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家に帰るのが苦痛、ストレス。離婚したい。
マッチングアプリで知り合って、、
男女は結婚したら不倫や浮気をするの?

堕天使

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クロス( ♀ gAVFh )
11/11/21 10:37(更新日時)



高校時代
同タイトルで
脚本を かきました。

人間不信の少女が
廃屋のビルの地下室で
復讐のため 爆弾をつくるという内容のものでした。


真実は
私にとって 永遠のテーマ。



時が流れ 絵空事ではない 不信感や絶望を知ることになった 私の お話しです。



No.1686010 11/10/11 02:32(スレ作成日時)

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No.1 11/10/11 02:35
クロス ( ♀ gAVFh )





【堕天使】




いつもと変わらぬ朝だった…


朝食を食べる習慣のない夫を 玄関先で見送る。

「行ってらっしゃい」
「んじゃ…」

改造車に乗りこみ出勤する、まだ若い夫がたてる騒音が 少しばかり心苦しい私は
『やれやれ』と
まだ娘が寝ている 2階へと急ぐ。


「さぁ起きて!幼稚園遅れちゃう!💦💦」

ひとり娘の麻耶は4歳。

食は細いが 手のかからない 丈夫な子。
男ばかり育てて来た 同居の舅・姑の 孫への執着は あと1ミリで 異常のラインを越える程 すさまじい…。


朝食のため 階下へ。


「ばぁちゃん💖おはよう💖」

摩耶が生まれて間もなく
姑は パートをやめ 家に居るようになった。


今思えば
今の私と同じ年令。
40代なかば過ぎのはずだ。


「摩耶 おはよう! 早くゴハン食べてな♪ ばぁちゃんは もう食べちゃったよ」

『いいから 働けよ』


… の言葉を飲み込み

「おはようございます」



バタバタと支度を済ませ 幼稚園バスが来るのを 庭先で待つ。


あ…

金木犀のかおり。



私は 秋が嫌い。
なぜかはワカラナイけど嫌い。



今日も元気な先生と一緒に 幼稚園バスが やって来た。



No.2 11/10/11 02:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 1

今夜は 夫は会社の飲み会…


だと思っていた。



ふだん酒を飲まない夫。

会社の そういったイベント事も ひどく嫌がる。


実は、表には出さないが 異常に嫉妬心の強い私は 夫の そういう言動で とても安心したりする。




近所の ママ友達と 幼稚園が終わったあと 恒例の お茶会。

4親子集まっての おしゃべり…


たまたま 私ひとりが 外で遊ぶ子供達についていた時

ふだんから動きの活発な Eちゃんが 腕の骨を折る怪我をした。



ひどく落ち込む私。


「気にすることないよ💦」と 他メンバーに励まされても 気持ちが晴れない。


自分の嫌いなとこ。



『なんで よりによって 私が見てる時 怪我するのよ』
なんて思っちゃうとこ。


Eちゃんのママは
今で言うKY…

あからさまに 顔が怒ってる。

涙ながらに謝りながらも
『あんたの子供は 女の子のくせに 荒っぽすぎる!!』

と 心の中でひなんしてる 自分…





今 思えば

妙な日だった。



No.3 11/10/11 02:40
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 2
夫が 帰宅した。


珍しく 真夜中過ぎ…



「もう めんどくせ~」
から始まる

あいつがこうで こいつがこうで 俺は飲めね~から 一応笑って聞いてるけど…



等の 愚痴が出てこない。






「今日 Eちゃんに 怪我させちゃってさ~…」


おしゃべりな夫が 物静かなのをいいことに 話し出す私。


「…聞いてる❓」



あきらかに 上の空。










『はじまり』だったんだ。



No.4 11/10/11 02:43
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 3
「めずらしく ユーミンなんか唄っちゃったよ。俺…」





ソーダ水のなかに…



ユーミンは 私の大好きな アーティスト。

夫は つねづね嫌いと言っていたのに…


「そう… ほんと珍しいね(笑)」


とりあえず笑っておいた。


そして

「ずいぶん遅かったね」

軽いジャブ。

なぜか 心臓が
ドクドクと鳴っている。


そして
私が 心から笑える答えをください と
強く強く望んでいる。




「そうかなぁ…」









聞くんじゃなかった。







いつもと同じ夜…


だけど

少しだけ
寒くなってきた秋の夜。



  • << 8 私と夫は 小学校からの同級生。 小学校の高学年から ずっとアプローチされつづけ(笑) 中3でおち つき合いだした。 そのあと 2度別れ (どちらも 私からのサヨナラだったけど…) 18歳の夏に 3度目の正直でヨリを戻し 23歳で結婚。 この経緯にも 幼い私が 誤算を生む原因が あったのかな… この人は 私に惚れきってる。 何処へも行かない。 傲慢な確信の 出来上がり。 結婚しても 親と同居は絶対にイヤだ!と 拒みつづけていた私。 けれど、自分の母親が 父親の単身赴任先で 暮らすようになってからは 兄夫婦と子供達だけになった実家で暮らすのも なんだか気詰まりで 半同棲みたいに 夫の家族と暮らしはじめてしまった。 間もなく結婚。 なし崩し的に 同居は はじまったんだ。

No.7 11/10/11 15:46
クロス ( ♀ gAVFh )



すみませんm(_ _)m

私 他スレッドも持ってまして ハンネを間違えてしまいました(笑)💦


もう1度
更新しなおします😱💦💦

No.8 11/10/11 15:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 4 「めずらしく ユーミンなんか唄っちゃったよ。俺…」 ソーダ水のなかに… ユーミンは 私の大好きな アーティスト。 夫は…

私と夫は
小学校からの同級生。


小学校の高学年から ずっとアプローチされつづけ(笑) 中3でおち つき合いだした。

そのあと 2度別れ
(どちらも 私からのサヨナラだったけど…)


18歳の夏に 3度目の正直でヨリを戻し 23歳で結婚。



この経緯にも

幼い私が 誤算を生む原因が あったのかな…



この人は 私に惚れきってる。

何処へも行かない。


傲慢な確信の 出来上がり。



結婚しても 親と同居は絶対にイヤだ!と 拒みつづけていた私。


けれど、自分の母親が 父親の単身赴任先で 暮らすようになってからは
兄夫婦と子供達だけになった実家で暮らすのも なんだか気詰まりで

半同棲みたいに 夫の家族と暮らしはじめてしまった。


間もなく結婚。



なし崩し的に
同居は はじまったんだ。



No.9 11/10/11 15:49
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 8

あの頃はまだ
学校も幼稚園も もちろん会社も

土日が休日なんてシステムなかったから

日曜日は 唯一 朝寝坊できる日…



同居を始めたばかりの頃

姑に
「休みの朝ぐらい みんなで一緒に ご飯を食べましょう」
と 言われた私は

泣き叫んで抗議した。


夫に(笑)


「やすみの日くらい 自由にさせてよ!! 夕食は 毎日一緒に食べてるんだから いいじゃない!!」


現在 息子はいない私だけれど

仮に こんな嫁が来たら…


イヤだろうな(笑)





はれて 休日の朝は 若夫婦の自由を勝ち取っていた私は

今日も ダラダラとした 親子3人の日曜日を送るのだろう…


と 漠然と 思っていた。





真夜中過ぎに帰ってきたのだから

昼過ぎまでは 確実に寝ているだろうと思っていた夫が




早起きをして 出かける支度を はじめるまでは…



No.10 11/10/11 20:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 9
「…どこか行くの?」


また 心臓が
ドクドクと嫌な音をたてる…


「車屋」

いつも
一緒に行ってたじゃない…
ドクドク ドクドク。



「私も摩耶も 出かけたいよ… 」

声が ふるえる。


あたりまえだろ!! おまえ達も、一緒に行くんだよ(笑)もちろん。



お願い


そう言って…






「… なんで?」



喉の奥が つまる。

「日曜日… だから」



「…」



ついて行ったら
困る事でも あるの!?




そう問いつめたいけど


こわいんだ。




「じゃあ 車屋のそばの〇〇まで 私と摩耶を乗せて行ってよ」

近くのショッピングモールの 名前を出す私。



夫は 私と摩耶だけで 出かける事を ひどく嫌がる。
彼もまた 私以上の ヤキモチやきであるからだ。


今日は 絶対に
夫ひとりでは出歩かせない。


軽い 意地のような強気が
私を包んでいた。



「わかった。乗せて行くよ…」




なに それ。


混乱して来た…




No.11 11/10/11 20:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 10

朝の寝起き以外は

終始 テンションの高い夫。


小学生の頃から
いつも一緒に
バカ笑いばかりして来た。


摩耶が生まれてからも
それは変わらず
うちは いつでも賑やかだった…








ほぼ無言の車内。


摩耶の
はしゃぐ声だけが響く。



「車 どこみてもらうの?」

「おまえに話しても わからないよ…」

「そう…」











まだ 間に合うよ。

パパ。




今なら私

なにもない事に出来るよ…








「ここでいいか?」
車がとまる。


胸が





痛い。






「そんなに長く かからないから… 1時間くらいで 迎えに来るよ(笑)」



その夫の言葉に

涙が出そうになった。





ただの 私の考えすぎ。
そうよ


そんなこと
私の身に
ふりかかるわけがない。

「うん!(笑) じゃあ1時間後に ここでね!行こう♪摩耶♪」

「パパ ばいば~い♪」



行ってらっしゃいと

車の中から手を振る夫の笑顔は


ただ 私との空間から 解放された嬉しさだったと


後になって

知ったのだけれど…



No.12 11/10/12 00:00
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 11
「最近 雄太の帰りが ずいぶん遅いなぁ…」


秋の日暮れは早い。


もともと 夕食の時間が早い この家の人々。

義父 義弟 そして夫…


働きに出ている全員の
帰宅時間が 早いのだ。



6時には
ほぼ 全員がそろう。


慣れるまで苦痛だった。



「そうですね」

夕食時
曖昧に
笑ってみせる 私。



『小学生じゃねんだから… 今までが 早過ぎたんだろ』


ただでさえ
あくる月曜日からの 夫の帰宅時間に ますますの不信感をつのらせていた私は

お門違いと思いながらも
心の中で
義母に毒づいた。




「さあ 摩耶! ちゃんと お野菜も食べて…」

注意を 摩耶に向ける。

「パパは?」

「お仕事だよ」

「ふ~ん…」


もともと 摩耶は
父親に あまり執着がない。


「摩耶~♪ じぃちゃんの肉も 食べていいぞぉ~💖」

「うん💖」

「摩耶は 痩せっぽちだからな(笑) いっぱい肉食べて 太れ! ほれ ばぁちゃんのも💖」


「そんなに 食わせんな💢! な~摩耶💖 痩せてる方が カッコイイもんな♪」

夫と 年子の義弟が 助け舟を出してくれる…




私はともかく

摩耶は


この家族が 大好きだ。






わずらわしかった

この家の人々。





私達

ここから



消えるかもしれないよ。








箸のすすまない私に
気づく人は


誰もいない。



No.13 11/10/12 00:02
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 12
一週間目の土曜日



5時半には 帰宅していた人間が 毎日 11時過ぎになるという事実に 何も違和感を持たないと 思っているのだろうか…



「連絡だけはして」


その言葉通りの事だけは
する夫。




時計ばかり見る毎日にも
そろそろ
疲れてしまった…



「どうして急に 毎日 こんなに遅いの?」

3日ほど経った夜


私は 夫に聞いた。



もともと 気の短い夫は

「俺だって もうすぐ30だ! いつまでも子供じゃない! つき合いだってある!!」
と イライラと声を荒げた。



男は偉いもの。



なんとなく そんな風に感じながら生きてきた私は とくに夫の言う事に 反論することもなく いろんなものを 飲み込んだ。




でも




もう 一週間。






時計の音ばかり響く
この部屋で

私は ひとつの決断をした。



No.14 11/10/12 01:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 13

そもそも夫は
嘘をつける人間ではない。

幼い頃から知っている…


とか そんな理由ではなく

嘘をつく必要がないような生き方をして来たから 嘘のつき方を知らないと思えるのだ。




きっと

上手に嘘がつけたなら
彼自身 もっと楽だっただろう…



あきらかに
日々 弱りきっている。

ただ口数が少ないだけじゃない…








私が ラクにしてあげよう。


それには

【証拠】が ほしい。


No.15 11/10/12 05:02
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 14

今朝 夫は
出がけに私に こう言った。


「Kに 仕事終わってから 車のマフラー 溶接してもらって来るから遅くなる」



平成6・7年頃だ。

まだ 携帯を持っているのは ごく一部の人だけで
ポケベルが主流。


私はもちろん 夫も
その どちらも
持ってはいなかった。



『連絡を入れるのも面倒か…』



私は 目も合わせず

「うん」


と だけ言った。




K君は 夫の前の職場が一緒だった後輩。


私も 何度も会っている。




カチカチカチカチ…

0時をまわる時計の針。


穏やかな寝息をたてる 摩耶。



カチカチ

カチカチカチカチ…


知りたい❓

知りたくない❓




能面のような 夫の顔を思う。




いつ終わる❓


終わらない。





カチカチカチカチ…


深夜1時を過ぎた。






私は




受話器を あげた。



No.16 11/10/12 05:07
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 15

ツー…



会社 友人の電話番号が並ぶ 簡単なメモ用紙。


「Kが 生意気に携帯電話持ちやがってさ~(笑)」

久しぶりで
夫の笑顔が浮かんだ。





心臓の鼓動なのか

耳鳴りなのか



身体中の血が
集まってきたんじゃないかと思う程 顔があつい…




外では 思いきり明るく振る舞うが 本当は 誰よりも気が小さく 他人の顔色が 気になるタイプの私。







K君と夫は 一緒に居る。


何を 迷うことがある❓

K君が出たら
夫にかわってもらって
摩耶が熱を出したと言おう。

不安だったから…
と。




呼び出し音を聞きながら


なぜか ウラハラに

出ないでくれと願う私。



受話器を置け!
と もうひとりの私が叫ぶ。






プルルル…



プッ。

ドクン!!!!!



「…はい」



No.17 11/10/12 05:10
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 16

「K… 君?」

「はい…」



ドクドクドク。






もう


何も聞かなくてもわかった



起きぬけの



かすれた声…




それでも
わずかな望みは
まだ 捨てられないでいた。




「雄太さんの奥さんですよね? 何かあったんすか?」


「ごめん。寝てたよね?」

「ええ」



「うちの人は… 今日… 一緒じゃなかった… かな…」


「雄太さん? いや 今日は 会ってないっすよ…」





ドクドクドクドク


ドクドクドクドク




起こしちゃって ごめんね

ありがとうねと


受話器を置いた。








手足の先が

冷たくなってゆく…






長い 長い





夜の はじまり。




No.18 11/10/12 12:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 17

私はいつも
夫が 仕事から帰るのを
待ちわびていた。


結婚した時から 7年ちかく経つ 今の今まで 変わる事なく


毎日 毎日 毎日

待ちわびていた。



愛していたのだろう

と思う。



休日に 2人で窓から
ボンヤリ外を眺めていると

近所の まだ若い奥さんが 犬の散歩をしてるのを見つけた。



「きったね~な…」

「え?」

「〇〇さんの格好だよ…
外歩くんだから もう少し気をつかえないもんかね(笑)」



私は ふだんから
どこへ行かずとも しっかりメイクをし 長い髪を巻き 外見は完璧にしておかないと 気が済まないタイプ…

要するに 根がヤンキーなので(笑) 他人さまは 派手な女と判断してるだろう。


そういう女が好き。


夫の好みだ…




いい加減 普通の車乗ったら?

友達にもチクりと言われる様に 私達の生活スタイルそのものが 同じ年代の人たちより 幼かったように思う。



そんな 彼の車の音を

若い頃から

夕方になると

耳を そばだてて


待って 待って 待っていた毎日…








深夜3時


聞き慣れた その音が

帰って来た。



No.19 11/10/12 12:21
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 18

また心臓が

早鐘のように鳴りだす…


耳が

音に くぎづけになる。




エンジンがとまる。


ドアがしまる。



数秒で 玄関の開く音。




洗面所で 手を洗ってる

水の音






あれが とまれば


階段をのぼる足音とともに



夫が あらわれる。





もう


自分の心臓の音しか

聞こえない。





ドクン ドクン ドクン





ドクン ドクン ドクン








「おかえりなさい」



自分の声が

遠くから 聞こえた。


No.20 11/10/12 13:39
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 19

「起きてたのか…」



疲れた顔。




決心がにぶらないよう

声に 力を込めた。




「どこに 行ってたの?」

祈るような気持ちで



こたえを待つ。



「…」



お願い…



お願い…





「今朝言ったろ…
聞いてないのか?」



イライラと
煙草に火をつける夫。










終わった。








嘘を つくのね。

私に 嘘を…




本当に つくのね。






激しい憎悪が 巻き起こる。










バカにするなよ。




「K君のとこ?」

「そう言ったろ」


「こっち見て!!」



煙草のけむりごしに
力ない 夫の目と 出会う。

「… なに?」






「あなたは 行ってない」



行ってないんだよ。




No.21 11/10/12 13:43
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 20

「電話したのか…」



いまいましそうな表情。



ほら…

アリバイ工作もできやしない。


私を騙そうなんて
百万年 早いのよ(笑)




バカにしやがって



バカに


しやがって…






灰皿に 捻りつぶされた煙草



怒りが


悲しみに変わる。




「女… なのね?」





こんなセリフ

私が言ってるの?


どうして?
どうして?



一週間前まで
笑ってたじゃない

摩耶と 動物園行こうって
約束したじゃない




車のチームのイベントも来る



なにより






次は 男の子がいいね

って


2人で頑張っていたじゃない…



どうして…




No.22 11/10/12 13:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 21

長い 長い沈黙。



静かすぎて 耳が痛い。





「怒ってないよ私。ただね もう疲れたの。 毎日毎日 知らない人と居るみたいだった。私は 笑ってるパパに会いたい。 嘘だけは… ついてほしくない…」


おだやかに
おだやかに

そう話した。










夫が 泣き出す


子供のように
しゃくりあげて泣いている…



ごめんなさい

ごめんなさい


消えるような声で言いながら





この人もまた

どんなにか
苦しかったんだろう…







この後の話しの流れなど

その時の私の頭の中には
なにもなく




ただ ただ

夫も自分も かわいそうで


ただ ただ


大声で 泣いた。



No.23 11/10/12 14:26
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 22

ぽつりぽつりと

話し出す夫。


ただ うなずく私。



嘘をつくなと言っておきながら

聞きたくないと
耳を ふさぎたくなる。




相手の女性は


二十歳になったばかり。
独身の 看護士。


あの日

会社の飲み会と思っていたものは 学生時代から仲間の 先輩達と その彼女と友達の…


いわゆる合コンってやつ。




もちろん 私も
その先輩たちとは 顔見知りなわけで 既婚者を呼びつける神経を まず うたがいたくなったが…


まぁ
行かなきゃいいだけの話し

なんだな(笑)





半分 ほうけたように
聞き流しているようで

それでも

痛いぐらい鮮明に

頭に たたきこまれて来る
状況
相手の女の輪郭




冷静さなど
カケラも持ち合わせては
いなかったけれど



私は

たかぶる気持ちを
必死で 必死で

おさえてた。







くだらない プライド…





そして

やっとの思いで

笑顔で
こう言ったんだ





「別れましょう」って。


No.24 11/10/12 14:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 23
おまけに


「彼女 幸せにしてあげてね」

なんて言った。





すがりたい自分が

プライドに負けたんだ。




後に 嘘だとわかるが

この時点では
夫も 話しを聞いた私も

彼女の命は
そうそう残されていない


と思っていた。





舞台女優になりたかった私は

小さな頃から


自分を 外側から見る癖がある…




深い 深い 深い

悲しみに
うちひしがれながらも




無意識に大人を演じられる。

その時ベストな自分

を選んでしまう。




弱いものは
守ってあげよう


はじまった恋路を 邪魔する
無粋な人間は カッコ悪い



そう

かっこよく


ありたかったんだね。





バカみたい。





さらに泣き出す夫の前で

なんとか自分を保ちながら




「お腹すいてるでしょ?」


インスタントラーメンを つくる余裕のある自分まで 見せてしまった。




これが

のちのち あだになるなんて
思いもしなかったよ。



No.25 11/10/12 18:50
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 24

長い長い夜が

明けようとしていた。



眠れない

食べられない


笑えない




この1週間

人間としての 健康的な生活を忘れていた 夫と私。




夫だけが



解き放たれたようだ…





泣きながら ラーメンをすすり

「うまい うまい」と また
強い嗚咽に変わる…




そして

本当に嘘のように



高いびきで眠ってしまった。




感情を吐き出し
認めてもらい
腹も満たされた。



眠らない方が 嘘か…



今 この人は

幼い子供と同じだ。








そして 私は









ストン







本当に突然







深い 深い 深い




真っ暗な穴に





つき落とされた。



No.26 11/10/12 19:04
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 25

激しい恐怖感に

すごい速度で包み込まれる



こわい


こわい





こわい こわい こわい





たすけて


誰か



たすけて…






立ち上がり


摩耶の寝顔を見にゆく。




よけいに 苦しくなり

わけもなく


うろうろと歩きまわった。




なに… これ。


どうしたの?私






息が つけない。


吸い込んでも 吸い込んでも




ヒューヒューと

喉の穴が
せばまってゆくよう…






たすけて





たすけて










たすけて





No.27 11/10/12 19:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 26

涙が流れる



悲しいのでも

悔しいのでも

苦しいのでもない



理由のない 涙。






私は 極度の みえっぱり。


幸せじゃない自分は

人に 見せたくない。






つらい思いを 聞いてくれる友達は 地元に たくさんいるにも関わらず


私が 唯一

このことを
うちあけていたのは



今は 遠い所に住む

高校時代の友人だった。


Aちゃんは かつて この家の近所に家を建て 暮らしていた。


家族ぐるみで
いつも 遊んでいた。



旦那さんの転勤で 遠い土地へ行く事になった彼女と
泣きながら別れたのは

摩耶が 2歳の頃だった。



この話しを電話でした時も

夫を よく知る彼女は
『ありえない』と
明るく笑い 私を励ました。



長い長い 手紙もくれた。





私は すがる思いで
コードレスフォンを持ち

感情のない目で
眠る夫を見おろしてから


摩耶の眠る 寝室に向かった。




No.28 11/10/12 20:12
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 27

秋も深まった
10月の 最終土曜日…


いや もう日曜日か。



時間は 朝の4時半だ

カーテンごしの空は
まだ 闇の中





私は 摩耶を起こさぬよう

窓辺に寄り添い


慣れた番号を

ふるえる指で押した。





こんな時間の電話は

もらった方も 悪い知らせであると 直感的に思うのだろう


『…リエ?』


電話の向こうで 私の名前を 優しく呼ぶ彼女の声。




「Aちゃん…たすけて…」




後は
しばらく声にならなかった








ただ 声を殺して泣いた




No.29 11/10/12 20:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 28

すべてを 話し終えると
彼女は 絶句…



そして 突然

大声で

傍らで寝ているであろう
旦那さまの名を
何度も 何度も呼びつづけ

泣き叫ぶように
『起きて!! 起きて!!』
を 繰り返す…



『雄君が… 雄君が…』










15年以上経った今でも

私は はっきり

あの時のAちゃんの声を
思い出すことができる。



ありがとう。




貴女が 取り乱してくれた事で

私は 心から救われたの









それは まるで



私の絶望が

カタチになったようだったから…





No.30 11/10/12 21:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 29

私は この日曜日

夜が明けるのを待ち


摩耶を連れ
少しの荷物を持ち

車で10分ほどの
実家へ帰っている…



のだが


なぜか 帰るまでの記憶が
曖昧なのだ。



Aちゃんの叫び声を最後に

その後の自分の行動の記憶が
この部分だけスッポリ
ぬけおちている。






実家の兄嫁に
なんと説明したのか…


じきに 少しだけ(笑)助けてくれた兄に どんな風に 話したのか…




義両親へは 自分が話すと言った夫の言葉で 何も言わずに 出て来たことは おぼろげには おぼえている。





すべてを失った気がしてた私は

泣くことさえも忘れていた。



摩耶に心配は かけられない。



それだけは

強く 強く 思った。






今は使われていない
両親のベッドで

その晩は 摩耶と眠った。


実際 私は横になるだけで

眠ることなど
出来なかったけれど…





居間から もれる
バレーボールの中継の音

兄家族の 笑い声



それらをドアごしに聞きながら

私は
ただ ひたすらに
ひたすらに


ベッドの上で
缶ビールを 飲み続けた。


眠った摩耶の髪を

静かに撫でながら…




No.31 11/10/12 22:20
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 30

幸せぶりっこの私が迎えた

気の重い 月曜日。



摩耶の幼稚園を
休ませるわけにはいかない。

兄嫁は 明るく情は深いが
気性のあらい女性


ちなみに 父親のそばで暮らす母には この時点では まだ何も伝えていなかった気がする。




朝 台所に立つ私に
兄嫁が 言う。

「今日 摩耶ちゃん お弁当でしょ? これ使って! おかずも これと… これで大丈夫だね(笑)」

摩耶より 2つ年上の 小1になる甥も 摩耶と同じ幼稚園に通わせていたため

週2回ある お弁当の日を
兄嫁は 熟知している。


この 幼稚園も

私の見栄の部分が選んだ


制服の可愛い 私立の幼稚園


すぐ近くに お月謝が3分の1の 公立の幼稚園があるのに…


だ。




「ありがとう。」

「今朝は 送って行くの?」

「うん…」





はぁ…


気が重い。

なにもかも。



幼稚園に着いたら






笑えるんだろうか…



No.32 11/10/12 22:51
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 31

「おはようございます♪」


摩耶を 担任の先生に お願いし

仲良しのママ友が いないのを確認すると 私は ふだんのノンビリが 仮の姿であるかのごとく 自分の車まで ダッシュした。



誰にも 会いたくない。



… と思うと


会うものである。




「あっ!! … おはよ」


私より 3つ年下の
Nちゃんのママだ…

「?摩耶ちゃんママ
急いでます💦💦?」


「い… いや(笑)
んなことないよ(笑)」



彼女とは 1番の仲良し


Eちゃん骨折事件から
Eちゃんママの 今までの数々の奇行に 2人して 顔をしかめていたところだったので よけいに仲が良くなったのだ。


そして 私は この後彼女に
今の状態を ところどころだけ伝える事になる…


まさかの流れだが

ここから先も 彼女には とても 助けられつづける。





お互いの娘たちが 成人を過ぎた今でも Nちゃんママとは 大の仲良しのままだ。




No.33 11/10/12 23:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 32

また 夜が来た…



このネットなるものが
あの頃 自分のスグ手にとれる場所に こんな風に 存在していたなら…



と たびたび考えます。
(余談でした…)







頭から 追い出したいもの…


この事実。



自分で選んだようで

『すてられた』


が 消えない。



そして また

必死に追い出そうと



私は 何本目かの缶ビールに
手をのばす。





その時


兄嫁が 私を呼んだ。



No.34 11/10/13 01:35
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 33

なんだろう…


少し足元が フラつく。

あたりまえか

ほとんど何も
食べていないのだから…



何もやる気が起きない

立っている事さえ苦痛




お世話になっておきながら

こんな時間に呼ばれる事にさえ
苛立ちを隠せない。




「どうしたの?」

でも嫌な顔は見せられない。


つとめて明るく聞いた。





兄嫁は ニコっと笑い


玄関を指さす。



「え?」


「雄太君 来たよ」











「迎えに来たんだって♪」











… なに?



どういうこと?




「ほら 早く行ってあげな」





足が


自分の意識とは別に




勝手に動き出す。






玄関?





玄関って なんだっけ?





迎え?




ここ





どこだっけ?



No.35 11/10/13 02:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 34

「帰ろう」



私の顔を見るなり

夫が言う。




視界がぼやけ

顔が


よく見えない




あついものが

自然と ほほをつたう。




「ちゃんと 別れたから」




うそ。




「Jちゃん(先輩)が 俺には もう2度と会っちゃダメだって… 話し つけてくれた」


なに


言ってるの…




「『あいつらは そんじょそこらの夫婦と違う。 別れるようなマネは 俺が絶対させない』って 言ったらしい(笑)」





夢…?




だいぶ 飲んだから


幻覚かな(笑)








「本当に ごめん」






自分が何を 望んでいたのか



初めて









わかった。




No.36 11/10/13 03:12
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 35

きっと



あの日の朝を


私は 死ぬまで忘れない。




希望に満ちあふれ

あたりまえが輝き出す。




寝室のカーテンを開けた時

本当に 身体がふるえた。



差し込む 陽のひかりが

幸せすぎて…







そんなこと

本当に あるんだな(笑)





なんでもない事に

笑顔になる。





「ママ…?」

「おはよう!摩耶♪!」


「今 笑ってた?」

「あはは♪笑ったよ~」

「どして?」


「おしえな~い♪♪♪」



ふくれっつらになる摩耶を

ギュっと抱きしめて




小さな声で


「ごめんね」と言った。





「さぁ 起きてゴハン食べよう! 幼稚園バス来ちゃうぞ!」




ここにある日常が



また 動き出した。



No.37 11/10/13 03:57
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 36

幸せを取り戻してから

3日が過ぎた。



なにも知らない 義家族は

私達が 家を空けた ほんの2日間で 摩耶への執着を またエスカレートさせたくらいで
なにも変わりがない。



それは 夫も同じで

離れた わずかな時間が

本当に大切なものが 何かを教えてくれた と 家に帰ってから 話してくれた。



ありきたりの言葉でも


私には



最高の言葉。



失ったものを
取り戻した者にしかワカラナイ幸福が そこにはあるから…




J君にも 手紙を書いた。

友人の不倫を あおる人間が多い中 私達のために 誠実な対応をしてくれたことへの 感謝と喜び。


現在、職場も一緒のJ君に 渡してくれるよう 夫へ頼んだ。



「俺見てもいいの?」

「だ~め~」


以前の…

それ以上の笑顔を
取り戻した私達は


何もなかった日々に 戻れるのだと 信じて疑わなかった。



No.38 11/10/13 04:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 37

その夜

夫が 身体を求めて来た。



本当は

そんなにも
嫌悪を感じたわけじゃない



ただ 反射的に

ドラマの観すぎかも
しれないけれど


1度は拒んでみせた方が
いいかな


ぐらいの軽い気持ちだった。




やんわりと

もう少し待ってと言った。




私の頭の中では

それでも なお求めて来る彼に
応じるシナリオが出来ていた。




















第二幕の

幕が あがってしまった。




No.39 11/10/13 05:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 38

人って
こんなに 単純かな…


スイッチは
人それぞれ違うだろうけど

強弱ボタンに
さほど変わりはないはず…



しばらく理解が出来ずにいた。







次の日の朝には

また
能面の顔の夫が居たから。



あまりの豹変ぶりに

最初は 怒りがわいた。



それをするのは

女の私じゃないの!?



セックスを拒むのは

浮気するより 重罪?



浮気を責めていない私に

感謝こそすれ

そんな態度は
とれないはずじゃない!?




口には出せない

たくさんの思いが


駆けめぐる…





つねづね 極端すぎる人ではあったが これは あまりにも

酷い。




思い通りにならない事への
苛立ちなのか

頑なな夫の態度は


その後も 続き

まともに 口すら開かない日々が 始まって行った…



No.40 11/10/13 15:11
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 39

愛されていることに

自惚れていたい。



簡単に言えば

私の望む 男女の愛情は
そんな感じ…



1度
この愛が終わったと思った時


私は もう愛されていない


という残酷な事実を
受け入れないように
深く考えることを やめた。






普通に 育ってきた。

親や家族に 120パーセント愛されて生きてきた。


なのに 私はいつも
愛に 飢えていたんだろうか…



セックスを拒んだ


たった それだけのことで

また 夫の優しさを失った私は

自分の中の真実を
考えないわけには
いかなくなってしまった。



もしかすると

見える敵が いない分

この間までの状況より
きつくなるかもしれない…



このあと知る事実など

かいもく見当もついていない
あの時の私は


その数日


途方にくれていた。




No.41 11/10/13 15:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 40

少し 努力してみよう!

自分の悪いところを認めるんだ



自分が夫の立場なら?

穏やかに また始まるだろうと思っていた毎日。
今までと 何も変わることがないと 信じていた これから…


その証を

妻に 拒否されたら…



そうだよね。

セックスを拒む。


女の私が考えるより
受けた側は
キツいのかもしれない。





謝ろう。

誠心誠意。







夫の笑顔と優しさを
取り戻そうと 必死の私は


その瞬間だけは

プライドを
捨てていたように思う。






ここから


今の私から

あの頃の私へ

声が 届くのなら



伝えてあげたいな。


意味がないよ…

って。




No.42 11/10/13 16:29
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 41

「パパ…」



今夜も 私に背を向け 眠ろうとする夫に そっと声をかける。



眠ってしまったのか…



そんなはずはない。





トクトク トクトク…

心臓が

また少し 強い音をたてる。



早く

早く 解決しなくちゃ。


こんな状態


1分1秒でも早く。



トクトク トクトク…



「ねぇ パパ」

夫の肩に そっと手をかける。





身動きひとつ しない。



起きているのだ と思った。



「ごめんね。 私 意地悪だったよね… 本当に ごめんなさい」




…聞こえてる?



少しイラつく気持ちを
おさえる。

トクトク トクトク…





「もう 平気だよ私」

トクトク トクトク…





こっち向いてよ!


『ほんとに!?』
って 笑ってみせてよ!







私を 抱いて



愛してるって





言ってよ…!!


お願い…!!!








私は

爆発しそうな気持ちを抱えて


夫の背中に しがみついた。





















「やめろ」





冷たい声が



また


闇を つれてきた。




No.43 11/10/13 17:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 42

地面に


叩きつけられた気分だった。





悲しみ

怒り




屈辱。



目には 目を…


の つもりか。




初めて味わう感情。




それでも

夫を愛している私は

攻撃的な態度に出られない。




無言のまま

仕事に出かけた夫。


強張る笑顔で 見送る私。


摩耶や 義家族の前でも
精一杯 明るくと つとめ


こわれそうな 心と身体を

なんとか 動かしていた。




「帰ろう」

と 言ってくれた あの日から

朝 出がけには

『早く帰ってくるから!』

と 懸命に私への安心を あたえようとしていた夫の帰宅は


遅くなりつつある。








時計と にらめっこの日々が


また



かえって来た。



No.44 11/10/13 18:18
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 43

今度は 夫へ手紙を書いた。


修復させようと
激しい執念を燃やす私と

夫の 温度差。




気づかなかったのか

気づかぬふりをしていたのか…



滑稽な努力を つづけていた。




届くものと

届かぬもの。



今なら わかる。

あきらめられる。




けれど…


綺麗な空しか 知らない天使は


叶えられぬことが ある事に
気づかなかったんだ。



苦しくても 苦しくても

逃げない。




清らかな自分を信じてる。











天使は


もうすぐ



もうすぐ






堕ちてゆくのに…




No.45 11/10/13 19:07
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 44

不思議なことに

私は 夫を疑わなかった。


今日までは…




それこそが

幼い頃から 私に愛を向けてきた彼への 信頼だったのかもしれない。

裏を返せば


傲慢な 自惚れだ。




夫の ここ数日の 頑なな態度は

私が 傷つけたせい。


私への愛ゆえ 傷ついた。






思いこみ?







夫のいない夕食にも
慣れた。


不穏な空気を 知ってか知らずか 義家族も ふれては来ない。



私は 手早く 片付けを済ませると 摩耶を連れ 自室へと戻る。



「ビデオみた~い」

摩耶が言う。


上手に 相手をしてあげられない 今の私に ビデオは とても助かるアイテムだ。



その頃 放送していた
『バケツでごはん』ってアニメ…


私は 今でも あの頃のことを思い出す時 このアニメの まぬけなBGMまで 一緒に頭の中で流れ出します(笑)
(また 余談💦)




時間は 8時を過ぎた。


夫の仕事は 5時前には終わる…




『Jちゃんの駐車場で 洗車してから 帰る』


ぶっきらぼうな連絡が
5時過ぎに あった。





遅すぎない?




摩耶の笑い声を 聞きながら


なぜか

心が モヤモヤして来た。



No.46 11/10/13 19:46
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 45

急に どうしたんだろう…



一生懸命書いた手紙も

なんの効力も持たなかった。

まさに 八方ふさがりでも
もがき方すらワカラナイ。


私に出来ることは?




虚しくなった。



ゴールが見えない。





そもそも どうして
スタートしたんだっけ?


