💀ビリケン昭和の短編小説📓
前スレ
🎈手軽に読める短編小説~に引き続き、ビリケン昭和💀の短編小説始まります🎊
笑いあり涙ありシリアスありのテンコ盛り‼貴方も是非📓短編小説の虜になって下さいね💕お便り感想もどしどしお待ちしています💦
さぁて…最初のお話は…👂✨
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>> 300
👓43👓
『おぃ銀ッッ、ワレら忍者やないぞッッ!コソコソ隠れながら殴り込む機会待っとるのはワシの気性にゃ合わんッッ!玄関から堂々と行ったるッッ!』
赤虎は我慢に耐え切れなくなり立ち上がった…
『まッ待てや虎ドアホッッ!もうすぐじゃッッ、佐田ん奴が現れるまで待たんかいッッ!妹捕まってて苛立つ気持ちは解るがぁ事は慎重に起こさんとエライ目見てまうどッッ!』
その時バタバタとバイクの音がした…
『!ッッ、き、来たッッ、佐田やッッ!』
銀龍の子分の佐田はピザのバイクで廃墟に横付けした…
『な、何じゃいワリャ!』
『あ…へい、ピザの出前です…確かここで合ってると…』
ピザ屋の配達員に変装した佐田は地図を広げて考え込んでいた…
『おぃ、聞いてたか?』
『いや、ピザ頼んだなんて知らんど!』
玄関口の白狼の見張りの組員が顔を見合わせた…
『おぃ、頼んでないッッ、何かの間違いじゃッッ、失せろボケッッッ!』
白狼の組員は佐田をこついた…
『いや…せやけど確かにここに…』
『ワリャあんまりひつこいとノバすぞゴゥラァァッッッ!?』
組員達は佐田を囲むように睨み付けた…
>> 301
👓44👓
『わッ、解りましたスンマヘンッ…どうやらウチの聞き間違いみたいでしたッ、迷惑かけましたな…ヘヘヘ』
佐田は荷台からピザの箱を取り出した…
『これお詫びですッ、皆さんで食べて下はれッッ…』
『何じゃい、え、えぇのかぃ?…そんなら遠慮のぅ…おぅワレらッ、ピザじゃピザッッ!』
一人の組員の呼びかけに見張りをしていた白狼の組員達が佐田の周りにゾロゾロと集まってきた…
『お口に合うかどうか解りまへんけど…』
『ほぅ、旨そうやないけ、中に何が入っとるんじゃい?』
『食べてからのお楽しみッッ!ウフフ』
気持ち悪い奴っちゃな~と一人の組員がピザを頬張ったその時佐田は不敵な笑みを浮かべて答えた…
『どうです?地獄味の極上ピザはッッッ!』
『!ッッグ、な、ぬぁにぃィィィィィッッッッッ!?』
組員が叫び声を上げたが早いか次の瞬間佐田の周りにモクモクと猛烈な煙幕が上がった!佐田の周りは白煙で包まれた!
『今ですッッ、ゲホッ、兄貴ぃぃッッッッ!』
佐田の掛け声とともに草むらから銀龍達が一斉に飛び出したッッ!
『ウッオリャャャャャャャャャッッッッッッ!ワレら行くドォォォォォッッッッ!』
>> 302
👓45👓
『!ッッ、銀龍ッッ、赤虎ッッ、た、大変じゃッッ、黒原組の銀龍と赤虎のガキの奇襲じゃァッッッッッ!ゲホッ、ゴホッ!』
煙に包まれた中から日本刀を構えた龍虎連合隊30人余りがまるで戦国の合戦のようにウォォッッッッ!と雄叫びをあげながら玄関口に突進してきた!銀龍赤虎の組員達は二人の若き組長の周りを盾になり取り囲み走った…
『ウッオリャァァッッッッ、どけどけどけッッ、近付く奴ぁ全員ブッ殺せェェッッッッ!』
『えぇか虎ッッ、中入ったら真っ直ぐ突き当たりの部屋まで走り抜けるんじゃッッ!ザコ共は相手にすなッッッ!』
『じゃっけしゃッッ、んな事イチイチ言わんでも解っとるわいボケガァッッッ!』
やっといつもの赤虎の調子に戻りやがったと銀龍は苦笑いして肩を撫で下ろした…バスッッッ、ボコッッ!近付く白狼の組員を殴り、激しく足蹴りしながら銀龍達は玄関をブチ壊し廃墟の中に突入した!
『オッリャァッッッッッ、邪魔じゃッッ、どかんかいザコッッ!』
白狼の組員の振り下ろす刀を寸での所でかわすと銀龍は顔面に思い切り蹴りを喰らわせた!
『銀よ…まだまだ腕は鈍ってへんようやなワレッッ!』
『ジャカシィわい鼻糞ッッ!』
>> 303
👓46👓
廃墟の中はバブルの頃に栄えたセメント工場の跡地のようだった…表にいた組員を排除すると銀龍達は建物の中に入った…
『…クッソ何処じゃ白狼のガキッッ!』
『…不気味な位静かでんなぁ…白狼の組員はまだ何処かにおるはずですッ、注意して下はれッッ…』
ピザ屋の格好の佐田が周りを注意しながら拳銃を構えた…
『おぃ吟太ッッ、ワシらの組員は全員無事けッッ!?』
銀龍は集団の一番最後にいた子分の吟太に尋ねた…
『へい、あんな素人に毛の生えた連中なんかにやられる訳おまへんがな兄貴ッッ、…』
『よっしッ…エクセレントじゃッッ!この調子で全員生きて白狼の首切りに行くどッッ!』
銀龍達が一歩足を踏み出した次の瞬間、何かを察知した吟太が思わず赤虎に覆いかぶさった!
『!ッッ、あッ、危ないッッ、虎兄さんッッッ!』
『!えッッッ!?』
ズガガガガガァァッッッッッ!
吟太の背中に雨のような機関銃の弾丸が何発も命中した!
『ぎッッ、吟太ッ、吟太ァァッッッッッ!』
ズガガガガガァァッ、
ズガガガガガァァッ!
四方八方からの機関銃の雨に銀龍達は滑り込むようにコンテナの影に隠れた!
『ぎッ、吟太ッッ!』
>> 304
👓47👓
『グャハハハハ、おぅら出てこいッッ、黒原のゴキブリどもッッ!全員蜂の巣じゃいッッ!』
機械室の2階の踊り場のような所に白狼の機関銃部隊がいた…思わぬ奇襲に銀龍達の形勢は一気に逆転してしまった…
『チッ、…ぎ…吟太ッッ!おぃ吟太しっかりせぇッッ!』
背中から血を流し今にも息絶えそうな吟太を赤虎が抱えた…
『吟太…ワレ…』
『す、スンマヘン…兄貴ッッ…グホッ…』
『ワレ何で…ワシなんか助けたんじゃッッ!グッ…あんだけワシの、ワシの事憎んどったやないかッッ!おぅ!?』
赤虎は半分涙目になりながら銀龍の子分である瀕死の吟太に言葉をかけた…
『ア…当たり…マエ…ですがな…ハアッ、ハアッ…赤虎兄さん…死んでもたら…ハアッ、ハアッ…ウチの銀兄貴も…グブッ…それに…そッ、それに…やっぱり二人は…最高の…ハアッ、ハアッ…相棒同士やし…ハアッ…ワシ憧れとった…こんな…ハアッ、ハアッ本当の兄貴が…欲し…ほしッ…ほ…』
『!ッッ、ぎッ、吟太ァッッ、吟太しっかり、しっかりせぇ吟太ッッッ!』
銀龍と赤虎は必死に吟太に呼びかけた…
『アリガトウ…赤虎兄サン…銀兄貴…ワシ…ワシ二人と逢えて…し…』
『吟太ァッッッッッッッッ!』
>> 305
👓48👓
状況は最悪だった…さっきの奇襲で銀龍赤虎の両組員の約3分の2が息絶えた…皆二人の命を守るかのように機関銃の弾丸を浴びていた…
『ヤス…小山…慎一…パンダ…グッゾッッ、』
『聡…小田原ッッ!…連まで…クッッ、チキショ…』
銀龍と赤虎は血を流し無惨に横たわる自ら命を張って死んでいったそれぞれの子分の死体を虚ろな目で眺めていた…
『グッ、オンドリャャャッッッッッ、全員ブチ殺すッッ!』銀龍が叫んだ!
