💀ﾋﾞﾘｹﾝ昭和の短編小説📓

【①】～ESCAPE-GAME②～

🔥１🔥

『墜ちたよ墜ちたｯｯ…東ﾖｰﾛｯﾊﾟに潜伏中のﾏｽﾗﾝﾀﾞ軍の残党達の巣がｯｯ！ﾔｯｺさんら地下50mもの洞穴の中でｼｪﾙﾀｰ作ってｱﾏｿﾞﾝに生息するｼﾀﾞ植物から採取される毒物で生物兵器の開発研究中だったとさｯｯ！そんなの作られて世界にばら撒かれたんじゃたまんないもんな…捕まって良かった良かった…ﾊｧ～しかしさすが我が世紀軍ｯｯ！押さえる所きちんと押さえてんね～ｸｩｯｯ！』

ｱﾒﾘｶ･ｼｶｺﾞにある30階建ﾋﾞﾙの最上階《世紀軍国際日報ｼｶｺﾞ支部》は今日も世界各国から送られてくる記事の編集作業に大忙しだった…

『ねぇｵﾏﾘｰ…貴方人の記事ばかり追い掛けてないでたまには自分で得ﾀﾞﾈ取って来たらどうなの！？』

お調子者の新聞記者ｵﾏﾘｰ･ｽﾜﾝｸに向かいの机で仕事をしていたﾓﾘｰ･ｵｺﾁｬがﾊｧ～とため息をついた…

『あのね…何かその言い方まるで僕が全然仕事してないみたいな…』

ﾓﾘｰの違うの？といいたげな冷たい視線でｵﾏﾘｰは口をつぐんだ…

『あれ？で編集長は？』

『あぁ…ﾘｻならﾎﾞｽﾄﾝで開かれてる支部会に出席してる…今日帰るはずだけど…』

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>> 1 🔥２🔥

（やだどうしよもうこんな時間ｯｯ！託児所の先生怒ってるだろなぁ…）

その夕方ｼｶｺﾞ国際空港に到着したﾘｻ･ﾎﾞﾅｺﾌは時計を見ながら必死にﾛﾋﾞｰを走っていた…ﾎﾞｽﾄﾝでの会議が予定より延び､半日遅れでｼｶｺﾞに着いたのでﾘｻはいつものﾍﾞﾋﾞｰｼｯﾀｰに職場近くの託児所に娘を預けてもらうように頼んでいた…

『！ｯｯ､いたｯｯ！…あ…ｱｯす､すみませんｯｯ！』

慌てて走るﾘｻと白いｺｰﾄの男性がﾛﾋﾞｰの真ん中で衝突した！

『あｯｯ…こ､こちらこそ…大丈夫ですかｯｯ！？お怪我は？』

紳士的なその男性は倒れたﾘｻの手をとり丁寧に頭を下げた…

『い､いぇ私の方こそﾎﾞｫ～っとしていて…急いでたものですからｯｯ…』

『お急ぎですか？どちらまで？お詫びに車でお送りしましょう…』

濠の深い顔立ちからしてﾄﾙｺ系だろうか…男性は満面の笑顔で手招きした…

『い…いぇ…』

どう見ても怪しい人間には見えなかったが急いでるとはいえいくら初対面の人間に無理を言うのも失礼と思いﾘｻは丁重に断った…

『そうですか…解りました…では…』

その紳士はまた優しく微笑むと自分の荷物を持ちそのままゆっくりと搭乗口へと消えていった…

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>> 2 🔥３🔥

『ﾏﾏｧｯｯｯ～！』

『あ～んｼﾙﾋﾞﾅｯｯ､ごめんね遅くなっちゃって！』

職場近くの寂れた託児所の玄関をくぐると待ちくたびれたﾘｻの愛娘ｼﾙﾋﾞﾅが飛び掛かるようにﾘｻに抱き着いてきた…

『すみませんｼｵﾝさんｯ､会議が長引いてしまって…』

ﾘｻは後ろで笑っていた託児所所長のｼｵﾝに頭を下げた…

『いいわよｯｯ､いつもの事じゃないさｯ！少しくらい遅くなったって大丈夫だよｯｯ…お利口だったもんね～ｼﾙﾋﾞﾅはｯｯ！』

甘ったるい声でｼｵﾝはｼﾙﾋﾞﾅを見て笑った…

『じゃあこれで…お休みなさい…』

ﾘｻは娘のｼﾙﾋﾞﾅの手を引いて託児所の玄関を出た…

『ｼﾙﾋﾞﾅごめん…ちょっとﾏﾏのお仕事場に寄ってから帰りたいの…いい？』

『うんいいよｯｯ！』

金髪の髪を左右に束ね､ｼﾙﾋﾞﾅは絡み付くようにﾘｻの腕をとった…

『ﾏﾏｧ…その手に持ってるの…なぁに？』

ｼﾙﾋﾞﾅはﾘｻが大事そうに左手に持つ物を見て尋ねた…

『あ…これ…これさっき空港でぶつかった人が落として行ったの…空港の人に渡そうと思ったんだけどどういう訳かﾏﾏがそのまま持って来ちゃった…ﾊﾊﾊ』

『その人の大事な物なの？』

『うん…多分ね…』

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>> 3 🔥４🔥

『ｳｻｷﾞのｷｰﾎﾙﾀﾞｰねぇ…ﾌｩ～ん…』

翌日編集部の早朝全体会議を終えたﾘｻは空港で男性と衝突してその男性がそれを落としていった経緯を部下のﾓﾘｰ達に話した…

『しかし男が持ってたﾓﾝでしょ？ﾊﾝﾄﾞﾒｲﾄﾞには見えない大量に出回ってる市販品ですしそんなに大事な物には思えないけどなぁ…』

ｵﾏﾘｰがｳｻｷﾞの縫いぐるみ部分を丹念に見ていた…

『子供さんから貰った大事な物かもしれないじゃないｯｯ！もしくはこれからﾌﾟﾚｾﾞﾝﾄとしてあげる予定だった物かも…いずれにせよ返すべきねｯｯ…』

ﾓﾘｰは腕組みをして頷いた…

『そうなんだけど…名前も住所も解らないし…とにかくまたいつ逢えるかも知れないし…当分肌身離さず持ってるわ…』

それがいいとﾓﾘｰは微笑むとｶﾞﾗﾘと話を変え先日ｱﾄﾗﾝﾀで起きたﾏｽﾗﾝﾀﾞ残党軍による連続病院爆弾ﾃﾛ事件の記事についてﾘｻに話しを詰め出した…

『また病院爆破ﾃﾛか…ﾏｽﾗﾝﾀﾞ残党軍の野郎性懲りもなくまた酷い事やりやがったなｯｯ！』

『かなりの人数がまだこのｱﾒﾘｶ全土に潜伏してるって事ｯｯ…我々ｼﾞｬｰﾅﾘｽﾄも気を引き締めないとねｯｯ！』

ﾘｻが書類を眺めた…

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>> 4 🔥５🔥

『ﾓﾘｰ遅くまで御苦労さまｯｯ…』

ﾘｻは残業で居残りしているﾓﾘｰにｺｰﾋｰを差し出した…

『ありがとうございます編集長…』

『やめてよ編集長ってｯｯ…何か首筋が痒くなっちゃうわｯｯ…』

『だって編集長は編集長じゃないｯｯ…何てったって五年前のあの世紀軍《ｻｶﾞﾝ捕虜収容所解放》の立て役者だったんだから…貴方みんなの英雄よｯｯ！ﾛｼｱ支局からｼｶｺﾞ本社への新聞社の編集長位の昇進じゃぁまだまだお釣りが来るわよｯｯ…』

『やめてよﾓﾘｰ…もう過去の事よ…ﾊﾊﾊ』

ﾘｻは時計を見ながら明日の編集会議に出す書類に目を通した…

『それで､明後日参加するの？《CENTURYﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙ》…手品や露店も出るみたいだしｼﾙﾋﾞﾅちゃんも連れてくれば？たまには息抜きして娘ｻｰﾋﾞｽしないと仕事の鬼！って娘に愛想つかされるわよｯｯ！ﾌﾌﾌ』

ﾓﾘｰはｺｰﾋｰを一口飲むと帰り支度を始めた…

『そうね…考えとく…』

『ﾊｧ～…いつもの考えとく～ねｯｯ！ﾊｲﾊｲ…』

ﾓﾘｰは鞄を抱えるとお先にと手を振りｴﾚﾍﾞｰﾀｰを降りて行った…

（ﾌﾌﾌ…たまには娘孝行するかｯｯ…）

ﾘｻは一度大きな背伸びをした…

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>> 5 🔥６🔥

《CENTURYﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙ》は２年に１度世紀軍国際日報創刊の日に因んで当ﾋﾞﾙの10階で行われる地元の市民を招待しての小さなお祭りである…食べ物の露店やﾌﾞﾗｽﾊﾞﾝﾄﾞのｼｮｰ､新聞印刷体験ｺｰﾅｰ等盛り沢山の内容でｼｶｺﾞ市民から親しまれていた…

『ﾏﾏｧ～風船買って～！』

『うんいいわよ…でも後でね！先に職場に行かなくちゃ！』

ﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙ当日ﾘｻは娘ｼﾙﾋﾞﾅを連れてﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙにやってきた…

『ｼﾙﾋﾞﾅ～ｯｯ久しぶり～ｯｯ！元気してた？また一段と可愛くなっちゃって～』

最上階の仕事場に入ると真っ先にﾓﾘｰがｼﾙﾋﾞﾅに抱き着いた…

『おばちゃんこんにちはｯｯ！』

『上手にご挨拶出来るようになったんだ…こんにちは！おじさん覚えてるかい？』

『ｵ…ｵﾏ…？』

『…ｱﾊﾊ…んまぁあれだｯｯ…何だっていいやｯｯ！ｶﾞﾊﾊﾊ！』

『ねぇｼﾙﾋﾞﾅ…ﾏﾏ下のﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙの実行委員さんにご挨拶してくるから此処でﾓﾘｰおばさん達と待っててくれる？終わったらまた上がってくるから…したらﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙに行こ！ね？いい？』

ﾘｻがｼﾙﾋﾞﾅを宥めるように諭すとﾓﾘｰにお願いと娘を託しｴﾚﾍﾞｰﾀｰを降りて行った…

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>> 6 🔥７🔥

ﾋﾞﾙの10階部分のﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙ会場はもう何百人という招待客でごった返していた…ﾌﾞﾗｽﾊﾞﾝﾄﾞの生演奏でﾋﾟｴﾛ姿に紛した大会職員が得意のｼﾞｬｸﾞﾘﾝｸﾞを披露しているその側でﾘｻはﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙの開催実行委員のお偉方と丁寧に挨拶を交わした…

