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ナナの冒険
遥か昔、人間とドラゴンは仲良く暮らしていた。
ある時、人間とドラゴンは争う事になってしまった。
それは、山に成るたった1本の木の実をどちらが食べるかである。
ただ、それだけの事で人間とドラゴンは争う事になった。
そして戦いの末に人間がドラゴンに勝利した。
ドラゴンは人間に追われ行き場を無くし考えに考えた。
それで見つけたのが姿を消す事だった…。
人間はどうしてこうも愚かなんだろう。
いつか自分の首を絞めて人間自体いなくなるだろう。
気づいて欲しいアナタの周りには人間と別の命がある事を…。
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>> 167
『さあ、あそこなら大丈夫だろう。ミユ行くぞ。』
男の言う場所に少し緩やかな部分があるようで、そこに歩きだした。ミユの首にロープを掛け引っ張る者と後ろから押す者とに別れた。
『行くぞ。せーのー。』
ミユも一緒になり登り始めた。しかし、なかなか上がらない。
『もう一度だ。せーのー。』
ズルズル…
やはり途中から滑り落ちてしまう。するとその瞬間ふわっとして軽くなったように感じた。
『今だ。引け~。押せ~。』
ミユはあっという間に上ってしまった。
『やった~。ミユやったな。』
歓喜の声が上がった。実はナナも一緒になってロープを引いたのだった。やっぱり人間達には見えていなかった。ミユはナナを見てウインクをした。それを見たナナは照れくさそうにしていた。
『ミユもう少し頑張ってみような。そしてもう一度勝利を勝ち取ろう。』
そう言ってミユを引っ張った。しかし、ミユは動かなかった。
『どうした?さあ、行こう。』
ミユはナナの方を見ていた。
『ナナ、トムスありがとうござい…ます。』
『おいおい、偉そうにしていた奴がどうした?』
トムスはニヤニヤとした。
『私だって挨拶ぐらいは出来るわよ。』
>> 166
そうその風はナナの羽根を羽ばたかせた風だった。
『今の内に逃げて。』
ナナはそう叫んだ。人間達は不思議そうな顔をしていた。その風がナナの起こした風とは思ってもいなかった。その上姿も見えていなかったのだった。そうナナは人間の大人にはもう見えていなかったのだ。
『分かった。』
トムスとミユが逃げようとした。
ガサガサ…
『ミユ!』
とうとう見つかってしまった。
『どうしょう?』
恐怖で2匹は固まった。そして男が飛びついて来た。
『うわ~!』
思わず2匹は目を閉じた。だが、その男の様子が変だ。何か鼻をすするような音がしている。2匹はゆっくりと目を開けた。
『ミユごめんよ。俺が悪かった。もうお前を殺すなんて言わない。俺を許してくれ。』
男の目からは涙が溢れていた。ミユは男の気持ちが分かったのか、ペロッとその涙を舐めた。
『ミユ分かってくれたか…』
男は鼻をズルズルさせながらそう言った。ナナはその様子を笑顔で見つめていた。
『良し。ここからすぐに出してやるからな。』
男は近くに居る他の人間を呼んだ。その人間達もミユを見ると嬉しそうに笑った。
>> 165
『ミユ!どこに居るんだ?』
人間達の声が大きくなった。すぐそこまで来ているようだ。ナナは飛んだまま、下を伺っていた。
『俺達が悪かった。だから出て来い。』
そう言いながら必死に探していた。
『えっ!?今なんて言った?』
ミユは背中に居るトムスに尋ねた。
『…ん。出て来いって。』
『違う違う。その前よ。』
『あ~それなら“俺達が悪かった”だったかな。』
『そうそれ…。悪かった…か…。』
ミユは人間の方を見つめ何か考えているようだった。
『どうしたんだ?』
『いや、別に…。』
ガサガサ…
『ヤバい隠れろ。』
トムスとミユは息を潜め茂みに隠れた。すると森の方から何人か降りて来た。
『ヤバい。こっちに来る。もう少し下がれ。』
トムスはミユの耳元でそう言った。ミユはゆっくり下がった。その時だった。
パキッ
人間達がミユ達の方を見た。
『ミユか?そこに居るのか?』
1人の男がゆっくりと近づいて来た。しかし、これ以上下がる所は無かった。ミユ達はどうする事も出来なかった。
『見つかる…。』
その時、一陣の風が吹いた。
ビュン
『何だ?』
その男は辺りを見渡した。
>> 164
『えっ、何も聞こえないよ。』
トムスも首を横に振った。するとミユがまた言った。
『誰かが私を呼んでいる。』
ナナ達には森を吹き抜ける風の音しか聞こえなかった。
『ミ…ユ…』
『あっ。今聞こえた。』
『うん。確かに聞こえた。』
『誰かが私を呼んでいるわ。』
ナナは飛び上がり辺りを見渡した。森の中を何か動いているのが分かった。
『ナナ、何か見えるか?』
下にいるトムスがそう聞いてきた。
『うん。向こうから何か来ているよ。う~ん良く分からないなぁ…。ちょっと近づいてみる。』
そう言って動いている方へ近づいて行った。そしてちょうど真上に着いた。良く見るとそれは人間だった。1人ではなく何人もいたのだった。ナナは戻って言った。
『何人かの人がこっちに向かっているよ。』
トムスが慌てて言った。
『ミユ、ヤバいよ。人間が近づいている。どこかに隠れないと殺されるぞ。』
『でも、隠れる場所なんてないじゃない。』
『う~ん、仕方ない。あの茂みにでも隠れるか。』
トムスはミユの体を登り、茂みの方に行くように指示をした。そして茂みに隠れた。まあ、隠れると言ってもほとんど見えているのだが…。
>> 163
ミユは体のどこかをぶつけているようで、痛そうな顔をした。
『大丈夫?』
ナナは心配そうに尋ねた。
『大丈夫よ。少し足を捻っただけだから…。』
確かに見た感じでは外傷らしきものは無かった。
『ところでここからは出して貰えるの?』
ミユは出会った時のようにつんけんとした言い方をした。トムスとナナはお互いを見て考えた。ナナはミユよりは大きいがこの壁を越えられるかは判断出来なかった。
『ミユさん。とりあえず頑張ってみるよ。その前に準備運動。』
ナナは羽根を動かし運動を始めた。まるでラジオ体操のようだった。
『さて、ミユさん準備は良いかい?』
『ええ、いつでも良いわよ。』
ナナは飛び上がりミユの背中を掴んだ。
『じゃあ行くよ。』
羽根を大きく羽ばたかせミユを持ち上げようとした。少し持ち上がったが、それ以上は上がらなかった。それでもナナは諦めないで何度となく羽ばたいた。だが、何度やっても駄目だったのである。
『やっぱり駄目だ。持ち上がらないよ。』
『もう良いわ。仕方ないもの…。』
ミユは既に諦めていた。すると突然ミユが振り返り森の奥の方を見た。
『今、何か聞こえなかった?』
>> 162
『もうミユはダメだな…。始末するか?』
『仕方ないよな…。次のレースがダメならな…。』
ミユの目の前で人間達がそんな事を話していた。残酷な話だが、そんなものであった。
『始末って?』
ナナは分からなくて聞いた。
『始末って殺す事なの。私を殺そうとしていたの。』
ミユは体を震わせていた。
『やっぱり人間って酷い生き物だな。何であんな生き物が存在しているんだ?』
トムスは怒ってそんな事を言った。その横で悲しそうな顔をしたナナが居た。
『おいおい、そんな顔するなよ。お前のママは別だ。』
トムスは慌ててそうフォローした。
『そうママはとても優しいよ。』
ナナは少し笑顔が戻った。だが、それを聞いていたミユが今度は悲しそうな顔をした。
『あなたのママは優しいのね。私を育ててくれた人間も優しかったのだけど…。でも、あの後から人間の目つきが変わった。だから怖くなって逃げ出したわ。』
『そうそう人間はどっちにしても勝手なんだ。ミユとやら逃げて正解だ。』
トムスは1匹納得していた。
『私は宛てもなく走りつづけてたどり着いたのがこの森…。そしてこの場所に落ちてしまったの…。』
>> 161
辺りを見回すと木々しか見えないが、その奥は壁になっていた。
『それで鳴いていたんだな。』
コクリと頭を縦に振った。
『しかし、何故こんな所に落ちたんだ?』
ミユは急に悲しそうな目をした。何か事情がありそうだ。
『私はこの近くの牧場で育てられているサラブレットなの。毎日、可愛がってもらっていたの。私はそれは大事にされているとばかり思っていた。でも、違ったの…。』
ナナとトムスは黙って話を聞いた。
『それは、私を競走させて勝たせる為だった。私は可愛がってくれるから辛い走り込みも我慢して走ったわ。そのお陰もあってレースで何度も優勝したの。』
『それなら文句ないじゃん。何が問題なわけ?』
トムスが手を頭の後ろにおいて呆れた感じで言った。ミユがチラッと見た。
『トムスさん。シッ!』
ナナが人差し指を立て首を振る。この話には続きがある事がわかったようだ。トムスはハイハイと言う感じで口にチャックをした。
『しかし、最初の方だけだったの。その内に勝てないようになって…。人間はすごくガッカリとしていたわ。そしてある日私は聞いてしまったの…。』
ミユは悲しいと言うより恐怖におののいた顔をした。
>> 160
『なんだよその長い名前。』
トムスは笑いながら言った。
『何がおかしいの?人間が付けてくれた。ちゃんとした名前よ。』
ミユは膨れっ面をした。それを見て更にトムスは笑い出した。別に顔がおかしいのではなく、すましている態度がおかしかったのだった。
『トムスさん笑いすぎだよ。』
トムスはナナの頭の上で腹を抱えながら笑っていた。するとミユがグッと近づきトムスを睨んだ。
『ごめんごめん。』
『もう知らない。』
ミユは怒って後ろを向いた。
『おい、怒ったのか?』
『トムスさんが笑いすぎるからだよ。』
『本当に悪かった。』
トムスは手を合わせ謝った。ミユはチラッとナナ達を見た。そして振り返った。
『もう良いわ。その代わりに私をここから出して…。』
ナナはまだ、この場所の状況が分かってなかった。
『あの…。出しなさいって、なんで自分で出ないのですか?』
ミユはツカツカとナナ達の前に来た。
『な、な、なんだよ。』
トムスは手を十字に構えた。ミユはそんな事は無視して話し出した。
『そりゃ私も自分で出たいのだけど…。ここは壁に囲まれていて出れないの。』
『壁?』
>> 159
トムスはナナの角に掴まっていた性かどこも打ってないようだ。すると目の前に何かが現れた。太陽を背にしている性か、姿ははっきり見えないが、ナナより少し小さい事は分かった。
『あなた達は誰?』
尖った言われ方をした。少し上品さも感じられる。
『誰って、俺達に聞く前にお前こそ名を名乗れ。』
トムスは強い口調で言ってはいるが、ナナの角の後ろに隠れて言っている。
『あなた偉そうね。』
それはナナが言ったと思い言い返してきた。
『ボクじゃないよ。』
ナナは手を横に振り、角の後ろのトムスを指差した。
『あなた男のクセにちゃんと出てきて言いなさいよ。』
ちょっと怒っているようだ。そして少し前に出て来た。今まで分からなかった姿がはっきりと見えた。それは赤茶色の馬だった。馬と言ってもサラブレットである。
『ところであなた達。私をここから助けなさい。』
何か話し方は偉そうだ。まるで、人で言うと貴族のようだ。
『なんだよ。藪から棒に…。お前ちょっと偉そうだな。』
『さっきからお前お前って。私にはミユと言う名前があるの。正式にはエクセレントミユよ。』
『エクセレントミユ…。』
ナナとトムスが同時に言った。
>> 158
しかし、どこから聞こえているのか分からなかった。
ヒヒィ~ン
また、聞こえた。木々の枝が広がっていて分からなかったが、森の先は一段落ちた場所があった。どうもそこから謎の声は聞こえているらしかった。
『ナナ…あそこからじゃないか?』
トムズがその方向を指した。一段落ちている性かその辺りははっきり見えなかった。2匹はそこに降りる事にした。
バタバタ…
思っていたより森の木々がある割には暗くない。辺りを見渡した。謎の声は聞こえない。
ガサガサ…
2匹は驚き音の方を見た。微かだが、草が動いていた。
『おっおい。誰かいるのか?いるなら出て来い。』
トムスは強い口調で言った。しかし、姿を出そうとしない。
『ねぇ~こっちから近づいてみようか?』
『本気で言っているのか?』
『うん。』
ナナはあんなに怖がっていたのに大きくなった性か強気だ。
『なら行くか…。』
『うん。』
2匹は音のする方に向かった。トムスはナナの角の後ろに隠れている。そしてナナが1歩踏み出した瞬間ドスンと落ちた。
『いたたた…。』
ナナが落ちて打ったお尻をさすっていた。
>> 157
『うん。でも、少し怖いよ。』
ナナは飛びながら震えている。
『ナナは弱虫だな。オレがいるから大丈夫さ。』
トムスはそう言ったが、ナナには震えているのが体を伝わって分かっていた。しかし、その事を言おうとはしなかった。何故なら2匹で怖がっていたらどうしょうもないと思ったからだった。やがて、噂の声がする森の上空に着いた。
『確かこの辺りなんだが…?』
2匹で森を見るがそれらしき物は見つからなかった。
『上から見てても分からないから下に降りてみようよ。』
『あぁ…そうだな。』
トムスの唾を飲み込む音が聞こえていた。かなり緊張しているようだった。森の少し開けた場所に降りた。辺りを見渡すがやはりそれらしい物は見つからない。
『ねぇ…本当にこの辺りなの?』
ナナが何とも言えない顔でトムスに尋ねた。
『ばっきゃろう。オレが嘘でもついているとでも言うのか?』
『いや、そう言う訳じゃないけど…。』
ナナはトムスがこんなに怒るとは思わなかった。だが、これだけ調べて居ないのだから疑いたくもなるものだ。その時だった。
ヒヒィ~ン
近くで鳴き声が聞こえて来た。
>> 156
『オレ?無理無理。』
トムスは後ずさりしながら逃げようとしている。周りをみんなが囲みトムスを壁に追いやった。
『おいおい…よせって…勘弁してくれよ。』
トムスは壁に背中をぶつけ止まった。苦笑いしながらみんなを見回す。
『この中で一番勇気があるのはアンタだよ。』
キィーが肝心したように頷く。みんなも合わせて頷いた。
『オレに勇気がある?そうか。そこまで言われたら男がすたる。やるしかないな。』
トムスは今までと違い、胸を張って前に出た。
『よ~し。これで決まった。謎の声の主を探しに行くのはナナとトムスで決定。』
大きな声でキィーが叫んだ。誰ともなく拍手が起こった。
『やっぱり君達は凄いよ。』
完全にみんなにおだてられている2匹。妙に納得してやる気を出している。
『トムスさん行きましょうか?』
ナナが手を出した。トムスは頷くと差し出された手からピョンピョンと頭の方に登って行った。
『では、皆さん行って来ます。』
ナナはそう言うと大きく羽ばたいた。風が起こりナナ達は空高く舞い上がった。下にいるみんなに手を振りながら、謎の声の主を探す為森に向かった。
『さて、どんな奴がいるのかな?』
>> 155
『オレはたまに洞窟から出て、森に食べ物を探しに行くのだけど、近くで"ヒヒィ~ン"って声がね。突然の事でびっくりしてせっかく拾った木の実を全部おとしてしまった。』
『それなら私も聞いた。どこにもいないのにだよ。』
身震いしながら言ったのはキィーだった。森では不思議な鳴き声が聞こえるのは本当のようだ。
『こんな事では森に安心して入れないよ。』
トムスは腕を組み言っている。周りのみんなも頷いている。
『それでナナに頼みがある。』
『何?』
『声の主を見つけ出して欲しい。』
『えっボクが?』
ナナは驚いた。それはそうだ。得体の知れない物を見て来てくれと言われた訳だ。しかし、トムスは当たり前のように話しかけている。
『嫌だよ。ボクだけじゃ怖いよ。』
ナナが半ベソをかきながら言っている。
『それなら、他にも連れていけば良いと思うよ。プー。』
呑気な顔をしてプクが言った。何かを腹一杯食べたのだろう、お腹をさすっている。
『それなら誰が行くんだ?』
みんながお互いを見ている。顔を横に振る者やそっぽを向く者もいた。するとみんなが1匹を見た。それはトムスだった。トムスは驚いた顔をしている。
>> 154
ランドセルのカタカタと言う音が森に響いていた。今日は眠い性かその音も子守歌に聞こえた。ナナはまた、眠りついた。最後の日が近づいている事を忘れて…。
何事もなく夜が明けた。
チュンチュン
スズメ達の鳴き声が響いていた。そうシロ達だ。
『ナナ、朝だぞ。起きろ。』
『う~ん?あっおはよう。』
『あっおはようじゃないよ。寝ているのはナナだけだ。』
『本当に…。』
ナナは辺りを見渡した。洞窟のみんなが集まっていた。
『みんなどうしたの?』
ナナは不思議に思い尋ねた。
『いや最近な森で変な鳴き声がするってコイツが言うのだよ。』
それはピンの事だった。
『本当に聞こえるのねん。嘘じゃないのねん。』
ピンはシロの羽根を引っ張りながら言っている。
『痛い痛い羽根が取れる。』
シロの目に少し涙が滲んでいた。
『なら信じてくれるのかん?』
ピンはシロをジッと見た。シロは微動だにせず考えている。その時、誰かが言った。
『実は俺も聞いたよ。今まで聞いた事のない声だったよ。』
声の方を見るとそれはトムスだった。
>> 153
おじちゃんの体が光った。そこにはおじちゃんの姿は無く、大きなドラゴンが現れた。銀色の体に立派な2つの角が生えていた。そして一陣の風が吹くと姿が消えていた。水面には波紋が出来ていた。ナナはその頃、洞窟についていた。入り口に舞い降りた。
『うわぁ~今日は疲れたな。色々ありすぎて眠くなっちゃったな。』
大きな背伸びをした。そのまま眠ってしまった。どれだけ経ったのか、誰かが読んでいる声がした。
『ナナ…ナナ…。』
見上げるとママが立っていた。
『あっママ。いつの間にか眠っちゃった。』
『あははは…。今日は何をして遊んでいたんだい?』
ママはニコニコしながら聞いて来た。そうママは木の実のおかげでナナの言葉が分かるようになっていた。
『今日はね…。』
ナナは今日1日の事を話した。
『へぇ~そりゃ大変だったね。それからどうしたんだい?』
『それからね…。』
シロ達の事やイーヌの家族の話など話した。そしておじちゃんに聞いた事を話そうとした。
『あっナナごめん。もう時間だよ。話の続きはまた明日聞くよ。それじゃ、クッキーをここに置いておくから食べてね。』
ママはそう言って家に帰って行った。
>> 152
『ナナちゃん。良く聞いて。前にガミの話をしたよね。』
ナナは思い返していた。
『うん。』
『ガミはある日、私には見えなくなった。多分、ナナちゃんも見えなくなってしまうと思うんだ。そうなったら君のママとはお別れになってしまうんだ。』
昔を思い出したのか、目に涙が光っていた。
『実は少し前から考えていたよ。いつかこんな日が来るって。』
ナナがそんな事を言うとは思っていなかった。
『そうだったか…。でも、お別れと言ってもナナちゃんが大人になると言う事なんだ。新たな出逢いが待っていると思うよ。』
『新たな出逢い…。お別れは寂しいけど、仕方ないのだよね。でも、おじちゃんのおかげで楽しみが増えたよ。』
『そう言ってもらえたら私も嬉しいよ。』
ナナは羽根を羽ばたかせた。
『おじちゃん、また来るね。今日はありがとう。』
ナナはおじちゃんのもとを離れて行った。
『ナナちゃんはガミとは違う種族だから大丈夫だろうか…。まあ、大丈夫だろう。なんと言ってもナナちゃんは…。』
おじちゃんはそう言いながら釣り竿を直し始めた。遠くにナナの飛んで行く姿が見えていた。ナナにはまだ秘密があると言うのだろうか?