『そうじゃッッ、誰一人とて生きて帰さんぞ糞ジャリどもがッッッッ!』
赤虎が吠えた…しかし機関銃を構えた白狼の組員にはコンテナの陰に隠れるだけが精一杯の銀龍達にはなす術もなかった…
『ウヒャヒャ、機関銃もない己らに何が出来るんじゃいッッ!己らが拳銃の弾一発放つ間にその身体に何十発もの風穴が開いとるでッッ、ギャハハハ!』
『糞ッタリャッッ、組員も殆ど壊滅して…一体どないすりゃえぇんじゃ…』
赤虎が肩を落とした…
『コラッ鼻糞ッッ、何落ち込んどるんじゃボケッッ!悲しいのは皆一緒じゃワレッッ、落ち込んどる暇あったら次の手考えんかいッッ!』
銀龍の前に佐田がにじり寄って来た…
『兄貴…ッッ!』
>> 306
👓49👓
『さっきワシ表の白狼の組員絞めて白狼がおる場所吐かせたんですッッ…』
『おぃ佐田それホンマかッッ!?』
銀龍と赤虎は佐田の言葉に身を乗り出した…
『おそらく白狼と赤虎兄さんの妹はんはこの建物には居ませんッッ、この廃墟から100m程東に行った所にある廃校になった小学校の講堂の中かと…』
『それは確かな情報なんやな佐田ッッ!』
間違いおまへんと佐田は頷いた…
『よっしゃ…場所は解った…しかしあの機関銃のガキどもが睨み利かしてる限りここからの脱出は…』
銀龍が唇を噛んだ…
『大丈夫でさ銀兄貴ッッ、虎兄さんッ、こんな事もあろうかとワシちゃんと準備して来ましたさかいに…』
『じ、準備て…何や?』
佐田はピザ屋の制服を脱いだ…その瞬間誰もが目を疑った!
『!ッッッ、さッ、佐田お、己れッッ…』
『兄貴ッッ、この場はワシに任せといて下はれッッ!』
佐田の胴にはびっしりとダイナマイトが巻き付けられていた!
『あッ、アカンぞ何考えとるんじゃ佐田ァッ、そんな事したらッッ!』
『何の取り柄もないワシを拾うてくれた銀兄貴にワシ今まで何の恩も返せんと…ワシも少しでも兄貴達の役に立ちたいんです…ヘヘヘ』
『佐田…ワレ…』
>> 307
👓50👓
『機関銃部隊はこのワシが引き付けますよってッ…お二人はその隙ついてあの裏口の扉から真っ直ぐ廃校に向かって下さいッッ!』
『そ、そんな…佐田それじゃワレ、犬死にやないけッッ!』
『犬死にやおまへん銀兄貴ッッ、黒原の今後の栄華を願って散れるんですッ、光栄の何モンでもありまへんわッ…』
佐田は銀龍と赤虎の顔を見て優しく微笑んだ…
『…この方法しかないんです…兄貴達には必ず白狼の首取って赤虎兄さんの妹さん助けるっちゅう使命がありますッ…せやから、せやから頼んますッッ、佐田博最後の親分孝行させて下さいッッ!』
佐田はダイナマイトの導火線に火を付けれる程度に線を出し、またその上から服を着た…
『佐田兄さん一人じゃアイツら完全に引き付けられませんッ…ワシらも手伝いますッッ!』
残りの組員達が一斉に口を揃え佐田の援護射撃を買って出た…
『お…ワレら…アホや…己らホンマにドアホゥ達じゃッッ!』
銀龍は子分達の熱い気持ちに心から感謝した…
『えぇでっか、銀兄貴、虎兄さんッ…絶対死なんといて下さいッッ、どちらかがヤラれたら終わり…黒原は終わりでっさかいに…』
銀龍と赤虎は佐田にゆっくり頷き頭を下げた…
>> 308
👓51👓
『オラッいつまでもんな所で身潜めとっても埒開かんどゴゥラァァッッッ、まさか小便チビッて足すくんでんのとちゃうやろなッッ、ガハハハ!』
白狼の機関銃部隊はゆっくり階段を下り銀龍達のいるコンテナに近付いて来た…
『出てこいやぁ黒原のゴキブリ共ッッ、己れら皆殺しにして今日で黒原の名は滅びるんじゃいッッ!』
『…フッ、ゴキブリで悪かったなッ、おぅ?…ゴキブリはな、人に嫌われても汚のぅてもこの世間を自由に飛び回り動き回る事が出来るんじゃボケッ!オンドれら何じゃいッッ、群れて行動し、人のおこぼれ貰いながらでしかよぅ生きていけんハイエナ共がぁッッ!』
『何やとぉゴゥラァッッッ!』
コンテナの陰から銀龍と赤虎の生き残り組員10名程がゆっくり姿を現した…機関銃部隊は一斉に構えに入った…
『誰がハイエナじゃゴゥラァァッッ、お!?…ビビり過ぎて己れら頭おかしなったんちゃうやろなッッ!?』
『おぃ…此処におるんで白狼組員全員かッッ!?』
赤虎の一番の子分である水仙という男が睨みながら言葉をかけた…
『そうじゃ…己れらゴキブリ共には勿体ないがなッッ、冥土の土産に全員でワレらのドタマに風穴開けたるさかいにッッ!』
>> 309
👓52👓
機関銃部隊と白狼の残りの組員達は勝ち誇ったような顔付きでジリジリと銀龍と赤虎の組員に歩み寄った…
『冥土の土産じゃぁ…ワレら何ぞ言い残す事はないけッッ?』
薄ら笑いを浮かべて機関銃部隊が銃を構えた…
『…そやなぁ、ハイエナ共と心中すんのはヘドが出るがぁ、まぁ仲良ぅ死のうやッ、お?』
集団の一番後ろから佐田がゆっくりと歩み寄って前に出て言葉をかけた…
『フフフ…詰めが甘いのぅワレらッッ!せやからいつまで経ってもハイエナ組て呼ばれるんじゃいボケッッッ!』
佐田はバサッと勢いよくシャツを脱ぎ捨てた!
『!ッッ、なッ、何ぃッッッ!な、ななんのつもりじゃワリャッッッッ!』
佐田の腰に巻かれた無数のダイナマイトに白狼の組員達は一斉に恐怖の声をあげた!
『おっと逃げても無駄や…幸いこの建物は窓も少ないし爆風の逃げ場もない…全員綺麗にスペアリブじゃッッ…のぅ?ガハハハ!』
『ま、待てッッ、お前正気かッ!?そ、そんだけのダイナマイト爆発し、したら…な?お、落ち着けッ、お、落ち着いて話し合おうやないけッッ…』
佐田の凶行に機関銃部隊は何とか佐田を宥めようと必死だった…
>> 310
👓53👓
機関銃部隊は佐田の思わぬ奇襲作戦になす術もなく機関銃を床に置いて頼むから馬鹿な真似はやめろと佐田を宥め続けた…佐田はライターを着火させ導火線の側で何かを考えるようにじっとそれを構えていた…
『た、頼むッッ、命だけは…ッッ、』
『組員全員じゃ、全員ここに集まれッッ!』
佐田は手を挙げて降参している腰抜けの白狼の組員を蹴り飛ばすと自分の回りに全員を集めた…
『お、お願いしますッッ、堪忍して下さいッッ、黒原の親分殺れって計画立てたんは全部白狼の兄貴…ッッ、い、いや白狼のガキでっさかい、わ、ワシらは利用されただけですんやッッ、せやからッ、せやから頼んますッッ、何でも言う事聞きますからッ、あなたの舎弟にでも何でもして下はれッ、な?この通り頼んますッッ!』
白狼の組員達は全員土下座して佐田の暴挙をやめさそうとした…
『…黒原に謝罪して何でも言う事聞くんやな?』
『へい聞きますッ、せ、せやからそれだけはッッ!』
佐田は土下座する組員達の言葉を聞いてゆっくりライターの火を消した!
『!ッ、い、今じゃ、撃てェェェェッッッ、撃ち殺せェェェェッッッッ!』
白狼の組員達は佐田らに向けて機関銃を乱射した!
>> 311
👓54👓
『佐田のドアホゥ…無茶しやがって…クッ!』
『コラッ銀ッ、はよう走らんかいッッハアッ、ハアッ…』
銀龍と赤虎は白狼の組員達に気付かれぬよう建物の裏口から無事脱出し東にある廃校になった小学校目指して山道をひた走っていた…途中何度も眼下に見える廃墟を未練がましく振り返り見つめながら銀龍は残してきた佐田や組員達の人知れぬ覚悟に後ろ髪を引かれる思いだった…
『!ッッ、おぃ虎ッッ、今廃墟で機関銃の音が…ッッ、』
『あぁ…聞こえた…』
銀龍と赤虎は立ち止まり眼下の廃墟を眺めた…
『アイツら…まさかッッ!』
『……爆発してへん所みると…失敗したんか…クッソ!』
赤虎のその言葉に銀龍がキレた!
『おいコラッ、ワレ今ん言葉自分さえ良けりゃえぇっちゅう考えしとるやろがッッ、』
銀龍は赤虎の胸倉を掴んだ!
