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食後。お茶でブクブクうがい、その後ごっくん!何が悪い
余裕を持った行動はしないのでしょうか。
ファミサポで預かってもらっていたのですが・・・。

コイアイのテーマ

レス481 HIT数 49740 あ+ あ-

Saku( SWdxnb )
10/05/18 22:44(更新日時)

誰にでも、たった一人、
忘れられない人が居るハズ…


私にとって、彼は、
かけがえのない
大切な人。


淡くて、霞んでしまいそうな日々は、
キラキラ輝いた思い出の日々でもあったー

No.1259632 10/02/28 00:51(スレ作成日時)

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No.51 10/03/06 20:38
Saku ( SWdxnb )

>> 50 「加世、残り持ってきて」

私は残った数冊を敦史の所へ持って行った。

「はい」

「サンキュ」

敦史はそう言って受け取ると、サッと横に置き、私の手を引っ張り、抱きしめた。

「ま、待って!誰かが…!」

「死角だよ」

確かに、高い本棚に挟まれてはいるけど、いつ人が来るか分からないーー

「名前で呼んだら、放す」

「…あつし」

「ん?」

私は顔を上げて敦史を見た。

「敦史」

敦史はニッと笑んで、両手を広げて私を解放した。

No.52 10/03/06 21:09
Saku ( SWdxnb )

>> 51 敦史の顔を見ながら、涙が出てきた。

「泣くなよぉ~」

敦史の顔は困っていた。

「うん…ホント…ごめん…」

私は心から言葉にした。

「またギュってしたくなる」

「…フフ…」

私は泣きながら笑った。
正直、昨日みたいに敦史の胸で落ち着きたかった…

「手、繋いで…」

敦史は私の手を取り、指と指を重ねて、ギュッと握ってくれた。

No.53 10/03/06 22:03
Saku ( SWdxnb )

>> 52 落ち着いた私は敦史の顔を見て微笑んだ。

「もう大丈夫。ありがとう」

敦史も落ち着いた表情で私を見つめた。

「マジで好きだから」

「…うん」

「きっと、加世が思ってる以上に俺はーー」

その時、私たちのいる通路に生徒がやってきて、私たちは手を離し、私は残りの本を並べた。

No.54 10/03/06 22:48
Saku ( SWdxnb )

>> 53 人が居なくなった後、私たちは顔を見合わせた。

「やばっ、バイト遅れるわ」

「え?今日もバイト?ゴメンね、気付かなくて」

「大丈夫だよ。メールするな」

「うん」

さっきの続きが聞きたかったけど、私は笑顔で敦史を送りだした。

No.55 10/03/06 23:53
Saku ( SWdxnb )

>> 54 敦史の前で泣いてばかりいる自分が嫌になってしまう…

昨日からずっと、苦しくて、切ない気持ちでいっぱい…

敦史が目の前にいたら尚更、気持ちが揺さぶられてしまう

そんな事を考えていた帰宅途中、携帯が鳴った。

敦史からのメールだった。

「もっと一緒にいたかったよ。

また明日な」

また胸が苦しくなった。

落ち着かない不安定な気持ちになっても、
私も敦史と居たいと思った。

No.56 10/03/07 00:13
Saku ( SWdxnb )

>> 55 それから私は、はち切れそうな気持ちを抱えたながら、学校に通った。

教室では席も離れて、グループも違うから、ずっと一緒に居ることは無かった。
だから敦史は、図書委員の仕事を楽しみに、バイトのシフトも調整していた。

敦史は教室内でも私を「加世」と名前で呼ぶ様になったけど、それは図書委員同士で仲良くなったからだろう…と、クラスメイト達は思ったはずだ。

私たちが付き合っているなんて、誰も気付いていなかった。

No.57 10/03/07 01:04
Saku ( SWdxnb )