>> 151
笑っては居るが、おじちゃんの言っている意味は分かってないようだった。
『ナナちゃんそれで何を聞きたかったのかな?』
『あのね。ボクこんなに大きくなってきたから、今の洞窟には住めなくなりそうなるんだよね。キジさんはどうしたのかなって?』
『なるほどね。うーん…。』
おじちゃんはしばらく考えてから答えた。
『思い出したよ。君にはつらい話になるかもしれないね。』
『つらい話?』
ナナには理解出来ないでいた。
『それは、君がもうすぐ大人になるって事なんだ。』
『えっボクが大人になるの?』
『そう大人になるんだ。』
おじちゃんはなかなか先の話をしようとしなかった。
『おじちゃんどうしたの?』
ナナはうつむいているおじちゃんの顔を覗き込んだ。
『はっきり言おう。ナナちゃんはもうすぐママとサヨナラしないといけないのだ。』
『サヨナラって…。毎日サヨナラしているよ?』
おじちゃんは頭を横に振った。
『違うよ。永遠にって事だ。君が巣立つ日がきたんだよ。』
『えっどういう事なの?』
ナナはまだ理解出来ない。おじちゃんは何を言っているのだと思った。
>> 150
『生きて行くためだ仕方ないさ。それじゃな。ナナ行こう。』
シロ達は自分達の森を目指した。
『ちょっと待ってよ。』
ナナは慌ててシロ達を追いかけた。そして振り返った。
『イーヌさんまたね。』
ナナは大きく手を振った。イーヌの家族もいつまでも手を振っていた。
『あっシロさん。』
先を飛んでいたシロ達が止まった。
『ナナどうした?』
『あのね。ボク用事があるから行かなくっちゃ。』
『そうなんだ。じゃあここで。また、明日な。』
『明日ねん。』
『明日もクッキーちょうだいね。』
シロ達はそんな事をそれぞれ言った。
『うん。また、明日ね。クッキーはママに貰っておくから大丈夫だよ。バイバイ。』
ナナはシロ達を見送るとおじちゃんの居る池に向かって飛んで行った。おじちゃんは釣りをしながらナナを待ってくれていた。
『お~いナナちゃん。』
おじちゃんはナナに気づき手を振っている。ナナも手を振りながらおじちゃんの居る所に降りた。
『おじちゃんありがとう。』
『いやいや、私は暇だから気にする事はないよ。』
そう言って笑っている。ナナもつられて笑った。
>> 149
『エリーナ!彼らは大丈夫だ。』
イーヌがそう叫ぶとエリーナは止まった。
『それはどういう事イーヌ?』
『実はな…』
イーヌは今までの事を説明した。
『そうだったんだ。知らないとはいえごめんなさい。』
エリーナはシロ達に頭を下げた。
『分かってもらえたなら良いよ。』
シロ達は額に汗を流しながら言った。かなりの間追いかけまわされていたから当たり前かもしれない。
『それはそうとそんな木の実を食べて大丈夫なの?』
心配そうに尋ねた。するとナナが貰って来た木の実をエリーナに差し出した。
『それなら大丈夫だよ。これを食べてみたら分かるよ。』
エリーナは差し出された木の実を受け取りしばらく見ていた。決心がついたのか、一口食べた。しばらく沈黙があったが、次の瞬間エリーナが叫んだ。
『美味しい。』
『そうでしょう。これならいくらでもあるから良いよね。』
ナナは微笑んでエリーナを見た。エリーナはただ、頷いていた。ナナ達の言っている事が理解出来たようだった。
『それじゃ俺達は帰らせてもらうが良いよな。』
シロ達がイーヌにそう言った。
『ああ、構わないよ。すまなかったな。』
>> 148
『そうか、分かった。また後で来なさい。』
『うん。それじゃまた来るね。』
一回り大きくなったナナはイーヌと共に飛んで行った。
『ナナももうすぐだな…。』
おじちゃんの竿がぐぐっと引いた。水面に大きな魚が姿を表した。
『今日のはデカいな。池の主かな?』
春の暖かい風が辺りの木々を揺らしていた。
『ナナ。』
『はい。』
『人間には騙されるなよ。』
『えっ!?』
『良い奴だと思っても裏切るからな。信じてはいけないぞ。それが、育ててくれた人間でもな…。』
やはりイーヌは人間との間に何かがあったのかもしれない。そうこう話している内にイーヌの巣の近くまで帰って来た。尖った先端が見えている。だが、その周りが騒がしかった。良く見るとシロ達が鷹に追い回されているようだった。
『話を聞けって。』
『問答無用。子供達には指一本触れさせないわよ。』
すごい剣幕で追い回している。
『違うって。旦那の代わりに守っているだけだよ。』
『嘘を言うな。』
『嘘って…。だいたい雀は雛なんて食べないだろうが!』
『そんな事を言っても騙されないわよ。』
そこにやっとナナ達が帰って来た。
>> 147
そして木の実をクチバシで足元にズラした。イーヌはまだ、警戒している。
『これでもダメかい?なら後ろを向くよ。』
おじちゃんは後ろを向いた。イーヌはそれを確認すると木の実を掴み飛び上がった。その音に気が付いておじちゃんは振り返った。
『本当に何もしないのだけどな。よほど嫌な目にあったのだろうな。』
『おじちゃんありがとう。本当に何があったのかな?』
ナナとおじちゃんはイーヌを見上げた。
『人間とは君が思うほど、優しい人間ばかりじゃないからね。イーヌが疑うのは当たり前なんだよ。』
『まだ、ボクには良くわからないや。』
『いずれ分かるさ。』
おじちゃんは釣りをしていた場所に戻った。
『イーヌとやら、木の実はいつもこの辺りに置いているから、いつでも取りにおいで。』
おじちゃんはそう言うと釣り竿の糸を水面に投げた。イーヌはしばらく池の上を飛んでいた。
『ナナ、俺は帰るぞ。お前はどうする?』
『あっボクも帰るよ。』
ナナは羽根をパタパタとさせた。
『おじちゃんまだ、ここに居る?』
『あぁまだしばらくは居るけど、どうした?』
『ちょっと聞きたい事があったから。』
>> 146
しかし、ナナの様子を見ていて何もない事がわかったのか、近くに飛んで来たのだった。
『ほらっ大丈夫だからこっち来なさい。これをあげるから。』
おじちゃんは木の実を差し出した。イーヌは恐る恐る近づいて来た。
『ナナ本当に大丈夫なのか?』
イーヌはまだ疑っているようだ。
『大丈夫だよ。イーヌさんは心配症だね。』
ナナはそんなイーヌを見て笑った。イーヌは少し怒った風でナナに言った。
『俺は今、死ぬ訳にはいかない。俺の帰りを首を長くして待っている子供達がいるからな。人間を信じているお前が信じられないよ。俺はあの時の事は忘れない。』
イーヌには昔に人間との間に何かがあったようだ。
『君の言う事は正しい。親になったらそうなって当たり前だ。ナナ…笑ったら悪いよ。』
おじちゃんは優しくそんな事を言った。風で髪が垂れたのをかきあげて木の実をイーヌの前に置いた。
『ごめんなさい。』
ナナは申し訳なさそうにしている。イーヌは目の前の木の実を見つめた。
『これなら君も食べられるだろう。』
おじちゃんはそう言うと2、3歩後ろに下がった。イーヌはおじちゃんと木の実を交互に見ていた。
>> 145
『何っ!?そうなのか?』
親鳥は驚いて止まった。ナナもそれに気づき止まった。
『そんなに驚かなくても大丈夫だよ。おじちゃんはボクらの言葉が分かるからね。本当に優しいから行ってみよう。』
ナナはそう言って池で釣りをしているおじちゃんの方へ飛んで行った。
『ちょっと待てよ。』
慌てて親鳥はナナの後を追った。池のおじちゃんの側に降りた。おじちゃんはナナに気づき釣り竿を置いてナナの方へ近づいて来た。親鳥は少し離れた所で様子を見ている。
『おお、また会えたね。おっ新しい仲間かな?』
親鳥を見てそんな事を言った。
『うん。そうだよ。えっと…んっ?そう言えば名前聞いて無かったね。なんて言うの?』
ナナは親鳥に尋ねた。親鳥はキョロキョロしていた。
『俺か?俺はイーヌだ。そう言えばお前の名前も知らなかったな。』
『ボクはナナだよ。』
おじちゃんがその様子を見ながら笑った。
『なんだ、まだ知り合ったばかりなんだな。イーヌだったかな?私は何もしないからもっと近くに来たらどうだい?』
おじちゃんを警戒しているイーヌはすぐには近づこうとはしなかった。昔、人間に何かされたのかもしれない。
>> 144
『うん。そうだよ。』
『人間なんて。』
親鳥は嫌そうな顔をしている。
『何でみんなそんなに人間を嫌うの?ママはとても優しいよ。』
親鳥は返事に困ったが思った事を言った。
『それは、やはり人間は自分勝手だからな。自分達の為なら自然も壊すし動物なども殺してしまうからな。それでじゃないか?』
困ったあげくそんな事を言った。ナナは悲しそうな顔をした。
『おいおいそんな顔をするなよ。人間全部がそうと言う訳ではないから…。』
親鳥は苦し紛れにそんな事を言った。今まであった人間で良い奴は1人として居なかった。ただ、ナナの悲しそうな表情を見るとそう言うしか無かったのだった。
『本当に。やっぱりママは優しいからね。そんな事する訳ないからね。そろそろ行こうかな?』
『そうだな。行こう。』
2匹は池に向かって飛んで行った。池に近づくと人影が見えた。
『おい。人間がいるぞ。あんな所にあるのか?』
親鳥はそんな風に尋ねた。やはり人間が怖いらしい。ナナはそれを見るとにっこりと笑った。
『大丈夫だよ。あのおじちゃんは優しいよ。』
『知っているのか?』
『うん。あのおじちゃんが木の実をくれるんだよ。』
>> 143
『いや、そんな事はない…。』
強がってはいるがかなり疲れているようで、フラフラと飛んでいた。
『ちょっとあそこで休もうよ。』
森の中央にある山の岩場で休むことにした。
『お前が言うなら休もうか。』
親鳥は他人の性のように言っているが、内心ではホッとしていた。
『一気に来たから疲れたね。』
『俺はまだまだ行けたけどな。』
ククク…
ナナは笑った。親鳥はそれに気づいた。
『何が可笑しい?』
『ううん。別に…。』
ナナはそう言いながらも笑っていた。親鳥の強がっている姿が可笑しかったのだ。
『また、笑ったな。』
親鳥は怒ってナナを追い回した。すると急にナナが笑うの止めた。
『おい、どうした?』
ナナは遠くを見ながらこう言った。
『ボクにもこんなパパが居るのかな?』
『お前はパパを知らないのか?』
ナナは頷いた。
『ボクにも分からないの。ママは居るけど、本当のママじゃないみたいだし…。』
『それはどう言う事だ?』
『みんながママの事を"人間"って言っている。』
『お前は人間に育てられたのか!?』
親鳥はかなり驚いていた。
>> 142
そのプクを見てまたみんなが笑い出した。
『それじゃ教えるからついて来て。』
ナナはそういうと池に向かって行こうとした。すると親鳥が言った。
『待て。俺が行ってしまうと子供達だけになってしまう。妻を待たないといけないのだが…。』
鷹にはメスの親鳥もいたのだ。雛が孵った事でしばらく育児を任せ休暇をとっていたのだ。
『いつまで待てば良いの?』
親鳥は考え込んでいる。この感じではしばらくは帰って来ないのだろう。
『ならば、オレ達が見張っていてるよ。』
シロ達が言った。
『しかし、お前達で大丈夫なのか?』
『何を言っていやがる。そうでもしないと弟を助けられないだろうが!』
食いつかんばかりにシロが言った。親鳥は驚いた顔をしたが、すぐに返事を返した。
『それなら任せた。ナナとやら、木の実の在処を教えてくれ。』
『うん。』
ナナと親鳥は池に向かって飛んで行った。残されたシロ達は泣き叫ぶ雛達にてんやわんやだった。それに向かって来る1つの大きな影があった。
『まだ、着かないのか?』
親鳥は疲れたのか、そんな事を言った。鷹はそこまで長距離を飛べる訳では無いようだ。
『もう少しだけど疲れたかな?』
>> 141
『どうして?ちゃんと持って来たじゃないか?』
納得がいかなかった。ナナは口を尖らせて怒った。
『そうだ。ナナの言う通り代わりの物を持って来ただろう。』
シロも怒って親鳥を睨んだ。
『いや、これだと子供達にとっては少なすぎる。もう少しあれば、素直に返すがな。』
親鳥にはそれなりの考えがあったようだ。ナナはふと思いついた。
『それなら、木の実の場所を教えるからプクさんを返して。』
ナナは微笑みながら言った。親鳥はそんなナナを見て微笑み返した。
『お前には参ったよ。その話で手を打つよ。』
『シロさん良かったね。これでプクさんは大丈夫だね。』
『ナナありがとう。』
シロ達は喜んでナナの周りを飛び回っている。捕まっていたプクはと言うと木の枝でいびきをかいて寝ていた。
『他人の苦労も知らないで呑気なもんだ。』
シロは腕を組んで怒っている。
『ぷっ…ぷっあははは…。』
ナナは突然笑い出した。プクの様子がおかしかったのだ。
『わははは…。』
シロ達もナナにつられて笑い出した。そこに居る者全てが笑い出した。当のプク以外だが…。すると笑い声にプクが気が付いた。
『何でみんな笑っているの?』
>> 140
目線の先に尖った木が見えていた。その上を飛び回っている鷹の親鳥が居た。
『さぁ行こうよ。』
『さぁ行こう。』
ナナ達はそこに向かって飛んで行った。
『あっナナ。見つかったのか?』
シロはナナの姿を見つけそう叫んだ。ナナは手を大きく振った。
『見つかったよ。ほらっ!』
ナナは木の実を見せながら近づいて行った。
『それが木の実なのか?』
親鳥はそれを見ている。
『そうだよ。食べてみて。』
ナナは親鳥に手渡した。親鳥はそれを巣に置くと一口食べてみた。
『なんだこの木の実は…。』
親鳥はそう言うと黙ったまま木の実を見ていた。
『…ん?美味しくない?』
『いや、美味しい。』
親鳥は目を輝かせて言った。
『これなら子供達も喜ぶぞ。さぁ~お食べ。』
そう言うと木の実を雛達の前に置いた。雛達は最初は何か分からずお互いを見合った。だが、1匹がつっつくと一斉に食べ始めた。親鳥は優しい目でそれを見ていた。
『これで言われた通りに代わりの物を持って来たのだから、プクさんは返して貰うよ。』
ところが、親鳥はナナの前にはばかり首を横に振った。
『ダメだね。』
>> 139
キーはナナが何に話しているのかわからないでいた。
『ナナ…誰と話しているんだい?』
『えっキーさんには見えていないの?』
ナナにとっては逆に、あんなに大きなギジが見えていないと言う事が不思議だった。
『ナナ大丈夫かい?何もいないじゃないかい。』
『何を言っているのあそこに……。あれ?ギジさんが居ない。どこに行ったのかな?』
さっきまで居たギジの姿が忽然と消えていた。あれは幻だったのだろうか?ナナはキツネにつままれた感じだった。
『ナナも色々あって疲れているのかもね。』
だが、ナナが見たのは間違いなくギジだった。ギジは一瞬で2匹には見えない、いや、ナナに見えない高さまで飛び上がっていたのだ。但しキーにはドラゴンの不思議な力で、見えないようにしていた。
『ナナよ。頑張れよ。』
ギジはそう言ってその場からどこかへ飛んで行った。
『ナナ、急がないといけないのじゃないのかい?』
『あっそうだった。プクさん待っていてね。』
2匹は鷹の巣に向かって飛んで行った。その時池に向かう車が1台走って行った。
『ナナまだかい?』
『もう少しだよ。ほらっあの尖った木の所だよ。』
>> 138
『おじちゃん居ないなら、いつもの場所にあるかもしれないよ。行ってみようよ。』
ナナは頷いた。2匹はおじちゃんがいつも釣りをしている場所に向かった。
『確かこの辺りだったね。』
2匹はその場所を見回したが、木の実は無かった。
『どうした事だい。今日に限って無いじゃないかい…。』
キーはナナを見た。
『ナナどうするんだい?』
ナナは困った顔をした。みるみるうちに涙が目にたまり泣き出した。そう言う所はまだ子供のようだ。
『キーさんどうしよう?』
『泣くなよ。あたしに言われても困るよ。』
2匹は途方に暮れていた。その時一陣の風が吹いた。
『うわ~凄い風だ。前が見えないよ。』
コロコロ…
2匹の前に何かが転がって来た。
『あっ木の実だ。』
ナナは転がって来た物を拾ってそう言った。それは風にのって飛んで来たようだった。
『キーさん木の実だよ。何で飛んで来た。』
2匹は辺りを見回した。
『あっギジさんだ。』
ナナにはギジの姿が見えていた。しかし、キーには見えていないようで不思議そうにしていた。
『ギジさんありがとう。これでプクさんを助けられるよ。』
>> 137
『それなら良いが…。オレ達はプクが心配だからここに残るけど、後はナナに任すよ。頼んだ。』
『頼んだのねん。』
2匹は頭を下げると鷹の巣に戻って行った。ナナはそれを見届けると池に向かって飛んで行った。しばらくすると遠くに池が見えて来た。
『あっ池だ。おじちゃん居るかな?』
ナナは池の周りを見渡した。
『ナナ~!』
声の方を見ると必死に羽ばたいて飛んで来る姿が見えた。良く見ると黄色の体にホッペに赤い模様があった。そうそれはキーだった。
『あら~ナナ飛べるようになったんだね。』
『うん。体が大きくなった性かな?』
『そうかもね。あたしも小さな時は飛べなかったからね。ところで何をしているんだい?』
キーは羽ばたきながら尋ねた。
『あのね。実は…。』
ナナはいきさつをキーに話した。
『そりゃ大変だ。あたしもおじちゃんを探してやるよ。』
2匹は池の周りを探し始めた。だが、今日はまだ来ていないのか、おじちゃんの姿は無かった。
『おじちゃん居ないね。どうしよう?』
困った顔をしながら池の畔に降りた。キーもナナの近くに降りた。
>> 136
『変わりの食料を持って来たら助けてやっても良いがな。』
親鳥はそんな事出来ないだろうと意地悪に言った。ナナ達は集まりしばらく考えていた。ナナはある事を思い出しシロ達に耳打ちした。
『分かった。しばらく待っていてね。』
親鳥は驚いていた。そんな返事が返ってくるとは思ってなかったのだろう。ナナの話とはこうだ。池の所に木の実を持ったおじさんからその木の実を貰ってくると言う話だ。わざわざプクの変わりに他の動物を差し出す必要がないと考えたのだ。そこに居るシロ達と親鳥に話して説明した。
『話は分かった。だが、その木の実が無かった時は巣の中の彼には諦めて貰うからな。』
そう言うと親鳥は巣の中のプクをくわえると巣の横の枝に置いた。プクは震えながら枝に止まっている。シロ達は近くに寄ったが親鳥が睨むと離れた。
『見張っているからな。早くその木の実をここに持って来い。良いな?』
『分かった。待ってて。』
ナナはそう言うと巣を離れた。シロ達がナナの後を追いかけて言った。
『本当に大丈夫なのん?』
ピンが疑いの眼差しでナナを見る。
『大丈夫だよ。おじちゃん居なくても池にはいつも置いてあるから。』
>> 135
そう言いながら旋回をしている。その頃、巣の中のプクは必死に逃げ回っていた。
『話を聞いてよ。お願い。』
ナナは親鳥に手を合わせお願いをした。
『問答無用だ。雛を狙うヤツは許さない。』
『だから話を聞いてよ。』
『何の話があると言うのだ。』
そう言うとナナに向かって飛んで来た。ナナは大きく羽ばたいた。凄い風が起こり親鳥に当たった。親鳥は必死に羽ばたくが近づく事さえ出来ず、逆に遠くに飛ばされてしまった。
『なんと言う風だ。どうする俺?』
親鳥は離れた所で考えている。
『ねぇ聞いてよ。ボク達は頼みがあって来ただけなんだ。』
ナナは親鳥に向かって言った。
『なんだ…頼みとは?』
親鳥は警戒しながら尋ねた。
『あのね…巣の中に居るスズメはボクの友達なんだ。彼を助けて欲しいの。』
親鳥はチラッと巣の中で逃げ回っているプクを見た。
『それはダメだ。あれは子供達の食料だからな。食べさせないとこっちが死んでしまう。』
自然は弱肉強食の世界。弱い者が強い者に食べられる。これが自然の摂理だ。
『どうしたら助けてくれる?』
親鳥は考え込んだ。しばらくして口を開いた。
>> 134
親鳥はすんでのところで止まった。
『お前達は雛を狙っているのだろ。絶対にそんな事はさせないぞ。』
親鳥は少し離れると再び襲って来た。
『待って!!』
ナナは大きな声で叫びながら行くてを塞いだ。親鳥は何度もぶつかって来る。
『どうだ?参ったか?』
ナナはなんとも無いのか首を振った。親鳥は目を丸くした。
『ちくしょう。手を抜いたのが悪かったか?これならどうだ?』
親鳥は空高く上がると再びナナに向かって体当たりをして来た。
バーン…
親鳥はナナの体にぶつかるとボールのように弾け飛んだ。そのまま地面に向かって落ちて行った。ナナの体は成長して硬くなり始めていた。今まではトカゲのような皮膚だったが、今はウロコのような物が出始めていた。
ヒュルヒュル…
バサッ
ナナは素早く降下した。そして落ちて行く親鳥の下に回り込むと受け止めた。
『…ううう。』
『大丈夫?』
ナナは微笑みながら親鳥に言った。親鳥はまだ頭がクラクラするのか理解出来ないでいた。
『…ん?どうしただ俺は?お前は!?』
親鳥は慌ててナナの手から離れ距離をとった。
『俺を食べるつもりだな。そうはさせないぞ。』
>> 133
『ナナもう少しだな。頑張れ。』
『うん。頑張る。』
時間はかかったがナナは前より上手く飛べるようになった。
『ナナ少し時間をとってしまった。急がないと、プクがどうなるか分からない。オレの後について来れるか?』
『多分大丈夫だよ。早くプクさんの所に行こう。』
3匹は頷くと山の方に飛んで行った。たまにナナが落ちそうになったり、止まったりしたが、なんとか目的の場所にたどり着いた。辺りを見回した。背の高い木々はいっぱい生い茂っている。その中の1つに鷹の巣があった。その中に雛が数羽と逃げ回っているプクを見つけた。
『あっプクがいたぞ。まだ、生きている。』
プクはナナ達に気づき叫んだ。
『みんな助けてよ。』
必死に雛から逃げ回っている。
『待っていろ今から助けるからな。』
すると背後から羽音が近づいて来た。親鳥がナナ達に気づき飛んで来たのだ。
『お前達何者だ。ここから立ち去れ。』
そう言うと親鳥がナナ達目掛け襲って来た。ナナ達はなんとかよけた。だが、親鳥は何度も何度も襲って来る。巣の中ではプクが雛から追いかけられていた。
『待って。』
ナナが親鳥の前に立ちはだかった。
>> 132
『どうしたの?何か付いている?』
シロ達は横に手を振った。
『違う。ナナにも羽根があるだろう。それならナナも飛べると思ってな。どうなんだナナ?』
ナナは背中の羽根を見た。
『多分飛べるのは飛べると思うけど…。上手く飛べるかな?』
ナナは羽根を広げてみた。前の頃とは違ってかなり大きくなっていた。
バサバサ…
周りに風が起こった。シロ達がジッとナナの様子を見守っていた。ナナの体が少し浮かんだ。シロが唾を飲み込んだ。
バサバサ…
ついにナナが浮かび上がった。
『やった~!みんな浮かんだよ。ボク飛べるよ。』
ナナは少しずつ浮かび上がり始めた。
『ナナその調子だ。頑張れ。』
シロが応援をする。ナナは必死に羽ばたいている。しかし、上にどんどん上がるだけで、まだ自由に飛べている訳では無かった。
『浮かんだけど前に行けないよ。どうしたら良いのかな?』
ナナはシロ達を見た。
『こう羽ばたいたら前に行ける。』
シロが羽ばたいて見せた。
『これで良いのかな?』
シロの真似をしてみると前に進み始めた。
『やったのねん。前に行っているよん。』
ピンがナナの周りを飛び回った。
>> 131
動きの遅いプクが今まで捕まらない方が不思議だった。
『ねぇ…ボクはどうしたら良いかな?』
シロ達はナナを見ると飛んで近づいた。
『頼む助けてやってくれ。』
シロは手を合わせお願いした。
『死んでしまっているかもしれないけどねん。』
お願いをするシロの横でピンが呑気にそんな事を言った。シロはすかさずピンの頭を何発も殴った。
『冗談でもそんな事言うな。プクはオレ達の弟だろう?少しでも希望があるなら生きている事を祈ろうじゃないか。』
『兄さんすまないん。』
シロはピンの肩を軽く慰めるように叩いた。
『ナナだから頼む。助けてやってくれ。』
シロは拝むようにナナに頼んだ。
『うん。分かった。その場所に連れて行って。』
『助かった。こっちだ。』
ナナは歩き始めた。それにシロが気づいた。どう考えても遅すぎる。
『しまった。ナナは早く動けないのを忘れていた。』
シロ達は愕然とした。
『だったらナナも飛んだら良いのねん。』
何気なくピンがそんな事を言った。そうナナには羽根があるのだから、飛べるなら飛んだ方が早いはずだった。2匹はチラッとナナをみた。
>> 130
ナナはしつこく追いかけまわした。
ゼェゼェ…
2匹は走り回った性で息を切らせていた。
『ナナ…。もう勘弁して…くれ…。ゼェゼェ…。』
『嫌だ…。ゼェゼェ…。』
2匹は息を切らせながら言っていた。
『あんたらいい加減したらどうだい?』
キーは遠目に言った。
『ナナ、もう遅いから寝よう。』
『うん。実は今日はとても眠たかったの。みんなおやすみ。』
『おやすみ。』
トムスとキーは各々の巣に戻って行った。そのまま時間は過ぎ朝が来た。
『ナナ~~~ナナ起きろ~~~起きてくれ!!』
ナナが目を覚ますとシロとピンがナナの鼻先を飛び回っていた。
『あっおはよう。こんな早くからどうしたの?』
『プクが…プクが大変なんだ。』
シロは真っ青な顔をしてパタパタと飛び回っている。
『プクさんがどうかしたの?』
『鷹に連れ去られてしまった。もしかすると今頃は…。』
