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アドル・エルク( ♂ VWrHh )
09/07/11 16:06(更新日時)

当選通知が来た。正直、当選するとは思っていなかったので驚いた。大会の開会式は、来月の最終土曜日だと言う事だ。内容を読み返したが、私からの要望はほぼ聞き入れられていた。当選の余韻に30分ほど浸っていたら、電話が掛かってきた。大会の開催本部からだった。簡単な確認の後で、最初の打ち合わせの日程が決められた。電話を切ると、ようやく実感が湧いて来た。よし。一つやってやろうかという気分だ。この時代、高度に発達したネットワーク環境と、バーチャル表現・体感システムの融合・発展により、巨大で緊密なゲーム環境の構築が可能になっていた。個人用・家庭用のゲーム機及び、それらのためのゲーム環境にも、もちろんこれは反映され、実に様々なゲーム機械・ネットワークの中でのゲーム環境・ゲームソフトが整備され、販売されていた。私が応募したのは、テレビ局が新しいバラエティ番組として企画した、多数の芸能人を起用して出演させ展開させる、艦対艦のシミュレーション対戦ゲームだった。その中の企画の一つとして、素人の一般人を艦長として起用し、芸能人クルーを指揮させて戦わせると言うコーナー企画に私は応募して、当選した

No.1158666 09/03/21 14:29(スレ作成日時)

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No.1 09/03/21 14:47
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

私は応募して、当選したのだった。

この企画では、男性一般人艦長は女性芸能人クルーを指揮し、女性一般人艦長は、男性芸能人クルーを指揮するというものだ。

だが、全体として何人の一般人が艦長として起用されるのかは、まだ分からない。

私が番組制作サイドに出した要望は次のものだった。

①私は現在35才だが、私より年長の人をクルーとはしない。

②艦の定員は45名だが、全員は人選しない。

③30名をクルーとして人選し、配置が決定したら残るポストはオートプレイとする。

④30代前半の女性芸能人・20代後半の女性芸能人・10代~20代前半の女性芸能人のリストを、それぞれ30人ずつで提案して欲しい。

⑤その後のクルーの人選・人事・配置に関しては、総て私に任せて欲しい。

⑥基本的に私が指揮を執る艦がゲームに参加するのは、土曜日・日曜日としたい。

⑦クルーである芸能人のスケジュールが合わず、ゲームに参加出来ない場合でのクルー人事は、艦の司令部に任せて欲しい。

というものだったが、結果としてこれらは総て聞き届けられた。

テレビ局の番組制作サイドからも電話が掛かってきた。

No.2 09/03/21 22:42
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 1 そこで、同じ日に打ち合わせをすることに決めた。

次の週の土曜日に、私はテレビ局の本社屋ビルに出向いた。

午前9時40分、一階の広いロビーの三分の一を占めるラウンジの一角で、私は一人で座ってコーヒーを飲んでいた。

二本目の煙草をようやく吸い終わって灰皿で揉み消した時に、私から見て左側から二人の男性が視界に入って来たので私は立ち上がって席の左側に立った。
『おはようございます』と私。

『おはようございます。お呼び立てしてすみません』と、前を歩いて来た男性がにこやかな笑顔で右手を軽く上げた。

『私はユージーン。当番組のプロデューサーです。そしてこちらがグレッグ、開催本部の運営委員です』

そう言って名刺を差し出してくる二人に、『初めまして、アドル・エルクです。あいにく名刺はありませんが』

そう言って私は2枚の名刺を受け取った。

『構いませんよ。さ、どうぞ座って下さい。お食事はいかがですか?』

『いえ、結構です。済ませて来ましたので』
そう言って私は腰を降ろした。

『度々ですみませんが、改めて簡単に御本人の確認をお願いします』

と、グレッグ運営委員が申し訳なさそうに言った。

No.3 09/03/22 22:53
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 2 私は身分証を運営委員に提示しながら口を開いた。『それで今日は、クルーの候補者リストを頂けるんですか?』『もちろんですが、スケジュールの確認から始めましょう』とプロデューサー。『ご存じのように開会式は、来月の最終土曜日です。今日から数えて28日ありますが、時間的な余裕はあまりありません』『開会式までに貴方にはクルーの人選・人事・配置の総てを決定して頂き、クルーの研修から艦隊運動の演習まで一通り終えて頂きます』とグレッグ運営委員が、私の身分証を手渡しで返しながら言った。『はい、私もそのつもりでいますが、クルー候補者の皆さんとの面談スケジュールの調整には、ご協力をお願いしたいのですが?』『それはもちろん、お任せ下さい』とプロデューサー。『そのためにも、人選を進めましょう』言いながら小さなメディアチップを取出した。『この中にリストは総て入っていますので、早急な人選をよろしくお願いします』私はそれをケースごと浮けとりながら、『わかりました。明日にでも、艦の司令部スタッフを含む、ブリッジのメインスタッフの候補者を人選してお知らせします』『ところで、やはり最初に決めたいポストは副長ですか?』

No.4 09/03/22 22:55
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 3 とプロデューサーが、少し身を乗り出して聞いた。

『そうですね。やはり副長人事は、艦長の専任事項ですから・・ですが、先ずは具体的にポストは決めずに司令部スタッフ及び、ブリッジのメインスタッフとしての役割を担って欲しいという事で、同意を取り付けたいと思います』

『その上で個別に面談して、人事や配置を決めますか?』

と、運営委員。

『そのつもりです。それで30名全員のポストを決めていきます』
『本当に30名だけで良いんですか?』

心配そうにプロデューサー。

『ええ。30名で充分です。私も初めてのことですから、40人以上のグループを指揮するのには無理があると思いますので』

『わかりました。それでは明日、連絡をお待ちしています』

プロデューサーが立ち上がって右手を差し出した。

私も立ち上がり、
『これからよろしくお願いします』
軽く握手を交わす。

『いつでも何でも相談して下さい』

グレッグ運営委員が笑顔で言う。

『わかりました。こちらこそよろしくお願いします』

彼とも握手を交わし、私はひとまず二人に別れを告げた。

No.5 09/03/24 21:15
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 4 部屋に戻ってから、早速リストに目を通した。必要なポストは先ず司令部スタッフとして、副長・参謀・機関部長・砲術長・メインパイロット・補給部長・通信、センサーオペレーターの7人だ…。その他のブリッジスタッフとしては、参謀補佐・機関部補佐・砲術補佐・ミサイルオペレーター・通信士・サブパイロットが二人・補給部補佐・サブセンサーオペレーターが二人と、保安部員が二人で、計12名。合わせてブリッジクルーだけで、19名だな。残りの11名は、作戦士官・機関部士官・砲術士官・ミサイルコントローラー・補給部士官として、2名ずつぐらいで割り振れば良いだろう。10代後半から30代前半までの範囲で、私に対して提示された90名の女性芸能人のファイルを、丹念に見比べながら一人また一人と選び出していく。女優さんが60人で、歌手の人が30人のリストだった。それぞれのキャラクターから受ける印象は実に様々なものだ。司令部スタッフの候補者として選ぶ場合、明確な選出基準などと言うものはないのだが、プロフィールやキャラクターを見比べた印象で統率力がありそうに感じられる人を選ぶようにした。

No.6 09/03/24 21:17
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 5 また、メインパイロットとサブパイロットには、反射神経が良さそうでフットワークが軽い印象を受ける人を選んだ。

