ナナの冒険
遥か昔、人間とドラゴンは仲良く暮らしていた。
ある時、人間とドラゴンは争う事になってしまった。
それは、山に成るたった1本の木の実をどちらが食べるかである。
ただ、それだけの事で人間とドラゴンは争う事になった。
そして戦いの末に人間がドラゴンに勝利した。
ドラゴンは人間に追われ行き場を無くし考えに考えた。
それで見つけたのが姿を消す事だった…。
人間はどうしてこうも愚かなんだろう。
いつか自分の首を絞めて人間自体いなくなるだろう。
気づいて欲しいアナタの周りには人間と別の命がある事を…。
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>> 100
ナナは2人が見えなくなるまで見送った。
『ママ行っちゃった…。』
ナナは1匹洞窟の中へ帰って行った。ナナはする事もないのでゴロゴロしていた。
『あっそうだ。木の実を探さなきゃ。しかし、どこに落としたのだろう?』
ナナは色々考えていた。
カサカサ…
足下で音がした。下を見るとアリのアントがいた。下からナナを見上げていた。
『よっ元気か?』
『アントさんこんにちは。』
いつものように丁寧に挨拶をした。
『挨拶を忘れないとはいつも感心だな。』
『ママが挨拶は良い事だからちゃんとしようねって言っていたから。』
『そうか、そのママとやらも感心だな。俺達は挨拶が無かったら何にも出来ないからな。みんなが好き勝手していたら、食べ物を集める事さえ出来ない。』
『やっぱり挨拶は大切なんだね。』
『そう言う事だ。ところで、さっき何か悩んでいたようだが、どうした?』
アントはさっきナナが木の実の事を考えているのを見ていたのだ。
『あっそうだった。実は木の実を貰ったのだけど、どこかで落としたみたいで、どこに落としたか考えていたんだよ。』
ナナは更に困った顔をした。
>> 101
『何っ木の実を落とした!?そんな大事な物を落とすとは、ダメな奴だな。』
アントは腕を組んで怒っている。アント達にとって木の実は貴重な食料で、めったに食べられない物だった。
『それでどんな木の実なんだ?』
ナナは思い出しながら言った。
『えっと…赤い色をしていて、この位の大きさだよ。味はクッキーのような味だった。』
アントは想像しながら涎を垂らしてボーっとしている。我にかえったのか涎を拭くと言った。
『それなら俺が探してやる。』
『えっ探してくれるの?』
『我々アリの情報網をナメるなよ。』
アントは辺りを見渡した。何かを見つけたのか歩いて行った。良く見ると仲間のアリがいた。そして何かを話しているようだった。すると仲間のアリがどこかに消えて行った。しばらくするとまた戻って来た。また、何かを話しているようだった。話が終わったのかアントがナナに言った。
『分かったよ。ここから池に向う途中に落ちているらしい。』
『本当に?アント凄いね。』
アントは自慢げにポーズをとった。
『だからアリの情報網をナメるなと言っただろう。』
『うん。本当に凄いね。早速行ってみるよ。』
>> 102
『そうか、なら気をつけてな。』
アントはそう言うとどこかに消えて行った。ナナは早速木の実を探す為に池の方に向かった。今回は誰もついて来なかった。ナナも慌てていたから何も考えないで洞窟を離れた。
『あっ思い出した。野良犬さんとゴッツンコした時に落としたんだ。』
ナナどこで落としたのか思い出した。その場所に向かった。
『確かこの辺だったな…。』
『おいおい、そこのお前。』
いきなりどこかから声がした。ナナは辺りを見回した。しかし、辺りには何も居なかった。
『おい、どこ見てやがる。下だよ下。』
大概こういう時は上か下に居るものだ。ナナは下を向くとそこにはアリがいた。
『お前がアント隊長が言っていたナナか?』
『うん。ボクはナナだよ。君は誰なの?』
ナナはそのアリに近づきジッと見た。
『おいおい近づき過ぎだ。お前の鼻息で飛ばされそうだ。』
『ごめん。』
ナナは離れると座った。
『それなら大丈夫だ。俺はアント隊の副隊長のキリだ。よろしくな。』
『よろしくぅ~。』
ナナは微笑んだ。
『お前は木の実を探しているのだろう?』
『うん。』
『それなら俺が分かる。
>> 103
この森の中に落ちているよ。』
キリは森の一角を指した。
『ほら、そこの枝が曲がっている木があるだろう。その辺りを探したらあるよ。』
『ありがとう。探して見るよ。』
その木の位置は道から5mぐらいの所にあった。
『それと一つ言っておくが、くれぐれもその奥には行くなよ。お前には危険だからな。何があっても行くなよ。』
『うん。分かった。気をつけるよ。』
『それじゃ俺はこれで行くよ。またな。』
キリはそう言うと鼻歌を歌いながら帰って行った。
『さて、探しに行こうかな。』
ナナは道の横の草村に入り木の方に向かった。
『この辺りにあるって言っていたよな。どこだ?』
ナナは枝の曲がった木の根元を探した。
『あっあった。』
ナナは赤い木の実を見つけ拾い上げた。
ガルルル…
突然、近くから唸り声が聞こえた。草村に何かが居るのが分かった。
『誰か居るの?』
草村からそれは現れた。そうナナが倒した野良犬達だった。キリが気をつけろと言っていたのはこの事なんだろうか…。
『ヒヒヒ…。さっきは良くもやってくれたな。今度は手加減しないぞ。』
額に傷のある野良犬が言った。野良犬はあの時より増えていた。
>> 104
『あの時は油断したが、今度はそうはいかん。』
野良犬達がジリジリと近づいて来る。ナナはゆっくりと後ろに下がった。枝の曲がった木にぶつかった。
『大人しく俺達の餌になりな。』
斑尾の野良犬がニヤリと笑う。ナナは木をよけ更に後ろに下がった。
ガラッ…
『うわっ!?』
気が付かなかったが、森の奥は崖のような急な坂になっていた。草の性で見えなかったのだ。ナナは気づかないで滑り落ちてしまった。
ガラガラ…
『うわっうわっうわっ~。』
ナナは凄い勢いで落ちて行った。野良犬達は上から覗き言った。
『これは、死んだかもな。』
『兄貴どうします?』
『面倒だが、こっちから降りてみるか。せっかくの食事なんだからな。』
野良犬達は遠回りだが、下に降りる緩やかな道を降りて行った。
『いたたたた…。』
ナナは無事だった。多少の傷はあったが、命に関わるような怪我はなかった。
『ここはどこだ?』
上を見ると枝の曲がった木が見えた。
『あそこから落ちちゃったんだ。』
ナナは腕に出来た傷を舐めながら、辺りを見回した。
『うわぁ~。綺麗だな。』
そこら一面に赤や青や黄色い花など色んな花が咲いていた。
>> 105
左上の方から何か近づく音がした。それは野良犬達だった。微かに姿が見えている。
『ヤバいな。どこかに逃げないと…。』
しかし、隠れられそうな場所は無かった。
『どうしょう…。』
『はははは…。』
不意に笑い声がした。そう野良犬達が降りて来てしまったのだ。
『なんだコイツ、落ちたのにピンピンしてやがる。運の良いやろうだ。』
額に傷のある野良犬が言った。
『兄貴やっちまいますか?』
『そうだな。やっちまえ!』
野良犬は一斉に飛びかかって来た。ナナは何とかよけたが、野良犬の攻撃はやまなかった。
『止めてよ。何でそんな事をするの?』
ナナは大きな声で言った。
『この世は弱肉強食なんだよ。弱い者は強い者に食われる。これがこの世の摂理だ。だから観念して俺達に食べられろ。』
野良犬達の口からは鋭い牙が光っていた。ナナは完全に囲まれてしまった。
『このままじゃ食べられちゃうよ。どうしよう。』
ナナは野良犬達から離れるが少しずつ囲まれていた。もう駄目だと思った瞬間。
キィーキィー
バサバサバサ…
上空から大きな何かが飛んで来た。ナナと野良犬達は空を見上げた。
>> 106
ヒュー
バサバサバサ…
風と共に飛んで来たのは、ナナよりも遥かに大きいドラゴンだった。
『な、何だお前は?』
額に傷のある野良犬が叫んだ。
『みんなで寄ってたかって何をしている。』
野良犬達は後ずさりをする。大きいドラゴンは大きな口から野良犬達よりデカい牙を見せた。
『な、何だ。や、やろうと言うのか?やれるならやってみやがれ。』
額に傷のある野良犬は、そうは言っているがかなり強がっていた。相手は数倍はあるドラゴンだ。勝てる訳が無かった。
『別に私は構わないが、痛い目に合うのはアナタ達ですよ。』
大きなドラゴンは紳士的な言い方で、野良犬達を挑発した。
『お前達この生意気な奴をやっちまえ。』
額に傷のある野良犬がそう言うと他の野良犬達が大きいドラゴンを取り囲んだ。
ガルルル…
『本当にやる気ですか?それなら仕方ない。』
大きなドラゴンは羽根を広げ大きな口を開けた。
キィーーーーーーッ!!