私が

セックスを拒んだから?



違うよ


拒んだのにだって

理由がある。



あんな事がなければ

私は 拒んだりしなかったのだ






あの


女のせいじゃないか。




No.47 11/10/13 20:27
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 46

あの長い夜に聞いた

女の話し。



私達の結婚式にも 来てくれた先輩の中に 奥さんと別居してる人がいる。


何ヶ月か前に

『S君 若い看護婦さんと つき合ってるらしいぞ(笑)』

と 夫から聞かされていた。


まだ離婚もしてないのに…


と 私は いやな気持ちになったのを おぼえている。



その女は

そのS君の彼女の友達。

病院の寮で
暮らしているらしい。



私は 前に

たぶん


その女に 会っている。


趣味仲間が集まっての バーベキューに S君は その彼女と数人の友人を連れてきていた。




『顔も スタイルも おまえの方が 全然いいんだ。 だけど 人 好きになるって そういう事じゃないだろ?』


泣きながら あの夜

そう言った夫。



複雑だった。



でも 少し自尊心を くすぐられたのも また嘘ではない。


小さくて 華奢な女が好きな夫



でかくて ごつい女が
あの 看護士の集団の中に居たなぁ

と なんとなくの記憶。



イライラして来た。



No.48 11/10/13 20:54
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 47

身体が弱いと 言っていたっけ


大袈裟なのか
2人の夢みる世界なのか


『先が ないんだ』

という 言い方をした。



先がない女が

既婚者に近づくんだ?


病人の看護してる場合じゃないだろうが…





したたかな女。










出会ってからの1週間

会ったのは
嘘をついた
あの土曜日の夜だけで


あとは 毎日

寮に電話をしていたのだと
言っていた。



私と摩耶を

あの モールにおいた日曜日の 1時間も 電話のため…





そんな事を考えていたら

9時を過ぎている。









不安に かられた。




したたかな女に


また



トラレテシマウ。







「摩耶! 行くよ!」

私は 車のキーを掴みながら
ビデオにくぎづけの摩耶を
呼んだ。



No.49 11/10/13 21:15
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 48

「どこに行くの?」



車に乗せた摩耶に 靴も はかせていない事に 今さら気づいた…



「ちょっと出かけて来ます」

と 義母に言うと

「こんな時間に?摩耶は?」


「連れて行きます」


何か 言いかけていたが

無視して 居間のドアをしめ

摩耶を 抱きかかえるように
玄関から 飛び出したのだ。





「パパ お迎えに行こうね」

ハンドルを握り
前を向いたまま そう言った。



向かう先は

J君の 駐車場だ。




もう 騙されない。


どうして
私が苦しまなくちゃならない?




私の頭の中で

夫と女が
楽しそうに 笑う。






わたさない。

絶対に。








車は J君の住む住宅街へと
入って行った…



No.50 11/10/13 21:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 49

なんだか 頭がクラクラする。


しっかりしろ

と 自分を励ます。



鼻唄をうたう摩耶が愛おしい。




ママ 負けないよ。摩耶。





何に?






軽い興奮状態の私には

正直
なんの計画もない。





ただ 確かめたかった。



今 駐車場には いないだろうはずの 夫の行方を…




指をくわえて

再燃したであろう
夫と女の恋愛を


みすみす 見逃すような真似だけは したくなかったのだ。






あの角を曲がれば

J君の 駐車場だ。





そこに夫が


いる事なのか いない事なのか




望む状況も わからずに

祈るような気持ちで

私は ハンドルをきった。



No.51 11/10/13 21:58
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 50

夫は






いた。






J君と 2人で。










放心し

ハンドルに顔をうずめる私。



「ママ…?」

心配そうに 摩耶が呼ぶ。




どうしよう


どうしよう





どうしよう






言い訳もない。





空き地の 目の前だ。

とまった私の車に 夫もJ君も 気づかないわけがない…




どこかで 気の荒い夫を
『怖い』と思っている私は


一気に

イタズラを見つけられた
子供のようになってしまった。





安堵などない。








人影が 近づいて来るのを


目の端で とらえた。



No.52 11/10/13 22:14
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 51

窓がノックされる…



顔をあげた私の目に

J君の笑顔が うつった。




窓を 開ける。


「こんばんは!」



摩耶が 元気に挨拶をした。



「こんばんは♪
おりこうだなぁ(笑)」



声も




出ない。




「リー…」

J君と J君の奥さんと娘さんは 私を そう呼ぶ。


私は 『リー』と呼ばれることが 好きだ。




「リー 大丈夫だから」



涙があふれる。




「バカなまねは 俺がさせないって 言ったでしょ(笑)」





私は 声をあげて泣いた。



No.53 11/10/13 23:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 52

私を『リー』と優しく呼んでくれた J君の奥さんは


去年

32歳の若さで亡くなった。


子宮癌だった。


女の子と男の子

2人の宝ものを


J君に 残して…





まるで


奥さんが

『大丈夫だよ』
と言ってくれてるみたいだった




奥さんも 同居で長男の嫁。

旦那ぬきで
2人で遊ぶことも多かった。


綺麗で 根っからのヤンキー

いつまでも 年をとらない彼女は 私の 憧れの女性だった。



『大丈夫』

彼女は いつも そう言った。


本当に 大丈夫な気がしてくる…







薄暗い 駐車場でも

夫の怒った顔は 見える。




察したJ君が

夫に 声をかける。


「雄! もう今日は帰れ(笑) リーに 心配かけんな!!(笑)」






帰ったら…








さっきまでの 私の勢いは

もうすでに
はるか彼方に 遠のき



後悔と


頭痛だけが残った。




No.54 11/10/14 00:30
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 53

「信じられないのか?」



やはり 言われた。






「ごめんなさい」




謝りながら

理不尽な気がしていた。



この人は

なぜ 私がそうしたかの

理由を考えないのだろうか




でも 言えない。



その後

続く言葉が こわいから…




自分のしたことが

裏目に出たこと


なぜだか それにも


怒りが わいた。




夫の言葉通り

居ると言った場所に
彼は 居た。



ただ それだけだ。

なにも 好転していない。



変化が あったとすれば

夫の態度が

ますます悪化しただけ。






信じる?




信じたいよ。



あなたなんかより

何倍も 何倍も



何倍も






信じたいんだよ。



No.55 11/10/14 00:54
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 54

こうして考えてみると

あの頃の私の辛抱は



一週間

と決まっていたかのようだ…




疑ってしまったために

いや


疑って
行動してしまったがために


私は さらに

身動きが
とれなくなってしまった。



あいかわらず

帰りの遅い夫。



笑わない夫。




電話してる?


会ってる?





笑ってる?




悔しい 悔しい。


頭が おかしくなりそう





ふいに


夫の言葉が思い出された。



離れると

大切なものが わかる。






あまりにも 短絡的な考えを

今なら笑えるが



あの頃の私は 必死だった。




夫の気持ちを 取り戻すため



私は 摩耶を連れ

また 家を出た。



能面の彼との生活が

ふたたび始まった


一週間後の 木曜日に…



No.56 11/10/14 02:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 55

また 戻ることになった実家は

とても居心地が悪かった。



私は 兄嫁が留守のうち
母に電話をした。



すぐに帰ると言ってくれた言葉に安心し 少しだけ眠った。



もう 半月以上 まともに 食べたり眠ったりしていない。



思考も うまく はたらかない…



実は 私が結婚する頃

この家に住む兄も


浮気をしている。


兄嫁は 誰にも言えず
私が 嫁いだ家を
何度か 泣きながら訪れていた


私は 一緒に暮らしてきた 姪や甥を傷つけた兄が許せず

罵倒しに ここへ来たりもした


激しい気性の兄嫁が
「死んでやる!」と泣き叫び
道路へ飛び出すのを
母とともに 押さえた事もある


長い 長い 争いを経て

今 穏やかに暮らす 兄家族。




後に言われることだが

兄嫁は


私に すがりつく根性が足りないと 思ってたらしい。


あの時 私を すぐに迎えに来た夫だから 見込みがあると思っていた分 よけいに…




どっちみち

家を空けた この動きも
また同様に



私にとって

最悪の結果を生んだだけだった…



No.57 11/10/14 03:32
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 56

もともとは
行きも帰りも頼んでいた
摩耶の幼稚園バス。


二年保育で 今年入園させた私は かなり心配性な母親で
家で 娘の帰りを待つことが出来ず 必ず 幼稚園まで迎えに行くようになっていた。


摩耶ちゃん 帰りはいつも車なのでと バス代が 半分戻されていたが…


どうやら 行きのバスも

お断りになりそうだ。



実家の前で バスに乗るようになったら 暇な主婦達の かっこうの餌になる。



幸せなふりも

けっこう 難しい…







「摩耶ちゃんママ♪」


「あ(笑) Nちゃんママ…」


Nちゃんママは 最初から 行きも帰りも 自分の車で 送り迎えをしていた。


「摩耶ちゃんママ 朝も毎日 車にしたんですか?」

「せざるをえない(笑)」

「ん?」

「家 出ちゃったよ(笑)」

「え!?」



「… もう だめかな」



「だって死ぬんですよね? その女!!」


久しぶりに笑った。


Nちゃんママは 優しく可愛らしい顔に似合わず 時々 恐ろしいことを 平気で言う。



「お茶飲みましょう♪」




また 救われた。



No.58 11/10/14 05:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 57

「うちは パパいたって 母子家庭みたいなもんですから(笑)」


Nちゃん宅のダイニング

私の大好きな コーヒーをいれてくれながら
Nちゃんママが 笑う。


「行事だって 参加してくれたことないし… あっ これ 美味しいですよ♪」



Nちゃんママも 義両親と同居だが 生活スタイルが別々になっており とても自由だ。



「もし離婚したら 運動会も お遊戯会も 父の日も(笑) ずっと 一緒にいようね(笑)!」



「(笑)どうせまた すぐ迎えに来ますよ… 摩耶ちゃんパパ」





それを期待して

家を出た私だが



そうはならないこと





ぼんやりと わかってる。





「ところで Eちゃんママと 最近会ってるんですか?」

「ううん あれからもう全然」



彼女の家とウチは

目と鼻の先なのだ。



それからまた 彼女の奇行に ハナが咲き(別スレたてたい程 すごい😱💦)ずっと 笑っていられたけれど…





胸の奥は


ずっと



チクチクしたままだった。











そんな Eちゃんママと

明日 会う事件が起きる…



No.59 11/10/14 11:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 58

夫は いったい どうしたいのか…

私も 少しずつ
考えられるようになって来た。


彼の性格上
私が 放っておけば
何も前に進まないことは
わかりきっている。



けど…


傷ついているんだ 私。


もう

誰に相談する気力もない




かた時も 頭から離れない
夫と女のカゲ。

『やめろ』と拒否された
あの夜。



心は ズタズタだった。





それでも 何かしなくてはならないと 重い心と身体を ひきずって 此処へ来た…







『助けてください』
なんて 言いません。

私は 大丈夫。


乗り越えられない事なんて
ないですよね…



私は


生きているんだから。






シンと冷たくなった
静かな風の吹くなか


私は



J君の奥さんの お墓に

手を 合わせた。



No.60 11/10/14 12:06
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 59

長期戦になる。


私は 覚悟を決め
もうしばらくの 荷物を取りに
家へ帰った。




義母とも 話しをしよう。

大騒ぎをする人ではない。


どこか
自分と似たところのある義母を

好きにはなれないまでも
信頼はしていた。





二階の自室に入る。

カーテンも
閉めきったままの
どんよりとした空間。


夫は いったい
毎日ここで
何を考えているのだろう…

楽しいわけはない。



本当は

自分のそばに


私と摩耶がいないことを
悲しんでいるはず。





片付けることもされないまま
山になった 灰皿。

乾燥したダスター。




充電器から

はずれたままの


コードレスフォン…


















なぜか


身体の中を



大きなものが 波打つ。








私は それを手にとった。



No.61 11/10/14 13:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 60

発信履歴…



着信履歴…








これは…





頭を殴られたような衝撃。


自分の心臓の音が

聞こえはじめる。
とても速く…







落ち着いて。








手が ふるえる。







リダイヤルを


押…








待って。





こんな事実と直面しても

私は まだ
夫を 恐れている。

気が立てば
暴力をふるう事もあった

でも 私が怖いのは
そんな事じゃない。


私という人間が
さげすまれることを
おそれている。


卑しい人間

恥ずかしい人間


そんな人間に なりさがった私を 見られたくない と

このごに及んで

まだ 思っている。







プライドなのか


愛されたいのか…











発信履歴に残る番号は


ポケベルだった。



この部屋の番号を送れば

それを目にした女は



一瞬でも
幸せになるはずだ。


そして
この電話機にも履歴が残る。


どちらも
起きてほしくないこと。



興奮した頭を
フルに はたらかせる。


確かめたい。

確かめたい。

確かめたい。











私は

手早く その番号をメモし


Eちゃんママの家へ

走った。




No.62 11/10/14 14:12
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 61

今思えば


なんで Nちゃんママに
助けを求めなかったのだろう…



興奮していたんだな。

目の前にある 電話機という 選択でしか なかったからな…






ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン




興奮している私は

けたたましく
ドアチャイムを鳴らす。


息が きれる





早く

早く 出てきて。






ガチャッ




「摩耶ちゃんママ!」

驚いた顔の彼女が言う。

こころなし 嬉しそうで
胸が痛む。




「突然ごめん!! Eちゃんママ 何も聞かず 電話を貸してほしいの…」


「え?」


「事情は 済んだら必ず話す。 だから お願い!!」

乱れる息と一緒に
私は 深々と頭を下げた。


「かまわないけど…
とりあえず あがって!」



No.63 11/10/14 20:19
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 62

久しぶりだな…

Eちゃんママの家に入った時
不思議な安堵を感じた。


それは きっと


何も知らなかった

幸せな私が

笑いながら 過ごしていた
空間だったからだろう。



「面倒なことに 巻き込まれたりしないんだよね?」


Eちゃんママの言葉で

現実に
引き戻された。




「それは絶対ない!
約束する!!」


「じ… じゃあ どうぞ」



勢いにおされ
それ以上は何も言わなかった。




私は

ひとつ 深呼吸すると



ゆっくりと
プッシュボタンを押した。







『こちらは
ポケットベルです…』

機械的な アナウンス。


わかってはいたが

ショックだった…






Eちゃんママの


視線も 痛い。





それでも まだ

ここへ来たことで


私は 少しの冷静さを
取り戻しつつあったのだろう



案内通り



この家の番号を プッシュ。






受話器を置いた。



No.64 11/10/14 20:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 63

あとは…



この電話のベルが

鳴るのを 待つだけ。




数分なのか


数十分なのか



それとも




鳴らないのか。






胃が せりあがって来るような 吐き気にも似た感覚を
なんとか おさえながら


私は

Eちゃんママに


「ごめんね…」


と言った。



私の様子に

ただならぬものを感じた彼女は


幾分 優しい目で見つめる。





「浮気してるんだ(笑)
うちの旦那…」




「…え?」



「女のポケベル…
… だと思う。」



言いながら

間違いを 祈っている 私…






「うそ…でしょ」










彼女の声を


かき消すように




電話のベルが 鳴り響いた。



No.65 11/10/15 02:10
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 64

反射的に 受話器をあげる。







数秒の無言の後











『もしもし…』











忘れない。


あの声






トーンは低いが


確実に 若い女の声。

不安げな…












現実。







カーっと
頭に 血がのぼる。



わけが わからぬまま

私は 受話器を叩きつけた。



「あ…! ごめん」




Eちゃんママが
首を 横にふる。






「ありがとう」


ふるえる声で言い残し



私は また家まで走った。

空き地を通りぬけ
全力で 走った。











玄関を開け 家に飛び込むと

出合い頭に
義母と 体当たりをした




お互いに よろける。







それが
合図でもあったかのように

私は 叫んだ。









「どうして あたしが
こんなことされなきゃ
ならないのよ!!!!!!!」



No.66 11/10/15 03:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 65

生まれてから

ただの1度も


人に向けて
激昂したことはない。




狂いそうな怒りと

渦を巻く
ドス黒い 憎しみ。






「ママ… どうした…」


義母が 放心している。




身体が ふるえ出す。



「バカにすんな…!」


私は そういうと

台所に行き 大量のゴミ袋を 抱えて 2階へと走った。



驚いた義母が

追いかけてくる。





バカにしやがって

バカにしやがって…



つぶやきながら

ゴミ袋に 服を詰め込む 。



口も

身体も


勝手に動いているかのようだ




「ママ…」

おろおろする義母に


「女がいるんだよ!」


「 … 」




「私も摩耶も
もう いらないんだって(笑)」



「なに言って…」

「もう たくさんなの!!」






もう







だめなんだよ…




No.67 11/10/15 04:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 66

「もう 帰らないと
思ってください…」


「ママ そんな事言わないで」

義母が 泣いている。


「パパと話しをしに
夜に また来ます」



「雄太追い出すから…
ママと摩耶は ここにいて…」

泣きくずれる義母。




こんなにも絶望しているのに

私は 頭の中で

何年か先の
義母との会話を想像していた…



あんな事もあったね



って

笑ってる 私達。






根が 楽天的なせいだろうか



もうだめだと 思いながらも


やはり そんな事
起こるわけがないと
思う 自分。




きっとこれは

長い長い
夫婦の道のりの


ひとつ目の峠なだけ。






描いたものを こわせない私。







こわすわけには



いかないと思った。



No.68 11/10/15 05:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 67

その晩

私は摩耶を連れ

ふたたび
この家を おとずれた。



「ママ ちょっとパパと お話しあるから 摩耶は じいちゃんと ばあちゃんと遊んでてね」

「うん♪」



義父母も 嬉しそうだが

とても辛く
複雑だっただろう…





2階へと あがる。



「寝てんの?」



ソファーに 横になっていた夫へ 声をかける。

内心
自分の威圧的な声と
話し方に おどろいていた。



上半身だけ
のそっと 起き上がる。


いやな顔だ…




ふて腐れた子供みたいな。


今なら【逆ギレ】なんて言葉が ピッタリとあてはまる 態度




私が男なら


ぶん殴ってる…





「なんで嘘つくの?」

「なにが…」


「連絡とってんじゃん。
女と」





… ダンマリか。



怒りなのか
恐怖なのか

私は 小刻みに震えていた。





「別れないからね」






夫が

鋭い視線を向ける。




「あんた達だけ
幸せになんかさせない」



No.69 11/10/15 06:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 68

「幸せになんかなれないんだって! 先なんかナイ女なんだって話しただろ!!」


やっと 口を開いたかと思えば…




「先のない女なら 何をしてもいいの!? 人のものを盗ってもいいの!? 人を傷つけても いいの!?!?!?」


もう



とまらなかった。










天使は







堕ちたのだ。









「病気なら 優しくしてもらえるんだね。 じゃあ 私も病気になろうかな(笑) でも残念だけど 私は健康だから(笑) 健康すぎて ごめんなさいね!!」



殴られる…!




そう思った時






「あいつ…

いつも…


『奥さんに悪い』

って 泣くんだ… 」









オクサンニ



ワルイ?











今までの
何百倍ものエネルギーで
怒りが わいて来た










「ふざけんな…」





No.70 11/10/15 13:54
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 69

「 … 女に



女に 会わせて」





「…なんだって?」





いつも 穏やかな私。

めそめそ
泣いてばかりの 私。


夫は 私を


若い頃

『人形みたいだな』
と 笑ったことがある。

それは

可愛いや 美しいを
ヤユした言葉ではなく


なんでも言う事をきくから…


そういう意味だ。




本当に その通りで

つき合っている当時も
夫婦になってからも


私は いつも

彼の
人形だった。


さからわない。


したがう。



優柔不断の私には

それが


とても 居心地のいい

場所だったから。





そんな私しか知らない夫は


間違いなく今

戸惑っていた。





「会わせなさいよ!
話しをさせて!!」


  • << 72 「なんで 会う必要がある?」 「バカにされて 黙ってろって言うの!?」 夫の誤算。 女の思いを 私に伝えたら 私が 感謝すると思った事。 「バカになんて してないだろ! 悪いと思うことの どこがバカにしてるんだ!?」 はっきり言って 夫は頭が悪い。 人形は いつでも こうして 腹の中で 彼を見下していたんだな。 私のプライドを ズタズタに傷つけた その言葉の意味を 馬鹿に説明しても 絶対に わかるわけがない。 ましてや 興奮している私は その したたかさに 丸呑みされている馬鹿な夫が 愛しくて たまらなくて… 怒りの矛先は 女にばかり 向いてしまうのだ。 そして これも あの頃の 私の 幼さゆえなのか 冷静さに事欠いた私は 知恵の ひとつもはたらかず 発着信の履歴を メモすることすら していなかったのだ。 私は 勢いよく立ち上がると 電話の 子機へと 手を のばした。

No.71 11/10/15 14:25
通行人 ( INTknb )

まじでこのカス旦那と浮気相手のカス女にムカつく💢地獄に落ちればいいのに💢
カス女の
自分は死ぬ
とか
奥さんに悪い
とか
マジでマジでマジで
殴り殺したい💢

主サン!しっかり退治してください!
バカ女の会社に
私だったら、浮気バカ女がいるって会社に電話✨ポストに張り紙✨
実家に襲撃✨


旦那はゴミ箱にいれてやる💢

そんな糞旦那イラネ💢
娘がいれば十分幸せです✨

  • << 73 通行人さん💖 レス ありがとうございます💖 一緒に 怒ってくれて 嬉しいです🍀🍀🍀✨✨ 15年以上前の話しなので(笑) 残念ながら 今となっては どうしようもありません(;_;) 幼かったんですね… 自分のとった行動には 後悔ばかりです。 でも 私 今 幸せだから☺🍀 復讐した気になってます😂💦💦 ありがとうございました🍀🍀🍀

No.72 11/10/15 14:28
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 70 「 … 女に 女に 会わせて」 「…なんだって?」 いつも 穏やかな私。 めそめそ 泣いてばかりの 私。…

「なんで 会う必要がある?」


「バカにされて 黙ってろって言うの!?」




夫の誤算。





女の思いを 私に伝えたら

私が 感謝すると思った事。




「バカになんて してないだろ! 悪いと思うことの どこがバカにしてるんだ!?」




はっきり言って

夫は頭が悪い。





人形は いつでも

こうして



腹の中で

彼を見下していたんだな。




私のプライドを

ズタズタに傷つけた
その言葉の意味を


馬鹿に説明しても
絶対に わかるわけがない。



ましてや
興奮している私は

その したたかさに 丸呑みされている馬鹿な夫が 愛しくて
たまらなくて…


怒りの矛先は

女にばかり
向いてしまうのだ。




そして これも

あの頃の 私の
幼さゆえなのか

冷静さに事欠いた私は

知恵の ひとつもはたらかず


発着信の履歴を
メモすることすら
していなかったのだ。




私は
勢いよく立ち上がると


電話の 子機へと

手を のばした。




  • << 74 横になったまま 動こうともしなかった夫が はじかれたように 飛び起き 私に 向かって来る。 手が 触れたと同時に 子機は 奪われた。 「なにすんのよ!?」 鬼のような 顔をしていただろう… 夫の腕に渡ったそれを 私は 力ずくで取り返そうと 夫に 飛びつく。 無言で それでも力強く 夫の胸に抱えこまれた その 真っ黒で無機質な物体が 女に 見えた。 そんなに 守りたい? 私は 夫の腕に 思いきり 噛みついた。

No.73 11/10/15 14:35
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 71 まじでこのカス旦那と浮気相手のカス女にムカつく💢地獄に落ちればいいのに💢 カス女の 自分は死ぬ とか 奥さんに悪い とか マジで…

通行人さん💖

レス
ありがとうございます💖


一緒に 怒ってくれて
嬉しいです🍀🍀🍀✨✨



15年以上前の話しなので(笑) 残念ながら 今となっては どうしようもありません(;_;)


幼かったんですね…


自分のとった行動には
後悔ばかりです。


でも

私 今 幸せだから☺🍀



復讐した気になってます😂💦💦


ありがとうございました🍀🍀🍀


No.74 11/10/15 15:16
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 72 「なんで 会う必要がある?」 「バカにされて 黙ってろって言うの!?」 夫の誤算。 女の思いを 私に伝えたら 私…

横になったまま

動こうともしなかった夫が


はじかれたように 飛び起き

私に 向かって来る。




手が 触れたと同時に

子機は 奪われた。



「なにすんのよ!?」




鬼のような

顔をしていただろう…




夫の腕に渡ったそれを

私は 力ずくで取り返そうと
夫に 飛びつく。



無言で

それでも力強く

夫の胸に抱えこまれた
その

真っ黒で無機質な物体が







女に



見えた。








そんなに 守りたい?












私は 夫の腕に


思いきり 噛みついた。


No.75 11/10/15 18:17
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 74

「…!
なにやってんだ!?
てめぇー!!!!!」



加減のない力で
はねのけられた私は
ローボードに 倒れこむ。




大好きな



雑貨たちが



私の身体で 飛び散る。






「… いってぇ」

苦痛に
顔をゆがませる夫。











「幸せに…」







「幸せにするって
言ったじゃない!!!」





涙が


あとから あとから

こぼれてくる。







夫の コタエはない…









「どうして…
こんな事になるの?」






「私…



なにか

悪い事した?」






涙も 鼻水も
ぐちゃまぜになった顔で

小物たちを ひろい集める…





手の中にある
それらを

元の場所に戻しながら



もう
かえっては来ない

幸せだった自分を

思う。










「パパは…



いったい
どうしたいの?」








聞きたくはない
夫の本心を


それでも

私は 知りたかった。




No.76 11/10/15 18:50
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 75

わからない…





と 夫は言った。





それは かつて

私の口癖で


つねづね
夫がバカにしていた言葉




「また おまえは『わかんな~い』か(笑)まったく(笑)」







わからない



って



すごくラク。





逃げられるから…




とても 卑怯な言葉なのだと

この時 知った。






「わかんないって…


なにが?」





「そばに… いない方の人間のことばかり 考えてしまう」



どういう事?




「おまえと摩耶が ここから いなくなった時 俺… おまえ達のことしか 頭になかった」




これから 何を言われるのか…


そんなこと

この時は どうでもよかった




ただ


話しをしてくれる彼が

素直に嬉しかった。






No.77 11/10/15 19:16
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 76

「おまえ達が 帰って来てくれて なにもかも 終わったんだ… って思ってた」



悪いことが…


と いう意味だろう。






「だけど 本当は そんな簡単なことじゃなくって おまえは 俺が考えてるより ずっと ずっと 傷ついてて…」








気づいてたんだ…


私の痛み。







「そうしたら…

俺のせいで傷ついた 今
そばにいない あいつが …

気になって 気になって

しょうがなくなったんだ」





ズキン


と 心臓が鳴る。






「Jちゃんにも ずっと クギさされてた。 絶対 バカなことすんな!って…」





「だけど…」




もう起きている事なのに







とめられるなら





とめたいと思った。











その後の

夫から出る言葉が


とても



とても





こわかった。




No.78 11/10/15 21:38
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 77

それで…


電話を したの?




聞きたくないのに

先をうながす



矛盾してるな…



私。






「電話をかけたのは…」






「おまえが 駐車場に来た…


次の日だ」




… え?




「信じてもらえてないんだ…

って あれで

ハッキリわかったから」






え?











… え?








また…







私が


引き金を ひいたの?






どうして



私のする事は いつも







裏目に 出るの…?









これが
夫の本心ではなく


私に

非があると思わせる手段ならば





夫を 馬鹿だと思いこんでいた私の 絶対的な 間違いになる







だけど


どう 自分を救おうとしても




それは

あまりにも無理がある。





この人は


思ったままを



口にしているだけだ。









失敗したのは








私なのだ。



No.79 11/10/15 23:21
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 78

もし
あの夜 拒まなければ…



もし

あの日


駐車場に 行かなければ…








私の中の


もし







またひとつ増えた。





決断するのが

恐ろしくなる。



自分の判断に


自信が もてなくなる…






してはいけない事を

したわけでもないのに


私は ひどく
自分を 責めた。




「私が… 悪いんだね」




「私が


みんな こわしてる」



「ちがうっ!!」




びっくりした。




「悪いのは 全部俺だ」





「おまえは…



なにも 悪くない」






そんな言葉いらない。





おまえのせいだと

罵られた方が どんなに楽か…







「俺は ひとりになりたい」






今…


なんて?





「あいつとも

おまえ達とも離れて


ひとりになるべきだと思う」





予想してなかった

夫の言葉に



私は しばし
茫然と していた。



No.80 11/10/16 01:18
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 79

「寒くなりましたね~」

Nちゃんのママが
ブルっと首を すくめる。


11月もなかばだ…

冬の足音が
聞こえはじめるだろう。



状況は

なにも変わっていない。


実家は

針のむしろだ…



夫に

「ひとりになりたい」


と言われてから


私は 何も疑うことなく

その言葉通りを信じた。



無理強いをして
そばにいることは

私には得策でないと

思えたから。



そんな私を

兄嫁は 無言で威圧してきた。


母も 帰って来てくれてはいるが なにぶん…

気性が 私と同じだ。

穏やかな母は

兄嫁には かなわない。

家の中の 力関係とは

立場ではない。


人間的な 強さ弱さであると
とても 思わされる。





「マ~マ~!」

園庭で遊ぶ
摩耶と Nちゃんが
駆けよって来る。



「さぁ 帰ろうか!」


元気なふりをしてれば
元気も出てくる!






はぁ…

帰りたくない。




「マック 行きたい人~♪」


Nちゃんママが
大声を出す。



子供達が
「は~い!!」

と 手をあげる。



「は~い!はい!はい!」

負けずに
私も 手をあげた。



No.81 11/10/16 02:58
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 80

キッズコーナーは

子供達の 笑い声や 叫び声で 賑わっている。



「どいつも こいつも
バカばっかりですね!」

憤慨しながら
ポテトを 口に運んでいる。


「Nちゃんママ可愛い」

「やだ💦摩耶ちゃんママ! 何言ってんですか💦💦」



私はいつも

彼女に 感謝する。


こんな時間を くれる事…



熱いコーヒーを すすりながら

優しい気持ちに包まれた。




「私思うんですけど…」

「ん?」

「実家… 出た方が いいんじゃないですか?」



実家を出る…



考えてもみなかった。




すぐに 戻ることになるだろうと あまい考えでいた私も

それが無理である事は


うすうす
気づき出してはいた。




「でも… どこへ?」


「アパート借りるんですよ!」



アパート…



「もちろん お金は 摩耶ちゃんパパに出させるんです!!」










「お金は自由にさせない! 」









何かが





動き出す気がして来た…



No.82 11/10/16 04:08
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 81

私の
ささやかな希望は


思いもかけない展開で

叶えられる事になった。



「言いたくないんだけど…」


数日後

近所のスーパーで

偶然出会った 夫の乗る車の チームの仲間に言われた。



「うちの旦那 この間 〇〇さんに会ったって… 」


それは
他県の ドライブインだった。


「友達と… 何人か 女の子が 一緒だった… って」







夜のスーパーの

照明に照らされた

リノリウムの床が


ゆらゆらと 揺れた。





倒れそうになるのを

必死で こらえる。









殺意さえ


芽生えた。







なんだろう…





悪い夢を 見ているのかな…







私は ずっと頭の中で

仮に
離婚するような事になったら


『私が浮気をした』と

人には言ってもらうよう
夫に
頼もうとすら考えていた。



それほど

『される』という行為は


私にとって

羞恥と屈辱に まみれていた。





それを…







人と出会うような場所に

一緒にいるなんて行為を

ぬけぬけと…











私は

夫のいる家へと


車を走らせた。




No.83 11/10/16 04:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 82

「どっちとも

別れるんじゃなかったの(笑)



恥ずかしいまね
すんじゃねーよ!!!」





憎悪だけの感情で

夫と向き合うのは


初めてだった。






狂ってる…






私もまた


狂っているんだろう。







「摩耶を…


どうするつもり?」




「あんたの勝手で

父親のいない子にするの…?」





「なんで私達だけが

すてられるの!?!?」



「捨てるなんて言うな…」



「捨てるんじゃない!!

あの女を 拾って
私を 捨てるのよ あんたは!」



「理由は… なに?」






「あの女が拾われて

私が 捨てられる理由は …


理由は なに?…」








「おまえは…







強いから…」











強い?


私が 強い?






「おまえは 俺がいなくても

生きていける。




摩耶も… いる。」




だけど あいつには



俺しかいないから













頭の中を

小さな虫が はいまわるように



続く言葉を 乱してゆく











「じゃあ 死ぬから…」






「摩耶と一緒に




私 死ぬから…」




No.84 11/10/16 09:39
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 83

何を言っても

ほとんど無反応だった夫が


初めて

激しい感情を ぶつけて来た。





「死ぬとか言うな!!」



精一杯


努力してきた…




頑張って

頑張って

頑張って



必ず やり直せるって



なんとか


呼吸してきた。





強いから


ひとりでも 生きていける…?





かっこつけて

すがることもせずに



夫を 女に差し出すようなことを言った あの…





深い 真っ黒な


地獄のような穴に

つき落とされた あの日。





あの日から ずっと


夫の目には



私は 強い女と

映っていたの?








だとしたら…







すべてが


無駄だったと




絶望するしか


ないじゃないか…











「死にたいよ もう…



摩耶は


守るもので



私を守ってはくれないよ…





私には

支えがないんだもん




私は


ひとりでは

生きられないよ…




だから 死ぬ




摩耶も

残していったら かわいそう




だから 一緒に死ぬ」








「死ぬなら

おまえ 一人で死ね」










「摩耶を

道連れにしようとすんな!!」




No.85 11/10/16 10:53
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 84

怖かったんだな…


あの人。





時が過ぎれば わかる事も


渦中では

言葉しか よまない。





『一人で死ね』は



今までの

どんな言葉


どんな行為よりも



私を

【イラナイ人間】


と思わせてくれた。








『死ぬなんて言うな』

って言われた時


ほんとは 少し

嬉しかった。



まだ 彼の気持ち

動かす力



私にもあるんだ って…





子供を 盾に取ったと

思われたのかな…




摩耶に たいしての愛情が

あまり
うかがえない夫だったから


考えもせずに

そう言ったんだけどな…


摩耶は 私が大好き。


私が いなくちゃ

生きていけないもの。






『一人で死ね』




か。



ははは…




そうだよね。



摩耶の命を奪うなんて



かわいそうだから

一緒に死ぬだなんて




エゴ以外の
何もんでもない…






押し黙る私に


不安を感じたのか





夫は

少し優しい声音で話す。



「俺なんか イラナイだろ…」
って。










「おまえらなら… もっと いいヤツあらわれるから…」


って。












私は

どこまで


なめられてるんだろう。



No.86 11/10/16 12:31
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 85

邪魔だから

消えてくれ…



って そう言ったら?






ごはんを食べたり

お出かけしたり


電話で 愛してるって言ったり



手を つないで

キスをして


セックスして



また明日ね

って


笑い合う

そんな楽しい毎日に





おまえは邪魔だから消えろ








って

ハッキリそう言ったら?






思い通りに 事が進まなければ

ふて腐れる人間だ。



それでも
精一杯 努力して

飴とムチのつもりか(笑)



『おまえには もっと
いい男が あらわれる』

だなんて


優しい言葉のつもりで
かけてくる 馬鹿が…





私には

『恥』だけ渡して


さようなら。





なめんな…!










