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母が亡くなるかもしれない。後悔しないためには?
親からの反対について
たぶらされないか

―桃色―

レス500 HIT数 191051 あ+ あ-

*さくらんぼ*( 20代 ♀ ZOnM )
10/10/16 00:25(更新日時)

世の中の男性が、全て同じだとは思って無い。

「私の付き合う人達」が特別だって、分かってる。

でも…

昔からことごとく浮気されて、今の彼に限って私は4番目の女…


そりゃ、男を信じられなくなるでしょ。

ただ、甘い恋がしたいだけなのに…


「おめでとう」の言葉も、プレゼントも無いまま、彼の腕の中で30歳の誕生日を迎えた―

No.1368233 10/07/11 21:34(スレ作成日時)

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No.451 10/09/25 21:57
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「他に男でもできた?」

「違う!!そんなんじゃっ…!!」

「だよな?」

里沙の咄嗟に上げた顔を、慎也さんはジッと見つめる。

里沙は、また視線を逸らした。

「俺は、里沙の事はよく分かってるつもりだ。でも、今回だけは分からないんだ…
ちゃんと話してくれ…」

慎也さんの表情が、切なくなっていく。

しばらく沈黙が続いた。

私はこの沈黙に耐えられず、口を開いた。

「里沙…お願い。
ちゃんとワケを話して?」

悲しげな表情で私を見た里沙が、小さく頷いた。

「私は…慎ちゃんと結婚出来ない…」

慎也さんは里沙の言葉を聞いて、コーヒーを飲み干した。

「家の事情か?」

「ううん…」

「独身主義か?」

「ううん…」

No.452 10/09/28 22:07
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

里沙は、溜め息にも見える大きな深呼吸をした。

「私は…

子供が産めないの」


(え…?)

里沙の言葉を聞き、3人共が目を見開いた。

聞きたい事はたくさんあるハズなのに、言葉が出てこない。

そんな私達を見て、里沙は口元だけで笑い、急に様子が変わったように見える。

「…驚いた?」

自嘲するように笑う里沙を見た慎也さんは、拳をギュッと握った。

「…どうして今まで話さなかった?」

里沙は慎也さんを挑発するように、上目使いで睨んだ。

「話したって、どうにもならないでしょ?」

「大事な事だろっ!?」

淡々と話す里沙に苛立った慎也さんが、大声を張り上げた。

No.453 10/09/28 22:17
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

怒りをあらわにする慎也さんを、里沙は黙って睨み続ける。

「子供が産めないから、結婚出来ないのか?だから別れたいのか?」

「他に理由なんて無いじゃない?」

「俺は、里沙に子供を産ませる為に結婚したい訳じゃないっ!!」

「慎ちゃんに、私の気持ちなんか分からないよっ!!」

里沙も負けじと大声を張り上げた。

私と祐輔は、ただただ二人を見守る事しか出来ない…

「慎ちゃんはっ…
いつも子供が欲しいって言うじゃない!
女の子がいいだの、何人欲しいだの…
そんな話しを聞く度に、私は辛かったのっ!!」

「そんなの、結婚を考えたら誰だって思う事だろっ!?
そもそも、お前の体の事を知ってたら言うはずないじゃないかっ!!
お前が勝手に黙ってて、傷ついてただけだろうがっ!」

No.454 10/09/28 22:26
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「私だって、慎ちゃんとの子供が欲しいのっ…!!」

里沙は吐き出すように大声を出し、目から大粒の涙が溢れ出した。

涙を流す里沙の顔を、慎也さんは唇を噛み締めて見ている。
里沙は震えた声で、ゆっくり話し始めた。

「病院で検査して分かった時は、やっぱりショックだった…
でも、落ち込んでも仕方無いから、前向きに生きてきた。
子供が産めなくても、結婚は出来るって…
でも、慎ちゃんと付き合い始めたら、『この人との子供が欲しい』って強く思うようになったの。
どうする事も出来ないのに、諦めがつかなくなって、どうしても慎ちゃんに話せなかった…」

里沙の話しを聞きながら、私も涙が止まらない…

No.455 10/09/28 22:35
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

慎也さんは目が赤くなりながらも、真っ直ぐに里沙を見ていた。

里沙も慎也さんの目を見て話し続ける。

「慎ちゃんが、結婚しようって言ってくれた時は、本当に嬉しかった。
でも、慎ちゃんの事を好きになればなる程、私は辛かった…
慎ちゃんが大好きだから、ちゃんと子供が産める人と結婚して、温かい家庭を築いてほしい。
だから別れようと決意したの。
でも、やっぱりなかなか別れも切り出せなくて…」


