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食後。お茶でブクブクうがい、その後ごっくん!何が悪い

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レス481 HIT数 49737 あ+ あ-

Saku( SWdxnb )
10/05/18 22:44(更新日時)

誰にでも、たった一人、
忘れられない人が居るハズ…


私にとって、彼は、
かけがえのない
大切な人。


淡くて、霞んでしまいそうな日々は、
キラキラ輝いた思い出の日々でもあったー

No.1259632 10/02/28 00:51(スレ作成日時)

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No.201 10/04/06 20:28
Saku ( SWdxnb )

>> 200 午後2時から、5時まで――
敦史が自転車の往復をする約1時間を除けば、
たった2時間だったけど、毎日敦史に会えると思うと嬉しかった。

クリスマスイブの今日も、私は朝から勉強し、
14時に「散歩」と言って、水筒とプレゼントを持参して家を出た。
両親は出かけるのを喜んでいた。

ゆっくり歩いて15分で着いた。
もう少しで敦史がやってくると思うだけで、ドキドキした。
そんな緊張した私を和ませてくれるように、
カモが目の前の水面を行き来してくれた。

30分過ぎても敦史は来ない――
1時間過ぎた時、知らない番号から着信があった。

「もしもし・・・?」

「加世、オレ」

「敦史?」

「うん。悪い、まだバイト先でさ、
マジ混みで、まだ引かなくてさ」

苛ついているのが分かった。

「大丈夫だよ、気にしないで」

「マジごめん。又連絡するから」

「うん」

そのまま電話は切れた。

No.202 10/04/06 21:05
Saku ( SWdxnb )

>> 201 今日はイブだし、ピザ屋のバイトが忙しくなるのは
容易に想像できた。

2度目の連絡が来たのは午後4時過ぎだった。

電話が繋がった瞬間に、敦史は溜息をついて、

「もうさぁ・・・」

明らかにふて腐れていた。

「バイトお疲れさま。大変だったね」

また、大きな溜息――

「あっ、彼女さん?」

「あ、はい・・・」

「高谷ですー。ごめんねー、今日会う約束だったってねー。
忙しくて、薄井君に無理してもらっちゃってー」

「返せ。――加世、ごめん」

「ううん」

「明日は絶対!行くから!」

近くにいる高谷店長に言っている様だった。

No.203 10/04/06 21:54
Saku ( SWdxnb )

>> 202 「うん。楽しみにしてるね」

私は明るく言った。

「加世、今公園だろ?
寒いのに、ゴメンな」

「ううん、大丈夫。
夕方からも、バイト頑張ってね」

そんな会話をして、電話を切った。

クリスマスイブだからという訳ではなく、
敦史に会えないと分かって、寂しかった。

でも、敦史はバイト頑張ってるんだもんね・・・

私は水筒に入れてきたレモンティーを飲んで、
気分を切り替えてから、家路についた。

No.204 10/04/06 23:31
Saku ( SWdxnb )

>> 203 その晩ま私は机に向かい、日付が変わろうとしていた時間に敦史からメールが届いた。

『寝てたらゴメン。
今日はゴメン。
おやすみ』

私はすぐに返信した。

『起きてたよ。
遅くまでお疲れ様。
疲れてるのにメール、嬉しかったよ。
おやすみなさい。

カヨ』

送信して、すぐ、
電話が掛かってきたーー

No.205 10/04/06 23:43
Saku ( SWdxnb )

>> 204 「敦史?」

「うん。
加世起きてるって見たからさ、思わず…こんな時間にゴメンな」

「フフ、ゴメンばっかりだね」

「マジでーー昨日約束したばっかりなのにさ…」

「忙しいんだって分かってるよ。
疲れ過ぎて、敦史倒れないかって心配…」

「倒れることは無いけど、疲れすぎだよ……
だからーー」

「ーー」

「無性に加世に会いたい」

胸の奥がドクンとした。

No.206 10/04/07 12:29
Saku ( SWdxnb )

>> 205 「今から加世の顔見に行ってもいい?」

「エ…?」

「この間みたいに、部屋から顔見せてくれればいいから」

「いいよ…でも、今からなんて敦史が大変じゃない?」

「このまま家帰るよか、ずっとマシーー
じゃあ、下に着いたらメールするよ」

敦史はそう言って電話を切った。

私は携帯をサイレントにし、ドアを開けてみた。

両親はもう寝たらしく、家中がシーンとしていた。

私はまたドアを閉めて、寒くないように着替えを始めた。

No.207 10/04/07 18:14
Saku ( SWdxnb )

