地獄に咲く花 ~The road to OMEGA~
30XX年。地球。
そこは荒れ果てた星。
温暖化によって蝕まれた大地、海、空気。
そして20年前。生物学者ルチアによって解き放たれてしまった人喰いの悪魔…『人造生物』。世界に跳梁跋扈する彼等によって、今滅びの時が刻一刻と近づいている。
しかし。
その運命に抗う少年達がいた。
人造生物を討伐するべく、ルチアに生み出された3人の強化人間。ジュエル、ロイ、グロウ。
グループ名『KK』。
少年達は、戦う。
生きるために。
…失った記憶を、取り戻すために。
その向こうに待ち受ける答。
そして、運命とは?
※このスレッドは続編となっております。初めて御覧になる方はこちらの前編を読むことをお勧めします。
地獄に咲く花
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下に向いていた彼女の視線はゆらりと弧を描き、やがてジャックの姿をまともに捉える。
「私は、ただ生きたいだけ。こんな埃っぽい砂まみれの街で、ぼろ切れのように死んでいくのは嫌だっただけよ。…前にも言ったでしょ?私は自分の目的のためなら、どんな努力もするって。たとえそれが他人の命を糧にするもであっても、ね。」
「……!」
ジャックには、信じることが出来なかった。
その時、彼女は微笑みを浮かべていたのだ。
『微笑み』とはいっても、何の温かみも感じられない。顔の表面で口の端を少し上げているだけで、心の中は何か冷たいもので満ち満ちているのが目に見えてわかった。
即ち、悔恨でも喜びでもない。ただ、「自分がこのような行動をするのはとても自然で、当然のことじゃないか」と告げているだけの
空っぽの感情だ。
「私の家はね、よくわからないけど『研究に使える特別な遺伝子』が伝わっている可能性があるとかで、『国』からは結構優遇されてたの。
…少し検査に協力しただけで。こんなにいい話はないでしょう?」
彼女の微笑みは、ジャックの中にあった思い出を少しずつ打ち砕いていく。
空と大地が逆転し、今までちゃんと色がついていた筈の日常は白と黒だけのネガの様な世界に反転する。そんな可笑しな錯覚がジャックを襲った。
(…何なんだ、これ…っ)
頭痛と眩暈によろめきそうになる。だがそれに構わず、彼女はさらに続けた。
「私達は普通のスレーブよりずっと特別だった。だから1つだけ、ある願いを『国』に聞いてもらえたわ。」
「…願い?」
「そう。『国』の方針には逆らうことが出来なかったけど。方針に沿った内容なら許された。…それはね、」
そこで一瞬時間が止まった。丁度、彼女が次の言葉を紡ぐために息を吸う所だった。ジャックは止まった時の中で、はっきりと意識はあるもののピクリとも動くことが出来ない。
激しい鼓動と発汗は、このままだと自身が壊れてしまうという警告を如実に発しているのに。
しかし。
彼女の言葉を聞きたくなくても、耳を塞ぐことが出来ない。
彼女の微笑みを見たくなくても目を閉じることが出来ない。
そしてジャックは何も出来ないまま。無情にも、世界は再びその時を刻み始めた。
彼女はゆっくりと口を開いた。
「―――『選べる』のよ。」
「な、」
今、ジャックは彼女の一言が何を意味しているのか頭で理解出来ずにいる。しかし、無意識の内では一瞬で理解できていたらしい。
「……何を、だよ…?」
だから、問い直した時の声は少し掠れていた。
彼女はそれを聞くととても詰まらないものを見るように、すっと目を伏せる。
「あんたって、ホントに物分かりが悪いわ。」
いつもの呆れたような口調。それはジャックにとって聞き慣れたもののはずなのに、それが余計に恐ろしかった。
そして、彼女は言った。
「ぎ せ い しゃ。」
1文字1文字丁寧に。彼女の口から発せられたのは主語も動詞もない1つの簡単な単語だった。
それだけでジャックは絶句していた。
瞼がつり上がっていて、口は少しだけ開いている。そこから入ってきた空気は彼の肺を一杯にし、胸にジーンとした微かな痺れを生み出していた。
「…じゃあ…全部。お前は、…」
言葉の断片が不規則に、無感動に並ぶ。今の彼にはこれが精一杯だった。
しかし最後の言葉は
「リリィ…っ?!」
ジャックは、自分が口にした名前に激しい悪寒を覚える。信じたくないという思いがこれほど胸に馳せたことはなかった。だが歪みきった現実を彼女に突きつけられ、そこに希望を見いだすことはかなり難しいことだった。
「まさか……まさかっ!!!」
しかし、それでもジャックは彼女を信じようとしていた。明るくて。よく自分をからかってきて、喧嘩もして。けどその後には、いつも笑顔でサンドイッチを差し出してくれた。
そんな『ローラ』を失いたくなくて。
平穏だったあの日々。タイムカプセルを掘り出して喜んだ、あの思い出を失いたくなくて。
「そう。私が『国』彼女を消すように頼んだのよ。」
ジャックは
心の中で、自分の両手から何か落としてしまったような気がした。
ガラス玉のようなそれは、
重力に逆らいもせずに下に向かう。
そして地に着いたその時。
大きな。しかし透き通った音を立てて、砕け散った。
破片はきらきらと輝く光を残し、全て消えていく。消えていく。
「なん……で………」
彼はそう呟きながらぐらりと前にのめり、どさりと両膝と両手をついて地面を見つめた。
「私の両親…レイ家は、『国』から得たその権利を行使していた。せめて悲しむ人が少なくなるように、出来るだけこの街で目立たない人間、必要とされていない人間を選んでいたわ。殆どの被害者は、私の両親によって選ばれた者なの。…でも、あの子だけは違う。」
彼女はジャックの背を見下ろして、無情にもまた淡々と言葉を並べた。
「あの子は誰の意志でもない、私自身の意志で選ばれた被害者。…そう、私が殺したも同然ね。」
「……!!!」
ジャックはザラザラの砂を爪で擦る。それは、一番聞きたくない言葉…事実だった。
「ジャック、さっき「なんで」って訊いてきたわね。」
「……。」
「……何でだと思う?」
すると、彼女はその場にしゃがみこみ、殆ど見えなくなっているジャックの顔を覗き込んだ。
ジャックは、その問いに対して何も言えないでいた。「何故」という思考で頭が一杯になり、聞こえてくる言葉も右の耳から左の耳へ通り過ぎてしまっているらしい。そのうなだれている姿は、まるでただの抜け殻のようだった。
「分からない?」
そう小さく聞いても、彼は勿論反応しない。だが彼女はそれを気に留めることはなかった。
「無理ないわ。私も最初、理性では自分の行動が全く理解出来なかったから。」
彼女はまた無機質な微笑みを浮かべる。今度は少し自嘲的なものを含んでいるようにも見えた。
「でもね、ついさっきやっと分かった。確信が持てたの。私があの子を殺してしまった理由…それはね、」
答の直前まで来た時。ジャックは突然頭を抱え込んだ。彼は心の中で叫んでいた。
(もう、いい……もう止めてくれ…!これ以上は…っ!!)