『コラッ銀ッ、寝ぼけた事ヌカしとんちゃうどワレッ、ワシがいつンナ事ゆうたんじゃボケッッ!』
赤虎が睨み付けた…
『…ど、何処の世界に可愛い仲間や子分見捨てて良かった思う奴おるんじゃカスッ、ワシかて…ワシかて身削られる思いしとんじゃッッ!』
赤虎は銀龍の掴む手を無理矢理解いた…
『…と、虎……』
>> 312
👓55👓
『えぇか銀ッ、アイツらがどんな思いでワシらに託した思とるんじゃッッ、アイツらの思いはワシらの思いじゃッッ、ワシらはアイツらの願い一緒に持って親分の仇、白狼の糞ガキブチ殺すっちゅ目的果たさなアカンのじゃッッ!』
『……』
赤虎の言葉に銀龍は何も言い返す事が出来なかった…
『…行くぞ銀ッッ、もう振り返るなッッ!ワレらに構わずに白狼ん所までがむしゃらに突っ走れッッ、…アイツらかってきっとそない…そない願っとるはずじゃッッ!』
『……あぁ…分かった…』
銀龍は最後に一度眼下の廃墟を見下ろすと深呼吸して廃校の小学校向けて走り出した…
(佐田ッ、ワレら…生きててくれ…どうか生きて帰ってくれッッ、)
銀龍は唇を噛み締めながら赤虎の後について山道を走った…
『!ッ、お、おぃ銀ッッ…あそこ見てみぃ!』
『…あれか…廃校…』
廃墟からそう遠くない高台にその小学校は存在した…
『講堂は…!ッ、あれじゃ虎ッッ!』
銀龍が指差す先に蔦の葉で覆われた見るからに何年も使われていない木造の講堂があった…
『あそこに白狼がッッ!』
『岳美待ってぃッッ、今兄ちゃんが助けちゃるからなッッ!』
銀龍と赤虎は破れた金網から運動場に侵入した…
>> 313
👓56👓
おびただしい機関銃の轟音が響き渡った後、廃墟のセメント工場の中はきな臭い火薬の匂いと煙に包まれていた…
『ヘッ…糞がぁビビらせやがってッッ…もうちょっとでワシらも道連れになる所やったやないけ…』
白狼の組員による機関銃部隊は一瞬のスキをつき、情にほだされた佐田を裏切り、銀龍と赤虎の組員達一人残らずを一気に射殺した…
『オィ、死体の後始末やっとけやッッ!』
幹部格の組員が子分に無惨に殺された龍虎組の組員の死体の処理を指示した…
『!ッッ、お…何やこのゴキブリ、まだ生きとるんかッッ!』
幹部格の組員が蜂の巣にされてもなおまだ虫の息の佐田博を発見した…
『フンッ、機関銃の弾が誤ってダイナマイトに当たり暴発したら元も子もないからなッッ、己れだけ手足だけ狙って撃ったんじゃッッ!どや?我ながら素晴らしいテクじゃろ?ギャハハハ!極道はなッ、情にほだされたら負けなんじゃッッ!』
幹部の組員は笑いながら瀕死の佐田の顔面に蹴りを入れた!
『…グッ…ゲボッ…く…糞っ…ガハ…ガ…たりゃ…ァッ…』
心臓にも何発か命中しているはずの佐田が最後の気力を振り絞り幹部の組員のズボンの裾にしがみついた…
>> 314
👓57👓
『ん?何じゃい…まだそんな力が残っとるんかいッッ!』
幹部組員は血だらけの佐田の額に拳銃を突き付けた!
『…カッ…ハッ、…ハアッ、ハアッ…ま…負け…じゃッッ、ハアッ、ハアッ…くッ…』
佐田はもう虫の息だった…
『これでホンマの最後じゃゴキブリ…何か言い残す事はあるかッッ?』
『お…己れ…グッ…クバッ、…の…母ちゃ…ん…グハッ、で…でべ……そ…そ、クハ…』
佐田はポケットからガムを取り出した…
『フン!ガムかい…えぇじゃろ、この世の別れにガムくらい噛ましたらぁ!ガム噛み終えたら…ジ・エンドじゃッッ!』
幹部組員は拳銃の引き金を引いた…
『オィ…ハイエナ組ッ…ハアッ、ハアッ…こ、言い忘れ…とったけど…グッ…』
佐田はガムの箱を血だらけの指で高々と掲げた…
『…最後じゃッ、死ねヤァゴキブリッッ!』
『…このガムの…箱な…実はダイナマイトの…ハアッ、ハアッ…起爆スイッチなんじゃッッ!』
佐田が箱のボタンを押すと一瞬工場内に閃光が走り次の瞬間爆音が続いた!
(サイナラ…銀あに…きッッ!)
チュドォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッッッッ!
猛烈な爆風と共に一瞬で廃墟は跡形もなく吹っ飛んだ!
>> 315
👓58👓
講堂の玄関に足を踏み入れた時、銀龍と赤虎も廃墟で起こった爆発の音を聞いていた!
『!ッッ、さッ、佐田ァァァァッッッッッッ!こんのアホンダラァァァァッッッッがッッ!』
銀龍は余りの結末に思わず我を忘れて叫んだ…
『…水仙…飛鳥…シゲ…ワシゃ己れらん事誇りに思う…絶対に、絶対に死んでも忘れへんからのぅ…』
赤虎も思わず目を閉じ力なく呟いた…暫く二人に沈黙が訪れた後、銀龍が気合いを入れ直すようにフゥ~と息を吐いた…
『…行くぞ虎ッッ!もうワシら後戻り出来んぞッッ!』
『戻るつもりなんかサラサラないわいッッ!このまま地獄まで停車駅のない快速特急じゃいッッ!ワシらは誇り高き黒原一美一家の若組長じゃッッ、逃げも隠れもせんッッ!』
銀龍こと銀前龍次と赤虎こと赤木虎之助は真っ直ぐ前を見た…裏口の階段をゆっくり上がり二人は広い講堂に出た…
『どこじゃい白狼ッッ、出て来いやぁッッッッ!黒原の若頭、銀龍と赤虎がわざわざ逢いに来たったぞワリャッッッッッ!』
銀龍の声が古びた講堂内にエコーのように響き渡った…暫く睨み合いのような異様な緊張感漂う時間が流れた後舞台の陰からのっそりと白いスーツを着た華奢な身体の男が現れた!
>> 316
👓59👓
『イヒャヒャヒャッッ!お久しぶり~ッッ、無駄に元気そうやないの~お二人さん、ククク…』
一回り甲高い人を不愉快にさす独特の声で黒原組から破門にされその黒原一家への怨みから復讐の為だけに自ら組を立ち上げた白狼こと白井狼(しらいたけし)が姿を現した…
『何や銀ちゃん虎ちゃんそんな怖い顔して~男前台なしやで~ッ、イヒャヒャヒャッ!』
白狼はクネクネとだらし無く銀龍と赤虎に近寄って来た…
『…妹は…岳美は何処じゃいワリャッッ…』
赤虎は白狼を睨み付けた…
『ホンマに黒原の親分は残念な事になり元組員としては誠に遺憾でありますッ!イヒャヒャヒャ…』
白狼は完全に二人をコ馬鹿にしたような態度で敬礼する真似をして高笑いした…
『…おぃウジ虫ッッ、はよう岳美ちゃんの居所吐かんと地獄で後悔する事になるどゴゥラァァァァッッ!』
『お~怖ッ、やっぱり銀ちゃん迫力あるぅ~ッッ!ワシ女やったらすぐ股広げチャウわッッ!痺れるゥ~!』
『ゴゥラァふざけんのもいい加減にせんかいワリャァァァッッッッ!』
銀龍は白狼に殴り掛かった!
『!ッッと、解りましたッ、解りましたがなそんなに興奮せんでもッ…』
>> 317
👓60👓
白狼は講堂の舞台に上がるとゆっくり舞台の幕を引いた…そこに居たのは椅子に縛られ目隠しをされた岳美の姿だった!
『!ッッ、たッッ…岳美ぃッッッッッッ!』
『岳美ちゃんッッッッ!』
『おっとそこでストップじゃッッ、それ以上近付くと頭から若い綺麗な新鮮な血がピュ~!…イヒャヒャヒャ…』
白狼は気を失っているらしい岳美のこめかみに拳銃を突き付けた!
『オンドリャァッッ、ワシん妹にそんな事してただで済むと思うなゴゥラァァッッ!』
『はぁ?じゃぁお兄ちゃんはどうしてくれるのかナァ?イヒャヒャヒャ!』
銀龍と赤虎は岳美を人質に取られ身動きが取れなかった…
『グッ…グッソ舐め腐りやがってぇ…どうする銀ッッ、どうすりゃえぇんじゃ考えッッ!』
『ジャカシィわいッッ!…今考えとるわボケッッ…』
白狼は岳美のこめかみに拳銃を当てたままクネクネと踊っていた…
『あんのウジ虫…く、狂っとる…あかんッッ…こんままやと岳美の…岳美ん命がッッ、ホンマに危ないッッ!グゾッダリャャャャャャャャッッッッッ!』
赤虎はやり場のない拳の怒りを床にガンガンと叩き付けた!
