注目の話題
一人ぼっちになったシングル母
既読ついてもう10日返事なし
娘がビスコ坊やに似てると言われました

NO TITLE

レス500 HIT数 261001 あ+ あ-

㍊( wPNK )
10/07/03 00:53(更新日時)

小説なんて書いた事もないので表現力が乏しい上、読み難いかもです。

最近よく見聞きする【虐待】という行いについて考えるきっかけになれればと思い、主役【城(セイ)】の存在を何かに残したかったので…ですからほぼノンフィクションです。

つたない文章ですが、暇潰し程度に読んでください。

虐待を中心に、同性愛的な内容、精神的な問題等、少々生々しい部分も含まれています。
不快に思われた方は素通り願います。
感想スレは別にありますので、読者の方の邪魔にならないよう、レスはそちらにお願いします。

一度自分のミスで削除してしまい…申し訳ありませんでした。
再度よろしくお願い致します。

タグ

No.1301642 10/04/19 21:10(スレ作成日時)

新しいレスの受付は終了しました

投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.451 10/06/23 18:59
㍊ ( wPNK )

頼める立場じゃないのも
分かってる

ただ…
チャンスを与えて欲しい

本当の親子
本当の家族になれるチャンスを…

ここまで来て
こんな結果になったのに
肝心のお前が居なくなる…

それは
俺達親子にしてみたら
今までと何も変わりない生活
償いのひとつも出来ない生活

そう…なってしまう…
お前が傍に居るからこそ
俺達はもっと成長できるはず
…違うかな…

婆ちゃんも
自慢の手料理食べてって
言ってただろ?

爺ちゃんも
爺ちゃんって呼んでって…
顔見て爺ちゃんって
呼んでほしいんだよ…

父さんも
父親として歩めているかを
お前に見ていてほしい…
クソシンジが…
お前に友達が出来た時
自慢の父さんだって
言えるように…



…男はうつむいて唇を震わせ
涙を飲み込んでいた


『…そうだな…しかし、渡す必要は無い。シンジの息子であり私の孫だ。シンジの言う通り…居てくれなければ…家族として機能しない。私は!城を離したくない…離せば罪も薄れる…城を見て共に成長し、死ぬまで罪を背負って行かねば…。』

祖父が俺を見て言った…

No.452 10/06/23 19:43
㍊ ( wPNK )

『でも親父。その判断は城がするべきだ。』

『…お前が…言うなら…。』

俺は内心焦っていた
城が反応しないのが
怖かった…

だってこいつは
純粋なんだ…
間に受けたらどうする…

そんな不安をよそに
徹が肘で脇腹を突く

雰囲気に飲まれるなって!
早く済ますぞ!

ホント感情希薄な奴だと思い
俺達も立ち上がった

確かにもう
長居は無用だ

『城の答えならもう出ました。貴方達も良いという答えのようですし。』

徹がウズウズしているのが
さっきから気になる

『徹、【第三者】のお前も言いたいことあんだろ。』

徹の口に
夢と希望を託そう(笑)
城…聞くなよ
そんな奴の話なんか
徹の話を聞け!

『有り過ぎてパンクしそうだ!俺は単にこの人の補佐的な役割だからこれでも我慢してんだよね。でも【第三者】の意見も時には必要だろ?まぁ、勿論神崎寄りの意見には間違いないんだけどさ。』

No.453 10/06/23 20:24
㍊ ( wPNK )

『何です…。』

男が構える
どうやら既に
徹が苦手なようだ

腕を組んで指差しながら
喋り出す
俺も真似して腕を組み
仁王立ちして相槌を打つ用意

『お前達の言うこと聞いてると体中ウジムシ這いずり回ってるみたいで気持ち悪くて腹立つ!まずやめてくれないか、その下手くそな演技。何、涙飲み込んだフリしてんの?やるならマジで泣いてみせろよ(笑)。城君、騙されんなよ。確かに反省した3人を城君は許したよ。ある意味【家族】になったよ。でもわざとらしいんだ、その言葉や動作が!さっきからお前、言葉とは裏腹に神崎を見る目が違うんだよ。』

『そうそう、イヤらしい目!好きなのか?俺のこと!美女以外興味ねぇぞ。』

『敵意剥き出しやがって。お前、神崎に嫉妬してんだろ。城君が鏡、鏡、鏡は父さんだって言うのが面白くないだけなんじゃないのか。』

『何を…!』

『黙れ!いいか、城君がお前達を家族になった、爺ちゃんになった、婆ちゃんになった、父さんになったって言うのは、家族としてこれからどうこうって意味じゃない!城君なりの許し方なだけだ!それ以上の意味は全く無い!』

No.454 10/06/23 20:58
㍊ ( wPNK )

行け行け徹
お前が女なら惚れてるぞ(笑)

『爺さん婆さんはそれなりに反省してんのは分かるよ!お前を本気で叱ったりブン殴るくらいだからな!』

『爺さん婆さん(笑)。てか、パーが気に食わねぇ。』

『全くだ!そう…パーだったな…って、そこはさっき話したからもういい。』

『いいのかよ!まぁ爺さん婆さんは嘘臭さの無い謝罪だったからな。俺もそれは許そうと思って頭下げた。でもよ…。』

『そう、でもよ、シンジ!お前の全てが気に食わないね。城君の真っ直ぐな心を利用して神崎と俺を追い返す魂胆なんだろ?お前の家族説は嘘臭い!改心出来るかよ、そんな簡単に。城君の心の後遺症の話すら右から左へ流したんだろどうせ!』

『流したのか!?俺も城と同じくらい純粋だからよ、本当の謝罪だとチョット信じたぞ!だからドライブしようとか話してるの聞いて、チョット本気で妬いたぞオイ!俺は城を愛してるからよ!チョット凹んだんだぞ!』

『城君を丸め込むには確かに上手い台詞だった…演技は最悪だけどね!簡単に家族ぶんなよな!気持ち悪い野郎だ!』

No.455 10/06/24 01:30
㍊ ( wPNK )

『ちょっと待って下さいよ!じゃあどうしたらいいと?どこまでどう謝ればいいと?演技だなんて…そりゃ疑ってかかるからそう思うんじゃないのか!』

『神崎さん、梶谷さん。言い過ぎですよ!いくら何でもそこまで…。』

『じゃあ晴らして下さいよ!この苛立ちと不安を!例え城を置いていく状況になったとしても!安心して去れるくらい、俺達をも安心させて下さいよ!シンジさん、あんた、顔と言葉が矛盾してるんだよ!鼻で笑うんじゃねぇよ!!』

『…。』

静まり返る

『こんな気分やあんたのその態度でね…!間違っても、城を置いていく訳にはいかないんだよ…これでもし城にまた何かされたら…俺達だってね…悔やんでも悔やみきれないんだよ…!!1度出した答えだ…城に行ってもいいと言った…良いでしょう…?城に散々な事をしてきた結果じゃないのかい!俺を望むなら…連れて帰りますよ…何も一生会わさないって言ってる訳でもない。もう…これだけ話し合ってきた…疲れましたよ!もういいでしょう…!?』

No.456 10/06/24 07:51
㍊ ( wPNK )

『いつまで居ても無駄だ。残念ながら、ちゃんと今の胡散臭い台詞だけど録音してあるから。俺達に文句あるってことは、お前にとっては本当の本当の気持ちだったんだろ?行くなら行けって城君に言ってるのちゃんと撮ってる。諦めろよ。』

『俺は…そう言われても…城を…父と認めてくれた息子を離したくないと…今不思議と本心から思えるし…これ以上嫌われたくないとも…どうしたら…もう1度だけ最後の答えを…駄目なら諦めます…それすら許されないですか?』

最後の答え…ね

『神崎さん、私からも。今、シンジの気持ちとそちらの意見がぶつかりました。城も聞いていた…どちらを選ぶか、これが最後でいいから…お願いできませんかね!城を止める権利は無いと言っても、血縁や法律上、我々の子であり孫ですから。』

『…分かりましたよ。それで、もう終わりにしましょう。』

No.457 10/06/24 08:53
㍊ ( wPNK )

皆が揃って城を見る

怒っているような…
心で泣いているような…
疲れ果てたような…
そんな顔を…

『城、長々悪かったな。終わりにして帰るぞ。』

『鏡と一緒に居てもいいって。腹も減っただろ。城君の一言で終わりだよ。』

『神崎さん、突然ですが…仕事は何されて?』

『建設業で鳶。何か?』

『いや…将来安定性の無い職だったらと…連れて行くと言うなら養育費は全てそちら持ちでお願いしたいですから。』

お前の息子はどうなんだよと
苛ついたが抑えた
クソジジィ…
城の前で金の話すんな…!