そしてこれはあまり関係無いとは思うが、センサーオペレーターの3人には視力の良さも加味して選んだ。

割合順調に30人の人選が終わった。

改めて選び出した30人と選ばなかった60人を、一人一人で見比べてみたが、提示されたリストの中ではまずは満足のいく人選だろう。

データを送っても良かったんだが、電話で伝えることにした。

No.7 09/03/25 22:33
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 6 グレッグ運営委員は呼び出し音2回で出た。選び出した30人を口頭で報告してから、
『割合早かったですね。選出は順調に進みましたか?』
『そうですね。自分でも納得がいきました』『それで使用される艦ですが、どのクラスにしますか?』
『軽巡洋艦(ライト・クルーザークラス)でお願いします』
これには少し驚いたようだった。
『本当にライト・クルーザーで良いんですか?攻撃力も防御力も弱いですが…』
『ええ、確かに今回使用できる艦の中では弱いですが、短距離での足の速さは一番ですから、その分ダッシュの速さとフットワークの軽さで勝負しますよ。それに、ポイントが稼げれば攻撃力や防御力に回して、パワーアップが図れますからね』それでも彼は心配そうだった。
『…分かりました…ではその様に手配します…が、候補者との面談スケジュールは、どのように調整しましょうか?』
これには一つ考えがあった。
『その前に操艦・艦体運動の演習は、番組で収録するんですか?』『もちろんです。これは大会の中でも、番組の中でも目玉の企画ですからね』
『それでしたら、できるだけ早く30人のメンバーが全員集まれる日を調整して下さい』

No.8 09/03/26 19:21
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 7 『その日から、メンバーの顔合わせと面談と演習を同時に始めたいと思います』
『大丈夫ですか?全部同時になんてできます?運営本部としても、番組としてもフォローはできませんよ』
『大丈夫でしょう…開会までもうあまり時間も無いですしね…話をしながらにでも演習を進めていかないと錬度は上がりませんから…』
『そうですか…分かりました。番組としては却って結構面白いかも知れませんね。プロデューサーにも伝えて全員が集合できる日を最初の収録日にするよう調整します』
『それともう一つ良いですか?』
『良いですよ。どうぞ』
『収録の前に、撮影セットを見せて貰いたいんですが…』
『それはお安いご用です。いつでも良いですよ』
『でしたら、明日の夜にでも…』
『分かりました。7時で良いですか?』
『それで結構です。では後ほど』
『宜しくお願いします』
通話を終えてから一時間後ぐらいに、今度はプロデューサーから電話が掛かってきた。
『随分と思い切った事をされるんですね。番組としては、面白そうなんで歓迎しますよ。メンバーのスケジュール調整については任せて下さい。5日以内に集合できるようにします。』

No.9 09/03/27 17:48
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 8 『宜しくお願いします。』
『それと明日の夜の撮影セットの見学ですが、私がご案内しますので宜しくお願いします』
『お願いします』
通話を終えた私は、徐々にではあるが気持ちが高まってきているのを感じていた。
次の日の夜、7時少し前に私は撮影セットを訪れていた。
私が指揮を執る艦の内部として製作された撮影セットは、テレビ局本社屋ビルの地下3階の一角にしつらえられていた。
未だに全体としてこの大会で何隻の艦が参加するのか分からないのだが、同じ様な撮影セットはここだけではなく各地にあるようだ。受付で訪問の旨を伝え、またラウンジでコーヒーを飲んでいたら10分でプロデューサーと運営委員が笑顔で現れた。
『どうもご苦労様です。それじゃ早速ご案内しましょう。』
と、先に立ってエレベーターに向う。
地下3階で降りると、フロアの総てを使って四つの撮影セットが組まれていた。
『こちらです』
と促され向って左側手前のセットに入った。自動ドアをくぐると、通路を挟んでまたドアがある。
『まずはここがブリッジです』
と言ってプロデューサーが先に入る。
ライト・クルーザークラスのブリッジは、卵型のような印象だった。

No.10 09/03/27 22:06
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 9 もちろん本物の卵よりも、もっとずっとふっくらとしているが。
システムコントロールパネルや、それぞれのシートの前のコンソールも無駄が無く、整理されて機能的であるように見える。
うん、悪くない。
私が頷きながら見回しているのを横目で見て『狭いでしょう?戦艦バトルシップのブリッジから見ると、四分の一の広さしかありませんからね』
それを聞いても別に広い方が良いとは思わなかった。
幾ら力が強くても所詮は鈍牛の戦艦なんぞに乗りたいとは思わないふと、シートの数を数えてみたら、29しかなかったので、
『シートが一つ足りないようですが?』
『それは、あなたのシートですよ』
とプロデューサー。
『これは参加する全艦に共通しているんですが、キャプテンシートだけは艦長の体型に合わせて作る事になっています』
と、運営委員。
『ですので、お手数ですが後で採寸させて下さい?』
その問い掛けには鷹揚な頷きで答えながら、ブリッジの両側にあるドアについて聞いた。『ブリッジの両側にある部屋は?』
『ではこちらからどうぞ』運営委員が向って右側のドアを開けた。『ここは艦長専用の控室です』

No.11 09/03/28 09:46
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 10 通された部屋はざっと15畳程の広さで、機能的で大振りのデスクにリラックスできそうなリクライニング・チェアーがあった。
座ってみたかったがやめておく事にした。
デスクの上にはパッドが二つ。
デスクの前には応接セットもあるので、打ち合わせやちょっとした会議にも使えそうだ。あとは、飾り棚が三つにショーケースが一つあるが、もちろんまだ何も置かれてはいない『左側の部屋はどうなっていますか?』
『全く同じ部屋ですよ。私物の持ち込みは自由ですので、色々と飾って下さい』
と、運営委員が笑顔で言う。
『左側の部屋は副長の控室です。デスクは動かせませんが、それ以外のレイアウトは自由ですので』
『分かりました』
『では、他の部屋も見ましょう』
ブリッジの撮影セットから出て通路を右に。最初に入った部屋は、ちょっと広めで豪華なホテルの会議室のようだった。
『ここはまあ作戦会議室ですね。主にメインスタッフでの会議の場所として使って下さい。全員分の座席はありませんので』
次にまたその右側の部屋に入ると、そこはブリッジの7割程の広さで全員分の座席があるようだった。
『ここは士官室というか集会室ですね。全員座れます』

No.12 09/03/28 10:06
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 11 そして、更にその右側の部屋はブリッジよりも広く、天井も高い。2階構造で中央部は広く吹抜けになっているそこには大きな円筒形の構造設備が中央部に据付けられていた。
座席は四つしかないがシステムコントロールパネルやセンサーモニターやオペレーションコンソールの数は、ブリッジよりも多かった『ここが機関室。エンジンルームですね。ブリッジに並ぶ艦の中枢部です』
この機関室の撮影セットの眺めは壮観なものだった。
私は2階にも登り上からも全体を眺めたり、コントロールパネルも一つずつ見て確認した『中央にあるのが、メインリアクターコアです。詳しくはマニュアルで確認して下さい』機関室を出た私達は通路を左に戻り、ブリッジのすぐ左側の部屋に入った。
その部屋はドーム状で広さはブリッジの4割程度だと思うが、私にはまるでプラネタリウムのような印象だった『ここがメインセンサールームです。各種センサーで取得した情報の総てを、ここで集中統合処理してあらかじめ設定されているゲーム空間の情報とも併せて投影できるようになっています』
座席は中央に一つだけだったが、その前にあるワークステーションは凄いものだった。

