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レス481 HIT数 49738 あ+ あ-

Saku( SWdxnb )
10/05/18 22:44(更新日時)

誰にでも、たった一人、
忘れられない人が居るハズ…


私にとって、彼は、
かけがえのない
大切な人。


淡くて、霞んでしまいそうな日々は、
キラキラ輝いた思い出の日々でもあったー

No.1259632 10/02/28 00:51(スレ作成日時)

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No.101 10/03/17 12:14
Saku ( SWdxnb )

>> 100 校内の賑やかな声が遠くから聞こえる。

授業中、私が居なくて先生は何と思っただろう…

だけど先生に何を言われようと、私は敦史と別れたくはないーー
その気持ちだけは明確だった。

その時、屋上のドアが開いて、お弁当を持ってーー

「……」

やってきたのは
ーー敦史だった。

笑顔のない、怒っている様な顔で近づいてくる。

私は妙にドキドキして立ち上がった。

No.102 10/03/17 12:20
Saku ( SWdxnb )

>> 101 やって来るなり、敦史は私の首に腕を回して、強く引き寄せた。

「突然消えて、心配すっだろ!」

「…ゴメン」

敦史は腕を回したまま私の首元に顔を埋め、そのまましばらく黙っていた。


「…担任に何言われたか、くわしく分かんねぇけど…」

美咲が伝えたのは想像できた。


「加世が俺を思ってくれてる間は、離れないから」

No.103 10/03/17 12:33
Saku ( SWdxnb )

>> 102 「…うん」

顔をあげた敦史の目は相変わらずキレイだったけど、物凄く寂し気だった…。
こっちまで寂しくなって、私から敦史の胸に頭を寄せた。

「…私で、いいの?」

聞かなくていい質問だと思っていた。
でも正直、付き合った初めからずっと、心にある不安な気持ちだった。

「バカか…」

敦史は手の平でポンッと私の頭を叩いて、そのままソッと抱きしめてくれた。

「加世じゃなきゃダメだから」

優しい声だったーー。

No.104 10/03/17 18:12
Saku ( SWdxnb )

>> 103 この時の私は何も知らなかったーー

一番大切な人、
一番の親友が抱えている苦しみ、悩みをーー


近くに居ながら、
ずっと知らずに、
ずっと気付けずにーー


「平和」
と言われたまんまに
呑気なまでに高校生活を過ごしていたんだ…

No.105 10/03/17 22:20
Saku ( SWdxnb )

>> 104 金曜日の放課後になったーー

以前、美咲は
「将来の夢はアパレル関係で、スタイリストになれたら嬉しい」
と話してくれたことがある。

ファッション雑誌をよく見ていたし、実際、制服さえもオシャレに着こなしていた。

だから私は安心して美咲の後について、初めて知ったお店に入った。

「加世はやっぱり『ナチュラル&フェミニン』な感じかな。
色は白基準の、パステル系だね。
予算は…2万?!いらないから。
あっ、じゃあブーツも買おうよ」

と言いながら、パッパとコーディネートしてくれた。

No.106 10/03/17 22:45
Saku ( SWdxnb )

>> 105 服を着て試着室のカーテンを開けるーー

「うん、いい感じ」

美咲は満足気に頷いた。

「でも、この胸元、ちょっと寒いかも…」

とっても可愛いニットのアンサンブルだったけど、下のキャミが胸元ギリギリで恥ずかしいのが本音だった。

「オシャレは我慢なの!
デートなんだから、寒いなんて言ってない!」

「でもこのスカートも、膝上過ぎない?」

下半身に自信の無い私にとって未知の丈だった…。

「全然!ブーツ履くしーーあっ、当日はタイツは無し!生足ね」

「えっ!!」

「もーう。ホントに可愛いって、ホラ、鏡よく見てごらん」

肩を回され、鏡に映る自分を見るーー

ホントに…
馬子にも衣装…

No.107 10/03/17 23:00
Saku ( SWdxnb )