『落ち着かんかい鼻糞ッッ!』
>> 318
👓61👓
『この日をどれほど待ち侘びた事か…黒原に理由もなく破門にされ行く宛てもなく露頭に迷い…毎日物乞いのような最低の生活を強いられ…いつか何もかも順風満帆に組任された己れらに復讐すると誓ったんじゃいッッ…そして遂に遂にその日が今日ッッ、イヒャヒャヒャッ!』
『白狼ッ、親分はなッ、己れにずっと目ぇかけてくれとったんやどッッ!それを己れは親分の顔に泥塗るような事しやがってッッ!』
赤虎は白狼の手元の拳銃の引き金が引かれない事だけを願いなるべく穏やかに言葉をかけた…
『おいゴゥラァ!根性無しの腰抜けハイエナの戯言なんか聞いてられるかいッッ、はよ岳美ちゃんを離せッッ、今離せばとりあえず半殺しくらいでまけといたるッッ!とりあえずやどッッ!殺さへんとは言っとらんからなッッ!』
『こッ、コラ銀アホッッ、刺激すなッボケッッ!』
『…ちょっと待て…誰が腰抜けのハイエナやとぉ?』
銀龍の言葉が気に障ったのか不気味に穏やかだったさっきまでの白狼の顔付きが一気に豹変した…白狼は拳銃の銃口を丸腰の銀龍に向けた…
『…もういっぺん言うてみ?』
『何回でも言うたら…腰抜けのハイエ…』
ズキュゥゥゥゥゥゥッッッッ!
白狼の弾が銀龍の左腕に命中した!
>> 319
👓62👓
『ハゥガァァッッッッッッッ!』
銀龍は左腕を撃たれた勢いでキュキュと講堂の床に跳ね飛ばされたッッ!
『!ッッッ、あ…アガァァッッッッッッ!』
次の瞬間何もされていない赤虎の左腕にも激しい激痛が走った!二人は同時に床にはいつくばった…
『ッッ、へ?…な、何じゃ?』
二人の奇妙なリアクションに一番驚いたのは白狼だった…
『ごッ、ゴゥラァァァ銀ッッ、刺激すなっちゅ~たやろがこのカスッッ!イテテ…』
『うッ、ウルサイほざくな鼻糞ッッ!撃たれたんはワシじゃッッ!』
『アホンダラッッ、オンドレが撃たれても痛みは一緒じゃッ、もう忘れたんかカスッッ!』
『痛みが…一緒やとぉ?』
白狼は二人の訳の解らない会話と同じ箇所を痛がるのを見て考えた…コイツら何かの事情で痛みを共有する身体になっているのかと…
『へ…アッ…アッキャキャ!こりゃ愉快だッ、もしかして己れら片方が傷付いたらもう片方が同じように傷付く…つまり運命共同体って事ぉ?アハハハこりゃ傑作こりゃ愉快愉快ッッ!ギャハハハ!』
白狼は倒れている二人を見て死ぬかと思うくらいに笑い狂っていた…
>> 320
👓63👓
『…て事はッ、どちらか一人を殺れば二人一緒に殺る手間が省けるって事かッ、イヒャヒャヒャッ、己れらホンマに不憫な奴らヤナァ…同情するわッッ!』
『糞ッッ…ハアッ、ハアッ…銀己れがデカい声出すからワシらん弱点この糞ジャリに気付かれてもうたやないけッッ、ハアッ、ハアッ…』
赤虎はあるはずのない左腕の銃蒼に手を当て出血を必死に押さえていた…
『ハアッ、ハアッ…アカン…これはマジで形勢不利じゃッ、岳美ちゃん人質に取られてこっちは攻勢に出れんし…ハアッ、ハアッ…痛いッ、腕痛いィィィィィッッ!』
白狼は今度は赤虎に近付くとおもむろに赤虎の脚に銃口を向けた!
『!ッッ、ち…オンドリャァァァァッッッッ!やッ、やめッッッ…』
『イヒャヒャヒャ…銀ちゃんだけでは不公平やろ?な?虎ちゃん…』
ズドォォォォォォォォッッッッッッ!
『うッッ、!ウガァァァァァァッッッッッ!』
白狼は赤虎の右太腿に発砲した!同時に銀龍の身体もクルクルと回転し太股から多量の鮮血が溢れ出した!
『イヒャヒャヒャヒャヒャッッ、これ目茶苦茶楽しいッッ!何もしてないのに勝手に傷ついてくれるんやもんなぁ!もうちょっと遊ぼッッ!』
白狼は狂気と化していた…
>> 321
👓64👓
白狼は拳銃を置くと銀龍の腹に力いっぱい拳を喰らわせた!
『グブッッ…グッソ…グッ…』
『拳銃使ってあっさり殺してもたら面白ないからなッッ、イヒャヒャヒャッ…ほら見てみ銀ちゃん、虎ちゃんもお腹痛いって…蹲って動かないよッッ?仲良ぇのぅワレら…イヒャヒャヒャッッ!』
その後も白狼の卑劣な二人への暴行が繰り返された…数十分後銀龍と赤虎は痛みで全く動けなくなっていた…
『何やもう終わりかい、つまらんナァ…もうちょっと楽しみたかったんやけど…』
白狼はぐったりする二人を見ながら煙草を吹かした…
『カッ…だ…ダイ…大丈…夫…カ…ギ…銀ッ、ハアッ、ハアッ…』
『グッソ…ッタリャ…アンノガキ…ハアッ、ハアッ…絶対…こ、殺すッッ…ハアッ…』
顔を潰れる程殴られもはや二人の顔の原形は無くなっていた…
『ハアッ、ハアッ…ど…どう…や…痛いカ…』
『コンナ…ん…蚊に…ハアッ、ハアッ…刺され…た…グハッ…』
『…しかししぶといなぁ己れら…けどな、自分の痛みには耐えれても身内ん痛みにはどこまで耐えれるかな?』
『!ッッ…ナ…ナ何…ヤドォ…ッッ!』
白狼は不気味に笑いながら岳美を見た…
『き…オンドリャァッッッッッ…!』
>> 322
👓65👓
『そん前に教えてもらおぅかい?己れらどうしたらそんな不憫な身体になってもたんじゃぁ?何か理由があんじゃろ?お!』
白狼は二人の特異な体質に興味を引いたようでニヤけながら二人に言葉をかけた…
『ッ、んな…事ッ…どッどうでもえぇやろがぁッッ!』
痛い脚を引きずりながら銀龍がヨロヨロと膝まで立ち上がった…
『一体何したらそんな事になるんか教えてくれッ、今後色々役に立つかも知れんしのぅ…サァ言えッッ!言わなこの女殺すどッッ!』
白狼は再び拳銃を持つと眠っている岳美のこめかみにそれを当てた…
『酒や…ハアッ、ハアッ…黒原の親分がインドの坊主から手に入れた酒を盃で飲み交わすとこうなるんや…』
赤虎が静かに告白した…
『!ッッコラ鼻糞ッッ、何ベラベラ喋っとんじゃワレッッ!』
『フン…どうせもうあの酒は屋敷の爆発で消えてもうとる…今更どうこうなるもんでもないやろッッ!』
白狼は終始不気味な笑いを浮かべていた…
『ヘェ~…酒カァ…この酒にそんな効果が…道理でたいそうな箱に入ってるから持って帰らせたんやが…』
『!ッ、な…何ぃ?持って帰ったやとぉ!?』
白狼は銀龍と赤虎の目の前にあの黒原が持っていたはずの酒を掲げた!
『これやろ?イヒャヒャヒャ…』
>> 323
👓66👓
『きッ、オンドリャその酒を何処でッッ!?』
『爆発の跡で金品奪いに入ったら黒原の金庫の中に大事そうにあったからの?…ワシピンと来たんじゃ…この酒はただの酒やないいとなッッ…ハハァやっぱりそんな凄い効果のある酒やったんか~…イヒャヒャヒャ!えぇ事聞いたわ…サンキュサンキュ!』
白狼はビンの中の酒をゴクゴクと口に含むと何と口に含んだその酒を岳美の口に口移しでゴクゴクと飲み込ませた!
『!ッッ、やッ、ヤメんかいオンドリャァァァァッッッッッ!』
『クッ…ま、まずいぞアリャッッッッ!』
岳美は一瞬何が起きたのか解らずに口の中にあった白狼からの酒をゴクリと飲み込み目を醒ました!