>> 56 ある朝、学校に向かう途中で肩を叩かれ振り向くと

「おはよっ」

と笑顔の美咲がいた。

「おはよーう。美咲、今日早いね」

美咲はいつもギリギリ登校の常習者だった。

「送ってもらってね」

美咲が言った時、脇の車道をグレーのスポーツカーがクラクションを鳴らして通り過ぎ、美咲はその車に向かって手を振った。

「送ってくれたのって、あの車?」

「そう」

「美咲のお父さん?」

美咲は私の顔を驚いた様に見てから、キャハハと笑った。

No.58 10/03/07 01:17
Saku ( SWdxnb )

>> 57 「年上だけどパパっていう年でもないしーーフフフ、今度彼に会ったら、今の話ししちゃおう」

「えっ?彼氏だったの?ごめん」

「フフ、加世には癒されちゃう。ホント、平和よね」

『平和』と言う言葉に反応して、私は美咲に向かい合った。

「ねぇ美咲、聞きたい事っていうか、話したいことがあるんだけど…」

「え?なぁに?」

聞き返された時には正門をくぐっていて、私たちは後で話そうと約束した。

No.59 10/03/07 11:10
Saku ( SWdxnb )

>> 58 私たちは昼休みに屋上で会った。

「加世の話したいことって?」

「あ、あのね…」

私は美咲に現状を話して、相談にのってほしかった。
でもいざ切り出そうとすると、言葉が出てこない。

「そう言えば、またクラスの男子に、美咲が付き合ってるか聞かれたよ」

「えー、薄井くんとか?」

「エ?…」

No.60 10/03/07 11:14
Saku ( SWdxnb )

>> 59 「どうして…薄井、くん?…」

私は美咲の口から敦史の名前が出たことに、戸惑った。

「だって、加世のクラスで一番カッコイイじゃない。
薄井くんに聞かれたんなら嬉しいなぁって思っただけ」

「そ、か…。聞いてきたのは田瀬君だよ。敦史といつも一緒にいるーー」

美咲はキョトンとした顔で私を見た。

「敦史って?薄井敦史?」

あ、……
私は言葉に詰まった。

No.61 10/03/07 11:21
Saku ( SWdxnb )

>> 60 「加世、名前で呼んでるんだ」

「あぁ、うん。…同じ図書委員になってね…」

「ふーん」

私は意を決して、続けた。

「それにね、私たち、付き合ってるんだ」

「ハ?」

美咲はポカンとした顔で私を見た。

「付き合ってる、って…加世と…薄井くん?」

No.62 10/03/07 20:42
Saku ( SWdxnb )

>> 61 「うん」

私はぎこちなく頷いた。

「エーー!」

美咲は驚きとも喜びともとれる表情で私に抱きついてきた。

「うそー、やったじゃん加世ー!初カレじゃん!」

「うん…」

「ん?どうしてそんなに暗い顔してるの?」

「美咲~」

美咲に悩みいっぱいの顔を見抜かれた後、
敦史のまえで泣いてしまう事や、一人でいても落ち着かない事などを、すがり付く様に美咲に話していた。

No.63 10/03/07 21:01
Saku ( SWdxnb )

>> 62 美咲は含み笑うようにして

「初々しい!」

と、私の肩にタッチした。

「本気で辛いんだよー!毎日いっばいいっばいで…」

「それだけ彼の事が好きってことでしょ」

「うん…そう、だと思う」

「じゃあ気持ちがMAXになる前に、言葉にして伝えてみなよ。
思いを溜め込むから、泣いたり、気持ちが辛くなるんだよ」

『なーるほど』と、私は心の中で合点した。
まるで難しい数式の回答のコツが見つかったような気分。

美咲って、やっぱり恋愛の天才ダ!

No.64 10/03/07 22:05
Saku ( SWdxnb )

>> 63 美咲は私の顔を覗き見て、ニッコリと微笑んだ。

「つき物がとれたみたいな顔」

「…うん、美咲に聞いて貰えて大分楽になったよー」

「いつでも聞くよ。これから加世と恋話するの楽しみ」

私も一緒に笑った。

「でも、加世と薄井くんって、意外な組み合わせだなー」

私は微苦笑した。

「だよね。…でも、二人で居ると、心地いいっていうか…」

「ごちそうさまでーす」

「違くてね、あぁ!」

美咲の顔を見て気付いたーー

「敦史って、美咲にタイプが似ているかも」

No.65 10/03/07 22:34
Saku ( SWdxnb )