『言われなくてもそのつもりです!金銭面はご心配無く!』

『城、父さん達にチャンスを…!嘘臭くても…俺としては本心なんだ。』

『城!もし我々が気に食わないなら、その時は神崎さんの所へ行ってもいいから。それからでも遅くはないだろう?』

『城、帰ろう。』

『城、チャンスをくれ。』

城は頭が痛いという素振りで
何か悩み続け
しばらく間を置いて

小さな声でたった一言…





…鏡…俺を…連れてっ…

No.458 10/06/24 11:25
㍊ ( wPNK )

―決着はついた


空腹も喉の渇きも
全く感じることのなかった
数時間…

冷え込んで乾燥した
外の新鮮な空気は美味い

玄関を出てすぐ
鏡は空を見上げて
大きく深呼吸をする

作り笑顔で見送る3人に
作り笑顔で頭を下げ
車に乗り込んだ

暖まっていない車内で
白い息を吐きながら
エンジンをかける

さみーよ~
さみーよ~と繰り返し
車を発進させる鏡の隣りで
肘を付いて徹が怒り出す

余計寒くなるから黙れよ…!

その言葉に鏡が笑い出す
ルームミラーで後部座席を見た…

そうだな 徹
何が余計寒いかって
後ろが空席なのが

1番…寒いな…




そこに城の姿は なかった…

No.459 10/06/24 16:43
㍊ ( wPNK )

『納得いかない…!』

徹が腹立たしげに言う
鏡は溜め息混じりに答える

『城が決めたんだ…。』

『押しが足りなかったか…あの子なら何言われてもこっちに来るって思い込みがどこかあったんだ…甘かった…悔し過ぎてどう復讐してやろうかとまで考えるよ!』

『俺だってまさかの結果だって…。あれだけ最後、言い聞かせても動かなかった。無理だろ。あいつらしいけど(笑)。』

少し笑いながら話す…
徹にはそんな鏡が
自分に言い聞かせているようにしか見えなかった

『奴ら信用出来ない。』

『…。』

『今日、帰るからな。焼肉も寿司も無しだ。鏡だって1人になりたいだろ。』

徹がタバコに火を付ける
俺も吸うかなと
鏡もタバコを取り出す…

『徹、ありがとうな。本当に…本当に助かったんだ…。』

『礼なんかするなよ!城君が居なきゃ…意味が無い!俺は!』

鏡の為に来たから
鏡と城が親子になって
心から笑える結果だけを
夢見てきたから…

『こんなの…俺にとっては…あいつらに負けた…大失敗な結果でしかないんだよ…クソッ…!』

徹の声が震えている…
鏡は何度も
ルームミラーを覗いていた…

No.460 10/06/24 17:30
㍊ ( wPNK )

10時過ぎ

自宅に着くと
長い長い旅を終えたような
酷い疲労感が襲う…

徹はさっさと荷物を掻き集め
靴を履いた

『明日仕事来いよ!分かったな。心配させんなよ。』

そう言ってドアを開け
思い出したように振り向く

『鏡。結果は【大成功】だからな!城君がまさかの選択をしただけだ。最後までここに帰る気満々だった。相手にも連れ帰っていいとまで言わせた。虐待の原因も突き止めた。アンタの進行と戦いは間違いなく完全勝利だった。忘れんなよ!俺は俺の中で失敗したって話しただけ。寝ろよ、ちゃんと!』

『おぅ(笑)。自分責めはしないさ(笑)。また明日な!』

鍵を掛けて
ソファーに寝転がり目を閉じた…

最後のやり取りが
鮮明に脳裏を駆け巡る…


城の最後の答え…
それは


…鏡…俺を…連れてって…
お願い…


あまりにも声が小さく
最後はハッキリ聞き取れなかった
…でも確かにそう言った

ホラ見ろと思い
すぐ徹と2人上着を着て
城の手を引いて居間を出た

未練がましくグダグダ言う男

もう決まって終わったこと!
怒鳴り返して玄関に立つ

そこで城は
靴を履くのをためらい出す…

No.461 10/06/24 21:17
㍊ ( wPNK )

城、どうした?帰るぞって!

…。

…城。帰らないのか?俺の所に居てもいいって許可がおりてるんだ。ホラ、靴!

…鏡、一緒に居たいんだ…。でも…。

それは分かってるって。でも、何だよ…。

でも…分からないです…鏡…みんな謝ってるんだ…みんなもう酷いことしないって言ってるよ…。

城君。俺達の話も聞いただろ。君に謝りながら、鏡を鼻で笑ってんだぞ。信用するのか?

…徹、頭でゴチャゴチャ言い合うんだ…鏡と一緒に居たいし行かなきゃ…でもみんな謝ったんだから、ここに居なきゃダメなんだって、俺が居ないとみんな変われないって…それはここでも存在していいってことでしょ…俺を必要としてるんだからって…鏡の所に行ったらみんな変わらないって…行くなって頭で沢山言い合うんだ…。

だからそれはさ、本心からとは言い切れない。そうじゃないかもしれない。そうじゃなかったら、終わりだぞ?何されるか分かったモンじゃない!次は俺達だって気付いてやれないかもしれない!助けてやれないかもしれないんだぞ?本心だったとしても、些細なことから何しでかすか分からないだろ!保証はないぞ?

No.462 10/06/24 21:58
㍊ ( wPNK )

徹の言う通りだ。俺だってお前が必要だって言ったぞ。

…はい…言った…うん…俺も鏡とがいいです…。

じゃあ行こう。ここが心配だって気になるなら、いつでも行き来できる。それで充分だろ?

…。

城…何で今になって…何でだよ!どうした!?

城君、もしかして家族だって思ってる?

…分からないです。でもなるかもしれない…みんなクソだったけど、今はそう思わないから…。

君は純粋過ぎるんだ。その隙を狙われた…。卑怯な奴らにしか見えない。笑ってるからな、今も君の後ろで…!

城…俺を泣かせるなよ。後が無いんだぞ?お前が言ったんだ。毎日心配で堪らない…俺達にとっては生き地獄だ。

…鏡、ごめんなさい…気に食わないならその時は帰るから…入れて…鏡の部屋に入れて!

馬鹿野郎!泣くなら…泣くくらいなら今来いよ!その時なんてねぇよ!俺の家からここへ通え…逆は有り得ない!

城君…頼むよ…俺達の気持ちだって分かるだろ。

ゴチャゴチャ言うんだ…頭!俺が居れば、ちゃんと本当の、本物の家族に、人間になるかもしれないって!駄目なら明日でも帰るから…入れて…。

No.463 10/06/24 22:33
㍊ ( wPNK )

明日帰る前に!もしもの事があったら?手錠や首輪!まだ持ってるかもしれないじゃねぇか!…あ?うるせぇ、お前は黙ってろ。城と話してんだ。…城…分からないのか、俺達の気持ちが本当に…!

…分かります…でも…。

でももクソもねぇから!力ずくでも連れてく!…約束したんだからな。沢山約束しただろ。とりあえず靴履け。

…残ります…鏡…ごめんなさい…嫌わないで…。

いいから来い!お前なんか簡単に運べるし!

…離して!やめて!!

城…マジかよ…なぁ…?

城君…後悔するなよ。ここに居るんだったら…鏡を責めるなよ。鏡は約束守ったんだ。確実に守ったんだからな!

…はい…徹…鏡は悪くないです…俺が悪い…。

分かった。じゃあ居ろ。

…鏡、怒らないで!