その要求を口で言おうとしても、喉の奥がからからに乾いていてうまく声が出ない。
「ロー…ラ…!」
名前を呼ぶのが精一杯だった。しかしそれだけでは彼女を止めることは出来ない。
彼女は答を言った。
「――貴方のことが、好きだったから。」
………
(………。は…?)
彼女のその答えはあまりに唐突なものであったらしく、ジャックは思わず変な声を上げそうになる。彼はそれを押し込む代わりに、恐る恐る目の前にある彼女の目を見た。
気付けば彼女はしゃがむのを止め、地面にぺったりと足をつけて座っている。それに今、ゆっくりとこちらへ右手を伸ばしてきていた。
「さっき。あんたがあのバケモノに殺されそうになった時に気付いたの。私は小さい頃、初めて会った時からずっと…あんたが好きだったって事。」
その右手がジャックの頬に触れたと同時に、彼はその時の事を思い出す。すると確かに、彼女の様子から、多少なりとも自分を好いているのかもしれない…という想像は容易についた。
だが、ジャックはまだ理解出来ずにいた。
何故、それが親友を殺すことに繋がるのか。
ジャックはもっと思い出してみた。よく知っていた…『ローラ』の姿を。
ローラはいつもリリィと一緒にいた。普段1人ぼっちでいたリリィにとって、ローラは唯一友達と呼べる存在であり、相談者であった。実際、ローラは毎度リリィの相談役になっていて――
と、そこで彼の思考は止まった。
その時。瞬間的に頭の中で、ある日の風景がフラッシュバックした。
2人だけの公園。一緒にブランコの上で夕暮れの空を見上げた。ぽつんと見える1番星が印象的だった。
そして、続けざまにあの時のローラの言葉が響く。
『あの子、リリィね。…あの時からあんたのことが好きだったのよ。』
『でも、リリィは私に会う度あんたの話ばっかり。どうやったら想いを伝えられるか…私はそんな相談の相手をいつもしてたのよ。』
『あの子はあんたのことが好きだった。…本当に好きだったの。けど何の想いも伝えられないまま……消されてしまった。
せめて、伝えられれば良かったのに。私はあの子の背中を押してあげることが出来なかった。』
『…あの子に何もしてあげることが出来なかった!』
(嘘だろ…こんなこと。)
ジャックは愕然とした。
(あんなに思い出を愛おしそうに話していたのに。あんなに自分は無力だと悔しそうだったのに。全部…全部演技だったのか?!?!)
目の前では、彼女がふふふと低い笑い声を上げている。それで、ジャックは思った。
ああ、全ては最初から狂っていたのだと。
「最初はね、あの子の気持ちを知っても大したことなかった。その頃は、まだ私自身の中に眠っていた『感情』に気付いてなかったから。
でも、同じ話を何度も聞かされる内に…どんどん何かが溜まっていって。私の『感情』は耐えられなかった。ああ、あんたにもあの子にも、子供の頃のまま純粋な気持ちで接することが出来ればよかったのに。私は人を消す方法を知ってしまったばかりに…。」
彼女は笑い顔のままとても残念そうに言った。と、その時。
シュバアアァ!!
少し遠くで、数人の兵が何かを空に打ち出していた。それは勢いよく風を切って垂直に飛び上がると、ポンという音を立てて大きく明るい光球を生み出した。
同時に、
「オペレーション開始!!」
と拡声器の声が響く。すると先程まで綺麗に整列していた兵士達が、ばたばたと慌ただしく四方に散り始めた。
ジャックはまだ地面にへばりついて、それをただ見ていた。
(何だ…?)
「…始まったみたいね。」
彼女もそれをちらりとみると、他人事のようにぽつんと呟いた。そして、ジャックに向き直る。
「そう。どの道この街は滅び行く運命だということを、私は知っていた。」
サァ…と、彼女の巻き髪が風になびく。しかしその瞳は、ただ真っ直ぐジャックに向いていた。
「そして、私はどんなことをしてでも、どんな事実を知られたとしても。あんただけは失いたくなかった。…だから私は、あんたをここに連れてきたの。」
「…?!」
彼女の言葉で、ジャックの背筋にまたぞわりとした感覚が走った。
(どういう、意味だ…?)
「ジャック、立って。早く飛行機に乗り込んで。…生きて。」
「…ちょ…」
ジャックが何か言おうとするが、まだ思考が追いついていけず、言葉が切れてしまう。だがそれでも、彼は声帯を振り絞った。
「ちょっと、待て…どういうことなんだよ…これから何が始まるってんだ?『国』の軍は何しに来た?あの化け物を排除しに来たんじゃないのか?!」
「……。」
彼女は冷たい眼差しで、じっとこちらを見ているだけ。それがますます彼を戦慄させた。
「…『オペレーション』って、一体何なんだよ?!ローラ!!」
混乱しきった、叫び。彼女は、それとは対照的に低い声で言った。
「想像、ついてる筈よ。」
「勿論、あの化け物を殲滅するという意味も含んでいると思うけど。それはあくまでついで。それとも…表面的なものといった方が正しいのかしら。
この街の人間は『国』と戦争を起こすつもりだった。そのために『塔』を建設していたでしょう。
そこにスレーブ。…『国』のスパイが絡んでいたとなると、結局どうなると思う?『オペレーション』の、本当の目的は?」
「……!!!」
その、とてもあからさまな問いかけに、ジャックは息を呑む。つまり彼女は1ピースだけ欠けているジグソーパズルをジャックに差し出し、最後のピースは自分で埋めろと言っているのだ。
「っ……」
ジャックは固まったまま。そのピースを取ろうともしない。何故なら、欠けた部分を埋めることで浮かび上がってくる『絵』があまりに残酷なものであることを分かっているからだ。
彼はその『絵』を信じたくないのだろう。
しかしいつまで経っても彼が口を開かないことに苛立ったのか、
彼女は一言呟いた。
「皆殺されるでしょうね。」
その瞬間。パチリという音を立てて、最後のピースがはまった。
そして、あっという間にジャックに見えている風景は赤に染まる。しかも先程よりさらに激しく、ジャックには色々な物がぐにゃぐにゃと歪んで見えた。
「アナタだけはタスけたかった…アナタにだけは幸セな生をみつけてほしかったカラ」
聞こえてくる彼女の声さえも、歪んでいる。所々雑音混じりになっていて、何を言っているのかよく聞こえない部分もある。
「ダって、私は。」
しかし、その後の最後の一言だけは、いやにはっきりとジャックに聞こえてきた。
――貴方のことが、好きだから――
その時からだろうか。
彼がある感情に支配され始めたのは。
始めそれは、理性をじわじわと浸食していった。やがて、深層心理や無意識。本能さえも、飲み込み始める。
「…ふざけるな」
ぽつりと、小さな言葉が出た。
それは彼の中に溜まった感情が、外に漏れ出したほんの僅かの『瞬間』だった。丁度満杯になったコップに少しずつ水が注がれていき、表面張力を保てなくなった水が一筋コップに伝う時のような、刹那の時。
そして、さらにそのまま水が注がれ続けると。
その溢れは急激に勢いを増し、
止まらなくなる。
「ふざけるな…ふざけるな、ふざけるな!!」
憎しみ。彼の中で溢れ、濁流となったその感情は、次に大きく渦を巻き始めた。
その渦の狭間から、
『――生きて下さい』
『生きるんだ!』
『生きて。』
『イきて――』
脳内に色んな声が聞こえてきた。どれが誰の声だかは判別がつかない。ただ皆同じ意味の言葉を発しているのだけは分かる。
彼は、その五月蝿さに顔をしかめた。
「……こんなもん、誰が望んだ?誰が幸せになれると思ってるんだ?…お前。」
内とは裏腹に、彼は静かに問った。それに、彼女も同じ様に静かに答えた。
「もちろん、貴方が。貴方にとって生きることは、幸せなこと。」
「…何で、お前にそんなことが分かる?」
「だって。
2人で1番星を見たあの日。貴方は私に『生きたい』と言ったじゃない。」
すると――
地にうずくまっていたジャックの体が動き出した。
まるで何かに操られているようにその動きはスムーズで、かつ自然だった。彼は脇の方にすっと手を伸ばすと、あるものを掴んだ。
冷たく、固い感触。それは、先程からずっと彼の横に転がっていた。
彼が掴んだのは血塗れの棒。即ち、先程あの生物を殴り殺した時に使った、鉄パイプだ。彼はそのままゆらりと立ち上がる。金属が砂を擦った時のシャリリ、という音が鳴った。
ぐらぐらと揺れる赤い視界の中。自分のことを少し丸い目で見上げている彼女を、彼は見下ろした。
そして
ゆっくりと、両手で持った鉄パイプを天に掲げる。
自分は次の行動をした後、どうするつもりなのか。
自分は、どのような結末を望んでいたのか。
自分は、
果たして『生きたい』のか。…それとも?