No.13 09/03/28 15:42
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 12 次にその左側の部屋に入ると、そこはブリッジの3倍ぐらいの広さがあった。
カウンターには、スツールが8個。
丸や四角いテーブルに4~5個の椅子の組合わせがワンセットで、6セットあった。
『ここはバーラウンジです。まぁ食堂・バー・休憩・談話・娯楽等の交流・憩や癒しの場ですね。レイアウトを変えてステージを設置することもできます。酒も出しますが、あまり強いものは置きません。通常バーテンダーとウエイターを一人ずつ常駐させますが、状況に応じて増やす事もできます』
やや得意げに話す運営委員の説明を、満足そうに頷きながら聞いていたプロデューサーが『以上ですね……。ここまでが撮影が予定されているセットです。この他にも部屋や設備はありますが、今のところ撮影は予定されていません』
『このバーラウンジの左側には?』
『ここのすぐ左側には、中規模のスポーツジムがあります』
『そしてその左側には、何にでも使用できる多目的ホールがあります』
『クルーの個室はどうなっているんですか』『先程にご案内しました機関室の右側には、艦長・副長と続く艦の司令部スタッフ用の個室が並んでいます』

No.14 09/03/28 18:16
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 13 『そして先程ご説明しました左側の多目的ホールの更に左からは、その他のブリッジスタッフと一般クルー用の個室が続きます』
『私は…スポーツジムと多目的ホールも、撮影セットとして加えて良いと思います。ジムの中で汗を流しながらのクルー同士の会話もドラマになると思いますし、多目的ホールも色々なイベントやらセレモニー等で使えるでしょうから…どうでしょう?』
私の提案にプロデューサーは、
『良いアイディアだと思いますよ。早速ジムと多目的ホールも、撮影セットとして使えるように改修させましょう』
『ところで撮影はどの様に行われるのですか?』
と私が訊くと、
『これは当日にもご説明しますが、クルー全員にID認識発信チップを組込んだタグを、服の裏側にでも付けて貰います』
『撮影はセットの中の随所に設置されています、超小型の全自動CCDビデオカメラが、クルーが付けているタグから発信されているID認識パターンを読み取り、自動でカメラのレンズを向けて焦点を合わせ、撮影します』
『まあ膨大な量の動画ビデオ画像が撮り込まれる訳ですが、これまで撮影スタッフとして割いていた人員を、編集作業に回せますので楽になりましたよ』

No.15 09/03/30 22:40
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 14 『それではそろそろ採寸させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?』
少し申し訳なさそうに言うグレッグ運営委員の問い掛けに
『ええ。良いですよ。お願いします』と軽く応じた。
採寸が終わり、三人で一階に戻ってラウンジでコーヒーを飲んだ。『あぁ!すみません。言い忘れていました。本当はこれを一番に伝えなければいけませんでしたね。申し訳ありません』
突然にプロデューサーが声を上げた。
『最初の収録日、つまり全員が集合する日が決まりましたよ』
『いつですか?』
『平日で申し訳ないんですが、今週の金曜日です。金曜日から始まって土曜日・日曜日と、最初からキツいスケジュールで本当にすみませんが、三日間のぶっ続けで収録させて頂きたいのですが…よろしいでしょうか?』
『三日間での予定収録時間は、どのぐらいですか?』
『基本的に30時間は収録したいと考えています。許されればプラス6時間~8時間。間違っても40時間は超えません』
『バーラウンジでも収録しますね?』
『それはもちろん、ジムでも収録します』
『各員の個室にカメラはありませんね?』
『それはありません。有り得ません』
『分かりました。良いでしょう』

No.16 09/03/31 18:13
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 15 『但し、艦に乗ったら基本的にスケジュールは私が決めます』
『それで結構です。異存はありません』
とプロデューサー。
『後もう1点お願いがあるのですが』
『どうぞ』
『艦のマニュアルを下さい。総てが記載されているものを』
『ああ、すみません。お渡しするつもりでした。これです』
少し驚いたようにグレッグ運営委員は言うとデータチップの入ったケースを取出して差し出した。
『これに貴方の艦に関する事は総て記載されています。アクセスコード・セキュリティコード・ネットワークキーに到るまでが総て入っています』
『ありがとう』
そこでプロデューサーが改まって言った。
『最後にもう一つだけ教えて下さい?』
『何でしょう』
『貴方のライト・クルーザークラスの艦の名前はどうしますか?』『デファイアントDefiantとします』
『大胆不敵な艦…ですか?』
『そうです』
『分かりました。ではその艦名で登録します』
『お願いします』
『今回の収録の期間中にデファイアントDefiantは発進しますか?』と運営委員。
『金曜日中に発進できるかどうかは分りませんが、期間中には必ず発進します』

No.17 09/04/01 07:58
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 16 『分かりました。では三日後の金曜日の朝8時にここでお会いしましょう。よろしいでしょうか?』
『結構です。金曜日は休暇を取りますので』『それでは、少し早いですが、デファイアントの健闘を祈ります』『ありがとう』
握手を交わし、二人と別れた私は帰途についた。
翌日帰宅してから、私は艦のマニュアルに目を通し始めた。
攻撃力と防御力の低さは予想通りだ。
だがダッシュの速さとフットワークの軽さは申し分なかった。
戦場になるゲーム空間は、岩っころの多い障害物だらけの空間だ。障害物を旨く使って素早く立ち回れば、例え戦艦が相手でも負けない戦い方をする自信がある。問題は開会式までにクルーの錬度をどの様に引上げるかだがこれは高い密度で演習をこなしていくしかないと思う。
マニュアルには他のクラスの艦の性能諸元も記載されていたが、ごく基本的なものであまり詳しくは書かれていなかった。
戦艦主砲の有効射程距離は、こちらの主砲の3倍程か。
ミサイルの保有弾数も比較にならない。
まぁ、誰かの台詞じゃないが、当たらなければどうと言う事もないが。
当面戦うとなれば、同じクラスかミドルクラスと言う事だろう。

No.18 09/04/01 18:10
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 17 実際の操艦と攻撃のタイミングをいかに合わせて連動させるかに、勝ちを拾える可能性があるだろう。
戦術面ではこれ以上考えても仕方ない。
今は覚えるべき事を頭に入れる事にした。
翌日の夜もマニュアルを丹念に読んでいた。非常事態での対処法は総て頭に入れて置かなければならないが、非常事態に陥らないように操艦するのが艦長としての務めだな。
夜の11時までマニュアルを眺めていたが、思い切って切り上げて寝る事にした。
いよいよ明日から始まるな……。
興奮はしていないが、静かな高揚感はある。特に何も思い巡らす事も無く眠った。
翌日の朝7時30分に私はもうTV局1階のラウンジでコーヒーを飲んでいた。
興奮はしていないが、何かに急かされている感は否めない。
煙草を2本吸い終わってコーヒーを飲み干したら、ユージーンプロデューサーとグレッグ運営委員を含む男性4人がこちらに歩いて来るのが見えたので、時計を見ると8時5分前だった。
『おはようございます。早いですね。待ち切れませんか?』
と笑いながらプロデューサーが右手を差し出してきたので、
『そうですね。早く乗りたいですよ』
私も笑顔で応じ、手を握った。

