地獄に咲く花 ~The road to OMEGA~
30XX年。地球。
そこは荒れ果てた星。
温暖化によって蝕まれた大地、海、空気。
そして20年前。生物学者ルチアによって解き放たれてしまった人喰いの悪魔…『人造生物』。世界に跳梁跋扈する彼等によって、今滅びの時が刻一刻と近づいている。
しかし。
その運命に抗う少年達がいた。
人造生物を討伐するべく、ルチアに生み出された3人の強化人間。ジュエル、ロイ、グロウ。
グループ名『KK』。
少年達は、戦う。
生きるために。
…失った記憶を、取り戻すために。
その向こうに待ち受ける答。
そして、運命とは?
※このスレッドは続編となっております。初めて御覧になる方はこちらの前編を読むことをお勧めします。
地獄に咲く花
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そういえば、と。
こういう戦争の話はローラにしたことがなかった事をジャックは思い出した。彼女はこの状況をどのように考えるだろうと、たちまち彼の中で好奇心が顔をもたげてくる。
彼女は周りと同じように、戦うべきだと言うだろうか。
それとも?
(…俺は何を期待してるんだろうな…)
ジャックはそう心の中で呟きつつも、今度彼女を見かけたら話しかけてみることにした。
因みに、ジャックはローラに対して特別な感情を持っていないが、嫌いというわけでもないようだ。お節介なのが時々嫌で外では悪く言っているが、彼女と話していても悪い気分にはならないというのが正直な所だった。
互いに喧嘩しているようになるのは昔からのコミュニケーション方法。彼女はいつも明るく、とても話しやすい幼なじみ。彼の中ではそんな認識だった。
ただ、最近彼女が会いに来る頻度が増している気がするのは気になっていた。
ゴーン……ゴーン……
砂漠に建っていると言われる無人の時計塔が18時を告げた。それを聞いた男達は集合するでもなくばらばらと帰路に付き始める。ジャックも同僚の2人と別れ、それに混じる…はずであったが。
「?」
地下の出入り口を出てすぐ、ジャックはその人影を見つけた。人影はジャックに気づいていない様子で、ただ俯きながら建物を背に寄りかかっていた。ジャックは何となくそこに歩み寄り、その名を呼んでみる。
「…ローラ?」
「きゃ?!」
ローラは悲鳴を上げながら、ビクンと震えた。
「…ジャック?!」
「おいおい、なにも悲鳴を上げるこたぁねえだろ。こっちまで驚いた。…で、お前こんな何もないところで何してんだ?」
「え、あ…うん、えっと。ちょっと買い物に出てきてて、」
「……買い物ぉ?お前ん家からこっちの方角は商店街と真逆の方向じゃねぇか。」
「っ!」
ジャックの単純な質問でローラは一瞬強ばったような表情を浮かべると、ぱっとジャックに背を向けた。そして、
「あ、あんたには関係ない事よ!」
半ば叫び気味にそう言った。
「そうなのか?まぁ別にいいけどよ…。」
ジャックはボリボリと頭を掻く。それからは2人の間で長い沈黙が続いた。しばらくして何か気まずいようなその雰囲気に耐えきれなくなったのか、ローラは勢いよくジャックに向き直り、言った。
「やっぱり、白状するわ。」
ローラはキッと怒ったようにジャックを見た。ジャックはその視線に少し気圧され、半歩後ろに下がる。
「な、なんだよ。」
しかしその後、ローラはジャックに向けていた視線をそっと下に落とした。そしてしばらくまた沈黙すると…ぽつり、と呟いた。
「……まってたのよ…。」
「は?」
「だから。
待ってたのよ。あんたを。」
それはかなり小さい声量ではあったが、しっかりとした口調だった。
「え…何で、」
「何?会いに来るのに必ず理由が必要?」
ローラはさらに鋭い目つきをする。それから、ジャックはいつもと違う彼女の空気に戸惑い始めていた。
「いや…そういうわけじゃ、」
「それならいいでしょ。ちょっと付き合ってよ。」
バッ
「おわ!」
突然ジャックは前につんのめった。ローラがジャックの腕を取り、そのままずんずんと歩き始めたのだ。
「いてて!おい、どこに連れてく気だよ!」
「…決めてない。」
「はぁ?!」
「いいから来てよ!」
ジャックはひたすら混乱しながら、彼女に無理矢理引っ張られていった。
ローラは宛てもないのにどんどん歩く。そして15分程歩いた結果、2人が辿り着いたのは公園だった。
公園と言っても遊具はあまりなく、錆び付いたブランコが2つ時々風に吹かれてはキィキィと音を立てているだけで、何となく寂しい場所だった。…そこで、
「コラ、いい加減離せ!どこまで行く気だお前は!」
ジャックは掴まれている腕を軽く振る。それでローラはやっと足を止めた。ジャックの腕を離し、そこに立ちすくむ。
「…あ…。ごめん。」
「話したいことがあるんだろ?だったら堂々と言えばいいじゃねぇか。」
すると、ローラはまた俯いた。
「…それが、よく分からないの。」
「一体どうしたってんだよ。お前さっきからちょっとおかしいぞ。」
ローラは少しおぼつかない足取りでブランコへと歩き始める。そしてブランコの目の前に立つと、ストンと座った。それを見たジャックは、その隣のブランコに座った。
長い間の後、ローラは話し始めた。
「今月、またあったでしょ?あの、失踪事件。」
「…ああ。あったな。一週間前のやつだろ?」
「あれね、私の友達だったの。」
「!…」
ジャックは少し息を呑んだ。
「ジャックも会ったことがあるわ。もう覚えてないかもしれないけど。」
「…俺が?」
ジャックは難しい顔をする。それを、ローラはじっと覗き込んだ。
「よく思い出して。結構前に…私とあの子の、どこに埋めたのか分からなくなったタイムカプセルを掘り出してくれた時があったでしょ。」
「…タイムカプセル…」
ジャックは何の気なしに空を見上げてみる。すると、まだほんのり明るさを残した夕焼けの空に、ぽつんと1番星が輝いていた。それを見た瞬間、ジャックは思わず「あ…」と声を出した。
「あの時か。」
「思い出した?」
「確かあの日も、1番星が見えた。」
「…そう。朝私があんたを呼びつけて。それから夕方まで殆ど休まないでずっと探してくれてたもんね。」
ローラも懐かしそうに空を見上げた。
「あの子がへとへとになってるあんたを見かねて、もういいって止めようとするのに…あんたは探すのを止めなかった。何でだったか自分で覚えてる?」
「さあ、どうだったかな。」
ジャックはうっすらとその出来事を思い出していた。3年前、蒸し暑い夏の夕暮れ。丁度1番星が見える頃のことだった。
……ザクッ!
ザクッ!ザクッ!
