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レス481 HIT数 49722 あ+ あ-

Saku( SWdxnb )
10/05/18 22:44(更新日時)

誰にでも、たった一人、
忘れられない人が居るハズ…


私にとって、彼は、
かけがえのない
大切な人。


淡くて、霞んでしまいそうな日々は、
キラキラ輝いた思い出の日々でもあったー

No.1259632 10/02/28 00:51(スレ作成日時)

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No.1 10/02/28 01:10
Saku ( SWdxnb )

東京に就職が決まった私は、地元の大学を卒業し、上京して一人暮らしを始めた。

実家からも通えなくはない。片道2時間位かかっちゃう…。
両親も、この物騒な時代に、一人娘の一人暮らしには未だに大反対だけど、ホントに申し訳ないし、私も不安で一杯だったけど、

私は大学に入った時から心に決めていた。

卒業したら東京にー
希望の仕事もあって、
そして、彼の住む東京に行くんだってー

No.2 10/02/28 01:31
Saku ( SWdxnb )

>> 1 彼との出会いは高校時代ー。

一年生の真新しい教室で、「真中加世子」と名前が貼られた窓側の席に着いた私は、かなり緊張していた。

地元の共学校だったから、同じ中学で顔見知りの子もチラホラいたけど、不器用な私は、積極的に話しかけるなんて出来なかった。

No.3 10/02/28 01:44
Saku ( SWdxnb )

>> 2 「かーよ!」

名前を呼ばれて廊下の方を見ると、スタイル抜群で端正な顔立ちの女の子がニコニコと手を振っていた。

「美咲~」

私は席を立って、泣きそうな気分で美咲の元へ行った。

「クラス離れちゃったね、私C組だって」

「えー、そうなのぉ?」

美咲がC組と聞いて、更に心細くなった。

「だけど教室隣でしょ、どうせ顔バンバン合わすよ」

美咲は無邪気に笑って言った。

No.4 10/02/28 01:53
Saku ( SWdxnb )

>> 3 美咲とは、中学2、3年と同じクラスで、今では大親友だ。

とは言え、最初の頃は、グループも別で話したりもしなかった。
美咲は見るからに華やかで一目置かれるタイプだったし、私はいたって普通で、真面目タイプ(今も変わらないけど…)。

そんな私たちが仲良くなったきっかけは、クラスでおこったイジメだった。

No.5 10/02/28 02:10
Saku ( SWdxnb )

>> 4 中2の最初の頃、美咲は派手目なグループの中にいたけど、いつしか単独行動をするようになっていた。
後から聞いたら、グループ内で根も葉も無い噂話をされたとの事だったけど、美咲は一人でも堂々としていて、イジメには発展しなかった。

問題は美咲が抜けた後のグループ内で、それまで中心だった女の子がイジメのターゲットになってから。

最初は彼女も反省すべき、って感じだったのかもしれない。でも明らかに彼女が変わった後も、イジメは陰湿な方向へと進んで行った。

No.6 10/02/28 02:27
Saku ( SWdxnb )

>> 5 ある日休み時間に一人ぼっちで座る彼女は、離れた所から浴びせられる悪口に俯いたまま堪えていた。

私まで「もういいじゃん、十分じゃん」と心が痛くなった。
当時クラス委員だったせいか、眠っていた正義感が働いたせいなのか、次の瞬間私は、彼女の席の前に座って、持っていたお菓子を差し出した。

「一緒に食べよ」

彼女は驚いた顔をしていた。クラス中もシーンとなった。
私はドキドキしてきた。

「ねぇ私にもちょうだい」

そう言って隣の席に座ってきたのが美咲だった。

私は美咲にもお菓子を渡して一緒に食べた。

彼女は声を押し殺す様にして泣いていた。

No.7 10/02/28 14:18
Saku ( SWdxnb )