>> 206 それから30分経って、机の上の携帯が光ったーー

カーテンを開けて外を見ると、公園の中に自転車にまたがった敦史がいた。

私は部屋のドアを静かに開け、
階段を物音をたてずに降りて、
1階に着いた所で、辺りを見渡した。

今晩マンタは2階の両親の部屋にいるみたいだ…助かった。

暗闇の中でポケットに入れた携帯が光ったーー

私は、そのまま静かに靴を履き、玄関の鍵を解除しソーっとドアを開けて、外に出た。

玄関のドアも、門も音をたてない様に細心の注意を払って閉めた。

そして、敦史の元に駆けていったーー

No.208 10/04/07 18:58
Saku ( SWdxnb )

>> 207 私に気付いた敦史は最初驚いた顔をしたけど、まっすぐに私を見た。

そして、やってきた私を、手を伸ばして捕まえる様にすると、そのまま抱きしめた。

「加世ーー」

暫くギューッと強く抱きしめられていた。


「大丈夫だったの家?」

顔だけを離して敦史が聞く。

「うん。両親も、マンタも寝てるみたいで、こっそり出て来ちゃった」

敦史は微笑んだ。

「ヤバイ事させてるね」

私は首を振った。

「私も会いたかったから…」

No.209 10/04/07 19:13
Saku ( SWdxnb )

>> 208 敦史の顔がーー
キラキラ硝子の様に輝く瞳が目の前にあった。

敦史は私の髪をなで、
唇を重ねてきた。

それは今までのキスとは違ったーー
敦史の舌が私の口の中で舌を捕えて、強く、優しく動いた。


腰が砕けてしまいそうになるのを予測していたように、敦史の腕が私の体を支え、
そのまま、又抱きしめられたーー

彼のキスしか知らないけど、
敦史はキスがとても上手だと感じた。

No.210 10/04/07 22:25
Saku ( SWdxnb )

>> 209 「寒いよな」

私は唐突な出来事にぼんやりとしてしまい、
敦史の言葉にも、ただ首を振るしかできなかった。

「フフ、ごめん」

敦史はいつもの様に、無邪気に笑った。

「う、ううん・・・」

やっと声が出た。

No.211 10/04/07 23:25
Saku ( SWdxnb )

>> 210 敦史が、滑り台下の四方を囲まれた場所を見つけ、
寒さを凌ぐために、私たちは腰をかがめながら、
その中に入った。

「スゲー、秘密基地みたい」

敦史はハシャイでいたけど、

「暖かいけど、暗いね・・・」

私は真っ暗で少し怖かった。

「加世、おいで」

敦史に手を引かれ、そのまま敦史の前に座った。

No.212 10/04/08 12:03
Saku ( SWdxnb )

>> 211 後ろから抱き抱えられる格好で、両手を重ねた。

物凄くドキドキしたけど、安心して寄り掛かっていられた。

「加世、いい匂い」

「お風呂入ったから…」

「ゴメン、汗くさいな」

「ううん、敦史の匂い、好きだよ」

ホント…
抱きしめられる度、敦史の匂い、体温まで愛おしく感じていた。

「この密着度ーー
ここでやっちゃう奴ら、居るかもしれないな」

「エッ?!」

No.213 10/04/08 18:04
Saku ( SWdxnb )

>> 212 「ハハ、大丈夫だって、いくら何でも、俺は場所選ぶわ」

「…エッチだなぁ」

「かーよぉ、男なんてみんなエッチだから。
で、ほとんどが変態だから」

「フフ、敦史も?」

「俺は筆頭、フフ」

そんな話しをしていても、敦史はどこか余裕があって、
私は、抱きしめられた腕に、守られている気分だった。

No.214 10/04/08 23:10
Saku ( SWdxnb )

>> 213 こんなに密接したまま、一緒にいるなんて初めてだったけど、
たわいない会話も楽しくて、心から幸せを感じていた。

「あ、そうだ・・・」

私はフイに思い出し、コートのポケットから、
小さな袋を出した。

「これ、私からのクリスマスプレゼント」

受け取った敦史は、携帯の明かりを点けて、
袋からキーホルダーを出し、
私の話を興味深く聞いてくれた。

「へぇ、早く光にかざしてみたいな。
大事にするよ」

そう言って、ジャンバーのポケットに閉まった。

No.215 10/04/08 23:47
Saku ( SWdxnb )