（ﾌｩ～終わったｧ～さて､職場に戻るか…）

ｴﾚﾍﾞｰﾀｰの上ﾎﾞﾀﾝを押しｴﾚﾍﾞｰﾀｰが来る間ﾘｻは楽しそうな招待客の顔を眺めていた…

（！んｯｯｯ…）

突然ﾘｻの目に見覚えのあるｺｰﾄの男性が飛び込んできた！

（ま…まさかあの人空港で会った…ｯｯ間違いないｯ！）

そう思うや否やﾘｻは人波を掻き分けるようにそのｺｰﾄの男性のもとに歩み出した…

（な､何でこんな場所にｯｯ？…この街の住人だったんだ…）

ﾘｻは見失わないように側まで駆け寄ったが余りの人の混雑に結局その男性を見失ってしまった…

（あ～ぁ…まいっか…このﾌｪｽﾃｨﾊﾞﾙに参加してりゃまた後で逢えるかも知れないしね…そだそだ！ｼﾙﾋﾞﾅが待ってる､早く帰ってあげないとｯｯ…）

ﾘｻはため息を付き振り返るとまたｴﾚﾍﾞｰﾀｰの方へ歩き出した…

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>> 7 🔥８🔥

その時突然ﾘｻの携帯電話が鳴った…

『はい…もしもし？』

【……】

『…どなたですか？』

ﾊﾞﾝﾄﾞの音楽が大きいのでﾘｻはｴﾚﾍﾞｰﾀｰ脇の化粧室に入った…

【ﾘｻ･ﾎﾞﾅｺﾌだな？…ｼｶｺﾞ国際日報編集長の…】

『…はい､そうですが貴方は？』

【いいか､一度しか言わないからよく聞けｯｯ！ﾋﾞﾙ内の10ヶ所にｾﾝｻｰ式小型爆弾を仕掛けた…今から２時間以内に全てを解除しろ…２時間以内に爆弾を全て解除出来なかった場合…ﾋﾞﾙ内のとある場所に仕掛けられた高性能で破壊力抜群のﾌﾟﾗｽﾁｯｸ爆弾で一瞬でﾋﾞﾙ毎瓦礫と化す…】

ﾘｻの表情が一気に曇った…

『…な､何の悪戯？警察呼ぶわよｯｯ！誰ｯｯ！？』

ﾘｻは冷静だった…ここの編集長になって以来この手の脅迫めいた悪戯電話には慣れっこになっていたからだ…

【爆弾を全て解除するまでお前はﾋﾞﾙから出れない…もしﾋﾞﾙから一歩でも出たら……】

『出たらどうだっての！爆弾を爆発させるのｯｯ！？ﾊﾊｧ～やれるものならやって見なさいよｯｯ！』

【…ｹﾞｰﾑSTART！】

ドゴォｫｫｫｫｫｫｫｯｯｯｯ！！

…次の瞬間､耳をつんざくような物凄い爆音が10階部分を包んだｯ！

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>> 8 🔥９🔥

『ウワァｧｧｧｧｯｯｯ！』

『キャァｧｧｧｧｯｯｯ！たｯｯ､助けてｪｪｪｪｯｯｯ！』

ゴゴゴゴｫｫｫｫｫｫ！！

爆音の直後､天井部分が割れて鉄筋ｺﾝｸﾘｰﾄの破片が次々に招待客に落下してきた！

『！ｯｯ､う､嘘でしょｯｯｯ！？』

一瞬の出来事にﾘｻは何も出来ずにただその場に立ちすくんでいた…煙が濛々と立ち込め部屋中を火薬の臭い匂いが包んだ…

『だ､大丈夫ですかｯｯ！？』

余りにも突然の出来事に招待客達は皆半狂乱に陥っていた…鉄筋の瓦礫に挟まれ身動きも取れずただ泣き叫ぶ人…頭から多量の血を流している人…そして瓦礫に押し潰されもはや息絶えている人…そこは正に地獄絵図と化していた…

『なｯ､何なんだ今のはｯｯ！ﾁｷｼｮｯｯｯ！何しやがったｯｯ！』

『早くｯｯ､誰か早く救急車をｯｯ！主人が…主人が､ｱｧ…』

百人余りいる招待客の約半数近くが負傷していると思われた…

『皆さん､落ち着いて…どうか落ち着いて冷静にｯｯ！』

『これが落ち着いていられるかよｯｯ！出口だｯｯ！みんなｴﾚﾍﾞｰﾀｰに乗るんだｯｯ！』

『ま､待ってｯｯ！一度には無理よｯｯ！』

ﾘｻの制止を振り切り招待客がｴﾚﾍﾞｰﾀｰに雪崩れ込んだ！

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>> 9 🔥10🔥

『待ってｯｯ！私も乗せてちょうだいｯｯ！』

『駄目だｯｯもう定員一杯だｯｯ！次のに乗れｯｯ！』

無理に乗り込もうとする女性を中から突き飛ばすとｷﾞｭｳｷﾞｭｳ詰めのｴﾚﾍﾞｰﾀｰの扉が閉まりｴﾚﾍﾞｰﾀｰは十数人を乗せｷﾞｼｷﾞｼと音をたてながら下降して行った…

『ど､どうか皆さん落ち着いて下さいｯｯ！落ち着いて行動すれば大丈夫ですからｯｯ！』

『ねぇさっきのは何なのｯｯ！？何なのｯｯ？』

一人の血だらけの老婆がﾘｻに詰め寄った…

『わ､私にも解りません…おそらく爆弾ﾃﾛ…』

『ば､ば､爆弾ﾃ…ﾛ…ｱｧ～』

老婆は腰を抜かして床にへたり込んだ…

『とにかく順番にｯｯ！お年寄りや子供さんから優先にｯｯ！』

さっきの爆弾の衝撃で３つあるｴﾚﾍﾞｰﾀｰのうちの２つはﾎﾞﾀﾝのﾗﾝﾌﾟが消えてもう使い物にならなくなっていた…頼みの綱はさっき下降していった１基のみだ…

（早くｯｯ…早く上がって来てｯｯ！）

ﾘｻは今にも押し潰されそうになる人の波に耐えながらただ祈るような気持ちで先程下降していったｴﾚﾍﾞｰﾀｰが上昇してくるのを待った…

ドゥゴゴゴゴゴｫｫｫｫｫｯｯｯｯ！

次の瞬間ｴﾚﾍﾞｰﾀｰｼｬﾌﾄ内でまた物凄い爆発が起きた！

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>> 10 🔥11🔥

『まｯ､まさかｯｯ！？』

ﾘｻはｴﾚﾍﾞｰﾀｰのﾎﾞﾀﾝを何度もｶﾁｶﾁと押し続けたがﾗﾝﾌﾟは消え全く反応はなかった…

『ｴﾚﾍﾞｰﾀｰはｯｯ！？ねぇお姉さんｯ…ｴﾚﾍﾞｰﾀｰはどうなったのｯｯ！？』

（ひ…酷いｯｯ！酷すぎるｯｯ！）

ﾘｻはﾖﾛﾖﾛとｴﾚﾍﾞｰﾀｰから離れると血の海と化した10階のﾌﾛｱを見渡した…

『ｴﾚﾍﾞｰﾀｰ…ｴﾚﾍﾞｰﾀｰまで…爆破された…』

ﾘｻの力ない言葉にそこにいた一同全員が落胆の色を見せた…

『さっき乗って降りた人達はｯｯ？ねぇどうなったのよｯｯ！？』

小さな息子を連れた母親がﾘｻに詰め寄った…

『…さ…さっきの…ｴﾚﾍﾞｰﾀｰの中の人達は…た､多分…爆発で全員…』

『いｯｯ､イヤァｧｧｧｯｯｯｯ！さっきのには娘が…娘が乗ってたのよｯｯ､ｱｧ…ｷﾝﾊﾞﾘｰ…ｷﾝﾊﾞﾘｰｯｯｯｯｯ！』

母親は膝を付き泣き崩れた…その時またﾘｻの携帯が鳴った…

【これで信用してくれたかい？…ﾌﾌﾌ…】

『！ｯｯあ､ｱﾝﾀ自分が何してるか解ってんのｯｯｯ！卑怯者ｯｯ！私が憎いのなら私だけ殺しなさいよｯｯ！』

【そんなのつまらない…私は君が慌てふためき恐怖に怯える様が見たいんだよ…】

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>> 11 🔥12🔥

『何が目的ｯｯ？…ｱﾝﾀ一体誰なのｯｯ！？』

【ﾙｰﾙは簡単だ…２時間以内にﾋﾞﾙ内随所に仕掛けられている爆弾の蓋を開き中に繋がれてある緑の銅線を切って回ればいい…そうすれば自動的にその爆弾は解除される…間違っても他の色の銅線を切るなよ…その場でﾄﾞｶﾝ！だからなｯｯ…】

ﾘｻは側で頭から血を出して倒れている若者にそっと自分のﾊﾝｶﾁを差し出した…回りを見ると無傷の人々が負傷者に協力して応急手当をしていた…

『そんな…それじゃぁ何処に爆弾が仕掛けられているか解らないじゃないｯｯ！どうやって仕掛けられた爆弾を見つけるのよｯｯ！』

【簡単だ…爆弾の近くに来るとお前が持っているそのｷｰﾎﾙﾀﾞｰの目が光る…爆弾探知のｾﾝｻｰになっている…】

『ｷｰ…ｷｰﾎﾙﾀﾞｰｯｯ！？ま､まさか…嘘でしょ…』

ﾘｻは恐る恐るﾎﾟｹｯﾄに入れていた例のｳｻｷﾞのｷｰﾎﾙﾀﾞｰを出してみた…

【私からの昇進祝いだｯｯ…ﾘｻ･ﾎﾞﾅｺﾌ君】

『じゃぁあの時のｺｰﾄの…ま､まさかｯｯ…初めから私が拾うと想定して…なｯ､何て事…』

ﾘｻの頭から血の気がひいた…

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>> 12 🔥13🔥

『じゃぁせめて私と一対一で勝負しなさいよｯｯ！ここにいる人達は関係ないでしょｯｯ！解放しなさいｯｯ！』

【それは出来ない相談だ…そのままお前だけのこのこと逃げられても困るからな…そいつらは言わば人質だｯ…爆弾を全て解除しない限りお前はそこから出る事は出来ない…そいつらを生かすも殺すもお前次第という訳だ…ﾌﾌﾌ､どうだ､面白い趣向だろ？】

