白銀翼の彼方

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2008/03/23 15:15(更新日時)

しばらく違う所に書いていたのですが、思いきってここに載せてみようと思いました。

ヘタクソですが長い目で見てやって下さい。

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No.628538 (スレ作成日時)

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No.451

>> 450 ガサッ

近くで物音がした。凱は素早く腰に手をやった。

『しまった。今は裸だ。こんな時に…』

しかし、そこに現れたのは野生の鹿だった。脚でちょこんと湯を触るとそのまま湯に浸かった。人が怖くないのかそのまま気持ちよさそうにしている。

『ここは動物達の温泉みたいですね』

『儂にも良いぞ』

茶々丸が浅い所で気持ちよさそうにしていた。凱達は里に帰り今までの事を報告する為に里に帰る事にした。

『白虎…2人の気が消えた…』

低くく小さな声で玄武が言った。

『あの2人を倒すとはな…鉄馬様どういたしますか?』

『弱い者は強い者には勝てぬのだ。だから、奴らは負けた。ただそれだけだ。白虎、玄武、行くぞ』

『どちらへ?』

『奴らの所だ。決着をつける』

『はっ!』

白虎は今までとは違う鉄馬の冷たい目に寒気を感じた。謎の男の術で余計な感情を取り除かれてしまったのだろう。そして、暗い廊下を抜け出て行った。その後を追う一つの影があった。

その頃、月影の里では調査に出た者達が次々と帰って来ていた。

『……西の方には見当たりませんでした』

『そうか、ご苦労であった。下がって良いぞ』

『はっ!』

No.452

>> 451 雷鳴は地図に記しをつけた。

『後は凱達だけだな…』

『雷鳴様!』

1人の忍が走って雷鳴の所に来た。

『どうした?』

『はい、今見張りの者から伝達で北西に行った一行が戻ってきたようです』

『そうか分かった』

雷鳴は立ち上がると外に向かった。するとそこには凱達が帰って来ていた。

『雷鳴様、只今戻りました』

『ご苦労だった。それでどうだった?』

『阿修羅の者とは遭遇し倒したのですが、場所まではわかりませんでした。それで、首里と猿飛さんが負傷しました』

『2人は大丈夫か?』

『処置はしましたので大丈夫です。阿修羅は四天王を出してきました』

『四天王か…どんな奴らだ?』

『朱雀と青竜と名乗っていました』

『そうか朱雀と青竜と言う事は、白虎と玄武が残っていると言う事だな』

『雷鳴様は四天王をご存知で?』

『阿修羅としてではないが、はぐれ忍者でそう言う風に言われていた者達がいるとは聞いた事がある』

『はぐれ忍者ですか…』

『忍の掟に従う事が出来ず、自分の意志で忍の里を出た者の事をそう言うのだ。そうなると盗賊と変わりはない。自分らの思うままにやってしまう。盗賊より技がある分厄介かもしれん』

No.453

>> 452 『しかし、その四天王が何故に阿修羅についたのでしょうか?』

『奴らは阿修羅に何かを見いだしたのだろう。凱よ。油断するな。間違いなく残りの奴らも強いぞ』

『はい…』

『今日はゆっくり休め。話はまた明日だ』

凱達は頭を下げ自分達の小屋に戻った。咲の作った食事を食べると疲れていたのか、凱達は寝てしまった。朝になり目覚めると首里と猿飛の様子を見に行った。

『傷の具合はどうですか?』

『ほれ、この通り良くなりました』

猿飛の万力丸と温泉が良かったのだろう。2人共、傷の跡さえなかった。

『そうか、それなら良かった。早速、雷鳴様の所に行きましょう』

凱達は雷鳴の屋敷に向かった。

『首里どうだ?』

昇が首里の肩を叩いた。

『痛てぇ―!』

『痛いな。治ったと言ってもまだ、完全じゃないのだぞ…』

『へへへ…すまない。すまない』

『痛~~~い!』

昇はまた肩を叩き、笑いながら走って逃げて行く。それを首里が走って追っかけた。

『お前ら、いい加減にしとけよ』

凱がそう言うが2人はまだ走っていた。

『やれやれ…』

凱は首を振りながら呆れていた。2人をほっとき、雷鳴の屋敷に向かった。

No.454

>> 453 雷鳴は意外にのんびりとキセルを吸っていた。

『お主ら早いな。もっとゆっくりして良かったのに…まあ、良い座れ』

凱達は雷鳴の前に座った。

『さて、昨日の続きだが、白虎と玄武に関してだが、ちと厄介だな』

『そんなに強いのですか?』

『そう厄介だな。特に白虎は頭が切れて、忍術のほとんどを使えると聞く、そして玄武は如何なる攻撃も効かない体を持つのだ』

『確かに厄介ですね。白虎の術に玄武の防御そして鉄馬の剣術…四天王が半分になっただけでもまだ救いはありますが…』

『凱、どっちにしてもヤバい事には変わりないぜ』

昇が困った顔して言った。

『まあ、そうだけど。あの2人を倒せたんだ。俺達が一丸となって戦えば、なんとかなるだろう』

『凱、油断はするな。敵もこちらの事は把握しているだろう。それなりの対策はしてくるだろうな』

『すみません。そうですね。気を引き締めないといくませんね』

『そうだ。気を引き締めないとな。とにかく、強者を集め再度北西の地を探してみよう』

雷鳴は指示を出す。1人の忍が走り、各国に指令を出した。しばらくするとその強者が集まりだした。雷鳴の元には各国の代表も集まりだした。

No.455

>> 454 『さて、今回の作戦は阿修羅を追い詰め倒す事が目的だ。出来るだけ命を落とさぬよう気をつけてくれ。強者から選抜隊を作りまずは先陣を切ってもらう。その後、本隊を進める。後の者は国を守る為、残ってもらう。そして、女子供は非難してもらう。各国はその点を注意した上で指令を出してもらいたい。私からは以上だ』

雷鳴の言葉はそこに居た者達を震え立たせた。各国は各々で指令を伝える為に動いた。庭に居る強者の中に、妙斬や鬼火なども居た。

『おっ凱か。この作戦参加させて貰うぞ。紹介しておこう。右から零、越、剛だ。儂を合わせて東の4人衆だ』

妙斬とその3人は忍では無いが、見ただけで人並み外れた体付きをしていた。凱はそれぞれと握手をした。彼らの手には、棍棒と言われる武器が握られていた。6尺はあるそれは鉄で出来ているようで、普通の人には扱えないだろう。