怒ってない。これが最後の最後、本当に最後でもうその後に予備の最後は無いっていうくらい最後の質問だ。ちょっと待ってや考え直したいは無しだぞ。いいか?


城…お前は…
神崎鏡矢と梶谷徹と
3人一緒に笑顔で
【家】に戻ること
2人一生安心して
【家】で暮らせること
それを望みますか?
それとも
自分の考えを貫き通し
ここに残りますか?

No.464 10/06/24 23:09
㍊ ( wPNK )

…望みます…でも…でも…残ります…。

ズルは駄目です。どっち。

…の…残り…ます。

分かった。顔上げて。

…嫌わないで…。

泣くな(笑)!嫌わないし呆れもしない。苦しんできたお前が 自分で選択したんだ。居るなら…やれよ。男だろ。俺の家族ですって堂々と言えるくらい立派な【家族】に変えてやれ。特にバカシンジをせめて類人猿レベルに戻してやれ。…あ?何。俺に話しかけんな、ポンコツロボ野郎!

城君、警察は受話器取って110番だからね。

…はい、受話器取って110を押す…分かった。

イワオさん、ミツエさん、シンジさん。また同じことの繰り返しだけはしないと誓って下さい。城を自由にしてやって下さい。自由にさせたからと言って貴方達の事を周囲に言う子じゃない。俺の家にも寄れる状態にしてやって欲しい。何かあればすぐ来ますよ。通報されるよりマシでしょう。 俺達は済んだので帰ります。城…いつでも来い。少しでも嫌なことあったら会社でもいい、非難しろ。

…ごめんなさい。

お前は悪くない(笑)。じゃあ…またな。

監視するぞ、忘れんなよ!城君、またゲーセン行こうな。迎えに来るから。

No.465 10/06/25 20:48
㍊ ( wPNK )

ソファーに横たわったまま
鏡は寝入る…

徹の台詞の後
城は後悔しているような顔で
涙を拭いながら
奥へ消えていった

そこから鮮明に…
鮮明に思い出しながら
夢の中で続きを…

城の選択に安心した男が笑う
鏡が歯を食いしばって
頭を下げて出た途端…

城が走って飛びついてきた

鏡!
嘘…ごめんなさい!
鏡と行く…帰るから…
連れてって!
1番弟子になるって
約束したんだ俺…

鏡と居れたら幸せなんだ
鏡も寂しくないだろ
俺、居るしね
1人で嫌なこと
考えなくて済むよ!

もう勝手に出て行かないし
ずっと居るから…
ずっと父さんでいて…!

そんな夢を…

寝込んだ鏡の目から涙…

そして呟いた…



城…

夢みたいだ…

俺の夢が叶った…

城…

戻ってくれて…

俺を父として選んでくれて…

ありがとう…

ずっと愛します…

誓います…

No.466 10/06/26 23:13
㍊ ( wPNK )

『はよーす。』
『おはよう。サワ来たし…じゃ行きますか。』
『あれ?鏡さんは?』
『来ないんだよ…連絡つかないし。』
『…何だよ。俺見るなよ!』
『徹さん、昨日…鏡さん話し合いの日すよね?何かあったんじゃ…。』
『知らないな。』
『家まで迎えに行きます?』
『いいよ!現場向かえ。あんなボケの為に無駄な燃料使うな。』
『冷たいんすから(笑)。』

徹は不機嫌極まりない
昨日の今日だし
ショックが大きいのは徹も同じだ

(心配させんなっつったのに…やってくれる!)

コンビニに寄って
それぞれがパンやコーヒーを買う
レジで並んでいると
鏡の車が見えた
会社の車に並べて停め
店に入って来る

『…鏡さん!』
『寝坊すか(笑)?』
『オイオイオイ、置いてくことねぇだろ!?冷たい奴らだよ全く!』
『オレらが悪いのか(笑)?』
『徹だろ、どーせ!やいコラ徹!少しは待て!』
『は?文句言う前に携帯出ろよ。寝癖作ってコドモかアンタ!』
『るせぇ!携帯なんか昨夜からマナーだし忘れてきた!ついでに慌てて出てきたから財布も…だから、コレ買って(笑)。昼代も貸して…。』

No.467 10/06/27 01:01
㍊ ( wPNK )

無理矢理パンとコーヒーを渡す鏡
笑いながら商品をうつ店員
呆れかえった徹は
文句を言いながらも
少し嬉しそうだった

いつもの鏡だったから…

昼飯は皆とは別に
鏡の車で食べる

『…寝れたか?』
『寝過ぎたって(笑)!』
『お疲れだな。』
『お前もな。目の下クマ出来てるぞ?』
『眠れるワケがない。悔しくて不安でさ。大丈夫かな…。』

徹も人の子だったのかと
妙に感心しながら打ち明ける

『…夢見た。やっぱり俺と帰るって。やったと思って目が覚めたら現実だ。寝坊だ!』
『当たり前だろ。目が覚めたら夢…はない。』
『…今日帰ってくるかも…早く終わらせて帰る。』
『…分かった。帰ってなかったら堂々と家行ってみれば?様子見に来たって。』
『考えたけどよ、下手したらその1度で警戒しそうで。元気ですよホラなんて簡単に逢わせてくれるかどうか…。』
『確かに。あの性格じゃあな。居留守使いそうだし。』
『諦めるしかねぇのかな。』

そう言った鏡の目は
逆に燃えていた

『取り返してぇ…!』
『終わったら張ってみるか?出て来ればいいけど。』

2人は顔を見合わせて
ニヤッと笑った

No.468 10/06/27 09:03
㍊ ( wPNK )

仕事を終わらせると
仲間に挨拶して
鏡と徹は真っ直ぐ家へ向かう

『帰ってればいいな。』
『鍵は開けておいた。』
『考えたくないけど…もしまたあいつらに…。』
『考えたくねぇ。』

車をとばして
マンションの入口に停めると
急く気持ちでエレベーターを呼び
部屋へ…

どこか期待していた
城なら戻ってくる
もし今居なくても
今日中には…

『城!ただいま!』

おかえり 鏡

城の声が心の中で響く…
静まり返る部屋…
寝てたりしてと
昨夜帰ってから初めて
城の部屋を開ける

…居ない

『まだ3時だしな。』
自分に言い聞かせて
携帯と財布を取り
鍵はかけずに下へ降りる

鏡の様子から察知した徹
『居なかったか。』
『見に行くぞ。』

目立つからと
レンタカーで軽自動車を借り
城の家へ向かう
玄関が見える場所に停め
キャップを深く被る鏡
タオルを巻いたまま
椅子を倒す徹

一目見たい
表情から今どうなのか
知りたい

男の車が無い
城とどこか出掛けていて
もうすぐ帰ってくる…

不思議な勘が働く…

もし満足そうな様子なら
自らいつか帰ってくるまで
そっとしておこう…

静かに待ち続けた

No.469 10/06/27 19:59
㍊ ( wPNK )

勘は当たり

待ち疲れて寝かけた2人の耳に
車のエンジン音とドアを開ける音

2人は飛び起きた

男と城が車から降り
後ろのドアを開ける所

少し遠いが
城の表情を目を凝らして見る

…普通だ
決して暗い顔ではない

鏡は何かされたら
すぐ降りて殴ってやると
ドアに手を掛け見続けた

むしろ何かしてくれ
それを理由にすぐ連れ戻す
…そんな願いもあった

城が被る帽子
手に持つ買物袋
男の行動…表情…

鏡は小声で漏らす
『…きゃ…良かった…。』

徹はよく聞きとれない台詞を
聞き返しはしなかった

『昨日の今日だ。これからどうなるか分からないからさ…帰るか。』
『…だな(笑)!』

苦笑いをする徹に笑い返す
そして車を発進させた

『俺とお前が軽に乗ってんの変な感じ…。』
『しかも黄色ね(笑)。』
『ピンクよりマシ(笑)。』
『確かに(笑)。大丈夫?』
『何が!話逸らしてんのに戻すな!だいじょばない(笑)!』
『鍵は開けておいてやれよ。まだ【昨日の今日】だからな。』
『…そうします(笑)。』

レンタカーを戻し
会社に徹を送って家へ向かう
もう一度呟く…

見なきゃ…良かった…

No.470 10/06/27 20:44
㍊ ( wPNK )

家に入る
着替えもせず
TVもつけず
ソファーに腰をおろす…

静まり返る部屋
ソファーの横に落ちてる
城愛用の筋トレ道具
鏡にしてみればまるで玩具
でも城は必死だった…

…まぁ、アレだ
とりあえずは良かった!
ちゃんと…親子してたしな!

