- 注目の話題
- これが、ありのままの俺
- 婚活する時の服装
- どういう印象なのか?
ナナの冒険
遥か昔、人間とドラゴンは仲良く暮らしていた。
ある時、人間とドラゴンは争う事になってしまった。
それは、山に成るたった1本の木の実をどちらが食べるかである。
ただ、それだけの事で人間とドラゴンは争う事になった。
そして戦いの末に人間がドラゴンに勝利した。
ドラゴンは人間に追われ行き場を無くし考えに考えた。
それで見つけたのが姿を消す事だった…。
人間はどうしてこうも愚かなんだろう。
いつか自分の首を絞めて人間自体いなくなるだろう。
気づいて欲しいアナタの周りには人間と別の命がある事を…。
新しいレスの受付は終了しました
>> 50
『この先には滝があるんだ。』
『タキ?』
『説明は難しいな。水が高い所から低い所に落ちている場所だな。ほれっあそこを見な。水が流れている…
『うん。分かった。』
ナナはそう言うと洞窟の壁に擦り付けた。すると皮がスルリと剥けた。
『あっ腕の所が剥げたよ。』
洞窟の壁に半透明の皮がついていた。
『残りはもう少しかかりそうだから後からにしよう。』
『うん。分かった。』
ナナは一回り大きくなっていた。脱皮をするようになったのはドラゴンとして青年期に入った事を示した。だが、その事はもう少し後で話すとしよう。
ナナ達は滝を目指し歩いて行った。すると奥から水の落ちる音が聞こえて来た。
ザァーーーッ
『ナナ。あれが滝だ。』
ナナ達の前には大きな壁があり、その中央から水が落ちて滝になっていた。水が落ちた所は池のようになっている。
『あれが、滝なんだね。キラキラして綺麗だね。』
ナナは滝に近づくと池を覗き込んだ。微かにナナの姿が映っていた。洞窟の中だから暗いと思いだろうが、この洞窟には自ら光を放つ光苔と言う苔が、壁一面を覆うように生えていた。その薄明かりの中、滝から落ちる水がキラキラと輝いていた。
『ナナ、水に入るなよ。思ったより冷たいからビックリして死んでしまうぞ。』
トムスがそう言ったが、一足遅かった。
>> 54
ナナは片足を既に水の中に入れていた。
『ヒャ~~~冷た~い。』
ナナはビックリして後ろ向きに倒れた。その勢いでトムスとシェンは飛ばされてしまった。
うわーーーっ!!
トムスとシェンは目を回したのかフラフラしていた。やっと収まったのかナナの所まで走って来て言った。
『行動する前に話をちゃんと聞けーーー!!』
トムスはかなり怒っているのか、大きな声で怒鳴った。シェンは別段怒っている風では無かった。
『ごめんね…。』
ナナはすまなそうに謝った。
『頼むから俺の話はちゃんと聞くんだぞ。』
『うん。分かったよ。』
ナナは体を低くした。トムス達は腕からスルスルと登り肩の定位置に掴まった。ナナはゆっくり体を起こすと尋ねた。
『ねぇ…これからどうするの?』
『そうだな…これ以上は進めないし、戻るほかないな。ナナはどうしたい?』
トムスが尋ねるとナナは横目で見るとこんな事を言った。
『ボクね。川と海が見てみたい。』
『川と海かぁ…。川なら見に行けるかもしれないぞ。この水の流れを辿っていけば、川に出る事が出来るはずだ。シェンお前はどうする?』
トムスはナナの顔から微かに見えるシェンに尋ねた。
- << 57 『皆さんが行くならお供しますよ。私も暇ですからね。』 シェンはそう言うとナナの頭にある角の所まで登った。トムスもそれを見て登った。 『肩より眺めが良いな。それではナナ出発だぁ~!』 『なら落ちないでね。』 ナナは水の流れを見ながらゆっくりと歩き出した。しばらく歩くとさっき見たもう一つの洞窟に着いた。 『ナナ、ここを進んだら川に出るはずだ。』 『うん。分かった。』 そう言うともう一つの洞窟を川へと歩き出した。こちらの洞窟にも光苔がビッシリ生えていた。月明かりぐらいの明るさだ。 『おーい。ナナじゃないか。』 目の前を飛んでいる物が見えた。ナナはじっくり見るとそれはパタだった。 『あっパタさんこんばんは。何をしているの?』 パタは洞窟の壁から飛び出た岩にしがみつくと羽根を閉じた。 『ナナ…。それはこっちの台詞だ。こんな夜更けに何をしているんだ?』 パタは頭を捻りながら尋ねた。 『洞窟の中を探検して、今は川を見に行く所だよ。』 ナナはニッコリと笑った。 『なに川を見に行くのか。ここを真っ直ぐ行ったら川はあるが、この先には滝があるから歩いては行けないかもしれないぞ。
>> 55
ナナは片足を既に水の中に入れていた。
『ヒャ~~~冷た~い。』
ナナはビックリして後ろ向きに倒れた。その勢いでトムスとシェンは飛ばされて…
『皆さんが行くならお供しますよ。私も暇ですからね。』
シェンはそう言うとナナの頭にある角の所まで登った。トムスもそれを見て登った。
『肩より眺めが良いな。それではナナ出発だぁ~!』
『なら落ちないでね。』
ナナは水の流れを見ながらゆっくりと歩き出した。しばらく歩くとさっき見たもう一つの洞窟に着いた。
『ナナ、ここを進んだら川に出るはずだ。』
『うん。分かった。』
そう言うともう一つの洞窟を川へと歩き出した。こちらの洞窟にも光苔がビッシリ生えていた。月明かりぐらいの明るさだ。
『おーい。ナナじゃないか。』
目の前を飛んでいる物が見えた。ナナはじっくり見るとそれはパタだった。
『あっパタさんこんばんは。何をしているの?』
パタは洞窟の壁から飛び出た岩にしがみつくと羽根を閉じた。
『ナナ…。それはこっちの台詞だ。こんな夜更けに何をしているんだ?』
パタは頭を捻りながら尋ねた。
『洞窟の中を探検して、今は川を見に行く所だよ。』
ナナはニッコリと笑った。
『なに川を見に行くのか。ここを真っ直ぐ行ったら川はあるが、この先には滝があるから歩いては行けないかもしれないぞ。
>> 57
ワシのように飛べるなら行けるがな。飛べないなら危険だから止めておけ。』
逆さにぶら下がっているパタはそう言うと飛び上がった。
『えっ行けないの?』
ナナがそう聞いた。するとパタは何かを思い出したのか、ナナ達の前に来てから言った。
『いや、待てよ。もしかすると歩いても行けるかもしれないな…。』
『本当に?』
ナナは嬉しそうにした。
『ああ、確か滝の横に歩いて降りれる所があったと思う。まずは行って見るしかないな。』
するとトムスが言った。
『それならオレも知っているよ。前に一度行った事があるからな。』
『それなら大丈夫だよね。とにかく行ってみる。』
ナナはパタにそう言った。
『まあ、精々気を付ける事だな。』
パタはそう言うとどこかへ飛んで行ってしまった。
『行っちゃったね。』
『でも、ナナ確かに降りれるが、オレみたい小さいと降りやすいが、ナナは大きいからわからないかもしれないぞ。』
トムスは顎の下に手を起きそんな事を言った。
『でも行ってみないとわからないよね。そうだよね。』
ナナは必死にトムスに尋ねた。
『そうだな。行く前から諦めていたらダメだな。とにかく行ってみよう。』
>> 58
トムスは拳を上げた。それに合わせてナナとシェンも上げた。
おーーーっ!!
再びナナ達は川を目指し歩き出した。ほのかな明かりの中進んで行くと遠くから水の落ちる音が聞こえて来た。
ザァーーー!!