No.19 09/04/01 20:18
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 18 『おはようございます。よく眠れましたか』グレッグ運営委員も笑顔で迎えてくれたので『大丈夫です。ありがとう』と笑顔で彼とも握手を交わした。
『紹介しましょう。彼がディレクターのボブ。そして彼がサウンドミキサーのカーターです』
よろしく。っと彼らとも握手を交わしたが、『ディレクターですか?』
『と言っても、ボブにしろカーターにしても何も指示は出しません。ただカメラやサウンドシステムがちゃんと動いているか、時々チェックするだけです』『ですから何も気にしないで自然にやって下さい』とディレクターが、話を引継いで言った。
『ただ、今回の演習が終わった時に、ハンディカメラで少しの時間、撮影させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?』
別に異存はなかったので、
『私は良いですよ』
そう答えた。
『ありがとうございます。ところで、これがカメラがクルーを認識するためのタグですので、後で服の裏地にでも付けて下さい』
そう言って昔のICチップのようなものを手渡してくれた。
私はそれをポケットにしまいこんでから、
『ところで私のクルーはまだですか?』
とプロデューサーに水を向けると、

No.20 09/04/01 20:19
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 19 『貴方のクルーの集合は、9時です。我々はここで彼らを出迎えてブリーフィングを行います。タグも手渡して撮影セットに案内して行きますので、貴方は、デファイアントのブリッジで彼らを出迎えて下さい。我々は無論中には入りません。全員がブリッジに入った時点で、撮影・収録がスタートします』
『分かりました』
『それではひとまず貴方の個室に荷物は置いて貰って、ユニフォームに着替えて下さい。タグを付けるのを忘れないように。コンピューターには音声でアクセス出来ますので、貴方の認識番号を登録して下さい。それでメインコンピューターが、貴方をデファイアントの艦長として認識します』
『ありがとう。それじゃ行って来ます』
『健闘を祈ります』
私は改めて彼ら4人と握手を交わして別れ、荷物を持って一人エレベーターに乗った。
撮影セットに入った私は真っ直ぐに艦長の個室に向った。
ドアの前に立ったが、赤いランプが点灯しただけで入れなかった。『コンピューター!認識番号・α3278τ4091アドル・エルク』
『認識番号確認・登録完了。ようこそデファイアントへ。アドル・エルク艦長。歓迎します』
ランプの色が青に変わりドアが開いた

No.21 09/04/02 17:40
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 20 1人用の個室としては広過ぎる、というのが第一印象だった。
クローゼットを探していて見つけたのがドレッサールームだった。『そんなのいらないよ』と思わず声に出して言ってしまった。
ユニフォームはすぐに見つかったので着替えたが、あつらえたようにピッタリだった。
採寸したんだから当然だな……。
タグは上着の襟元に見えないように取り付けた。
他にも正装用や礼装用のようなユニフォームが数着置いてあったが正直こんなものを着なければならないような局面があるとは思えなかった。
ともあれ私はこの普通のジャンプスーツの用なユニフォームが気に入った。
時計を見ると、まだ9時にもなっていない。全員集めてのブリーフィングなら、20分は掛かるだろうからコーヒーでも飲んでくつろぐことにした。
嬉しいことに、ボタン一つで出してくれる機械があるのでもなく、小さいながらも機能的なキッチンがあったので、自分でコーヒーを点てる事にした。
6種類ものコーヒー豆がもう挽いてあったので、マンデリンを選んだ。
自分で淹れたコーヒーを持ってデスクとセットのリクライニングチェアーに落ち着いた。引出しを探ると灰皿があった。

No.22 09/04/03 05:44
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 21 マニュアルにもあったが、煙草が吸えるのは個室の中だけだ。
もう一度時計を見ると9時10分だった。
一本吸い終わってからブリッジに入れば良いだろう。
落ち着いてコーヒーを飲み干し、揉み消してからレストルームで顔を洗い、ブリッジに向った。
キャプテンシートは、既に設置されていた。座ってみたがこれもまたピッタリだった。
座ったままシートを回し、正面を見据える。まだ何も動いてはいないが、いよいよこれからだ!…と自分に気合いが入ったところでドアチャイムが鳴った。立ち上がって歩み寄り、ドアに向ってやや左側の位置で応える。
『どうぞ』
ドアが開いて最初に入って来たのは、シルクブラックのストレートロングヘアが背中の中央部にまで伸びる、長身の女優・ローラ・ウェアー、33才。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、ローラ・ウェアーです。よろしくお願いします』
『こちらこそ。取り敢えず座って下さい』
荷物を持って入って来なかったという事は、ブリーフィングの時に廊下に置いておくようにとでもプロデューサーに言われたのか…。

No.23 09/04/04 00:23
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 22 次に握手を交わしたのは、軽いウェーブの掛ったライトブラウンのセミロングヘアで、はにかんだ笑顔を見せる歌手・女優のナレン・シャンカー、26才。『ようこそデファイアントへ。アドル・エルクです』
『よろしくお願いします。お一つどうぞ?』と言って、一口サイズのチョコレートを手渡してくれた。
『ありがとう。どうぞ掛けて下さい』
三人目のクルーは、ダークブラウンのミディアム・ショートレイヤーヘアで、段差も無いのに入口で躓くように入って来た、歌手・TVタレントのリーア・ミスタンテ、28才。入って顔を合せるなり『誕生星座と血液型を教えてくれませんか?』と、聞いてきた。
『山羊座でA型です』『良かった~。この組合わせの人とは今週、相性が最高に良いんですって❤』
悪戯っぽく笑った。
『ようこそデファイアントへ、艦長のアドル・エルクです』
『リーアです。よろしく💛』
四人目に入って来たのは、パールブラウンの髪をクラシカルなショートボブにまとめた、歯に衣着せぬ物言いでの発言や評論で人気を博しているTVタレントの、エマ・ラトナー32才。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』

No.24 09/04/05 19:24
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 23 『エマです。よろしく。あんまり背は高くないんですね?』
『そうですね。まあどうぞ』
通り過ぎる時に、彼女はもう一度私の横顔を流し見たようだった。
5人目のクルーは、マット・ジンジャーの髪をアシンメトリー・ショートスタイルにした、アイドル歌手、キャロリン・パロマス。20歳。
『ようこそデファイアントへ。アドル・エルクです』
『よろしく、キャルって呼んで下さいね。どうぞ』
そう言って何かを手渡してくれた。改めて見ると、四葉のクローバーだった。
『ありがとう。珍しいですね』
『これで今日からの3日間は、ラッキーデイですよね?』
そう言って微笑んでくれた。
『そうですね。どうぞ掛けて下さい』
6人目に入って来たのは、カッパー・ブルネットの髪をグラデーション・ボーイッシュショートにした、人気女優のフィービー・パイク、27才。
『ようこそデファイアントへ。アドル・エルクです。よろしく』
『ご迷惑をお掛けすると思いますが、この3日間、よろしくお願いします』
女性にしては、かなり強い握力の持ち主だった。