『ひ､人の命を何だと思ってるのｯｯ！ｸｯ､許さないｯｯ！』

【さっきのｴﾚﾍﾞｰﾀｰ爆発で一階入口付近は瓦礫の山と化した…非常階段を使って玄関から出ようとしても無駄だ…携帯も妨害電波を出して通信不能の全て圏外…外部との通信は完全に絶ってある…では､ｸﾞｯﾄﾞﾗｯｸ！】

『！ま､待ちなさいｯｯｯ！ちｯちょ……』

ﾂｰﾂｰと携帯電話が切れた…と同時に《圏外》の文字が現れ完全に使用出来なくなってしまった…

『非常階段も使えないのかｯｯ…』

背広の男性に縋り付かれるとﾘｻは唇を噛み締めゆっくり頷いた…

『そんなぁ…どうして…どうしてこんな事にｯｯ！ﾁｷｼｮｯｯ…ﾁｷｼｮｯｯ…』

ﾘｻは繋がる携帯電話はありませんかと招待客に聞いて回ったが誰のものも全て不通になっていた…

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>> 13 🔥14🔥

『ｸｯ…ﾓﾘｰにも繋がらないｯｯ！さっきの爆発で状況が飲み込めたかしら…』

ﾘｻは使い物にならなくなった自分の携帯電話を恨めしげに見つめため息をついた…

『ねぇ､この階以外に人はいるかしら？』

ﾘｻは思い出したかのように負傷した招待客らに尋ねた…

『多分いないと思うぜ…今日は日曜日だし…』

このﾋﾞﾙに勤務しているらしい清掃員らしき若者が答えた…暫くして一人の人相の悪い赤いｼｬﾂの髭面の男がﾘｻに近付いて来た…

『なぁ､ｱﾝﾀ何者なんだ…さっき犯人らしき奴と携帯電話で話してたろ？聞こえたぜｯｯ…』

『……』

『この爆弾犯人と何か関係あんのかよｯｯ！？』

『わ､私にも解らないわ何が何だか寝耳に水よｯｯ！ただ向こうが何故か私の名前を知っていた…』

『じゃぁｵﾀｸを恨んでの犯行なんじゃねぇかｯｯ！』

赤いｼｬﾂの髭男はﾘｻに掴み掛かった！

『…何が言いたいのｯｯ！』

ﾘｻは髭男を睨み返した…

『ｵﾀｸらに何があったのかはしんねぇが俺達をこんな災難に巻き込むなって言いたいんだよｯｯ！』

そうだそうだ！と回りの招待客から口々にﾘｻに向かって冷たい視線が投げられた…

『ち､ちょっと待ってよｯｯ…私はただ…』

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>> 14 🔥15🔥

『貴方がここにいなければ私達には何にも起きずに家に帰れたのよｯｯ！』

『ち､ちょっと…わ…』

『そだよｯｯ！どう責任取ってくれんだよｯｯ！俺は妻を亡くしたんだぞｯｯ､見てみろｯ…あの瓦礫に挟まれて息絶えてるのが妻だｯｯ！』

『狂気なｽﾄｰｶｰに狙われるんならよそで狙われなさいよｯ！私達には何の罪もないじゃないｯｯ！』

『待って…ち､皆さん落ち着いてｯｯ！』

ﾘｻの周りに人だかりが出来た…

『皆さんのお気持ちは痛い程解りますｯｯ…解りますがここは落ち着いて皆でこの危機的状況を打開しないとｯｯ…』

『ﾃﾒｪｺﾗ､ふざけんなよｯｯ！』

一人の男がﾘｻに殴りかかろうとした瞬間､やめろｯｯｯ！と大きな声がした…部屋の全員が声を発した細身の革ｼﾞｬﾝの若者を見た…

『やめろ…その女性の言う通りだ…ここで誰を責めたって時間は元には戻らない…全員で力を合わせなきゃ始まんないんじゃないのか？』

その若者はｽｸｯと立ち上がるとﾘｻの前に立ちじっとﾘｻを見つめた…

『…さっき電話で何を話していた？…君はそれを皆に伝える義務がある…』

『……そ､そうね…』

ﾘｻは深呼吸をすると軽傷の招待客を集めた…

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>> 15 🔥16🔥

『私の名前はﾘｻ･ﾎﾞﾅｺﾌ…このﾋﾞﾙの最上階にある《世紀軍国際日報》っていう政府軍事専用機関誌を発行する新聞社で編集長をしています…』

軽傷の招待客らは怪我の傷をﾊﾝｶﾁ等で押さえながら静かにﾘｻの話を聞いていた…

『ﾘｻ…ﾎﾞﾅｺﾌ…？』

さっきの髭男が何かを思い出したように呟いた…構わずﾘｻは話を続けた…

『爆弾犯人が何故私の名前と携帯番号を知っていたのかは解りません…ですが爆弾犯人は私にあるｹﾞｰﾑをしろと言って来ました…』

『ｹﾞｰﾑだとｯｯ！？』

『犯人の言う事を信じるならこのﾋﾞﾙの中無作為10ヶ所に小型の爆弾が仕掛けられていますｯｯ…』

負傷者達はどよめいた…

『犯人は私にそれらを２時間以内に全て解除して回れと命じてきました…もし時間内にそれが出来ない場合はそれより超大型のﾌﾟﾗｽﾁｯｸ爆弾が爆発しこのﾋﾞﾙもろとも崩れ落ちると…』

『ﾌﾟ､ﾌﾟﾗｽﾁｯｸ爆弾だとｯｯ､じ､冗談じゃねぇぜｯｯ！何て事しやがんだｯｯ！』

部屋中に悲鳴と罵声が飛び交った…

『とにかく私は犯人の指示通り爆弾を解除に向かいます…それまで皆さんは一歩も此処から動かないで下さいｯｯ！』

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>> 16 🔥17🔥

『怪我人はどうすんだよｯｯ､幸い俺達は軽傷で済んだが瓦礫に挟まれて動けない人や出血多量で命すら危ない人だっていんだぞｯｯ！』

髭男がしきりにﾘｻに詰め寄った…ﾘｻは男に構わず大声を張り上げた…

『この中でお医者さん､もしくは看護師さん､医療系の職種の方おられませんかｯｯ？もしおられたら比較的軽傷の方と協力して重傷の方の応急手当に回っていただきたいのですが…』

医師は居なかったが看護専門学校生の若い女性が恐る恐る手を上げた…

『で､でも私まだ一年生で…何にも…やっぱ無理かも…』

その女性は臨床でも経験した事のない余りの惨劇にただただ震えていた…

『大丈夫ｯｯ！緊急での応急処置位は学校で習ったでしょ？お願い､貴方が頼りなの…皆を助けてｯｯ！』

ﾘｻはその女性の小さな肩をｷﾞｭｯ抱くと優しく微笑んだ…

『ﾙ､ﾙｲｰｻﾞよ…ﾙｲｰｻﾞ･ﾊﾞｰﾈｯﾄ…』

『ﾙｲｰｻﾞ…有難う…頼んだわねｯｯ！』

ﾙｲｰｻﾞと名乗るその看護学生は軽傷者をつれて部屋の中にある止血出来そうなﾃｰﾌﾞﾙｸﾛｽを引き裂いて大量に紐を作って下さいと叫んだ…

（よしｯ…こっちは何とかなりそうね…）

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>> 17 🔥18🔥

（さて…爆弾を探さないと…それに最上階にいたｼﾙﾋﾞﾅやﾓﾘｰ達の事も気掛かりだし…）

ﾘｻはゆっくり腰を上げると爆弾探しの準備に入った…

『一人で探すのか？…それじゃ埒が開かない！俺も手伝おう…』

さっきの革ｼﾞｬﾝの男性がﾘｻの前に現れた…

『あ…さっきは有難う…気持ちは嬉しいけど…これは凄く危険だから…一歩間違えば貴方まで…ご好意は感謝します…どうか此処で皆と一緒に居て下さいｯｯ！』

『大丈夫だ…こう見えても昔数ヶ月だが世紀軍の空軍部隊にいた事あるんだ…爆弾処理も経験しているし連れてけば何かと使い道はある…』

革ｼﾞｬﾝの男性はﾘｻに優しく微笑みかけた…笑うと八重歯が特徴のなかなかの美男子だった…

『…そう､じゃぁお願いしようかしら…何せ私はただのか弱いｼﾞｬｰﾅﾘｽﾄだから…』

『ﾎﾟｰﾙだ…ﾎﾟｰﾙ･ﾍﾞﾙｸﾞﾏｲﾔｰ…ｵﾗﾝﾀﾞ人だ…』

『よろしくﾎﾟｰﾙ…』

ﾘｻは軽傷者から動きやすい服を借りると化粧室で着替えを済ませた…

『よしｯ！じゃぁ行くわねﾎﾟｰﾙｯｯ…ﾀｲﾑﾘﾐｯﾄはあと１時間50分ｯｯ！』

『ｵｯｹｰ､いつでもいいぜｯ､編集長さんｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙは靴紐を結び直した…

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>> 18 🔥19🔥

『もしもしｯｯ？…ねぇﾘｻ聞こえる？…もしもぉ～しｯｯ！ｱｧ駄目だｯｯ…繋がらない…』

最上階にあるｵﾌｨｽでﾓﾘｰはｼﾙﾋﾞﾅの肩を抱きながら必死に携帯でﾘｻに連絡を取ろうとしていた…

『おばちゃん…ﾏﾏに繋がらないの？』

不安げな表情でｼﾙﾋﾞﾅがﾓﾘｰの手を握った…

『大丈夫よｼﾙﾋﾞﾅ…ﾏﾏなら大丈夫だから心配しないで…』

ﾓﾘｰ達の耳にも先程の二度に渡る爆発音は聞こえていた…下の階から激しい爆音と床からの地響きが起こりﾓﾘｰ達は直ぐさまｴﾚﾍﾞｰﾀｰに乗り込もうとしたのだがもうその時にはｴﾚﾍﾞｰﾀｰは完全に止まってしまっていたのだ…