『もう少しで滝のようですね。舌が反応していますよ。』
シェンは舌をペロペロさせながら言った。
『微かだが、水の音もするな。』
トムスは横にいるシェンに言った。シェンは頷きナナの顔を叩きその事を知らせた。最初の滝から流れて来た水が視界から消え下に落ちている。
『うわぁ~ここが、パタさんが言っていた滝なんだね。』
ナナは何も考えず下を覗こうとする。
『おいおい、覗くな!急に下を向いたら落ちてしまう!』
ナナの頭の上のトムスとシェンが落ちそうになり、ぶら下がっていた。
『あ~ごめんなさい。』
ナナは頭を起こした。トムス達はなんとか落ちずにすんだ。
『この野郎!あれだけ言っただろうが!行動する前には話を聞けと!』
トムスは頭の上でかなり怒っていた。
『もう1つ付け加えておかんとな。行動する時には周りに気をつけるだ。分かったな。』
トムスは腕を組み下に居るナナに言った。
『うん。分かった。』
>> 59
ナナは思わず頷いてしまった。再び、トムス達は落ちそうになった。
『バカやろう!言ったそばから何しやがるんだ。』
トムスはナナをペンペンと叩いた。
『ごめんなさい。』
『まあまあ、トムスさん。ナナの頭に乗っている私達も気をつけたら良い事ですよ。』
シェンはトムスをそう言って止めようとしている。
『しかし、なぁ~こういう事は小さい時に教えておかないと…。』
トムスは飛び跳ねながら言っているとナナが笑い出した。
『クスクスクス……。』
『ナナ何を笑ってやがる!?』
『だってママみたいなんだもん。トムスさんは今日からもう1匹のママだ。』
ナナは手を口に当て笑っている。
『バカやろう!オレはオスだ。それを言うならパパだ!!』
トムスは飛び跳ねながら怒鳴っている。
『じゃあ、今日からトムスさんはボクのパパだ。クスクス…。』
『こらぁ~!笑うな~!』
トムスはナナをペンペンとまた叩きながら、一緒に笑い出した。シェンも笑っている。洞窟には3匹の笑い声が響いていた。
『あんたらうるさいよ!』
突然、近くの岩場から声がした。3匹は笑うのを止めて辺りを見回した。
>> 60
かなり上の窪んだ岩場に顔を出しているオカメインコがいた。
『いい加減にしてよ。何時だと思っているんだい。近所の迷惑を考えたらどうなんだい?』
オカメインコはパタパタと下に降りて来て目の前の岩に止まった。そのオカメインコの体は黄色く、頬に赤い模様がある。まるでおかめさんのようだからオカメインコと言うのだろうか?そのオカメインコはまだ気が済まないのか、3匹を説教しだした。
『だいたいねぇ…夜行性の動物じゃないでしょう。なら巣に帰って寝なさいよ。私はやっと住みやすい所を見つけて、さて寝ましょうかと寝かけたら、あんたらの笑い声。安眠妨害も良い所だよ。ガミガミ…』
それからオカメインコの説教は30分も続いた。トムスは聞き疲れて寝てしまった。シェンはおっかないのかナナの角に隠れビクビクしていた。ナナはと言うと黙って笑顔で聞いている。
『…と言う訳で大変だったのよ。それで…』
オカメインコは説教している内に説教から世間話に話は変わっていた。それからどれぐらい経っただろうか、オカメインコはまだ話をしていた。
『…と言う訳で…ん?ありゃみんな寝てしまったよ。』
ナナ達3匹はいつの間にか寝てしまっていた。
>> 61
『ちょっと長すぎたかな。さて、私も帰って寝ましょうか。』
オカメインコは飛び上がり元いた窪んだ岩場に飛んで行った。それからしばらくして、滝の方から朝日が差し込み、遠くから小鳥たちの声が聞こえていた。朝日に反射して滝のしぶきがキラキラ輝いていた。ナナは岩場に背中をつけ眠っている。最初に目を覚ましたのはトムスだった。
『…ん?ありゃ寝てしまったな…。コイツらも寝てしまったんだな。おい、起きろ。朝だぞ。』
トムスはナナの頭を叩き、そして横で寝ているシェンを揺さぶった。シェンはすぐに目を覚ました。
『おはようございます。もう朝なんですね。ナナはまだ寝てますね。』
トムスとシェンは下を覗いた。ナナは鼻ちょうちんを作りながら寝ていた。
『多分、ナナが一番最後まで、あのオカメインコの話を聞いていただろうからな。そう言えば、オカメインコはどこに行ったんだ?』
トムス達は上の方を見回した。すると黄色い顔が覗いていた。それは昨夜のオカメインコだった。
『あそこに居るのそうじゃないですか?』
シェンがトムスに聞いた。するとトムスは頷いた。
『間違いないね。昨夜のお喋りなオカメインコだな。』
>> 62
オカメインコは起きている訳ではなく。眠った状態で窪みから頭と羽根をダラ~ンと出していた。するとナナが動いた。トムス達は角に掴まり落ちないようにした。トムスは足でナナの頭を蹴った。そのショックでナナは目覚めた。
『トムスさん、シェンさんおはよう…。2匹とも早起きなんだね。』
『ま、まぁ~ね。』
トムスはちょっと意味ありげに言った。しかし、ナナはその事に気が付いてなかった。おとぼけさんだからそうなのだが…。
『ナナすまない。ちょっと下ろしてくれるか?』
『うん、分かった。』
ナナは体制を低くして岩場に手を置いた。トムス達が頭から肩へ。そして腕をつたい岩場に飛び乗った。
『よし。これで普通に話せるな。』
岩場にちょこんと座っているトムス達とナナを比べるとかなり大きさが違う。
『ナナそこに座ってくれ。』
『うん。分かった。』
ナナは言われるまま地べたに座った。
『なぁ、川を見に行く予定だったが、もう朝になった。今からだと遅くなるかもしれない。川に行くのは一度止めて今夜にしないか?』
トムスの言う事は一利あった。このまま、川に行くとなったら、どれだけかかるか分からなかった。
>> 63
『えぇ…。川を見に行きたいな。』
ナナは手足をバタバタさせワガママを言った。まるで、オモチャ屋の前で駄々をこねる子供のようだ。
『だから、今からじゃなく夜でも良いじゃないか。』
『絶対、行きたいもん。行かなきゃもう口をきかないからね。』
今まではワガママを言わなかったナナが、こんなにワガママを言うとは、よほど川を見たいのだろうと思った。すると突然、ナナ達の前に黄色い物が横切りトムスの目の前に舞い降りた。
『あんたら何度言ったら分かるのかねぇ~。朝からうるさいよ。』
不機嫌そうにオカメインコが言っている。
『あのねぇ~。朝なんだからみんな起きる時間だろう。起きてて話して悪い訳?まあ、遅くまで夜中に1羽で話していたのが悪いのじゃない。』
トムスは少し嫌みを含めニヤニヤしながら言った。
『……。』
しばらくの沈黙があり、オカメインコは言った。
『今日も良い天気だね。さあ、朝食でも探しに行こうかね…。』
オカメインコは飛び立とうとした。しかし、トムスが肩を掴んでいた。オカメインコは苦笑いしながら振り返った。
『私の名前はキーだよ。よろしくね。』
キーは羽根を出して握手を求めた。
>> 64
『うん。よろしくね。』
ナナは普通に答えて指を差し出していた。トムスは呆れて見ていた。
『ところでキーさんよ。飼われている鳥のようだけどなんで、この洞窟に住んでいるんだい?』
キーは岩の上をうろちょろしながら何かを考えている。何をそんなに考える事が、あるのだろうとトムスとシェンは思っていたが、ナナはただ、ニコニコしながら見ていた。しばらくうろちょろしていたキーはやっと話し出した。
『私は確かに人間に飼われていたよ。最初は毎日のように遊んでもくれたし、部屋の中だけど自由に飛ばしてくれて、本当に楽しかったよ。でもね、ある日その家に子猫がやって来たんだよね…。』
キーは急に黙り込んでしまった。トムスとシェンはどうしたのだろうとお互いを見合いながらキーを見た。そんな中、ナナは相変わらずニコニコしていた。
『キーどうした?』
心配になりトムスが聞いた。
『ごめんよ。思い出したら悲しくなってね。』
『話したくないならもう言わなくて良いぞ。』
『いや、大丈夫だよ。』
『そうか…。』
洞窟の中に重い空気が流れた。
『人間はね。私の事なんて忘れたように、子猫に夢中になってね。
>> 65
私はいつも高い鳥かごからそれを見つめていたよ。そんなある日、人間が留守でいない時に子猫が私に近づいて来た。そう私を食べようとしていたのさ。もちろん高い所にあるから簡単に届く事は無かったけどね。でも、何度かやっている内に子猫の爪が鳥かごに当たってね。そのまま鳥かごごと床に落ちたのよ。その時、鳥かごの扉が開いていたから思い切って逃げ出したと言う訳さ。』
ナナ達は黙っていた。
『何だよあんたらどうした?』
うわーーーん!!