>> 106 コートにあった茶色のロングブーツも選んでくれて、予算半分位でまとめてくれた。
私は大満足で、

「美咲、絶対スタイリストになりなよ!
ならなきゃ、勿体ないよ!」

と、美咲に真剣な顔でせまった。

「ハハハ、ありがとっ」

真顔の私が笑えたみたいで、いつまでも、ハハハと笑いながら、
クリスマスで色づいた街を歩いていた。

「あれ、美咲?」

その声に振り向くと、背の高い洒落た感じの男の人が立っていた。

No.108 10/03/17 23:22
Saku ( SWdxnb )

>> 107 「健ちゃーん!」

健ちゃんと呼ばれたその人は、にこやかに私たちの前にやってきた。

「帰ってきてたんだー」

美咲が言って、二人は話しはじめた。

「うん、昨日ね。ちょうど美咲に連絡しようと思ってたんだぜ」

「またまた~」

「ホントだって。前話した仕事の件でさ」

「あ~…」

言葉尻が小さくなった美咲は私を見た。

「加世、こちら田神健二くん。地元はここなんだけど、今は東京にいるの」

「どうも初めまして」

田神さんはニッコリと笑んだ。

「どうも…」

No.109 10/03/18 00:29
Saku ( SWdxnb )

>> 108 「健ちゃん、この子は親友の加世」

「へぇー、美咲にも親友が居るんだ」

「それ、どういう意味?」

「そのままの意味」

田神さんはニカッと笑って、美咲はその腕をバンバンと叩いた。
仲の良い二人のやり取りを見て、私も微笑んでいた。

「な、夕飯一緒に食わない?ちょうどこれから、陽介と会うし」

No.110 10/03/18 17:37
Saku ( SWdxnb )

>> 109 美咲の顔が輝いた。

「えっ、陽ちゃんくるの?」

「うん。仕事終わりで来るって言うから時間決めてなかったけどーー
ちょっと連絡してみるわ」

田神さんは私たちから少し離れて携帯で電話をかけた。

「じゃあ、私はここで…」

そう言った私を美咲は驚いた顔で見た。

No.111 10/03/18 17:43
Saku ( SWdxnb )

>> 110 「何で?加世も一緒に決まってるでしょ」

「だって家に何も言ってこなかったし…」

「じゃあ電話しなよ。私とご飯食べて帰るって」

「でも…」

初めて会った年上の男の人と食事するのに、気が引けた。

美咲はそんな私の気持ちを察してか

「悪い人たちじゃないから安心しなよ。
それに、今から来る陽ちゃんて、私が今付き合ってる人なの。加世にも紹介したいと思っていたし」

と、ウインクした。
美咲の彼氏…紹介されるの初めて…
会ってみたい。

私は携帯で自宅に電話をかけた。

「…あ、お母さん?加世子。今、美咲と一緒なんだけど、今晩、美咲とご飯食べて帰ってもいいかな?…うん…」

美咲が『代われ』とジェスチャーをしたので、私は携帯を渡した。

No.112 10/03/18 17:46
Saku ( SWdxnb )

>> 111 「こんにちは、美咲ですーーはい、元気です
ーーイエ、うちじゃなく外でーーはい、ーーはい、ありがとうございます、また遊びに行きます。はーい、じゃ失礼します」

電話を切った美咲は、ニッと笑って、Vサインをした。
うちの両親は私同様に美咲を信頼している。
でも男の人も一緒と知ったら反対したに違いない。

その時、田神さんが携帯をジーンズのポケットにしまいながら戻ってきた。

「陽介、6時半には会社出れるって。店も飯食える所に代えたから、先に行ってようぜ」

No.113 10/03/18 17:55
Saku ( SWdxnb )