>> 6 その後、クラスのイジメは無くなって、私と美咲は仲良くなった。

中3のある日、美咲と思い出話をしていた時、

「あの時私が行かなかったら、加世が次のターゲットになってたね」

「えー!なんで?」

私はぞっとして美咲に聞いた。
美咲はクールな視線を向けてきた

「加世はお人よしっていうか、世間知らずだよね。人間なんてズルくて、汚いもんだよ」

「……」

「でもまっ、それが加世らしいんだろうけどさ」

笑って明るく言い返されたけど、私は引っ掛かったままだった。
傷ついたってより、美咲の人間不信が。

No.8 10/02/28 14:28
Saku ( SWdxnb )

>> 7 でもそんな美咲を見る事は、それ以降無かった。

美咲は私には無いものをいっぱい持っていて、一緒に居るのが楽しかった。

中3時代、美咲は私と同じ高校に行きたいと、かなり勉強を頑張った。

私が理由なばかりじゃないだろうけど、二人ともに合格できて本当に嬉しかった!

今までずっと一緒にいたから、クラスが離れてしまったのはショックだった。

No.9 10/02/28 14:41
Saku ( SWdxnb )

>> 8 「じゃあ、私行くね」

「うん…」

美咲がC組へ戻っていくと、すれ違うようにして、ヒョロっと細身な男の子が教室に入ってきた。

自分の名前を探しながら歩いていたその人の後ろを、私は窓側の自分の席に帰ろうとついていった。

いつまでたってもその人は私の前を歩き、そして立ち止まった席は、私の前の席だった

「薄井敦史…うすいあつし」

私が彼の机の名札を確認した時、彼は横目で私を見た。

No.10 10/02/28 14:52
Saku ( SWdxnb )

>> 9 冷めた表情なのに、切れ長の瞳は、凄くキレイだった。

私はドキッとして、目線を外すのが精一杯。
ドギマギと彼の後ろの自分の席に着いた。


これが、彼ー
敦史との最初の出会いだった。

今考えると、敦史が私を見たあの瞬間から、恋していたのかもしれない

あんなにキレイな瞳をした人、初めて会った。

No.11 10/02/28 20:42
Saku ( SWdxnb )

>> 10 高校生活が始まってみると、席が前後という事以外、敦史との接点は殆ど無かった。

敦史は無口な方だったけど、友達が多くて、その仲間はクラスの中心だった。

私はいつも3人組で、やっぱり真面目と言われていた。

休み時間も敦史は自分の席に居る事が多くて、だから男女の仲間の子らが集まってくるのが常だった。

私も席に残っていた時には
目の前の賑やかで楽し気な会話に交わる訳もなく、全く別世界の人達に感じていた。

No.12 10/02/28 21:16
Saku ( SWdxnb )

>> 11 敦史は、授業中や一人で居る時に、頬杖をついてぼんやりと窓の外を眺めていることがよくあった。

まともに話した事はなかったけど、そんな敦史はとても身近に感じられた。

最初はそう…

席替えするまでの2ヶ月間、私的な会話はなく、「好き」なんて感覚もあったのか、無かったのか……?


話す様になったのは、臨時の図書委員に敦史が任命されてからだった。

No.13 10/03/01 18:04
Saku ( SWdxnb )

>> 12 図書館が新設される事になり、各クラスの図書委員が旧図書室で本の整理をすることになった。

1学期の放課後から始まって、夏休みも当番制で登校する事に。

図書委員は私と相田君。

でも相田君は1学期が終わると親の転勤で海外へ引越してしまい、代わりに、担任が指名したのが、何の委員にもなっていない敦史だった。

No.14 10/03/01 18:06
Saku ( SWdxnb )

>> 13 敦史はバイトを許可されていて、ピザ屋で働いている様だった。

「放課後は無理でも、夏休みの日中なら学校に来れるだろ」

「はい」

担任の言葉に、敦史は文句を言うことなく素直に返事をした。

No.15 10/03/01 18:12
Saku ( SWdxnb )