「ジャックさん…もういい、もういいですから……」
とある崖のふもと。自分がスコップで土を掘る音を規則的に立てる中、後ろから悲痛な少女の声が響いた。…次に、
「ジャック、やっぱりもう無理よ…これじゃ見つかりっこないわ…。」
ローラの諦めきった声が聞こえた。
確か、タイムカプセルが行方不明になったのは大雨で起こった土砂崩れに巻き込まれてしまったからだったと思う。当時埋めていた所には多量の土砂が覆い被さっていて、見つけるのは殆ど不可能に近かった。
しかし、それでも自分はひたすら土砂を掘り続けていた。何故だったか?とにかく、汗だくになろうと、体が段々言うことを聞かなくなろうと、ただ目的の物を探すのに専念していた。…しかしその時、
「っ…」
自分は不意に全身の力がふっと抜ける感覚にみまわれた。たまらず膝が折れ、地面に手をつく。どうやら体力にも限界というものがあるらしかった。
「ジャックさん?!」
名前は忘れてしまったが、あの少女が自分のもとへかけ寄ってくる。
そして、言ってきた。その時の必死そうな眼差しは、少し印象的だった。
「本当に、もう大丈夫です。……だから…お願いですから…もう休んで下さい。」
年の頃は10代前半だろうか。内気そうに潤んだ青い瞳と、透き通った肌。三つ編みに結った艶のある長い栗色の髪。その少女を一言で表すと…美少女だった。
そこで回想を一旦終えると、
ジャックは思わず呟いた。
「あいつの妹だったのか…」
「え?何?」
「いやな。…俺の仕事の同僚で、一週間前妹が失踪したっていうやつがいたんだ。」
ジャックの頭に浮かんでいたのは、妹の顔とは似ても似つかない、そばかすだらけのラースの顔だった。
「それって…じゃあ、リリィにはお兄さんがいたってこと?」
ローラが身を乗り出してくる。
「そういうことだろうな。他に最近失踪したやつはいない。」
「…そうなんだ…。お兄さん辛いだろうね…。」
また2人で空を見上げた。気がつけば辺りはすっかり暗くなり、空には満点の星が輝いていた。
そこでローラが言う。
「あの子、リリィね。
…あの時からあんたが好きだったのよ。」
…がらがらがちゃん!
突然大きな音が鳴った。見れば、ジャックがブランコから落ちて地面に背中をぶつけていた。
「…驚いた?」
両足だけブランコに引っかけているジャックを見て、ローラはくすくすと笑う。そしてジャックはよろよろと立ち上がった。
「そんな話聞いてねぇ…第一、あの子とはその後会ってないんだぞ?!」
「内気だったから。会いに行くのも恥ずかしかったみたい。」
ローラはキィとブランコを揺らす。
「でも、リリィはあたしに会う度、あんたの話ばっかり。どうやったら想いを伝えられるか…私はそんな相談の相手をいつもしてたのよ。」
ジャックは髪をぐちゃぐちゃかき回して、しばらく考え込む。…それから3分程経ってやっと絞り出した言葉は、
「何で…?」
その一言だけ。実に抽象的な言葉だ。しかし、ローラはすぐにその意味を汲み取った。
「何であの子があんたを好きになったかって?」
ジャックは沈黙で答えを示した。
「あんたが、あの時あんなこと言うからよ。」
「……あんなことって、何だよ。」
少し涼しい風が吹き、2人の髪を揺らす。その時ローラは風の音に紛れて小さく呟いた。
「やっぱり、覚えてないんだ。」
その後、ローラは話し始める。
丁度、先ほどの回想の続きの部分だった。
膝をついたジャックに、少女…リリィは訴えかける。しかしジャックは何も言わずに、スコップを棒代わりにしながらぎこちなく立ち上がった。
「ジャックさん!」
「…うるせえな。ここまできて諦められるかよ。」
ザクッ!
そして、尚もスコップを地面に突き立てる。
「大事な『思い出』が入ってるんだろ。自分の人生を変えた一生の宝物……お前、そう言ってたじゃないか。」
「…でも、このままじゃ…」
リリィの声は震えていた。小さく俯くその姿は、まるで何かに怯える小動物のようだった。ジャックはそれを見て、
ふわり、と。
リリィの頭を撫でた。
「!…」
リリィが思わず顔を上げると、その目には涙が溜まっていた。すると、ジャックはふっと微笑む。
「…俺は大丈夫だ。お前は何も心配しなくてもいい。お前の『思い出』は、きっと俺が見つけてみせる。」
ローラの話では、その微笑みは今までに見たことのない、とても暖かなものだったという。そしてジャックは、最後に短くこう言った。
「だから、泣くな。」
満天の星空の下、涼しく澄んだ空気が流れる。どうやらローラの話はそこで終わったようで、彼女はジャックがどう反応するか待っているようだった。
そして彼から発せられたのは…
「…で?」
一文字だけだった。
「で、って?」
「あんなことっていうのはなんだよ。」
ジャックの低い声に、ローラはきょとんとした顔をする。
「今話したじゃない。」
「まさか『泣くな』だけで?」
その場がシンとした。
「……うん。だめ?」
「おい!そうだとしたら、俺はただあの子を泣き止ませようとしただけだぞ?!」
ローラは平和そうにゆるりとブランコを揺らした。
「あんな笑顔見せられたら、仕方がないんじゃない?」
「…マジかぁ…?あの時は相当疲れたんだぜ。一生の宝物が入ってるっていうから掘り出してみれば……中身はただの消しゴムときたもんだ!」
ゲシッと土を蹴り、ジャックは少し大きめに揺れる。
「だからもういいって言ってたのよ。…宝物には違いないけど。あれはあたしがリリィが初めて会ったときにあげたものだから。」
「あたし以外に友達がいなかったあの子にとっては、とても大切なものだったのよ。」
ジャックが乗っているブランコは、ギィギィと音を立てながら段々その動きを小さくしていった。
「ふーん…そうなら別にいいんだけどな。」
「っていうか、そうでなくちゃ困るよね。あははは!……」
ジャックの疲れたような口調に、ローラは思わず笑いをこぼす。しかしその笑いは次第に小さくなっていき、数秒ほど立つと何も聞こえなくなった。
ふっ、とジャックが隣を見ると。
そこには、少し俯いている彼女の姿があった。その顔は垂れている髪で見えなくなっていた。
「………でもね。
もう、いないの。あの子。」
ぽつり、と彼女は呟いた。
何の感情もこもっていない無機質な声。だが、その肩はよく見れば震えていた。
「…ローラ。」
「あの子はあんたのことが好きだった。本当に好きだったの…。けど何の想いも伝えられないまま……消されてしまった。
