今からそこに行くようだ。一緒に来てくれ。』そう言うと神崎はコクリと頭を下げ話をした。
『アルミそれはこの島にある洞窟に連れて行ってくれるつもりだと思う。』さっき言いかけていた事だったのだろう。言う前から分かっていたのだな。それなら話は早いすぐに向かう事にした。一同は森の奥にある洞窟へと向かった。
>> 35
洞窟を目指して歩く3人+1匹は森の中にいた。そこで神崎は話の続きでマーナの事を話してきた。
『アルミ。マーナの事だが、彼女は今最初に君が連れていかれた屋敷にいると思う。街の人に聞き込みしている時、そこに連れていかれるマーナの姿を見た者がいた。今は屋敷の中の事を調べていたがかなり警備が厳重みたいだ。しかし俺に任してくれ必ず助け出してやるから。』何か心強い言葉に安心した。マーナ待っていろよ。そう誓いながら洞窟を目指して歩いて行く。だが気になるのはそこにいる狼だ。なぜ警戒する事なく俺に体を擦り寄せてきた。チラッと見ると向こうもこちらをチラッと見返してきた。良く見るとどこかで会った気がする。もしかしたら夢に出てきた狼…。いやいやあれは幼少の頃記憶が残っている物…。もし現実の記憶であるなら何十年も前の話だ。ふっ…少しおかしくなったか…そんな事はないな。まぁとにかく今目指している洞窟で何かがわかるかもしれない。そう思いながら森の中を歩いて行く。
『アルミそろそろだ。気をつけろ。もしかしたらヤツらも来ているかもしれないからな。』辺りを警戒しながら洞窟の入り口近くまでやって来た。すると狼は我々の横をスッと通り過ぎ洞窟の中に入っていた。
『おい、待て。』アルミは呼び止めたが無視するかのように姿が見えなくなった。慌てて走り出そうしたアルミの肩を神崎が引き止めた。振り返ると神崎はこう言った。
『おいあそこを見ろ。ヤツらだ。見つかったら元も子もない。しばらく様子を見よう。』そう見つかったら意味が無い。目の前をヤツらは通り過ぎ洞窟の中に入って行った。するとクルミがアルミの体を叩きに手話をし始めた。
>> 36
クルミが言うには《この洞窟の別の入り口を知っている》と言っている。
『ならそこに案内してくれ。それならヤツらにも気がつかれないで済む。神崎行ってみよう。』そう言うとクルミに案内してもらった。そこは洞窟のある山の上の方にあり3人は山道を登り始めた。だが先に入って行った狼はどうしたのだろう。見つかったとしてもヤツらは無視するだろうが…。するとクルミが指を差した方向に人1人が入れる穴があった。
『あそこか。よし入ってみよう。』そう言って入ろうとするとまたも神崎が止めた。
『早まるな。俺が先に見てくる。それまでここで待っていろ。』さすがは元グリーンベレー身のこなしは凄い。あっという間に穴の中に入って行った。しかし入ってからかなり経つがまだ出て来ない。そうしているとクルミが手話で話してきた。
《貴方は何者なの。昔おじいちゃんが言っていたの。狼のペンダントした者が必ず現れるはずだからここに連れて来なさいって》驚いた。俺が来る事がわかっていたのか…。しかし不思議な事ばかりだ。そしてまた続きを話した。
《その者はここに関係ある者だ。私達の先祖から言われている事だから、良くわからないがちゃんとするように言われた》俺の先祖とやっぱり関係があるのかもしれない。突然後ろから呼ばれた。振り返ると神崎が穴から顔出し手招きをしている。近くに寄ると神崎が話してきた。
『残念だがこの穴から行くとかなり高い所に出てしまう。この子がいると足手まといになると思う。一度戻ろう。』穴から出た神崎は山道を降りて行く。それに続きアルミ達も降りて行った。すると物陰からバッと何かが現れた。良く見るとクルミの狼だった。いつの間にか洞窟から出て来たのだ。待てよ。まだ他に入り口があるのか…。いやまずこの子を家に帰してからもう一度来た方が良いな。
>> 37
小屋に帰りアルミ達はとりあえず食事をする事にした。出てきた食事はピラフのようなご飯と魚介類の焼き物だ。それをとりながら神崎に中の様子を聞いた。