『ねぇおばちゃん…階段は？階段を降りてﾏﾏに逢いにいけばぁ？』

幼いｼﾙﾋﾞﾅがﾓﾘｰにそう提案したが足腰の持病を持つﾓﾘｰには30階もある階段を下って降りる事等到底出来るはずはなかった…

『ち､ちょっとｵﾏﾘｰｯｯ！こんな時にﾄｲﾚ何十分かかってんのさｯｯ！』

化粧室からｵﾏﾘｰが悲壮感漂う顔で出て来た…

『だ､だって下でばｯ､ばｯ､爆発がｯ､…怖いの何のって…死ぬかと思った…ﾊｧ～』

『本当にｱﾝﾀはこんな時まで役立たずだねｯｯ！』

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>> 19 🔥20🔥

『一体下の階で何が起きてるんだろね…』

ﾓﾘｰが不安そうに窓から遥か下を見下ろした…地上付近で微かに白煙らしきものが舞い上がっているのが見える…

『爆弾ﾃﾛだよｯ､きっとﾏｽﾗﾝﾀﾞの残党による世紀軍への報復行動だよこれｯｯ､ｱｧ～いつかはこんな事になるとは恐れてたけど…ﾔﾀﾞﾔﾀﾞﾔﾀﾞｯｯ！』

ｵﾏﾘｰは頭を抱えて床に蹲った…

『馬鹿ｯｯ､ｱﾝﾀ男だろｯｯ！これくらいの事で怖じけづくんじゃないよｯｯ！』

男勝りの性格のﾓﾘｰは臆病者のｵﾏﾘｰの頭を軽く叩いた…それを見てｼﾙﾋﾞﾅがﾌﾌｯと笑った…

『いいかいｵﾏﾘｰ…もしあと30分経ってもﾘｻが上がってこない時はｱﾝﾀ､このｼﾙﾋﾞﾅを連れて非常階段を降りて地上まで行くんだよｯｯ！分かったかい？』

『えｯ…う､嘘でしょｯｯ…無理無理無理ｯｯ！もし途中で爆弾がﾄﾞｶｧ～ﾝ！なんて事になったら…ｱｧ～ﾔﾀﾞﾔﾀﾞﾔﾀﾞ～！』

『おばちゃんはどうするの？』

ｼﾙﾋﾞﾅがﾓﾘｰの顔を見上げた…

『大丈夫ｯ！おばちゃんも後から必ず降りて行くから…』

ﾓﾘｰはｼﾙﾋﾞﾅにｳｲﾝｸをして笑うとまた窓の外を見下ろした…

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>> 20 💀…
あのサガン捕虜収容所からの脱出劇から見事ﾏｽﾗﾝﾀﾞ最高司令官を確保したリサとシンディは５年後無事故郷への帰還を果たした…リサはサガンでの功績が認められ､世紀軍国際日報ロシア支部から晴れて米シカゴ支部編集長への栄転が決まり愛娘シルビナと共に静かな生活を送っていた…その矢先リサの勤務するビルに何者かが無数の時限爆弾を仕掛けたとの予告が入りその標的は何とリサ本人だった…！迫り来る時間とビル爆発の恐怖にリサはどう立ち向かうのか！そしてリサに史上最大のピンチが襲い掛かる！

《🎈手軽に読める短編小説》読者人気No.1だったあのアクション巨編【🔥ＥＳＣＡＰＥ-ＧＡＭＥ】の続編が大都会に舞台を移しさらにスケールアップして今甦る！此処までのご意見ご感想メッセージお待ちしています💕💀

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>> 21 🔥21🔥

ﾘｻと協力者ﾎﾟｰﾙは建物外部にある非常用の螺旋階段を下っていた…

『ﾊｱｯ、ﾊｱｯ…でﾘｻｯｯ､…その爆弾ってのはどうやって見つけるつもりだｯｯ！？』

ﾘｻは階段を駆け降りながら例のｳｻｷﾞのｷｰﾎﾙﾀﾞｰをﾎﾟｰﾙに見せた…

『爆弾がある場所付近でｾﾝｻｰが起動してこのｷｰﾎﾙﾀﾞｰの目の部分が真っ赤に光るらしいわｯｯ…ﾊｱｯ、ﾊｱｯ…』

『ﾁｯ､野郎また手のこんだ事しやがってｯｯ！』

『とにかく確実に爆弾を見つける方法はただ一つ！一階から順番に走り回り､爆弾反応のある場所を一ｶ所ずつ虱潰しに探すしかないわｯｯ､ﾊｱｯ、ﾊｱｯ…』

『ﾋｪ～ｯｯ､それを30階分も…ﾊｱｯ、ﾊｱｯ…こりゃ大変だｯｯ…』

ﾘｻは時折ｷｰﾎﾙﾀﾞｰを確認して慎重に階段を下っていた…

『嫌ならおりてくれても構わないわよｯｯ…ﾊｱｯ、ﾊｱｯ…』

『いや、乗り掛かった船だｯ､男に二言はないｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙは苦笑いするとﾘｻの後に続いた…壊れた瓦礫を掻き分けﾘｻとﾎﾟｰﾙは何とか鉄筋の塊と化した玄関ﾛﾋﾞｰに到着した…

『ﾊｱｯ､ﾊｱｯ…この一階部分の崩れ様じゃ到底あの人数の負傷者を運び出すのは不可能ねｯ…』

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>> 22 🔥22🔥

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ…

その時ﾘｻが持っていたｷｰﾎﾙﾀﾞｰの目が警報を鳴らして赤く光り出した！

『！ｯｯ､ﾎﾟｰﾙｯｯ！』

『ち､近くにあるのかｯｯ､爆破装置がｯｯ！』

ﾘｻとﾎﾟｰﾙは瓦礫の山を掻き分けながら玄関ﾎｰﾙに仕掛けられたと思われる爆弾を必死に探し回った…

『音が大きくなった！この下よｯｯ！』

二人は大きな鉄筋の柱を渾身の力で持ち上げると真っ赤な救急用の消化器を発見した…

『間違いないｯｯ､この中よｯｯ！』

『よし､どいてろﾘｻｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙはその消化器を慎重に拾い上げるとそのまま玄関ﾛﾋﾞｰの広く明るい場所に移動させた…

『解除できるのｯｯ？』

『あぁ…多分なｯｯ…』

ﾎﾟｰﾙはﾎﾟｹｯﾄから小さなねじまわしｾｯﾄを取り出すとゆっくり消化器の蓋を開けた…中には何色かの導線と爆破時間を刻一刻と記すﾀｲﾏｰが入っていた…制限時間はあと5分を切っていた…

『ほぅ…結構凝った造りになってるじゃない…』

『感心してないでｯｯ…犯人は緑の導線を切ればﾀｲﾏｰは停止するって言ってたわｯｯ…』

ﾘｻはさっきの犯人からそう指示があった事をﾎﾟｰﾙに伝えた…

（緑…ん～…）

ﾎﾟｰﾙは暫くじっと爆弾の導線を見つめていた…

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>> 23 🔥23🔥

『ねぇﾎﾟｰﾙｯ急いでｯｯ！…早く切ってよｯｯ！緑色の導線よｯｯ､ほらそれｯｯそこに一本あるじゃないｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙは眉を動かした…

『駄目だ…緑を切ると…爆発するｯｯ！』

ﾘｻはﾎﾟｰﾙの言葉に耳を疑った…

『！ええっｯｯ､な､何を言ってるのｯｯ！？爆弾犯人は緑の導線を切ればﾀｲﾏｰが停止するって…』

『この緑のはおそらくﾀﾞﾐｰだ…この赤の２本を同時に切れば止まる…俺を信じろﾘｻｯｯ！』

ﾘｻは頭が混乱していた…どちらを信用してよいのか…無差別に人を殺傷する猟奇的爆弾犯人の言う通りにすべきか､このさっき出会ったばかりのﾎﾟｰﾙという男を信用すべきなのか…ﾀｲﾏｰは２分を切っていた！

『いいかﾘｻｯｯ､切るぞｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙの右手に小型のﾍﾟﾝﾁがあり今正に赤い導線２本がそのﾍﾟﾝﾁの刃の間に納まっていた…

『し､信じていいのねｯ､あ､貴方をｯｯ！』

ﾘｻの心臓の鼓動がそこから張り裂け飛び出してきそうだった！

『切るぞｯｯｯ！！』

（う…！ｯｯｯｯ､！）

ﾘｻは思わず耳を押さえてすかさず蹲くまった！ﾎﾟｰﾙはﾍﾟﾝﾁを持つ手に一気に力を入れた！

ﾌﾟﾁﾝｯｯｯｯ！

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>> 24 🔥24🔥

！ｯｯ……………ﾊｱｯ、ﾊｱｯ……ｯｯ…

静寂が玄関ﾛﾋﾞｰを支配した…

『ﾌｩ～終わったぞ…大丈夫かﾘｻｯ…』

ﾎﾟｰﾙが蹲り震えるﾘｻの肩を叩いた…

『…い､生きてる…助かったんだ私…』

ﾘｻはゆっくり顔を上げて辺りを見回し無事だった事を確認した…

『ﾊﾊﾊ､だから言っただろ？俺を信じろって…ま､さすがに導線切る瞬間はいつも手が震えるけどなｯｯ､ﾊﾊﾊ…』

ﾎﾟｰﾙは額の汗を拭うと立ち上がり笑顔を見せた…

『さっ､こんな所でｸﾞｽﾞｸﾞｽﾞしてる暇はない…次の爆弾探しに向かうぞｯｯ！』

何事もなかったかのようにﾎﾟｰﾙはゆっくり歩き出した…

（こ､この人慣れてる…一体何者なのｯｯ！）

ｶﾞｸｶﾞｸする膝の震えを抑えながらﾘｻはﾎﾟｰﾙも背中を見ながらゆっくり歩き出した…次の瞬間ﾘｻが持っていたｷｰﾎﾙﾀﾞｰのｳｻｷﾞの目が青く光ったかと思うとそこから声がした…