>> 64 表面は華やかで、目立っているけど、冷静な部分がある所とか、
醸し出す雰囲気が似ている気がした。

「そうなのー?」

美咲はハシャイでケラケラと笑った。

「なら、彼が加世を選んだの分かるな」

「え?」

「加世と居ると、ホッとするの。癒されるもん」

美咲がそんな風に思っていてくれたのかと、照れ臭かったけど、嬉しかった。

敦史は…
どうかな…

No.66 10/03/07 23:31
Saku ( SWdxnb )

>> 65 その日の放課後も図書委員で、敦史はバイト前の1時間だけ、当番にやってきた。

人が引いたのを見計らい、返却された図書を戻しに行った。

「Jの22、22…」

本の戻るスペースを探す敦史の後を、私はカートを押しながらついて行った。

入学したての2ヶ月間、毎日見ていた敦史の背中ーー
細いのに、肩幅があるんだなぁって思った。

胸がいっぱいになった。

No.67 10/03/08 00:22
Saku ( SWdxnb )

>> 66 「敦史」

「うん?」

敦史は高い棚に本を戻しながら目だけ向けた。

「好きだよ」

ストンと踵をついて、体を向けた敦史は、初めポカンと私を見て、徐々にニヤケていった。

「嬉しいけど、変なタイミング~」

と言うと、笑顔を隠す様に、違う本を手に前を進んだ。

敦史の言う通りだと、私も少し可笑しかった。

「フフ。いつでも好きって思っているから…」

敦史は立ち止まって振り向いた。
優しい目だった。

「お前って、可愛いな」


ーチン♪ー

カウンターの呼び鈴で、雰囲気を壊され、私たちは笑いながら席に戻っていった。

No.68 10/03/08 23:00
Saku ( SWdxnb )

>> 67 その日の夜、敦史からメールが届いた。

『初めて加世の気持ちが聞けて、良かったよ

また明日な』

そうだった…
「好き」っていう気持ちを伝えていなかった。
前からずっと、好きだったのに…

でも気持ちを伝えた心は軽くなり、
明日敦史に会えると思うと、ただ嬉しくて、待ち遠しく夜を過ごした。

No.69 10/03/09 21:52
Saku ( SWdxnb )

>> 68 それからは毎日が楽しかった。

教室内でも敦史と話す事が増えたけど、
相変わらず私たちが付き合っていることは、誰にも気付かれなかった。

図書委員の当番が、さながら、デートみたいな感じで、
図書館という空間も手伝ってか、落ち着いて、お互いを知ることができた。

そんな高一の2学期も半ばを過ぎた頃、クラスで席替えをすることになった。

No.70 10/03/09 22:09
Saku ( SWdxnb )

>> 69 「俺、絶対加世の近くに行くから」

図書委員の当番中に、席替えの話題で敦史が言った。

「どうやって?」

「念じて。ウーン」

そう言って眉間にシワを寄せた敦史の顔が可笑しくて、声を出して笑った。

「ホントに近くなったら嬉しいけどね」

敦史は横目で私をみて、意味深げにニヤリと笑んだ。

No.71 10/03/09 22:27
Saku ( SWdxnb )

>> 70 ーそして、席替え当日…。

「えー!なんでー?

私は、窓側の一番後ろの席に座る敦史に向かって言った。

「ははーん、念力~」

敦史は、引いたクジをヒラヒラさせて、余裕の笑を浮かべていた。

クジには間違いなく私の後ろの席番が書かれてあった。

後で聞いたけどーー
先に私の席を覗き見て、後ろの席の子と交換して貰ったとのこと…
念力ぃ?…ズルじゃん!