>> 14 「何すればいい?」

振り向くと図書室の入口から敦史が近づいてきた。

「あ、あぁ…」

私は作業を止めて、敦史を自分達の持ち場に案内した。

「この棚の本の埃をはらって、この台にアルファベット毎に置いてから、番号順に並べていくの」

「分かった」

敦史は早速話した通りに作業を始めた。

No.16 10/03/01 19:51
Saku ( SWdxnb )

>> 15 敦史は淡々と作業を進めていった。

真面目にやってくれないんじゃないかって、考えていた自分が恥ずかしくなった。

フと気付くと、敦史の居る場所に太陽の日差しがあたっていた。

「あの…」

「ん?」

「暑くない?」

私は窓を指差した。

「あぁ、暑いっていうより、眩しいかな」

私は窓のブラインドを下ろした。

「ども」

敦史は小さく頭をコクりと下げた。

No.17 10/03/01 19:55
Saku ( SWdxnb )

>> 16 敦史は積み重ねた本の前で、動きを止めた。

「…あの、どうかした?」

「これさ、アルファベット後の番号、結構抜けてるんだよな」

「うん。抜けてる番号は後でパソコンで貸出中か検索するから、メモしておくの。でも、行方知れずも多いんだ」

「勝手に持ってかれてんだ」

「そうなのかな…」

「ーー真中って」

「ん?」

見ると、敦史が真っ正面から私を見ていて、ドキッとした。

No.18 10/03/01 20:19
Saku ( SWdxnb )

>> 17 どうせ又『真面目』って言われるんだって思った。

でも違った。

「真中ってーー
気が利くよな」

「え?」

意外な言葉にア然としてしまった。

「さっきから、困ったっ瞬間に声掛けてくれてるっしょ」

No.19 10/03/01 21:37
Saku ( SWdxnb )

>> 18 「そう…かな…?」

顔をそむけて作業に戻ると、敦史も作業をしながら続けた

「でももっと、はっきり言った方がいいよ」

「……」

「そういう性格、イイと思うし」

「……」

私は手が止まってしまった。
体が暑くなった。きっと顔も赤くなってるはず…

でも敦史は平然と作業を続けていた。

No.20 10/03/01 22:06
Saku ( SWdxnb )

>> 19 夏休み中、敦史は毎日の様に図書室に来た。

バイトでほんの1時間しか作業が出来ない時も、大雨の日も、死にそうな位暑い日も、ちゃんとやってきた。

その間、色んな話しをして、敦史は自分の事も話してくれた。

母子家庭で、2歳下にヤンチャな弟がいること。
仕事で不在がちなお母さんに代わって、ご飯を作っている事。
将来は料理人になりたいって事。
東京の専門学校に行くために、バイトして少しでもお金を貯めている事。

「学校は東京じゃないとダメなの?」

と聞いたら

「早く家を出たいんだ」

と、ちょっと沈んだ声で答えた。

No.21 10/03/02 12:19
Saku ( SWdxnb )

>> 20 私も自分の事を話したけど、一人っ子で、両親は夫婦で歯科医をしている事と、『マンタ』っていうビーグルを飼っていること。

そのマンタは10年生きていてもう老犬なんだって位しか話題がなかった。

そんなつまらない話しにも敦史は

「なんでマンタなの?」

と、のってきてくれた。

「うちに来たとき耳が異様に大きくて…」

「マンタみたい、って?」

私が頷くと、敦史はクックッと笑って

「平和ー」

と言った。

No.22 10/03/02 13:01
Saku ( SWdxnb )

>> 21 「平和ー」

と敦史にはよく返された。

そう言いながらも無邪気な笑顔にはイヤミがなくて、一緒に話していても心地良かった。

別世界の人だと思っていた敦史を身近に感じ、いつしか会うのを楽しみに作業に向かう自分がいた。

No.23 10/03/02 18:41
Saku ( SWdxnb )