そう言うと、里沙は俯いた。

「お前だって、俺の気持ちなんか分かってないじゃないかっ…」

慎也さんが震えた声で話し始めると、異変に気付いた里沙が顔を上げた。

二人が見つめ合うと、慎也さんの目から、一筋の涙が零れ落ちた。

No.456 10/09/28 23:15
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「慎…ちゃん…?
やだっ…どうして慎ちゃんが泣くの?」

慎也さんの泣き顔を見た里沙も、ボロボロと泣き始めた。

私の隣に座っている祐輔は、泣きじゃくる私の頭をグイッと引き寄せ、髪を撫でてくれている。

「好きな女が、辛い思いをしてるのも知らずに子供の話しをして、更に傷付けてた事にも気付かなかった俺の気持ちが分かるか…?」

慎也さんは絞りだすように声を発している…

No.457 10/09/29 15:34
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

里沙は悲しげな表情で目線を逸らした。
慎也さんは、里沙の手を握って話し続ける。

「俺が里沙と結婚したい理由は…
一生、俺の傍に居て欲しいから。
お前と、共に生きたいから…
ただそれだけだ…」

「…子供…は?」

「お前が居てくれればいい…」

「今は良くても、慎ちゃんだって、きっとこの先欲しくなっちゃうよ…」

「そうかもな…」

「だったらっ…!!」

里沙が顔を上げた瞬間、慎也さんは里沙をギュッと抱きしめた。

「それよりも、お前の気持ちはどうなんだよ?
俺と一緒になりたいのか、なりたくないのか…」

慎也さんが里沙の耳元で、優しく問い掛ける。
すると、里沙は慎也さんの背中の服をギュッと掴んだ。

「私はっ…
慎ちゃんのお嫁さんになりたいっ…
慎ちゃんと、死ぬまで一緒に居たいっ!」

No.458 10/09/29 15:43
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

里沙は、ずっと我慢していた気持ちを吐き出し、しゃくり上げて泣き始めた。

そんな里沙の背中を、慎也さんは優しく撫でている。

「辛かったな…苦しかったな…
ごめんな、里沙の苦しみに気付いてやれなくて…」

里沙は慎也さんの胸に顔をうずめ、首をブンブン横に振る。

「私の方こそっ…」

「お前は、何も悪くないよ」

慎也さんが里沙を想う言葉を聞き、私は号泣し続けた。
祐輔も、静かに涙を流している。

「里沙…」

「ん…?」

「俺と、結婚してくれるか?
ってゆーか…」

「…ん?」

「俺と結婚しろ。
里沙に拒否権は無いからな。
分かったか?」

慎也さんの強引なプロポーズに、里沙は言葉が出ないまま大きく何度も頷いた。

No.459 10/09/29 16:13
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

抱き合いながら泣き続ける二人を、私は涙ながらに見つめていた。

すると、祐輔が家の鍵をダイニングテーブルに置き、私の鞄と上着を持って、私の手を引いて玄関を出た。

祐輔が気を利かせてくれたんだ…

祐輔の優しさに胸が熱くなりながら、手を繋いで駅まで歩いた。

「腹減ったな」

祐輔が空を見上げて呟く。

「そういえば、そうだねぇ」

お互いの泣いて腫れた目を見合って、微笑んだ。

私達は一駅先の、パスタ屋さんでご飯を食べる事にした。

店に入り席に着いてから、里沙に私達の居場所だけメールしておいた。

No.460 10/09/29 16:24
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

二人でディナーセットを頼んで、少し遅めの夕食を食べ始めた。

私達は、里沙と慎也さんの話題は出さなかった。

口に出さなくても、なんとなくお互いの気持ちが通じ合っていた。

ホッとした気持ちはもちろんだけど、それよりも里沙の体の事を知ったショックが、少なからずあったから…


祐輔は、相変わらずパスタを口いっぱいに頬張っている。

「ほのはほ、ふひひへほひふ?」

「何言ってるか分からないよっ」

リスのような顔の祐輔を見て、私は呆れながら笑った。

祐輔は水でパスタを流し込み、胸をトントンッと叩いた。

「この後、海にでも行く?」

「里沙達は?」

「二人が来たら、みんなで行こう」

「この寒い中、なんで海?」

「…なんとなく?」

ニッと笑った祐輔の顔を、私は不思議そうに見つめていた。

No.461 10/09/29 16:32
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

しばらくすると、私の携帯が鳴った。

里沙からの着信だった。

「もしもし?」

『リコ…ごめんね?
本当にありがとう…』

電話越しの里沙の声は、泣き晴らして枯れていた。

「何も謝る事ないじゃない。
それより、こっち来れる?」

『今日は、このまま慎ちゃんの家に行く事にした…
鍵だけ渡しに行くね』

「鍵なら、もう一個私が持ってるから、今度返してくれればいいよっ」

『本当?それなら、そうさせてもらうね。
リコにも、今度ちゃんと話しするからね?』

「分かった!
気をつけてね、おやすみっ」


里沙の穏やかな声を聞いて、私は満足気に微笑んでいた。

No.462 10/09/29 16:46
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

祐輔も私の気持ちを察して、ニッと笑った。

二人でお腹いっぱい食べて、店を後にした。

祐輔の実家に車を取りに行き、高速道路を走らせて海に向かった。

「海って、私達が最初に行ったトコ?」

「そっ!!高速ならあっという間だからね~」

久しぶりに祐輔の運転する姿を見た。
ちょっと、ときめいた。

(あれ…?そういえば…)

