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堕天使

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クロス( ♀ gAVFh )
11/11/21 10:37(更新日時)



高校時代
同タイトルで
脚本を かきました。

人間不信の少女が
廃屋のビルの地下室で
復讐のため 爆弾をつくるという内容のものでした。


真実は
私にとって 永遠のテーマ。



時が流れ 絵空事ではない 不信感や絶望を知ることになった 私の お話しです。



No.1686010 11/10/11 02:32(スレ作成日時)

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No.1 11/10/11 02:35
クロス ( ♀ gAVFh )





【堕天使】




いつもと変わらぬ朝だった…


朝食を食べる習慣のない夫を 玄関先で見送る。

「行ってらっしゃい」
「んじゃ…」

改造車に乗りこみ出勤する、まだ若い夫がたてる騒音が 少しばかり心苦しい私は
『やれやれ』と
まだ娘が寝ている 2階へと急ぐ。


「さぁ起きて!幼稚園遅れちゃう!💦💦」

ひとり娘の麻耶は4歳。

食は細いが 手のかからない 丈夫な子。
男ばかり育てて来た 同居の舅・姑の 孫への執着は あと1ミリで 異常のラインを越える程 すさまじい…。


朝食のため 階下へ。


「ばぁちゃん💖おはよう💖」

摩耶が生まれて間もなく
姑は パートをやめ 家に居るようになった。


今思えば
今の私と同じ年令。
40代なかば過ぎのはずだ。


「摩耶 おはよう! 早くゴハン食べてな♪ ばぁちゃんは もう食べちゃったよ」

『いいから 働けよ』


… の言葉を飲み込み

「おはようございます」



バタバタと支度を済ませ 幼稚園バスが来るのを 庭先で待つ。


あ…

金木犀のかおり。



私は 秋が嫌い。
なぜかはワカラナイけど嫌い。



今日も元気な先生と一緒に 幼稚園バスが やって来た。



No.2 11/10/11 02:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 1

今夜は 夫は会社の飲み会…


だと思っていた。



ふだん酒を飲まない夫。

会社の そういったイベント事も ひどく嫌がる。


実は、表には出さないが 異常に嫉妬心の強い私は 夫の そういう言動で とても安心したりする。




近所の ママ友達と 幼稚園が終わったあと 恒例の お茶会。

4親子集まっての おしゃべり…


たまたま 私ひとりが 外で遊ぶ子供達についていた時

ふだんから動きの活発な Eちゃんが 腕の骨を折る怪我をした。



ひどく落ち込む私。


「気にすることないよ💦」と 他メンバーに励まされても 気持ちが晴れない。


自分の嫌いなとこ。



『なんで よりによって 私が見てる時 怪我するのよ』
なんて思っちゃうとこ。


Eちゃんのママは
今で言うKY…

あからさまに 顔が怒ってる。

涙ながらに謝りながらも
『あんたの子供は 女の子のくせに 荒っぽすぎる!!』

と 心の中でひなんしてる 自分…





今 思えば

妙な日だった。



No.3 11/10/11 02:40
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 2
夫が 帰宅した。


珍しく 真夜中過ぎ…



「もう めんどくせ~」
から始まる

あいつがこうで こいつがこうで 俺は飲めね~から 一応笑って聞いてるけど…



等の 愚痴が出てこない。






「今日 Eちゃんに 怪我させちゃってさ~…」


おしゃべりな夫が 物静かなのをいいことに 話し出す私。


「…聞いてる❓」



あきらかに 上の空。










『はじまり』だったんだ。



No.4 11/10/11 02:43
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 3
「めずらしく ユーミンなんか唄っちゃったよ。俺…」





ソーダ水のなかに…



ユーミンは 私の大好きな アーティスト。

夫は つねづね嫌いと言っていたのに…


「そう… ほんと珍しいね(笑)」


とりあえず笑っておいた。


そして

「ずいぶん遅かったね」

軽いジャブ。

なぜか 心臓が
ドクドクと鳴っている。


そして
私が 心から笑える答えをください と
強く強く望んでいる。




「そうかなぁ…」









聞くんじゃなかった。







いつもと同じ夜…


だけど

少しだけ
寒くなってきた秋の夜。



  • << 8 私と夫は 小学校からの同級生。 小学校の高学年から ずっとアプローチされつづけ(笑) 中3でおち つき合いだした。 そのあと 2度別れ (どちらも 私からのサヨナラだったけど…) 18歳の夏に 3度目の正直でヨリを戻し 23歳で結婚。 この経緯にも 幼い私が 誤算を生む原因が あったのかな… この人は 私に惚れきってる。 何処へも行かない。 傲慢な確信の 出来上がり。 結婚しても 親と同居は絶対にイヤだ!と 拒みつづけていた私。 けれど、自分の母親が 父親の単身赴任先で 暮らすようになってからは 兄夫婦と子供達だけになった実家で暮らすのも なんだか気詰まりで 半同棲みたいに 夫の家族と暮らしはじめてしまった。 間もなく結婚。 なし崩し的に 同居は はじまったんだ。

No.7 11/10/11 15:46
クロス ( ♀ gAVFh )