>> 22 夏休み作業が終了した日の帰りだった。

「腹減ったー。真中は?」

と聞かれ、

「うん、ちょっと減ってる」

と答えた。
もう夕方近かった。

「何か食べてかない?おごるからさ」

「えっ、おごるなんていいよ!お金持ってるよ」

「小遣い5千円だろ?」

一ヶ月の小遣いの額も話していた…

「俺バイトしてるんだから」

「上京費用でしょ?無駄遣いしちゃダメだよ」

敦史はぐっと顔を近付けてきた

「かわいくねー」

「!……」

顔を離して、靴に履き変え敦史はチラリと振り向いた。

「高い飯なんておごんねーよ!ほら行くぞ」

私は顔を近付けられドキドキしたまま、慌てて靴を履き、敦史の後をついて行った。

No.24 10/03/02 18:57
Saku ( SWdxnb )

>> 23 敦史に連れて行かれた先は、ファーストフード店だった。

「遠慮しないで好きなものを好きなだけ頼んで」

そう言ってニヤケタ敦史に、私も笑んで

「じゃあ遠慮なく」

と、安心してお気に入りのセットを頼んだ。

先に席に座って待っていると、敦史がトレーを持ってやってきて、目の前に座った。

「とりあえず、作業完了に乾杯だな」

又ふざけた様に笑って、私たちはコーラの入ったカップを合わせた。

No.25 10/03/02 23:39
Saku ( SWdxnb )

>> 24 セットに追加のハンバーガーをガツガツと頬張る敦史を見て、
こんな細い体のどこに肉が付くんだろうと思った。

私は食べた分の、そのまま、特に下半身に付くのがコンプレックスだった。

「ん?」

敦史は眺めていた私を上目使いに見た

「よく食べるのに、細くて羨ましいなぁ、って」

「体重はあるよ。骨太なんだ」

「敢えて聞かない。ーー聞かれない為に…」

敦史はまた無邪気に笑った

「全然太ってないじゃん」

「制服着てるから…隠れてるだけ。もう、大変なんだよ、はぁ…」

敦史は笑ったまま

「どんなに大変か見てみたいわー」

と言った。

No.26 10/03/02 23:54
Saku ( SWdxnb )

>> 25 その言葉を、変に意識してしまったのがいけなかった。

敦史もばつの悪そうな顔になり

「ーって、オイ!黙るなよ。冗談なんだから」

と初めて焦った顔を見せた。
それが可笑しくて笑うと、敦史も照れた様に笑った。

No.27 10/03/03 00:37
Saku ( SWdxnb )

>> 26 ちょっぴり高揚した気持ちの中で、私たちは携帯番号を交換した。

そしてファーストフード店を出ると、敦史は自転車を押して、これからバイトに行くと言った。

「ご馳走さまでした」

お辞儀した私に、敦史はニコッと微笑み

「図書委員やって良かったよ、楽しかった」

と言ってくれた。

No.28 10/03/03 00:39
Saku ( SWdxnb )

>> 27 「うん。私も、良かった」

「俺さ、この先も図書委員やろうかと思って」

「え?ーー放課後に貸出当番もあるし、バイトは?」

「何とかシフトを調整してみるけど…」

「ああ、大丈夫!」

私は敦史の話しを遮った。

「受付は私一人でも大丈夫だから」

…だから、
…一緒にやろう
…一緒にやりたい
って、心の中で叫んでいた。

敦史は自転車にまたがり

「サンキュな。ーーじゃ、9月に学校でな」

と言って、何度か振り返りながら去って行った。

No.29 10/03/03 19:18
Saku ( SWdxnb )

>> 28 数日後、2学期が始まった。
夏休み明けの教室では、見るからに、あかぬけた子がチラホラと見られた。
私は入学式のまんま…。

「ウース」

聞き慣れた敦史の声に、廊下側の席にチラリと視線を向けてみた。
パァーと何人かの仲間が敦史の元に集まって、楽しげに話し出した。

敦史は相槌をうちながら、教室内を見渡し、私と目が合うと、『ヨッ』と顔で合図した。

私も答える様に笑んだ。

その時…

No.30 10/03/03 19:31
Saku ( SWdxnb )