――全ての答えは、彼の中に無い。
ただ。
この壊れ、歪みきってしまった世界は、彼にとって酷く居心地が悪かった。彼は、目の前に在る歪みの根源を消してしまいたかった。
溢れ出る憎しみのままに。
ローラは、光を背にして、シルエットになっている彼の姿を目に焼き付けていた。ある種の神々しささえ湛えている、その姿を。
時を止めて、ずっと見ていたかった。しかしそれは叶わぬ願いだと、彼女は理解する。
だから
彼女は柔らかく微笑んで、
こう言った。
「ジャック――****。」
――少し鈍い音がそこに響いただろうか。その後に残ったのは、沈黙だけだった。
ジャックは新しい血がこびりついた鉄パイプを力なく手からぶら下げて。少し長い時間、もうピクリとも動かなくなった彼女を呆然と見つめた。
しかし、やがて遠い空の向こうを眺めながら
「あぁ、戻れなくなったのか。」
と、納得したように呟いた。
そして。ジャックは彼女に背を向け、歩き出す。ずるずると、足を引きずるようにして向かうのは避難用の航空機ではなく、街の方角だった。
門を背に真っ直ぐ歩いていき、そこから直結している大きな通りの真ん中に出た。街全体は人の気配がなくなり静まりかえっているが、まだ空にも地上にもあの生物がいる。だが彼は逃げもせず、隠れもしなかった。
(もう、あの日常に戻れないなら)
その内の何匹かがそれに目を付けると、牙を向いて、喜びながら彼に襲いかかっていった。それでも、彼は動かない。
(せめて、全部壊してしまおう。)
ドガ!!!バキ!!!!
大きな音がして、生物の羽がはらりと散った。
(この世界も―――自分も。)
そして彼の通った後には、夥しい数の生物の死体が転がった。鉄パイプからは大量の血が滴り落ち、地面には赤く彩られた道が出来ていた。
彼には未知の生物に対する怯えはもちろん、もはや殺すことへの恐れも躊躇もなかった。
何故なら、決断してしまったからだ。
バタバタバタ……!
「……。」
T字路の曲がり角から複数の足音が聞こえ、彼はぎょろりと眼球だけ動かしてそちらの方を見る。すると先程見た『国』の武装兵が4人程、銃器を持ちながら走ってくるのが見えた。
「くそっ。キリがないな、あの化け物は!一体何人実験台がいたってんだ?!」
「いいから殲滅だ。1匹も逃がすなよ!!」
彼等は口々に言っていた。だがそこで、その内の1人がジャックの方に気付き――
「……おい、何だ…アレ。」
思わずそう呟いた。無理もない。そこに列をなす死体の数と、返り血にまみれた赤毛の青年の姿を見れば。
1人の言葉で、残りの者もそちらの方を見る。
「…『街』の生き残りか?!」
「人造生物…この男が全部始末したのか?鉄パイプ1本で?!」
ジャキッ
何人かがジャックに向けて銃を構える。
「『街』の者は殺せ!」
ダダダダダダダッ!!
1人の連続式の散弾銃がジャックに向かって火を噴く。
しかし、
銃弾が飛んでいった先には、誰もいなかった。だから発砲した本人は不思議そうな顔をした。
「……ん?」
と、声を出す。
それが彼の遺言。その後は「さっきまで確かに目の前にいたのに」と言う間もなかった。
ゴシャ!!!
大きな血飛沫が上がった。彼は、ジャックに背後から鉄パイプで頭を殴られたらしい。その頭頂は大きく凹んでいて、眼球はあまりの衝撃で飛び出していた。
いくら鉄パイプで殴られたからといっても、普通ここまではならない。目の前で彼の絶命を目撃した他の兵士達は、マスクの隙間から青ざめた表情を覗かせた。
「な、何…?!?!」
「ひ…いぃ」
兵士達はたった今仲間を殺した者の背がすぐそこにあるというのに、数歩後ずさった。
そしてゆっくりと、ジャックは兵士達に振りかえる。
頬には返り血がべったりとついている。だが、それよりも兵士達を戦慄させたのは彼の表情だった。
彼は――穏やかな笑みを浮かべていた。
「…化け物めええぇ!!」
ダダダダダダダッ!!
ドヅ!!
ゴシャ!!