『お金は自由にさせない!』




Nちゃんママの言葉が

ふいに浮かぶ。








「月10万…」


「…なに?」




つけてもいない

『強い女』の仮面が見えて


あなたにとっての
『いい女』の仮面には

気づいてもらえなかったのなら



はずしてしまおう。






「私は仕事も出来ない。
暮らす場所もない。

それは 当たり前でしょ?」



「実家が あるだろ…」

「私も摩耶も 実家で
どれ程つらい思いをしてるか
あんた わかってんの!?」

「 … 」




「それが嫌なら

女と スグ別れて…」





私は



身体の震えを悟られないよう


『強い女』の仮面を

深く


深く

かぶった。



No.87 11/10/16 14:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 86

そうまでして 夫を


さげすみ 罵り

追いつめても



絶対に 夫と女が
会えなくなる状況に
事を運ぼうとしないのは

私の根本には


修復への

執念があったからだと思う。



恋愛の生まれたてに

『邪魔をされる』は
かっこうの スパイスだ。


物理的に
夫が もどっても

心が離れたままでは

意味がない。



私が
泣き叫ぶほどに

求めていたのは



彼との時間や空間ではなく

男としての 愛情なんだ。




あっちにぶつかり

こっちに ぶつかり


ゴロゴロ ゴロゴロ

七転八倒



だけど

何を どうしても…





夫への愛が



冷めない。










しびれを きらした兄は

『俺が 雄太に話して来る』



今夜 出かけて行った。


申しわけなかったが




私は なにも

期待していなかった。



No.88 11/10/17 01:30
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 87

テレビのニュースを観ていた。


母と2人…




「かわいそうだこと…」

母が つぶやく。



新婚旅行の帰り

夫婦の車が


事故で大破。即死。






「幸せなまま死んだんだもん… ある意味 幸せかもよ…」


あつい お茶をさましながら
私は そう言った。





「… あんたは」

悲しそうに 母が笑う。





『経験者』の強みを持って
夫との話し合いに のぞんだ兄は ヘトヘトになって 帰ってきた。


「雄太の頑固さは 異常だな」



ひと言も


喋らなかったらしい…





そうして 日をあけて

母も 彼の元へ向かう。






同じなのだ。



何も




変わらない。






義両親が

泣いて謝ったらしいが


母は
「当人同士のこと」と
頭を あげさせた。




義父も 義母も
夫には さからえない。


家族であるうちは

それは 私の居心地を


とても 良くしてくれたが




今となっては…










私は

ひとつ ため息をつくと
母に言った。





「お母さん 私…
アパートを借りたいの」



No.89 11/10/17 02:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 88

「もうい~か~い♪」

「ま~だだよ~💦」



かくれ場所を探すNちゃん。


「摩耶ちゃんママ…
ここ 開けてもい~い?」

そっと私にたずねる。



ニッコリ笑って
指で OKサイン。




「もう! Nはぁ~!」

「ママ💦 し~っ…!」







平成7年12月5日


私は
初めての

お城を持った。




目の前が 摩耶の通う幼稚園の

新築の アパートだ。




少しでも
明るい気分になりたくて

日当たりを重視した。




月々の家賃は

もちろん夫に請求するが


敷金 礼金は


親に あまえた。




実家を出るとき

兄嫁は


「お義母さんは リエちゃんに あますぎる!!」
と 泣き叫んで抗議した。


車の購入が決まっていた
兄嫁に


母が
同額のお金を手渡すと

泣きやんだけれど(笑)





不動産屋さん探しから

契約の手続きまで


すべて Nちゃんママが
手伝ってくれた。




彼女がいなければ

私は


動くことすら

出来なかっただろう。












「Nちゃん!み~っけ♪」











だけど これは





決して



ゴールではないんだ。



No.90 11/10/17 03:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 89

イメージは


できあがっていた。




いずれ


摩耶と私と

そして





夫と



3人で

ここで幸せに暮らす。






離婚などしない。


してたまるか。







基盤がかたまった事で


わずかだが

エネルギーもわく。






明るい部屋で

朝食をとりながら


私は 摩耶に聞いた。




「摩耶 さみしい?」



ウインナーと格闘しながら

「ううん…」
と 首を横にふる。


「じいちゃんとか…」



言いよどむ。







「じいちゃんとかに

会いたい?」



みごと 突き刺したウィンナーを ご機嫌に頬ばりながら


「マー
ママがいれば いいよ」












ごめんね。






ごめんね 摩耶。










「ママ! 早く行こう!
Nちゃんと どっちが先に着くか 競争してるんだから!」






私は
慌てて 立ち上がった。



No.91 11/10/17 04:15
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 90

はく息の白い 朝…


手をつないで歩きながら



もう

2ヶ月ちかくの
時が流れたことを知る。



もうすぐ クリスマスだ…






どう過ごすのだろう。






誰が?









普通の恋人達のように

「メリークリスマス」

を 言い合うのだろうか…




私の存在は



消えたまま。









ない事にされる恐怖を

少し感じながら


それでも


私は『妻』なのだと



自分を励ます。







不幸な













「摩耶ちゃんのお母さん

いつも 綺麗にしてるわね~」



園長先生の奥さん。

副園長先生だ…




「これ 自毛なの?」

私の 髪をさわりながら
副園長先生が
不思議そうな顔をする。


「ええ(笑) 毎朝 カーラー巻いて 温風ヒーターの前で


じっ…



としてるんです(笑)」



「わはははは♪」



「暇なんで(笑)(笑)」














大丈夫。




私は まだまだ






幸せな主婦を


演じることが できる…




No.92 11/10/17 15:18
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 91

「持っていけ!!!」



私の顔めがけ

投げつけられた
10枚の 1万円札…



それは 届くことなく


ヒラヒラと

立ちすくむ私の足元に


落ちてゆく。











こんな屈辱は




それを

拾い集めなければならない
自分の みじめさや悔しさは




表現できない。











「じゃあ 俺の金は

どうなるんだ!?!?」


最初から

イライラしていた。







銀行振込みではなく
現金で 給与を渡す夫の会社。

毎月 封を開けずに
封筒ごと 私に手渡す夫。


「ご苦労さまでした💖」

その度に

「俺 偉いよな~…」
と 自分を褒めてたっけ…









私の要求を のんだ夫は
「いいよ 俺
夜も どこかで働くから」

と あの時言った。


そこまでしても
女と別れたくないのだと

私は 落胆した。










夜 働きになど

出てはいない。



そうして 現実的に
しわ寄せが来た 今になって

自分の手元には
ほとんど残らない お金が
惜しくて 惜しくて
しょうがなくなったのだ。



怒りは



俺が稼いだ金を



ただ横取りして行く






イラナイ女房へ向く…




No.93 11/10/17 18:02
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 92

どんどん 嫌われてゆくな…




アパートへの帰り道

私は また


深い悲しみに



おちて行く。








あんな事をされても

どうして 私は


あの人を

嫌いになれないんだろう。





あの当時

夫の隠し子事件の発覚した泉ピン子が テレビカメラに向かい 悲痛な叫びを あげていた。



『昨日まで好きだった人を

突然 今日嫌いには
なれないんです!!!』

大粒の涙を こぼしながら…





そういう事だ





と 思う。







何が 起きたからと言って

彼自身は 彼自身。



違う人間に
なったわけじゃない。








私が悪い…?


自分を 責め出す。





間違ってるの…?







何かを 間違えてる?








答えなど 出ないまま




誰も待つことのない



暗い




暗い部屋へ

たどり着いた。



No.94 11/10/17 18:51
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 93

摩耶が 眠りにつくと


また



ひとりの夜が はじまる。






初めて持った
自分の自由な空間に
高揚していたのも

はじめの数日間だけだった。



何よりも憧れていた

邪魔の入らないキッチン。


ストックしてある食材は

夫の好物ばかり…




輝きは 色あせる。





何も

やる気が 起きない。







暗いトンネル。





出口が 見えない。



あるのかさえ

ワカラナイ。







愛が


私から
どんどんと遠のき



殺したいほど憎い女へと


流れてゆく。





高い場所から

低い方へ流れるように





当然の


ことのように…








また 息が苦しくなる。


金魚のように

口をパクパクと動かし
酸素を求め

わけのわからない恐怖に
包まれはじめる。




過呼吸などという症状を

何も知らなかった私は




ただ

その地獄のような時間を
堪えるしかなかった。







何かに すがるように

私は 玄関のドアへ
手をかける。







飛び出そうとする私を


電話のベルが

呼びとめた。



No.95 11/10/17 20:06
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 94

『やっほ♪』


『S…』




Sも 高校時代の友人。

先の
【堕天使】のキャスト。
私の産んだ作品に
命を 吹き込んでくれた
魅力的な女性だ。


主役を食ってしまったSには
当時 ファンまでついた(笑)





『その声は…


落ち込んでたな(笑)!』


『落ち込んでない日なんか…
ないよ…』


『ありゃ💦図星!(笑)
めずらしい。

今、雄君も一緒でしょ?』




アパートの 電話回線の権利は

あの家の 2階のものだ。


だから…


何も知らない友人 知人から よく 電話が入る。



別居…



こんな恥ずかしい状態を
他人に知られたくない私は


夫への電話の場合

「すみません。 今 下に居ますので 下の電話に かけていただけますか?」
と ごまかしていた。





過呼吸の最中だ




Sのおかげで
ものすごくラクにしてもらった


隠す必要もない。




… と言うよりも



聞いてもらいたかった。






『実はね S…』



No.96 11/10/17 21:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 95

驚いたSは

すぐに 飛んできた。



「あんたは どうしたいの?」



「…わかんない」

タバコに火をつける。





まだ

かっこつけたいのか…






戻りたい


って 言えばいいのに。







「あたしが

話ししちゃダメかい?

雄君と…」




彼女は 必ず

私に 答えを選ばせる。


グズグズで

先が見えなくなった時


光りを
選ばせてくれる。




「いやな気持ちになるよ」


私は ニヤっと笑う。


「あんたの身内と喋るのとは ワケが違うだろ(笑) あたしのこと 味方だと思うかもしんね~し(笑)」






そうなんだね。

Sに言われて気づいた。



悪いことをしてると
自覚のある夫には 今

自分と女以外は


すべて敵。



J君さえ
口をきいてはくれない…

と 話していたっけ。







「じゃあ…

お願いしようかな… 」




言いながら

私は
2つの不安を抱えていた。




ひとつは



その為には

彼女に 本音を伝えなければ
ならないこと…。







もう ひとつは



私の友達の中では
Sと 格段 仲の良かった夫が

魅力的な彼女と



2人きりで会う







という状況になる事だ。





嫉妬心の強い自分が



つくづく 嫌になる…



No.97 11/10/17 22:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 96

いやな予感というのは


ほぼ的中するものである…





この
Sと夫の話し合いで

夫が Sに
とんでもない事をしでかしたのを 聞いたのは ついこの間…



15年後のことだ(笑)







Sが ふたたび
アパートを訪れる。


「摩耶ちゃん♪おみやげ~♪」

「わ~い!!
Sちゃん!ありがと♪」


45色のクレパス。

あまい においがした。




Sは バツイチで
子供は いない。


だから いつも

子供の立場から ものを見る。




「何が好きか わかんなくってね(笑)」

照れたように笑う。


「すごく喜んでる
ありがとうね。 S…」



摩耶は 目をキラキラさせて

さっそく お絵かきに夢中だ。




「しかしさ…

バカだよね。あんた達」

「 … 」


「あんたが痩せた事にも ずいぶん驚かされたけど 雄君も…

骨と皮じゃん(笑)」



だからなんだ…



夫の姿を見る度

あわい期待をしてしまうのは


悩んでいるのが

ありありと わかるから…



どちらも傷つけていると

身体中で感じているのが



痛い程
わかるから。








摩耶にとって

最良の道を選べと
言いつづけていた彼女。


夫が 私を
とても愛していたことを
若いときから知ってる彼女。



修復することが

『あたりまえ』


と思って来た彼女。






そんな彼女の口から

その夜 私は



意外な
道しるべをもらうのだ。



No.98 11/10/18 00:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 97

「へ!?」



Nちゃんのママが

まのぬけた声を出す。



すっかり恒例になった
土曜日の お泊り会。


Nちゃんママは
自宅の 夕食の用意をし
我が家にやって来る。


Nちゃんパパは
自由人。

ほぼ家庭を かえりみない。


Nちゃんママは
そんな状態を
上手に 楽しんでいる。



子供達を お風呂に入れ

大騒ぎしながら
やっと 寝かしつけ


私は ビール
Nちゃんママは コーヒー。

大人の時間の はじまりだ。






「摩耶ちゃんママ💦💦

今 何て言ったんですか…?」




「やっちゃった(笑)」

「ほんとに!?」


絶対に 敬語をくずさない彼女が 我を忘れている。



そして



ガッツポーズ。



「それでいいんですよ!
私いつも思ってました。

摩耶ちゃんママも
恋をすればいいのに… って」









残念ながら…


恋は



していない。




それどころか

私の気持ちは


さらに 夫へと加速している。



だけど

まだ
みえっぱりだった私は


Nちゃんママにさえ
夫への執着を
隠しつづけていた。




No.99 11/10/18 01:20
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 98

Sは あの夜


私に こう言った。





『男でついた傷は

男でしか治らない』


と…





私の

あまりにも酷い憔悴ぶり。


摩耶への笑顔が


偽物すぎること。




Sは

私以上に
摩耶を よく見ていた。


無理に明るく振る舞う母親を見る 子供のつらさを

Sは



知っているからだ。






「ちゃんと
笑えるようになりな…」


と 彼女は言った。




「摩耶ちゃんのために」





たしかに 限界だった。

摩耶の前でも

何度も何度も



泣いている。




わけもわからない摩耶に

『こわい』


と 言いながら
しがみついた事もあった。




絶対に 子供の前で

泣いては いけない。





「そんな母親を見る
子供の 気持ち

リエには


わからないだろう?」








私が 自分を
嫌いになって行ってるのは

この生活が

だらしのないものに
思えて来たから…





摩耶の気持ちにまで

目が


届かなかった。





すべてを クリアするには

『働く』ことが 必要。




そして
また 間違った選択。



私は

ダイヤルQ2の

サクラのバイトを始めたのだ。



No.100 11/10/18 02:19
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 99

こわれかけていたのかも

しれない…




今までなら

そんな恐ろしいこと


手を出す次元の話しじゃない。




ただ

働かなくては…




そればかり考えていた私は


自宅で 出来る

時間も自由

アルバイト代も
内職などとは雲泥の差



の その仕事に

飛びついてしまった。



幸い 声と お喋りには
自信があった。

実際 1週間単位で
お給料が振り込まれる
その アルバイトで

私は けっこうな金額を
稼ぐことが出来た。




実を言えば

夫からの10万円を


彼の ご機嫌をとるために
減らすなり
受け取らない方向へ もってゆこうと していたのだった。



本末転倒とは この事か。

自分で あきれる。








世の中には

寂しい人が

たくさんいるんだなぁ…


と思った。



私の お客さんは
みんな
長い時間 お喋りしてくれる。


秒単位で 加算される お給料のことばかり 考えていたのに

いつしか私は


『他人と話すこと』に
ハマって行った。




No.101 11/10/18 02:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 100

いつでも
神がかり的な事を言う

40代後半の男性と


私は 何度も偶然に繋がった。



絶対に
自宅の番号を教えてはいけない

会っては いけない


サクラの条件だ。





そもそも このオッサンは

そんな事
望んではいない様に感じた。


私は ただ

オッサンに癒されていた。


傷ついた気持ちが
和んでゆく…





2時間 3時間と
オッサンと喋るうち

あまり考えたことなかったが


男性の側は かなりの金額を 使ってるんだろうなぁ…
と 思い始めた。



いつか

オッサンも
金が尽きるかもしれない

ここへ
突然
やって来なくなるかもしれない





私は

オッサンに


自宅の番号を教えてしまった。




そして 結局



オッサンと寝てしまったのだ。



No.102 11/10/18 03:07
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 101

そして



反動。






みごとな 喪失感。








会いたい

会いたい

会いたい…





夫に


抱かれたい。







どうして

あの人の 腕の中にいるのが


私じゃないの?




なぜ あの女ばかり

優しさを 独り占めしてるの?








どうして 私は


好きでもない男に

抱かれているの…?











オッサンは



けっこう しつこかった。


もう2度と会うつもりの なかった私への 執拗な電話。



イライラして来た。


自分でまいた種なのに

怒りが わいて来る。





「夫とよりを戻しました。 もう2度と かけて来ないで!」




オッサンは

私の生活から 消えた。






オッサンに ついた

嘘の言い訳だけが



私の中に
こだましつづけた。



No.103 11/10/18 04:15
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 102

しかし


意外にも



とんだところで

オッサン効果が あらわれた。




私の中に

夫への 余裕が生まれたのだ。




私も

ルールを おかした。



同じ

ラインに立った。




たった それだけの事に

なんだか安心した。



簡単に言えば

仕返しをした気に

なっただけかもしれない。







無性に

夫の顔が 見たくなり


静かに雪の降る夜



私は


ここへ来た。







階下で はしゃぐ摩耶。


「元気そうだな…」

「うん!毎日 Nちゃんと遊んでるしね。 私も Nちゃんママに 遊んでもらってるし(笑)」



こちらの やわらかい態度に

夫も 笑顔になる。



何ヶ月ぶりだろう…

彼の笑顔。




クリスマス

年越し


お正月





何年も 夫と過ごして来た

たくさんのイベントたちを



摩耶のためだけに

たくさんの人たちの力を借り
楽しく過ごした。




夫が どうしているのか

頭の中から 追い出す作業は

それはそれは
激しい 苦痛を
ともなったけれど…




「あたしね パパ

仕事してんだ」


「仕事?」


「うん!Q2のサクラ(笑)」


「家で出来るんだな…
じゃあ
摩耶も寂しくないしな」



反応に
少し ガッカリする。




「まさか 会ったり…

してねんだろ?」



「会ったよ。 やったし。」




夫が


かじょうに反応した。




No.104 11/10/18 05:08
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 103

「うそ…



だろ…?」


「嘘じゃないよ(笑)」



不謹慎だが

ワクワクして来る私。




「なんで…」





あきらかに

ひどいショックを受けている。






「おあいこね。」







私の中の悪魔が

高笑いを はじめた。






「俺は…


責められないんだよな」


「そうだね」





「待っててくれって…


言うつもりだったのに…」




なぜか私は

夫の この言葉には


後悔を感じなかった。




「なんでだよ…」







涙を浮かべながら

「しょうがないんだよな…


俺が 悪いんだもんな…」



繰り返し

繰り返し つぶやいている。









正直


笑い出したかった。




『勝った』




と思った。









「アパートに
遊びにおいでよ パパ」




「 … 」



「摩耶だって

パパと 遊びたいんだよ」








私は



見えない女が


そこにいるかのように





肩をおとす彼の

背後に向けて



明るく そう言った。




No.105 11/10/18 11:58
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 104

昨夜の雪が

辺り一面を覆っている
冬の朝



ゴミを 集積所へ運ぶ私…


めんどくさがりな上に
起きぬけの姿では
絶対に外へ出ない私は

とんでもない早起きを 強いられる この 逃れられない仕事が 大嫌いだった。



おまけに 足首までの雪…




昨日までの私なら

「今日は や~めた…」



また布団をかぶっただろう。


ただでさえ 気力のない
毎日だったから。






けれど







「わぁ~… 綺麗…」

真っ白な世界が
キラキラ輝いていた。


重いゴミ袋を持つ手にも
力が こもり
一歩 一歩の足どりも軽い。


自然と…


笑顔になる。








朝早い 電話のベル

それだけで


私は 相手が夫であることが
わかった。




「今日 行ってもいいか?」




流れが




変わった。




私が 変えたんだ。





失った自信が

かえってくる。



私は 私を




また


好きになれる。








「おはようございます!」


すれ違う近所の人の

怪訝そうな顔さえも


今の私には


お腹の底から おかしかった。



No.106 11/10/18 14:04
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 105

そんなに

あまい話しでもなかった…



別居後 少しして

あの家へ行った時


玄関先で
義母が 泣きながら
こう言った。


「夕べ カレーをつくったの

雄太が…
食べてくれない。


『まずい』って


ママのつくったカレーが


食べたいって…」








私は


数ヶ月ぶり

彼のために



カレーを つくろうとしていた…







『遅い時間になる』




夕方 夫からの電話で

ため息とともに


その手は とまった。










摩耶が 眠ってから

やって来た夫。



思った通り

女の愚痴が始まる。



激しく執着され
身動きの
とれなくなっている夫。


私が 家を出たことを
夫の口から聞いた女は

最初は 安心したものの

私の環境に 不安をおぼえ

終始 夫が家にいることを
確認するようになっていた。



私もバカだが


女も 相当な バカだ。




私には

都合がいいけれど…






夫は 若い頃から
よく モテた。

容姿がいいのに 加えて
明るい。


そして

つき合えば 一途。



こんな状態の時

それを知る


会社の 同僚にまで
告白をされてしまった


と 夫は頭を抱えている。





バカな女たちに

翻弄されてる 夫が





やっぱり




1番の 馬鹿だ。




No.107 11/10/18 16:04
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 106

「リエ…」





名前を呼ぶ 彼の声が
なつかしすぎて


それだけでも私は
高ぶり 歓喜にむせんだ。





もともと夫は

セックスの時以外
私を 名前で呼ばない。




愛してる

この人が欲しいと


その あたたかい身体に
しがみつく






「愛してる…

リエ…


愛してるよ」









私は




冷めてゆく気持ちに

困惑した。





あんなにも

待っていた言葉。




私の 望み…








突如

今までの

ありとあらゆる感情が
私を襲う。



はねのけたい気持ちを
必死にこらえ


私は ただ




女への復讐心だけで

彼が 果てるのを待った。










愛してるの?


私…




この人を愛してる?











彼も また


私を求めたのは



他の男に抱かれた
『自分のもの』への

意地だったのではないだろうか…





2人分の

タバコの煙りが




お互いの顔を








隠してゆく。




No.108 11/10/18 18:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 107

「必ず 別れるから

待っていてほしい」



私は もちろん

YESと 答えた。






もっと もっと もっと


もっと


もっと





もっと


嬉しいはずだった。





少なくとも



出口は

見えたのだから。







なぜだろう。



求め過ぎたからだろうか…





いつの間にか


すりかわっていた気がする



欲しいものの


カタチが。







人形には

あたえられなかった





自由を



知ってしまったせいかも

しれない。









「もしもし♪」


『こんばんは!』


「あれ…

もしかして T君?」


『やった!ルミさんだ♪』



私は ちゃっかり 幼なじみの名前を 拝借していた。



「すごい偶然だよね…

何度目?」


『… 5度目だ!』

「こんな事って あるんだね」


『運命だよ』

「ふふふ♪ 運命ね♪」




私は 異常な 猫好き。

なかでも アメリカンショートヘアきちがいである。



T君は その アメショを飼っており 1度も飼ったことのない私は そこに 食いついた。


盛り上がる 盛り上がる。


オッサン同様
何時間も 話してしまう。



T君は

私が サクラであることを
知っている。


濁した言い方で
それを伝えると

T君は 察してくれた。







なんだか…





騙したくなかったのだ。



No.109 11/10/18 19:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 108

私は

自分の気が変わることを
恐れた。



早く

早く


元の生活に

かえらなければ…




早く

早く



摩耶と 夫と

笑いながら 暮らすのだ。





私のYESに 安心した夫の

自堕落さは悪化した。



『今すぐ』

ではなくて いい事を

『今』やる人間ではない。




私は

摩耶と 自分のために

女との別れを
急かしつづけた。






雪は とけ


季節は 春になる…




なんだかんだと
言い訳を くっつけ

私に渡すお金も 額が減り


しまいには



0に なった。






親に すがるしかない。

いつしか

私の側の人間も
離婚を うながすように
なって来た。





私も また

自堕落だったのだ。




被害者意識と

自由に

いつまでも あまえ




気づいたときには


金銭面も メンタル面も


すべて

大学を卒業したばかりの



T君に あまえていた。



No.110 11/10/19 03:03
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 109

おままごとは

始まっていた。





アナタ オトウサンネ

ワタシ オカアサン

チッチャイカラ

マヤチャンハ コドモ…





オトウサンハ
オカアサンガダイスキデ

オカアサンモ
オトウサンガダイスキ


マヤチャンハ

オトウサンモ
オカアサンモ


ダ~イスキ


マイニチ タノシイネ

ダイスキナヒトトイルト

タノシイネ



ハイ アナタ

ゴハンデキマシタ


オベントウモデキテルワヨ



トウサン エノキハ キライダッテ イッタジャナイカ
カアサン


ウソダー
オトウサン エノキダイスキダッテイッタヨ
ネー オカアサン

アラアラ マヤチャンハ
ヨクシッテルワネ


イッテラッシャイ
オトウサン


オカアサン マヤ
イッテキマス
キョウモ ハヤク
カエッテクルカラネ


カエッテキタラ

イッパイアソボウネ
オトウサン!


イッテラッシャイ


アー

オトウサントオカアサン
チュウシテルー


ハイ

マヤニモ チュー

アハハハハ


アハハハハハ…








おままごとを始めちゃ

どうして いけなかった?



偽物でも

家族を演じるのは
いけないことだった?




だって

寂しかったんだもん。




日曜日は とくに

寂しかったんだもん。




摩耶と2人きりの
日曜日は

心から笑えなかった私が


日曜日が 楽しみなママ
になるのは




そんなに

そんなに




そんなに







いけない事だったの…?



No.111 11/10/19 03:55
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 110

狂ったように鳴らされる
ドアチャイムで


私とT君の顔から
笑顔が消えた


日曜日の夜。





「誰か来たよ」

「シッ…」

摩耶の唇に
人差し指をソっと あてる。



T君と 目くばせをし
摩耶を連れ 奥の和室に
3人で身を寄せた。




ドンドン!!

ガンガン!ガンガン!!


ドアを殴り 蹴りつける音。


ガチャガチャガチャ!!
ガン!ドンドンドン!!



「こわいよ…」


摩耶が 泣き出す。


「大丈夫。
ママもT君もいるでしょ」

摩耶の頭を 抱き寄せる。




「いるんだろ!?!?
あけろっっ!!!!!」


立ち上がりかけたT君の腕を つかみ引き寄せて、首をふる。




『出たら 殺される』



私は 歯止めのきかない
暴力的な夫を よく知っている…




ガンガンガンガン!!!

音が 近づいた。



この部屋は1階だが 南側には 高いベランダが ついている


どうやって
登ったんだろう…



「出て来い!!!
この野郎っ!!!!!」
ダンダンダン!!
ガンガンガンガン!!




このままでは

窓を割られる…!



と思ったとき



「リー! 俺だ!
俺もいるから!!」






J君の声だ…




「大丈夫だ リー。
安心して 出てきて!」




No.112 11/10/19 12:24
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 111

「いい? 絶対に 絶対に
出て来ないで…!

摩耶と ここにいて」




T君に
そう言い残し
私は 玄関から外へ出た。




J君の声を聞いて

少し落ち着いた私は


さほどの恐怖も感じず
ドアを開けることが出来る…




2棟並ぶ 同じ形のアパート

建物と 建物の間に
3台分の 駐車スペース


そこに 彼らは居た。





挑みかかるような
夫の顔…


私は

無表情を 装ったが
内心

すごく腹が 立っていた。



何かが


沸き上がって来るのを

強く感じる。







「てめぇは
何やってんだ!?!?!?」

「雄!」


夫の 馬鹿デカい声を
J君が 制す。




耐え切れず

「自分だって…」と
夫へ罵声を浴びせようとした時



すごい音と衝撃とともに

私の身体が
反対側の建物へ叩きつけられた




マンガのように

本当に 星が見えた。


平手で殴られて 身体が飛ぶって ものすごい力だ…



「手をあげるなって
言っただろ!!!」

J君が怒鳴る。




鼻血が
ボタボタと流れた…



倒れたまま 顔をあげ
夫を 睨みつける。



「なんだ その目は!?」


なおも 私を殴ろうとする夫を

J君が 羽交い締めで とめる

「雄!もう やめろ!!」


とても




悲しそうな叫びだった。






「リー… 大丈夫か?

こいつ興奮してるから
俺連れて帰るから

リーは もう中入れ…

立てるか?」



夫の身体を おさえつけたまま

J君が言う。



私は

コクンとだけ うなずくと


フラフラと
部屋へ戻ろうと歩き出した…





私の背中へ

夫が叫ぶ。






「摩耶を返せ!!!」





殴られた以上の衝撃が




私を襲った。




No.113 11/10/19 14:16
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 112

T君は

長い間

私を抱こうとしなかった。




私の外見にだけ
心を奪われた この若い青年は


まるで女神のように

私を あつかった。




会うたびに
歯の浮くような賛辞を
臆面もなく 口にする。


人間的なことなんか
どうだっていい

容姿が自分の好みであれば
相手に合わせて
自分が変わればいいだけの話し


今でも 納得できない
彼の持論だ(笑)



私を 人に自慢したい。
私を 安く扱うことを
ひどく嫌がる。

どんなに お金を使ってでも

私を綺麗に 飾る事を好む。


そして

そんな私達が

男と女になるのは


きちんと

それなりの場所で


摩耶にも 充分 楽しい思いをさせてあげられる 場所で…



出会ってスグから

私達は3人で
旅行の計画を たて始めた。




夫と女に ズタボロにされた

私の『女』としての自信。

楽しそうに 彼と 絡まり合って遊ぶ摩耶を見る 私の
『母』としての笑顔。



彼は みんな みんな

取り戻させてくれたんだ。








倫理をおかすから 不倫

同じ穴のムジナ





幼稚な私には



もっと深い落とし穴が




見えてなかった。







摩耶と 引き裂かれる。

摩耶が




取られる…?




No.114 11/10/19 15:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 113

夫に 知らせたのは

舅だった。



注意が…


足りなかった。







ドライブ帰り
遠くのスーパーで
3人で 夕飯の買い出し

アパートの前
車から降り 玄関までの
わずかな距離…


もう暗いから平気

と思ってしまってた…。





「知らない男と摩耶が 手をつないで… 3人で家族みたいな顔して 楽しそうに アパート入ってったぞ!!」








T君は

部屋へ戻った私を見て
激しく動揺した。


摩耶には 気づかれたくないな…



「大丈夫。
マー 疲れて眠っちゃったよ」

T君は
とてもとても悔しそうに

「痛い? クソっ…
俺の顔なのに…

跡でも残ったら
どうするつもりだ!!」






少し トンチンカンである。



不思議な憤慨をして

一生懸命タオルで
私の顔を 冷やしてくれる。



「S…

呼んでもいいかな?T君…」



「もちろん!」







私はまた

方向を 見失い


彼女に 助けを求めた。



No.115 11/10/19 18:02
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 114

「どっちにいてほしい?」


Sはまた

私に 選ばせる。




「2人ともいてくれってんなら 別にそれで いんだけど…」





私の顔を
冷やしつづけるT君に

「今日は… ごめんね。」
と ふせ目がちに謝った。




「うん!いいよ わかった(笑) ちゃんと冷やしてるんだよ! じゃあSさん リエちゃん お願いします!!」


「う… うん。

なんか悪いね💦💦」


「いいえ 全然(笑)」






T君が出てゆくと


「引き際を心得たやっちゃ」

と Sは したり顔。


「あいかわらず
変わってるけどな(笑)」
と言ってから


「もしかして あたし よけいな事言ったか? あんた T君にそばにいて欲しかった?」


私は 首を横にふる

「痛っ…」



「あ~ あ~…
ほら もう…」




Sは わかってる。


T君が 今 そばにいたら

本当の話しが出来ないこと。



見せかけだけの

綺麗ごとの


話しに なること…






所詮


おままごと





だからね。





No.116 11/10/19 21:25
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 115

「S ストロー持って来て…」

「何すんの❓」


「ビール飲むの」



「バカか!?おまえは(笑)
今日ぐらい飲むなよ!」


「飲まなきゃ やってらんね」


「オヤジか(笑)」



と言いながら
キッチンへ行き 飲みかけの缶ビールに ストローをさし 口元へ運んでくれる。


唇も かなり切れている…




「あんた 今
そうとうマヌケな顔してるよ」



両方の鼻の穴に
ティッシュが詰め込まれ
ソファーのひじ掛けに
頭をのせて その上にタオル

ストローで 缶ビールを飲んでる女の姿が マヌケとは
なんだ!?(笑)




「ぶへっ 泡だ…」




そりゃ そうだろう。





「はぁ~あ…」


Sが 大袈裟に ため息をつく

「なに?」


「本気でさ
殺されなくて良かった
って 思ったんだよ…」




「…うん」





「あたし
ずっと後悔してんだ」


「何を?」

「あんたに『男でついた傷は…』 なんて言ったこと…」

「どして?」


「T君と つき合いだした時 『そういう事じゃね~よ💦』って 焦ったよ あたしゃ!」


笑い事じゃないが

私は クスクスと笑った。






「雄君のこと…



まだ 好き?」





私は










鼻から抜いたティッシュを

Sの顔面に 放った。



No.117 11/10/19 22:00
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 116

好きかと問われたら…






好き

だろう。





「ちょ…っ!
なにすんだよ(笑)」



「とまった」
ヘヘっと 笑う。





「じゃあ どっちが好き?」



ゴミ箱へ丸まったティッシュを 捨てながら Sが聞く。











「T君」


ほんとだろうか…?







「… 雄君の女のことは?」

「憎い」
即答。




「世の中さ… こんなケース いくらでもあるよね…」


「うん…」



みんな 子供のために…

って 我慢するんだ。
それは わかる。


実際 平々凡々と暮らして来たつもりの我が家でも

母は いつも
父の 女グセの悪さで
泣かされていたらしい。


こうなって
初めて聞いた 話しだ。




けど…


なぜ 私には出来ない?





摩耶のことだけ


なぜ 考えられない?








「雄君 今ひとつ 摩耶ちゃんにたいして 情がないからなぁ」



そうなのだ。


私の母も

夫婦が離れるのは わかる。
そもそも他人だから…


だけど
雄太が摩耶に 会いたがらないのが 不思議でしょうがない


と つねづね言っていた。





「摩耶…


返せだって」


「え?」

Sが驚く。





「誰が…?」



「主人が(笑)」

パパと呼ぶのが悔しかった。




「いつ?」



「さっき…」








言いながら

数時間前のことが



なんだか

遠い 遠い
昔のことのように感じた。




No.118 11/10/19 23:03
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 117

6月…




「はい!パパ!」

「ありがと~♪♪♪」


「お父さん ありがとう」

「作ったのか すごいな~!」




折り紙で
模様のつけられた
牛乳パックの ペン立て。




「パパ ありがとう」


「摩耶 ありがとう…」




幼稚園の 父の日のイベント。

似顔絵と一緒にプレゼント


受け取る 夫。





「摩耶ちゃんパパ
来たんですねっ!!」


「仮面夫婦だから(笑)」



「おっ♪Nちゃんパパも
頑張ってんじゃん(笑)」

「今日ぐらいは…(笑)」







あの 次の日


家に来るよう
夫から連絡があった。


顔の傷のひどさに
「ごめん」
と 謝られたものの

沸点が 少し下がった程度の夫の怒りは まだ続いていた。




理不尽な傷の痛みのせいで

つっかかりたいのを
抑えることが出来る…



摩耶のために。




父の日の ために。







「Jちゃん…

すげぇショック受けてたぞ…


リーにだけは

あんな事
してほしくなかったって…」




少し

心が痛む。







「とりあえず…




摩耶は 渡してもらう」











私は 狂い


泣き叫んだ…




No.119 11/10/20 02:55
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 118

こわかった。


本当に 取られてしまいそうで…







摩耶が



私のそばから いなくなる…?


想像すら出来ないよ。






「絶対 渡さない!!
私の子供なの!!!!」

「俺の子供だ!!!」


「摩耶は 私がいなくちゃ 何もできない!私から離したら ダメなの!!!!!」



もう
何を言ってるのか

わからなかった…




「いや!いや!いや!
絶対にいやぁ!!!」





心臓が痛い…






「やめて…


とらないで…」







『マー
ママがいればいいよ』









「… あんたに


あんたに 何が出来んのよ…」



「あんたになんか

摩耶を幸せにできない!!!」

「じゃあ

母親でだけいろ!!!」











「別れろ」


「…え?」



「男と別れろ」









冷静になれば


殴られることより
理不尽であるとが わかった…




はずだけれど













「わかった」






私は

深い安堵に包まれてしまった。



摩耶がいれば

何も いらない。





摩耶さえ いれば…




No.120 11/10/20 04:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 119

「よく降る雨だなぁ…」






タバコが まずい。





「だいたい おまえさぁ…

俺に『おあいこ』
って言ったけど 俺1回だろ?
おまえ2回(笑)」





罪の重さは 人数か…?





「腹へった…

ラーメンつくって」





お願い。

早く帰って…




「うん」






窓をたたく 雨の音が

強くなる…





「このまま ここで寝ていけりゃあな… あ~ めんどくせ」



夫は 大きなアクビを

ひとつすると


ゴロリと横になった。






あなたが
帰らなくちゃならない
理由は ナニ?



女を 安心させるため…


でしょう?