【どうだい？爆弾処理ははかどっているかな…ｸｸｸ…】

『！ｯｯ､あ､ｱﾝﾀｯｯｯ！』

ﾘｻとﾎﾟｰﾙはｷｰﾎﾙﾀﾞｰを凝視した…

【このｷｰﾎﾙﾀﾞｰは無線にもなっていてね…指示を送ったり話をしたり…ｲﾔｧ便利便利ｯｯ…】

『ふざけるなこの野郎ｯｯ！』

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>> 25 🔥25🔥

【今の位置は…ほぅ､玄関ﾛﾋﾞｰだね…そこに設置した爆弾を解除出来たって訳だ…こりゃ感心感心…奇跡だね､ｸｸｸ…】

『ど､どういう事よｯｯ！ｱﾝﾀさっき緑の導線を切れば爆弾が爆発しない､確かそう言ったわよねｯ､この嘘付きｯｯ！』

ﾘｻがｷｰﾎﾙﾀﾞｰに向かって大声を出した…

『おい貴様ｯｯ､何処の変態爆弾ｵﾀｸだか知らないが少々お痛が過ぎるんじゃねぇのかｯｯ！』

今度はそれを取り上げるようにﾎﾟｰﾙが爆弾犯人に激しく詰め寄った…

【ﾊﾊｧ～ﾝ…なるほどそういう事かｯ…ｵﾀｸがさっきの爆弾を処理したんだな…道理で爆発しなかった訳だ…ﾊﾊﾊ！】

『おい､何処の誰だか知らないがきっと俺の目の前で命乞いさせてやるからなｯｯ！』

【ｵﾀｸをこのｹﾞｰﾑに招待した覚えはないｯｯ､死にたくなかったら大人しく10階で他の連中の介護でもしてやれｯｯ！ｶﾞﾊﾊﾊ…】

『調子に乗るのもいい加減にしなさいよｯｯ…最後に勝つのは私達なんだからねｯｯ！』

ﾘｻは拳を握り締めた…

【言い忘れたが爆弾を解除する毎に次の爆弾のﾀｲﾏｰが作動するｯｯ！まぁせいぜいおきばりやすｯｯ､ｶﾞﾊﾊﾊ！】

通信が途切れた…

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>> 26 🔥26🔥

『ﾁｷｼｮｯ！…ふざけた野郎だせｯｯ､一体ｿｲﾂは何者なんだ…』

『解らない…けど過去に私に何らかの恨みを持ってるのは確かねｯｯ…』

２階の吹き抜けのﾛﾋﾞｰに到着すると二人は机の裏や棚の上などを隈なく通過し､ｷｰﾎﾙﾀﾞｰの探知反応を確かめて回った…

『ﾘｻ､反応はあるかｯｯ！？』

『いや…どうやら２階には爆弾はないみたい…』

『よし､じゃぁ次は３階だｯｯ！』

ﾘｻとﾎﾟｰﾙは汗だくになりながら螺旋階段を駆け登った…

『ﾎﾟｰﾙ貴方…何の仕事してるの？』

『俺か？…俺はｼｶｺﾞの36番街の出張所に勤務する消防士だ…今日は隔日にある非番で友達と一緒にこのお祭りに参加していた…けどあの爆発で…』

ﾎﾟｰﾙの顔が微かに曇った…ﾘｻにはその後の言葉が理解できた…

『ごめんなさい…嫌な事思い出させちゃって…』

『いや､いいんだ…仕方なかったんだ…突然の崩落だったから…俺はあの時側にいた子供に覆いかぶさった…友達も誰かを助けようと…けどそこにｺﾝｸﾘが落下してきて…』

ﾘｻは余計な事を尋ねた事に後悔していた…そしてこんな酷いｹﾞｰﾑを始めた爆弾犯人を心底憎んでいた…

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>> 27 🔥27🔥

『あの野郎さっき確か爆弾を処理した後直ぐさま次の爆弾のﾀｲﾏｰのｶｳﾝﾄﾀﾞｳﾝが始まる､そう言ってなかったか？』

『えぇ…けど次に発見する爆弾がｶｳﾝﾄﾀﾞｳﾝのｽｲｯﾁが作動した爆弾とは限らないわｯｯ！』

３階は洒落たﾃｨｰﾗｳﾝｼﾞだった…ﾘｻも仕事の合間によく利用していたｴｽﾆｯｸ調の落ち着ける場所でその場所をﾎﾟｰﾙとﾘｻは床にはいつくばるように必死に爆弾の設置場所を捜索していた…

『やっぱり二人じゃ無理よｯｯ､何とか応援を呼ばないと…』

ﾘｻはﾍﾞﾀﾍﾞﾀの身体の汗をﾊﾝｶﾁで拭うとﾎﾟｰﾙに話しかけた…

『大丈夫だ､あんなにでかい爆発だったんだ…おそらくさっきの爆発音できっとﾋﾞﾙの周りでは何事かと騒ぎになってるはず…応援も時間の問題だｯ､…俺達は今出来る事を精一杯やり抜くだけだｯｯ…』

『そうよね…大丈夫よねｯｯ､これ以上爆弾犯人に好き勝手されてなるもんですかｯｯ！』

ﾘｻはﾎﾟｰﾙの笑顔に少しばかりさっきから張り詰めていた緊張が解きほぐされたような気がした…

『よし､ここにもないｯｯ､どんどん上がるぞｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙはﾘｻにそう叫ぶと次の４階部分に駆け登った…

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>> 28 🔥28🔥

近所住民の通報でﾋﾞﾙの回りに数台のﾊﾟﾄｶｰがけたたましいｻｲﾚﾝを鳴らしながら到着した…

『通報者はどなた？』

警察手帳を掲げながら一人の刑事らしき男性が野次馬がたかる中通報者を捜した…

『私よ私ｯｯ､刑事さんｯｯ！』

割腹のよい黒人女性が手を挙げて駆け寄ってきた…

『一体何があったんですか？』

『私にも解らないわよｯｯ､ﾋﾞﾙの前歩いてたらいきなり上の方でﾄﾞｶｧ～ﾝ！もう凄い音がして硝子の破片が雨のように降って来たのよｯｯ！そして数分後にまた凄い爆発が起きて､したら見ての通り…玄関部分は瓦礫の山よｯｯ！刑事さんこれって爆弾ﾃﾛ？』

黒人女性は見て来た事実を興奮気味に刑事に話した…

『その可能性は高いですね…で､中に人は？人は居ましたか？』

『解らない…けど今日は【centuryfestival】だったから中にはかなりの人が居たかもね…』

それを聞いた刑事は無線で何処かに連絡を入れた…現場付近は救急車や消防車も到着し騒然となった…

《こちら35B現着…爆弾ﾃﾛの可能性高し…ｹｰｽ5にて直ちに任務遂行して下さい！》

『皆さんここは危険ですｯ､下がって下さい！』

刑事は野次馬に叫んだ…

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>> 29 🔥29🔥

未曾有の大爆発で瓦礫の山と化した10階ﾊﾟｰﾃｨ会場ではﾘｻに負傷者の治療を頼まれた看護専門学校生のﾙｲｰｻﾞ･ﾊﾞｰﾈｯﾄを主導とする軽傷者達が慣れない手つきで負傷者の手当に奔走していた…

『こ､これでいいのかお嬢さんｯｯ？』

『あ…はい…あと大腿部が骨折していますのでそのｼｰﾂと接ぎ木で患部を固定して下さいｯｯ！』

『お～い､看護師さん､このお婆さん意識が朦朧としてるｯｯ､早くこっちに来てやってくれｯｯ！』

『わ､解りました…すぐ行きます､じゃあそれで固定お願いしますねｯｯ！』

軽傷者達はﾙｲｰｻﾞの指示で重症度合いの高い人から順に応急治療に当たっていた…

『ｱﾝﾀ自信ない顔してた割には凄いじゃん！見直したよｯｯ！』

『あ…い､いえ…私はただ…』

回りの人達に褒められ恥ずかしがり屋のﾙｲｰｻﾞばそばかすの顔を赤らめた…

『けど出血が酷くて今すぐにでも病院へ運ばないといけない方も大勢…何とかしなきゃ…』

ﾙｲｰｻﾞは何とか外部に連絡が取れないものかを思案していた…

『あのさ…清掃用具入れの奥に緊急用の無線があるんだけど…』

後ろから作業衣の繋ぎを着た青年がﾙｲｰｻﾞに声をかけた…

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>> 30 🔥30🔥

ﾙｲｰｻﾞは清掃員の若者と一緒に13階にあるこのﾋﾞﾙの清掃従業員控室に入った…

『ここだ…この箱の中に確か無線機が…』

若者はこのﾋﾞﾙ専属の清掃従業員らしくﾋﾞﾙの内部や設備を知り尽くしているようだった…

『あった…これだ！これなら周波数が異なるから妨害電波も使えないｯｯ…これで警察に連絡を取れる！怪我人を救出できるよｯｯ！』

ﾙｲｰｻﾞは有難うと言うと清掃員ははにかむように苦笑いした…

『じゃあ早速状況を説明するわｯｯ！』

ﾙｲｰｻﾞが無線機の電源ﾎﾞﾀﾝを入れようとしたその時だった！清掃員の若者の後頭部に銃口が当てられていた…

『動くなｯｯ…おい看護師､無線機をよこせｯｯ！』

清掃員に銃口を向けていたのはさっきから一緒に10階に居たあの赤いｼｬﾂの髭男だった！

『あ…貴方ｯｯ…』

『早くよこせｯｯ…さぁ！』

髭男はﾙｲｰｻﾞに手を差し出し無線機を手渡せと凄んだ…

『まさか…貴方が爆弾犯人…』

『！ｯｯ､…』

一瞬の隙をつき清掃員は銃を握ると髭男と揉み合いになった！

『ｸｯ､離せｯｯ､』

『ﾃﾒｪｯ､ｸｯ､や､やめろｯｯｯｯ！』

二人は組み合ったまま倒れ込んだ！次の瞬間､

ズドォｫｫｫｫｫｫｯｯｯｯ！

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>> 31 🔥31🔥

『ｸﾞｯ…ｸﾞﾊｱｯ…ｱｧ…ｱ…ﾁｷ…ｼｮ…』

重なり合う二人の身体が解けた瞬間､下に居た清掃員の床から鮮血が滲み出してきた！

『キャアｯｯｯｯｯ！』

ﾙｲｰｻﾞは思わず声を上げた…拳銃を持っていた髭男はのそりと立ち上がるとゆっくりﾙｲｰｻﾞの方を振り返り不敵な笑い顔を浮かべた…

『ﾁｯ…ｺｲﾂが悪いんだぜｯｯ…ｸｸｸ…余計な真似するから…』

赤いｼｬﾂの髭男は床に息絶えている清掃員の返り血を浴びたまま震えて動けないﾙｲｰｻﾞの手から無線機を取り上げた…

『いいか！今後下手な真似すんじゃねぇぞ！』

髭男はﾙｲｰｻﾞに10階に戻れと銃口を向けるとゆっくり歩き出した…

（ひ…酷いｯｯ…あんまりよ…）

ﾙｲｰｻﾞは振り向き歩きながら血の海と化した清掃員の真新しい死体を名残り惜しそうに眺めた…

『ﾁｯ､とんだ予定外だぜ…』

『やっぱり…初めからどこか怪しいと思ってたのよｯｯ…』

髭男の余りの理不尽な殺害にﾙｲｰｻﾞの声が大きくなった…

『おいｺﾗ､お前もさっきの奴みたいになりてぇか！？…ﾌﾞｯ殺されたくなきゃ黙って歩けｯｯ！』

髭男はﾙｲｰｻﾞを拳銃で突くとゆっくり階段を降りて行った…

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>> 32 🔥32🔥

爆発が起きたと思われる１階玄関ｴﾚﾍﾞｰﾀｰﾛﾋﾞｰの瓦礫の辺りを救急隊のﾚｽｷｭｰﾁｰﾑが生存者救出の為に懸命の作業に従事していたが焼け焦げた死体ばかりで結局生存者は見つからなかった…