せめて、伝えられれば良かったのに。あたしはあの子の背中を押して上げることが出来なかった。…あの子に何もしてあげることが出来なかった!」
彼女はぎゅっとブランコを握りしめた。
「そう思うと、無性に悔しくて。悲しくて。何故か…あんたに会いたくなったの。」
「!」
「だから、今日は待ってた。でも何を話していいか自分でよく分かってなかったから…半分は本気じゃなかったわ。」
ローラはゆっくりと顔を上げると、泣き顔を隠すように弱々しく笑みを浮かべて見せた。
「やっぱり帰ろうかどうしようか悩んでたのに、いきなりあんたが声をかけてくるんだもん。驚いちゃった。」
「…そう、か。」
ジャックはこのような重い雰囲気は苦手らしい。どうしていいか分からないといった表情をしていた。
「意味もなくこんなところに連れてきて、ごめんね。あたしはただ…あんたに会いたかっただけだったの。」
ローラはそう言うと、静かに立ち上がる。そこでジャックが何も言わなければ、彼女は公園を立ち去っていたのだろうが…
「…意味は、あった。」
ジャックのその一言で彼女はピタリと動きを止めた。そしてゆっくりと自分の隣を見る。すると、彼が真っ直ぐとこちらをを見つめていた。
「お前が俺に伝えたじゃないか。」
彼は静かにそう言った。
「…お前が俺に伝えた。それで、俺はリリィのことを記憶に留めることが出来る。何も知らないまま忘れ去るよりは、ずっといいだろ。」
彼は空を振り仰ぐ。しかし、ローラはまだ悲しげな顔をしていた。
「でも…もう一度言うけど、あの子はもういないのよ?たとえ覚えていたとしても、もう会えない。それじゃあ、その記憶は何の意味も持たないわ…。」
すると彼は、もう一度視線をローラに戻す。そして次の瞬間
ふっと微笑んだ。
「!」
ローラは思わず息を呑んだ。何故なら、その微笑みは見たことがあったからだ。
この瞬間。あの日の彼と今の彼が、ローラの中で重なった。
「何も今から会えないと決めつけるこたぁねえだろ。本当は失踪事件に巻き込まれたんじゃないかもしれない。」
「えっ?」
「家出とかな。腹が減ったらひょっこり出てくるなんてオチ珍しくねぇぜ?くっくっく!」
それは、本当に下手な…
しかし。
彼の精一杯の励ましだった。
ローラは少し唖然としていたが
それから自分の心の中に何か暖かいものがこみ上げて来るのを感じた。
「ジャック…」
「ん?」
ゆっくりと、ローラはブランコに座り直す。見れば、彼女からはさっきまでの悲しみに彩られた表情が消えていた。
「前から分かってるけど…あんたって、本当に馬鹿よね。」
カチン!という効果音が聞こえて来そうな程、ジャックはその一言に反応した。
「…っな!もういっぺん言ってみろ!」
「何度でも言ってあげるわよ。大体あんたは物覚えが悪くて、小学校から今まで全部成績はビリッケツだったし。」
「っ!」
「寝坊はするし、仕事もサボるし、いつもケンカばっかりしてるし。」
「…てめぇ…言わせておけば…」
ジャックはわなわなと拳を震わせる。しかし、ローラの言葉にはまだ先があった。
「でも。あんたには、誰かのために頑張れる力がある。誰かを励まして、力付ける優しさもある。」
そして、彼女は
にっこりと笑った。
「あたし、あんたのそういうところが好きよ。」
それは、とても柔らかな笑顔だった。
「………。」
直後、さっきまでの勢いはどこかへ行ってしまったらしい。ジャックは、ローラの花の様な笑顔にぐっと息を詰まらせ、その場で固まってしまった。…しばらくして、彼はやっとそこから目をそらすと、ぼそりと呟いた。
「……それは、どうも。」
その後自分の顔に熱が籠もったような気がして、ジャックは思わず完全に彼女から顔を背けた。実際自分の頬に触ってみると本当に熱かったので、ますます焦りが起きる。
「ジャック?」
(…まずい…不覚だった……)
「照れてるの?」
「…照れてねぇ!」
ローラはくすくすと笑うと、
「はいはい、分かりました。全く…これくらいのことでいちいちそんなに怒らないの。」
と、子供を諭すような口調でからかう。ジャックは「うるせぇな…」と返すともう何も言えなくなり、その内1人で頭を抱えて悶え始めていた。
すると、その時。
「…♪~」
ジャックの隣から、細く、綺麗な歌声が聞こえてきた。
「…何歌ってんだよ。」
ジャックは横目で歌っているローラを見ながら、ぶすっとした口調で聞く。すると、ローラはとても意外そうな顔をした。
「知らないの?この曲。有名なのに。」
「さぁ。俺は音楽の事はよくわかんねぇからな。」
「常識として覚えておいた方がいいわ。ベートーベン作曲交響曲第九番…『第九』よ。」
「ベ、トベン?」
ジャックの可笑しな発音に、ローラは少し眉を潜める。
「まさかベートーベンまで知らないなんて言うんじゃないでしょうね?」
ジャックはとぼけるように、ふいと上を見た。
「聞いたこともねぇな。」
「……なら覚えといて。中世ヨーロッパの偉大な作曲家よ。」
それからローラは歌の続きを歌い始める。ジャックはしばらく、ただ星空を見ながらそれを聞いていた。拙いドイツ語が旋律に乗って、その公園に響いていた。
「なぁ、ローラ。」
「ん~?」
「俺達は…街の皆は…これから死ぬしかないと思うか?」
「…どうして?」
「今から2、3年もしないうちに『塔』を完成させて…その後『国』との戦争が始まる。勝ち目のない戦いだ。」
「……そう、みたいね。」
「戦争が中止になったとしても、これから俺達は『国』にずっと従い続けることになる。そうなったらやがては全員が行方不明になるか、それとも殺されるか。…そうだろ?」
「……。」
「ローラ。聞かせてくれないか。お前はこの状況をどう思う?」
その問いに、ローラは静かに、考えるように目を閉じる。そして沈黙が生まれた。1、2分程経って答えが返って来なかったので、ジャックは質問の内容を変えることにした。
「じゃあ、仮に未来で死ぬしかないのだとしたら、お前だったらどうする?…戦うか。それとも『国』に頭を下げ続けながら、なるべく長く生きるか。
……俺だったらこういう時、どうしたらいいのか分からない。」
すると、
しばらくしてローラは口を開いた。正面を見据えて、少しはっきりとした口調だった。
「私は、死にたくない。」
「!」
ジャックは、視線を隣に移した。
「私、こんな所で死にたくない。だって夢があるもの。」
「夢?」
「そう。…夢。」
するとローラはブランコの上に立ち、星空に向かって高らかに宣言した。
「私の夢は、100歳まで生きること!
