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クロス( ♀ gAVFh )
11/11/21 10:37(更新日時)



高校時代
同タイトルで
脚本を かきました。

人間不信の少女が
廃屋のビルの地下室で
復讐のため 爆弾をつくるという内容のものでした。


真実は
私にとって 永遠のテーマ。



時が流れ 絵空事ではない 不信感や絶望を知ることになった 私の お話しです。



No.1686010 11/10/11 02:32(スレ作成日時)

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No.51 11/10/13 21:58
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 50

夫は






いた。






J君と 2人で。










放心し

ハンドルに顔をうずめる私。



「ママ…?」

心配そうに 摩耶が呼ぶ。




どうしよう


どうしよう





どうしよう






言い訳もない。





空き地の 目の前だ。

とまった私の車に 夫もJ君も 気づかないわけがない…




どこかで 気の荒い夫を
『怖い』と思っている私は


一気に

イタズラを見つけられた
子供のようになってしまった。





安堵などない。








人影が 近づいて来るのを


目の端で とらえた。



No.52 11/10/13 22:14
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 51

窓がノックされる…



顔をあげた私の目に

J君の笑顔が うつった。




窓を 開ける。


「こんばんは!」



摩耶が 元気に挨拶をした。



「こんばんは♪
おりこうだなぁ(笑)」



声も




出ない。




「リー…」

J君と J君の奥さんと娘さんは 私を そう呼ぶ。


私は 『リー』と呼ばれることが 好きだ。




「リー 大丈夫だから」



涙があふれる。




「バカなまねは 俺がさせないって 言ったでしょ(笑)」





私は 声をあげて泣いた。



No.53 11/10/13 23:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 52

私を『リー』と優しく呼んでくれた J君の奥さんは


去年

32歳の若さで亡くなった。


子宮癌だった。


女の子と男の子

2人の宝ものを


J君に 残して…





まるで


奥さんが

『大丈夫だよ』
と言ってくれてるみたいだった




奥さんも 同居で長男の嫁。

旦那ぬきで
2人で遊ぶことも多かった。


綺麗で 根っからのヤンキー

いつまでも 年をとらない彼女は 私の 憧れの女性だった。



『大丈夫』

彼女は いつも そう言った。


本当に 大丈夫な気がしてくる…







薄暗い 駐車場でも

夫の怒った顔は 見える。




察したJ君が

夫に 声をかける。


「雄! もう今日は帰れ(笑) リーに 心配かけんな!!(笑)」






帰ったら…








さっきまでの 私の勢いは

もうすでに
はるか彼方に 遠のき



後悔と


頭痛だけが残った。




No.54 11/10/14 00:30
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 53

「信じられないのか?」



やはり 言われた。






「ごめんなさい」




謝りながら

理不尽な気がしていた。



この人は

なぜ 私がそうしたかの

理由を考えないのだろうか




でも 言えない。



その後

続く言葉が こわいから…




自分のしたことが

裏目に出たこと


なぜだか それにも


怒りが わいた。




夫の言葉通り

居ると言った場所に
彼は 居た。



ただ それだけだ。

なにも 好転していない。



変化が あったとすれば

夫の態度が

ますます悪化しただけ。






信じる?




信じたいよ。



あなたなんかより

何倍も 何倍も



何倍も






信じたいんだよ。



No.55 11/10/14 00:54
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 54

こうして考えてみると

あの頃の私の辛抱は



一週間

と決まっていたかのようだ…




疑ってしまったために

いや


疑って
行動してしまったがために


私は さらに

身動きが
とれなくなってしまった。



あいかわらず

帰りの遅い夫。



笑わない夫。




電話してる?


会ってる?





笑ってる?