「俺がひいた教壇前の席がいいって言うからさ…たまたまお互いの利害が一致したんだよね~」

背後からの小声の言い訳は聞き流していた。

「ーー加世の背中見て色々想像しよおっと」

私は思わず振り向いて、歯を噛んだまま言った。

「やめてよ、気になっちゃうでしょ」

あー、近くなったらなったで嬉しい以上に、大変そう…。

私はため息をついた。

No.72 10/03/10 00:33
Saku ( SWdxnb )

>> 71 「なぁ加世、勉強教えて」

ある休み時間、振り向くと、敦史は机に数学のノートを広げていた。

「うん、いいよ。どこ?」

その時、田瀬君が敦史の席にやってきた。

「敦史、何やってん?」

「勉強教わってんの。中間も間近だろ」

「ヤバイ!雪降る?地震?ノストラダムス??ヤバイわ~」

田瀬君は体を反りながら後退りしていった。

敦史はノートに鉛筆を走らせ、

『この手、つかえる』

とニヤリ。
私も鉛筆を取り、その横に

『教えてほしい所は?』

敦史はただニヤリ。

「もう」

苦笑するしかなかった。

No.73 10/03/10 12:05
Saku ( SWdxnb )

>> 72 中間テストが終わった後も、敦史は「ノート作戦」を使って、よく私と一緒に席に残っていた。

ある日、田瀬君がまたやってきて

「仲イイね~、遠くからだと、お前ら付き合ってる様に見えるぜ」

と軽いノリで言った。
すると敦史は笑顔で田瀬君を見て

「そうだよ。俺たち付き合ってんの」

私はビックリ!
ただただ敦史の顔を見つめた。

「またまた~」

田瀬君はケラケラと笑った。

「ホントだよ」

田瀬君が敦史を見ると、
敦史は『うん』と頷いた。

「エエーー!!」

クラス中のみんながこちらを見た。

No.74 10/03/10 20:09
Saku ( SWdxnb )

>> 73 前から敦史は
「付き合いを隠すつもりはないよ」
と言っていた。

その言葉は心強かったし、何より嬉しかった。

だから私もいつ周りに知られても大丈夫って気持ちでいた。

けど…
よりによって、田瀬君に知られてしまった…

そう、後でため息をつく事になる。

No.75 10/03/10 20:18
Saku ( SWdxnb )

>> 74 翌日、登校すると
周囲からの視線を感じずには居られなかった。

それはクラスを越え、学年を越え、校内のどこを歩いていても感じる視線だった。

「バレタネ」

その声がした窓を見ると、ベランダをつたってきた美咲がいた。

「ばれた、って…」

「アチコチで加世たちが付き合ってるって話してるよ」

その答えは予測していたけど、一気に気が重くなった。

No.76 10/03/10 20:30
Saku ( SWdxnb )

>> 75 「どうしてこんな騒ぎになっちゃうのかなー?」

「それは加世の彼が人気があるのと、二人のギャップでかな~」

笑って話す美咲に、いますぐ変身したい気分だった。

「何日かしたら、おさまるって。その前に加世も気にしない、気にしない。
ホラ、彼氏みたいにさ…」

美咲が指差した先には、教室に入ってきた敦史がいた。

「そうなんだよー、ヨロシク~」

聞かれては、そんな気楽に挨拶をしながらやってきた。

No.77 10/03/10 20:39
Saku ( SWdxnb )

>> 76 美咲が去ったと同時に敦史が席に着く。

「おーす」

クラス中の視線がこちらに向く。

「おはよう」

私は前を向いたまま挨拶した。

「不自然~。おーす」

私は息を吐き、振り向き

「おはよう」

と言った。

No.78 10/03/10 21:06
Saku ( SWdxnb )

>> 77 そのあと、中間テストの上位30名が廊下に張り出されたのを見に行った。

敦史も一緒だったから、廊下を歩いていても好奇の眼差しにさらされた。

「下ばかり見てんなよ」

「……」

敦史の言葉に、ほんの少し顔を上げた。

「堂々としていようぜ、俺らの付き合い、自信あるならさ」

そうだよね…。
下ばかり見ていたら、敦史との付き合いを自分で否定してしまう事になるよね。

私にとって今一番大切なのは、敦史自身なんだ

No.79 10/03/10 21:40
Saku ( SWdxnb )