>> 214 「もう、こんな時間なんだね…」

敦史の携帯で見た時間は、夜中の3時を過ぎていた。

敦史と一緒に居ると、あっという間に時間が過ぎていくーー
いつもの事だけど、この日は特に早く感じた。

敦史は私に回した腕を強めた。

「まだ一緒に居たい」

「でも、明日…、じゃなくて今日もバイトでしょ?帰って少し寝なきゃ」

「加世はもう帰りたいの?」

「……」

私も敦史と同じ気持ちだったけど、
バイトで疲れている敦史に少しでも寝て欲しかった。

No.216 10/04/09 20:22
Saku ( SWdxnb )

>> 215 「じゃあ、今日の中抜けデート無しにして、その時間も休んでくれる?」

「今一緒にいられるって言うなら…」

「うん。じゃあ5時までいるね」

敦史は重ねた手の上で小指を立て、指切りをした。

「加世、トイレ平気?」

「うん。平気」

「俺ちょっと行ってくるわーー
一人で待ってられる?」

「フフ、うん」

敦史は携帯を出し、音楽をーーオルゴールのTHUNAMIを小さく鳴らした。

「これフルだから、聞いててな」

そう言って、携帯を置いて出て行った。

No.217 10/04/09 22:03
Saku ( SWdxnb )

>> 216 敦史の気遣いが嬉しい。

こんな暗い所で居るのは、少しの間でもやっぱり怖いから…。

きっといつも敦史が聞いているだろう曲を、私は目を閉じて聞いた。


オルゴールの音色のせいか、今までずっと一緒にいて、ほんの数分離れてるだけなのに、敦史が恋しくなった…。


何なんだろ…

自分が小さく思えて、溜息をついた。

No.218 10/04/10 09:30
Saku ( SWdxnb )

>> 217 「大丈夫?」

入口にヒョコっと敦史が顔を見せた。

敦史は楽しそうに中に入って定位置に座ると、
おいでという様に手を広げた。
私はその手をすり抜け、敦史の肩に抱き着いた。

「どうした?…」

「ちょっと…寂しくなっちゃって」

敦史は、優しく抱きしめ、頭を撫でてくれた。

そして、触れ合った頬と頬をスライドさせ、ソッとキスをした。

No.219 10/04/10 10:57
Saku ( SWdxnb )

>> 218 「おみやげ」

そう言って、敦史は温かい缶コーヒーを、私の頬にあてた。

「ありがと…」

私は気恥ずかしさもあって、目を合わせずに受け取った。


その時流れていたTHUNAMIが終わって、敦史は携帯に手を伸ばして、又鳴らした。

「鳴ってる間、ラブターイム」

敦史はそう言うと、私の頬に手をあて、唇を合わせた。

No.220 10/04/10 13:32
Saku ( SWdxnb )

>> 219 それから何度もキスを交わした。

重ねた唇を、離しては、重ね、
軽く、深く、
リードする敦史に、私は応えた。


曲が終わると、敦史は唇を離して、まっすぐに私の顔を見た。


「責任とれる様になるまで、最後までする気ないから…」

「……」

「意味分かった?」

「フフ…分かったよ」

No.221 10/04/10 14:34
Saku ( SWdxnb )

>> 220 私は敦史の胸に顔をつけた。

「私…
経験、ないんだ…」

「ーーだよ、な…」


「敦史が……
初めての人になって」

「ーー」

「いつか」

「うん。
ーーフフ」

敦史は小さく笑った。

「今って言われるのかと思ったー」

「フフ、私だって場所選ぶわ」

敦史は私の髪をクシャっとして、又キスをした。

No.222 10/04/10 16:18
Saku ( SWdxnb )

>> 221 はしゃいだり、キスしたり、話している内に、新聞配達のバイク音が聞こえてきて、私は携帯で時間を確認した。

「もう5時だ…」

敦史はギュッと手を握ってきた。

「親が起きる前に、家に戻らなきゃ…」

もっと一緒に居たかったけど、私は敦史から体を離した。

No.223 10/04/10 17:36
Saku ( SWdxnb )