地面が揺れるような大きな声で一鳴きした。
キャインキャイン…
野良犬達は驚き飛んで逃げて言った。
ワンワンワン…
少し離れた所でこっちに向かって吠えていた。
>> 107
これが負け犬の遠吠えとはこれの事だろうか…。
キィーーーーーーッ!!
大きなドラゴンは再び大きな声で鳴いた。野良犬達はどこともなく逃げて行った。
『ちっちゃいの大丈夫か?』
大きなドラゴンは振り返るとナナにそう聞いた。
『うん。大丈夫だよ。ありがとう。』
『そうか。それなら良かった。ところでお前はドラゴンだな。』
ナナは頭を捻った。
『えっ違うよ。ボクはナナだよ。ドラゴンって名前じゃないよ。』
大きなドラゴンは呆れた。
『違う違う名前の事じゃなくて、俺と一緒でドラゴン族だろうと聞いているのだ。』
『あっ!』
ナナは以前、コウモリのパタが言っていた事を思い出した。
『どうした?』
『多分だけど、ドラゴンだと思う。前にそう言われたよ。ボクには良くわからないのだけど。』
『分からないとは面白い。』
そう言うと大きなドラゴンはナナの体を匂った。
『お前も人間に育てられたみたいだな。』
ナナは考えている。
『お前はまだ幼いから分からないようだな。まあ良い。それじゃな。』
大きなドラゴンはそう言うと飛び立とうとした。
『あのう…。』
『どうした?』
- << 111 大きなドラゴンは羽ばたくのを止めナナを見た。 『名前を聞いて無かったのだけど…。』 ナナは申し訳なさそうに言った。 『あっそうだったな。私の名前はギジだ。よろしくな。』 ギジは紳士的に挨拶をした。ナナにとっては初めてのドラゴンだ。もう少しドラゴンのを聞きたいと思っていた。空には満月が見えて来た。心地よい風が吹いた。 『あのう…もし良かったらお話しませんか?』 『…ん?もしかしてドラゴン族の事を聞きたいのか?』 ナナは頷いた。 『分かった少しだけ話をしよう。』 ギジはナナの前に座った。 『さて、何から話そうか?』 『あのう…。さっき"お前も人間に育てられたみたいだな"って言ったみたいだけど、あれってギジさんもって事なの?』 ギジは頭を横に振った。少し笑うと言った。 『それは違う。私は普通にドラゴンの下で生まれ育った。それはガミと言うドラゴンの事だ。この近くで生まれ育てられたと以前言っていたからな。』 ナナはやっぱりと思った。 『そのガミさんは今どこにいるのですか?』 『何故、そんな事を聞く?ナナはガミの事を知っているのか?』 ナナは頷いておじちゃんの事を説明した。
☆アルミさんへ
毎回 ほのぼのした気持ちで❤読ませて頂いてます。
こんな可愛らしいお話🐲💕私には、書けませんわぁぁ💦
個人的な意見(?)として、ジュンちゃんが お気に入りのキャラです💖💖🎀💖💖
>> 108
これが負け犬の遠吠えとはこれの事だろうか…。
キィーーーーーーッ!!
大きなドラゴンは再び大きな声で鳴いた。野良犬達はどこともなく逃げて…
大きなドラゴンは羽ばたくのを止めナナを見た。
『名前を聞いて無かったのだけど…。』
ナナは申し訳なさそうに言った。
『あっそうだったな。私の名前はギジだ。よろしくな。』
ギジは紳士的に挨拶をした。ナナにとっては初めてのドラゴンだ。もう少しドラゴンのを聞きたいと思っていた。空には満月が見えて来た。心地よい風が吹いた。
『あのう…もし良かったらお話しませんか?』
『…ん?もしかしてドラゴン族の事を聞きたいのか?』
ナナは頷いた。
『分かった少しだけ話をしよう。』
ギジはナナの前に座った。
『さて、何から話そうか?』
『あのう…。さっき"お前も人間に育てられたみたいだな"って言ったみたいだけど、あれってギジさんもって事なの?』
ギジは頭を横に振った。少し笑うと言った。
『それは違う。私は普通にドラゴンの下で生まれ育った。それはガミと言うドラゴンの事だ。この近くで生まれ育てられたと以前言っていたからな。』
ナナはやっぱりと思った。
『そのガミさんは今どこにいるのですか?』
『何故、そんな事を聞く?ナナはガミの事を知っているのか?』
ナナは頷いておじちゃんの事を説明した。
>> 111
『なるほどな。それで知っていたのか。』
ギジは話を聞いて理解した。
『ガミは今はドラゴンの山に居る。私もそうだがその山にしかドラゴンはいない。たまに、はぐれドラゴンって言ってお前達のように違う場所で生まれ育つ者も居るがな。それとドラゴン王の子供は外界で生まれる。』
『そうか。ドラゴンの山に居るんだね。……ところで、そのはぐれドラゴンとドラゴン王の子供って何?』
ナナのいつものが始まった。ギジは嫌がる事もなく説明した。
『はぐれドラゴンとは私達のような一般のドラゴンが外界で生まれ育った事を言う。ガミもその1匹だ。たまに、外界を旅している時に産み落とすドラゴンがいるのだ。最近はそうならない為の掟もいくつかあるのだが、その中の1つに、卵を拾い集めるドラゴン達がいる。私がそのドラゴンだ。後、ドラゴン王の子供については敢えて外界で卵を産む。これは昔から王族の掟だ。何故、そんな事をするのかは分からないが、その卵は七色に輝いているらしい。まだ私は見た事はないけどな。』
『へぇ~なんか凄いね。ボクもはぐれドラゴンなんだね。』
ナナはギジに向かって微笑んだ。しかし、ギジはナナを見て黙っていた。
- << 114 『どうしたの?』 ギジはしばらく考えてからこう聞いた。 『ナナ、お前の卵の色を覚えているか?白かったか、それとも七色だったか?』 ナナは必死になって考えていた。 『あのう…わかんない。』 実はナナには色の観念が無かったのだ。だから、色と聞かれても分からなかった。だが、ギジはその事を理解していたのか、首に掛かっている首飾りを見せた。 『ナナは色が分からないのだろう?七色とはこれだ。』 ナナはそれを見て頷いた。ギジが付けていたのは七色に輝く貝殻の首飾りだった。 『あっそれだ。その色だったよ。』 『そうか。ならば、ナナは王族の王子だな。これからは言葉には気をつけないとな。あははは…。』』 ギジは笑ってそう言った。 『ボクは王族なんだぁ~。それで王族って何?』 ギジは転けそうになった。ナナが全ての言葉を理解出来ない事を忘れていた。 『王族とはドラゴンの頂点に立つ者の事を言う。とは言っても理解出来ないかな?』 『うん。わかんない。』 ナナは恥ずかしそうにした。 『まあ、いずれ分かるだろう。』 ギジは少し呆れたように言った。そして遠くを見つめた。その先にはドラゴンの山があるのだろうか…。
>> 112
『なるほどな。それで知っていたのか。』
ギジは話を聞いて理解した。
『ガミは今はドラゴンの山に居る。私もそうだがその山にしかドラゴンはい…
『どうしたの?』
ギジはしばらく考えてからこう聞いた。
『ナナ、お前の卵の色を覚えているか?白かったか、それとも七色だったか?』
ナナは必死になって考えていた。
『あのう…わかんない。』