悔しい 悔しい。


頭が おかしくなりそう





ふいに


夫の言葉が思い出された。



離れると

大切なものが わかる。






あまりにも 短絡的な考えを

今なら笑えるが



あの頃の私は 必死だった。




夫の気持ちを 取り戻すため



私は 摩耶を連れ

また 家を出た。



能面の彼との生活が

ふたたび始まった


一週間後の 木曜日に…



No.56 11/10/14 02:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 55

また 戻ることになった実家は

とても居心地が悪かった。



私は 兄嫁が留守のうち
母に電話をした。



すぐに帰ると言ってくれた言葉に安心し 少しだけ眠った。



もう 半月以上 まともに 食べたり眠ったりしていない。



思考も うまく はたらかない…



実は 私が結婚する頃

この家に住む兄も


浮気をしている。


兄嫁は 誰にも言えず
私が 嫁いだ家を
何度か 泣きながら訪れていた


私は 一緒に暮らしてきた 姪や甥を傷つけた兄が許せず

罵倒しに ここへ来たりもした


激しい気性の兄嫁が
「死んでやる!」と泣き叫び
道路へ飛び出すのを
母とともに 押さえた事もある


長い 長い 争いを経て

今 穏やかに暮らす 兄家族。




後に言われることだが

兄嫁は


私に すがりつく根性が足りないと 思ってたらしい。


あの時 私を すぐに迎えに来た夫だから 見込みがあると思っていた分 よけいに…




どっちみち

家を空けた この動きも
また同様に



私にとって

最悪の結果を生んだだけだった…



No.57 11/10/14 03:32
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 56

もともとは
行きも帰りも頼んでいた
摩耶の幼稚園バス。


二年保育で 今年入園させた私は かなり心配性な母親で
家で 娘の帰りを待つことが出来ず 必ず 幼稚園まで迎えに行くようになっていた。


摩耶ちゃん 帰りはいつも車なのでと バス代が 半分戻されていたが…


どうやら 行きのバスも

お断りになりそうだ。



実家の前で バスに乗るようになったら 暇な主婦達の かっこうの餌になる。



幸せなふりも

けっこう 難しい…







「摩耶ちゃんママ♪」


「あ(笑) Nちゃんママ…」


Nちゃんママは 最初から 行きも帰りも 自分の車で 送り迎えをしていた。


「摩耶ちゃんママ 朝も毎日 車にしたんですか?」

「せざるをえない(笑)」

「ん?」

「家 出ちゃったよ(笑)」

「え!?」



「… もう だめかな」



「だって死ぬんですよね? その女!!」


久しぶりに笑った。


Nちゃんママは 優しく可愛らしい顔に似合わず 時々 恐ろしいことを 平気で言う。



「お茶飲みましょう♪」




また 救われた。



No.58 11/10/14 05:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 57

「うちは パパいたって 母子家庭みたいなもんですから(笑)」


Nちゃん宅のダイニング

私の大好きな コーヒーをいれてくれながら
Nちゃんママが 笑う。


「行事だって 参加してくれたことないし… あっ これ 美味しいですよ♪」



Nちゃんママも 義両親と同居だが 生活スタイルが別々になっており とても自由だ。



「もし離婚したら 運動会も お遊戯会も 父の日も(笑) ずっと 一緒にいようね(笑)!」



「(笑)どうせまた すぐ迎えに来ますよ… 摩耶ちゃんパパ」





それを期待して

家を出た私だが



そうはならないこと





ぼんやりと わかってる。





「ところで Eちゃんママと 最近会ってるんですか?」

「ううん あれからもう全然」



彼女の家とウチは

目と鼻の先なのだ。



それからまた 彼女の奇行に ハナが咲き(別スレたてたい程 すごい😱💦)ずっと 笑っていられたけれど…





胸の奥は


ずっと



チクチクしたままだった。











そんな Eちゃんママと

明日 会う事件が起きる…



No.59 11/10/14 11:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 58

夫は いったい どうしたいのか…

私も 少しずつ
考えられるようになって来た。


彼の性格上
私が 放っておけば
何も前に進まないことは
わかりきっている。



けど…


傷ついているんだ 私。


もう

誰に相談する気力もない




かた時も 頭から離れない
夫と女のカゲ。

『やめろ』と拒否された
あの夜。



心は ズタズタだった。





それでも 何かしなくてはならないと 重い心と身体を ひきずって 此処へ来た…







『助けてください』
なんて 言いません。

私は 大丈夫。


乗り越えられない事なんて
ないですよね…



私は


生きているんだから。






シンと冷たくなった
静かな風の吹くなか


私は



J君の奥さんの お墓に

手を 合わせた。



No.60 11/10/14 12:06
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 59

長期戦になる。


私は 覚悟を決め
もうしばらくの 荷物を取りに
家へ帰った。




義母とも 話しをしよう。

大騒ぎをする人ではない。


どこか
自分と似たところのある義母を

好きにはなれないまでも
信頼はしていた。





二階の自室に入る。

カーテンも
閉めきったままの
どんよりとした空間。


夫は いったい
毎日ここで
何を考えているのだろう…

楽しいわけはない。



本当は

自分のそばに


私と摩耶がいないことを
悲しんでいるはず。





片付けることもされないまま
山になった 灰皿。

乾燥したダスター。




充電器から

はずれたままの


コードレスフォン…


















なぜか


身体の中を



大きなものが 波打つ。








私は それを手にとった。



No.61 11/10/14 13:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 60

発信履歴…



着信履歴…








これは…





頭を殴られたような衝撃。


自分の心臓の音が

聞こえはじめる。
とても速く…







落ち着いて。








手が ふるえる。







リダイヤルを


押…








待って。





こんな事実と直面しても

私は まだ
夫を 恐れている。

気が立てば
暴力をふるう事もあった

でも 私が怖いのは
そんな事じゃない。


私という人間が
さげすまれることを
おそれている。


卑しい人間

恥ずかしい人間


そんな人間に なりさがった私を 見られたくない と

このごに及んで

まだ 思っている。







プライドなのか


愛されたいのか…











発信履歴に残る番号は


ポケベルだった。



この部屋の番号を送れば

それを目にした女は



一瞬でも
幸せになるはずだ。


そして
この電話機にも履歴が残る。


どちらも
起きてほしくないこと。



興奮した頭を
フルに はたらかせる。


確かめたい。

確かめたい。

確かめたい。











私は

手早く その番号をメモし


Eちゃんママの家へ

走った。




No.62 11/10/14 14:12
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 61

今思えば


なんで Nちゃんママに
助けを求めなかったのだろう…



興奮していたんだな。

目の前にある 電話機という 選択でしか なかったからな…






ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン




興奮している私は

けたたましく
ドアチャイムを鳴らす。


息が きれる





早く

早く 出てきて。






ガチャッ




「摩耶ちゃんママ!」

驚いた顔の彼女が言う。

こころなし 嬉しそうで
胸が痛む。




「突然ごめん!! Eちゃんママ 何も聞かず 電話を貸してほしいの…」


「え?」


「事情は 済んだら必ず話す。 だから お願い!!」

乱れる息と一緒に
私は 深々と頭を下げた。


「かまわないけど…
とりあえず あがって!」



No.63 11/10/14 20:19
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 62

久しぶりだな…

Eちゃんママの家に入った時
不思議な安堵を感じた。


それは きっと


