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🔥理沙の夫婦生活奮闘記😤パート1️⃣😸ニャン

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レス481 HIT数 49743 あ+ あ-

Saku( SWdxnb )
10/05/18 22:44(更新日時)

誰にでも、たった一人、
忘れられない人が居るハズ…


私にとって、彼は、
かけがえのない
大切な人。


淡くて、霞んでしまいそうな日々は、
キラキラ輝いた思い出の日々でもあったー

No.1259632 10/02/28 00:51(スレ作成日時)

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No.251 10/04/15 22:43
Saku ( SWdxnb )

>> 250 美咲は陽気な空気も一緒に連れ去り、
私と陽介さんの間には、静かな空気が流れた。

「取ろうか?」

「はい・・・」

陽介さんは、追加で注文したサラダを
取り分けようとお皿を手にした。


「美咲に話してないんだ」

目線を落としたまま言った。
私も、同じくサラダに目線を落としていた。

「美咲に傷ついてほしくないんです」

「――」

陽介さんは取り分けてくれたサラダを
私の前に置いた。

No.252 10/04/15 22:56
Saku ( SWdxnb )

>> 251 そのサラダに手をつけることなく、
私は陽介さんを見た。

「美咲が本気なの分かるから・・・。
まだ16歳だし、陽介さんにしたら、子どもかもしれないけど、
美咲は陽介さんの事、本当に好きなんです」

「子どもなんて思った事ないよ。
逆に未来ある美咲には、俺は相応しくないと思ってる」

「だから、他の人とも?」

「それも含めて、美咲には不釣合いだろ」

陽介さんは、自虐的に小さく笑った。

「俺も同じ・・・
美咲を傷つけられないから、
加世子ちゃんと同じ選択しか出来ない」

黙ってる――ってこと・・・?


その時、美咲が戻ってきた。

「なぁに、何話してたの?」

にこやかな美咲に
場は一気に明るくなり、陽介さんは微笑み、

「加世子ちゃんに、網の仕掛け場所聞いてたの」

と、美咲のイスを引いて向かい入れた。

No.253 10/04/16 21:19
Saku ( SWdxnb )

>> 252 美咲に真実を言うか、黙っているべきか・・・
答えは簡単なようで、本当に難しい。

どちらが、美咲を傷つけないのだろう?・・・

私なら?
と置きかえて考えても、
答えは見つけられずにいた。


時間がちょうど、21時をちょっと過ぎた頃、
私たちはお店を出た。

「加世子ちゃん家まで送るね」

そう言う陽介さんに

「あの、駅まででいいです」

と答えた。

No.254 10/04/16 21:28
Saku ( SWdxnb )

>> 253 ルームミラー越しの陽介さんの無言の眼差しに

「待ち合わせしているので」

と答えた。

「えー、彼と?」

美咲は笑顔で振り向いて聞いてきた。

「うん」

「へぇ、加世ぉ、毎日会えてていいなー」

美咲は最後の方の言葉を陽介さんに向けて
言っていた。

陽介さんは、ただ微笑んで、ハンドルを握っていた。

No.255 10/04/16 21:47
Saku ( SWdxnb )

>> 254 21時半少し前に駅に着いたけど、敦史はまだ居なかった。

私は車を降りて、開いた助手席の窓から中を見た。

「じゃあね加世、彼によろしくね」

「うん。
ーー今日もご馳走様でした」

私は奥の陽介さんに小さく頭を下げた。

「待ち合わせ時間、何時?」

「21時半です」

「まだ来てないね」

「バイト先からなんで、少し遅れるかもしれません」

「大丈夫?」

「はい」

私は笑顔で答え、別れの挨拶を交わすと、
陽介さんは車をゆっくりと発進させた。

No.256 10/04/16 21:58
Saku ( SWdxnb )

>> 255 ロータリーを抜けて行く車を手を振って見送っていると、
弧を描くように車はまたロータリーの入口から入ってきて、私のすぐ近くに止まった。

そして、助手席のドアが開いて、美咲が降りてやってきた。

「陽ちゃんがね、心配だから、彼が来るまで待ってるって。
寒いし、車の中で待ってなよ」

「ううん、平気。
きっともうすぐ来るから」

No.257 10/04/16 23:29
Saku ( SWdxnb )