>> 29 「かよー」

廊下に笑顔の美咲が立っていた。
セミロングの髪は緩やかなパーマがかかり、膝上のスカートは細くて長い足を美しく強調していた。

入口に向かった私は思わず、

「美咲、何だか雰囲気違うー」

と見惚れながら言った。

「へへ、ちょっと頑張ってダイエットしたの」

「だからかぁ、凄くキレイ」

「フフ、ありがと」

はにかんだ美咲はキラキラしていた

No.31 10/03/03 20:07
Saku ( SWdxnb )

>> 30 美咲、何かイイ事でもあったのかな?
って考えた時、

「加世、夏休み中に何かあった?」

と美咲から言われた。

「無いよー。図書委員の仕事で連日学校来てたよ~」

「大変だったね~」

「美咲は?何かあった?」

「フフ、今度ジックリ話すよ」

美咲は満面の笑を残して、隣の教室へと入って行った。

イイ事、あったんだ…

今まで以上に女の子らしくキレイになった美咲を見て、『恋』かなって想像した。

私が席に戻ろうとした時、

「真中」

No.32 10/03/03 20:36
Saku ( SWdxnb )

>> 31 呼ばれた先には敦史がいた。
けど、私を呼び止めたのは敦史の隣に立つ田瀬君だった。
田瀬君は敦史と同じ中学で、クラスでも一番敦史と仲が良かった。

「真中って、種元さんと仲イイよな」

「うん。中学から一緒だから…」

「種元さんって、付き合ってる奴いる?」

あぁ、またか…
そう心で思った。

好奇心いっぱいの田瀬君とは反対に、敦史は平静な顔で私を見ていた。

「いるよ。大学生だって」

「まじかー!」

田瀬君は大袈裟な位に肩を落とし、仲間の皆から笑われた。

No.33 10/03/03 20:52
Saku ( SWdxnb )

>> 32 男の子に美咲の事を聞かれるのは慣れっこだ。

そして、返事はいつも
「大学生の彼がいる」

美咲から、そう答えてほしいと言われ、そうしている。

実際、美咲が誰と付き合ってるか私は知らない。

美咲は何でも話してくれるけど、自分の恋愛話だけはしてこない。

それ程、私は恋愛に疎かった…

No.34 10/03/03 21:24
Saku ( SWdxnb )

>> 33 「種元さんがフリーになったらソッコー教えてな」

田瀬君に言われ私は頷く様にして俯いた。
敦史とは話せるようになったけど、この輪の中に入るのは無理だ…。

「田瀬さ、夏休みに、彼女と別れちゃったんだって」

仲間の別の男の子が言う。

「え?あの沢高の?早くねぇ?」

敦史が少し驚いた声で聞き返すと、田瀬君はため息をついて

「2ヶ月。最初から合わないと思ったけど、体が合わなくって~」

私は自分の席へと向かった。

「ーーそういや敦史、昨日アオイに会ったぜ。お前に会いたいってさ」

No.35 10/03/03 21:39
Saku ( SWdxnb )

>> 34 田瀬君の言葉が鮮明に耳の中に入ってきた。

「ちゃんと連絡してやれよ。お前たちはまだ終わってねーだろ」


ぼんやり席に着くと
始業ベルが鳴り、
先生が入ってきた。



『アオイ』
『終わってない』

二つの言葉がグルグルと心の中をかき乱していた……

No.36 10/03/03 21:54
Saku ( SWdxnb )

>> 35 始業式も、その後のホームルームも上の空だった。

敦史に彼女がいない訳がない!
学校内でも人気があるし、それに仲良くなってよーく分かったけど、中身もイイもんね…
なーに私、傷ついちゃってんだか!
と、笑ってる自分と、

こんなに好きになっていたのか…
と、悲しくて泣きそうな自分がいた。

失恋した日に午前で帰れるのは助かるな…と、思いながら
昇降口で靴を履きかえていた時…

No.37 10/03/03 22:16
Saku ( SWdxnb )

