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一人ぼっちになったシングル母
既読ついてもう10日返事なし
娘がビスコ坊やに似てると言われました

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㍊( wPNK )
10/07/03 00:53(更新日時)

小説なんて書いた事もないので表現力が乏しい上、読み難いかもです。

最近よく見聞きする【虐待】という行いについて考えるきっかけになれればと思い、主役【城(セイ)】の存在を何かに残したかったので…ですからほぼノンフィクションです。

つたない文章ですが、暇潰し程度に読んでください。

虐待を中心に、同性愛的な内容、精神的な問題等、少々生々しい部分も含まれています。
不快に思われた方は素通り願います。
感想スレは別にありますので、読者の方の邪魔にならないよう、レスはそちらにお願いします。

一度自分のミスで削除してしまい…申し訳ありませんでした。
再度よろしくお願い致します。

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No.1301642 10/04/19 21:10(スレ作成日時)

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No.351 10/06/03 19:40
㍊ ( wPNK )

城…あいつこそ大丈夫かよ

鏡は心配しながらも
あえて部屋から出てこない城をそっとしておいた

明るく振る舞っても
普段より口数少ない3人

トイレに出てきただけで
昼飯は要らないと
城は部屋へ引きこもる…

小腹空いて菓子でも食べに出てくるだろうと思っていたが
水すら飲みに出てこない

約束の時間まで
あと1時間半…

堅苦しい格好もどうかと
街中へ出る程度の服装で
2人は準備を済ませる

若造がと馬鹿にされない様に
徹は髪を上げて固め
アクセの数を減らしていた

菓子パンとジュースを持ち
2人は部屋をノックして入る…

後ろ姿を見るだけで
悲しくなる程無気力のまま
ベッドに横になっていた…

枕も布団も床に散乱
紙も数枚


『そろそろ用意しねぇと。』
鏡が声を掛ける

裏に何か書いた新聞のチラシ
徹が1枚拾って見る
無言で鏡に渡す…


【鏡】【徹】【鳶】

ただその3つのワードだけが
無造作に
何枚も何枚も書き込まれていた…

きっと安定剤代わりの
まじないと夢なんだろう…

No.352 10/06/03 20:15
㍊ ( wPNK )

『城…居るか?ここに。』
『具合悪いかい。』

2人がベッドに座ると
力無い腕で体を起こ
した

『…行くよ…聞くんだ…。』
『なら、何か腹に入れないとさ。ホラ食え。』

パンを開けて無理矢理渡す
モソモソと食べ始めた

幼い顔付き
成長しきれていない体

それでもあの日に比べたら
健康的で肉も付いた…

あいつらに見せてやる
どれだけ尋常じゃない扱いをしていたのか
本人をもって教えてやる

食べ終わったのを見計らって
鏡が落ち着いた声で
用意してこいと促すと洗面所へ向かった

『テンション下がる。やるせないよね、あの紙。』
『てか、お前が上がる事ねぇだろ!?』
『鳶、よっぽどなりたいんだな。あの子。』
『違う。鳥みたいに自由になりたいってこと。前に教えたから。鳶って鳥。』
『…なるほどね。』

城がいない間に布団を戻し
座って待つ

部屋に戻った城は
ベッドに座ったまま
自分に笑顔を向ける2人を見て
また涙を目に溜め
着替え始めた

もうこの2人の前で
傷を隠す事はない

着替え終わって
いつでも出れるよと言う

少し時間が早い…
徹がここ座ってと
自分達の間を指差す

No.353 10/06/03 21:02
㍊ ( wPNK )

鏡と徹は両側から
城の肩に片腕を乗せ
もう一方の手で
城の手首を優しく握った

大人の男2人分の重さが
城の肩に一気にのし掛かる

それは城にとって
いつも憧れていた
丈夫で強靭な体の重み
2人の強さと逞しさ

自分は犬だと嘆いた
嫌でも見える手首の傷跡

そこに伝わる温もりは
2人の大きな器と深い優しさ

城の腕がまた微かに震え出す

『俺からのメッセージ!』
ニヤッと笑って徹が語り出す

城君
今日まで良く耐えました
1人で抱え1人で走り
1人で今日
俺達と戦う事を決意した
君は本当に芯の強い男だな
俺には無い
君を知れて良かったと思う
認めてくれて
ありがとう