>> 256 美咲は陽介さんの元へ戻っていったけど、
車はエンジンをつけたまま止まっていた。

携帯に敦史からの着信はない。

年末でクリスマスの夜だからか、
酔っ払った人たちが陽気に通りすぎていき、
遠巻きにからかわれたりした。
その時、陽介さんが追い払うようにクラクションを鳴らしてくれた。

私が運転席に向かって頭を下げると、
暗い車内で、ほんのりとタバコにつけたであろう火が灯った。

そして、30分経ったころ、
自転車に乗った敦史が
猛スピードでやってきた。

「ゴメン!加世」

No.258 10/04/16 23:51
Saku ( SWdxnb )

>> 257 息を切らしている敦史の額は汗で濡れていた。

「最後の最後にオーダーが入って・・・ほんとにゴメン!」

「ううん」

私はハンカチを出して敦史に渡した。
敦史はニコッと笑んで受け取ると、額の汗を拭いた。

何だか、たまらなく愛しい気持ちで敦史を見つめていた。


「じゃあ、行きますか」

息が整った敦史に言われ、私が頷いたとき、
陽介さんがタバコを片手に運転席から降りてきた。


「待たせた挙句に、今からチャリで送るわけ?」

No.259 10/04/17 00:09
Saku ( SWdxnb )

>> 258 陽介さんに視線を向けた敦史の顔は、
一気に強ばった。

「他人にとやかく言われたくないんだけど」

嫌悪感の漂う言い方だった。


「他人だけどさ――
こんな真冬の夜に、彼女一人で待たせるなんて、
もうやめろよな」


「あんた関係ないだろ?
何でここに居るんだよ」


険悪な空気を察した美咲が、
車から出てきて、間に立った。


「あのね、この人私の彼氏で、
加世を送っていくって言ったんだけど――」

敦史は陽介さんを鋭く見据えたまま、
美咲の話を遮った。


「加世のことも狙ってるわけ?」


「敦史!?」

No.260 10/04/17 00:28
Saku ( SWdxnb )

>> 259 敦史は冷めた視線を美咲に移した。


「あんた、騙されてるよ。
日曜日にそいつ、他の女連れてたから」

沈黙が流れた――

美咲は振り向いて、陽介さんを見た。

陽介さんは顔色を変えずに、
タバコを口に運んだ。


「加世、行くぞ」

敦史は私の手を引っ張り、自転車を押し歩きだした。
美咲のことが気になったけど、
最後まで、その表情を見ることは出来なかった。

No.261 10/04/17 08:47
Saku ( SWdxnb )

>> 260 自転車を押す敦史の後をついて行きながら、私はずっと美咲のことを考えていた。

今頃、陽介さんとどうしてるのだろう…

美咲の気持ちを推し量ると、私の心は沈むばかりだった。


敦史も終止無言のままで、私たちは家の前の公園に着いた。

No.262 10/04/17 10:24
Saku ( SWdxnb )

>> 261 振り向いた敦史の顔に笑顔は無かった。

「友達のこと、気にしてんだろ?」

「…うん。
明日、連絡してみようと思ってる」


敦史は切り替える様に息を吐くと、暫く空を見上げーー、
そして私を見た。


「ーーごめんな」


感情的にならず、冷静に対応してくれる敦史が、うんと大人に見えて、
私はときめきながら首を横に振った。

その後少しの間、敦史は黙っていた。
きっと、敦史も気にしていたんだ……。


「明日、公園で会える?」

「うん。会いたい」


敦史は優しく笑み、自転車にまたがった。

「今日は帰るわ」

「うん。
送ってくれてありがとう」

私たちは笑顔で別れ、
私は敦史が見えなくなるまで見送った。

No.263 10/04/17 10:40
Saku ( SWdxnb )

>> 262 翌日、お昼頃に美咲にメールをした。

『昨日はごめんね。
会って話したいよ。

加世』


何よりも美咲のことが心配だったけど、
私は知っていて黙っていた事を、直接会って、美咲に謝りたかった。


程なくして携帯が鳴った。

『今家だから、来てくれるなら会うよ』

美咲にしたら凄く短いメール。
怒ってるのだろうか?ふさぎ込んでいるのだろうか?