>> 112 田神さんに連れて行かれた先は、ビルに入った日本料理店だった。

高校生だけでは、まず行かないし、行けない…

洗練された明るい店内を抜け、個室に通された時には畏縮しきっていた。

「オシャレだねー。健ちゃんよく来るの?」

美咲ははしゃいでいた。

No.114 10/03/18 18:01
Saku ( SWdxnb )

>> 113 「ここは陽介だよ。さっき言われたの。制服着た女子高生連れて、暗室はヤバイからなー」

田神さんはそう言って笑うと、座椅子に腰をおろした。

「えー、私連れてきて貰ったことないよー」

美咲は少しすねて、田神さんの前に座った。

「加世ちゃんもいるって話したからかな?
ほら加世ちゃん、立ってないでこっち座りなよ」

そう言われた私は田神さんの隣に座った。

No.115 10/03/18 23:01
Saku ( SWdxnb )

>> 114 美咲と田神さんが雑談している内に、料理が運ばれてきた。

給仕係の人が下がるのと入れ違いに、
スーツ姿の男性が現れて、
その人と一番に目があった私は、ドキッと動きを止めた。

――というのも、その人は、
芸能人ではないかという程の端整な顔立ちで
見るからに人の目を惹く雰囲気を持っていた。

動きを止めている私に、その人は微笑むと、
靴を脱いで、中へ入ってきた。

「おう、お疲れー」

田神さんが声をかける。

「陽ちゃーん!」

美咲は明らかにハイテンションだ。

「どもども、遅れました」

濃紺のコートを脱ぎながら、
控えめに頭を下げて、席に座った。

No.116 10/03/18 23:24
Saku ( SWdxnb )

>> 115 一息ついたその人は、一通り皆の顔を見渡すと、
目の前に座る私に向かって

「鳴海陽介です」

と言って小さく頭を下げた。

「ま、真中加世子です」

私はドギマギと姿勢を正して頭を下げた。

その様子を見ていた田神さんが

「お見合いか!」

と、笑いながら突っ込みをいれた。
美咲も陽介さんの腕に触れながら
ケラケラと笑って

「分かった?彼女が加世」

そう言われた、陽介さんは
笑顔のまま横目で私を見て

「ああ、想像通り」

と言った。

No.117 10/03/18 23:53
Saku ( SWdxnb )

>> 116 陽介さんの食事も運ばれてきて、
田神さんが、仕切るように話し出した。

「俺ビール飲むけど、陽介は?」

「俺いいわ。車で来たし」

「美咲は?飲む?」

「ヤーダ、未成年なんですけど?
ね、加世」

「う、うん」

「飲ませなくていいよ。こいつ弱いから」

そう陽介さんに言われた美咲は
私を見て舌をだした。

「加世ちゃん何飲む?」

「えっと・・・」

私がメニュー表に目を落として迷っていると、

「ウーロンでいいよね。俺も、美咲もな」

陽介さんのスマートなフォローが
気持ちよく感じた。

No.118 10/03/19 00:20
Saku ( SWdxnb )

>> 117 それから、食事をしながら
田神さん、美咲、陽介さんの話しを聞いていた。

田神さんと陽介さんは、二人とも24歳で、
東京の大学で知り合い、卒業後、田神さんはカメラマンのアシスタントに
陽介さんは大手の旅行代理店に就職したそうだ。

陽介さんは今年の春に転勤で、田神さんの地元でもある
この町にやってきたという。

美咲とは、以前、田神さんがモデル探しにナンパしたのが
きっかけで知り合い、夏に陽介さんと会い、
美咲の一目ぼれから付き合ってるそうだ。

8歳年上の彼氏かぁ・・・
私には想像できないけど、並んで座っている
美咲と陽介さんは、とてもお似合いだった。

No.119 10/03/19 00:37
Saku ( SWdxnb )