>> 78 張り出された中間テストの上位者欄に敦史の名前は無く、私は後半の方にあったーー。

その日の昼休み、私は担任の先生に職員室に呼ばれた。

「真中、最近何か変わったことがあったか?」

先生の問いに、答えが見つからず、

「いいえ」

と答えた。

「中間テストの結果だが……」

先生は私の名前のファイルを広げて見せた。

「1学期に比べて、今回20番くらい順位も落ちてるだろ」

確かに先生の言う通りだった。

No.80 10/03/10 21:51
Saku ( SWdxnb )

>> 79 「真中は、薄井と付き合っているのか?」

先生の耳にまで入っていたのに驚いたけど、
私は真っ直ぐに先生の顔を見て

「はい」

と返事をした。

「付き合うのが悪いとは言わない。
ただ、これ以上成績に影響が出るようなら、親御さんにも話さなければいけないし、
薄井にも考えてもらわないとな」

「ーー」

「真中自身もよく考えなさい」

「ーー」

ショックだった。

敦史のせいで私の成績が悪化したと言われたようなものだった。

No.81 10/03/11 21:03
Saku ( SWdxnb )

>> 80 教室に戻りながら、悔しくて、悲しいーー
何とも言えない気持ちに包まれた。

でも一番のわだかまりは、敦史を否定されたことだった。

先生は敦史の何を知っているというのか?

成績だけで生徒を差別するような担任に幻滅すると同時に、
敦史との付き合いに口を出される筋合いはないと、
怒りにも似た感情がこみあげてきた。

『今後、誰からも
文句を言われない成績を残してやる!』

こんな反骨に、自分でも少し驚きながら、
そう固く決意した。

No.82 10/03/11 21:27
Saku ( SWdxnb )

>> 81 教室の自分の席に戻ると、真っ先に敦史が声をかけてきた。

「担任、何の用?」

私はいつもと変わらない様に心掛けた。

「大したことじゃなかったよ」

「大したことじゃないのに、職員室?」

「本当だって、きっと教室だと騒がしいからじゃない?」

私は、敦史に本当のことは言えないけど、嘘もつきたくなかった。

「ふーん」

敦史は納得したのか、どうか分からないけど、
その時は、それ以上何も聞いて来なかった。

No.83 10/03/11 22:12
Saku ( SWdxnb )

>> 82 その日の放課後も図書委員の当番があった。

私たちはカウンターを離れて、返却図書を戻していた。

大雨が降っているせいか、図書館利用者は少ない…
私は大きな窓に打ち付ける雨粒をボンヤリと眺めた。

「やっぱり、担任に何か言われたんだろ?」

気付くと敦史がずっとこちらを見ていた。

「だから、大したことじゃー」

「分かるんだって」

言葉を遮られた。

「加世のこと、ずっと見てるし、考えてりゃね」

「……」

敦史の眼差し…
慣れているはずなのに、
真っ直ぐなキレイな瞳から目が離せなかった。

No.84 10/03/12 18:43
Saku ( SWdxnb )

>> 83 「言いにくいのは、俺とのこと言われたから?」

「私の成績のことだよ。
今回落ちたから心配されたの」

「俺が原因でって?」

「敦史まで、そんな下らない事言わないで」

「ーー」

「テストを受けたのも、勉強した、しなかったも、私なんだもん。
私ね、頑張るって決意したの。
だから、見てて。
次からは文句の付けられない成績残すから」

敦史は少し笑った。

「男前だな~」

そう言われて、
私も笑った。

No.85 10/03/12 19:43
Saku ( SWdxnb )

>> 84 「にしても、その自信が羨ましいわ。
まぁ、元々加世は頭いいからな」

「元々は、全然遅れていてダメだったよ。
小学校低学で、ひらがなが読めなくて、みんなにバカにされたり…」

「意外だね」

「でも父と母は焦らなくていいと言ってくれて、
その変わり、毎日一つずつ勉強していこうって約束したの。
今日『あ』を覚えたら、
明日は『あ、い』
翌日は『あ、い、う…』
ってね」

敦史は黙って聞いてくれていた。

No.86 10/03/12 20:07
Saku ( SWdxnb )