『凱!』

振り向くと昇と首里が居た。

『昇、首里、今度も頼むよ』

『任せとけ。まあ、実力からすれば、俺の方が上だからな。凱こそ頼むぞ』

『昇、言ってくれるな。あははは…』

『及ばずながら、俺も手伝わせてもらうよ。今度は油断しないよ』

首里は肩を押さえながら言った。

No.456

>> 455 『首里まだ良くないのか?』

『いや、もう大丈夫だ。すっかり良くなった』

首里は肩を回しながら言った。猿飛の作った万力丸は本当に効くようだ。

『皆の衆集まって貰えるか』

雷鳴は皆より一段高い所に立ち叫んだ。すると散らばっていた者達が、雷鳴の元に集まった。

『さて、これから阿修羅を攻める為、動いてもらう。選抜隊の隊長を我が月影より凱を指名する。異議ある者は今の発言してくれ』

『異議あり!』

そう言ったのは凱本人だった。

『凱、何か不満でもあるのか?』

『いえ、ただ私には荷が重すぎます。他に適任の方がおられるかと…』

選抜隊を見渡すと鬼火や妙斬など色々いた。

『凱よ。儂らもお主が適任と思う。気にする事はない。儂らも手伝うからな』

凱はしばらく考えると決意した。

『わかりました。なんとかやってみます』

『それでは、頼んだぞ』

『はい!』

『以上だ。皆決して死ぬでないぞ』

『はっ!!』

皆はそれぞれの持ち場についた。そして選抜隊は里の入り口辺りに居た。

『おい!凱先に挨拶だ』

昇は凱の背中を押した。よろめきながら皆の前に立った。額から汗が流れた。

No.457

>> 456 流石に人の前に立つのは緊張してしまうようだ。

『皆さん、若輩者ですがよろしくお願いします』

『凱それじゃ、隊長の挨拶じゃないぞ。俺に付いて来いぐらい言わないとな』

昇はニヤニヤしながら言った。

『だから、言ったのだ。俺は隊長には向かないって…』

『凱挨拶などどうでも良い。統率力が一番大事だ。信頼を阿修羅を見つけるまでに得れば良い』

昇の横から茶々丸が言った。

『茶々丸なんでここに?お前は守りの方じゃ無かったか?』

『昇お前はいちいちうるさい奴だな。暇だから居るだけじゃ。守備隊は退屈でたまらん』

『やるか?』

昇と茶々丸は睨み合っている。

『おい、昇、茶々丸!やるなら阿修羅相手にしてくれ』

凱は呆れてそう言った。喧嘩するほど仲がよいとは言うが、ここまで来ると良い迷惑だ。

『これより、北西の地に向かう』

凱はそう言うと里を出た。その後に選抜隊が続く。総勢30名ほどだ。人数が多い分、少しは気が楽ではある。里の方では残した家族が手を振っていた。その中には茶々丸と猿飛も居た。

『凱、これだけ居たら何か勝てそうだな』

『ああ、心強いな。しかし、阿修羅もこんな時の為に対策はしているだろうな』

No.458

>> 457 『おいおい、そんな事言うから、急に不安になって来た』

『それだけの敵だと言う事だよ』

『そうだな。気合い入れて行きますか!オー!』

凱率いる選抜隊は硫黄の匂いが漂う所に向かった。

その頃、阿修羅の本拠地を離れ勾玉を探す為に滝の近くを探していた。

『鉄馬様、あの家で聞いてみましょう』

白虎が指差した方には、凱達が尋ねた柑太の家だった。家の前で藁を叩いている柑太を見つけ白虎が話しかけた。

『すまないが、勾玉の事を聞きたい。知っている事があったら教えてもらいたい』

『勾玉?確かこの先の祠にあるとは聞いた事はあるが、それぐらいしか知らないな』

柑太はまた、藁を叩き始めた。凱達の事は言わないようにしていた。しかし、その微妙な柑太の仕草を見逃さなかった。白虎は刀を抜くと柑太の首元に当てて言った。

『お前、何か知っているな。言わないと命がないぞ』

『本当に何も知らないよ。これ以上は言う事はない。帰れ!』

柑太は刀を押し退かすと立ち上がった。すると目の前に、刀を突きつけられた母親がいた。

『これでも言わないつもりか?』

鉄馬は冷たい目で柑太を睨む。

『本当に知らないんだ。母を放してくれ』

No.459

>> 458 『まだ、惚けるのか?ならば、これならどうだ?』

鉄馬は母親の首元に刀を軽く引いた。首元からすーっと血が垂れてきた。

『待ってくれ!わかった話すから母を放してくれ…』

『話が先だ』

鉄馬は強く言った。柑太は仕方なく凱達の話をした。

『そうかわかった』

『早く母を放してくれ』

鉄馬はニヤリと笑うと母を放した。しかし、次の瞬間母の体から刀の刃先が見えた。そう鉄馬が柑太の母親を刺したのだ。

『母さーん?!お前なんて事をするんだ。話が違うじゃないか!』

柑太は鉄馬を睨んだ。すると鉄馬は刀を高く構えたかと思ったら、振り下ろした。柑太は血を吹き倒れた。

『貴様……』

『これならいつまでも一緒に居られるだろう』

『鉄馬様そこまでしなくても……』

流石に白虎達も鉄馬の行動が理解出来なかった。

『どうした白虎?怖じ気づいたか?』

『いや、そう言う訳では…ただ…』

『ただ何だ?』

『殺す必要はないかと…』

鉄馬は血のついた刀を一回祓うと鞘に収めた。

『人はいずれ死ぬ。ただ、それが早まっただけではないか。母親と一緒に死ねたのだ。親孝行出来て奴も幸せだろう。さあ、行くぞ』

No.460

>> 459 白虎は今までにない、鉄馬の残忍さに恐怖を覚えた。凱達が持っている事が、わかった。鉄馬達はいずれ阿修羅の近くに来るのを待つ事にした。

『鉄馬様!』

『なんだ楓も来ていたのか。それでなんだ?』

楓は風のように現れ鉄馬の足元にしゃがみ頭を下げていた。

『はい、どうやら4国が一丸となって阿修羅を目指しているようです』

『なるほど、最終決戦になりそうだな。楓!皆を集めろ』

『はっ!』

楓はその場から消えた。

『白虎どう思う?』

『何がでしょうか?』

『奴らの事だ。俺達は勝てるか?』

『何人来ようが我々だけでも勝てます』

『凄い自信だな』

『………』

『まあ、良い。お前達の実力見させてもらうぞ』

『はっ!』

白虎は鉄馬の変わりように戸惑っていた。


凱達はミカン畑の近くに来ていた。

『柑太いるかな?』

『時間的に家の方じゃないか?』

『そうだな。昼時だもんな』

凱達はそう話しながら柑太の家の方に歩いて行った。柑太の家が見えてきた。その庭先に人影が見えた。

『柑太さ~ん』

昇は駆け寄った。だが、昇は見つめて立ち尽くしていた。凱は不思議に思い駆け寄るとその訳がわかった。

No.461

>> 460 『なんて惨い事を…』

柑太とその母親が血まみれで倒れていた。柑太が微かに動いた。

『柑太さん、大丈夫か?誰にやられた?』

『3人組…勾玉の事を…グフッグフッ…すまない君達の事を話してしまったグフッ……まだ、近くに居る……』

『もうわかったから。それ以上話すな!』

『本当にすまない…』

柑太はそのままぐったりとなった。凱は柑太をそっと寝かせると立ち上がった。

『許さん……許さんぞーっ!!』

凱は叫んだ。すると勾玉が光った。腕にある鏡の小手も光り出しスルスルと凱の体を覆って鎧となった。若草色のその鎧はまるで龍のようだった。

『皆聞けーっ!!これ以上は誰も死なせない!!俺が守ってみせる!!』

『おーーーっ!!』

凱はそう言うと柑太を抱きかかえ、家の中に寝かせた。母親も同様に寝かせた。そして家の側に穴を掘った。柑太達の墓を作る為だ。

『凱よ。俺がお経をあげてやる』

『すまない。2人も浮かばれるだろう』

妙斬は2人の墓にお経をあげた。それが終わると温泉のある方へ向かった。温泉を横目に火山の近くまで来ると妙斬が妙な事を言った。

『少し気になっていたのだが、さっきから同じ所を回ってないか?』

No.462

>> 461 『俺もそう思っていたよ。あの時の温泉の湯煙が何度も見えた。』

そう昇が言った。

『この辺りに幻術をかけているようだ』

『やはり、この近くに阿修羅の本拠地があると言う事か』

凱達は辺りを見回した。

『この幻術は我らが解こう』

妙斬が3人を連れそう言った。

『出来るのか?』

『こう言うのは我らには得意分野だ。下がっていろ!四方陣!』

妙斬と零、越、剛は四方に分かれ呪文を唱え出した。すると陣の中央が光り出した。見えていた風景が歪み出した。今まで見えていた草木が消え、ゴツゴツした岩が至る所に現れた。その遥か彼方に城らしき物が見えた。