>> 118 食事も終わり、デザートのフルーツが運ばれてきた。
田神さんは、さっきからずっと目の前の美咲に懇願している。

「だからさ、一度、東京きて、カメラテスト受けてみてって」

「もーう、無理だもん。今は地元離れたくないもん」

なるほど、仕事の話というのは、
美咲にモデルにならないかということか。

白熱する二人を残して、
私はトイレへ向かうために席を立った。

No.120 10/03/19 00:46
Saku ( SWdxnb )

>> 119 玄関近くを歩くと、外でタバコを吸っていた陽介さんに気づかれた。
陽介さんは、タバコを消して、戻ってきた。

「加世子ちゃんって、俺のこと『パパ』って言った子?」

以前、美咲に言ったのを思い出した。

「あ、すみません・・・」

「謝らなくていいけどさ・・・
加世子ちゃんって、可愛いね。男に言い寄られて困るでしょ?」

「ぜ、全然です!それは美咲の方です」

私は心底否定した。

「美咲は別物だから――
俺は、加世子ちゃんみたいな子、タイプなんだけどね」

カァーと顔が熱くなるのが分かった。

「かっ、からかわないでください」

No.121 10/03/19 00:53
Saku ( SWdxnb )

>> 120 「ホント、からかわないであげて」

振り向くと美咲が立っていた。

「加世には、校内1カッコイイ彼氏が居るんだから」

「へぇ・・・」

陽介さんは、意外だね、という顔をしていた。

「加世、気にしないでね、こういう大人も居るって、
免疫作りなね」

「うん・・・私、トイレ行くね」

私は、サッサとトイレへ向かった。

「ねぇ陽ちゃん、今日泊まりたい」

後ろから美咲の声が聞こえてきた。

「いいけど、明日の午後と日曜は仕事だから」

「分かってる」

甘えた美咲の声に、妙にドキドキしてしまった。

No.122 10/03/19 19:45
Saku ( SWdxnb )

>> 121 帰り、私たちはレジを素通りした。

「お会計は?」

私は心配になり美咲の耳元で聞いた。

「陽ちゃんが先に払ったから大丈夫」

さっき、タバコを吸っていたあの時か…

隣にいた田神さんが、私の顔を覗きこみ

「雄介は高給取りだから、気にしなくていいよー」

私は一足先を歩く陽介さんの元に行った。

「あの…ご馳走になってしまって、済みません。ご馳走様でした」

と頭を下げた。

「ハハ、加世子ちゃんは本当にイイ子だね」

そう言って陽介さんは、ポンポンと私の頭を撫でた。

No.123 10/03/19 20:12
Saku ( SWdxnb )

>> 122 田神さんとはその場で別れ、
送ってくれるというので、私は美咲と一緒に陽介さんの車を待っていた。

「さっきの、加世じゃなきゃ、嫉妬してたな」

「え?…」

驚いて隣の美咲を見ると、美咲はニッコリと笑ってこっちを見ていた。

「陽ちゃんって、カッコイイし、気配りが出来て優しいから、モテない訳ないじゃないーー
ついでに言うと、口も上手いし、その気にさせるのも得意だし…
…私みたいな16の小娘、本気で相手してくれてるのかな~って、不安になったりもするんだ」

いつも堂々と自信に満ちて輝いている美咲の口から、
こんな弱気な言葉を聞いたのは初めてだった。

No.124 10/03/19 20:28
Saku ( SWdxnb )

>> 123 「美咲と陽介さん、すごくお似合いだって思ったよ。
隣にいて、16歳だなんて全然見えないし」

「それって、老けてるってこと?」

『ううん、ううん』と慌てて首を振った。

「違くてね…
美咲には自信持ってほしいの…だって、二人並んでる時、本当に素敵だなって思ったから」

美咲は『フフフ』と笑うと、
「ホントに加世ってイイ子だね」

と言って、陽介さんがしたように、私の頭をポンポンと撫でた。

「そうそう、加世に渡すものがあるの…」

そう言って、美咲がバックから取り出したのは、淡いピンク色のグロスだった。

No.125 10/03/19 20:54
Saku ( SWdxnb )