その間に一杯笑って。泣いて、怒って……喜んで。色んな日常を過ごして、色んな幸せを感じたい。
だから、私だったら自分の手でその夢を叶えることに専念するわ。死という袋小路から抜け出すために、自分に出来る努力ならどんなことでもする。
これが今の私の答え。」
ローラはにこりとジャックに笑いかけた。しかし、ジャックは曇ったような表情で返す。
「俺にはその『自分に出来る努力』が見つからないんだ。」
「ジャックは、どうしたいの?…生きたいのか、そうでないのか。それがはっきりしないから、自分が起こすべき行動が見えないんじゃないの?」
「……そりゃあ、生きたいけどよ。」
ジャックが両手を頭で組むと、ローラはそれをぐっと覗き込む。
そして、訊いた。
『…本当に?』
その時。ジャックは何か妙な、微かな違和感を感じた。何に対しての違和感なのか?それは、はっきりと分からない。
「…ああ。」
ジャックは心に何かが引っかかったままそう答える。その声は少し掠れていた。
「それなら大丈夫。」
涼しい風が、2人の間を吹き抜ける。
「きっと私達は生きる。生きていく。そう信じれていれば……きっと。」
ある静かな夜に。儚く、少女の言葉が空に消えた。
――これが悔恨の始まりで、
悪夢の幕開けだったのかもしれない。――
闇の中で、『彼』はそう思う。
次の日からは、また同じ様にジャックの日常が始まった。答えを見つけることが出来ない自分から目を逸らすように。仲間と会ってはいつものようにふざけあい、時間になれば仕事に打ち込む。時々ローラの差し入れを受け取っては食べる。仕事が終わり家に帰ると、1人甘い夜に身を任せ、微睡みの中で眠りにつく。
この繰り返しは最後の夢の名残だった。
そして、時は満ちる。
それは『塔』の地下部分が完成した頃のことだった。
いつもの賑やかな昼の商店街。真っ青な空に向かって、ジョンは腕を伸ばし、うんと背伸びをした。
「あぁ、今日でやっと一段落かぁ~!」
「本当にやっとだぜ。こんだけ働いてまだ地下しか完成してねぇとはな…。」
ジャックがぼやくと、横からラースが楽しそうに顔を出す。
「でもよかったじゃないスか。地下だけでも、いざという時は避難所としてすぐに使えますから。水も食料もたっぷり積み込みましたし。ホントに僕達頑張りましたよね。」
「よく言った、ラース。…俺達はよくやった!何しろ殆どの家から地下へ直通で行けるようにもしたんだからな。」
そんな2人の掛け合いを、ジャックは少しぼうっとしながら軽く聞き流していた。言い換えれば、その言葉に関してあまり深く考えずにいた。
…ジャックだけでなく。
その場にいる誰もが考えていなかった。
その避難所を、今すぐ使うことになろうとは。
「……?…おい、ジャック。」
始めに気付いたのは、ジョンだった。
「何だよ?」
「あれ………何だ?」
ジョンは、ゆっくりと空を指さした。
その先にあったのは、遠くに見える数百程の何かの群だった。
ジャックは目を凝らしてみる。初めは、鳥に見えた。何故ならそれらは翼で空を飛んでいるからだ。
しかし、それらがこちらに近づいてきてはっきりと形が分かるようになると、それはどうみても鳥ではないという事が分かった。
その姿に、ジャックは絶句する。
「何だ……ありゃあ……」
バタバタバタバタ!!
それらは、一斉に街の上空を駆け抜けていく。真っ白な人型の体。背に生やした歪な翼。異様に長い手足。その外見全てが、人間の持つ常識の範囲を越えていた。たちまち、街全体は静寂に包まれる。
少しすると、群のうち何匹かがこちらに物凄い勢いで下降した。それから起こった出来事は、あっという間のことであった。
ザシュウ!!!
「がっ!」
という2つの効果音が、ジャックのすぐ横で同時に鳴った。
「え…?」
だからジャックはそちらを見た。
一体何が起こったのかをその目で確かめるために。どうしてさっきまで隣で普通に話していた彼が、突然あんな可笑しな声を上げたのか、頭だけではすぐに理解できなかったから。
彼は、すぐそこで血塗れになって倒れていた。肩から脇腹へかけて体を引き裂かれ、そこら中に心臓や腸などと言った内臓をばらまいている。
「………ジョン。」
ジャックはぽつりと彼の名を呼んだ。しかし、もはやただの肉塊と化してしまった彼には、もう何を言うことも出来ない。
その肉塊の少しだけ向こう側には、あの生物が、こちらに丸めた背中を見せて立っていた。その真っ白な手は、真っ赤な血で染まっていた。
「…スミスさん…」
そして、それはゆっくりと首だけを捻りこちらに振り返る。
のっぺりとした顔面には、耳の下くらいまで裂けた口がある。そこに存在する大きすぎる犬歯には、手についているものと同じ色をした液体がべっとりとついていた。
それは、笑っているようにも見えた。
「あ…ぁ、あぁあ…」
ラースは、そこに立ち尽くしたままガタガタと震え出す。あまりに突然の事に正気を失いかけているようだった。ジャックがそれにはっと気付いた…その時。
「いやああぁぁ!!バケモノおお!!」
少し遠くから、甲高い女性の悲鳴が上がった。どうやらこことは別の場所でも、同じ事が起こったようだった。
それをきっかけにあたりは騒然となった。人々は悲鳴を上げ滅茶苦茶に逃げ惑う。そして上空の大群からは、やがて次から次へと新たな個体が地上に降りてくるようになり、その度大きな悲鳴が上がった。
その中ラースは立ち尽くしたまま、今さっき出来たばかりの肉の山をまだ見つめていた。ジャックがその腕を引くも、一向に動こうとする様子はない。
「ラース!ここから逃げるんだ!!」
「……」
「おい、聞いてんのか?!殺されるぞ!!」
ラースは呼びかけに応えない。
その代わり、先程まで右手に持っていたスコップをゆっくりと両手で持ち直し、構えた。その小刻みに震える刃先は…目の前で不気味に笑っている生物に向いていた。
「おい…ラース…?」
「……何なんだ。…何でなんだ?」
生気がこもっていない言葉と同時にラースはよろり、と1歩踏み出して。
「何で…何で、何でなんでなんで!…俺達が、一体何をしたって言うんだぁあ!!」
憎悪にかっと目を見開く。
そして、
ダッ!
彼は地を蹴った。
「よせ!ラース!!」
ザバ!!!
「ぅあぁああーー!!!」
悲鳴と、鮮血の雨。
「―――っ!!」
その光景は、一瞬にしてジャックの網膜に焼き付いた。スコップが地面に落ちる鈍い音とほぼ同時に、ラースの小さな体は跳ね返されるようにして後ろの方に飛ばされた。
ジャックはそこへ走り、彼の体へと両手を伸ばす。そして、
どっ!
何とか背中を受け止めた。
彼の体からはすぐ力が抜けていくようで、ジャックが感じる重みはどんどん増していった。
「ラース、…ラース!!」
ジャックは必死に、彼の名前を呼ぶ。胸に大きな穴が空き、そこからどんどん赤い川が地面に流れていくその光景は実に無残なものだった。彼は光を無くした瞳で、ぼんやりとジャックの顔を仰向けの状態で見上げた。
「ぁ、あ…ジャックさん…。」
「ラース!しっかりしろ…!」
「ははは……い、威勢良く飛びかかってはみたものの…やっぱり、僕なんかじゃ…ダメ、でしたね…ぐっ、ゴブ!!」
「!!」
彼が激しく吐血したことで、ジャックの精神状態はより一層乱れていく。
「お前はもう何もしゃべるな…!いいか、今医者に連れて行くからな!」
「いや、たぶ…、もう無理です。それよりも、…ジャックさんは、早く逃げて…くだざい」
「馬鹿!お前はまだ生きているじゃないか!」
グチャッグチャッ
ついさっきラースを『突き飛ばした』生物はというと、食事をしていた。…ジョンの頭を食べていた。頭は半分かじり取られていて、既に原型を留めていなかった。
「ジャックさん…僕達は、こんな風に終わるはずじゃなかった筈なんです。こんな風に、怯えながら人生を送って…死ぬ筈じゃなかったんです。」
「しゃべるな!死ぬなんて言うな!」
しかし、まるでジャックの言葉が聞こえていないかのように、ラースは続けた。
「…これは僕達にとっての本当の人生ではないんです。…理由なく身近な人が消えてしまったり…それで戦争を起こそうとしたり。そんなのは、僕は…違うと思うんです。
だからジャックさん、どうか生きて下さい。これから本当の人生を見つけるために。生きていて良かったと……幸せだと、いつか言えるようになるために。
先輩の彼女……守ってあげて下さい…ね…」
その後
ラースは黙った。
そして彼は手足をぐったりとさせ、動かなくなった。
「ラース……?」
もちろん返事もしない。その灰色の瞳はさっきまでジャックに向けていたが、今はそれを通り越してどこか遠くを見つめているようだった。
激しい喧騒の中。
ジャックは彼を支えたまま、そこに立ち尽くした。
(何だ……これ)
グチャグチャ…ブチッブチ!
