夢で見た出来事
今朝方に見た夢が、まるでドラマを観ているような感覚で、鮮明に覚えています😃
誰かに聞いてほしいけど、恥ずかしくて言えないのでこちらに書かせていただきます🙈💦
夢なので、批判中傷はご遠慮ください🙇
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高柳が沙織を部屋から出そうとしたとき、私は口を開いた。
『…いいんじゃない?』
二人は声を揃えて言った。
『…はっ?』
私はベビーベッドに結笑を寝かせながら続けた。
『…沙織さん、高柳さんの赤ちゃん生みたいんですよね?いいんじゃないですか?沙織さんに男の子を生んでもらえば。跡継ぎも安泰ですよ。』
今まで自分の気持ちを誰かに伝えるのが苦手で、無口になっていった私…。
それからはあまり口数が多い方ではなかったのに、眠くて頭が働かないせいかどんなことでも言える気がしてた。
『じゃ~あたし、瞬の赤ちゃん生むぅ~❤男の子を生んであげるね❤』
『…そうしてあげてください。ちなみにユエの父親は高柳さんに間違いありませんが、私達は結婚はしてませんから。』
『マヂで~❤❤❤ぢゃ~瞬、あたしと~…』
『…お前、本気で言ってんの?』
高柳がキレた。
『…本気ですよ。祖母が亡くなった今、あなたの言いなりになる理由はなくなりました。』
『…はっ(笑)お前、本気で俺がそんな理由だけで、お前を側に置いてきたと思ってたわけ?』
『…私は…ゆえと二人で生きていきます…。』
『…ふざけんなよ。働き口なんかねーよ?みんな俺の一声でお前なんか雇ってもらえねーよ?どーすんの?』
『…わかってます。それでも私はもうあなたに支配されたくない。私は人形なんかじゃない!』
私が高柳の前で大きな声をあげるのは初めてだった。
また力づくで言うことを聞かせようと思ったのだろう…
高柳が私の両手を掴みかかってきた。
『…ふざけんじゃねーよ!ゆえは絶対に渡さねーし、お前も俺から離れるなんて、絶対に許さねーッ!💢』
『…ガッターンッ!』
『…きゃっ…やめ…』
『…わかったか!許さねーからなッ!!』
倒れた拍子に、高柳が私の上に馬乗りになってきた。
『ねぇ!瞬!やめなよ…っ!』
沙織までもが止めに入ってくれるほど、高柳は周りが見えなくなっていた。
そのとき…
『瞬ッ!もう止めなさい!』
声のする方を向くと、部屋の入り口に楓さんが立っていた。
『…瞬…もう百合ちゃんを自由にしてあげましょう…?あなたは愛し方を間違ってる…。そんな愛し方をして、相手から愛されるわけないじゃない。』
楓さんの顔が悲しそうに高柳を見つめてる。
『…楓ッ!お前…昨日おれに薬盛りやがったなッ!それで沙織とグルになって…ッ!』
『…あなたがやってきたことよ。逆にやられた気分はどうかしら?』
『…テメェ…💢』
『あなたは男だから、そこまで傷つかないでしょうけど、女がされたらどんなに傷つくかあなたにわかる?百合ちゃんがどれだけ心に傷を負ったか…あなたにはわからないのでしょうね…。』
『………。』
『…そんなやり方でしか人を愛せないのは、あなたが忙しい叔父様、おば様に愛し方を教えてもらわなかったからでしょう?』
『………。』
『瞬…お金では手に入らないものも、この世にはあるのよ…』
『…わかってるよ。』
高柳の手の力が抜けた…。
『こんなやり方間違ってる…そんなの初めから…百合を見つけたときからわかってたよ!』
今にも泣き出しそうな高柳の顔は、まるで捨てられた子犬のように私を見つめてた。
『…百合…ごめんな…』
そう言うと、高柳は部屋から出ていった。
沙織は本気で高柳が好きで、楓さんからこの計画のはなしを持ちかけられたときに、少しでも近づきたくて計画にのったらしい…
彼女もまた、愛し方を間違ったのかもしれない…
楓さんのご両親もまた、小学生のときに他界しているらしく、高柳のお父さん夫婦が引き取り、本当の姉弟のように育ってきたと聞いた。
だから、弟のように思っていた高柳が道からそれていくのを何とか助けたかったのだと…
本当にごめんなさいと、楓さんが謝った。
私はもう決めていた。
結笑と二人で生きていこうと。
高柳のことは楓さんが
『アイツは大丈夫よ!性格はかなり曲がってるけど、根性だけはあるのよね(笑)』
豪快に言われたら、本当にそうなんだろうなって思えた。
吉岡さん…
あなたは私にとって、暗闇を照らすお月さまのような人でした。
生まれて初めて人を好きになりました。
あなたは優しい人…
私と出会わなければ、あなたは家族と楽しい時間をたくさん過ごせたはずなのに…
私はあなたにたくさん救われました。
家庭を持っていて、あなたほど真面目な人が、こんな私のために気持ちを伝えてくれたのはどれだけ悩んだことでしょう…
どれだけ罪悪感に襲われたことでしょう…
今度は私があなたを救いたい。
私はこの街を出ます。
誰も私と結笑を知らない街へ行きたいと思います。
おばあちゃんが私名義で、小さい頃からコツコツ貯金してくれていたらしく、アパートなどを借りてもしばらくは結笑と暮らしていけるだけのお金が入ってた…
おばぁちゃん…ありがとう…
最期の最期まで、何一つおばぁちゃんにしてあげられなくてごめんなさい…
出発は早い方がいいと思い、昔両親が亡くなるまで一緒に暮らしていた街にアパートを見つけて、早急に荷造りをした。
出発前夜…
吉岡さんが訪ねてきた。
『…とうとう明日だね…』
『…はい…あの…今までたくさんありがとうございました!』
『…ううん。僕はなにもしてないよ。こちらこそありがとう…』
『やだぁ(笑)私こそなにもしてないですよ!』
『…覚えておいて。僕が君を真剣に想っていたこと。忘れないで、君はちゃんと前を向いて歩ける子だってこと!』
『…はいっ。吉岡さんもわかっていてください。私があなたを真剣に想っていたこと。そして…忘れてください。私のこと、ゆえのこと…。私はもうちゃんと前を向いて歩いていけます!大丈夫だから、どうか私を忘れてください…』
自分で言いながら泣きそうになってきた。
でも泣かない。
ここで泣いたら、また困らせてしまうから…
だから私は精一杯の笑顔で『ありがとう!』って伝えた。
吉岡さんも、私の大好きなあの笑顔で『こちらこそ…ありがとうっ!』って言ってくれた。
本当は…抱きしめてほしかったけど、離れたくなくなるのが怖くて言わなかった。
吉岡さんの手も、一度私の髪を触ろうとしたけど、その手は一瞬止まって触れることなく戻していった。
最後のあいさつは10分くらいで終わった。
別れがつらくなるから…
その日の夜はなかなか寝付けなかった。
それでも朝は来る。
旅立ちの朝。