>> 222 手を繋いだまま、外に出て向かい合うと、あまりの寒さに身震いした。

「敦史、風邪ひかないでね」

「加世も」

「帰り、気をつけてね」

「うん」

あとはバイバイするだけーー
込み上げてくる物悲しさに、私は初めて自分から敦史にキスをした。

敦史は優しく受け入れ、深く長いキスをしたーー。


「じゃあ…」

繋いだ手を離したら、
私は敢えて、振り返らずに足早に家へ帰った。

寒いから早く敦史に帰って欲しかった。

No.224 10/04/11 19:58
Saku ( SWdxnb )

>> 223 門も玄関も、静かに開閉し、階段も物音たてずに上がった。

2階はしーんとしていたけど、両親の部屋で
マンタが起きている気配がした。

私は静かに静かに自分の部屋へ入った。


入ってすぐ、カーテンを開けた。

公園の前の街灯の下に、自転車にまたがった
敦史が、私の部屋を見上げていた。

私と目が会うと、笑顔で手をかざして、
そのまま走り去った。

No.225 10/04/11 20:27
Saku ( SWdxnb )

>> 224 早く帰って欲しかったけど、
敦史が見えなくなってしまうと、寂しい・・・

「はぁ・・・」

ため息をつきながら、服を家着に着替えていると、
コートのポケットに入れた携帯が光っているのに気づいた。


『おかえり』

敦史からのメールだった。

たまらない・・・
じんわりと、涙が込み上げてきた。

寂しいと思う私の心を見通して、
いつも側にいてくれる。

敦史の優しさがたまらなく心に沁みた――

No.226 10/04/11 20:56
Saku ( SWdxnb )

>> 225 私も敦史にメールを送った。

『おかえり

少し眠れるね。
おやすみなさい。

with love カヨ』


言葉に気持ちを乗せるのって難しい――

ベットに横になりながら、悩ましい気持ちで
送った文面を眺めていたら、
いつの間にか眠りについていた。

No.227 10/04/11 21:45
Saku ( SWdxnb )

>> 226 「加世子、加世子――」

「・・・うん」

「もう、お昼よ」

耳元の母親の声で目を覚ました。

「え、お昼?」

「そう。ご飯食べなさい」

「うーん・・・」

私は体を起こし、枕元の携帯を手にした。

「うわ、13時?」

「フフフ、朝まで勉強してたの?
あんまり無理しないのよ」

母親は部屋のドアを開けたまま出て行った。

No.228 10/04/11 21:54
Saku ( SWdxnb )

>> 227 携帯には敦史からのメールが届いていた。

「ただいま、帰ったよ」
と、
「バイト行ってくるな」
という内容の2件だった。

敦史は今もバイトしているんだ・・・
呑気に寝ていた自分が嫌になる。


メールの他に着信があった。
30分前に――美咲から。

私は美咲の番号に発信をした。

No.229 10/04/12 19:43
Saku ( SWdxnb )

>> 228 電話はすぐに繋がった。

「美咲?」

「うん。加世、彼氏と一緒じゃなかった?」

「一緒じゃないよ。いま家だもん」

「そっか…。ねぇ、今時間あいてるなら会えない?」

「いいよ。ウチに来る?

「今駅だから、そうしようかな。じゃあ向かうね」

電話を切った私は、部屋を出て母親に美咲が来る事を伝えた。

No.230 10/04/12 20:02
Saku ( SWdxnb )

>> 229 私は着替えながら、陽介さんの事を思い出して、一気に気を重くしていた。

その時、階下から母親の明るい声が聞こえ、

「加世子ー、美咲ちゃーん」

と呼ばれた。


私が階段を下りていくと、ニッコリと笑んだ美咲のおかげで、玄関がパッと明るく華やいで見えた。

No.231 10/04/12 20:23
Saku ( SWdxnb )

>> 230 「変わってないな~」

部屋を見回して美咲が言う。

「相変わらず殺風景でしょ」

私は飲物とお菓子をのせたお盆を、中央のテーブルに置いた。

「いいよー、加世の部屋落ち着くもん」

美咲はコートを脱ぎ、ベットに寄り掛かれる場所に座った。

「美咲、どっかに出掛けてたの?」

オシャレな私服姿を見て、思わず聞いていた。

「一昨日からずっと出っぱなし」

「え?家に帰ってないの?」

「うん。イブに家に居るなんて無理だもん。
予定空いてた友達と、ドライブ行ったり、カラオケ行ったりしてたの」

美咲は、そう言って、コップのお茶を口にすると、視線をコップに落としたまま、

「陽ちゃんは仕事で会えないからさ…」

と呟くように言った。

No.232 10/04/12 20:31
Saku ( SWdxnb )

>> 231 食事した帰りに、早めのプレゼントを美咲に渡していたのを思い出した。

でも、陽介さんは本当に仕事なのだろうか?