『本部長ｯ…中は１階部分がｴﾚﾍﾞｰﾀｰが壊れ完全に瓦礫の山と化してます…おそらく爆破による影響と思われます…そして２階より上に昇るには外部に取り付けられた螺旋階段で昇っていくしかありませんね…しかしそこに行くまでに大きく崩れ落ちた鉄筋が道を塞いでいますが…』

『そうか……』

救急隊から報告を受けたｼｶｺﾞ警察本部長ｱﾗﾝ･ﾘｭｰｸは腕組みをしてため息をついた…

『中の状況が全く掴めませんね…爆弾ﾃﾛなら犯人からの何らかの声明があったって不思議ではないですし…上階に何名の生存者がいるのかどうかですら…』

ｱﾗﾝの相棒で部下の小柄なﾚｲﾁｪﾙ･ﾏｯｿが呟いた…

『しかし二度に渡って爆弾が爆発したのは事実だ…事は慎重に起こさねばならん…』

真面目な性格の本部長ｱﾗﾝは眼鏡を指で軽く持ち上げた…

『ﾚｲﾁｪﾙ､FBIに連絡してS-SWATの派遣を要請してくれｯｯ！』

『え？…S-SWATですか？』

『念には念を…だ！』

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>> 33 🔥33🔥

ズキュｫｫｫｫｯｯｯン！

10階に一発の銃声が響き渡った！

『おい､注目だｯｯ､全員こっちを見ろｯｯ！ｵﾗそこの奴ｯｯ､早くしろｯ！』

赤いｼｬﾂの髭男はﾙｲｰｻﾞを床に叩きつけるとﾌﾛｱにいた負傷者や軽傷者に向かって声を張り上げた！

『な､何だお前ｯｯ…拳銃なんか持って…冗談は他でやってく…』

髭男は割って入って来た背広の中年男性に銃口を向けると睨みつけた…

『ひ､ひいｯｯ！』

背広の男性は状況が飲み込めたのか直ぐに黙って手を挙げた…

『今からお前らの命は俺様が預かった！早死にしたい奴は申し出ろｯｯ､今すぐ天国に送ってやる！それが嫌なら事が済むまで此処で大人しくしてろ､いいな！？』

ﾌﾛｱ中が恐怖の静寂に包まれた…

『質問はｯｯ！？』

髭男は側の椅子に偉そうに腰掛けた…一人の男性が半ば震えながら恐る恐る手を挙げた…

『い､ｱﾝﾀの言う事聞いてたらｯ､生かして帰してくれるんだなｯｯ！？い､いや…ですね？』

『……そうだ…だが俺の気分次第で状況が変わる…』

ﾌﾛｱ全員が身震いした…

『貴方…爆発犯人なの？』

ﾙｲｰｻﾞが勇気ある核心をついた質問を髭男に投げ掛けた…

『あぁ…そうだ…』

ﾌﾛｱ中が恐怖と落胆で震えた…

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>> 34 🔥34🔥

『ほらｽﾘｰｶｰﾄﾞだｯｯ！俺の勝ちだな…』

『ん～ｺﾞﾒｽちゃん残ぁ～念ｯｯ！ﾌﾙﾊｳｽ…私の勝ちｯｯ！来週Rｿｯｸｽ戦内野指定席はｱﾀｲのﾓﾝだね､ﾍｯﾍｪ～ﾝ！』

ｺﾞﾒｽはｼﾝﾃﾞｨにもうひと勝負だ！と言うと太い腕でﾄﾗﾝﾌﾟを繰り始めた…

『おいお前らｯｯ…いつまでもそんな事してねぇでTVのﾆｭｰｽ観てみろよｯｯ！何かｼｶｺﾞが大変な事になってるぜｯｯ！』

同僚のﾒﾙﾍﾞがｸﾁｬｸﾁｬとｶﾞﾑを噛みながら部屋に入って来た…

『ｼｶｺﾞぉ？ｶﾌﾞｽがﾌﾟﾚｰｵﾌにでも進出したかｯｯ？』

『ｶﾞﾊﾊﾊ､ないないｯ…それは絶対にないって！』

笑いながらｺﾞﾒｽは側のTVをつけた…ﾆｭｰｽでは白煙くすぶるﾋﾞﾙの映像が映っていた…

『何何？ｼｶｺﾞ《ｾﾝﾁｭﾘｰ商業ﾋﾞﾙで爆弾ﾃﾛか！？》だってぇ？ﾏｼﾞかよ…』

ｺﾞﾒｽは思わず配りかけのﾄﾗﾝﾌﾟを置いた…

『中に残っている生存者等は不明…おいおい､こりゃ久しぶりに穏やかじゃない事件だなぁ…まさか俺達が召集されるって事はないよな？』

『そのまさかだよｯｯ！』

ﾒﾙﾍﾞは召集が記されたFAXを二人に見せた…

『S-SWAT…出動命令だｯｯ！』

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>> 35 🔥35🔥

《Ｓ-SWAT》とはｱﾒﾘｶ防衛庁の機密機関が対ﾏｽﾗﾝﾀﾞ軍残党ﾃﾛ対策の為独自に生み出した従来のSWAT部隊からさらに振るいにかけてよりすぐられたﾃﾛのﾌﾟﾛ…言わばｱﾒﾘｶ世紀軍きっての精鋭中の精鋭部隊である…普段隊員はｱﾒﾘｶ東海岸沿いの主要都市に駐在し､今回のような未曾有の大規模なﾃﾛにいつでも対応できるよう備えている…

『ほんでよｺﾞﾒｽｯｯ､奥さんとは仲直り出来たのかｯｯ？』

『ｱﾎｯ､嫁とならもうとっくの昔に離婚成立してらぁｯｯ！俺ｼﾝﾃﾞｨに言ってなかったっけ？』

ｺﾞﾒｽとｼﾝﾃﾞｨは慌ただしく更衣室で紺色の防弾ﾁｮｯｷを着ると所持品の確認に入った…

『ﾎﾝｯﾄあんたって男は女心ってぇのが丸っきり解ってないみたいだねｯｯ…いぃか､女ってのは…』

『おいおい…お喋りは後だご両人ｯｯ！迎えのﾄﾗｯｸが外で待ってる…急げｯｯ！』

二人の上司であるﾒﾙﾍﾞの激が飛んだ…ｺﾞﾒｽとｼﾝﾃﾞｨは施設の階段を駆け降りるとそのまま玄関に停まっていた世紀軍のﾄﾗｯｸの荷台に飛び乗った…

『ｸｩ～何か久しぶりだなおいｯ…ﾜｸﾜｸするぜｯｯ！』

『馬鹿､調子乗ってっと命落とすぞｯｯ！』

ｼﾝﾃﾞｨは笑うｺﾞﾒｽを肘でついた…

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>> 36 🔥36🔥

『どうｯ､そっちはｯｯ！？…ﾊｧｯ､ﾊｧｯ…』

『い､いや､それらしき物はﾊｧｯ､ﾊｧｯ…しっかし広れ～なこのﾌﾛｱは…きりないぜｯｯ…』

ﾎﾟｰﾙは全身汗だくになりながら手を腰に当てて立ちすくんだ…４階～12階部分はﾎﾃﾙの客室になっていて全ての部屋を隈なく探すのは疲労感漂う二人にとり､かなりの重労働だった…

『西側の客室はﾁｪｯｸした…後は東側の客室と厨房ねｯｯ！』

ﾘｻは爆弾犯人から渡されたｳｻｷﾞのｷｰﾎﾙﾀﾞｰをまじまじと見つめてさぁ､もう一度ｯｯ！とﾎﾟｰﾙを鼓舞して自ら走り出した…

『ﾋｪ～ｱﾝﾀ新聞記者のｸｾにやけに体力あんだな…ﾊｧｯ､ﾊｧｯ…』

『こんな所でﾍｺたれてる場合じゃないわｯｯ！たとえ体が潰れたって爆弾を探して解除しなきゃｯｯ！ﾊｧｯ､ﾊｧｯ…』

ﾎﾟｰﾙはお手上げ～のﾎﾟｰｽﾞをすると舌を出してﾘｻの後に続いて走り出した…

『！ｯｯ､ま…待ってﾎﾟｰﾙｯｯｯ！ｽﾄｯﾌﾟ！』

いきなりﾘｻが走りを止めて通路右側にある扉を凝視した！

『な､何ｯｯ！？…まさか…ここかｯｯ？』

ﾘｻは扉をゆっくり開けると真っ暗闇の部屋に足を踏み入れた…

『！ｯｯあった！ほら見てｯｯｯ！』

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>> 37 🔥37🔥

『…しかし今度のはまた…ﾃﾞｶいな…』

扉の向こうは物置になっていてその突き当たりに二人の背丈よりも高い業務用の冷凍庫のような家具が置いてあった…何と爆弾はその中全体を覆うように詰まって設置してあった…

『外せるｯ？』

『ﾁｯ…少し時間がかかりそうだ…』

ﾎﾟｰﾙが解除に取り掛かろうとした時ﾘｻが思わず腕をとった！

『でも待ってﾎﾟｰﾙ…この爆弾のﾀｲﾏｰは作動していないわ…』

『ん､確かに…』

ﾘｻは一度汗を拭って息を吐いた…

『爆弾犯人の奴確か爆弾を一つ解除する毎に次の爆弾のﾀｲﾏｰが作動するって…それって…』

『つ､つまりこの爆弾を処理してる間にも何処かでﾀｲﾏｰが作動した爆弾がｶｳﾝﾄﾀﾞｳﾝ…そして爆発ｯｯ！…おいおいﾏｼﾞかよﾁｷｼｮｯｯ！次に何処の爆弾が爆発するなんてどうやって！いちいちその都度走り回って確認しろってかよｯｯ！野郎ﾅﾒやがってｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙは思わず持っていたﾄﾞﾗｲﾊﾞｰを床に叩き付けた！