『えっ食べられたとか?』
ガーーーン
シロ達は飛ぶのを止め洞窟の見える木の枝に止まり落ち込んだ。そう小鳥達にとって大きな鳥は敵であり、食料にされても仕方ない事である。これが自然の摂理である。
>> 129
『当たり前だ。オレ達と一緒に見ているからな。』
トムスは真顔で言った。
『バカ言うでないよ。アタシ1羽で見ても綺麗だよ。』
そう言っている割には照れていた。その時、一筋の光が流れた。
『あっ流れ星だ!』
トムスがそう叫んだ。トムスとキーは手を合わせ何かをお祈りした。
『何をしているの?』
ナナには何をしているのか分からなかった。
『流れ星にお祈りをしたら願いが叶うんだ。ナナも流れ星を見たらお願いしてみたらどうだ?』
『本当に願いが叶うの?流れ星見えないかな?』
ナナは空を見上げて流れ星を探した。こういう時は不思議と流れないものだ。ナナも諦めかけていたその時、東の方から一筋の光が流れた。
『あっ流れ星…えっとえっと…うわぁ~。』
ナナは慌てて何かを祈った。何を祈ったかは今は伏せておこう。
『ナナちゃんと祈ったのか?』
『うん。なんとか間に合ったと思うよ。』
ナナはにっこり笑った。
『そうだ忘れていた。願い事は3回するんだぞ。』
『えっ~!何で先に言ってくれないの。』
ナナは怒ってトムスを追いかけまわした。
『ナナごめんごめん勘弁してくれよ。』
>> 128
『えぇぇぇぇぇぇっ!!そうなんだ。ならば何か分かるかもしれないね。』
ママは納得したようでナナを見上げた。
『今から行ってみたら居るかもしれないよ?』
ナナの問いかけにママは困った顔をした。
『行きたいけど、そろそろ帰らないといけないよ。』
そうもう帰らないといけない時間になっていた。
『そうだ。明日は休みだから早く来れるよ。明日にしよう。』
ママはそう言うと慌ただしく帰って行った。大きくなったナナはそれを見送った。だが、明日おじちゃんはいつもの場所に居るのだろうか?明日になったら分かる事だろう。それから日が暮れて行った。
『今日も星が綺麗だな。』
『本当だな。』
ナナとトムスは空を見上げていた。
『あんたら似合わないねぇ~。って言うか、普通は恋人同士が言うセリフだよ。』
キーは2匹を見て少し身震いをした。
『キーさんも一緒に見ようよ。』
ナナは笑顔で言った。
『あんたには負けるよ。』
キーはナナの大きくなった肩の上に止まった。そして星空を見上げた。
『ほらっ綺麗でしょう?』
『…本当に綺麗だね。こんなに綺麗だったとは今まで思わなかったよ。』
キーはそんな風に言った。
>> 127
『うん。そうだよ。それに他の動物の言葉も分かるんだって。』
『本当に!?それは凄い事だよ。』
ママは嬉しくて飛び跳ねた。ナナも一緒に飛び跳ねた。背の高さは逆になったが、仲の良さは変わらなかった。
『それにしてもナナ大きくなったな。この洞窟で暮らすのも不便になるね。どうしょうかな?』
ママは考え込んでしまった。ナナも一緒に考えるが良いアイデアは浮かばなかった。途方に暮れていた。
『それならおじちゃんに聞いたらどうだい?』
ママとナナは辺りを見回した。近くの壁の出っ張りにキーが止まっていた。
『そっか、おじちゃんなら何か知っているかもしれないね。』
ナナが嬉しそうに言った。しかし、ママは何か浮かない顔をしていた。
『ねぇ…さっきからおじちゃんおじちゃんって言っているけど誰なんだい?』
『そっかママは知らないよね。でも、前に池であった事があるよ。』
ママである少年は思い返していた。
『あっ思い出した。あのおじちゃんか。でも、何でおじちゃんが分かるんだい?』
『実はね。あのおじちゃんもドラゴンを育てていたんだって。』
ナナは微笑みながら言った。
>> 126
ナナはジェスチャーで口に手を持っていき、食べる仕草をした。
『これを食べろって事かい?』
ママはそう尋ねた。ナナは頷いてにっこり笑った。ママはしばらく眺めていたが、服で木の実を拭くと一口食べた。
『美味しい!!』
ママの顔が笑顔でいっぱいになった。
『こんな美味しいの食べた事無いよ。まるで出来立てのお菓子のようだ。』
ママは木の実を次から次と食べていった。あっという間に食べてしまった。ママは口についた汁を拭うと言った。
『これはナナが見つけたのかい?』
『ううん違うよ。おじちゃんに貰ったんだよ。』
ナナは笑顔でそう言った。
『そうか、おじちゃんに貰ったんだ………?な、ナナ今なんて言った?』
ママが急にそんな事を聞いてきた。ナナはもう一度言った。
『おじちゃんに貰った。』
『えっ…えっえぇぇぇぇ……。ナナの言葉が分かるぞ。何で分かるんだ?』
ママは1人頭を抱えながらうろちょろしている。
『それはね。木の実の性だよ。それを食べると言葉が分かるんだって。』
相変わらずの笑顔で話した。
『そうか…。ならこれからはナナの言葉が分かるのだね。』
>> 125
そして太陽が沈みだしいつものように遠くからママの足音が聞こえて来た。
『ママが来た。』
ナナは洞窟から顔を出しその方を見た。ランドセルをカタカタ言わせてママがやって来た。
『ナナこんにちは。』
洞窟を覗きそう言った。
キィーキィー
ナナも挨拶を返した。
『うわっ!?』
ママはなんとも言えない悲鳴を上げた。
『ナナどうしたんだい?こんなに大きくなって…?』
ママはナナの体を見て回った。
『1日でこんなに大きくなるなんて…。』
ママは驚きを隠せないでいた。
『ドラゴンってこんなに急に大きくなるんだね。』
ママは理屈抜きでそう判断したようだった。
『そうなるとクッキーをもっと持って来ないといけないかな…?』
ママはランドセルからいつものようにクッキーを出した。
『今日はこれで我慢してね。』
ナナの体を撫でながら言った。ナナはその時に木の実の事を思い出した。そして足下の木の実を拾い上げママの目の前に出した。
『なんだい?この木の実どうしたの?』
ママは木の実を受け取った。
『ママこれを食べてみて。』
ママにはまだ言葉は理解出来なかった。
>> 124
『ナナところで何故、急にデカくなったんだ?』
ナナは首を傾げた。それはそうだ。ナナ本人が一番知りたい事だからだ。トムスに言われるまでナナも気づいてなかったのだから…。
『分からない。なんでだろう…?』
『もしかしてその木の実の性かもな。』
ナナの足下にある赤い木の実を見てトムスは言った。
『でも、おじちゃんはそんな事は言ってなかったよ。』
『そう言われてみればそうだな。言葉は分かるようになるとは言っていたけどそれ以外の事は言ってなかったな。う~んなら何故なんだ?』
ナナとトムスは考え込んでしまった。
『そりゃ単純にナナはそんな生き物なんだよ。』
そう言ったのはキーだった。
『なるほど単純にそうなのかもしれないな。オレ達が難しく考え過ぎかもしれないな。』
トムスはそう言った。
『じゃあ、また大きくなってしまうのかな?』
『そうじゃないかな。まあ仕方ない事だ。生きているならそれが当たり前なんだよ。』
そう言われてナナはギジの姿を思い浮かべていた。
『そうか、あんな格好良くなれるんだ。』
トムスとキーは何の事か分からないでいた。
>> 123
『そこのデカいの邪魔だよ。』
振り返るとそこにはキーがいた。
『キーさんこんにちは。』
『なんだい!ナナかい!どこのどいつかと思ったよ。あんたこんなに大きかったかい?』
キーは飛び回りながらナナの大きさを確認していた。
『やっぱりボク大きくなったんだね。』
ナナが落ち込んでうつむいた。キーは状況が飲み込めずに尋ねた。
『ナナやい。なんで落ち込んでいるんだい?』
ナナは黙っている。すかさずトムスが答えた。
『あははは…。ママが驚くのが心配なんだよ。』
トムスの一言でキーは判断できた。
『ナナの事だからね。心配しすぎだね。ふふふ…。』
キーはいつものナナの事を思い返して思わず笑った。
『キーさん笑う事ないでしょう。』
ナナは口をとがらせスネてしまった。しかし、大きい性かあまり分からなかった。
『ふふふ…大丈夫だよ。ナナが心配するほど、ママも驚かないよ。ナナの事を一番知っているのはママなんだからさ。』
ナナはキーを見るとにっこり笑った。
『そうだよね。ママなら大丈夫だよね。良かった。』
トムスとキーは見合わすと"何が良かった"なのかと同時に思った。
>> 122
『ふぁ~。…ん?あっ太陽があんな所に。かなり寝ちゃった…。』
ナナは大きく背伸びをした。
ゴンッ
ナナは頭をぶつけた。そう洞窟の天井に頭をぶつけたのだった。
『あれっ?こんなに天井低かったかな?』
ナナは洞窟のあちこちを触りながら見ていた。
『なんだなんだ?』
走って来て叫んだのはトムスだった。
『トムスさんこんにちは。あれっトムスさんって、そんなに小さかったかな?』
『何を言っている。オレが小さくなったんじゃない。ナナがデカくなっているんだ。』
『えっボクが…。』
ナナはトムスが言った事でやっと大きくなった事に気がついた。
『さっき来た時は変わりなかったのに…。急にこんなにデカくなるとはなぁ…。』
トムスは再度ナナを見直した。ナナは以前の大きさの2倍になっていた。こんな短期間にこんなに大きくなるとは、こんな洞窟にいつまで居られるだろう。
『こりゃママが来たら驚くぞ。』
『本当に…。どうしょう…。』
ナナは不安そうにそう言った。
『まあ心配するな。なんとかなるさ。』
トムスはそう言うがナナは困った顔をしていた。するとナナの背中をつつく者がいた。
>> 121
『なんだ…。夢だったんだ。それにしても怖かったな。』
辺りを見回すとまだ暗かった。大して寝ていなかったようだった。
『もう少し寝ようかな…。おやすみ…ムニャムニャ…』
そう言いながら再び眠りについた。静かに朝がやってきた。洞窟の周りでは起きた動物や虫、鳥などが動き出していた。そんな中ナナは寝ていた。
『まだ、寝ているよ。良く寝る奴だな。』
ナナの周りで動物達が集まって来ていた。しかし、気づく事なく寝ていた。
『疲れているのかな?』
『そうかもしれませんね。』
話をしていたのはトムスとシェンだった。
『あっコイツ木の実を持って寝ているよ。』
ナナは寝ぼけてニヤリとした。
『うわっ寝ながら笑っているよ。夢の中で木の実でも食べているのか?』
『そうかもしれないですね。』
『本当に幸せそうだな。』
『また、後で来ましょう。』
『そうだな。それなら面白い所あるんだ。行ってみよう。』
トムスとシェンは2人でニヤニヤしながらどこかに行ってしまった。ナナはまだ起きなかった。2匹は気づかなかったのだが、ナナの体が少しずつ大きくなっていた。太陽が丁度真上に来た頃にナナは目覚めた。
>> 120
確かにナナの羽根は大きくなって飛べるようになったのだが、他の事に気を取られてしまうと羽ばたくのを止めてしまうのだった。
『なんで落ちたのかな?』
ナナは色々考えるが分かるはずは無かった。難しい理屈を理解するほど、体のように発達はしていなかった。
『誰かに飛び方を習わないとな。さて帰ろう。』
ナナは洞窟に帰って行った。今回は木の実はしっかりと手に握っていた。
『今度は落とさなかったぞ。今日は色々あったな…。眠くなったから寝ようっと。』
ナナは頭下に木の実を置くと眠りについた。
ゴロゴロゴロ…
『うわっ雷だ。怖いな。』
ナナはどこかの森の上を飛んでいた。空はみるみるうちに分厚い雲が広がり、遠くで雲が光っていた。
『あっあの山だ。もう少しだ。頑張ろう。』
ナナは必死に飛んでいた。
ピカッ
『うわぁ~~~っ』
ナナは雷に驚いて落下して行った。どんどん地面が近づいてくる。ナナは必死に羽ばたくが、落ちてしまう。
『なんで…なんで飛べないの?』
ナナがそうこうしている内に地面が目の前に迫った。
『うわっ!!』
ナナはその瞬間目が覚めた。
>> 119
ギジのような体になった自分の姿にパタの事など忘れボーっとしていた。
『…ナ…ナ……ナナ…おい、ナナ!!』
『うわっー!』
ナナはパタの大声にびっくりして転んだ。
『何を妄想に入り込んでいるんだ。そろそろ帰らないと夜行性の動物が増えて危ないぞ。』
『うわっ~っそんなの困るよ。』
『なら早く帰れ。』
そう言うとパタは飛んで行ってしまった。
『パタさ~ん先に行かないでよ。』
ナナは駆け出したが飛んでいるのと走るのでは差がありすぎて追いつかない。ナナは仕方なく歩き始めた。
『うわぁ~大きなお月様だな。』
その時だ。ナナの背中がゴキゴキとなった。
『…ん?なんだなんだ?』
それは背中と言うより羽根が鳴ったようだった。
『あれっ羽根が大きくなったかな?ちょっと動かしてみよう。』
パタパタ…
ナナの体が地面から少し離れた。
『あれっなんか浮いているよ。』
ナナはみるみるうちに3mぐらいまで浮かんでいた。
『ボク飛べるようになった…?』
ヒュー
ドスン
そう言った瞬間に落ちてしまった。
『イタタタ…。お尻が痛い…。』
ナナはお尻をさすっていた。
>> 115
『ナナ、それでは私は行くがいずれ迎えに来るからな。その理由は今は分からないだろうが、その時には分かるだろう。それじゃな。』
バサバサ…
…
パタはまるで自分の子供に言うように言った。ナナはニコニコしながら聞いている。
『さっき、野良犬さん達に襲われちゃった。』
そう言いながらもまだ、笑顔だった。
『ナナ…襲われたのに何笑っている。それで大丈夫だったのか?』
パタは心配そうに聞いた。
『うん。とっても強いドラゴンさんに会ったから。一鳴きで野良犬さん達逃げちゃった。格好良かったなギジさん。』
ナナはギジの事を思い出していた。
『何っ仲間のドラゴンに会ったのか?』
パタは驚いたように聞いた。
『うん。パタさんが言ったようにボクはドララゴンだったよ。』
ナナはニッコリと微笑んだ。
『ワシの思った通りだったな。やはりナナはドラゴン族だったか。』
『じゃあボクもあんなに大きくなるんだね。』
ナナは大きく手を広げた。しかし、ここで一つ言っておこう。実はパタはほとんど目は見えていない。コウモリとは口からの超音波で物を捉えるのだ。だから、ナナと分かったのも大きさで判断していた。
『そうだな。前も言ったがあの洞窟にも居れなくなるな。その時の事も考えないといけなくなるな。』
『そっかぁ~。』
ナナは自分の将来の姿を思い出していた。
>> 114
『ナナ、それでは私は行くがいずれ迎えに来るからな。その理由は今は分からないだろうが、その時には分かるだろう。それじゃな。』
バサバサ…
ギジは羽根を広げ飛んで行ってしまった。ナナは黙ってそれを見ていた。空には満月がかなりの高さまで登っていた。
『あっ帰らなきゃな。』
ナナは夜の森の中を歩き始めた。野良犬達が逃げた方にある道をトボトボと歩いて帰った。
『こんな事なら洞窟まで送ってもらったら良かったな…。なんか寂しいな…。』
ナナそんな事をぼやいていた。
パタパタ…
暗闇に羽ばたく音がした。
『よう、ナナこんな所で何をしておる?』
そう言って木の枝に止まったのはパタだった。
『パタさん。こんばんは。パタさんこそ何をしているの?』
『ワシらの活動は夜だからな。今は餌を探している。そんな事よりナナこんな所を歩いていると、悪い奴らに襲われるぞ。』
パタはまるで自分の子供に言うように言った。ナナはニコニコしながら聞いている。
『さっき、野良犬さん達に襲われちゃった。』
そう言いながらもまだ、笑顔だった。
『ナナ…襲われたのに何笑っている。それで大丈夫だったのか?』
- << 119 パタはまるで自分の子供に言うように言った。ナナはニコニコしながら聞いている。 『さっき、野良犬さん達に襲われちゃった。』 そう言いながらもまだ、笑顔だった。 『ナナ…襲われたのに何笑っている。それで大丈夫だったのか?』 パタは心配そうに聞いた。 『うん。とっても強いドラゴンさんに会ったから。一鳴きで野良犬さん達逃げちゃった。格好良かったなギジさん。』 ナナはギジの事を思い出していた。 『何っ仲間のドラゴンに会ったのか?』 パタは驚いたように聞いた。 『うん。パタさんが言ったようにボクはドララゴンだったよ。』 ナナはニッコリと微笑んだ。 『ワシの思った通りだったな。やはりナナはドラゴン族だったか。』 『じゃあボクもあんなに大きくなるんだね。』 ナナは大きく手を広げた。しかし、ここで一つ言っておこう。実はパタはほとんど目は見えていない。コウモリとは口からの超音波で物を捉えるのだ。だから、ナナと分かったのも大きさで判断していた。 『そうだな。前も言ったがあの洞窟にも居れなくなるな。その時の事も考えないといけなくなるな。』 『そっかぁ~。』 ナナは自分の将来の姿を思い出していた。
>> 112
『なるほどな。それで知っていたのか。』
ギジは話を聞いて理解した。
『ガミは今はドラゴンの山に居る。私もそうだがその山にしかドラゴンはい…
『どうしたの?』
ギジはしばらく考えてからこう聞いた。
『ナナ、お前の卵の色を覚えているか?白かったか、それとも七色だったか?』
ナナは必死になって考えていた。
『あのう…わかんない。』
実はナナには色の観念が無かったのだ。だから、色と聞かれても分からなかった。だが、ギジはその事を理解していたのか、首に掛かっている首飾りを見せた。
『ナナは色が分からないのだろう?七色とはこれだ。』
ナナはそれを見て頷いた。ギジが付けていたのは七色に輝く貝殻の首飾りだった。
『あっそれだ。その色だったよ。』
『そうか。ならば、ナナは王族の王子だな。これからは言葉には気をつけないとな。あははは…。』』
ギジは笑ってそう言った。
『ボクは王族なんだぁ~。それで王族って何?』
ギジは転けそうになった。ナナが全ての言葉を理解出来ない事を忘れていた。
『王族とはドラゴンの頂点に立つ者の事を言う。とは言っても理解出来ないかな?』
『うん。わかんない。』
ナナは恥ずかしそうにした。
『まあ、いずれ分かるだろう。』
ギジは少し呆れたように言った。そして遠くを見つめた。その先にはドラゴンの山があるのだろうか…。
>> 111
『なるほどな。それで知っていたのか。』
ギジは話を聞いて理解した。
『ガミは今はドラゴンの山に居る。私もそうだがその山にしかドラゴンはいない。たまに、はぐれドラゴンって言ってお前達のように違う場所で生まれ育つ者も居るがな。それとドラゴン王の子供は外界で生まれる。』
『そうか。ドラゴンの山に居るんだね。……ところで、そのはぐれドラゴンとドラゴン王の子供って何?』
ナナのいつものが始まった。ギジは嫌がる事もなく説明した。
『はぐれドラゴンとは私達のような一般のドラゴンが外界で生まれ育った事を言う。ガミもその1匹だ。たまに、外界を旅している時に産み落とすドラゴンがいるのだ。最近はそうならない為の掟もいくつかあるのだが、その中の1つに、卵を拾い集めるドラゴン達がいる。私がそのドラゴンだ。後、ドラゴン王の子供については敢えて外界で卵を産む。これは昔から王族の掟だ。何故、そんな事をするのかは分からないが、その卵は七色に輝いているらしい。まだ私は見た事はないけどな。』
『へぇ~なんか凄いね。ボクもはぐれドラゴンなんだね。』
ナナはギジに向かって微笑んだ。しかし、ギジはナナを見て黙っていた。
- << 114 『どうしたの?』 ギジはしばらく考えてからこう聞いた。 『ナナ、お前の卵の色を覚えているか?白かったか、それとも七色だったか?』 ナナは必死になって考えていた。 『あのう…わかんない。』 実はナナには色の観念が無かったのだ。だから、色と聞かれても分からなかった。だが、ギジはその事を理解していたのか、首に掛かっている首飾りを見せた。 『ナナは色が分からないのだろう?七色とはこれだ。』 ナナはそれを見て頷いた。ギジが付けていたのは七色に輝く貝殻の首飾りだった。 『あっそれだ。その色だったよ。』 『そうか。ならば、ナナは王族の王子だな。これからは言葉には気をつけないとな。あははは…。』』 ギジは笑ってそう言った。 『ボクは王族なんだぁ~。それで王族って何?』 ギジは転けそうになった。ナナが全ての言葉を理解出来ない事を忘れていた。 『王族とはドラゴンの頂点に立つ者の事を言う。とは言っても理解出来ないかな?』 『うん。わかんない。』 ナナは恥ずかしそうにした。 『まあ、いずれ分かるだろう。』 ギジは少し呆れたように言った。そして遠くを見つめた。その先にはドラゴンの山があるのだろうか…。
>> 108
これが負け犬の遠吠えとはこれの事だろうか…。
キィーーーーーーッ!!
大きなドラゴンは再び大きな声で鳴いた。野良犬達はどこともなく逃げて…
大きなドラゴンは羽ばたくのを止めナナを見た。
『名前を聞いて無かったのだけど…。』
ナナは申し訳なさそうに言った。
『あっそうだったな。私の名前はギジだ。よろしくな。』
ギジは紳士的に挨拶をした。ナナにとっては初めてのドラゴンだ。もう少しドラゴンのを聞きたいと思っていた。空には満月が見えて来た。心地よい風が吹いた。
『あのう…もし良かったらお話しませんか?』
『…ん?もしかしてドラゴン族の事を聞きたいのか?』
ナナは頷いた。
『分かった少しだけ話をしよう。』
ギジはナナの前に座った。
『さて、何から話そうか?』
『あのう…。さっき"お前も人間に育てられたみたいだな"って言ったみたいだけど、あれってギジさんもって事なの?』
ギジは頭を横に振った。少し笑うと言った。
『それは違う。私は普通にドラゴンの下で生まれ育った。それはガミと言うドラゴンの事だ。この近くで生まれ育てられたと以前言っていたからな。』
ナナはやっぱりと思った。
『そのガミさんは今どこにいるのですか?』
『何故、そんな事を聞く?ナナはガミの事を知っているのか?』
ナナは頷いておじちゃんの事を説明した。
☆アルミさんへ
毎回 ほのぼのした気持ちで❤読ませて頂いてます。
こんな可愛らしいお話🐲💕私には、書けませんわぁぁ💦
個人的な意見(?)として、ジュンちゃんが お気に入りのキャラです💖💖🎀💖💖
>> 107
これが負け犬の遠吠えとはこれの事だろうか…。
キィーーーーーーッ!!
大きなドラゴンは再び大きな声で鳴いた。野良犬達はどこともなく逃げて行った。
『ちっちゃいの大丈夫か?』
大きなドラゴンは振り返るとナナにそう聞いた。
『うん。大丈夫だよ。ありがとう。』
『そうか。それなら良かった。ところでお前はドラゴンだな。』
ナナは頭を捻った。
『えっ違うよ。ボクはナナだよ。ドラゴンって名前じゃないよ。』
大きなドラゴンは呆れた。
『違う違う名前の事じゃなくて、俺と一緒でドラゴン族だろうと聞いているのだ。』
『あっ!』
ナナは以前、コウモリのパタが言っていた事を思い出した。
『どうした?』
『多分だけど、ドラゴンだと思う。前にそう言われたよ。ボクには良くわからないのだけど。』
『分からないとは面白い。』
そう言うと大きなドラゴンはナナの体を匂った。
『お前も人間に育てられたみたいだな。』
ナナは考えている。
『お前はまだ幼いから分からないようだな。まあ良い。それじゃな。』
大きなドラゴンはそう言うと飛び立とうとした。
『あのう…。』
『どうした?』
- << 111 大きなドラゴンは羽ばたくのを止めナナを見た。 『名前を聞いて無かったのだけど…。』 ナナは申し訳なさそうに言った。 『あっそうだったな。私の名前はギジだ。よろしくな。』 ギジは紳士的に挨拶をした。ナナにとっては初めてのドラゴンだ。もう少しドラゴンのを聞きたいと思っていた。空には満月が見えて来た。心地よい風が吹いた。 『あのう…もし良かったらお話しませんか?』 『…ん?もしかしてドラゴン族の事を聞きたいのか?』 ナナは頷いた。 『分かった少しだけ話をしよう。』 ギジはナナの前に座った。 『さて、何から話そうか?』 『あのう…。さっき"お前も人間に育てられたみたいだな"って言ったみたいだけど、あれってギジさんもって事なの?』 ギジは頭を横に振った。少し笑うと言った。 『それは違う。私は普通にドラゴンの下で生まれ育った。それはガミと言うドラゴンの事だ。この近くで生まれ育てられたと以前言っていたからな。』 ナナはやっぱりと思った。 『そのガミさんは今どこにいるのですか?』 『何故、そんな事を聞く?ナナはガミの事を知っているのか?』 ナナは頷いておじちゃんの事を説明した。
>> 106
ヒュー
バサバサバサ…
風と共に飛んで来たのは、ナナよりも遥かに大きいドラゴンだった。
『な、何だお前は?』
額に傷のある野良犬が叫んだ。
『みんなで寄ってたかって何をしている。』
野良犬達は後ずさりをする。大きいドラゴンは大きな口から野良犬達よりデカい牙を見せた。
『な、何だ。や、やろうと言うのか?やれるならやってみやがれ。』
額に傷のある野良犬は、そうは言っているがかなり強がっていた。相手は数倍はあるドラゴンだ。勝てる訳が無かった。
『別に私は構わないが、痛い目に合うのはアナタ達ですよ。』
大きなドラゴンは紳士的な言い方で、野良犬達を挑発した。
『お前達この生意気な奴をやっちまえ。』
額に傷のある野良犬がそう言うと他の野良犬達が大きいドラゴンを取り囲んだ。
ガルルル…
『本当にやる気ですか?それなら仕方ない。』
大きなドラゴンは羽根を広げ大きな口を開けた。
キィーーーーーーッ!!