No.25 09/04/06 23:30
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 24 7人目のクルーは、ウォームブラウンの髪をローレイヤーシフォンカールにまとめた、女優・TVタレント・マラソンランナーでもある、ジャニス・マニア25才。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
握手をしようとして差し出した私の右手首に彼女は、手作りのミサンガを付けてくれた。『お守りにして下さい。よろしくお願いします』
『大事にします。こちらこそよろしく』
8番目に入って来たのは、ハニーオレンジの髪をミディアム・エアカールにした、TVドラマのトップ女優でありながら、F3のカーレーサーでもある、ロザリンド・マイヤーズ、22才。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
握手の代わりに軽くハグしてくれた彼女は、『よろしくお願いします。真っ直ぐで、良い眼をしてますね』
そう言ってくれた。
『ありがとう。どうぞ掛けて下さい』
9人目のクルーは、スゥイートオレンジの髪をミディアム・フェアリーボブにした、今人気のアーティスト・ダンスシンガーであり、絵画創作にも非凡な才能を持つ、レイラ・マーカス。19才。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』彼女は私の目の前に立つと、

No.26 09/04/07 01:07
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 25 タロットカードの束を差し出して私に一枚引くようにと促した。
一枚引いて彼女に手渡すと、それを一瞥して『今回のゲームでは、連戦連勝だと出ました』そう言って微笑みながら私の右手を握り、『よろしく。レイラ・マーカスです。レイラと呼んで下さい』
私が何のカードを引いたのか教えてくれなかったのが気になったが『こちらこそよろしく。さあどうぞ掛けて』10人目のクルーは、私より明らかに15cm以上は長身の人だ。マロンブラウンの髪をゆったりとしたライトウェーブロングで垂らした、クヌース・ニューウェル、32才はニュースバラエティ番組のメインキャスターから、女優へと幅を拡げた才媛だ。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『こちらこそ。何も分りませんが、どうぞよろしくお願いします』そう言って彼女は、小さめだが映える色のコサージュを私の左胸に付けてくれた。
『艦長さんですから、何かワンポイントがあった方が良いと思ったものですから……』
何か飾り立てられているような気がしないでもないのだが…。
『ありがとうございます』笑顔で応えた。

No.27 09/04/08 17:12
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 26 11番目に入って来たのは、ブルーブラックの髪をスウィングレイヤーボブにまとめた、テレビドラマの新進女優にして有名国立大学の三回生でもある、マリレーヌ・レヴィン。21才。
小柄で清潔感のある女の子だが、どうやら内気な性格のようだ。
『ようこそデファイアントへ。アドル・エルクです』差し出した私の右手を、
『ど・どうぞよろしくお・お願いします』と、耳まで赤くして噛みながら恥ずかしそうに握り返すと、ピョコッとお辞儀をしてすり抜けていった。
12番目のクルーは、アッシュマットの髪をナチュラルなカールロングにしているアラニス・モリセット。24才。
アニメ番組の声優として大きい人気を誇り、最近ではテレビドラマの女優としても歌手としても活躍している。デファイアントのクルー候補として選出する時に見た彼女のファイルには、OAエンジニアリングマネジメントのファーストクラス・ライセンスを取得しているとあった。
『ようこそデファイアントへ。アドル・エルクです』
『初めまして、アリンと呼んで下さい。よろしくお願いします』
微笑を絶やさない落ち着いた声と態度での応対には好感が持てる。

No.28 09/04/08 17:14
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 27 13人目のクルーとしてブリッジに入って来た女性を見て、リストファイルにあった写真とのあまりにも違う印象に一瞬人違いではないかと思ったが、改めて顔をよく見て本人だと確認した。
ファイルにあった写真では、アッシュブラックの髪をハーフカールストレートロングにしていたが、目の前にいる女性はストロベリーブロンドの髪をハードロッカーのスタイルで
その70%以上を逆立たせていたからだ。
今人気の高い女性アーティストミュージシャンの中でも、彼女は一風変わっている。
クラシックのピアニスト・ヴァイオリニストとしてデビューしたが、次の作品では一転してパンクなハードロックバンドのメインギターヴォカリストとして、強烈な存在感を示した。
彼女は視力・聴力共にずば抜けており、その点を選出理由の一部とした事は否めないがリストのプロフィールファイルの中で着目したのは、彼女が持つ絶対音感の鋭さだった。
0.1Hzの音程の違いも認識できる彼女の音響感性の鋭さはその筋では有名であり、潜水艦に搭載する新型ソナーの精密調整を、その感性の鋭さを買われて依頼された事もあると言う。パーリス・ウィルクス。25才。

No.29 09/04/08 17:15
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 28 『ようこそデファイアントへ。アドル・エルクです』
『初めまして、びっくりしました?2時間前までライブハウスにいたものですから。何も分かりませんがよろしくお願いします』
腕も指も細い人だが、握力は強かった。

No.30 09/04/08 21:59
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 29 14番目に入って来たのは一人ではなかった。ドアが開くなり並んで入って来るでも固まって入って来るでもなく、お互いにもつれ合うようにして我先にと入って来たのは、4人の女の子達だった。『ミーアス・クロス』という名で活動している彼女達は、デビュー以来立て続けにヒットを飛ばしている、アイドルグループとしては今一番人気のダンスヴォーカルユニットだ。もつれ合って倒れ込むようにして入って来たが、全員がほとんど同時に踏みとどまった。私の目の前で4人は横一線に並んで立ち、背筋を伸ばした。向って左からリーダーのハンナ・ウェアー、18才。オーナ・グラウアー、17才。カリ・マチェット、16才。ジェレイント・セキュラ、15才。着ている服は、それぞれが通っている学校の制服のようだ。まあ平日だからそれも当然か……。髪の色は4人ともナチュラルなアッシュブラウンに見えるが、微妙に色調が違う。更によく見ると、4人とも髪のほんの一部分を、それぞれワンポイントのようにマット・カッパー・ブルネット・オレンジの色に染めていた。

No.31 09/04/08 22:03
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 30 髪型は二人がフェアリーAラインボブにしていて、残る二人がハーフカールストレートロングヘアをポニーテールにまとめていた。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです。慌てなくても大丈夫ですよ』
と言って右手を差し出したのだが…、
『お騒がせしてすみません。ミーアス・クロスです!初めまして!』と、リーダーが言い放ち、『よっろしくお願いしま~す!』と声を揃えた挨拶が、見事なハーモニーでキメられていたのには、流石だなと感心させられた。
私の右手は無視したまま、ピッタリ揃ったタイミングで敬礼してくれたのは、ご愛嬌か。

No.32 09/04/10 21:34
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 31 18人目のクルーは、ジェイミー・ブラム。24才。
今人気のTVタレントではあるが、心理学の博士号と外科医のライセンスをも併せ持つ、物凄い俊才だ。
モカアッシュの髪をミディアム・ストレートボブにしていたが、煩わしそうに掻揚げて私の右手をすっと握った。
『初めまして。ジェイミーです。どうぞよろしくお願いします』
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです。こちらこそよろしく』
何かもう一つ言いたそうに彼女は口を開きかけたが、またの機会にと思ったのか会釈して席に着いた。
19人目は、キム・キャトラル。22才。
TVタレント・女優・歌手でもある彼女だが、特筆すべきは芸術写真の撮影におけるその造詣の深さだろう。
ライブラリー・データネットワークの中で公開されている彼女の作品はどれも評価が高く、世界各地の有名美術館からもしばしば引き合いがあると言う。
クリームライトブラウンの髪をサッパリとしたシンメトリーショートにしている彼女だが、更に髪が拡がらないようにヘアクリームも使っているようだった。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、キムです。よろしくお願いします』