『…え…ここ…は…私…ッッ!』
『岳美ッッ、吐き出せェェェッッッ、口の中の酒全部吐き出すんじゃァァァァッッッ!』
『!…お…お兄…ちゃん…何でココに…?』
睡眠薬を飲まされていたらしく目覚めた岳美もまだ意識が朦朧としていて状況が飲み込めていないようだった…
『はよ吐き出さんかいッッ、岳美ィィィッッッッ!』
『イヒャヒャヒャッ、もう手遅れじゃ…この女はワシの酒を半分ずつ飲んだ…つまり…ワシと一心同体になった訳やッッ!イヒャヒャヒャ!』
>> 324
👓67👓
『ゆ…許さんドォオンドリャッッ…』
『おッ、お兄ちゃんッッ!…それにあなた…何でッッ?』
目隠しを外された岳美が初めて銀龍と赤虎を見た…岳美はあの銀龍がどうしてこんな場所にいるのかが理解出来なかったが兄の赤虎と一緒にいる事に全てを悟ったようだった…
『お兄ちゃん…この人と…友達だったんだ…』
『アホ抜かせッ、こんなカスとダチな訳ないやろがッッ!』
『なッッ、そ…それはこっちの台詞じゃ鼻糞ッッ!』
『オィオィ…んな所で仲間割れしとる場合とちゃうやろ?…イヒャヒャヒャヒャ!』
白狼はパシン!と自分の頬をぶった!
『キャッ!いッ、痛いッッ…な、何でッッ!?』
次の瞬間岳美の頬にも突然同じような痛みが走り岳美は思わず声をあげた!
『た…岳美ッ!…グッソ…チキショォォォォォォ白狼オンノレッッッッ!』
『あのねお嬢さん…貴方は今からこの白狼ちゃんと運命を共にしちゃう事になってしまったの…ウフフ解る?イヒャヒャヒャ!』
白狼はふざけた顔で岳美に言葉をかけた…
『う…運命を共にってそれ何ッッ…ねぇどういう事ッッ?教えてお兄ちゃんッッ、ねぇお兄ちゃんってばッッッ!』
赤虎は妹を守れない悔しさで唇を噛み締めた…
>> 325
👓68👓
『岳美よう聞けッッ、ソイツが持ってた酒を半分ずつ飲み交わした時、その飲み交わした相手と神経がガッツリ共有してしまうんじゃッッ!』
『え…神経…え?どういう事ッッ!?』
岳美は頭が混乱していた…
『つまりじゃ岳美ちゃんッッ、ソイツの痛みは岳美ちゃんの痛み、岳美ちゃんの痛みはその糞ガキに痛みとなって共有するッちゅう事じゃッッ!』
銀龍も脚の痛みを堪えて立ち上がった…
『おぃ虎ッ、ハアッ、ハアッ…エライ事になってしもたぞ…最悪じゃッッ、これであの白狼のガキに指一本触れる事出来んやないけッッ!ギタギタにシバキ殺す事出来んようになってしもた…クッ!』
銀龍は悔しさで拳を側の壁に叩き付けた!
『…なッ、何ちゅう事ッ、死ぬほどブッ殺したい糞野郎に傷付ければ付ける程…ワシの一番大事な…かけがえのない妹を傷付ける事になるんかッッ、アホッ、アホンダラがぁぁァァァァァッッッッッ!』
赤虎はまるで気違いのように怒鳴り散らした…
『イヒャヒャヒャッ、これでワシの勝ちじゃッ!完全勝利じゃッ、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』
白狼は再び銀龍と赤虎に殴りかかった!当然二人はなす術もなく反撃すら出れないままだった…
>> 326
👓69👓
『やッやめてェェェェェッッッ、それ以上ッ、それ以上殴ったら二人共死んでしまうわッッ!』
椅子に縛られたままの岳美はたまらず悲痛な叫びをあげた…
『ハアッ、ハアッ…グハ…ハアッ、ハアッ…ちッ…ハアッ、…』
『くッ…糞ッタリャッッッッッ!』
白狼は銀龍の目の前に無防備に拳銃を置いた…
『憎いんやろ?ほれ銀ちゃん…拳銃ッ、これでワシの事バン!て撃っても構わへんよッッ、ほれ、ほれ…ギャハハハ!』
『糞がぁ…ハアッ、ハアッ…ワシが撃たれへん思って…ちッ、調子に…ハアッ、ハアッ…乗り腐ってェェェェッッッッ!』
銀龍はおもむろに拳銃を取ると何と白狼に銃口を向けたッッ!
『!ッッ、ぎッ銀ッ、お、己れ何しとんじゃッッッッ!?まさか白狼を撃つ気やないやろなッッ!ボケがぁ、オンドリャ自分が何やっとるか分かっとるんかッッ!?』
赤虎が驚きの余り叫んだ!
『ぎ、銀龍さんッッッ!』
岳美もそれを見て目を反らした…白狼が撃たれたら当然自分にも危害が加わるッッ!絶望と恐怖感が同時に岳美にも押し寄せて来た!
『…ハアッ、ハアッ……』
『ほれどうぞッ、撃てよ…ホラホラワシのこの心臓目掛けて引き金引いてみろやッッ!イヒャヒャヒャ!』
>> 327
👓70👓
『ハアッ、ハアッ…虎ッッ…こ、こん糞ガキブッ殺さな…ハアッ、ハアッ…何も終わりにならんのやッッ!ハアッ、ハアッ…』
銀龍の構える銃口が小刻みに震えていた…
『お、お願いじゃ銀ッッ、はッ、早まるなッッ、た、頼むッ、んな事してもたら岳美もッ、岳美も死んでまうんやどッッ!ワレ頭イカれとるッッ、アカン銀ッ、頼むからやめてくれッッッッ!』
白狼が銀龍に近付き銃口を自分の心臓部分に押し当てた!
『ホラホラお兄ちゃんがあぁゆうとるでッ、お兄ちゃんの前で妹殺したるんはソラ銀ちゃん、鬼やでッ、』
『鬼はオンドレじゃァァァァァッッッくそぉッッッ!』
『!ッ、やッ、やめぇ銀ッ、銀ィィィッッッッ!』
『岳美ちゃん…す…スマン…こうするしか…親分の仇討つには…ハアッ、ハアッ…こないするしかないんじゃッッ…許してくれ…』
カチャリ…銀龍がグチャグチャに泣きながら引き金を引いた!
『やめぇ銀ぃぃッッッッ!』
『!ッッ、ぎ、銀龍さんッッッッッ!』
『白狼ッッッ、これがオンドリャの最期じゃぁァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッ!!!』
ズドォォォォォォォォォッッッッッ~ン!
『アホンダラァァァァァァッッッッ!』
>> 328
👓71👓
…ォォォォォォッッッン…
銀龍の撃った弾は白狼の右足に命中していた!
『!ッッ、いッッ…ィダダダダダダタッッッッ!』
白狼は撃たれた右足を抱え倒れ込んだ!
『いッッ、痛いィィィィッッッッッ!』
岳美の右足にも信じられない位の激痛が走った!次の瞬間銀龍は白狼に飛び掛かっていた!
『おい虎ァッッ、岳美ちゃんをッッ、はよッッ、はよせんかいワリャッッッッ!』
『銀ッッ…お、己れ…』
『モタモタせんとはよう助けたるんじゃボケッッ鼻糞ッッッッ!』
白狼と激しく格闘する銀龍を尻目に赤虎は血だらけの脚を引きずりながら妹岳美の元に駆け寄った!
『だッ、大丈夫か岳美ッッッッ!』
『おッ、お兄ちゃんッッッ!』
岳美は縛られている縄を解かれ兄の赤虎に抱き着いた…赤虎は自分の服の袖を歯で噛み切ると出血している岳美の右足に巻き止血した…
『恐かったなッ…怖い思いさせたなッ岳美…スマン…スマン…』
『イデデデッッ、ち…チキショッッ、ほん、ホンマに撃ちやがったこのガキャッッッ!』
『アホンダラッッ、己れたぁ気合いの年期が違うんじゃいッッ!』
銀龍は白狼の背後に回ると羽交い締めにした!
『これからがショータイムじゃいッッッッ!』
>> 329
👓72👓
『虎ッッ、そこにある酒こっちに投げぇッッ!』
銀龍は白狼を羽交い締めにしながら赤虎の側に転がっているあの《絆酒》のビンを投げろと命令した!
『なッ、何に使うんじゃこの酒ッッ、』
『ガタガタ抜かさんとはようこっちに投げんかい鼻糞ッッ!』
赤虎は銀龍目掛けて酒のビンを投げた!銀龍はしっかりキャッチすると酒の蓋を歯で抜いた!
『ウグッ…なッ、何する気じゃッ、は、離せワレッッ!』
『コラ、バタバタすなウジ虫がッッ!汚ッッい野郎同士のラブラブ接吻ショーじゃッッッ!』
銀龍は酒を口に含むと白狼の口を無理矢理開かせた!
『!?なッ、何するんじゃッ、や、ややめろッ、ハガッ、ヒィ~!』
『ぎッ、銀己れッッ…まさかッッ!?』
『銀龍さんッッ!』
赤虎と岳美は銀龍の行為に全てを悟った!
『まさか己れッッ!』
『ワシの勘じゃッ、ワシん勘が正しけりゃ多分大丈夫じゃッッ!』
銀龍は暴れる白狼の口に自分の口にある残りの酒を吹き込んだ!