『中には5人ほどいる。そして洞窟の奥に双頭の狼が彫り込まれていた岩があった。ヤツらはそこを見張り調べているようだった。』聞いていたアルミは言った。
『もしかしてやはりあそこに我が家の先祖が隠したと言われた宝があるのかもしれない。それなら今奪われた2つの宝を取り返すよりマーナを助け出すのが先だと思うのだが、どう思う神崎。』そう問うと答えた。
『俺もその方が良いと考えていたよ。しかしどうあの屋敷に忍び込むかだな。1人で忍び込むならなんとかなると思う。俺が先に行ってまず調べて来る。その間アルミ、君には準備してもらいたい。』そう言うと1つのメモを渡してこう言った。
『これを持って街にある飲み屋に行け。そこのマスターで【ダン】にこのメモを渡したら俺が頼んだ物をくれるはずだ。それと君の叔父の事を教えてくれるはずだ。とにかく行って見てくれ。』食事が終わり奥でクルミが食器を洗っている。それを見ながら煙草を吸っていた。足元を見ると狼が眠っている。そういえばコイツの名前知らなかったな。クルミに近づき教えてくれるよう聞いてみた。《名前はね。【アギト】って言うの。貴方が好きみたいね。》アルミは頭を掻きながら苦笑いした。すると横にいた神崎はすくっと立って話した。
『今から屋敷に行って来る。アルミは品物を手に入れたら連絡くれ。そして屋敷近くまで来てくれ。わかったな。』アルミは頷いた。
『じゃ、頼んだぞ。』そう言って神崎は出て行った。
>> 38
アルミは街にある飲み屋に向かう事にした。小屋を出て街に向かおうと歩いていると足元に何かいるような気がした。下を見るとアギトがついてきていた。立ち止まり座りアギトに言った。
『お前は来なくて良いのだぞ。クルミはどうしたんだ…。』と横を見るとそこにはクルミがいた。
『おいおい何故お前達ついてきた…。今から何があるかわからないのだぞ。家に帰れ。』アルミは強めに言った。するとクルミは言い返してきた。
《だって家に居ても暇だし私が居たら早く見つかるでしょう》まあ言う通りだが、小さな子を危険な目に合わす訳にはいかない。アルミは説得するがまったく聞いてくれない。
『仕方ない。ついてきても良いが危ないと感じたら逃げるのだぞ。』クルミは嬉しそうに頷いた。アギトは俺らの周りをグルグルと回っている。クルミの気持ちがわかるのだろうか。何か嬉しそうに回っている。
そして一同は街に向かった。街と言うより村みたいだ。クルミは分かっているのだろう迷わずその奥にある、その飲み屋に向かって行った。そこは扉に〔close〕と札が掛かっていた。その扉をグッと押してみた。すると扉は開いた。中は昼間もあり誰もいない。
『すみません。誰かいませんか…。すみません…。』と呼ぶと奥から声がした。
『まだやって無いよ。夜になったら来てくれ…。』ぶっきらぼうに言った。その男は白髪の混じっていて年の頃は50代だろう。上目でアルミ達を見ると話出した。
『もしかして神崎の知り合いかい…。』と聞いて来たので頷いた。その男はクルミを見てニッコリ笑った。クルミもニッコリ笑い手を振った。その男はカウンターから出て来て餌の入った皿をおいた。アギトはそれに駆け寄り食べた。
>> 39
その男はクルミ達と顔見知りのようだ。神崎の前の話を思い出した。彼女は街の人達に助けられながら生きていたのだ。だから知っていて当たり前なんだな。
『アギト今日も良く食べるな。何も食べてないのか…。おちびちゃんは食べたのか…。』そう言われると頷いた。アギトもさっき食べたのだが足りなかったのか…。食い意地が張ったヤツだ。そうだこの男は俺が探している男なんだろうか…。聞いて見る事にした。
『もしかして貴方がダンなのか…。』と聞くと、男は立ち上がり答えた。
『いかにも私がダンだよ。』アルミはメモを見せた。
『おーやはり君が神崎の言っていたアルミ君だな。品物は奥にある。こっちに来てくれ。』冷蔵庫から取り出したジュースをカウンターに置きながら言った。