私は色々考えながら、

『今から行くね』

とメールを返信し、準備を始めた。

No.264 10/04/17 12:56
Saku ( SWdxnb )

>> 263 10分程で美咲の家つき、インターフォンを鳴らした。

中から穏やかな美咲のお母さんが出てきた。

「こんにちは」

「加世ちゃん、久しぶりねぇ。いつも美咲と仲良くしてくれて、ありがとう」
と、ニコニコして言った。

「いえ、こちらこそ」

私も笑顔で答えた。

美咲におばさんの面影はあまりない。完全にお父さん似だと以前話していた事があった。
そして、美咲も実のお父さんを病気で亡くしていたんだった…。


「加世、上がって」

おばさんに呼ばれた美咲が玄関を下りずに現れた。
笑顔はなかったけど、いつもと変わらない姿だった。

No.265 10/04/17 13:16
Saku ( SWdxnb )

>> 264 玄関を上がると部屋の中から、美咲のお父さんが出てきた。

「こんにちは」

「こんにちは、おじゃまします」

そう答えた私ににこやかに会釈すると、部屋の中へ戻って行った。

「今日は講義がなくて家に居るの」

そう言うと、美咲は階段を上がりだした。

美咲のお父さんは大学の助教授だと聞いていた。
お父さんとお母さんの雰囲気は穏やかで、よく似ている気がした。


美咲は2階の自分の部屋であろう前で止まった。

「私、美咲の部屋入るの初めてだな」

「そうだった?」

私は頷いた。
今まではいつもリビングで過ごしていたから。

No.266 10/04/17 13:30
Saku ( SWdxnb )

>> 265 中は女の子らしいオシャレな部屋だった。

ところが、部屋に入った美咲は、ドアを内側から2ヶ所施錠した。

その違和感に、掛けられた鍵をぼんやりと見つめてしまった。


「ビックリした?これは防衛策。
親の為にもね…
家に、血の繋がらない男がいるわけだし…私もイイ女だしね」

「でも、お父さんでしょう?」

「正雄さんのこと?
お母さんの夫かもしれないけど、
私にとってはただのおじさんよ」

No.267 10/04/17 14:56
Saku ( SWdxnb )

>> 266 「ところで、加世も陽ちゃんが女と居るところ見たんだよね?」

「うん…。
黙っててごめんね」

「そんなのいいよ。
ねぇ、どんなタイプだった?」

「どんな、って……」

「キレイ系?可愛い系?
スタイルはいい?」

「……」

「歳はどの位だった?どんな服着てた?」

「ゴメン、遠くからちょっと見かけただけだから、分からないよ…」

殺気立っていた美咲はやっと落ち着いた様に、椅子に座った。

「私…勝てそう…?」

No.268 10/04/17 15:44
Saku ( SWdxnb )

>> 267 私はただ美咲を見つめていた。


「加世ーー
私、知ってたよ
陽ちゃんに他に誰かが居るって」

「ーー」

「最初に出会った時、彼女居るのか聞いたら、居ないとは言わなかったし。
私が一方的に夢中になって、付き合ってくれるって言うから…」

「……」

「昨日、あの後もね、結局私何も聞けなかった…
ただ泣いちゃったけどね…
でも泣いている私を陽ちゃんは一晩中抱きしめてくれてた」

「……」

「陽ちゃんはね、優しいの。優し過ぎるの。
選択権は私にあるのに、主導権は陽ちゃんなんて、やっぱりいびつな恋愛なのかもね」

No.269 10/04/17 21:23
Saku ( SWdxnb )

>> 268 美咲の家を後にしてから、池を囲む公園に来た。

太陽に照らされキラキラと輝く水面をぼんやり眺めながら、最後に言った美咲の言葉を思いだしていた。

「陽ちゃんが私を受け入れてくれる限り、
今の関係を崩したくないの。
陽ちゃんを失いたくないから」


複雑で曖昧な状況を生み出しているのは、陽介さんだ。

でも美咲の言う通り、陽介さんが優し過ぎるが故の関係…
美咲がそれでいいと言う限り、二人の関係を否定出来ない気がした。


「あれー加世、もう来てたの?」

振り向くと、自転車を降りた敦史が、爽やかに笑っていた。

No.270 10/04/17 21:37
Saku ( SWdxnb )