『アガァッッ…やッッ、ングッ、ングッ…』
『そうじゃウジ虫ッッ、しっかり飲み込めッッ!オラオラッッッッ!』
白狼は遂に銀龍の口の中の酒を飲み込んだ!
>> 330
👓73👓
暫くの沈黙の後、銀龍は自分の頭を思い切り殴った!
『どや虎ッッ!頭叩かれて痛いかッッ?』
『…いや…痛ない…全然痛ないぞ銀ッッ!』
赤虎は思わず歓喜の声をあげた!
『今度はこっち…』
銀龍は白狼の頭を軽めに叩いた…
『どうじゃ岳美ちゃんッッ、痛いか頭ッッ!?』
『…いや…痛くないッッ、凄いッッ…私元に戻ったのッッ!?』
『そうや…代わりにコイツん頭叩いた時ワシんドタマ痛かった…ヘヘ…』
赤虎が慌てて銀龍に駆け寄った…
『て事はつまり銀…己れッッ…』
『そうじゃ…今度はワシとこの白狼のウジ虫とが一心同体になったってこっちゃ!』
『!ッッ、な…そんなぁ嘘やろッ、嫌じゃッ、やめてくれッッ、ワシは銀龍なんかと一心同体なんか嫌じゃァァァッッッッ!』
『もう手遅れじゃいドアホッッ!』
白狼はまるでダダをこねる子供のように全てに降伏し泣き叫んだ…
『銀己れそれ知ってたんかッッ!?』
『んな事知るかいッッ、ただもう一回同じ事したら上書きされるかなって推理してみただけじゃッッ!ガハハ、どやワシ、名探偵ソナンみたいじゃろ!?』
『ボケッ…それを言うなら《ポナン》じゃろ!』
『お兄ちゃん…《コナン》だよッッ!』
>> 331
👓74👓
銀龍の捨て身の機転で赤虎とその妹岳美の命は救われた…
『岳美、お前…大丈夫か?』
赤虎は岳美の髪の毛を優しくかきあげた…
『大丈夫だよお兄ちゃんッッ…私何もされてないから…』
そっか~よかったぁ~と赤虎はホッと肩の荷を下ろした…
『おぃ虎ッッ、己れは岳美ちゃん連れて今すぐ病院に行けッッ!怪我の治療してもらうんやッッ!』
銀龍はすっかり腑抜けになった白狼を壁の端に座らせると煙草に火を付けた…
『何悠長な事ゆぅとるんじゃ銀ッ、己れの怪我も相当じゃ、一緒にびょ…』
『その必要はないッッ…』
『必要ないって…アホか己れ…あ…』
『必要ないっちゅうたら必要ないんじゃ鼻糞ッッ、はよ妹連れて病院行かんかいボケがッッ!』
赤虎は不穏な空気の銀龍の前に立った…
『銀己れ…何かとんでもない事考えとるやろッ、その目はそんな時の目じゃッッ!』
『はよぅ行かなブッ殺すどッッ…ホラ行けッッ!』
銀龍は赤虎から視線を反らすと白狼にも煙草を差し出した…白狼はこれから起こる事態を悟り恐怖で声も出なかった…
『何じゃい吸わんのけ…ハァ~しっかし煙草はウマイのぅ~…ハハハ…』
赤虎の顔色を見た岳美がゆっくりと銀龍の目の前に座った…
>> 332
👓75👓
『銀龍さん……』
岳美は切なそうに試合後のボクサーのような顔の銀龍をじっと見た…
『ハハハ…残念ッ、あの薔薇の花束病院の受付のキツツキ顔したおばちゃんにあげてもた…ハハハ…てゆぅか今更愛の告白されても無理矢理ッッ、ガハハ…アリガトな…岳美ちゃん…』
『銀龍さん…お願いッ、一緒に病院行こ?このままだと出血多量で死んじゃうよッッ!』
岳美は銀龍の手を握った…
『ハハハ、汚い汚い…こんなヤクザの手を握ったらアカンて…アンタまで汚れてまう…ハハハ…さ…はよう行ってくれ…おぃ虎ッッ、はよう岳美ちゃんと病院に行けッッッ!さっさとせんかいこん鼻糞ッッ!』
『銀……己れ…』
赤虎は岳美の肩を取ると何も言わず岳美に頷いてゆっくりと講堂の出口に歩き出した…赤虎の後ろ姿の肩は明らかに泣いていた…
『ハハハ…兄妹仲良ぅ…カァ…フフフ…ほなそろそろ…な!白狼君ッッ!』
二人の姿が視界から消えると銀龍は拳銃を取り出した…
『やッ、やめて下さいッッ、そ…それだけはッッ、ヒイッッ!』
『心配すなッ…ドタマぶち抜くんはワシにしといたる…せめてもの温情じゃ、の?』
白狼はガチガチと震えて何度も命ごいをしたが銀龍はただ笑っているだけだった…
>> 333
👓76👓
~一年後~
『何や岳美…お前も来てたんか…』
郊外の高台に立つ小さな霊園墓地で岳美と赤虎は偶然逢った…
『……』
赤虎は仏花を無造作に墓の左右に刺すと桶と杓で丁寧に水を流した…線香を立てた後赤虎はゆっくり手を合わせた…
『…本当にこれで良かったのお兄ちゃん?…もう未練ないの?』
赤虎の横顔を眺めながら岳美がふと呟いた…
『…あぁ…そやな…今のドカタ仕事の方がキツいけどワシの性に合ってる気ぃするわ…ハハハ、相変わらず喧嘩は絶えへんけどな…』
岳美は静かに笑った…
『で岳美お前いつになったら結婚すんねんッ、はよぅお兄ちゃんに子供抱かせてくれやッッ!』
『馬鹿…相手探す方が先ッッ…もぅお兄ちゃんたら気が早いんだからッッ!』
二人は黒原の親分と一緒に入る銀龍の墓の前でケタケタと笑い合った…
『おい銀ッ、聞いとるか?岳美ん奴まだお前の事忘れられへんらしいわ~!』
『んもぅ馬鹿ッ、この馬鹿兄貴ッッ!』
岳美は顔を真っ赤にして赤虎を叩いた…黒原の墓石の後ろから真っ赤な夕日が反射した…
『銀…何やお前に《鼻糞ッ!》って怒鳴られへんようなってワシも気合い入らんようになってもた…ハハハ』
岳美は優しく微笑んだ…
>> 334
👓最終章👓
銀龍こと銀前龍次は曲がった事が嫌いな真っ直ぐな男だった…真っ直ぐな故に全てを賭けて己れの正義の為に忠誠を誓い燃え尽きた…それが正しい事なのか間違いなのかは誰にも解らない…ただ一つ言える事は幼い頃からずっと一緒だった赤虎こと赤木虎之助の事をまるで本当の兄弟のように心から信頼し、守り、協力して生き抜いてきたという証だけは残された赤木虎之助の身体に脈々と受け継がれ流れているのだ…それはまるで何処かで神経を共有する一心同体の双子のように…
『…もう要らんよな…コレ…』
赤虎は今日の一周忌まで大事に持っていたあの《絆酒》を墓地の水道に流そうとした…
『!ッ、あ…待ってお兄ちゃんッッ!貸してッッ!』
『んやねん…要らんやろこんな皆を不幸にした因縁の酒ッッ…』
岳美は酒の蓋を開けると黒原と銀龍が眠るその墓石にその酒を注いだ…
『フフフ…これで親分と銀龍さん、永遠に一心同体だねッッ!』
『岳美…お前……フフ…アホッッ!さ…行くでホラッッ!』
赤虎は岳美の肩を抱き長い霊園の坂道を下って行った…
👓~銀龍と赤虎~完
>> 335
【⑦】~父の背中と鰯雲~
⛅1⛅
『健康診断再検査って…何処か悪いの貴方ッ!?』
『だからそれを調べてもらうんだろ?』
妻、由紀江の声に庄内信彦は背広の上着を無造作にソファーに置くとベビーベットでスヤスヤと眠る生後半年の三女、千笑(ちえみ)の姿を確認した…
『千景は?』
信彦はいつもなら自分の帰りを出迎えてくれる次女、千景の姿がない事に気付いた…
『友達の家に遊びに行くって…もう帰る頃だと思うけど…』
信彦はけだるそうに台所の椅子に腰掛けると夕食まで新聞を開いた…
『ねぇ貴方…千種の携帯電話の件なんだけど…もう中1なんだし周りもみんな…』
『!…またその話かッ、駄目なもんは駄目だッッ!何回も言わすなッッ!』
新聞の向こうからいつもの信彦の不機嫌な声を聞くと由紀江は眉を潜めそれ以上もう何も言わなかった…信彦の大きな声にベットに寝ていた三女の千笑がオギャーと泣き出した…
『おぃ…泣いてるぞ…』
信彦の新聞を持つ手は全く動かない…
『……フゥ~…』
声にならないため息をつくと由紀江はヨシヨシと千笑を抱きかかえ窓の外の工場の煙突の景色を眺めていた…
>> 336
⛅2⛅
庄内信彦は妻、由紀江と3人の娘、千種、千景、千笑の5人家族で埼玉の某ビール製造工場の社宅に暮らしていた…千種が生まれてすぐに信彦は脱サラして単身健康食品の通販の事業を始めたのだがそれも長くは続かず結局多額の借金だけを残し会社は倒産の浮き目に遭った…信彦は何とか借金は返済したもののその代償は余りにも大きく最後には身を竦めるようにこのビール製造工場の社宅で住むようになっていた…