実はナナには色の観念が無かったのだ。だから、色と聞かれても分からなかった。だが、ギジはその事を理解していたのか、首に掛かっている首飾りを見せた。
『ナナは色が分からないのだろう?七色とはこれだ。』
ナナはそれを見て頷いた。ギジが付けていたのは七色に輝く貝殻の首飾りだった。
『あっそれだ。その色だったよ。』
『そうか。ならば、ナナは王族の王子だな。これからは言葉には気をつけないとな。あははは…。』』
ギジは笑ってそう言った。
『ボクは王族なんだぁ~。それで王族って何?』
ギジは転けそうになった。ナナが全ての言葉を理解出来ない事を忘れていた。
『王族とはドラゴンの頂点に立つ者の事を言う。とは言っても理解出来ないかな?』
『うん。わかんない。』
ナナは恥ずかしそうにした。
『まあ、いずれ分かるだろう。』
ギジは少し呆れたように言った。そして遠くを見つめた。その先にはドラゴンの山があるのだろうか…。
>> 114
『ナナ、それでは私は行くがいずれ迎えに来るからな。その理由は今は分からないだろうが、その時には分かるだろう。それじゃな。』
バサバサ…
ギジは羽根を広げ飛んで行ってしまった。ナナは黙ってそれを見ていた。空には満月がかなりの高さまで登っていた。
『あっ帰らなきゃな。』
ナナは夜の森の中を歩き始めた。野良犬達が逃げた方にある道をトボトボと歩いて帰った。
『こんな事なら洞窟まで送ってもらったら良かったな…。なんか寂しいな…。』
ナナそんな事をぼやいていた。
パタパタ…
暗闇に羽ばたく音がした。
『よう、ナナこんな所で何をしておる?』
そう言って木の枝に止まったのはパタだった。
『パタさん。こんばんは。パタさんこそ何をしているの?』
『ワシらの活動は夜だからな。今は餌を探している。そんな事よりナナこんな所を歩いていると、悪い奴らに襲われるぞ。』
パタはまるで自分の子供に言うように言った。ナナはニコニコしながら聞いている。
『さっき、野良犬さん達に襲われちゃった。』
そう言いながらもまだ、笑顔だった。
『ナナ…襲われたのに何笑っている。それで大丈夫だったのか?』
- << 119 パタはまるで自分の子供に言うように言った。ナナはニコニコしながら聞いている。 『さっき、野良犬さん達に襲われちゃった。』 そう言いながらもまだ、笑顔だった。 『ナナ…襲われたのに何笑っている。それで大丈夫だったのか?』 パタは心配そうに聞いた。 『うん。とっても強いドラゴンさんに会ったから。一鳴きで野良犬さん達逃げちゃった。格好良かったなギジさん。』 ナナはギジの事を思い出していた。 『何っ仲間のドラゴンに会ったのか?』 パタは驚いたように聞いた。 『うん。パタさんが言ったようにボクはドララゴンだったよ。』 ナナはニッコリと微笑んだ。 『ワシの思った通りだったな。やはりナナはドラゴン族だったか。』 『じゃあボクもあんなに大きくなるんだね。』 ナナは大きく手を広げた。しかし、ここで一つ言っておこう。実はパタはほとんど目は見えていない。コウモリとは口からの超音波で物を捉えるのだ。だから、ナナと分かったのも大きさで判断していた。 『そうだな。前も言ったがあの洞窟にも居れなくなるな。その時の事も考えないといけなくなるな。』 『そっかぁ~。』 ナナは自分の将来の姿を思い出していた。
>> 115
『ナナ、それでは私は行くがいずれ迎えに来るからな。その理由は今は分からないだろうが、その時には分かるだろう。それじゃな。』
バサバサ…
…
パタはまるで自分の子供に言うように言った。ナナはニコニコしながら聞いている。
『さっき、野良犬さん達に襲われちゃった。』
そう言いながらもまだ、笑顔だった。
『ナナ…襲われたのに何笑っている。それで大丈夫だったのか?』
パタは心配そうに聞いた。
『うん。とっても強いドラゴンさんに会ったから。一鳴きで野良犬さん達逃げちゃった。格好良かったなギジさん。』
ナナはギジの事を思い出していた。
『何っ仲間のドラゴンに会ったのか?』
パタは驚いたように聞いた。
『うん。パタさんが言ったようにボクはドララゴンだったよ。』
ナナはニッコリと微笑んだ。
『ワシの思った通りだったな。やはりナナはドラゴン族だったか。』
『じゃあボクもあんなに大きくなるんだね。』
ナナは大きく手を広げた。しかし、ここで一つ言っておこう。実はパタはほとんど目は見えていない。コウモリとは口からの超音波で物を捉えるのだ。だから、ナナと分かったのも大きさで判断していた。
『そうだな。前も言ったがあの洞窟にも居れなくなるな。その時の事も考えないといけなくなるな。』
『そっかぁ~。』
ナナは自分の将来の姿を思い出していた。
>> 119
ギジのような体になった自分の姿にパタの事など忘れボーっとしていた。
『…ナ…ナ……ナナ…おい、ナナ!!』
『うわっー!』
ナナはパタの大声にびっくりして転んだ。
『何を妄想に入り込んでいるんだ。そろそろ帰らないと夜行性の動物が増えて危ないぞ。』
『うわっ~っそんなの困るよ。』
『なら早く帰れ。』
そう言うとパタは飛んで行ってしまった。
『パタさ~ん先に行かないでよ。』
ナナは駆け出したが飛んでいるのと走るのでは差がありすぎて追いつかない。ナナは仕方なく歩き始めた。
『うわぁ~大きなお月様だな。』
その時だ。ナナの背中がゴキゴキとなった。
『…ん?なんだなんだ?』
それは背中と言うより羽根が鳴ったようだった。
『あれっ羽根が大きくなったかな?ちょっと動かしてみよう。』
パタパタ…
ナナの体が地面から少し離れた。
『あれっなんか浮いているよ。』
ナナはみるみるうちに3mぐらいまで浮かんでいた。
『ボク飛べるようになった…?』
ヒュー
ドスン
そう言った瞬間に落ちてしまった。
『イタタタ…。お尻が痛い…。』
ナナはお尻をさすっていた。
>> 120
確かにナナの羽根は大きくなって飛べるようになったのだが、他の事に気を取られてしまうと羽ばたくのを止めてしまうのだった。
『なんで落ちたのかな?』
ナナは色々考えるが分かるはずは無かった。難しい理屈を理解するほど、体のように発達はしていなかった。
『誰かに飛び方を習わないとな。さて帰ろう。』
ナナは洞窟に帰って行った。今回は木の実はしっかりと手に握っていた。
『今度は落とさなかったぞ。今日は色々あったな…。眠くなったから寝ようっと。』
ナナは頭下に木の実を置くと眠りについた。
ゴロゴロゴロ…
『うわっ雷だ。怖いな。』
ナナはどこかの森の上を飛んでいた。空はみるみるうちに分厚い雲が広がり、遠くで雲が光っていた。
『あっあの山だ。もう少しだ。頑張ろう。』
ナナは必死に飛んでいた。
ピカッ
『うわぁ~~~っ』
ナナは雷に驚いて落下して行った。どんどん地面が近づいてくる。ナナは必死に羽ばたくが、落ちてしまう。
『なんで…なんで飛べないの?』
ナナがそうこうしている内に地面が目の前に迫った。
『うわっ!!』
ナナはその瞬間目が覚めた。
>> 121
『なんだ…。夢だったんだ。それにしても怖かったな。』