片手で道具を持ち眺めながら
また言い聞かせる…


…帽子買ってやんの忘れてた
あの買物袋は衣服だろう
そのついでに買ったんだ

家に入る時
男は城の頭を軽く撫でた
そして背に手を当て
笑いながら歩いていた

ちゃんと【父親】
出来るじゃねぇかアイツ

余計な心配させやがって
最後の最後まで
気に食わねぇ野郎だよ


これからどうすっかなと
ボーッとしていた

日も暮れて薄暗くなるが
ソファーから動かない

あぁそうだ
明日から洗濯しなきゃ…
飯も自分の分とか
面倒臭いし…
掃除も自分でしなきゃ…

城が来る前の生活に
戻っただけなんだけど
なんでこんなにも
心がスースーするんだ?

城、たまには来るかな…
あいつらが
どんなに改心しても
まさか俺を忘れはしないよな

なぁ…城…
どうしてこんな苦しいんだ…

俺…こんな思い…
2度も…

No.471 10/06/27 21:23
㍊ ( wPNK )

徹から受け取った
分厚いファイルを開けて
カセットテープをテーブルに置く

バラバラにされた
ノートを持って城の部屋へ…

電気をつけて
机にノートを置く

1枚1枚
セロハンテープで合わせて繋げる…

ふと顔を上げると
写真が壁に数枚貼ってあった
全然気付かなかった
徹にプリントして貰ったのだろう

金曜日
足場で撮った写真だった

鏡と2人で見下ろしてる写真
鏡が1人で
変なポーズをしてる写真
鏡と徹の2人が
同じ格好をしている写真
他にも…
城が初めて撮った写真達が…

…また作業に戻る

徹も言っていた
まだ【昨日の今日】

それなのに…
どうしてこんなに不安なんだ
寂しいとか悲しいとか
それもあるけど
ザワザワする不安感…

この先もしも何かあったら
見付けてやれるかな…
離れてしまったら
気付いてやれないだろうが…
どうするんだよ…!

ノートを復元しながら読み直す…
もしもが段々怖くなる…

城の涙と同じくらいの
大粒の涙が流れ出した…


『馬鹿野郎が…!どうして…どうして俺から離れた…!』


手を止め床に座り込み
たった1人…
声を出して鏡は泣いた…

No.472 10/06/27 22:11
㍊ ( wPNK )

鏡 徹 ごめんなさい

何のためにこの家に来たのか
知ってて俺は裏切りました
一番の嘘つきは俺です

俺を救って
俺の夢を叶えるために
2人は一生懸命戦ってくれた
それなのに最後の最後に…
おかしくなりました
俺が悪いです…

嫌ってもいいです
怒ってもいいです…
でも…俺を
忘れないで欲しいです…

本心は鏡と帰りたかった
鏡もそれを試すために
わざと宣誓した時の台詞を
選択肢として
出してくれたんだよね
それを俺は…

みんなは気付かなかったけど
俺は気付いてました
玄関から出て行く時
笑っていたけど
泣いていたのを…

後悔しました
居間に逃げて…
カッターが無かったから…
腕を引っ掻きました…

痛かったけど
鏡より痛くないはずだって
自分をうちのめしました…

泣かせてごめんなさい…

どうして離れたか
それは
俺の存在によって
本当に悪魔を退治できるか
この目で確かめたかったから

だって俺は
あの人達に対しての
自分の存在を問い続けて
ずっと歩いてきたから…

俺も勝手で自己中だろ…
やっぱり同血なのかな…

鏡の傍に居るって
父さんになってって
自分から言ったのに…

No.473 10/06/27 22:49
㍊ ( wPNK )

あいつらの所に残るって
自分で選択したから

だからまた
酷いことをされる覚悟は
してたんだ…
本当は
怖くて怖くて仕方なかった

そうなって死んだら
自業自得って言うんだろ
それも覚悟してました…

だけど鏡と徹が帰ってから
3人は【普通】でした

ちゃんとご飯もくれたし
2階に部屋もくれた
次の日は父さんが
服や靴を買ってくれた
ファミリーレストランにも行った
だから安心してました

でもね
変なこと約束させられたよ…

鏡と徹に会うことだけは
許さないって…
守れば怒ったりしないって…
おかしいでしょ?

それは嫌だって
話違うって言ったら
一瞬怖い顔をした…
そして
じゃあきちんと一言
父さんにことわってから
会うんだぞって言い直した…

その後はまた
優しい父さんになった…

鏡…鏡を忘れたりなんて
しないです…

ちゃんと逢いたいって
話してるのに
絶対いいよって言わないんだ

鏡…嫌な予感がする…
徹…どうしたら
逢わせてくれるかな…

俺はまた最後に
全てを駄目にした…
ごめんなさい…


おかしいよアイツ…


じいちゃん…
アイツの親だろ…
助けてよ…


―城―

No.474 10/06/29 02:30
㍊ ( wPNK )



いつになっても
城は現れなかった

電話の1本さえ無い

徹や仲間達と
城の話すらしなくなっていた

城と出会う前と
全く変わらない孤独な日常…

あの父子の光景を見てから
不安を抱えながらも
半ば諦めていた

中学生を見る度
城を重ねては頭から振り払う

ポジティブな思考で納得する

きっと上手くやってる!
ちゃんと知れば
可愛いやつだからな!
城は賢いし
考えがあって残ったはず…
心配しなくても大丈夫!

ネガティブな思考に切り替わる

大丈夫…?
どこからそんな確信が?
本当は頭で良心同士が衝突し
パニックに陥ってただけで
無理矢理でも連れ帰ることを
望んでいたのでは…?
やっぱり…最悪なことに
繋がれて監禁されていたら?
今頃助けを求めていたら…!

何度かまた
様子を見に行こうとした

だけど怖かった…
幸せそうな顔の城
最悪な状況に陥った城
どっちを見るのも知るのも…

あれから2週間以上音沙汰無し

有り得るか?
城だぞ?
俺を忘れるはずねぇし!
おかしくねぇか?

ずっと気になっていた
最後の男の笑み…

仕事を終えた鏡は方向転換し
城の家へと向かった

No.475 10/06/29 18:59
㍊ ( wPNK )

家に帰っては溜息しか出ず
不安で食欲も無い毎日…

運転が段々荒くなる

そんな毎日要らねぇ!
な~にが大丈夫だ!
な~にが怖いだ!
こんなことで気分上下して
痩せちゃうようなキャラじゃねーっての俺!
徹も昔よく言ってた!
アンタがテンション下がると気持ち悪いってよ!
…気持ち悪いだと!?
畜生…思い出せば腹立つ奴だよテメェはよ!
明日会ったら覚えてろ!

城の家に着く
徹のお陰で
よく分からないが
テンションが上がった!

勢いよくチャイムを連打する!
急かすようにドアをノックする!

祖母が強張った顔で出た

『あら…神崎…さん?』
『どーもでした!城に逢いに来ましたよ。連絡ひとつ無いんで、元気かなって心配でね!』
『何だか作業着だとまた違いますわね…髪、そんな赤かったかしら…?』
『中身は違わないですから!城に逢わせて下さい。その後どうかなって!閉じ込めてたりしてないですよね?自由に行き来できるように言いましたよね!全然来ないんですが!』

奥から祖父も出て来た
話を聞いてたんだろう…

信じられない言葉を…!

『おや神崎さん、城はシンジと引っ越しましたが…?』

No.476 10/06/29 19:33
㍊ ( wPNK )

耳を疑った

『…は?』
『シンジから連絡行きませんでしたか?職場の近くにね、引っ越したんです。』

瞬時に嘘だと思った
謝罪したって
元々こいつらは悪魔

ツラッとした顔で
サラッと言いやがった…!