いくつかの叩きつけるような音が響くとそこはたちまち静かになった。
そして、ジャックの足元に転がる死体の数と血の量が増えた。
(……これで、いい。)
ジャックは出来立ての死体をちらりとも見ずに再びふらりと歩き出す。どうやら、あるところに向かうようだった。
(全て無くなってしまえば。)
それから2、3分程して彼が辿り着いたのは、自分が住んでいた家だった。小さな石造りの、何の飾り気もない真四角な建物。そんなものでも、彼にとっては家族と共に過ごしていた住み慣れた我が家だった。
彼はポケットから鍵を取り出し、ノブに差し込もうとする。しかし彼はあることに気付き、途中でその手を止めた。
よく見ればドアが完全に閉まっていない。それは鍵が掛かっていないことを意味していた。
「……。」
その事で彼が驚くことはなかった。何故なら彼には予想出来ていたからだ。扉が開いていることも、扉の向こうにある景色も。
だから彼は躊躇なくノブを回し、扉を開いた。
中はとてもひんやりとした空気が流れていて、恐しいほどの静寂に支配されていた。
入ってすぐの玄関は酷く雑然としていた。石の壁の所々には銃痕があり、乱暴に踏み荒らされたであろう床には無数の同じ形をした足跡が汚く残っている。足跡のつきかたは不規則で、それはまるで何かを調べ回ったようだった。
しかしそれよりも目に付いたのは、すぐそこで仰向けに倒れている母親の姿だ。
彼女は少し驚いたような顔をしていて、額や、胸、腹などには沢山穴が空いている。勿論血溜まりを作ってピクリとも動かない。
ジャックはそんな母親の姿を前にしばらく立ち止まった後、向こう側の廊下に続いている足跡を目で辿り、家の中に踏み出した。
足跡は狭い居間へと繋がっている。ジャックが知っている限りでは、そこは長いテーブルと椅子、棚、小さなキッチンくらいしかない寂しい部屋だ。
だが今入ってみると、部屋はもっと寂しくなっていた。
全ての家具はただの壊れた木材になっていて、家具として機能していた時の形は見る影もなくなっていた。そして勿論、床には足跡が数え切れないほどついている。しかし玄関とは違い、それらはあるところに向かって集結していた。
そこの壁が、
ぽっかりと四角の口を開けていた。
穴の向こう側。見る者全てを吸い込み、飲み込んでしまいそうな暗闇から、冷たい空気は流れ込んできていた。ジャックはその穴が地下へと続くことを知っている。それは、自分で掘って開通した道だからだ。
即ち穴は『塔』へと繋がっている。『街』の住民皆で戦争に備えて完成させた、あの防空壕だ。
ローラの話によると、『街』が戦争を企てていたことはスレーブというスパイによって、『国』に筒抜けになっていた。
ならば、
当然『塔』のことも――
ジャックは何かに誘われるようにして、穴へと足を動かす。暗闇を進んだ先にはどんな景色が広がっているのか、などということは彼にとってどうでも良かった。ただ、彼は『気配』に惹かれていたのだ。
だから、彼がその足を止めることはなかった。細い地下道に入り、しばらく行くと大きな地下道に出る。
彼はそこを真っ直ぐ歩くと、
程なくして『塔』に辿り着いた。
そして、全てが終わりを告げた。
そこにあったのはこの世の物とは思えない混沌。地獄の世界。
あるいは、涅槃だった。
ジャックは2階の吹き抜けから1階の広い空間を見ていた。
そこには一欠片の正義も存在しなかった。在ったのは血の泉と沢山の悲鳴と、鳴り響く銃弾の音。刃物や何かの農具によって肉が切り裂かれる音。
そこにいる人間、皆が殺し合っていた。
『国』が『街』の人間を。『街』が『国』の人間を。さらに『街』が『街』の人間を手に掛ける所も見られた。スレーブの存在の発覚からの争い、あるいは母親が何も出来ず泣き叫ぶ事しかできない赤ん坊に包丁を突き立てていたり。
ジャックは、そこにあった全ての命を壊した。
鉄パイプを1回振る度に、自分の中に僅かに残っている思い出を消し去っていくように。
壊す。
あの日常を。
壊す。
あの空を。
壊す。
――あの笑顔を。
全て
ブンッ!!!
ドゴオオオオォン!!!!
今やただの巨大な化け物と化した、ヴァイス。黒い棘だらけの顔は何かの獣に見える。しかし、それ以外はまるでドラゴンのようだった。
その長い尻尾が。
ジュエルがいた空間を凪ぎ、『塔』の1階と2階を繋ぐ階段を木っ端みじんにした。
階段は無数の鋭い破片となってあたりに勢いよく飛び散る。しかしジュエルはそれを読んでいたかのように、高く飛び上がっていた。それは1階から2階へ軽く届く高さだった。
タン!
ジュエルは2階の柵に一旦足を着き、再び高く飛び上がる。そうすることで『塔』の天井に近い所まで到達し、やっと『ヴァイス』の顔面まで届いた。
「はぁ!!」
そして2本の剣を振り上げ『ヴァイス』の目を狙って斬りかかる!
だが、その時。
「ゥオオオオオオオオオオオン!!」
『ヴァイス』が大きく吠える。すると、同時に非常に強力な超音波が空間全体を揺るがした。
キイイイィィィン!!!
「ぅ…!」
それは脳に直接響き、急激に平衡感覚を奪う。
たまらずジュエルが一瞬怯んだ。その空白の時間に『ヴァイス』はガバッと巨大な口を開き、ジュエルに噛みつきかかる!
「っ!」
ジュエルは霞んだ目でも身の危険を反射的に察知し、行動に移した。それは回避でも防御でもなく――攻撃だった。右手の剣を握り直し、
シャッ!!
勢いをつけて剣を『ヴァイス』の口腔に向かって投げつけた。剣は鎖をつけたまま、真っ直ぐ、矢のように飛んでいった。
ザクッ!
「ギャアアァアア!!」
ジュエルが投げた剣は『ヴァイス』の口の天井に突き刺さり、鼻まで貫いた。『ヴァイス』は大きな声を上げ、顔を激しく振り始める。ジュエルは『ヴァイス』に突き刺さった剣から繋がる鎖でぶら下がっているため、それにより空中に投げ出され、大きく振り回された。
ブゥン!
「うわ…!」
視界がぐるりと回り、また背中から落下していく。その途中、ジュエルは背後――下の方からとてつもない破壊衝動を感じた。瞬時にそちらに目を向けると、
「!!」
下から鋭く尖った黒い物体が、落下する背中にあと数センチで突き刺さるというところまで来ていた。
ジュエルは反射的に身を捻って棘をかわす。ついでに、
ザン!
黒い物体を斬り飛ばす。
ジュエルは落下しながら周りに同じ黒い大きな棘が4本あるのを見た。どうやらあの棘は『ヴァイス』の爪だったらしい。
そのうち『ヴァイス』に刺さった剣が段々抜け始めるのが、ジュエルには感触で分かった。手近な足場を見つけて着地しないと、このまま1階まで落下してしまう。
そこでジュエルは、『ヴァイス』の巨大な手に目を付けた。
ジュエルをぶら下げる長い鎖は、振子の力で前へ揺れようとする。ジュエルは『ヴァイス』から剣が抜けるまでの残っている僅かな時間、そこでぐっと重心を前にかけた。
ぐんっ
結果、ジュエルの体は『ヴァイス』の右方向から左方向へと勢いよく宙に弧を描く。目指す先は『ヴァイス』の左手だった。
ずっ
浮遊感が強くなってくる。目的の場所はもう2、3m先だ。ジュエルは息を止め、さらに重心をかけた。
…その時。
「?…」
ジュエルは一瞬、何かに気付いた。
ずぶっ!
同時に完全に剣が抜ける。ジュエルは体を勢いに任せ、足を投げ出した。急速に落下しつつも、着地点を正確に見極める!
そして、
トッ…!
足をついた。
しかしそれだけでは終わらなかった。
タッ!!
何とジュエルは着地したところから続けて上に跳んだ。元々彼の中にはそんな予定はなかったが、彼は一直線にそこへ向かった。
――『ヴァイス』の心臓へ。
途中、抜けた剣が上から落ちてくる。
パシ!
それは空中で吸い着くようにジュエルの右手に収まった。
「はあぁあ!!!」
そのまま、ジュエルは両手の剣を振りかざした。
ザバァ!!
ジュエルによって『ヴァイス』の胸部は大きく切り裂かれる。そして、ジュエルは再び右手の剣を振り上げた。
ザク!!!