みんなが一斉に泣き出した。
『ねぇねぇ泣くことないでしょう。こりゃ参ったね…。』
ナナ達はしばらく泣いていたが、キーがなんとか慰め泣き止んだ。
『ところであんたらここで何をしているんだい。』
そう昨夜のキーの乱入で川を見に行くのが出来ないでいた。そして今からではなく、夜にしようと話をしていた所だった。
『トムスさんやっぱり川を見たいよ。』
ナナはどうしてすぐに見に行きたいようだ。
『しかし、この滝を降りる所も分からないしな…。』
するとキーが割り込んで話し出した。
『それなら私知っているよ。』
みんながキーを一斉に見た。
『それはどこなんだ?』
>> 66
キーは羽根で場所を示した。それは滝の右側を指差していた。すかさずトムスがその場所に駆け出した。滝の下を見ながら様子伺っている。
『これなら下に降りれそうだ。しかし、ナナにはギリギリかもしれないな。』
ナナ達はトムスの所に近づいた。そしてみんなで下を覗いた。
『これは、少しばかり高いようですね。』
シェンが言う。高さは3mほどだが、ナナ達にとっては高いようだ。
『ナナさんどうしますか?やはり今は止めて夜にしませんか?』
『う~ん。でも、早く川を見てみたいな。』
何故、そんなに川にこだわるのか、わからなかった。考えていたトムスが言った。
『仕方ない。でも何があっても知らないからな。なら行こう。』
トムスとシェンはナナの腕を伝い頭の上に行き、角に掴まった。
『ナナ…。気を付けなよ。ここの岩は苔で滑りやすくなっているからね。』
『うん。分かった。』
そう言うとゆっくりと階段状になっている岩場を降り始めた。近くでキーが心配そうに飛んでいる。ナナはたまに、キーを見て微笑んだ。
『よそ見しないで…。しっかり足元を見なさい。本当にこの子ったら…。』
『うん。気をつける。』
>> 67
まるで母親にでもなったような気分だった。ナナは相変わらずの笑顔でゆっくりと降りて行った。だが、次の瞬間…。
ズルッ!!
ガラガラ……
ヒューーー
ドボンッ!!!
なんとあることか、ナナは足を滑らせ滝壺に落ちてしまったのある。慌ててキーが滝壺の辺りまで行くがナナ達が見つからない。
『おーい!?みんなどこだい?返事をしな!!』
キーはしばらく探すがナナ達の姿が見当たらない。
『助けてーーー!!』
その声を見ると、ナナ達が凄い勢いで流されていた。この滝壺から川に通じる洞窟はかなり急な坂になっており、落ちた反動で流されてしまったようだった。ナナの角に必死に掴まるトムスとシェンの姿も見えていた。
『大丈夫かい?』
キーは必死になってナナ達の後を追った。しばらく追っかけていると目の前が明るくなって来た。そう、洞窟の出口だ。これを越えたら川になる。しかし、洞窟の出口から川までは10mの高さがあった。
『ナナなんとかしろ。この先は危険だ。とにかく横に泳げ。』
トムスの声にナナは必死に泳ぐが流れが早すぎて全然進まない。
うわーーーっ!!
視界が真っ白になり宙に浮いた。そして下へと落ちて行った。
>> 68
『ナナ、羽根を羽ばたかせろ。早く、早くだ。』
トムスがそう叫ぶとナナは羽根を羽ばたかせた。
パタパタ…。
一瞬浮かんだように思えたが、気のせいだった。
ドボンッ!!
ナナ達は川へと落ちてしまった。まだ、ナナの羽根は役には立たなかった。キーも遅れて洞窟から飛び出した。そして落ちた辺りを飛んで探していた。
『うわぁ~!!』
川の中からナナが顔を出した。角にはトムスとシェンが掴まっていた。
『あんたら大丈夫かい?』
呼びかけるが、どんどん流されて行く。しばらく流されて行くと川の流れが緩やかになった事もあり、ナナは岸に向かって泳ぎ出した。
『ナナ大丈夫か?』
『うん。これならなんとか行けそうだよ。』
ナナがそう言ったもつかの間、また流れが速くなった。
『うわぁーーーっ!!』
川幅が急に狭くなり流れが速くなったのだ。すると目の前の川が2つに別れていた。ナナ達は流れに任せ左側の方へ流された。また、流されが緩やかになりどこかで見た風景が見えて来た。
『あっここはママと来た事ある。』
そうここは昨日、ナナが少年と一緒に来た池だった。
『ナナ、ここを知っているのか?』
>> 69
トムスはずぶ濡れの体を震わせ水しぶきを飛ばしながら聞いた。
『うん。昨日来たよ。』
ナナは岸に向かい泳ぎながら言った。ちなみに泳ぎは犬掻きである。するとシェンが何かに気が付いた。
『ねぇ…あそこに人間がいるよ。』
指差した方を見ると人間が釣りをしていた。
『あれぇ~?あのおじちゃんも知っている。』
『何?あの人間も知っているのか?』
『うん。あのおじちゃんも昨日ここで見た。』
ナナはにっこり笑った。
『どっちにしても、見つかったらヤバいな…。』
トムスは悩み考え込んでいる。するとそのナナの言うおじちゃんがナナ達に気が付いた。
『あっお前は昨日のヤツじゃないか?大丈夫か?』
そう言うと近くにあった釣り用の長い棒の網を差し出して来た。ナナは網の先に掴まると引っ張り岸へ引き上げた。
『君達大丈夫か?』
おじちゃんは不思議がる事なくそう言った。
『お前怪我しているな。ちょっと待ってろ…。』
ナナは滝からこの池に来る間に怪我をしていたようだ。おじちゃんは箱を開け何かを探して瓶を取り出した。。
『おお、これだ。これで少しは良くなるだろう。』
>> 70
おじちゃんはそう言いながらナナの体に出来た擦り傷に瓶の中の何かを塗って行った。
『これで大丈夫だ。明日には治るだろう。上の2匹は問題ないようだな。』
おじちゃんは微笑むと瓶を箱に戻した。
『おじちゃんありがとう。』
おじちゃんは手を左右に振りながら言った。
『気にする事はない。ところで今日は少年はどうした?昨日一緒だったろう?』
おじちゃんは置いてあった釣り竿に餌を付けながら尋ねた。
『ママ…ママは居ないよ。』
『あっそうか。まだ、こんな時間だしな、学校に居るか。ハハハ…。』
おじちゃんは軽く笑いながら池に目掛けて竿を振った。
『あの人間は害はないようですね。』
『そのようだな。』
トムスとシェンはそんな事を話していた。
『あっキミ達お腹空いてないかい?』
そう言われると朝から何にも食べていなかった。3匹揃って頷いた。
『おう、そうか。それならコレをあげよう。』
そう言ってバッグから出したのは、木の実のような物だった。
『ほれっ食べろ。』
ナナ達の目の前にそれを置いた。トムスが鼻でそれを嗅いだ。
『大丈夫だ。毒なんぞ、入っておらんよ。ははは…。』
>> 71
トムスがそれを持ち上げ一口かじってみた。
『美味い。これはなんだ…。ナナのくれたクッキーの味がする。』
ナナも拾って食べた。
『本当だ。ママがくれるクッキーみたいだね。おじちゃんこれ美味しいよ。』
『そうか。美味しいか。それなら良かった。』
おじちゃんは笑顔で見ている。2匹は美味しいのかバクバク食べていた。しかし、1匹だけ浮かない顔をしていた。
『シェンどうした?食べないのか?』
トムスがそれに気づき尋ねた。
『キミ達と違ってこんな物は食べないからな…。』
シェンはトカゲだから虫などを主食にしていた。だから、木の実とかは食べた事が無かった。するとおじちゃんがそんなシェンに言った。
『大丈夫だ。キミでも食べられるよ。試しに一口食べてみたら良い。』
シェンは一度おじちゃんを見て目の前の木の実を食べてみた。
『うわぁ~~~っ、美味いよこれは…。こんな食べ物があるんだね。』
よほど美味しかったのか一気に食べてしまった。おじちゃんはそれを見て微笑んだ。
『まだまだあるからいっぱいお食べ。ところで、あそこに居るのはキミ達のお仲間かな?』
ナナ達の近くの木に隠れるように、キーがとまっていた。