>> 269 「先に着いて、加世を待ってるつもりだったのに」

敦史はそう言いながら、ベンチの私の隣に座った。

「お疲れさま。はい」

私は、来る前に自販機で買っておいた
ホットのレモンティを渡した。

「おっ、サンキュ。俺これ好き」

「知ってたよ」

一緒に居る中で、敦史がよく選ぶのを見ていた。

「加世は、いい嫁さんになりますな」

敦史がお爺さん口調で言ったので、
私も真似て、

「ほほほ、そりゃそうですとも」

とお婆さん口調で答えた。

No.271 10/04/17 21:55
Saku ( SWdxnb )

>> 270 「加世は誰と結婚するんかのぉ?」

お爺さん口調の敦史の言葉を、
私はまともに受けてしまい、ポカンと敦史の顔を見つめた。
そんな私をみて敦史はニヤリと笑み、

「薄井加世子になりますかの?」

と敦史の声で言った。

「――」

私は相変わらず言葉が出なくて、
ただ、顔が熱くなるのが分かった。

「いつか」

その一言で、私は力を抜いて、
微笑んで敦史を見た。

「喜んで」

「ズッキューン!」

敦史は胸を撃たれたという
リアクションをして、
その後私たちは声を出して笑いあった。

No.272 10/04/17 22:17
Saku ( SWdxnb )

>> 271 「そうだ・・・」

敦史はズボンのポケットから
プレゼントしたキーホルダーを出した。

「バイトで使うバイクの鍵つけてんの。
これ、いいよな」

敦史はそういうと、頭の上で光にかざした。

すると、キーホルダーの中のマンタが虹色に輝き、
まるで、空を飛ぶアゲハチョウのようにさえ見えた。

「気に入ってんだ。ほんと、サンキュな」

「うん。気に入ってもらえて良かった」

敦史はそのまま私を見て、

「友達と話した?」

と聞いてきた。

No.273 10/04/17 22:51
Saku ( SWdxnb )

>> 272 「さっき、家に行って会ってきた」

美咲も他の女性の存在を知っていたということ、
それでも、今の関係を継続していきたいと話していたと、敦史に伝えた。

「何なんだよな、あの男は」

「美咲は、優しすぎるんだって言ってた」

「女はそうなの?俺なんか、ただの詐欺師にしか見えないけど」

敦史は少し苛ついているようだった。

「あーあ!別れてやりゃいいんだよ、後腐れなく!
俺ならそうするね、別れる時は、ハッキリ言うから」

「嫌だよ」

私は思わず、敦史の手を握っていた。

敦史は私の顔を見て、フゥーと息を吐くと
小さく微笑んだ。

「さっきのプロポーズ忘れたの?」

「・・・」

No.274 10/04/17 23:10
Saku ( SWdxnb )

>> 273 「冗談じゃなく、本気で言ったの」

「・・・」

私は敦史の顔を見つめるしかできなかった。
敦史も真っ直ぐに見つめ返していた。

「たまらなく好きなんだけど」

私は目を合わせたまま、小さく頷いた。

「キスしていい?」

私は、同じようにゆっくり頷いた。

敦史は私の頬に手をあて、唇を合わせた。

明るい日中に、誰に見られているか分からない――

でも私は、敦史との長い長いキスに、
心も体も溶け入るような幸せを感じていた。

No.275 10/04/17 23:34
Saku ( SWdxnb )

>> 274 敦史とはキスだけで、それ以上は進むことはなかったけど、
私たちの関係は、とても順調だった。

前に美咲が言った「経験豊富」ということが、
一切気にならなかったのも、敦史が私を好きでいてくれる、って
感じることが出来たからだと思う。


高2になり、私たちはクラスが離れたけど、
敦史はバイト、私は勉強に励みながら、
お互いに時間を作るように努めて会っていた。


今思えば、一番幸せだった時期だった――
私たちは夢の中を生きていたのかもしれない。


少しずつ、見えない所で歯車が狂いだしたのは、
高2の終わり――


敦史が、担任を――
自分のお母さんと付き合っていた先生を
学校で殴る事件を起こしてからだった。

No.276 10/04/18 00:25
Saku ( SWdxnb )