何も知らなかった

幸せな私が

笑いながら 過ごしていた
空間だったからだろう。



「面倒なことに 巻き込まれたりしないんだよね?」


Eちゃんママの言葉で

現実に
引き戻された。




「それは絶対ない!
約束する!!」


「じ… じゃあ どうぞ」



勢いにおされ
それ以上は何も言わなかった。




私は

ひとつ 深呼吸すると



ゆっくりと
プッシュボタンを押した。







『こちらは
ポケットベルです…』

機械的な アナウンス。


わかってはいたが

ショックだった…






Eちゃんママの


視線も 痛い。





それでも まだ

ここへ来たことで


私は 少しの冷静さを
取り戻しつつあったのだろう



案内通り



この家の番号を プッシュ。






受話器を置いた。



No.64 11/10/14 20:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 63

あとは…



この電話のベルが

鳴るのを 待つだけ。




数分なのか


数十分なのか



それとも




鳴らないのか。






胃が せりあがって来るような 吐き気にも似た感覚を
なんとか おさえながら


私は

Eちゃんママに


「ごめんね…」


と言った。



私の様子に

ただならぬものを感じた彼女は


幾分 優しい目で見つめる。





「浮気してるんだ(笑)
うちの旦那…」




「…え?」



「女のポケベル…
… だと思う。」



言いながら

間違いを 祈っている 私…






「うそ…でしょ」










彼女の声を


かき消すように




電話のベルが 鳴り響いた。



No.65 11/10/15 02:10
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 64

反射的に 受話器をあげる。







数秒の無言の後











『もしもし…』











忘れない。


あの声






トーンは低いが


確実に 若い女の声。

不安げな…












現実。







カーっと
頭に 血がのぼる。



わけが わからぬまま

私は 受話器を叩きつけた。



「あ…! ごめん」




Eちゃんママが
首を 横にふる。






「ありがとう」


ふるえる声で言い残し



私は また家まで走った。

空き地を通りぬけ
全力で 走った。











玄関を開け 家に飛び込むと

出合い頭に
義母と 体当たりをした




お互いに よろける。







それが
合図でもあったかのように

私は 叫んだ。









「どうして あたしが
こんなことされなきゃ
ならないのよ!!!!!!!」



No.66 11/10/15 03:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 65

生まれてから

ただの1度も


人に向けて
激昂したことはない。




狂いそうな怒りと

渦を巻く
ドス黒い 憎しみ。






「ママ… どうした…」


義母が 放心している。




身体が ふるえ出す。



「バカにすんな…!」


私は そういうと

台所に行き 大量のゴミ袋を 抱えて 2階へと走った。



驚いた義母が

追いかけてくる。





バカにしやがって

バカにしやがって…



つぶやきながら

ゴミ袋に 服を詰め込む 。



口も

身体も


勝手に動いているかのようだ




「ママ…」

おろおろする義母に


「女がいるんだよ!」


「 … 」




「私も摩耶も
もう いらないんだって(笑)」



「なに言って…」

「もう たくさんなの!!」






もう







だめなんだよ…




No.67 11/10/15 04:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 66

「もう 帰らないと
思ってください…」


「ママ そんな事言わないで」

義母が 泣いている。


「パパと話しをしに
夜に また来ます」



「雄太追い出すから…
ママと摩耶は ここにいて…」

泣きくずれる義母。




こんなにも絶望しているのに

私は 頭の中で

何年か先の
義母との会話を想像していた…



あんな事もあったね



って

笑ってる 私達。






根が 楽天的なせいだろうか



もうだめだと 思いながらも


やはり そんな事
起こるわけがないと
思う 自分。




きっとこれは

長い長い
夫婦の道のりの


ひとつ目の峠なだけ。






描いたものを こわせない私。







こわすわけには



いかないと思った。



No.68 11/10/15 05:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 67

その晩

私は摩耶を連れ

ふたたび
この家を おとずれた。



「ママ ちょっとパパと お話しあるから 摩耶は じいちゃんと ばあちゃんと遊んでてね」

「うん♪」



義父母も 嬉しそうだが

とても辛く
複雑だっただろう…





2階へと あがる。



「寝てんの?」



ソファーに 横になっていた夫へ 声をかける。

内心
自分の威圧的な声と
話し方に おどろいていた。



上半身だけ
のそっと 起き上がる。


いやな顔だ…




ふて腐れた子供みたいな。


今なら【逆ギレ】なんて言葉が ピッタリとあてはまる 態度




私が男なら


ぶん殴ってる…





「なんで嘘つくの?」

「なにが…」


「連絡とってんじゃん。
女と」





… ダンマリか。



怒りなのか
恐怖なのか

私は 小刻みに震えていた。





「別れないからね」






夫が

鋭い視線を向ける。




「あんた達だけ
幸せになんかさせない」



No.69 11/10/15 06:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 68

「幸せになんかなれないんだって! 先なんかナイ女なんだって話しただろ!!」


やっと 口を開いたかと思えば…




「先のない女なら 何をしてもいいの!? 人のものを盗ってもいいの!? 人を傷つけても いいの!?!?!?」


もう



とまらなかった。










天使は







堕ちたのだ。









「病気なら 優しくしてもらえるんだね。 じゃあ 私も病気になろうかな(笑) でも残念だけど 私は健康だから(笑) 健康すぎて ごめんなさいね!!」



殴られる…!




そう思った時






「あいつ…

いつも…


『奥さんに悪い』

って 泣くんだ… 」









オクサンニ



ワルイ?











今までの
何百倍ものエネルギーで
怒りが わいて来た










「ふざけんな…」





No.70 11/10/15 13:54
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 69

「 … 女に



女に 会わせて」





「…なんだって?」





いつも 穏やかな私。

めそめそ
泣いてばかりの 私。


夫は 私を


若い頃

『人形みたいだな』
と 笑ったことがある。

それは

可愛いや 美しいを
ヤユした言葉ではなく


なんでも言う事をきくから…


そういう意味だ。




本当に その通りで

つき合っている当時も
夫婦になってからも


私は いつも

彼の
人形だった。


さからわない。


したがう。



優柔不断の私には

それが


とても 居心地のいい

場所だったから。





そんな私しか知らない夫は


間違いなく今

戸惑っていた。





「会わせなさいよ!
話しをさせて!!」


  • << 72 「なんで 会う必要がある?」 「バカにされて 黙ってろって言うの!?」 夫の誤算。 女の思いを 私に伝えたら 私が 感謝すると思った事。 「バカになんて してないだろ! 悪いと思うことの どこがバカにしてるんだ!?」 はっきり言って 夫は頭が悪い。 人形は いつでも こうして 腹の中で 彼を見下していたんだな。 私のプライドを ズタズタに傷つけた その言葉の意味を 馬鹿に説明しても 絶対に わかるわけがない。 ましてや 興奮している私は その したたかさに 丸呑みされている馬鹿な夫が 愛しくて たまらなくて… 怒りの矛先は 女にばかり 向いてしまうのだ。 そして これも あの頃の 私の 幼さゆえなのか 冷静さに事欠いた私は 知恵の ひとつもはたらかず 発着信の履歴を メモすることすら していなかったのだ。 私は 勢いよく立ち上がると 電話の 子機へと 手を のばした。

No.71 11/10/15 14:25
通行人 ( INTknb )