「ウゴオオオォオオォォ!!!」
深々と傷口を貫かれ『ヴァイス』がひときわ大きな奇声を上げる。その時ジュエルは、その傷口の奥から微かに赤い光が放たれているのを見た。
(これは?)
また、貫いた先には固い手応えがある。その表面で剣が止まっていることが感触で分かった。
そこでジュエルは直感した。
(もっと……奥だ!)
ズブ!
「…ォァァァアアアア!!!」
ジュエルは渾身の力を剣に込める。だがその固い物体を壊すまでには至らない。
それでも彼は剣を持つ手を緩めなかった。落ちてしまわないように必死にそこにへばり付いて。ただもっと深く、深く。
「アアアアァァァァ!!!!」
「っ…ぉぉぉおおお!!」
そして――
バキ…!
という地味な音を立てて、その物体は壊れた。
『ヴァイス』はビクンと1つ痙攣すると、
全身の力が抜けたようにぐらりと体勢を崩す。
『塔』の部分部分をお構いなしに壊しながら
最後には瓦礫の山に倒れた。
すた!
ジュエルは背を屈めて1階に着地した。その後、ぎこちなく身を起こす。見れば彼はもう満身創痍だった。何カ所かの大きな切り傷からは血が流れ、擦り傷はもはや数え切れない程にある。歩くのもやっとであったが、ジュエルは山積みになった瓦礫を行き、仰向けに倒れた『ヴァイス』の胸部に再び向かった。
「フシュー……フシュー」
呼吸音とともに『ヴァイス』の体はゆっくりと上下している。ジュエルはその上に乗った。そして自ら付けた大きな傷をもう一度開き、よく観察してみる。
すると奥の方に奇妙な肉塊を見つけた。見れば、それは『ヴァイス』の心臓に絡みついている瘤のようなもので、先程の剣で貫かれた跡がついている。
ジュエルはその跡――瘤の内部からのぞく、ある壊れた物体に着目した。
小さなそれは立方体の形をしていて、弱い光を発している。血にまみれて赤い光を発しているように見えるが…
「?」
よく見れば、微かに元の光の色が見え隠れしていた。
それは淡いエメラルドグリーンで、まるで見る者を魅了するかのような、とても深く清らかな色であった。
ジュエルが腕を伸ばし、それを手に取ってみると――
ジュウゥゥウ……
何かが焼けるような音とともに、『ヴァイス』の巨大な肉体が蒸発していく。皮膚は剥がれ、端の方から大きな骨と肉が溶けていく。
終いには
1人の人間がそこに残った。胸を裂かれ大の字で倒れている赤毛の青年が。気を失っているようにも見えたが、うっすらと目を開けていた。
「……それ。」
ぽつりと、彼は力が抜けたように言った。唐突のことだったのでジュエルは少し驚いたようだった。
「どうやって見つけたんだ?」
青年が見ていたのはジュエルの手の中にあるモノ――鈍いエメラルドグリーンの光を放つ壊れた立方体だ。ジュエルは少し沈黙してから、答えた。
「お前の体内からこの光が見えたような気がした。…でも、今となってはよく分からない。こんなぼんやりした光が体内から外界まで届く筈はないからな。」
すると青年はふっと笑った。
「懐かしいな。その光を見てから、俺はどれだけ夢を見ていたんだ?」
「?…」
その不可解な発言にジュエルは眉を潜める。すると青年はますます肩を震わせて笑った。
「ああ、自己紹介が遅れたな。ジュエル君。
俺は、ジャックってんだ。」
ジュエルは少し丸い目でジャックと名乗る青年を見つめる。それからは混乱気味だったが、何とか事態を掴もうとしていた。
「…あの瘤が『ヴァイス』だったのか。」
「瘤?」
「お前の心臓に、寄生するように絡み付いていた。ジャックは『ヴァイス』という生物に操られていたのか…?」
ジャックは「瘤、ねぇ…」と呟くと、何かを考え、思い出すように視線を宙に遊ばせた。そして、彼の中で結論を出す。
「ははっ、残念ながら違うね。ジャックとヴァイスは同一人物だ。何しろヴァイスってのは俺のファミリーネームだからな。…ジャックとヴァイスはいつでも一緒だった。その瘤は俺がジャックと名乗らなくなったきっかけってところか。」
「きっかけ?」
「リタ…そいつの存在がヴァイスの存在のきっかけだ。」
(――リタ。)
「ヴァイスはなあ、別に誤魔化してなんかいなかったぜ。俺が本当に殺人好きだったみたいだからな。自分の住んでいた街の人間を全て殺したくらいさ。
俺は殺し尽くして、1人でぼーっとしていた。そこにあいつが来たんだ。…奴は言ったよ。
『もっとヒトを殺したくはないか?』ってな。」
「当然、殺人好きの俺はその話に飛びついたってわけだ。その時、奴は俺にその光る石を見せながら、俺の名前を聞いてきたんだ。」
ジャックはおぼろげにその風景を思い出した。燃えるような黄昏時、血の海の真ん中での短い会話を。
「――君の名前は?」
「ジャックだ。」
「…随分とありふれた名前だ。それじゃああまりに合わない。」
「何に合わせろってんだ。」
「特別な者は、特別な名を持つのが相応しい。そうは思わないか?」
「……知るかよ、んなもん。」
「そもそも君が聞かせてくれた話によると、少なくとも君は過去の自分の日常を抹消した…即ち、『ジャック』という存在の証を。」
「……」
「なら、君は誰だ。全てを捨て、空っぽになった。それでもここに存在する『君』というものは…何だというんだ?」
……
……
「……ヴァイスだ。」
「ヴァイス?」
「そう、俺はヴァイス。『ジャック』が一番嫌っていた名前だ。この名前が存在しなければ、今こんなことにはならなかっただろうしな。」
「ヴァイス。
いい名前だ。
全ての生命を破滅に導く名前。とても、今の君に合っている。」
「――そう。『ヴァイス』は俺の本性そのものだった。」
ジャックは倒れたまま、高い天井を遠い目で見る。その横にいるジュエルは先程から全く表情を変えていない。彼は少し呆れたような口調でこう言った。
「……やっぱり、誤魔化しじゃないか。」
「……。」
「お前だって気づいているはずだ。お前が本当に殺人鬼だったなら、わざわざ名前を変える必要なんて無い。名前がどうであろうと、狂っていることには変わりないのだから。