>> 124 「日曜日、今日買った服着て、唇にこれ塗っていきなよ。
キスされちゃうかもしれないよ~」

「えっ!!」

「やっぱり、まだだったか~。
付き合って、10、11ーー3ヶ月でしょ?
そろそろいいんじゃない?
これで、ファーストキス、誘ってみたら」

「エエ!!」

私がただ固まって頬を赤らめていたら、
目の前にグレーのスポーツカーが来て止まった。

No.126 10/03/19 21:22
Saku ( SWdxnb )

>> 125 美咲は助手席に、私は後ろに乗った。

陽介さんが後部座席に置いてあったブランドの袋を取りながら
固まったままの私に気付いた。

「どうかした?」

「イエ…」

美咲は振り向いてニヤリと笑んだ。

「ホレ、早いけどクリスマスプレゼント」

陽介さんは、美咲に袋を渡した。

「えー!本当?!」

「クリスマスは仕事で会えないからなー」

美咲が袋を開けると、中からブランドの財布と香水が出てきた。

「わー、欲しかったやつ!陽ちゃん、ありがとーう!だーいすき!!」

「香水は、ここに来る前に寄ってきて、加世子ちゃんにも」

と、私に別の袋を渡してくれた。

「私は…」

「どれ?」

美咲が袋を取って、中を確認する

「加世子ちゃんのイメージで選んだんだけどね」

「陽ちゃん、センスいいね。
加世、これそんなにキツクない、爽やか系の香だよ。ほら」

美咲があけた蓋を私の顔に寄せるーー
と、爽やかな優しい花の香がした。

「日曜日、これもつけていくといいよ」

美咲はまたニヤリと笑って、香水を私に渡した。

No.127 10/03/19 21:35
Saku ( SWdxnb )

>> 126 自宅向かいの公園で降ろしてもらった。

助手席の窓が下がって美咲が顔を出す。

「加世、日曜日楽しんできなよ」

「うん」

運転席の陽介さんが頭を傾げるように見る。

「どうも、ありがとうございました」

「またね」

陽介さんは微笑み、車をゆっくり発進させた。

見送りながら、気持ちが高揚しているのが分かった。

時間を見ようと携帯を取り出すと、着信ランプが光っていた。

No.128 10/03/19 21:54
Saku ( SWdxnb )

>> 127 敦史からのメールだった。

『バイト終わりー

今、加世、何してる?

俺の予想…

勉強!かな?


明後日、スゲー楽しみ』

思わず、笑みがこぼれた。

着信時間PM9時35分

今はPM9時50分ーー


私は敦史のメモリーを開いて発信した。

No.129 10/03/19 22:05
Saku ( SWdxnb )

>> 128 呼出し音が鳴るーー
胸がドキドキしてきた。

ーカチャー

「ードタドターバタン!
……加世?」

敦史の声を、物音が邪魔をする。

「う、うん…
大丈夫?」

暫くして、その喧騒は無くなって静かになった。

「今、外に出たよーーハァ、もう大丈夫」

「フフフ」

敦史の笑顔が目に浮かんだ。

No.130 10/03/20 01:21
Saku ( SWdxnb )

>> 129 「メール見たよ。ありがとう」

「やっぱり勉強してた?」

「ううん。今日は美咲と一緒にご飯食べてきたの」

「ヘェ…。今は家?」

「家の前の公園。
家に帰る前に、何だか、敦史の声が聞きたくなっちゃって…」

「そんな風に言われたら、原チャリ飛ばして行くよ。
ーーって、もう10時じゃ、加世の親が心配するな」

「…うん」

無性に敦史のことが恋しかった…

No.131 10/03/20 01:52
Saku ( SWdxnb )

>> 130 「…敦史」

「うん?」

敦史の優しい頷きにー
胸がいっぱいになったー

「好きだよ」

「フフ…」

「なぁに?」

「イヤ…。
加世の気持ち、もっと聞かせてよ」

私は、泣けてきそうな気持ちを、一つ一つ言葉にしていったーー

「今、そばに居たい…」

「うん…」

「手を繋いで、ギュッて、してほしいよ…」

「うん…」


「…大好き」

そう言って涙がこぼれた

No.132 10/03/20 19:43
Saku ( SWdxnb )

>> 131 ねぇ美咲ーー
気持ちを伝えてるのに
泣けてくるのは、どうしてなの?