まじでこのカス旦那と浮気相手のカス女にムカつく💢地獄に落ちればいいのに💢
カス女の
自分は死ぬ
とか
奥さんに悪い
とか
マジでマジでマジで
殴り殺したい💢

主サン!しっかり退治してください!
バカ女の会社に
私だったら、浮気バカ女がいるって会社に電話✨ポストに張り紙✨
実家に襲撃✨


旦那はゴミ箱にいれてやる💢

そんな糞旦那イラネ💢
娘がいれば十分幸せです✨

  • << 73 通行人さん💖 レス ありがとうございます💖 一緒に 怒ってくれて 嬉しいです🍀🍀🍀✨✨ 15年以上前の話しなので(笑) 残念ながら 今となっては どうしようもありません(;_;) 幼かったんですね… 自分のとった行動には 後悔ばかりです。 でも 私 今 幸せだから☺🍀 復讐した気になってます😂💦💦 ありがとうございました🍀🍀🍀

No.72 11/10/15 14:28
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 70 「 … 女に 女に 会わせて」 「…なんだって?」 いつも 穏やかな私。 めそめそ 泣いてばかりの 私。…

「なんで 会う必要がある?」


「バカにされて 黙ってろって言うの!?」




夫の誤算。





女の思いを 私に伝えたら

私が 感謝すると思った事。




「バカになんて してないだろ! 悪いと思うことの どこがバカにしてるんだ!?」




はっきり言って

夫は頭が悪い。





人形は いつでも

こうして



腹の中で

彼を見下していたんだな。




私のプライドを

ズタズタに傷つけた
その言葉の意味を


馬鹿に説明しても
絶対に わかるわけがない。



ましてや
興奮している私は

その したたかさに 丸呑みされている馬鹿な夫が 愛しくて
たまらなくて…


怒りの矛先は

女にばかり
向いてしまうのだ。




そして これも

あの頃の 私の
幼さゆえなのか

冷静さに事欠いた私は

知恵の ひとつもはたらかず


発着信の履歴を
メモすることすら
していなかったのだ。




私は
勢いよく立ち上がると


電話の 子機へと

手を のばした。




  • << 74 横になったまま 動こうともしなかった夫が はじかれたように 飛び起き 私に 向かって来る。 手が 触れたと同時に 子機は 奪われた。 「なにすんのよ!?」 鬼のような 顔をしていただろう… 夫の腕に渡ったそれを 私は 力ずくで取り返そうと 夫に 飛びつく。 無言で それでも力強く 夫の胸に抱えこまれた その 真っ黒で無機質な物体が 女に 見えた。 そんなに 守りたい? 私は 夫の腕に 思いきり 噛みついた。

No.73 11/10/15 14:35
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 71 まじでこのカス旦那と浮気相手のカス女にムカつく💢地獄に落ちればいいのに💢 カス女の 自分は死ぬ とか 奥さんに悪い とか マジで…

通行人さん💖

レス
ありがとうございます💖


一緒に 怒ってくれて
嬉しいです🍀🍀🍀✨✨



15年以上前の話しなので(笑) 残念ながら 今となっては どうしようもありません(;_;)


幼かったんですね…


自分のとった行動には
後悔ばかりです。


でも

私 今 幸せだから☺🍀



復讐した気になってます😂💦💦


ありがとうございました🍀🍀🍀


No.74 11/10/15 15:16
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 72 「なんで 会う必要がある?」 「バカにされて 黙ってろって言うの!?」 夫の誤算。 女の思いを 私に伝えたら 私…

横になったまま

動こうともしなかった夫が


はじかれたように 飛び起き

私に 向かって来る。




手が 触れたと同時に

子機は 奪われた。



「なにすんのよ!?」




鬼のような

顔をしていただろう…




夫の腕に渡ったそれを

私は 力ずくで取り返そうと
夫に 飛びつく。



無言で

それでも力強く

夫の胸に抱えこまれた
その

真っ黒で無機質な物体が







女に



見えた。








そんなに 守りたい?












私は 夫の腕に


思いきり 噛みついた。


No.75 11/10/15 18:17
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 74

「…!
なにやってんだ!?
てめぇー!!!!!」



加減のない力で
はねのけられた私は
ローボードに 倒れこむ。




大好きな



雑貨たちが



私の身体で 飛び散る。






「… いってぇ」

苦痛に
顔をゆがませる夫。











「幸せに…」







「幸せにするって
言ったじゃない!!!」





涙が


あとから あとから

こぼれてくる。







夫の コタエはない…









「どうして…
こんな事になるの?」






「私…



なにか

悪い事した?」






涙も 鼻水も
ぐちゃまぜになった顔で

小物たちを ひろい集める…





手の中にある
それらを

元の場所に戻しながら



もう
かえっては来ない

幸せだった自分を

思う。










「パパは…



いったい
どうしたいの?」








聞きたくはない
夫の本心を


それでも

私は 知りたかった。




No.76 11/10/15 18:50
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 75

わからない…





と 夫は言った。





それは かつて

私の口癖で


つねづね
夫がバカにしていた言葉




「また おまえは『わかんな~い』か(笑)まったく(笑)」







わからない



って



すごくラク。





逃げられるから…




とても 卑怯な言葉なのだと

この時 知った。






「わかんないって…


なにが?」





「そばに… いない方の人間のことばかり 考えてしまう」



どういう事?




「おまえと摩耶が ここから いなくなった時 俺… おまえ達のことしか 頭になかった」




これから 何を言われるのか…


そんなこと

この時は どうでもよかった




ただ


話しをしてくれる彼が

素直に嬉しかった。






No.77 11/10/15 19:16
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 76

「おまえ達が 帰って来てくれて なにもかも 終わったんだ… って思ってた」



悪いことが…


と いう意味だろう。






「だけど 本当は そんな簡単なことじゃなくって おまえは 俺が考えてるより ずっと ずっと 傷ついてて…」








気づいてたんだ…


私の痛み。







「そうしたら…

俺のせいで傷ついた 今
そばにいない あいつが …

気になって 気になって

しょうがなくなったんだ」





ズキン


と 心臓が鳴る。






「Jちゃんにも ずっと クギさされてた。 絶対 バカなことすんな!って…」





「だけど…」




もう起きている事なのに







とめられるなら





とめたいと思った。











その後の

夫から出る言葉が


とても



とても





こわかった。




No.78 11/10/15 21:38
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 77

それで…


電話を したの?