『おちびちゃんはここで待っていろな。』とピースサインをした。クルミはニッコリ笑った。アギトは食べ終わったのか満足そうな顔している。奥には部屋があり中にはガラクタのような物が置いてある。その中にカバンケースのような物がある。ダンはそれを取りアルミの前に置いた。するとケースを開けて中身を見せた。中身は銃やナイフなどが色々入っていた。確認が済むとケースを閉じた。
『これが頼まれてた物だ。他に何かあるか…。』と言われアルミはクルミの事を聞いてみる事にした。
『あの子は何故話せないのだ…。貴方ならご存知では…。』そう言うとダンは悲しそうな顔して話してくれた。
『あれは2年ぐらい前になるのだが…。あの子家族は仲がとても良くてな。いつも一緒に漁に出かけていた。その日も両親と一緒に沖に漁に出た。そこで急な嵐に巻き込まれ船が沈んでしまった。』と言うと新聞を取り出しアルミに見せた。
>> 40
そこには事故の一部始終が書いてあった。写真には転覆した船が写っていた。その記事に1人の少女が助かり意識不明で重体であるが、一緒に乗っていた両親は今だ発見されていないと書いてあった。
『この記事の通り両親が行方不明だ。それであの子はその事実知りそれ以来声が出なくなっているのだよ。可哀想だが仕方ない事だ。医者はショックにより一時的に出ないだけだと言っていた。』それであの子は声が出なくなっているのか。でも寂しさ1つも出さずあの笑顔。見習わないといけないな。
『お前たちは今から何をするつもりなんだ。まさかホイルの屋敷に行くつもりなら言わん事はない関わらない方が良い。アイツを相手にしてもろくな事にならん。』意味ありげにダンは言った。
『何があったかは知らないが俺はヤツの所に行かないといけない。そして全てを取り戻さないといけないのだ。忠告はありがたく受け取っておくよ。』真剣な顔で言っているアルミを見てダンは仕方なさそうな顔して銃を向けてきた。
『な‥何をする気だ。』突然の事に驚く。ダンは笑いながら銃をクルリと回してアルミの前に出した。
『こんな事もあるって事さ。この銃は俺からのプレゼントさ。』銃を受け取りそれを懐にしまい手を差し出した。それに答えダンも手を差し出して堅く握手をした。その部屋を出てカウンターで待っているクルミを見ると眠っていた。起こすの可哀想だが…起こそうとしたその時、店の扉がバンと開いた。
『スマンここにアルミは…。おおアルミ居たか良かった。』そう言って入って来たのはエドワードだった。かなり走ったのだろう凄い汗だ。
『何故お前がここに…。』驚いた何故かここにエドワードがいる。どうしたんだろうと思うアルミであった。
>> 41
エドワードは走って来たのか汗だくだくだ。
『すまん水をいっぱい貰えないか…。』手を差し出すような格好で言った。ダンから貰った水を一気に飲み干し落ち着いたのかアルミを見て話し出した。
『良かったまだここに居てくれて…。マーナはやはり誘拐されていたみたいだな…。』と言いながら近くにあった椅子に腰掛けた。
『あぁそうなんだよ。マーナは捕まっているのだよ。しかし今神崎が調べている。なんとか助けださければいけないが…。』言葉を詰まらせた。
『そうか…。難しいかもしれないな…。何故なら彼らは泣く子も黙るブラックシャークなんだよ。彼らに常識は通用しない。』エドワードはうなだれながら言った。
『その事は神崎から聞いた。だが彼らは解放する事は約束してくれた。だから待つ事も考えたのだが…。』アルミは壁を軽く殴った。
『甘いなその考えは…。奴らはそう言っても闇社会の人間だ。平気で人を殺せるのだ。ここはやはり助けに行くしかないと思う…。』そう言うと拳をグッと握った。
『俺もそう思う。今からヤツの屋敷に向かう。一緒に来てくれるか…エドワード。』問い掛けるとエドワードは立ち上がり頷いた。
『それはそうと何故ここまで来たのだ…。』言われてエドワードはハッとした顔をした。
『すっかり忘れていた。君に言いたい事があってここまで来たのだった…。』そう言うとまた椅子に座り話し出した。
『実はマーナを誘拐した男なのだが…。』そんな事は知っている。今更教えて貰ってもと思い口を挟んだ。