私は また




都合のいい人形に戻ったのだ。













「しかたないよ…」


と T君は言った。



「マーの お父さんは

あの人だ…」




私は ただ泣いて
詫びるしかなかった。




見たことのない

険しい表情で


たった1度
こぶしで 壁を殴り




T君は 消えた。










私が




消したんだ。











夫の 軽いいびきが
わずらわしくて


どうか この雨が


もっと もっと
強く降りますようにと





心から願った。



No.121 11/10/20 05:10
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 120

夫が帰ると


私は 急いで 冷蔵庫から
缶ビールを取り出す。





プルタブを引く音が

雨の音に重なる。









「はい♪乾杯♪」


いつも 2人で
浴びるほど飲んでいた。


あったかくても 食べたがるお鍋は 就職したばかりの会社の事務員さんから いただいたレシピ。


私のつくった お弁当を

『愛妻弁当だ』と
からかわれると 笑う。







1人で飲むビールが


こんなに 苦いなんて…










突然
鳴り響いた電話のベルに
「キャッ」
と 短く 声をあげる。





胸が ひどく高鳴り

急いで 受話器をあげた。








『俺…』






『開けて…


リエちゃん』








私は 急いで受話器を置くと

玄関へと走る。



ドアチェーンを
はずすのも もどかしい…




早く


早く






早く 会いたい。












強い雨の音と一緒に


今 1番欲しいものが











そこには あった。



No.122 11/10/20 11:31
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 121

何度も


何度も 求め合う…







もう

どうなってもいいと




唇を重ねながら 思う






セックスは 麻薬だ…







欲しくて



欲しくて


たまらなくて…






何も



考えられない…





「好きよ…


好き



すごく




… っ 好き」





若い彼が



身体の上で

愛おしそうに


私の顔を 両手で包み




「目を… あけて」


と ささやく






彼を 見つめただけで


快楽の波が おし寄せる



「本当に…?



俺が 好き?」





「好き


大好き…!」




「目を見て 言って…」



「大好き」


「可愛い… 」

彼が微笑む





激しいキスをしながら



このまま

時間が止まればいい



とさえ思った。








いい事も


悪い事も





そんなこと知らない…




欲しいものを 欲しがって


なぜ いけないの?









こんなにも 愛おしいのに…






身体が

よろこびを得る毎に




私は また






堕ちて…






堕ちて…









堕ちてゆく。





No.123 11/10/20 12:14
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 122

白い煙りが


私を覆う。







夫との 苦痛なセックスの後



苛立ちで吸ったタバコの味が

少しだけ よみがえる。






「リエちゃん…


今 後悔してるでしょ?」



T君は

いつも図星をさしてくる。


物事に あまり動じない彼は

観察力が 鋭い。





そんな彼が


あれから毎日

ここへ来ていたこと…



私の部屋のあかりを

外から ずっと
眺めていたこと…




雨の中

夫といた私を

知りながら待ちつづけたこと…





知っていたら?


もしかして



それを 私が知っていたら


こうはならなかったのでは
ないだろうか…










追われると 逃げたくなるのは


本能だ。





私には

守るべきものが ある。





だけど 逃れられない


離したくない現実も
ここにある。





「大丈夫だよ リエちゃん」

彼が笑う。




「俺 バカな事はしない」




「今までみたいに ここで暮らすような事は しないよ…」








焦りとも

悲しみともつかない気持ちが


私を支配する。











そして



わかった。



わかってしまったんだ。






夫の 気持ちが…



No.124 11/10/20 14:17
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 123

T君は 私に条件を出した。




絶対に

夫と セックスしない事。



「リエちゃんは

俺のものだよ…」



求められることの幸福。

幸福への降伏。




私は もう

今までの私では なかった。








Aちゃんは

ずっと
電話で私を
励ましつづけてくれていた。


あの闇から


深い深い 穴の底から

救いあげてくれた あの夜から

ずっと…




そんな 彼女の望む道は

ただ ひとつ。



夫との修復である。






いつの間にか

私だけが



道から それた…





深く関わってくれたがために


彼女も また 私を
愛してくれていたがために



摩擦が起きる。





私を 間におかず
2人きりのつき合いは ないが

AちゃんとSも友人同士…



彼女たちの仲も


私のせいで

くるってゆく。





私が 変わってゆく事を
恐れるAちゃん。



変えたのは 自分だと

主張する S。




あの頃の 私の憔悴ぶりが
Aちゃんには 見えていないから そんな事を 言うのだと
Sが言えば

Sには子供が いないから わからないとAちゃんは憤怒する




傷をなめてあげるのが

良い事なのか
悪い事なのか…





2人の思いは 平行線のまま


Aちゃんだけが

動き出した。



No.125 11/10/20 16:54
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 124

「なんなんですか!?それ!」



梅雨の晴れ間

子供達は
園庭のぬかるみを 駆け回って
歓声を あげている。



「お友達なんですよね!?」

Nちゃんママが
目を まんまるにする。


「おもしろく…
なかったんじゃないかな…

私のしてること」




この時 私には

Aちゃんの真意が 見えておらず 怒りと軽蔑だけを 彼女に向けていたのだった。




「パパに告げ口するようなマネ…

信じられないです!!」


「私も 耳を疑ったよ(笑)

かなり…

酷い事言っちゃったし(笑)」





友達と口論。

ドラマの中だけだと思ってた。


しかも 大声で罵る自分なんて
想像したこともない。





Aちゃんの言うように

私は 今


『おかしい』んだろうか…


『変わった』んだろうか…





自分が 1番知ってるくせに。









「キャーっ!!」

「なに!?」



ぎゃははは♪
子供達が ワーワーと
逃げてゆく。


「も~う💦」
「どしたの?」


Nちゃんママが
自分のお尻を 指さす。

園児の男の子に モテモテのNちゃんママの お尻には

泥んこの 小さな手形…




女性らしいプリントの ハンカチで ごしごしと ジーンズのお尻を擦りながら



「摩耶ちゃんママは

摩耶ちゃんママです」







今日も

ありがとう。



No.126 11/10/20 19:30
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 125

「なんで邪魔すんだよ!?」

『リエは おかしいよ!』


「何が… どこが!?」



『しちゃいけない事でしょ?

…なんで わかんないのよ』


たまらず泣き出す彼女。


「なんで 私だけが、しちゃいけないの!? あいつは? あいつが良くて 私がダメな理由は なんなの!?」



『摩耶ちゃんでしょう…

そんな事もわからない?
ねぇ リエ…』



「摩耶は… T君に よく懐いてる。 あんな男より ずっと ずっと!!」

『そういう事じゃない!!!』


「じゃあ 何!?
綺麗ごとばっか言って!!!」


私は 言いながら
シンクの下の 扉を蹴った。




とまらない憎悪。





Aちゃんに聞いた



勝ち誇ったような
夫の顔が
頭から 離れない…




「いったい あんたは
どっちの味方なんだよ!?!?」


『摩耶ちゃんだよ…』








『リエ


  頼むから…』


「うるさい!うるさい!
うるさい!!!!!」



『リエ!』



「たとえ Aちゃんが 私と同じ立場になっても 私は絶対に 旦那さんにチクるようなまねは しない!! 絶対… 絶対に!! 」


『 … 』



「摩耶取られたら…

Aちゃんのせいだからね!!


一生 恨んでやるから!!!」





力をこめて電話を切ると

私は 子機を抱いたまま



なぜか
玄関マットに うずくまり


大声で 泣いた。




No.127 11/10/20 20:53
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 126

絡まりながら

ほどけなくなってゆく…


もし みんな

自分のことだけを考えて

生きてゆけたなら




悲しみも

憎しみも


生まれないのだろうか




幸せも

生まれないかわりに…









「おまえが

約束を 破ったんだからな」



もう…

どうでもいい。




おかしい事なんて
ごまんとある。

そもそも
なぜ 今だ この男が まだ女と続いてる事実は 棚の上で


自分だけが 責められる?


あんたの女は
死ぬんじゃなかったの?


舅 姑も
なぜ私に 謝らない?

私も 不貞をしたから?

いや

しなくても

きっと同じ…


結納金も もらってない

結婚式 披露宴 折半。


生活費だって
7年近く うちの親に
毎月 いくら出させた?

同居なのに…

情けない。





所詮



他人。




愛は ない。





「うちの親も
摩耶は手放せって…

私はまだ若いし
これから先の人生に

摩耶は 邪魔だろうって…」



夫の 表情が

変わるのが わかった。




「男を とるのか…?」


「どう思われたっていいよ」





もういいんだ…









疲れたんだ。




No.128 11/10/20 21:31
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 127

「つめてぇんだな…」




入りそうになるスイッチを

全力で とめる。





夫もまた

かすかに 震えている。





「私ね…

わかった事がある。
わからなくて
よかったんだけど…」



あんなに

あんなに求めていた
夫の 心の内。

のぞいても のぞいても
見えなかったのに…





恋をすると

馬鹿になるね。



『ワカラナイ』が増えて

考える力をなくす。



夫も 私も 器用じゃない。

お互い以外に
まともな恋愛を していない。


経験が


足りなかった…。








「コタエを



急がせて ごめんね。」





泣いているのだろうか…


顔が


見えない。






「摩耶は

こちらの家に お渡しします。



私は…


2度と 会いません。」




涙が

筋になって 流れ落ちる。




「優しく してあげてね。
パパ…

今までの分も たくさん…


摩耶が 寂しくないように

ずっと
そばにいてあげてね…



お願い…」








手をついて
頭を下げる私の 肩をつかみ

夫が 揺さぶる。



「本気で 言ってんのか!?」



No.129 11/10/20 22:56
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 128

人形のように

力の入らない私の身体は

クタクタと
首も 背中も
彼の力のまま あやつられる。



もう 声も出ず

涙だけを とうとうと流す私を
夫は 押し倒し

覆いかぶさる。






「俺も 摩耶もすてるのか!」





私は

涙をこぼした 能面だ。










「くっそ…」




スカートに手がかかる…








「…やめて!!!」



呆気にとられた
夫の下から すりぬけると

私は 急いで立ち上がった。




「… また 嘘なのね」






「摩耶が欲しいなんて…

嘘なんでしょう?




私を…


私を困らせたかっただけ…







摩耶を道具にすんな!!!」






「…おまえから
摩耶を離そうなんて 俺は
最初から思ってない…」


「 … 」



「取られそうになって
狂ったおまえ見たら…

なおさらだ」





俺は 卑怯だと 夫は言った。


おまえが 知らない女に見えて 怖かったんだ と夫は言った。






「マ~マ~!!」

階下から 摩耶が私を呼ぶ。



「摩耶! 上がって来い!」



階段の上から 夫が叫んだ。



No.130 11/10/21 01:26
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 129

混乱していた。



どうしたいのかが


わからないのだ。

自分のことなのに…





取り戻したい。

逃げたい。



つらくても

目的がハッキリしている時は
少しずつでも 前に進める。


だけど 今は…






あの日

夫が 2階に呼んだ摩耶と
3人で

昔のように

当たり前のように


私達の部屋で過ごした。



何もなかった日々が
かえって来たようで
心が 弾んだ。


3人で 笑い ふざけ合い
たくさん 話しをして…




2階からの笑い声に

義家族は


『終わった』


と 勘違いすらしただろう。








ポケットで PHSが鳴る…



「はい」

『俺…』

「うん…」


『今 どこ?』


「 … Nちゃんち行こうかな~ と思って… 車だよ」


『家に戻れる距離?』


「ううん。 もう けっこう走っちゃったよ…」

『そう…』



嘘だ。


本当は 駐車場に居る。




『何時頃 帰るの?』


「う~ん…
まだ わかんないなぁ…」



『そっか…
じゃ また電話する♪』


「は~い…」










ヘタをしたら

1時間おきの電話…


もちろん
T君が 私に買い与えた
ピッチ…










混乱の原因は

ここにも ある。



No.131 11/10/21 03:42
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 130

私は


天使などではない


最初から

悪魔だったのだ。



自分の欲望しか 見えない…








夏が来た。


1年中で 1番好きな季節



今だ どっちつかずの夫婦に

あきれて 口を出す者も
いなくなって来た。



ふりまわすだけ ふりまわして

いつの間にか


このバカな夫婦には
別な連帯感が
生まれつつあった。

お互いにしかわからない
同じものを抱えながら…





蒸し暑い夜


Tシャツに トランクス姿のT君と 枝豆と ビール…


かすかに聞こえる花火の音に

「楽しいね」


って 笑い合う。




隣の部屋からは
摩耶の 静かな寝息…




地に足のついていない感覚と
酔いの フワフワの中の

偽物の幸福。







ピンポ~ン




こんな時間に 誰だろう…



ドアアイをのぞく。




「だ~れ?」


私は 振り向きながら


「わかんない…

かなり太った女の人…」




T君の顔色が 変わった。



No.132 11/10/21 04:40
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 131

自分でも

いやらしい女だと思う。


私は 異常なメンクイである

異性にも…

同性にもだ(笑)



友人が 綺麗なコばかりなのは

今でも 私の自慢のひとつだ。







そんな私の 目の前に立つ
お世辞にも 綺麗と言い難い ふくよかな女性は

予想通り


「T君いますか?」
と 言って来た。


「うん いますよ。
ちょっと待ってね…」



お客さんだよ と 呼ぶと

「出たくない💦
リエちゃん 帰らせて💦」


… はぁ。


「あのね
T君出たくないって…」

「…私
T君と 一緒に暮らす約束してるんです!T君 返してくれませんか!?!?」


勢いこんでるところ
大変申し訳ないのだが

私は
おかしくてしかたなかった…


「子供さん
いるんですよね?」

「うん… 」
リサーチ済みか。


「T君は?」


「すごい可愛がってくれるよ♪
『帰んないで~』
って泣いちゃうくらい。」


少し 意地悪してしまった。

「私には
『子供嫌い』って言うのに…」

いまいましそうな顔だ。


「今 無理矢理連れて来てあげるよ。 私には関係ないことだから 2人で話して…」




この 余裕はなんだ?



わかってるくせに…




「ほら!T君 話して来て!

じゃなきゃT君も
帰ってもらうからね!」


私は

恐い顔をしてみせた。




No.133 11/10/21 13:13
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 132

なんの焦りも



嫉妬すら感じない自分を
寂しく思う。



T君の 異様な私への執着。

間違った安心感。


植えつけられた

いらない自信。


何よりも

自分でも
気づいていなかったであろう

『戻る場所』
がある事への おごり。








「あ…」

無意識に つまんでいた枝豆のせいで 手がベタベタだ。



洗面所の激しい水の音

鏡の中で 微笑むのは


完全なる 悪魔。











ガチャ。


「おかえり」

最高の笑顔で 迎える。



「 … 」


「なに?」


「可愛いな~と思って。

見とれた…」






今度は 私が絶句。




「(笑)あいつ リエちゃん見て 白ハタあげたよ。 『あきらめる』って…

勝ち目ないって
わかったんでしょ(笑)」





もともと聞いてはいた。


別れた女に
しつこくされて困る… と。



怖い女だから
一緒に居るふりして 突然いなくなろうとしてたって…


財布のレシートで この場所を つきとめたのだと言う。




「ブスがっ…」

吐きすてるように言うと

「ところで リエちゃんは 俺に嫉妬とかしてくれないの?」






お姉さんは

キミが 怖い。




「… T君」


私は ふうっとため息をついて
言った。





「そんな事 言ってると

いつか 刺されるよ」










すぐ 刺された。



No.134 11/10/21 23:55
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 133

「見て見て!Nちゃんママ!」


「うわっ💦… 嘘… 」



顔を覆って
指の隙間から のぞく彼女。




「ナイキの
マークみたいっしょ!?」





それ 私が言ったんだよ…



「ほんとだ~💦💦」













脇腹の

この傷だけじゃない。


右手と 左手
両方の手の指に
深い傷。

とりわけ左の中指が深い。




忘れ物を取りに行ったT君を

帰って来てくれたと思った彼女は 彼の好物を ウキウキしながら 支度し始める。




「いらね~よ

あきらめたんじゃないのかよ」



「帰らないで…」

「しつけ~し」


「行かないで」

「うるせぇよ!」



「行かせない!!!」










… ジ・エンド。






今だから

笑い話しに 出来る。





電話をもらった あの夜は


明けないのではないかと思う程



長かった…






ピピピピ…
【公衆電話】


ん?



『俺…』


「携帯 どしたの?」



『…さ …れた』


「え? よく聞こえない!」



『刺…されたん…だよ』









…!!

瞬時に 夫かと思ったのだ。



「誰に!?」


『デブ…』



「 …  冗談やめなよ(笑)」

『冗談じゃねぇよ!』




嘘。


「病院行って!!」




ツー…






電話は 切れた。







No.135 11/10/22 00:26
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 134

急いで 携帯に電話した。




通じない…







私は ただオロオロと

部屋の中を 動きまわる…




なに?



どうして…?






きっと








だよね?




私の気を

ひきたいだけでしょ?





『冗談じゃねぇよ!』





初めて聞く

乱暴な 言葉。



嘘じゃ… ない。









私は

ひとりでは 抱えきれず


咄嗟にSに 電話をした。





「S… S どうしよう。

T君…

女に刺されたって…」



泣き出す 私に


「落ち着きな!!

こんな風に いつかなるような気がしてたよ…


とにかく あんたは今

この状況に酔っちゃダメ!!」




状況に…



酔う?



「あんたのしてることは
ドラマでも 夢物語でもないんだよ! 現実なんだ!!


あんたには 守らなきゃないものが あるでしょ…?」








「摩耶ちゃんに とばっちりが来たら どうする? あんたは 悔やんでも悔やみきれないよ…



リエ!!

目ぇ 覚ましな!!!」






心臓が

少しずつ 音を 緩める。




「…うん」




「電話かけられるんだ(笑)


たいしたことないって…」





「… うん」








それでも

彼の顔を見るまでは



私のすべては





あの時






彼のものだった。




No.136 11/10/22 01:29
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 135

「あんた 刺した人か!?」






傷の手あてに来た病院で

待合室にいた 私と摩耶。


診察室から出て来たT君に

「T君 痛い?」
と 摩耶は 心配顔…

「ぜ~んぜん!!

マー 何 食べたいっ?」


「手… 使えるの?」

「あ… う~ん…」



なんて話しをしていると

なぜか診察室から 出て来た外科医からの あのセリフ。



「ちがいますっ!!」


声が そろう。




「ガハハハハ」

ちらっと 摩耶をみとめると


「女房の方か」



下世話な医者である…







「色男!!
ほどほどにしとけよ(笑)」




スタスタと立ち去る。








「あんなブスと リエちゃん 一緒にすんな。 ば~か!!」








いくら 動じないT君でも

気が動転した あの夜は
『死ぬんじゃないか』
と 思ったらしい。



とにかく 彼女から逃げて

私に 連絡しなくてはと
這うように
公衆電話に たどり着いた。




電話を切ったのは 彼女だ。


そのまま

この町医者に



連れて来られたらしい。






『警察に 届けるか?』

と たずねられたが


これ以上 関わりたくない

と 断った。





泣きつづけ 謝る彼女と

一晩を過ごし






明くる朝







私のもとへ やって来た。






すべて T君の話しだ。



真実は



今でも わからない…




No.137 11/10/22 03:46
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 136

身体を洗うことも


もちろん シャンプーも
ままならない。




T君は しばらく会社を休み

私は つきっきりで
世話をした。




いつでも そうなんだ。



心が夫に かたむきかけると

何かが起きる。



ゴシゴシと
彼の頭を 泡立てていると

目を しばしば またたきながら
無理矢理に こちらを向き


「これで 天下晴れて 俺は リエちゃんだけのものだよ!」





「いいから…」


と言いながら

シャワーで流す。


「ぶはっ! 言ってよ~💦💦」











私だけのものに



ならないでほしい。





そう願う私は


やはり彼を

愛しては いないのだろうか…





どんなに
彼に心を奪われようと

私から 夫が


消えることはない。




理解し 許したカタチの今

夫への憎しみは消えても



女への憎しみは




消えない。





女とは 不思議だ。




なぜ 女は 女を恨むのか…






信じてる


からだろう。




築いた歴史と ぬくもり。


パートナーがそれを
忘れるわけがないと…


惑わせたのは


女であると

疑わない。




彼は 去ったのではなく

奪われたのだと。






T君の女も また

私を恨むだろうか…






「あいつ 男いるしね」



…また
心の内を見透かされた

と思いつつ



バカな女の多さに落胆した。



No.138 11/10/22 12:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 137

そばにいない方の

人間のことばかり考える…



私はまた

理解しがたかった夫の思いに


触れる。








「ねぇ… 何してんの?」

「見てんの」



ニコニコと
洗濯を干す私を
居間から寝転び眺めるT君。


「 … 」




「ちょっと…
邪魔なんだけど…」


掃除機をかける私の後ろを
ついてまわるT君。




洗面所の鏡にうつる私に

必ず 重なってくるT君。



トイレの扉を開けて

用をたす私を


最初から最後まで 見届ける…





T君。







最初は 楽しかった

こんなバカなことが



だんだんと 苦痛になり始め

愛しさが 消えかかる。






失いそうにならないと

私は 人を愛せないのか?


と 妙な錯覚に
おちいってしまう。






彼は 私の離婚を

急かさないかわりに
『監視』する。



「どこかに
行っちゃいそうだ」


いつも 背中から私を
ギュっと抱きしめる彼の

愛し方が


よく見えない。






そうして私はまた


夫との時間が 欲しくなる。







1番の理解者である彼に



会いたくなる。




No.139 11/10/22 15:14
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 138

「別居… なんですよ」


反応が 気になる。



私の部屋で コーヒーを飲みながら D君ママが 少し目を見開いた。





Eちゃんに怪我をさせた日



そう


あの




はじまりの日。



あの日

私達4親子は
D君宅で お茶を飲んでいた。


D君ママは 私達の中で
ひとりだけ かなり年上だった



落ち着いた 話しのわかる
D君ママが 私は好きだ。




最近 私は

別居を隠そうとしない。


若い彼氏がいる




という うぬぼれなんだろう。


少し

カッコイイとさえ



思ってたから…







部屋を見回し D君ママが

「だからなんだ…」
と言った。

「ん? 何がですか?」



「女の子の部屋っぽい インテリアだな… って思ってた」






T君は
ようやく 今日から仕事に出た


申し訳ないが

開放感でいっぱいの私は
誰かと お喋りしたくて しょうがなくなった。




Nちゃんママは 今日はご用事


2人きりで遊んだ事はないが

私は 思いきって 朝 車で幼稚園に来ていたD君ママを
誘ってみた。



とても喜んでくれたことが
嬉しかった。








「彼… いるでしょう?
摩耶ちゃんママ(笑)」


「えっ!?!?」



本気でビックリした。


まさか D君ママの口から
そんな言葉が出るとは
思ってもいなかったから…






『同じ においがする』



そう言って

D君ママは


私を 2度 おどろかせた。



No.140 11/10/22 17:08
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 139

言わないわけがない。




「Nちゃんママ!!
ニュース!ニュース!」




次の日さっそくか…


女の口も

おそろしい。








「え~~~!?」


「えっ!? え~~!?」

コンビニの袋を ガサゴソと開き 新発売の辛いお菓子を ひっぱり出しながら 彼女は 私を 3度見ぐらいした。



「オススメです💖」

と テーブルに置いてから


「だって 普通の 太った おばちゃんじゃないですか!?」




また 恐ろしい事を言う。



「D君のパパだって
あんなに子煩悩なのに…」




そうなんだ。

夫とこうなってから


私は ますます
D君の家庭が 羨ましかった。



入園式から 行事のたびに
ずっと

D君パパは 必死でビデオカメラを まわしていた。


まわりの父親達より 少し年老いた彼は いつも ニコニコと D君にも ママにも 私達にさえ 優しく接する人だった。


私の理想の お父さん像。






… なにが不満で?









パートに出ていた D君ママは

そのパート先の社員の
ひとまわり以上年下の彼と
つき合っていた。




つまらない男。





そんなD君パパを

D君ママは




そう言った。



No.141 11/10/22 20:38
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 140

違う…


と 思った。




恋をすれば誰だって

自分たちの愛は


純粋なのだと信じる。



不倫ならば なおさらだ…



出逢う順番を間違えただけ

間違いを



受け入れるな。





先にされたから


そんな状況も 関係ない。



はたから見れば

D君のママも



私も


してる事は同じ。

客観的に見なくても
自分自身で そう感じる。



人の…


親なのだ。





摩耶に 恥ずかしい生き方は

見せたくない。




今さらだけど

強く思った。








家の電話が 鳴る。



『俺』


「うん…」


『なにしてたの?』




30分前に 話したばかりだよ…



「考えごと」

『俺のこと?』

「うん…」



嘘ではない。








『好きだよ…』


「うん… 私も 好きだよ…」




『今 何時? …うっわぁ もうすぐ11時じゃん! 急いで終わらせて帰るからね!




… いい子で 待っててね♪』









… 家に彼が着くまで


あと何度

この
電話のベルが 鳴るのだろう。





私は もう1度



頭の中を

整理し直さなければ

ならなくなった。



No.142 11/10/22 21:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 141

「離婚してください」



私は 頭を下げた。






「…!なんだよ 突然」




「私達 このままじゃ

ダメだよ パパ…」




「女とは別れるって 言っただろ!? 今すぐは無理なだけだ…

いずれ やり直そうって
2人で決めたじゃないか

だから おまえの男のことも 俺は認めたんだ。



何が不満だ?」




「摩耶に…


失礼だよ」




「摩耶の人生からみたら ほんの短い間だ。 おぼえてもいないかもしれないだろ!?」



「私が 嫌なんだよ パパ…

私が彼と別れれば 話しは済むのかもしれない。

だけど

いつ終わるかわからない事を
ひとりで待てる程 私


強くない…」








黙り込む 静かな時間を


PHSの電子音が こわす。





ポケットを探る私に


「出るな!!」














「俺は…
どっちも失いたくないんだ…」






「頼むから…


別れるなんて…




言わないでくれよ」









ふざけるな!

と なぜ言えないのか…













鳴りやまない
PHSの音を聞きながら



私は



夫に 抱かれた。



No.143 11/10/23 00:48
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 142

どうしよう


どうしよう






どうしよう…





なんて言い訳しよう…







私はT君との
約束を破ったかわりに


夫と

ある約束をして来た。







とりあえず 今は

目先のことだ。





1分たりと
鳴りやむ事のないPHS


私は ひとつ大きく息を吸い
吐き出すと


通話ボタンを押した。





「はい…」


『俺…』


「うん!ごめんね!」



『どこ… 行ってたの?』


「お豆腐買いに行っててさ💦

ピッチ持って出るの
忘れちゃってね…」


『ほんとに?』
「ほんとだよぉ!!」



『嘘ついてない?』

「嘘つく必要ないでしょう?」


『ふ~ん…』




心臓の音が
電話から 伝わりそうで

私は 右手で胸をおさえた。


『今 家だよね?』

「そうだよ」


『じゃあ 家電にかける』



そう来ると思っていた。

着いてから
出て よかった。










その夜の

彼のセックスは
執拗で異常だった。


まるで

確かめるように

しつこい汚れでも
おとすかのように


何度も 何度も



私を求め



強く抱いた。




「俺のものだから」

を くり返しながら…






そして

疲れきり

激しい睡魔に襲われる私に




T君は言ったんだ。













「豆腐買ったレシート見せて」



No.144 11/10/23 03:42
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 143

束縛を


愛と とるか



自由を




孤独と とるか






この時の私には


何も見えていない。



怒りのエネルギーって

とてつもないから



夫や女に向けて放出した分で

燃えカスみたいに
なってたのかもしれない。



流れに 逆らうことに


疲れてた…






気づけば


『はじまり』の日から


1年が経ち

私の嫌いな 秋が始まる





約束の日は


静かに 近づく…








「衣更えすると とたんに暑くなりますよね~…」

暑がりのNちゃんママが
冷房を入れる。



「N!制服かけて来なさい!」

制服を着たままの摩耶と
リビングで大騒ぎしている Nちゃんには 聞こえない。


「N!! … もう。」


Nちゃんママは
とりあえず 子供には厳しい。


あまり叱ることをしない私には
とても お母さんらしく映る。




お母さんらしい…

か。




彼女にも

女の部分はある。


母親たちは みんな
いつまでも 女だ。



なのに

男は それを忘れる。


母親になった
かつての恋人への トキメキを…







「鳴ってますよ♪」

「…ん?」


「ラブコール♪」



私は 大袈裟に ため息をつく。



そして 電話に出ると

「ごめんね💦 Nちゃんママ💦

電話かわってって…」


と 彼女に差し出す。

「はいはい♪」


毎度のことだ…






「心配しないの~! …」


彼女の声を聞きながら

エスカレートする彼の束縛を



また考えはじめる…



No.145 11/10/23 04:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 144

「マー 明日 F君に
サインもらいに行くんだ~♪」

「サイン?」



帰りの車の中

興奮ぎみに 摩耶が話す。

「Nちゃんと約束したの!
だから 明日は マーの おうちで 遊ぶんだからね!ママ!」



F君は 幼稚園が一緒だった
ひとつ年上の男の子。

小学1年生で
家が アパートの近所にある。



「どうしてサイン欲しいの?」

「やだな~ ママ… 好きだからに決まってるでしょ!!」




ちっちゃな女が

ここにも ひとり…






「イヤって言われたら
…どうする(笑)?」

「もらえるまで帰んない!」








娘よ…



母はF君に

彼女がいない事を 祈るよ。








「さ~て
今夜は何を 食べようか?」



「ガーリックの お肉~♪

T君も好きだもんね!」












忘れていた…



No.146 11/10/23 05:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 145

春も 夏も 冬も
だんだんと
静かに やって来るのに


秋は 突然はじまる。

夏が


突然 終わるせいだ…





小さな頃から 秋が嫌い。

理由が わからなかった私に



ひとつ 理由が出来た。








出会って1年だね…


なんて話してるのかな。



夫は 女の私より
そういう事に まめだった。


3度目の正直で
つき合い出した 18の夏。

1ヶ月目には
鏡とブラシのプレゼント。


『リーが いつでも
可愛くいれますように』
って 手紙を添えて。



それから 毎月 毎月
その日が来ると
プレゼントと手紙を くれた。



今となっては
日づけすら おぼえていない…







会いたい気持ちが つのる。


また 焼けるように
胸の中が熱くなる。



忘れたはずの痛みが


嵐のように
身体中を 駆けめぐる。




どうして こうなった?

なんで
私は 苦しい?




あてつけみたいに した恋は

結局 自分を堕としただけ…






たすけて…





たすけて…









No.147 11/10/23 05:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 146

T君の反乱。




眠れなくて
寝返りを 何度もうつ私。


それだけで
私の心が 夫にあることを
悟る。





あの頃

彼の気持ちをくむ事を
忘れていた…





愛されていることに

あぐらをかいていた私は


お姫さまのように
お城の中で

ただ じっとしてたんだ。




大切にされるのは

あたりまえ。




私がいなくちゃ

生きてゆけない… でしょ?











電話が 鳴らない。



朝 出かけたきり

お昼になっても


夕方になっても






電話が鳴らない。






あの時の

言いようのない 気持ち。


必死で理由を探す。






見つからない。






私は今でもそうだが


自分から
電話をかけることをしない。



必要とされれば
応えるが


こちらからは 求めない。

こわいんだ。
拒まれる ことが…







何も 考えられない。




また



捨てられたんだろうか








真っ黒な雲が

私の全部を 覆い




お姫さまの お城は

音をたてて



崩れてゆく…



No.148 11/10/23 14:30
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 147

「やめて!!」






「… さわらないで!!」













「近づくな!!!!!」



私は 手の中で


握ったナイフを確認する。




とても






安心した。







刃の先を


彼に向けたまま 後ずさる…




「さわるな…」


「私に さわるな…」





呪文のように

繰り返し繰り返し




つぶやきながら…










「そんなこと言うなよ…」




「愛してるんだ」



近づいて来る。











狂ってる






狂ってる









彼は 狂っている







そして 私も














ずっと




ずっと













狂っていたんだ…





No.149 11/10/23 15:11
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 148

真実は


ひとつしかない。







残念だけど


嘘が存在するから




真実も また生まれる。








人を信じることは


難しいね。






裏切りは



ある日 突然







やって来るから…











平成9年 4月1日




私と夫は 離婚した。



摩耶が
小学生になる年を選んで






もうひとつ







エイブリルフールを



選んで。









あの日の 夫との約束は


これである。









エイブリルフールに
届けを出せば



「なんちゃって!」



って

なかったことにできそう…







という
哀しいバカな想い。


最後まで馬鹿な


2人の約束。









そんなにも

お互いに未練を残し
離婚する私達を


まわりは わをかけて

馬鹿だ 馬鹿だと言った。




馬鹿は



百も承知だ!












私は


とても清々しい気持ちだった。




笑顔で…


というよりも




バカ笑いしながら
離婚届けを提出された
役所の おじさんだけが



ただ 困惑していた。









そして…




No.150 11/10/23 17:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 149

5年後…






私は T君に

やいばを 向けた。









何度も


別れようとした。


それでも

愛に飢えていた私は


彼に すがるしかなかった。








1日中

電話のなかった あの日


彼の反乱に

屈した お姫さまは



奴隷へと変わった。







求められなければ

自分を保てない私を



T君は 知った。





あの日の私は


夫のことも

女のことも





頭の 片隅にすら
思い浮かべなかったんだ。




「愛してる…




愛してる」




口にしたことのない言葉が


泣きながら
私を抱きすくめる


彼に


向かう。







あの日をさかいに


監視の目は さらに強くなり



私はまた

溺れはじめる…









自由なんか いらない。


愛されていれば




それでいい。




No.151 11/10/23 18:48
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 150

「摩耶ちゃんは 本当に しっかりしてるから… 私が頼ってしまうんですよ(笑)」




5年生の家庭訪問。




入学した時から
毎年 担任の先生に
同じことを言われる。



…私が

…そうしたんだな。






離婚を機に 私は

公営の住宅へ引っ越し

会社勤めを 始めた。




「Nちゃんの おうちは?

うちの後でしたっけ?」


猫好きだと言う
小太りな 若い女性担任は

飼い猫のアメリカンショートヘアを 愛しそうに撫でながら


「さっき 行って来ました!

奥から出て来たの見て

私 Nちゃんの お姉さんかと 思いましたよ💦💦」



美は 健在である。


彼女もまた
外で 働きはじめた。

もちろん

「私も 恋したいなぁ…」と
冷えた夫婦関係をなげきつつも

悪さはしていないが(笑)




Sは 高校生(!)と
つき合いはじめ 奮闘中。


Aちゃんには

離婚をした日


電話で 心から詫びた。




私が 会社にいる間

摩耶は


あの家にいる。

かつての義父母と義弟は

全力で
摩耶を可愛がってくれた。





そして 夫は




あの家から 消えた。








「じゃあ 1年間

よろしくお願いします」



立ち上がり
歩き出す先生の足に

猫が じゃれつく。



「チャオ!!」





ま~るい目が


私を 見つめた…。



No.152 11/10/23 21:26
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 151

チャオを飼い始めたのは

摩耶が
もうすぐ3年生の冬の終わり。



T君の家で飼っていた
アメリカンショートヘアの 旦那さま選びで 出会った。


T君と 彼の両親 摩耶と私で
ペットショップを 練り歩き…





小さな 小さな お店に

彼はいたんだ。


もう6ヶ月。
身体は 成猫並だ。


抱かせてもらうと
すぐに 私のネックレスに
じゃれついて来る。


「決めるか?」

T君のお父さんが言う。



私のものじゃないのに

飛び上がりたいくらい


嬉しかった。






T君の家で
しばらく暮らしたチャオは

みごとに ふられた。



運命だったんだね。

公営の住宅は 一軒家だったので すぐに うちにやって来た。


T君の お母さんがつけた
『チャオ』って名前と一緒に…




T君の両親も また

摩耶を 可愛がってくれた。


離婚後の 摩耶の戸籍や
様々な手続きも


T君は 喜んで手伝ってくれた…





順風満帆に思えた。






あんな事が



起きるまでは…



No.153 11/10/23 22:13
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 152

私と雄太は 離婚後も

ずっと連絡をとり続けていた。




もちろんT君は

気づいていない。




離婚をした事と

会社勤めをするようになった
私の状況に


いくらかの
安心感を持ったからだ。



それでも

どんなに言い聞かせても


会社への確認の電話は
やめてくれなかった彼だけれど…









大笑いしながら

離婚届けを出した あの日から



時が流れれば 流れるほど

私の雄太への想いは
強くなる。




『こんなはずじゃなかった…』

何度も唇をかんだ。




そして


女への憎しみも増してゆく。







だけど




もう







誰にも 話せない。










私は ひたすらに

この気持ちを隠しつづけた。




雄太にも



自分自身にも。










ぬけ出したはずの 暗闇は



私の中で


ずっと ずっと





つづいていたんだ。




No.154 11/10/23 23:17
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 153

彼は この5年の間



毎日


毎日




毎日









夜と 朝に 私を抱いた。





若いからかな…



と思っていたけれど


会社で仲良くなった男の子に
それを話すと


「異常だって(笑)!」







一笑に付された。





そして

ある日言われた。









「もう 俺の勝ちだな」






要するに

雄太が私を抱いた数を
越えたかったらしい…





5年経っても


彼は

不思議なままだった。







雄太は 離婚後

女と暮らしはじめた。




こちらも こちらで

すごい束縛に あっている。





「俺たち バカだよな~」

会うたび
そう言って笑い合う。



そして また

「俺が悪いんだけどな…」
と つぶやく。




「こんなの ずるいけど…

俺いつも思うんだ。



あん時

おまえが


すがってくれたら…って」




痛い程

心臓が鳴る。



絶対に 渡さない!って

力づくで 無理矢理にでも


すがりついてくれたら…






って。











やっと



後悔できた。





高い高い プライド。




私はそれに

助けられたのか


つぶされたのか…




No.155 11/10/24 02:34
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 154

「おめでとう」







こんな悲痛な言葉を

笑いながら言える私は



大女優になれたのでは


ないだろうか…








携帯を持つ手が震えている。


早く電話を切りたくて
私は 嘘をつく。



「ごめん!誰か来たみたい!