>> 36 隣に靴を置く人…

横を見たら、

敦史が、同じ様に私を見ていた。

私は気まずく目線を外して、歩きだした。

「なぁ」

私の後をついて来ながら敦史が呼ぶ。
おもいっきり聞こえているけど…聞こえないフリをして止まらなかった。

「かーよ!」

生徒たちが行き交う中、大声で呼ばれ、思わずドキッと振り向いた。

「ーって、呼んでもいい?」
敦史は、私の弱い、無邪気な笑顔を見せた。

No.38 10/03/03 22:22
Saku ( SWdxnb )

>> 37 「いいけど…」

私は目線を外して答え、

「じゃあ…」

と去ろうとした。

「話しがあるんだけど」

敦史を見ると、笑顔は無くて、真っ直ぐに私を見ていた。

No.39 10/03/03 22:42
Saku ( SWdxnb )

>> 38 高校から自転車を押す敦史の後をついて行って、大きな池を囲む公園に着いた。
その間、敦史も私も何も話さなかった。

敦史は自転車を止め、ベンチに座った。

「…今日、バイトは?」

「夕方から」

何だろ、怒ってるのかな、不機嫌なのかな…
敦史の顔に笑顔は無かった。

「座ったら」

敦史に言われて、私はベンチに座った。

No.40 10/03/04 12:22
Saku ( SWdxnb )

>> 39 池の水辺をカモが泳いでいた。
その光景に緊張していた心が少し和んだ。

「アオイって…」

いの一番に核心を口にした敦史に、私は身を固くした。

「元カノ。(田瀬)勇介はまだ続いてるって思ってたみたいだけど、中学卒業する時に別れたんだ」

心と頭の中のぐちゃぐちゃを、ものの数分で敦史本人によってクリアにされた。

「加世に…」

私の下の名前を小さく呼んだ。

「…こんな話しするの、おかしいかもしれねーけど…」

私はやっとまともに敦史の顔を見る事ができた。
敦史も私を見た。

No.41 10/03/04 12:33
Saku ( SWdxnb )

>> 40 「付き合ってる奴いる?」

私は激しく首を横に振った。

「いないよ」

「そっか…」

又敦史は笑顔もなく一点を見つめた。
その横顔は、ちょっぴり怖い位だった。


「俺と付き合ってみない?」

「!…」

No.42 10/03/04 20:46
Saku ( SWdxnb )

>> 41 「加世が、嫌じゃなければだけど…」

敦史は真っ直ぐに私を見た。

怒っている様に見えたのは、それだけ真剣なんだと思った。


「嫌じゃ、ないよ…」

と言った。
言った瞬間、涙が出た。

驚きと緊張と、敦史を好きっていう気持ちが溢れる様に、涙が止まらなかった。

No.43 10/03/04 22:06
Saku ( SWdxnb )

>> 42 敦史は手を伸ばして、涙を拭ってくれた。

それでも涙は止まらない。
敦史は自分の胸に私の頭を抱き寄せた。


敦史の匂いがした。
細いと思っていたけど、胸板が厚いのが分かった。
凄くドキドキしたけど、
落ち着いていった。


「付き合ってくれる?」

敦史は耳元に顔を寄せて言った。

「ーーうん」

頷いて答えると、敦史は優しく抱きしめてくれた。

No.44 10/03/04 22:14
Saku ( SWdxnb )

>> 43 その数分間、恥ずかしくて顔を上げられないでいた。

「なぁ、見てみ」

と言った敦史の言葉に私は目を上げ、敦史が指差した先を見た。

「カモな」

「うん。フフフ」

穏やか過ぎる風景に私たちは一緒に微笑んだ。

「カモって加世に似てない?」

私は敦史の顔を見上げた。

「名前が?」

敦史はクックッと笑って

「そういう平和なとこがだよ」

と言った。

No.45 10/03/06 11:54
Saku ( SWdxnb )