>> 72
ナナ達を追っかけて来たのだろうが、人間がいる為に近づけないでいたのである。
『せっかくじゃ。こっちに呼んであげたらどうだ?』
おじちゃんは微笑みながら言った。ナナ達はその方を見た。
『本当だ。あんな所に居やがる。』
するとナナが叫んだ。
『お~い。こっちにおいでよ。このおじちゃんは大丈夫だよ。何もしないから早くおいでよ。』
ナナは手招きをした。トムスとシェンも一緒に手招いた。キーはしばらく木の陰で考えていた。そして決心がついたのか、飛んでナナの頭の上にとまった。
『ほれっキミも降りてこれを食べなさい。』
おじちゃんは優しく言った。キーはしばらく警戒していたが、木の実の所に降りて啄(ついば)んだ。
『何これ!こんな食べ物初めてだよ。美味しいね。』
キーも夢中になって食べていた。ナナ達は腹いっぱい食べた性か眠くなった。キーの夜中の長話の性でもあるかもしれない。木陰でみんなで寄り添うように眠ってしまった。どの位寝ていたのだろうか、太陽が西に傾き始めていた。一番最初に目を覚ましたのは、トムスだった。
『おい、みんな起きろ。もう夕方だ。』
みんなが目を覚ました。
『あれっおじちゃんは?』
>> 73
ナナが辺りを見回して言った。おじちゃんの居た所には何も無かった。そして、みんなが食べた木の実の欠片さえも無くなっていた。
『もしかして俺達は夢でも見ていたのか?』
『ユメ?』
『夢とは寝ている時に見るもんだ。覚えているかどうかは分からないがな。』
トムスはまるで先生のように説明をした。ナナは何かを思い出した。
『ボクたまにね。その夢を見るよ。大きな山のてっぺんに大きな木があってそこにはいっぱいの木の実が…。』
ナナは急に黙った。それに気づきトムスが尋ねた。
『どうした?』
『…ううん。何でもない。そろそろママ来る時間だから急いで帰らないと。』
『そうだな。それじゃ帰りますかね。』
ナナ達は森の道を洞窟へ歩いて帰った。
その頃、洞窟に向かう人影があった。それは少年だった。
『お~いナナ?ナナ~?』
洞窟の中に入りナナを繋いだ所に行くが姿が無かった。そして紐に気が付いた。
『あっ紐が切れている。どうしたんだろう?』
少年は辺りを見回したがやはりナナの姿が見当たらない。
『ナナ~?ナ~ナ~?』
そう叫びながら洞窟の奥へと入って行った。
>> 74
しばらく歩いて行くと岩についている半透明の物を見つけた。それを取ってみた。
『これは抜け殻かな?かなり大きいからもしかしたらナナのかもしれない。なら、もっと奥に行ったのかな?』
そう言うと更に奥へと入って行った。しばらく行くとまた呼んでみた。
『ナナ~居ないの~?』
すると目の前に何かが飛んで来た。
バタバタ……
『うわっ!?』
それに驚き転けた。そうそれはパタの息子達が声に驚いて飛び出したのだった。
『うわ~っ何だ?』
少年は怖くなり出入り口の方に走って逃げ出した。やっとの思いで出入り口に着いた。
ハァハァ……
『今のは何だったんだ?それにしてもナナは居なかったな。もしかしたら森の方に行ったのかな?』
少年は辺りの森の方を見渡した。
『もしかして池に行ったのかもしれないな。ちょっと行ってみよう。』
少年は池の方に歩き出すと前から一台の車が走って来た。
『あれっどこかで見た車だな…。』
すると車が少年の横で止まった。そしてウィンドウがゆっくり開いた。
『あっ!』
思わず声が出てしまった。
《昨日のおじさんだ。どうしょう?》
そう心の中で思っていた。
>> 75
『やっぱり君か。何をして居るんだい?』
おじさんはにっこりと微笑んだ。
『ちょっと…。』
『ちょっと探し物かな?』
おじさんは笑った。
『探し物ならもうすぐ帰って来るよ。それじゃ気をつけてな。』
おじさんはそう言うと車を出してどこかに行ってしまった。
『もうすぐ帰って来る?』
少年にはおじさんがそんな事を言ったのか分からなかった。
すると目の前をヨチヨチ歩いて来るナナの姿が見えた。
『あっナナー!!』
少年は駆け出した。そしてナナ達も気が付いた。
『ママだ。ママ~!!』
ナナもそう叫んだ。
『ナナ、オレ達はここで降りるよ。人間に見られたくないからな。ママによろしくな。』
そう言うとトムス達はナナから飛び降りた。そして森の方へ消えて行った。
『ナナ…。どこに行っていたんだよ。心配したんだぞ。』
少年はナナを抱きしめるとそんな事を行った。
『ママ、ゴメンね。みんなと川を見に行っていたんだよ。』
キィーキィー
しかし、少年には鳴き声しか聞こえて無かった。ナナはそんな少年を見つめていた。
『あれっナナ怪我しているじゃないか。どうしたんだ?』
>> 76
少年はナナの怪我に気づき心配そうに見ている。
『大丈夫だよ。おじちゃんに何かを塗ってもらったから。』
少年には鳴き声しか聞こえて無かった。ナナの傷口を見ていた。
『何か塗ってあるね。誰が塗ったのだろう?まあ良いか。手当てしてもらったようだからね。とりあえず、洞窟に行こうか。』
そう言うと少年はナナを連れて洞窟に向かった。
『ナナ、あまり出歩いたら駄目だよ。良いね?』
少年はナナにそう言い聞かせるように言った。
『うん。分かった。』
『うんうん、分かったなら……えっ?』
少年は驚いた。今、確かにナナの声が聞こえたように思えた。
『あれっ空耳かな?ナナの声が聞こえた気がしたけど…。お前は喋れる訳ないよな…。』
キィーキィー
やっぱり鳴き声しか聞こえてない。
『やっぱり空耳だったかな…。』
そう言っている内に洞窟に着いた。
『そうだ。紐はどうして切れたんだろう?』
少年は紐を持ち上げ見てみるとかじられた後が有った。
『どうやったか分からないけど、苦しかったのかもしれないな。今日はちょっと緩く結んでおこうかな。』
少年はそう言うとナナの首に紐を緩く結んだ。
>> 77
『ナナ、ごめんね。でも、今日みたいに居なくなったら悲しくなっちゃうからね。じゃあ、また明日来るからね。良い子にしていてね。』
少年はナナを見つめながら後ろ歩きをした。そして手を大きく振ると振り返り走って帰って行った。
キィーキィー
『ママ~またね。』
ナナはそう叫んでいた。前のように寂しくは無かった。何故なら洞窟には沢山の仲間が居るからだ。すると岩の陰からトムスが顔を出し辺りを見渡した。少年が居ない事を確認すると駆け寄って来た。
『もうママは帰ったんだな。』
『うん。帰っちゃった。でもね、寂しく無いんだ。』
ナナは笑顔でトムス達を見た。
『だって、ここにはみんなが居るもん。だから、寂しくないよ。』
『お前も少しの間に成長したな。ははは…。』
トムスが大きな声で笑った。
『皆さん私は今日は疲れました。帰ります。』
シェンが疲れた顔をしている。
『そうだな。今日はこのぐらいにして帰ろう。』
トムスもそう言うといつものように手をあげながら帰って言った。
『みんなバイバーイ。』
ナナは手を振って見送った。すると頭の上に何かが乗っかった。
『…ん?』
ナナが見上げると黄色い顔が覗いていた。
>> 78
キィーは頭から近くの岩に飛び乗った。
『あんた、人間に飼われいたんだね。』
キィーは知らなかった。昨夜、偶然に会ったからである。
『良く分からないけど、トムスさんもそう言ってた。』
ナナは笑顔を見せた。
『そうかい。それであのおじちゃんだっけ、見ても平気だったんだね。それにさっきの人間の子供も…。じゃあ、あんたと私は一緒だと言う事だね。』
『いっしょ?ならキィーさんにもママが居るんだ。』
ナナは妙にはしゃいでいる。
『ママねぇ…。そりゃ居たと思うよ。生まれた時には人間に飼われていたけどね。ナナにとって育ててくれた人間をママだと思っているんだね。』