また かけるね!」











立って…



いられなかった。








摩耶が いなくて



よかった。











『子供生まれてさ…

籍 入れたよ』








耳から


離れることはない。






2度目の 絶望。









どこかで


戻れるって

ずっと ずっと


思ってた。




だって




エイブリルフールだから…











なんだから…









とめどない涙…







真実を

隠しつづけていた私は




誰にも

助けを求められない。







愛してると 言えない。







それでも


笑ってなくちゃ

ならないのは



なぜなんだろう…




No.156 11/10/24 03:54
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 155

私は 中学の頃から

ずっと日記をつけていた。


お嫁にゆく時
もちろん全部 持って出た。




夫婦になってから

初めての喧嘩の原因は


これだ。



見せろ 見せないで大喧嘩。

『隠し事があるのか!?』
彼は 怒鳴った。




あるに 決まってる。








別居を始めて

私は また日記をつけ始めた。



書く



という作業は

私に いつも落ち着きをくれる…



闇に 飲み込まれそうな時

嬉しい時


私は いつもノートに向かう。




決して
人に本音を見せない私が

『王様の耳はロバの耳~!』


と 叫ぶ場所なのだ。










私は 書いた


ひたすら書いた



やり場のない思いを


ぶつけるように



激しくペンを走らせた。




夢中で…




無心で…
















王様の耳が



ロバの耳であること











T君が知っていたなんて


思いもせずに。




No.157 11/10/24 04:34
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 156

彼は ご丁寧に


コピーまでしていた…






『焦ってる時は

ろくな男つかまないんだよ…


あんたに 言い忘れてた』




遅いよ。 S…











T君は こわれた。




出会い系サイトにハマり

手当たり次第に
女遊びを はじめる。





それでも

絶対に 私からは


離れようとしない。







私の精神も


おかされてゆく…









これは罰だ。



彼を こわしたのは


紛れもなく




この私。






彼もまた

真実を


求めつづけていたんだろう





暴けば


傷つくことを 承知で。







憎い


それでも

そばに いたい。







まるで

あの頃の自分を






見ているようだった。




No.158 11/10/24 14:27
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 157

「遅くなって ごめんね!」

「平気♪ 子供 おばあちゃんちに 泊まりだしさっ」

「そっか…

じゃあ 行く(笑)?」


「うん(笑)!」






自称ホスト。

胡散臭いが


見てくれが よけりゃいい…









「綺麗だよ リエ…」



もっと


言って…





「可愛い…



すごく…



可愛い リエ…」





お願い



もっと 言って






「私が…



好き?」






下手くそな 愛撫を

苦痛に感じながら




それでも


聞かずには いられない




「愛してるよ」








「私も…



愛してる…」









なんて簡単な言葉。







くだらない




言葉。












私は



いったい


どこまで



堕ちてゆくんだろう…




No.159 11/10/24 15:34
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 158

私は この夜

感じたことのない気持ちを
ひきずりながら
この男に会うため 家を出た。





雄太は

もう 私のものではない。



T君さえもう

私1人を 愛さない…







こわれはじめた彼に

頼むから別れてくれと


何度も 何度も

頭を下げた。




私が悪いのだからと

何度も 何度も 謝った。




ほんの数日

姿を見せなくなったT君に

私は 安堵とも虚無とも つかない気持ちを 抱いていた。





電話が鳴る




応えれば また繰り返す。


電話が鳴る





出たい気持ちを必死で

おさえる。





電話は



鳴りつづける…








私は

「ちょっと待っててね」
とニッコリ笑い

いつものように

チャオの頭を撫で



そのまま 部屋を出た。




携帯が鳴り出す






ふっと息をついて


玄関の鍵をかける。

勢いよくふり向いた私の前に








T君は 立っていた。



No.160 11/10/24 17:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 159

「行かせない…」



いつの間にか

私を おまえと
呼ぶようになった彼が
私を抱きしめる。


「離して!」

私は 本気で暴れた。



「いやだ…!」

痛いぐらいの腕の力。



「私じゃなくて
いいでしょう!?!?」

「おまえじゃなきゃ
ダメなんだ!!!」


「もう ほっといて!」



ゆるまない力に

きちがいのように 手足をバタつかせ 地団駄を踏む。




あたった膝の痛みで

少し力がゆるんだスキをつき
腕から ぬけ出すと




私は 急いで
車のドアに 手をかけた








「なんで
俺じゃだめなんだよ…」



もう


追っては来なかった。




ただ ボロボロと

涙をこぼしながら


立ちつくしている。








私は 何も感じたくなくて

急いで 車を出した。












仔犬を捨てたような


言いしれぬ感情が巻き起こり

涙が 出そうになる。






私は 強くハンドルを握った。


泣くわけにはいかなかった。












メイクが おちる。







私は 今から会う彼に

10歳も 年令を

サバよんでいるのだから…



No.161 11/10/24 21:08
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 160

くだらない男との

くだらない一夜を過ごし


私は 家に向かう。






電源を切ってあった携帯の

着信履歴が恐ろしい。







それを見たせいか

嫌な胸騒ぎがした…






私は、家の駐車場に
車を入れながら

なんだか家の様子を
おかしく 感じる。





あっては いけない物が

そこには あった。





… !






庭中に 散乱した

摩耶のランドセル 教科書…






私は 急いで拾い集めると

急いで 家の鍵を開け…







開いている。






慌てて扉を 開けると

「ニャ~ン」と鳴きながら
足元に チャオが擦り寄る。




「チャオ君 ただいま…」




気を静めようと

笑顔を 無理矢理つくった。











居間…


つづきの 摩耶の部屋…










めちゃくちゃだった。










襖は


穴だらけ




食器棚から落とされた

皿や 茶碗



調味料



雑貨…









私は


ただ呆然としていた。









… なに?



これ。



















「おかえり…」



No.162 11/10/25 03:01
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 161

殺される




と咄嗟に思った。







チャオを連れて

飛び出すんだ






チャオは?



玄関だ…




しかも彼は
玄関をふさぐ場所に

立っている







ひっくり返った

電話が見えた。




急いで飛びつく


はずれた受話器からは
なんの音も聞こえない。



電話線が はずされていた…





携帯…



慌てて家に入ったんだ

バッグごと
車の中…





「なんで慌ててんの?」



急に怒りがわいて来る。




「なんのつもりだ!?」

私は たまらず怒鳴った。



「ふざけんなよ!てめぇ!!」


「汚い言葉使わないでって いつも言ってるでしょ?リエ…」



「うるせぇ!全部もとに戻せ!! どうしてくれんだよ…

これ…」



突然悲しくなって


私は 泣き出した…





「泣かないの…」



私の髪を撫でる

「さわんな!!!」


払いのけた手が


パンっ
というかわいた音とともに
私の頬に ふりおろされた。



「…ちくしょう!!」

悔しくて悔しくて
つかみかかった私の首に

彼の手が かかる。



「 …!」



「俺を あんまり
バカにすんなよ…!」




本気だ。





殺されてたまるか








力いっぱい 手首に爪をたてる





手が離れた





私は 這ったまま
キッチンへと 急ぎ

素早くナイフを取り出すと


刃先を



彼に 向けた。




「リエ… あぶないよ


俺に ちょうだい」


笑っている。


そのまま



手を出して





近づいて来る…




No.163 11/10/25 04:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 162

「あんたはさ…


ほんと バカ」



「わかってんだから
言わないでよ…」


「だから
ほっとけないんだけどね…」


いつものSの癖

話しをしながら
必ず ティッシュや ダスターの角を クルクルクルって
まるめる(笑)



「あ!そう言えば
うちの甥っこ言ってたよ!

すげ~ 有名な先輩が
突然教室に来て

『おまえか? 〇〇って! 俺の女 おまえの叔母さんの 友達らしい。 なんかあったら スグ俺んとこ来いよ!』

って言われたんだけど リエちゃんの友達でしょ?って(笑)」



Sの彼氏は
私の甥と 同じ高校だった。


「あたしは ちゃんと 大人の分別を持って つき合ってんだから 大丈夫なんだよ💦」

「責めてないし(笑)」



「これも あたしの責任だな」

「なんでよ?」


そもそもは

『男でついた傷は…』

なんて言ったことから
始まったのだと
彼女は 15年以上経った今でも それを口にし悔やむ…



「ここまで 意味を はき違えられるとは 思っても みなかったけどな(笑)」



しかし 私は

この言葉に
ひじょうに助けられて
生きてきた。



偽物でも

愛に触れると


穏やかになれるから。




「しかし チャオは
いつ見ても でっかいなぁ♪」


これまた猫好きなSが
膝に のせる。



「でっかい男

紹介してやるよ!なっ♪」




… は?



No.164 11/10/25 05:01
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 163

T君は あの日


人生に2度刺されるのを
恐れたのか(笑)

ナイフを離さない私に負け



出て行った。






雄太同様


「チャオは返してね」




と言い残して。






本気じゃないんだ…



もう


経験済みだ。







摩耶に悟られぬよう

泣きながら 部屋を片付けた。



襖の穴は 暖簾をずらし

なんとなく隠した。
(のちにスグばれたけど💦)



彼の
会社でのポジションもある

摩耶に 手出しはしないはず…




ただ

これで



終わるわけはない。











結局


ここから先も 3年ちかく

T君は 私に執拗につきまとい




かの でっかい男とともに

私は 2度



警察へ 足を運んだ。







彼との区切りを

無理矢理
見つけようとするならば



この日なのだと




いうだけの話しだ。





No.165 11/10/25 11:58
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 164

カルチャーショック




私とSは

つねづね 男の分類を


【文系】か【理系】かで

行って来た(笑)










「あのさ S…」

『なに?』




2つ年下の彼 R君は

本当に 果てしなく背の高い
穏やかな人だった。



少し まともな男と
つき合いなよ…



私の狂いように

見兼ねたSのプレゼント。





「男には
【文系】【理系】以外にも
種類があることわかったよ…」


『なに!?』







「【体育会系】…」


『ぶははははは!』



電話の向こうで
ひっくり返ってんのが
見える…





Sは すぐ理解したんだ。

私の言ってるのは
見た目の意味じゃなく


頭の中身が
【体育会系】だってこと。



すべて…

直結している。




歴代の彼らに比べたら


R君の場合

数限りなくある神経が
1本に 太くまとめられた感じ…

とでも 言えばいいかな?




つき合いはじめ

私は 何度も泣いた。


「R君とは
精神世界が交わらない!!」


「 … 」




意味が 通じてない(笑)

ただ
「ごめんなさい💦」
と抱きしめてくる(笑)






それでも

そんな彼を


摩耶は『パパ』と呼び

私は『ダーリン』と呼び

ダーリンは 私を


『リエりん』(笑)と呼びながら







また


ここから3人と1匹で




5年の歳月を過ごす事になる。




No.166 11/10/25 12:34
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 165

R君もまた

猫好き 旅行好き。



私は 彼と過ごした5年の間。




何度も 何度も

幸福を感じた。



だけどそれは


私の大切な 摩耶とチャオを



とても大事にしてくれるから…

であって



私自身が

充たされる幸福ではなかった。






男として

彼を愛したことは






1度もない。





だけど

結婚を約束した彼を



私は 愛しているのだと



無理矢理に

自分に言い聞かせていた。











雄太は
再婚し 子供が生まれても

なんら 変わることなく
私を求めて来ていた。






女との



立場が 逆になっただけ…





屈辱を感じながらも


抱かれつづける私…




いつまでも






馬鹿のまま。






T君は ストーカーと化し


チャオや

一緒に暮らしていた頃の
カードの返済を盾に取り


セックスを強要して来る。






こちらは 本意ではない。


拒む私の身体には

無数の痣ができ



さすがに鈍感なR君でも
気づく。




体育会系の怒りは すごい。



「警察行くよ リエりん」

見たことのない形相で
車に押し込まれたのを



おぼえている。



No.167 11/10/25 13:28
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 166

「こっちの人は?」



簡素な小部屋に 通され

くたびれたソファーに
私達を座らせると

警察官のおじさんは


私に聞いた。




「友達です」

咄嗟に言ってしまってから
R君の顔を チラ見した。


ちびまる子ちゃんの

『ガーン…』


って顔になってた。



『友達って あんた…』

と 心の中で言ってたんだろう…





おじさんは 私の話しを
一通り 聞き終えると


私の痣を見て



「すぐ逮捕できるよ」


と あっさり言った。






「 … 逮捕?」


「住所も 何もかも わかってんだもん。 あなたが被害届け出したら すぐ逮捕できる…」











「出しなよ! リエり… さん」


警察で リエりんは

やめとくれよダーリン。









私は 迷った




と 言うよりも

そうする気は


最初から
毛頭なかったのかもしれない。




「今日は


出しません…」





私が 彼を狂わせたんだ。




彼の人生まで

追い込むわけには いかない。



報復も…




こわかった。







最後まで ふに落ちない様子の R君に おじさんは言った。




「この事に あなた出たら 絶対ダメだよ。 よけい酷いことになるからね。 人間 間に入れるなら 身内。わかった?」




なかなかどうして

ちゃんと もののわかった
うすらハゲ…



いや

警察官だった。



No.168 11/10/25 18:49
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 167

2度目の警察ゆきは


お金絡みだった。




当時 T君は

ネカマ(とは 今言わないのだろうか? 出会い系サイトで 女になりすまし お金を稼ぐ職種)を していた。


私の かつての Q2のバイト代なんてもんじゃない…


かなりの 荒稼ぎをしていた。



その 給与は全部

私名義の通帳へ。


もちろん 彼が管理していた。








ある日

家に 1本の電話が来た。


『〇〇税務署です』



身におぼえがない…







と言いながら ハっとした。



あれだ…








私は 電話を切ると

猛烈に 腹が立つと同時に
焦り出した。





もしかして

私 捕まっちゃう?



こんな くだらない濡れ衣で

犯罪者に させられる?







R君に 相談すると

「警察行こう」




警察信者である。







しかし これは

意味がなかった。


このての話しに

警察は ノータッチである。




R君は

「くその役にも立たない!」


と 憤慨した。




警察教 脱会。


とりあえず 早い(笑)






それでも この件は

早い段階で かたづいた。





真っ黒なスーツを着た

2人の紳士が


うちを訪ねて来たからだ…



No.169 11/10/25 19:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 168

「なるほど…」


片方の紳士は

手にしたボールペンの先で
コツコツコツコツ… と

話しをしている間中
せわしなくテーブルを叩く。



『うるさいなぁ…』


と思いながらも

私は 必死だった。







「〇〇税務署です」




玄関で 身分証を提示された私は なんだかすでに

犯罪者の気分だった。






中へ通して お茶を出す。





T君には 恐ろしい金額の給与が 振り込まれていた。



サイトが 密告されたのだろう…




知らない人間が聞けば

あきらかに 私の収入だ。







私は 頭のいい人間と

話すのが好き。




眼鏡の奥の目が 鋭く光る…

少し ワクワクしていた。



わかってくれる



という
確信があったからかもしれない





「その彼の 住所や自宅の電話番号を ご存じですか?」




私は 包み隠さず

しっかり伝えた。





もう


庇ってる場合じゃない。





いつまで


私に 関わる気だ!





もうT君には

憎しみの気持ちしか







残ってはいなかった。




No.170 11/10/25 21:35
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 169

そういう事をのぞけば

R君との毎日は

とても穏やかで 静か…





私の嫌いな 秋のようだった。





何も起こらない日々…




愛を

確かめられない日々…






なぜか

自由で


寂しい 日々。





彼は


無意識に 遠くを見つめる私に

必ず



「もしも~し!」

と言いながら


目の前で
手をふるしぐさをした。


そして

そっちに何かあるの?
って ジェスチャーを

私の視線の先を 見ながら


大袈裟に繰り返すんだ。





どうしても

それをされる度に




やっぱり

この人 ちがう。





って イラっとしてしまう(笑)




どこまでも

自分勝手な




女だね。








私は 自分の職場が

大好きだった。



職場の仲間達が

大好きだった。





仕事に ウエイトをおいてた私にとったら 彼で ちょうどよく バランスがとれてたのかも しれない…




そう思わないと

やってられない相手だった…






とも言う。




No.171 11/10/25 22:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 170

だから…


というのも ずるいが




私には いつでも

スキがあった。




摩耶も 中学生になると

あまり 私を


相手にしてくれない(笑)


摩耶には

摩耶の 世界が出来る。



それは 私にとって


嬉しいことでもあったが



悲しいことでも あった。







私の

男へのだらしなさは



Sの策略をもってしても

とどまる気配すらなかった。



むしろ


私に預けた駒の間違いで



増長すらしてしまった。







私と雄太が
離婚したことを知ると


雄太の友人のひとり…

私にとっても同級生である彼は


わざわざ 私の実家に電話をし

私の連絡先を聞き出し


アプローチ開始。



まんまとハマる 私。





もちろん彼は


既婚者である。







車のチームの 雄太の友人。


『俺も離婚したんだ』



だからって なんで

私と会うの?



彼とは キスだけ…


それ以上は 拒んだ。







雄太…



あなたの友達も



馬鹿ばっかり。









男なんて





馬鹿ばっかり。









そして やっぱり



1番のバカは










私達






だったんだね…




No.172 11/10/25 23:17
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 171

「もう…


や…

めよう…





こんなこと…」






「な… んで?」








汗ばむ肌が




どうしても恋しくて


ここから





離れられない。








知りつくされてる


身体と





スピード…









「しちゃ…




いけない…ことだよ…」






言いながら



その言葉に 酔い


快楽へと


さらに






いざなわれる。














あたりまえだが


雄太の女房に悪いなんて



これっぽっちも思わない。






私が
罪悪感を感じてるのは


摩耶と R君にだけだ。






自分を律するとは


いかに 難しいか。






セックスと


愛が絡むと






私には



ことさら 難しい…












ほてりの冷めぬうち


かわりばんこに

吸うタバコ…







「そう言えば ババァ(母親)が この間 言ってたなぁ…」


「ん?」

タバコを渡す。



「ママの 今の彼は
うんと いい人みたいだ…
って」



煙りを 吐き出すと

「摩耶が

すごく楽しそうだって…」








流れた涙が




私を


少しだけ







正気にもどした…



No.173 11/10/26 03:13
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 172

「とりあえず 患者さん
背中から おろして下さい!」





夜中に 急激な腹痛に襲われた私を R君は 急いで 抱えると

車に乗せ 救急病院へと向かう



「リエりん!
もう少し 頑張って!」



痛くて 苦しくて

唸ることしか 出来ない…



駐車場に着くと

彼は 大急ぎで飛び降り

私を 背中にのせた。



「…え?」


と 思う間もなく



受けつけまで 走る


走る 走る 走る…






そして






看護士さんに
言われたセリフが これだ(笑)




「あ! はいはい…ハァ~…」



病人の私より 息が荒い(笑)








こんな




昭和のマンガから

飛び出して来たような人を



私は 騙している。









もう



やめよう。





馬鹿なマネは…








ボクトツとした この人の

一生懸命な 思い。





決して 愛せなくても

好きだ



とは思う。






夫婦なんて


いずれ情熱は消えるんだ。





摩耶のために


今度こそ




いい 母親になろう。




何度 同じ決意をすれば
気が済むのか…




バカだから

しょうがないか。






許してね 摩耶…




No.174 11/10/26 04:04
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 173

何事もなく


… はないが(笑)



時は 過ぎてゆき





摩耶は 中学3年になった。





「私まで
汚い人間になりたくない」




雄太の かつての女

今の女房へ向けたつもりで

精一杯の皮肉を言い



私は 雄太との
身体の関係を 拒んだ。



それでも


私達は 幼なじみ。

そして 摩耶の父親は雄太。




シコリを残さず

笑い合う関係は 続いていた。







雄太は 私に 摩耶をくれ

T君は 私に

チャオをくれた。



彼らに出会わなければ

決して 手に入ることのなかった 大切なものが 私にはある。





R君は 決して うちで暮らすようなことは しなかった。


週なかばと 週末に
泊まりに来る。



電話も メールも
『今から 行くね』の場合のみ



最初の頃 感じていた寂しさは

慣れへと変わり


摩耶と2人のペースが
とても気楽で ちょうどよく


私達親子は

自由を満喫していた。






「Nちゃん もう
身体が 大人だよね…」


「ブラジャーなんか
私のより でっかいんですよ」

Nちゃんママ ご立腹(笑)




修学旅行からの帰りを

学校まで 迎えに来ていた。




「もう
遊ばなくなっちゃいましたね…

あの子たち」



「なんか 寂しいね」






友達と笑いながら お土産を たくさん抱えて、バスから降りて来る摩耶を見ながら



あの頃のシーンが


私の 頭と心に




駆けめぐった。




No.175 11/10/26 04:42
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 174

摩耶の 様子が おかしい。


毎日 毎日

あんなに楽しそうに
学校へ 行っていたのに…






布団から出ようとしない。



修学旅行が 終わり
すぐ ゴールデンウイーク。


旅行つづきで疲れたのかな…







頭が痛い

気持ちが悪い


だるい…





会社へ出る時刻も せまる。



私は イライラと
彼女を 急かす。


毎朝だ。



叱ったことのない私が

摩耶を怒鳴る。


「もう いい加減にしなさい!
なんのつもり!?」








「行きたくない…」





ボロボロと 涙をこぼす。









突然の




不登校が 始まった。










まず 顔を出したのは



みえっぱりの私。







子供が 不登校?


恥ずかしい。

みっともない。





親が あまいから

子供が そんな事になるんだ…



そういう子を見るにつけ
思ってきた 私。







それが…



私になるの?





『父親が いないせいでしょ』




きっと言われる。





いやだ



いやだ










そんなの 絶対 いやだ!



No.176 11/10/26 16:21
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 175

ちがうカタチの地獄が



はじまった。







会社のトップにも

話さざるをえない…



遅刻が増える私に
上司は 優しく
フォローを くれる。

仲間たちも皆

理解を持って励ましてくれる。


「殴ってでも行かせろ!」

営業の男の子が
笑顔でちゃかす。


「うるせ~よ(笑)」

泣きながら言う 私。




会社は

その時の私に
ひとときの オアシスだった。






暗い

摩耶の顔を 見たくない。




華奢な摩耶の身体を

布団から ひきずり出し

泣き叫び 抵抗する彼女に
力ずくで 制服を 着せる。


ちぎれる程 腕をひっぱり

玄関まで 引きずる。



狂ったように
さらに 泣き声は大きくなる。



やめて…


やめて…




近所に 聞こえる…



恥ずかしい

恥ずかしい…!!






玄関の支柱に しがみつき

「行かない!!」

と わめきちらす摩耶の腕を 折れるのではないかと思う程 つかむ…



私は


鬼だった。




「ママ! 痛い!痛いよ!!」


「行きなさい…!」






低く 強く。








ものすごい力で
私を 突き飛ばし

駆け出し


また 布団をかぶる







イタチごっこ。






私は


また



暗いトンネルに迷いこんだ。



No.177 11/10/26 16:55
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 176

「摩耶は
また起きないのか…」


R君がいる朝

私は さらに憂鬱になる。



「うん…」


「だめだよリエりん…

ちゃんと
学校は行かせないと!」


怒った顔の



R君。







そんなこと

私だって わかっている。


何も手を貸してくれないくせに

正論ばかり
おしつけてきやがって…



私は まっすぐに生きてきた彼にさえ 憎しみを持ち始める。



あんたみたいな
頭が 筋肉バカの男には
わかんない






私の気持ちなんて




絶対に わからない。










「行ってらっしゃい」


「行ってきます♪」



それでも




キスして 出てくんだもんね…










だんだん

無表情になってる私になんて



気づくわけない。
















「摩耶…



何が あった?





ママに 話して…





なんでも話してくれたじゃない…






2人で…

ずっと


頑張って来たじゃない…





ねぇ


どうして?





どうして? 摩耶…








摩耶!!!!!」





盛り上がった 掛け布団を

力いっぱい叩きつける。



何度も 何度も



何度も…











摩耶と呼びながら






とまることのない涙を







流しつづけながら…




No.178 11/10/26 18:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 177

「行きたくないもんは

行かなきゃいいんだ!」


同級生が経営する ピザ屋。


「なぁ 摩耶!」



摩耶は 久しぶりの笑顔で

ピザを頬張る。

「うん!」




ただ 黙々とビールを飲んでいた私は 何かがブチっと切れる音を聞いた…




「ふざけないで!」


涙が 後から後から流れる




「そんな 簡単な…
事じゃないでしょう…」


雄太は 笑顔のまま

「ママは 真面目すぎんだよ
な~ 摩耶

あ!ピーマンよこせ…」



追いうちを かけてくる。



「我慢すること おぼえなくて どうするの!?

いやな事から逃げるじゃ
この先 生きていけないよ!」



何事も 我慢できない

『元』夫へのイヤミも含めた…



何も理解せず
ただ 学校へ行かせろにも
充分 腹が立つが

適当に聞こえる 雄太のアドバイスには もっと腹が立った。





「まぁまぁ〇〇

おごりだ。 飲め。」


私を名字で呼ぶ店主が

私の前に ジョッキを置く。




「摩耶ちゃんは
雄に 似たんだな(笑)

我慢しね~もんな!こいつ!」



苦笑いをしていたね。


摩耶…











自分の気持ちばかり


おしつけて






あの時

何も見えていなかったのは




ママだったね。



摩耶…




No.179 11/10/26 19:53
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 178

「保健室登校…

させてみましょう お母さん」



おばさんなのに

おじさんに見える

この 熱血担任は


毎朝 摩耶を家まで迎えに来る



私は いたたまれない…





「摩耶~!
先生の声 聞こえるか~!?」


玄関から 大声で叫ぶ。



小さな 小さな家だ。

充分 聞こえてるはずだ。




「先生と一緒に
明日 保健室に行こう!

教室は 入らなくていい!

帰りたくなったら
帰っていいから(笑)!

先生
明日また迎えに来るからな!」



先生は

私に1枚のプリントを渡すと

「お母さん 気にしてらっしゃるだろうけど イジメではないから… これは 私が保証する(笑) 部活で何か… あったかな? 少しずつ 聞いていきます。

明日 摩耶が出て来てくれれば…


だけど(笑)」



そう言って 帰って行った。





少しだけ

気持ちが軽くなった。


先生 ありがとう。





渡されたプリントを見ると


地域で主催する 不登校生徒を持つ親に宛てた 合同カウンセリングの案内だった…




まだ


夢の中にいるようだ。




現実…



なのかな。







そこに 足を運んでも


私はまだ




夢を見ているような錯覚に



とらわれていた。




No.180 11/10/26 20:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 179

こんなに 居るんだ…




同じ悩みを持つ 親が。






あたりまえだが

皆 一様に 疲れ果てている。



派手な自分の身なりが

なんだか 場違いに思え


萎縮した。






まぁるい大きなテーブル。

ぐるっと 取り囲む親たち。


ついて来ている子供もいた。





カウンセラーが 話し出す。


「お母さん達


お疲れさま。」




私は その言葉を聞いただけで

号泣してしまった。



私につられ

そこここで


すすり泣きが始まる。





「きっとね…
皆さん必死だと思う。

少し 気持ち


ラクにしましょう(笑)」





頭が痛くなる程 泣いた。



共通して言える事として

絶対に 無理に行かせるような行為は しない事!と

話しが あった。

『子供の個性』だと


受け取ってほしい…



と。






個別のカウンセリングでは

「ふつう こういう子供達は 何かしら兆候があるんですよ…


お母さんの場合


本当に 突然だったから
信じられない気持ちが
他の親御さん達より 強いのね…


急に 頭に石が落っこちて来たみたいなもんだもんね。

怖かったでしょう…」






天使のような

カウンセラーさんに


また 泣かされた。




No.181 11/10/26 20:58
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 180

私は R君に


摩耶は 学校へ行っていると

嘘を つき続けていた。



彼がいる朝は

頼むから 行くフリをしてくれ


と 摩耶に頼んだ。






筋肉バカは 疑わない。



「いいぞ!摩耶!
受験もあるしな!!

学校は 行った方がいい!」





…ご機嫌だ。









2・3日の 保健室登校で

わかったこと。



何を聞いても 書かせても



『お母さんに 迷惑をかけている…。 私が わるい』


しか 言わないということ。




「摩耶は 本当に


お母さんが大好きですね」




今日も
上下ジャージの担任が

私に話す。





また 泣いた。







あの時期

私も摩耶も


泣いてばかりいた。



やって来る

大好きな夏さえ


あやうく棒に振るところだった…






天使よ

ありがとう。




私は

カウンセリングで変わった。





何が 恥ずかしい?


摩耶は 摩耶だ。





私の


大切な 娘だ。








「摩耶…

ごめんね。


ママ もう学校へ行けなんて
言わない。



ゆっくり 休もう。


どうせ
もうすぐ夏休みだしね(笑)」













摩耶が 笑った。






泣きながら





笑ってくれた。




No.182 11/10/26 21:34
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 181

摩耶に
この時の理由を聞いたのは


Sの【雄太暴露】同様

つい この間だ。





6年程 封印されていた
真実は



実に くだらない事だった(笑)






思春期の子供には

それでも
重大な事だったんだろうけどね…













この時…


摩耶の笑顔を見た私には



理由なんか

どうでもよかった。



話したくなったら

話せばいい



学校なんか行かなくたって

勉強は出来る。






もしかして

私が嫌悪していた


『ただ 甘い親』に

成り下がっただけかもしれないが それでも いいじゃない?




今まで

ちゃんと見ていなかった分


摩耶を たくさん見るんだ。








暗いトンネルの先に


希望が 見えた。







R君には きちんと話した。



もちろん ふに落ちない彼は

困惑する。



後々 自分の娘になるのだ

曲がった道を


歩いてほしくは
なかったのだろう…






だけど


頭が 体育会系の いいところ。











忘れる。











(笑)楽しい夏が


また 始まってゆく。



No.183 11/10/26 22:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 182

なぜ R君との

愛のいとなみのシーンがないか…




と言うと









どうも









合わなかった(笑)


くわえて彼は タンパク質…


ではなく 淡泊。




会社の仲間たちには

『ダーリン💖リエりん💖』の

有名バカップルも


実は セックスレスだった。




結婚を 約束していた私達は


もう


家族の感覚だったのかも

しれない。













プール




旅行





花火







楽しい夏は

瞬く間に 過ぎてゆく…







私達は

買ったばかりのパソコンで


次のお正月の
旅行先を探していた。



秋と同じく


『終わり』も嫌いな私は




次の『楽しいこと』を
つくっておかないと

気が気じゃないんだ…






「摩耶は どこ行きたい?」


「伊豆~♪」


私も 間髪入れずに

「修善寺~♪」



「なんで?」



2人で クスっと笑う。



摩耶と私が 大好きな お笑い芸人の 番組ロケが 行われる温泉が 修善寺には あるのだ。




「じゃあ そうしよう!」



笑い合う


私達。








それは



10月のこと。




また






10月のこと…




No.184 11/10/26 23:18
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 183

「さっきね

リエさん呼んでって

若い兄ちゃんが
カウンターに 来たんだよ…」




私の会社は

中古車のオークション会場。


火曜日は
オークション日


全国の中古車屋や ディーラーが 車の買い付けに来る。



「え? 会員さん?」


会員とは 車屋のことだ。


「それが 見たことない顔なんだよね~…
なんだか チャラチャラしてたし ヤバそうだなっと思って

『勤務中です!』って
帰しちゃった💦 よかった?」


ちょうど10歳年下の
経理の女の子。

シッカリ者である。



私自身が チャラチャラしているため(笑) 会員のオッサン達からの 誘いが多い。


こうして 同僚が
ガードしてくれる事も
しばしば ある。



「いいの いいの♪
ありがとうね♪助かったよ!」



夕方 6時…

仕事は まだまだ終わらない。


オークション中は
【競り】のアナウンスを マイクに向かって ずっとしているが

それが 終わると
私の部署には 会場の後片付けが 待っている…


明日には清掃業者が入るが

配ったチラシ類を
テーブルの上から使える分
回収してまわるんだ。





こっちの方が 疲れる…





「まったく
めんどくさいっすよね~…」

同じ部署の Uちゃん。

彼女は9つ年下で
家も近所 同じ母子家庭で
プライベートでも ほぼ毎日一緒の 仲良しさんだ。



「ほんとだよね…」





言いながら 私は



カウンターに来たという
その人物が


ひどく 気になって





しかたなかった。



No.185 11/10/27 00:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 184

「リエさん!」


デスクに戻った私に

営業の男の子が声をかける。

「なに?」



ポンっと
1枚の名刺を放って


「電話して下さい」


「は?」


「いいですか!?

絶対 電話してくださいよ!」




意味が わからない…




スタスタと 行ってしまった。





それを手にとると

私は ゆっくりと眺めた…



車屋の名称

代表の肩書の



社長の名前




電話番号 ファックス番号

携帯番号 Eメールアドレス…















カウンターに来た人物!








私は キャビネットを開け

会員のファイルを取り出す。


私は 会員管理の業務もしていたために それは すぐに

見つかった。







『この… 人?』








たしか

若い兄ちゃん…


って Mッチ言ったよね?





どっから どう見ても

ID用の その顔写真は




ヤクザの オッサンだった。





あれ…?




でも 私より5つも年下だ…









「わっ!!」



「…!」

バタンと ファイルを閉じる。




「O…」





さっきの営業の男の子だった。



No.186 11/10/27 01:38
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 185

ジョッキのビールを

ごくごくと喉を鳴らし
流しこむ…


「ぶは~っ!」

「オヤジか…」


Uちゃんは
口を手でぬぐいながら

「しっかし
焦ったっすよ私…」

と言った。



「なにが?」


近所の居酒屋。




「ママ 焼鳥取って…」


「ん…」

「Iの分も」

「ん…」


Iは Uちゃんの小3の娘だ。




「誰か リエさん訪ねて来たって聞いた時 てっきり Tさんかと思ったんすもん💦💦」



Uちゃんカップル(もちろんIも)とは T君と つき合ってる時 北海道旅行に 一緒に行っている。

釣り ドライブ 宅飲み…


とりあえず


いつも一緒だったのだ。



「あ… 私も思った(笑)」




「だから
絶対 電話しなさいよ!」

「うるさいよ おまえは…」



なぜか 私達の食事どき

必ず Oも一緒にいる。





Oは 彼氏のいるUちゃんに

恋をしているのだ(笑)




「あの社長
おっかないんですからね!」


あんた R君とも仲良しだろ…




「リエさんのこと
『25・6か?』って言うから

40のババァっすよ!
15の子供もいるし!

って 言っときました…」








「摩耶ちゃん Iちゃん

アイス頼もっか♪」





くぅおのやろ~!!!



No.187 11/10/27 03:00
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 186

家賃3000円。
築40年。


公営の この住宅に

深まった秋の風は冷たい…



「ママ ストーブ…」

「はいはい…」




チャオは急いで走って来ると

ストーブの前に丸くなる。



「フライングだろ(笑)」






「メアドもあるじゃん!