タクシーに乗ろうとしたら、楓さんが見送りに来てくれた。
『とうとう行っちゃうのね。寂しくなるわ…。何かあったらすぐに私に連絡してね。あなたも妹のように思っていたわ…。』
楓さんが涙ぐむ。
私は笑って
『…お元気で。今までたくさんありがとうございました。高柳…いえ、瞬さんにごめんなさいとお伝えください…。』
『…謝らなくていーのよ!謝るべきはアイツ!(笑)でも…伝えておくわね…。』
『…はい(笑)お願いします』
『ゆりちゃん、これ…』
『…なんですか?』
『あとで読んでやって。瞬が珍しく手紙なんか書いちゃってさ(笑)本当に私もビックリ!』
二人でクスクス笑って
『じゃあ…行きます!』
笑顔で手をふれた。
タクシーに乗り、高柳からの手紙を開いた。
中には…
『百合と結笑へ』
『百合…今までごめんな。俺、お前のこと好きだったよ。好きすぎて自分がわからなくなってたんだ…。いつも押し付けるばかりの気持ちでごめんな…お前が吉岡に惹かれたのがわかる気がした。まぁ…体に気を付けろよな。』
『結笑、ごめんな…大きくなったら、ママを大切にしてやってくれな。俺にはできなかったから…幸せになれよ!』
『今までありがとうな』
そんな内容だった。
この手紙を読んで初めて高柳を許せた気がした。
こちらこそ、たくさんありがとうございました。
そして、たくさんごめんなさい…
次こそは幸せになってほしいと、心から思えました。
さぁ!いよいよ二人の生活がスタートです!
前を向いて頑張ります!
私たちは若さゆえに傷つけあってきた。
どうかみんなが幸せでありますよーに。
完
おはようございます😃
とうとう終わってしまいましたかぁ😭
結局ユリは、どちらも選ぶことなく1人立ちしたんですね💦
私も吉岡さんがィィです😍
吉岡さんともうちょっと接近してほしかったなぁなんて思ってしまう私って…😣
眠り姫さん、楽しませてくれてありがとうございました☺
もしまた、面白い妄想?夢?を見ましたらぜひ聞かせてください💕
できたら続きがいいなぁ…なんて😃💦
私もこんな夢見たいよぅ⤴⤴笑
- << 62 まぅさん😍 最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました😊 吉岡さんはきっと、どこまでいっても『いい人』なのでしょうね😂 夢の百合はどうして一人立ちをすることにしたんだろう… あたしなら吉岡さんにくっついていっちゃうな😁(笑) 吉岡さんにも家庭がありますが、一回もでてきませんでしたもんね💧 でも、出てきたら修羅場でこわかったかも😱(笑) 夢は終わってしまいましたが、今度は妄想で続きを書きたいな~なんて思っちゃったり💓(笑) あたしの現実世界にも、家庭持ちで吉岡さんをちょっとワイルドにした人が会社にいるので、その人に優しくしてもらいたかった願望が夢に出てきちゃったのかもしれません😂💦 かなりの妄想ヤローです💧(笑)
こんにちは😄
ずっと読ませていただいてました🎵✨
夢なのにこんなに鮮明に覚えてるんですね⤴すごい😆
私もこんな夢を見て別の人生体験したような気分になりたいな(´∀`*)
眠り姫さん、楽しいお話ありがとうございました❤
- << 63 1児のママさん😍 読んでくださってありがとうございました🌷 わたしも一児の母なので、夢でだけ違う人生を楽しんでます😂💦 …夢だからいいですよね😥(笑) 夢は結構見る方で、意外と鮮明に覚えています😊 朝起きてドキドキしてたり、続きを見たかったり… なんか心が欲求不満みたいですよね~😂 お恥ずかしい🙈💧 しばらくしたら、その後を妄想で書いていきたいなぁ~っと思ってるので、お暇なときにまたのぞきに来ていただけたら嬉しいです☺
>> 60
おはようございます😃
とうとう終わってしまいましたかぁ😭
結局ユリは、どちらも選ぶことなく1人立ちしたんですね💦
私も吉岡さん…
まぅさん😍
最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました😊
吉岡さんはきっと、どこまでいっても『いい人』なのでしょうね😂
夢の百合はどうして一人立ちをすることにしたんだろう…
あたしなら吉岡さんにくっついていっちゃうな😁(笑)
吉岡さんにも家庭がありますが、一回もでてきませんでしたもんね💧
でも、出てきたら修羅場でこわかったかも😱(笑)
夢は終わってしまいましたが、今度は妄想で続きを書きたいな~なんて思っちゃったり💓(笑)
あたしの現実世界にも、家庭持ちで吉岡さんをちょっとワイルドにした人が会社にいるので、その人に優しくしてもらいたかった願望が夢に出てきちゃったのかもしれません😂💦
かなりの妄想ヤローです💧(笑)
眠り姫さんお疲れさまでした。最初からずっと楽しみに見てました。私は吉岡さんより高柳さんのが惹かれまし。最初は嫌な奴だったけど本当は百合のことが好きで愛しかたを知らない可哀想な人だと思って、最後は親子3人幸せになってもらいたかったんですが… 続き楽しみにしてます。
こんばんは😁ドキドキ💕しながら、とても楽しく読まさせていただきました。結婚して家事と育児におわれる毎日で、最近の私にはドキドキ💕する事がなかったので…本当に楽しかったです。
吉岡さんと百合さん…結ばれて欲しかったです😣何か結ばれなかった事に寂しい気持ちになってしまいました⤵
眠り姫さん、是非続編をお願いします🙇百合さんのその後…楽しみにしていますので✨是非続けて下さい🙇
『それから三年後』
この街に来てしばらくしてから、私は働くことにして結笑を保育園に預けることになった。
保育園に行ってからは、あっという間に結笑はすくすくと成長していった気がする。
寝返りをうち、ハイハイを始め、つかまり立ちをしたと思ったら、ヨロヨロしながら一歩前に歩いてきた。
それからは、おしゃべりも上手になって、イタズラなんかも増えた。
保育園で何をしてきたのか聞くと、答えてくれるようになり、立派な会話ができるようになった。
私の勝手で、こんな不自由な生活の中でも、結笑は明るく元気な子に育ってくれたことが何より嬉しかった…。
ごめんね、ゆえ。
ありがとう、ゆえ。
楓さんからたまにメールや手紙が届いたりしてた。
高柳は相変わらず俺様だけど、雰囲気が変わったと言ってた。
仕事にも更に力を入れていて、新しいことを始めようと試みているそうだ。
毎日忙しいと嘆く楓さんも、とても充実した毎日なんだろうなって感じた。
そこには…吉岡さんのことは何もかかれていなかった。
こちらから聞けるわけもなく…
家庭がある吉岡さんに連絡なんか出来るわけもなく…
便りがないのは元気な証拠っ!