『ねぇお母さんッッ、お父さんに携帯の件話してくれた?』
その夜信彦が風呂に入っているのを見計らって長女、千種が洗濯物を畳む由紀江にこっそり話し掛けて来た…
『駄目だって…中1にはまだ早いって…』
『……フンッッ、何よッッ!』
予想通りの答えを覚悟していたとはいえ千種の頬は更に膨れた…
『そんなに欲しいなら自分で言いなさいッ、お母さんもう知らないから…』
『何で私がお父さんに頭下げなきゃなんないのよッッ!あの人嘘ばっかッッ、クリスマスだって買ってやるって約束したピアス結局そのまんまじゃんッッ!携帯だって勉強頑張れば買ってやるって言うから私中間テスト学年3番以内に入ったんだよッッ、何よッ、守れない約束なんてしないでよッッ!』
>> 337
⛅3⛅
信彦の勤務する某ビール製造工場は県内でも大規模な製造工場だった…白い繋ぎを着て白い帽子とマスクに身を固め、信彦はベルトコンベアから流れてくるビールが既に注入されている缶のプルタブ部分に不具合がないかどうかを調べる生産ラインに配属されていた…
『再検査だってぇ?信ちゃん…』
機械が止まりしばしの休憩の時、信彦の隣のラインで同僚の倉田雅仁が信彦に声をかけてきた…
『…血液検査だけだよッ、最近飲み過ぎてたから尿酸か血糖値が一時的に高くなっただけだろッ…』
信彦はタオルで顔を拭くと視線を反らした…倉田雅仁は歳も近く同じ頃にこの工場に就職した同僚だったが元来人付き合いの余り良くない信彦には誰かれ話しかけてくる暑苦しい倉田が少し疎ましく思えていた…
『なぁ、悪いけど一人にしてくんないか?』
『何だよ水臭ぇなッッ、…フッ、解ったよ…』
倉田は話し相手を物色するかのように視線を泳がすと目当ての集団の輪の中に笑いながら飛び込んで行った…
(俺もあれくらい社交的だったらもう少しはまともな人生歩めてたのかな…)
倉田の馬鹿笑いを横目に見ながら信彦はまたタオルで滴り落ちる汗を拭いた…
>> 338
⛅4⛅
『うッ、嘘…マジでお父さんッッ…ヤッタァッ!』
『あぁ…来週連れてってやる…』
次の日の家族揃った夕食の時、信彦は家族でディズニーランドに行こうと提案した…次女千景がまるでこの世の終わりかのように喜んでいるのを尻目に妻由紀江と長女、千種はそれをまたかぁ~という冷ややかな目で見ていた…
『…携帯買うお金はなくても遊園地行くお金はあるんだ…』
千種がボソリと皮肉った…
『…携帯と家族で遊園地とでは訳が違うだろッッ!』
長女に気分を害されたのが堪に障ったのか信彦は千種に食ってかかった…
『千景ッッ…あんな事言ってるけどどうせ実行されないから喜ぶだけ無駄だよッッ…』
『!ッッ…携帯を買って貰えなかったのがそんなに悔しいのかッッ、ならお前は行かんでもいいッッ家に居ろッッ!』
『あなたッッ、千種もやめなさいッッ!』
『言われなくったってそうするわよッッ!』
信彦は机をガンと叩いた…離乳食を食べていた赤ん坊の千笑が何事かと目をパチクリさせている…
『何でもかんでも期待させるだけさせといて結局何にもしないッ…大嘘付きよお父さんてッッ!』
『何だともう一度言ってみろッッ俺がいつ嘘を付いたッッ!?』
千笑が泣き出した…
>> 339
⛅5⛅
『何か最近家族バラバラね…』
寝室で風呂上がりの由紀江が化粧水を付けている側で信彦は布団に潜り込みぼんやり宙を眺めていた…
『なぁ由紀江…』
『ん?…なぁに?』
『俺って…嘘付きか?』
由紀江は暫く沈黙してからまたパンパンと乳液を額に付け出した…
『そうね…故意に破ってるとは言わないけど…仕事だとか疲れただとか何かと理由付けて約束破る事に平気になってる…私にはいいけどやっぱり子供達は繊細で敏感だから…』
『理由つけてって言うけどなッ、俺本当に疲れてんだからなッッ、』
ハイハイそう興奮しないでと由紀江が苦笑いした…
『けど千種のヤツ、父親捕まえて嘘付き呼ばわりはないだろ嘘付き呼ばわりはッッ!』
『千種ももう思春期だから何かと苛々する事だってあるわよ…』
由紀江はベビーベットでスヤスヤ眠る千笑を確認するとゆっくり自分の布団に入った…
『…遊園地…約束は守ってあげてね…?』
由紀江の言葉が妙に信彦の胸に引っ掛かり信彦は不愉快そうにそっぽを向くと黙って眠りについた…
(家族で俺を馬鹿にしやがってッッ!)
信彦はワァ~と一声あげるとそのまま寝息を立てた…
>> 340
⛅6⛅
『…ってゆぅかそんな話平日にでも出来るでしょ先生ッッ、何も明日の日曜日に病院に来いだなんてそんな理不尽なッッ!』
ディズニーランドを明日に控えた土曜日の朝早くに企業検診担当医である内科医師、縄文寺喜一に突然の呼び出しを受けた信彦は思わず声を荒げた…
『どうしたの?大きな声出して…』
『…明日奥さんと一緒に病院に来てくれだとッッ!こないだの再検査の結果を話したいって…ハァ~何もよりによってこんな時にッッ!』
信彦は頭を抱えた…
『そう…仕方ないじゃない…千種達には私からちゃんと言っておくわ…』
由紀江は複雑な表情をして台所のもやしの髭取りを再開した…
『…怒ってるのか?また約束を破ったって…』
由紀江の複雑な表情を見た信彦は一点を見つめる由紀江に言葉をかけた…
『うぅん、そんな事で怒る訳…でもどうして貴方の再検査の結果聴きに私も一緒に行かなきゃなんないのかしら…』
山のようなもやしをザルに移し替えると由紀江は虚ろな顔つきでもやしをバシャバシャと揉み洗いしだした…
『…さぁな…嫁に旦那の健康管理指導とかすんじゃないの?あの先生お節介だからな…』
信彦は苦笑いして新聞を広げた…
>> 341
⛅7⛅
年に一度しか企業検診に来ない川越市内の総合病院に信彦が足を運んだのは今月だけで2度目だった…
『どうだったアイツら…?怒ってなかったか?』
待合室で待つ間、一緒に連れて来た三女の千笑の世話をしている由紀江に信彦は言葉をかけた…
『撃沈~て感じだったわ…特に千景がかなり楽しみにしてたから…千種は相変わらずあのまんま…開口一番《ほらね!》って…』
『ほ…ほらね…か…ハァ~…』
まるで千種のいつもの諦めのため息が信彦のすぐ間近で聞こえてきそうだ…
『庄内さんッッ、お入り下さい…』
看護師に呼ばれて信彦と由紀江は診察室に入った…そこには企業検診担当医師の内科医長である縄文寺喜一が神妙な面持ちで座っていた…
『先生頼みますよ~ッ、今日は家族で遊園地に行く予定してたんですよッッ!』
『…遊園地か…それは悪かった…』
小柄で丸顔の還暦を過ぎた内科医師の縄文寺はパリパリと袋からレントゲン写真やCT写真を取り出しシャーカッセンという電球の入った白板に次々と差していった…
『身体はどうじゃ?何か変わった事はないか?』
『変わった事ぉ?いぇ特に何も…少し疲れる程度で…』
縄文寺はそっか!と言って笑った…
>> 342
⛅8⛅
『先生…まさかそれだけ言う為だけに俺達をここに呼んだんですかッッ?』
信彦はため息をついた…
『ちょうどいい機会だ、奥さんも検査受けていかれてはどうですか?』
縄文寺は信彦の言葉を無視するかのように由紀江に血液検査をするよう勧めた…
『…はぁ…私…がですか?』
『してくれるってんだからして貰えよッッ、』
信彦は吐き捨てるようにぶっきらぼうに言葉を放つと外で待ってるぞと一人診察室から出て行った…
『すみませんッ、あぁいう性格なもので…』
由紀江が縄文寺に夫の無礼を詫びた…
『いぇ…いいんですよ…』
縄文寺は皺だらけの顔を緩めた…
『で先生ッ、私の検査というのは…実はこないだ市役所からの市民検診で特に異常はないと言われましたが…またここで検査受けた方がいいんですか?』
由紀江が不安そうに縄文寺を見た…