この名刺…」



テーブルの上に 無造作に置かれた それを手にとり

摩耶が言う。





ちゃんと話し聞いてるんだな。




「なるほど…

突然 電話より いいか…」


「早くしてみなよ」



おもしろがっている。







『こんな時間に ごめんなさいm(_ _)m 〇〇です。 O君に聞いたと思いますが 私には 子供がいます。』



「こんな感じで いいかな?」


「なに それ(笑)!」






「送るよ…」

「送りなよ(笑)」


「やっぱり やめようか💦」


「Oの お兄ちゃん 怒られるって言ってたでしょ(笑)

送ってあげなよ!」




「 … じゃあ」









送信。













はぁ~…








「あ~あ! 送っちゃった!」




「摩耶が 送れって
言ったんでしょ!?💦」







ブーッ ブーッ




「きゃっ!」


バイブの振動音に 2人で驚く





「返信 早っ!」



摩耶が また



笑った。




No.188 11/10/27 04:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 187

「ねぇ…

ダーリン…



私のこと好き?」



「 … 」



ぎゃははは! っと

グラスのビールを口に運ぶ…




テレビに くぎづけだ。





「眠くなっちゃった」


突然かよ。







私の膝に


頭をのせる。






私は 髪を 優しく撫でる…


「白髪… 目立って来たね」


「まだ38なのになぁ…」





なんとなく

この人との 5年を想う。


そして


それに繋がる

過去を



想う。







「修善寺 楽しみだね…

ダーリン…」





んご~っ んが~っ …









おいおい おいおい。









ブーッ ブーッ


慌てて 開く。




いびきは 続いている。








あの日の

素早い(笑)返信メール。


『突然ごめんなさいm(_ _)m

メール ありがとう。

ずっと ずっと
気になってました。


友達になって下さい。』




ヤクザ顔の社長の

思いがけない 低姿勢。




友達なら…




いいよね?









正直


久しぶりに





ドキドキしていた。







R君にとって


私が 女なんだかなんだか
わかんなくなってたから…





なんて言い訳。




ただ



私の中の



女が また…







ドキドキし出しただけだ。



No.189 11/10/27 04:44
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 188

『お疲れ様m(_ _)m!

俺ね 今日すごく頑張った!

だから ご飯食べに行こう!』




金曜日の夕方。



まだ会社に居た私は

とりあえず 慌てる。





「Uちゃんどうしよう💦

社長 ご飯行こうって💦」


「マジすか!?」

「Uちゃん一緒に来て!」


「… マジすか!?」






社長も 15年来の親友と
来るとのこと…



かくして

某居酒屋に 一同が揃った。





「社長 マジやくざっすよね」


おいおい Uちゃん…

「聞いてないし…」




社長は…



ずっ












私の顔を 見ている。




「可愛いなぁ…」


ドキドキ ドキドキ。


「ほんっとに 可愛いなぁ…」



ジョッキで顔を 隠した。




「もしかして あの日
カウンターに リエさん呼びに来たのって
この 友達ですか?」


こ・ち・ら・の・お・友・達!

Uちゃんは
日本人だけど 日本語が苦手だ…




「そうだよ♪」


たしかに チャラい。



しかし メンクイの私としては


こ・ち・ら・の・お・友・達


の方が…







これ以上は 考えるまい。



そして

途中で ふと気づく。




さっきから 社長

何も 食べてない…



No.190 11/10/27 10:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 189

Uちゃんの暴走は

とまらない…




「あれ?大工さん

結婚してるんすね?」


職業で呼ぶなよ。




「うん。してる。」

チャラ男のくせに
あんまり話しを盛らない…




「なんで わかったの?」

と 社長。


「指輪してるじゃないすか(笑)

社長 意外と鈍感っすね(笑)」



ハっとした。


Uちゃんの暴言にではない。





自分の 左手の薬指にだ。




すかさず 社長が


私の手を見る。



「ちがうよ💦💦

私は 結婚はしてないよ!


ただ…




約束してる 彼はいます」



ここは



ハッキリ言った方がいい…





「嘘…



だろ…」



あからさまに 落ち込んだ。



「言わなくって

ごめんなさい…」


「いや…

聞かなかった 俺が悪い。


最初に

聞くべきだったんだよ…


舞い上がって


考えもしなかった… 」




どうしよう。



想定外の展開…


本気か? この人。





「だけど

友達なら いいよね💦💦


こうして ご飯食べたり…」

「やだ。」



ひくか?



「俺にして」



は?





つっ






こんで 来ますか…









ますますの






想定外…。



No.191 11/10/27 11:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 190

彼は 激しい攻撃を

仕掛けて来た!



自分が 私を どれ程好きかを

なんの恥ずかし気もなく
口にする。



聞いてる こっちが

穴があったら入りたいくらいだ…




Uちゃんと チャラ男は
ニヤニヤしながら

2人で 盛り上がっている。



「俺は もともと 怖いもの知らずだから 女 口説く時も 『あたって砕けろ』なんだ…

ダメなら しょうがない。


だけど

今回は こいつに頼んだ…」



カウンター呼び出しの件だな。



「もし 断られたら

立ち直る自信なくて…


初めて 怖いって思ったよ…」



え!? 泣きそう…



泣くなよ ヤクザ。

ここで泣かないでくれ。



「理想の女なんだ!

最後の女に したいんだ!」



もしも~し…




「ごめん

ちょっと私 トイレ」

折った。


「え~っっっ!?」

2人が のけぞる。






ちょっと いい気分で

手を洗いながら 鏡をのぞく。


ニヤニヤしちゃう顔を

無理矢理 元に戻す。



『よしっ』


気合いを入れて ドアを開けた…




ら 社長がいた。







「好きだ」


抱きしめられた…




「ちっちゃくって可愛い…」



ドキドキ ドキドキ



R君より若干低いが
かなりの背の高さ…

スッポリ包まれた私は


何も



言えない…





「もう少し こうしてて…」










ドキドキが




とまらない…




No.192 11/10/27 15:48
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 191

「主任 元気だった?」



R君が 居間から声をかける。


彼は タバコをやめた為
私は いちいち
キッチンまで タバコを吸いに行かなくては ならない…


これも 面倒くさかった。



強く煙りを吐き出すと

「うん!元気だったよ!」


と 答えた。






恋人としての関係を

拒みつづける私に


財布の中の札束を見せ

「こうなったら 金でつる!」

と わけのわからない奇行をし出した社長に ひいていると


R君から メールが来た。


いつも通り…


『今から行くね』

のみの。





社長の顔色が なくなって来ていること 気にはなったが


「子供が 待ってるから!」


と 2人を残し

「Uちゃん帰ろう」

と さっさと退席してしまった…






もうすでに 家で
摩耶と笑っていたR君には

「主任帰って来ててさ~💦
Uちゃんと3人で 飲んでた」

と 苦しい言い訳をして。





… また

騙しちゃったな。











誰のことも






幸せにしてあげて ないな…









幸せそうな


R君の 寝顔が






つらかった。



私は ため息を ひとつ つくと


タバコを吸いに

キッチンへ向かう。




火をつけようとした時

携帯が鳴った。



… 見たことのない番号。





「…はい」

「リエちゃん!
あいつ救急車で運ばれてさ!
今 病院! 来れる!?」




嘘でしょう…



No.193 11/10/27 17:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 192

好き…



とか




心配…






とかの
感情ではない気がした。





私は


ただ

嫌われたく





なかったのだと思う。




薄情な女だと


思われたくなかっただけ…





「ごめん…

行けないよ」



と 電話を切ったものの


つい 部屋の中を

右往左往してしまう。




T君が


刺された夜のこと

少しだけ
頭を かすめた。






R君は

1度眠ったら
朝まで目を覚ますことはない。



私は急いで 玄関に向かい

ブーツを はいた。












「どこ行くの?」



心臓が 跳ね上がる。





「 … 摩耶」


「どこに行くの?ママ…」




「あの人 救急車で運ばれたんだって ママが 断ったのが ショックだったんだよ… 急性の アルコール中毒だって… なんにも食べてなかったんだもん なんにも… 食べて…」

泣いていた。




「ママが行って

…どうなるの?」




冷たい



声だった。




興奮していた私に

摩耶は



冷水を 浴びせた。




「だって…


かわいそうじゃない…」


「パパの方が
かわいそうだよ!!!」







「もう こういう事すんの…


やめてよ




ママ…!!」









私は





ブーツを 脱いだ。




No.194 11/10/27 19:04
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 193

なぜか 朝方ちかく


病院の中を写した

写メだけのメールが届き





とりあえず

私は ホっとした。







冷たい




女だと





あきれられたか…


と 思っていたのだ。













また…


どっちつかず。





八方まるくおさめようなんて

しょせん…





無理。








私は お母さん。



私は お母さん。






私は





お母さん…








摩耶の言葉が

いつまでも突き刺さる。



浮かれてる場合じゃない。






はっきり


もっと シッカリと






ことわらなければ…!












「おはよう… リエりん」



「あっ おはよ」




そうか…





今日は 休日なんだ。




「さて 今日は

どこに お出かけする?」








結局私は



彼らの目を盗み





まめな 社長のメールに



1日中



こたえつづけていた。





No.195 11/10/27 19:53
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 194

「なんか ダッヂの社長
毎日 来てね?」


「ほんとだ…

しかも なんか いつも
こっちの方見てるし…」



基本的に

うちの会社は
月曜日 火曜日以外
会員さんの出入りはない。


おかしいと思われて

当然だ。






「もしかして リエさん…

とんでもないのに
つかまっちまいましたね(笑)」


「笑いごとじゃね~し…」


Uちゃんが ちゃかす。



まだ


笑ってられた



この時は…







11月に入り

毎日 肌寒い…



私は 毎日

メールで 断りつづけていた。


ただ

社長を傷つけないように

子供を盾にした
言い方で…


そして R君に

さほど気持ちはないこと。
セックスレスであることも
話した。




一生懸命な 彼が

あんまり かわいそうで


私だって さほど幸せじゃない…



と 言ってあげたかったんだと

思う。







裏目。







彼は 俄然 はりきり出した。



セックスのない男女は

終わってる!


と 言いきり





母の部分の私も

大切にしてくれながら


毎日 毎日 毎日



私を 口説く。







そして

オークション日以外は

誰も 使うことのない


広い 2階のフロアで




私は また






彼に 抱きしめられる。









誰か 来る…



焦る気持ちが

興奮に 変わる…





「好きなんだ」



「愛してるんだ」







たまらず 私は



顔をあげ






彼の




激しいキスを




受け入れた。



No.196 11/10/27 20:30
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 195

「チュウして来ちゃった」


「なぬっ!?」






「ギュってされたら

ゾワゾワして来ちゃって…」


「やべっ 濡れてきた」


「おまえ…(笑)」





社内でする会話じゃない…




Uちゃんとは

いつも 恋バナで盛り上がる。




チーム馬鹿母だ。







彼女は
私と会社で知り合って 2年後


離婚した。



この会社の 下請けの男の子と


恋に おちて…




不倫の間

偽装工作にも


何度も 手を貸した。






私は とうに


浮気された妻の 苦しみを

どこかへ





置き去りにしていたんだ。








「どうすんすか?Rさん…」



「え!?



別れないよ」





「なぬっ!?」





「摩耶に 何言われるか

わかんないし…」


「社長のこと

好きじゃないんすか?」



「わかんない」

「出た!ワカンナイ(笑)



…Rさんは?」


「… 好きじゃない。


たぶん」




「好きでもない人と

結婚できるんすか?
リエさん…」



「だって 摩耶が…」



ふ~…




2人同時に ため息をつく…







「この 給料泥棒ズが!!」

バンッ!!




課長が
山のような資料を

デスクに

積みあげた。



No.197 11/10/27 21:55
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 196

「だから 私は

別れられない…



無理だよ… 」




家の中なのに
息が白くなりそうだ。




必死に小さな声で喋る。

目の前が玄関の
小さな廊下。




それでも

そんな私の声を

聞きたくない摩耶は


廊下と居間の境の襖を
音をたてて閉め

テレビのボリュームを上げる。




「一樹… わかって

お願い…」



名前を 呼び捨てにしてくれと

真剣に 頼まれた。


彼もまた


私を 呼び捨てにする。




『リエ…


リエ…』


何度も呼びながら



電話の向こうで

号泣している。





私は まだ


彼が好きなのかどうか

わからないでいた。




この 激しいアプローチに





酔いしれて



いるだけかもしれない…







キスをした あの日から

仕事帰りの わずかな時間



誰にも内緒で

コッソリ会っていた。




5分でも

10分でもいい


本当に 一瞬でもいいから



2人でいたいと



一樹は言う。






情が生まれることを

恐れたけれど



俺をもっと知ってくれ

という言葉に負けた。


彼の持つ

強い強い


引力みたいなものに


私は負けていた。







それでも


R君とは
別れないと言う私に







彼は

恐ろしいことを



言い出した。





No.198 11/10/27 23:13
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 197

『死にたい…』






あぁ…




ここにも





思い通りにならないと




脅しをかける馬鹿がいた…







そして



そんな言葉を





私は 真に受ける馬鹿だ。









帰宅後 夕方



メールが来た。




添付画像がある…









それは


パソコンの画面を

アップで撮った写メ。







16分割くらいの同じ写真が

並んでた…





笑っている



私だった。





気づいた時

心臓が ドクンと鳴った。



頭が真っ白になる。





気持ち悪い…


なんなの?







すぐに続けて


『今から 死ぬ』


と メールが届く。





私は すぐにUちゃんに
電話した。


「Uちゃん Uちゃん

一樹死ぬって…


死ぬって言うんだよ!」



「落ち着いて!リエさん!

本当に死ぬ人間は ふつう
死ぬなんて言わないすから!」


「わかってるけど

本当に 死んじゃったら

どうしよう Uちゃん…」



「あっ!

大工さんに電話して下さい!


リエさん!!」




たまに いい事を言う。




「ありがと!Uちゃん!」


急いで電話を切ると




私は

チャラ男に電話をかけた。



No.199 11/10/27 23:56
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 198

『会社で 暴れてやる。

俺をとめられる男なんて

リエの会社には

いないしな…』






今度は


正真正銘の

ストレートな 脅しメール。





残念だけど

この程度のことで



私は ビビらない。

むしろ


怒りがわいて

強くなる。




『どうぞ

お好きなように。』


送信。






キツく見える 私の外見。


実は

なよなよした優柔不断。



そんなとこも大好きだ

と言った あなたの



作戦失敗。







『仲良くしよう(;_;)
リエ…

俺 うざくて ごめんなさい…』







大工さん(笑)に 電話した時も


彼は 大笑い。


私が心配だろうから

見に行ってみるけど


あいつに そんな度胸ないって…



『それより リエちゃん

どうしても あいつとは
つき合えないの?』



「無理… かな」


『だめなもんは

しょうがね~わな(笑)』





しょうがなくないんだもん…


この人。







泣く 脅す 死ぬ





もう…


全部

使いきったでしょう。







全力で闘った後みたいに









気づけば 私は


ずっと



ひきずっていた




重たいものさえ










忘れていたんだね。



No.200 11/10/28 01:39
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 199

ふと


悔しくなった。




私は いったい


こんなに一生懸命




何を守ってるんだろう…






私は 10年前


欲しいものを 取り戻すために



短い時間ではあったけれど

必死で 闘ったのでは
ないだろうか…




ぶつかったり


迷ったり…




まわりの力も

たくさん もらって。



必死で…



手を








尽くした。







悪いことをしておきながら…



開き直る。




あの時の


雄太と一緒か…。











「ダーリン…」




「ダーリン!!」






「へ?」


へ じゃね~よ。





ヤクザ映画に夢中か…



ヤクザみたいな男に

彼女 盗られそうな時に…








「この間のあれ…



嘘。」





「 … あれって どれ?」





「主任と飲んで来た…




って」




言いながら


後悔して来た…








「誰と 飲んだの…?」





「会社の



お客さん…」




「なんで?」









「告られた…」









「 … ふ~ん 」












無言。











そのまま 眠りにつき






大きな いびきの中




一樹とのメールは




一晩中 続いた。




No.201 11/10/28 03:29
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 200

「俺のだからね」






出かける間際に

R君は 言った。



「え?」






「リエりんは


俺のものだから」






初めて聞いた…







だからと言って



その瞬間から




何が 変わるわけでもない…







もともと

ヤキモチをやく人ではない。


自分の

自由な時間も 必要な人。









一樹は あいかわらず

ほぼ毎日
会社にあらわれる。



初めてメールをしてから

半月ちかくが過ぎていた。







「ホテルの バイキングに

ご飯 食べに行こう!」




「いいけど…

何もしないでね(笑)」



「食事です!」




あろうことか


私は



本当に 開き直ってしまった…





このままで

いいじゃないか。



彼が 2人いちゃいけないって

誰が 決めたの?






一樹には


お正月にある
伊豆旅行が終わるまで

待ってほしいと言った。


摩耶が


とても楽しみに しているから…


と。




摩耶の名前を出されたら

引っ込むしかない。




汚いやり方だが

旅行が終わったら


その時また

何か 理由を見つければいい


と 私は考えていた。



No.202 11/10/28 03:56
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 201

「うそ…」



「俺 知らない💦

マジで 知らね💦💦」




食事が終わって

カウンターに案内されると


ルームキーが


手渡された。





「疑ってるよね?

ハメたと思ってるだろ?」



正直


どっちでもいい。




一樹が お世話になってる
別の中古車屋さん。

かなり年配の社長さんが


この バイキングの

チケットをくれた。



もちろん そちらも

私の会社の会員さん。


ここへ来る前 ご挨拶にあがり



「カズ
うまいことやったな(笑)」


褒めたたえられてたっけ…




一樹は どこへでも

私を 連れ歩く。


そして自慢する。



堂々と

照れひとつなく。




自分のまわりと関わらせない

R君とは まさに真逆…






「手 つなごっ…」

部屋までの距離を


手を つないで歩く。



途中 ロビーにつくられた

池のほとりで遊ぶ
小学生男子に


つないだ手を

目の前まで持ってゆき


「い~べ~? い~べ~?

うらやましいべ~♪♪♪」



と しつこく はしゃいでいた。






「マジで ほんとに 俺

知らなかったんだからね!」


鍵を開ける行為を

バツが悪く感じるのか


一樹は しきりに喋る。




「はいはい(笑)」





ドアが





開けられた…



No.203 11/10/28 04:17
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 202

何も…



しないんだ。









けっこう ガッカリした(笑)






一樹は ずっと喋っている。



2時間という

その限られた時間




私は 瓶ビールを

イヤと言うほど飲みながら


チラチラと


時計ばかり 見ていた。






ほんとに 知らなかったんだな



この人…








キスひとつ






しない。











お姫様を乗せるのだから

外車で お迎えにあがりました




と わざわざ この日のために

車を買った 彼。




待ち合わせた駐車場で



「ほんっとに可愛いなぁ…」

と デレデレと いつまでも


私を見つめる 彼。






傷を負った



女の私が








どう 転んでゆくかなんて





誰が考えても



わかりそうなもの…







知らずにいたのは






この状況で


手を出して来ない一樹と





私だけだった。




No.204 11/10/28 04:53
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 203

「さっき外で 社長から
あずかって来ましたよ

リエさんに渡してって…」



Oが 茶封筒を私に手渡す。



「なんだろ?」


「ラブレターでしょ?」

「茶封筒で(笑)?」




ラブレターなら

つい この間 もらった。



長い 長い 手紙。



涙でくもって書けない

と 締めくくられた
その手紙には


愛してるの文字と


お墓の中まで一緒だよ



の 決めゼリフ。







65点。







ところで

本当に なんだろう…





封を 開ける。





3万円と 小さなメモ用紙。



『リエと摩耶の
携帯代に 使って下さい』













「O! 社長は!?」



「行っちゃいましたよ~!」






涙が 出そうになった。



私は こういう事に


よわい。









なんて いい奴。




まさに 現金だ。








すぐに お礼の電話。


「こんな事
しなくていいのに…」

『リエの携帯とまったら

俺が やなの(笑)』







100点。











ところが…








「そんな奴の金で
携帯つながったって

嬉しくもなんともない!」









- 50点 …




No.205 11/10/28 13:10
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 204

もしも…



曲がった道の先が


見えていたのだとしたら



苦しむことも


きっと ない。





10年前から


曲がりくねり出した道を




なんとか 自分の足で


ゆっくり


ゆっくり



歩いて来た。





正しい道ではなくても




険しいのぼり坂を


避けたのだとしても






前に 進みたくて







私は ひとり





歩いて来た。









「リエだけが お客さんに
声かけられてるわけじゃ
ないんだよ!?」


「わかってるよ…」



「みんな 上手にかわして
逃げてんの! 私達は
仕事しに来てるんだから…」



同僚で 幼なじみのC。

私は Cの紹介で
この会社に 入社した。



入ったそばから

会員さんや 出入りの業者に ちょっかいを出される私

わざわざ 相手の所まで
出向き

「うちの会社
そういうの ご法度なんで!」


と ピシャリと言うC。




私は Cにも頭があがらず

反論なんて



したことなかった。




しつこい お客さんの時には

確かに 上司からも注意された


「ああいう男達は 君と政治の話しをしようなんて 誰も思ってないよ。 わかるだろ?」


そう言って

客側に やんわり 手をひくように 間に 入ってくれたりした。




だけど…




No.206 11/10/28 13:50
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 205

「一樹は

そんな男達とちがう!」


「リエ…」



初めて見る 私の剣幕に

おどろいている。



「飲みに行こうだの

ご飯 一緒に食べようだの

そんな軽い感覚で
声をかけて来る奴らと

一緒に しないで!」




Cとは 週1で

必ず 会社がひけた後
食事を 一緒にしていた。


『〇曜日は Cさんに
リエさん 返します!』

Uちゃんが
よく 言ってたっけ…



『だけど リエさんとCさんが 友達同士って…

納得いかないっす』


これは 社内のみんなが
思ってる(笑)



不良と 真面目ちゃん。

昭和の言い方をすれば
そんな感じ…







「本気… なんだね リエ…」


「 … 」


「R君は…


どうするの… ? 」





「C…


なんだかね…

Rとの未来が
私には想像できないんだ…



それなのに

一樹との 将来は




青写真が 見える。」



私は 泣いた…




「摩耶ちゃん… だね」





Cは 母子家庭になった私達に

精一杯の力を くれた。

摩耶のためにと
通帳をつくり
積み立てまで してくれてた。


幼い頃

リエの家が 羨ましかった。
うちは貧乏だったから…

摩耶ちゃんには

私みたいな思い させないで
って言って。





C…


私また






曲がり角だよ…



No.207 11/10/28 16:18
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 206

自動ドアが 開くと


対面が ガラス張りの

エントランス




並んだ自販機に


エレベーター…






「大きいマンションだね…」


「ちっちぇ~よ(笑)

こんなとこ(笑)」





家賃3000円の

我が家に比べたら…



だ。








一樹は いいとこのボンボン。


手のつけられない

やんちゃ坊主の次男坊。



バツイチ。





ちょうど

私と雄太が離婚した年に


一樹も 離婚している。


あまりの 女遊びの酷さに

愛想をつかされて…



摩耶と同い年と
その下にもう1人
2人の男の子は

奥さんが連れて行った。

可愛いと思ったことは




1度もない

と言う。


元の家族が
どうしているかなど


いっさい 気にならない。




ある意味




雄太より酷い(笑)





そんな風来坊を 見兼ねた
一樹の父が

彼に 買い与えたマンション。









私は 今日





ここに来た。









エレベーターを降りると


部屋までの 外廊下から

大きな川が 見渡せる。





もうすぐ


11月も 末にかかる。






シンと
冷たく澄んだ空気と



川の流れる音…










私は その時




例えようのない何かを













強く感じた。




No.208 11/10/28 20:32
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 207

「わぁ~ お風呂も綺麗~…」


(展開早すぎでしょうか(笑))



「普通だよ…」



家賃3000円の

コンクリートむき出しの
うちの お風呂に比べれば…



だ。








「ホテルみたいだね~♪」




終始はしゃぐ私にたいして…




一樹

終始 赤面のまま硬直。







それでも



濡れた身体や 髪を

赤ちゃんにするように


優しく 優しく

扱ってくれる。










「愛してる…」






ベッドに入っても


ずっと


『信じられない』

を 繰り返していた彼が




優しく ささやく。



















当たり




だった。









40年生きてきて


1番の





当たりだった。








受け身のセックスを好む私には



一樹は

最高の パートナーだった。







私は

ただ 快楽をむさぼり




「愛してる…



絶対に 離さない…




リエ…



リエ… 」




彼の 声に酔いしれる。







私は


彼の声が 好きだ。







「私も…




一樹…



愛してる… 」







まだ





愛しては








いないくせに…



No.209 11/10/28 20:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 208

「ナカナイデ リエチャン!」



プーさんのぬいぐるみが


私の目の前に

ぴょこっと あらわれた。



「だって…


ごめん。


私ってば ずるい… 」







自分の汚さに

後から 後から



涙が 流れる…







「ズット マッテルッテ

イッタデショウ!



リエチャン ナイタラ

ボクモ カナシインダヨ…!」



プーさんが 言う。






「ありがとう… 」







リビングのソファー



私の肩を抱いて

一樹が言う。




馬鹿デカいテレビ画面には

浜崎あゆみの DVD…





「俺 もし今

アユに『つき合って』って
言われても 絶対ことわる…」


「中学生か(笑)」



「本気だって!!


リエの方が



何百倍も 可愛い… 」







そのまま キスをして




もう





1ラウンド。











帰りたくないな…












思ってしまう




私が いた。




No.210 11/10/28 22:35
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 209

「もしも~し!」




R君が


また 私の目の前で 手を振る。



そして

後方を 何度も大袈裟に見る。








はぁ~…




ひどく イライラした。



ごめんなさい。

自分勝手。




しかも

何も ふれてこない。




さらに イライラする。


ごめんなさい…








摩耶は 敏感に


そんな 私の様子を感じてる。





「ママ チャオ
こたつに入りたいみたいだよ」


「チャーちゃんなんですか~」

「聞かなくても

チャーちゃんだよ(笑)」


2人で 笑っている。





R君は

アドレスに チャオの名前を入れる程 チャオが好きだ。



もしかして


私より 好きかもしれない(笑)


















堕ちた



女でも







さすがに この状況は



キツい。












カウント




ダウン










かな。










「…パパ! 伊豆


もうすぐだね♪」


「早ぇ~なぁ~… 」
















ちっとも










早くない。




No.211 11/10/28 23:11
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 210

会えば


つらくなる別れ。




今まで

一樹だけが
感じていた それを





抱かれた日から 後は





私も



感じるようになった。







バイバイ…



したくない。







だけど




摩耶が 待ってる…









つらいな。












「俺 絶対

この人を幸せにします!」



仕事帰り


小一時間ほど

必ず寄るようになった


和風レストラン。




注文を取りに来た

パートのおばちゃんに


宣言する 一樹。





「ちょっと💦やめてよ💦

すみませんっ💦」



「お幸せね♪」


おばちゃんが笑う。









幸せ…






なんだろうか 私。








摩耶に
早く会いたいと言う

一樹。





今は


無理だと言う 私。








すぐに

過ぎてゆく 時間…









車を積む

一樹の 大きな積載車。


自分の車が あたたまるまで


必ず
その大きなトラックの
助手席で



30分。






キスをして




途中までして(笑)









さようなら。






助手席から 降りる前に

私は ため息をつく。




「ん?」



「私 右折 苦手でしょ?


ここ出て すぐの道路
大きいんだもんっ

超 こわいんですけど(笑)」






「…大丈夫!!」




一樹が








笑った。




No.212 11/10/29 01:14
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 211

やだなぁ…




バイバイも やだけど…





今は

それどころじゃない。




私は 本当に運転が苦手。


どこまでも暴走しそうだよね…



と 人に言われるが






外見で 判断してくれるな…





ノミの心臓。


右折は とくに
対向車が迫って来る感覚が
わからなくて困る。


ぶつかって来るんじゃないかと

心臓が バクバク鳴る。





目の前に見える

一樹の
大きな積載車の テール…




余韻にも ひたれない。


もうすぐ

右折が 近づいて来る…






パンと短く
一樹がフォンを鳴らす。


彼は このまま直進だ。



軽く 手をふる私…






幸い 右折レーンには

私しか いない。



後続車に
迷惑は かけなくて済む
な…








なっ!!







ナニっ!?!?








急ブレーキの音


クラクションの嵐





対向車側の 二車線をふさぐ






一樹の 大きな





積載車…









運転席の窓を開け


ニッコリ笑って

私の行く道を




手で 指し示す彼。





鳴りやまない






クラクションの嵐










頭に











花が 咲いた。





No.213 11/10/29 03:02
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 212

恋のはじまりなんて




実に 単純。








10年前



私を 地獄にたたき落とした


雄太と女の

恋のはじまり…










『キスして』


って言われたから



キスしたら…










花が 咲いたんだって。








私は



そんな単純なはじまりの

恋愛に




ふり回されて しまったんだ。





自分を


こわしてしまう程に…




















アドレナリンだ?


ドーパミンだ?





ふざけるな!!










私は今






恋を…


してしまったじゃないか!












お花畑の中



携帯が鳴った。







『ねっ


大丈夫って言ったでしょ?』



いたずらっぽく


彼が笑う。




「危ないことしないで!!」




すごく


すごく




嬉しかったくせに…








かっこいい…






って


思っちゃったくせに…






泣きながら



怒ってるのも








アドレナリンだか


ドーパミンだか





わけのワカラナイものの




せいなのかな…




No.214 11/10/29 04:06
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 213

もう 無理だ…






私には

2人の男に 愛を注ぐ



なんて事は


できやしない。







ずいぶん 長い間


誰かが そばにいても

雄太に抱かれつづけた私だけど…




雄太への愛情が


自分で手放しておいて

手に入らなくなった者への
確かな愛情が



あったからこそ…



なんだと思う。











R君に…



愛はない。



そして


一樹は





手に入らない人じゃない。





おのずと



コタエは 見えてる。








「摩耶…」



「ん?」




「摩耶

パパが かわいそう…


って 言ったよね?」


「うん…」





「もう…

ママ 馬鹿な事しないね」




「 … どういう意味?」





「パパと 別れる」



「どうして そうなんの!?」





コタツに
仰向けに寝転がってた摩耶が
ガバッと 跳ね起きた。



「おかしいんじゃないの!?
ママ! 後から出て来たのは
あいつでしょ!?!?

あいつさえいなければ
なんにも起きなかったのに!」



「だって…

ママ パパのこと…




好きじゃない」






隔たれた自分の部屋を持たない摩耶には 身を隠す場所もなく



私の顔を


見たくなくても






コタツにもぐるしか




道がなかったようだ…




No.215 11/10/29 12:15
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 214

もうすぐ12月…


郊外にある 私の会社は
構内の敷地が 果てしなく
広い。


何百台という数の車が

整然と並んでいる。


買い付けに来る お客さんは

目当ての車を 事前に
チェックしに来たりする。


そして 私の部署は

こうして 外へ出て
車まで 足を運ぶ事が多い。


月曜日など ほぼ 外で仕事をしているような ものだ。


かじかみそうな手に
息をかける…




「おうっ! クニワケ!」


私を 近辺の 有名な飲み屋街の名前で呼ぶ 社長だ。

「いらっしゃいませ(笑)

〇〇です(怒)(笑)」


「い~んだよ おまえは
クニワケで(笑)(笑)!」

「(笑)いい車 ありました?」

「ね~よ! おまえんとこ

ゴミばっかじゃん(笑)!」


「ひっど~い(笑)…」



…!






なんだ?



手首をつかまれてる!

引っ張られてる…



一樹だ。





驚いた顔の社長…




引きずられるみたいに

去ってゆく私を 見つめてる。


仕方なし

笑顔で 会釈しといた。



怒った顔で
手首をつかんだまま
ズンズン歩く 一樹。


「ちょっと 一樹!痛い!」

ピタっと立ち止まる。



「ヘラヘラすんな!!」



… ?



「俺以外の 男と

ヘラヘラ 笑うな!!」



「 … 仕事だよ。」



「ここは飲み屋じゃね~だろ」






少し…




めんどくさいと思った。



No.216 11/10/29 12:58
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 215

「よ~~~く

考えた方が いいっすよ…」


大勢いる 女子事務員。

タバコを吸うのは

Uちゃんと私だけだ。




肩身のせまい私達は

よく

火曜日以外使われていない
2階のトイレで
タバコを 吸った。


これまた 中学生か(笑)





「ヤキモチやかないRさんと…


やき過ぎる社長…



どっちもどっちもっすね…」



Uちゃん

それを言うなら
『どっちも どっち』




「私 寂しがりじゃん(笑)?

Rとの つき合い方は
慣れたつもりでいても…

寂しかったんだろな 」


「リエさんは
Tさんの 異常さに
慣らされちゃったんですよ」

「だよね(笑)」




「選び間違ったら 大変っすよ! 一生の事なんすから…











先に行ってていっすよ」



「なんで?」



「うんこ」







自由だな Uちゃん。









私は トイレを出ると


事務所に向かうため
ひと気のない 食堂を 突っ切る…




優柔不断なくせに

制限される事を嫌う
自分の性格。




一生の問題か…



「きゃっ!」


また ギュっとされた。

「一樹…」

「ごめん…」















やっぱり 好きだ。



No.217 11/10/29 13:42
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 216

「はい!プレゼント!」

いつもの 和風レストラン。



テーブルの下から
取り出したのは…





「寒くなって来たからね♪」


私と摩耶の2人分

ピンクのトレーナー…





しかも
ナイキのロゴ入り(笑)

最近 音沙汰ないなぁ…
そう言えば。





「ありがとう。」



「結婚したら
仕事やめてね。リエ」








「俺と一緒に

店 やろう! なっ!」









… 考えられなかった。









私は 会社が大好きだ。


辞めるなんて…







考えられない。









天秤にかけるものが


またひとつ






増えた。








「すぐに…



というわけには いかないよ」






また








先延ばしだ…



「わかってるよ(笑)」






待って





待って





待ってて…










待たせてばかり…








ずっと ずっと

私の知らない 長い間も

彼は 私を 見つめてた。


『火曜日が楽しみで

前の夜は 眠れなかった』

と 一樹は言った。


私の顔を 見ることだけが

生き甲斐だったと言った。




生きてて よかった









一樹は 言った。








携帯が鳴る




R君だ。











ケリをつけよう。


ひとつずつ…



No.218 11/10/29 16:46
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 217

店の外で


電話をとった。





ガラス越しに

一樹が




見える。






「はい…」

『リエり~ん♪』


「…うん」


『あれ? どしたの?』

「 … 」


『なんだか 陰気くさいんですけど~~~~(笑)(笑)』


「 … 」



『まぁ いいや。

今から行くね!何か欲しい…』


「別れて」


『え? かぶるなよ~

なんか言った?』



「別れてください」




ドクドクと

心臓が鳴る…





『 … なに 言い出すの?』



涙が ボロボロ ボロボロ

流れはじめた。






「別れて…

お願い ダーリン…」



『突然なんだよ!?

理由は なんなんだよ!?』



「好きな



人が いる…」



私は かすむ目で

ガラス越しの一樹を見る



彼は


私に 気づいていない。


ただ

電話の長い私に


イライラと





しているんだろう…










『この間 言ってた客か?』


「 … 」


『会ってたのか!?!?』



泣くしかない…



『今


一緒なのか…?』











『とにかく 今から行く。


会って話そう…』






電話は



切れた。















私は

立っている事が出来ず



その場所に へたりこみ






大声で




泣いた。




No.219 11/10/29 19:11
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 218

泣きはらした顔…



テーブルに戻った私に

一樹は おどろく。




無理矢理に

笑顔をつくろうとしても


うまくいかない。




R君と別れること


私が つらがってると

思われたくなかった。





「どした…?」






「『別れて』って言ったよ」

極力 明るく言った。




「え… 」







見たことのない表情。



怒っているようにも

見える…





嬉しく



ないの?








無意識に 私は


一樹の喜ぶ顔を

想像していたんだろう。





「それで


… なんて?」




「会って話そうって…」


「会うな!」


一樹…





「そういうわけには

いかないよ…」




「会えば必ず 情が出る!

別れられなくなる!



それぐらい…



俺にだって わかる…」





「最後ぐらい

思う通りに してあげたい」



「俺も行く!」


「これ以上!!