キィーは羽根を組ながら頷いていた。
『…ん?どういう事?』
ナナには分からない事だから、キィーは説明を始めた。
『どんな生き物にも産んでくれた親ってものがあるんだよ。人間は育ての親ってとこかしらね。』
『産んでくれた親…育ての親…?』
ナナには理解の出来ない事ばっかりだった。
『あんたには少し早かったかな?大きくなったら分かるよ。それじゃ私も帰って寝るよ。それじゃね。』
キィーは洞窟の奥に飛んで行ってしまった。ナナは手を振った。
>> 79
『今日は本当に疲れちゃったな…。』
ナナは大きな欠伸をするとうずくまって眠りについた。そして、ナナは夢を見た。
『あれっ?ここはどこだ?』
目の前には大きな山があり、そのてっぺんには大きな木が立っていた。ナナは近づいてみた。
『うわぁ~!!大きな木だな。…ん?』
そこにはどこかで見た事がある木の実がなっていた。
『あっこれはおじちゃんがくれた木の実だ。あっこっちにもあっちにも。』
ナナは夢中になって木の実を取った。
『誰だ?勝手に木の実を取る奴は?』
ナナは振り返るとそこには大きな何かが立っていた。
『ごめんなさい。この木の実美味しいから。』
ナナは微笑んだ。
『貴様はここのルールを知らない泥棒だな。許さん。』
その大きな何かはいきなり手をあげるとナナを殴った。
『うわぁーーー!!』
そこでナナは目を覚ました。辺りを見回した。
『なんだ…夢だったんだ。驚いちゃったよボク。でも、懐かしい気がしたなぁ~。あの景色にあの大きな何かも…。』
ナナは頭をひねりながら考えていた。
『う~ん。考えてわかんないや。また寝ようっと…。』
そう言うとまた眠りについた。
>> 80
チュンチュン…
『ふぁ~~~っ。もう朝か。今日はゆっくり寝たな。』
『ようナナお目覚めかい。』
声の方を見るとスズメの3兄弟がいた。
『あっみんなおはよう。』
ナナは起き上がり3兄弟のいる方を見た。
『昨日はどこに行っていたんだ?遊びに来たら居なかったからな。』
シロが木の枝から飛び立ち、ナナの目の前の岩に止まった。それを追いかけるようにツンとブクも飛んで来た。
『昨日はね。川を見に行ったんだよ。』
ナナが楽しそうに話した。
『へぇ~川ね。』
『そう川。でもね川に落ちちゃって大変だったんだ。』
『川に落ちた。そりゃ大変だ。それでどうなった?』
シロは興味津々で話を聞いている。
『そしたら、ここの近くの池にたどり着いた。』
『ほうほうそれで…。』
シロは前つんのめりで話をまた聞いた。
『そしたらおじさんがいてね。木の実をくれた。それがとっても美味しくていっぱい食べたよ。』
『何っ木の実!?何の木の実なんだそれは?』
その話を聞いて今まで無関心で座り込んでいたブクが、起き上がり岩のギリギリまで寄ってきた。
『わかんない。でも、ママのくれるクッキーの味がしたよ。』
>> 81
その話を聞いて3兄弟はヨダレをたらしている。
『俺達も食べたかったなぁ~。』
さらに3兄弟の口からヨダレがポタポタ落ちていた。
『ならまたみんなで行ってみようぜ。』
後ろからそんな声がした。見るとネズミのトムスが立っていた。
『もしかしたら今日もおじちゃんだっけ、来ているかもしれないからな。』
それに飛びついたのは3兄弟だった。
『行こう行こう。今から行ってみよう。』
『ナナお前はどうするんだ?』
トムスが尋ねる。
『う~ん。ボクも行きたいな。でも、これがあるから…。』
ナナは首に掛かった紐を見せた。
『それならまたオレが噛み切ってやるよ。』
『でも、ママがまた心配するよ…。』
ナナが悲しそうな顔をした。トムスはナナの体を駆け上り紐の所まで来た。
『トムスさん噛み切らないで…。』
『ちょっと黙っていろ。』
トムスは少し強めに言うと紐を食い入るように見つめていた。
『おい、ナナ…噛み切らないですみそうだ。』
トムスがニヤニヤしている。
『トムスさんどう言う事なの?』
『あのな…今回はママが緩く結んでいるからそのまま外せそうなんだよ。とりあえず手で紐を引っ張ってみろよ。』
>> 82
ナナは言われるまま紐を引っ張ってみた。すると紐が頭からスルッと抜けた。
『あっ抜けた。トムスさん抜けたよ。』
ナナは抜けた紐をトムス達に見せた。
『そうだろう。今日は紐がユルユルだったからな。よし、これでどこにでも行けるな。帰って来てまたハメたらママも心配しないぞ。』
トムスは自慢げに説明している。
『本当だ。これなら大丈夫だよね。』
ナナは喜んで跳ねている。
『よし、それなら出発しようか。』
トムスはそう言うとナナの頭の上に登った。そして池に向かって歩き始めた。
『おーい、待って下さい。』
後ろを振り返ると必死に追っかけて来るシェンが居た。
『あっシェンさんだ。』
シェンは息を切らしながら追いついた。
『ハァハァ…池に行くなら私も連れて行って下さいよ。』
『すまないな。お前の事忘れていたよ。』
トムスは頭をポリポリと掻いていた。
『頼みますよ~。』
シェンは困った顔をしながらナナの尻尾から頭へと登った。
『やっぱりここは高くて良いや。』
シェンはおでこに手を置き辺りを見回した。
『さぁ、ナナ行こうぜ。』
『うん。』
みんなは池に向かって歩き出した。
>> 83
ナナの上空をスズメ3兄弟もついてきていた。森の道をみんなで歌を歌いながら歩いて行った。
『池が見えて来ました。』
シェンが一番最初に池に気づき叫んだ。
『本当だ。ナナもう少しだ急ごう。』
道が開けて池の全体が見渡せる場所に出た。
『おじちゃん居るかな?』
みんなで辺りを見渡した。しかし、おじちゃんの姿はどこにも無かった。
『おじちゃん居ないね。』
みんなは愕然として肩を落とした。一番落ち込んでいたのは3兄弟のプクだった。
『せっかく来たのにいないのか…残念。』
『まぁ気を落とすな。今日だけじゃない。また、いつか会えると思うからさ。』
トムスは落ち込んでいるプクに近寄り肩を叩いた。
パタパタ…
みんなの元に飛んで来る羽音が聞こえた。みんなはその方を見るとキィーが飛んで来た。そしてみんなを見渡せる木の枝に止まった。
『あんたら酷いね。この私をほっといて抜け駆けするとは…。誰も居ないからもしやと思えば、やっぱりここに居たんだね。』
『すまないな。急に決まったから、居るメンバーで来ちまったよ。シェンもオレ達の後を追いかけて来たしな。勘弁してくれや。』
トムスが申し訳なさそうにしている。
>> 84
『そうですよ。私もほっとかれたんですよ。』
シェンは口をとがらせそっぽを向いた。
『そうだったのかい。そんな事より、おじちゃんは来てるのかい?』
『いや、今日は来て居ないようだ。もう少し後で来るのか、今日は来ないのかわからないよ。』
トムスは首を振りながらそう言った。
『そうかい。残念だね。あの木の実もう一度食べたかったのにね。』
キィーがそう落ち込んでいると、池の方を探し回っていたツンが飛んできて言った。
『池の辺(ほとり)に木の実があったよん。例の木の実ってあれじゃないかなん。』
『本当か!?なら見に行こう。』
みんなは池の辺に向かった。
『みんなここだよん。』
ツンが指した場所は昨日おじちゃんが釣りをしていた場所だった。
『おお~これはまさしく昨日食べた木の実だ。』
『本当だね。おじちゃんが置いていったのかな?』
ナナは木の実を拾い上げた。そこには十数個の木の実が置いてあった。
ブルルン…
近くで車の止まる音がした。みんなは振り返った。
『あれっ音がしたね。もしかしたらおじちゃんかな?』
ナナはニコニコしてその音がする方を見た。
『おっお前達、今日も来ていたのか。』
>> 85
やはりおじちゃんだった。肩にクーラーボックスと右手には釣り竿を持っていた。