辺りを見回すとまだ暗かった。大して寝ていなかったようだった。
『もう少し寝ようかな…。おやすみ…ムニャムニャ…』
そう言いながら再び眠りについた。静かに朝がやってきた。洞窟の周りでは起きた動物や虫、鳥などが動き出していた。そんな中ナナは寝ていた。
『まだ、寝ているよ。良く寝る奴だな。』
ナナの周りで動物達が集まって来ていた。しかし、気づく事なく寝ていた。
『疲れているのかな?』
『そうかもしれませんね。』
話をしていたのはトムスとシェンだった。
『あっコイツ木の実を持って寝ているよ。』
ナナは寝ぼけてニヤリとした。
『うわっ寝ながら笑っているよ。夢の中で木の実でも食べているのか?』
『そうかもしれないですね。』
『本当に幸せそうだな。』
『また、後で来ましょう。』
『そうだな。それなら面白い所あるんだ。行ってみよう。』
トムスとシェンは2人でニヤニヤしながらどこかに行ってしまった。ナナはまだ起きなかった。2匹は気づかなかったのだが、ナナの体が少しずつ大きくなっていた。太陽が丁度真上に来た頃にナナは目覚めた。
>> 122
『ふぁ~。…ん?あっ太陽があんな所に。かなり寝ちゃった…。』
ナナは大きく背伸びをした。
ゴンッ
ナナは頭をぶつけた。そう洞窟の天井に頭をぶつけたのだった。
『あれっ?こんなに天井低かったかな?』
ナナは洞窟のあちこちを触りながら見ていた。
『なんだなんだ?』
走って来て叫んだのはトムスだった。
『トムスさんこんにちは。あれっトムスさんって、そんなに小さかったかな?』
『何を言っている。オレが小さくなったんじゃない。ナナがデカくなっているんだ。』
『えっボクが…。』
ナナはトムスが言った事でやっと大きくなった事に気がついた。
『さっき来た時は変わりなかったのに…。急にこんなにデカくなるとはなぁ…。』
トムスは再度ナナを見直した。ナナは以前の大きさの2倍になっていた。こんな短期間にこんなに大きくなるとは、こんな洞窟にいつまで居られるだろう。
『こりゃママが来たら驚くぞ。』
『本当に…。どうしょう…。』
ナナは不安そうにそう言った。
『まあ心配するな。なんとかなるさ。』
トムスはそう言うがナナは困った顔をしていた。するとナナの背中をつつく者がいた。
>> 123
『そこのデカいの邪魔だよ。』
振り返るとそこにはキーがいた。
『キーさんこんにちは。』
『なんだい!ナナかい!どこのどいつかと思ったよ。あんたこんなに大きかったかい?』
キーは飛び回りながらナナの大きさを確認していた。
『やっぱりボク大きくなったんだね。』
ナナが落ち込んでうつむいた。キーは状況が飲み込めずに尋ねた。
『ナナやい。なんで落ち込んでいるんだい?』
ナナは黙っている。すかさずトムスが答えた。
『あははは…。ママが驚くのが心配なんだよ。』
トムスの一言でキーは判断できた。
『ナナの事だからね。心配しすぎだね。ふふふ…。』
キーはいつものナナの事を思い返して思わず笑った。
『キーさん笑う事ないでしょう。』
ナナは口をとがらせスネてしまった。しかし、大きい性かあまり分からなかった。
『ふふふ…大丈夫だよ。ナナが心配するほど、ママも驚かないよ。ナナの事を一番知っているのはママなんだからさ。』
ナナはキーを見るとにっこり笑った。
『そうだよね。ママなら大丈夫だよね。良かった。』
トムスとキーは見合わすと"何が良かった"なのかと同時に思った。
>> 124
『ナナところで何故、急にデカくなったんだ?』
ナナは首を傾げた。それはそうだ。ナナ本人が一番知りたい事だからだ。トムスに言われるまでナナも気づいてなかったのだから…。
『分からない。なんでだろう…?』
『もしかしてその木の実の性かもな。』
ナナの足下にある赤い木の実を見てトムスは言った。
『でも、おじちゃんはそんな事は言ってなかったよ。』
『そう言われてみればそうだな。言葉は分かるようになるとは言っていたけどそれ以外の事は言ってなかったな。う~んなら何故なんだ?』
ナナとトムスは考え込んでしまった。
『そりゃ単純にナナはそんな生き物なんだよ。』
そう言ったのはキーだった。
『なるほど単純にそうなのかもしれないな。オレ達が難しく考え過ぎかもしれないな。』
トムスはそう言った。
『じゃあ、また大きくなってしまうのかな?』
『そうじゃないかな。まあ仕方ない事だ。生きているならそれが当たり前なんだよ。』
そう言われてナナはギジの姿を思い浮かべていた。
『そうか、あんな格好良くなれるんだ。』
トムスとキーは何の事か分からないでいた。
>> 125
そして太陽が沈みだしいつものように遠くからママの足音が聞こえて来た。
『ママが来た。』
ナナは洞窟から顔を出しその方を見た。ランドセルをカタカタ言わせてママがやって来た。
『ナナこんにちは。』
洞窟を覗きそう言った。
キィーキィー
ナナも挨拶を返した。
『うわっ!?』
ママはなんとも言えない悲鳴を上げた。
『ナナどうしたんだい?こんなに大きくなって…?』
ママはナナの体を見て回った。
『1日でこんなに大きくなるなんて…。』
ママは驚きを隠せないでいた。
『ドラゴンってこんなに急に大きくなるんだね。』
ママは理屈抜きでそう判断したようだった。
『そうなるとクッキーをもっと持って来ないといけないかな…?』
ママはランドセルからいつものようにクッキーを出した。
『今日はこれで我慢してね。』
ナナの体を撫でながら言った。ナナはその時に木の実の事を思い出した。そして足下の木の実を拾い上げママの目の前に出した。
『なんだい?この木の実どうしたの?』
ママは木の実を受け取った。
『ママこれを食べてみて。』
ママにはまだ言葉は理解出来なかった。
>> 126
ナナはジェスチャーで口に手を持っていき、食べる仕草をした。
『これを食べろって事かい?』
ママはそう尋ねた。ナナは頷いてにっこり笑った。ママはしばらく眺めていたが、服で木の実を拭くと一口食べた。
『美味しい!!』
ママの顔が笑顔でいっぱいになった。
『こんな美味しいの食べた事無いよ。まるで出来立てのお菓子のようだ。』
ママは木の実を次から次と食べていった。あっという間に食べてしまった。ママは口についた汁を拭うと言った。
『これはナナが見つけたのかい?』
『ううん違うよ。おじちゃんに貰ったんだよ。』
ナナは笑顔でそう言った。
『そうか、おじちゃんに貰ったんだ………?な、ナナ今なんて言った?』
ママが急にそんな事を聞いてきた。ナナはもう一度言った。
『おじちゃんに貰った。』
『えっ…えっえぇぇぇぇ……。ナナの言葉が分かるぞ。何で分かるんだ?』
ママは1人頭を抱えながらうろちょろしている。
『それはね。木の実の性だよ。それを食べると言葉が分かるんだって。』
相変わらずの笑顔で話した。
『そうか…。ならこれからはナナの言葉が分かるのだね。』
>> 127
『うん。そうだよ。それに他の動物の言葉も分かるんだって。』
『本当に!?それは凄い事だよ。』