>> 275 ホームルームが終わったばかりの放課後、
教室前の廊下で、敦史が担任を殴り、
担任は倒れて、口の中を切ったのか、血を流していたという――

その話はあっという間に校内を駆け巡り、
私の耳にも入ってきた。

そのまま職員室に連れて行かれたという敦史に
どうしても会いたくて、
私は放課後もずっと、職員室が見える
職員玄関辺りをウロウロしていた。

校内に生徒の声がしなくなった頃、
職員入口に、細くて美しい女性がやってきた。

どこかで見たことのあるその人の横顔を見つめていると、
フイに顔を上げた女性と目が合った。
しかし、その人は先を急ぐように私の前を通り過ぎ、
職員室のドアを叩いて、中へ入っていった。

その女性がつけていたきつい香水の残り香が漂う中で、
私は思い出していた。

以前、担任の車の助手席に乗っていた人――
敦史のお母さん。

No.277 10/04/18 00:36
Saku ( SWdxnb )

>> 276 敦史のお母さんが中に消えてから、10分程経ったとき、
職員室のドアが開き、敦史とお母さんが出てきて、
中に向かって、お母さんは深々と頭を下げ、敦史の頭も押えるようにした。

ドアを閉めると、敦史はお母さんの手を振り払い、

「カバン教室だから」

と言って、階段を上がっていった。

私は別の階段を足早に駆け上がって、
敦史の教室の前まで行った。

すると敦史がやってきて、私を見つけると、
ばつが悪そうに目を伏せた。

「大丈夫なの?」

「俺はぜんぜんっ」

手をフラフラさせて中へ入っていった。

No.278 10/04/18 00:51
Saku ( SWdxnb )

>> 277 「何があったの?」

敦史はカバンの中に机周辺の私物を詰め込んでいた。

「一週間停学処分だって」

「そうなの?」

「一足早い春休み~」

敦史はふざけて歌うように言った。
私は泣きそうな気持ちで、敦史の顔を見つめた。
それに気づいた敦史は、小さく息を吐き

「ごめん」

と私の頭を撫でた。


「アイツ、母親を捨てたんだ」

「・・・」

「ただそれだけの事」

「・・・」

「嫌だけど、今日は親と帰るしかないんだわ」

「うん」

「ごめんな加世。
・・・マジ、ごめんな」

力ない敦史の言葉に、
私はただ首を振るしか出来なかった。

そして、敦史はお母さんと一緒に帰っていった。

  • << 283 敦史の停学処分が明ける日に、春休みに入った。 『一足早い春休み』という言葉通りだったけど、 敦史はその一週間、バイトも外出も禁止されていた。 きっと、メールや電話が頻繁に掛かってくるだろう―― そう考えていたけど、私からのメールに返信してくるだけで、 敦史からは、連絡が無かった。 一週間、私は不安と憂鬱な気持ちで過ごし、 春休みに入り、敦史の処分の明けた今日、 池の公園で待ち合わせすることになった。 公園に敦史は先に着いていて、 ベンチに座って、ぼんやりと池を眺めていた。

No.279 10/04/18 01:27
Saku ( SWdxnb )

愰読者の皆様へ愰

初めまして作者です溿

何よりも…
長々と、誤字、脱字も多く、下手で拙い文章で本当に申し訳ありません。


これまではピュアな内容でしたが、
今後、過激な内容、描写も増えてきますので、前もってお知らせいたします。

嫌だと思われる方、申し訳ありません。

楽しみにして下さってる方、いますか?
居てくれたら、嬉しいです。感謝です昀

今後も宜しくお願いいたします溿


作者より

No.280 10/04/18 01:50
匿名 ( 20代 ♀ 70sei )

いつも楽しみにみてます☺✨

No.281 10/04/18 06:23
匿名 ( 30代 ♀ f1vO )

楽しみにしています🎵

No.282 10/04/18 12:44
Saku ( SWdxnb )

一括で申し訳ありません。

2名の匿名様、コメントありがとうございます。

とても励みになります昀

夜になりますが、続きを書いていきます。

これからも宜しくお願いします溿

No.283 10/04/18 20:45
Saku ( SWdxnb )