No.33 09/04/12 10:54
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 32 『あの…、カメラを持って来ているんですが写真を撮ってもよろしいですか?』
『構いませんが、作戦に支障のない範囲でお願いしますね』
『分っています』
『ではどうぞ』
20人目に入って来たのは、若くしてクラシックバレエのプリマドンナに選抜されながら、スーパーヒップホップのダンスシンガーに転進して大ブレイクを果した異才、フィオヌーラ・セキュラ。19才。
クルー候補者リストのキャラクタープロフィールファイルにあった写真では、ライトアプリコットの髪をタイトなカールのアフロにしていたが、今目の前に立つ彼女はナチュラルカールストレートロングの髪をポニーテールにまとめていた。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです。よろしく』
『初めまして。何も分りませんが、妹共々よろしくお願いします』彼女の言う妹とは、『ミーアス・クロス』の最年少メンバーであるジェレイント・セキュラ(15)の事だ。
それ以上の言及はなかったので、私もただ鷹揚に頷いただけだった21人目のクルーは、ミーナン・ヘザー。18才。

No.34 09/04/14 21:22
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 33 まだソバカスが少し残る幼さの目立つ童顔の少女だが、彼女は3Dチェスの女性プロプレイヤーとしては史上初めて、次のトーナメントでは10代で女性名人位に挑むと言う事だ。
カッパーブルネットの髪をボーイッシュショートにしていたが、彼女はベースボールキャップを斜めに被ってキメていた。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、よろしくお願いします。艦長さんは、チェスを嗜みますか?』
『あまり上手くはありませんが(苦笑)』
『教えてあげましょうか?(微笑)』
『時間があれば、お願いします』
爽やかな笑顔が好印象を与える女の子だ。
22人目のクルーは、ライブラリー・データネットワークの中で、様々なニュースの配信事業を展開する大手の電子新聞社で、社会部の記者として活躍しながらシナリオライターとしての才能を発揮し、多くのヒット映画・人気TVドラマの脚本を手掛ける中で、最新の作品では主演女優としてもデビューを飾った多才な女性だ。
シャナン・プリーストリー、25才。
彼女はマットブラックのミディアムストレートヘアで、ジーンズにTシャツ・スニーカーと言うラフなスタイルだった。

No.35 09/04/15 19:38
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 34 『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、シャナンです。よろしくお願いします。あの…今回このゲームに参加した体験記を、配信ニュースで連載しようと考えているのですが…?』『その事自体は結構ですけれども、演習中の訓練内容や、勿論作戦に関する事は総て極秘ですよ?…それでも良ければ許可します』
『ありがとうございます。作成した記事は入稿する前に総て艦長に提出します』
『よろしくお願いします』
23人目のクルーは、レニー・ケイト。22才。
ファッションモデルとして13才でデビューし、瞬く間にトップのティーンモデルとなった彼女だったが、19才でプロテニスプレイヤーに転進。
現在では、鋭い反射神経・強い動態視力・高い身体能力・高レベルの基礎体力と言った、アスリートとして必要不可欠の才能をいかんなく発揮している。
ペールブロンドの髪をナチュラルカールロングにしているが、後ろでまとめて束ね紫色のリボンを結付けていた。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、よろしくお願いします』
握手を交わした時に少し痛そうに顔をしかめたので、『すみません、強かったですか』

No.36 09/04/16 20:49
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 35 『あっ、いいえ。ちょっと今肘が痛くて…』『テニス・エルボーですか?』
『ええ。でも軽い方なんです。それにまだ成長期なので…よくあるんですって…。』
『痛みがひどくなるようなら、言って下さいね?』
『ありがとうございます。大丈夫です』
24人目のクルーは、この人もまた非常に細身で長身の女性だ。
どうも女性から見下ろされると言うのは慣れないものだな……。
ビルジニー・ドデュ。31才は、女性だけの歌劇団出身の舞台女優で、一口で言うなら『男装の麗人』だ。
男役として数年の間トップを務めて、退団とほぼ時を同じくして国会議員と結婚した。
女優業は続けていたが、昨年の国政選挙の際に新しく画期的な文化・教育・福祉事業での政策を提案して立候補し、見事に当選した。パールブラックのショートヘアを、更にヘアクリームを使ってキッチリと撫付けていた。『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、何も分りませんがよろしくお願いします』
『こちらこそ、どうぞ掛けて下さい』
25番目に入って来たのは、バラエティ番組のレポーターから始めて気象予報士の資格を取り、お天気お姉さんから幅広く活躍する

No.37 09/04/18 15:26
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 36 TVタレントとして今人気上昇中の女性だ。シリン・エバディ、30才は笑うと際立つえくぼが印象的だった。クリームモカブラウンの髪をハーフカールストレートロングにしていたが、ピンクのヘアバンドで押さえ付けている。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、よろしくお願いします』
『こちらこそ。どうぞ掛けて下さい』
26人目のクルーは、ハル・ハートリー。25才。
女優・歌手としての人気も相当に高いが、それら以上に彼女が熱狂的に支持されるのは、女性プロ野球リーグの試合で先発のマウンドに立っている時だ。
速球も速いが変化球も多彩で、決め球の一つとして彼女だけが投げられる『ハートリー・スナップ』は、言わばナックルスライダーのような変化球で、スピードボールの後にこれを投げられるとまず打てない。
男性プロのスラッガーでも、この球をコーナーにキメられれば打てないだろうと言う。
ライトアプリコットの髪をボーイッシュショートにしているが、シックなワンピースを着て現れた彼女の姿は、とても昨シーズンに18勝を挙げた女性プロピッチャーだとは思わせない。

No.38 09/04/18 17:34
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 37 『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、よろしくお願いします』
『時間があれば、キャッチボールのお相手ぐらいは務められますよ』
『野球のご経験は、どのぐらいおありですか?』
『少年野球リーグでは、キャッチャーでした』
『それじゃあ今度はボールとグラブを持って来ますね』
『楽しみにしています』
さすがにプロ野球の選手だ・・・遠くから見ればか細そうに見える指でも、握手を交わしてみればその指がどれほどに過酷な事をやっているのかがよく判る。
『どうぞ、掛けて下さい』
27番目のクルーは、TVドラマや映画の女優としてはすでに不動の人気を誇り、その実力も高く評価されている人だが8年前に突如プロゴルファーとしてデビュー。
以来、ツアーやトーナメントにもコンスタントに出場を続け、ついに昨年賞金女王の座を獲得して、輝くような満面の笑顔で魅せてくれた努力の人でもある。
アン・ピューシー。29才。
彼女にしてもハル・ハートリーにしても、日に焼けたその肌からは躍動感のある健康的な印象を強く受ける。
ナチュラルなブルネットでのミディアムストレートヘアを、ポニーテールにまとめている。

No.39 09/04/19 18:03
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 38 『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、アンと呼んで下さい。よろしくお願いします』
見た時には判らなかったが握手を交わした時に、特徴的なタコが掌にも指にもあるのが判った。
28人目のクルーは、映画女優でもあるのだが映画に出演するのは多くても年に2回で、残りの期間はキャロム・ビリヤードのプロプレイヤーとして世界各国を転戦している女性だ。
私がクルーの候補者リストの中から選抜した時も、是非とも参加して欲しいとは思っていたが本当に来て貰えるのかどうかについては自信が無かった。
その点では、プロデューサーであるユージーンの手腕に感謝している。
つい先月に開催されていたキャロム・ビリヤード世界選手権においても、プロとしてデビューして初めてベスト8にまで食い込み、観客から喝采を浴びていた。
その後は注目度も俄然高まり、コマーシヤルの仕事も入っていると言う。
カレン・ウェスコット。26才は、ダークマットブラウンの髪を全くナチュラルなストレートロングのままで、背中に垂らしていた。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』