そう自分に言い聞かせて、忙しい毎日を送ってた。
私は本屋に勤めた。
昔から人と関わるのが苦手だった私は、本が大好きだった。
本を読んでいる間は、主人公になったつもりでストーリーが進むにつれてどんどんハマっていくから寂しくなかった。
職場の人もみんな優しくしてくれる。
私の過去を知ってる人は誰もいない。
私は結笑とこの街で0からやっていくと決めたから、結笑のため、自分のために私は変わった。
内気だった私が嘘のように、今ではだいぶ社交的になり、明るくなったと自分でも感じる。
…吉岡さんのおかげだと思う。
吉岡さんといると私自身も知らない、違う自分がたくさんいることに気づいた。
とても感謝している。
彼に出会わなければ、今の私はないのだから…。
吉岡さん…
あなたは今幸せですか…?
私を忘れてくれましたか?
私はあなたのこと…
忘れられませんでした。
離れたら余計に、あなたの温もりが恋しくて…
優しい笑顔に逢いたくて…
また頭を撫でてほしくて…
『大丈夫だよ』って言ってほしくて…
淋しくなる夜があります。
天気のいい日曜日。
結笑と手を繋ぎ、近くの公園で遊んだ帰り道。
『…あれ?ゆりさん?』
声をかけられてふりむくと、そこには本屋の店長がいた。
『お疲れさまです!』
『おつかれ!娘さんとお散歩かな?ゆえちゃんだっけ?可愛いね~ゆりさんにそっくりだ(笑)』
『よく言われます(笑)公園の帰りなんです。店長は休憩中ですか?』
『あぁ!この辺に旨いコーヒーをいれてくれる喫茶店があってね~』
『へぇ~!いいですねぇ』
『じゃあ…迷惑じゃなかったらゆりちゃん達も一緒に来る??』
『えっ…そんなっ…休憩中のお邪魔したら悪いので(笑)』
『いやいや…一人でコーヒーも寂しいだろ?付き合ってよ(笑)』
『でも…』
『ゆえちゃん!公園の帰りにケーキでも食べない?』
しゃがんで結笑まで目線を落として話しかけてくれる店長。
『…行くぅ~!』
ケーキにつられる娘…
『…決まりだなっ!』
得意気に笑う店長はどこか憎めない人だ。
近藤 克己さん 34歳
私から見たらとても大人な人。
とても面倒見がよく、みんなから好かれる店長。
しっかりしているように見えて、たまに抜けてるところがある。
しかも、本人はそのことに気づいてないから周りはいつも温かい雰囲気になるのだ。
喫茶店に入り、店長はホットコーヒー。
私はアイスティー。
娘はチーズケーキとオレンジジュースを頼んだ。
一生懸命たべている娘を笑いながら見ている大人二人。
はたからみたら、親子に見えるのかなぁ~なんて思ったりした。
すると店長が、
『なんかさ、俺たちって家族みたいだよね(笑)』
『…ふふっ。周りから見ればきっとそうですよね(笑)』
『この街に来てもう三年だっけ?もう慣れたかな?』
『はいっ!おかげさまで(笑)皆さんが優しくしてくれるので頑張っていけますよ』
他愛ない会話をした。
時間はあっという間にきて、店長の休憩が終わりそうなのでお店を出ることにした。
『…マスター、もう行くわ!釣りはいらないから!』
『あっ…これうちの分です!』
『い~って!無理に誘っちゃったの俺だし(笑)俺に恥をかかせるなよなぁ~』
変顔してる店長…(笑)
『では…ごちそうさまでした!ほら、結笑もごちそうさまして?』
『…ごっちゃまでした!』
ぺこりと頭を下げる娘に
『おうっ!いい子だな!また食べに来ような!』
『…うんっ!』
すっかり馴染んでる店長に感心した。
『じゃあ、また明日な!遅刻すんなよ~(笑)』
『しませんよっ!ごちそうさまでした。頑張ってくださいね。』
喫茶店の前で別れ家に帰った。
明日から仕事だから、頑張るぞ~!
たくさん気合いを入れて寝た。
次の日の朝、ゆえを保育園に送り出勤すると、パートさんの宮島さんが
『おはよ~ゆりちゃん!聞いて~昨日店長がね、休憩から帰ってきたらすっごくご機嫌でさ~!デートでもしてきたんですか~?なんて冗談で言ったら、そんなとこ~だって!店長にも春かね~(笑)』
『…そうなんですかぁ~…(苦笑)はははっ…』
(また店長ってば、いつもの軽い冗談なんだから!)