>> 44 そのあと、私たちは手を繋いで、池の周りを歩いた。

敦史はちょっぴりハシャイで、色々と話してくれた。

映画が好きで、
「古い映画もDVDを借りてよく見てるんだ…
そうだ、今度一緒に映画見に行こうぜ」
とか、

「最近、数学が敵対してるよー。加世、今度教えてよ」
とか…

「うん」

私は頷きながら、ずっと微笑んでいた。

高校での敦史は16歳にしては落ち着いていて、クールに見えたから、私だけに見せてくれる無邪気な姿が嬉しかった。

No.46 10/03/06 13:10
Saku ( SWdxnb )

>> 45 夕方のバイトへ向かう時間ギリギリまでずっと手を繋ぎ一緒に居て、その日は別れた。

家に帰ったら、敦史からメールが届いていた。

「もっと話したかったよ

OKしてくれて、ありがとう

また明日学校でな!」

短い文面だったけど、何度も読みかえした。
そして返信しようとして、何度も書き直した。

「私も同じだよ。

バイト、頑張ってねp(^-^)q」

って悩み尽くして、そう返信した。

それから私は自分の部屋で、今日あった出来事をボーとなって思い出していた。

初めて出来た彼氏ーー
改めてドキドキしていた。

No.47 10/03/06 19:36
Saku ( SWdxnb )

>> 46 翌朝、始業ベルと同時に敦史は先生と話しながら教室へ入ってきた。

「席に着けー」

敦史を目で追うと、座った瞬間に私を見て、ニコッと笑った。

「…それから、今日から新しい図書館の利用が始まる。薄井が図書委員を続けてくれるという事だから、真中と二人で今日の放課後、委員の仕事に向かうように」

「はい」

私たちはそれぞれ返事をした。

No.48 10/03/06 19:53
Saku ( SWdxnb )

>> 47 放課後。
新しい図書館では、簡単な開館セレモニーがあり、各クラスの図書委員が参列していた。

心なしか、図書委員の女の子の視線が私たち…というか、隣の敦史に向いてる様に感じた。

「ねぇ、真中さん」

セレモニー後、顔見知りの図書委員の子たちに声を掛けられた。

「薄井くんって、B組の図書委員なの?」

「うん。2学期から正式にね」

「そうなんだー」

その声のトーンは明らかに敦史に興味があるのが分かった。

私はため息をついて、その場から離れると、一枚の紙切れによって視界を遮られた。

No.49 10/03/06 20:07
Saku ( SWdxnb )

>> 48 「サボってんなよ」

紙切れから敦史が顔を出した。

「サボってないよー。何これ?」

「当番表。各クラス一枚だってさ。加世持ってて」

私は当番表に目を通した。
新しい図書館は2階建てで1、2階に受付がある分、今まで以上に当番が多かった。

「結構入ってるけど、バイト優先していいからね」

「サンキュ。でもなるべく出られる様にしたい。加世と一緒に居たいから」

パァーと顔が赤くなるのが分かった。
案の定、敦史にバレて、クックックッと笑われた。

No.50 10/03/06 20:24
Saku ( SWdxnb )

>> 49 その日は、大きなサイズの図書を、棚に移す作業を少しだけした。

私たちには段ボール1箱分が割り当てられたけど、敦史が一つ一つ開いて見て、全く作業が進まなかった。
いつの間にか、当番委員以外に残っているのは私たちだけになった。

「もしもし、薄井くん。サボらないで下さーい」

私は冗談で言ったのに、キッと睨み返された。

「下の名前で呼べって」

付き合おうって言われた後、そう約束した(された)んだった。

「……」

「それに、サボってないっすよ」

敦史は本を数冊持って、ぱっぱと棚に移した。

  • << 51 「加世、残り持ってきて」 私は残った数冊を敦史の所へ持って行った。 「はい」 「サンキュ」 敦史はそう言って受け取ると、サッと横に置き、私の手を引っ張り、抱きしめた。 「ま、待って!誰かが…!」 「死角だよ」 確かに、高い本棚に挟まれてはいるけど、いつ人が来るか分からないーー 「名前で呼んだら、放す」 「…あつし」 「ん?」 私は顔を上げて敦史を見た。 「敦史」 敦史はニッと笑んで、両手を広げて私を解放した。
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