『お父様からのメッセージ!』
鏡がゆっくり語り出す

城君
今日までよく耐えました
俺の名を呼び続け
素の自分をさらけ出し
辛い日々を打明けてくれて
愛しくて仕方ない
離したくない
お前は俺の宝
信じてくれて
ありがとう

『俺のパクリじゃん(笑)!』
『ちょっとだけだろ(笑)!』

照れて笑い合う2人を見れず
うつむいたまま震え続ける城

…生きてて、良かった…!

『行くか!(笑)』

いざ、出陣!―

No.354 10/06/03 21:53
㍊ ( wPNK )

鏡の車で向かう

城は相変わらず
まるっきり一言も話さない

久々に見る
家が…見えてきた
徹が後ろを振り向く

『一応、念押しとく。相手からも俺達からも何か質問されたら、ありのまま話すこと。あと、相手を見て感情高ぶっても決して取り乱さないこと。無理でも努力して。後は…具合悪くなったら言う。車で鍵かけて休ませるから。あいつらに預けたら何を理由に拉致するか分かったもんじゃないからさ。』
『…はい。』

鏡は黙って車を停める
駐車スペースには2台の自家用車

『居るみたいだな。』
『でなきゃ困るさ。門前払いなんて。』

徹がノートを挟めて隠したファイルを持ちながら降りる

鏡は城の過呼吸の発作を
気にかけていた

ポケットに畳んで入れておけと
紙袋を渡す

城も車から降り
2人の後を付いて行く…

2度と入りたくない家
2度と会いたくない人達
特にジジィ…

鏡が玄関チャイムを鳴らした

ガチャガチャッと
内側から鍵を開ける音…

最初に顔を出したのは…
父親だった…

No.355 10/06/03 22:25
㍊ ( wPNK )

『あ、今晩は。この前はどうも…。』

鏡が最初に声をかけ
続いて徹が頭を下げて入る

『いやぁ、ご足労すみません。わざわざ。お待ちしていましたよ。』

父親は爽やかな笑顔で2人を
迎え入れた

城は父親を見て
足がすくんで入って来ない…

徹がさり気なく引き入れる

鏡と徹にスリッパを出す父親
城も最後に上がる…

城の額の汗を見ながら笑う…

『不出来な息子が長い間お世話になりましたね。食費等もかかったでしょう。あ、そこの部屋ですよ。』

2人に
居間の場所を指差し教える

後ろで
父親は城の後頭部を
バシッと思い切り叩いたのを
居間に入る間際の鏡は見逃さなかった

勢いで壁に肩からぶつかり
頭を抑えて座り込む…
声は少しも上げない…

腕を掴んで立たせる男
頭をガードして怯える城…

あ…あんにゃろう…!!

何してんだよ!?
と突っ込みたかったが
まだ駄目だ…
抑えろ自分…
城…悪ぃ…
深呼吸して抑制する

畜生!俺らが居るのに…!

知っててやってんのかよ!
城、こっち来い!

背中をドンと押され
よろめきながら
城も居間へ入る…

No.356 10/06/03 23:02
㍊ ( wPNK )

綺麗に片付けられた部屋
バランス良く家具が配置され
庭が一望できる大きな窓

12年間耐えて過ごした家…
そんな過激な虐待が行われていたなんて 全く想像付かない

TVの傍の絨毯が
少し薄れて変色しているのが
気になった

『どうぞかけて下さいよ。今、呼んできます。』

男が部屋を出た瞬間
鏡は城を小声で呼ぶ

『ここ座れ!安全だから!あの糞ッタレ…大丈夫か。』
『ワザとだろうか…。』

徹も気付いていたらしい
城は泣きそうな顔で首を振り

TVの近くの硬い床に座った
丁度鏡の右後ろだ

『何でそんなとこ。こっち来いって。』
『…ここが俺の場所だから…ここ以外は怒られるから…いい…。』

あぁノートにも書いてあった…
だから絨毯が…

そんな所じゃ顔見えねぇよ…

『鏡。挑発に乗らないでね。あいつ絶対ワザとだ。』
『…わかってる。』

暫く待つと奥から
城の祖父母が現れた…

城が小さな悲鳴を上げたのは
しっかり聞こえていた…

No.357 10/06/04 17:49
㍊ ( wPNK )