おもしろおかしく騒がれるのが苦手なので、あえて軽く流してみた。
それから店長が出勤してきて…
『おはよ~ふぁぁぁ…眠いなぁ…』
『おはようございます』
普段通りにした。
すると店長が
『おぉ~ゆりさん昨日は…』
宮島さんの前なので慌てて話をさえぎった。
『昨日はすいませんでした!シフト確認のお電話なんかしてしまいまして…助かりました!』
『…あぁ…?おぉっ、そっか!』
店長の頭の中は『?』でいっぱいのようだったが、話をあわせてくれた。
(店長…ごめんなさい!)
宮島さんが目を輝かせながら
『店長~❤昨日のデートの相手はどんな人なんですか😁?(笑)』
『…デートぉぉぉ?』
『昨日、休憩後にご機嫌よく帰ってきてデートか聞いたらそんなとこだって言ったじゃないですか~!』
『…そんなこと言ったかぁ?』
『言いましたよ!なんだ、つまらない』
なんだか残念そうにブツブツと言いながら宮島さんは裏へと行った。
『…ゆりさん、ごめんなぁ~…それでさっきあんな風に言ったんだな』
『いえ!やましくなくても、宮島さんにかかると話が大きくなっちゃうから(笑)すいませんでした』
二人でクスクス笑った。
いつも通りの業務をこなし、ゆえのお迎えの時間になるので本屋を出た。
『お先に失礼しますっ』
『おっ!お疲れさん!また明日なぁ~』
簡単に買い物をして、保育園に向かった。
(ちょっと遅くなっちゃったかな…)
街中の人通りの多い場所で信号待ちをしていると、話に夢中になっている学生の一人にぶつかられ、私はバランスを崩し道路に倒れ込みそうになった…
『…きゃっ!』
その瞬間、私の腹部に腕が滑り込んできて、包み込むような形で後ろに引き戻された。
一瞬の出来事で何が起きたのか理解できなかった。
すると耳元で
『…大丈夫ですか?』
優しい声がした。
『あっ…大丈夫です。ありがとうございました…』
お礼を言おうと振り返ると、そこには吉岡さんがいた…。
お互いに動きが止まってしまった。
『…ゆりちゃん?』
『…よっ、吉岡さん…?』
倒れそうになったときに、手に持っていた買い物袋やバッグを落としてしまい、それを吉岡さんがしゃがんで拾い始めた。
慌てて私もしゃがみこみ、一緒に拾う。
拾いながら吉岡さんが口を開いた。
『…元気だった?』
ニッコリ笑う吉岡さんの笑顔は何も変わっていなかった。
むしろ、大人の色気が増していて更にかっこよくなっていた。
『…ゆりちゃん?どこか怪我でもしたの?』
ハッと我に返って、
『だっ…大丈夫です!』
落ちたペンを拾おうと手をのばすと、吉岡さんの手と触れてしまった。
勢いよく手を離してしまい、吉岡さんはビックリしてる。
『…ごめんなさいっ!』
一人でテンパっている私を見て、吉岡さんがクスクスと笑う。
『…ゆりちゃんは忙しそうだね(笑)』
恥ずかしくて顔が真っ赤になっていると、吉岡さんの手が私の髪を触る。
『…髪切ったんだね。短い髪も似合ってる。でも、綺麗な髪だったからもったいないね(笑)』
『…短い髪にしたことなかったから…やってみたくて』
胸がキュンとする…
三年ぶりとは思えないくらい、自然に話しかけてくれる吉岡さん。
仕事でこの街に来たこと。
高柳の会社を辞めて独立したこと。
『…ゆえちゃんは元気?大きくなったんだろうなぁ~』
『すごく元気で毎日大変です(笑)』
(…んっ…?ゆえ…?)
『…いけないっ!ゆえのお迎えに行く途中だったんだ!私行かなきゃ…』
吉岡さんがまた笑う。
『髪が短くなったら、まるで別人みたいだな(笑)とても明るくなったね。しっかり前を向いているんだね。』
そう言いながら、拾った荷物を手渡してくれた。
後ろ髪を引かれながらも、挨拶を交わしてゆえのお迎えに向かった。
もぅ…会えないかもしれない。
…仕方がないよね。
仕方がないと思いながらも、寂しい気持ちで胸が押し潰されそうだった。
『ゆえ…ハァハァ、遅くなってごめんね』
『ママ~❤』
『帰ろっか!今日はゆえの好きなハンバーグにしようね~』
『うんっ❤』
夕日に照らされ二人の影がのびる。
ゆえを寝かせてから、一人空を見上げた。
月が綺麗に輝いてる。
吉岡さん…
こんなに広い街で、あのとき、あの場所であなたに出会えたこと…
本当に嬉しかった。
私を軽々と支えてくれた、吉岡さんの腕の温もりを思い出してた。
体が…胸が…熱くなった。
吉岡さん…
元気そうで安心したな。
またかっこよくなったみたい。
独立したって言ってたけど…
それで楓さんは吉岡さんのこと言わなかったのかな…
吉岡さんのことを考えずにはいられない夜だった。
あまり眠れず、少し寝不足のまま仕事に行った。
『おはようございまぁす…』
『おはよっ!なぁに?元気ないじゃない!』
宮崎さんはいつも元気だなぁ…(笑)
事務所に入ると、店長がデスクに伏せたまま眠っていた。
『…店長~朝ですよ~?またこんなとこで寝てたんですか(笑)』
肩を揺すって起こそうとすると、いきなり私の手を掴んだ。
まっすぐ私を見つめる。
時間が止まったのかと思うほど、長い間手を掴まれていたように感じた。
でも、そう感じただけで時間にしたらほんの数秒だったのかもしれない…
『ゆりちゃ~ん!店長は起きたぁ~?』
ガチャっと扉が開いた瞬間、私はビクッとしてとっさに店長の手を振り払った。
私が言葉に出来ずにいると、店長が口を開いた。
『ふぁ~…ゆりさん起こしてくれてありがとうっ!さぁ、今日も頑張りますかッ!』
ニカッと笑っていつもの店長に戻ってた…。
ビックリして言葉にならなかった。
それからは普通な態度の店長…
きっと寝ぼけてたんだよね…
お昼になり、店長が休憩に入る。
『俺、家にシャワー入りに一回帰るから、その間みんなよろしくなっ!』
店長は棚卸しとかになると、事務所でずっと仕事をしてる。
仕事が終わると、そのまま疲れて眠ってしまうときがあるみたいで、今日みたいなことがたまにある。