No.40 09/04/19 19:00
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 39 『初めまして、カレン・ウェスコットです。何も判りませんがよろしくお願いします』
『お忙しい中、来て下さって感謝します。どうぞ掛けて下さい』
さあいよいよ残るは二人だ。
29人目として現われたのは、カリーナ・ソリンスキー。27才。
私が今回、かなりのレベルで頼りにするであろうと思われるクルーの一人だ。
TVタレント・女優としても活躍が著しい人だが、ビーム・ライフルを使用した射撃競技において国内ではすでに三年連続で1位の座を保持し続け、世界選手権においてもこれまでに銅メダルを2個獲得している。
オリンピックにおいてのメダル獲得経験は残念ながらまだ無いが、最高で5位入賞を果たしている。
その眼の良さは、すでに折り紙付きだろう。
しかし私の眼の前に立った女性は、思っていたよりも小柄な人だった。
中背と言われるよりも数センチは低い背の高さだが、顔付きは精悍な印象を受ける。
眼は別段大きい訳でも鋭い訳でもないのだが、黒い瞳が感じさせる澄んだ深さには感心させられた。
ゴールデンブラウニッシュブロンドの髪をスイングレイヤーボブにしていたが、ハンチングは被っていなかった。

No.41 09/04/19 19:14
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 40 『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
握手を交わした時に見せた、悪戯っぽい笑顔が魅惑的だった。
『初めまして、カリーナ・ソリンスキーです。カリンと呼んで下さい。何も判りませんが、どうぞよろしくお願いします。もしかして射撃の腕が買われて呼ばれたんですか?』
『そう思って頂いても構いませんよ』
『実は一ヶ月ほど前から、アーチェリーを始めたんです。お役に立つでしょうか?』
『それはもう勿論。でもどうしてアーチェリーを?』
『実は私、子供の頃からトム・バウワーに憧れていたんです・・だから・・』
『トム・バウワー? 確か、ロビンフッドの物語の基になった伝説の義賊でしたか?』
『よくご存知ですね!驚きました。知っている人に会ったのは初めてです』
『雑学として知っていただけです。詳しい事までは分かりません』
『でも嬉しいです。改めてよろしく』
『こちらこそ、さあどうぞ掛けて下さい』
そして最後の一人、30人目のクルーがドアをくぐって私の目の前に立ち、柔らかく微笑み掛けてくれた。

No.42 09/04/20 22:42
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 41 最後のクルーの名は、アン・フィッシャー。28才。
身長は私と同じ程度だがとにかく細い。
にも拘らず顔も小さく見えるので、ある種不思議な印象を受ける。
ハイライト・ブルーブラックのナチュラルカールストレートロングヘアを、タイトなポニーテールにしている。
彼女は、恐らくは誰もが知っているフィギュアスケートの代表選手だ。
2年前のオリンピックでは、惜しくも銀メダル獲得に止まったが、世界選手権ではこれまでに優勝2回。
国内大会では、3年連続でトップの座に君臨している。
TVタレント・女優としても活動している女性だが、優しく微笑み掛けてくれれるその笑顔は、爽やかで温かい。
『ようこそデファイアントへ、アドル・エルクです』
『初めまして、よろしくお願いします』
彼女が最後の席に着き、ドアが閉まるとブリッジ内の照明が幾分明るくなった。
収録が始まったようだ。
私はキャプテンシートの背もたれに右手を置き、皆の顔を見渡した。
それぞれに興味深げな表情で私の顔を見ている。
ようやくスタートラインに立てた事が嬉しかった。
『皆さん!朝早くから集まって下さった事に感謝します。改めて、アドル・エルクです』

No.43 09/04/21 22:47
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 42 『そして、このデファイアントにようこそ!皆さんを歓迎します』
『ブリーフィングの際にでも聞いてはいるでしょうが、現時点で判っている事を確認しながら話を進めましょう』
『まずこれはゲームの大会ですね。実数は分りませんが、沢山の人が参加する予定でいる筈です』
『そして私達が今いるのは、大会の中で設けられた、TV番組の中での一つの企画です』
『聞かされてはいるでしょうが、既に収録は始まっています』
『ですがまぁ、自然体で行きましょう。私も自然体でいきます』
『それから、今のように余裕のある時にはあまり失礼にならないような話し方で皆さんと接するつもりですが、余裕の無い時には多少ぞんざいな口調になりますので、了承して下さい』
『ゲームの内容は解りますね?私が皆さんを指揮してこの艦を操り、ゲーム空間の中ではありますが他の艦と戦い勝ち抜いていくというものです』
『この番組の企画の中で、艦長として選ばれた一般の方が何人なのかは、まだ判りません。おいおい判ってくるでしょう』
『さて、ここからが大事な話なのでよく聞いて下さい』
『私達はバラエティ番組の出演者ですが、この番組の意図が何処にあるのか?

No.44 09/04/22 13:58
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 43 と言う事は、気にしないで下さい。と言うよりも、気にする必要は無いと思います』
『番組としては、どっちに転んでも良いと考えている筈です。一般人が艦長として指揮する艦が、勝ち抜いていくも良し。早々と消えていくのも良し。という風にね』
『私は、艦長として選ばれた時に、これで勝ち抜いていける、という事を確信しました』
『そのためにこの艦を選び、皆さんを選び出して今日ここに集う事が出来ました』
『ですから、精一杯出来る所まで、頑張って勝ち抜いていきたいと思います。ここにいる皆さんと一緒にこの艦を動かせるなら、勝ち抜いていけると信じます。まぁ一緒に楽しくやりましょう』
『私からの挨拶としては…以上ですが…何か質問はありますか?』
『はい。』
と、同時に二人が手を挙げた。
『どうぞ』
と、向って左奥で手を挙げた人を促す。
エマ・ラトナーだ。
『あの…、ここでの役割とか…どうやって決めるんですか?』
『それはこの後で順番に決めていきます。もう暫く待って下さい』
次に向って右手前で手を挙げた人を促す。
ロザリンド・マイヤーズだ。
『あの…、この艦はライト・クルーザークラスって言うんですね?訊いたら、

No.45 09/04/23 20:23
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 44 一番小さくて軽い艦だって言われたんですけど、そういう艦で戦って勝てるんですか?』
面白くなってきた。
こういう感じで食い付いて来てくれるのは大歓迎だ。
『良い質問ですね(笑)…それじゃあ貴女自身はどう思いますか?…この一番小さくて軽い艦で戦って、勝てる方法はあると思いますか?』
『え~…、無いとは思わないけど…あっても難しいと思う…』
『正解です。勝てる方法はあります。ですが、今の私達には非常に難しい事です。経験も知識もありませんからね…ですから、勝ち抜いていくための技術や知識や経験を、これからの演習を通じて身に付けていけば良いんです。それが、勝ち抜いていく方法につながります。まぁそんなに深刻なことじゃあありません。リラックスしていきましょう』
『この一番小さくて、軽くて、攻撃力の弱いクラスの艦でも、戦いようはいくらでもあります。例えどんな艦でも、動かしているのは人間です。艦を動かす人達が、勝ち抜くために一つとなって動けば、すぐには勝てなくても負けはしません』
『他に質問はありますか?……』
『今でなくても、気が付いた時で良いですから、何でも訊いて下さいね…。』