怪しすぎる…
もう騙されない
また2階に監禁して
犬みたいな扱いして
助けを呼べない状況にしているんだろうと…

不安の闇が一気に
鏡を覆い尽くす…

無言で祖父母を押しのけた

祖父が何か叫んだが
聞く耳なんか全く無い…

城…
城…まさかな…!
生きてるよな…?
何で俺…
こんなに放置したんだ…
また助け呼べないんじゃ…
今度こそ見付けてやるから!

階段を駆け上がり
ひとつひとつ
部屋のドアを開けて確認する…

居ない…
居ない…!

押し入れにも…
荷物の陰にも…

どこだよ…!
バラバラになってねぇよな!?

祖父が追い掛けて部屋へ…

『神崎さん!何を…引っ越したと言った!』
『殺して埋めたか!?庭か!どこだ!!』
『落ち着いて!部屋を見て…ここはシンジの居た…隣りは城が居た部屋ですよ!荷物が無いでしょう!』

確かに
荷物をまとめ去った雰囲気…
鏡はガックリと膝を付いた…

No.477 10/06/29 23:53
㍊ ( wPNK )

城は窓の外を眺めていた
知らない場所
知らない景色

荷物を片付けながら
携帯を弄る父親

『本当にここに住むの?』
『あーだからそうだって。仕事行くの楽だからさ。お前の部屋そっちね。』
『荷物、服しかない。どうするの?』
『徐々に買ったり実家から貰ってくるから。布団と毛布は車。寒いかもしんないけど我慢して。』

こんな所に住むなんて
聞いてなかった
急に箱を渡され
服を詰めろと言われ
車に乗ってここで降りた

聞けば怒られると知りつつ
聞いてみる

『鏡の家がわからなくなった。どこ?わかる?』
『知らね。自分で調べろ。』
『電話番号ならわかる。携帯電話貸して。』
『…金払ってくれるの?タダじゃないんだこれは。』
『…金…無い。』
『だろ?じゃあ駄目。』
『調べてわかったら鏡に逢いに行く。いいだろ?』

ここ最近何度あしらっても
鏡、鏡、鏡…面白くない

『駄目。』
『どうして?』
『…。』
『逢いたいんだ!どうしていつも駄目?父さんにことわればいいって言った!』

癇癪とまではいかないが
段々感情が抑えられなくなる

『嘘ばかりだ!』
『うるさい。』
『父さんが悪いよ!』

No.478 10/06/30 00:34
㍊ ( wPNK )

>> 477 片手をあげて殴るフリをする
ビクッと反応し黙る城

『殴らねーけど(笑)。でもうるさい。車から布団運んで。』
『…。』

黙って言うことを聞いて
布団を運び出す

『城!金無いんだ俺。借金あるしよ。今色々調べてたんだけど。お前も働けば楽だし、いい仕事あるぞ?』
『本当?何?』
『体売れ(笑)。』
『売る?どうやって?俺も車買えるようになる?』

真剣な顔で聞く城を
大口開けて笑い出す
勿論冗談だった

城には何故笑うのか
全く理解できない…

前ほど怖くはない
でも何かが違うと思う

前ほど悪い奴じゃなくなった
鏡の話以外なら
ちゃんと父さんの顔もする

でもやっぱり
鏡とは全然違うよ
楽しいとか嬉しいとか
幸せだなって思わない

鏡…逢いたいよ
徹…どうしたらいい

いいって言うまで
お願いしてみるよ…

『何で笑う?全然わからない。鏡が駄目なら徹は?逢いたい…逢わせて。』
『しつこいな!なら行けばいいだろ!また警察に捕まるかもな(笑)!知らねーぞ?』
『警察…見つからないように…行く!』

城は立ち上がって
玄関に向かった

同時に男も立ち
城に掴みかかった…

No.479 10/06/30 08:19
㍊ ( wPNK )

放心状態でハンドルを握る鏡

引っ越した…
しかも一週間も前…
どこへ…

何度しつこく聞いても
シンジから連絡が無いなら
我々から教えることは
できません
連絡行くまでお待ち下さいと
頑として言わなかった…

話し合いの日
去り際に携帯番号を教えたが
聞きはしなかった

もう逢えないのか…?

ただでさえ地理に疎い城
市内か市外かも言わなかった
クソジジィ…
引っ越して知らない土地で
自分の足で
逢いに来れるはずがない

『参った…あいつ…俺から引き離す魂胆だ絶対…!』

徹に電話して呼び出す
このやるせない思いを
1人で抱えるのはキツい

徹は案の定すぐ来てくれた

『最近城君の話しないから気にはなってた。行ったのか?』
『行った。でもジジババしか居なかった…。』
『それですぐ帰ったの?』
『もしやと思って勝手に入って捜したけどよ…荷物すら無かった。』
『荷物?』
『パパさんと引っ越しちゃったって(笑)!』
『は?』
『は?だろ?』
『どこに!』
『口割らねぇんだ…あのジジィ。罪悪感ももう無いんだな。』
『携帯にかけてみろよ。』
『破いちゃっただろ(笑)?』

No.480 10/06/30 18:33
㍊ ( wPNK )

『何する!離せよ!』

数々の恐怖が蘇り
男の手を振り払おうと
暴れ出す

『城、城、何もしねーから(笑)!何ビビッてんだ。面白いヤツ(笑)。ちょっと待てって。』

顔を真っ赤にして
警戒する城を引き戻す

『聞け。あのさ、駄目ばっかって言うけど、父さんの気持ち分かってくれないかな。』
『…気持ち?どんな!俺は鏡と話したい!鏡はずっと父さんだったんだ!』
『うんうん。分かってる。せっかく今までお前に酷いことしたなって反省したんだ。俺あの日から悪いことしたか?』
『…してない…。』
『ちゃんと父親になろうとしてるのに…いつもお前は…鏡、鏡、鏡!俺より鏡。俺さ、離婚して借金抱えて。女達とも上手くいかなくて1人ぼっち。寂しいんだよ。信じて付いてきてくれたのは城しかいない。なのに、鏡と徹。どんな気持ちか分かる?俺…。』

言葉を詰まらせうつむく
演技と気付かず肩に触れる城

『…1人なのは自分が悪い。父さんが道間違えたからだろ…でも…うん…それなら俺も悪い…ごめんなさい…。』

内心チョロいガキと笑い
片付けを手伝わせる

『優しいなお前。もうキョウキョウキョウは勘弁ね!禁句(笑)!』

No.481 10/06/30 22:34
㍊ ( wPNK )

それから城は
鏡の名を出すのは控えた

2人の異様な生活
実の親子でありながら
居心地の悪い毎日…

家から出ることを許されず
掃除洗濯が
鏡と居た時と同じく城の仕事

暴力は振るわないものの
城の性格を見抜いた男は
面白がり始める…

仕事を終え
昼近くに帰って来た時のこと

『疲れた。城ー。』
『何。』
『起きてから何してんの?』
『…掃除と洗濯。』
『知ってる。それ以外。』
『…何も。考えてる。』
『何を?』

鏡と徹のこと、とは言えない
外出厳禁と言われ
父親が戻るまで
本当に何もすることがない…

『暇なんだろ。』
『外行きたい…どんな所なのか知りたい。』
『人通り激しいから変な奴いるぞ。警察も。補導員も。捕まってもいいなら行けば(笑)。』
『…諦める。』
『お前食わせるのに1人働いて、不公平だよな。飯作れ。仕事追加。そろそろ昼だ。冷蔵庫に肉ある。やれ。』

火が怖いと断る…
甘ったれんなとキッチンへ
放り出される…
火が怖い…
でもやらなきゃ…
父さんも怖いから…
フライパンと肉を渡され
火を点ける…

No.482 10/06/30 23:10
㍊ ( wPNK )