地面が揺れるような大きな声で一鳴きした。
キャインキャイン…
野良犬達は驚き飛んで逃げて言った。
ワンワンワン…
少し離れた所でこっちに向かって吠えていた。
>> 105
左上の方から何か近づく音がした。それは野良犬達だった。微かに姿が見えている。
『ヤバいな。どこかに逃げないと…。』
しかし、隠れられそうな場所は無かった。
『どうしょう…。』
『はははは…。』
不意に笑い声がした。そう野良犬達が降りて来てしまったのだ。
『なんだコイツ、落ちたのにピンピンしてやがる。運の良いやろうだ。』
額に傷のある野良犬が言った。
『兄貴やっちまいますか?』
『そうだな。やっちまえ!』
野良犬は一斉に飛びかかって来た。ナナは何とかよけたが、野良犬の攻撃はやまなかった。
『止めてよ。何でそんな事をするの?』
ナナは大きな声で言った。
『この世は弱肉強食なんだよ。弱い者は強い者に食われる。これがこの世の摂理だ。だから観念して俺達に食べられろ。』
野良犬達の口からは鋭い牙が光っていた。ナナは完全に囲まれてしまった。
『このままじゃ食べられちゃうよ。どうしよう。』
ナナは野良犬達から離れるが少しずつ囲まれていた。もう駄目だと思った瞬間。
キィーキィー
バサバサバサ…
上空から大きな何かが飛んで来た。ナナと野良犬達は空を見上げた。
>> 104
『あの時は油断したが、今度はそうはいかん。』
野良犬達がジリジリと近づいて来る。ナナはゆっくりと後ろに下がった。枝の曲がった木にぶつかった。
『大人しく俺達の餌になりな。』
斑尾の野良犬がニヤリと笑う。ナナは木をよけ更に後ろに下がった。
ガラッ…
『うわっ!?』
気が付かなかったが、森の奥は崖のような急な坂になっていた。草の性で見えなかったのだ。ナナは気づかないで滑り落ちてしまった。
ガラガラ…
『うわっうわっうわっ~。』
ナナは凄い勢いで落ちて行った。野良犬達は上から覗き言った。
『これは、死んだかもな。』
『兄貴どうします?』
『面倒だが、こっちから降りてみるか。せっかくの食事なんだからな。』
野良犬達は遠回りだが、下に降りる緩やかな道を降りて行った。
『いたたたた…。』
ナナは無事だった。多少の傷はあったが、命に関わるような怪我はなかった。
『ここはどこだ?』
上を見ると枝の曲がった木が見えた。
『あそこから落ちちゃったんだ。』
ナナは腕に出来た傷を舐めながら、辺りを見回した。
『うわぁ~。綺麗だな。』
そこら一面に赤や青や黄色い花など色んな花が咲いていた。
>> 103
この森の中に落ちているよ。』
キリは森の一角を指した。
『ほら、そこの枝が曲がっている木があるだろう。その辺りを探したらあるよ。』
『ありがとう。探して見るよ。』
その木の位置は道から5mぐらいの所にあった。
『それと一つ言っておくが、くれぐれもその奥には行くなよ。お前には危険だからな。何があっても行くなよ。』
『うん。分かった。気をつけるよ。』
『それじゃ俺はこれで行くよ。またな。』
キリはそう言うと鼻歌を歌いながら帰って行った。
『さて、探しに行こうかな。』
ナナは道の横の草村に入り木の方に向かった。
『この辺りにあるって言っていたよな。どこだ?』
ナナは枝の曲がった木の根元を探した。
『あっあった。』
ナナは赤い木の実を見つけ拾い上げた。
ガルルル…
突然、近くから唸り声が聞こえた。草村に何かが居るのが分かった。
『誰か居るの?』
草村からそれは現れた。そうナナが倒した野良犬達だった。キリが気をつけろと言っていたのはこの事なんだろうか…。
『ヒヒヒ…。さっきは良くもやってくれたな。今度は手加減しないぞ。』
額に傷のある野良犬が言った。野良犬はあの時より増えていた。
>> 102
『そうか、なら気をつけてな。』
アントはそう言うとどこかに消えて行った。ナナは早速木の実を探す為に池の方に向かった。今回は誰もついて来なかった。ナナも慌てていたから何も考えないで洞窟を離れた。
『あっ思い出した。野良犬さんとゴッツンコした時に落としたんだ。』
ナナどこで落としたのか思い出した。その場所に向かった。
『確かこの辺だったな…。』
『おいおい、そこのお前。』
いきなりどこかから声がした。ナナは辺りを見回した。しかし、辺りには何も居なかった。
『おい、どこ見てやがる。下だよ下。』
大概こういう時は上か下に居るものだ。ナナは下を向くとそこにはアリがいた。
『お前がアント隊長が言っていたナナか?』
『うん。ボクはナナだよ。君は誰なの?』
ナナはそのアリに近づきジッと見た。
『おいおい近づき過ぎだ。お前の鼻息で飛ばされそうだ。』
『ごめん。』
ナナは離れると座った。
『それなら大丈夫だ。俺はアント隊の副隊長のキリだ。よろしくな。』
『よろしくぅ~。』
ナナは微笑んだ。
『お前は木の実を探しているのだろう?』
『うん。』
『それなら俺が分かる。
>> 101
『何っ木の実を落とした!?そんな大事な物を落とすとは、ダメな奴だな。』
アントは腕を組んで怒っている。アント達にとって木の実は貴重な食料で、めったに食べられない物だった。
『それでどんな木の実なんだ?』
ナナは思い出しながら言った。
『えっと…赤い色をしていて、この位の大きさだよ。味はクッキーのような味だった。』
アントは想像しながら涎を垂らしてボーっとしている。我にかえったのか涎を拭くと言った。
『それなら俺が探してやる。』
『えっ探してくれるの?』
『我々アリの情報網をナメるなよ。』
アントは辺りを見渡した。何かを見つけたのか歩いて行った。良く見ると仲間のアリがいた。そして何かを話しているようだった。すると仲間のアリがどこかに消えて行った。しばらくするとまた戻って来た。また、何かを話しているようだった。話が終わったのかアントがナナに言った。
『分かったよ。ここから池に向う途中に落ちているらしい。』
『本当に?アント凄いね。』
アントは自慢げにポーズをとった。
『だからアリの情報網をナメるなと言っただろう。』
『うん。本当に凄いね。早速行ってみるよ。』
>> 100
ナナは2人が見えなくなるまで見送った。
『ママ行っちゃった…。』
ナナは1匹洞窟の中へ帰って行った。ナナはする事もないのでゴロゴロしていた。
『あっそうだ。木の実を探さなきゃ。しかし、どこに落としたのだろう?』
ナナは色々考えていた。
カサカサ…
足下で音がした。下を見るとアリのアントがいた。下からナナを見上げていた。
『よっ元気か?』
『アントさんこんにちは。』
いつものように丁寧に挨拶をした。
『挨拶を忘れないとはいつも感心だな。』
『ママが挨拶は良い事だからちゃんとしようねって言っていたから。』
『そうか、そのママとやらも感心だな。俺達は挨拶が無かったら何にも出来ないからな。みんなが好き勝手していたら、食べ物を集める事さえ出来ない。』
『やっぱり挨拶は大切なんだね。』
『そう言う事だ。ところで、さっき何か悩んでいたようだが、どうした?』
アントはさっきナナが木の実の事を考えているのを見ていたのだ。
『あっそうだった。実は木の実を貰ったのだけど、どこかで落としたみたいで、どこに落としたか考えていたんだよ。』
ナナは更に困った顔をした。
>> 99
ママには理解出来ないが、今日はジュンちゃんが居るから都合が良かった。
『ジュンちゃん何て言っているの?』
『首の紐を外してって。ここにちゃんと居るからって。』
ジュンちゃんは聞いた通りにママに言った。
『そうか。首の紐がキツかったのか。そうだよね。ナナは良い子だからここに居るよね。それなら外してあげるよ。』
ママは紐を外してあげた。ナナは喜んでいるが、お腹いっぱいなのは変わらない。しかし、ナナははしゃいでジュンちゃんと一緒に飛び跳ね回っていた。
『良かった。ナナが元気になった。やっぱり紐が嫌だったんだね。』
ママは喜んでいた。
ピッピピピピ…
突然、ママの時計が鳴った。慌ててそれを止めた。
『ジュンちゃん時間だ。そろそろ帰らないと。』
ジュンちゃんは走り回っていたが、止まると悲しそうな顔をした。
『もう少し遊びたいな…。』
『ダメだよ。早く帰らないとママが心配するよ。ワガママ言わないって約束したでしょう。』
『うん…。分かった。』
そしてナナに近づき頭を撫でた。
『ナナちゃんまたね。』
別れの挨拶をした。
『ナナまた明日ね。』
2人はそう言うと帰って行った。
>> 98
ジュンちゃんは袋に入っていたクッキーをナナにあげた。ナナはそれを受け取ったが、しばらく見ていた。それは当然だった。池で腹一杯に木の実を食べたのだから、クッキーまでは入らなかった。そんな事を知らない2人は心配をしている。
『ナナちゃんどうしたの?お兄ちゃん、ナナ食べないよ。』
ジュンちゃんは心配そうにナナを見てママに言った。
『ナナ、具合でも悪いのかな?』
ママも心配になりナナに近づいた。
『大丈夫だよ。』
ナナは腹一杯になっていたが無理やりクッキーを食べた。
『美味しいね。』
ナナは半笑いで言った。
『お兄ちゃん美味しいって。でも、なんか苦しそうだよね。』
ママは額に手をあてた。
『熱はないから大丈夫だと思うけど心配だな。』
ママは座り込んでナナを見つめた。ナナは苦しいのを我慢して無理やりに笑って見せた。
『ナナちゃん本当に大丈夫なの?』
ママは初めてだったので心配で仕方なかった。ナナはこの時、ある考えが浮かんだ。それは紐が苦しいと言う事にしようと思った。
『ママあのね。首の紐が苦しいの。ナナはここにちゃんと居るから外して。』
ナナは訴えかけるようにママに言った。
>> 97
ボクもナナの言葉が分かったらな…。』
ママは悲しそうな顔をしてナナを撫でた。その時、ナナはある事を思い出した。そう池でおじちゃんが言っていた事を思い出したのだ。
《ナナちゃん、キミのママにこの木の実を食べさせたら言葉が分かるようになると思うから、一度食べさせてみたらどうだい?》
ナナはおじちゃんに貰った木の実を探した。しかし、持っていた木の実がどこにも無かった。貰った時に手に持っていたのだが、どこかで落としたようだった。
『あれっどこかに落としちゃった。』
ママはナナの様子にどうしたか尋ねた。
『ナナ、どうしたの?何か探しているのかい?』
ナナはすぐには答え無かった。良く考えたらその話をしたら勝手に歩き回った事がバレると思ったからだ。
『ううん。何でもない。』
ママはジュンちゃんを見た。ジュンちゃんは何故見られたかわかり答えた。
『何でも無いって。』
『そっか…。』
ママには言葉は分からないが、ナナの気持ちの変化には敏感だった。
『お兄ちゃん、これあげてよい?』
ジュンちゃんが見せたのはいつものクッキーだった。
『うん。あげて良いよ。』
>> 96
『えっジュンちゃん。今何て言った?』
ママである少年は尋ねた。ジュンちゃんはニコニコしながらもう一度言った。
『ナナちゃんは野良犬とゴッツンコしたって言っていたよ。』
『ジュンちゃんはナナの言葉が分かるのかい?』
ママは驚いて聞いた。
『うん。分かるよ。お兄ちゃんは分からないの?』
ジュンちゃんはニコニコしながら言った。
『分からないよ。何故ジュンちゃんには分かるんだろう?』
ママは1人悩んでいた。そんなママの下にナナが近づいて来た。そしてママの顔を覗き込んだ。
『うわっビックリした。そんなに顔を近づけるなよ。』
ママは目を開けるとそこにナナが居たから驚いた。ナナの頭を撫でた。
『ねぇ…ナナ、妹のジュンちゃんだよ。一度しか会ってないから覚えてないかな?』
ママはナナにそう尋ねた。ナナは首を横に振った。
『前居たところで見たの覚えているよ。』
しかし、ママにはナナの鳴き声しか聞こえて無かった。ママはジュンちゃんに尋ねた。
『ナナは何て言っているかわかる?』
『うん。覚えているって言っているよ。』
『そうか。ジュンちゃん良かったね。ナナが怖がったらどうしようかと思ったよ。
>> 95
『ナナ、オレ達は帰るからな。また、明日な。』
トムス達はいつものように帰って行った。ナナは1匹でママが来るのを待っていた。
『お兄ちゃん待ってぇ~。足が痛いよ。』
『だから、ついて来るなって言っただろう。』
森の道を2人の子供が歩いて来た。1人はママで小さい女の子を連れていた。
『ジュンちゃん、ここだよ。ナナを見ても驚いたらダメだぞ。』
『うん。お兄ちゃん分かった。』
この女の子は、ママの妹だった。2人はそっと洞窟を覗いた。そこにはナナがニコニコしながら2人を見ていた。
『うわぁ~ナナちゃん大きくなっている~。ナナちゃんこんにちは。』
ジュンちゃんはお辞儀をした。ナナもそれを見て真似をした。
『わぁ~い。ナナちゃんも挨拶したよ。』
『本当だね。ナナは覚えていたのかな?一度しかあってないから警戒するかと思った。』
ママはナナの体を撫でながら言った。
『あれ?また、こんな所に傷がある。ナナどうしたんだい?』
『さっき、野良犬さんとゴッツンコしちゃった。』
ママには相変わらずキィーとしか聞こえ無かった。
『う~ん?何か言っているけど分からないや。』
『野良犬とゴッツンコしたって。』
>> 94
『ナナ凄いな。野良犬を倒すなんて……ん?どうしたナナ…?』
ナナを見るといっぱいの涙を流していた。
『トムスさん恐かったよ~。』
ナナはわんわんと泣き出した。ナナはとっさに行動しただけで本来は恐かったのだ。トムスはナナの体を駆け上がるとヨシヨシをした。
『ナナ頑張ったな。』
『うん…。うわぁ~ん。』
ナナはよりいっそうに泣いた。ナナはしばらく泣いていた。
『ナナ…。いい加減泣きやめよ。ママ来ちまうぞ。』
困ったトムスはそんな事を言った。
『あっ本当だ。早く帰ろう。』
今泣いたカラスはどこに言ったのやら、ナナは洞窟に向かって歩き出した。野良犬達はまだ、気絶しているようで、倒れたままだった。
『しかし、驚きましたね。ナナがあんなに強いとは。』
『怒らせないようにしないとな。』
『そうですね。』
トムスとシェンが苦笑いした。
『トムスさん、シェンさん何を言っているの?』
『…ん。何でも無いよ。さあ、急いだ急いだ。』
トムスはナナを急かした。やっと洞窟に着いた。
『ナナ、そろそろママが来るから紐はしておけよ。』
『うん。分かった。』
ナナは地面にある紐を首に掛けた。
>> 93
『ごちゃごちゃと言ってないで大人しくしろ。ねぇ~兄貴そうですよね。』
マダラ模様の1匹が言った。
『おう、お前ら大人しくしろ。』
兄貴がそう言って前に出た。しかし、ナナは怯む事なく睨んでいる。
『まさか、抵抗しようと思っているのか?』
野良犬達は牙を剥いて威嚇をしている。しかし、ナナは全然怯む気配が無かった。どちらかと言うと向かって行こうしていた。
『お前らやっちまえ!!』
その号令とともに野良犬達がナナを目掛けて飛びかかった。
キャイーン
野良犬の鳴き声が響いた。なんとナナが飛びかかった野良犬の1匹を突き飛ばしたのである。
『刃向かうつもりか?』
野良犬達はまた、ナナ目掛けて飛びかかった。
キャイーンキャイーン
今度は2匹の野良犬が弾き飛ばされた。2匹は動けなくなった。
『兄貴、こいつ強いですよ。』
斑尾の1匹が言った。
『うるさい。みんなでかかれば負けやしない。一斉にかかれ!』
キャイーンキャイーンキャイーーーン
残りの3匹の野良犬が弾き飛ばされた。5匹の野良犬はピクピクとして倒れている。ナナの本能的な力が野良犬達を倒したのだ。トムス達がナナに駆け寄った。
>> 92
ナナ達は洞窟に向かって帰っていた。近くの草村がガサガサと音がした。
『…ん?』
ナナは立ち止まりその方を見た。
ガルルル…
『ナナ、ヤバいぞ…。逃げろ!』
『なんで?』
『なんでじゃない。早く逃げろ!』
トムスがそう言うがナナは動こうとしない。草村から現れたのは、5匹の野良犬だった。
『兄貴…旨そうなのがいっぱい居ますぜ。』
野良犬のマダラ模様の1匹がそんな事を言った。真ん中の額に大きな傷のある野良犬がニヤリと笑った。多分、そいつが兄貴だろう。
『キミ達、大人しくしな。抵抗しなければ、苦しまずにあの世に行けるからね。ヒヒヒ…。』
その笑った大きな口に鋭い歯が見えた。
『ナナ、野良犬だ。早く逃げろって!食べられるぞ!』
トムスは角を持って必死に言った。
『トムスさん。野良犬さんて悪い事するの?』
さっきまで笑っていたナナがキリッとして言った。
『ああ、こいつらは悪いヤツらだ。』
『分かりました。トムスさん達は降りて逃げて下さい。』
ナナはトムス達を掴むと地面に下ろした。そう言っている間にナナ達は囲まれていた。
>> 91
『いつか見つかったら良いね。』
キィーがボソリと言った。みんなも頷いた。
『ねぇおじちゃん。ボクが見つけてあげるよ。ボクが大きくなって飛べるようになったらね。空を自由に飛び回ってね。それにガミさんも一緒に探してくれるよ。』
ナナは微笑むとおじちゃんの手を握った。するとおじちゃんは下を向いた。
『ナナちゃんありがとう。私の代わりに探してくれるのか。本当にありがとう。』
おじちゃんの目からは溢れ出た涙でいっぱいだった。ナナには何故泣いているのかさえ分からなかった。
『おじちゃん、どうしたの?』
『何でもないよ。本当に頼んだよ。』
『うん。絶対見つけて、おじちゃんに持ってくるよ。』
そう言っているナナをおじちゃんは撫でていた。ナナも嬉しそうにしている。
カーカー…
遠くでカラスの鳴く声が聞こえた。
『おい、ナナそろそろ戻ろうか?太陽も低くなってきたしな。また、ママが心配するぞ。』
トムスがそう言うといつものように頭の上に登った。
『おじちゃん、またね。』
ナナはおじちゃんに手を振った。
『ああ、それじゃまたね。』
おじちゃんも手を振り返した。そして見送ると再び釣りを始めた。
>> 90
しばらく、みんなと話をしながらおじちゃんは釣りを、後は各々で好きな事をして遊んだ。その時、凄い風が吹いた。みんなは空を見上げ見回した。何か居るようなんだが、ナナ以外には見えていなかった。
『うわぁ~大きいな。』
ナナは上を見たままそんな事を言った。
『ナナ、お前には見えるのか?』
『うん。ほらあそこに。』
ナナは指差したがそこには雲しか見えていなかった。
『何にも見えませんけれどね…。』
シェンが指で輪を作り覗いている。するとおじちゃんが言った。
『私にはもう見えないが、あれはガミだと思う。ナナちゃんは同じドラゴンだから見えるのだろうね。ドラゴンは成長するにつれて仲間以外には見えなくなるらしいのだ。ただ、もう一つの木の実があったら見る事も出来るみたいなんだが…。』
おじちゃんは黙ってしまった。
『もう一つの木の実か…。それがあったら見えるのですよね。』
シェンが尋ねる。おじちゃんはシェンを見た。
『ああ…。しかし、それがどこにあるかわからないのだよ。ガミに聞いたが、わからないそうだ。いつかそれを見つけ、もう一度ガミを見てみたいものだ。』
おじちゃんは空を見上げた。
>> 89
おじちゃんは木の実を1個口に入れ食べた。
『それからだよ。全ての動物の声が分かるようになったのは…。まあ、こんな訳なんだが分かったかな?』
みんなは頷いた。
『この木の実はいつもガミが置いて行ってくれるんだ。ただ、私には声は聞こえるのだけど、その姿はもう見えないのだよ。大人になってしまったからなのかもしれないね…。』
おじちゃんは釣り竿に餌をつけ投げ込んだ。
『でも、ナナは見えているんだろう?』
『ああ、ナナちゃんは見えているよ。最初会った時はガミかと思って驚いたけど、もう大人になっているから違う事に気が付いたよ。』
おじちゃんの釣り竿がピンピンと引いた。3度目引いた時にグッと引く。すると魚がかかっていて竿を引っ張っている。おじちゃんは竿を引くと糸の先には魚が食い付いていた。動く魚を捕まえると針から外し池に戻した。キャッチ&リリースと言う奴だ。
『ナナちゃん、キミのママにこの木の実を食べさせたら言葉が分かるようになると思うから、一度食べさせてみたらどうだい?』
おじちゃんは木の実を取るとナナに手渡した。
『うん。分かった。ママにあげてみる。』
ナナはニッコリと微笑んだ。
>> 88
『その卵が何の卵か知りたくて温めたんだ。それで生まれたのがドラゴンだったんだ。そこにいるドラゴンようなね。』
おじちゃんはナナを指差した。みんなは一斉にナナを見た。何故かナナは恥ずかしそうにしていた。
『そのドラゴンとしばらく一緒に過ごしたのだが、大きくなって来たからこの近くの洞窟で育てる事にしたんだ。』
『えっオレ達の居る洞窟かい?』
トムスは驚いたように聞いた。
『ああ、そうだよ。キミ達の洞窟だ。あそこで私もガミを育てた。あっガミとはドラゴンの名前だ。そのガミとの日々は楽しかった。今でも目に浮かぶようだ。』
おじちゃんは目を閉じてその頃の事を思い出しているようだ。そして目を開くと続きを話し出した。
『だが、ガミも成長して旅立つ日が来た。そしてガミは旅立っていた。それから寂しい日々が続いた…。ある日この池で同じように釣りをしていた時に木の実が落ちてきたんだよ。』
おじちゃんは木の実を拾い上げ見つめた。
『その時、上を見るとガミが飛んでいたんだ。ガミは降りて来て、この木の実を食べろと言うようにジェスチャーをしたんだ。私は木の実を食べた。するとガミの言葉がわかるようになったんだ。』
>> 87
『ちょっとナナには難しかったかな。どちらにしてもあのおじちゃんは理解しているようだ。試しにオレが話しかけてみるぞ。』
そう言うとトムスはおじちゃんの側まで行って話しかけた。
『あのすみません。もしかしてオレ達の言葉分かってますか?』
トムスはストレートに聞いてみた。何故なら、分からないなら他の事を言うだろうし、分かっているならちゃんと答えるだろうと思ったからだ。おじちゃんはゆっくりとトムスを見るとニッコリと笑った。
『キミ達の言葉は分かるよ。』
ナナ以外のみんなは驚いた。ナナはどうしたのと言う顔をしている。
『マジで分かるのかよ。こんな人間見たことないぞ。』
シロがそう叫ぶとみんなも頷いていた。
『あははは…。そう驚かないで良いではないか。』
おじちゃんは頭を掻きながら苦笑いをした。
『そんな人間もいるんですね。』
シェンが感心したように頷いていた。
『いやいや、違うよ。私も元々は言葉は分からなかったのだよ。』
おじちゃんはゆっくりと話をし始めた。
『あれは、30年も前の話で、まだ私が少年だった頃、この森で七色の卵を見つけたんだよ。』
おじちゃんはチラッとナナを見て続きを話した。
>> 86
そこで、トムスが不思議な事に気が付いた。
『おい、ナナ…ナナってば。』
『うむ?どう…ムシャムシャ…した…ムシャムシャ…の?』
ナナは木の実を食べながら振り向いて言った。
『あのおじちゃんさ。オレ達の言葉分かっているよな?』
トムスが真剣な顔でそんな事を言った。
『えっみんな分かるのじゃないの?』
ナナは食べるの止めそんな事を言った。
『おいおい…。普通な人間は動物の言葉は理解出来ないんだよ。』
『そうなの…。ママは分かっているよ。』
ナナは微笑みながらトムスを見つめている。
『バカだな。ママは多分理解してないよ。お前の仕草である程度分かっているだけだ。大体、理解出来るなら紐なんかでお前をつないでおかないだろう?