生肉を喰いちぎる気色の悪い音が、まだジャックの耳を突く。普通の日常では殆ど耳にする機会はないであろうその音は、急激な吐き気を誘った。
「……ぐっ」
しかし、その時。
ヒュッ
空気を切る音が、後ろから聞こえた。
「?!」
とても嫌な予感が背筋を駆け抜け、ジャックは少し右に動いた
次の瞬間。
ザッ!
「――うっ!」
左肩に鋭い痛みが走った。ジャックは思わず、ラースの体から手を離してしまう。
ドサッ!!
彼は地面に投げ出される。だがジャックはそれを気にすることが出来なかった。後ろを振り返って見ると
すぐ目の前で、あの生物が首をかしげていたのだから。
「う…あ」
ジャックは乾いた声を上げながら、後ずさった。
しかし、後ろからは食事の音が聞こえてくる。挟み撃ちにされたことに気付くと、ジャックの体は自然と震えた。歯はガチガチと鳴り、瞳孔は散大した。
殺される。
頭にその言葉で埋め尽くされた、その時。ジャックの目に飛び込んできたものがあった。
「!」
ジャックは息を呑む。それは、ラースの死体のすぐ傍に落ちていた…スコップだった。それからは恐怖のせいだろうか、ジャックはある種の『錯覚』に見まわれた。
その薄汚いスコップから、ラースの声が、はっきりと聞こえてきたのだ。
あまりにもはっきりしていて、彼にはスコップが喋っているようにさえ、思えた。
――どうか、生きて下さい。
これから本当の人生を見つけるために――
口の中が、カラカラに乾いていく。彼は理解した。目の前にただ在るそれが、自分に残された最後の希望であることを。
――生きていて良かったと
幸せだと、いつか言えるようになるために――
ジャックは震える両手で、
地面のスコップをゆっくりと取った。
そのまま腰を上げ、スコップを敵に構え、突き刺す。ジャックは、もうそうするしか生き残る道はないと思った。だから、それを実行するはずだった…が。
「…あ…」
腰を上げ、振り向いたところだった。ジャックの視界は、とても大きな口で埋め尽くされていた。唾液でベトベトの赤い舌も、黄ばんだ犬歯も、真っ暗な喉の奥までよく見える。今はこうして時が止まっているが、時が動き出して0.5秒も経てば、自分の顔がかじり取られてしまうことは簡単に予想できた。
考えている暇は、なかった。
「ぅおあああぁぁぁぁあ!!」
腹から湧き上がる、悲鳴とも雄叫びともつかない叫びをあげ、ジャックはスコップを横に勢いよく振った。
…結果、
ガ!
大きく傷をつけたわけではないが。スコップの柄は、生物の巨大な口を塞いでいた。突然堅い物が口に入ってきて、それは少し戸惑っているようだった。
今しかない、とジャックの本能は告げた。
ダッ!!
ジャックは本能に従った。動きを止めている生物の脇をすり抜け、後は駆ける。ひたすら足を前に出し、ただそこから離れることだけを考える。
走って走って…走った。
ジャックは東の商店街を抜ける。そして着いたのは、街のほぼ中心だった。
そこでは、数十人の男達が、各々持っているスコップや鉄パイプなどで必死に戦っている。その内の何人かは切り裂かれ、死体になって次々とそこに転がった。
その脇には、女達と子供がいる。目の前で上がる赤い飛沫に、悲鳴をあげたり涙を流したりしているその姿は、見ているだけであまりに悲惨だった。
と、その時。ある背の高い男が額から血を滴らせながらひときわ大きな声を出した。
「皆、『塔』に向かえ!!『塔』に向かうんだああー!!」
周りが少しだけ静まり返る。それは、男の最後の言葉だった。その後、男は一瞬で頭を砕かれ死んでいった。
しかし逃げ惑っていた人々の動きは、そこから変わり始めた。
「『塔』…そうか!」
「そうよ、そうだわ!!あそこなら!」
皆口々に言うと、建物の中へと逃げ込む。そこで、ジャックは全ての家と『塔』が繋がっていることを思い出した。
(あそこしかないか!…)
そう思い、ジャックは自分から一番近い家に足を向けようとする…が。
「ジャック!」
急に後ろから聞こえた高い声に、思わず振り向いた。
そこには、ローラが立っていた。肩は少し上下していて、栗色の巻き毛は汗で頬にくっついている。ここまで走ってきたことが一目で分かった。
「はぁ、はぁ…ジャック…やっと、見つけた。」
「ローラ!こんなところで何してるんだ!早くお前もどっかの家から――」
その言葉が終わらないうちに。
ローラはジャックの右手をきゅっと両手に握った。
「…おい?」
「ね、ジャック。『塔』よりももっと安全な所があるの。…今、皆もそこに向かってるわ。」
「は…?」
突然のことに、ジャックからは自然と変な声が出た。
「何言ってるんだ?そんな場所無かっただろ!そのために俺達は『塔』を建設したんだ!!」
「今まではなかった。けど、今出来たの。」
それから、ローラは真剣な眼差しでジャックを見た。その哀願するような潤んだ瞳にジャックは引き込まれてしまう。
「ジャック、来て。私と一緒に。ここにいたら…間違いなく殺されてしまうから。」
最後の言葉の意味が、はっきりと掴めなかった。しかしそれを考えている暇もなく。
ぐいっ
ジャックは手を引かれた。
「こっちよ……来て!」
「おい、ちょっと待てよ!!」
ジャックは訳も分からないままローラの少し後ろを走った。周りの住民が建物に吸い込まれていく脇で、2人だけは大きな道を行った。空を舞うあの生物に見つからないように時々建物の陰や細い裏道も使いながら、そのまま目的地を目指す。
その途中。
「はぁ…は…ぁ、」
「ローラ…大丈夫か?お前、俺に会いに来る前も走ってたんだろ?」
「もう少し、なの。もう少しで着く…早くしないと…」
「一体どこなんだ。『塔』よりも安全な場所ってのは。」
「…っ…閉ざされた門の…」
ローラがそう言いかけた、その時だった。
「ウゴあぁああアァァ」
『!!』
突然そこに奇妙な声が響き渡り、2人は体を強ばらせる。後ろを見ると、空から1体が勢いよくこちらに向かってきていた。
「ひっ…!」
ローラが小さく悲鳴を上げるが、ジャックはすぐさま行動に出た。
「伏せろ!!」
ジャックはローラの背中をぐっと抑え、しゃがみ込む。すると、ローラも思わず頭を両手で庇いながら腰を落とした。
ゴゥ!