ママは嬉しくて飛び跳ねた。ナナも一緒に飛び跳ねた。背の高さは逆になったが、仲の良さは変わらなかった。
『それにしてもナナ大きくなったな。この洞窟で暮らすのも不便になるね。どうしょうかな?』
ママは考え込んでしまった。ナナも一緒に考えるが良いアイデアは浮かばなかった。途方に暮れていた。
『それならおじちゃんに聞いたらどうだい?』
ママとナナは辺りを見回した。近くの壁の出っ張りにキーが止まっていた。
『そっか、おじちゃんなら何か知っているかもしれないね。』
ナナが嬉しそうに言った。しかし、ママは何か浮かない顔をしていた。
『ねぇ…さっきからおじちゃんおじちゃんって言っているけど誰なんだい?』
『そっかママは知らないよね。でも、前に池であった事があるよ。』
ママである少年は思い返していた。
『あっ思い出した。あのおじちゃんか。でも、何でおじちゃんが分かるんだい?』
『実はね。あのおじちゃんもドラゴンを育てていたんだって。』
ナナは微笑みながら言った。
>> 128
『えぇぇぇぇぇぇっ!!そうなんだ。ならば何か分かるかもしれないね。』
ママは納得したようでナナを見上げた。
『今から行ってみたら居るかもしれないよ?』
ナナの問いかけにママは困った顔をした。
『行きたいけど、そろそろ帰らないといけないよ。』
そうもう帰らないといけない時間になっていた。
『そうだ。明日は休みだから早く来れるよ。明日にしよう。』
ママはそう言うと慌ただしく帰って行った。大きくなったナナはそれを見送った。だが、明日おじちゃんはいつもの場所に居るのだろうか?明日になったら分かる事だろう。それから日が暮れて行った。
『今日も星が綺麗だな。』
『本当だな。』
ナナとトムスは空を見上げていた。
『あんたら似合わないねぇ~。って言うか、普通は恋人同士が言うセリフだよ。』
キーは2匹を見て少し身震いをした。
『キーさんも一緒に見ようよ。』
ナナは笑顔で言った。
『あんたには負けるよ。』
キーはナナの大きくなった肩の上に止まった。そして星空を見上げた。
『ほらっ綺麗でしょう?』
『…本当に綺麗だね。こんなに綺麗だったとは今まで思わなかったよ。』
キーはそんな風に言った。
>> 129
『当たり前だ。オレ達と一緒に見ているからな。』
トムスは真顔で言った。
『バカ言うでないよ。アタシ1羽で見ても綺麗だよ。』
そう言っている割には照れていた。その時、一筋の光が流れた。
『あっ流れ星だ!』
トムスがそう叫んだ。トムスとキーは手を合わせ何かをお祈りした。
『何をしているの?』
ナナには何をしているのか分からなかった。
『流れ星にお祈りをしたら願いが叶うんだ。ナナも流れ星を見たらお願いしてみたらどうだ?』
『本当に願いが叶うの?流れ星見えないかな?』
ナナは空を見上げて流れ星を探した。こういう時は不思議と流れないものだ。ナナも諦めかけていたその時、東の方から一筋の光が流れた。
『あっ流れ星…えっとえっと…うわぁ~。』
ナナは慌てて何かを祈った。何を祈ったかは今は伏せておこう。
『ナナちゃんと祈ったのか?』
『うん。なんとか間に合ったと思うよ。』
ナナはにっこり笑った。
『そうだ忘れていた。願い事は3回するんだぞ。』
『えっ~!何で先に言ってくれないの。』
ナナは怒ってトムスを追いかけまわした。
『ナナごめんごめん勘弁してくれよ。』
>> 130
ナナはしつこく追いかけまわした。
ゼェゼェ…
2匹は走り回った性で息を切らせていた。
『ナナ…。もう勘弁して…くれ…。ゼェゼェ…。』
『嫌だ…。ゼェゼェ…。』
2匹は息を切らせながら言っていた。
『あんたらいい加減したらどうだい?』
キーは遠目に言った。
『ナナ、もう遅いから寝よう。』
『うん。実は今日はとても眠たかったの。みんなおやすみ。』
『おやすみ。』
トムスとキーは各々の巣に戻って行った。そのまま時間は過ぎ朝が来た。
『ナナ~~~ナナ起きろ~~~起きてくれ!!』
ナナが目を覚ますとシロとピンがナナの鼻先を飛び回っていた。
『あっおはよう。こんな早くからどうしたの?』
『プクが…プクが大変なんだ。』
シロは真っ青な顔をしてパタパタと飛び回っている。
『プクさんがどうかしたの?』
『鷹に連れ去られてしまった。もしかすると今頃は…。』
『えっ食べられたとか?』
ガーーーン
シロ達は飛ぶのを止め洞窟の見える木の枝に止まり落ち込んだ。そう小鳥達にとって大きな鳥は敵であり、食料にされても仕方ない事である。これが自然の摂理である。
>> 131
動きの遅いプクが今まで捕まらない方が不思議だった。
『ねぇ…ボクはどうしたら良いかな?』
シロ達はナナを見ると飛んで近づいた。
『頼む助けてやってくれ。』
シロは手を合わせお願いした。
『死んでしまっているかもしれないけどねん。』
お願いをするシロの横でピンが呑気にそんな事を言った。シロはすかさずピンの頭を何発も殴った。
『冗談でもそんな事言うな。プクはオレ達の弟だろう?少しでも希望があるなら生きている事を祈ろうじゃないか。』
『兄さんすまないん。』
シロはピンの肩を軽く慰めるように叩いた。
『ナナだから頼む。助けてやってくれ。』
シロは拝むようにナナに頼んだ。
『うん。分かった。その場所に連れて行って。』
『助かった。こっちだ。』
ナナは歩き始めた。それにシロが気づいた。どう考えても遅すぎる。
『しまった。ナナは早く動けないのを忘れていた。』
シロ達は愕然とした。
『だったらナナも飛んだら良いのねん。』
何気なくピンがそんな事を言った。そうナナには羽根があるのだから、飛べるなら飛んだ方が早いはずだった。2匹はチラッとナナをみた。
>> 132
『どうしたの?何か付いている?』
シロ達は横に手を振った。
『違う。ナナにも羽根があるだろう。それならナナも飛べると思ってな。どうなんだナナ?』
ナナは背中の羽根を見た。
『多分飛べるのは飛べると思うけど…。上手く飛べるかな?』
ナナは羽根を広げてみた。前の頃とは違ってかなり大きくなっていた。
バサバサ…
周りに風が起こった。シロ達がジッとナナの様子を見守っていた。ナナの体が少し浮かんだ。シロが唾を飲み込んだ。
バサバサ…
ついにナナが浮かび上がった。
『やった~!みんな浮かんだよ。ボク飛べるよ。』
ナナは少しずつ浮かび上がり始めた。
『ナナその調子だ。頑張れ。』
シロが応援をする。ナナは必死に羽ばたいている。しかし、上にどんどん上がるだけで、まだ自由に飛べている訳では無かった。
『浮かんだけど前に行けないよ。どうしたら良いのかな?』
ナナはシロ達を見た。
『こう羽ばたいたら前に行ける。』
シロが羽ばたいて見せた。
『これで良いのかな?』
シロの真似をしてみると前に進み始めた。
『やったのねん。前に行っているよん。』
ピンがナナの周りを飛び回った。
>> 133
『ナナもう少しだな。頑張れ。』
『うん。頑張る。』
時間はかかったがナナは前より上手く飛べるようになった。