そういうときは決まって休憩中に家に帰るのだ。
店長が抜けてレジで伝票整理をしていると、
『これお願いします。』
っと一冊の本がカウンターに置かれた。
『はいっ。ありがとうございます!こちら950円です。』
目線を本からお客様に向けると、目の前には吉岡さんが私を見て微笑んで立ってた。
『…えっ?!どうしてここに?!』
驚きのあまり声が大きくなってしまった。
とっさに口を手で押さえると、吉岡さんが笑いながら人差し指で自分の口唇にあてながら『し~…(笑)』っとした。
そして吉岡さんはボールペンをレジの上に置いた。
よく見るとそのボールペンには、この本屋のネームが入っていた。
『昨日の忘れ物。落としたときに、僕のカバンに偶然入ったみたい(笑)』
『それでわざわざ…?私がもしここで働いてなかったら、無駄足になるところでしたよ?!』
『大丈夫!きっとここにいると思ったから(笑)前に楓にゆりちゃんが本屋で働いたって聞いたことがあったから…ここで間違いないと思ったよ!』
得意気に笑う吉岡さんはとても可愛らしい…
そっか…楓さん私のことは吉岡さんに話してたんだぁ。
前に聞いたことでも、吉岡さんが私のことを何かひとつでも覚えていてくれたってことが嬉しかった。
後ろに人が並んだので、吉岡さんは『それじゃあ…』っと言ってレジから離れようとした。
(あっ…行っちゃう…)
そう思ったらすごく淋しくて…
もう会えないと思うと悲しくて…
でも引きとめることも出来なくて…
そんな気持ちが顔に出てしまったのだろうか…
吉岡さんの表情が、いつもの笑顔から目を大きく開けてビックリしたような顔を一瞬だけした。
それからすぐにまた笑顔に戻り、そっと小さく耳元で
『仕事が終わったら、食事に行かない?ゆえちゃんと三人で!また後で連絡するから』
私は笑顔でうなづいた。
さりげなく手をふって吉岡さんがお店を出ていった。
嬉しい…
ゆえと三人で食事ができるなんて…
それからは仕事にも力が入り、張り切って仕事をした。
早く仕事が終わらないかな。
ゆえをお迎えに行って一回うちで着替えちゃおうかな。
そんなことばかり考えていた。
ゆえには何て言おうかな…
嬉しさの反面、不安もあった。
仕事が終わるとすぐに支度をして本屋を出た。
胸がワクワク踊る。
結笑を迎えに行き、私も結笑も少しだけおしゃれした(笑)
結笑は不思議そうに聞いてくる。
『どうしてお着替えするの?』
『…んっ?お出掛けするからだよぉ』
『わぁ~いっ!』
結笑はお出掛けと言うことに大はしゃぎしてた。
夕方六時頃になり、吉岡さんから電話が来た。
『お待たせ!出掛け先からかけてるんだけど、駅前まで来てもらってもいいかな?ごめんね…迎えに行きたいんだけど、あまりこっちの土地は詳しくなくて…』
『ううん!この街なら私に任せてください(笑)今から駅に向かいますね』
『うん…僕もこれから駅に向かうよ』
電話を切ってすぐに駅に向かった。
そわそわした気持ちを抑えて…。
駅に着くと、まだ吉岡さんは来てないようだった。
『お腹すいたよぉ~…ママ~…』
『うん。もうすぐご飯だよ~何が食べたいかな?』
六時半だもんな…
ごめんね結笑。
すると、肩をポンっと叩かれた。
『吉岡さ…』
嬉しくて振り向くと、そこには宮島さんがいた…
『あら~偶然ね~!ゆえちゃんとお出掛け?』
『宮島さん…こんばんわ!えぇ…ちょっと人と待ち合わせていて…』
『あらっ!そうだったの~』
世間話をして、帰る気配がない。
どうしても時計と吉岡さんが気になる。
すると、宮島さんの後ろの方に吉岡さんの姿が見えた。
吉岡さんも私に気づき手をふった。
私は苦笑いで小さく頭を下げた。
私が置かれた状況に気づいた吉岡さんは、ジェスチャーで隣の本屋を指した。
そして本屋に入っていった。
こーゆー気の使い方をする彼は出来た人だなぁっと思った。
また胸がキュンとした。
『…ママ~お腹すいたよぅ…』
結笑の一言で宮島さんが帰ってくれた。
『あらあら。おばちゃん喋りすぎちゃってごめんね~じゃあ、また明日ね!』
はぁ…
吉岡さんが本屋に行ってから五分くらい経ってた。
結笑の手を取り本屋に向かった。
キョロキョロ探していると、目の前に本を読んでいる吉岡さんの姿が見えた。
その場から足が動かず、声をかけられなかった。
背筋がピンとのびて、凛とした姿で本を読む吉岡さんは、とてもとても綺麗だった。
『…ママぁぁぁ…⤵』
ハッと我にかえる。
結笑の声に吉岡さんも気づき、ゆっくりこっちを見た。
私たちを見ると優しく笑って読んでいた本を閉じ下へ置いた。
ゆっくり私たちのもとへ歩いてくる。
心臓が壊れてしまうかと思うくらい、鼓動がはやくなってた。
『こんばんわっ』
先に私に挨拶をした吉岡さんは、次の瞬間にはもう結笑の目の前にしゃがんでいた。
『結笑ちゃん、こんばんわ!僕は吉岡 勇気です。今日は僕もご飯を一緒に食べてもいい?』
ゆっくり、優しい口調で結笑が理解しやすいように合わせてくれてる吉岡さん。
お腹がすいた結笑は頬をぷぅ~っと膨らませたまま、下を向いてスネてた。
『ごめんなさい💦結笑ごあいさつは?』
『…ぷはっ!結笑ちゃんのスネてる顔は昔の百合ちゃんそっくりだね(笑)』
『…えっ💧』
吉岡さんはスーツのポケットをゴソゴソしながら笑ってる。
そしてグーに握った右手が結笑の前に出された。
私も結笑もその手をじーっと見てると…
開いた手からアメ玉が三個出てきた。
結笑の顔が笑顔になる。
『ご飯の前だからひとつだけにしようね!あとはポケットにしまっておいて』
そう言って結笑の手を取り、アメをそっと置いてくれた。
『ご飯食べにいこっか!』
『…うんっ!』
『何が食べたい?』
『お子さまランチ~!』
はしゃぐ二人を見ながら、ふっと思った。
吉岡さん…やっぱり子供の扱いが上手だなぁ…
吉岡さんの娘さんがあのとき確か結笑の二つ上くらいだったから、今は五歳くらいかな…