すみませんm(_ _)m

私 他スレッドも持ってまして ハンネを間違えてしまいました(笑)💦


もう1度
更新しなおします😱💦💦

No.8 11/10/11 15:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 4 「めずらしく ユーミンなんか唄っちゃったよ。俺…」 ソーダ水のなかに… ユーミンは 私の大好きな アーティスト。 夫は…

私と夫は
小学校からの同級生。


小学校の高学年から ずっとアプローチされつづけ(笑) 中3でおち つき合いだした。

そのあと 2度別れ
(どちらも 私からのサヨナラだったけど…)


18歳の夏に 3度目の正直でヨリを戻し 23歳で結婚。



この経緯にも

幼い私が 誤算を生む原因が あったのかな…



この人は 私に惚れきってる。

何処へも行かない。


傲慢な確信の 出来上がり。



結婚しても 親と同居は絶対にイヤだ!と 拒みつづけていた私。


けれど、自分の母親が 父親の単身赴任先で 暮らすようになってからは
兄夫婦と子供達だけになった実家で暮らすのも なんだか気詰まりで

半同棲みたいに 夫の家族と暮らしはじめてしまった。


間もなく結婚。



なし崩し的に
同居は はじまったんだ。



No.9 11/10/11 15:49
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 8

あの頃はまだ
学校も幼稚園も もちろん会社も

土日が休日なんてシステムなかったから

日曜日は 唯一 朝寝坊できる日…



同居を始めたばかりの頃

姑に
「休みの朝ぐらい みんなで一緒に ご飯を食べましょう」
と 言われた私は

泣き叫んで抗議した。


夫に(笑)


「やすみの日くらい 自由にさせてよ!! 夕食は 毎日一緒に食べてるんだから いいじゃない!!」


現在 息子はいない私だけれど

仮に こんな嫁が来たら…


イヤだろうな(笑)





はれて 休日の朝は 若夫婦の自由を勝ち取っていた私は

今日も ダラダラとした 親子3人の日曜日を送るのだろう…


と 漠然と 思っていた。





真夜中過ぎに帰ってきたのだから

昼過ぎまでは 確実に寝ているだろうと思っていた夫が




早起きをして 出かける支度を はじめるまでは…



No.10 11/10/11 20:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 9
「…どこか行くの?」


また 心臓が
ドクドクと嫌な音をたてる…


「車屋」

いつも
一緒に行ってたじゃない…
ドクドク ドクドク。



「私も摩耶も 出かけたいよ… 」

声が ふるえる。


あたりまえだろ!! おまえ達も、一緒に行くんだよ(笑)もちろん。



お願い


そう言って…






「… なんで?」



喉の奥が つまる。

「日曜日… だから」



「…」



ついて行ったら
困る事でも あるの!?




そう問いつめたいけど


こわいんだ。




「じゃあ 車屋のそばの〇〇まで 私と摩耶を乗せて行ってよ」

近くのショッピングモールの 名前を出す私。



夫は 私と摩耶だけで 出かける事を ひどく嫌がる。
彼もまた 私以上の ヤキモチやきであるからだ。


今日は 絶対に
夫ひとりでは出歩かせない。


軽い 意地のような強気が
私を包んでいた。



「わかった。乗せて行くよ…」




なに それ。


混乱して来た…




No.11 11/10/11 20:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 10

朝の寝起き以外は

終始 テンションの高い夫。


小学生の頃から
いつも一緒に
バカ笑いばかりして来た。


摩耶が生まれてからも
それは変わらず
うちは いつでも賑やかだった…








ほぼ無言の車内。


摩耶の
はしゃぐ声だけが響く。



「車 どこみてもらうの?」

「おまえに話しても わからないよ…」

「そう…」











まだ 間に合うよ。

パパ。




今なら私

なにもない事に出来るよ…








「ここでいいか?」
車がとまる。


胸が





痛い。






「そんなに長く かからないから… 1時間くらいで 迎えに来るよ(笑)」



その夫の言葉に

涙が出そうになった。





ただの 私の考えすぎ。
そうよ


そんなこと
私の身に
ふりかかるわけがない。

「うん!(笑) じゃあ1時間後に ここでね!行こう♪摩耶♪」

「パパ ばいば~い♪」



行ってらっしゃいと

車の中から手を振る夫の笑顔は


ただ 私との空間から 解放された嬉しさだったと


後になって

知ったのだけれど…



No.12 11/10/12 00:00
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 11
「最近 雄太の帰りが ずいぶん遅いなぁ…」


秋の日暮れは早い。


もともと 夕食の時間が早い この家の人々。

義父 義弟 そして夫…


働きに出ている全員の
帰宅時間が 早いのだ。



6時には
ほぼ 全員がそろう。


慣れるまで苦痛だった。



「そうですね」

夕食時
曖昧に
笑ってみせる 私。



『小学生じゃねんだから… 今までが 早過ぎたんだろ』


ただでさえ
あくる月曜日からの 夫の帰宅時間に ますますの不信感をつのらせていた私は

お門違いと思いながらも
心の中で
義母に毒づいた。




「さあ 摩耶! ちゃんと お野菜も食べて…」

注意を 摩耶に向ける。

「パパは?」

「お仕事だよ」

「ふ~ん…」


もともと 摩耶は
父親に あまり執着がない。


「摩耶~♪ じぃちゃんの肉も 食べていいぞぉ~💖」

「うん💖」

「摩耶は 痩せっぽちだからな(笑) いっぱい肉食べて 太れ! ほれ ばぁちゃんのも💖」


「そんなに 食わせんな💢! な~摩耶💖 痩せてる方が カッコイイもんな♪」

夫と 年子の義弟が 助け舟を出してくれる…




私はともかく

摩耶は


この家族が 大好きだ。






わずらわしかった

この家の人々。





私達

ここから



消えるかもしれないよ。








箸のすすまない私に
気づく人は


誰もいない。



No.13 11/10/12 00:02
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 12
一週間目の土曜日