『その事なら知っている。俺の叔父なんだろう…。』と言うと意外にもエドワードは頭を横に振った。
『えっどう言う事だ。違うと言うのか…。』エドワードは真実について語り始めた。
>> 42
いったい何があったと言うのか…。皆目見当がつかない。エドワードは話し出した。
『実はブラックシャークを調べていたらおかしな話を聞いた。』そう言いながらコップをダンに渡し、水をもう一杯と指で示した。
『おかしな話とはなんだ…。』貰った水をゴクッと飲んだ。
『ブラックシャークを作ったのは確かに君の叔父さんらしいのだが…。しばらく内部の抗争があったみたいでかなり荒れていたらしいのだ。2番目に権力を持っていたナスダックと言う男と君の叔父さんは争っていたらしい。ナスダックは非道な男で周りからは恐れられていた。その点君の叔父のホイルは人に対して優しく誰からも信用されていた。それもありナスダックは争いに負け居なくなったと言うのだが…。それからなのだが叔父さんは人が変わったように残忍になったと言うのだ。』そう言うとまた水を飲んだ。
『だが何故そうなったかがわからなかった。それで憶測が飛び回った。それはホイルはナスダックに殺され成り変わられたのではないかと言われているのだ。前組織にいた男から聞いた話だ。』そう話すとホッとしたのか椅子にもたれかかった。
『そんな事ってあるのか…。』驚いたアルミは壁にもたれた。
『単なる憶測だからなんとも言えないがあの変わりようは異常であると思うと組織の人間は皆言っていたそうだ。それにナスダックの右腕だったサザナが今はホイルの元で仕えている。それこそ証拠ではないかとも言っていた。』立ち上がりながらアルミはエドワードに近づき言った。
『どちらにしてもホイルの屋敷に行くしかない。一緒に来てくれエドワード。』そう言うと入り口に向かった。また足元を見るとアギトがついてきていた。
>> 43
やはりクルミもいつの間にかついてきていてアルミの服を掴んだ。
『おいお前達は来るな。』そう言ったがクルミは掴んだ手を離さない。
『仕方ないじゃないか、この子達も役にたちたいと思っているのだよ。』ダンはそう言った。
『でも…あまりに危険すぎる。相手は闇社会のブラックシャークだ。子供でも容赦ないかもしれない。命の保証がない。』そう言うとクルミは手話で答えた。
《なら屋敷の近くまで案内だけでもさせて。近道知っているから》クルミはニッコリ笑った。
『…仕方ないな。じゃ案内だけ頼むよ。本当に危険になると思うから気を付けろ。アギトはクルミを守れよ。』そう言ってしゃがみ込んでアギトの頭を撫でた。
『さあ行くぞ。目指すはホイルの屋敷。』森の先にある屋敷を目指した。クルミはこの島に住んで居るだけある。森の中を抜けて山の方へ歩きそして屋敷の近くまでやって来た。確かにこうやって来れば誰にも気付かれないで来れる。するとアギトが屋敷の壁に向かって走り出した。
『おい…。アギトどこに行くのだ…。』言いかけるとクルミが服を引っ張った。
《大丈夫だよ。アギトは屋敷にある壁の穴に行ったのよ》確かに良く見ると壁の所に穴が開いていた。
《前、神崎のおじちゃんに教えた場所だよ》そう手話しているクルミに近づき頭を撫でた。
『クルミありがとう。おかげで助かったよ。後は俺達だけでやるからお前達は帰れ。』言いかけるとエドワードがアルミの肩叩いて壁の方を指差した。
『あれ神崎さんじゃないのか…。』穴から顔を出して来たのはやはり神崎だった。
『おお良かった。ここに来ていたか…。手間が省けた。そっちで話そう。』アルミ達は少し奥にある森の方へ歩き出した。
>> 44
森の少し入った所に何人か座れそうな場所があった。皆でそこに座り込み神崎の話を聞いた。
『マーナの居場所はわかったのか…』アルミ達は神崎に聞いた。
『ああわかったよ。マーナはこの屋敷の地下室に閉じ込められている。屋敷に雇われているコック見習いに少し掴ませたら教えてくれた。チョロかったぜ。』得意げに神崎は言った。