『おじちゃんこんにちは。』
ナナは挨拶をした。
『はい、こんにちは。』
おじちゃんはナナの頭を撫でた。
『もしかしてこの木の実を食べたくて来たのかな?』
『うん。みんなに教えてあげたら食べたいと言うから連れて来ちゃった。』
ナナは満面の笑みでおじちゃんを見た。
『なるほどね。それならお食べ。それ以外にもこの中にも入っているからいっぱい食べなさい。』
おじちゃんはクーラーボックスを開けるとみんなに見せた。
『ねぇねぇ…。もう食べて良いかな?我慢出来ないんだけど…。』
プクはヨダレをたらしながら見つめている。
『遠慮しないで食べなさい。』
おじちゃんはそう言うとプクは木の実を食べ始めた。みんなそれに続いて食べ始めた。
『これは美味いな。』
『本当だ。ナナのくれたクッキーより美味しいぞ。』
『本当だねん。これは美味しいねん。』
3兄弟はそんな事を言いながら食べていた。
『そうか、美味しいか。ほらっもっと食べなさい。』
おじちゃんはクーラーボックスから木の実をいっぱい出した。
>> 86
そこで、トムスが不思議な事に気が付いた。
『おい、ナナ…ナナってば。』
『うむ?どう…ムシャムシャ…した…ムシャムシャ…の?』
ナナは木の実を食べながら振り向いて言った。
『あのおじちゃんさ。オレ達の言葉分かっているよな?』
トムスが真剣な顔でそんな事を言った。
『えっみんな分かるのじゃないの?』
ナナは食べるの止めそんな事を言った。
『おいおい…。普通な人間は動物の言葉は理解出来ないんだよ。』
『そうなの…。ママは分かっているよ。』
ナナは微笑みながらトムスを見つめている。
『バカだな。ママは多分理解してないよ。お前の仕草である程度分かっているだけだ。大体、理解出来るなら紐なんかでお前をつないでおかないだろう?
人間は理解出来ないから平気で動物を殺せるんだよ。それじゃなきゃ仲良く暮らせているはずだ。今、この世界は人間の思うままやって、動物の住む所さえ無くなって来ている。』
トムスは以外にも重い話をした。ナナは頭を捻らせ悩んでいる。あまりに難しい話だったから、理解出来なかったのであろう。
『そうなの?分からないよ。』
トムスはそんなナナ見てやっぱり分からなかったかと思った。
>> 87
『ちょっとナナには難しかったかな。どちらにしてもあのおじちゃんは理解しているようだ。試しにオレが話しかけてみるぞ。』
そう言うとトムスはおじちゃんの側まで行って話しかけた。
『あのすみません。もしかしてオレ達の言葉分かってますか?』
トムスはストレートに聞いてみた。何故なら、分からないなら他の事を言うだろうし、分かっているならちゃんと答えるだろうと思ったからだ。おじちゃんはゆっくりとトムスを見るとニッコリと笑った。
『キミ達の言葉は分かるよ。』
ナナ以外のみんなは驚いた。ナナはどうしたのと言う顔をしている。
『マジで分かるのかよ。こんな人間見たことないぞ。』
シロがそう叫ぶとみんなも頷いていた。
『あははは…。そう驚かないで良いではないか。』
おじちゃんは頭を掻きながら苦笑いをした。
『そんな人間もいるんですね。』
シェンが感心したように頷いていた。
『いやいや、違うよ。私も元々は言葉は分からなかったのだよ。』
おじちゃんはゆっくりと話をし始めた。
『あれは、30年も前の話で、まだ私が少年だった頃、この森で七色の卵を見つけたんだよ。』
おじちゃんはチラッとナナを見て続きを話した。
>> 88
『その卵が何の卵か知りたくて温めたんだ。それで生まれたのがドラゴンだったんだ。そこにいるドラゴンようなね。』
おじちゃんはナナを指差した。みんなは一斉にナナを見た。何故かナナは恥ずかしそうにしていた。
『そのドラゴンとしばらく一緒に過ごしたのだが、大きくなって来たからこの近くの洞窟で育てる事にしたんだ。』
『えっオレ達の居る洞窟かい?』
トムスは驚いたように聞いた。
『ああ、そうだよ。キミ達の洞窟だ。あそこで私もガミを育てた。あっガミとはドラゴンの名前だ。そのガミとの日々は楽しかった。今でも目に浮かぶようだ。』
おじちゃんは目を閉じてその頃の事を思い出しているようだ。そして目を開くと続きを話し出した。
『だが、ガミも成長して旅立つ日が来た。そしてガミは旅立っていた。それから寂しい日々が続いた…。ある日この池で同じように釣りをしていた時に木の実が落ちてきたんだよ。』
おじちゃんは木の実を拾い上げ見つめた。
『その時、上を見るとガミが飛んでいたんだ。ガミは降りて来て、この木の実を食べろと言うようにジェスチャーをしたんだ。私は木の実を食べた。するとガミの言葉がわかるようになったんだ。』
>> 89
おじちゃんは木の実を1個口に入れ食べた。
『それからだよ。全ての動物の声が分かるようになったのは…。まあ、こんな訳なんだが分かったかな?』
みんなは頷いた。
『この木の実はいつもガミが置いて行ってくれるんだ。ただ、私には声は聞こえるのだけど、その姿はもう見えないのだよ。大人になってしまったからなのかもしれないね…。』
おじちゃんは釣り竿に餌をつけ投げ込んだ。
『でも、ナナは見えているんだろう?』
『ああ、ナナちゃんは見えているよ。最初会った時はガミかと思って驚いたけど、もう大人になっているから違う事に気が付いたよ。』
おじちゃんの釣り竿がピンピンと引いた。3度目引いた時にグッと引く。すると魚がかかっていて竿を引っ張っている。おじちゃんは竿を引くと糸の先には魚が食い付いていた。動く魚を捕まえると針から外し池に戻した。キャッチ&リリースと言う奴だ。
『ナナちゃん、キミのママにこの木の実を食べさせたら言葉が分かるようになると思うから、一度食べさせてみたらどうだい?』
おじちゃんは木の実を取るとナナに手渡した。
『うん。分かった。ママにあげてみる。』
ナナはニッコリと微笑んだ。
>> 90
しばらく、みんなと話をしながらおじちゃんは釣りを、後は各々で好きな事をして遊んだ。その時、凄い風が吹いた。みんなは空を見上げ見回した。何か居るようなんだが、ナナ以外には見えていなかった。
『うわぁ~大きいな。』
ナナは上を見たままそんな事を言った。
『ナナ、お前には見えるのか?』
『うん。ほらあそこに。』
ナナは指差したがそこには雲しか見えていなかった。
『何にも見えませんけれどね…。』
シェンが指で輪を作り覗いている。するとおじちゃんが言った。
『私にはもう見えないが、あれはガミだと思う。ナナちゃんは同じドラゴンだから見えるのだろうね。ドラゴンは成長するにつれて仲間以外には見えなくなるらしいのだ。ただ、もう一つの木の実があったら見る事も出来るみたいなんだが…。』
おじちゃんは黙ってしまった。
『もう一つの木の実か…。それがあったら見えるのですよね。』
シェンが尋ねる。おじちゃんはシェンを見た。
『ああ…。しかし、それがどこにあるかわからないのだよ。ガミに聞いたが、わからないそうだ。いつかそれを見つけ、もう一度ガミを見てみたいものだ。』
おじちゃんは空を見上げた。
>> 91
『いつか見つかったら良いね。』
キィーがボソリと言った。みんなも頷いた。
『ねぇおじちゃん。ボクが見つけてあげるよ。ボクが大きくなって飛べるようになったらね。空を自由に飛び回ってね。それにガミさんも一緒に探してくれるよ。』
ナナは微笑むとおじちゃんの手を握った。するとおじちゃんは下を向いた。
『ナナちゃんありがとう。私の代わりに探してくれるのか。本当にありがとう。』
おじちゃんの目からは溢れ出た涙でいっぱいだった。ナナには何故泣いているのかさえ分からなかった。
『おじちゃん、どうしたの?』
『何でもないよ。本当に頼んだよ。』