5時半には 帰宅していた人間が 毎日 11時過ぎになるという事実に 何も違和感を持たないと 思っているのだろうか…



「連絡だけはして」


その言葉通りの事だけは
する夫。




時計ばかり見る毎日にも
そろそろ
疲れてしまった…



「どうして急に 毎日 こんなに遅いの?」

3日ほど経った夜


私は 夫に聞いた。



もともと 気の短い夫は

「俺だって もうすぐ30だ! いつまでも子供じゃない! つき合いだってある!!」
と イライラと声を荒げた。



男は偉いもの。



なんとなく そんな風に感じながら生きてきた私は とくに夫の言う事に 反論することもなく いろんなものを 飲み込んだ。




でも




もう 一週間。






時計の音ばかり響く
この部屋で

私は ひとつの決断をした。



No.14 11/10/12 01:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 13

そもそも夫は
嘘をつける人間ではない。

幼い頃から知っている…


とか そんな理由ではなく

嘘をつく必要がないような生き方をして来たから 嘘のつき方を知らないと思えるのだ。




きっと

上手に嘘がつけたなら
彼自身 もっと楽だっただろう…



あきらかに
日々 弱りきっている。

ただ口数が少ないだけじゃない…








私が ラクにしてあげよう。


それには

【証拠】が ほしい。


No.15 11/10/12 05:02
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 14

今朝 夫は
出がけに私に こう言った。


「Kに 仕事終わってから 車のマフラー 溶接してもらって来るから遅くなる」



平成6・7年頃だ。

まだ 携帯を持っているのは ごく一部の人だけで
ポケベルが主流。


私はもちろん 夫も
その どちらも
持ってはいなかった。



『連絡を入れるのも面倒か…』



私は 目も合わせず

「うん」


と だけ言った。




K君は 夫の前の職場が一緒だった後輩。


私も 何度も会っている。




カチカチカチカチ…

0時をまわる時計の針。


穏やかな寝息をたてる 摩耶。



カチカチ

カチカチカチカチ…


知りたい❓

知りたくない❓




能面のような 夫の顔を思う。




いつ終わる❓


終わらない。





カチカチカチカチ…


深夜1時を過ぎた。






私は




受話器を あげた。



No.16 11/10/12 05:07
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 15

ツー…



会社 友人の電話番号が並ぶ 簡単なメモ用紙。


「Kが 生意気に携帯電話持ちやがってさ~(笑)」

久しぶりで
夫の笑顔が浮かんだ。





心臓の鼓動なのか

耳鳴りなのか



身体中の血が
集まってきたんじゃないかと思う程 顔があつい…




外では 思いきり明るく振る舞うが 本当は 誰よりも気が小さく 他人の顔色が 気になるタイプの私。







K君と夫は 一緒に居る。


何を 迷うことがある❓

K君が出たら
夫にかわってもらって
摩耶が熱を出したと言おう。

不安だったから…
と。




呼び出し音を聞きながら


なぜか ウラハラに

出ないでくれと願う私。



受話器を置け!
と もうひとりの私が叫ぶ。






プルルル…



プッ。

ドクン!!!!!



「…はい」



No.17 11/10/12 05:10
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 16

「K… 君?」

「はい…」



ドクドクドク。






もう


何も聞かなくてもわかった



起きぬけの



かすれた声…




それでも
わずかな望みは
まだ 捨てられないでいた。




「雄太さんの奥さんですよね? 何かあったんすか?」


「ごめん。寝てたよね?」

「ええ」



「うちの人は… 今日… 一緒じゃなかった… かな…」


「雄太さん? いや 今日は 会ってないっすよ…」





ドクドクドクドク


ドクドクドクドク




起こしちゃって ごめんね

ありがとうねと


受話器を置いた。








手足の先が

冷たくなってゆく…






長い 長い





夜の はじまり。




No.18 11/10/12 12:09
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 17

私はいつも
夫が 仕事から帰るのを
待ちわびていた。


結婚した時から 7年ちかく経つ 今の今まで 変わる事なく


毎日 毎日 毎日

待ちわびていた。



愛していたのだろう

と思う。



休日に 2人で窓から
ボンヤリ外を眺めていると

近所の まだ若い奥さんが 犬の散歩をしてるのを見つけた。



「きったね~な…」

「え?」

「〇〇さんの格好だよ…
外歩くんだから もう少し気をつかえないもんかね(笑)」



私は ふだんから
どこへ行かずとも しっかりメイクをし 長い髪を巻き 外見は完璧にしておかないと 気が済まないタイプ…

要するに 根がヤンキーなので(笑) 他人さまは 派手な女と判断してるだろう。


そういう女が好き。


夫の好みだ…




いい加減 普通の車乗ったら?