『やった!幻術が解けたぞ!』

『よし、あれが本拠地だな!行こう!』

だが、行方を遮る者達が現れた。それは阿修羅の獣人だった。空にも鳥の獣人もいた。その中央から黒い鎧の鉄馬が現れた。

『よくぞここまで来た。しかし、何人来ようがお前達はこの刀の錆になるだけだ』

『ちっ待ち伏せか…』

『鉄馬!貴様の好きにさせん!!』

凱が叫んだ。

『おお…威勢が良いな。だが、これまでよ』

鉄馬が刀をあげ前に振った。それが、合図なのか獣人達が凱達を目掛け突進して来た。

No.463

>> 462 『皆、我らの力を見せてやろうぞ!!』

『おー!!』

凱達は向かって行った。

『空の奴は俺に任せろ!』

首里率いる弓矢隊は弓を構えると矢を放った。その矢は獣人を次々と貫いていた。凱達も各々戦いを繰り広げていた。

『喰らえ!!』

ガキィーン

『この程度で私は倒せぬ!』

白虎は凱を突き飛ばした。

『お前は…』

『我が名は白虎。お前の命貰う』

白虎は刀を振り下ろした。凱は寸前で受け止めた。

ギシギシ…

刀の軋む音がする。

『凱!!』

首里が白虎目掛け矢を放った。

ガキィーン

それを玄武が体受け止めた。矢は刺さるどころか弾けてしまった。その体はまるで亀の甲羅で覆われているようだった。

『なんなんだ?俺の矢が刺さらないなんて…』

『玄武の体は何も通さない』

『何?!何も通さないと言うのか?仕方ない我が孔雀の力見せてやる』

首里は気を集め出した。矢にその気が集まりだし赤い炎のようになった。

『孔雀の威力味わえ!!鳳凰疾鎖!!』

ビュン

玄武目掛け矢は飛んで行く。

『玄武甲羅の舞…』

玄武はぼそりと言うと頭や手足を引っ込め回転し始めた。まるで亀のようだ。

No.464

>> 463 矢は玄武に当たって刺さったように見えたが弾き飛ばしてしまった。

『何?!俺の矢がきかない…そんな訳ない。喰らえ~鳳凰連矢!!』

首里は再び弓を引くと何本も繰り返し放った。それはまるで鳳凰が舞っているようだった。しかし、玄武はまた回りだし全ての矢を弾き飛ばした。

『玄武の体は鋼より硬い。何度やっても同じ事…諦めろ』

白虎はニヤリと笑った。その時孔雀が微かに光り声がした。

《良く見よ。どんな物にも弱点はある。見極めろ》

首里は辺りを見渡したが、その声の主が見当たらなかった。孔雀を見つめた。光っていたのが無くなっていた。さっきの声は孔雀自体から発せられたのが分かった。

『どうした?何か見つけたのか?』

『お前こそ、油断するな!!』

凱が白虎目掛け月黄泉を振った。

ガキィーン

また、そこに玄武が遮り凱の月黄泉を受け止めた。

『クソッ!』

凱は後ろに跳び離れた。

『凱!そいつは俺が倒す。離れていろ!』

首里は再び孔雀を構えた。玄武は回転を始めた。

《どこだ…どこに奴の弱点がある…そうか!》

首里は天に向かって孔雀を構え矢を放った。

『どこを狙っている?』

No.465

>> 464 白虎は不適に笑った。矢は天高く上がると弧を描き玄武目掛け落ちて行った。そして、玄武をとらえた。玄武の動きが止まった。するとゆっくりと玄武が前に数歩歩き出し倒れた。