「ねぇ、祐輔?」

「なぁに?」

「最初の時は高速使わなかったよね?」

「それは…」

祐輔がちょっと照れたように笑った。

No.463 10/09/30 01:10
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「なによ?」

「あの時は、リコと少しでも長く居たかったのと、告白する為に心の準備をしていたからさっ。
時間稼ぎ?」

「プッ…なにそれぇ」

「結局、怒らせちゃったけどねぇ~」

「あんまり、いい思い出の場所じゃないね」

「これから、いい思い出に変えに行くよ~ん」

祐輔の言葉の意味が分からなかった。

私は、窓の外の流れる景色を見ながら、初めて祐輔に告白された時の事を思い出していた。

あの時は祐輔に不信感を抱いていた事もあって、告白された事を素直に喜べなかったけど…

今思い出すと、なんだか照れるな。
祐輔が真剣な顔で告白してくれた…

キャ~ッ!
恥ずかしいっ!

私は手で顔を隠して、足をバタバタしながら一人で盛り上がっていた。

そんな私を祐輔がチラリと横目で見て、首を傾げた。

No.464 10/09/30 01:20
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

やっぱり、高速道路を使うと着くのが早い。

あっとゆう間だった気がする。

駐車場に車を停めて外に出ると、真夜中の海なだけあって、凍りそうなぐらい寒かった。

「寒いってゆうか、風が冷たくていてぇーっ!!」

祐輔は、ピョンピョン跳びはねながら叫んでいた。

回りには民家も無いし、私達以外に人が居ないから、どんなに騒いでも迷惑にならない。

だから、私も遠慮なく叫んだ。

「祐輔の、バカヤローっ!!」

「なんでっ!?そして何故このタイミングでっ!?」

「なんとなくーっ!!」

寒さをごまかす為に、私達は大声を出し続けた。

冬の海…しかも夜中っていうのが、何故か私達のテンションを上げた。

祐輔と近くの自販機で温かい飲み物を買って、一度車の中に戻る事にした。

No.465 10/10/02 00:52
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「俺、外で一服してくるね」

「外寒いよ?大丈夫?」

「それでも、吸いたくなるのが喫煙者の悲しいトコなんだなぁ~。
でも、いずれ止めなきゃなぁ~」

「なんで?」

私の問い掛けに、祐輔はフッと意味深な笑みを浮かべて、寒空の下へタバコを吸いに行った。

なんか変な祐輔。

ちょこちょこ、祐輔の言動が引っ掛かるな…。

なんとも言えない気持ちで私は一人、車の中でコーヒーを飲んでいた。

祐輔は車から少し離れた所でタバコを吸っている。

なんとなく助手席側の窓から空を見上げると、綺麗な満月が見えた。

私は月を見ながら、慎也さんが里沙にしたプロポーズを思い出した。

(里沙と慎也さん、ついに結婚するんだなぁ…)

ちょっと羨ましく思った。

No.466 10/10/02 01:05
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

小さく溜め息をついて、祐輔の方を見た。

(あ…れ?)

祐輔が居ない…?

私は慌てて周りを見渡した。

でも、車の中から見る限り、祐輔の姿はドコにも無かった。

(嘘っ…!?)

暗闇の中、一人で車内に居るのが急に怖くなり、私は外に飛び出した。

上着の胸元をギュッと握り締めて、キョロキョロと祐輔を探した。

すると…

「リぃぃ~コぉぉ~っ!!!」

遠くから祐輔の声が聞こえた。

声のする方を見ると、私に向かって、浜辺から祐輔が大きく手を振っていた。

No.467 10/10/02 01:24
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

祐輔は、大声を出さないと声が届かない距離に居た。

ホッとした私は、祐輔の所へ行こうと浜辺に続く階段に向かった。

「来ちゃだめぇぇぇっ!」

祐輔は一際大きな声で叫んだ。

私は階段の上で立ち止まった。

「祐輔ぇー?何してるのぉーっ!?」

「リコは、そこにいてぇぇっ!!」

私は訳が分からず、首を傾げながら遠くの祐輔を見ていた。

祐輔は、下を向いたまま動かなくなった。

ますます訳が分からなくて、私はちょっとイラつきながら祐輔を見ている。

No.468 10/10/03 21:34
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

しばらく下を向き続けていた祐輔は、突然空を見上げた。

「俺っ…!!」

大声を張り上げた祐輔が、言葉を詰まらせた。

そしてまた、下を向いてしまった。

祐輔は一体、何がしたいのか?