友達にもチクりと言われる様に 私達の生活スタイルそのものが 同じ年代の人たちより 幼かったように思う。



そんな 彼の車の音を

若い頃から

夕方になると

耳を そばだてて


待って 待って 待っていた毎日…








深夜3時


聞き慣れた その音が

帰って来た。



No.19 11/10/12 12:21
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 18

また心臓が

早鐘のように鳴りだす…


耳が

音に くぎづけになる。




エンジンがとまる。


ドアがしまる。



数秒で 玄関の開く音。




洗面所で 手を洗ってる

水の音






あれが とまれば


階段をのぼる足音とともに



夫が あらわれる。





もう


自分の心臓の音しか

聞こえない。





ドクン ドクン ドクン





ドクン ドクン ドクン








「おかえりなさい」



自分の声が

遠くから 聞こえた。


No.20 11/10/12 13:39
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 19

「起きてたのか…」



疲れた顔。




決心がにぶらないよう

声に 力を込めた。




「どこに 行ってたの?」

祈るような気持ちで



こたえを待つ。



「…」



お願い…



お願い…





「今朝言ったろ…
聞いてないのか?」



イライラと
煙草に火をつける夫。










終わった。








嘘を つくのね。

私に 嘘を…




本当に つくのね。






激しい憎悪が 巻き起こる。










バカにするなよ。




「K君のとこ?」

「そう言ったろ」


「こっち見て!!」



煙草のけむりごしに
力ない 夫の目と 出会う。

「… なに?」






「あなたは 行ってない」



行ってないんだよ。




No.21 11/10/12 13:43
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 20

「電話したのか…」



いまいましそうな表情。



ほら…

アリバイ工作もできやしない。


私を騙そうなんて
百万年 早いのよ(笑)




バカにしやがって



バカに


しやがって…






灰皿に 捻りつぶされた煙草



怒りが


悲しみに変わる。




「女… なのね?」





こんなセリフ

私が言ってるの?


どうして?
どうして?



一週間前まで
笑ってたじゃない

摩耶と 動物園行こうって
約束したじゃない




車のチームのイベントも来る



なにより






次は 男の子がいいね

って


2人で頑張っていたじゃない…



どうして…




No.22 11/10/12 13:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 21

長い 長い沈黙。



静かすぎて 耳が痛い。





「怒ってないよ私。ただね もう疲れたの。 毎日毎日 知らない人と居るみたいだった。私は 笑ってるパパに会いたい。 嘘だけは… ついてほしくない…」


おだやかに
おだやかに

そう話した。










夫が 泣き出す


子供のように
しゃくりあげて泣いている…



ごめんなさい

ごめんなさい


消えるような声で言いながら





この人もまた

どんなにか
苦しかったんだろう…







この後の話しの流れなど

その時の私の頭の中には
なにもなく




ただ ただ

夫も自分も かわいそうで


ただ ただ


大声で 泣いた。



No.23 11/10/12 14:26
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 22

ぽつりぽつりと

話し出す夫。


ただ うなずく私。



嘘をつくなと言っておきながら

聞きたくないと
耳を ふさぎたくなる。




相手の女性は


二十歳になったばかり。
独身の 看護士。


あの日

会社の飲み会と思っていたものは 学生時代から仲間の 先輩達と その彼女と友達の…


いわゆる合コンってやつ。




もちろん 私も
その先輩たちとは 顔見知りなわけで 既婚者を呼びつける神経を まず うたがいたくなったが…


まぁ
行かなきゃいいだけの話し

なんだな(笑)





半分 ほうけたように
聞き流しているようで

それでも

痛いぐらい鮮明に

頭に たたきこまれて来る
状況
相手の女の輪郭




冷静さなど
カケラも持ち合わせては
いなかったけれど



私は

たかぶる気持ちを
必死で 必死で

おさえてた。







くだらない プライド…





そして

やっとの思いで

笑顔で
こう言ったんだ





「別れましょう」って。


No.24 11/10/12 14:59
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 23
おまけに