>> 278 「何があったの?」 敦史はカバンの中に机周辺の私物を詰め込んでいた。 「一週間停学処分だって」 「そうなの?」 「一足早い春休み~」… 敦史の停学処分が明ける日に、春休みに入った。

『一足早い春休み』という言葉通りだったけど、
敦史はその一週間、バイトも外出も禁止されていた。

きっと、メールや電話が頻繁に掛かってくるだろう――
そう考えていたけど、私からのメールに返信してくるだけで、
敦史からは、連絡が無かった。

一週間、私は不安と憂鬱な気持ちで過ごし、
春休みに入り、敦史の処分の明けた今日、
池の公園で待ち合わせすることになった。


公園に敦史は先に着いていて、
ベンチに座って、ぼんやりと池を眺めていた。

No.284 10/04/18 21:18
Saku ( SWdxnb )

>> 283 姿を見つけても、何だか名前を呼ぶのを躊躇した。

すると、フイに敦史が振り向いて、私を見つけると、
しばらく見つめ、そして、優しく微笑んだ。

「久しぶり」

私は妙に緊張しながら、敦史の隣に座った。

「うん。久しぶり」

そう言った敦史は、私の手を取って握った。
私はその繋いだ手を見て、涙が出てきた。

「・・・一週間、長かったぁ」

私は泣きながらも、敦史の顔を見て
いっぱいいっぱいの気持ちを口に出した。

「もう、嫌いになった?」

敦史は首を大きく横に振った。

「でも、たった一週間・・・私、敦史が遠くに
・・・遠くに、行っちゃったみたいに感じて――」

私の言葉を遮るように、敦史は私を抱きしめた。
今までにない位、力いっぱい強く――

「好きだよ。大好きだ――
でも・・・」

「――」

「俺は加世に相応しくないのかもしれない」

No.285 10/04/18 22:03
Saku ( SWdxnb )

>> 284 私は敦史の胸を押し離した。

「どうして、そんなこと言うの?」

敦史は苦しい表情で私を見つめながら、
黙っていた。

「相応しいかなんて、私が決めるよ」

「――」

「好きなら摑まえててよ!
大好きなら摑まえてなよ!
そんな――
そんな弱い気持ちなら、私から離れていくから!」

私は涙でぐちゃぐちゃなはずの顔を上げて、笑ってみせた。

敦史は一瞬泣きそうになった顔を伏せて、
声を出して笑った。

「加世ってSっ気あるよな?」

「エ、ス?」

「ハハハ、いつか試すのが楽しみだよ。ハハハ」

そう言って、悩みを吹き飛ばすように、
いつまでも笑っていた。

No.286 10/04/18 23:07
Saku ( SWdxnb )

>> 285 この時、敦史の悩みに寄り添えてあげられてたら?
何か、変わっていただろうか?

この時の私は何も知らなくて、平和で、敦史にとって清涼剤で――

敦史のことが大好きで、敦史とずっと一緒にいたくて、
敦史との未来を、ほのかに夢見始めていた
真面目と言われるただの女の子だった。


その後、3月は小さな変化が続いた。

中学校を卒業した洋史君が、家を出て住み込みで働くことになり、

陽介さんが、東京本社へ戻ることになった。

そして、私は17歳になった――。

No.287 10/04/19 00:15
Saku ( SWdxnb )

>> 286 17歳の誕生日に敦史は、
私が欲しいと言った、曲目がTHUNAMIのオルゴールをプレゼントしてくれた。

「こんなに安いのでいいの?」

雑貨店で千円しないくらい額だった。

「いいの。大切にするね。ありがと」

そう言ったのは嘘ではなく、
オルゴールは今も私の部屋にある。


洋史くんが働くことになったのは、地元の建築業だということだった。
地元だから通うことも勿論できるけど、住み込みというのは
彼の第一条件だったそうだ。
敦史は高校卒業するまでの1年間、
お母さんと二人で暮らすことになった。


美咲は、陽介さんを追いかけるように、
以前から田神さんに頼まれていたカメラテストを
東京まで受けに行った。

するとティーンズ向け雑誌のモデルに即決し、
その後美咲は、地元と東京を行き来する日々を過ごす事になった。


そして高校3年生となった4月――
私は敦史とも美咲とも離れ、
進学クラスへ進んだ。

No.288 10/04/19 19:28
Saku ( SWdxnb )