すると、それは2人の頭の上を勢いよく通り過ぎる。その後ゆらりと地面に降り立つと、ゆっくりと2人に振り返った。
「ジャック…」
「ローラは、そこでじっとしてろ。」
ジャックは低い声で立ち上がると、すぐ横にある建物に取り付けてあるパイプをぐっと掴む。そして、それを思い切り引いた。
「くっ…うおおお!!」
ミシミシミシ…バギン!!!
大きな金属音を立てて、重い鉄パイプは外れる。
「…これ以上、やらせるかよ。」
ヒュッ
ジャックはそれを軽々と片手で振り、鋭い眼差しを前方に向ける。その瞳には、もう怯えの色は見えない。代わりに悔やみと、怒りに燃える炎があった。
「これ以上!!」
瞬間的にジョンとラースの面影がフラッシュバックし、声が悲しみで少し震えた。溢れ出しそうな涙の粒をジャックは必死にこらえる。後ろではローラが不安そうにジャックの背中を見つめていた。
「シャあああぁぁ…」
生物は大きな口を開け威嚇の声を上げた後、おぼつかない足取りでこちらに近づいてきた。ジャックはぐっと息を呑み、鉄パイプを構える。
そして、人差し指を少し動かした。
「…来いよ。」
その後、一瞬だった。
ゴキッ
関節の外れるような鈍い音と共に、ジャックの胸を目掛けて何か尖った白い物体が、まるでゴムが伸びるように高速で向かってきた。
「!」
その物体がまともにジャックの目に留まったのは、自分とそれとの距離が約5cmになったところであった。
このまま自分が何も動作をしなければ、間違いなくそれに心臓を貫かれて死んでしまうだろう。
という思考に辿り着く前に、ジャックの体は勝手に動いた。
「っぉお!」
ガキィン!!
ジャックは体を少し捻りながら攻撃をかわし、同時に鉄パイプで、向かってきた物体を弾き飛ばす。
ゴッ!
弾かれて壁に叩きつけられたそれはとても長く伸びていて、元を辿ってみると5m程離れた所にいる白い生物の肩に繋がっていた。即ち、この物体はあの生物の腕。尖っているのは大きく鋭い爪だったのだ。
しかし、ジャックがそのよく伸びた腕に関心してじっくり観察する…などということはなかった。彼はすぐさま勢いよく駆け出し、攻へと転じる。
「はああぁ!!!」
少し戸惑っている生物の頭に、鉄パイプを無我夢中で振り上げた。
ゴシャ…ッ!!
ジャックの鉄パイプは生物の首の付け根に嫌な音を立ててめり込んだ。まるで人間の柔らかい首筋を殴ったような気持ちの悪い感触に、ジャックは眉をしかめる。
生物は1度ビクンと痙攣してよろけた。…だが、まだ倒れはしていない。
完全に動かなくさせるには、ジャックはもう1度殴らなくてはならない。もう1度、その右手にあるキョウキを振り上げなくてはならない。
さもないと、殺される。殺らなければ、殺られてしまう。
「あああぁぁぁぁ!!」
ガッ!ドガッ!…バキッ!バキッ!!
振り上げ、振り下ろす。振り上げ、振り下ろす。
何も考えずに機械的に。ただその動作を繰り返す事だけに専念する。それが唯一の、自分の精神を維持する方法だった。
何も考えてはいけない。今自分は、1つの生命を殴り殺しているなんて感じてはいけない。
ただひたすら、ひたすらに同じ所に狙いを定めて。
振り上げて、振り下ろす。振り上げて、振り下ろす……
ドガッ!メキッ!グシャッ!!
……ブシュウウゥ!!
動作を繰り返していると、何度目かで派手に血飛沫が上がった。
気がついて見れば、目の前のそれは首から上をなくしていた。その断面から血の噴水が吹き出ていて、ジャックの頬には少し飛沫がついていた。
…どさっ
そして、それは地面に倒れた。倒れた後は隣に転がっている首と仲良く血溜まりを作って、二度と起きあがることはなかった。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
ジャックは鉄パイプを握りしめ、しばらく肩を上下させていた。
「――ジャック…」
ぽつりと、後ろからローラの声が聞こえる。が、ジャックは振り向かなかった。彼はただ、自分の赤く汚れた両手と肉の山を見比べながら、立っていた。
「…ジャック!!」
そこでローラがもう一度呼ぶと、ジャックは少し反応した。彼は首だけ動かし、ゆっくりと後ろの方をみる…はずだったが。
ふわり
「!…」
突然、自分の背中が柔らかい感触が包み込まれ、ジャックは思わず息を呑む。その温もりから、今自分の後ろで何が起こっているのかは見なくても分かった。
「…ローラ?」
「ジャック…大丈夫?どこも、怪我はない?」
ローラは、ジャックの背中を抱きしめながら、細い声で訊く。するとジャックは感情のこもっていない表情で、自分の体に触れている彼女の小さな両手を見つめた。
「…あぁ。俺は大丈夫だ。
それよりローラ、見たかよ。……今の。俺が殺したんだぜ?殴りすぎて…首が飛んだじまった…は、ははは」
ローラはジャックの体全体がカタカタと震えているのをその身で感じると、抱き締める腕にぎゅっと力を込めて、優しく話しかける。
「いいの…いいのよ。ジャックが無事ならそれで。それに、あんたは私を守ってくれた…。」
ジャックはその温もりを感じると、脱力したまま上を見上げる。いつもの、真昼の真っ青な空だけを見ていると、今この地上で起こってたことが、ジャックには信じられなかった。
「嘘、みたいだ。俺にも命ってモノが奪えたんだ……俺は、悪い夢の中にいるのかもしれない……
――でも。」
「?」
ジャックはローラの手にそっと触れる。ローラは思わず、彼の大きな背中を見上げた。
「これは、きっと現実なんだな。お前のこの手の平は…間違いなく本物だ。」
そしてそのまま、ジャックはローラの手を握りしめた。まるで彼女の体温によって自分の存在を確かめるように、強く。だけど優しく。
すると、それに敏感に反応するように、ローラは微かに体を震わせた。
「……お前はこんな俺を見ても、俺の身を心配するのか。」
「当たり前じゃない。昔からあんたは私に心配ばかりさせて。だから…もう慣れてる。」
ローラがか細い声で答えると、ジャックはゆっくりと彼女の腕をほどく。そして正面に向き直って、言った。
「何で…お前はそこまで俺を見ていられるんだ?」
そう真っ直ぐと問ってきて、ローラは少し息を呑んだ。
ジャックは続ける。
「さっき。俺は、ああするしか無かったとは言え…1つの命をあんなに酷たらしく殺したんだ。
あれは人じゃなかった。突然やってきて、俺の仲間や街の皆を殺して…許せなかった。だから俺は、殺してやろうと思った。…殺されて当然の存在だったんだ!