『！ｯｯ…う､嘘ｯｯ！』

ﾘｻの顔つきが豹変した！

『ど､どうしたﾘｻ…』

『こ､この近くにもう一つ爆弾があるｯｯ！』

『な､何だってｯｯ！？』

ﾘｻは思わず部屋を出てｷｰﾎﾙﾀﾞｰの赤い光を確認した…

• << 40 🔥38🔥 『この先の突き当たりの客室の方からだわｯｯ！』 『お､ち､ちょっと待てよｯｯ！こっちのﾃﾞｶい奴はどうすんだよｯｯ！』 ﾎﾟｰﾙの忠告も聞かずﾘｻはその爆弾の反応がある客室に走り出した！ 『凄い反応だわｯｯ！近いｯｯ！どこｯ？どこなのｯｯ！？』 けたたましく鳴り続けるｷｰﾎﾙﾀﾞ-の赤いﾗﾝﾌﾟを辿りながらﾘｻは風呂場に備え付けられていた爆弾を発見したｯｯ！ 『あったｯｯ！ﾎﾟｰﾙｯｯ､来てｯ､早くｯ！早くｯｯｯ！』 『ま､待てよｯ､せっかく見つけたんだｯ､ｺｲﾂが起動しないよう線を切っとかなきゃｯｯ！』 ﾎﾟｰﾙは先に見つけた爆弾装置を解除するとﾘｻの声のする客室に走った… 『！ｯｯ､き､起動してるじゃねぇかｯｯ！』 『だからさっきから早くって言ったじゃないｯ！』 『起動してるならそれを早く言えよｯｯ！』 ﾎﾟｰﾙはゆっくり浴室に入るとﾊﾞｽﾀﾌﾞに備え付けられていた爆弾を見つめた… 『あとまだ５分あるわ…大丈夫よねｯｯ？』 ﾘｻが後ろから不安げに尋ねた… 『…ﾘｻ…この場から今すぐ離れろｯｯ！』 『！ｯｯ…え？な､何故？わた…』 『いいから離れろってｯｯ！』 ﾎﾟｰﾙはﾘｻを怒鳴りつけた…

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ビリケン様こんばんは🙇 お久しぶりです😊 エスケープゲームの２がでるとは！嬉しいです☺ 更新毎日チェックしてますが久しく出てないので心配になってしまいレスしてしまいました💧うざくてスミマセン💦 続き楽しみにしてます！また楽しい小説書き続けて下さいね😊応援してま～す！

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>> 38 🔥37🔥 『…しかし今度のはまた…ﾃﾞｶいな…』 扉の向こうは物置になっていてその突き当たりに二人の背丈よりも高い業務用の冷凍庫のような… 🔥38🔥

『この先の突き当たりの客室の方からだわｯｯ！』

『お､ち､ちょっと待てよｯｯ！こっちのﾃﾞｶい奴はどうすんだよｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙの忠告も聞かずﾘｻはその爆弾の反応がある客室に走り出した！

『凄い反応だわｯｯ！近いｯｯ！どこｯ？どこなのｯｯ！？』

けたたましく鳴り続けるｷｰﾎﾙﾀﾞ-の赤いﾗﾝﾌﾟを辿りながらﾘｻは風呂場に備え付けられていた爆弾を発見したｯｯ！

『あったｯｯ！ﾎﾟｰﾙｯｯ､来てｯ､早くｯ！早くｯｯｯ！』

『ま､待てよｯ､せっかく見つけたんだｯ､ｺｲﾂが起動しないよう線を切っとかなきゃｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙは先に見つけた爆弾装置を解除するとﾘｻの声のする客室に走った…

『！ｯｯ､き､起動してるじゃねぇかｯｯ！』

『だからさっきから早くって言ったじゃないｯ！』

『起動してるならそれを早く言えよｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙはゆっくり浴室に入るとﾊﾞｽﾀﾌﾞに備え付けられていた爆弾を見つめた…

『あとまだ５分あるわ…大丈夫よねｯｯ？』

ﾘｻが後ろから不安げに尋ねた…

『…ﾘｻ…この場から今すぐ離れろｯｯ！』

『！ｯｯ…え？な､何故？わた…』

『いいから離れろってｯｯ！』

ﾎﾟｰﾙはﾘｻを怒鳴りつけた…

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>> 40 🔥39🔥

『は､離れろって…ﾎﾟｰﾙ…』

『…こ､こいつはかなり厄介だ…時間内に解除出来るかどうか…もしもの為にお前だけでも…言ってる意味解るよな？』

ﾎﾟｰﾙは汗を袖で拭うとﾄﾞﾗｲﾊﾞｰを口にくわえると早くこの場所から離れろとﾘｻに念を押した…

『う､嘘…冗談はよしてよﾎﾟｰﾙｯ…解除出来ないなら無理しないでｯｯ！早く一緒にこの場から逃げましょ！』

『駄目だｯｯ､このままｺｲﾂを放っておいて爆発させでもしたらこのﾋﾞﾙが一気に崩落しかねないｯ､そうなりゃ全て終わりだｯｯ！何とかして解除しないと…』

『で､でも…』

ﾘｻは何も出来ずただﾎﾟｰﾙの後ろ姿を眺めて唇を噛み締めていた…

『大丈夫だｯｯ､俺はこう見えて強運の持ち主なんだ…宝くじだって300＄当選した事あんだぜｯ！』

ﾎﾟｰﾙは鼻をかきながら心配そうなﾘｻに微笑んだ…

『だからﾘｻは早く次の爆弾を見付けに上に昇れｯ！俺も後から必ず行くから…なｯ？』

『きっと…きっとよｯ､約束よｯｯ！』

ﾘｻはﾎﾟｰﾙの分厚い肩に手を置くと一息いれゆっくり踵を返しこの場を後にした…

（お願い神様…ﾎﾟｰﾙに幸運をｯｯ！）

ﾘｻは螺旋階段を駆け上がってすぐ上の階に消えて行った…

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>> 41 🔥40🔥

７階に到着したﾘｻは時計を見た…

（早くｯ､早く来てﾎﾟｰﾙｯｯ！あと２分しかないｯｯ！）

祈るような気持ちでﾘｻは爆弾を探しながらﾎﾟｰﾙが上がって来るのを待っていた…

【爆弾探しははかどっているかね？…ﾌﾌﾌ…】

『！ｯｯ､あ､ｱﾝﾀｯｯ！』

突然ﾘｻのｷｰﾎﾙﾀﾞ-が青く光り例の爆弾魔の声が流れて来た…

『いい加減こんな事やめないと今にえらい目に遭うわよｯｯ！』

【おや？さっきの威勢のいいお仲間はいないのかい？】

爆弾魔は不気味に含み笑いをした…

『彼なら今ｱﾝﾀの仕掛けた爆弾の処理をしてくれてるわｯｯ､いい？捕まってただで済むと思わないでｯ､ｱﾝﾀは罪もない何十人もの人の命を奪ったんだからねｯｯ！その償いはきっちりさせてあげるわｯｯ！』

ﾘｻはｷｰﾎﾙﾀﾞ-に向かって渾身の力で叫んだ…

【…ﾌﾌﾌ､そりゃ楽しみだ…ところでﾘｻ･ﾎﾞﾅｺﾌ君…私はこの場所から仕掛けた全ての爆弾を意のままに操作出来るって事…知っていたかな？】

ﾘｻの顔から血の気が引いた！

『そ､それどういう意味よｯｯ､ま…まさかｯｯ！？』

【ﾌﾌﾌ…５階奥の客室浴室の爆弾…お仲間にｻﾖﾅﾗを言いたまえｯｯ！】

次の瞬間ﾘｻの足元が盛り上がった！

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>> 42 🔥41🔥

チュドォｫｫｫｫｫｫｫｫﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｺﾞｫｫｫｫｫ～ﾝ…

次の瞬間ﾘｻの身体がﾌﾜｯと浮いたかと思うと床が突然割れそこから爆風が突き上げた！

『キャｧｧｧｧｧｯｯｯｯ！』

ﾘｻはそこから軽く10mは飛ばされ浮いた身体毎壁に叩き付けられた！

『う…ｸｯ､う､嘘で…しょ…ｸｯ､ﾊｱｯ､ﾊｱｯ…』

壁に叩き付けられた衝撃でﾘｻの左腕は肩から力が入らなくなっていた…

『ち､ﾁｷｼｮ…な､何て事を…う､嘘でしょ…ﾎﾟｰﾙ…ﾎﾟｰﾙｯｯｯｯ！』

ﾘｻは震えて動かない腕を支えながら大声でわめいた！

【ﾌﾌﾌ…ｻﾖﾅﾗは言えたかね？…お前のお仲間は必死に爆弾を解除途中に…ﾄﾞｶﾝ！ｶﾞｯﾊｯﾊ､愉快愉快ｯｯ！】

『ｸｯ､あ…ｱﾝﾀゆ…許さないｯｯ！この手で必ず…ﾌﾞｯ殺してやるｯｯ！』

ﾘｻは当たり所のない怒りの拳を思い切り床に叩き付けた！

【さぁﾘｻ･ﾎﾞﾅｺﾌ君…また君一人になった…ｹﾞｰﾑを続けてもらおうかね…ｸｸｸ】

『ﾁｷｼｮｯｯ､地獄に堕ちろｯ､この悪魔めｯｯ！』

ﾘｻの眼から悔し涙が溢れ出した…そして状況はどうであれこんな事に巻き込んでしまったﾎﾟｰﾙに心から懺悔した…

（ﾎﾟｰﾙ…ごめんなさい…私の､私のせいで…）

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>> 43 🔥42🔥

迷彩柄の重厚な軍用ﾍﾘがﾋﾞﾙのすぐ横の駐車場に土埃を舞い上げながら着陸した…

『来たか…S-SWAT…』

ﾍﾘから迷彩服を着た隊員達6､7名が降りて来た…

『ここの現場責任者はどなた？』

この隊の指揮官であるﾒﾙﾍﾞがﾊﾟﾄｶｰの警官達に声をかけた…

『ここかぁ…随分ﾃﾞｶいﾋﾞﾙだな…あそこから煙が出てる､ほら！』

ﾍﾘから降りたｺﾞﾒｽがｼﾝﾃﾞｨに見てみろよと指を差した…

『ついさっきまた爆発が起きたんだよｯｯ！ﾄﾞｶｧ～ﾝて凄いのがｯｯ！』

ｼﾝﾃﾞｨの足元に突然小さな男の子が親しげに近付き話しかけてきた…

『…そっか…怖くないのか？坊主は…』

ｼﾝﾃﾞｨはその男の子の頭を優しく撫でた…

『ねぇ､お姉さんどうして男の人達の中に一緒にいるの？女の人なのに戦えるの？』

『坊主ｯｯ､このお姉ちゃんはな､そこいらのやわな野郎よりも優秀で勇敢なｽﾜｯﾄ隊員なんだｯ､ﾎﾞﾔｯとしてたらﾀﾏ蹴られっぞ～！』

ｺﾞﾒｽが悪戯っぽく男の子にそう告げると男の子は何も言わずに立ち去った…

『ﾊﾞｶｯ…子供驚かせてどうすんのさｯｯ！』

ｼﾝﾃﾞｨはｺﾞﾒｽの頭を軽くこついた…

『状況を説明する！』

ﾒﾙﾍﾞの元に隊員達が集まった…

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>> 44 🔥43🔥

『所轄の刑事の話では瓦礫の中に生存者がいたらしくその人の話では今から約一時間以上前､ﾋﾞﾙの10階部分が突然爆発し､祭りに来ていた数百人の約半数程が生き埋めになり死亡…その残り何十人かがまだ生存しているとの事だ…爆弾犯人からの要求はまだない…』