『それで助け出されそうなのか…。警備が固いのでは無いのか…。』悔しそうにアルミが言う。
『その事なら任してくれ。それも手を打ってある。まもなく屋敷に食材の業者が来る。そいつに成り変わり屋敷に侵入するのだ。』神崎は元グリーンベレーだけある。
『流石だな。そこまで手を打っているとは思っていなかった。どうやって入れ替わるのだ…。』ニヤリと笑って神崎は手を差し出した。
『アルミそのケースを俺に渡せ。』ケースを渡すとケースを開け中から銃を取り出した。
『これがあれば何とかなるさ。そうだろうアルミ。』そう言われてもどう返事したら良いのかわからなかった。
『わかった。その事は神崎に任した。後はお前の考えでやってくれ。俺達はどうしたら良いのだ…。』銃を懐にしまい考えを説明しだした。
『まずはその業者は森の道を通って来るからまずはアルミお前が道で倒れていろ。必ず彼らは車を止めてお前を助けようとするはずだ。そこで俺が忍び寄り車を奪う。後は業者になりすまして屋敷に入る。』そう言われてアルミは言った。
『その倒れているのは俺でなければならないのか…。』そう言いながらエドワードをチラッと見た。エドワードは顔の前で手を振った。そして背を向けた。よほど嫌だったのだろう。
『ただ単にお前に言った訳では無い。アルミお前はこの島の人に似ている。だから頼むのだ。』その言葉に驚きを感じた。
>> 45
『俺がこの島の人と似ているなんて…。お前達もそう思うか…。』とエドワードとクルミに聞いた。
『確かに俺もそう思うな。』エドワードが答えクルミを見るとコクリと頷いた。
『そう思うのか…。』アルミは思った。〈この島と俺やはりどこかで繋がっているのだろうか…まさかな…もしかしたら先祖がここで身を隠して暮らしたとしたら…俺がここの人達と似ていてもおかしくは無い…いずれわかるかもしれない…〉
『わかった。その役は俺がやる。どれぐらいで来るのかわかっているのか…。』神崎に聞いた。腕時計を見ながら言った。
『後10分ぐらいで来るはずだ。急いで準備しよう。』その言葉を聞き皆で道の見える所まで移動した。するとエドワードがこう言った。
『俺がこの先のカーブの所に行き、来たら合図する。それならいつまでも倒れていなくて良いだろうアルミ。』笑いながら言ったがナイスアイデアであると思った。
『それならこれを持って行け。』神崎は物を投げた。それは無線機だった。
『こんな事もあるとダンに頼んでいたのだ。すぐに役にたつとはな。』高笑いした。エドワードはグッと無線機を持ちその場所に向かった。アルミはクルミをどうしたら良いか考えていた。クルミを見ると…。
《私達はここで待っているはアルミは気にしないで》とクルミは手話をしてきた。〈有り難い話だがこの子1人で置いて大丈夫だろうか…〉するとアギトが近づいて来た。まるで任せておけと言わんばかりだ。
『じゃクルミはそうしてくれ俺達が屋敷に入ったらダンの所に行くのだぞ。アギト、クルミの事はお前に任した。』そう言うとクルミは頷いた。早速道の近くの茂みに隠れた。後はエドワードの連絡を待つだけだ。しばらく息を潜め待っていた。するとエドワードからの無線連絡があった。
>> 46
エドワードからの無線が鳴った。
『おい。アルミ来たぞ。そっちに向かったぞ。』凄い勢いで話してきた。
『わかった。今から倒れておくよ。』少し笑いながら言い返した。
『じゃ俺をそちらに戻る。気を付けろよ。』エドワードの言葉は優しかった。
『神崎後は頼んだ。よろしくな。』アルミは最初の作戦の通り道に寝転んだ。すると何故かアギトがアルミの側に来てグルグルと回り始めた。しばらくすると業者のトラックが近づいて来た。倒れているアルミに気が付いて止まったに見えたが止まったのはアギトがトラックに向かって吠えていたからだった。
運転席から業者が降りて来た。アギトが飛びかからんばかりに吠えている。それを追い払うように業者はしていた。すると助手席のもう1人が降りて来た。油断しているのを確認したのか、茂みに隠れていた神崎が飛び出した。業者に走り寄り一撃を食らわした。業者達は人形のようにバタバタと倒れた。その光景を横目で見ていた。