この間の日曜日も、確か美咲には仕事と話していて、違う女の人と映画を見ていた…


私が一人考えていたら、目の前に美咲の顔が近付き、ニヤリと笑んだ。

「加世は?昨日は彼氏と会えたの?」

No.233 10/04/12 22:08
Saku ( SWdxnb )

>> 232 私は、夜中に家を抜け出して、
公園で――秘密基地で敦史と会っていたことを話した。

「加世が?!」
「エエ―!」
「本当に?!」

美咲は表情をコロコロと変えながら、
体を乗り出して話しを聞いていた。
それが、私は可笑しくて笑った。

「ハハ、そんなに驚かないでよ」

「驚くよ!加世がそんなに大胆なんてさー!
でーも、一見清楚そうな子の方がエッチだったりするんだよね」

「エッチ!?なんて、しないから!」

「ヒヒヒ!」

No.234 10/04/12 23:04
Saku ( SWdxnb )

>> 233 美咲にからかわれる様に笑われながら、
敦史が責任とれるまではしないーー
と言った事を話すと、
美咲は笑うのを止めた。

「へぇ……」

何かを考えている様子の美咲を、私は首を傾げて見つめた。

美咲は私と目が合うと、視線を外すことなく話し出した。

「昨日、隣町の友達も来ててね、薄井君と同じ中学だった子なんだけど…」

No.235 10/04/13 12:41
Saku ( SWdxnb )

>> 234 「彼、中学時代も凄くモテてたみたいで…」

そこまで話して、美咲は口を噤んだ。

「なぁに?教えて」

「大したことじゃなかった。加世は知らなくていい話」

「ヤだよ!敦史の事でしょ?教えてよ」

「うーん…
じゃあ核心だけ話すとね、彼は経験豊富ってこと」

「……」

豊富って…どの位のことを言うのか分からなかったけど、
彼女もいた敦史が経験済みなのは想像できた。

No.236 10/04/13 12:53
Saku ( SWdxnb )

>> 235 「責任とれる様になるまで、本当に手を出さなかったら、愛されてる証拠じゃない」

美咲はウインクする様にはにかんだ。


美咲はまだ何かを知っている様に感じたーー。


でも聞いてもこれ以上のことは教えてくれない気がしたし、
何よりも、今の私には、受け止める自信が無かった。

No.237 10/04/13 20:24
Saku ( SWdxnb )

>> 236 「やっぱり、話さない方が良かったね…」

少なからず、落ち込んでいた私の顔を覗き見ながら、美咲は溜息をついた。

でも私は、心の中の乱れを整理して、本当の自分の気持ちを探ったら、呆気ない位に答えが見つかった。


「私、過去の敦史がどんなだろうと気にしないよ。
私が知ってる目の前に居る敦史が好きだから」


私は、今私のそばに居てくれる敦史を信じたいと思った。

美咲は頬杖をついて、私を真っ直ぐに見つめていた。

「ーー加世って強いね」

「ーー」

「私、やっぱり加世好きだわ。
加世はそのままで居てよね。ずっとさ」

美咲は大袈裟にニヤリと笑んだ。

No.238 10/04/13 23:50
Saku ( SWdxnb )

>> 237 その後、美咲にここ数日の話しをしながら、携帯のストラップを見せた時、着信ランプが光っているのに気付いた。

サイレントを解除して開き見ると、
敦史からのメールだった。

『今休憩ー
約束通り、スタッフルームで爆睡するよ
おやすみ』

着信は14時15分。
今はもう15時近い…敦史は寝ているだろう…。

私はタイマーを17時10分前にセットした。

「彼からだった?」

「うん…
今バイト先の休憩で、寝てるって」

「フフフ、いいねー、ラブラブで!
あーあ、私の携帯はいつ鳴るんだか…」

美咲は携帯を頭の上にかざして、溜息まじりに見つめた。

No.239 10/04/14 01:11
Saku ( SWdxnb )