『うん。絶対見つけて、おじちゃんに持ってくるよ。』
そう言っているナナをおじちゃんは撫でていた。ナナも嬉しそうにしている。
カーカー…
遠くでカラスの鳴く声が聞こえた。
『おい、ナナそろそろ戻ろうか?太陽も低くなってきたしな。また、ママが心配するぞ。』
トムスがそう言うといつものように頭の上に登った。
『おじちゃん、またね。』
ナナはおじちゃんに手を振った。
『ああ、それじゃまたね。』
おじちゃんも手を振り返した。そして見送ると再び釣りを始めた。
>> 92
ナナ達は洞窟に向かって帰っていた。近くの草村がガサガサと音がした。
『…ん?』
ナナは立ち止まりその方を見た。
ガルルル…
『ナナ、ヤバいぞ…。逃げろ!』
『なんで?』
『なんでじゃない。早く逃げろ!』
トムスがそう言うがナナは動こうとしない。草村から現れたのは、5匹の野良犬だった。
『兄貴…旨そうなのがいっぱい居ますぜ。』
野良犬のマダラ模様の1匹がそんな事を言った。真ん中の額に大きな傷のある野良犬がニヤリと笑った。多分、そいつが兄貴だろう。
『キミ達、大人しくしな。抵抗しなければ、苦しまずにあの世に行けるからね。ヒヒヒ…。』
その笑った大きな口に鋭い歯が見えた。
『ナナ、野良犬だ。早く逃げろって!食べられるぞ!』
トムスは角を持って必死に言った。
『トムスさん。野良犬さんて悪い事するの?』
さっきまで笑っていたナナがキリッとして言った。
『ああ、こいつらは悪いヤツらだ。』
『分かりました。トムスさん達は降りて逃げて下さい。』
ナナはトムス達を掴むと地面に下ろした。そう言っている間にナナ達は囲まれていた。
>> 93
『ごちゃごちゃと言ってないで大人しくしろ。ねぇ~兄貴そうですよね。』
マダラ模様の1匹が言った。
『おう、お前ら大人しくしろ。』
兄貴がそう言って前に出た。しかし、ナナは怯む事なく睨んでいる。
『まさか、抵抗しようと思っているのか?』
野良犬達は牙を剥いて威嚇をしている。しかし、ナナは全然怯む気配が無かった。どちらかと言うと向かって行こうしていた。
『お前らやっちまえ!!』
その号令とともに野良犬達がナナを目掛けて飛びかかった。
キャイーン
野良犬の鳴き声が響いた。なんとナナが飛びかかった野良犬の1匹を突き飛ばしたのである。
『刃向かうつもりか?』
野良犬達はまた、ナナ目掛けて飛びかかった。
キャイーンキャイーン
今度は2匹の野良犬が弾き飛ばされた。2匹は動けなくなった。
『兄貴、こいつ強いですよ。』
斑尾の1匹が言った。
『うるさい。みんなでかかれば負けやしない。一斉にかかれ!』
キャイーンキャイーンキャイーーーン
残りの3匹の野良犬が弾き飛ばされた。5匹の野良犬はピクピクとして倒れている。ナナの本能的な力が野良犬達を倒したのだ。トムス達がナナに駆け寄った。
>> 94
『ナナ凄いな。野良犬を倒すなんて……ん?どうしたナナ…?』
ナナを見るといっぱいの涙を流していた。
『トムスさん恐かったよ~。』
ナナはわんわんと泣き出した。ナナはとっさに行動しただけで本来は恐かったのだ。トムスはナナの体を駆け上がるとヨシヨシをした。
『ナナ頑張ったな。』
『うん…。うわぁ~ん。』
ナナはよりいっそうに泣いた。ナナはしばらく泣いていた。
『ナナ…。いい加減泣きやめよ。ママ来ちまうぞ。』
困ったトムスはそんな事を言った。
『あっ本当だ。早く帰ろう。』
今泣いたカラスはどこに言ったのやら、ナナは洞窟に向かって歩き出した。野良犬達はまだ、気絶しているようで、倒れたままだった。
『しかし、驚きましたね。ナナがあんなに強いとは。』
『怒らせないようにしないとな。』
『そうですね。』
トムスとシェンが苦笑いした。
『トムスさん、シェンさん何を言っているの?』
『…ん。何でも無いよ。さあ、急いだ急いだ。』
トムスはナナを急かした。やっと洞窟に着いた。
『ナナ、そろそろママが来るから紐はしておけよ。』
『うん。分かった。』
ナナは地面にある紐を首に掛けた。
>> 95
『ナナ、オレ達は帰るからな。また、明日な。』
トムス達はいつものように帰って行った。ナナは1匹でママが来るのを待っていた。
『お兄ちゃん待ってぇ~。足が痛いよ。』
『だから、ついて来るなって言っただろう。』
森の道を2人の子供が歩いて来た。1人はママで小さい女の子を連れていた。
『ジュンちゃん、ここだよ。ナナを見ても驚いたらダメだぞ。』
『うん。お兄ちゃん分かった。』
この女の子は、ママの妹だった。2人はそっと洞窟を覗いた。そこにはナナがニコニコしながら2人を見ていた。
『うわぁ~ナナちゃん大きくなっている~。ナナちゃんこんにちは。』
ジュンちゃんはお辞儀をした。ナナもそれを見て真似をした。
『わぁ~い。ナナちゃんも挨拶したよ。』
『本当だね。ナナは覚えていたのかな?一度しかあってないから警戒するかと思った。』
ママはナナの体を撫でながら言った。
『あれ?また、こんな所に傷がある。ナナどうしたんだい?』
『さっき、野良犬さんとゴッツンコしちゃった。』
ママには相変わらずキィーとしか聞こえ無かった。
『う~ん?何か言っているけど分からないや。』
『野良犬とゴッツンコしたって。』
>> 96
『えっジュンちゃん。今何て言った?』
ママである少年は尋ねた。ジュンちゃんはニコニコしながらもう一度言った。
『ナナちゃんは野良犬とゴッツンコしたって言っていたよ。』
『ジュンちゃんはナナの言葉が分かるのかい?』
ママは驚いて聞いた。
『うん。分かるよ。お兄ちゃんは分からないの?』
ジュンちゃんはニコニコしながら言った。
『分からないよ。何故ジュンちゃんには分かるんだろう?』
ママは1人悩んでいた。そんなママの下にナナが近づいて来た。そしてママの顔を覗き込んだ。
『うわっビックリした。そんなに顔を近づけるなよ。』
ママは目を開けるとそこにナナが居たから驚いた。ナナの頭を撫でた。
『ねぇ…ナナ、妹のジュンちゃんだよ。一度しか会ってないから覚えてないかな?』
ママはナナにそう尋ねた。ナナは首を横に振った。
『前居たところで見たの覚えているよ。』
しかし、ママにはナナの鳴き声しか聞こえて無かった。ママはジュンちゃんに尋ねた。
『ナナは何て言っているかわかる?』
『うん。覚えているって言っているよ。』
『そうか。ジュンちゃん良かったね。ナナが怖がったらどうしようかと思ったよ。
>> 97
ボクもナナの言葉が分かったらな…。』
ママは悲しそうな顔をしてナナを撫でた。その時、ナナはある事を思い出した。そう池でおじちゃんが言っていた事を思い出したのだ。
《ナナちゃん、キミのママにこの木の実を食べさせたら言葉が分かるようになると思うから、一度食べさせてみたらどうだい?》
ナナはおじちゃんに貰った木の実を探した。しかし、持っていた木の実がどこにも無かった。貰った時に手に持っていたのだが、どこかで落としたようだった。
『あれっどこかに落としちゃった。』
ママはナナの様子にどうしたか尋ねた。
『ナナ、どうしたの?何か探しているのかい?』
ナナはすぐには答え無かった。良く考えたらその話をしたら勝手に歩き回った事がバレると思ったからだ。
『ううん。何でもない。』
ママはジュンちゃんを見た。ジュンちゃんは何故見られたかわかり答えた。
『何でも無いって。』
『そっか…。』
ママには言葉は分からないが、ナナの気持ちの変化には敏感だった。
『お兄ちゃん、これあげてよい?』
ジュンちゃんが見せたのはいつものクッキーだった。
『うん。あげて良いよ。』
>> 98
ジュンちゃんは袋に入っていたクッキーをナナにあげた。ナナはそれを受け取ったが、しばらく見ていた。それは当然だった。池で腹一杯に木の実を食べたのだから、クッキーまでは入らなかった。そんな事を知らない2人は心配をしている。