私を離れた所に立たせて、祐輔一人で訳の分からない行動をしてる事に、イライラが増してくる。

「何やってんのっ!?
寒いから、私戻るよっ!?」

そう言って、私は車の中に戻ろうと祐輔に背中を向け、車に向かって歩き始めた。

No.469 10/10/03 21:35
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

その時…




「―――――しようっ!!!」




(え…?)


祐輔の言葉が聞き取れず、歩みを止めて振り返った。


祐輔は立ち尽くしたまま、真っ直ぐに私を見ている。

私も、黙って遠くから祐輔を見ていた。

すると祐輔は、大きく深呼吸をした。

No.470 10/10/03 21:36
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「俺とっ!!

結婚してくれーっ!!!」

No.471 10/10/03 21:38
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

(…え?)

寒い中、かすれる程の大声を出した祐輔は、息を切らして肩で呼吸をしていた。

それでも、祐輔は叫び続ける。

「俺、年下で頼りないかもしれないけどっ…
リコの事を一生守るって約束するっ!!」

私は祐輔の言葉を聞きながら、ゆっくり歩き出した。

「幸せにするよなんて、カッコイイ事言えないけどっ…
リコと一緒に、幸せな家庭を築きたいっ!!」

私が近付いて行っても、祐輔は大声で叫び続けている。

「それからっ…!!
えっと…!
それから…」

私は、言いたい事が思い浮かばなくなった祐輔の目の前に立った。

「えっ…と…」

困った表情の祐輔を、私は何も言わずにただ見つめていた。

No.472 10/10/03 21:47
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「リ…コ…」

何も言わない私を見た祐輔は、不安げな表情になった。


突然のプロポーズ…

全く予想していなかった。

だけど、一生懸命にプロポーズをしてくれた祐輔を想うと、なんだかたまらない…

胸の奥を、わしずかみにされたような…
上手く言い表せないけど、とにかく胸が熱くなった。

嬉しい。

夢にまで見た、祐輔からのプロポーズ。

なのに、いざとなると素直に首を縦に振る事ができなかった。

No.473 10/10/03 22:00
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「どうして、急に…?」

私が問い掛けると、祐輔は目線を逸らした。

「今日、慎也さんと里沙さんを見てたら、俺も言わずには居られなくなって…」

「今まで一度も、
結婚の話しは出なかったじゃない…?」

どうしても聞きたかった。

毎日、『大好き』とか『愛してる』とかは言ってくれてたし、一緒に暮らす前はよく『一緒に暮らしたい』って言ってたのに、『結婚』という言葉だけは出てこなかった。


私は真っ直ぐに祐輔を見続けた。

すると祐輔は、私の右の頬に触れて話し始めた。

No.474 10/10/03 22:11
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「俺は、毎日リコと結婚したいって思ってたよ…?
でも…」

「でも…?」

「なぜか、『結婚』って言葉が恥ずかしくて言えなかったんだ…」

「大好きとかは言えるのに?」

「大好きって言うのと結婚しようって言うのは、やっぱり違うよ…
それに、プロポーズだけは、ちゃんとしたかったしね」

「そうだったんだ…」

私の頬を包む祐輔の手に、そっと触れた。

「あとは…
リコのウェディングドレス姿を想像しただけで、鼻血出そうになっちゃってさぁ…」

「プッ…何それ…
バカみたい…」

私は思わず吹き出した。

すると…

祐輔はグッと私の頭を引き寄せた。

No.475 10/10/03 22:29
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「そのリコの『バカ』って口癖も、俺は愛してるよ…」

祐輔は私の耳元で優しく呟いた。

「バカみた…っ!?