「なぁ加世、空見てみ」

私は涙目のまま、夜空を見あげた。

「月見える?」

「うん」

「真ん丸だな」

「ホント、真ん丸…」

欠けたところのない見事な満月だった。

「離れていても、今、同じもの見てるじゃん、俺たち」

「うん…」

No.133 10/03/20 20:10
Saku ( SWdxnb )

>> 132 同じ月を見ている敦史が、近くにいる様に感じた。

「加世が俺を想ってる時、
俺も加世を想ってるよーー」

胸の奥がギュッとしびれた。

「ーーうん」


「イヤ、バイト中でも想ってるから、きっと、加世以上だな」

敦史は照れを隠すように明るく言った。

No.134 10/03/21 21:04
Saku ( SWdxnb )

>> 133 「エヘヘ…ありがとう…」

私は恥ずかしくて、嬉しくて、消え入るように返事をした。

その後暫くの沈黙は、
敦史も、私と同じように月を見ていたんだと思うーー。

『ーカチャーニイ!今ーー母ちゃんのーー』

その時、受話器越しに切れ切れに聞こえた声は、敦史の弟さんのようだった。

「行くよーー
ゴメン加世、家に電話だっていうから…」

「うん。
突然電話してゴメンね」

「イヤ、嬉しかったよ。
……じゃあ、明後日」

「うん、明後日ね」


電話を切った。
そして帰宅し、部屋に着くと、敦史からメールが届いていた。

No.135 10/03/22 15:40
Saku ( SWdxnb )

>> 134 『話せて良かった

おやすみ』

いつも通りの短い文面だったけど、
敦史の優しい気遣いが感じられた。

窓辺に立ってカーテンを開けると、
真ん丸な月が、優しく輝いていたーー。


そして日曜日ーー

あまり眠れずに朝早く起きてしまった私は、
美咲に選んでもらった服を早々に身につけ、
待ち合わせ2時間前に家を出た。

No.136 10/03/23 18:03
Saku ( SWdxnb )

>> 135 外は快晴だった。
お天気も協力してくれて、心が弾んだ。

待ち合わせのデパートに着いて、本屋で時間を潰そうとしたが、気持ちはそぞろで、1時間以上、本を眺めてぐるぐると歩き回っただけだった。

それから、階上のトイレに入り、ミニボトルに移した香水と、グロスをつけた。

鏡に映った自分と、漂う香りに、少しだけ大人になった気がした。


時間まで、まだ20分位あったけど、
先に行って、待っていようと
1階中央ホールへ続く、エスカレーターに乗ったーー

No.137 10/03/23 18:46
Saku ( SWdxnb )

>> 136 ーーと、瞬時に、待ち合わせ場所に立つ敦史を見つけた。

制服ではない、ロンT、ジャンパーに細身ジーンズ姿の敦史が、すごく格好良くて、一気に胸の鼓動が高鳴った。

すると、不意に振り向いた敦史と目が合った。

こちらに体を向けた敦史は、微笑んだまま降りてくる私を迎えてくれた。

「早く着きすぎちゃったよ」

「私も…」

お互い、照れ臭さを感じていた。

「なんか加世、今日は…
ん?」

敦史の顔が曇った。

No.138 10/03/23 18:52
Saku ( SWdxnb )