>> 287 進学クラスは、受験に向けて勉強優先のクラス。

授業中も張り詰めた空気で、ぼんやり窓の外を眺めている人なんていなかった。

私はクラスの中ではマイペースだったと思う。
何よりも敦史との時間を最優先させ、敦史がバイト中は勉強するリズムで、日々を過ごしていた。

そして新たな出会いもあった。

私はクラスの副委員に選ばれ、委員長に選ばれたのが佐藤利夫くんーー
いつも学年トップの秀才だった。

No.289 10/04/19 19:55
Saku ( SWdxnb )

>> 288 佐藤君は穏やかで、みんなからも好かれていた。

佐藤君位の成績なら、東京の有名大学志望かとおもいきや、
お父さんが長期入院中で、奨学金付きの地元の大学に行くつもりだと話していた。

クラスで、みんながピリピリする中、佐藤君と話す時だけ、和やかな気持ちになれた。


ある放課後、私たちはクラス委員の仕事で、教室でプリント折りの作業をしていた。

「真中は、どこの大学を目指してるの?」


「今のところ、佐藤君と同じ」

地元の大学は私の両親の出身大学でもあり、私も何となく、第一志望にしていた。

「へぇ、一緒なんて嬉しいな」

佐藤君は目がなくなる笑顔をみせた。

No.290 10/04/19 21:03
Saku ( SWdxnb )

>> 289 私たちは、プリントを職員室へ持って行った。

佐藤君は色んな事を知っていて、話題豊富で私を飽きさせなかった。

ケラケラ笑いながら教室へ戻って行った時ーー、

「……敦史」

教室の前の壁に寄り掛かり、敦史が顔だけ向けてこちらを見ていた。

佐藤君は教室へ行くと素振りをした。

「うん」

と頷き、私は敦史の元へ笑顔で向かった。

「バイトはぁ?」

「休みだけど」

「そうなんだ。教えてくれたら良かったのに」

「黙ってて、驚かそうと思ったのーー
靴箱の前で待ってても、来ないし」

「委員の仕事だったの」

「……」

No.291 10/04/19 21:27
Saku ( SWdxnb )

>> 290 その時、佐藤君が鞄を持って出てきた。

「真中…大丈夫?」

「うん。お疲れ様」

「うん。じゃ、また明日な」


佐藤君は何度か振り返りながら、帰って行った。

「俺たち、付き合ってんですけどー!」

敦史は佐藤君が去った方に向かって大声で言った。

「敦史?!」

「アイツ何だよ?」

「佐藤君?同じクラスで、一緒に委員してるの」

「そういうんじゃないわ!」

「ーー」

敦史は苛ついた眼差しを私に向けた。

「加世のそういう、脳天気なところ、たまにスゲームカつくよ!」

「!ーー」

敦史はそのまま私を追いて去って行った。
その先で何かを叩きつける物音が響いたーー。

No.292 10/04/20 19:08
Saku ( SWdxnb )

>> 291 追いかけたかった――

でも私は、その場にヘタヘターと座り込んでしまった。

涙は出なかった。
あまりのショックで、何も考えられない感じだった。

しばらくたって私は、
鞄を持ち、靴を履き替え、一人で正門を出て行ったけど、
その間ずっと、ぼんやりとしたままだった。

すると――

No.293 10/04/20 19:38
Saku ( SWdxnb )

>> 292 歩道の先に、敦史が立っていた。

私は敦史の姿を視界に入れながら、ただ、歩いていた。
そして、敦史の前をそのまま歩いていった。

次の瞬間、後ろから腕をつかまれた。

振り向くと、敦史は
眉間にしわを寄せて私を見ていた。

ぼんやり、見てしまう――
まだ、私の思考は止まっていた。

敦史はギューと目をつぶって、
大きく息を吐いた。

「・・・ごめん」

その一言を吐き出すために、
大きなため息?