あ…」

私は言いかけた言葉を咄嗟に飲み込むと、祐輔はククッと笑った。


「祐輔…?」

「ん?」

「私でいいの…?」

「リコじゃなきゃ、嫌だよ…」

「私、年上だよ…?」

「それは聞き飽きたなぁ~」

「すぐ怒るし…」

「知ってる」

「泣き虫だし…」

「知ってる」

「それから…っ」

「知ってる」

「まだ何も言って…」

「リコの事は、全部知ってるよ…」

祐輔は私を抱きしめる腕に力を込めて、肩に顔をうずめた。

No.476 10/10/03 22:41
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

祐輔の優しい声と温もりを感じていると、だんだんプロポーズされた実感が湧いてきて、私の目から涙が零れ落ちた。


「あーあ…
もうリコを泣かせないよって言おうと思ってたのになぁ」

「うぅ~…
ゆうずげぇ…」

「ハハッ、泣き過ぎっ。
まぁ~た、ムード台なしじゃ~ん」

「うっ…うっ…
嬉…しく…て…」

私の顔は、涙でぐちゃぐちゃになっている。

「リコ、返事は…?」

「え?」

「プロポーズの…」

すっかり舞い上がって、返事をするのを忘れていた。

でも、この状況でどうやって返事すれば…

頭の中で一生懸命言葉を選んでいると、祐輔はゆっくり体を離した。

そして、私の両肩を掴んだ。

No.477 10/10/06 00:04
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「神谷律子さん…
俺と、結婚してください」

祐輔の真剣な瞳に、吸い込まれそうになる…


「は…い…」

私は聞こえるか、聞こえないか分からないぐらいの小さい声で返事をした。

面と向かって改めてプロポーズをされたら、私は急に恥ずかしくなって下を向いた。

祐輔も照れ笑いを浮かべながら、下を向いた。

「一番、リコが好きだよ…」

久しぶりに聞く、祐輔の『一番』という言葉…

「私も…祐輔が一番好き…」

そういうと、祐輔は優しいキスをしてくれた。

月明かりが、まるでスポットライトのように、私達を照らしていた。

No.478 10/10/07 00:13
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

帰りの車の中では、幸せの空気に包まれたまま、ずっと手を繋いでいた。

家に着いたのは明け方の4時過ぎ。

私と祐輔は、倒れ込むように布団に入り、そのまま眠りについた。


私は夢を見た。

祐輔と、バージンロードを歩く夢…

たくさんの人達に祝福されて、まさに幸せの絶頂の中にいた。

誓いのキスの時…

突然、祐輔が私を振り払って教会の出口に向かって走り出した。

私は訳が分からず、祐輔の名前を叫び続けた。

「…って…
待って!!祐輔ぇぇぇぇぇっ!!」


ガバッと起き上がると、祐輔が隣で眠っている。

(夢かぁ…)

ハァ~~…

安心して、大きな溜め息をついた。

時計を見ると、もう昼の12時。

今日は日曜日で休みだし!!

のんびりしようと、また布団を被った。

No.479 10/10/07 00:23
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

横になりながら祐輔の顔を眺める。

夕べの事を思い出すと、ニヤニヤが止まらない。

恥ずかしくなって、ニヤけた顔を両手で隠した時…

「あれ…?」

手に違和感を感じて、手の平を見てみる。

すると、左手の薬指に小さなダイヤのついた指輪がついていた。

(嘘…いつのまにっ!?)

夢か現実か分からないまま、祐輔の顔を見ると、祐輔が片目を開けて私を見ていた。

「祐輔…これ…」

私は祐輔に左手を見せた。

祐輔はニコッと笑って、私の左手を握り締めた。

「気に入った?」

祐輔はちょっと照れながら聞いた。

私は小さく頷いて、また泣いてしまった。

No.480 10/10/07 00:37
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「また泣く~。
リコは本当に泣き虫だねぇ」