ジャック。お前は自ら『ヴァイス』という殺人鬼を仕立て上げ…それを理由に、自分の罪から目を反らしたんだ。」
「……くくっ、随分知ったような口でしゃべるなぁ、お前は。…ゴフッ!」
ジャックは笑い、激しく吐血する。そして少しの間何も言えなくなる。気づけば、彼はもう殆ど虫の息であった。
「………実際俺がどうしたかったのか…俺にもよく分かんねぇ…俺の『答え』が見つけられなかった、から。………いや、今も。ずっと分かってなぇな…」
ジャックは途切れ途切れに言葉を紡ぎ始める。それは完全に独り言のようだった。
「もしかしたら…俺は死にたかったのかもしれないな。」
「死にたかった?」
ジュエルが問う。すると、ジャックは独り言を止めた。そして彼は息を切れ切れにしながらも、ジュエルの方を見て話しだした。
「俺はな…何もせず、何も考えずここまできたんだ。頭ん中空っぽだったからな。お前の言うようなことなんて…たとえそれが事実であったとしても、これっぽっちも考えちゃあいなかったさ。
死を恐れ他人に言われるままただ漠然と生きて……それで迎えた終末が、これだ。
こうなることはリタに会った瞬間から大体予想ができてた。けど、俺はまた考えなかった。本当に……大馬鹿もいいところだ…くくっ。」
彼は、そう自嘲した。
「……。最後に、1つだけ聞きたい。」
ジュエルは瞼を半分ほど臥せ、低く、静かな声で呟いた。
「リタの居場所…『SALVER』の本拠はどこにある?」
「ハッ…俺が…っお前に、協力すると思ってるのか?」
ジャックが苦しげにせせら笑う。ジュエルは、それに怒るでもなく哀れみの眼差しを向けるでもなく、淡々と告げた。
「好きにすればいい。ただ手掛かりが他になくて聞いてみただけだ。…話したくないのなら、他を当たる。」
「………。そう、かい。」
すると、
ジャックは最後の力を振り絞り、右腕を動かす。そして、殆どぼろ切れ同然になっている服の胸ポケットに手を入れた。
…カシャンッ
中から取りだした物を床に投げ出す。それは小さなメモリーチップのようなものだった。
「持って行け。」
とだけ、彼は呟く。ジュエルは微かに息を呑むと、それを拾い上げた。
「いいのか。」
「お前が好きにしろっつったんだろうが。…どうせ、今の俺にはもう関係ねぇものだ。」
ジャックはもう1度天井を仰ぐと――とても穏やかな笑みを浮かべた。
「これですっきりした。…俺は完全に俺を忘れることができる。もう…生きなくていい…自由に、なれる…。」
「――自由が死によって得られるのか?」
「もう眠りたいんだ。
ああ――
俺の『答え』が
やっと…」
ジャックは黙った。
その後、もう二度と話すことはなかった。
彼は最期まで――いや、いつまでも穏やかな表情のままだった。
ジュエルはしばらくその表情を見つめていた。静寂の中で、ただ見つめていた。
(……人は死ぬとき、こんなにも幸せそうな顔を出来るものなのか。)
そして疑問を持った。例えば、ある人間が何も意味を成さず周りを傷つけるだけの存在になってしまった時。果たしてその者にとって、死という選択がそれほど幸福なものなのか、ということに。
もう1つ。
自分もいずれ死を選択するときがくるのだろうか、ということに。
「俺にはよく分からない。」
既に返事をしなくなった彼にジュエルは思わずそうこぼす。その時ジュエルはある種の恐怖を感じていたかもしれない。自らの罪の重さに耐えきれなくなった1人の人間を、自分と照らし合わせて――
と、そこで。
ジュエルはくるりとジャックに背を向け、低く言った。
「俺は前に進むと決めた。自分の戦いを終わらせると、決めた。
…だからまだ。俺はお前みたいに死ぬわけにはいかないんだ。」
――お知らせ――
皆さん今晩は。(^-^)ARISです。いつも『地獄に咲く花』を読んで下さり、有り難うございます。
え―…毎度おなじみテスト習慣がやってきました。…と言ってももう一週間前です。いつにも増して不味い状況です(^^;)
というわけで、少しお休みを頂きます。再開は2/6となりますので、どうぞこれからも宜しく御願いいたします。<(_ _)>
ARISでした。
ジュエルはそのまま歩き出そうとした。
だが、
「――っ」
そこで突然頭がくらりとする感覚に見舞われ、足元がふらついた。思わずジュエルが自分の体を見てみると、そこには激しい戦いで作った幾つもの傷があった。
ざっくりと裂かれた背中や、肩。戦いの最中、そこから多量に出血したことが容易に伺えた。
(……流しすぎたか……)
ジュエルは心の中で舌打ちをし、瓦礫の上にかくんと膝をつく。そして、
どさっ
横に倒れる。
しかし、これくらいの出血で自分は死なないということをジュエルは認識していた。だからあまり動揺はしない。ただ、自分の体が少しの休息を要求しているということは分かったようだ。
薄れゆく意識の中、ジュエルは残された僅かな力でジーンズのポケットから携帯電話を取り出す。
それを操作し――
カタン
操作が終わると完全に気を失ったようだ。ジュエルの手を離れた携帯電話がそこに転がり、軽い音を立てた。
携帯電話の画面には『Calling』という文字が点滅している。そこから、
『はい、もしもし。……あれ?もしもーし?』
気の抜けたような声が発せられた。
………
そこは暗闇の世界だった。
どこを見ても闇しかない。いや、『無』しかないと言った方が正しいだろうか。感覚も空気もない、自分の存在さえあやふやになる世界。ジュエルはその風景を、どこからか立って見ていた。
と、その時。
(!)
ジュエルはふとある場所を見る。その暗闇の向こう側に、ぼんやりとした人影を見つけた。最初、人影は全身がもやもやとした黒い霧のようで、誰であるのかわからなかった。しかししばらく見ているうちに、徐々にその姿ははっきりとしてきた。
するとどうやら、それはジュエルがよく知っている人物の後ろ姿だった。
(――ロイ?)