『ナナ少し時間をとってしまった。急がないと、プクがどうなるか分からない。オレの後について来れるか?』
『多分大丈夫だよ。早くプクさんの所に行こう。』
3匹は頷くと山の方に飛んで行った。たまにナナが落ちそうになったり、止まったりしたが、なんとか目的の場所にたどり着いた。辺りを見回した。背の高い木々はいっぱい生い茂っている。その中の1つに鷹の巣があった。その中に雛が数羽と逃げ回っているプクを見つけた。
『あっプクがいたぞ。まだ、生きている。』
プクはナナ達に気づき叫んだ。
『みんな助けてよ。』
必死に雛から逃げ回っている。
『待っていろ今から助けるからな。』
すると背後から羽音が近づいて来た。親鳥がナナ達に気づき飛んで来たのだ。
『お前達何者だ。ここから立ち去れ。』
そう言うと親鳥がナナ達目掛け襲って来た。ナナ達はなんとかよけた。だが、親鳥は何度も何度も襲って来る。巣の中ではプクが雛から追いかけられていた。
『待って。』
ナナが親鳥の前に立ちはだかった。
>> 134
親鳥はすんでのところで止まった。
『お前達は雛を狙っているのだろ。絶対にそんな事はさせないぞ。』
親鳥は少し離れると再び襲って来た。
『待って!!』
ナナは大きな声で叫びながら行くてを塞いだ。親鳥は何度もぶつかって来る。
『どうだ?参ったか?』
ナナはなんとも無いのか首を振った。親鳥は目を丸くした。
『ちくしょう。手を抜いたのが悪かったか?これならどうだ?』
親鳥は空高く上がると再びナナに向かって体当たりをして来た。
バーン…
親鳥はナナの体にぶつかるとボールのように弾け飛んだ。そのまま地面に向かって落ちて行った。ナナの体は成長して硬くなり始めていた。今まではトカゲのような皮膚だったが、今はウロコのような物が出始めていた。
ヒュルヒュル…
バサッ
ナナは素早く降下した。そして落ちて行く親鳥の下に回り込むと受け止めた。
『…ううう。』
『大丈夫?』
ナナは微笑みながら親鳥に言った。親鳥はまだ頭がクラクラするのか理解出来ないでいた。
『…ん?どうしただ俺は?お前は!?』
親鳥は慌ててナナの手から離れ距離をとった。
『俺を食べるつもりだな。そうはさせないぞ。』
>> 135
そう言いながら旋回をしている。その頃、巣の中のプクは必死に逃げ回っていた。
『話を聞いてよ。お願い。』
ナナは親鳥に手を合わせお願いをした。
『問答無用だ。雛を狙うヤツは許さない。』
『だから話を聞いてよ。』
『何の話があると言うのだ。』
そう言うとナナに向かって飛んで来た。ナナは大きく羽ばたいた。凄い風が起こり親鳥に当たった。親鳥は必死に羽ばたくが近づく事さえ出来ず、逆に遠くに飛ばされてしまった。
『なんと言う風だ。どうする俺?』
親鳥は離れた所で考えている。
『ねぇ聞いてよ。ボク達は頼みがあって来ただけなんだ。』
ナナは親鳥に向かって言った。
『なんだ…頼みとは?』
親鳥は警戒しながら尋ねた。
『あのね…巣の中に居るスズメはボクの友達なんだ。彼を助けて欲しいの。』
親鳥はチラッと巣の中で逃げ回っているプクを見た。
『それはダメだ。あれは子供達の食料だからな。食べさせないとこっちが死んでしまう。』
自然は弱肉強食の世界。弱い者が強い者に食べられる。これが自然の摂理だ。
『どうしたら助けてくれる?』
親鳥は考え込んだ。しばらくして口を開いた。
>> 136
『変わりの食料を持って来たら助けてやっても良いがな。』
親鳥はそんな事出来ないだろうと意地悪に言った。ナナ達は集まりしばらく考えていた。ナナはある事を思い出しシロ達に耳打ちした。
『分かった。しばらく待っていてね。』
親鳥は驚いていた。そんな返事が返ってくるとは思ってなかったのだろう。ナナの話とはこうだ。池の所に木の実を持ったおじさんからその木の実を貰ってくると言う話だ。わざわざプクの変わりに他の動物を差し出す必要がないと考えたのだ。そこに居るシロ達と親鳥に話して説明した。
『話は分かった。だが、その木の実が無かった時は巣の中の彼には諦めて貰うからな。』
そう言うと親鳥は巣の中のプクをくわえると巣の横の枝に置いた。プクは震えながら枝に止まっている。シロ達は近くに寄ったが親鳥が睨むと離れた。
『見張っているからな。早くその木の実をここに持って来い。良いな?』
『分かった。待ってて。』
ナナはそう言うと巣を離れた。シロ達がナナの後を追いかけて言った。
『本当に大丈夫なのん?』
ピンが疑いの眼差しでナナを見る。
『大丈夫だよ。おじちゃん居なくても池にはいつも置いてあるから。』
>> 137
『それなら良いが…。オレ達はプクが心配だからここに残るけど、後はナナに任すよ。頼んだ。』
『頼んだのねん。』
2匹は頭を下げると鷹の巣に戻って行った。ナナはそれを見届けると池に向かって飛んで行った。しばらくすると遠くに池が見えて来た。
『あっ池だ。おじちゃん居るかな?』
ナナは池の周りを見渡した。
『ナナ~!』
声の方を見ると必死に羽ばたいて飛んで来る姿が見えた。良く見ると黄色の体にホッペに赤い模様があった。そうそれはキーだった。
『あら~ナナ飛べるようになったんだね。』
『うん。体が大きくなった性かな?』
『そうかもね。あたしも小さな時は飛べなかったからね。ところで何をしているんだい?』
キーは羽ばたきながら尋ねた。
『あのね。実は…。』
ナナはいきさつをキーに話した。
『そりゃ大変だ。あたしもおじちゃんを探してやるよ。』
2匹は池の周りを探し始めた。だが、今日はまだ来ていないのか、おじちゃんの姿は無かった。
『おじちゃん居ないね。どうしよう?』
困った顔をしながら池の畔に降りた。キーもナナの近くに降りた。
>> 138
『おじちゃん居ないなら、いつもの場所にあるかもしれないよ。行ってみようよ。』
ナナは頷いた。2匹はおじちゃんがいつも釣りをしている場所に向かった。
『確かこの辺りだったね。』
2匹はその場所を見回したが、木の実は無かった。
『どうした事だい。今日に限って無いじゃないかい…。』
キーはナナを見た。
『ナナどうするんだい?』
ナナは困った顔をした。みるみるうちに涙が目にたまり泣き出した。そう言う所はまだ子供のようだ。
『キーさんどうしよう?』
『泣くなよ。あたしに言われても困るよ。』
2匹は途方に暮れていた。その時一陣の風が吹いた。
『うわ~凄い風だ。前が見えないよ。』
コロコロ…
2匹の前に何かが転がって来た。
『あっ木の実だ。』
ナナは転がって来た物を拾ってそう言った。それは風にのって飛んで来たようだった。
『キーさん木の実だよ。何で飛んで来た。』
2匹は辺りを見回した。
『あっギジさんだ。』
ナナにはギジの姿が見えていた。しかし、キーには見えていないようで不思議そうにしていた。
『ギジさんありがとう。これでプクさんを助けられるよ。』
>> 139
キーはナナが何に話しているのかわからないでいた。
『ナナ…誰と話しているんだい?』
『えっキーさんには見えていないの?』