火と熱と音…
僅かでも油がはじけると
全身が反応する…

火が駄目なのは知ってるはず

『む、無理…怖い!』
『何が!おいおい、何震えてんだよ(笑)!』
『やめて…やめて…!』
『オラ、ちゃんと持て!』

汗ばむ額と震える手
離れようにも背後から
逃げないように覆う男…

足を思い切り踏みつけ
痛みに叫ぶ男を押し退け
悲鳴を上げて離れる

ひっくり返りそうになる
フライパンを慌ててキャッチし
火を止める

『城!てめ…痛てぇ…来いコラ!危ねぇだろーが!!』
『ごめんなさい!父さんが悪いんだ…無理だって言ってるのに…!』
『料理も駄目、タバコもやめて。何様だ、ったく!使えねー。』
『ごめんなさい…。』

結局 役立たずは知らんと
自分だけが肉を食べ
城を放置した…

夕方になり
また仕事へ行く準備をする男

お腹空いたから
何か食べていいと聞くと
許してくれなかった…

自分が悪いと責める城
見えない所でまた
腕を痛ぶり始める…

鏡…
俺がやっぱり情けないから
父さんも怒っちゃうよ

必要だって言われて
残ったのに
必要ない存在に
なってるみたいだよ…
俺…

No.483 10/06/30 23:57
㍊ ( wPNK )

住所を割り出す方法は
いくつかあるがどれも手間
時間と金ばかり無駄にかかる

1番手っ取り早い方法を…
祖母なら上手くやれば
口を割るに違いない
そんな予感が…

それには祖父が邪魔
居ない時間帯を狙って
押し掛けないと…

そう思って狙っていた矢先
更にタイミング悪く
インフルエンザが流行り
職場の人間が欠員
…忙しい

卒業式シーズンを迎え
道行く中学生達は
大人びた顔付きで
友達と楽しそうに歩いているというのに…

遅い時間に家に着く
飯も食わず風呂だけ済ませ
疲れた体で眠りに付く…
また…不吉な夢を…

城…こんな所に居たのか!
やっと見つけた!
良かった…
城…寝てるのか?
嫌なことされたのか?
具合…悪いのか?
城…遅くなってごめん
俺だよ…鏡だ
迎えに来た!
なぁ城、起きろよ…
随分…痩せてないか?
ホラ、こっち向けって!
おはよーカワイコチャン(笑)…

布団に横たわる体を
揺さぶりだす

無気力に転がる体…
生気の無い白い肌…
固く閉じきった目…
痩せこけた頬…

冷たい…

『うあぁああっ!!』

飛び起きて呼吸を整える…
夢にしても最悪…

『城…まさかよ…!』

No.484 10/07/01 00:29
㍊ ( wPNK )

朝起きて
一生懸命掃除をした
そんなに汚れてなくても
隅から隅まで綺麗にした
また穀潰しって言われる
もっともっと働かなきゃ…

車が駐車場に停まる音
父さんが帰ってきた…
今日はいつもより綺麗にした
少しは褒めてくれるかな

玄関を開ける音と
女の人の声…

『誰!?』
『城!掃除ご苦労(笑)。女できたんだ。大人の時間だから部屋行け。』

派手な彼女の
目鼻が痛くなりそうな
香水と化粧の匂い…
サワのヨメサンとは全然違う

『父さん、ご飯…。』
『勝手に食うからいい。行け、部屋!』

違う…
お腹空いて倒れそうなんだ…
でもそんな雰囲気じゃない…

何もない部屋に入って
布団に座り込む…
お腹が鳴る…

鏡と徹のことを考える

鏡 何してるの?
徹と仕事してる?
何か違うよ…毎日…
自分からこうなっても
頑張ってみるって決めたから
弱音吐きたくない…
前よりマシにはなったんだ
だから…我慢できるよ…
でも…でもね…
鏡と徹…逢いたい…
それだけ…
今ね俺
久しぶりに空腹なんだ
こんなことで情けないけど…
こんなことで涙出てくる…
少し弱音吐いてもいい?
鏡…迎えに来て…
徹…構って…

No.485 10/07/01 00:58
㍊ ( wPNK )

居間から聞こえる変な声…

城は何だろうと思い
ドアを開けてみた…

2人が裸になって…
散乱する酒の缶…

すぐドアを閉めた
父親と目が合った
気付いたに違いない

『…気持ち悪い…!』

あの行為は
あの行為を思い出す…
涙が余計に流れて吐気がする

安アパートの薄い壁
男と女の喘ぎ声

耳を塞いで大声を出し
聞こえないようにした

『城!うるせぇ!来い!』

…来い?俺?
泣きながらドアを開けた
見ないように顔を背けながら

『何泣いてんだ(笑)。ガキはこうやって作る!お前もこうやって出来た(笑)!』
『ちょっとヤーダァ!』
『今日限りじゃねえの。城、そこ座れ。終わったら飯やるから(笑)!』

飯…
その一言に
耳を塞いで目を閉じ
泣きじゃくりながら耐える…

ずっとずっと
声を掻き消すように
囁き続ける…

鏡 ごめんなさい
鏡 俺が馬鹿です
鏡 嫌わないで
鏡 動けない
鏡 見付けて

徹 死ぬ方法教えて…

No.486 10/07/01 01:36
㍊ ( wPNK )

2人は少し寝るからと
部屋に入って行った

城はまだ泣いていた
部屋に入ろうとすると
テーブルに父親の携帯電話…

しゃくりあげながら手に取り
よくわからないまま弄ると
着信履歴から祖父へ…
声が聞こえてくる

『シンジか?』

たった今
おぞましい思い出が蘇ったばかりなのに
祖父の声…

『おい?どうした?』

城の泣き声が響く
それを察知する祖父

『城?泣いてるのか?』

名を呼ばれて
自然と反応してしまう…

『…うん…たっ…。』
『何だ、シンジの携帯から。どうした!』
『たっ…助けて…バカシンジ…お、お前の、息子だろ…何とか、して…!』
『シンジ?…意味がわからないな、何かあったのか?ならシンジに代われ!』
『…バカシンジ…父さんだったり、バカだったり…今はバカ…助けてよ…!』
『何が言いたいんだ。言葉を勉強しろ!この忙しい時に!』

そう怒鳴ると切ってしまった
震える指で
鏡の携帯番号を押す
受話器のような絵…
これで掛かるのかもと
押して耳を済ましてみる
…繋がった!が出ない…
何度も掛けてみる…出ない

城は怒り携帯を投げ捨て
部屋に引きこもった…

No.487 10/07/01 07:27
㍊ ( wPNK )

鏡の機嫌は最悪だった
決して他人に当たったり
目に見えて場の雰囲気を
悪くしたことは無かったのに

徹でさえ話し掛けるのを
躊躇するくらいだった

『鏡さん…おかしいすよ。』
『徹さん聞いてきてよ。』
『何でまた俺!』
『だって…ねぇ。』
『ああなったら今は無理。終わってからだな。俺でもダメ。』

携帯に何度も入っていた着信
仕事中全く気付かず
帰ってから見て驚いた

知らない番号から5回も…
もしやと思って掛け直すと
案の定あの男の携帯だった

名乗ると驚いた様子の男
何の用です?
の一言にカチンとくる…

テメェから何度も掛けてきて
何の用じゃねぇだろと怒鳴る

男は少し間を置いて
話を続ける…

何度も?もしかすると、城が悪戯したかな…(笑)

城…そう、城はどうしてる!引っ越したって聞いたけどよ、連絡くらいよこせよ!こっちゃ全く音沙汰なくて心配してたんだぞ!?

それはそれは…
引っ越しとなると色々忙しくて(笑)。落ち付いてからにしようと思ってましたんでね。すっかり忘れてましたよ。

どれだけ経ってんだよ!城に代わってくれ。本人から直接話を聞きたい。

No.488 10/07/01 08:11
㍊ ( wPNK )

城は今外出中です。すっかりこの場所が気に入ってしまいましてね。外を探索してますよ。父と呼ぶ息子がこんなにも可愛いものだと思いませんでした。神崎さん達が気付かせてくれたお陰です。城が望むなら、帰ってきたら掛け直させますよ。

自由に行き来ができるようにって約束だろうが!住所くらい教えろ。

…まぁ言ったところで車でも片道3時間は掛かりますから。簡単に来れないでしょう?詳しい住所は…プライバシーもありますし。

…3時間?テメェの職場はそんな遠かったか!?毎日3時間かけて通勤してたかよ?