聞きたくないのに

先をうながす



矛盾してるな…



私。






「電話をかけたのは…」






「おまえが 駐車場に来た…


次の日だ」




… え?




「信じてもらえてないんだ…

って あれで

ハッキリわかったから」






え?











… え?








また…







私が


引き金を ひいたの?






どうして



私のする事は いつも







裏目に 出るの…?









これが
夫の本心ではなく


私に

非があると思わせる手段ならば





夫を 馬鹿だと思いこんでいた私の 絶対的な 間違いになる







だけど


どう 自分を救おうとしても




それは

あまりにも無理がある。





この人は


思ったままを



口にしているだけだ。









失敗したのは








私なのだ。



No.79 11/10/15 23:21
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 78

もし
あの夜 拒まなければ…



もし

あの日


駐車場に 行かなければ…








私の中の


もし







またひとつ増えた。





決断するのが

恐ろしくなる。



自分の判断に


自信が もてなくなる…






してはいけない事を

したわけでもないのに


私は ひどく
自分を 責めた。




「私が… 悪いんだね」




「私が


みんな こわしてる」



「ちがうっ!!」




びっくりした。




「悪いのは 全部俺だ」





「おまえは…



なにも 悪くない」






そんな言葉いらない。





おまえのせいだと

罵られた方が どんなに楽か…







「俺は ひとりになりたい」






今…


なんて?





「あいつとも

おまえ達とも離れて


ひとりになるべきだと思う」





予想してなかった

夫の言葉に



私は しばし
茫然と していた。



No.80 11/10/16 01:18
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 79

「寒くなりましたね~」

Nちゃんのママが
ブルっと首を すくめる。


11月もなかばだ…

冬の足音が
聞こえはじめるだろう。



状況は

なにも変わっていない。


実家は

針のむしろだ…



夫に

「ひとりになりたい」


と言われてから


私は 何も疑うことなく

その言葉通りを信じた。



無理強いをして
そばにいることは

私には得策でないと

思えたから。



そんな私を

兄嫁は 無言で威圧してきた。


母も 帰って来てくれてはいるが なにぶん…

気性が 私と同じだ。

穏やかな母は

兄嫁には かなわない。

家の中の 力関係とは

立場ではない。


人間的な 強さ弱さであると
とても 思わされる。





「マ~マ~!」

園庭で遊ぶ
摩耶と Nちゃんが
駆けよって来る。



「さぁ 帰ろうか!」


元気なふりをしてれば
元気も出てくる!






はぁ…

帰りたくない。




「マック 行きたい人~♪」


Nちゃんママが
大声を出す。



子供達が
「は~い!!」

と 手をあげる。



「は~い!はい!はい!」

負けずに
私も 手をあげた。



No.81 11/10/16 02:58
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 80

キッズコーナーは

子供達の 笑い声や 叫び声で 賑わっている。



「どいつも こいつも
バカばっかりですね!」

憤慨しながら
ポテトを 口に運んでいる。


「Nちゃんママ可愛い」

「やだ💦摩耶ちゃんママ! 何言ってんですか💦💦」



私はいつも

彼女に 感謝する。


こんな時間を くれる事…



熱いコーヒーを すすりながら

優しい気持ちに包まれた。




「私思うんですけど…」

「ん?」

「実家… 出た方が いいんじゃないですか?」



実家を出る…



考えてもみなかった。




すぐに 戻ることになるだろうと あまい考えでいた私も

それが無理である事は


うすうす
気づき出してはいた。




「でも… どこへ?」


「アパート借りるんですよ!」



アパート…



「もちろん お金は 摩耶ちゃんパパに出させるんです!!」










「お金は自由にさせない! 」









何かが





動き出す気がして来た…



No.82 11/10/16 04:08
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 81

私の
ささやかな希望は


思いもかけない展開で

叶えられる事になった。



「言いたくないんだけど…」


数日後

近所のスーパーで

偶然出会った 夫の乗る車の チームの仲間に言われた。



「うちの旦那 この間 〇〇さんに会ったって… 」


それは
他県の ドライブインだった。


「友達と… 何人か 女の子が 一緒だった… って」







夜のスーパーの

照明に照らされた

リノリウムの床が


ゆらゆらと 揺れた。





倒れそうになるのを

必死で こらえる。









殺意さえ


芽生えた。







なんだろう…





悪い夢を 見ているのかな…







私は ずっと頭の中で

仮に
離婚するような事になったら


『私が浮気をした』と

人には言ってもらうよう
夫に
頼もうとすら考えていた。



それほど

『される』という行為は


私にとって

羞恥と屈辱に まみれていた。





それを…







人と出会うような場所に

一緒にいるなんて行為を

ぬけぬけと…











私は

夫のいる家へと


車を走らせた。




No.83 11/10/16 04:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 82

「どっちとも

別れるんじゃなかったの(笑)



恥ずかしいまね
すんじゃねーよ!!!」





憎悪だけの感情で

夫と向き合うのは


初めてだった。






狂ってる…






私もまた


狂っているんだろう。







「摩耶を…


どうするつもり?」




「あんたの勝手で

父親のいない子にするの…?」





「なんで私達だけが

すてられるの!?!?」



「捨てるなんて言うな…」



「捨てるんじゃない!!

あの女を 拾って
私を 捨てるのよ あんたは!」



「理由は… なに?」






「あの女が拾われて

私が 捨てられる理由は …


理由は なに?…」








「おまえは…







強いから…」











強い?


私が 強い?






「おまえは 俺がいなくても

生きていける。




摩耶も… いる。」




だけど あいつには



俺しかいないから













頭の中を

小さな虫が はいまわるように



続く言葉を 乱してゆく











「じゃあ 死ぬから…」






「摩耶と一緒に




私 死ぬから…」




No.84 11/10/16 09:39
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 83

何を言っても

ほとんど無反応だった夫が


初めて

激しい感情を ぶつけて来た。





「死ぬとか言うな!!」



精一杯


努力してきた…




頑張って

頑張って

頑張って



必ず やり直せるって



なんとか


呼吸してきた。





強いから


ひとりでも 生きていける…?





かっこつけて

すがることもせずに



夫を 女に差し出すようなことを言った あの…





深い 真っ黒な


地獄のような穴に

つき落とされた あの日。





あの日から ずっと


夫の目には



私は 強い女と

映っていたの?