『玄武…?』

白虎は玄武に近づくとその訳が分かった。首里の放った矢は玄武の頭を貫いていた。そう玄武の弱点は回転をしても動かない頭だったのだ。

『貴様、何故玄武の弱点を…ふん、さすがだな。弱者は強者には勝てぬか』

白虎は刀を前に構えると呪文を唱えた。

『お前らには特別に見せてあげよう』

すると白虎の体が変化し始めた。それは名前のような白い虎の獣人だった。

『昇龍爆風斬!!』

凱が隙をつき技を放った。白虎を目掛け飛んで行く。そしてそれをまともに喰らった。土埃が舞い上がり白虎の姿が見えなくなった。

『やったか?!』

少しずつ土埃が晴れてきた。しかし、そこには白虎の姿はなかった。

『ふふふ…そんな技見切れないとでも思ったか?』

その声は凱の後ろで聞こえた。凱が振り返るとそこに白虎が立っていた。

『残念だな。私は四天王の全てを兼ね備えている。攻防速術全てな。お前達には私は倒せない』

『何を!!』

『ならば見るが良い』

No.466

>> 465 白虎が動いた瞬間近くで悲鳴が聞こえた。その方を見ると首里が血吹雪を舞上げていた。

『首里!!』

白虎は刀を払いながら凱を見た。

『私には勝てぬ。諦めろ』

『畜生!!うわわわ……』

凱の体に白い炎のような物が立ち上る。月黄泉が輝き出した。そして首里の孔雀も輝き出した。

『凱…受け取れ…』

首里は残った力で持っていた孔雀が凱の元へ投げた。すると孔雀は2つに分かれ凱の月黄泉と一つになり飛龍となった。

『後は頼む…』

首里はそのまま倒れた。

『なんだ…この光は?』

白虎はあまりの眩しさに顔を覆った。凱は飛龍を構えると叫んだ。

『飛龍無限斬!!』

振り下ろされた月黄泉からまるで空翔る龍のような光が白虎目掛け放たれた。

ズドーン
スドドド…

そこには幾つも切り裂かれた白虎が立っていた。

『ぐふっ…これは流石に効いたよ。だが言ったはずだ。私は四天王の全てを持っているとな。鋼の体、疾風の速さ、高僧の術、そして剣豪の技。お前にはこの白虎は倒せない』

『白虎、残念だったな。お前もう俺には勝てない』

『今更、何を言う。勝負はこれからだ』

『自分の体を見な!』

『…ん?』

白虎は体を見た。

No.467

>> 466 すると刀がストンと落ちた。手首から先が無くなっていた。

『て、手が……』

体のあちこちに線が入り白虎は崩れ落ちて行く。

バラバラ……

『鉄馬様ーーー!!』

白虎はバラバラになり地面に落ちた。

『四天王もこれで終わりか。奴ら思ったよりやるな』

近くで見ていた鉄馬が言った。

『凱、さすがだな。日に日に強くなっているな』

『凱!!大丈夫か?』

そう叫んだのは雷鳴だった。後から来る本隊が合流したのだった。

『これは、また大勢で来たようだ。ここはひとまず後退するしかなさそうだな…楓行くぞ』

そして鉄馬は阿修羅達に合図をすると後退して行った。

『待て!!』

『凱、もう良い。それより無事で何よりだ』

雷鳴は凱の肩を叩いた。

『雷鳴様…首里が…』

『…ん?首里がどうした?』

『敵にやられて…』

凱は下を向いた。

『俺がどうしたって?』

そこに立っていたのは、妙斬に担がれた首里だった。

『首里?!』

『何だよ。幽霊見るような顔しやがって…』

『お前やられたのでは?』

『勝手に決めるな。気を失っただけだ』

『そうか良かった』

凱は首里に駆け寄り抱きついた。

No.468

>> 467 『凱やめろよ。恥ずかしいではないか』

首里は凱を少し押した。凱は離れると周りを見渡した。獣人達や味方の選抜隊の何人かが倒れていた。

『大丈夫か?』

まだ、息のある者を見つけ起こした。

『これを食べろ』

凱は猿飛から貰った万力丸を1つ食べさした。

『うっ…俺は…?』

『もう大丈夫だ。しばらくここでジッとしてたら良い』

その倒れていた男の傷はかなり治っていた。万力丸は魔法の薬のようだ。完全まではないが、治癒力は早まるようだ。

『凱、無事だったか?』

そこに現れたのは昇だった。

『お前こそ無事だったのだな。良かった』

『さて、後は阿修羅の本拠地に乗り込む訳だが、選抜隊も半分は負傷して動けないな。どうするんだ?』

凱達は雷鳴を見て聞いた。

『雷鳴様!この後、本拠地への攻撃はどうするのですか?戦いでかなりの負傷者も出ています』

『そうだな…ここはひとまず停戦といきたいが、これを逃せば阿修羅も体制を整えるだろう。ならば、選抜隊の再編成しすぐに奴らの本拠地を攻めるのが得策だとは思う』

『ならば、すぐにでも…』

『選抜隊の者集まれ!』

雷鳴が召集をかけた。

No.469

>> 468 『選抜隊に俺も加わる。今よりあの城を目指す』

『おー!!』

『本隊は我々が突入後、城を囲み阿修羅を1人も逃すな!合図と共に突入せよ!行くぞ!!』

『おー!!』

雷鳴の号令と共に全隊は城を目指した。

『とうとうここまで来たか!!』

鉄馬は城から凱達を眺めていた。

『鉄馬様どういたしますか?』

『迎え討つ!獣人達を前に出せ!』

ズドドド……

獣人達が城の前に出て来た。

『うりゃー!!』

あちこちで刀の当たる音や叫び声が響き渡っていた。城の中央に入り口がありそこに選抜隊が集結していた。

『よし、突入するぞ』

『おーっ!!』

突入しようとするとそこには獣人達が待ち伏せしていた。

『ここは通す訳にはいかない。ここでお前達を倒す』

『望む所だ』

凱が先陣を切って突っ込んで行った。新たに変化していた飛龍で獣人を斬り倒して行く。続くように選抜隊も斬り込んで行った。獣人と鍔迫り合いしていると妙斬が近づいて来た。

『凱、ここは俺達に任せてお前達は先に行け』

『しかし…』

『良いから先に行け!』

『わかりました。ご無事で…』

凱達は妙斬達を残し城の奥に入って行った。

No.470

>> 469 その後を獣人が追っかけようとした。すると妙斬達が獣人達を遮り言った。

『おっと、お主らは儂らが相手だ』

その頃、城の奥を目指した凱達は一階中央の広間に着いていた。そこには鉄馬と楓の姿があった。

『ここまで来るとはな。だが、それも終わりだ。ここで決着をつける』

鉄馬は凱に斬りかかって来た。凱はそれを受け流した。後ろから獣人達が迫って来た。選抜隊は各々獣人相手に戦っていた。

『雷神剣!!』

雷鳴がそう叫び獣人達を痺れ切り裂いていた。

『鉄馬!お前の相手は俺がする。かかって来い』

『雷鳴か…お前では相手にならない』

『俺をなめるな!昔の俺ではない。さあ、かかって来い!』

『仕方ない…では行くぞ』

ガシン
ギリギリ

『腕は落ちてないようだな雷鳴!』

『お前なんぞに負ける訳なかろう』

『だが、私の力を見誤るなよ』

鉄馬が黒龍刀を振ると、雷鳴は吹き飛ばされた。

『うっ…なんだこの力は?』

『雷鳴よ。お前1人では何も出来ないのだよ。全員でかかって来い!黒龍衝撃波!!』

8つの黒い龍が雷鳴達を襲った。すると雷鳴の前に誰かが出てそれを受け止めていた。

『凱…』

『雷鳴様、こいつは俺が倒します』

No.471

>> 470 『だが、鉄馬はお前が思うほど、弱くはないぞ』

『大丈夫です。何度も戦ってきましたから』

『しかし…』

『本当に大丈夫です。雷鳴様は獣人達をお願いします』

凱は月龍刀を構えた。

『お前、威勢が良いな!気に入った。ならば、術を使わず刀技だけでやろうではないか』

『望むところだ』

ガキン

凱が鉄馬と刀技だけの勝負が始まった。2人の動きは目に止まらぬ早さであった。常人には見えないだろう。ただ、鉄のぶつかる音が響いていた。そして、2人が見えたのは、間合いを取った時だった。

『貴様なかなかやるではないか…名はなんと言う?』

『月影の凱だ!』

『凱…?』

鉄馬の様子が変だった。名前に覚えがあるのか、黒龍刀を構えていたのを下ろした。

『どうした?降参するのか?』

『…いや…凱か良い名前だ。では参るぞ!』

鉄馬はまたすぐに凱に向かって行った。2人の気がまるで仁王のよう立ち上る。激しい刀のぶつかり合いが続く。少し凱が押されていた。

『凱、大丈夫か?』

そう叫んだのは昇だった。凱と鉄馬の戦いを見てられなくて叫んだようだった。

『昇、俺は大丈夫だ。鉄馬は絶対倒す』

『ショウだと…?』

No.472

>> 471 昇の名前を聞いて、鉄馬はまた黒龍刀を下ろし止まった。

『お前…ショウと言うのか?』

『それがどうした?そうとも月影の昇とは俺の事だ』

昇は何故か偉そうに言った。

『ショウ…ショウ…!!』

『何だよ。ショウショウうるさいな!』

『あははは…気にするな。さあ、何人でも良いかかって来い!』

鉄馬は再び黒龍刀を構えると手招きした。

『なめやがって!!俺がぶっ倒す!!』

『来い!』

昇は星を抜き鉄馬に向かって行った。

ガキン
ギシギシ

『お前も大した事ないな』

鉄馬が昇を突き飛ばした。昇はそのまま壁にぶつかった。

『もう、刀技では決着はつかないようだな。こうなったら忍全ての技で勝負だ』

『望むところだ!!』

昇が呪文を唱えた。

『土龍連弾!!』

土の龍が鉄馬を襲う。鉄馬はまともに受けたように見えた。城の壁は壊れぽっかりと穴が開いた。埃が舞い上がる中、鉄馬の姿が現れた。

『何?俺の技がきかない…』

鉄馬の周りには黒い炎が立ち上っていた。

『昇、お前だけでは無理だ。俺と一緒にやるしかない』

『あははは…2人でも無理だ。あきらめろ…』

『何を!!』

凱達は呪文を唱えた。

No.473

>> 472 2人の気が1つになり、荒ぶる龍になった。その時、月龍刀から孔雀が取れた。そして月黄泉と星黄泉が1つの矢になった。凱は孔雀を構えるとそれを放った。

『天龍衝弾!!』

凱はそう叫んだ。それは、鉄馬の体を貫いた。

『ぐふっ…お前達もここまで来たのだな…これなら、あの方も倒せるだろう…』

『何故、避けなかった?』

そう鉄馬は最初からよけようとはしなかったのだ。

『昇…お前は俺の弟だ…』

鉄馬の衝撃的な言葉だった。

『何言っている?俺には兄なんていないはず…』

凱達は鉄馬の言葉に困惑した。雷鳴を見ると頷き言った。

『お前達には言っていなかったが、鉄馬は昇の本当の兄だ』

『鉄馬が兄…』

それ以上言葉にならなかった。

『私は術により、ずっと操られていた…しかし、お前の名前を聞いて全てを思い出したのだ…昇、これを受け取れ…』

鉄馬は黒龍刀を差し出した。昇はそれを受け取った。

『兄さん…』

『兄と呼んでくれるか…これは、伝説の刀…黒龍刀だ…お前に託す…だが、この後…お前達にまだ試練が残っている…この城の主を倒す事だ…お前達なら大丈夫だ…ぐふっ…必ず倒して…く…れ…』