人間は理解出来ないから平気で動物を殺せるんだよ。それじゃなきゃ仲良く暮らせているはずだ。今、この世界は人間の思うままやって、動物の住む所さえ無くなって来ている。』
トムスは以外にも重い話をした。ナナは頭を捻らせ悩んでいる。あまりに難しい話だったから、理解出来なかったのであろう。
『そうなの?分からないよ。』
トムスはそんなナナ見てやっぱり分からなかったかと思った。
>> 85
やはりおじちゃんだった。肩にクーラーボックスと右手には釣り竿を持っていた。
『おじちゃんこんにちは。』
ナナは挨拶をした。
『はい、こんにちは。』
おじちゃんはナナの頭を撫でた。
『もしかしてこの木の実を食べたくて来たのかな?』
『うん。みんなに教えてあげたら食べたいと言うから連れて来ちゃった。』
ナナは満面の笑みでおじちゃんを見た。
『なるほどね。それならお食べ。それ以外にもこの中にも入っているからいっぱい食べなさい。』
おじちゃんはクーラーボックスを開けるとみんなに見せた。
『ねぇねぇ…。もう食べて良いかな?我慢出来ないんだけど…。』
プクはヨダレをたらしながら見つめている。
『遠慮しないで食べなさい。』
おじちゃんはそう言うとプクは木の実を食べ始めた。みんなそれに続いて食べ始めた。
『これは美味いな。』
『本当だ。ナナのくれたクッキーより美味しいぞ。』
『本当だねん。これは美味しいねん。』
3兄弟はそんな事を言いながら食べていた。
『そうか、美味しいか。ほらっもっと食べなさい。』
おじちゃんはクーラーボックスから木の実をいっぱい出した。
>> 84
『そうですよ。私もほっとかれたんですよ。』
シェンは口をとがらせそっぽを向いた。
『そうだったのかい。そんな事より、おじちゃんは来てるのかい?』
『いや、今日は来て居ないようだ。もう少し後で来るのか、今日は来ないのかわからないよ。』
トムスは首を振りながらそう言った。
『そうかい。残念だね。あの木の実もう一度食べたかったのにね。』
キィーがそう落ち込んでいると、池の方を探し回っていたツンが飛んできて言った。
『池の辺(ほとり)に木の実があったよん。例の木の実ってあれじゃないかなん。』
『本当か!?なら見に行こう。』
みんなは池の辺に向かった。
『みんなここだよん。』
ツンが指した場所は昨日おじちゃんが釣りをしていた場所だった。
『おお~これはまさしく昨日食べた木の実だ。』
『本当だね。おじちゃんが置いていったのかな?』
ナナは木の実を拾い上げた。そこには十数個の木の実が置いてあった。
ブルルン…
近くで車の止まる音がした。みんなは振り返った。
『あれっ音がしたね。もしかしたらおじちゃんかな?』
ナナはニコニコしてその音がする方を見た。
『おっお前達、今日も来ていたのか。』
>> 83
ナナの上空をスズメ3兄弟もついてきていた。森の道をみんなで歌を歌いながら歩いて行った。
『池が見えて来ました。』
シェンが一番最初に池に気づき叫んだ。
『本当だ。ナナもう少しだ急ごう。』
道が開けて池の全体が見渡せる場所に出た。
『おじちゃん居るかな?』
みんなで辺りを見渡した。しかし、おじちゃんの姿はどこにも無かった。
『おじちゃん居ないね。』
みんなは愕然として肩を落とした。一番落ち込んでいたのは3兄弟のプクだった。
『せっかく来たのにいないのか…残念。』
『まぁ気を落とすな。今日だけじゃない。また、いつか会えると思うからさ。』
トムスは落ち込んでいるプクに近寄り肩を叩いた。
パタパタ…
みんなの元に飛んで来る羽音が聞こえた。みんなはその方を見るとキィーが飛んで来た。そしてみんなを見渡せる木の枝に止まった。
『あんたら酷いね。この私をほっといて抜け駆けするとは…。誰も居ないからもしやと思えば、やっぱりここに居たんだね。』
『すまないな。急に決まったから、居るメンバーで来ちまったよ。シェンもオレ達の後を追いかけて来たしな。勘弁してくれや。』
トムスが申し訳なさそうにしている。
>> 82
ナナは言われるまま紐を引っ張ってみた。すると紐が頭からスルッと抜けた。
『あっ抜けた。トムスさん抜けたよ。』
ナナは抜けた紐をトムス達に見せた。
『そうだろう。今日は紐がユルユルだったからな。よし、これでどこにでも行けるな。帰って来てまたハメたらママも心配しないぞ。』
トムスは自慢げに説明している。
『本当だ。これなら大丈夫だよね。』
ナナは喜んで跳ねている。
『よし、それなら出発しようか。』
トムスはそう言うとナナの頭の上に登った。そして池に向かって歩き始めた。
『おーい、待って下さい。』
後ろを振り返ると必死に追っかけて来るシェンが居た。
『あっシェンさんだ。』
シェンは息を切らしながら追いついた。
『ハァハァ…池に行くなら私も連れて行って下さいよ。』
『すまないな。お前の事忘れていたよ。』
トムスは頭をポリポリと掻いていた。
『頼みますよ~。』
シェンは困った顔をしながらナナの尻尾から頭へと登った。
『やっぱりここは高くて良いや。』
シェンはおでこに手を置き辺りを見回した。
『さぁ、ナナ行こうぜ。』
『うん。』
みんなは池に向かって歩き出した。
>> 81
その話を聞いて3兄弟はヨダレをたらしている。
『俺達も食べたかったなぁ~。』
さらに3兄弟の口からヨダレがポタポタ落ちていた。
『ならまたみんなで行ってみようぜ。』
後ろからそんな声がした。見るとネズミのトムスが立っていた。
『もしかしたら今日もおじちゃんだっけ、来ているかもしれないからな。』
それに飛びついたのは3兄弟だった。
『行こう行こう。今から行ってみよう。』
『ナナお前はどうするんだ?』
トムスが尋ねる。
『う~ん。ボクも行きたいな。でも、これがあるから…。』
ナナは首に掛かった紐を見せた。
『それならまたオレが噛み切ってやるよ。』
『でも、ママがまた心配するよ…。』
ナナが悲しそうな顔をした。トムスはナナの体を駆け上り紐の所まで来た。
『トムスさん噛み切らないで…。』
『ちょっと黙っていろ。』
トムスは少し強めに言うと紐を食い入るように見つめていた。
『おい、ナナ…噛み切らないですみそうだ。』
トムスがニヤニヤしている。
『トムスさんどう言う事なの?』
『あのな…今回はママが緩く結んでいるからそのまま外せそうなんだよ。とりあえず手で紐を引っ張ってみろよ。』
>> 80
チュンチュン…
『ふぁ~~~っ。もう朝か。今日はゆっくり寝たな。』
『ようナナお目覚めかい。』
声の方を見るとスズメの3兄弟がいた。
『あっみんなおはよう。』
ナナは起き上がり3兄弟のいる方を見た。
『昨日はどこに行っていたんだ?遊びに来たら居なかったからな。』
シロが木の枝から飛び立ち、ナナの目の前の岩に止まった。それを追いかけるようにツンとブクも飛んで来た。
『昨日はね。川を見に行ったんだよ。』
ナナが楽しそうに話した。
『へぇ~川ね。』
『そう川。でもね川に落ちちゃって大変だったんだ。』
『川に落ちた。そりゃ大変だ。それでどうなった?』
シロは興味津々で話を聞いている。
『そしたら、ここの近くの池にたどり着いた。』
『ほうほうそれで…。』
シロは前つんのめりで話をまた聞いた。
『そしたらおじさんがいてね。木の実をくれた。それがとっても美味しくていっぱい食べたよ。』
『何っ木の実!?何の木の実なんだそれは?』
その話を聞いて今まで無関心で座り込んでいたブクが、起き上がり岩のギリギリまで寄ってきた。
『わかんない。でも、ママのくれるクッキーの味がしたよ。』
>> 79
『今日は本当に疲れちゃったな…。』
ナナは大きな欠伸をするとうずくまって眠りについた。そして、ナナは夢を見た。
『あれっ?ここはどこだ?』
目の前には大きな山があり、そのてっぺんには大きな木が立っていた。ナナは近づいてみた。
『うわぁ~!!大きな木だな。…ん?』
そこにはどこかで見た事がある木の実がなっていた。
『あっこれはおじちゃんがくれた木の実だ。あっこっちにもあっちにも。』
ナナは夢中になって木の実を取った。
『誰だ?勝手に木の実を取る奴は?』
ナナは振り返るとそこには大きな何かが立っていた。
『ごめんなさい。この木の実美味しいから。』
ナナは微笑んだ。
『貴様はここのルールを知らない泥棒だな。許さん。』
その大きな何かはいきなり手をあげるとナナを殴った。
『うわぁーーー!!』
そこでナナは目を覚ました。辺りを見回した。
『なんだ…夢だったんだ。驚いちゃったよボク。でも、懐かしい気がしたなぁ~。あの景色にあの大きな何かも…。』
ナナは頭をひねりながら考えていた。
『う~ん。考えてわかんないや。また寝ようっと…。』
そう言うとまた眠りについた。
>> 78
キィーは頭から近くの岩に飛び乗った。
『あんた、人間に飼われいたんだね。』
キィーは知らなかった。昨夜、偶然に会ったからである。
『良く分からないけど、トムスさんもそう言ってた。』
ナナは笑顔を見せた。
『そうかい。それであのおじちゃんだっけ、見ても平気だったんだね。それにさっきの人間の子供も…。じゃあ、あんたと私は一緒だと言う事だね。』
『いっしょ?ならキィーさんにもママが居るんだ。』
ナナは妙にはしゃいでいる。
『ママねぇ…。そりゃ居たと思うよ。生まれた時には人間に飼われていたけどね。ナナにとって育ててくれた人間をママだと思っているんだね。』
キィーは羽根を組ながら頷いていた。
『…ん?どういう事?』
ナナには分からない事だから、キィーは説明を始めた。
『どんな生き物にも産んでくれた親ってものがあるんだよ。人間は育ての親ってとこかしらね。』
『産んでくれた親…育ての親…?』
ナナには理解の出来ない事ばっかりだった。
『あんたには少し早かったかな?大きくなったら分かるよ。それじゃ私も帰って寝るよ。それじゃね。』
キィーは洞窟の奥に飛んで行ってしまった。ナナは手を振った。
>> 77
『ナナ、ごめんね。でも、今日みたいに居なくなったら悲しくなっちゃうからね。じゃあ、また明日来るからね。良い子にしていてね。』
少年はナナを見つめながら後ろ歩きをした。そして手を大きく振ると振り返り走って帰って行った。
キィーキィー
『ママ~またね。』
ナナはそう叫んでいた。前のように寂しくは無かった。何故なら洞窟には沢山の仲間が居るからだ。すると岩の陰からトムスが顔を出し辺りを見渡した。少年が居ない事を確認すると駆け寄って来た。
『もうママは帰ったんだな。』
『うん。帰っちゃった。でもね、寂しく無いんだ。』
ナナは笑顔でトムス達を見た。
『だって、ここにはみんなが居るもん。だから、寂しくないよ。』
『お前も少しの間に成長したな。ははは…。』
トムスが大きな声で笑った。
『皆さん私は今日は疲れました。帰ります。』
シェンが疲れた顔をしている。
『そうだな。今日はこのぐらいにして帰ろう。』
トムスもそう言うといつものように手をあげながら帰って言った。
『みんなバイバーイ。』
ナナは手を振って見送った。すると頭の上に何かが乗っかった。
『…ん?』
ナナが見上げると黄色い顔が覗いていた。
>> 76
少年はナナの怪我に気づき心配そうに見ている。
『大丈夫だよ。おじちゃんに何かを塗ってもらったから。』
少年には鳴き声しか聞こえて無かった。ナナの傷口を見ていた。
『何か塗ってあるね。誰が塗ったのだろう?まあ良いか。手当てしてもらったようだからね。とりあえず、洞窟に行こうか。』
そう言うと少年はナナを連れて洞窟に向かった。
『ナナ、あまり出歩いたら駄目だよ。良いね?』
少年はナナにそう言い聞かせるように言った。
『うん。分かった。』
『うんうん、分かったなら……えっ?』
少年は驚いた。今、確かにナナの声が聞こえたように思えた。
『あれっ空耳かな?ナナの声が聞こえた気がしたけど…。お前は喋れる訳ないよな…。』
キィーキィー
やっぱり鳴き声しか聞こえてない。
『やっぱり空耳だったかな…。』
そう言っている内に洞窟に着いた。
『そうだ。紐はどうして切れたんだろう?』
少年は紐を持ち上げ見てみるとかじられた後が有った。
『どうやったか分からないけど、苦しかったのかもしれないな。今日はちょっと緩く結んでおこうかな。』
少年はそう言うとナナの首に紐を緩く結んだ。
>> 75
『やっぱり君か。何をして居るんだい?』
おじさんはにっこりと微笑んだ。
『ちょっと…。』
『ちょっと探し物かな?』
おじさんは笑った。
『探し物ならもうすぐ帰って来るよ。それじゃ気をつけてな。』
おじさんはそう言うと車を出してどこかに行ってしまった。
『もうすぐ帰って来る?』
少年にはおじさんがそんな事を言ったのか分からなかった。
すると目の前をヨチヨチ歩いて来るナナの姿が見えた。
『あっナナー!!』
少年は駆け出した。そしてナナ達も気が付いた。
『ママだ。ママ~!!』
ナナもそう叫んだ。
『ナナ、オレ達はここで降りるよ。人間に見られたくないからな。ママによろしくな。』
そう言うとトムス達はナナから飛び降りた。そして森の方へ消えて行った。
『ナナ…。どこに行っていたんだよ。心配したんだぞ。』
少年はナナを抱きしめるとそんな事を行った。
『ママ、ゴメンね。みんなと川を見に行っていたんだよ。』
キィーキィー
しかし、少年には鳴き声しか聞こえて無かった。ナナはそんな少年を見つめていた。
『あれっナナ怪我しているじゃないか。どうしたんだ?』
>> 74
しばらく歩いて行くと岩についている半透明の物を見つけた。それを取ってみた。
『これは抜け殻かな?かなり大きいからもしかしたらナナのかもしれない。なら、もっと奥に行ったのかな?』
そう言うと更に奥へと入って行った。しばらく行くとまた呼んでみた。
『ナナ~居ないの~?』
すると目の前に何かが飛んで来た。
バタバタ……
『うわっ!?』
それに驚き転けた。そうそれはパタの息子達が声に驚いて飛び出したのだった。
『うわ~っ何だ?』
少年は怖くなり出入り口の方に走って逃げ出した。やっとの思いで出入り口に着いた。
ハァハァ……
『今のは何だったんだ?それにしてもナナは居なかったな。もしかしたら森の方に行ったのかな?』
少年は辺りの森の方を見渡した。
『もしかして池に行ったのかもしれないな。ちょっと行ってみよう。』
少年は池の方に歩き出すと前から一台の車が走って来た。
『あれっどこかで見た車だな…。』
すると車が少年の横で止まった。そしてウィンドウがゆっくり開いた。
『あっ!』
思わず声が出てしまった。
《昨日のおじさんだ。どうしょう?》
そう心の中で思っていた。
>> 73
ナナが辺りを見回して言った。おじちゃんの居た所には何も無かった。そして、みんなが食べた木の実の欠片さえも無くなっていた。
『もしかして俺達は夢でも見ていたのか?』
『ユメ?』
『夢とは寝ている時に見るもんだ。覚えているかどうかは分からないがな。』
トムスはまるで先生のように説明をした。ナナは何かを思い出した。
『ボクたまにね。その夢を見るよ。大きな山のてっぺんに大きな木があってそこにはいっぱいの木の実が…。』
ナナは急に黙った。それに気づきトムスが尋ねた。
『どうした?』
『…ううん。何でもない。そろそろママ来る時間だから急いで帰らないと。』
『そうだな。それじゃ帰りますかね。』
ナナ達は森の道を洞窟へ歩いて帰った。
その頃、洞窟に向かう人影があった。それは少年だった。
『お~いナナ?ナナ~?』
洞窟の中に入りナナを繋いだ所に行くが姿が無かった。そして紐に気が付いた。
『あっ紐が切れている。どうしたんだろう?』
少年は辺りを見回したがやはりナナの姿が見当たらない。
『ナナ~?ナ~ナ~?』
そう叫びながら洞窟の奥へと入って行った。
>> 72
ナナ達を追っかけて来たのだろうが、人間がいる為に近づけないでいたのである。
『せっかくじゃ。こっちに呼んであげたらどうだ?』
おじちゃんは微笑みながら言った。ナナ達はその方を見た。
『本当だ。あんな所に居やがる。』
するとナナが叫んだ。
『お~い。こっちにおいでよ。このおじちゃんは大丈夫だよ。何もしないから早くおいでよ。』
ナナは手招きをした。トムスとシェンも一緒に手招いた。キーはしばらく木の陰で考えていた。そして決心がついたのか、飛んでナナの頭の上にとまった。
『ほれっキミも降りてこれを食べなさい。』
おじちゃんは優しく言った。キーはしばらく警戒していたが、木の実の所に降りて啄(ついば)んだ。
『何これ!こんな食べ物初めてだよ。美味しいね。』
キーも夢中になって食べていた。ナナ達は腹いっぱい食べた性か眠くなった。キーの夜中の長話の性でもあるかもしれない。木陰でみんなで寄り添うように眠ってしまった。どの位寝ていたのだろうか、太陽が西に傾き始めていた。一番最初に目を覚ましたのは、トムスだった。
『おい、みんな起きろ。もう夕方だ。』
みんなが目を覚ました。
『あれっおじちゃんは?』
>> 71
トムスがそれを持ち上げ一口かじってみた。
『美味い。これはなんだ…。ナナのくれたクッキーの味がする。』
ナナも拾って食べた。
『本当だ。ママがくれるクッキーみたいだね。おじちゃんこれ美味しいよ。』
『そうか。美味しいか。それなら良かった。』
おじちゃんは笑顔で見ている。2匹は美味しいのかバクバク食べていた。しかし、1匹だけ浮かない顔をしていた。
『シェンどうした?食べないのか?』
トムスがそれに気づき尋ねた。
『キミ達と違ってこんな物は食べないからな…。』
シェンはトカゲだから虫などを主食にしていた。だから、木の実とかは食べた事が無かった。するとおじちゃんがそんなシェンに言った。
『大丈夫だ。キミでも食べられるよ。試しに一口食べてみたら良い。』
シェンは一度おじちゃんを見て目の前の木の実を食べてみた。
『うわぁ~~~っ、美味いよこれは…。こんな食べ物があるんだね。』
よほど美味しかったのか一気に食べてしまった。おじちゃんはそれを見て微笑んだ。
『まだまだあるからいっぱいお食べ。ところで、あそこに居るのはキミ達のお仲間かな?』
ナナ達の近くの木に隠れるように、キーがとまっていた。
>> 70
おじちゃんはそう言いながらナナの体に出来た擦り傷に瓶の中の何かを塗って行った。
『これで大丈夫だ。明日には治るだろう。上の2匹は問題ないようだな。』
おじちゃんは微笑むと瓶を箱に戻した。
『おじちゃんありがとう。』
おじちゃんは手を左右に振りながら言った。
『気にする事はない。ところで今日は少年はどうした?昨日一緒だったろう?』
おじちゃんは置いてあった釣り竿に餌を付けながら尋ねた。
『ママ…ママは居ないよ。』
『あっそうか。まだ、こんな時間だしな、学校に居るか。ハハハ…。』
おじちゃんは軽く笑いながら池に目掛けて竿を振った。
『あの人間は害はないようですね。』
『そのようだな。』
トムスとシェンはそんな事を話していた。
『あっキミ達お腹空いてないかい?』
そう言われると朝から何にも食べていなかった。3匹揃って頷いた。
『おう、そうか。それならコレをあげよう。』
そう言ってバッグから出したのは、木の実のような物だった。
『ほれっ食べろ。』
ナナ達の目の前にそれを置いた。トムスが鼻でそれを嗅いだ。
『大丈夫だ。毒なんぞ、入っておらんよ。ははは…。』
>> 69
トムスはずぶ濡れの体を震わせ水しぶきを飛ばしながら聞いた。
『うん。昨日来たよ。』
ナナは岸に向かい泳ぎながら言った。ちなみに泳ぎは犬掻きである。するとシェンが何かに気が付いた。
『ねぇ…あそこに人間がいるよ。』
指差した方を見ると人間が釣りをしていた。
『あれぇ~?あのおじちゃんも知っている。』
『何?あの人間も知っているのか?』
『うん。あのおじちゃんも昨日ここで見た。』
ナナはにっこり笑った。
『どっちにしても、見つかったらヤバいな…。』
トムスは悩み考え込んでいる。するとそのナナの言うおじちゃんがナナ達に気が付いた。
『あっお前は昨日のヤツじゃないか?大丈夫か?』
そう言うと近くにあった釣り用の長い棒の網を差し出して来た。ナナは網の先に掴まると引っ張り岸へ引き上げた。
『君達大丈夫か?』
おじちゃんは不思議がる事なくそう言った。
『お前怪我しているな。ちょっと待ってろ…。』
ナナは滝からこの池に来る間に怪我をしていたようだ。おじちゃんは箱を開け何かを探して瓶を取り出した。。
『おお、これだ。これで少しは良くなるだろう。』
>> 68
『ナナ、羽根を羽ばたかせろ。早く、早くだ。』
トムスがそう叫ぶとナナは羽根を羽ばたかせた。
パタパタ…。
一瞬浮かんだように思えたが、気のせいだった。
ドボンッ!!
ナナ達は川へと落ちてしまった。まだ、ナナの羽根は役には立たなかった。キーも遅れて洞窟から飛び出した。そして落ちた辺りを飛んで探していた。
『うわぁ~!!』
川の中からナナが顔を出した。角にはトムスとシェンが掴まっていた。
『あんたら大丈夫かい?』
呼びかけるが、どんどん流されて行く。しばらく流されて行くと川の流れが緩やかになった事もあり、ナナは岸に向かって泳ぎ出した。
『ナナ大丈夫か?』
『うん。これならなんとか行けそうだよ。』
ナナがそう言ったもつかの間、また流れが速くなった。
『うわぁーーーっ!!』
川幅が急に狭くなり流れが速くなったのだ。すると目の前の川が2つに別れていた。ナナ達は流れに任せ左側の方へ流された。また、流されが緩やかになりどこかで見た風景が見えて来た。
『あっここはママと来た事ある。』
そうここは昨日、ナナが少年と一緒に来た池だった。
『ナナ、ここを知っているのか?』
>> 67
まるで母親にでもなったような気分だった。ナナは相変わらずの笑顔でゆっくりと降りて行った。だが、次の瞬間…。
ズルッ!!
ガラガラ……
ヒューーー
ドボンッ!!!
なんとあることか、ナナは足を滑らせ滝壺に落ちてしまったのある。慌ててキーが滝壺の辺りまで行くがナナ達が見つからない。
『おーい!?みんなどこだい?返事をしな!!』
キーはしばらく探すがナナ達の姿が見当たらない。
『助けてーーー!!』
その声を見ると、ナナ達が凄い勢いで流されていた。この滝壺から川に通じる洞窟はかなり急な坂になっており、落ちた反動で流されてしまったようだった。ナナの角に必死に掴まるトムスとシェンの姿も見えていた。
『大丈夫かい?』
キーは必死になってナナ達の後を追った。しばらく追っかけていると目の前が明るくなって来た。そう、洞窟の出口だ。これを越えたら川になる。しかし、洞窟の出口から川までは10mの高さがあった。
『ナナなんとかしろ。この先は危険だ。とにかく横に泳げ。』
トムスの声にナナは必死に泳ぐが流れが早すぎて全然進まない。
うわーーーっ!!
視界が真っ白になり宙に浮いた。そして下へと落ちて行った。
>> 66
キーは羽根で場所を示した。それは滝の右側を指差していた。すかさずトムスがその場所に駆け出した。滝の下を見ながら様子伺っている。
『これなら下に降りれそうだ。しかし、ナナにはギリギリかもしれないな。』
ナナ達はトムスの所に近づいた。そしてみんなで下を覗いた。
『これは、少しばかり高いようですね。』
シェンが言う。高さは3mほどだが、ナナ達にとっては高いようだ。
『ナナさんどうしますか?やはり今は止めて夜にしませんか?』
『う~ん。でも、早く川を見てみたいな。』
何故、そんなに川にこだわるのか、わからなかった。考えていたトムスが言った。
『仕方ない。でも何があっても知らないからな。なら行こう。』
トムスとシェンはナナの腕を伝い頭の上に行き、角に掴まった。
『ナナ…。気を付けなよ。ここの岩は苔で滑りやすくなっているからね。』
『うん。分かった。』
そう言うとゆっくりと階段状になっている岩場を降り始めた。近くでキーが心配そうに飛んでいる。ナナはたまに、キーを見て微笑んだ。
『よそ見しないで…。しっかり足元を見なさい。本当にこの子ったら…。』
『うん。気をつける。』
>> 65
私はいつも高い鳥かごからそれを見つめていたよ。そんなある日、人間が留守でいない時に子猫が私に近づいて来た。そう私を食べようとしていたのさ。もちろん高い所にあるから簡単に届く事は無かったけどね。でも、何度かやっている内に子猫の爪が鳥かごに当たってね。そのまま鳥かごごと床に落ちたのよ。その時、鳥かごの扉が開いていたから思い切って逃げ出したと言う訳さ。』
ナナ達は黙っていた。
『何だよあんたらどうした?』
うわーーーん!!