だとしたら…







すべてが


無駄だったと




絶望するしか


ないじゃないか…











「死にたいよ もう…



摩耶は


守るもので



私を守ってはくれないよ…





私には

支えがないんだもん




私は


ひとりでは

生きられないよ…




だから 死ぬ




摩耶も

残していったら かわいそう




だから 一緒に死ぬ」








「死ぬなら

おまえ 一人で死ね」










「摩耶を

道連れにしようとすんな!!」




No.85 11/10/16 10:53
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 84

怖かったんだな…


あの人。





時が過ぎれば わかる事も


渦中では

言葉しか よまない。





『一人で死ね』は



今までの

どんな言葉


どんな行為よりも



私を

【イラナイ人間】


と思わせてくれた。








『死ぬなんて言うな』

って言われた時


ほんとは 少し

嬉しかった。



まだ 彼の気持ち

動かす力



私にもあるんだ って…





子供を 盾に取ったと

思われたのかな…




摩耶に たいしての愛情が

あまり
うかがえない夫だったから


考えもせずに

そう言ったんだけどな…


摩耶は 私が大好き。


私が いなくちゃ

生きていけないもの。






『一人で死ね』




か。



ははは…




そうだよね。



摩耶の命を奪うなんて



かわいそうだから

一緒に死ぬだなんて




エゴ以外の
何もんでもない…






押し黙る私に


不安を感じたのか





夫は

少し優しい声音で話す。



「俺なんか イラナイだろ…」
って。










「おまえらなら… もっと いいヤツあらわれるから…」


って。












私は

どこまで


なめられてるんだろう。



No.86 11/10/16 12:31
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 85

邪魔だから

消えてくれ…



って そう言ったら?






ごはんを食べたり

お出かけしたり


電話で 愛してるって言ったり



手を つないで

キスをして


セックスして



また明日ね

って


笑い合う

そんな楽しい毎日に





おまえは邪魔だから消えろ








って

ハッキリそう言ったら?






思い通りに 事が進まなければ

ふて腐れる人間だ。



それでも
精一杯 努力して

飴とムチのつもりか(笑)



『おまえには もっと
いい男が あらわれる』

だなんて


優しい言葉のつもりで
かけてくる 馬鹿が…





私には

『恥』だけ渡して


さようなら。





なめんな…!










『お金は自由にさせない!』




Nちゃんママの言葉が

ふいに浮かぶ。








「月10万…」


「…なに?」




つけてもいない

『強い女』の仮面が見えて


あなたにとっての
『いい女』の仮面には

気づいてもらえなかったのなら



はずしてしまおう。






「私は仕事も出来ない。
暮らす場所もない。

それは 当たり前でしょ?」



「実家が あるだろ…」

「私も摩耶も 実家で
どれ程つらい思いをしてるか
あんた わかってんの!?」

「 … 」




「それが嫌なら

女と スグ別れて…」





私は



身体の震えを悟られないよう


『強い女』の仮面を

深く


深く

かぶった。



No.87 11/10/16 14:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 86

そうまでして 夫を


さげすみ 罵り

追いつめても



絶対に 夫と女が
会えなくなる状況に
事を運ぼうとしないのは

私の根本には


修復への

執念があったからだと思う。



恋愛の生まれたてに

『邪魔をされる』は
かっこうの スパイスだ。


物理的に
夫が もどっても

心が離れたままでは

意味がない。



私が
泣き叫ぶほどに

求めていたのは



彼との時間や空間ではなく

男としての 愛情なんだ。




あっちにぶつかり

こっちに ぶつかり


ゴロゴロ ゴロゴロ

七転八倒



だけど

何を どうしても…





夫への愛が



冷めない。










しびれを きらした兄は

『俺が 雄太に話して来る』



今夜 出かけて行った。


申しわけなかったが




私は なにも

期待していなかった。



No.88 11/10/17 01:30
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 87

テレビのニュースを観ていた。


母と2人…




「かわいそうだこと…」

母が つぶやく。



新婚旅行の帰り

夫婦の車が


事故で大破。即死。






「幸せなまま死んだんだもん… ある意味 幸せかもよ…」


あつい お茶をさましながら
私は そう言った。





「… あんたは」

悲しそうに 母が笑う。





『経験者』の強みを持って
夫との話し合いに のぞんだ兄は ヘトヘトになって 帰ってきた。


「雄太の頑固さは 異常だな」



ひと言も


喋らなかったらしい…





そうして 日をあけて

母も 彼の元へ向かう。






同じなのだ。



何も




変わらない。






義両親が

泣いて謝ったらしいが


母は
「当人同士のこと」と
頭を あげさせた。




義父も 義母も
夫には さからえない。


家族であるうちは

それは 私の居心地を


とても 良くしてくれたが




今となっては…










私は

ひとつ ため息をつくと
母に言った。





「お母さん 私…
アパートを借りたいの」



No.89 11/10/17 02:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 88

「もうい~か~い♪」

「ま~だだよ~💦」



かくれ場所を探すNちゃん。


「摩耶ちゃんママ…
ここ 開けてもい~い?」

そっと私にたずねる。



ニッコリ笑って
指で OKサイン。




「もう! Nはぁ~!」

「ママ💦 し~っ…!」







平成7年12月5日


私は
初めての

お城を持った。




目の前が 摩耶の通う幼稚園の

新築の アパートだ。




少しでも
明るい気分になりたくて

日当たりを重視した。




月々の家賃は

もちろん夫に請求するが


敷金 礼金は


親に あまえた。




実家を出るとき

兄嫁は


「お義母さんは リエちゃんに あますぎる!!」
と 泣き叫んで抗議した。


車の購入が決まっていた
兄嫁に


母が
同額のお金を手渡すと

泣きやんだけれど(笑)