「彼女 幸せにしてあげてね」

なんて言った。





すがりたい自分が

プライドに負けたんだ。




後に 嘘だとわかるが

この時点では
夫も 話しを聞いた私も

彼女の命は
そうそう残されていない


と思っていた。





舞台女優になりたかった私は

小さな頃から


自分を 外側から見る癖がある…




深い 深い 深い

悲しみに
うちひしがれながらも




無意識に大人を演じられる。

その時ベストな自分

を選んでしまう。




弱いものは
守ってあげよう


はじまった恋路を 邪魔する
無粋な人間は カッコ悪い



そう

かっこよく


ありたかったんだね。





バカみたい。





さらに泣き出す夫の前で

なんとか自分を保ちながら




「お腹すいてるでしょ?」


インスタントラーメンを つくる余裕のある自分まで 見せてしまった。




これが

のちのち あだになるなんて
思いもしなかったよ。



No.25 11/10/12 18:50
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 24

長い長い夜が

明けようとしていた。



眠れない

食べられない


笑えない




この1週間

人間としての 健康的な生活を忘れていた 夫と私。




夫だけが



解き放たれたようだ…





泣きながら ラーメンをすすり

「うまい うまい」と また
強い嗚咽に変わる…




そして

本当に嘘のように



高いびきで眠ってしまった。




感情を吐き出し
認めてもらい
腹も満たされた。



眠らない方が 嘘か…



今 この人は

幼い子供と同じだ。








そして 私は









ストン







本当に突然







深い 深い 深い




真っ暗な穴に





つき落とされた。



No.26 11/10/12 19:04
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 25

激しい恐怖感に

すごい速度で包み込まれる



こわい


こわい





こわい こわい こわい





たすけて


誰か



たすけて…






立ち上がり


摩耶の寝顔を見にゆく。




よけいに 苦しくなり

わけもなく


うろうろと歩きまわった。




なに… これ。


どうしたの?私






息が つけない。


吸い込んでも 吸い込んでも




ヒューヒューと

喉の穴が
せばまってゆくよう…






たすけて





たすけて










たすけて





No.27 11/10/12 19:33
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 26

涙が流れる



悲しいのでも

悔しいのでも

苦しいのでもない



理由のない 涙。






私は 極度の みえっぱり。


幸せじゃない自分は

人に 見せたくない。






つらい思いを 聞いてくれる友達は 地元に たくさんいるにも関わらず


私が 唯一

このことを
うちあけていたのは



今は 遠い所に住む

高校時代の友人だった。


Aちゃんは かつて この家の近所に家を建て 暮らしていた。


家族ぐるみで
いつも 遊んでいた。



旦那さんの転勤で 遠い土地へ行く事になった彼女と
泣きながら別れたのは

摩耶が 2歳の頃だった。



この話しを電話でした時も

夫を よく知る彼女は
『ありえない』と
明るく笑い 私を励ました。



長い長い 手紙もくれた。





私は すがる思いで
コードレスフォンを持ち

感情のない目で
眠る夫を見おろしてから


摩耶の眠る 寝室に向かった。




No.28 11/10/12 20:12
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 27

秋も深まった
10月の 最終土曜日…


いや もう日曜日か。



時間は 朝の4時半だ

カーテンごしの空は
まだ 闇の中





私は 摩耶を起こさぬよう

窓辺に寄り添い


慣れた番号を

ふるえる指で押した。





こんな時間の電話は

もらった方も 悪い知らせであると 直感的に思うのだろう


『…リエ?』


電話の向こうで 私の名前を 優しく呼ぶ彼女の声。




「Aちゃん…たすけて…」




後は
しばらく声にならなかった








ただ 声を殺して泣いた




No.29 11/10/12 20:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 28

すべてを 話し終えると
彼女は 絶句…



そして 突然

大声で

傍らで寝ているであろう
旦那さまの名を
何度も 何度も呼びつづけ

泣き叫ぶように
『起きて!! 起きて!!』
を 繰り返す…



『雄君が… 雄君が…』










15年以上経った今でも

私は はっきり

あの時のAちゃんの声を
思い出すことができる。



ありがとう。




貴女が 取り乱してくれた事で

私は 心から救われたの









それは まるで



私の絶望が

カタチになったようだったから…





No.30 11/10/12 21:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 29

私は この日曜日

夜が明けるのを待ち


摩耶を連れ
少しの荷物を持ち

車で10分ほどの
実家へ帰っている…



のだが


なぜか 帰るまでの記憶が
曖昧なのだ。



Aちゃんの叫び声を最後に

その後の自分の行動の記憶が
この部分だけスッポリ
ぬけおちている。






実家の兄嫁に
なんと説明したのか…


じきに 少しだけ(笑)助けてくれた兄に どんな風に 話したのか…




義両親へは 自分が話すと言った夫の言葉で 何も言わずに 出て来たことは おぼろげには おぼえている。





すべてを失った気がしてた私は

泣くことさえも忘れていた。



摩耶に心配は かけられない。



それだけは

強く 強く 思った。






今は使われていない
両親のベッドで

その晩は 摩耶と眠った。


実際 私は横になるだけで

眠ることなど
出来なかったけれど…





居間から もれる
バレーボールの中継の音

兄家族の 笑い声



それらをドアごしに聞きながら

私は
ただ ひたすらに
ひたすらに


ベッドの上で
缶ビールを 飲み続けた。


眠った摩耶の髪を

静かに撫でながら…




No.31 11/10/12 22:20
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 30

幸せぶりっこの私が迎えた

気の重い 月曜日。



摩耶の幼稚園を
休ませるわけにはいかない。

兄嫁は 明るく情は深いが
気性のあらい女性


ちなみに 父親のそばで暮らす母には この時点では まだ何も伝えていなかった気がする。




朝 台所に立つ私に
兄嫁が 言う。

「今日 摩耶ちゃん お弁当でしょ? これ使って! おかずも これと… これで大丈夫だね(笑)」

摩耶より 2つ年上の 小1になる甥も 摩耶と同じ幼稚園に通わせていたため