鉄馬はそのまま倒れた。

No.474

>> 473 『兄さん!兄さーーーん!』

昇は鉄馬に近づいて、涙を流した。初めて知った兄の存在。一瞬だけの兄との時間だった。

『昇、すまなかった…』

『いえ…』

雷鳴の言葉に昇はそう言って頭を横に振った。

『前から猿飛殿から聞いて知ってはいたのだが、お前が聞いたらどうなるのかわからなかったからな…。折を見て話すつもりではいた』

『もう良いです。今はわかっただけでも嬉しいです』

昇は黒龍刀をつき立ち上がった。

『凱、あれ!』

昇は鉄馬の先に刺さっている剣を見つけた。

『もしかしてあれが草薙の剣か?』

凱は近づいて剣を掴んだ。それはさっき放った月黄泉と星黄泉の合わさった矢が変形した物だった。剣全体に弦の絵が描かれていて薄緑色をしていた。引き抜くと凱の中で声がした。

《この剣は草薙の剣…しかし、まだ本当の姿ではない。後一つ…後一つだ…》

『後一つ?どう言う事だ?』

『どうしたんだ?それって草薙の剣だろう?』

『まだ、草薙の剣では無いらしい。後一つを見つけないと本当の草薙の剣ではないようだ』

『何だよそれ?その一つとは何なんだよ?』

昇は混乱していた。すると雷鳴が近づいて来て言った。

No.475

>> 474 『凱、俺が聞いた話だが、草薙の剣の一つに形の無い何かがあると聞いた事がある。もしかしたら武器では無いのかもしれないな』

『武器では無く、形無い物ですか…?』

『どっちにしてもここの城の主を探さないとな』

『あそこに階段があります。登ってみましょう』

凱が指差した先には上に上がる階段があった。

『とりあえず登ってみましょう』

昇はそう言うと倒れている鉄馬に手を合わせ階段を上り始めた。凱と雷鳴もその後に続いた。上の階は静まり返っていた。

『やけに静かだな…』

すると目の前に1人の忍が現れた。それは楓だった。凱達は刀を構えた。すると楓が言った。

『私は闘うつもりはありません。この先にあの方が居ます』

楓は本当に闘うつもりはないようだ。

『お前…何故?』

『それは言えません。友を思う気持ちが全てを終わらせるはずです。さあ、お行きなさい』

楓は奥にある壁を指差した。そこには大きな扉があった。

『わかった。あそこに居るのだな』

凱達は扉の前まで行き開けた。そこは、果てしなく広かった。

『城の一部のはずなのに…何故、こんな広い…?』

凱達が中に入ると扉がすーっと閉まり消えた。

No.476

>> 475 その中は全てが歪んでいた。凱達は異空間に入ってしまった。

『扉も壁もない。どう言う事だよ?』

昇は辺りを探るが何もなく、見えるのは歪んだ空間だった。

『待って居たぞ。良くここまでやって来た。しかし、ここでお前達は最後だ』

その声は近くで聞こえた。凱達は辺りを伺うが姿は見えなかった。するとすーっと姿が現れた。その男は不思議な面を被り、背中に袖の無い外套を羽織っていた。

『お前は誰だ?阿修羅の親玉か?』

『あははは…親玉とは面白い。まあ、そのような者だ。私の名はノーネム。本当の名前は知らぬ。ある村の人がそう呼んでいた』

凱は前に獣人にされたから聞いた事を思い出した。

『さて、ここまで来たのは、私を倒す為だろう?』

ノーネムは余裕なのか、そんな風に言った。

『そうだ。お前の性で何人もの命がなくなった。いったいお前の目的はなんだ?何をしようとしている?』

『この世の破壊かな…』

ノーネムは仮面の中で笑っていた。

『そんな事はさせないぞ。俺達はお前を倒す!』

凱はそう言うと草薙の剣を抜いた。

『それはもしかして草薙の剣か?ならば、貴様が選ばれし者か…』

No.477

>> 476 『なんだよ。その余裕に満ちた態度は?これでも喰らえ!!』

昇は手裏剣を投げつけた。だが、手裏剣はノーネムの前で止まった。

『何っ?』

『残念だな。そのような物では、意味をなさない』

ノーネムは右手を上げると何かを唱えた。手のひらに気の塊が浮かび上がった。それを凱達に目掛け放った。凱達は素早く避けた。するとそれは凄い爆発を起こした。

『なんだよ今のは?』

『今のは気功弾だ。昔、あるお方が使っていたが…。まさかな…』

雷鳴はそんな事を言った。あるお方とは誰なんだろうか?凱はそう思っていると、また、ノーネムが気功弾を放ってきた。凱達はそれを避けた。

『ここは私の作った世界だ。逃げる事は出来ない。出るには私を倒すしかないのだ。さあ、かかって来い』

ノーネムは今度は両手で交互に気功弾を放って来る。凱達は避けながら辺りを駆け巡った。

『逃げてばかりでは、私は倒せないぞ!』

『うるさい。お前は俺が倒す!!昇龍爆裂斬!!』

凱はそう叫び技を放った。放たれた龍の姿の気はノーネム目掛け飛んで行った。だが、凄い光を放ち消えた。

『凄い技だな。しかし、私には意味がない。いろいろ試した方が良いぞ。ふふふ…』

No.478

>> 477 ノーネムは笑いながら言った。

『余裕なのはこれまでだ。俺の技を受けてみよ!雷神剣!!』

稲妻が雷鳴の刀に落ち電気を帯びそしてノーネム目掛け放った。

バリバリバリバリ…
ズドーーーーン

稲妻がノーネムにぶつかったが、四方に飛び散った。

『俺の雷神剣が効かない…』

『雷鳴様、奴の周りには見えない壁があるみたいですね』

『今頃、気がついたか…言ったはずだ。ここは私が作った世界だとな』

『ならば、壁を取り除けば、なんとかなるな。凱、昇、俺が呪文を唱えている間守ってくれ』

『わかりました』

雷鳴は何かの呪文を唱え出した。すると見えない壁が見えて薄れていくのが分かった。

『凱、あそこに草薙の矢を打て!!』

昇の指差した所を見ると穴が開いているのが分かった。凱は首里から預かった孔雀を構え、草薙の剣に願った。

《あの時の矢になってくれ》

すると剣から矢に変わっていく。それを孔雀に添え引き放った。矢はその穴目掛け飛んでいき通り抜けた。その矢は更にノーネムの顔に向かった。

パキィーン!!