「だって…だって…」

私は喜びを伝えたくても、うまく言葉にならない。

「祐輔、これいつの間に…?」

「冬のボーナスが出てから、すぐに買いに行ったんだ。
本当はクリスマスにプロポーズするつもりだったんだけどねぇ」

祐輔は笑いながら話している。

私は涙を流したまま、キラキラ輝く指輪をいつまでも眺めていた。

そんな私を祐輔は、満足そうな笑顔で見つめている。

そして、祐輔はヨシッと言いながら起き上がった。

「『お父さん!娘さんを僕にください!』って、言いにいかなきゃね。
んで、『俺は君の父親じゃない!』って、怒鳴られるのっ」

「なんか祐輔古くない?
今時、そんな事言う人居ないよぉ」

そんな話しをしながら、二人でケラケラ笑い続けた。

No.481 10/10/08 15:24
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

――月曜日の朝

私は祐輔から貰った指輪を着けずに出社した。

まだ婚約の状態だし、なんだか恥ずかしい気持ちもあったから…

ロッカールームで制服に着替えていると、里沙も出社して来た。

「おはようリコ!
これ、鍵返すね。
土曜日は、ごめんね…」

「おはよ!
気にしないでっ。
あの後、慎也さんと今後の話し合いは出来た?」

「うんっ!
その事も報告したいから、今日仕事終わったらリコの家行っていい?」

「どうぞどうぞっ」

里沙の表情はなんだか穏やかで、幸せそうだった。

こんな明るい里沙を見るのは久しぶりだったから、余計に嬉しかった。

No.482 10/10/10 22:34
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

仕事を終え、祐輔と慎也さんは残業だったから、里沙と二人で私の家に向かった。


家に着き、早速ビールで乾杯をした。

「それで、籍はいつ入れるの?」

「実は昨日のうちに、お互いの両親に挨拶してきちゃったんだっ!
クリスマスイブの日に、有給取って役所に行くの」

「はやっ!!
里沙のご両親、驚いてたんじゃない?」

「驚いてたけど、私の体の事も全部承知の上で、慎ちゃんがプロポーズしてくれたからさ…
お母さんは泣きながら、祝福してくれたよ…」

里沙は、お母さんの事を思い出したのか、目をうるうるさせていた。

No.483 10/10/10 22:52
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

私も里沙の涙につられて、泣いてしまった。

「よかったね、里沙…」

「うん…
今までリコにも体の事黙っててごめんね…」

「ううん…
里沙が謝る事じゃないよ?
それより、慎也さんのご両親は…?」

私が問い掛けると、里沙は穏やかな表情を見せた。

「慎ちゃんのお母さんも、ずっと不妊で悩んでたみたい。
その中でやっと授かった子が慎ちゃんなんだって…」

「確か慎也さんって、一人っ子だったよね?」

「うん…
一度は子供を諦めた事もあるから、私とは全く状況が違うけど、他人事とは思えないって言ってくれて…」

「そうだったの…」

「お父さんも、二人が幸せなら、それでいいんじゃないかって。
私、本当に幸せだよ…」

「里沙…」

静かに涙を流して幸せを噛み締めている里沙の表情が、なんだかとても輝いて見えた。

No.484 10/10/10 23:02
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

― ピンポーン

「あ、帰って来た!」

私は涙を手で拭って、玄関のドアを開けた。

「ただいま~」

「お邪魔します」

祐輔は、慎也さんを連れて来た。

「お帰りなさい。
どうぞ、上がってください」

私は慎也さんを招き入れ、台所に向かった。

コーヒーを入れていると、慎也さんが満面の笑みで近付いて来た。

「神谷、よかったなっ!!」

「へ?」

慎也さんの言ってる意味が分からなくて、キョトンとした。

「慎ちゃん、何がよかったの?」

里沙も不思議そうな顔で台所に来た。

「なんだ神谷、まだ里沙に言って無かったのか?」

「リコ、何かあったの?」

「神谷と木村な…」

慎也さんが里沙に何か言おうとした時…

「俺達も、結婚しま~すっ」

祐輔がピースしながら発表した。

No.485 10/10/10 23:13
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

一瞬、場の空気がシーンとなった。

すると里沙は私にガバッと抱き着いて来た。

「おめでとうっ、リコ!!」

「えっ、あっ、ありがとうっ」

里沙は私に抱き着いたまま、ピョンピョン跳び跳ねている。

「り、里沙?落ち着いてっ」

「だって、嬉しいんだもんっ」

「ちょっ…
里沙、苦しいっ…」

私達の様子を、祐輔と慎也さんはケラケラ笑いながら見ていた。

祐輔がコーヒーを入れてくれて、4人でテーブルを囲んで座った。

「リコ達は、いつ籍を入れるの?」

里沙が身を乗り出して聞いてきた。

「両家に挨拶も行ってないし…
まだハッキリ決めてないよ」

「なら、まだ式の事とか考えて無いの?」

「全然、まだまだだよ~」


私達は、4人で理想の結婚式の話しで盛り上がった。

No.486 10/10/10 23:24
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

お互いの理想を話して、共感したり、バカにしてみたり…

すごく楽しかった。

夕飯はデリバリーを頼んで、みんなで食べた。

いつまでも、部屋の中には笑い声が響いていた。

里沙は、帰るのを惜しみながら、慎也さんに連れられて私の家を後にした。


夕飯の片付けをしていると、祐輔が後ろから抱き締めてきた。

「どうしたの?」

「結婚したら、毎日リコとご飯食べられるんだね」

「今までだってそうでしょ?
結婚しても、あまり生活は変わらないんじゃない?」

「全然違うよ!
リコは、俺の奥さんになるんだよ?
幸せ度が今までと違うもんっ」

祐輔はグリグリ私の肩に顔をうずめている。

(奥さんかぁ…)