週2回ある お弁当の日を
兄嫁は 熟知している。


この 幼稚園も

私の見栄の部分が選んだ


制服の可愛い 私立の幼稚園


すぐ近くに お月謝が3分の1の 公立の幼稚園があるのに…


だ。




「ありがとう。」

「今朝は 送って行くの?」

「うん…」





はぁ…


気が重い。

なにもかも。



幼稚園に着いたら






笑えるんだろうか…



No.32 11/10/12 22:51
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 31

「おはようございます♪」


摩耶を 担任の先生に お願いし

仲良しのママ友が いないのを確認すると 私は ふだんのノンビリが 仮の姿であるかのごとく 自分の車まで ダッシュした。



誰にも 会いたくない。



… と思うと


会うものである。




「あっ!! … おはよ」


私より 3つ年下の
Nちゃんのママだ…

「?摩耶ちゃんママ
急いでます💦💦?」


「い… いや(笑)
んなことないよ(笑)」



彼女とは 1番の仲良し


Eちゃん骨折事件から
Eちゃんママの 今までの数々の奇行に 2人して 顔をしかめていたところだったので よけいに仲が良くなったのだ。


そして 私は この後彼女に
今の状態を ところどころだけ伝える事になる…


まさかの流れだが

ここから先も 彼女には とても 助けられつづける。





お互いの娘たちが 成人を過ぎた今でも Nちゃんママとは 大の仲良しのままだ。




No.33 11/10/12 23:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 32

また 夜が来た…



このネットなるものが
あの頃 自分のスグ手にとれる場所に こんな風に 存在していたなら…



と たびたび考えます。
(余談でした…)







頭から 追い出したいもの…


この事実。



自分で選んだようで

『すてられた』


が 消えない。



そして また

必死に追い出そうと



私は 何本目かの缶ビールに
手をのばす。





その時


兄嫁が 私を呼んだ。



No.34 11/10/13 01:35
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 33

なんだろう…


少し足元が フラつく。

あたりまえか

ほとんど何も
食べていないのだから…



何もやる気が起きない

立っている事さえ苦痛




お世話になっておきながら

こんな時間に呼ばれる事にさえ
苛立ちを隠せない。




「どうしたの?」

でも嫌な顔は見せられない。


つとめて明るく聞いた。





兄嫁は ニコっと笑い


玄関を指さす。



「え?」


「雄太君 来たよ」











「迎えに来たんだって♪」











… なに?



どういうこと?




「ほら 早く行ってあげな」





足が


自分の意識とは別に




勝手に動き出す。






玄関?





玄関って なんだっけ?





迎え?




ここ





どこだっけ?



No.35 11/10/13 02:37
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 34

「帰ろう」



私の顔を見るなり

夫が言う。




視界がぼやけ

顔が


よく見えない




あついものが

自然と ほほをつたう。




「ちゃんと 別れたから」




うそ。




「Jちゃん(先輩)が 俺には もう2度と会っちゃダメだって… 話し つけてくれた」


なに


言ってるの…




「『あいつらは そんじょそこらの夫婦と違う。 別れるようなマネは 俺が絶対させない』って 言ったらしい(笑)」





夢…?




だいぶ 飲んだから


幻覚かな(笑)








「本当に ごめん」






自分が何を 望んでいたのか



初めて









わかった。




No.36 11/10/13 03:12
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 35

きっと



あの日の朝を


私は 死ぬまで忘れない。




希望に満ちあふれ

あたりまえが輝き出す。




寝室のカーテンを開けた時

本当に 身体がふるえた。



差し込む 陽のひかりが

幸せすぎて…







そんなこと

本当に あるんだな(笑)





なんでもない事に

笑顔になる。





「ママ…?」

「おはよう!摩耶♪!」


「今 笑ってた?」

「あはは♪笑ったよ~」

「どして?」


「おしえな~い♪♪♪」



ふくれっつらになる摩耶を

ギュっと抱きしめて




小さな声で


「ごめんね」と言った。





「さぁ 起きてゴハン食べよう! 幼稚園バス来ちゃうぞ!」




ここにある日常が



また 動き出した。



No.37 11/10/13 03:57
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 36

幸せを取り戻してから

3日が過ぎた。



なにも知らない 義家族は

私達が 家を空けた ほんの2日間で 摩耶への執着を またエスカレートさせたくらいで
なにも変わりがない。



それは 夫も同じで

離れた わずかな時間が

本当に大切なものが 何かを教えてくれた と 家に帰ってから 話してくれた。



ありきたりの言葉でも


私には



最高の言葉。



失ったものを
取り戻した者にしかワカラナイ幸福が そこにはあるから…




J君にも 手紙を書いた。

友人の不倫を あおる人間が多い中 私達のために 誠実な対応をしてくれたことへの 感謝と喜び。


現在、職場も一緒のJ君に 渡してくれるよう 夫へ頼んだ。



「俺見てもいいの?」

「だ~め~」


以前の…

それ以上の笑顔を
取り戻した私達は


何もなかった日々に 戻れるのだと 信じて疑わなかった。



No.38 11/10/13 04:22
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 37

その夜

夫が 身体を求めて来た。



本当は

そんなにも
嫌悪を感じたわけじゃない



ただ 反射的に

ドラマの観すぎかも
しれないけれど


1度は拒んでみせた方が
いいかな


ぐらいの軽い気持ちだった。




やんわりと

もう少し待ってと言った。




私の頭の中では

それでも なお求めて来る彼に
応じるシナリオが出来ていた。




















第二幕の

幕が あがってしまった。




No.39 11/10/13 05:05
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 38

人って
こんなに 単純かな…


スイッチは
人それぞれ違うだろうけど

強弱ボタンに
さほど変わりはないはず…



しばらく理解が出来ずにいた。







次の日の朝には

また
能面の顔の夫が居たから。



あまりの豹変ぶりに

最初は 怒りがわいた。



それをするのは

女の私じゃないの!?