>> 137 「香水、つけてる?」

顔を近づけ、敦史が聞く。

「う、うん…少しね…」

敦史の顔からさっきまでの笑顔が消えた。

「俺、女が香水つけるの好きじゃないんだ…」

「あっ…ゴメン…」

私が消え入るように謝ると、
敦史は一瞬俯いて、顔をあげ、

「加世は、『まんま』が一番イイよ」

と言って、優しく笑った。

No.139 10/03/23 19:55
Saku ( SWdxnb )

>> 138 「映画まで、まだあるから、どこかで時間潰そうか?」

「うん」

歩き出した敦史の後をついて行きながら、気付くと、敦史が私を見ていた。

「ん?」

首を傾げて見る。

「イヤ…」

敦史は、前を向き、さりげなく私の手を取った。

嬉しさと恥ずかしさが交ざって、繋がれた手ばかり見つめていた。

No.140 10/03/23 20:27
Saku ( SWdxnb )

>> 139 時間潰しに向かった先は、本屋だった。

さっき居座った気まずさもあって、
「トイレに行ってくるね」
と、敦史と別れた。


洗面所の鏡の前に立つ。

『俺、女が香水つけるの好きじゃないんだ…』

敦史の言葉を思い出し、ため息が出た。
そして、香水をつけた両手首を石鹸で洗い流した。

首元の香りは残っちゃうナ…
また小さくため息をついて、トイレを出た。

No.141 10/03/23 21:12
Saku ( SWdxnb )

>> 140 本屋の映画コーナーで写真集を見ている敦史を見つけた。

「何見てるの?」

近寄って、肩越しに声をかけた。

「ああ…
この映画、古いけど、凄く好きなんだ」

「ヘェ…」

それは、映画のモチーフとなった海の風景写真で、
敦史が開いていたページは、
深海にうっすらと淡い光が射した写真だった。



ーー今、この時の写真集が私の手元にある……

深い、深い海の底ーー
実際に光が届くことは無いだろう……
でも、今も、届いた光に希望を抱いてしまうーー

No.142 10/03/23 22:44
Saku ( SWdxnb )

>> 141 背後の棚の本をゆっくりとなぞり見ていた時だったーー

「加世子ちゃん」

名前を呼ばれて本屋のスペースを出ると、
エレベーター脇の喫煙所に陽介さんがいた。

陽介さんは吸おうとしていたタバコをしまいながら、近寄ってきて、
私も敦史から離れるように、歩いて行った。

「奇遇だねぇ」

「こんにちは。この間はありがとうございました」

「イイエ」

そう言って、笑んだ陽介さんは、
私服の装いもスマートでよく似合っていた。

「何だか、加世子ちゃん、この間と雰囲気違うな。
服のせいかな?口元もーー
可愛いよ」

No.143 10/03/23 23:51
Saku ( SWdxnb )

>> 142 自分の顔がパァーと赤らむのが分かった。

「イエイエ…」

俯いた私のすぐ近くに、陽介さんは顔を寄せてきた。

「香水もつけてくれたんだーー
加世子ちゃんにバッチリ合ってるよ」

敦史には嫌がられたけど、私自身好きな香りだったので、陽介さんの言葉は嬉しかった。

「そういや、日曜はデートだっけ?」

「はい、まぁ…」

陽介さんが映画のパンフレットを持っているのを見つけた。

「映画、どうでした?これから、それを観るんです」

と、パンフレットを指差した。

「ああ、悪くなかったよ。でもちょっと長かったな」

と、その時ーー

No.144 10/03/24 00:18
Saku ( SWdxnb )

>> 143 「陽介」

その声に振り向いた陽介さんは、トイレから出てきたであろう女性に向かって手をかざした。

その女性は、勿論美咲ではなく、
とてもキレイな大人の女性だった。

「加世子ちゃん、このこと…」

言葉を止めた陽介さんは、小さく笑った。

「じゃあ、近い内にまた飯食おうな」

と、笑顔を残して女性の元へと向かった。

No.145 10/03/24 12:23
Saku ( SWdxnb )