ｼﾝﾃﾞｨ達は銃の予備弾の確認をしながらﾒﾙﾍﾞの話を真剣に聞いていた…

『我々の任務はその10階部分にいるであろう生存者の救出だ…』

『長官…』

ｼﾝﾃﾞｨがﾒﾙﾍﾞに声をかけた…

『時限爆弾の爆発は３回…もしかしたらまだﾋﾞﾙの中に爆弾が設置されている危険性はありませんか？犯人は何処か遠くからこちらを見て遠隔操作しているとしたら…』

『うむ…その可能性は拭い切れないな…我々の動きが察知されて下手に爆弾を爆発させられたら元も子もない…行動は慎重かつ迅速にｯ､ｹｰｽ8774で行くぞｯｯ！』

ﾛｼﾞｬｰと号令をかけると二手に別れて隊員達が散った…ｼﾝﾃﾞｨとｺﾞﾒｽ､ｻﾑ､ﾌﾛｰﾚﾝｽの部隊４人はﾋﾞﾙの西側の金網を乗り越えﾋﾞﾙの敷地内に潜入した…

『こりゃひでぇ…どんな爆弾使えばこれだけの瓦礫になるんだｯｯ…』

ｺﾞﾒｽが悲惨な光景に目を丸くした…

『さ､行くよｯｯ！』

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>> 45 🔥44🔥

『さっきの…爆発は何ｯｯ､…な､何なんだよｯｯ！』

10階ﾌﾛｱの狭い会議室のような場所に集められたﾊﾟｰﾃｨの生存者達は突然起こった爆発に恐れおののいていた…髭を蓄えた赤いｼｬﾂの男は拳銃をｸﾙｸﾙ回しながらその部屋の出口付近に人質を通せんぼする形でじっと煙草をふかしていた…

『随分派手に爆発したもんだｯ､ｷｬﾊﾊﾊ！』

『ｱﾅﾀ､よ…よくもﾍﾗﾍﾗ笑っていられるわねｯｯ！…これだけの罪もない人々を苦しめてｯｯ！』

看護学生のﾙｲｰｻﾞが爆弾魔と思われる赤いｼｬﾂの男に詰め寄った…

『や､やめなさいお嬢さんｯｯ､これ以上犯人を刺激するんじゃないｯｯ！』

人の良さそうな背広の老人が興奮するﾙｲｰｻﾞの肩を取りそっと宥めた…

『随分威勢のいい看護師さんじゃねぇか…ついさっきまで野ｳｻｷﾞのようにﾌﾞﾙﾌﾞﾙ震えてやがったくせによｯｯ！』

赤いｼｬﾂの男はゆっくり銃口をﾙｲｰｻﾞに向けた！

『…何？撃つの？…いいわよｯ､撃ちなさいよｯｯ！さっきの青年を撃ち殺したようにｯｯ！』

『やめなさいお嬢さんｯｯ！』

次の瞬間赤いｼｬﾂの男の蹴りがﾙｲｰｻﾞのお腹に激しくﾋｯﾄした！

『！ｯｯ､ｸﾞｯ…ｳｩｯ…く…』

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>> 46 🔥45🔥

『いいかﾈｪちゃん…二度とこの俺様にﾃﾞｶい口叩くなｯｯ？あんｯ？…調子乗ってっとﾏｼﾞでｵﾃﾞｺに風穴開けるぞｯｯ！』

ｹｯ！と床に唾を吐くと赤いｼｬﾂの男は不機嫌そうにまた煙草を吹かした…

『大丈夫かい？…だから逆らうなって言っただろｯｯ？』

お腹を抱えて蹲るﾙｲｰｻﾞに背広の老人が心配そうに駆け寄って来た…

『い…痛いｯｯ､ｸｯ…許さないｯ､絶対捕まるよｱｲﾂｯｯ！ｲﾃﾃ…』

ﾙｲｰｻﾞは蹴られたお腹を抱えながら近くのﾊﾟｲﾌﾟ椅子に腰掛けた…

『あの人大丈夫かな…ﾘｻって人…』

ﾙｲｰｻﾞがふと老人に話し掛けた…

『さぁな､爆弾を解除しに行ってまだ帰って来ん…何もなけりゃいいんじゃが…』

老人は鎮痛薬だと言ってﾙｲｰｻﾞに漢方薬のようなものを飲ませた…

『あ､ありがとうございますお爺ちゃん…』

ﾙｲｰｻﾞは薬を飲み込むとゆっくりと座り直した…

『重傷の人々の出血が今もまだ…ｸｯ､一体どうすれば…看護師の卵のくせに目の前で苦しんでる人々を救えないなんて…』

『いや､ｱﾝﾀはよくやっとる…少なくともさっきのｱﾝﾀは未熟な看護学生なんかじゃない…立派な看護師じゃよ…』

老人は泣き崩れるﾙｲｰｻﾞの肩をそっと抱いた…

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>> 47 🇺�ＥＳＣＡＰＥ-ＧＡＭＥ登場人物紹介

🔥ﾘｻ･ﾎﾞﾅｺﾌ：世紀軍国際日報（AIN）ｼｶｺﾞ支部編集長｡突然の爆弾ﾃﾛによりｹﾞｰﾑの標的となる｡元ﾏｽﾗﾝﾀﾞ軍からのｻｶﾞﾝ捕虜収容所解放の英雄｡

🔥ｼﾝﾃﾞｨ･ﾏｲﾔｰ：ﾘｻと同じｻｶﾞﾝ捕虜収容所解放の立役者で現在は世紀軍きっての精鋭部隊S-SWATの隊員｡

🔥ﾓﾘｰ･ｵｺﾁｬ：ﾘｻが勤務するAINのﾍﾞﾃﾗﾝ編集部員｡ﾘｻのよき相談役｡

🔥ｵﾏﾘｰ･ｽﾜﾝｸ：ﾓﾘｰらと同じ職場で働く新米編集部員｡かなりの臆病者｡

🔥ｼﾙﾋﾞﾅ･ﾎﾞﾅｺﾌ：ﾘｻの愛娘｡大人しい性格で争いは好まない｡事件直後はﾓﾘｰらとﾋﾞﾙ最上階に｡

🔥ﾎﾟｰﾙ･ﾍﾞﾙｸﾞﾏｲﾔｰ：ｼｶｺﾞ市内の消防署に勤務する消防士｡過去に軍隊にいて爆弾処理の経験があるらしい｡爆弾犯人の凶行で爆発に巻き込まれる｡生死は不明｡

🔥ｺﾞﾒｽ･ﾙｲｽ：ｼﾝﾃﾞｨと同じくS-SWAT隊員でｼﾝﾃﾞｨの信頼出来る相棒｡

🔥ﾒﾙﾍﾞ･ｼﾙﾊﾞｰﾏﾝ：ｼﾝﾃﾞｨ達S-SWATの直属の上司だが同世代の為普段ｼﾝﾃﾞｨ達は友達のように振る舞う｡

🔥ｱﾗﾝ･ﾘｭｰｸ：ｼｶｺﾞ市警ﾃﾛ対策本部長｡

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>> 48 🇺�ＥＳＣＡＰＥ-ＧＡＭＥ登場人物紹介

🔥ﾚｲﾁｪﾙ･ﾏｯｿ：ｼｶｺﾞ市警ﾃﾛ対策本部に参加している刑事でｱﾗﾝの部下兼仕事での相棒｡

🔥ﾙｲｰｻﾞ･ﾊﾞｰﾈｯﾄ：偶然事件の階に居合わせた看護学生｡爆弾で負傷した怪我人の介護にあたる｡大人しい性格だが犯人に食ってかかる等ここ一番の正義感も強い｡

🔥赤いｼｬﾂの髭男：爆弾犯人と名乗るﾊﾟｰﾃｨに紛れていた不審な男｡清掃員の若者を銃で殺傷している｡



💀皆様からのご意見ご感想お待ちしています✌

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ビリケン昭和様、お久しぶりです。
突然の横スレ、失礼致します。
🔥ESCAPE GAME🔥
もう、続編が出来たって聞いて、一気に読んでしまいました。

前回にも増して、追い詰められる主人公と人質たち。ハリウッド映画さながらの危機感とストーリー構成に、すっかり痺れてしまいました。


これから最後まで、是非本編の方を読ませていただきますので、どうか頑張って書いて下さい！🙇

• << 51 🔥46🔥 『下の階でまた爆発が起きたみたいだよｯ､ﾓﾘｰのおばちゃん…』 ﾋﾞﾙの最上階のｵﾌｨｽにいたｼﾙﾋﾞﾅは不安そうにﾓﾘｰの服の袖を力強く掴んだ… 『大丈夫だよｯ､あんな爆発どぉ～って事ないんだからねｯｯ！必ずお母さんが助けに戻ってくれるから…』 窓の外眼下に白煙が立ち上るのを眺めながらﾓﾘｰはｼﾙﾋﾞﾅに出来るだけ優しい慰めの言葉をかけた… 『けど…こんな場所でじっといつまでもこうしちゃぁいられないねｯｯ…ｵﾏﾘｰはﾄｲﾚに行ったきりまだ臆病風に震えてるみたいだし…』 ﾓﾘｰはゆっくりしゃがむとｼﾙﾋﾞﾅに目線を合わせた… 『いいｼﾙﾋﾞﾅ…今からおばちゃんと階段をゆっくり降りてくよｯｯ？おばちゃん脚腰が痛いから亀さんみたくゆっくりだけど…こんな場所でじっと待ってるだけよかいいだろ？』 『…うん…でもおばちゃん大丈夫？歩けるの？無理しないでｯｯ！』 ｼﾙﾋﾞﾅは小さな手でﾓﾘｰの背中を摩った… 『ﾌﾌﾌ､ありがと…ｱﾝﾀはお母さんに似て優しい娘だね…』 ﾓﾘｰはｼﾙﾋﾞﾅの前髪を整えながら微笑んだ… 『おいｵﾏﾘｰｯｯ！何してんのさｯｯ！非常階段で下に降りてくよｯｯ！早くﾄｲﾚから出てきなｯｯ！』

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