セックスを拒むのは

浮気するより 重罪?



浮気を責めていない私に

感謝こそすれ

そんな態度は
とれないはずじゃない!?




口には出せない

たくさんの思いが


駆けめぐる…





つねづね 極端すぎる人ではあったが これは あまりにも

酷い。




思い通りにならない事への
苛立ちなのか

頑なな夫の態度は


その後も 続き

まともに 口すら開かない日々が 始まって行った…



No.40 11/10/13 15:11
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 39

愛されていることに

自惚れていたい。



簡単に言えば

私の望む 男女の愛情は
そんな感じ…



1度
この愛が終わったと思った時


私は もう愛されていない


という残酷な事実を
受け入れないように
深く考えることを やめた。






普通に 育ってきた。

親や家族に 120パーセント愛されて生きてきた。


なのに 私はいつも
愛に 飢えていたんだろうか…



セックスを拒んだ


たった それだけのことで

また 夫の優しさを失った私は

自分の中の真実を
考えないわけには
いかなくなってしまった。



もしかすると

見える敵が いない分

この間までの状況より
きつくなるかもしれない…



このあと知る事実など

かいもく見当もついていない
あの時の私は


その数日


途方にくれていた。




No.41 11/10/13 15:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 40

少し 努力してみよう!

自分の悪いところを認めるんだ



自分が夫の立場なら?

穏やかに また始まるだろうと思っていた毎日。
今までと 何も変わることがないと 信じていた これから…


その証を

妻に 拒否されたら…



そうだよね。

セックスを拒む。


女の私が考えるより
受けた側は
キツいのかもしれない。





謝ろう。

誠心誠意。







夫の笑顔と優しさを
取り戻そうと 必死の私は


その瞬間だけは

プライドを
捨てていたように思う。






ここから


今の私から

あの頃の私へ

声が 届くのなら



伝えてあげたいな。


意味がないよ…

って。




No.42 11/10/13 16:29
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 41

「パパ…」



今夜も 私に背を向け 眠ろうとする夫に そっと声をかける。



眠ってしまったのか…



そんなはずはない。





トクトク トクトク…

心臓が

また少し 強い音をたてる。



早く

早く 解決しなくちゃ。


こんな状態


1分1秒でも早く。



トクトク トクトク…



「ねぇ パパ」

夫の肩に そっと手をかける。





身動きひとつ しない。



起きているのだ と思った。



「ごめんね。 私 意地悪だったよね… 本当に ごめんなさい」




…聞こえてる?



少しイラつく気持ちを
おさえる。

トクトク トクトク…





「もう 平気だよ私」

トクトク トクトク…





こっち向いてよ!


『ほんとに!?』
って 笑ってみせてよ!







私を 抱いて



愛してるって





言ってよ…!!


お願い…!!!








私は

爆発しそうな気持ちを抱えて


夫の背中に しがみついた。





















「やめろ」





冷たい声が



また


闇を つれてきた。




No.43 11/10/13 17:45
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 42

地面に


叩きつけられた気分だった。





悲しみ

怒り




屈辱。



目には 目を…


の つもりか。




初めて味わう感情。




それでも

夫を愛している私は

攻撃的な態度に出られない。




無言のまま

仕事に出かけた夫。


強張る笑顔で 見送る私。


摩耶や 義家族の前でも
精一杯 明るくと つとめ


こわれそうな 心と身体を

なんとか 動かしていた。




「帰ろう」

と 言ってくれた あの日から

朝 出がけには

『早く帰ってくるから!』

と 懸命に私への安心を あたえようとしていた夫の帰宅は


遅くなりつつある。








時計と にらめっこの日々が


また



かえって来た。



No.44 11/10/13 18:18
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 43

今度は 夫へ手紙を書いた。


修復させようと
激しい執念を燃やす私と

夫の 温度差。




気づかなかったのか

気づかぬふりをしていたのか…



滑稽な努力を つづけていた。




届くものと

届かぬもの。



今なら わかる。

あきらめられる。




けれど…


綺麗な空しか 知らない天使は


叶えられぬことが ある事に
気づかなかったんだ。



苦しくても 苦しくても

逃げない。




清らかな自分を信じてる。











天使は


もうすぐ



もうすぐ






堕ちてゆくのに…




No.45 11/10/13 19:07
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 44

不思議なことに

私は 夫を疑わなかった。


今日までは…




それこそが

幼い頃から 私に愛を向けてきた彼への 信頼だったのかもしれない。

裏を返せば


傲慢な 自惚れだ。




夫の ここ数日の 頑なな態度は

私が 傷つけたせい。


私への愛ゆえ 傷ついた。






思いこみ?