そんなことを考えてたら、胸が苦しくてつらくなりそうだったから、気を取り直して明るくふるまった。
『ママもお腹すいちゃった~!』
三人でレントランに入った。
結笑はお子さまランチ。
吉岡さんはハンバーグ。
私はクリームパスタ。
結笑のお子さまランチに小さなハンバーグがついていて、いきなり結笑が
『ママのハンバーグの方がおいしいよ!』
っと言った。
嬉しいのと気まづいのとで、周りを気にしながら小さな声で
『ありがとう(笑)』
ってお礼をした。
結笑は吉岡さんを見ると
『お兄ちゃんのハンバーグはおいしい?』
と聞いた。
『うん、おいしいよ~食べる?』
吉岡さんが優しく聞く。
『食べるっ!』
小さくして、ふ~ふ~してから結笑に食べさせてくれた。
見ていてちょっと羨ましかったりして(笑)
『やっぱりママの方がおいしいなぁ!お兄ちゃんもママのハンバーグ、ゆえんちに食べに来る?』
『いいの?じゃあ今度、結笑ちゃんちのハンバーグ食べに行ってもいい??(笑)』
『い~よ~💓』
吉岡さんが私を見て笑う。
私もつられて笑う。
楽しい食事。
そして、食後にデザートを頼んだ。
とっても意外なことに、吉岡さんは甘党だった(笑)
『吉岡さん…甘いの好きなんですか?』
チョコレートパフェを食べている吉岡さんに聞いてみた。
『…ははっ。意外かな?お酒より好きかも(笑)』
照れたように笑う顔が可愛かった。
結笑は一生懸命にアイスクリームを食べてる。
私がチョコケーキを食べていると、吉岡さんが優しい顔で見てた。
『…一口食べますか?』
食べたかったのかな?っと思って聞いてみると、吉岡さんはクスクス笑いながら
『大丈夫っ(笑)何でもないから(笑)気にしないで食べて(笑)』
っと…まだ笑ってる。
変な吉岡さんだなぁ…って思った。
デザートも食べ終わり、結笑も寝る時間になるので帰ることに。
席を立つと、吉岡さんが耳元で
『先に結笑ちゃんと出て待ってて。送っていくから。今日は食事に付き合ってくれてありがとう』
そう言ってお会計に行った。
レジで『ごちそうさまです』と、お店のかたに挨拶をして結笑と店を出た。
季節はもうすぐ夏。
日がのびたせいか、まだ空はうっすら明るく風も冷たくない。
『結笑~楽しかった?』
『うんっ!楽しかったよっ!』
『よかった…』
その言葉を聞いて少し安心した。
『ごめんね。おまたせっ』
吉岡さんが出てきた。
タクシーを拾おうと大きな道路に出た。
急に淋しくなった。
もう帰らなくちゃいけない…
でも、家についてしまえばもう吉岡さんには会えないかもしれない…
そんなことを考えていたら、どんどん口数が少なくなってしまった。
タクシーが止まり、吉岡さんが『先にどうぞ』と進めてくれるが、足が動かない。
吉岡さんの顔を見れずに、地面を見てると…
『…すいません。忘れ物しちゃったみたいなんで、乗れなくなってしまいました。すいませんでした。』
タクシーのおじさんに丁寧に謝り乗らなかった。
『あの…!』
そこまで言いかけたとき、吉岡さんは大きく背伸びをして
『ん~っ!最近は仕事ばかりで動いてないから体がなまっちゃったよ(笑)行けるところまで歩いて送りたいんだけど…付き合ってもらっていいかな??』
どこまで優しい人なんだろう…
私のワガママなのに、自分が悪いかのように言ってくれる…
『さぁ…遅くなると悪いから、行こうか!』
暗くなってきた道を三人で歩く。
途中で結笑が眠くなってしまい、抱っこしようとすると…
『僕におんぶさせてくれない?結笑ちゃんおいでっ』
眠くて目が閉じそうな結笑は言われるままに吉岡さんの背中に手をのばした。
すぐに寝息が聞こえてきた。
『…ゆえちゃん疲れてたんだなぁ~(笑)』
『保育園でたくさん遊んでくるから(笑)』
『今日は…付き合ってもらってごめんね』
『…こちらこそ…ごちそうさまでした。楽しかったです。結笑も楽しかったと思います(笑)』
『そっか!楽しんでもらえたら僕も嬉しいよ』
ちょっと照れながら二人で歩く…。
吉岡さんと一緒にいると、とても安心できる私がいた。
夜10時頃にやっと家についた。
夢のような時間だった。
駅からちょっと離れたこのアパートまで本当によく歩いたなぁと思った。
寝ている結笑を私にバトンタッチして、
『それじゃ…』
吉岡さんが行ってしまう…。
勇気をふりしぼって声を出した。
『よっ…よかったらっ!上がっていきませんか?狭いところけど…』
吉岡さんの反応がこわかった…。
言ってしまったけど、拒否されたらどうしよう…
『…いや…今日はこのまま帰るよ!』
『そっ…そうですよね…ははは…』
勇気を出して声をかけてみたけど、吉岡さんには迷惑だったよね…っと、すごく恥ずかしくなった…
『…じゃあ、おやすみなさい…』
部屋に入ろうとしたら、吉岡さんが少し大きな声を出した。
『…明後日の夜!』
『…えっ?』
っと振り向くと…
『明後日の夜はお邪魔してもいい?結笑ちゃんと百合ちゃんのハンバーグを食べさせてもらう約束したからっ!』
ちょっと真剣な吉岡さん。
珍しいな…(←失礼)
『はいっ、頑張ってハンバーグ作って待ってますね!』
そう言うと、吉岡さんはホッとしたようにニッコリ笑って
『じゃあ、仕事が終わったら電話するね(照)』
『…はいっ(照)』
なんだか恥ずかしくて、でも嬉しくて…
その日の夜は、吉岡さんとの楽しい時間の余韻にひたって眠りについた。
吉岡さんはしばらくこの街に出張で来ているみたいで、ホテルに泊まっているそうだ。
ホテルは駅前だから、うちまで送ってもらったのには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
朝起きて、足が少し筋肉痛な気がした…
久々にあんなに歩いたからだろうか。
吉岡さんは大丈夫だったかな…
準備をして、結笑を保育園まで送り仕事へ向かった。
よしっ!今日も一日お仕事頑張るぞっ!