>> 85 「そうしたら、覚えていくのが楽しくなって、
ひらがなもちゃんと覚えられた。
毎日付き合ってくれてた母親が言ったの
『加世が頑張った分、覚えられたね。
勉強は努力した分、ちゃんと返ってくるんだよ』って」

「……」

「それから、勉強はね、やればやった分、結果に出るって思ってるの」


「やっぱり加世は、俺の持ってないもの、いっぱい持ってるわ」

「そんな…」

敦史の方が私に無いものをいっぱい持っていると思った。

No.87 10/03/12 20:26
Saku ( SWdxnb )

>> 86 「いい親じゃん…」

敦史は呟くように言った。
そうだ…敦史は母子家庭だった。
でも敦史の口から、お母さんの話しが出たことは無かった…

「俺も勉強頑張ってみるわ」

「え?」

敦史はニヤリと笑んだ

「加世が俺のママな」

No.88 10/03/12 21:26
Saku ( SWdxnb )

>> 87 敦史の言葉は嘘ではなかった。

授業中も真面目にノートをとり、
休み時間中の「ノート作戦」も本物の勉強に変わっていた。

私も毎朝早く起きて、家で勉強をしてから登校した。


1年生の2学期の期末テスト
敦史は順位を30番も上げた。

私は3番だった。

No.89 10/03/12 23:37
Saku ( SWdxnb )

>> 88 テスト結果が出た後の、図書委員の当番の時だった。

「ジャーン」

と敦史は私の顔の前に、
ヒラヒラと細長い紙切れ2枚を見せてきた。

「なぁに?」

「映画鑑賞券。
恐ろしく頑張った俺へのご褒美」

「じゃあ私に出させて」

「いいって」

「でも…」

「じゃあ、映画館でポップコーン買ってよ」

楽しそうに話す敦史に

「うん」

と私も笑んで答えた。

No.90 10/03/14 20:03
Saku ( SWdxnb )

>> 89 映画デートは今度の日曜日。
敦史と付き合ってから初めて私服のデート。

何を着ていこう…やっぱり服を買おうかなーー

なんてことを考えながら、校内の廊下を歩いている時だった。

「真中」

呼ばれて振り返ると、担任の先生が立っていた。

「はい」

「期末頑張ったな。実力を出せたな」

そりゃ、先生に言われた言葉に発奮しただけですーーと、言いたい位だったけど、黙っていた。

「まだ薄井と付き合ってるのか?」

何だか…嫌な展開…

No.91 10/03/14 20:56
Saku ( SWdxnb )

>> 90 「はい」

私がはっきりと返事をしたら、先生はため息をついた。

「やっぱり薄井と付き合うのは考えた方がいいぞ」

「でも先生!あつし…薄井君は今回の期末でも、すごく頑張ってーー」

「そうだな。頑張ってたなーー」

先生は真顔で、その目は冷たかった。

「だが、成績うんぬんの問題じゃないんだ。
真中と薄井では友達も家も、周りの環境が違いすぎるだろ。
一時の感情で付き合っても、必ず後から歪みがでてくるし、親御さんだってーー」

「先生!」

担任の言葉を遮った。
涙がこみあげてきた。

「先生は敦史の何を知っているんですか?」

No.92 10/03/14 22:11
Saku ( SWdxnb )

>> 91 聞いてみたいー
答えてほしかった。

「わたしは、担任の前に君達の人生の先輩だから、色々分かるんだよ。
まだ分からないことが多い今の時期に失敗して、後悔してほしくないんだ。
特に真中はね、真面目でいい子だから、騙されやすいと思うんだ」

騙されるって敦史にですか?
失敗するのは悪いことなんですか?