夫のいない夕食にも
慣れた。


不穏な空気を 知ってか知らずか 義家族も ふれては来ない。



私は 手早く 片付けを済ませると 摩耶を連れ 自室へと戻る。



「ビデオみた~い」

摩耶が言う。


上手に 相手をしてあげられない 今の私に ビデオは とても助かるアイテムだ。



その頃 放送していた
『バケツでごはん』ってアニメ…


私は 今でも あの頃のことを思い出す時 このアニメの まぬけなBGMまで 一緒に頭の中で流れ出します(笑)
(また 余談💦)




時間は 8時を過ぎた。


夫の仕事は 5時前には終わる…




『Jちゃんの駐車場で 洗車してから 帰る』


ぶっきらぼうな連絡が
5時過ぎに あった。





遅すぎない?




摩耶の笑い声を 聞きながら


なぜか

心が モヤモヤして来た。



No.46 11/10/13 19:46
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 45

急に どうしたんだろう…



一生懸命書いた手紙も

なんの効力も持たなかった。

まさに 八方ふさがりでも
もがき方すらワカラナイ。


私に出来ることは?




虚しくなった。



ゴールが見えない。





そもそも どうして
スタートしたんだっけ?


私が

セックスを拒んだから?



違うよ


拒んだのにだって

理由がある。



あんな事がなければ

私は 拒んだりしなかったのだ






あの


女のせいじゃないか。




No.47 11/10/13 20:27
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 46

あの長い夜に聞いた

女の話し。



私達の結婚式にも 来てくれた先輩の中に 奥さんと別居してる人がいる。


何ヶ月か前に

『S君 若い看護婦さんと つき合ってるらしいぞ(笑)』

と 夫から聞かされていた。


まだ離婚もしてないのに…


と 私は いやな気持ちになったのを おぼえている。



その女は

そのS君の彼女の友達。

病院の寮で
暮らしているらしい。



私は 前に

たぶん


その女に 会っている。


趣味仲間が集まっての バーベキューに S君は その彼女と数人の友人を連れてきていた。




『顔も スタイルも おまえの方が 全然いいんだ。 だけど 人 好きになるって そういう事じゃないだろ?』


泣きながら あの夜

そう言った夫。



複雑だった。



でも 少し自尊心を くすぐられたのも また嘘ではない。


小さくて 華奢な女が好きな夫



でかくて ごつい女が
あの 看護士の集団の中に居たなぁ

と なんとなくの記憶。



イライラして来た。



No.48 11/10/13 20:54
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 47

身体が弱いと 言っていたっけ


大袈裟なのか
2人の夢みる世界なのか


『先が ないんだ』

という 言い方をした。



先がない女が

既婚者に近づくんだ?


病人の看護してる場合じゃないだろうが…





したたかな女。










出会ってからの1週間

会ったのは
嘘をついた
あの土曜日の夜だけで


あとは 毎日

寮に電話をしていたのだと
言っていた。



私と摩耶を

あの モールにおいた日曜日の 1時間も 電話のため…





そんな事を考えていたら

9時を過ぎている。









不安に かられた。




したたかな女に


また



トラレテシマウ。







「摩耶! 行くよ!」

私は 車のキーを掴みながら
ビデオにくぎづけの摩耶を
呼んだ。



No.49 11/10/13 21:15
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 48

「どこに行くの?」



車に乗せた摩耶に 靴も はかせていない事に 今さら気づいた…



「ちょっと出かけて来ます」

と 義母に言うと

「こんな時間に?摩耶は?」


「連れて行きます」


何か 言いかけていたが

無視して 居間のドアをしめ

摩耶を 抱きかかえるように
玄関から 飛び出したのだ。





「パパ お迎えに行こうね」

ハンドルを握り
前を向いたまま そう言った。



向かう先は

J君の 駐車場だ。




もう 騙されない。


どうして
私が苦しまなくちゃならない?




私の頭の中で

夫と女が
楽しそうに 笑う。






わたさない。

絶対に。








車は J君の住む住宅街へと
入って行った…



No.50 11/10/13 21:47
クロス ( ♀ gAVFh )

>> 49

なんだか 頭がクラクラする。


しっかりしろ

と 自分を励ます。



鼻唄をうたう摩耶が愛おしい。




ママ 負けないよ。摩耶。





何に?






軽い興奮状態の私には

正直
なんの計画もない。





ただ 確かめたかった。



今 駐車場には いないだろうはずの 夫の行方を…




指をくわえて

再燃したであろう
夫と女の恋愛を


みすみす 見逃すような真似だけは したくなかったのだ。






あの角を曲がれば

J君の 駐車場だ。





そこに夫が


いる事なのか いない事なのか




望む状況も わからずに

祈るような気持ちで

私は ハンドルをきった。



  • << 51 夫は いた。 J君と 2人で。 放心し ハンドルに顔をうずめる私。 「ママ…?」 心配そうに 摩耶が呼ぶ。 どうしよう どうしよう どうしよう 言い訳もない。 空き地の 目の前だ。 とまった私の車に 夫もJ君も 気づかないわけがない… どこかで 気の荒い夫を 『怖い』と思っている私は 一気に イタズラを見つけられた 子供のようになってしまった。 安堵などない。 人影が 近づいて来るのを 目の端で とらえた。
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