…転職と同時にね。県外に就職しましたから。城は毎日笑ってますよ。今まで酷いことをしてきた分、しっかり大切にしようと思っていますからご心配なく。あぁ、こんな時間!忙しいのでそろそろ…。電話があったこと、伝えて置きますから。では…。


…そう言って一方的に切る
掛け直したが
すでに電源すら切っていた

城…マジか…
望むなら帰ってから
掛けさせるって…
掛かって来なかったぞ…
毎日笑ってる?
俺でさえお前の笑顔
見たこと無かった…のに…

城…それなら分かった…
幸せならいい…
もう…邪魔は…しないよ…

No.489 10/07/01 09:00
㍊ ( wPNK )

1日仕事を終え会社へ戻り
自家用へと歩きだす
徹も鏡に付いて歩く

『何あったんだよ。』
『…何も。』
『下手な嘘やめろ。』
『…。』

鏡と徹に気付かない
インフルエンザ病み上がりの
若造2人の会話…
聞こえてしまった

鏡は足を止めたかと思うと
既に徹の隣から消えていた
慌てて追う徹

『鏡!やめろ!!』
『糞ガキ共が…!』

そう叫んで2人を張り倒した
1人1人起こしまた殴る…

『鏡、やめろって!それ以上やると病院送りになる!!』

騒ぎを見て聞いて
何人かが駆けつける

『何だ!?』
『どうしたって!』
『わっ、分かりません…神崎さんが急に殴りかかって…!』

血に飢えた猛獣のような目
徹でさえ鳥肌が立つ

『…分かりません?インフルエンザ休暇で沖縄行けて良かったっつってたよなお前らよ…立てコラ!』
『鏡さん、ダメダメ!』

皆で押さえる
徹が2人を睨み付け怒鳴る

『お前ら早く帰れ!後で鏡に詫び入れろよ!嘘付いて遊んでる間、大事な私用も放って休み無く遅くまで働いてたのは鏡なんだからな!?それすら出来ないなら辞めちまえ!明日から来るな!!』

それを聞いて皆は納得した

No.490 10/07/01 10:28
㍊ ( wPNK )

鏡を心配した徹が
家に行くと言うと断られた
無視して勝手に付いて走る…

そりゃ怒るさ
あいつらが悪い
鏡は祖母に聞き出しに行く
タイミングをずっと狙ってたんだ

その肝心な時に2人も
時季外れのインフルエンザとか…
それで旅行だしな

イチ責任者として
欠員分を若手に働かせて
自分休むなんて出来るワケ無い

マンションに着くと
鏡が白い目で徹を見る

『付いて来たのか。』
『は?俺が向かった先にアンタがいたんだ。別に付いてない。神崎鏡矢に会いに来たワケで、赤いイジケ虫に用は無い。退いてくれます?』

徹の気の利く毒舌に
思わずブフッと吹く

『本当適わねぇわ(笑)。』
『当たり前だって(笑)。』

部屋に上がると
徹は真っ先に城の部屋を見た

『よし、片付けてないな。物置にもなってない。』
『何のチェックだよ(笑)。』

鏡は冷蔵庫からビールを出す
徹が突っ込む

『ビールだけ?食い物は?』
『あ、無い。』
『出前。チラシ頂戴。アンタは?』
『いや、いらねぇわ。』

あっそう、と電話を掛ける徹

『あ、出前お願いします。焼肉定食2つ!』
『…参りました(笑)。』

No.491 10/07/01 14:48
㍊ ( wPNK )

電話の話を聞いて徹も驚く

あの男の話なら
まず真実味が無いから
そんな遠くに行ったかどうか
それはわからないと思った

鏡もそれは百も象徴
ただ気になったのは…

『毎日笑ってますよだと。』
『それもアテにならない。』
『頭じゃ分かってんだ。けど、張って見に行った時の親子ップリ見てると…そうか幸せなのかなとも思う。』
『まぁ…否定は出来ない。』
『えっ!?否定しろよ!お前がそう言うと妙に納得しちゃって凹むだろぉ…(泣)』
『泣くな(笑)。』
『泣いてない。だからさ、暫く様子見るかなと。振り回され疲れた…俺。』

徹も溜息をつく

『城君…何したかったんだろうな…。』
『あいつの性格上な、真に受けたのもあるけど。罪悪感だろ…ああいう扱いされた原因は自分にもあるから、もう一度やり直せば変わるかもっていう。』
『賭だよ。暫く置いて何かアクション待つか…でも一歩間違えればまた最悪の状況かもしれない。』
『城は心配だけど、あいつに関わると疲れて…こっちが体もたない…。』
『様子見て俺がバアサンとこ行く。少しは負担軽くなるだろ。』
『お前ってたまにムカつくけど良い奴!』
『…。』

No.492 10/07/01 15:33
㍊ ( wPNK )

鏡からの電話の後
帰宅した男は
城が一生懸命畳んでいた
洗濯物を蹴散らした…

『城、俺の携帯使った?』

しまったと思いながら
正直に頷く…

『じ、じいちゃんが出て…切ったから…鏡にかけてみたよ…どうして分かる?』
『履歴が残るんだよ(笑)。鏡から電話きたぞ。』

鏡から?
出なかったけど
気付いてくれた…!?
どこか嬉しくなる

『本当?また話できる?電話来たら話してもいい?』
『金。』
『…無い…公衆電話は1分で10円だった。そんなに高くない…1分だけでいいよ、話したい!』
『父さんとの約束忘れた?』
『鏡は禁句…忘れてない。でも今は父さんが言った。』

生意気な口を…と
苛立ちを覚える

『飯抜き。』
『どうして?』
『携帯代(笑)。』
『それは…ごめんなさい!昨日も一昨日も食べてない…お腹空いたんだ…父さん許して!』

必死に懇願する…

『居ない間冷蔵庫漁ったろ?』
『水だけだ!駄目だって言うから守った!』
『お前太り過ぎなんだ。デブ!もう少し我慢して。』

デブ?これでデブなの?
鏡は痩せ過ぎだから
一杯食べろって言った…
あの時より食べてないよ…

No.493 10/07/01 16:22
㍊ ( wPNK )

夕方になると男は
仕事に行く前にシャワーを浴びる

次に入る用意をする
それを見て男が言う

『お前は駄目って言ったろ。ガス代掛かり過ぎ!家でグウタラしてんだから大した汚れてねーし。』
『汚いよ!シャワーはいいだろ!臭くなる…洗わなきゃ!』
『生活かかってんだ!甘えんな!使ったらわかる。使ったら明日覚えとけ!』

そう言って出て行った
仕方ない…顔だけ洗って
顔用のタオル濡らして体拭こう
使ったらわかるんだ…
怒られたくない…

何もない狭い部屋
城の荷物は衣服のみ
そこに敷かれた薄い布団
部屋の窓を開けても
隣の雑居ビルの壁
大好きな鳥すら見えない…
日の入らない部屋…

空腹が酷くて
倒れるように寝込む…

城も夢を見る…


聞き覚えのあるクラクション…

飛び起きて窓から下を見る…

ダホダボズボンの
スーパーマン2人が
笑顔で手招きして呼ぶ…

城ー!帰るぞー!!

嬉しくて嬉しくて
転がるように駆け降りる…

スーパーマンの顔が変わる…

うわっ…小汚ねぇ…!勘弁!

逃げるように去る
真っ黒の車…

待って…
仕方ないんだ…


寝込んだ城の目から涙…

No.494 10/07/02 00:09
㍊ ( wPNK )

目を覚ますと
喉の痛みを感じた
心なしか体もだるい
あまり動きたくない…

それでも掃除はしなきゃ…
洗濯物は今日は
そんなに無いから
しなくても大丈夫…

せっかく健康的に肉付いた体
今はまた肋骨が浮き出て
力が入らない…

我慢出来ない
駄目って言われたけど
冷蔵庫…見てみよう…

ビールばかりだ
冷凍庫を開けてみる…
コロッケ?どうやって食べるの?