でも――なんだろうな?この感じは。
どうも、俺には『自分が人を殺した』ようにしか思えない。
俺はさっきまでただ汚い、残虐な『人殺し』をしていた。……そんな風にしか、思えないんだ。」
「お前は平気であれを最後まで見ていられたんだ。それが今、俺にとって不思議でしょうがないな。」
ジャックは目を伏せ、自分の服にべっとりと付いている返り血を見る。それは心なしか、少し自嘲気味な笑みを浮かべているようにも見えた。
しかし、
「…違うわ。」
ローラは言った。
はっきりとした口調だった。
「?…」
「平気なんかじゃ、なかった。」
そして、今度はローラが真っ直ぐ見つめ返す。ジャックはそれに少し困惑した様子だった。
「じゃあどうして1人で逃げなかった…?俺は、」
「…そうじゃないのっ!!」
言葉の途中で、とても大きな声が狭い路地裏に響き渡った。突然のことに、ジャックは目を丸くすることしかできず、その間、ローラはせきこむように続けた。
「平気じゃなかったわよ!怖かった!!あんたが私の目の前で死んでしまうかもしれないと思って、気が狂いそうだった!!
だって!……」
が、彼女の言葉はそこで途切れる。辺りの残響が消えていくと共に、沈黙が辺りをゆるゆると支配し始めた。
その数秒後、ジャックはゆっくりと言葉を繰り返した。
「……だって?」
静けさの中、2人が向かい合っている。
ローラは躊躇いながらもすっと息を吸った。ジャックを見つめ、静かに口を開く。ローラは間違いなく、そこで何かを言おうとしていた。
しかし、
その後の彼女の言葉は、全く音になっていなかった。
いくら喋ろうとしても、叫ぼうとしても。息が詰まったようになり、何も言うことが出来ない。伝えたい『声』は既に喉元まで来ているのに、『声』を出すことを無意識に拒否してしまう。…そんなもどかしさが目に見えて分かった。
「だって……私……」
彼女は何度も言葉を紡ごうとしたが、結果は同じだった。やがて、彼女は自分でその『声』を出せないということを知る。
すると、ある『変化』が起こった。
「――!」
ジャックはその変化に、息を呑んだ。
何故なら、彼女が涙をこぼし始めていたからだ。…ぽろり、ぽろりと。透明に光る粒が彼女の頬に伝っていたからだ。
そしてそのまま、彼女はジャックの血塗れの胸に倒れるように飛び込むと、こう言った。
「……わたし、あなたをうしないたくない……」
それは、信じられないほどか細く、透き通った声だった。
その時、ジャックは胸の奥で何か暖かいものがゆっくりと溢れ出してくるのを感じた。それは血流に乗ってじんわりと全身に広がり、やがて手の先、足の先まで達する。まるで凍り付いて動かない体が暖められていくような、とても心地の良い感覚だった。
(そうか……俺はまだ、ここで生きなければならないのか。
まだ、自分を失うわけには行かないんだ。)
そして、ジャックはようやく動くようになった右手を、目の前ですすり泣いている彼女の頭に置いた。涙で潤した瞳をそっと向けてくる彼女に、ジャックは言う。
「分かった、ローラ。俺は死なない。……お前が願ってくれるなら。」
「…ジャック…」
「さあ、俺を連れて行ってくれ。これからの未来を生きるために。死んでいった街の皆の分を生きるために。」
ジャックがその小さな肩を両手で支えてやると、彼女は小さく、こくりと頷いた。
「…歩けるか?」
「うん、大丈夫。有り難う…ありがとう、ジャック…。」
そして、2人は歩き始めた。生きるという意志を胸に固めながら。
ジャックはラースの最後に言った言葉を思いだす。ジャックは彼の言葉の通り、生きて、自分自身の人生を探し、見つけ出すつもりだった。
大切な命と、今までそこにあったはずの日常。それを失っても生きるというのは、とても寂しく孤独な旅なのかもしれない。
しかし、自分は決して1人なわけじゃない。ジャックは今、それを感じていた。
彼女が自分の隣にいてくれる。
彼女が自分を想ってくれる。
彼女が自分の存在を願ってくれている。
その事実がとても嬉しかった。
――そのはずだったのに。
ゴオオォォォ…
2人が着いたところには、強い風が吹いていた。…そこは、『国』と『街』を繋ぐ場所だった。丁度その境目にはとても高い城壁のようなものが立ちはだかっていて、唯一出入りできるのは正面に1つだけある、頑丈な鉄格子の扉だけ。これによって、『国』と『街』は殆ど分離された状態にあるのだ。
ジャックはこの場所を知っていた。いや、ジャックだけではなく『街』の住人全員が知っているであろう場所だった。
ジャックが知っている限りでは、そこは普段は人の来ないがらんとした空き地。『街』と『国』が忌み嫌い合い、決して交わることはないということを象徴しているかのような、寂しく寒々しい場所だ。
しかし今、そこにはそれとは違う見慣れない風景があった。
「?…」
ジャックは『それ』を見ると、自然と足が止まった。ローラがそこに向かって手を引くも、彼はそれから動こうとはしない。
「どうしたの?ジャック。こっちよ。…みんな待ってるわ。」
勿論、言葉にも反応しなかった。彼は、ただ目を丸くしながら目の前の『それ』を見ていた。
何故なら、理解できずにいたからだ。
『それ』が何を意味するものなのか。ローラが一体自分をどこに連れていく気なのか。
そして、
これから何が起きようとしているのか。
バラバラバラバラ!!
ここに来てから、風の音の他にずっと耳障りな音が耳を突いていた。それはこの爆音を響かせているプロペラ音だ。この寂れた『街』にはそんな音を発する機械などない。
だが紛れもなく、その非日常はそこに存在していた。
まず一番目立っているのは、真っ黒な飛行機だ。そのサイズはかなりあり、この広い空き地を殆ど占拠している。大きなプロペラを回して、それによって強い風が巻き起こっていた。
「…」
見れば飛行機の入り口は開いており、数人の『街』の住人がそこに乗り込もうとしていた。どうやらローラはそこへ行きたいらしく、まだジャックの腕を少し引いているようだ。
しかしジャックの目は今度は飛行機の正面の方に行った。
そこには、人の列が何列も出来ていた。見た所、多分全員男だろうと彼の中で予想がついた。何故“多分”なのかというと、全員丈夫そうなヘルメットを被って顔が分からなかったからだ。
そして体格の良さそうな者が殆どだ。全員迷彩服を着て銃やナイフ等の武装をしている。中にはとても大きなバズーカを持っている者や、機関銃を乗せた台車を押している者もいた。
…考えなくても、あの飛行機を見た時から分かっていた。この武装兵達は、間違いなく『街』の者ではない。そうなってくれば残る答えは1つだった。
(『国』の…人間?)