>> 238 「美咲から連絡してみたら?」

「でも仕事だって言うし」

「メールでも、着信でも、残しておいたら、返事くれるんじゃないかな?」

何も遠慮する事ないのに…と軽く言った後に、
もし仕事じゃなくて他の女の人と居たら……
と、胸がざわついた。

「うーん…。
そだね、痕跡だけでも残しておこうかな」

そう言って、美咲は電話を発信した。

No.240 10/04/14 18:05
Saku ( SWdxnb )

>> 239 暫くの沈黙の後、美咲の体はビクッと反応した。

「えっ?あ、陽ちゃん?
仕事中?ーー
今は加世と一緒。寂しい私の相手してもらってるの。
うんーーエ、本当?うん、加世に言ってみるね、うん、楽しみにしてるね
じゃあ後で」

電話を切った美咲は、体を弾ませ、満面の笑みで

「かーよ!
陽ちゃん、夕方から会えるって!」

「良かったね」

私も笑顔で答えた。

No.241 10/04/14 18:37
Saku ( SWdxnb )

>> 240 「それで、陽ちゃんが加世も一緒に夕飯食べようって」

「私は遠慮するよ。
せっかく二人で会えるのに、お邪魔しちゃ悪いもん」

「いいの。私は今日も陽ちゃん家にお泊りするし。陽ちゃんも、又加世とご飯食べたいって言ってたから」

「でも…」

「それにさ、言わなくていい事で加世を悩ませたお詫びさせてよ…
おごるのは私じゃなく陽ちゃんなんだけどさ」

そう言ってはにかんだ美咲は、その時廊下を歩くウチの母親に気付いて、立ち上がった。

「あっ加世のお母さん!
今日、加世と一緒に外で夕飯食べに出掛けてもいいですか?」

美咲の申し出に、母親が快く了承する声が聞こえた。

No.242 10/04/14 19:55
Saku ( SWdxnb )

>> 241 「駅に18時半に待ち合わせね」

美咲はそう言い残し、シャワーを浴びに自宅へと帰った。


陽介さんの秘密を知り、それを美咲には話せず、罪悪感を募らせていた私が、二人と一緒に食事なんてーー
どんな顔をして会えばいいものか…。
気が重かった…。


憂鬱な気持ちで、準備を始めたら、携帯のタイマーが鳴ったーー
16時50分。

私は、敦史に電話をかけた。

No.243 10/04/14 20:43
Saku ( SWdxnb )

>> 242 「…はい」

眠そうな声で敦史が出た。

「敦史?ーー加世」

「ん、加世?…アレ、今何時?」

「16時50分だよ」

「ああ、起こしてくれたんだ。ーー助かったよ、うーんーー」

体を伸ばしているのが目に浮かんだ。

「フフ、お疲れ様。あまり眠れなくて大変でしょう?」

「フー…
イヤ。今、超スッキリ」

「フフ、良かった」

敦史と話しながら、自然と自分の顔が綻ぶのが分かった。

No.244 10/04/14 21:04
Saku ( SWdxnb )

>> 243 「ねぇ敦史、今日これから美咲と夕飯食べに行ってくるね」

少しの沈黙があった。

「他には?アイツも来るの?」

「うん…」

又、少しの沈黙…。

「帰り何時?」

「分からないけど、21時位だと思う…」

「俺迎えに行くから、そいつに送ってもらったりすんなよ」

「でも、バイトは?…」

「タカヤンに掛け合って、昨日の貸し、返してもらうからーー
もう時間だから、後で合間みてメールするな」

「うん」

電話は切れた。

少し怒った様な敦史の声に、憂鬱な気分が、より一層増してしまった。

No.245 10/04/14 21:59
Saku ( SWdxnb )

>> 244 少し早めに駅に着くと、既に美咲は待っていた。

「美咲、かわいいー」

洗練された着こなしはさすがだったけど、
ほんのりと香る香水は、女らしさを際立たせ
何よりも、美咲自身がキラキラと輝いていた。

「ありがと。
陽ちゃんに会えると思うとウキウキしちゃって」

チークのせいばかりではなく、
美咲の頬は、高揚するようにピンクに染まっていた。

その時、見慣れたスポーツカーが目の前に来て止まり、
助手席の窓が下がった奥に陽介さんが見えた。

「陽ちゃーん!」

「おまたせ」

陽介さんはにっこりと微笑み、
最後に私を見て、小さく頷くように頭を下げた。

No.246 10/04/15 20:08
Saku ( SWdxnb )