不動産屋さん探しから

契約の手続きまで


すべて Nちゃんママが
手伝ってくれた。




彼女がいなければ

私は


動くことすら

出来なかっただろう。












「Nちゃん!み~っけ♪」











だけど これは





決して



ゴールではないんだ。



No.90 11/10/17 03:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 89

イメージは


できあがっていた。




いずれ


摩耶と私と

そして





夫と



3人で

ここで幸せに暮らす。






離婚などしない。


してたまるか。







基盤がかたまった事で


わずかだが

エネルギーもわく。






明るい部屋で

朝食をとりながら


私は 摩耶に聞いた。




「摩耶 さみしい?」



ウインナーと格闘しながら

「ううん…」
と 首を横にふる。


「じいちゃんとか…」



言いよどむ。







「じいちゃんとかに

会いたい?」



みごと 突き刺したウィンナーを ご機嫌に頬ばりながら


「マー
ママがいれば いいよ」












ごめんね。






ごめんね 摩耶。










「ママ! 早く行こう!
Nちゃんと どっちが先に着くか 競争してるんだから!」






私は
慌てて 立ち上がった。



No.91 11/10/17 04:15
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 90

はく息の白い 朝…


手をつないで歩きながら



もう

2ヶ月ちかくの
時が流れたことを知る。



もうすぐ クリスマスだ…






どう過ごすのだろう。






誰が?









普通の恋人達のように

「メリークリスマス」

を 言い合うのだろうか…




私の存在は



消えたまま。









ない事にされる恐怖を

少し感じながら


それでも


私は『妻』なのだと



自分を励ます。







不幸な













「摩耶ちゃんのお母さん

いつも 綺麗にしてるわね~」



園長先生の奥さん。

副園長先生だ…




「これ 自毛なの?」

私の 髪をさわりながら
副園長先生が
不思議そうな顔をする。


「ええ(笑) 毎朝 カーラー巻いて 温風ヒーターの前で


じっ…



としてるんです(笑)」



「わはははは♪」



「暇なんで(笑)(笑)」














大丈夫。




私は まだまだ






幸せな主婦を


演じることが できる…




No.92 11/10/17 15:18
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 91

「持っていけ!!!」



私の顔めがけ

投げつけられた
10枚の 1万円札…



それは 届くことなく


ヒラヒラと

立ちすくむ私の足元に


落ちてゆく。











こんな屈辱は




それを

拾い集めなければならない
自分の みじめさや悔しさは




表現できない。











「じゃあ 俺の金は

どうなるんだ!?!?」


最初から

イライラしていた。







銀行振込みではなく
現金で 給与を渡す夫の会社。

毎月 封を開けずに
封筒ごと 私に手渡す夫。


「ご苦労さまでした💖」

その度に

「俺 偉いよな~…」
と 自分を褒めてたっけ…









私の要求を のんだ夫は
「いいよ 俺
夜も どこかで働くから」

と あの時言った。


そこまでしても
女と別れたくないのだと

私は 落胆した。










夜 働きになど

出てはいない。



そうして 現実的に
しわ寄せが来た 今になって

自分の手元には
ほとんど残らない お金が
惜しくて 惜しくて
しょうがなくなったのだ。



怒りは



俺が稼いだ金を



ただ横取りして行く






イラナイ女房へ向く…




No.93 11/10/17 18:02
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 92

どんどん 嫌われてゆくな…




アパートへの帰り道

私は また


深い悲しみに



おちて行く。








あんな事をされても

どうして 私は


あの人を

嫌いになれないんだろう。





あの当時

夫の隠し子事件の発覚した泉ピン子が テレビカメラに向かい 悲痛な叫びを あげていた。



『昨日まで好きだった人を

突然 今日嫌いには
なれないんです!!!』

大粒の涙を こぼしながら…





そういう事だ





と 思う。







何が 起きたからと言って

彼自身は 彼自身。



違う人間に
なったわけじゃない。








私が悪い…?


自分を 責め出す。





間違ってるの…?







何かを 間違えてる?








答えなど 出ないまま




誰も待つことのない



暗い




暗い部屋へ

たどり着いた。



No.94 11/10/17 18:51
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 93

摩耶が 眠りにつくと


また



ひとりの夜が はじまる。






初めて持った
自分の自由な空間に
高揚していたのも

はじめの数日間だけだった。



何よりも憧れていた

邪魔の入らないキッチン。


ストックしてある食材は

夫の好物ばかり…




輝きは 色あせる。





何も

やる気が 起きない。







暗いトンネル。





出口が 見えない。



あるのかさえ

ワカラナイ。







愛が


私から
どんどんと遠のき



殺したいほど憎い女へと


流れてゆく。





高い場所から

低い方へ流れるように





当然の


ことのように…








また 息が苦しくなる。


金魚のように

口をパクパクと動かし
酸素を求め

わけのわからない恐怖に
包まれはじめる。




過呼吸などという症状を

何も知らなかった私は




ただ

その地獄のような時間を
堪えるしかなかった。







何かに すがるように

私は 玄関のドアへ
手をかける。







飛び出そうとする私を


電話のベルが

呼びとめた。



No.95 11/10/17 20:06
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 94

『やっほ♪』


『S…』




Sも 高校時代の友人。

先の
【堕天使】のキャスト。
私の産んだ作品に
命を 吹き込んでくれた
魅力的な女性だ。


主役を食ってしまったSには
当時 ファンまでついた(笑)





『その声は…


落ち込んでたな(笑)!』


『落ち込んでない日なんか…
ないよ…』


『ありゃ💦図星!(笑)
めずらしい。

今、雄君も一緒でしょ?』




アパートの 電話回線の権利は

あの家の 2階のものだ。


だから…


何も知らない友人 知人から よく 電話が入る。



別居…



こんな恥ずかしい状態を
他人に知られたくない私は


夫への電話の場合

「すみません。 今 下に居ますので 下の電話に かけていただけますか?」
と ごまかしていた。





過呼吸の最中だ




Sのおかげで
ものすごくラクにしてもらった


隠す必要もない。




… と言うよりも



聞いてもらいたかった。






『実はね S…』



No.96 11/10/17 21:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 95

驚いたSは

すぐに 飛んできた。



「あんたは どうしたいの?」



「…わかんない」

タバコに火をつける。





まだ

かっこつけたいのか…






戻りたい


って 言えばいいのに。







「あたしが

話ししちゃダメかい?