>> 144 陽介さんと女性が肩を並べて去っていく姿を見送りながら、否応なしに知ってしまった秘密に、胸中は落ち着かず、うろたえていた。

「誰?」

気付くと、敦史が隣に立っていた。

「あっ…ちょっとした知り合い…」

他の女性といるのに、『美咲の彼氏』とは、さすがに言えない…。

「ふーん…。
そろそろ行こう」

そう言った敦史は、スタスタと歩きだした。

「う、うん…」

私は小走りで敦史の後をついて行った。

No.146 10/03/24 12:34
Saku ( SWdxnb )

>> 145 エレベーターの前に立った敦史は、ずっと扉の方を向いていた。

「加世の名前が加世子だって、忘れてたよーー
ちゃんと『子』を付けて呼んだ方がいい?」

「いいよ、加世のままで…」

「ふーん…」

後も前を向いたまま淡々と返事をした。

「…香水も、さっきの奴にもらったんだ」

敦史にも聞こえていたんだ…。

「…うん」

その時、エレベーターの扉が開いて、敦史が先に乗って、奥の手摺りに寄り掛かるようにして振り向いた。

No.147 10/03/24 18:23
Saku ( SWdxnb )

>> 146 「ふーん…」

その顔に笑顔は無くて、見るからに不機嫌な眼差しを向けられた。

「敦史?」

「……」

黙ったままふて腐れているーー
ヤキモキを妬いてるのが私にも分かって、そんな子供みたいな敦史が、やけに愛おしかった。

「フフフ…」

「…何だよ?」

「ううん…フフ」

私は敦史の手を握って、隣に立った。

横目で私を見た敦史は、口元を緩め、繋いだ手をギュッと握り返してくれた。

No.148 10/03/24 18:34
Saku ( SWdxnb )

>> 147 敦史は飲み物を買ってくれた。
私は約束通り、ポップコーンを買って、二人の間のひじかけに置いた。

館内の照明が落とされ、上映が始まった。

そのアメリカ映画は、ロボットの少年が母親を求める内容だった。

敦史はポップコーンに手を伸ばしながらスクリーンを見ていたけど、
映画が中盤を過ぎた頃、ひじかけに置いたドリンクとポップコーンを足元に置き、
そして、私の手を取ったーー

No.149 10/03/24 18:46
Saku ( SWdxnb )

>> 148 ドキッとして、隣を見ると、敦史はスクリーンを見たままだった。

手を放して、今度は私の手首を掴むーー
そして手の甲をなぞる様にして、指と指を重ね合わせて、ギュッと握った。

そう手を繋ぐのが好きだと伝えてはいないけど、きっと敦史は分かってるはず…

映画館の暗さも手伝って、私は映画どころではなく、ドキドキしていた…。

No.150 10/03/24 18:59
Saku ( SWdxnb )

>> 149 映画がクライマックスに差し掛かった時、
敦史が顔を寄せてきたーー

私は、思わずビクンと反応して、敦史の方を向いた。

「トイレ行ってくるわ」

敦史はそう囁くと席を立ち、静かに館内を出て行った。

初めて落ち着いて見れたシーンは、
小さなサプライズから、少年の望みが叶い、母親とのつかの間の幸せな時間を過ごすーーというものだった。

そんな、切なくも心温まるラストシーンの余韻に浸りながら、隣に敦史が戻って来ていない事に気付いた。

私はエンドロールの前に席を立ち、敦史が出て行った出入口へ向かった。

  • << 151 映画館を出ると、すぐ横のベンチに敦史がぼんやりと座っていた。 「敦史?…」 「おう…終わった?」 「うん…」 私は敦史の隣に座った。 「体調でも崩した?」 「イヤーー大丈夫」 そう言って、笑った。 「映画、つまんなかったな~」 「そう?私は楽しめたよ」 「俺はダメだ、こういうの。見てて、イラついたよ」 「そんなに?」 イラつく要素なんてあったかな…?
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