No.46 09/04/24 20:22
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 45 『さて…、それではこれから…皆さんの艦内での配置を決めていきます…。基本的に、一人ずつお呼びして話をしながら決めていきますので…、全員の配置が決まるまでには、暫く時間が掛かると思います。今皆さんが入って来た入口の、向って右側にドリンク・パケットタワーがありますので、すみませんがお好きな飲み物でも飲みながら待っていて下さい』
『それでは…最初に、ローラ・ウェアーさん、こちらへどうぞ』
と、私から見て向って右奥に座っていたローラ・ウェアーに声を掛けてから、私は艦長控室のドアを開けて彼女を待った。
『!はっ、はい!…あの…どうして私から…なんですか?』
『それも含めてこちらで説明しますので…、さぁどうぞ』
彼女はそれ以上何も言わず、やや俯き加減に控室に入った。
続いて私も入ると、ドアがシュッ!っと閉まる。
デスクの前にある応接セットのソファを指し示して…、
『さぁ、どうぞ掛けて…楽にして下さい。何か飲みましょう…撮影セットに入って来てから、まだ何も飲んでないでしょう?…皆さん緊張してますからね。喉も渇きますよ…』
と、控室にも備え付けてあるドリンク・パケットタワーに歩み寄り

No.47 09/04/25 07:08
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 46 『コーヒーで良いですか?それとも紅茶?』
『あ、…いえ、じゃあ、お水をお願いします』
『本当に水で良いんですか?…私はコーヒーを貰いますが…?』
『はい…、どうぞ』
それではと、タワーに向って指示を出す。
『コンピューター!水を一杯!温度は5℃。次にマンデリンをストレートホットで!砂糖は0.5。ミルクはいらない』
脇にあった小振りのトレイを手に取り、タワーが用意した二つの飲み物を載せて、ローラの目の前に水の入ったグラスを置いてから、私は彼女から見て左前のソファに座り、自分のコーヒーをトレイごとテーブルに置いた。
『コーヒーとかお茶は飲まないんですか?…あぁ…あいにくこのタワーにアルコール飲料のプログラムは無いので…』
『いいえ…、話し合う時にはカフェインを摂らないようにしているんです。…それで…お話しというのは…?』
『(笑)まず飲んで下さい。只の水でも美味しいですよ。このタワーは最新型ですからね』
言われて初めて彼女はグラスを手に取った。
『…美味しい!…』
グラスの水を三口で飲み干した彼女は、少し意外そうに笑顔を見せた。
『でしょう?…』
私もカップを取り上げ半分ほど飲んでから

No.48 09/04/25 11:16
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 47 テーブルに戻した。
『…さて、早速ですが…実は貴女にこの艦の副長になって欲しいんです』
目に見えて驚いたのが分る。
まだ手に持っていたグラスをテーブルに置いた時に、少し大きい音を発ててしまった。
『!…副長…ですか?…最初に呼ばれた時から、もしかしたらって…思っていたんですけど…副長ってやっぱり…2番目っていう事ですよね…?』
『…そうですね…この艦の指揮系統で言えば、私に次ぐ立場、と言う事になります』
『…やっぱり大変ですよね…?…私で務まるんでしょうか?…』
私は残りのコーヒーを飲み干してテーブルに戻すと手を振った。
『そんなに深刻に考えないで下さい(笑)。…何も貴女と私の二人で全部やる訳じゃありませんし、そんな事は最初から不可能ですよ…(笑)』
『…具体的に言いますが、私はこの艦の司令部スタッフとして、艦長以外に七つのポストを設けました…副長・参謀・機関部長・砲術長・メインパイロット・補給部長・通信及びセンサーオペレーターの7人です』
『私を含めて、今言った8人のメンバーで、この艦を総合的に協議しながら、指揮していく方針でいますので、貴女一人に負担が掛る様な事にはならないと思いますし

No.49 09/04/26 20:57
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 48 ならないようにします(笑)』
『まずは取り敢えず、私を補佐してくれれば結構です。…解らない所があれば何時でも相談して下さい。…プロデューサーから貴女方のリストを貰って…それを見ながら副長を誰にやって貰おうかと考えた時に、…貴女なら、きっとしっかりやってくれると思いました。…私の直感もありますが、…貴女のプロフィールファイルを読んで感じた…貴女の人となりが、私にそれを確信させました。…どうでしょう?…受けてくれませんか?…』
ローラは、ジッと私の眼を見ながら話を聞いてくれていた。
『…解りました…私に…どこまでできるか判りませんが…やってみます…全く何も解りませんので、質問ばかりになると思いますが、…よろしくお願いします』
『ありがとうございます。…安心しました。…貴女なら引き受けてくれると信じていましたよ。…実は最初から…貴女に副長を頼むつもりで…リストから選んだんですよ?(笑)』
途端にローラの顔がパッと明るくなる。
『え~っ!…そうだったんですか?…でも、どうして?…』
『そこが、私の直感の部分だったんですよ。今でも解るようには説明できませんので、これ以上は訊かないで下さい。

No.50 09/04/27 00:03
アドル・エルク ( ♂ VWrHh )

>> 49 いつか呑みながらでも、説明させて下さい』
そこまで言って私は立ち上がり、新任の副長に向って右手を差し出した。
『それでは改めて、副長就任おめでとう!…ローラ・ウェアー副長の、本艦への着任を歓迎します。これからどうぞよろしく。』
ローラも立ち上がり、握手を交わした。
『よろしくお願いします。…引き受けた以上は頑張ります。ご指導・ご教授も、共によろしくお願いします』
早くも頼もしさを感じさせる握手だった。
私はデスクを回り込み、引き出しを開けてモバイルデータパッドを取り出した。
『この中に本艦の副長としてのマニュアルが入っています。貴女が、本艦の副長として知って置くべき事が総て入っていますので、しばらくはこれを読みながらでも良いですから、お願いします。時間のある場合にじっくり読み返して、できるだけ頭に入れるようにして下さい』
そう言ってパッドを彼女に手渡した。
『ありがとうございます』
『それじゃあ早速起動して下さい。そこのスイッチです』
パッドが起動されて、表示画面に数列が浮かび上がる。
『総てのデータパッドは、本艦のメインコンピューターとリンクしています。この数列は副長の認識番号です

  • << 51 から、この認識番号と貴女の名前を、コンピューターに音声で登録して下さい。それでデファイアントが、貴女を副長として認めますので…どうぞ?』 『はい。コンピューター!…認識番号・α1079!γ2917!ローラ・ウェアー!』 『認識番号確認・登録完了。ようこそデファイアントへ、ローラ・ウェアー副長。歓迎します』 『おめでとう。副長…それじゃあ早速ですが、他の司令部スタッフの、人事配置を進めましょう。と言うのもね、副長の人事配置だけは艦長の専任・専決事項なんですが、他の司令部スタッフの人事配置には、副長の承認が必要なんです。だから、ここから先は私達二人で進めていきます。…質問は?…』 『はい。あ、いえ、ありません。解りました。次に決めるスタッフポストは何でしょう?』 『そうですね…2番目に重要なポストは、参謀だと思うので、参謀から決めましょう…』 そう言いながら私は、デスクの上のデータパッドを取り上げ、テーブルに置いて起動させた。 『参謀と言うのは、作戦参謀のことですね…戦うべき相手の艦をこちらが探知した場合に、どの様に戦うのか、と言う基本的な作戦方針について、助言や提案をして貰う役割です』
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