>> 245 以前のように、美咲は助手席、
私は後部座席に座り、
陽介さんは車を発進させた。

「イタリアンなんだけど、旨いんだ。
ちょっと走るけど」

陽介さんは、ハンドルを握りながら言った。

「ほんと?楽しみ」

美咲はにこやかに答えた。

その時、私の携帯が鳴った。
敦史からの着信だった。

「もしもし?」

「加世?今日21時で上がれることになったから」

「うん」

「もう合流した?」

「うん」

「どこの店?」

「ちょっと離れたお店に向かってるよ」

「じゃあ、帰りは駅まで送ってもらって。
21時半には着けるようにするから」

「うん」

「じゃあ、仕事戻るから」

「うん――頑張ってね」

私は電話を切った。

No.247 10/04/15 20:27
Saku ( SWdxnb )

>> 246 「彼からだった?」

美咲は振り向いて聞いてきた。

「うん」

「何だか、尋問されてる様な電話だったね」

ルームミラー越しに陽介さんに言われ、ドキッとした。

「陽ちゃんてば、加世は私たちに気を遣ったんじゃない!分かってないな~」

「そう。ごめんね」

陽介さんは同じ様にミラー越しに私を見て小さく笑んだ。

何だか、陽介さんには全てを見透かされている感じがした…。

No.248 10/04/15 21:27
Saku ( SWdxnb )

>> 247 陽介さんの連れて行ってくれたのは、
レンガ造りで、一見コテージのような雰囲気のある
おしゃれなイタリア料理店だった。

オレンジ色の照明に照らされたテーブルに、
陽介さんと美咲は並んで座り、
その向かいに私は座った。

「相変わらず、陽ちゃんって素敵なお店知ってるね」

「仕事の付き合いネタで、教えてもらってるんだよ」

陽介さんは、私たちが飲み物を決めている間に
オーダーを済ませた。

ひと段落すると、向かい合った私に微笑んだ。

「加世子ちゃん、久しぶり。
――って、この間会ったばかりか」

つかさず、美咲が

「そうだよ、まだ10日前の話じゃない」

と言った。

日曜日に会った事は、美咲の計算に入っていない・・・
改めて、罪悪感に包まれながら、
運ばれてきたソーダー水を口にした。

No.249 10/04/15 21:57
Saku ( SWdxnb )

>> 248 食事が運ばれてきた。アンティパストもピザもパスタも
どれも、本当に美味しかった。

陽気に話す美咲は、場を明るくし、
陽介さんの秘密も忘れて、私も楽しい時間を過ごしていた。
そんな中、陽介さんが、私をジーと見て、

「加世子ちゃんって、いつもその髪型?」

と聞いてきた。

「そう言えば加世、中学の時から同じ髪型だね」

「うん」

美咲の言うとおり、ずっと肩に届く位のセミロング。
特に気にせずに、いつも同じ様にカットしてもらっていた。

「加世子ちゃんは、ショートが似合うと思うよ」

真っ直ぐに見られながら言われ、
思わずドキドキしてしまった。

No.250 10/04/15 22:27
Saku ( SWdxnb )

>> 249 「男が女に自分好みの髪型を伝えるのって、
何だか、イヤラシイ」

美咲は真横を向き陽介さんの顔を
ツンとした表情で見つめた。

「フフ、そうか?」

陽介さんは、笑って、グラスに口をつけた。

「だって、その通りの髪型に変えたら、
アナタの色に染まりました――って感じじゃない?」

「ハハハ」

「男は、暗に網をかけているような感じだし」

陽介さんは、私の方に顔を近づけ、

「俺は、加世子ちゃんを網にかけようとはしてないからね」

そう、囁くように言った。
美咲はそんな陽介さんの腕を押しながら、

「もう!当たり前でしょ!
――私、トイレ行ってくる」

と、席を立って行った。

  • << 251 美咲は陽気な空気も一緒に連れ去り、 私と陽介さんの間には、静かな空気が流れた。 「取ろうか?」 「はい・・・」 陽介さんは、追加で注文したサラダを 取り分けようとお皿を手にした。 「美咲に話してないんだ」 目線を落としたまま言った。 私も、同じくサラダに目線を落としていた。 「美咲に傷ついてほしくないんです」 「――」 陽介さんは取り分けてくれたサラダを 私の前に置いた。
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