ノーネムは避けたが、仮面に当たり割れた。そこから顔が現れた。雷鳴の顔色が変わった。

『あなたは…』

No.479

>> 478 『雷鳴様どうしたんですか?知り合いですか?』

雷鳴はただ、ジッとノーネムを見つめていた。そして重い口を開いた。

『あそこに居るのは八雲様だ。凱お前の父上だ』

凱達は驚き目の前に立っている男を見た。

『あれが…八雲様…俺の父親…』

『何故、八雲様が阿修羅の首領なんですか?』

ノーネムと名乗っていたのは、伝説の忍、八雲だった。

『あははは…知られる前に倒すつもりだったが、知られたのなら仕方ない。お主らが言うように私は八雲。この世は腐りきっている。自分の為なら人をも平気で倒す。あの戦いの後、私をも倒そうとして来た。この英雄である私をだ!私は人を信じられなくなった。1人、洞窟に籠もり外界を断った。その時、私の目の前に現れた者がいた。人だが、人でなくこの世に存在しない不可思議な者だった。私は奴から妖術を学び、偉大な力を得る事が出来た。そして私はこの世の全てを破壊する事にした。しかし、ここで我が子に出会えるとはな。さあ、最後だかかって来い!』

八雲は手を組むと呪文を唱えた。すると八雲の体が一回り大きくなった。そして右手には炎のような形をした剣を持っていた。

『お主らに炎の渦をお見舞いしよう!』

No.480

>> 479 剣から炎が上がり凱達に目掛け放って来た。

ズゴゴゴ……

『こんなもの!!』

昇が黒龍刀を振った。しかし、炎が生きているように絡んで来た。一瞬にして昇は炎に包まれた。

『うわーっ!!』

『昇ーーーっ!!』

雷鳴が呪文を唱えだした。

『水遁、雨の舞!!』

昇の周りに雨が降り出した。

ザァーーー!

すると昇を包んでいた炎が煙りをあげ消えていく。

『ふぅ…助かった』

昇は濡れた体を払っていると雷鳴が近づき言った。

『八雲様の術は、我々のとは少し違う。気をつけろ!』

『はい、わかりました』

凱達は再び身構えた。

『さすがは、雷鳴が育てただけはある。しかし、お主ら…雷鳴には気をつけろよ。同朋にも牙をむくからな!』

凱達には言っている事が分からなかった。

『どういう事だ?』

『そいつだよ。私を抹殺しようとした男はな。正式には依頼されたのだろうがな!もしかするとお主らも強くなりすぎるとわからんぞ?』

雷鳴は刀を下ろし黙り込んだ。八雲の言っている事は本当の事のようだ。

『本当なんですか?』

『あぁ本当だ。役目とは言え八雲様を狙ったのは確かだ。

No.481

>> 480 だが、自分自身に嫌気がさしてそれ以上は何もしなかった』

八雲は急に笑い出した。

『はははは…途中で止めたからどうだと言うのだ。お主が私を狙った事には変わりはない!』

八雲の怒鳴る声が響いた。

『あなたを抹殺しようとしたのではないのです。凱の持っている草薙の剣を壊す為。しかし、八雲様はそれを捨てた。それで全ては終わった。だからそれ以上追っかける必要もなかった。上からは八雲様の命も奪うように言われていましたが、その必要はもうなかった。八雲様、考え直して貰えませんか?これ以上戦っても何も得ない。私の命を差し上げます。それで終わりにして貰えませんか?』