気合いを入れて挨拶をした。
『おはようございます!』
『おっ!おはよーさん』
店長がいた。
『あれ…?宮島さんは…?』
『あぁ、なんか昨日の夜から体調を崩したみたいで、病院に行ってから来るって連絡あったんだ』
『そうなんですか…』
ちょっと気まづい雰囲気が流れていた。
『なぁ、聞いていいか?ゆりさんってシングルマザーじゃん?旦那どーしたの?』
ストレートにと聞いてくる人だなぁ…
店長らしいけどね(笑)
『…私、結婚はしてませんよ?だから旦那はいません。』
『えっ?!じゃあ未婚の母ってやつ?』
『…まぁ、そんなとこです』
高柳のことを思い出した。
今ごろ何してるのかな…
ちゃんと元気でやってるかな
新しいことを始めるって、何を始めるんだろ
楓さんがいれば大丈夫だよね
結笑に会いたかったりするのかな…
可愛がってたもんね…
会わせるべきなんだろうか…
『…りさん…』
『…ゆりさんっ!!』
ハッと仕事中なのを思い出した。
『…大丈夫かぁ?』
店長が心配そうに見てる。
『…すいません💦平気です』
なんだか最近はたくさん考え事をしちゃうなぁ…
でも、吉岡さんに再会できてすごく嬉しかった。
うちに来るって言ってくれたけど…
無理してるのかな…
私があのとき誘わなければよかったのかな
吉岡さんは優しいからあんな風に言ってくれたけど…
良くないことだよね…
私と吉岡さんの関係って何なんだろう…
また悶々と考えてしまった…
なかなか仕事が手につかない。
私と吉岡さんは『友達』?
それもまた違うような気がする…。
吉岡さんはどうして優しくするの?
会えると嬉しい…
でも、さよならする時間はまた淋しくなる。
あなたが恋しくなる…。
どんどん欲張りになってしまう。
吉岡さん…
私を止めて…
突き放して…
優しくしないで…
あなたを忘れられなくて、私はずっと胸が痛いまま…
三年前と変わらずに、あなたに惹かれてる…
あのとき罪悪感から自分で一線を引いたのに…
今度は私からその線を越えようとしてしまいそうになる…
自分がこわい…
この気持ちを伝えてしまったら
あなたは離れていくの?
帰るべき場所へ戻ってしまうの?
あなたに会えなくなるくらいなら、この気持ちは閉まった方がいいよね。
そうしたら…
まだ側にいてもいいですか?
知り合いとして…
でも、知り合いと言えども異性が一人でうちに夕飯を食べに来る?
…ますますわからなくなるの。
胸が痛い。
あなたに帰る場所がなければ、こんなに苦しくないのかな…?
少しして、宮島さんが出勤してきた。
『おはようございます…コホッ』
『あっ…宮島さんおはようございます!…大丈夫ですか?💦』
『…うぅ😳』『
おぉい、大丈夫かぁ?💧今日は帰って寝ていいぞ。早く治して来てくれた方がありがたいしな!』
『…そうですか…じゃあ、そうさせていただきます…失礼します…コホッ』
宮島さんは帰って行った。
お昼になり、店長が
『ゆりさん休憩に入りなよ!』
『えっ?店長は…?』
『今日はいいや!宮島さんがいない分、人手も足りないしな。別に昼くらい食べなくても俺は平気だから!』
『…でも…』
『ゆりさんはしっかり休んでおきな!仕事が終わったらまた家事に育児に忙しいだろ?』
ニカッっと笑う店長。
しぶしぶ休憩に入ることにした。
休憩に入ってすぐにコンビニに走り、アップルティーとパンを買って急いで食べた。
早めに休憩を切り上げ、お店に戻った。
普段はやる気がなさそうな店長も、仕事中はすごく真剣な顔をしてる。
それに、好きな新刊が入る度にはしゃいでる。
本当に本が好きなんだなぁ…って伝わってくる。
そう言えば…
このお店で働くことになったキッカケも、たまたま私が入ったこのお店で、在庫チェックをしてた店長と小説について語ったことが始まりだったなぁ(笑)
『店長っ!』
『んっ?まだ休憩だろ?いーよ!ゆっくり休んでて』
『もうお昼はいただきましたから、店長もご飯食べに行ってください!』
『いーよいーよ(笑)』
『まだまだ夜もあるんですから、栄養つけないと!これ、私のお弁当なんですけど…よかったら食べてください!あんまりたいしたもの入ってないですけどね(笑)』
『…えっ!?ゆりさんは?』
『私はもう食べましたよ』
『…食っていいの?』
『どうぞっ』
『…じゃあ、お言葉に甘えて…いただきます』
なんだか店長、照れてるみたい。
やっぱり赤いお弁当箱は恥ずかしかったかなぁ…
店長も食べ終わるとすぐに戻ってきてくれた。
『ごちそーさん!百合さん若いのに料理上手なんだね~!おじさん感心しちゃったよ(笑)』
『いえいえ、でも、ありがとうございます(笑)小さいときからおばぁちゃんのお手伝いしてたからかな?』
『へぇ~いい嫁さんになるなっ!』
『…どうでしょうかね(笑)』
『またまた、彼氏の一人や二人いるんだろ?』
『…彼氏なんていませんよ(笑)私、店長みたいにモテないですからっ』
『俺かぁ?!俺なんて全く女に無縁だよ!』