『よしやったぞ。アルミいつまで倒れている…。こいつらの服に着替えるぞ。』そう言うと神崎は茂みに2人を引きずって行った。そこで業者の服を脱がし用意したロープで縛った。神崎とアルミはその服に着替えた。そこで神崎は思い出したように笑った。
『アルミよ。お前結局倒れた意味無かったな。』自分でもそう思っていたのか同じように笑った。そんな中エドワードが戻ってきた。何故2人が笑っているのか分からず不思議な顔をしていた。
『どうしたんだ…。何笑っているのだ…。』まだ笑っている2人を見て少し怒った。
『笑って無いでちゃんと言えよ。』やっとのことで笑いをこらえながらさっきの経緯を話すと今度はエドワードが大笑いした。それにつられ皆で爆笑した。
>> 47
笑っている場合ではなかった。お互い見合わせてハッとした。
『さあ行こうか。エドワード悪いが残ってくれないか…。』エドワード驚きながら言い返してきた。
『何言っている、俺も一緒に連れて行ってくれ。マーナを助けたいのだ。なあアルミ頼む俺も連れて行ってくれ。』しがみつくようにアルミを掴む。
『その気持ちは分かるがエドワードにはクルミ達を守って欲しい。マーナは俺達に任してくれないか…。』アルミの言葉にエドワードはしばらく考え答えた。
『わかった。マーナはお前に任す。クルミ達は俺に任せておけ。』その言葉は有り難かった。ヤツらが危険なのは分かっている事、彼らを危険にさらしたく無かったのだ。
『取り敢えずダンの所に連れて行ってくれ。それからもし俺達に何かあったらオヤジに知らせてくれ…。そんな事が無いようにするけど…。まったく未知の所だ。何があるか分からないからな。』それを聞いてエドワードはアルミの肩を叩きながら言った。
『お前が言うようにするよ。だがこの子達を送った後この辺りに来ているから何かあれば連絡して来い。分かったな。』無線機を見せるとガッツポーズをした。それを見てガッツポーズを返した。そして俺達はトラックに乗り込み屋敷に向けて出発した。バックミラーにエドワード達が手を振っているのが見えた。窓から手を出して手を振って返した。
『神崎上手くいくかな…。』自信が無いから聞いてみた。
『アルミ今からそれじゃ思いやられるな。大丈夫だ、俺が付いている心配するな。それに次の手は打ってあるから。』神崎の言葉に勇気づいた。改めて決意した。絶対にマーナを助け家宝を取り返す。トラックは門を抜け屋敷の裏手にある業者専用の入り口前に着いた。
>> 48
入り口に着いた俺達は車を降りチャイムを鳴らした。意外と警備は薄いようだ。俺は帽子を深く被り顔を見られないよう隠した。出て来たのは女だった。神崎はその女としばらく話している。すると神崎が手招きをして俺を呼んだ。
『アルミこの人がさっき言っていた情報をくれたミッキーだ。』見た感じ普通に見えた。てっきり男が出てくると思っていただけに少し驚いた。
『よろしく。』アルミは手を差し出した。
『ヨロシクッ。』親指と小指をピンと立て手首を左右に回しアルミの手に軽くコンコンと叩いた。まるでDJのようなノリで少しテンションが高い。
『こっちだ入りな。他の奴らは何も知らないから大丈夫だよ。怪しまれないようにしてくれよ。荷物はこっちだ。』一応業者のふりをしなくてはいけないから荷物を持ったが、これがなかなか重たい。少しふらつくとそれを見て神崎があきれている。
『おい大丈夫か…。』そう言われて弱音は吐けぬ。
『ああ大丈夫だ。』自分で無理しているのがわかる。神崎に笑われたくないから今は平気な顔をして荷物を運んだ。20代の頃はジム通いで鍛えていたのだが最近はサボり気味だったから体力落ちたかもしれない。
屋敷の裏口から入るとそこは調理場になっており数人のコックが料理を作っている。そこからまた先に進むと倉庫になっていた。そこに荷物を置くと神崎はミッキーに話し掛けた。
『ところでマーナは無事だったか確認しただろうな…。』それにミッキーは答えた。