ジュエルは心の中でそう呼ぶ。
彼はこちらに背を向けて立っていた。何をするでもなく言うでもなく、ただずっと。
ジュエルはそこに駆け寄ってみようとするが、それは不可能だった。いくら走っても全くと言っていいほど彼に近づかない。それどころか、走れば走るほどに彼の姿は遠ざかっていったのだ。
どうして近づけないのか?それが理解できないまま、ジュエルは走る。
暗闇に消えていく彼へと、必死に手を伸ばし――
ジュエルは目を開いた。
そこはさっきまでとは正反対の、明るい空間だった。
最初に目に入ったのは天井だ。白くて、何の特徴もない天井。ジュエルはさっきまでとあまりに違う状況に少し呆然として、それをしばらく見つめる。
(ここは…)
うまく回らない首を横の方にも向けてみると、四角い窓から静かに光が射し込んでいるのが見えた。
その後、ジュエルは重たそうに身を起こす。そこで目に入ったのは自分を包んでいる薄い服とこれまた白い布団、それに腕に丁寧に巻かれている包帯。小さな個室と、ベッドの脇におかれている細長い点滴台など。
これらによって、ジュエルはやっと今の状況を把握することが出来た。
すると彼は軽く溜め息をつき、疲れたように背を丸める。終いには起こした体をまた後ろに倒して、こう呟いた。
「夢か…。」
直後、左の方からプシュッと扉がスライドする音がする。その扉の向こうに立っていた人物は
「……あ、気付きましたか。御加減は如何です?」
そうさらりと言ってベッドの近くにあるパイプ椅子に腰掛けた。
「何だか、随分久し振りな顔だ。」
ジュエルはそれを横目で見ながら、無感動にまた呟いた。
「直前でも、連絡して下さって助かりましたよ。でないと僕達は貴方の居場所も分からずに、貴方はあのままゴーストタウンの地下で白骨死体になっていたかもしれませんから。」
「ここは…『国』本部の医務室か。グロウがここまで運んだのか?」
「まさか。力仕事は専門外ですよ。」
グロウはにこやかに笑いながら、前の方で手をひらひらと振ってみせる。
「『国』ってのは便利なもんです。任務遂行という大義名分があれば、何でもやってくれますから。…それより、ジュエル。」
「?」
「貴方が持っていたあの石は、どこから?」
「……石?」
ジュエルは一瞬考え込む。だがすぐに思い出した。真っ赤な血の色に垣間見えた、淡いエメラルドグリーンの輝きを。
「ああ。あれは『SALVER』のソルジャーの1人。多分、前にお前が戦った女と同じ類だと思うが…そいつの心臓に埋め込まれていたものだ。」
「体内に、あの個体のまま?それはまた珍しい話ですね。」
「…グロウはアレが何だか知っているのか?」
「僕も何もしていなかったというわけではありません。つい先程貴方がここで目覚めるまで、ね。」
「……。」
「ジュエル。貴方は今までに、あの石と同じモノを見たことがある筈です。」
ジュエルはその言葉にぴくりと眉を潜めると、ふぃっと視線を天井に泳がせた。
「…いや。あの石を見たのはこれが初めてだ。」
「何もそれが個体とは限りません。あと違うことと言えば…成分の密度や光の透過度、屈折率くらいのものですかねぇ。」
「それを先に言え。条件が全然違うじゃないか。」
「けど、物質としては同じモノです。」
グロウは素知らぬ顔をする。
そして、話し始めた。
「僕はこの本部にいる間、『SALVER』に関する手がかりとなるあるモノの研究していたんです。それも『国』の幹部の方々には内緒で。」
「何でそんな必要がある?」
「まあそれはさておいて。…突然ですが、ジュエルは『SALVER』の兵を覚えていますか?それは貴方の言うところのソルジャーではなく。いわゆる、雑魚の方です。」
「半人造生物。」
「そう。そして、主にそいつらが背中に担いでいたモノ。覚えていますか?」
「…背中に?」
その時ジュエルの脳裏に瞬時的に映像が流れた。
内容は、自身の戦いの記憶だった。
大きく肥大した爪を振り上げながら襲いかかってくる兵士。それを迎え撃とうとしている自分。自分はまるで独楽のように体を1回転させ――それによって脇の方をを兵士が通り過ぎる。
そこで見えた兵士の背中を、
自分は勢いよく切り捨てる。
そんな記憶だった。
ジュエルははっと息を呑んだ。
「―――ボンベだ。」
するとグロウはその瞳に一筋の光を煌めかせ、満足そうにこう言った。
「正解です。」
ジュエルは思い出した。兵士が背負っていた大きなボンベごと、体を一刀両断。その際、ボンベの中から緑色の気体が吹き出していた。
彼等の死体を思い出してみても同じだった。辺りにはボンベが転がり、そこから緑色の気体が漏れ、充満していた。
彼等は決まってボンベを背負い――それとつながったガスマスクからその気体を吸っていたのだ。
「あれとあの石が同じだって言うのか?…確かにあれも緑色だったが、とても似ても似つかない。」
「だから言ったでしょう。形はおろか、成分の密度や光の透過度、屈折率も違うんです。」
「ボンベに入っていたのは、おそらく、あの石と同じモノを気体へ昇華させたものだと思います。気体に変化させることで、奴らは石の成分を常に細胞に取り入れていたのです。
その理由ですが…アレを使うことで、人造生物の肉体形成と維持を図るためだと思われます。」
「人造生物の…形成?!」
「ええ。ですが、貴方が見たケースは違います。…これも仮定の話なんですけど、貴方の話によるとあの石がそのまま心臓に埋め込まれていたそうなので、石の成分の全てが一気に細胞に取り込まれていたわけではなくなります。
なので、成分が直接肉体に及ぼす作用も弱まります。ですが、あの場合作用が弱まることでまた違った効果を発現していたのかもしれません。」
やがてグロウは椅子から立ち上がると、窓の方に行き外の景色を眺める。ジュエルはただ、その背中に目を向けていた。
「『国』の方々に死体検分をお願いしたところ…あの方には心臓が2つ存在していました。」
「!」
「1つは、明らかにヒトのものではない形でした。そこに穴が開いていたので、その心臓の方に石が埋め込まれていたと推定できます。」
「…心臓が、2つ…。」
「そして、埋め込まれた石が及ぼす効果としては2つの心臓を拒絶反応させることなく融合させるというもので、まだ経過は途中だったんだと思います。…あんな中途半端な心臓は僕も見たことがありませんでしたからね~。」
グロウは面白そうに言う。しかし、ジュエルはちっとも面白くなさそうだった。微妙にではあったが、表情を曇らせているのが分かる。その上掛け布団をぐっと握っていた。
「その石は、一体何だっていうんだ。」
「…。」
「有り得ないだろう?見たことも、聞いたこともない。『国』の記録にだってそんな代物は残っていないんだぞ…。」
「在ったから、在るんでしょう。それに記録にだって残っていますよ。」
「なっ…」
「シーーー!」
突然グロウが人差し指を立て、勢いよくジュエルの目の前にそれを突き出す。ジュエルは、思わず喉まで出かかった声を飲み込んだ。
「ここからは、機密事項です。」
「!…」
「まあ…この部屋の音声録音は先程効かないようにしました。盗聴器の反応もなさそうなので、多分大丈夫だとは思いますけど。」
そう言いながらグロウは天井の方を見上げる。つられてジュエルもそちらを見ると、隅の所にとても小さな円筒型の監視カメラが取り付けてあった。
「幹部の方々にあれを調べていることが知られると、色々面倒なことになると思います。」
「お前、どうやってそんな記録見つけたんだ?」
「こう見えて、機械には強いものですから……これで。」
と、グロウは10本の指を素早く動かしてみせる。どうやらそれは、パソコンのキーボードを打つ仕草を表している様だった。
「ハッキングなんて出来たのか?」
「ちょっとした趣味ですよ。」
「趣味…。」
「今のところ。動いてもらっている研究員の皆さんの間では、あれは『未知の物質』として名目が立っているでしょう。
しかし、僕は表には知らされていない何かがあると、あの緑色の不気味な気体を見た瞬間から直感していました。何しろ、僕らの母親はこの『国』で人造生物を解き放ったのですからね。