『どうも初めまして、城の祖父のイワオです。』
『祖母のミツエでございます。』

初めて見る悪魔…

祖父は読んだ通り
背は鏡より低いが
肩幅があり格闘技向きな体格
短く刈った白髪
眉間のシワが濃く厳格な顔付き
息子と似ているといえば
似ている…

確かに見た目からして
城が抵抗して
勝てる相手では無い

こいつが城を…
こんな奴が城を…!
込み上げる大きな怒り…
ヘドが出そうだ…

祖母は1度見た時と変わらない
その笑顔からは
とても鋭利なナイフを持つ
50代の女性とは思えない
柔らかい雰囲気…

彼女は茶の用意をしに移動

鏡達が挨拶をする間も無く
満面の笑みで話を続けた

『何だかウチの孫が長期に渡って家出をしてしまい…保護して頂いてたとかで(笑)。ご迷惑お掛けしましたね。あ、ちょっと待って下さい。』

立っている鏡の脇を通り
城の傍へ…

鏡と徹は息を飲んで
振り返った

壁に寄って膝を抱えて座り
自分の方へ歩いてくる祖父を
今まで見たことの無いくらい
酷く怯えた目で見上げていた

祖父は屈んで
頬を叩こうと手を上げると
城は瞬時に顔と頭を守る…
お構い無しに左側から
バシン!と一発…

No.358 10/06/04 18:16
㍊ ( wPNK )

『人様に迷惑掛けるなと何度教えたら分かるんだ!馬鹿者!』
『ゴメンナサイ…!』

頭を覆ったまま小さくなる

鏡が出て
祖父の肩に手を掛ける

『ちょ、ちょっと!やり過ぎでしょう!』
『いいんです、このくらい。身に染みていい加減分かるでしょう。そうだな、城!』
『ハイ…ゴメンナサイ…!』

顔を上げない城

信じられねぇ…
まさかいきなりこう来るか…

鏡はまたグッと堪えた
低い低いトーン…

『…迷惑だったかそうでなかったかは、これから話しますから…。始めましょう…色々聞きたい事もありますから…。』

祖父がソファーへ戻る

スーツ姿の父親は
腕を組んで見ている
祖母も席に付く

徹は…
ずっと祖父を睨んでいた

鏡の右手に大きなTV
そのTVの前…
鏡の少し右後ろの床に城
左手に徹

鏡の正面に父親
真ん中に祖父
徹の正面には祖母…

あれ、貴方はもしかしてと
父親が徹をジッと見た
ええ、そういう事ですと
微笑を浮かべた徹

父親はなるほどと鼻で笑った

No.359 10/06/04 19:06
㍊ ( wPNK )

―ゴングが鳴った

あんなに気が張っていたのに
不思議と緊張感は無い
俺から始めようと思って
口を開こうとすると
男が勝手に進行を始めた

『さて、始めましょう。お2人共、1度面識ありますよね。早く息子を見付けてやりたいあまり、不審な行動、失礼しました。改めて、父親のシンジです。よろしく。』

名前なんか聞きたくもねぇ…
俺らも続ける

『神崎鏡矢です。よろしくお願いします。』

『梶谷徹です。』

『えー、城を世話して頂いた事には感謝してます。警察にも届けは出していたんですが。たまたま1度見つかったきり、中々ね…(笑)。』

俺達が
虐待してると疑っているのは
間違い無く知っている
ヘラヘラして恩着せがましい挨拶
腹立たしい男だ…
だけどまずは
下手に出て様子を見よう
話は勝手に進むだろうし