みんなが一斉に泣き出した。
『ねぇねぇ泣くことないでしょう。こりゃ参ったね…。』
ナナ達はしばらく泣いていたが、キーがなんとか慰め泣き止んだ。
『ところであんたらここで何をしているんだい。』
そう昨夜のキーの乱入で川を見に行くのが出来ないでいた。そして今からではなく、夜にしようと話をしていた所だった。
『トムスさんやっぱり川を見たいよ。』
ナナはどうしてすぐに見に行きたいようだ。
『しかし、この滝を降りる所も分からないしな…。』
するとキーが割り込んで話し出した。
『それなら私知っているよ。』
みんながキーを一斉に見た。
『それはどこなんだ?』
>> 64
『うん。よろしくね。』
ナナは普通に答えて指を差し出していた。トムスは呆れて見ていた。
『ところでキーさんよ。飼われている鳥のようだけどなんで、この洞窟に住んでいるんだい?』
キーは岩の上をうろちょろしながら何かを考えている。何をそんなに考える事が、あるのだろうとトムスとシェンは思っていたが、ナナはただ、ニコニコしながら見ていた。しばらくうろちょろしていたキーはやっと話し出した。
『私は確かに人間に飼われていたよ。最初は毎日のように遊んでもくれたし、部屋の中だけど自由に飛ばしてくれて、本当に楽しかったよ。でもね、ある日その家に子猫がやって来たんだよね…。』
キーは急に黙り込んでしまった。トムスとシェンはどうしたのだろうとお互いを見合いながらキーを見た。そんな中、ナナは相変わらずニコニコしていた。
『キーどうした?』
心配になりトムスが聞いた。
『ごめんよ。思い出したら悲しくなってね。』
『話したくないならもう言わなくて良いぞ。』
『いや、大丈夫だよ。』
『そうか…。』
洞窟の中に重い空気が流れた。
『人間はね。私の事なんて忘れたように、子猫に夢中になってね。
>> 63
『えぇ…。川を見に行きたいな。』
ナナは手足をバタバタさせワガママを言った。まるで、オモチャ屋の前で駄々をこねる子供のようだ。
『だから、今からじゃなく夜でも良いじゃないか。』
『絶対、行きたいもん。行かなきゃもう口をきかないからね。』
今まではワガママを言わなかったナナが、こんなにワガママを言うとは、よほど川を見たいのだろうと思った。すると突然、ナナ達の前に黄色い物が横切りトムスの目の前に舞い降りた。
『あんたら何度言ったら分かるのかねぇ~。朝からうるさいよ。』
不機嫌そうにオカメインコが言っている。
『あのねぇ~。朝なんだからみんな起きる時間だろう。起きてて話して悪い訳?まあ、遅くまで夜中に1羽で話していたのが悪いのじゃない。』
トムスは少し嫌みを含めニヤニヤしながら言った。
『……。』
しばらくの沈黙があり、オカメインコは言った。
『今日も良い天気だね。さあ、朝食でも探しに行こうかね…。』
オカメインコは飛び立とうとした。しかし、トムスが肩を掴んでいた。オカメインコは苦笑いしながら振り返った。
『私の名前はキーだよ。よろしくね。』
キーは羽根を出して握手を求めた。
>> 62
オカメインコは起きている訳ではなく。眠った状態で窪みから頭と羽根をダラ~ンと出していた。するとナナが動いた。トムス達は角に掴まり落ちないようにした。トムスは足でナナの頭を蹴った。そのショックでナナは目覚めた。
『トムスさん、シェンさんおはよう…。2匹とも早起きなんだね。』
『ま、まぁ~ね。』
トムスはちょっと意味ありげに言った。しかし、ナナはその事に気が付いてなかった。おとぼけさんだからそうなのだが…。
『ナナすまない。ちょっと下ろしてくれるか?』
『うん、分かった。』
ナナは体制を低くして岩場に手を置いた。トムス達が頭から肩へ。そして腕をつたい岩場に飛び乗った。
『よし。これで普通に話せるな。』
岩場にちょこんと座っているトムス達とナナを比べるとかなり大きさが違う。
『ナナそこに座ってくれ。』
『うん。分かった。』
ナナは言われるまま地べたに座った。
『なぁ、川を見に行く予定だったが、もう朝になった。今からだと遅くなるかもしれない。川に行くのは一度止めて今夜にしないか?』
トムスの言う事は一利あった。このまま、川に行くとなったら、どれだけかかるか分からなかった。
>> 61
『ちょっと長すぎたかな。さて、私も帰って寝ましょうか。』
オカメインコは飛び上がり元いた窪んだ岩場に飛んで行った。それからしばらくして、滝の方から朝日が差し込み、遠くから小鳥たちの声が聞こえていた。朝日に反射して滝のしぶきがキラキラ輝いていた。ナナは岩場に背中をつけ眠っている。最初に目を覚ましたのはトムスだった。
『…ん?ありゃ寝てしまったな…。コイツらも寝てしまったんだな。おい、起きろ。朝だぞ。』
トムスはナナの頭を叩き、そして横で寝ているシェンを揺さぶった。シェンはすぐに目を覚ました。
『おはようございます。もう朝なんですね。ナナはまだ寝てますね。』
トムスとシェンは下を覗いた。ナナは鼻ちょうちんを作りながら寝ていた。
『多分、ナナが一番最後まで、あのオカメインコの話を聞いていただろうからな。そう言えば、オカメインコはどこに行ったんだ?』
トムス達は上の方を見回した。すると黄色い顔が覗いていた。それは昨夜のオカメインコだった。
『あそこに居るのそうじゃないですか?』
シェンがトムスに聞いた。するとトムスは頷いた。
『間違いないね。昨夜のお喋りなオカメインコだな。』
>> 60
かなり上の窪んだ岩場に顔を出しているオカメインコがいた。
『いい加減にしてよ。何時だと思っているんだい。近所の迷惑を考えたらどうなんだい?』
オカメインコはパタパタと下に降りて来て目の前の岩に止まった。そのオカメインコの体は黄色く、頬に赤い模様がある。まるでおかめさんのようだからオカメインコと言うのだろうか?そのオカメインコはまだ気が済まないのか、3匹を説教しだした。
『だいたいねぇ…夜行性の動物じゃないでしょう。なら巣に帰って寝なさいよ。私はやっと住みやすい所を見つけて、さて寝ましょうかと寝かけたら、あんたらの笑い声。安眠妨害も良い所だよ。ガミガミ…』
それからオカメインコの説教は30分も続いた。トムスは聞き疲れて寝てしまった。シェンはおっかないのかナナの角に隠れビクビクしていた。ナナはと言うと黙って笑顔で聞いている。
『…と言う訳で大変だったのよ。それで…』
オカメインコは説教している内に説教から世間話に話は変わっていた。それからどれぐらい経っただろうか、オカメインコはまだ話をしていた。
『…と言う訳で…ん?ありゃみんな寝てしまったよ。』
ナナ達3匹はいつの間にか寝てしまっていた。
>> 59
ナナは思わず頷いてしまった。再び、トムス達は落ちそうになった。
『バカやろう!言ったそばから何しやがるんだ。』
トムスはナナをペンペンと叩いた。
『ごめんなさい。』
『まあまあ、トムスさん。ナナの頭に乗っている私達も気をつけたら良い事ですよ。』
シェンはトムスをそう言って止めようとしている。
『しかし、なぁ~こういう事は小さい時に教えておかないと…。』
トムスは飛び跳ねながら言っているとナナが笑い出した。
『クスクスクス……。』
『ナナ何を笑ってやがる!?』
『だってママみたいなんだもん。トムスさんは今日からもう1匹のママだ。』
ナナは手を口に当て笑っている。
『バカやろう!オレはオスだ。それを言うならパパだ!!』
トムスは飛び跳ねながら怒鳴っている。
『じゃあ、今日からトムスさんはボクのパパだ。クスクス…。』
『こらぁ~!笑うな~!』
トムスはナナをペンペンとまた叩きながら、一緒に笑い出した。シェンも笑っている。洞窟には3匹の笑い声が響いていた。
『あんたらうるさいよ!』
突然、近くの岩場から声がした。3匹は笑うのを止めて辺りを見回した。
>> 58
トムスは拳を上げた。それに合わせてナナとシェンも上げた。
おーーーっ!!
再びナナ達は川を目指し歩き出した。ほのかな明かりの中進んで行くと遠くから水の落ちる音が聞こえて来た。
ザァーーー!!
『もう少しで滝のようですね。舌が反応していますよ。』
シェンは舌をペロペロさせながら言った。
『微かだが、水の音もするな。』
トムスは横にいるシェンに言った。シェンは頷きナナの顔を叩きその事を知らせた。最初の滝から流れて来た水が視界から消え下に落ちている。
『うわぁ~ここが、パタさんが言っていた滝なんだね。』
ナナは何も考えず下を覗こうとする。
『おいおい、覗くな!急に下を向いたら落ちてしまう!』
ナナの頭の上のトムスとシェンが落ちそうになり、ぶら下がっていた。
『あ~ごめんなさい。』
ナナは頭を起こした。トムス達はなんとか落ちずにすんだ。
『この野郎!あれだけ言っただろうが!行動する前には話を聞けと!』
トムスは頭の上でかなり怒っていた。
『もう1つ付け加えておかんとな。行動する時には周りに気をつけるだ。分かったな。』
トムスは腕を組み下に居るナナに言った。
『うん。分かった。』
>> 57
ワシのように飛べるなら行けるがな。飛べないなら危険だから止めておけ。』
逆さにぶら下がっているパタはそう言うと飛び上がった。
『えっ行けないの?』
ナナがそう聞いた。するとパタは何かを思い出したのか、ナナ達の前に来てから言った。
『いや、待てよ。もしかすると歩いても行けるかもしれないな…。』
『本当に?』
ナナは嬉しそうにした。
『ああ、確か滝の横に歩いて降りれる所があったと思う。まずは行って見るしかないな。』
するとトムスが言った。
『それならオレも知っているよ。前に一度行った事があるからな。』
『それなら大丈夫だよね。とにかく行ってみる。』
ナナはパタにそう言った。
『まあ、精々気を付ける事だな。』
パタはそう言うとどこかへ飛んで行ってしまった。
『行っちゃったね。』
『でも、ナナ確かに降りれるが、オレみたい小さいと降りやすいが、ナナは大きいからわからないかもしれないぞ。』
トムスは顎の下に手を起きそんな事を言った。
『でも行ってみないとわからないよね。そうだよね。』
ナナは必死にトムスに尋ねた。
『そうだな。行く前から諦めていたらダメだな。とにかく行ってみよう。』
>> 55
ナナは片足を既に水の中に入れていた。
『ヒャ~~~冷た~い。』
ナナはビックリして後ろ向きに倒れた。その勢いでトムスとシェンは飛ばされて…
『皆さんが行くならお供しますよ。私も暇ですからね。』
シェンはそう言うとナナの頭にある角の所まで登った。トムスもそれを見て登った。
『肩より眺めが良いな。それではナナ出発だぁ~!』
『なら落ちないでね。』
ナナは水の流れを見ながらゆっくりと歩き出した。しばらく歩くとさっき見たもう一つの洞窟に着いた。
『ナナ、ここを進んだら川に出るはずだ。』
『うん。分かった。』
そう言うともう一つの洞窟を川へと歩き出した。こちらの洞窟にも光苔がビッシリ生えていた。月明かりぐらいの明るさだ。
『おーい。ナナじゃないか。』
目の前を飛んでいる物が見えた。ナナはじっくり見るとそれはパタだった。
『あっパタさんこんばんは。何をしているの?』
パタは洞窟の壁から飛び出た岩にしがみつくと羽根を閉じた。
『ナナ…。それはこっちの台詞だ。こんな夜更けに何をしているんだ?』
パタは頭を捻りながら尋ねた。
『洞窟の中を探検して、今は川を見に行く所だよ。』
ナナはニッコリと笑った。
『なに川を見に行くのか。ここを真っ直ぐ行ったら川はあるが、この先には滝があるから歩いては行けないかもしれないぞ。
>> 54
ナナは片足を既に水の中に入れていた。
『ヒャ~~~冷た~い。』
ナナはビックリして後ろ向きに倒れた。その勢いでトムスとシェンは飛ばされてしまった。
うわーーーっ!!
トムスとシェンは目を回したのかフラフラしていた。やっと収まったのかナナの所まで走って来て言った。
『行動する前に話をちゃんと聞けーーー!!』
トムスはかなり怒っているのか、大きな声で怒鳴った。シェンは別段怒っている風では無かった。
『ごめんね…。』
ナナはすまなそうに謝った。
『頼むから俺の話はちゃんと聞くんだぞ。』
『うん。分かったよ。』
ナナは体を低くした。トムス達は腕からスルスルと登り肩の定位置に掴まった。ナナはゆっくり体を起こすと尋ねた。
『ねぇ…これからどうするの?』
『そうだな…これ以上は進めないし、戻るほかないな。ナナはどうしたい?』
トムスが尋ねるとナナは横目で見るとこんな事を言った。
『ボクね。川と海が見てみたい。』
『川と海かぁ…。川なら見に行けるかもしれないぞ。この水の流れを辿っていけば、川に出る事が出来るはずだ。シェンお前はどうする?』
トムスはナナの顔から微かに見えるシェンに尋ねた。
- << 57 『皆さんが行くならお供しますよ。私も暇ですからね。』 シェンはそう言うとナナの頭にある角の所まで登った。トムスもそれを見て登った。 『肩より眺めが良いな。それではナナ出発だぁ~!』 『なら落ちないでね。』 ナナは水の流れを見ながらゆっくりと歩き出した。しばらく歩くとさっき見たもう一つの洞窟に着いた。 『ナナ、ここを進んだら川に出るはずだ。』 『うん。分かった。』 そう言うともう一つの洞窟を川へと歩き出した。こちらの洞窟にも光苔がビッシリ生えていた。月明かりぐらいの明るさだ。 『おーい。ナナじゃないか。』 目の前を飛んでいる物が見えた。ナナはじっくり見るとそれはパタだった。 『あっパタさんこんばんは。何をしているの?』 パタは洞窟の壁から飛び出た岩にしがみつくと羽根を閉じた。 『ナナ…。それはこっちの台詞だ。こんな夜更けに何をしているんだ?』 パタは頭を捻りながら尋ねた。 『洞窟の中を探検して、今は川を見に行く所だよ。』 ナナはニッコリと笑った。 『なに川を見に行くのか。ここを真っ直ぐ行ったら川はあるが、この先には滝があるから歩いては行けないかもしれないぞ。
>> 50
『この先には滝があるんだ。』
『タキ?』
『説明は難しいな。水が高い所から低い所に落ちている場所だな。ほれっあそこを見な。水が流れている…
『うん。分かった。』
ナナはそう言うと洞窟の壁に擦り付けた。すると皮がスルリと剥けた。
『あっ腕の所が剥げたよ。』
洞窟の壁に半透明の皮がついていた。
『残りはもう少しかかりそうだから後からにしよう。』
『うん。分かった。』
ナナは一回り大きくなっていた。脱皮をするようになったのはドラゴンとして青年期に入った事を示した。だが、その事はもう少し後で話すとしよう。
ナナ達は滝を目指し歩いて行った。すると奥から水の落ちる音が聞こえて来た。
ザァーーーッ
『ナナ。あれが滝だ。』
ナナ達の前には大きな壁があり、その中央から水が落ちて滝になっていた。水が落ちた所は池のようになっている。
『あれが、滝なんだね。キラキラして綺麗だね。』
ナナは滝に近づくと池を覗き込んだ。微かにナナの姿が映っていた。洞窟の中だから暗いと思いだろうが、この洞窟には自ら光を放つ光苔と言う苔が、壁一面を覆うように生えていた。その薄明かりの中、滝から落ちる水がキラキラと輝いていた。
『ナナ、水に入るなよ。思ったより冷たいからビックリして死んでしまうぞ。』
トムスがそう言ったが、一足遅かった。
>> 49
『この先には滝があるんだ。』
『タキ?』
『説明は難しいな。水が高い所から低い所に落ちている場所だな。ほれっあそこを見な。水が流れているだろう。あれが滝からの水だ。』
トムスは近くに流れている小川を指差した。その小川は右側の洞窟に流れ込んでいた。
『あれはどこまで行くの?』
『こっちの洞窟を流れて外に出て川まで流れている。その後は海と言うバカデカい水溜まりに流れて行くんだ。一度は見てみたいな。』
トムスは目を瞑って何かを想像していた。
『カワとウミ…。ボクも見てみたいな。』
ナナも目を瞑って考えたが、想像が付かなかった。
『それにしても体中がなんか痒いよ。』
ナナは手で体を掻いた。動きが激しい性かトムスが落ちそうになった。シェンは四つん這いになり必死に張り付いていた。
『おいおい、そう動くなよ。落ちるじゃないか。ちょっと止まって俺達を下ろしてくれ。』
ナナは止まるとしゃがみ込んでトムスとシェンを下ろした。
『それは脱皮が最終段階まで来たのかもしれないね。ほらっさっきより捲れているからね。壁にでも擦り付けたら良いさ。』
シェンは脱皮の先輩であるかのように説明した。
- << 54 『うん。分かった。』 ナナはそう言うと洞窟の壁に擦り付けた。すると皮がスルリと剥けた。 『あっ腕の所が剥げたよ。』 洞窟の壁に半透明の皮がついていた。 『残りはもう少しかかりそうだから後からにしよう。』 『うん。分かった。』 ナナは一回り大きくなっていた。脱皮をするようになったのはドラゴンとして青年期に入った事を示した。だが、その事はもう少し後で話すとしよう。 ナナ達は滝を目指し歩いて行った。すると奥から水の落ちる音が聞こえて来た。 ザァーーーッ 『ナナ。あれが滝だ。』 ナナ達の前には大きな壁があり、その中央から水が落ちて滝になっていた。水が落ちた所は池のようになっている。 『あれが、滝なんだね。キラキラして綺麗だね。』 ナナは滝に近づくと池を覗き込んだ。微かにナナの姿が映っていた。洞窟の中だから暗いと思いだろうが、この洞窟には自ら光を放つ光苔と言う苔が、壁一面を覆うように生えていた。その薄明かりの中、滝から落ちる水がキラキラと輝いていた。 『ナナ、水に入るなよ。思ったより冷たいからビックリして死んでしまうぞ。』 トムスがそう言ったが、一足遅かった。
>> 48
『だって、ママや兄弟に会えないんでしょう。だから可哀想だよ。エ~ン。』
ナナは大きな声で泣いていた。
『ナナ泣くなよ。いつかは家族と会えると思っているからさ。』
トムスは腕を組みそんな事を言った。
『ボクなんか少し会えないだけでも寂しいのにトムスは凄いね。』
ナナはまだ泣いていた。
『そんな事はないさ。こうやってナナ達と仲良くなれたから寂しい事はないよ。俺達は友達だからな。』
トムスは照れくさそうに後ろを向いた。
『トモダチ?』
ナナは鼻をすすりながら尋ねた。
『そうだな…友達とは、何でも頼めて裏切らない奴かな。』
ナナは首をひねってはいたが、分かったのか頷いた。
『トムスもシェンもボクの友達だね。』
ナナは涙を拭い笑って見せた。
『ああ、そうだ。友達だ。』
トムスはナナの顔を軽く叩き頷いた。そしてシェンも何も言わず頷いていた。
『それじゃ探検の続き行きますか?』
『おーーー!!』
皆は手を上げて更に洞窟の奥へと進んで行った。洞窟はかなり奥まであるようで先が見えなかった。右側には別の洞窟があった。
『ねぇ~トムスさんこの先には何があるの?』
ナナは肩に居るトムスに聞いた。
>> 47
カデはそう言うとムデの方に帰って行った。ナナはまた、洞窟の奥へと歩き出した。
『トムスさんは何故ここに住んでいるの?』
いきなりナナがそんな事を聞いた。
『俺か?俺はな…。』
トムスはここに来た理由を話し出した。
『生まれは、この洞窟では無い遥か遠くの森だ。その時一緒に生まれた兄弟が5匹いた。しかし、家庭が貧しくてな。その日を生きるのも大変だった。
それで俺はみんなを助ける為に食料を探しに旅に出た。だが、それが運の尽き、歩いていた俺を掴み連れ去る奴がいた。トンビの野郎だ。
そこで俺は必死に逃げようとして奴の足に噛みついた。すると掴んだ足が離れ落ちたのが、この洞窟の近くの池だった。
それからさ迷ってたどり着いたのがこの洞窟だったんだ。それから何度となく故郷を探して見たが、未だに見つかってないよ。
今は半分諦めてここに住んで居るって訳さ。こんな所だけど、住めば都だよ。お前達みたいな仲間にも出会えたしな。』
トムスはそう話していると誰かが泣いているのに気が付いた。その声の主はナナだった。
『ナナどうしたんだよ?』
『だって、トムスさん可哀想なんだもん。』
『なんで俺が可哀想なんだ?』
>> 46
『それでは、洞窟探検に出発!!』
トムスはナナの肩の上でそう叫びながら、洞窟の奥を指差した。ゆっくりと3匹は洞窟の奥へ歩き出した。しばらく行くとそこにはムカデの夫婦が居た。
『ナナじゃないか。どうしたこんな所まで?』
そう言ったのはカデだった。その横でムデが卵を産んでいた。
『こんばんは。今洞窟を探検しているんだよ。』
『こんな夜中に探検とはねぇ~。気をつけないといけないよ。危険な動物が活動する時間でもあるし、危険な場所もあるからね。』
カデは体を起こし説明してくれた。その横でムデが卵をいっぱい産んでいた。
『危険な動物が居るなら気をつけないといけないね。どうしょう?』
ナナが困った顔をしているとトムスがナナの耳元で言った。
『大丈夫だ。俺が付いているからな。危険な時は俺が言うからさ。』
『うん。分かった。』
ナナはトムスの言葉に勇気を貰ったのか、急に元気になった。
『ナナ、私も居ますよ。』
肩に居るシェンが負けじと言った。
『うん。キミ達が居るから大丈夫だね。』
ナナは両肩の2匹を見てニッコリと笑った。
『まあ気をつける事だな。若者は勇気があって良い良い。』
>> 45
トムスはナナの体を駆け上がり、首にある紐に噛みついた。
ガリガリ…
トムスが紐をかじる音が洞窟内に響いた。そしてナナの首から紐が外れた。
『どうだ、もう息苦しくないだろう?』
『うん。もう大丈夫。』
ナナはにっこり微笑んだ。トムスは紐をかじったのが良かったのか、少し歯が短くなっていた。
『ナナ、良かったね。これで息苦しくないね。』
シェンは岩の上で拍手した。ナナもそれを真似して拍手をした。トムスは2匹が拍手しだしたので、つられるように拍手をした。
『これでお前は自由だな。そうだ今からこの洞窟内を案内してやろう。どうだ来るか?』
トムスはそうナナに尋ねた。
『でも~ママが心配するから…。』
『そりゃ大丈夫だよ。いつもの時間までに帰れば良いのさ。これなら心配しないだろう?』
トムスは人差し指を立ててどうだと言う顔をしている。
『そうですよ。そうすれば良いと私も思いますよ。ナナさんそうしましょうよ?』
シェンもトムスの意見に賛成しているのかナナを誘った。
『うん。そうだね。何で今まで気が付かなかったのかな?』
ナナはいつもの笑顔を見せた。トムスとシェンはナナの肩に登った。
>> 44
『トムスさーーーん。助けてーーー。』
すると洞窟の奥から近づいて来る気配がした。
『よっ!!ナナ呼んだか?…ん?どうした、なんか苦しそうだな。』
トムスは右手を上げて挨拶をした。
『おっもしかして紐を噛み切ってくれと言う事か?』
トムスは歯を輝かせた。
『うん。大きくなったんだって。』
『そりゃ生きてる物は日に日に大きくなってくる。さ~てこの紐を噛み切って…。』
そう言いかかけて紐を握って噛みつこうとしたその時だった。
『待って!』
ナナが止めた。トムスは口を開けたままナナを見た。以前も同じ事があった気がする。
『何だよ。噛み切って良いのだろう?またママが心配するか?』
『うん。ママが心配するから…。』
トムスは呆れた感じ言い返した。
『ナナ、お前が死んだらママはもっと心配するし、悲しむぞ。悲しむとは泣く事だ。お前もママが居なくなった時に涙が出ただろう?それが悲しいと言う事だ。』
トムスは両手を腰に置き少し怒り気味に言った。
『うん。悲しむのは嫌だ。』
『そうだろう。だから噛み切ってやる。』
『分かったよ。これを噛み切って。』
ナナは紐を持ってトムスに見せた。