ナナにとっては逆に、あんなに大きなギジが見えていないと言う事が不思議だった。
『ナナ大丈夫かい?何もいないじゃないかい。』
『何を言っているのあそこに……。あれ?ギジさんが居ない。どこに行ったのかな?』
さっきまで居たギジの姿が忽然と消えていた。あれは幻だったのだろうか?ナナはキツネにつままれた感じだった。
『ナナも色々あって疲れているのかもね。』
だが、ナナが見たのは間違いなくギジだった。ギジは一瞬で2匹には見えない、いや、ナナに見えない高さまで飛び上がっていたのだ。但しキーにはドラゴンの不思議な力で、見えないようにしていた。
『ナナよ。頑張れよ。』
ギジはそう言ってその場からどこかへ飛んで行った。
『ナナ、急がないといけないのじゃないのかい?』
『あっそうだった。プクさん待っていてね。』
2匹は鷹の巣に向かって飛んで行った。その時池に向かう車が1台走って行った。
『ナナまだかい?』
『もう少しだよ。ほらっあの尖った木の所だよ。』
>> 140
目線の先に尖った木が見えていた。その上を飛び回っている鷹の親鳥が居た。
『さぁ行こうよ。』
『さぁ行こう。』
ナナ達はそこに向かって飛んで行った。
『あっナナ。見つかったのか?』
シロはナナの姿を見つけそう叫んだ。ナナは手を大きく振った。
『見つかったよ。ほらっ!』
ナナは木の実を見せながら近づいて行った。
『それが木の実なのか?』
親鳥はそれを見ている。
『そうだよ。食べてみて。』
ナナは親鳥に手渡した。親鳥はそれを巣に置くと一口食べてみた。
『なんだこの木の実は…。』
親鳥はそう言うと黙ったまま木の実を見ていた。
『…ん?美味しくない?』
『いや、美味しい。』
親鳥は目を輝かせて言った。
『これなら子供達も喜ぶぞ。さぁ~お食べ。』
そう言うと木の実を雛達の前に置いた。雛達は最初は何か分からずお互いを見合った。だが、1匹がつっつくと一斉に食べ始めた。親鳥は優しい目でそれを見ていた。
『これで言われた通りに代わりの物を持って来たのだから、プクさんは返して貰うよ。』
ところが、親鳥はナナの前にはばかり首を横に振った。
『ダメだね。』
>> 141
『どうして?ちゃんと持って来たじゃないか?』
納得がいかなかった。ナナは口を尖らせて怒った。
『そうだ。ナナの言う通り代わりの物を持って来ただろう。』
シロも怒って親鳥を睨んだ。
『いや、これだと子供達にとっては少なすぎる。もう少しあれば、素直に返すがな。』
親鳥にはそれなりの考えがあったようだ。ナナはふと思いついた。
『それなら、木の実の場所を教えるからプクさんを返して。』
ナナは微笑みながら言った。親鳥はそんなナナを見て微笑み返した。
『お前には参ったよ。その話で手を打つよ。』
『シロさん良かったね。これでプクさんは大丈夫だね。』
『ナナありがとう。』
シロ達は喜んでナナの周りを飛び回っている。捕まっていたプクはと言うと木の枝でいびきをかいて寝ていた。
『他人の苦労も知らないで呑気なもんだ。』
シロは腕を組んで怒っている。
『ぷっ…ぷっあははは…。』
ナナは突然笑い出した。プクの様子がおかしかったのだ。
『わははは…。』
シロ達もナナにつられて笑い出した。そこに居る者全てが笑い出した。当のプク以外だが…。すると笑い声にプクが気が付いた。
『何でみんな笑っているの?』
>> 142
そのプクを見てまたみんなが笑い出した。
『それじゃ教えるからついて来て。』
ナナはそういうと池に向かって行こうとした。すると親鳥が言った。
『待て。俺が行ってしまうと子供達だけになってしまう。妻を待たないといけないのだが…。』
鷹にはメスの親鳥もいたのだ。雛が孵った事でしばらく育児を任せ休暇をとっていたのだ。
『いつまで待てば良いの?』
親鳥は考え込んでいる。この感じではしばらくは帰って来ないのだろう。
『ならば、オレ達が見張っていてるよ。』
シロ達が言った。
『しかし、お前達で大丈夫なのか?』
『何を言っていやがる。そうでもしないと弟を助けられないだろうが!』
食いつかんばかりにシロが言った。親鳥は驚いた顔をしたが、すぐに返事を返した。
『それなら任せた。ナナとやら、木の実の在処を教えてくれ。』
『うん。』
ナナと親鳥は池に向かって飛んで行った。残されたシロ達は泣き叫ぶ雛達にてんやわんやだった。それに向かって来る1つの大きな影があった。
『まだ、着かないのか?』
親鳥は疲れたのか、そんな事を言った。鷹はそこまで長距離を飛べる訳では無いようだ。
『もう少しだけど疲れたかな?』
>> 143
『いや、そんな事はない…。』
強がってはいるがかなり疲れているようで、フラフラと飛んでいた。
『ちょっとあそこで休もうよ。』
森の中央にある山の岩場で休むことにした。
『お前が言うなら休もうか。』
親鳥は他人の性のように言っているが、内心ではホッとしていた。
『一気に来たから疲れたね。』
『俺はまだまだ行けたけどな。』
ククク…
ナナは笑った。親鳥はそれに気づいた。
『何が可笑しい?』
『ううん。別に…。』
ナナはそう言いながらも笑っていた。親鳥の強がっている姿が可笑しかったのだ。
『また、笑ったな。』
親鳥は怒ってナナを追い回した。すると急にナナが笑うの止めた。
『おい、どうした?』
ナナは遠くを見ながらこう言った。
『ボクにもこんなパパが居るのかな?』
『お前はパパを知らないのか?』
ナナは頷いた。
『ボクにも分からないの。ママは居るけど、本当のママじゃないみたいだし…。』
『それはどう言う事だ?』
『みんながママの事を"人間"って言っている。』
『お前は人間に育てられたのか!?』
親鳥はかなり驚いていた。
>> 144
『うん。そうだよ。』
『人間なんて。』
親鳥は嫌そうな顔をしている。
『何でみんなそんなに人間を嫌うの?ママはとても優しいよ。』
親鳥は返事に困ったが思った事を言った。
『それは、やはり人間は自分勝手だからな。自分達の為なら自然も壊すし動物なども殺してしまうからな。それでじゃないか?』
困ったあげくそんな事を言った。ナナは悲しそうな顔をした。
『おいおいそんな顔をするなよ。人間全部がそうと言う訳ではないから…。』
親鳥は苦し紛れにそんな事を言った。今まであった人間で良い奴は1人として居なかった。ただ、ナナの悲しそうな表情を見るとそう言うしか無かったのだった。
『本当に。やっぱりママは優しいからね。そんな事する訳ないからね。そろそろ行こうかな?』
『そうだな。行こう。』
2匹は池に向かって飛んで行った。池に近づくと人影が見えた。
『おい。人間がいるぞ。あんな所にあるのか?』
親鳥はそんな風に尋ねた。やはり人間が怖いらしい。ナナはそれを見るとにっこりと笑った。
『大丈夫だよ。あのおじちゃんは優しいよ。』
『知っているのか?』
『うん。あのおじちゃんが木の実をくれるんだよ。』
>> 145
『何っ!?そうなのか?』
親鳥は驚いて止まった。ナナもそれに気づき止まった。