改めて考えると、ちょっと照れる。

私、祐輔の奥さんになるんだな…

No.487 10/10/10 23:34
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

寝る前に、祐輔と寝転がりながら、これからの事を話した。

「クリスマスの日に、リコのご両親に挨拶に行こう?」

「祐輔の方は?」

「リコの家に行った後、そのまま行けばいいよ」

「この期に及んで、反対とかされたりして…」

「そしたら、俺泣いちゃうっ」

祐輔は毛布を顔まで被った。

「なんか、緊張するね…」

「俺がバシッと格好よく決めるさっ」

「頼りないわ~…」

「なんだとぅっ!?」

そう言って祐輔は、私の顔の横に両手をついて覆いかぶさった。

そして、真剣な眼差しで私を見下ろしている。

No.488 10/10/10 23:50
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

祐輔の目は、男の目だった。

― ドキドキドキドキ…

久しぶりに見せた祐輔の表情に、胸が高鳴った。

「リコ…」

「は…い…」

「何があっても、俺がリコを守るからな。
だから、一生俺についてこい」

祐輔から、こんな強引な言葉を聞いたのは初めて…

胸がキュンッとする。

「一生…離さないで…?」

祐輔の頬にそっと触れると、深いキスをしてくれた。

このまま、祐輔と溶け合って一つになってしまいたい…


結婚しても、私は祐輔に恋をし続けるんだろうな。

こんなに人を愛したのは、生まれて初めてだ。

No.489 10/10/11 00:03
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

    ―桃色― 第6章



     『永遠』



― 誓うよ…

No.490 10/10/11 00:12
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

― from 里沙

この度、田中里沙は『里田 里沙』になりました事を報告します。

って、やっぱり田舎っぽ~いっ(泣) ―


クリスマスイブの日の昼休み、携帯を開くと里沙から幸せのメールが届いていた。

その内容を祐輔と眺めながら、微笑んだ。

(ついに、夫婦になったんだぁ…)

まるで自分の娘をお嫁に出したように、しみじみしてしまった。

明日は、いよいよ私達が両家に挨拶に行く日!

実家には電話で、『彼氏を連れて行く』としか話してない。

果たして、年下の婚約者を連れていった時の反応はどうなるのか…

今から、あれこれ考えても仕方が無い!

とにかく明日だ!

No.491 10/10/11 00:24
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

― クリスマス当日

甘い、いい香りで目が覚めた。

隣を見ると、祐輔の姿が無い。

台所を覗くと、祐輔が鼻歌を歌いながら料理をしていた。

「祐輔?」

「あ、おはようリコ!!」

「何作ってるの?」

「ホットケーキだよっ!
コーヒーも入れたよん」

「美味しそ~」

祐輔は、エプロン姿で得意げに笑った。

祐輔の朝一番の最高の笑顔を見たら、昨日からの緊張が一気に吹き飛んだ。

「美味しい!!
フワフワで上手く焼けてるねぇ」

「でしょ~?
ちょっと高いホットケーキミックスだからねっ」

「ブッ…
粉の力だったの…」

「当たり前じゃん!
じゃなきゃ、こんなにフワフワに焼ける訳無いじゃんっ!」

「なんでムキになるのよ…」

私達は朝からケラケラ笑い合った。

No.492 10/10/11 23:10
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

美味しい朝食を食べ終え、祐輔はスーツに着替えた。

私はブラウスにタイトスカートを合わせて、髪を綺麗にまとめ上げた。

「おおっ!
なんか、リコいいっ!!」

「本当?」

「うんっ!!社長秘書みたいで、そそるよっ!!」

「バカな事言ってないで、行くよっ」

「は~い」

私が玄関のドアノブに手を掛けると、祐輔は私の手を握り締めた。

振り向いた瞬間、祐輔の唇がそっと私の額に触れた。

「唇にキスしたら、口紅取れちゃうから…」

そう言って、祐輔は照れ臭そうに微笑んだ。

私も微笑み返して、二人で駅まで手を繋いで向かった。

No.493 10/10/11 23:16
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

私の実家まで、アパートから5駅。

電車の中では、ずっと手を繋いでいた。

目的地の駅に近付くにつれて、繋いだ手がだんだん汗で濡れてきた。

祐輔は無言だった。

「祐輔、緊張してるの?」

「話し掛けないでっ。挨拶の言葉を頭で整理してるんだからっ」

祐輔は表情が固くなっている。

そんな祐輔を見ていたら、なんだか笑えてきて、不思議と私はリラックスしていた。


程なくして駅に着き、タクシーで実家に向かった。

No.494 10/10/11 23:27
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「待って、リコ!!」

私が実家のインターホンを押そうとすると、祐輔が私の手を引っ張った。

「すぅ~…はぁ~…」

祐輔は深呼吸を何度もしている。

「もう、押しちゃうよ~?」

「あ、ちょっとっ…」

― ピンポーン…

祐輔の返事を待たずに、私はインターホンを押した。

『は~い』

「私~」

『はいは~い』

インターホン越しの母は、とっても上機嫌だった。

― ガチャッ…

玄関のドアが開いたと同時に、祐輔が背筋をピンッと伸ばした。

No.495 10/10/11 23:40
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

ドアを開けた母は、真っ先に祐輔を見た。

「あら、こんにちは」

「こ、ここ、こんちにはっ!!」

(…えっ!?)