雄君と…」




彼女は 必ず

私に 答えを選ばせる。


グズグズで

先が見えなくなった時


光りを
選ばせてくれる。




「いやな気持ちになるよ」


私は ニヤっと笑う。


「あんたの身内と喋るのとは ワケが違うだろ(笑) あたしのこと 味方だと思うかもしんね~し(笑)」






そうなんだね。

Sに言われて気づいた。



悪いことをしてると
自覚のある夫には 今

自分と女以外は


すべて敵。



J君さえ
口をきいてはくれない…

と 話していたっけ。







「じゃあ…

お願いしようかな… 」




言いながら

私は
2つの不安を抱えていた。




ひとつは



その為には

彼女に 本音を伝えなければ
ならないこと…。







もう ひとつは



私の友達の中では
Sと 格段 仲の良かった夫が

魅力的な彼女と



2人きりで会う







という状況になる事だ。





嫉妬心の強い自分が



つくづく 嫌になる…



No.97 11/10/17 22:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 96

いやな予感というのは


ほぼ的中するものである…





この
Sと夫の話し合いで

夫が Sに
とんでもない事をしでかしたのを 聞いたのは ついこの間…



15年後のことだ(笑)







Sが ふたたび
アパートを訪れる。


「摩耶ちゃん♪おみやげ~♪」

「わ~い!!
Sちゃん!ありがと♪」


45色のクレパス。

あまい においがした。




Sは バツイチで
子供は いない。


だから いつも

子供の立場から ものを見る。




「何が好きか わかんなくってね(笑)」

照れたように笑う。


「すごく喜んでる
ありがとうね。 S…」



摩耶は 目をキラキラさせて

さっそく お絵かきに夢中だ。




「しかしさ…

バカだよね。あんた達」

「 … 」


「あんたが痩せた事にも ずいぶん驚かされたけど 雄君も…

骨と皮じゃん(笑)」



だからなんだ…



夫の姿を見る度

あわい期待をしてしまうのは


悩んでいるのが

ありありと わかるから…



どちらも傷つけていると

身体中で感じているのが



痛い程
わかるから。








摩耶にとって

最良の道を選べと
言いつづけていた彼女。


夫が 私を
とても愛していたことを
若いときから知ってる彼女。



修復することが

『あたりまえ』


と思って来た彼女。






そんな彼女の口から

その夜 私は



意外な
道しるべをもらうのだ。



No.98 11/10/18 00:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 97

「へ!?」



Nちゃんのママが

まのぬけた声を出す。



すっかり恒例になった
土曜日の お泊り会。


Nちゃんママは
自宅の 夕食の用意をし
我が家にやって来る。


Nちゃんパパは
自由人。

ほぼ家庭を かえりみない。


Nちゃんママは
そんな状態を
上手に 楽しんでいる。



子供達を お風呂に入れ

大騒ぎしながら
やっと 寝かしつけ


私は ビール
Nちゃんママは コーヒー。

大人の時間の はじまりだ。






「摩耶ちゃんママ💦💦

今 何て言ったんですか…?」




「やっちゃった(笑)」

「ほんとに!?」


絶対に 敬語をくずさない彼女が 我を忘れている。



そして



ガッツポーズ。



「それでいいんですよ!
私いつも思ってました。

摩耶ちゃんママも
恋をすればいいのに… って」









残念ながら…


恋は



していない。




それどころか

私の気持ちは


さらに 夫へと加速している。



だけど

まだ
みえっぱりだった私は


Nちゃんママにさえ
夫への執着を
隠しつづけていた。




No.99 11/10/18 01:20
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 98

Sは あの夜


私に こう言った。





『男でついた傷は

男でしか治らない』


と…





私の

あまりにも酷い憔悴ぶり。


摩耶への笑顔が


偽物すぎること。




Sは

私以上に
摩耶を よく見ていた。


無理に明るく振る舞う母親を見る 子供のつらさを

Sは



知っているからだ。






「ちゃんと
笑えるようになりな…」


と 彼女は言った。




「摩耶ちゃんのために」





たしかに 限界だった。

摩耶の前でも

何度も何度も



泣いている。




わけもわからない摩耶に

『こわい』


と 言いながら
しがみついた事もあった。




絶対に 子供の前で

泣いては いけない。





「そんな母親を見る
子供の 気持ち

リエには


わからないだろう?」








私が 自分を
嫌いになって行ってるのは

この生活が

だらしのないものに
思えて来たから…





摩耶の気持ちにまで

目が


届かなかった。





すべてを クリアするには

『働く』ことが 必要。




そして
また 間違った選択。



私は

ダイヤルQ2の

サクラのバイトを始めたのだ。



No.100 11/10/18 02:19
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 99

こわれかけていたのかも

しれない…




今までなら

そんな恐ろしいこと


手を出す次元の話しじゃない。




ただ

働かなくては…




そればかり考えていた私は


自宅で 出来る

時間も自由

アルバイト代も
内職などとは雲泥の差



の その仕事に

飛びついてしまった。



幸い 声と お喋りには
自信があった。

実際 1週間単位で
お給料が振り込まれる
その アルバイトで

私は けっこうな金額を
稼ぐことが出来た。




実を言えば

夫からの10万円を


彼の ご機嫌をとるために
減らすなり
受け取らない方向へ もってゆこうと していたのだった。



本末転倒とは この事か。

自分で あきれる。








世の中には

寂しい人が

たくさんいるんだなぁ…


と思った。



私の お客さんは
みんな
長い時間 お喋りしてくれる。


秒単位で 加算される お給料のことばかり 考えていたのに

いつしか私は


『他人と話すこと』に
ハマって行った。




  • << 101 いつでも 神がかり的な事を言う 40代後半の男性と 私は 何度も偶然に繋がった。 絶対に 自宅の番号を教えてはいけない 会っては いけない サクラの条件だ。 そもそも このオッサンは そんな事 望んではいない様に感じた。 私は ただ オッサンに癒されていた。 傷ついた気持ちが 和んでゆく… 2時間 3時間と オッサンと喋るうち あまり考えたことなかったが 男性の側は かなりの金額を 使ってるんだろうなぁ… と 思い始めた。 いつか オッサンも 金が尽きるかもしれない ここへ 突然 やって来なくなるかもしれない 私は オッサンに 自宅の番号を教えてしまった。 そして 結局 オッサンと寝てしまったのだ。
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