思考が動き出した私の目からは、
涙がこぼれた。

No.294 10/04/20 19:57
Saku ( SWdxnb )

>> 293 そして、涙目で敦史を睨みつけ、
つかまれた腕を振り払って歩き出した。

「加世?」

私は歩みを止めなかった。

「加世!」

追いかけてきた敦史に
又腕をつかまれた。

「キライ!」

「え?」

「敦史なんてキライ!」

私はまた歩きだした。

「ええ?なんでー?」

敦史は素っ頓狂な声を出した。

私はちょっと笑ってしまい、走り出した。

「えっ?加世、待てって!待ってよ!」

「イヤイヤイヤ―!」

そのまま、追いかけっこのようになった。

No.295 10/04/20 20:31
Saku ( SWdxnb )

>> 294 敦史も楽しんでるのか、追いつかないペースで
私たちは池の公園に着いた。

私は立ち止まり、肩で息をしながら、
敦史を見た。
敦史は涼しい顔して、笑っていた。

「いいねぇ、たまの運動」

「はぁ、はぁ・・・」

「ハハハ」

敦史は無邪気に笑った。
この笑顔、久しぶりだ。

「最近の敦史、ヘンだよ」

「・・・」

3年生になって、
苛ついてることが多いように見えた。

「どんな時も、私、変わらない自信あるよ」

「――」

「敦史を好きでいる自信あるよ」

「――」

「だから、私を信じてほしい」

No.296 10/04/20 21:26
Saku ( SWdxnb )

>> 295 敦史は私の腕をとり、木陰に連れて行くと、
そのまま抱きしめた。

「信じてるよ。
――俺がバカなだけ」

敦史は私の肩に頭を埋めて、
首を振るような仕草をした。

「加世・・・
二人で居るときの、俺を信じて」

敦史は囁くように言った。

「・・・うん」

No.297 10/04/20 22:03
Saku ( SWdxnb )

>> 296 「もう、最後にするから・・・
こういうテンション、今日で最後」

疲れている様な、覇気のない声だった。

「このまま眠りたい・・・
加世と一緒に・・・
ここがベットだったら良かったのに・・・」

そう言われてもイヤラシくは感じなくて、
何だか切ない気持ちになって、敦史を抱きしめた。

しばらくそのまま、抱きしめ合ったまま、
お互いの息と体温を感じていた。


それ以降、こんなに元気のない敦史を見ることはなかった。

ただ、二人で居るときの敦史は私に寄りかかったり、
まるで、子犬のように、密接する事が多くなっていった。

No.298 10/04/21 12:01
Saku ( SWdxnb )

>> 297 夏休み前のある日、両親の知り合いの訃報が届き、父母は揃って、通夜から参列する為、泊まりで仙台へ行くことになった。

私一人を置いていくのを、母親は酷く心配したけど、

「殆ど学校だし、一人になるのは夜だけでしょ?
それにマンタもいるから大丈夫」

と私は答えた。


私は敦史に話した。

No.299 10/04/21 12:28
Saku ( SWdxnb )

>> 298 「それって、誘ってる?」

屋上で髪をなびかせながら敦史は聞いた。

「ないよ!」

「えー、加世、夜一人じゃ危ないよー」

「大丈夫、マンタ居るもん」

「マンタは犬じゃん。守ってもらえないよー」

「知らない人には吠えて飛び掛かるから大丈夫」

「……」

敦史は打つ手無しで黙ってしまった。

「…じゃあさ、期末テストの勉強しにくる?」

敦史はうんうんと頷き、

「行く行く!」

と満面の笑みで答えた。

No.300 10/04/21 19:50
Saku ( SWdxnb )

>> 299 当日、敦史はバイトを終えてから夜の11時近くにやって来た。

玄関の中に入って来たTシャツにジーンズ姿の敦史を見て、やたらとドキドキした。

「犬は?」

「もう寝てる」

「ダメじゃん」

そう言って笑った敦史を、私は2階の自分の部屋へ招き入れた。


「潜入」

と、部屋の中に足を踏み入れた敦史は、
学習机の上を見て、

「本当に勉強してた」

と笑った。

  • << 301 私は1階から、敦史の為に用意しておいたおにぎりと野菜スープを運んできた。 「これ加世が作ったの?」 「うん。」 「スゲー嬉しい」 敦史はそう言って食べはじめた。 「私はあと少し、本当に勉強するね」 私が笑むと、敦史も横目でニヤリと笑んだ。
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