傷つけないであげて…


だって


あの人は






なにも






悪くない… 」













『おまえは



何も

悪くない



悪いのは 全部 俺だ…』










10年前の


雄太の言葉が




私の

身体の中を








通りぬけて行った。




No.220 11/10/29 19:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 219

信じてて。



必ず 連絡する。








私は そう言って

家に向かった。


(右折しなくても済む
ルートを見つけた(笑))









「ただいま」


「おかえり~」



摩耶は

中学生になってから

少しずつ


私が会社に居る時間

かつての あの家へ
行くことを やめて行った。

そして今は

もう行ってはいない。





後から 聞いた話しだが

義弟が あの家にお嫁さんをもらい 女の子を授かった事で

摩耶は


自分の役目が 終わった

と思ったのだそうだ。



学校へも

行っていない。



担任が まめに自宅へ

勉強が遅れないようにと

教材やプリントを
運んでくれている…



受験も 迫っている。



がんとして
進学を拒否する摩耶にだけ

私は 途方にくれていた。



もちろん


R君は


そういう摩耶を

よく思ってはいなかった。


『高校だけは 出ておけ』



しつこい程




言っていた。









「摩耶…

今からパパ来るけど…」


「うん…」



察したんだろう…






もう どうにもならないと。









「あたし 外出てようか?」







砂利にタイヤがきしむ音と
エンジン音…



聞き慣れた その音は





もう 大きくなっていた。



No.221 11/10/29 20:27
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 220

家に入って来た彼は


当たり前のように







いつもの場所に座る。







「あたし
出てようか?ってば!」



口火をきったのは

摩耶だった。




「いいよ摩耶

ここに居て…」



R君が言う。




立っていた摩耶が

しぶしぶ すわった。




合わせるように


私も 腰をおろす…






「本気なのか?」



うなずく

私。




「 … 会ってたんだな」


「ごめんなさい…」





「俺の…


何が いけない?」


しぼり出すような声。




「なにも… 」


言いかけて ハっとする。




悪いところは何もないと

言われる事の つらさ…





私が





1番 知ってるじゃないか…







「頼む! 言ってくれ!」


泣いていた。






「あの人は…


私を



自分の世界に
関わらせようとするの


仕事場…


プライベート…



みんなに 私を自慢する。




嬉しかった。


自分が認めてもらえてるって

すごくすごく嬉しかった… 」




言いながら 気づいていく

自分の気持ち。




「ダーリンは
5年も一緒にいて

私と摩耶を

誰かに会わせようとしてくれた? もしかして お母さんですら

私に子供がいること
知らないんじゃないの!?」




責めはじめると

とまらない言葉…






私は こんなにも


彼に



不満を持って







暮らしていたんだ…




No.222 11/10/29 21:04
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 221

「母ちゃんは


知ってるよ…

おまえに子供がいること」



今まで


どんなに頼んでも

『おまえ』
と呼んでくれなかった彼…







最初で




最後だ。







「母ちゃんしか いない家だ…

結婚したい人がいるとは
話してあった


もちろん 摩耶がいる事も…


おまえが 親と一緒に暮らすのは嫌だと言うから 話さなきゃ おかしいだろ…? 」




子供がいなくたって

同居はごめんだ…


と 少しトンチンカンな事を

考えてしまった。




「結婚しよう リエ… 」





「今すぐ



結婚しよう リエ… 」



「遅いよ!!!」



私も泣いた。


悔しくて 泣いた。



「こんな事がなければ

もっと ずっと


ずっと ずっと ずっと ずっと…



先延ばしにしてたくせに… 」






私は 早く




結婚したかったんだ…






また


自分でも知らなかった

真実が



見えた。





「直すから!!


俺 直すから…



おまえが嫌だと思ってること

全部 直すから!!!」



彼は 私の腕をつかみ

強く握って離さない…





冷静にさせなければ

と 咄嗟に思った。




「摩耶はね…


ダーリンのこと

大好きなの… 」





摩耶が




泣き出した…。




No.223 11/10/29 21:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 222

「こんな事してる私に


パパが かわいそう… って

ママやめて…



って…」




「俺だって

摩耶が 大好きだよ!!」



大声で 泣き出す2人…








また…








私は 鬼だ。










胸が痛い






痛い

痛い


痛い…














大きい声が聞こえると

なぜか


私を噛む チャオが





唸りながら

何度も 私に飛びかかる。



「痛いよ チャオ…」


興奮しているチャオを

私は 抱き上げ



ゲージに入れた。







立ち上がったことで

高ぶっていた気持ちが



少しだけ




静かになった。






『もう 終わりにするんだ』










「だけど…


好きになってしまった気持ちは




もう



変えられない。」











「 わかった… 」




彼が 立ち上がる。








「俺の 荷物 出して…」




私は そのまま


いつも旅行に使っていた
彼のバッグに



下着や 部屋着を

詰めはじめる…




「ほんとに 入れるんだ…」






彼は 賭けたのだろう。

その言葉に…




泣き虫で 弱虫の私が


冷静に

自分の荷物を
詰めるわけがないと…





『無理だ』

と 泣き叫ぶ私を



強く


強く 求めて…



No.224 11/10/29 22:20
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 223

彼は





出て行った。







摩耶の頭を


ポンっと
ひとつ優しくたたいて

「幸せにしてもらえよ」



と 言って。











玄関で 靴を履き

私に背中を向けたまま




「修善寺…

キャンセルしておいてね」




と言い残して…


























何も…








考えられなかった。













どのくらい



時間が過ぎたんだろう…


しばらくすると


摩耶が

鼻をかむ音が聞こえた。




私は 母親だ。






摩耶の

気持ちのケアを



しなくちゃ だめじゃないか…








…玄関に

座りこんだまま



立ち上がることが出来ない。









「ママ 大丈夫?」



摩耶が






私を 心配してる…








「摩耶…



摩耶…





ごめんね…


摩耶… 」




私達は


また ひとしきり

玄関で 抱き合って泣いた。







女は



泣くことで

いろんなものを捨てられる。




私達は

突然 笑い出した。





「チャオってば

空気読まないよね…」


と言って

泣きながら 笑った。








そして

摩耶は

勢いよく立ち上がると





「ママは悪くないよ。


悪いのは 全部 あいつ…」





と言った。




No.225 11/10/30 00:24
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 224

その


全部悪いあいつ


の言う事は



本当に よく当たる。







「全部 終わったよ…」


そういう私に



『あまいよ リエ


絶対に 戻って来るから …



今度こそ

絶対に会うな!

電話も出るな!

メールもシカト!


『かわいそう』
と思っちゃダメだ。


い~い?

盗った人間が1番悪い。


それは 俺も認める。



だけど

盗られる方も悪いんだ!

忘れないで… 』





そう


一樹は 言った。








今は

悲しい気持ちで

いっぱいの私は



なんだか少し…




冷たいな




と感じた。











あたりまえか。





自分の女が 男と別れて



なぐさめる





バカは いないよな。



どこまで

自分勝手な女だ…






あの人は



狩りを している。


最善の方法を考えてる。



捕らえた獲物の気持ちまで

考える



わけがない。







そうか…



私は




喜んでほしいんだ。

一樹に…



嬉しい



って



言ってほしかったんだ。





こんな思いして

こんな痛い思いをして

別れた事を



全部


一樹のせいに







していたんだね。




摩耶と


同じように…












そして


そんな私の想いを

さえぎるかのように





やっぱり





電話は 鳴ったんだ。





No.226 11/10/30 01:17
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 225

『出るな! シカトしろ!』





一樹の声が


よみがえる。






私は もうすでに


彼の
指し示す方向を見るように


運命づけられて

いたのかもしれない…








やめて…


やめて…






鳴りやむと すぐに

携帯が鳴る。



そして



メール…




『この5年は

なんだったの?』


『一生 一緒にいると

約束したのに…』



『裏切られるなんて

思ってもいなかった』





R君は いつも

Uちゃんの別れた彼が
彼女に しつこくする度

「未練がましい」


と 嫌悪していた。


T君が
私につきまとった行為も
彼は 本当に憎んでいた。


去り際の醜さを

彼は いつでも



ばかにしていたのだ。






自分が


その位置に立つ日が

来ることも 知らずに…







一樹は 電話を切ってから
ずっと

私とのメールを

つなげている。







そして やっと



『ありがとう』






と 言ってくれた。






眠れるわけはないが



私は 目をとじた。








傷つけたことに

涙が とまらない…




そして


かつて 傷ついた自分を思う。








明日から 12月。



まだ暗い

朝方4時…







玄関のドアが


強く



たたかれた。



No.227 11/10/30 03:32
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 226

翌日は

仕事にならなかった…







よく

傷つけられた方より
傷つけた方がつらい

などと聞くが


そんなの嘘だ…


と ずっと思っていた。









人のいない

静かな会場。



大きな映画館程の広さはある
ここに

ひな壇のように並べられた

テーブルと椅子。


真正面の 1番低い場所から

そびえ立つ壁には


車を映し出す


巨大な モニター画面。









「泣きたいの

ずっと我慢してるっすよね…


リエさん」








給料泥棒ズは

今日は ここに居た。







「Uちゃん 前の彼と別れた時

『かわいそう』

って 泣いたでしょう」





私達は 次のオークションのための チラシを 各テーブルに 綺麗に並べていた。



一応 仕事はしている。









「あの時 正直 わからなかった…

Uちゃんの気持ち。

『かわいそう』って
むしろ失礼じゃないかな…


とも思った」




Uちゃんは


黙って聞いてくれてる。




「だけど…

今なら わかるんだ。


『かわいそう』

って思う気持ちが…


どんなに 痛いか苦しいか…


よく…


わかるんだよ…」






「泣いた方が いいっすよ…

リエさん」






「Uちゃん



Uちゃん… Uちゃん…」










私は 彼女を呼びながら


子供のように







泣きつづけた。




No.228 11/10/30 04:53
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 227

ドアを 叩きつづける彼…




「ダーリン やめて…!」



裸足のまま

ドアの前に 立つ私





「リエりん…!

リエりん…


開けて!




ここ開けてよ… 」






ちがう涙が



また


流れ出す。




「だめだよ ダーリン…


開けられない…!」



「なんで!?

俺のこと
そんなに 嫌い!?」

「嫌いじゃないよ!!」


思わず



そう言っていた。




「じゃあ なんで?


なんで




俺じゃだめなの…?」






5年前…




T君も



同じ場所で

同じことを言った…






『なんで 俺じゃ


だめなんだよ… 』



ボロボロと 泣きながら…







いつの間に


私は こんな



図々しい女になった?






人を選ぶなんて…










選ばれたくて


頑張る人が いるからだ。




私は比べ




そして選ぶ。



いらない方を







捨てて…








イラナイ女だった私。



選ばれなかった私。







捨てられた






私。





「ごめんね

ごめんね ダーリン…






わからない…


わからないんだよ!」


「リエ… 」


「誰が好きかなんて


わかんないんだよ!!」


「俺 待ってるから!!」



「 …え? 」



「ずっと待ってる」








「俺んとこ

帰って来てくれるの


ずっと 待ってるからね…」











私を おぶって

病院まで走った彼…



旅行のたびに

私の親へも お土産を買う彼…





いつも


笑ってた 彼…









冷たくなった足に


いくつも


いくつも




涙は おちていった。




No.229 11/10/30 05:43
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 228

「うお~!! 社長!!
ビックリしたぁ!!!」




会場の 出入口あたりで

Uちゃんの 大きな声。





一樹だ。




わざと大きな声で

私に知らせてくれてる。




急いで 泣くのを やめた。










「社長 いったい

いつ仕事してんすか!?」



今日も 失礼な言葉で

彼を ひきとめててくれてる。




ありがとう。Uちゃん。





1番低い場所に いる私。




1番 高いとこにいる一樹からは 絶対に 顔は
よく見えないはず…



私は そこから 手をふった。



手をふりかえす彼…











なんだろう



この感じ。







「うるせ~(笑)バカ!

ここにも 仕事しに来てんだ

俺は!!(笑)」




人が 大勢入っていない会場は

声が 反響する。





「まったまた~!!(笑)


あっ

よかったっすね♪社長♪」





そこから先は




聞きとれない…








部外者の一樹には


使われていない会場を

下まで おりては
来づらいんだろう。



聖域みたいなものだから…




「1回 車 見てくんな~!!」

上から一樹が叫ぶ。



「うん!

行ってらっしゃい!」



手をふる 私。







また


妙な 違和感を感じた。





とにかく 今のうち

メイクを直そう。




泣いていたなんて



絶対に


絶対に







知られたくなかった。




No.230 11/10/30 16:57
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 229

妙な違和感の原因。



Sとの電話で わかった。





一樹と つき合うようになってからは 友達との電話も

ままならない…


私は わずかな時間の隙間をぬって Sに電話をかけた。




『やっほ♪

… って

あんたからの電話は
とりあえず恐ろしいな(笑)』


「(笑)元気?」

『(笑)変わんない』



Sは すったもんだの末
高校生と別れ

今は
2まわり以上年上の
パトロンを持つ身…


『何があった?』

「ごめん!S!


Rと…

別れた。」




彼女は

予想していたと笑った。

私の愛情の期限は

5年なのだと



笑った。




今の彼も


きっと 5年後に飽きて



あんたは 捨ててるよ…








と 豪快に笑った。









「もうすでにね S…


なんか変なんだ 私。




もう 後ろめたいこともない


今まで以上に

一樹のこと



愛せるはずなのに…」






『… あん時と

同じでしょ。』







Sは



私達が

高校3年の秋の話しを



はじめた。




No.231 11/10/30 17:36
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 230

「1位! K高校!」


アナウンスが
ホールに響きわたる。




客席に 固唾をのんで結果を待っていた 高校生達の波から

悲鳴が あがる。



立ち上がり 肩をたたき合い
抱き合いながら 歓喜の涙を流す ひとつの大きな波…





私は そんな大きな波に





おしつぶされる。









終わったんだ。








私の











『堕天使』












市のコンクールを

1位で通過した私は



おごっていた。




県も1位



そして







全国でも きっと





頂点に立つ。











初めて感じた


絶望。











ホールのロビー


いつもの様に

円陣をくむ私達。




顧問が言う。


「生徒審査は

1位だったんだそうだよ…」




そんなもの関係ない。



次に進めなければ








ここで 終わり。








私は 立っている事が出来ず

床に 突っ伏す。



悔しくて 悔しくて




悔しくて






床を 掻きむしり


頭を きちがいのように
振り回し





泣いた。




No.232 11/10/30 19:16
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 231

あの頃 私は

3度目の正直で
雄太と つき合っていた。


そう

『いつでも リーが
可愛くいれますように』

って

鏡とブラシを
プレゼントされていた頃…




必死で

演劇部の活動を する私。

一緒に いたくて いたくて
しかたなかった雄太。



しっかりとした 身体の関係(笑)を持っていた私達には

1分1秒が
惜しい時期だった…



だから


幼いながらも

私は雄太を


とても 愛していたんだ。











『堕天使』が




私の 生活から消えた。







それは


雄太との

これから始まる
たくさんの幸せな時間の
はじまりだった…







はずなのに。





バランスを失った私は


雄太の価値さえ

わからなくなった。





消えたものの方へと



天秤は






かたむいた。
















繰り返される日常。



明日がある 喜び。







そこにあって


あたりまえのもの。








戻らない時間は


何よりも 愛おしい。




失ったものは


綺麗に見える。









待ってくれていた者への

愛を

見えなくする程に…



No.233 11/10/30 19:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 232

『今から行くね』



短い 短いメール。





そんな彼からの



ながい





ながい

メールが届いた。





『情けないね。俺…


摩耶に あんなに
「学校行け 学校行け」
って言ってたのに

身体に力が入らなくって
何もやる気が起きなくて
もう
2日も仕事を休んでる。

今 すごく反省してるんだ。

ヤキモチをやかない俺。
パチンコばっかしてた俺。

全然 リエりんのこと
大事に してなかったって…


寂しい思いを させてたんだね


長い5年だったけど
あっという間の5年。

たくさん旅行に行ったね。

2年前の福島のホテルでは
カウントダウンパーティーのビンゴで リエりん1等賞を当てたよね! あれは すごかった!


楽しかった。

全部 楽しかった。



次の正月も 3人で

伊豆で 迎えたかったです。



俺 ずっと待ってるからね!

必ず 戻って来てくれるって
信じてる。


大好きな リエりんへ。』













痛かった…



本当に 胸が…







張り裂けるかと思うくらい



痛かった。

















傷つけた







罰。




No.234 11/10/30 20:14
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 233

「ダッヂの社長と お酒呑んでるなんて なんか変な感じ!」


Cが 笑う。


「ま~ 呑んでんの Cさんと リエだけだけどね(笑)!」


ヤクザ顔の男は


牛乳が大好きな ゲコだ。



「あ そっか(笑)💦💦」


Cも 私と同じ

ビール大好きで ご機嫌だ。



一樹と 会わせたことにも

ご機嫌の理由は


あると思うが…





「社長…


摩耶ちゃんのこと

お願いね」



Cが 真剣に 頭を下げる。


「必ず 幸せにします」




一樹も 真剣だ。








かたくなな

摩耶の心がとけるまで



あと


どのくらいの時間が

必要だろう。




「会社には もうしばらく ふせてた方が いいよね…?」



従業員と 会員。




そんな ケース 今までない。







ふせる



とは言っても




いつ 自分の店の仕事してんだか わからない(笑)と 人に思われる程 頻繁に 私の会社に あらわれる一樹を


いぶかしく思ってる人間は



すでに 会社に



たくさん 居るわけで…





No.235 11/10/30 20:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 234

「リエさんって
ダッヂの社長と…

前から知り合いだったの?」




検査員の男の子が

車のチェックをしながら

私に聞く。




「え!?💦 なんで?」



「最近 よく一緒にいるな~

と思って…」


ボンネットを勢いよく閉める

「あっ!!」



「なにっ!?」

音と 声に ドキっとする。




「懐中電灯の電池切れてたんだ

リエさん 持って来て」









パシリかよ。











私は 最近

やたらと こういう思いをする…



男性社員で 知っているのは

Oだけだ。





一樹の 強引さに

ちょっと辟易する瞬間。


私の立場も

少し 考えてほしい…。








「リエ!」


来た…




「これ V自動車の社長にもらった。 みんなで食べて♪」




… 温泉まんじゅう。




なんて言って

これ 私 皆に配るんだよ…







「それと…


アドレス変えてね。

リエ。」

















はい?




No.236 11/10/30 21:48
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 235

Uちゃんほどに

一樹の性格を知らないCは


あの日

口を すべらせた。


酔ってもいたんだろう…




「私 人のことで
滅多に泣かないんだけど…

R君の

最後のメールは泣いたよね~」




… C!!!


シーっ!!!
(なんちゃって)

















聞こえないふりを

していたんだね。




それでなくとも

あの後 毎日


一樹といる夜 携帯は鳴った。




『かわいそう』


って 思っちゃだめだ。






何度も 念をおされた。






データを移行せず

携帯ごと取り替えてくれとも
頼まれたが

『めんどくさくなる』
という理由で 断固拒否した。







「アドレス変えて

着信は 拒否

電話帳からは削除。」



彼の狩りは

まだ 終わらない。






「摩耶…


いつ会ってくれるかなぁ



俺に…」










とても



気の重い













12月の 初旬だった。



No.237 11/10/30 23:48
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 236

R君が

私の生活から


姿を消したとて




伏兵がいる。






私達の恋は


一筋縄では いかないらしい…






「摩耶

ちょっと 一樹に


会ってみない?」




「 … やだ 」











「もうすぐ
クリスマスじゃん!

お金は いっぱい持ってるよ~
あの人。


好きな物

買ってもらえるし!」






言ってる私も情けないが

摩耶の 眉毛が




ピクっと動いたことも

見逃さない。






「バカじゃないの…」








うん…



ママは 馬鹿だ。










「プレステ…


欲しいんだよね♪摩耶♪」





「 … 」







コタツに もぐった。





笑ってるのかな?
















泣いて



いるのかな…?












知っているのは





コタツの中の



チャオ君だけだね…




No.238 11/10/31 00:24
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 237

定年を過ぎても


ねばりにねばって
仕事をしていた私の父親は

いよいよ 観念し



その位置を しりぞき


母とともに

実家へ帰って来ていた。



… とは言っても



実家の 真向かいに

ちょうどいい 平屋を見つけ


そこに2人で住んでいるのだが…




気性の荒い 兄嫁と

わがままな父が


一緒に暮らせるわけがない。





気兼ねなく 遊びに行けるので 私には 好都合だった。





私は 母に


一樹が 救急車で運ばれた日から ずっと 相談をしていた。




親には 隠し事をしない。





いくつになっても

甘えん坊である(笑)







「お母さん…


Rと 別れたよ」




「なんだろ…


いいコだったのに…」




「うん…」




「あの 救急車の人のせい?」





「うん…






だね… 」




母が

お茶を入れてくれる。






ふ~っと 冷ましながら

私は





10年前を 思い出す。







新婚さんの事故のニュースに


『幸せなまま死んだんだから

幸せかもよ』



と 恐ろしい事を言った

あの頃を…










「お母さん



私 結婚しようと思ってる」





「救急車と!?」








その通り。




No.239 11/10/31 01:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 238

「本日 Uちゃんち集合!

作戦会議っす!!」





「なんで?」





「社長~…

なんも いっつも2人でいなくたって いいじゃないすか…」



「そういう意味じゃね~けど」



「今日は エッチぬき!」

「何言ってんの(笑)Uちゃん」






摩耶のことで

煮詰まる私達に
(会社で煮詰まるなよ)


Uちゃんからの 助け舟。





あまえよう。




エッチぬきだけど。

(残念かよ)











「U 部屋綺麗だなぁ…」


一樹が 感心している。



Uちゃんちも 公営の一軒家だが 去年建てられたばかりの 立派なものだ。


もちろん 家賃は

うちの6倍ほど。




「Uちゃん こう見えても

綺麗好きなんだよ!」


「どう見えてんすか?」

「リエは?」


「聞いてね~し…」

Uちゃんが ぼやく(笑)



「私だめ~

掃除 超 苦手💦」


「リエの苦手なことは

俺がするよ♪」



「イチャイチャすんな!」



ゲキが 飛ぶ(笑)










「今日こそ突破っす!」


「…?」


「強行突破って

言いたいんだよ Uちゃん…」



一樹に こっそり

耳うちする。


「あぁ(笑)」













強行突破?



No.240 11/10/31 02:48
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 239

「いやぁぁ!!!!!」














初めて聞く


摩耶の悲鳴に






私は 青ざめる。













いつも通りの

Uちゃんちでの晩ごはん。



つづきの部屋で

ビールを飲み始める私達。


摩耶とIは

居間で 遊んでいる。


2人は 本当の姉妹のようだ。

Iは 摩耶を
「お姉ちゃん」と呼び

摩耶は Iのために

自作のぬり絵をプレゼントしたり 本を 読んであげたり

一生懸命 可愛がる。



Iが 赤ちゃんの頃からの
つき合いだ…


姉妹のようも

あたりまえかも。




いつも通りの風景…











そして






強行突破。










偶然をよそおい

一樹が やって来る。



かたまる 摩耶。




Uちゃんが 言う。

「摩耶ちゃん 大人は大人で飲んでるから Iお願いね!」


「…うん」


「閉めようか?ここ」


「…うん!」





Iが 何度も開けてのぞく。


摩耶は

背中を 向けたままだ。




一樹に 仕事の電話が入り

居間をぬけて 玄関にゆく時は


コタツに もぐる。




絶対に 顔を見ない気だ。










「んじゃ 俺

そろそろ 帰るか…」



ドキドキしながら


それでも 精一杯の優しさで





一樹は

「バイバイ」と


コタツから出た 摩耶の頭を








撫でた。



No.241 11/10/31 03:28
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 240

私は 呆然としていた…




「リエさんは 社長送って!」



一樹は






悲しい顔を


していた。








Uちゃんに しがみつき

号泣する摩耶の声を

聞きながら




私と 一樹は 外へ出た。









「一樹…」


「大丈夫!!」








「今

はじまったんだ…!」





私は



もう






この先など




考えられなかった。






「絶対 大丈夫!!」








そう言って




一樹は 帰って行った。













私の した事の



代償。







普通に暮らしていれば



負わせることのなかった







摩耶の傷。









女を 押し通した







馬鹿な母親の





結末。














一樹の 大丈夫を



私はまだ その時







信じられずにいた。




No.242 11/10/31 04:41
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 241

声と 喋りには

自信があった…







Q2のサクラのバイトを始める時 話したが…

今は その相手は電話ではなく



マイク。




私は

競りのアナウンスの仕事が

業務の中で 1番好きだ。




天職



とさえ 思っていた。




普段の声は

比較的低いのに

マイクに向かうと
2トーンほど 上がる(笑)




会場を 見渡す場所に 設けられた マジックミラー越しの ブース。



私は この場所も大好きだ。







そんな 大好きな場所で


今日は サボっていた(笑)






「今日こそ突破…


失敗でしたね…」



まだ言うか。




「すいません…」


「なんでUちゃんが謝んの!?

あの後 普通だったし(笑)
ビックリしたんだよ…」


「だけど摩耶ちゃん

『気持ち悪い』って
言ってたっすよ…」



それは


気持ちも悪いだろう…






「免疫ついたんじゃない(笑)」






私は もう


しばらく 一樹のことは

摩耶には ふれないでおこうと
決めていた。




「社長も…

へこんだんじゃないすか?


よってたかって

静かになっちゃいましたもん」



うってかわってだUちゃん…




「全然!
むしろハリキリ出したよ!」









そんな

一樹の頑張りが





意外な助っ人を




呼ぶことになる…




No.243 11/10/31 14:19
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 242

ハンターは

標的を変えた。



「俺 リエの お父さん お母さんに 挨拶に行きたい」



「話してあるし
それは別にかまわないけど…」


「明日」

「は?」


「今からでもいい」



いやいやいや。





いくら年寄りだとて

うちの親にも


都合というものはある。




「話しておくよ」






とにかく 一樹は


せっかちだ。


大事な事の場合のみだが…










携帯が 鳴った。


身体から離していた為
バイブの振動音が強い。




実家の 真裏に位置する
ビジネスホテル兼ラブホ。



たまに

わずかな時間 立ち寄る。








私は スルリと


ベッドから おりた。










雄太だ…




とらなきゃ

よけいに あやしまれる。







「はいはい」


『お~ 何してた?』



何してた… って










ナニしてた。







「友達と…

ごはん」



携帯を置いた場所が

比較的 ベッドから遠かったので あまり聞こえてはいないだろう…




とりあえず

だだっ広い部屋だ。








『おまえさ
摩耶のピアニカ(鍵盤ハーモニカ) とってある?』





なんとなく…




イヤな気持ちになった。






あっても 渡さない。




勝手につくった



摩耶の弟になんか








絶対 渡さない。








「あるわけないじゃん(笑)」


『だべな(笑)』











「…誰?」




「高校ん時… の


と…


もだち… 」







「… 早く


結婚しようね… リエ」




「うん…




愛してる…」















愛してる…




No.244 11/10/31 16:11
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 243

「ばぁちゃんのカレーが

世の中で 1番おいしい♪」




ママのつくった

カレーが食べたい…






あなたのオトウサンは

その昔


言っていたよ。




「ママのは しょっぱい(笑)」


「食べる物に文句言うな(笑)」


「意味 ちがくね?(笑)」




給料日間際は

いつも 実家でご飯だった。


手当ては 国からもらえても

雄太からは
一銭の養育費も 入らない。



そのくせ

ピアニカないか?


ふざけんな!












自業自得か。








「お母さん…


一樹
ここに挨拶に来たいって」

父は 耳が遠いので
ここの家は
テレビのボリュームが高い。


大きな声で 母に言った。


「摩耶は会った事あんの?」


全部 話してある…



首を横にふる摩耶。


この間の事は

会ったとも
みなされていないのか…





「んじゃ

ばぁちゃんと一緒に
会ってみよう!」




スプーンが とまる。




「そんな ヤクザ顔の救急車

ばぁちゃんも怖いけど


一緒に
会ってみよう♪摩耶♪」







摩耶が



「うん」
と言って笑いながら


また





カレーを食べはじめた。



No.245 11/10/31 20:44
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 244

本当なら

伊豆にいたはずの



12月31日…






本当なら


3人で笑っていたはずの

12月31日。







泣きながら

互いを呼び



きつく抱きしめ合う…







私達は 本当に


泣いてばかりいた。




どちらとも

一緒にいたいのに


同じ時間を



共有できない…







深い 穴の底は



2人でも寒かった。







摩耶…




摩耶…











「バイバイ…


また 来年ね」


泣きながら

手をふる私達。








雪のふる中


家へと急ぐ…





「なんもなきゃ

ここに居たのにね。



ごめんね 摩耶…」





修善寺の温泉で

はしゃぐ芸人達を観ながら

「別に いいよ」

と 摩耶が悲しく笑う。






「プレステもらったしね(笑)」


「摩耶…」




サンタクロースの プレゼント







一樹…









一樹…











年が


明けてゆく
















神さま どうか



来年は






3人で笑いながら




除夜の鐘が










聞けますように…。




No.246 11/10/31 21:57
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 245

「おまえ!
笑うと可愛いな!!」


酔っぱらった兄が

一樹を見て 笑う。



「よく言われます。

目が
お人形さんみたいだって…」


緊張している一樹は

返しが おかしい。



爆笑する兄。



父は ほぼ聞こえていない為

終始 うす笑いを浮かべている



こんな父でも

私が離婚した時は


当時住んでいた マンションの

10階のベランダに飛び出し

声にならない叫びを
あげたそうだ…



母から 聞いた。




そんな母は

チラチラと


摩耶を 気遣っている。




「ところでさ…

おまえ なんで
こんな女が いいの?」

失礼だぞ 兄。



「理想のひとです」

「これが?」

「はい」

「なんで?」


「俺は バカに見える

ケバい女が 好きです!」








兄 また爆笑。


「でも 本当に
バカじゃ困るんです!

リエは バカじゃない!」



情けなくなって来た…




「俺はリエになら

頭で タバコを消されても

笑ってられる
自信があります!!」


「おまえ バカだろ」

兄 ふたたび爆笑。


「たぶん」



なんだ この会話。





「一樹君 牛乳…」


「ありがとうございます」



「牛乳って!!」




兄が

とうとう


ひっくり返って笑い出した…



No.247 11/10/31 23:36
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 246

摩耶は…



思ったより楽しそうだ。


「で 一緒んなったら

どこに住むの?」


兄が 突然 核心にせまる。




「俺は…

今住んでるとこに

連れて行きたいです」







私は…


ここを


離れたくなかった。





友人がいて

会社も近く


なにより




こうして 親がいる。





それを

摩耶に伝えるのも


怖かったのだ。





摩耶は


不思議な顔を していた。



不機嫌な時は

面白いぐらいに 顔に出る。




この事については

何度か もめてもいた。



こちらに住まないなら

結婚もしないと言う私に

1度は 折れ


その方向で 考えてもみた。



ただ




一樹の店だ。





こちらから通うのは


あまりにも遠い。




恋愛中と


生活になってしまったのとでは



気持ちと身体の負担が 違う。


そのぐらい



私でも わかる。





「リエは


ここから 離れたくない…

って言います。


だけど 俺

リエや摩耶が
ここに来たい時は
必ず 連れて来ます。


毎日来たいのなら

毎日 連れてきます!


そのぐらいの覚悟は
あるんです!!」




そう言って







牛乳を 一気に飲み干した。



No.248 11/11/01 00:43
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 247

「摩耶の部屋も あるよ」



一樹が 言った。


「あたしの部屋?」







…え?



「うん!」






「あら いいね!

摩耶 いっつも
ちゃんとした 自分の部屋が欲しいって 言ってたさ!」



母である…




「洋間…?」



畳しかない 今の家には

懲り懲りなんだろう…


「もちろん!」



「床は?」


「カーペット …だな 」


「 … 」


「摩耶 何がいいの?」



「フローリング!」


「じゃあ
フローリングにする!!」






この人は…


引っ越すことに

抵抗は ないんだろうか。






ただ 今は



それよりも





摩耶と 一樹が 喋っている。





その事に


胸が いっぱいになっていた。








うまく



いくのかな…





このまま









光りの射す方に




歩いて



ゆけるのかな…









自分の 犯して来た罪






傷つけた者たち











私は





幸せになっても






いいんでしょうか…





No.249 11/11/01 02:15
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 248

「ちょっと休憩すっぺ!」








久々の登場。


チャラ男である。






「お疲れさま」


コーラを手渡す。




「サンキュっ」

ゴクゴクと飲み始めると



「今日の 日当」





一樹が言う。



「ただ働きか!?俺!?」





大工さん。


フローリング要員である。






「でも よかったな

ほんとに…」



「ありがとうね」





私は


心から そう言った。




「『死ぬ』とか言うしな(笑)

こいつ…」

「わ~~~っ!!」

「うるせ…」


みんなで笑う。




「もう少しだからな!

摩耶!」


「うんっ!」












あの日…







ここを訪れた時






感じた 何か。









今なら わかる。













「大工さん カッコイイね♪」


「摩耶ちゃんまで…




嫁になるか?」


「嫁 いるし(笑)」




「捨てるか」
















笑えないぞ チャラ男。




No.250 11/11/01 02:52
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 249

いい風が 吹き始めると



いろんな事が

流れにのる…





「ママ
あたし 受験する」


「摩耶…」







摩耶は


生活を 変えたがっていた。



私が 『いい』と言っても


学校へ行かない自分 は



やはり


後ろめたかったのだろう…







そんな摩耶に


一樹は


何も恥じる事はない

と言い



むしろ

引っ越すのに 好都合だ

と言った。




ただ 摩耶が

行きたいと思うのなら


どんな高校でも行け

お金の心配は するな




とも言ってくれた。





時期を同じくして


摩耶の親友の お母さんから

2人が

同じ高校へ行きたいと
言っている事


母子家庭への援助などを

教えてくれた。





「実は


結婚するんです…」


と うちあけた時




少し


誇らしい気持ちにもなった。





何もかもが



新しい。












1月…



初旬の事だった。




No.251 11/11/01 04:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 250

「マジすかっ!?」





「Uちゃん どれに?」



「全部っすよ!

摩耶ちゃんのことも



… 引っ越しのことも」





「Uちゃん…」



2人で 泣いた。






一樹は

結婚したら


私は 会社を辞めるものだと

思ってる。




私が 辞めたくない理由。




1番は…






Uちゃんだ。






この土地に

彼女を


おいて行ってしまうようで


引っ越しが決まってから

私は 夜な夜な

ひとりで



泣いた。






毎晩みたいに

一緒にいた。


会社のみんなからは

君らが結婚するべきだよね



って 笑われてた。








愛しき




相棒。








春休み 夏休み 冬休み…

Iの新学期が始まる間際は


毎回 お決まり




『リエさん 通信簿の

【家庭のトコロミ】んとこ

書いてくださいよ~』

の SOS。



所見だよ。

(トコロミも正しいらしい(笑))



『あいつと喋ってても

暖簾に窓越しっす(怒)』


…腕押し。




社内報を読みながら


『なになに…

【美味しい料理に…


… 舌 … 舌打ちをした】?』


舌打たね~し。

打ったの 舌鼓だし…











あぁ


愛しき







相棒。




No.252 11/11/01 14:23
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 251

「支店長!」



明日から

本社に出張の彼。



「今っすよ…!」




UちゃんのGOサインで

私は 支店長を呼びとめた。




「どした?」


「支店長…

いろいろ
ご迷惑おかけしましたが

摩耶…


高校合格しました!」


「よかったな~!!

そうか!桜 咲いたか!
おめでとう!!」


摩耶が不登校になってから

ずっと ずっと


私を励まし
応援してくれていた支店長。



本当に 嬉しそうに

そう言ってくれた。



「ありがとうございます!



… で

おめでたいついでに




もう ひとつ…」




「なんだ?」

不思議そうな


支店長の顔。



「私 再婚します」


「えっ!?」


「会員さんと」

「ええ~~~!?!?」



本当に


眼鏡の奥から

目玉が
飛び出して来そうだった…



「俺 知ってる人?💦」

「ダッヂの…


社長です…」




「あの ハゲ!?!?」



今 あかすが…





一樹は スキンヘッドだ。


「嘘だろ…


信じられない…

なんも気づかなかった…


みんな知ってんの?

俺だけ?