『ナナちゃんどうしたの?お兄ちゃん、ナナ食べないよ。』
ジュンちゃんは心配そうにナナを見てママに言った。
『ナナ、具合でも悪いのかな?』
ママも心配になりナナに近づいた。
『大丈夫だよ。』
ナナは腹一杯になっていたが無理やりクッキーを食べた。
『美味しいね。』
ナナは半笑いで言った。
『お兄ちゃん美味しいって。でも、なんか苦しそうだよね。』
ママは額に手をあてた。
『熱はないから大丈夫だと思うけど心配だな。』
ママは座り込んでナナを見つめた。ナナは苦しいのを我慢して無理やりに笑って見せた。
『ナナちゃん本当に大丈夫なの?』
ママは初めてだったので心配で仕方なかった。ナナはこの時、ある考えが浮かんだ。それは紐が苦しいと言う事にしようと思った。
『ママあのね。首の紐が苦しいの。ナナはここにちゃんと居るから外して。』
ナナは訴えかけるようにママに言った。
>> 99
ママには理解出来ないが、今日はジュンちゃんが居るから都合が良かった。
『ジュンちゃん何て言っているの?』
『首の紐を外してって。ここにちゃんと居るからって。』
ジュンちゃんは聞いた通りにママに言った。
『そうか。首の紐がキツかったのか。そうだよね。ナナは良い子だからここに居るよね。それなら外してあげるよ。』
ママは紐を外してあげた。ナナは喜んでいるが、お腹いっぱいなのは変わらない。しかし、ナナははしゃいでジュンちゃんと一緒に飛び跳ね回っていた。
『良かった。ナナが元気になった。やっぱり紐が嫌だったんだね。』
ママは喜んでいた。
ピッピピピピ…
突然、ママの時計が鳴った。慌ててそれを止めた。
『ジュンちゃん時間だ。そろそろ帰らないと。』
ジュンちゃんは走り回っていたが、止まると悲しそうな顔をした。
『もう少し遊びたいな…。』
『ダメだよ。早く帰らないとママが心配するよ。ワガママ言わないって約束したでしょう。』
『うん…。分かった。』
そしてナナに近づき頭を撫でた。
『ナナちゃんまたね。』
別れの挨拶をした。
『ナナまた明日ね。』
2人はそう言うと帰って行った。
- << 101 ナナは2人が見えなくなるまで見送った。 『ママ行っちゃった…。』 ナナは1匹洞窟の中へ帰って行った。ナナはする事もないのでゴロゴロしていた。 『あっそうだ。木の実を探さなきゃ。しかし、どこに落としたのだろう?』 ナナは色々考えていた。 カサカサ… 足下で音がした。下を見るとアリのアントがいた。下からナナを見上げていた。 『よっ元気か?』 『アントさんこんにちは。』 いつものように丁寧に挨拶をした。 『挨拶を忘れないとはいつも感心だな。』 『ママが挨拶は良い事だからちゃんとしようねって言っていたから。』 『そうか、そのママとやらも感心だな。俺達は挨拶が無かったら何にも出来ないからな。みんなが好き勝手していたら、食べ物を集める事さえ出来ない。』 『やっぱり挨拶は大切なんだね。』 『そう言う事だ。ところで、さっき何か悩んでいたようだが、どうした?』 アントはさっきナナが木の実の事を考えているのを見ていたのだ。 『あっそうだった。実は木の実を貰ったのだけど、どこかで落としたみたいで、どこに落としたか考えていたんだよ。』 ナナは更に困った顔をした。
新しいレスの受付は終了しました
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
九つの哀しみの星の歌1レス 50HIT 小説好きさん
-
夢遊病者の歌1レス 63HIT 小説好きさん
-
カランコエに依り頼む歌2レス 84HIT 小説好きさん
-
北進ゼミナール フィクション物語1レス 62HIT 作家さん
-
幸せとは0レス 79HIT 旅人さん
-
私の煌めきに魅せられて
なんでかな。。 午前の仕事は何故かやる気が出て、いつも以上に仕事…(瑠璃姫)
44レス 473HIT 瑠璃姫 -
九つの哀しみの星の歌
来たりませ、来たりませ 幸せよ来たりませ 哀しい代々の記憶を見…(小説好きさん0)
1レス 50HIT 小説好きさん -
北進ゼミナール フィクション物語
北進ゼミナール この物語はフィクションであり登場する人物や団体名は全て…(作家さん0)
1レス 62HIT 作家さん -
夢遊病者の歌
世の全てに価値を与えるのは愛です 生命の終わりに 意味を見出だすの…(小説好きさん0)
1レス 63HIT 小説好きさん -
カランコエに依り頼む歌
かわいいよね(小説好きさん0)
2レス 84HIT 小説好きさん
-
-
-
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②4レス 131HIT 小説好きさん
-
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?11レス 129HIT 永遠の3歳
-
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令1レス 143HIT 小説家さん
-
閲覧専用
今を生きる意味78レス 513HIT 旅人さん
-
閲覧専用
黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 962HIT 匿名さん
-
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 131HIT 小説好きさん -
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 129HIT 永遠の3歳 -
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 143HIT 小説家さん -
閲覧専用
おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1398HIT 檄❗王道劇場です -
閲覧専用
今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 513HIT 旅人さん
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
これが、ありのままの俺
近所からバカにされます。 俺は独身で鬱病を患い、A型作業所で7年間働いている精神疾患の人間です。 …
12レス 471HIT 聞いてほしいさん -
婚活する時の服装
婚活パーティーや街コンの服装ですが このワンピースだと微妙ですか? 上が茶色いので不向きです…
19レス 527HIT 婚活中さん (30代 女性 ) -
どういう印象なのか?
男性から言われました。 顔が美人だと。でも遊んでそうだしモテると思うけど男を小馬鹿にしてそうだし俺…
19レス 386HIT 恋愛好きさん (20代 女性 ) -
シングルマザーの恋愛
子供二人のシングルマザーです。 元夫から養育費をいただいています。 私には彼氏がいて、金銭的援助…
9レス 214HIT 匿名さん -
男性に質問です!
男性グループの中(4.5人)の中に女が1人で参加するのってどう思いますか? とあるコミュニティでそ…
10レス 221HIT . (20代 女性 ) -
不倫しているけど好きな人ができた
相手既婚者、私が独身で不倫しています。 やっと好きな人ができて 別れを考えているのですが、 今…
10レス 245HIT 恋愛好きさん (20代 女性 ) - もっと見る