沢山の疑問をぶつけたかったけど、
涙がこぼれて、言葉が出なかった。

No.93 10/03/14 22:24
Saku ( SWdxnb )

>> 92 「ちょっと先生、何泣かせてんの?」

そう言って駆け寄ってきてくれたのは、美咲だった。

「いや…」

少し困った顔をした担任の前に、美咲は仁王立ちした。

「女の子泣かせるなんて、先生の前に人としてサイテーだから。
いこ、加世」

そう言い放って、私の肩を抱いてその場を離れてくれた。

ホッとしたのもあって、涙がドッと溢れた。

No.94 10/03/14 22:49
Saku ( SWdxnb )

>> 93 美咲はそのまま、屋上に連れて行ってくれた。

そして、私が泣き止むまで、何も言わずにハンカチとティッシュを代わる代わる渡してくれた。

「ありがと…」

大分落ちついて、美咲を見たら、
アハハと声を出して笑われた。

「久しぶり、こんな泣き腫らした顔みるの!アハハ」

鏡を渡されて見ると、
目も鼻も頬も真っ赤で、グショグショ…酷い顔をしていた。

その時チャイムが響いた。

「4時限目サボって、加世の話し聞こうかな」

美咲はニッコリ微笑んだ。

No.95 10/03/15 21:28
Saku ( SWdxnb )

>> 94 授業をサボるなんて生まれて初めてだったけど、
罪悪感は無かった。
ーーというのも、4時限目は担任の授業だったからというのもある…。

美咲には、中間テスト後に担任に呼ばれた事から、さっき言われた事まで話した。

聞き終えた美咲は、不機嫌な顔をして

「カスだね、加世の担任」

と言いきった。

「フフ…」

それが気持ち良くて、私は笑ってしまった。

No.96 10/03/15 22:01
Saku ( SWdxnb )

>> 95 でも美咲はまだ怒っていた。

「バカな大人が居るもんだね。どんな人生過ごしたら、そんな偏った考えになるんだか!
どうせ全然モテなくて、彼女もできない、ロリコン、マザコン男だったよ!
自分より弱い者には強気で、ホント、蛆むし以下!」

その口調は激しくて、まるで、自分におきた事の様に怒っていた。

No.97 10/03/16 01:27
Saku ( SWdxnb )

>> 96 風が美咲の髪をフワリとなびかせたと同時に、振り向いたその表情は鋭く、ドキリとする程美しかった。

「加世、世間にはいろんな人がいるよ。
大人も、先生なんて呼ばれる人達も、中を開けばウンザリな奴だったりするの。
だから、ちゃんと自分を強く持ちなよ。
くだらない大人に負かされないように」

昔感じた、美咲の人間不信を思い出した。

No.98 10/03/16 01:42
Saku ( SWdxnb )

>> 97 美咲はきっと、人間関係で傷ついた過去があるのだろう…

「美咲は、誰かに傷つけられた事があるの?」

美咲はフッと力を抜くように息を吐くと、いつものにこやかな表情に変わった。

「そりゃいーっぱいあるよ、大体が男関係だけどね」

そう言って、ニッと笑った。

No.99 10/03/16 13:24
Saku ( SWdxnb )

>> 98 それから美咲は、敦史と順調かと聞いてきた。

私が日曜日デートで、着て行く服を買おうか考えていると話したら、

「一緒に買いに行こうよ!選んであげる」

と心強い事を言ってくれて、金曜日の放課後に買物に行く約束をした。


結局、美咲の傷に触れる事は出来なかった…

No.100 10/03/17 12:08
Saku ( SWdxnb )

>> 99 美咲とデートの話しで盛り上がっていたら、またチャイムがなって、4時限目が終了した。

あ~、サボっちゃった…

そう改めて感じたら、先生から言われたことも思い出して、ちょっぴり落ち込んだ。

そんな私に気付いた美咲が
「お弁当ここに持ってきてあげる」

私が机脇の袋にあると言うと、

「待ってて」

と、笑顔で屋上を去っていった。

  • << 101 校内の賑やかな声が遠くから聞こえる。 授業中、私が居なくて先生は何と思っただろう… だけど先生に何を言われようと、私は敦史と別れたくはないーー その気持ちだけは明確だった。 その時、屋上のドアが開いて、お弁当を持ってーー 「……」 やってきたのは ーー敦史だった。 笑顔のない、怒っている様な顔で近づいてくる。 私は妙にドキドキして立ち上がった。
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