>> 43
『だっぴ?』
ナナはまた言葉が分からないのか頭を抱えていた。
『さっきも言ったが古い皮が剥がれ落ちて一回り大きくなる事を言うのさ。見た所キミも私達に近いようだから大人に近づいていると言う事さ。』
ナナはハッとした顔をしてシェンを見た。シェンはどうしたと言う顔をした。
『ボクも大人になるんだね。』
世間知らずのナナでも大人と言う意味は知っていたようだ。
『それで“大人”って何?』
そうでも無かったようだ。なになに攻撃を受けたシェンは説明を始めた。
『大人とはキミが大きくなってキミのママみたいになる事さ。後はキミにはまだ早いようだから言わないけど、そう言う事さ。』
『凄いなぁ~。ボクも大人になるんだぁ~。凄いなぁ~。』
ナナは嬉しそうにしている。しかし、急に苦しそうにした。
『キミ大丈夫かい?首にある紐の性で苦しいのかもしれないね。私が取ってあげよう。』
シェンは紐を伝いナナの首の近くに来て結び目を解こうとするが、シェンと同じぐらいの紐を解く事は出来なかった。
『これは私では無理のようだ。どうしたものか…。』
シェンは考え込んでしまった。ナナはある事を思い出して叫んだ。
>> 42
ナナはまたひとりになった。
『ふぁ~なんか眠たくなっちゃった。ムニャムニャ…』
ナナは大きな欠伸をする地面にうつ伏せになり眠った。夜の洞窟は静かで、たまにどこともなく動物の声が聞こえていた。その時、ナナに異変が起こった。
『うぅぅぅぅ…息苦しいよ…。』
ナナは息苦しさに目を覚ました。首にある紐が食い込んでいたのだ。
『なんか苦しいよ。あれっこれはなんだ?』
ナナの体に半透明な物が浮き上がっていた。触ってみるとカサカサしていた。
『そりゃ君の古い皮だよ。』
その声の方を見ると壁に張り付いているトカゲがいた。時折、口から舌をチョロチョロと出していた。
『こんばんは。キミは誰なの?』
トカゲは紐の掛かっている岩にピョンと飛び乗り、ナナを向いて言った。
『私はトカゲのシェンと言います。以後よろしくお願いします。』
見かけに寄らずかなり紳士的な挨拶をした。
『シェンさんか。ボクはナナだよ。よろしくね。』
ナナは寝ぼけた顔であるが笑顔を見せた。
『ところでこれはボクの古い皮なの?』
『そう。それはキミの古い皮さ。成長する時に皮が剥がれ落ちるのさ。それの事を脱皮とも言うんだ。』
>> 41
お前らは早く孫達に餌を持って帰れ!!』
『本当にもう…。こうなったらテコでも動かないからな…。わかったよ。あんまり無理しないで早く家に帰れよ。』
コウモリ達は洞窟の中に入り奥の方へと入って行った。コウモリの住処は洞窟の奥にあるのだった。
『うるさい。お前の指図はうけん!』
パタはそう怒鳴っていた。ナナはそれを黙って見ていたが、急にこんな事を言った。
『ねぇ~なんで逆さまにとまっているの?』
もっともな質問である。頭を下にしている訳だから、不思議と言えば不思議な話だ。
『なんだ藪から棒に。なぜ逆さまかって…。う~んそうだな…。習性と言うか…なんと言うか…。まぁこうやっているのが一番安全なんだな。』
パタはぶら下がったままそう説明した。ナナは見上げながら微笑んでいた。
『…ん?ナナとやら分かったのか?』
パタがそう聞くがしばらく黙ったままだった。
『わかんない。』
結局、説明してもまだ分からないナナだった。
『お主ももう少し大きくなったらわかるようようになるだろう。またその時にお話をしよう。さて、ワシも家に帰ろうかな。さらばじゃ。』
パタはそう言うと羽根を広げると洞窟の奥へと飛んで行った。
>> 40
パタはお尻を押さえながら立ち上がった。そして羽根に付いた埃を払うと飛び上がり天井にぶら下がった。
『ナナよ。羽ばたく時には周りに気を配れ。いつか誰かが怪我をするぞ。』
『ごめんなさい。ところで気を配るって何?』
ナナは本当に何も知らないのだ。ぺこりと頭を下げる姿は幼かった。やはりまだ子供なのである。
その後、パタがなになに攻撃を喰らったのは言うまでもない。そんなこんなしていると、パタが現れた時と同じように羽ばたく音がいくつも聞こえて来た。
『…ん?息子達が帰って来たようだな。』
そこには何十匹ものコウモリの群れだった。洞窟の入り口近くの空をしばらく、グルグルと回っていた。そして、その中の1匹がナナ達の所に飛んで来て天井にぶら下がった。
『あれっ親父?なんでこんな所に居るんだ?家でゆっくりしといてって言っただろう。もう年なんだから無理するなよ。』
『うるさい!ワシをすぐに年寄り扱いしおって!まだ、ワシも十分に働けるわい!』
パタは息子のコウモリに怒鳴っていた。
『しかし、いつも飛んだ後、息を切らして苦しそうじゃないか!』
『それは、たまたまじゃ。ワシの事はほっとけ。
>> 39
しかし、ある日人間との争いで敗れ、遠くの山に追いやられてしまった。その後、姿を消してしまい見た者がいないと言う事だ。もしかするとお主がそのドラゴンの生き残りかもしれないな。』
ナナはポカーンとした顔でパタを見ていた。
『お主には難しかったかな?』
『うん。良くわかんないや。でも、おじちゃん、ボクはそのドラゴンなの?』
『多分、間違いない。その内、ここの洞窟にも入れなくなるぞ。』
ナナは洞窟を見渡した。
『ボクはそんなに大きくなるの?』
『ドラゴンならそうなるだろうな。』
パタは頷きながら言った。
『凄いや。そんなに大きくなれるんだ。なら、空も飛べるようになるんだね。』
『ああ、ワシのようにな。』
そう言うとパタは辺りを飛び回った。
『早くボクも飛んでみたいな。』
ナナは背中の羽根をパタパタさせた。すると凄い風が起こり煙りが舞い上がった。パタもその風に巻き込まれ飛ばされてしまった。
『おっおい…。羽ばたくのを止めてくれ。』
ナナは振り返って羽ばたくのを止めた。風が急に収まった性でパタはそのまま落ちた。地面に転がった。
『痛たたたた…。酷い目にあった。』
>> 38
その天井に居るのは、見た目はトムスのようにネズミに似ているが、シロ達みたいに羽根もあった。その上、逆さまにぶら下がっていたのであった。
『トムスってあのネズ公の事か?違う、違う。ワシはコウモリのパタだ。お前は?』
パタは少し年配のコウモリのようだ。
『ボクはナナだよ。こんばんは。』
『あっこんばんは。なんか律儀な奴だな。それでそんな所で何しているのかな?』
パタは天井から離れるとナナの近くの洞窟の壁に飛んで来て張り付いた。
『ママを待っているの。』
『ママ?そんな図体してまだ、子供なのか!こりゃビックリだ!』
パタはそう言うとナナの体をジロジロと見た。
『ありゃお主の背中にも羽根があるじゃないか!!もしかしてお主はドラゴンか?』
『ドラゴン?わかんない。』
ナナのいつもの答えだった。パタは壁で頭を捻り考えていた。しばらくすると話し出した。
『これはな、前にワシのじいちゃんが、そのまたじいちゃんのじいちゃんに聞いた話だがな。ドラゴンと言う、とてつもなくデカい生き物がいると聞いた。
見た目はトカゲのようでその背中にはワシらのような羽根を持っていた。いつも自由に空を飛び回っていた。
>> 37
トムスは泣かしてしまったので心配そうに覗き込んだ。ナナはまだ泣いている。トムスは困り、変な顔したり変な動きをして笑わせようとした。
『ぷっぷっ…わはははは…。トムス変な顔…。わはははは…。』
ナナは指差しながら思いっきり笑っていた。そんなナナを見ていたトムスもつられて笑い出した。
『わはははは…。』
2匹の笑い声が洞窟の中に響いていた。
『さて、ナナも元気になったから帰ろうかな…。』
『あっトムス待って。』
ナナはママから貰ったクッキーを取り出すと手渡した。
『オレにくれるのかい?』
『うん。』
『悪いな。じゃあ遠慮なく貰うよ。それじゃまたな。』
トムスはクッキーをくわえると洞窟の奥に消えて行った。辺りは少しずつ暗くなり、空には星が輝いていた。
『あれは、何だろう?キラキラして綺麗だなぁ~。』
ナナはしばらく星を見ていた。すると何かが飛んでいるのが分かった。
『何だろう?シロさん達かな?』
星空に飛ぶ黒い影。素早い羽根の音と時折聞こえる甲高い声がした。するとそれはナナのいる洞窟に近づいて来て入り口近くの天井に停まった。
『おっそこの奴。新入りか?』
『キミは誰?トムスの友達かな?』
>> 36
『でもな。ここを離れて俺んちに行きたいとか思わないか?』
『え~とトムスのお家に行ってみたい。』
『ならば、この紐を外さないと無理なんだよ。分かったか?』
トムスはナナの顔を見た。ナナは顔を近づけて来た。トムスはナナの答えに息を飲んだ。
『わかった。』
『よし、ならこの紐を噛み切ってやるよ。』
トムスは歯を輝かせて紐を噛もうとした。
『トムス、ダメだよ。そんな事をしたらママが心配するから。』
トムスは口を開けたまま、ナナを見た。
『お前だって“分かった”って言ったじゃないか?』
トムスは鼻息も荒く言った。でも、ナナは泣きそうな顔をして答えた。
『ママが心配するのは嫌だもん。』
ナナはついに泣き出した。
『分かった、分かった。分かったから泣くな。』
トムスは残念そうな顔をした。ただ、ここで一つ分かったのは、トムスは心配しているよう見えるが、実はナナの首にかかっている紐を噛みたいだけなんだと言う事だ。ネズミは歯がずっと伸びている為に、常に何か硬い物をかじらないといけないらしいのだ。下手をしたら死んでしまう事もあるらしい。
『もう泣き止んだか?』
>> 35
『おいおい。いい加減名前ぐらい覚えろよ。トムスだ。』
トムスは両手を広げ呆れている。
『トムスこんばんは!』
ナナは何もなかったように笑顔で挨拶をした。
『その笑顔には負けるな。それでお前の言うママはもう帰ったのか?』
『うん、また、明日来るって。』
『お前は呑気だな。』
『ノンキ?』
ナナはまた言葉が分からなかった。
『呑気とはお前の事だよ。あははは…。』
トムスは指差しながら笑っている。
『そんなに笑わなくても。』
ナナは今にも泣き出しそうな顔をした。
『ごめん、ごめん悪かった。しかし、その紐は窮屈…いや、息苦しくないのか?』
『苦しくはないよ。』
『それなら良いけど。その紐の意味分かっているのか?』
トムスは両手を腰に置きながら言った。
『わかんない…。』
『仕方ない。世間知らずのお前に教えてやるよ。それはな、お前をここから逃げないようにしているんだ。人間のわがままだな。お前は自由を奪われているんだよ。わかるか?』
『わかんない。』
『やっぱり…。』
トムスはナナに説明しても無駄だと思った。ナナにとっては全ての事が当たり前の事で、気にはしてないと言う事だ。
>> 34
確かにあんなに近くに居たのに、おじさんは少年の事しか言っていなかった。普通ならドラゴンを見て驚かないはずが無かった。
《もしかして…ボクにしか見えていないのかな?》
少年はそんな事を考えていた。ナナを見るが少年にはハッキリ見えていた。
『まあ、良いか!ナナさあ帰ろう。』
少年とナナは洞窟へと鼻歌を歌いながら歩いて帰った。洞窟に着くと岩に紐を結んだ。
『ナナ、ボクもうお家に帰らなきゃ。ひとりで寂しいだろうけど、また明日来るからそれまで待っていてね。クッキーをいっはい持ってくるから。』
少年は手を広げて表現した。ニッコリ笑うと足早に帰って行った。洞窟から顔を出しているナナに手をいつまでも振っていた。少年のランドセルのカタカタ言う音が聞こえなくなった。
『ママ、行っちゃったなぁ…。はぁ…。』
ナナはため息をつくと洞窟の奥にトボトボと歩いて行った。定位置に来るとちょこんと座った。洞窟から見える空がオレンジ色に変わっていた。
『綺麗だなぁ~。』
『おいっ!!』
いきなり後ろから声がした。それはネズミのトムスだった。
『あっキミは!えっと…え~と…。』
>> 33
『あれっボク!帰ったんじゃなかったのか?それとも道が分からなくなったのか?』
おじさんはしゃがむと心配そうに少年に言った。その横にはナナが立っていた。
『ちょっと忘れ物しただけで…。もう見つかったから今から帰る所。』
少年は怖い性もあり、うつむき加減に答えた。実際に探し物はおじさんの横に居た。
『そうか…それなら早く帰るんだぞ。それじゃ気をつけてな。』
おじさんは少年の頭を撫でた。そして池の方に歩いて行った。
『ナナ、ごめんね。ひとり残したりして…。』
ナナは頭を横に振った。
『ママ、楽しかったから大丈夫だよ。』
少年は一度ナナを抱きしめると洞窟に戻ろうとした。少年は何気におじさんの方を見るとおじさんは大きく手を振っていた。少年は頭を下げると早々にその場から立ち去った。しばらく歩いてから少年は言った。
『ナナ、大丈夫かい?本当にごめんね。』
『ママ、何の事?何故謝っているの?』
ナナには何の事か分かって無かった。ナナにとってはただ単におじさんのやっている事が珍しいだけだった。
『しかし、おじさんはナナに気がつかなかったのかな?』
>> 32
おじさんはニッコリと笑った。少年は母親や先生から言われていた事を思い出した。
「知らない人について行ったらダメ」
だった。
『いっ今から帰る所だから大丈夫だよ。さ…さよなら…。』
少年は逃げるようにその場から離れた。しばらく走り池が見えなくなった辺りで立ち止まった。振り返るがおじさんは追って来る様子は無かった。だが、何か忘れているような気がした。
『あっナナを置いて来ちゃった!!どうしょう?』
少年は悩んだ。ナナをそのままに出来ないし、かと言って池に戻るのも怖かった。少年は決意した。池に戻ってナナを連れて帰らないといけないと…。
少年は今来た道を少し急ぎ足で戻った。するとおじさんが何も無かったように釣りをしていた。少年は気づかれないようにナナを探した。
『あっ!?』
少年は目を疑った。在ることかナナはおじさんの横で釣りを見ていたのだ。それも嬉しそうにしていた。
『ナナ…ナナ…。』
少年は小さな声で呼びかけた。ナナは声に気づいたのか辺りを見渡している。ついでにおじさんまでもが、少年の声に気がつき、後ろを振り向き少年を見つけた。
すると不思議な事におじさんとナナは一緒に少年に向かって来た。
>> 31
ここは昔から釣りのメッカであり休みの日には釣り人や家族連れで賑わう。その性で道があったのだ。
『ほらっ、ここも綺麗だろう。』
少年はナナにそう言って近くにあった石を拾うと池に向かって投げた。石は水面を滑りながら幾つもの波紋を作った。ナナはそれを見て驚いている。そして少年達は池に近づき水の中を覗いた。池は澄んでいて水中を泳ぐ魚が見えた。
『うわ~ママあれは何?』
そう言いながら水面に手を突っ込んだ。
『ひゃっ冷たい!』
ナナが振り返ると少年が言った。
『ナナ、何やってんだよ。あははは…。』
そうやってナナは少しずつ色んな事を覚えて行った。
ブロロロロ…
車が近づく音がした。
『あっ誰か来た。ナナ隠れて!!』
少年はナナを森の木々に隠そうとするが、ナナは嫌だと抵抗した。そうこうしている内に1人の大人が近づいて来た。
『ボク…1人かい?お父さんかお母さんはいないの?』
人の良さそうな50代のおじさんだった。
『えっえっ…1人だよ。』
少年はナナを隠すようにとっさにそう答えた。
『もうこんな時間だから早くお家に帰らないと暗くなるよ。なんだったら送ってあげようか?』
>> 30
それと、人には見えない物だったからだ。少年はナナのを撫でると言った。
『さあ、散歩に行こうよ。今日はこっちに行ってみようかな?』
少年は洞窟の左側に広がる森の方に歩き出した。その横をナナはついて歩いていく。
森は広くどこまでも続いていた。その森には、人が作った道があった。
動物が作る獣道とは違っていて、車の行き来がある性か中央が膨らみ左右にはタイヤの跡が出来ていた。その為、まるでトンネルのようだった。
『ナナ、この先には池があるんだよ。』
少年はこの先にある池の事を話し出した。
『休みの日には良く釣りに来るんだよ。こ~んなに大きな魚を釣った事もあるんだよ。』
少年は手を広げて見せた。実際は20cmぐらいの魚であったが、他人に自慢する時は少しオーバーに言ってしまう物である。
『今からちょっと行ってみようか?』
ナナははしゃいで話している少年を見てキィーと答えた。
『うん、行きたい。』
ナナはそう言っていた。
『じゃあ行こう!』
キィーキィー
しばらく歩くと少し開けた所に池があった。見たところ向こう岸まで20mぐらいの池だ。学校にあるプールぐらいの大きさだ。
>> 29
少年は少し悲しい顔をしてナナに再び抱きついた。ナナは抱きついた少年の顔をペロペロと舐めた。その時ナナは少年の顔がしょっぱい気がした。
『ママ、どうしたの?これは何?』
ナナはそっと指で少年の目から流れ出た涙を触った。ナナにとっては初めて見るものだった。
『ナナもう大丈夫だよ。心配しないでね。』
少年は涙を拭った。そして岩に結んである紐を解くと洞窟の外にナナを連れ出した。
『今日も良い天気だね。ほらっナナ見てごらん青くて綺麗だね。』
少年が指差した空をナナも見上げた。
『うん!!』
やっぱり少年にはキィーと言う声しか聞こえてなかった。しかし、ナナの鳴き声を聞き分けていた。それは、心が通じている証拠でもあった。
『そうか、ナナにも分かるか。』
少年はナナを見て微笑んだ。その時、ナナは空に何かが飛んでいるのに気がついた。それは洞窟の上空をグルグル回っていた。
『ナナどうした?』
少年はずっと空を見ているナナに尋ねた。
キィーキィー
ナナは鳴いたが、少年にはそれは見えていなかった。
『何か見えるのかい?』
しかし、少年には見えなかった。それはあまりに高い所を飛んでいたのである。
>> 24
トムスは少し笑いがら頭の裏を掻いた。
『俺はトムスだ。君は?』
『オレかい?オレは食料調査隊隊長アントだ。よろしくな旦那。』
アントは…
トムスは腹を抱えて笑った。ナナには何故笑っているのか分からなかくキョトンとしている。
それから、どれぐらい経っただろうか、2匹はたわいのない話をして時間を過ごしていた。
そして日も傾きかけた頃だった。近くで誰かが、歩いて来る音が聞こえて来た。2匹は洞窟からそっと顔を出すと木々の間から人影が見えた。
それは少年だった。ランドセルをカタカタさせて洞窟に近づいていた。
『あっママだ。ママが来たんだ。』
ナナは生まれて初めて見た少年をママだと思っていた。
『人間だ。ヤバいな俺は帰るぜ。またな!』
トムスは手を振りながら奥に走って行った。ナナはそれを見送ると少年の方を見た。少年はナナを見るなり抱きついた。
『ナナ、寂しく無かったか?ほらっクッキーだよ。』
少年はナナの頭を撫でるとクッキーを見せた。ナナはそれを受け取ると食べた。
『ナナ、この紐苦しくないかい?』
『ママ、大丈夫だよ。』
ナナはそう答えたが、少年にはキィーキィーとしか聞こえていなかった。ナナの仕草を見て少年はわかったようだった。
『ナナごめんね。ひとりぼっちにしちゃって。一緒に居たいけど、家では飼えないんだよ。』
☆今晩わ😊
ほのぼのした作品に、💖が癒されます。(≧▽≦)💕
更新を毎回、楽しみにしてますよ🐱
私の方は 仕事[ビル]💦が忙しくて、なかなか話が進めませんが どういう方向にするかパターンを決めたので、最後まで頑張って書こうと思ってます。
宜しければ、応援してて下さいね🎌
>> 23
トムスは少し笑いがら頭の裏を掻いた。
『俺はトムスだ。君は?』
『オレかい?オレは食料調査隊隊長アントだ。よろしくな旦那。』
アントは敬礼をした。
『だから旦那じゃないって。まあ、そんな事は良いや、よろしくな。ところでナナ…。ママはまだ来ないのか?』
トムスも敬礼するとナナを向いて言った。
『うん、いつもアレがアソコに来ないと来ないよ』
ナナが指差したのは太陽だった。太陽が山のとこまで落ちると来ると言いたかったようだ。いわゆる夕方になったらと言う事だった。以前、少年の家に居たときはいつもそのぐらいに帰って来ていた。
『なるほどね。それならまだ時間があるな。』
トムスは腕を組んで考え込んだ。するとアントが思いついたように言った。
『オレはまだ、仕事があるからこれで失礼するよ。』
アントは頭を下げると頭から出た2本の触角をピコピコ動かしながらどこかへと消えて行った。
『アントは忙しいんだな。あんな小さな体なのにな。』
トムスは頷きながら納得していた。するとナナが言った。
『それならトムスも小さいよ。』
『あははは…。こりゃ1本取られたな。ナナからしたらみんな小さいわな。』
- << 29 トムスは腹を抱えて笑った。ナナには何故笑っているのか分からなかくキョトンとしている。 それから、どれぐらい経っただろうか、2匹はたわいのない話をして時間を過ごしていた。 そして日も傾きかけた頃だった。近くで誰かが、歩いて来る音が聞こえて来た。2匹は洞窟からそっと顔を出すと木々の間から人影が見えた。 それは少年だった。ランドセルをカタカタさせて洞窟に近づいていた。 『あっママだ。ママが来たんだ。』 ナナは生まれて初めて見た少年をママだと思っていた。 『人間だ。ヤバいな俺は帰るぜ。またな!』 トムスは手を振りながら奥に走って行った。ナナはそれを見送ると少年の方を見た。少年はナナを見るなり抱きついた。 『ナナ、寂しく無かったか?ほらっクッキーだよ。』 少年はナナの頭を撫でるとクッキーを見せた。ナナはそれを受け取ると食べた。 『ナナ、この紐苦しくないかい?』 『ママ、大丈夫だよ。』 ナナはそう答えたが、少年にはキィーキィーとしか聞こえていなかった。ナナの仕草を見て少年はわかったようだった。 『ナナごめんね。ひとりぼっちにしちゃって。一緒に居たいけど、家では飼えないんだよ。』
>> 22
『食べ物じゃないよ。えっとね…。』
ナナは説明に困った。どう話したら良いか分からなかったからだ。仕方なく思った事を話す事にした。
『ママはね。ボクを守ってくれるんだよ。それにいつもこれをくれるんだ。』
ナナは手に持ったクッキーを見せた。
『やっぱり食べ物じゃないか!』
アントはクッキーを見て目を輝かせていた。
『お前達は何もわかってないな。』
洞窟の奥から呆れたような声がした。ナナ達がその声の方を見るとそこには最初に出会ったネズミのトムスがいた。トムスはナナ達の方に近づいて来て言った。
『あのな。ママとは俺達を産んでくれて育ててくれるんだ。他にはお母さんとか母ちゃん、マミーななんて言うんだな。まあ、そこに居るアリさんはちょっと違うがな。』
トムスはアントを見て顎の下に手を置いた。
『ああなるほど。ママとはそう言う事だったか。確かに俺達アリは女王が産んで、そして保育所でみんなが協力して育てるからよ。感覚的にはわかったが、それにしてもネズミの旦那は頭が良いね。』
アントは尊敬の眼差しでトムスを見た。ナナも同じように見ていた。
『そう言われると照れるな。だが、まだ旦那じゃないけどな。』
>> 21
アントはクッキーを担ぎ上げ歩いて行った。ナナは誰も居なくなった洞窟で、石ころを転がしながら遊んでいた。するとさっきクッキーを運んで行ったアントが仲間を連れて帰って来た。
『ようナナ!コイツらが俺の仲間だ。よろしくな。』
よろしく!!!
アントの後ろには数え切れないほどのアリが行列を作っていた。
『よろしくね。』
ナナは微笑んだ。
『お~いみんな!あそこに食料がある!片っ端から持って行ってくれ!』
おぉぉぉーーーっ!!