『大丈夫だよ。まだ地下室にいるよ。でもね今朝小耳に挟んだのだけどどこかに連れて行くって言っていたらしいよ。まあどこに連れて行くかまではわからないけどね。』もしかしたら燐銘が言っていたように解放してくれるのだろうか…。まさかどこかで殺すなんて事は無いと思うが…。
『とにかくマーナが閉じ込められている地下室に行ってみよう。』とアルミが言いながら業者の服を脱いだ。神崎も同じように服を脱いだ。
>> 49
ミッキーが準備していてくれたのか黒い衣装とサングラスを渡された。
『この屋敷ではこの格好の方がバレないからこれに着替えて。』まるでマフィアだな。最初にヤツらを見た時そう思った事を思い出した。
『本当にこれに着替えないとダメなのか…。』アルミは嫌そうに言った。
『アルミお前すぐ捕まるのと着替えてバレないのとどっちが良いのだ…。』そうだよな今捕まったら元も子もない。
『すまないつまらない事だった。すぐに着替えるよ。』アルミと神崎は黒衣装に着替えた。
『行く前に1つ言っておくよ。ここのヤツらの挨拶があって胸に手を当てるのだ。“誓い”と言う意味があるんだって。向こうがして来たら同じように返して。それでOKだから。』そう言われてアルミは少し練習した。昔のアニメであったような…。
『じゃ行くよ。私の後を付いてきて。こっちだよ。』俺達はミッキーの後を付いてく。屋敷の廊下を真っ直ぐ歩いて行く。壁には名画が並んでいた。すると前から男達が現れた。こちらを見るとさっき聞いた挨拶をして来た。こちらも同じようにした。その中にあの時のサザナがいた。ヤバいアイツにだけは会いたく無かった。バレるな。意外にもサザナは横を通り過ぎた。アルミはホッと胸をなで下ろした。それもつかの間サザナが呼び止める。
『そこのお前。』ヤバいバレた。せっかく入り込めたのに。
『ネクタイ曲がっているぞ。男は身なりにも気を使わなければ。わかったね。』サザナに向かって頭を下げた。びっくりしたバレたかと思った。最初からこれだ大丈夫か…。とにかくやるしかない。サザナは階段を登って行った。
『アルミ危なかったな。危なくコレを出す所だった。』神崎は服の前を開き腰に差した銃を見せた。
- << 51 神崎の銃を見てアルミは自分の背中に隠した銃を手で確認した。これを使わずに済めば良いが…。 『おい。地下室の入り口はどこなんだ。』そう聞くとミッキーは両手を上げた。外国人が良くやる呆れた時に使うポーズだ。 『そう慌てなさんな。そこの角を曲がった所だよ。』それを聞いて歩みを早めた。そして入り口の前まで来た。 『ここから降りれば地下室に行ける。後はアンタ達で行きな。私はこれ以上は行けないよ。』地下室がわかれば後は助けるだけだ。 『ありがとう。本当に助かった。後は俺らで行くよ。』握手をした。 『それじゃ頑張って。』ミッキーは今来た廊下を戻って行った。しかしここに来て余りに見張りがいない。どうしたのだろう…。まさか待ち構えているのか…。 『神崎それじゃ降りるぞ。』神崎は親指を立てOKのサインを出した。地下室に向かう階段を一歩づつ確認しながら降りて行く。そして最後の一段になった。そっと覗くと奥に扉が見えた。 『あそこのようだな。』小声で神崎が言った。そこには誰もいない。俺達は扉の近くまで近づいた。そして取っ手に手をかけまわしてみた。すると扉はガチャッと開いた。開いた扉の隙間から中を覗くと中は真っ暗で何も見えない。 『マーナ…マーナ。』小声で呼ぶが返事がない。俺達は意を決して中に飛び込んだ。だがそこは真っ暗で誰もいないようだった。壁を探り電気のスイッチを探した。手先にスイッチらしき物が当たった。スイッチを入れてみた。明かりがつき部屋全体が見えた。しかしそこにはマーナの姿は無かった。すると階段の方から足音が響いて来た。神崎は素早く銃を構えた。アルミも少し遅れて銃に手を置いた。ヤツらだったら撃つしかないのかとアルミは思った。だが目の前に現れたのはミッキーだった。
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