ジャックが呆然と立ちつくしていたその時、兵士の1人らしき者がこちらに歩み寄ってきた。
「おい、そこの男。」
低い男性の声はヘルメットでくぐもっていた。その兵士のの片手で黒光りを放っている銃器を見て、ジャックは思わず身構える。兵士はそれに構わず淡々と続けた。
「見かけない顔だが、お前はスレーブか?腕の印を見せてみろ。」
「…な、」
いきなりよく分からない質問をされ、ジャックはたじろぐ。しかし、そこで突然ローラが2人の間に割入って、こう言った。
「その必要はありません。」
兵士はローラの顔を見ると、1つ呼吸を置く。
「レイ家の者か。」
「そうです。私、ローラ・レイが保証いたします。彼は間違いなくスレーブの一員です。」
「そうか。ならば早く搭乗しろ。もう間もなくオペレーションは開始される。」
「…はい。」
その会話を終えると、ローラはまた飛行機の方に歩き始めた。
「ジャック、こっちよ。」
だが、ジャックはかなり混乱していた。当然のことながら、訳の分からないまま2人だけで話を進められ、彼に今の状況を理解できるわけがなかった。
「な…何だよ、今の…?一体どういうことだ…?」
「これで大丈夫。ジャックは生きることが出来る。」
ローラは安心したような柔らかい微笑みをジャックに向ける。しかしジャックはそれと対照的な表情を浮かべていた。
「ローラ、お前…『国』の人間と話せるのか?!それに、スレーブって何だ?!腕の印って…!」
そう言いかけたところで。
バッ!
ローラが、右の袖を勢いよく捲り上げた。そして、露わになった腕をジャックに見せつける。
「!」
すると、ジャックは息を呑んだ。彼女の腕…丁度手首の下辺りに、何か紋章のようなものが捺印されていたのだ。彼女はそれから、平坦な声で説明した。
「『スレーブ』…『国』に仕える奴隷。私達が生きるために唯一残された道であり、ノアの箱船よ。」
ざわり、と。ジャックは自分の背に何かが上ってくるのを感じる。その時から何故か、彼には段々と自分の速まっていく鼓動が聞こえてくるようになっていた。
(…何だ…これ?)
「私だけじゃない。この『街』には他にも沢山スレーブはいたわ。この日、この時。生きて普通の生活を得るために。私達は『国』の方針に移ったのよ。」
「ずっと陰で『国』に服従していたっていうのか?…ただの奴隷になっちまったってことかよ…?」
「違う。スレーブ…奴隷というのは、仮の名前。オペレーションが終わった後には、私達は新しく『国民』として生まれ変わるの。差別されて、窮屈で貧しい生活を送ってきた。そこから抜け出せるのよ、ジャック!」
ローラの笑顔が、ジャックには歪んで見えた。色んな思考が頭の中をぐるぐると回り始め、沢山のものが入り混ったような気持ち悪さが視界にまで及び始めたらしい。
「ちょっと待て…ちょっと待て……じゃあお前は、知っているのか?例えば、そう…失踪事件のことだ。」
その言葉に、ローラはぴくりと眉だけ動かす。
「あれは、本当に『国』のやっていることなのか?そうだとしたら、スレーブはいつどこで『街』の人間が消えることになるか知っていた?い、いや。そんなわけ」
ないよな、
と言おうとした瞬間だった。
「知っていたわ。」
「…?!」
さらりとした短い言葉。それだけで、ジャックは驚きを隠せなかった。ローラは少しだけ俯いていて、その表情からどんな感情を抱いているのかは読み取れない。
「『国』が『街』の人間を拉致していたのは本当よ。仕方がなかった。見てるしかなかった。…スレーブだったから。そこで『国』に逆らっていたら、確実に私も同じ目にあっていたから。」
「じゃあ……拉致された人間は、どうなるってんだよ…?」
ジャックは途切れ途切れに言葉を紡ぐ。すると、ローラはゆっくりと首を横に振った。
「…分からない。砂漠の向こうにある可笑しな実験施設の様なところに連れて行かれて。そこから帰ってきた人は1人もいないわ。」
ビュウッと、2人の間に強い風が吹き抜ける。ずっと聞こえているプロペラの音は、今生じている長い沈黙のせいで余計にうるさく聞こえた。
「…リリィも?」
「!」
そのよく知った親友の名前に、ローラは少しだけ反応したようだった。
「リリィが連れて行かれるのも……お前は黙って見ていられたのか。」
――お知らせ――
皆さん今晩は。(^-^)ARISです。いつも『地獄に咲く花』を読んで下さり、誠に有り難うございます。
用件なのですが、昨日から少し体調不良を起こしているので、更新を一週間ほどお休みすることにしました。
申し訳在りませんが、ご理解の程よろしくお願いいたします。
もう少しで、過去編終わりにします。…って感想版の方にも前から書いているのですが、なかなか終わりませんねこれが。(^^;)
どうか、これからも温かい目で見守ってやって下さい。<(_ _)>
「………。」
ローラは沈黙する。ただ俯いて。その小さな顔は、まっすぐ伸びている前髪に隠れ気味になった。
「…お前は、本当に何も出来なかったのか?お前にとってかけがえのなかった親友を、簡単に見捨てられたって言うのかよ?!」
ジャックの口調が少し強めになってくる。その心には段々と怒りが色付き始めているようだった。
「簡単に…見捨てられるわけないじゃない…」
ジャックの様子に少し怯えたのか、ローラの声が心なしか揺れる。よく見ればその肩も小刻みに震えていた。
「私は…許しを乞ったわ。でも…っ家族皆を盾にされちゃ、仕方がないじゃない!!」
半ば叫びに近い言葉。
やがて、ローラは胸に溜まっていた感情が破裂したように両手で顔を覆い、すすり泣き始めた。現実の残酷さと己の無力さ呪う、そんな涙を彼女は噛み締める。
そして、ジャックは苦い顔で何も言えず、失ってしまった過去に絶望する。
様に思えたが。
「……嘘だろ。」
「――え?」
彼の口から出たのは、ひどく冷たい一言だった。
彼は怒りと悲しみが入り混じった気分の悪そうな顔で、ちらりと横の方を見る。そこには、整列する兵士達の姿があった。
「分かり切ったことだ。さっきのお前の話し方。どう見たってスレーブって柄じゃねぇよ。…レイ家の人間だとすんなり『国』の人間へ話が通る。そんな家族が人質に取られるのか?もしそうであったとしても、お前にはそれなりに発言力があるはずだろ…?」
そう言いながら両手を伸ばし、泣きじゃくるローラの肩をぐっと掴んだ。
「ローラ、全部説明してくれ…!お前には何が出来なくて、何が出来たんだ!頼むから…教えてくれ!!」
「……う…っく、ぅ…う…っ」
「何で、皆を見捨てられたんだ!!!」
からからに乾いた熱い空気が、激しい風に乗って空間を満たし始める。
気付けば、ローラの頬に流れていた涙は一瞬のうちに消えていた。濁った瞳の色。何の感情も籠もってない無機質な表情。まるでさっきまでそこにいたローラと別の存在が突然入れ替わったようだった。
彼女は
長い間をおいた後、呟いた。
「そんなに聞きたいなら、教えてあげる。」
それはぞくりとするほど低く、静かな声だった。
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