もしかして知らないの…」


「女の子達は

みんな 知ってます(笑)」


「あ~ そう… 」

放心している。



「しっかし

まさか あの 海坊主とね~…」




そういう 貴方の髪も






残りわずかですが。




No.253 11/11/01 15:20
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 252

「今 ここにあるものは


チャオ以外

全部 捨てて」





一樹が言う。




「本当は 下着の1枚も

持って来てほしくない…





ひとつで




いい。」










2月 中旬。




出逢ってから

わずか 4ヶ月じゃく。




私は


ここから 旅立つ準備を

はじめていた。







ここで暮らした 9年ちかく…



また 捨て去る方へと


気持ちが




かたむく。










ここの近所は


公営という事もあるが

なぜか

ほぼ 母子家庭。



集会所での 子供会の集まりは

いつも 酒盛りだった(笑)



雄太が結婚した時も


日記に 書きなぐった気持ちを



4人の子供を
ひとりで育てている

子供会の会長さんにだけ

うちあけた。




「いっぱい泣きなさい」

そう言って


胸の中で 泣かせてくれた。


「私だって…

強くなんかないんだよ」



彼女は言って。







大きな 大きな



たくさんの 思い出。






T君や


R君の





たくさんの涙…







いろんなものが


染みついた この家。








出てゆく その日まで


もっと




もっと





胸に



刻みつけておこう。



No.254 11/11/01 18:17
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 253

日記は



捨てた。








アルバムも







捨てた。








隠し持つことは


不可能だ。





それよりも


過去を

残しておこうとは



私自身が 思わなかった。










摩耶が生まれた

経緯を記すもの。



母子手帳

臍の緒




摩耶自身を 愛せても

生まれて来たルーツは



受け入れたくない。


そんな一樹の為に





それらだけ

摩耶の新しい部屋に
隠してもらう事にした。







ものぐさな 私の部屋からは

いろいろな物が 出てくる…





T君と行った 横浜の

人に 渡すはずだった
包装されたままの お土産。


摩耶と つくった

バレンタインの
かたいかたい(笑)チョコレート



R君と摩耶と

大騒ぎしながら
2,3度しか 使わなかった

わたあめづくりのオモチャ。


旅行先で 描いてもらった


似顔絵…








そして


それらを片づけながら


なぜか ゴミ袋からもれた






ハイウェイカードが





一樹の 怒りに触れた。




No.255 11/11/01 19:20
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 254

「ヤキモチ焼きは

なおんないよ…」




小さなキッチンのシンクを

ゴシゴシと磨きながら


母が言う。




「まめに掃除してれば

こんなに こすんなくって
いいのに…」

文句を言いながら。




「一樹 掃除もする必要ないって 言うんだよ…

出てくのに
綺麗にする必要ないって」





「飛ぶ鳥 後を濁さず」




私が ちょこちょこ
コトワザを使うのは

この母の影響だ。



そして Uちゃんが

音の響きだけで
それを真似てしまう(笑)













運転の下手な私が

高速道路を 使うわけがない。


あきらかに


旅行の なごり…




男の


なごり。





「今日は ひとりでいたい。」


ハイウェイカードを
見つけるとすぐに

一樹は 帰って行った。




「頼むから

俺に気づかせないでくれ…!」


と言って。





これから先を


暗示するような 出来事に


心が 沈む。





過去は 見えなくても

存在してる。




だから


今が あるのでしょう…?






『生まれた時から


一緒に いたかった』





彼が

ひとりになってから



届いた メール。



私は

こんなに



彼を


愛せるのかな…












「なんだろ これ?」


居間の片づけをしていた
母が言う。






私も ジっとそれを見る。








間違いなく







盗聴器の 送信機だった。



No.256 11/11/01 21:08
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 255

「マジすかっ!?」



(何度目だろう…)






「Tさんの
やりそうな事っすよね…」


「だね…」






母には

「なんだろねぇ」


と 言っておいた。



もちろん 一樹になど

話せるわけがない。




だけど なんと言うのか…






それが そういう類いの物だと

気づいた瞬間は


ひどくドキンとしたが



一樹といるようになって
私は

あまり 物事に

動じなくなった気がしていた。







何年も前のことだし



最近 音沙汰もない

T君にたいする感情には


何の


変化も なかったし。












「屁とか

聞かれてたんでしょうね~…」



心配してくれて

ありがとう。Uちゃん。





「そう言えば 結婚のお祝い

何が いいすか?」



「いらないよ💦なんも💦」




「大丈夫っす!!

会社からなんで!!」





では


と 私は


いつも 退職の人にしてあげるような 色紙の寄せ書きが欲しいと お願いした。


「金 使うもんも
頼んでくださいよ~

会社
辞めるわけじゃねんすから!」



ドキっとした。


「う… うん。


それじゃあ

ベンジャミンが欲しいな♪」












「便所民?」




No.257 11/11/01 21:48
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 256

「こういうケースは
初めてだから…


俺も びっくりしたけど…



とにかく おめでとう!!」




うすらハゲが

全部ハゲに 頭を下げた。





もとい。




支店長が

一樹に 頭を下げた。






「ありがとうございます。」


私達も 頭を下げた。







「辞めるわけじゃないよね?」


「辞めません!」



咄嗟に言ってしまった。

「よかった!」

と 支店長が言う。


「俺は辞めてもらいたいんだけど 急に そういうわけにも 行かないでしょうから…」




ブツブツと言っている。



「リエさんは 優しいし

言わなきゃないことは
ハッキリ言うし

素晴らしい女性だからね…」










実は その前の前の年


忘年会の席で

私は
支店長と大喧嘩をしていた…。



酒を飲まない同僚が車を出し

繁華街まで 出かけた。


二次会の場所に着くのが
駐車場が見つからなかったせいで 遅れた私達を
支店長が 責めた。


しかも 車を出した同僚をだ。



「てめ~!責める相手
間違ってんだろが!!!」


吠えちゃった。



「今 なんて言った!?
この野郎!!」



立ち上がる私達を

男性陣が 羽交い締めにし
引き離す…



「男前だ」

と 賞賛を受けたが


年明け
会社に出づらいのなんの…







「リエさんは 宴会部長だから 飲み会の時は 貸してね」






一樹が

しぶしぶ うなずいた。



No.258 11/11/01 22:16
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 257

その頃

応接室の外では


何も知らない 男性社員が

大騒ぎ。





なに!?



なんでっ「?






どういう事!?!?










「キューピッドは俺だ!」





若手の中では カゲの薄いOが




初めて 主役になっていた(笑)












平成18年 3月22日



別居・離婚から

ほぼ10年の月日が流れ




一樹と私は 結婚。

摩耶は 養子縁組。







私達は 家族になった。









お祝いにと いただいた

色紙と ベンジャミンは



今も 綺麗なまま ここにある。




ただ










並んだ色紙は 2枚。






もう少し







続けましょう…





No.259 11/11/02 00:01
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 258

「チャオ 低~くなってる…」



リビングの天井で回る

照明のまわりの

ファンの 長いプロペラ…




チャオには 驚異らしい。



「とめてあげたら?」


「チャー君♪ 大丈夫♪

こわくないよ~(笑)」





一生 ここで暮らすんだぞ。

慣れさせるんだ…



と 一樹。






一理ある。








彼の暮らしの方法は

ことごとく 私とは


対照的な気がする。








あの家を 引き払う時


粗大ごみの業者に

何度も「すみません」と
頭を下げる 私と母に




「なんで 謝んの?

この人たちは 仕事!」



「 … 」





屋根に ついたままだった

テレビのアンテナも



「登って はずして持ってけ!

金んなるだろ?
けっこう これ(笑)!」



「 … 」





あぁ



前途多難。







そんな 一樹も



毎日 私を 会社に送迎。





これは 仕事ではない(笑)












監視か。







おかげで 私は

毎日地元に戻っていても
自由に どこへも行けない…










「お風呂 じゃんけん

じゃんけん ポンっ!」


「一緒に入るか 摩耶?」



「バカじゃないの!?」





まぁ



幸せでは ある。



No.260 11/11/02 01:12
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 259

まだまだ 肌寒い4月…



会社のロゴが入った

真っ青な 揃いのブルゾン。



全員 同じ物なため

けっこう間違える事が多い。




「私は 絶対 間違えねっす!」



「なんでよ?」




ブルゾンのにおいを嗅ぎ

苦しい顔をするUちゃん。



「そういう事ね…」








時計は 7時を まわっていた。


「もちろん 今日も迎えに来るんすよね 社長…」


火曜日は オークション日のため 帰りは8時を過ぎる。


それでも
月曜日の11時よりは
全然早い…



うちの父は つねづね

女子供を そんな時間まで働かせるとは どんな会社だ!

と 怒っていたっけ…







「来るだろうなぁ(笑)」



「車で 通勤してください!

リエさん!」



そんな事言ったら

すぐ辞めろって言われちゃう…






「言ってみるよ(笑)」





寂しいんだな。


Uちゃん…








一樹が迎えに来たら

マンションまでの途中にある店に いったん寄り
少し 片づけを手伝って帰る…



最近の 日課だ。






その日課の最中に…








メール音が 鳴った。




No.261 11/11/02 01:55
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 260

ブルゾンのポケットに

手を入れる私。




右手に触れたのは

ハンカチだった。



私はいつも

ハンカチは バッグの中だ…





あれ?


言ってる矢先に 間違えた?




私は無臭なため においを嗅いでも わからない(笑)



急いで 脱いで
裏側の タグを見た。



「Mっちのだ…」



「どした?」


「間違っちゃった」

と ブルゾンをかざす。


「ばか(笑)」





もしかして

メール Mっちかな?


9時を少し まわっている…





携帯を開く。







『リエさんの携帯ですか?』




…?



アドレス変えたのかな?
Mっち…


それとも携帯ごと変えて
私の アド不安になった…?




『Mっちだよね!?

ブルゾン 間違えたね~
ぎゃははは♪』


送信。






「誰?」


「Mっちだよ(笑)

タイムリーに 向こうも
今 気づいたんじゃないの?」



携帯を閉じる。


すぐに返信が来る。


「暇か(笑)あいつ…」




笑いながら 携帯を開く










『違います』





No.262 11/11/02 02:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 261

「気持ちわるっ」



思わず 口をついて出た。






「なんだって?M(笑)」



「違う… って」


「え?」



「Mっちじゃないって…」

「見せろ!」



携帯を ひったくるように
取り上げる。




「いいか? リエ

電話をくれって
携番入れるんだ。」


「やだよ 気持ち悪い…」


「わからない方が
気持ち悪いだろ!?

かかって来たら
あとは 俺が代わる!」



「 … うん」




言う通りにした










私は メールを送りながら…



いやな予感がしていた。






あの アドレスの中の

人の名前らしき
アルファベットの並び…



あれは…









かけて来ないで…!



私は祈った。







一樹の前で





かけて来ないで!!















携帯は




鳴った。





メールではない



呼び出し音だ。










ひとつ

小さく深呼吸。




「もしもし…」



『もしもし』





予感は



的中した。







『私…





雄太の妻です』





No.263 11/11/02 04:25
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 262

心臓が



痛いほど 鳴る






10年前に 聞いた


電話の向こうの







不安げな声…









同時に怒りもわくが






一樹の前だ…






なす術がない。










精一杯 感情をおさえ

「なんの用?」



と 言った。




『うちの人と…

メールしてますよね?』



怒りにみちた声。




本妻は


強いですね。




「見たから 私にメールしたんでしょ?
子供の話ししかしてない!」


『内容は 見てません』




嘘つくな。








…1度


同級会のメールをやり取りしていた時 私の送ったメールが 届いていないと 雄太に言い張られた事がある。


その時 チラっと


女が消去したのではないか

と 頭をかすめはした。







女の声のトーンに

ますます怒りが込み上げる…


あんたと結婚しても

子供が生まれても


私は あんたの旦那と寝てた。



あんたの旦那は

私を 抱きたくて 抱きたくて
しょうがなかったみたいだよ




言ってやりたい…!

苦しめて


やりたい!!!!!






『会っても

いるんですか…?』



「会ってなんかない!」



私は 一樹に言い訳をするように 大声で言わざるをえない…




「かせっ!!」











携帯は




奪われた。



No.264 11/11/02 15:30
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 263

「あんたは 自分の亭主

信じられねぇのか!?」




私の言葉で

事情を把握したんだろう…



女に




一樹が 怒鳴った。






「俺とリエは 夫婦だ!」



誰だ?と

たずねられたか…





「俺の女房だ…

俺も リエには2度と
バカな真似はさせない!

あんたの亭主に

連絡なんか 絶対させない!!



だから あんたも自分の亭主
信じろ!!!」







電話を…



きってからの事ばかり…








考えていた。








「ただ これは

間違いなく リエが悪い


今 謝らせる…」














… え





ナニ イッテンノ…?










「謝れ」




腕をのばし

携帯を差し出してくる









「あやまれ!!!」













どう…




して?







どうして 私が…










あやまる… の?








「人の旦那と 連絡をとる

おまえが悪い…」









雄太が再婚をし

子供もいることは


つき合っている時話した…




浮気した女と


一緒になったことも…














私の手のひらに










携帯が






のせられた。




No.265 11/11/02 17:04
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 264

悔しい



悔しい









こんな



屈辱ない…






「もしもし…」



『ごめんなさい!

ごめんなさい ごめんなさい!


私…

あなたが結婚してるなんて
知らなくって… 』






安心したのか…


ずいぶんな 余裕だな…










「申しわけ…

ありませんでした…」



泣いているのを


どちらにも



悟られぬよう






言葉を おし出した。







『 … 大丈夫ですか?』





てめぇに心配なんか

されたくねぇんだよ!!





声にならない


叫びをあげて





電話を切った。













「一樹…」


「ずっと…


会ってたのか?」



「会っては いないよ!
本当だよ


信じてよ…」




空回る




そんな


気がした。






「友達なんだよ ただの…


摩耶が 不登校になってから

相談… してただけ…」




「男と女の友達なんて


俺は 認めない…!!」





「もともと同級生だもん…」

「聞きたくねぇ!!!」



「一樹…」



「死んだと思え」


「え…?」



「おまえは 捨てられたんだ


そんな奴

世の中にいないと思え…


死んだと
思ってくれ!!!」






今後 連絡をとったら

絶対に許さない


と 一樹は言い






「今日は 店に寝る。


摩耶 心配するから…

リエは 車で帰って…」







そう言った。



No.266 11/11/02 17:38
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 265

憎い



憎い




憎くて 憎くて

しかたがない…








私が 結婚してる事で


あんなにも激しい 束縛をする夫が そばにいる事で




安心してしまったのが


よく わかる。




雄太と夫婦であることの

嫉妬ではない。




あの女の


心の平穏への 嫉妬だった。





私が…





私だけが また





穏やかな生活を



乱された…








許せない!!!














「あれ? パパは?」



「店で…


寝るって…」



「なんで!?喧嘩したの?」






摩耶には

雄太と離婚した理由を


ずっと隠していた。




「生理が来たら 教える(笑)」


と ずっと言って来た。






もう…





話しても いいかな。











「ムカつく…


そいつに電話しなよ ママ!」



だけど…


もめた あいつらが興奮して

うちに 飛び火したら…?




これ以上 一樹を


苦しめるわけには いかない。




「じゃあ
元父に電話しなよ!

その女が 今した事
知らないんでしょ!?


めちゃめちゃ
怒られれば いいんだ!!

そんな女!!!」









約束を




破るのは






最後にするね 一樹…











私は


雄太に



電話をかけた。



No.267 11/11/02 19:57
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 266

声を聞くと



わかる。




私は


雄太の呪縛から

まだ解き放たれて



いないのだ…








あの女の アドレスにあった


子供の名前…






いつの間にか


すりかわった





家族。









10年もの 長い間


私は 決して

自分が堕ちたことを


認めないよう



必死で


必死で




ひとりきりで






歩いて来たのに…









やっと



寄りかかる人を

見つけたのに…










何も知らない 雄太は


ご機嫌で

私からの電話を受ける。



『お~!

そう言えば 摩耶
高校 ちゃんと通ってんのか?


もう
一緒に暮らしてんだろ?』





結婚すること



一樹が 摩耶のために

部屋を 一生懸命
綺麗に改築してくれている事は

話してあった。




「摩耶ね…


中学校で

校長先生と 担任の先生に



ひとりぼっちの

卒業式を してもらったよ…」





そんな事も





あなたは 知らないでしょう?






摩耶の涙も



私の涙も








あなたは




知らない。













「あんたの女は


私の人生を どこまで

めちゃくちゃにすれば

気がすむんだ!!!!!」




No.268 11/11/02 20:42
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 267

「マジすかっ!?」



(そろそろ最終です…)






「Nちゃんのママ

『死ぬはずの女』

って 言ってたっすよね…」



Nちゃんママには
会社のイベント時などに
手を貸してもらっていた。


彼女の ローライズのジーンズからのぞく 腰のラインに 男の子達は くぎづけに なってたっけ(笑)






「死んでないどころか

私に
食ってかかって来たし(笑)」


「ムカつくっすね~!」




「だけどさ… 」













私は


雄太との電話を終えたあと

考えた。







あまりの事実に

雄太は絶句。


ただ

おまえの旦那に 申し訳ないと


謝りに行きたいから

店の場所を教えてくれと


言われた。



「あなたに わをかけた
荒くれ者だよ(笑)しかも…


あなたは死んだものと思え

って 言われたのに。


私が 殺されるよ(笑)」







『…俺も

同じこと言われた。



前の奥さんと子供は

死んだと思ってって…』









消したくても




消えない存在。






あの女にとっても



この10年は






私との




闘いだったのだ。








妻。






それは



怯える側の立場。







奪った者の








罰。










二度と 連絡はしないと

お互い 約束した。












10年経って…




本当の




さようなら。




No.269 11/11/02 21:52
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 268

一樹と摩耶の いいトコロ。



私には 絶対に

真似できないトコロ。






【ひきずらない】


【きりかえ上手】




勝手な偏見だが


血液型に
関係あると思ってる(笑)


彼らは O型。



私は…


いつまでも

ジメジメとひきずり
はい上がれない A型。


(A型の皆さま ごめんなさい💦 『繊細だから…』と 付け加えさせて いただきます💦)











結局は…


遅くに帰って来た 一樹。




「腹へった(笑)」

って 言って…




チャオは 元来 男好きのため

一樹に 始終ベッタリ。



「チャー君

じゃんこ!(おすわり)」

と言われると

ピタっと
一樹の横に おすわり。

大好きな牛乳の

おこぼれを頂戴してる。




「また 牛乳もらってる(笑)」


「摩耶も飲め!

乳デカくなるように!」

「いーし(笑)」










女は

非通知で発信していた。


ただ アドレスは残っていた為 摩耶が教えてと言う。



「何か言わなきゃ

気が済まない…」



そのまま 部屋にこもり

こうして 今 出てきた。











だから…





5年経った今も


彼女が

女に送ったメールは








謎のままだ。




No.270 11/11/02 22:55
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 269

『本日 ラストの お車です』



マイクを通した声が

会場に 響き渡る。



ネット上でも

全国に流れている



私の声。








泣くわけには いかない。








車を出品した 会員さんと

コンダクターと言われる
値段を調整する人間とを
つなげる 小さな窓。





そこには


一樹と摩耶がいた。





コンダクターの隣で

マイクに向かう私。







これで



終わるんだ。

私の…





10年。








競りが



終わった。




最後だ。




『本日も たくさんの ご成約をいただき まことに ありがとうございます。 次回 記念オークションとなっております。

次週もまた…』



声が



つまる。



『皆さまの ご出品…



ご来場を…







お待ちしております!』



















「お疲れさま」



マイクのスイッチを切り

テーブルに 突っ伏し
泣き叫ぶ私を 気づかい


コンダクターは

ポンと 私の背中をたたき



ブースを 出て行った。








薄暗い この部屋で…




初めて マイクに向かった日



取り返しのつかない失敗で

舞い上がった日もある




余裕が出てからは


小窓越しに 会員さんと軽口



何かが おりてきたみたいに

スラスラと 喋れる自分が



好きだった。






離れたくない。








だけど もう二度と









ここには








座れない。




No.271 11/11/02 23:31
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 270

結婚してから 1年

なんだかんだと理由をつけ(笑)



私は 会社に居つづけた。




辞めると 伝えた日


女の子達は

皆 泣きくずれてくれたが


とりわけUちゃんは

仕事にならない程の


ダメージを 受けた。




私も彼女も

お互いの顔を見る度



号泣してしまうのだ。







家族…

だったな。






送別会で もらった色紙には


『甘えてばかりで

ごめんなさい』


の 文字。





甘えていたのは


私だよ Uちゃん…





素晴らしき 仲間達


愛すべき 場所





これからは 私



車屋の女房として




みんなと
おつき合いさせてもらうね。





涙 涙の 最終日。


そして 送別会。







それから


半月ほど過ぎた ある日



Uちゃんからの電話。






『リエさん
勘弁してくださいよ~!

戻って来てくださいよ~(泣)


今 私 使えね~奴と

毎日 ワンツーマンっすよ!』















マンツーマンだよね


Uちゃん。




No.272 11/11/03 01:44
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 271

「ひゃあ~ 加藤君!!

今日も 金とるんだ!?」


スーパーの店員さんを
名前で呼ぶの やめなさいよ…




「当たり前だし(笑)」



苦笑いしながら

重いお米を レジに通す加藤君



「米は やっぱり
【ひとめぼれ】だよな!
加藤君!」


「はい(笑)」



「俺は こいつに

ひとめぼれ!!!」


「やめてよ…」


「マジだから これ!!」



「…はい(笑)」







この 近所のスーパーで

私達は 絶対

名物バカ家族だという
自信がある…





「おいっ! 中卒~!」


「中卒って 呼ぶな!!」


「おまえ コンビニ店員なんだから 袋詰めしろっ!」





摩耶は

高校を 1ヶ月で退学し


すぐに
コンビニで働きはじめた。












「早くっ!!」


「声 デカいよ(笑)パパ」

たしなめる私。





「だって レナが~💦💦」


「ママ あんまん あんまん」



「わ~💦 いらないから💦

それ置きなさい!レナ!


そして それは あんまんではなくアンパンマンだよ~💦💦」









一樹そっくりの



小さな天使が 笑う。












家族になって





5年後の 秋…




No.273 11/11/03 02:53
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 272

「チャオ君

ただいま~!」



ガサゴソと
スーパーの袋をさげて

家へ入るとすぐに


みんなで チャオの元へと

向かう…




キャットタワーの てっぺん

今日も 彼は


そこに いる。






「ただいま チャオ…」



写真のチャオに

手を合わせる。



「チャアくん チャアくん」

レナも 真似をして
目をつむり

小さな手を 合わせる。






レナが 3ヶ月になるのを
待つように


長い 闘病に堪えたチャオは

私の腕の中で


空へと 旅立った。





Cが 言った。


『チャオは…

リエの全部を


見てきたんだもんね…』






狂った 私。


鬼のような 私。




意地を張って


泣かない 私。






笑う 私。


泣く 私。







あなたを 愛した 私。









レナに



命のバトンを渡し



家族の絆を 渡し。







あなたの 生きた証は


いつまでも

ここに あるよ…






幸せを ありがとう。




今日も










ありがとう。




No.274 11/11/03 03:49
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 273

あの秋…



突然に 私を襲った不幸。




あれから 15年…







たくさんの人に支えられ

私は 今



生きている。







真実って なにかなんて

今だに わかってもいない。








天使は


人を憎むことを知り




悪魔になるのか…









罪を犯し


堕ちるのか…







永遠に


眠りにつく その日まで




残された時間の中で



ゆっくり 見つけてゆこう。








傷は


いつか癒える。




泣いても



笑える。













秋が来るたび


私は

想うだろう。















自分の中の







堕天使を…




       ―完―





No.275 11/11/03 04:03
クロス ( ♀ gAVFh )



【あとがき】




長い長い 年寄りの思い出話しに おつき合いをいただき

本当に
ありがとうございました。



途中からの 私の豹変に

不愉快な思いをされた方も
いらっしゃるかと思います。


サジを投げずに

最後まで読んでいただけた事


心から 感謝致します。




ここから先


クドい私の性格上(笑)

大変な長さの あとがきになるかと 思いますので…


終了したアカツキには

自レス設定を
解除したいと思います。



どうぞ

たまりにたまった鬱憤を
ぶつけて下さいね(笑)💦






では 頁をかえます…



No.276 11/11/03 04:36
クロス ( ♀ gAVFh )



本日 11月3日は

私の大切な後輩の
お誕生日です。


本編には 登場しませんでしたが 彼女は 最初の【堕天使】を ずっとサポートし続けてくれた 愛すべき後輩です。


中学校の頃から

私のあとを追い回す(笑)
若干変態な
大阪に住む貴女へ…


もの書きとしての私を

支え続けてくれた貴女へ…



💖HAPPY BIRTHDAY💖


2つ目の【堕天使】を

捧げます。






すべて ノンフィクションで お届けしましたが (名前以外です)間違いが ありました💦


冒頭で 摩耶を(しかも 1番最初だけ『麻耶』だし(笑))4歳と書きましたが 実際 あの秋には5歳に なっとりやした。
(くだけて来たな…)


現在21歳。

レナは 1歳です。



そう
20歳離れた姉妹です。



またまた 冒頭で

調子ぶっこいて投稿した時には 日記の板にある 自分のスレのハンネだった為 かなり慌てました。

幸い メール機能に 書きためておいたものだったので すぐ変更出来たんですがね(笑)💦


このスレッドこそが
高齢での妊娠 出産を望んだり 経験した仲間とともに 2年半続けている 大切な 大切な 私の本家です。



やっぱり 長かった(笑)

続けます…


No.277 11/11/03 05:15
クロス ( ♀ gAVFh )



私の住まいは

今回の震災地のど真ん中。


あの 大震災が起きた直後

被災した私を心配し
励ましつづけてくれた
スレッドの仲間たち。


どんなに心強かったか…

掲示板の有り難みを
とても感じた出来事でした。

そもそも ミクルデビューは チャオ君の病気が きっかけでした。 その前から 妊娠したかった私は ROM専で 妊娠の板を ずっと覗いてはいたのですが…


チャオ君を失った時も
半狂乱になった私を 救ってくれたのは 自スレや ペットの板にいた 仲間達です。


一樹と 一緒になってから 自由を奪われた(笑)私の 唯一の 外界との接触ゾーン。

ミクルは 私のオアシスです。



本編 きれいごとで
締めくくりましたが(笑)
実は 雄太の女房の目にでも触れやがれ この野郎な 勢いでした💀💀💀💀💀💦💦💦



Sに言われた 5年目を迎えた私は 喧嘩しながらも 飽きずに夫婦を続けております(笑)



あっ

そうそう💖


Uちゃんも
先月再婚しました💖💖💖
Iが15歳になった年。

摩耶と同じ時期に…




余談で長々と 書き連ねてしまいました あとがきも
残りわずかです。

『終わり』の嫌いな私…

明日からまた少し

落ち込みそうな気がしてます😂





本当に
ありがとうございました。


読んでくださった方々へ

愛をこめて…🍀🍀🍀




       クロス



No.278 11/11/03 13:49
嵐ちゃん ( 40代 ♀ 46TN )

お疲れさまでした✨


面白かったって表現は失礼過ぎますよね…
本当に引き込まれてしまいました。
さすが、脚本家‼


Uちゃんとのやりとり最高でした✨


不倫が綺麗に描かれる事が多い中で、『家政婦のミタ』と同じ位「もっとやってしまえ💪」と叫んでましたよ😢

今は、お幸せなんですよね。
摩那ちゃんの最後のメールだけは気になりますが…。
とてもすっきりしました。


フィクションでも…続編でも…期待して待ってしまって良いですか❓

No.279 11/11/03 14:51
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 278

嵐ちゃんさん😭😭😭✨


レス
ありがとうございます😭💖✨

感激です😭😭😭🍀✨✨
(泣きすぎですか😂)

すごく嬉しいです(;_;)💖💖💖



なんだか

日課が終わってしまったために やっぱり 少し 放心してました( ̄▽ ̄)…


子育て ちゃんとやれって 感じですよね😂😂😂💦💦


ありがとうございます🍀


嵐ちゃんさんのために
(おしつけがましい)
ぜひ ✏頑張りたいです✨✨🍀


😭すごく幸せです🍀🍀🍀✨✨✨


No.280 11/11/03 15:20
嵐ちゃん ( 40代 ♀ 46TN )

>> 279 感激なんて…ありがたきお言葉(by謎解きはディナーのあとで)


…どんだけドラマにハマりこんでる❓😱


はまっていたスレ…終わると日課がなくなって寂しいのは読み手も一緒ですよ😢
ついついチェックして…物足りなくなくなって他の小説探してしまって😂


とにかくこの何日か、うすら禿げが頭にこびりつき、思い出し笑いのニヤニヤ。
完全に変な人。
Uちゃんの「便所民」には涙まで☺


私の為の❓小説待ってますから。


追伸
Uちゃんって実在する方ですよね❓❓❓
ファンですって伝えて欲しい✨


No.281 11/11/03 16:19
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 280

嵐ちゃんさん💖

可愛っす😂✨✨✨


ハマるタイプなんですね😂😂😂💖💖💖✨✨




こんな 拙い独り言を
楽しみにしていただいてたなんて 本当に 本当に有り難いです🍀🍀🍀✨✨✨✨


読み手も 寂しい😢




虚無感から救われました✨✨🍀


しかも

うすらハゲに
そんなに 食いついていただけたなんて😭😭😭💖💖💖✨✨



Uちゃんは

もちろん実在します☺🍀


言葉も すべて本当の彼女語録からです☝ 1コも つくってないんですよ😂😂😂✨


私が 掲示板を使用(笑)してる事じたい 彼女には 理解しがたい事のようで

『めんどくせ~事 好きっすよね~( ̄▽ ̄)…』

と バカにされてます😂

必ず 伝えますね💖✨
嵐ちゃんさんの お言葉✨✨🍀


活字 大嫌いな彼女は

絶対 これは読まない(読めない😂)と思いますので…



かさねがさね

ありがとうございました🍀🍀🍀✨✨✨😭😭😭✨✨✨✨


No.282 11/11/03 17:27
名無し ( ♀ Nc7Bh )

お疲れさまでした😭
私もずっと読んでました。

終わってしまって嬉しいやら悲しいやら😥

主さんが幸せなら私まで幸せな気分で…
楽しみながら…って言うと失礼かもですが毎日読ませてもらってました。

No.283 11/11/03 17:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 282

名無しさん😭😭😭💖✨

あたたかい
嬉しい お言葉✨✨🍀


本当に
ありがとうございます😭💖💖💖



今だ

自分に 自信のない私。

毎日楽しみ…

だなんて(;_;)(;_;)💖✨✨✨

こんな風に
感想を いただけるのは
何よりの励みです😭🍀✨✨✨

本当に

ありがとうございました✨✨✨
(;_;)💖✨✨


No.284 11/11/03 18:26
mamapanda ( 30代 ♀ edFai )

お疲れ様です🙇

続きが気になり、毎日何度もチェックしてました👀✨

終わっちゃうなんて寂し過ぎです😭

すっかり主様のファンになっちゃいました❤

何だか素敵です✨

今が幸せですよね?
私も頑張ります✊

ずっとずっと応援しています❤

続き?また楽しみにしていますね☺

No.285 11/11/03 18:44
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 284

mamapandaさん😭🍀✨✨ 😭😭😭


とりあえず
泣いてばかりいます😂💦

ありがとうございます💖

ありがとうございます💖


嬉しすぎです(;_;)💖✨✨✨✨

本当に幸せです😭🍀✨✨


今も 充分幸せだったけれど

mamapandaさんのおかげで もっと幸せになれました😭💖✨


寂しい…

なんて思っていただけるなんて✨✨✨


ファ…

ファンだなんて~😭😭😭💖💖💖




必ず

次回作 ひっさげて
戻ってまいります‼✨✨


力が わいて来ました‼✨✨✨



本当に

ありがとうございました✨✨🍀


mamapandaさんを

私も 応援しています☺🍀🍀🍀


  • << 288 主様が、幸せと聞けて…何だか安心しました☺ 本当、お人柄が伝わります❤ 主様の周りの方達も、素敵な方ばかりなんでしょうね☺ 不思議とこちらも嬉しくなります🍀 続き?次の小説?も必ず必ず待ってます❤楽しみに待ってますので❤

No.286 11/11/03 19:37
パム ( ♀ 9L0Eh )



クロス様💕

完結おめでとうございます😃✨

たくさんのファンの皆様と一緒で

毎日、とっても楽しみにしておりました💓

素敵な旦那さまと👶に囲まれて幸せな現在のコトまで書いていただけたので嬉しくて泣けちゃいました😭

なかなか、完結してくださる作者さまが少ない中、ホントにありがとうございます🙇💕

図々しくてスミマセンが🙇💦また、いつか素敵な作品を心待ちにしてます(≧∇≦)

No.287 11/11/03 20:10
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 286

パムさん💖💖💖

パムさんの お人がらが
うかがえるような
優しいレスを
ありがとうございます😭🍀🍀🍀




こんな ババァの現在に
涙していただけるとは…

本当に 感謝感激です😭💕✨✨


書いてよかったと
心から思えました✨✨🍀


完結した事に
ありがとうをもらえるなんて✨✨✨😭🍀🍀🍀

本当に幸せです💖


図々しくなんか
ありません😤😤😤‼✨


必ず

ご期待にそえるよう
頑張りますからね‼✨✨


本当に

ありがとうございました💖💖💖


No.288 11/11/03 20:47
mamapanda ( 30代 ♀ edFai )

>> 285 mamapandaさん😭🍀✨✨ 😭😭😭 とりあえず 泣いてばかりいます😂💦 ありがとうございます💖 ありがとうございます💖 … 主様が、幸せと聞けて…何だか安心しました☺

本当、お人柄が伝わります❤

主様の周りの方達も、素敵な方ばかりなんでしょうね☺

不思議とこちらも嬉しくなります🍀

続き?次の小説?も必ず必ず待ってます❤楽しみに待ってますので❤

No.289 11/11/03 21:49
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 288

mamapandaさんっ☺💖✨✨✨

かさねがさね
ありがとうございます🍀✨✨


わたくし 今

なぜか 開かない炊飯器と 格闘しておりました😂😂😂💦


いつもなら

店へもレナを連れてゆく為 24時間 一樹と一緒⤵の毎日なのですが…
(📱も開けないんです😹)

これを書きはじめた あたりから 摩耶の高熱が続き


もしやと思っていたら…


書き上げた今日

治りました(・◇・)…



Ebとか言うウィルスの感染だったんですけどね💦💦

熱が下がるのを
待つしかない…

という。


だもんで 私には
✏書く時間が あったのです…

という クドい説明でした😂💦




まわりは 確かに

素晴らしい人たちばかりですが


私など( ̄▽ ̄)💦


自分のことのように 感じてくださる mamapandaさんのような方こそ 素晴らしい お人がらです☺☺☺✨✨🍀




長々と 絡みついてしまって すみません(;_;)💦💦💦


ぜひ ぜひ

待っていて下さいね~😱💖💖💖


本当に

ありがとうございました😭🍀✨


No.290 11/11/04 18:40
I.D ( Lax3nb )

ああ現実ばなれ…。
小説。本を書く仕事、いいかもネ。

「駄天使」か…。

No.291 11/11/04 20:10
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 290

I.Dさんっ💦💦

どうしましたっ⁉
Σ( ̄□ ̄;


読んでいただけましたのでしょうか…❓

変な日本語すみません💦


I.Dさんは もの書きさんでいらっしゃるのかな❓

つぶやき。

ありがとうございました💖💖💖


No.292 11/11/05 17:29
嵐ちゃん ( 40代 ♀ 46TN )

クロスさ~ん✨


ありがとうございます🙌


しかも…のっけからUちゃん改め優ちゃん❤

大爆笑😂😂😂😂😂😂


やっぱり大ファンです💕
私の近くにいたらいじりまくってあげるのにぃ🐙


更新楽しみにしています。無理せずお願いしますね💕

No.293 11/11/05 19:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 292
わお💖

嵐ちゃんさん😭😭😭✨✨

来てくれてたんですねっ‼😭💖



ありがとうございます‼💖💖💖




いじってほしっす(笑)💕
マジで‼‼‼(笑)✨✨✨


嵐ちゃんさんの為に

頑張るっす😤‼💖



本当に

ありがとうございました💖💖💖


No.294 11/11/21 09:59
名無し ( ♀ Nc7Bh )

番外編⤴

めちゃめちゃ嬉しいです🙇

しかも更新早っ😍
やっぱりあなたの大ファンです⤴💕

No.295 11/11/21 10:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 294

名無しさ~ん😭😭😭💖✨✨✨


😭おはよございますぅ💓🍀🍀🍀



超 うれしっす😹✨✨

マジ うれしっす😹✨✨




大ファン(´Д`)ウレシスギ💖💖💖
✨✨✨✨✨




陶酔してます😂💦💦



本当に

ありがとうございます🍀✨✨✨


もっともっと

✏頑張っちゃいま~す💖✨✨✨


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