あまりの緊張で、祐輔の第一声は、残念な結果になった。

「す、すみません…」

顔を真っ赤にして俯く祐輔を、母は満面の笑みで見つめた。

「面白い子ねぇ~。
寒いでしょ?どうぞ、入って~」

母に招かれ、私と祐輔は家の中に入った。

リビングに通されると、父の姿は無かった。

「ねぇ、お母さん。
お父さんは?」

「二階に居るの。
ユメは友達と遊びに行ってるわぁ。
ちょっと待ってて?
お茶入れたら、お父さん呼びに行って来るから」

「うん、お願い~」


母とのやり取りを終え、祐輔をリビングのソファに座らせて、私も隣に座った。

No.496 10/10/15 20:57
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

母が入れてくれたお茶を飲みながら、私と祐輔は静かに父を待った。

『リコの父ちゃんって、怖い…?』

祐輔が小さい声で私に問い掛けてきた。

『私と妹には甘いけど、祐輔にはどうかなぁ~』

ちょっと意地悪そうに言うと、祐輔の眉毛が、ハの字に垂れ下がった。

「ごめんなさいねぇ。
今、お父さん下りてくるからぁ~」

母がパタパタと階段を下りながら、私達に声を掛けた。

母の後ろから、父がゆっくりと階段を下りて来た。

父は私の顔を見るなり、満面の笑みを浮かべた。

「律子っ!!久しぶりだなぁ~。
元気か?」

「うんっ!お父さんも元気そうだねっ」

「最近、ウォーキングを始めてなっ!
体の調子がいいんだよ」

「いい事じゃない!」

私と父は久しぶりの再会で、祐輔を忘れて話し込んでしまっていた。

No.497 10/10/15 23:41
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「ほらほらっ!
りっちゃんの彼を差し置いて話し込まないのっ」

母が台所からお菓子を持って出て来た。

「あ…祐輔、ごめんね?
つい…」

「いやいやっ!!」

祐輔は不自然なぐらい、引きつった笑顔で答えた。

私は祐輔の隣に立ち、父と向き合った。

「お父さん…
こちら、今お付き合いしている、木村祐輔さん」

「は、初めまして!」

祐輔は背筋をピンッと伸ばして父に挨拶をした。

ガチガチに緊張している祐輔を見た父は、ククッと笑い声を漏らした。

No.498 10/10/15 23:52
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「木村君。
まぁ、そんなに緊張していないで、座って座って!」

「は、はい!失礼しますっ」

父に言われ、ソファに腰掛けた祐輔は、まだ背筋が伸びている。

私も祐輔の隣に座って、父も向かい側のソファに座り、母は父の足元で正座をしていた。

控えめに父の足元に座る母の姿を見て、なんだか尊敬した。
妻として、見習いたい振る舞いだと思う。

ぼ~っと母の姿にみとれていたら、父がゆっくり話し始めた。

「妻から話しは聞いたよ。
今は同棲をしているみたいだね?」

「はい。
ご挨拶が遅れて、申し訳ありませんでした」

祐輔は深々と頭を下げた。

No.499 10/10/16 00:00
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

「いやいや、謝る事じゃないよ。
ところで、見る限りずいぶん若く見えるけど…
木村君は、いくつなのかな?」

「あ、25歳です」

祐輔の答えを聞いて、父と母は少し驚いたように顔を見合わせた。

「りっちゃんの年齢知ってるの…?」

母が心配そうに祐輔に問い掛ける。

「もちろん知ってます!
でも、年齢なんか関係ありません!
僕は、律子さんの全てが好きなんですっ」

彼女の両親に、面と向かって『好き』だなんて…

よく言えるな…

何故か私の方が恥ずかしくなってしまって、俯いた。

No.500 10/10/16 00:25
*さくらんぼ* ( ♀ ZOnM )

母は安心したように微笑み、父は目を泳がせながらお茶をすすっていた。

祐輔もお茶を一口飲み、私に目で合図をした。

私も祐輔の合図に答え、小さく頷いた。

「お父さん、お母さんっ」

祐輔は姿勢を正し、少し声を張り上げた。

両親も祐輔の表情から何かを読み取り、真剣な表情で祐輔を見つめた。

私も真っ直ぐ前を見て、姿勢を正した。

「今日は、律子さんとの結婚を承諾して頂きたく、ご挨拶に伺いました。

初対面で失礼なのは承知の上です…

ですが、僕は本気で律子さんを愛しています!!」

そういうと、祐輔は突然立ち上がった。

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