アリ達の歓声が上がった。アリ達はクッキーの欠片を次から次に運んで行った。10分経っただろうか、地面に散らばっていたクッキーの欠片は全て綺麗になくなっていた。するとアントがナナの前に来て言った。
『さて、これで全部だな。ところでお前はここで何をやってんだ?』
『ボクはここでママを待っているんだ。』
ナナは相変わらずの笑顔でアントを見た。
『ママ…?ママってなんだ?』
『えっアントはママを知らないの?』
ナナは生まれて初めて言葉の意味を聞かれた。
『ああ、知らないな。食べ物か?それなら俺も待とうかな?』
アントはニヤニヤしながらナナを見上げた。
>> 18
3匹はポカンと口開けたままだった。
『…ん?』
ナナは何故3匹が黙ってしまったのか分からなかった。その後はシロが四苦八苦しながら説明して…
アリはクッキーの欠片を置くと言った。
『ばっきゃろう!名前聞く時は自分から名乗りやがれ!!』
アリは何故か怒鳴っていた。
『あっゴメン。ボクはナナだよ。』
ナナは顔を近づけた。
『おい、こら!あんまり近づくな!お前の鼻息で飛ばされそうだ!』
アリは手を振り回し怒っていた。ナナは普通に呼吸しているのだが、アリにとってはかなりの風になるようだ。
『ごめんなさい。』
ナナは顔を離した。
『よし、それで良い。オレの名前はアントだ。食料調達隊隊長だ。今からこれを持って仲間を呼びに行くんだから邪魔するなよ。』
アントはクッキーを指差して言った。クッキーはアントの5倍はあった。
『キミは凄いね。自分より大きい物を持てるんだね。ボク驚いちゃったよ。』
ナナがそう誉めたのが嬉しいのか、アントは腕を自慢げに見せた。
『辺り前だ。日頃から鍛えているからな。オレが本気を出せば、自分の100倍の物だって持てるんだぞ。』
アントは鼻息混じりにそう言った。
『本当に凄いね。』
ナナはポーズを決めているアントを見ていた。
『あっいけねぇ~。これをみんなに教えに行かなきゃいかん。ナナ、また後でな。忙しい忙しい。』
シュタ
一人の大柄な男が舞い降りた。黒装束の上に鎧を身に付け背には奇妙な形の刀を背負っている。
辺りは漆黒の闇に覆われ小さい街灯の灯りをもとに鉛色の空を見上げると大粒の水が顔を叩き出した。
「チッ!」
男は近くにある洞穴を見つけ雨宿りをしようと中に入った。
…キィー
どこからともなく奇怪な声が聴こえる。男は手を広げ耳に当てると声の主を探した。
……。
キィーキィー
「んっ!?こっちか…」
男は洞穴の奥から聴こえるのが分かるとジリジリと歩を進めた。
キィーキィー
腕に嵌めている電子ライトを灯すとそこには一匹の竜がいた。
「よしよし、何だ腹減ってるのかよ。」 ゴソゴソ
男は腰袋から小腹が空いた時に食べる為のクッキーを取り出し竜に与えた。
キィーキィー
「そうか、美味いか。」
竜の頭を撫でると表情を一変させた。
チャキ
「もう、敵さん来やがったか…じゃあな…」
奇妙な形の刀を鞘から抜くと入り口に急いだ。
ザシュ
ミー兄、新作早ッ💦
😲ヌオッ
応援レスしに来たばい😉頑張って執筆してちょ‼
じゃば👋😁
🐲ワイバーンに乗ってみたいアル🍺より
>> 17
3匹はポカンと口開けたままだった。
『…ん?』
ナナは何故3匹が黙ってしまったのか分からなかった。その後はシロが四苦八苦しながら説明してやっと分かったようだった。
『本当に分かったな?』
『うん。多分…。』
ナナは満面の笑みで3匹を見た。
『まあ、良いよ。毎日教えに来てやるよ。』
『教えに来るよん。』
『うん、うん。』
3匹のスズメはそう言った。
『キミ達は良い奴だね。』
『おっと、分かってきたな。その調子だ。』
ナナは誉められたので照れていた。
『さて、俺達はそろそろ帰ろうかな。また来るよ。それじゃな。』
3匹のスズメは敬礼をすると空高くどこかへ飛んで行った。ブクだけはフラフラと飛んでいた。ナナはそれを羨ましそうに見ていた。あまり上ばかり見ていた性かちょっとフラついた。
『こらっ!!危ないじゃないか!!』
いきなりどこかから怒った声がした。周りを見回すがどこにも姿が無かった。するとまたどこかから声がした。
『どこ見てやがる!下だ下!!』
ナナは下を向き声がする方を見た。そこにはさっきナナが割ったクッキーの欠片を持ったアリがいた。
『あれっキミは誰?』
- << 21 アリはクッキーの欠片を置くと言った。 『ばっきゃろう!名前聞く時は自分から名乗りやがれ!!』 アリは何故か怒鳴っていた。 『あっゴメン。ボクはナナだよ。』 ナナは顔を近づけた。 『おい、こら!あんまり近づくな!お前の鼻息で飛ばされそうだ!』 アリは手を振り回し怒っていた。ナナは普通に呼吸しているのだが、アリにとってはかなりの風になるようだ。 『ごめんなさい。』 ナナは顔を離した。 『よし、それで良い。オレの名前はアントだ。食料調達隊隊長だ。今からこれを持って仲間を呼びに行くんだから邪魔するなよ。』 アントはクッキーを指差して言った。クッキーはアントの5倍はあった。 『キミは凄いね。自分より大きい物を持てるんだね。ボク驚いちゃったよ。』 ナナがそう誉めたのが嬉しいのか、アントは腕を自慢げに見せた。 『辺り前だ。日頃から鍛えているからな。オレが本気を出せば、自分の100倍の物だって持てるんだぞ。』 アントは鼻息混じりにそう言った。 『本当に凄いね。』 ナナはポーズを決めているアントを見ていた。 『あっいけねぇ~。これをみんなに教えに行かなきゃいかん。ナナ、また後でな。忙しい忙しい。』
>> 16
シロはナナの背中を見て目を丸くして驚いている。
『なら、ボクも飛べるね?』
スズメ達は顔を見合わせて何かを話し合っている。
『それはやってみないとわからないやん。』
『そうだな。やってみないとわからないな。』
『うん、うん。』
3匹はそう言った。
『ナナちょっと羽ばたいてみたらどうだ?』
シロが羽根を羽ばたいて見せた。
『うん。ボクちょっとやってみる。』
ナナはまだ小さな羽根を広げ羽ばたかせた。その羽ばたきで起こった風に3匹は飛ばされた。そして洞窟の壁にへばりついた。
『おい、ナナちょっと止めろ!』
『うわ~止めてくれ。』
ナナは羽ばたくのを止めた。スズメ達は壁からやっと離れる事が出来た。
『ふ~どうなる事かと思った。しかし、まだ無理みたいだな。』
『どうして?』
ナナは分からなかった。羽根を羽ばたかせたら飛べると思ったからだ。しかし、シロは難しい顔をして言った。
『お前はな、大きいがまだ子供ようだな。体にしては羽根が小さいからな。』
『そうか!ボクはまだ子供なんだね。』
ナナは首を背中の方に向け羽根を見た。そしてまたパタパタと動かした。
『ところで、子供って何?』
>> 15
クチバシの白いスズメが地面から飛び立ちナナの鼻の上に乗っかった。
『俺はクチバシが白いからシロと呼ばれている。』
シロはクチバシをナナに自慢げに見せた。すると頭の羽根がピンと跳ねたスズメが飛びながら言った。
『オイラがピンだよん。羽根がピンと跳ねているからねん。』
ピンは語尾まで跳ねている。そして最後の地面で満腹で苦しそうにしているスズメが言った。
『ボクはブクだよ。見たとおりブクブク太っているからね。食べ過ぎには気をつけてね。』
『お前が言うな!』
シロがブクを叱り飛ばした。ブクは羽根で顔を掻きながら苦笑いしている。
『キミ達は空を飛べるんだね。』
スズメ達はナナの近くを飛び回った。
『ほら、こんな風に自由自在に飛べるぞ。』
ナナは羨ましそうに眺めた。そして、尋ねた。
『ねぇ~ボクも飛べるかな?』
スズメ達は洞窟の近くの岩に降りると羽根を大きく広げた。
『俺達には羽根があるんだ。お前には羽根が無いから飛べないな。』
『羽根ってもしかしてこれかな?』
ナナは背中を見せると羽根をパタパタとして見せた。
『こりゃ驚いた。お前にも羽根があるんだな。』
>> 12
『ボクはナナだよ。ママを待っているの。』
『ママって、お前そんなにデカいのに子供なのか?』
3匹は顔を見合いながら驚いた顔をした。
『…
ナナがクッキーをパキッと割ると小さな欠片が落ちた。
『これぐらいなら食べられるな。う~ん美味しい。』
太ったスズメが美味そうにクッキーを食べた。残りの2匹はそれを見ながら唾を飲み込んだ。
『キミ達も食べなよ。』
ナナはそう言うと更にクッキーを割り始めた。残り2匹は恐る恐るそれをくわえ食べた。
『う、美味い!!』
3匹は争うようにクッキーを食べた。
『そんなに慌てなくてもまだあるから大丈夫だよ。』
ナナはまた、一枚クッキーを砕いた。スズメ達はそれを美味しそうに食べている。
『ふ~っ喰った喰った。』
クチバシの白いスズメがお腹叩きながら言った。残り2匹はゴロンと寝転がり、同じようにお腹をさすっていた。
『それにしてもお前は良い奴だな。』
『イイヤツ…?』
ナナは頭を捻って尋ねた。
『そりゃなんだ…お前みたいなのを言うんだよ。』
『ボクにはナナって名前があるよ。』
『お前本当に何にも知らないんだな。だからな、俺達にクッキーくれただろう。そう言う事をしてくれるのを良い奴と言うんだ。わかったか?』
『なんとなく…。ところでキミ達の名前は何?』
>> 11
『ボクはナナだよ。ママを待っているの。』
『ママって、お前そんなにデカいのに子供なのか?』
3匹は顔を見合いながら驚いた顔をした。
『うん。そうだよ。』
ナナはニッコリと微笑んだ。
『こりゃビックリだよん!』
頭の上の羽根が跳ねたスズメが言う。
『本当にビックリ!』
クチバシが白いスズメが続いて言った。
『腹減った…。』
太ったスズメが言うと残りのスズメが落ちそうになった。
『お前は食い過ぎなんだよ!そんなにブクブク太りやがって!そんなんじゃ捕まって食べられるぞ!』
クチバシの白いスズメが羽根をバタバタさせながら怒っていた。
『ねぇ~お腹空いているなら、これをあげるよ。』
ナナはクッキーをスズメ達に見せた。
『ヤッター!!』
太ったスズメが落ちるようにナナの所に飛んで来た。
『おい、ちょっと待て!』
残りの2匹もナナの前に飛んで来た。
『これは人間の食べ物じゃないか?』
『オレこれ知っている。確か、クッキーって言うだよな。甘くて美味しいんだよ。でも、このままじゃ食べられないな…。』
ナナにとっては小さいのだが、スズメ達には大きすぎた。
『なら、こうしたらどうかな?』
- << 15 ナナがクッキーをパキッと割ると小さな欠片が落ちた。 『これぐらいなら食べられるな。う~ん美味しい。』 太ったスズメが美味そうにクッキーを食べた。残りの2匹はそれを見ながら唾を飲み込んだ。 『キミ達も食べなよ。』 ナナはそう言うと更にクッキーを割り始めた。残り2匹は恐る恐るそれをくわえ食べた。 『う、美味い!!』 3匹は争うようにクッキーを食べた。 『そんなに慌てなくてもまだあるから大丈夫だよ。』 ナナはまた、一枚クッキーを砕いた。スズメ達はそれを美味しそうに食べている。 『ふ~っ喰った喰った。』 クチバシの白いスズメがお腹叩きながら言った。残り2匹はゴロンと寝転がり、同じようにお腹をさすっていた。 『それにしてもお前は良い奴だな。』 『イイヤツ…?』 ナナは頭を捻って尋ねた。 『そりゃなんだ…お前みたいなのを言うんだよ。』 『ボクにはナナって名前があるよ。』 『お前本当に何にも知らないんだな。だからな、俺達にクッキーくれただろう。そう言う事をしてくれるのを良い奴と言うんだ。わかったか?』 『なんとなく…。ところでキミ達の名前は何?』
>> 8
トムスは後ろを向き、手を振りながら洞窟の奥へ消えて言った。ナナは疲れたのか、伏せるように眠った。
ガサガサ……
ナナの近くで何かが動きま…
『はいはい…。そう言う事なんで。あっ言い忘れてた。私はカデであっちがムデだよ。それじゃ先を急ぐんで…。』
ムデは先を足早に歩いて行く。その後を必死にカデは付いて行った。
『あの2匹仲が良いな。それにしても…ふぁ~眠い…おやすみ…。』
ナナはまた眠りについた。
チチチチ…
チュンチュン…
山の向こうから朝日がゆっくり登ってくると鳥達の鳴き声が響いてきた。
『おい、見て見ろよ。このデカい奴。』
近づいて来たのは3羽のスズメだった。
『生きているのか?』
頭の上の羽根がピンと跳ねたスズメがナナの鼻の辺りに羽根をかざした。
『息はあるよん。』
『そうか、羽根でくすぐってやろうか?』
クチバシが白いスズメが笑いながら言った。
『やめなよ。可哀想だよ。』
少し太って寝ぼけた顔のスズメがそう言って止めた。
『…ん?』
周りの騒がしさにナナは目を覚ました。ゆっくりと体を起こそうとしたら、3匹のスズメは驚いて飛び立ち洞窟の近くの木の枝に停まった。
『キミ達何しているの?』
ナナが見上げている枝に3匹は体を寄せ合っていた。
『お前こそなんなんだ?』
クチバシが白いスズメが言った。
>> 7
トムスは後ろを向き、手を振りながら洞窟の奥へ消えて言った。ナナは疲れたのか、伏せるように眠った。
ガサガサ……
ナナの近くで何かが動きまわる音がした。それは壁を歩く2匹のムカデだった。
『キミ達は脚がいっぱいあるんだね。』
大きい方が体を持ち上げ、ナナの顔をジッと見ると、頭に近い前2本を組んで言った。
『あのね!この2本は手なの!わかる?こっからが脚!わかった?』
大きいムカデは後ろ何十本ある足を指した。
『うん、わかった。』
何故か、大きいムカデはカリカリしていた。小さいムカデが申し訳なさそうに大きいムカデの横から顔を出した。この2匹はどうも夫婦のようだ。
『ごめんなさいね。彼女は出産前で少しナーバスになっていてね…。』
小さなムカデは頭を掻いている。
『アンタ!!そんな事を言わなくて良いの!!ところでそこのデカいのここで何をしているだい?』
『ママを待っているの。』
ナナはニッコリと笑った。
『ママをねぇ~。ならかなりデカいのだろうね?
『ううん。ボクぐらいだよ。』
『ママだからデカいかと思ったけど、そうでも無いんだね。あっこんな事してられなかった。さあ、アンタ行くわよ!!』
- << 11 『はいはい…。そう言う事なんで。あっ言い忘れてた。私はカデであっちがムデだよ。それじゃ先を急ぐんで…。』 ムデは先を足早に歩いて行く。その後を必死にカデは付いて行った。 『あの2匹仲が良いな。それにしても…ふぁ~眠い…おやすみ…。』 ナナはまた眠りについた。 チチチチ… チュンチュン… 山の向こうから朝日がゆっくり登ってくると鳥達の鳴き声が響いてきた。 『おい、見て見ろよ。このデカい奴。』 近づいて来たのは3羽のスズメだった。 『生きているのか?』 頭の上の羽根がピンと跳ねたスズメがナナの鼻の辺りに羽根をかざした。 『息はあるよん。』 『そうか、羽根でくすぐってやろうか?』 クチバシが白いスズメが笑いながら言った。 『やめなよ。可哀想だよ。』 少し太って寝ぼけた顔のスズメがそう言って止めた。 『…ん?』 周りの騒がしさにナナは目を覚ました。ゆっくりと体を起こそうとしたら、3匹のスズメは驚いて飛び立ち洞窟の近くの木の枝に停まった。 『キミ達何しているの?』 ナナが見上げている枝に3匹は体を寄せ合っていた。 『お前こそなんなんだ?』 クチバシが白いスズメが言った。
>> 4
そんな事を言った。
『キミは誰?ボクはナナって言うんだよ。』
『お前、本当に俺を食べるなよ!』
ネズミはまだナナの事を疑っていた。
…
トムスは腕を組んでイライラしているのか足先をバタバタさせた。
『だって分からないものは分からないよ。』
『本当にお前と言う奴は…。』
トムスは首を振りながら呆れている。
『それは、お前を繋いでいるみたいだな。お前もしかして人間に飼われているのか?』
『わかんない。でも、ママはクッキーをくれるよ。』
ナナはニッコリと微笑んだ。
『だから、それを飼われていると言うんだ。それにママなんかじゃない。あれは人間だ。自分達の為なら平気で他の動物殺す。よし、俺が噛み切ってやるよ。俺の歯は何でも噛み切れるんだぜ。それでお前は自由だ。』
トムスの自慢げに歯を見せた。
『ちょっと待ってよ。そんな事をしたらママが心配するよ。』
ナナは悲しそうな顔をしてトムスを見つめた。
『ママって……。本当にお前は世間知らずだな。まあ、良い今日の所はそのままにしといておくよ。自由になりたかったら俺に言いな。いつでも噛み切ってやるよ。』
トムスは自慢の歯をまた輝かせた。
『うん、わかった。』
ナナは蔓延の笑みでトムスを見つめた。
『じゃあ、俺はこれで帰るからな。じゃあな!』
>> 3
そんな事を言った。
『キミは誰?ボクはナナって言うんだよ。』
『お前、本当に俺を食べるなよ!』
ネズミはまだナナの事を疑っていた。
『大丈夫だよ。ボクはこれが大好物さ。』
ナナはクッキーをネズミに見せた。
『…ん?そりゃ人間の食べ物じゃないか!お前はそんな物食べるのか?実は俺も好きだ!甘くって美味しいんだよな…。』
ネズミは思い出したのか涎を垂らした。
『なら君にもあげるよ。』
ナナは1つネズミに渡した。
『お前デカいけど、良い奴だな。あっそうだ。俺の名前はトムスだ。よろしくな!』
『ボクはナナだよ。よろしくね』
『そりゃさっき聞いたよ。』
『そうだったね。あははは…。』
ナナは恥ずかしそうに顔を人差し指でポリポリと掻いた。
『そうだよ。ははは…。』
トムスはナナの脚をペンペンと叩いて笑った。
『ところでナナ、何で首に紐を巻いているんだ?』
『ヒ‥モ…。』
ナナはトムスの姿勢の先を追っかけて見た。それは少年が首に巻いた物だった。
『これの事?』
『そうそうそれの事だよ。』
『分かんない。』
『おいおい…分かんないって自分の事だぞ。それぐらい分かれよ!』
- << 7 トムスは腕を組んでイライラしているのか足先をバタバタさせた。 『だって分からないものは分からないよ。』 『本当にお前と言う奴は…。』 トムスは首を振りながら呆れている。 『それは、お前を繋いでいるみたいだな。お前もしかして人間に飼われているのか?』 『わかんない。でも、ママはクッキーをくれるよ。』 ナナはニッコリと微笑んだ。 『だから、それを飼われていると言うんだ。それにママなんかじゃない。あれは人間だ。自分達の為なら平気で他の動物殺す。よし、俺が噛み切ってやるよ。俺の歯は何でも噛み切れるんだぜ。それでお前は自由だ。』 トムスの自慢げに歯を見せた。 『ちょっと待ってよ。そんな事をしたらママが心配するよ。』 ナナは悲しそうな顔をしてトムスを見つめた。 『ママって……。本当にお前は世間知らずだな。まあ、良い今日の所はそのままにしといておくよ。自由になりたかったら俺に言いな。いつでも噛み切ってやるよ。』 トムスは自慢の歯をまた輝かせた。 『うん、わかった。』 ナナは蔓延の笑みでトムスを見つめた。 『じゃあ、俺はこれで帰るからな。じゃあな!』
>> 2
ある日、少年に拾われた卵からドラゴンが生まれた。
名前をナナとつけられた。
最初は、少年の家で暮らしていたが、日に日に大きくなったナナをどうする事も出来ず洞窟で飼う事にした。
洞窟の中は広かったが、首には紐が繋がれていた。
ナナは紐を引っ張るが返って首が苦しい。
飼い主の少年はすまなそうにしていたが、時間になったのかクッキーを置いてどこかに居なくなった。
ナナは少年の後を追おうとするが、首の紐が苦しい。
キィーキィー
ナナはいつまでも鳴いた。
しかし、少年は帰って来なかった。
ナナは諦めて洞窟の所にちょこんと座った。
辺りを見回すと地面に好物のクッキーを見つけた。
1つ拾い上げるとそれを食べた。
食べていると洞窟の奥で変な声がした。
チュウチュウ
クッキーを食べながらそちらを向くと何かが動いている。
それは岩の陰からこっちを伺っていた。
それは洞窟に住んでいるネズミだった。
ネズミは近くまで寄って来てナナを見上げる。
ナナは初めて見るネズミをジッと見て言った。
『こんにちは。』
『おいおい、俺を食べるなよ。』
ナナがあまりにジッと見るから食べられると思ったのか…
>> 1
しかし、ワニだったら肉を食べるだろうし…
台所にある物を取ってドラゴンの前に置いてみた。
すると、ドラゴンは匂いを嗅ぐと何故かクッキーを食べ始めた。
美味そうに食べている。
ドラゴンに名前を付けあげようと考えた。
七色の卵から産まれたと言う事からナナと名付けた。
ナナは日に日に大きくなって来るので家で飼うのは難しくなってきた。
どうしょう?
仕方なくナナを連れて近くの山に向かった。
そこには洞窟があったからそこで飼う事にしたのだった。
餌は相変わらずクッキーなんだが、大丈夫なんだろうか?
とりあえず、ナナを残して帰る事にした。
しかし、ナナは僕から離れない。
どうして付いて来る?
親だと思っているから仕方ない事なんだろうが…。
キィーキィー
頼むからここに居てくれ。
それでもナナは付いて来る。
仕方ないので紐でつないでおく事にした。
キィーキィー
ナナは紐をピンと引っ張って鳴いていた。
ごめんよ、家では飼えないんだよ。
後ろ髪ひかれる思いで、自宅に帰った。
ここから、ナナの冒険が始まる。
ある日学校の帰りに不思議な卵を見つけた。
それは、草むらの所にポツンと転がっていた。
ラグビーのボールほどの大きさで、七色をしていた。
どの位の目玉焼きが出来るのだろう?
辺りを見回したが、巣は無く親になる動物も見つからなかった。
卵を拾ってカバンに入れて家に持って帰る事にした。
家に帰ってカバンから卵を出した。
動物図鑑を開けて見てみるが、一番大きなダチョウの卵よりも大きい事がわかった。
何の卵なんだろう?
卵を暖める事にした。
暖め始めて1週間ほど経ったある日、卵にヒビが入った。
もう少しで産まれるのだ。
殻が落ちた。
中から何かが顔を出した。
キィーキィー
それはトカゲのような顔をしている。
しかし、違うのは背中に羽根があった。
これってもしかしてドラゴン?
そうそれはドラゴンだった。
漫画とか映画なんかでは見た事あるがが、本物を見るのは始めてだ。
ドラゴンは殻破り外に出てきた。
キィーキィー
どうも僕の事を親だと思っているようで、ちょこちょことついて来る。
さて、ドラゴンは何を食べるのだろうか?
トカゲみたいだから虫で良いのか?
- << 2 しかし、ワニだったら肉を食べるだろうし… 台所にある物を取ってドラゴンの前に置いてみた。 すると、ドラゴンは匂いを嗅ぐと何故かクッキーを食べ始めた。 美味そうに食べている。 ドラゴンに名前を付けあげようと考えた。 七色の卵から産まれたと言う事からナナと名付けた。 ナナは日に日に大きくなって来るので家で飼うのは難しくなってきた。 どうしょう? 仕方なくナナを連れて近くの山に向かった。 そこには洞窟があったからそこで飼う事にしたのだった。 餌は相変わらずクッキーなんだが、大丈夫なんだろうか? とりあえず、ナナを残して帰る事にした。 しかし、ナナは僕から離れない。 どうして付いて来る? 親だと思っているから仕方ない事なんだろうが…。 キィーキィー 頼むからここに居てくれ。 それでもナナは付いて来る。 仕方ないので紐でつないでおく事にした。 キィーキィー ナナは紐をピンと引っ張って鳴いていた。 ごめんよ、家では飼えないんだよ。 後ろ髪ひかれる思いで、自宅に帰った。 ここから、ナナの冒険が始まる。
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