『はははは…お前の命で終わりに?片腹痛いわ!私はこの世に飽き飽きしているのだ。もうすでに復讐などではなくなった。全てを破壊して無にする!!』

八雲は鬼のような顔になり、呪文を唱えた。

『火炎風龍波!!』

業火が凱達を襲った。

グゴゴゴゴォ……

凱達は身構え伏せた。その時、雷鳴が前に立ちはだかった。

『うぉぉぉーーー!!』

炎が雷鳴を燃やしていく。

『お願いです…。止めて下さい…。これ以上は…あなたは…。間違っている…』

No.482

>> 481 凱達が雷鳴に近づくが炎の勢いが凄く触る事さえ出来なかった。

『水遁、雨の舞!!』

昇が唱え、雷鳴の周りに雨を降らした。しかし、炎の勢いが少し弱まったぐらいで、消えはしなかった。

『畜生!!ならば、水遁、豪雨の舞!!』

雨の舞より激しいもので雷鳴の炎を消していった。煙りをあげながら倒れた。

『雷鳴様大丈夫ですか?』

凱達が駆け寄った。雷鳴は怪我はしているが、まだ動けるようだ。

『なんとかな…。八雲様はもう昔のように優しい人では無くなったようだ。その原因を作ったのが私だ。罰は私が受ける。お前達は下がっていろ』

『はははは…。麗しい師弟愛だな。だが、お主では私は倒せぬ』

『やってみなくては分からないだろう!行きますよ!』

雷鳴は凱達を払いのけ、八雲に向かって行った。

『小賢しい!相手になってやる』

八雲は刀を抜いた。

『うりゃーーーっ!!』

ガキンッ!!
ギリギリ……

八雲と雷鳴は刀を合わせ睨み合っていた。八雲が雷鳴を突き放す。雷鳴は後ろに飛ばされたが、脚を踏ん張り堪えた。

『腕は落ちてはいないようだな』

雷鳴は素早く足元目掛け闇器を投げる。

スタスタスタ……

No.483

>> 482 だが、八雲はすーっと横に障子が開くように動いた。

『変な動きだ。まるで宙に浮いているようだ。…ん、どこに行った?』

八雲の姿が消えた。雷鳴は辺りを見回すが見当たらない。

『ここだよ雷鳴…』

雷鳴が振り向くとそこに八雲は立っていた。雷鳴は慌てて離れた。

《動きが見えなかった…》

当然、凱達にも見えなかった。それだけ、八雲の動きは早かった。

『私は全てを凌駕する忍、お主らごときには超える事は出来ない。1人ずつとは言わず皆でかかって来い』

八雲は凱達に闇器を投げてきた。

スタスタスタ……

凱達はなんとか避ける。そして直ぐに手裏剣を投げ返した。

キンキンキン

『ハエが停まりそうな早さだ。ならば、こうだ!!』

八雲の背中の外套がバッと広がりそこから羽根がふわりと現れたかと思うと凱達に迫って来た。

『朱雀翼撃!!』

ヒュンヒュンヒュン

凱達は避けるが幾つかを体に受けた。

『うっ…』

『おい、大丈夫か?』

凱は昇に聞いた。

『ああ、なんとかな』

昇は刺さった羽根を抜きながら答える。雷鳴を見ると這いつくばっていた。

『雷鳴様大丈夫ですか?』

No.484

>> 483 『ああ…大丈夫だ。その前にお前達は手を出すなと言っただろう…』

『しかし…』

『しかしもくそもない。八雲様は私がやる…。八雲様…本気で行きますよ!』

雷鳴は立ち上がると呪文を唱えた。

『雷神掌!!』

雷鳴の体に電気が帯だし手の方に集まりだした。

『おうおう。まだ、1人でやるつもりか?無駄だ!ここは私が作り出した世界…どうとでもなるぞ』

『八雲様覚悟!!雷神愚挫散!!』

雷鳴の両腕が電気の刀のようになり伸びていく。

『喰らえーーーっ!!』

雷鳴は飛び上がり腕を交差するように振った。

『玄武鉄壁!!』

八雲の前に亀の甲羅が現れて雷鳴の技を受け止めた。

バチバチバチ…

雷鳴は離れて間合いを取った。

『はははは…この程度で倒せると思ったか?今の私には効かない』

『くそぅ…』

再度、八雲に向かって行った。

『来るか!!ならば白虎爪斬掌!!』

八雲の腕が巨大化して鋭い爪で攻撃して来た。

バリバリバリ…

八雲の爪が雷鳴の体を切り裂いた。雷鳴は吹き飛ばされ転がった。凱達が駆けより抱きかかえる。

『雷鳴様、1人では無理です。八雲様は強すぎます。後は私達がやりますから』

No.485

>> 484 『お前達は下がっていろと言っただろう…。八雲様と俺との勝負だ』

雷鳴は刀を杖のようにして立ち上がった。

『まだ、やるのか?やめとけ、やめとけお主では勝てぬ』

『ならば、最終奥義雷神闘身体!!』

雷鳴が巨大化して行く、まるで雷神のようだった。雷鳴が八雲になぐりかかる。八雲はそれを受け止めた。2人の闘気がぶつかり合い辺りを風の渦を巻き起こす。

『雷鳴、この技を使えるようになったとはな。だが、私を倒せるまでにはまだまだのようだな』

八雲は雷鳴を押さえ込むような形になった。

『あの技は…』

『どうした凱?』

『あれは、命を使う月影最後の技だ。前に雷鳴様から聞いた事がある』

『ならば、あのまま戦えば雷鳴様は死ぬ』

八雲がまた呪文を唱えている。

『青龍槍撃!!』

雷鳴の体を槍と化した八雲の腕が突き抜けた。

『雷鳴様!!』

凱達は叫んだ。雷鳴はがっちりと八雲の体を掴んだ。

『うう…放せ!!』

八雲は残った腕で雷鳴を殴っている。

『八雲様…殴っても無駄です。さあ、一緒に……凱、今だ!!俺ごと斬れ!!』

『雷鳴様まで死んでしまいます』

No.486

>> 485 『もう、俺はダメだ…。お前に斬られるなら本望だ。さあ、やるんだ!!』

『雷鳴放せ!!』

八雲はもがきながら雷鳴を殴っている。凱は草薙の剣を見つめた。何とも言えない気持ちが込み上げてくる。草薙の剣が輝きだす。

『凱、今だ!やるんだ!!』

凱の頬に涙がこぼれ落ちた。草薙の剣を構えると八雲を掴んでいる雷鳴を目掛け突き刺した。

『うわぁーーーっ!!』

ズブッ!!

八雲と雷鳴はそのまま倒れた。雷鳴は元の姿に変わった。だが、八雲は煙のように弾けた。

ボワッ

『何?』

『残念だったな』

近くで声がした。それは無傷の八雲だった。

『何故?』

『最初に言ったはずだ。ここは私が作り出した世界だと。雷鳴の努力も無駄になったな』

八雲は細く微笑んだ。

『雷鳴様…』

『凱、昇、これで良かったんだ。これでな…。後はお前達にかかっている。頼んだぞ…ぐふっ…』

雷鳴は息絶えぐったりとした。凱は泣いた。短な者の初めて死だった。親であり、兄でもあり、師匠でもあった雷鳴が死んだのだ。今までの全てを思い返していた。そして凱は本当の父親である八雲に怒りを覚えたのであった。

No.487

>> 486 凱は草薙の剣を握りしめ構えると全体が黄金色に光り輝きだした。そして本当の草薙の剣と変化していく。凱の喜怒哀楽全ての気持ちが1つになったそれこそが最後の1つだったのだ。そして凱の体全ての物が黄金色に変わった。阿弥陀如来の後光のように眩しかった。

『やっとその姿になれたようだな。最後の戦いになりそうだ。さあ凱かかって来い!!来ないならこっちから行くぞ!』

八雲は見えない早さで凱に向かって来た。刀を振り下ろした。凱は微動だにせず、八雲の刀を草薙の剣で弾いた。

キンッ!!

『なぬ?』

凱は払った草薙の剣をそのまま八雲に突き出した。八雲はすんでのところでよけた。

《早い…》

凱はすかさず次の攻撃を繰り出した。八雲は後ろに飛んだ。

『なかなかやるな凱!…ん?』

目の前に居た凱が居なくなっていた。八雲が後ろを振り向くと凱が草薙の剣を振り下ろしていた。八雲は刀でそれを受け止めた。

ガキンッ!!

凱は動いていないようで目に止まらない早さで動いていた。その姿は不動明王のようでもあった。草薙の剣に神を呼び起こす力があるのかもしれない。

『こしゃくな!!我が力見せてやる!!龍神変化!!』

No.488

>> 487 八雲の体が龍のようにウロコが現れ龍人に変化した。

『さあ、かかって来い!』

凱は何も言わず素早い動きで八雲に迫って来た。そして剣を突き刺した。龍人になった八雲を突き刺したように見えたが、残像を刺しただけだった。無表情の凱は八雲を見つける為、辺りを見回した。八雲が姿を現すと、地面を滑るように凱は草薙の剣を斬りつけた。慌てて八雲はよけたが、体を切り裂かれた。