ひとつ取り出して噛みつく
硬くて無理…
火を通さなきゃならないのに
城は一生懸命噛み付く…
電子レンジを使えばいい?
適当に温めてみた
柔らかくなった…!
一口食べる…不味い…
でももう一口…生っぽい…

苛々してくる…
ゴミ箱へ捨てる…

調理の仕方も分からない
惨めな自分
こんな体にした
あいつらのせいだ!
でも自分が可愛くなかった
だからこんな体になった…

ビールを飲もう
苦いし嫌いだけど
炭酸だからまだお腹膨れる…

ブシュッと開けて飲む
ヨウヘイの所で初めて飲んだ時を
思い出す…

辛かったけど
先輩がいたからまだ
楽しかった

でも今は
知らない場所にただ1人…

酔いが回って頭痛…
布団に潜り込んだ

No.495 10/07/02 00:52
㍊ ( wPNK )

男が帰ってくる音
TVを付けて酒を飲む

いつもみたいに
良くも悪くも
城を構う様子もない

咳をしながら
重い重い体を起こして居間へ

『…おかえり。』
『酒飲んだろ。』
『うん…お腹空いて…頭痛い…喉も…風邪かも…薬ある?』
『無い。てかお前臭ぇわ!』
『うん臭い…シャワーいい?』
『あぁ、入れ。』

久々のシャワー…嬉しかった
これで鏡と徹が来ても
逃げたりしないから!
綺麗に丁寧に洗って出る

今度は腹痛…
生っぽいコロッケのせいかも…
トイレに暫く籠もる

『どんだけ長く入ってんだよ(笑)!』
『父さん、掃除出来なかった…寝ててもいい?凄く…具合悪いんだ…。』
『そんなに?どれ、来い。』

そう言って隣りに座らせ
手の平を額に当てる

鏡もすぐそうやって
計ってくれた
慌てて薬買いに行ってくれた
手の温もりに一時の安らぎ

『あー…熱あるなぁ。』
『薬あれば少し早く楽になるだろ…コロッケのせいでお腹も痛いんだ。』
『自爆だろ、勝手に…!いいよ、行け!』
『どこに?』
『部屋に決まってんだろ。風邪移る!治るまでこっち出てくるなよ!』

唖然とした
泣きたくなるのを堪え
言う通りにした

No.496 10/07/02 01:47
㍊ ( wPNK )

徹から着信

『どうだった?』
『爺さんしかいないみたい。また旅行かもね。』
『ハァ…全てにおいてタイミング悪いな…!』
『興信所が手っ取り早いか。』
『いや、今後の為にもミッチャンを味方に付ける!』
『友達か(笑)?』
『徹、どーもな!せっかくの休みに。』
『それはいいけど。』
『ミッチャンに会えたら頼むぞ!男・徹の色気とトークで落とせ!』
『何だよそれ…アンタがやれ。口悪いから無理だけどね。』
『いや、アンタに言われたくねぇわ(笑)!』

城からもう一度
電話よこしてくれねぇかな…

来週俺もやっと連休だし
それまでに見付かればいい

どうかどうか
痛い思いせずに
楽しく生活していてください
どうかどうか
俺が現れたら
笑顔を見せてください
そして
あの男に大声で
やっぱり鏡と住む!
なんて言っちゃってくれたら
俺、滅茶苦茶鼻で笑って
気持ち良く去れるから(笑)

城の純粋さを利用して
もしも酷いことしてたら

シンジ
同じ人の子の父親として
(1度失敗したけど)
許さねぇからな!

あくまで法に頼らずとも
二度と城に
頭上がらないようにしてやる

待ってろや!!

No.497 10/07/02 23:12
㍊ ( wPNK )

城は言われた通り部屋にいた
翌日男は帰って来なかった

熱と頭痛と吐気と咳と下痢
空腹による体力低下で
トイレへ行くのがやっと…
朦朧とする…

…死ぬ?…また鏡にさよなら…言わなきゃならないかも…

風邪引いた時
鏡がしてくれたことを
思い出し始める

…汗かいた時のために
着替えを置いてくれた
…スポーツドリンクを
買いに走ってくれた
…食欲無いって言ったら
鏡矢様【特別】スープだ!って
無理矢理でも飲ませてくれた
…頭痛酷いって言ったら
薬効くまで我慢だ
それまで裏技伝授だって
こめかみ押してくれたけど
バカ力で痛いって怒ったら
すぐゴメンナサイって謝ってた
…吐気が酷くてトイレ籠もったら
何回もドア開けて心配して
大丈夫ですか~
大丈夫ですか~って
様子見に来てくれた
…咳止まらなくて辛い時
城チャン男なら乗り越えろ!
今が試練の時だとか
意味わからないこと言って
背中さすってくれた

病院へ行けない俺を
一生懸命見ていてくれた
やっぱり
鏡のが父さんだ…
あいつは見てくれない
都合の良い時だけ父さん面

俺あいつに言いたいことある
だからすぐ治すんだ…!

No.498 10/07/02 23:54
㍊ ( wPNK )

フラつく体を無理にでも起こす

冷蔵庫から水の入った
ペットボトルを取り出し
コップを持って部屋へ運ぶ

鏡は氷枕を用意してくれた
でも無いから
ビニール袋に氷を入れて
氷嚢代わりにする

空腹を少しでも満たすのに
氷をガリガリ食べて
部屋へ戻る

やっぱり下る腹
それはもう仕方無い

頭痛はこめかみを押して耐え
着替えを傍に置き
毛布にくるまって
眠れるだけ寝続けた

掃除も洗濯もしなかった
文句言われても
言い返せる

あいつの言う通りにしてたら
駄目になってしまう…

自分から鏡と離れて
残るって決めたんだ

引っ越しは予想してなかった

だけど
悪魔を退治するんだって
決めたから
もう1度
ちゃんと言うこと言ってみる

あいつの心は悪魔なんだ

酷いことされる覚悟出来てる
大体予想つくよ…怖いけど!
だから多分
今が俺の最後だと思う…

何されても俺は俺の思うこと
最後に全部ぶつけてやる!

逃げたりなんかしない
逆らう訳じゃないよ
俺の思うことを
1対1で
最後に

最後に
全力でぶつけてやるんだ

何かされても勝ち目はない
体力が限界だから…

No.499 10/07/03 00:37
㍊ ( wPNK )

次の日も父さんは
帰ってきませんでした

おれのこと
どうでもいいんだって
この時きちんと理解しました

ただのカゼだったけど…
苦しくても1人だったからこそ

余計に鏡がたくさん出てきて
たくさん比べてしまいました

血のつながった
大嫌いな父さんと
血のつながらない
大好きな父さん

血って何だろう
家族って何だろうね?

おれは
今までされてきた虐待は
自分も悪かったからだと思い
許しました

だけど
父さんと2人になってから
何がいけなくて
こんなことされるのか
実はわからなかったんだ

わからないまま
多分自分が悪いんだろうって
ウデを傷つけてました

父さんが帰ってこなかった間

多分これを言ったら
今までより痛いことされると
わかってて
父さんにぶつける
決心をしました

熱にうなされて
頭と心が変わったと思います

熱湯やタバコも覚悟しました

おれはもうガマンできなかった
死にたくなかったけど

もう死んでもいいやって
初めて心で笑って言えました

鏡もきっと
あきらめるでしょって
初めて思えました


おれは
1番あの悪魔に効く方法を
思い付いたからね

それは…

No.500 10/07/03 00:53
㍊ ( wPNK )

おれの存在を

永遠に

あいつの心に

焼き付けること



おれの心のドロドロ

ぶちまけてやるよ



だから殺して

まってるよ



逆上しやすいお前なら

そうさせるのは簡単だ



永遠に

父さんの心の中で

呪い続けてやるからね



鏡 徹

1番の悪魔は

おれだったみたい…



鏡 ごめんなさい

そして

ありがとう

おれのたった1人の

お父さん…



―城の手記(一部)―

投稿順
新着順
主のみ
付箋

新しいレスの受付は終了しました

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