『でも、若いお客さんからアドレス聞かれたりしてるじゃないですか?(笑)』
『あんなん、若い子達の遊びのひとつみたいなもんだなっ!まぁ俺は大人かだから子供には興味ないけどね!』
フンッて感じに言い放った店長がおかしくて、笑ってしまった。
『…ゆりさんもそんな風に笑うんだな』
『えっ?私いつもこんな感じですよ?(笑)』
『いや…顔では笑ってても、心はいつもはどこか淋しそうにしてるから。』
ドキッとした。
そんなこと初めて言われた。
店長はいつだって従業員のことをよく見ている。
すごい人だと思う。
『…考えすぎですよ!』
『…そっか。ならいいんだけど…ごめんな』
『…いえ(笑)』
それからは黙々と仕事をした。
店長が変なことを言うから、ちょっと気まづい感じがした。
でも、店長は普通に接してくれるから、そう思ってるのは私だけだったと思う。
上がる時間になり、バイトさんが来たので引き継ぎをして帰ろうとした。
そのとき、店長がやってきて
『ゆりさ~ん!ちょっと待ってっ』
呼びとめられた。
『どうかしましたか?』
『いや、弁当ありがとなっ!中身が可愛くて、食べるのがもったいなかったよ(笑)』
『あぁ…!娘のお弁当に入れてるおかずと一緒だからかな(笑)なんだか恥ずかしいな…』
『いや、素敵な女性だと思うよ』
店長が真剣な顔で私を見てる。
この前の手を掴まれたこともあり、少しだけこわかった…。
いきなり店長が吹き出して、
『…そんな警戒すんなよ!俺は野蛮人じゃねーぞっ!』
私の頭をくしゃくしゃっとした。
『ボサボサでボンバーヘアーだなぁ~はははっ』
笑いながら店長は見せに戻っていった。
『…もうっ!からかうのが好きなんだからッ』
結笑のお迎えに行き、夜お風呂に入りながら結笑に聞いてみた。
『ゆえさ~ん、昨日一緒にご飯食べたお兄ちゃんがね、ゆえとの約束通り明日うちに来てくれるって!ハンバーグ食べに…』
『…ほんとうっ?!わぁ~い!』
お風呂のお湯をバシャバシャして喜ぶ結笑。
『…お兄ちゃんが来るの嬉しい?』
『うんっ!ゆえあのお兄ちゃん好きっ☆』
『そっか…』
ぶくぶくとゆっくり口まで湯船に沈んだ。
明日は吉岡さんが来る日。
買い物に行って、部屋を片付けて、ハンバーグ作って…
考えただけで鼓動がはやくなった。
早く会いたいな…
吉岡さん…
興奮しているのか、なかなか寝付けなかった。
これが遠足前の子供の心境なのかな?
私が子供の頃は特に楽しみってわけじゃなかったから、興奮して寝れない夜はなかった。
初めて体験する出来事に、ちょっぴり愛しさを感じた夜だった。
吉岡さんに、あなたに出会えて、初めて経験する気持ちがたくさんあります。
ありがとう…
次の日の仕事は、宮島さんが休みなこともあり若いバイトさんがシフトに入ってた。
21歳のフリーターの女の子。
名前は確か…
如月 未来ちゃん。
今時の子だなぁっていうのが第一印象だったかな。
いつも頭の先から指先までおしゃれが行き届いてる可愛らしい子。
従業員の中でもすごく店長を慕ってる子という印象も強かった。
『おはよーございまぁす⭐』
『おはようございます』
『生垣さんとあまり一緒に仕事するときないですよね~😊』
『そうだねぇ(笑)』
『店長きてます?』
『事務所にいると思うよっ』
『はぁ~い』
元気で真っ直ぐな子だよなぁ~
キラキラしててちょっと羨ましいなっ!
少しして如月さんがエプロンをして出てきた。
『店長ケチなんですよーっ!お菓子いっぱい持ってたから、ひとつちょうだいって言ってもくれないんですっ!』
子供みたいにスネてる如月さんは、女の私から見てもとても可愛らしい。
『でも、あんなにいっぱいのお菓子どーすると思います?一人で全部食べるのかなぁ?』
『どうかなぁ…でも、そんなにお菓子食べるイメージないよね(笑)』
如月さんと笑ってると、店長に呼ばれた。
『ゆりさん、ちょっといいかぁ?』
『…はい?』
事務所に行くと、スーパーの袋を手渡してきた。
中を見ると、たくさんお菓子が入っていた。
『…これ何ですか?』
不思議に思って聞くと、
『あぁ、昨日の弁当のお礼だよ!ありがとなっ!』
っと淡々と話す店長。
『そんな…いただけませんよ💦』
『いや、もらってくれないと昨日の夜の勇気が無駄になっちまうだろ~』
よくよく話を聞くと、仕事が終わってからまだやっているスーパーに行き、カゴいっぱいにお菓子を入れてレジに行ったら、すごく変な目で見られて恥ずかしかったらしい…
確かにお菓子の中にはキャラクターのお菓子もたくさん入ってた。
これは変な目で見られるだろうなと思ったら、思わず吹き出してしまった。
『…ぷっ(笑)』
『笑うなよ~💧本当に恥ずかしかったんだからさ。まぁ、結笑ちゃんと食ってくれなっ!』
『すいません(笑)じゃあ…遠慮なくいただきますね』
ひとまずロッカーにしまって仕事に戻った。
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