『うう…なんと言う早さだ。この私が見切れない』

『父上、あなたはもう私には勝てない』

『うるさい。これしきで勝った思うな!』

八雲はウロコを一枚剥ぐと呪文を唱えた。ウロコは2度光ったかと思うと剣になった。

『お前にこの龍剣を喰らわしてやる!!』

八雲は凱に向かって行く。振り上げた龍剣で凱に斬りつけた。凱は龍剣を手で受け止め握りしめた。

『もうこんな物では私は倒せません』

凱が力を入れると龍剣はパキンと折れた。

『なんだと…。受け止めた上に折るとは…。草薙の力を侮っていた』

『父上、覚悟して下さい。あなたにはもう私を倒す事は出来ない』

凱は草薙の剣を構え、気を高めだした。八雲は後ずさりしたながら凱との間合いを取った。

No.489

>> 488 凱の気が高まるにつれ黄金の体は輝きを増した。

『仕方ない。降参だ。私の負けだ。好きにするが良い』

八雲は折れた龍剣を捨てて両手を挙げた。凱は意外な言葉に気を高めるのを止めた。そして剣を下ろし、八雲に近づいた。

『父上、本当に諦めてくれるのですか?』

『ああ、私も忍だ。二言はない。さあ、好きにしろ!』

『ならば、ここから消えて下さい。皆の前から永遠に…』

凱は後ろを向いた。

『分かった。ここから消えよう。だが、消えるのはお前達だがな!!』

八雲は背中に隠してあった刀を抜き凱の背中に斬りつけた。

『凱、危ない!!』

それに気がついた昇が叫んだ。八雲の動きが止まった。八雲の体には草薙の剣が刺さっていた。

『何?!これはいったい…私の方が早かったはず…なのに何故?私の言葉に油断していたはず…』

『あのまま、消えてくれれば良かったのに…。父上は自分の力に驕り過ぎたのです。そして父上こそ私に油断したんです』

八雲の口から血を吐き出した。凱はゆっくりと草薙の剣を抜いた。八雲は膝をつき凱を見た。

『もう観念して下さい。あなたはこれ以上は戦えない』

『あははは…そうだな。この傷ではもう無理だな…』

No.490

>> 489 八雲は傷を押さえながらフラフラしながら立ち上がった。

『だが、お前達には従わない!亜空間!!』

八雲は右手をあげた。すると後ろに渦のような穴が開いた。

『この世を滅ぼすまでは何度でも生き返ってみせる。また、いつか会おう。さらばだ!』

八雲はその渦の中に飛び込んだ。

『待てぇーーー!』

凱が追いかけようとすると昇が肩を掴み止めた。

『凱、どうするつもりだ?』

『父を追う!』

『あんな所に入ったら二度と出て来れないぞ。分かっているのか?』

『ああ、そんな事は分かっている。しかし、また同じ事を繰り返さない為にも父を倒すしかない。俺を行かせてくれ』

凱は頭を下げた。昇はしばらく考え凱を掴んでいた手を離した。

『昇、ありがとう』

凱は再び頭を下げた。

『ならば俺も行くよ。良いだろ?』

昇は真剣な顔で言った。すると凱は微笑むと答えた。

『ならば、一緒に行こう』

そして凱は昇に近づいた。

バスッ

昇は力がぬけたようになった。そう凱は昇にみね打ちをしたのだった。

『昇、すまない。お前はここに残って咲を守ってやってくれ』

ぐったりとなった昇をそこに寝かした。

No.491

>> 490 そして渦を見ると近づき飛び込んだ。凱の体が渦の中に消えた。するとその渦がゆっくりと消えていった。どれぐらい経っただろうか?昇を起こす声がした。昇は目を覚ました。

『昇、大丈夫か?』

そこに居たのは首里だった。

『…ん?凱、凱は?』

辺りを見回すが凱の姿は無かった。

『俺もさっきから探しているのだが、見当たらないんだ。どこに行ったのかな?』

『そうか…凱は行ってしまったんだな…』

『行ってしまった?』

『いや、何でもない。凱の奴は旅立ったんだよ』

『旅立った?何訳分からない事言ってんだ?』

昇は首里に近づくと孔雀を手渡した。

『これは孔雀。やっぱりこれは俺が一番似合っているな』

首里は孔雀を引っ張って矢を打つ真似をした

『さて、帰ろうか?』

『そうだな』

昇は首里の肩を抱いた。

『痛~~~い!!』

首里が叫んだ。

『あれ?まだ治ってなかったのか?すまんすまん。あははは…』

古びた城の中に昇の笑い声がいつまでも響いていた。そして昇達は月影の里へと帰って行った。ここに1つの戦いが終わった。再び世界には平和な時が訪れたのであった。しかし、渦に消えた凱の戦いは終わってはいない。

No.492

>> 491 『……と言うお話でした。おしまい』

女性は子供を見て微笑んだ。

『ねぇーそれから伝説の忍はどうなったの?』

『分からないの。その後の行方はわからないままなのよ』

『そうなんだ…』

子供は下を向いてつまらなそうにしている。

『でもね。絶対どこかで生きているわ。そして私達の前に現れるわ』

子供はその話を聞いて目を輝かせた。

『絶対帰って来るよ!』

子供は飛び跳ねながら言った。

『お~い。咲いるか?おう居た居た』

誰かが外から声を掛けてきた。入って来た男はそう昇だった。

『いつもすまないな』

咲は顔を横に振った。

『お父さん!!』

『良い子にしていたか?』

『うん!また、伝説の忍のお話を聞いたんだよ。凄いよね!僕もなれるかな?』

『ああ、なれるさ。だってお前にはその忍の名前を付けたんだからな。ガイってな!』

『うん!』

昇はガイの頭を軽く撫でた。

『さて、家に帰るぞ。母さんが待ちくたびれているぞ。じゃあ咲ありがとうな。』

昇はガイを連れて帰って行った。見送る咲は空を見上げた。そこにはまん丸なお月様が見えていた。あの時の凱のように輝いていた。

No.493

長い間読んでいただいてありがとうございました🙇


「白銀翼の彼方」の番外編「黒い龍」は無事に完結する事が出来ました😊

戦国時代と言う事でそれなりの言葉を使ったのですが、登場人物が多すぎてゴチャゴチャになってしまいました😂

後、「殺す」と言う言葉を使わないと言う事と、時代背景から横文字は使わないようにしました😱

もしかしたら間違って使ってしまっているかもしれませんがご勘弁を🙇

最近は幼児などの殺害予告やいまだに無くならないイジメなど怖い話ばかり、そんな事が無くなる願いも込めました🙋

まあ、こんな話だから矛盾しているだろうと思うでしょうが、その中で生きるとは何かと言う事を問いたかったのです😊

それでは次回の作品でお会いしましょう🙇

No.494

>> 493 チチチッ
シュタ
パタパタパタ
心地良い風が吹く野原に独りの大柄な男が降り立った。
黒装束に漆黒の鎧を身に付け背には奇妙な形の刀を背負っている。
「ん~ッ良い天気だ。」
男は大きく伸びをすると腰袋から地図を取り出し辺りを見回した。
「おっ!あの家か…」
ザッザッザッ
膝の高さまである草村を歩いて行くと、一つの古ぼけた家が見えてきた。
家の前の木によじ登って腰掛けている小さい男の子の姿を見つけると男は近寄り見上げた。
「坊主、名をなんと言うんだ…」
「おじちゃん、だあ~れ?」
「父上の知り合いだ…」
「ぼく…ガイ!ガイって言うんだ。」
男の子は照れくさそうに足をブラブラとさせる。
「そうか、良い名前だ。俺様の名前は…」
ジャリ
「ガイ!誰か来たのか?」
納屋の方で米を精米していた昇が出てきた。
「うん、お父さんの知り合いの、おじちゃんと話してたの。」
「えっ!?誰も居ないぞ…」
昇と息子のガイは辺りを見回したが、誰の姿も見えなかった。
大柄な男がいた場所に一枚の手紙が置いてあるのを見つけた。

"男の生き様を見せて貰った。これからは俺様の出番だな。ゆっくり次の闘いまで休んでくれ。ηι"
キィー-ン
ギュオーッ
聞いたことも無い様な金属音が鳴り響いていた。

No.495

>> 494 ピピピ…

部屋の計器が警告のランプを回しながら鳴っていた。

『どうした?』

眼鏡を掛けた男が計器の前に座る男に尋ねた。

『また、誰かが時空を越えたみたいですね。』

『場所は?』

『0312249地点ですね。』

計器を見ていた男が振り返りそう言った。すると眼鏡を掛けた男がおもむろに笑いだした。

『ははは…。また、アイツか。』

『アイツってご存知なんですか?』

眼鏡を掛けた男は計器の前に座る男の肩を叩いた。

『常連さんだよ。』

『常連さん?』

計器の前に座る男は不思議そうな顔をした。

『後は俺が変わるからお前は休め。』

そう言うと眼鏡を掛けた男は座っていた男をどかし座った。

『では、お願いします。』

そのまま、仮眠室へと向かった。

眼鏡を掛けた男は時空を越えた常連さんにメールを打ち発信した。

《本当に疲れました。でも、楽しかったですね。また、違う時代を書くかはわかりませんが、その時は読んで下さい。後はパラレル楽しみにしてます。》

そして眼鏡を掛けた男は計器を見ながら微笑んだ。


by アルミ🚬🐢

No.496

主のアルミです🙇


次の作品を書き始めました👮

『ナナの冒険』です😊

話の内容は少年が卵を見つけて、孵ったのがなんとドラゴン😲

そのドラゴンのナナのお話です🐲

ファンタジーアドベンチャーです🙌

良かったら読んで見て下さい🙇🙇🙇


後、「黒い龍」の凱の新たな冒険の話も少しずつではありますが、構想中です📝

それでは新しい作品で✋😊

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