そして深部の資料を調べてみたら案の定。あれと酷似するデータは存在しました。それによると、あれには既に正式な名前がついていたようです。」
「それは?」
「超生命源――『オメガ』、と。」
ブツッ――
「?!」
その言葉を聞いた時、ジュエルは何かおかしな感覚に包まれた。まるで、脳内にノイズ混じりの映像が瞬間的に流れるような――言ってしまえば、既視感とも言える感覚だった。
「『オメガ』――」
「ご存知でしたか?」
「…え、」
気付けば、グロウが不思議そうな顔をしてジュエルをのぞき込んでいた。
「…いや」
ジュエルは下の方を向いてぽつりと呟いた。心の中に突然生じた訳の分からない動揺を、少しでも隠したかったのかもしれない。
そんな様子を見てグロウはまたいつもと同じ笑みを浮かべると、あたかも物語を紡ぐかのように1つ1つの言葉を丁寧に並べ始めた。
「『オメガ』。それは、この地球に存在するあらゆる生命の源。星を巡る血液。世界の循環を保つ流れ…終末、そして始まりへと続く場所。」
その数個のキーワードに、ジュエルは少し絶句する。とても1回聞いただけでは理解できそうになかったからだ。
「取り敢えず、定義を述べてみるとそんなところでしょうか。
オメガは地球内部のどこかを巡り、その成分中に含まれる莫大な生命エネルギーとも言えるものは主に生産者である植物の成長を促し、その他海水や空気の浄化等の作用も示すとか。
また、ヒトや動物等の有機体の一部は生命活動を終えた後、微生物長い分解を受けオメガに還元されるという説もあるようです。
色々な研究データが残されていましたが、はっきりとした結果――それが物理的にどんな物質なのか、生命エネルギーとは具体的にどんな成分なのかという答はどこにもありませんでした。
何しろ試料が希少だったらしいです。地球表面に現れているオメガの脈は数少なく、しかもそれを見つけたとしても、微量の空気に触れるだけでそこのオメガは枯れてしまったそうです。
おかげで『国』は試料を見つけるのに相当苦労していたようですね。
何でも、ジュエルが行ったあのゴーストタウンの連中を使って、そこら中に穴を掘らせていたとか。…それでも、あまり見つからなかったそうですけどね。」
ジュエルは小さく溜息をついた。
「…長い話になりそうだな。」
「残念ながらそうなんですね。」
悪びれもしないグロウの態度に、ジュエルはどこか憂鬱そうにベッドに背を預けたまま手の甲を額の上に乗せ――
「どうせ興味ないと言ってもしゃべるんだろ?」
「当然でしょう。敵の情報を聞かないで貴方はどうしようと言うんですか……それとも。何か聞きたくないわけでも?」
「……」
そのまま目を閉じる。
すると、何か落ち着かないという気持ちが胸の奥に蟠っているのが彼自身感じられた。もやもやとしてよく分からないその塊に少し苛ついたように、ジュエルは軽く前髪を握った。
「――いい。続けてくれ。」
「さいですか。」
その短い会話が終わると、グロウは再び流暢に話し始めた。
「そうですね。まず希少な筈のオメガが何故今出回っているのかということですが、恐らく『SALVER』の雑魚に使われていたやつは人工的に作り出したオメガです。
先程言いました、有機体の一部は生命活動停止後にオメガに還元されるという説ですが。あのボンベの中身を調べさせてみた所、大量の生物由来の物質…例えばヘモグロビン鉄や細胞質ゾル等が高密度で検出されました。」
「ですがあまりにもそのような不純物が多いので、それは純粋なオメガとしては成り立っていません。中途半端な機能を持った言わば偽のオメガが、あのような半人造生物を生み出したのではないかと思われます。」
「…なら、純粋なオメガを使えば完全な人造生物が作れるってことなのか?」
「そうですね。例えばジュエルが持っていたあの石は、不純物の入っていない完璧に純粋なオメガの結晶です。それを心臓に埋め込まれていたあのソルジャーは人造生物ではありませんでしたね。…だから使い方にもよります。気体や液体にすればたちまち体内に吸収され、人造生物が出来上がるかもしれません。」
「そもそも本当にオメガが作り出すって言うのか?俺達がずっと狩ってきた、人造生物を…」
ふと、ジュエルは何かに気づいたように息を呑む。そして少しの間の後、自分に聞かせるようにこう呟いた。
「20年前、初めて人造生物が放たれた原因も――」
その時。
突然空気が凍り付いた。
「?!」
ジュエルは肌でそれを感じ、反射的にグロウの顔に目を向ける。すると、ある『変化』に気付いた。
(何だ?グロウの瞳が、
……紅い?)
確かに。その時グロウの瞳は紅に染まっていた。まるで血の色を湛えたような、赤い、紅い色。
その表情は無かった。
つまり、笑ってはいなかった。
けれど、それから紅い色はグロウの瞳から一瞬にして消え、元の黒に戻った。そして本人は
「そう。実はそこなんですよ。」
と何もなかったかのように笑う。ジュエルは、しばらく目を丸くしたまま動けないでいた。
「ジュエル。そんなに目を見開いてどうしました?」
「今、お前……目が。」
「目?」
「目…瞳の色が、赤かった。」
「…確か最近鏡を見た記憶によれば、僕の目は黒かったと思いますけどね。」
グロウは半分冗談に付き合うような口調で言った。
「でも、」
「きっと日の色が反射したんじゃないですか?ほら、窓の外。いつの間にかもう夕方です。」
「!…」
2人は窓の外を見る。するとグロウの言う通り、外は燃えるような黄昏時で、気付けば部屋の中も若干赤い光に染まっていた。
「まあ僕の目の色なんて、今はどうでもいいことです。少なくとも白くはなっていませんしね。…それよりも、そこで興味深い話が出てくるんですよ。」
「……。」
ジュエルは少し納得のいかない顔をするが、その後グロウの瞳に関しての言葉を発することはなかった。元々控えめな性格なせいか、それとも深追いするべきでないと判断したのかは定かではないが。勿論、グロウもそのことに再び触れることはなかった。
「オメガが人造生物を生み出す。その裏付けは取れているんですよ。『国』の記録の中にあった2、3個の研究データによってね。」
「…どういうことだ。」
「全部説明するとそれこそ本当に長くなりますので、一部噛み砕いて伝えますね。」
そう言うと、グロウはどこからか小さな手帳の様なものを取り出す。片手で手帳を開き、それからは時折そこに目を通しながら話した。
「結論から言うと、オメガは20年前、いえ、それ以前に発見され人体改造技術に使われていました。使われていた大半も人工的なものだったようですが、『国』は3人の研究者を幹部にして極秘のオメガによる人体実験を繰り返していたんです。
その3人の幹部とは、僕等の『母親』であるルチア・ミスティ。後にルチアの夫となるマルコー・ガーラント。そしてもう1人はオメガを最初に発見した人物…
名前を、リタ・アルティマと言います。」
「その名前は、聞いたことがある。」
「へぇ?私は初耳でしたけど。」
「…ジャックが言っていた名前だ。どうやら、そいつがジャックの中に『ヴァイス』を生み出した存在らしい。」
「つまり、それはあのソルジャーの上司の名前というわけですか。何と…安々と教えてくれたもんですね。」
「ジャックの事情はよく知らない。でもあいつは全てを話した後、最後の最後にすっきりしたと言っていた。思うに、あいつもただの被害者だったんだろう。」
その淡々としたジュエルの言葉にグロウは少し吹き出す。そして肩を揺らして小さく笑った。すると、ジュエルはそれに心底疑問を持ったようだった。
「何が可笑しい。」
「やれやれ、ジュエルは相変わらずのお人好しなんですね…その仏頂面で。一種のツンデレなんですか?」
「ツン…?何なんだ、それ。」
「ははは、まぁそれはどうでもいいことなんで置いておくとします。」
カラカラとした笑い声が響く中、ジュエルは益々首を傾げるばかりであった。
「しかしですね。記録上では、リタ・アルティマはもう死んでいるんですよ。人造生物が放たれた日の直前に。」
「!…でも確かにあいつは、」
「そうなると。幾つかのケースが出て来ることになりますね。」
「ケース?」
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