『そんなに驚かなくても大丈夫だよ。おじちゃんはボクらの言葉が分かるからね。本当に優しいから行ってみよう。』
ナナはそう言って池で釣りをしているおじちゃんの方へ飛んで行った。
『ちょっと待てよ。』
慌てて親鳥はナナの後を追った。池のおじちゃんの側に降りた。おじちゃんはナナに気づき釣り竿を置いてナナの方へ近づいて来た。親鳥は少し離れた所で様子を見ている。
『おお、また会えたね。おっ新しい仲間かな?』
親鳥を見てそんな事を言った。
『うん。そうだよ。えっと…んっ?そう言えば名前聞いて無かったね。なんて言うの?』
ナナは親鳥に尋ねた。親鳥はキョロキョロしていた。
『俺か?俺はイーヌだ。そう言えばお前の名前も知らなかったな。』
『ボクはナナだよ。』
おじちゃんがその様子を見ながら笑った。
『なんだ、まだ知り合ったばかりなんだな。イーヌだったかな?私は何もしないからもっと近くに来たらどうだい?』
おじちゃんを警戒しているイーヌはすぐには近づこうとはしなかった。昔、人間に何かされたのかもしれない。
>> 146
しかし、ナナの様子を見ていて何もない事がわかったのか、近くに飛んで来たのだった。
『ほらっ大丈夫だからこっち来なさい。これをあげるから。』
おじちゃんは木の実を差し出した。イーヌは恐る恐る近づいて来た。
『ナナ本当に大丈夫なのか?』
イーヌはまだ疑っているようだ。
『大丈夫だよ。イーヌさんは心配症だね。』
ナナはそんなイーヌを見て笑った。イーヌは少し怒った風でナナに言った。
『俺は今、死ぬ訳にはいかない。俺の帰りを首を長くして待っている子供達がいるからな。人間を信じているお前が信じられないよ。俺はあの時の事は忘れない。』
イーヌには昔に人間との間に何かがあったようだ。
『君の言う事は正しい。親になったらそうなって当たり前だ。ナナ…笑ったら悪いよ。』
おじちゃんは優しくそんな事を言った。風で髪が垂れたのをかきあげて木の実をイーヌの前に置いた。
『ごめんなさい。』
ナナは申し訳なさそうにしている。イーヌは目の前の木の実を見つめた。
『これなら君も食べられるだろう。』
おじちゃんはそう言うと2、3歩後ろに下がった。イーヌはおじちゃんと木の実を交互に見ていた。
>> 147
そして木の実をクチバシで足元にズラした。イーヌはまだ、警戒している。
『これでもダメかい?なら後ろを向くよ。』
おじちゃんは後ろを向いた。イーヌはそれを確認すると木の実を掴み飛び上がった。その音に気が付いておじちゃんは振り返った。
『本当に何もしないのだけどな。よほど嫌な目にあったのだろうな。』
『おじちゃんありがとう。本当に何があったのかな?』
ナナとおじちゃんはイーヌを見上げた。
『人間とは君が思うほど、優しい人間ばかりじゃないからね。イーヌが疑うのは当たり前なんだよ。』
『まだ、ボクには良くわからないや。』
『いずれ分かるさ。』
おじちゃんは釣りをしていた場所に戻った。
『イーヌとやら、木の実はいつもこの辺りに置いているから、いつでも取りにおいで。』
おじちゃんはそう言うと釣り竿の糸を水面に投げた。イーヌはしばらく池の上を飛んでいた。
『ナナ、俺は帰るぞ。お前はどうする?』
『あっボクも帰るよ。』
ナナは羽根をパタパタとさせた。
『おじちゃんまだ、ここに居る?』
『あぁまだしばらくは居るけど、どうした?』
『ちょっと聞きたい事があったから。』
>> 148
『そうか、分かった。また後で来なさい。』
『うん。それじゃまた来るね。』
一回り大きくなったナナはイーヌと共に飛んで行った。
『ナナももうすぐだな…。』
おじちゃんの竿がぐぐっと引いた。水面に大きな魚が姿を表した。
『今日のはデカいな。池の主かな?』
春の暖かい風が辺りの木々を揺らしていた。
『ナナ。』
『はい。』
『人間には騙されるなよ。』
『えっ!?』
『良い奴だと思っても裏切るからな。信じてはいけないぞ。それが、育ててくれた人間でもな…。』
やはりイーヌは人間との間に何かがあったのかもしれない。そうこう話している内にイーヌの巣の近くまで帰って来た。尖った先端が見えている。だが、その周りが騒がしかった。良く見るとシロ達が鷹に追い回されているようだった。
『話を聞けって。』
『問答無用。子供達には指一本触れさせないわよ。』
すごい剣幕で追い回している。
『違うって。旦那の代わりに守っているだけだよ。』
『嘘を言うな。』
『嘘って…。だいたい雀は雛なんて食べないだろうが!』
『そんな事を言っても騙されないわよ。』
そこにやっとナナ達が帰って来た。
>> 149
『エリーナ!彼らは大丈夫だ。』
イーヌがそう叫ぶとエリーナは止まった。
『それはどういう事イーヌ?』
『実はな…』
イーヌは今までの事を説明した。
『そうだったんだ。知らないとはいえごめんなさい。』
エリーナはシロ達に頭を下げた。
『分かってもらえたなら良いよ。』
シロ達は額に汗を流しながら言った。かなりの間追いかけまわされていたから当たり前かもしれない。
『それはそうとそんな木の実を食べて大丈夫なの?』
心配そうに尋ねた。するとナナが貰って来た木の実をエリーナに差し出した。
『それなら大丈夫だよ。これを食べてみたら分かるよ。』
エリーナは差し出された木の実を受け取りしばらく見ていた。決心がついたのか、一口食べた。しばらく沈黙があったが、次の瞬間エリーナが叫んだ。
『美味しい。』
『そうでしょう。これならいくらでもあるから良いよね。』
ナナは微笑んでエリーナを見た。エリーナはただ、頷いていた。ナナ達の言っている事が理解出来たようだった。
『それじゃ俺達は帰らせてもらうが良いよな。』
シロ達がイーヌにそう言った。
『ああ、構わないよ。すまなかったな。』
- << 151 『生きて行くためだ仕方ないさ。それじゃな。ナナ行こう。』 シロ達は自分達の森を目指した。 『ちょっと待ってよ。』 ナナは慌ててシロ達を追いかけた。そして振り返った。 『イーヌさんまたね。』 ナナは大きく手を振った。イーヌの家族もいつまでも手を振っていた。 『あっシロさん。』 先を飛んでいたシロ達が止まった。 『ナナどうした?』 『あのね。ボク用事があるから行かなくっちゃ。』 『そうなんだ。じゃあここで。また、明日な。』 『明日ねん。』 『明日もクッキーちょうだいね。』 シロ達はそんな事をそれぞれ言った。 『うん。また、明日ね。クッキーはママに貰っておくから大丈夫だよ。バイバイ。』 ナナはシロ達を見送るとおじちゃんの居る池に向かって飛んで行った。おじちゃんは釣りをしながらナナを待ってくれていた。 『お~いナナちゃん。』 おじちゃんはナナに気づき手を振っている。ナナも手を振りながらおじちゃんの居る所に降りた。 『おじちゃんありがとう。』 『いやいや、私は暇だから気にする事はないよ。』 そう言って笑っている。ナナもつられて笑った。
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