『いぇ…その必要はありません…』
『はぁ?…と申しますと?』
『実は旦那さんの事で奥さんに聞いて貰いたい事がありまして…』
縄文寺は信彦のカルテを取り出すと筆記体でサラサラと由紀江には解らない文字を書き出した…
『し、主人には内緒…という事でしょうか?』
由紀江の顔が一気に曇った…
>> 343
⛅9⛅
『ハァ~…えらく遅かったナァ…待ちくたびれたぞッ、で、どうだった?』
診察室から出てきた由紀江に仕方なく千笑の世話をしていた信彦が不機嫌そうに声をかけた…
『……』
『どうだったって聞いてるだろ!?』
『…え?…あッ、け、検査ねッ…結果はまだ…来週…』
『んだよッ、のんびりしてやがんな大学病院はッッ!ほら帰るぞッッ!』
考え事をしている由紀江に苛立ちながら信彦は駐車場に向かった…
『ほらもっと早く歩けよッッ!』
足取りの定まらない由紀江に信彦は何度も苛立つと車に乗り込みエンジンをかけた…
『折角の休みだってのにとんだ迷惑だよッたくッッ!』
ブォンとエンジンをふかしながら車は発進した…由紀江は後部座席のチャイルドシートで玩具で遊ぶ千笑の姿を一度確認したあとまた前を向き黙っていた…
『あなた……』
『チッ、渋滞だよ…こんな時に限ってついてね…』
明らかに信彦はいらついていた…由紀江は放った言葉を飲み込むとまたじっと渋滞の車のテールライトに視線を置いていた…
『何だよさっきから…何か喋れよッッ、いつもなら煩いくらいに話す癖に…』
『……そう?…いつもこんなよ…』
信彦はまたため息をついた…
>> 344
⛅10⛅
『お父さん最近何だか顔黄色いねッッ!』
ある日の昼下がり、信彦とオセロをしていた次女千景のその言葉に台所の由紀江は思わずドキッとした…
『何だよ黄色いって…』
『日焼けしないからだよッッ、千景見なよ、ほらッッ!』
千景は信彦に夏休みにプール三昧した真っ黒な腕を自慢げに見せつけた…
『ハァ~疲れたッッ、終わりッッ!』
『あァ~ずるいッッ、千景が勝ってたのにィ~ッッ!』
信彦は持っていたオセロの駒をパンと盤の上に投げると横になった…
『んも~お父さん最近何かってぇと横になるッッ、牛になっちゃうよ牛にッッ!』
昔から信彦は次女千景とは結構気が合うようで事ある毎に自分に纏わり付いてくる千景を可愛いく思っていた…しかしそれも年齢とともに最近疎ましく思うようにもなっていた…
『さぁ千景ッッ、あんたミッちゃんと遊ぶんでしょッ!お父さん疲れてんだから構わない構わないッッ!』
由紀江は千景を追い払うように部屋の外に出した…
『…大丈夫?あなた…』
『…アァ~…』
大きな欠伸をすると信彦はそのまま眠りに入った…休みの日になると最近信彦はいつもこうして寝てばかりいた…由紀江はその信彦の寝顔を切なそうに見つめた…
>> 345
⛅11⛅
信彦のやり場のない苛立ちは日増しに強くなっていき由紀江の胸にえもいわれぬ感情が渦巻き始めたそんなある日の出来事だった…
『!ッッ、あ、あなたッッ、理由も聞かずにいきなり叩く事ないじゃないッッ!』
『ばッ、馬鹿野郎ッッ、女子中学生の朝帰りにどんな正当な理由があると言うんだッッ!』
『だから晴美んちで勉強してたら終電に乗り遅れたって言ってるじゃないッッッ!』
『なぜ学校も地域も違う川崎の友達の家にまで行って勉強する必要があるッッ!おかしいだろッッ!?正直に本当の事言いなさいッッ!』
2学期期末試験も間近の11月下旬、長女千種の朝帰りが判明した…信彦は押さえきれない感情を剥き出しにして千種を殴り付けた…
『許さんぞッッ!父さんは絶対にッッ!』
『私の事何にも知らない癖にこんな時だけ父親面しないでよッッ!』
『千種ッッ、何て事言うのッッ!』
千笑の泣く声で信彦は潮を引くように静まると何も言わずに自分の部屋の戸をピシャリと閉じた…
『本当だよお母さんッッ、信じてくれるよね!?私ちゃんと電話したし…』
泣きじゃくる娘の肩を抱き由紀江は分かった分かったと優しく呟いた…
>> 346
⛅12⛅
『最近超怒りっぽくなってる…ハァ~もうウンザリだよッッ!』
『そっかな…千景には普通だよお父さん…』
『そりゃ千景は気に入られてるからだよッッ、…てゆーか気に入られたくもないけど…』
二段ベットで左右に仕切られた8畳間で千種と千景は最近の父、信彦の言動に論議を醸し出していた…
『昔っからあぁなんだよッ、根暗で陰気で自分勝手で…ホンット娘の気持ちなんて全然考えてないんだからッッ!ねぇ千景聞いてるッッ!?』
『あっ!笑(えみ)のオシメ替える時間だッッ、今日の当番私なんだよね…』
千景はドタドタと階段を駆け降り10歳下の妹、千笑がいる寝室に向かった…
『ちょっといい?千種…』
千景と入れ代わるように今度は母由紀江が千種達の勉強部屋に入って来た…
『何?あの件ならさっきお父さんに謝ったから…』
千種は由紀江からわざと視線を外し漫画雑誌を読むフリをした…
『千種に…あなたにちょっと聞いて貰いたい事があるの…』
いつになく神妙な面持ちで由紀江は千景の勉強机の椅子に腰掛けた…
『何よ改まっちゃって…』
『お父さんの事…なんだけど…』
千種の眉が逆ハの字に吊り上がった…
>> 349
⛅13⛅
『お父さんの話ならいいよッ、もう聞きたくないから…』
『そうじゃないのッッ!…大切な話なの…』
由紀江は廊下に誰もいない事を確認するとゆっくり千種の前に正座した…
『いい?今からお母さんが言う事落ち着いて聞いてねッッ?』
千種は母由紀江のただならぬ雰囲気を悟りそっと漫画雑誌を床に置いた…
『ずっと家族には隠し通そうと思ってたんだけど…きっとそうもいかないだろうし…』
『だからッッ、何なのよッッ!驚かないから言ってみて?』
千種は俯く母由紀江の膝をトントンと叩いた…
『……こないだ病院に再検査の結果聞きに行ったでしょ?…そしたら…そしたら…』
突然由紀江が啜り泣きだした…柱時計の鐘がボーンと鳴り響く音がした瞬間、千種は自分の耳を疑った…
『ガ……ン?…癌ってあの病気の癌?』
『…肝臓にね、癌の腫瘍が…で…でッ、…アァ…』
『!ッ、お…お母さんッッ、しっかりッッ、しっかりしてよッッ!』
由紀江は全ての緊張から解き放たれたように千種に寄り掛かるように崩れ落ちた…
『な…治るよッッ、ホラ…今は医学だって進歩して…し…お母さんッッ!?』
母の慟哭で千種にも事の重大さがひしひしと伝わって来ていた…
- << 351 ⛅14⛅ 信彦は再検査の結果、やはり末期の肝臓癌だった…幸い他の臓器に転移は認められず今日まで体力もさほど落ちずにきていた…しかし癌細胞は完全に肝臓全体を侵襲し、手術してももう助かる見込みはないと宣告されたのだった… 《いい千種ッッ、この事はお父さんおろか千景や他の人間には絶対言っちゃ駄目よッッ!周りが混乱して大変な事になるから…》 母由紀江からの固い忠告だった… (癌…癌…お父さんがまさかそんな…まだあんなに元気なのに…嘘、嘘よね?) それ以来千種は今までと何ら変わらない日常生活を演じながら何度も父信彦の癌が間違いであってくれと自問自答していた… 『え~お父さんまだ寝てるのぉ~!千景と映画見に行く約束してたじゃ~ん!』 『お父さんは疲れてるんだからッッ、お姉ちゃんと行きなさいッッ!』 ある日の日曜日千景と映画を見る約束をしていた信彦はなかなか布団から出て来なかった… 『だってぇあの映画幼稚だから嫌だっておね…』 『行くよッッ、千景ッッ!早く用意しなッッ!』 『え……?いいの?お姉ちゃんあれ嫌いだって…』 千種が玄関で靴を履いた…母由紀江が千景に解らないように千種に一度有難うと声に出さない言葉を告げた…
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