『いえ…そこまで親御さんに心配かけさせたのはこっちの責任ですから。本人の意志で帰してやれなかったとは言え、せめて電話番号くらい聞いて、そちらに連絡のひとつでも入れなければならない立場でした。そこは申し訳無く思ってます。』

一応2人で頭を下げた

ジジィは腕を組み
目を閉じて黙って聞いていた

No.360 10/06/04 19:43
㍊ ( wPNK )

『本人の意志…ですか。何を言ったか分かりませんが、話があると言うことで呼びましたからね。聞きましょう。』

城を睨んだのが分かった

徹が突然激しく咳込みだす
お前が大丈夫かよ…

『そうですねー。保護したと言いますか。その理由と言うのが、今回、あまりにも体が酷い状態だったんで。しかも真冬に上半身裸。傷は勿論ご存知ですよね?病院も家も嫌だと拒絶するので、他に行き場も無く家で手当てしたんですよ。』

この前会った時
喧嘩の跡って言った
知らないなんて言わせねぇ
本人の前で言ってみろ!

『喧嘩の跡ですか(笑)。家出しては作ってくる…何度も同じ繰り返しで!ろくな仲間とつるまない。だから出さない様にしてるんですが、言うこと聞かなくて。困ってますよ。手の掛かる子です。』

堂々と返してきやがった!
右後ろから苛々した様子で
絨毯でも弄っているのか
落ち着かない音…
男の視線もそっちへ流れる

俺を信じているからだろう
きっと癇癪起こしたいのを
我慢している…

徹が口を開いた

No.361 10/06/04 20:37
㍊ ( wPNK )

『背中に火傷痕あるよね?』

『…えぇ、知ってます。』

『知ってるんだ(笑)。喧嘩であそこまでの火傷ってどんな喧嘩?あの火傷痕見たなら、嫌がろうと病院連れて行くよね?親でなくても、身内なら。』

ジジィを真っ直ぐみる徹
相変わらず目を開けない

『放置しててもいつか良くなる、喧嘩だから仕方ないってレベルじゃなかった。家出して何度も連れ戻してるんだったら気付いてるよね。今、神崎が【今回】って言ったのは、俺達が城君を保護したのは1度じゃないから。初めて会った時にこっちで火傷や傷の手当てをして、また暫くしてから何の手当てをした跡も無く、同じ所に傷負っていた。身内なのにあんな怪我、見過ごすの?単なる喧嘩の跡だから?火を使う喧嘩、どんなのか見てみたいけどね!』

相手の揚げ足を取るのは得意
しかもタメ口マシンガン
男の顔が変わった
話は聞いていても
詳しいジジィの虐待内容は
多分こいつは知らない…

俺もすかさず城を見る

『城、その傷跡、喧嘩でやられた傷なのかい。』
『違う!』

我慢してたのを
ぶち負ける様に言い放つ

『本人、ハッキリこう言ってますけどね…。』

No.362 10/06/04 21:24
㍊ ( wPNK )

>> 361 『火とは限らないです…熱湯かもしれない。』

来た!と嬉しそうに
突っ込みを入れる徹

『熱湯?さあ喧嘩だって、ワザワザお湯沸かすの?鏡、昔ヤンチャだったんだろ。喧嘩最中にヤカンやポットのお湯かけ合う(笑)?』

『ポット(笑)?俺ならしないなー。自分にかかったら熱い!嫌だ!用意してる間にヤられちまうだろ!』

ついいつもの自分達に戻る
相手3人は誰も何も言わない
話を戻さないと(笑)

『まぁ、火か熱湯かはいいとして。喧嘩ですじゃ納得出来ない程の酷い傷だって事ですよ。本人も否定してますしね。』

男は城を睨みつけた

『…本人ね。神崎さんでしたっけ。前に、15歳なのに小学生みたいな…って城の事、言ってたでしょう。親でないと分からないと思いますが、知遅れ(知恵遅れ)でしてね。一緒に居たならお分かりですかね。話しても会話にならず、すぐ黙ったり、キレたり。常識的な事も教えても覚えられない。だから小学校では結構苛めにあっていたらしくて。夢見がちで被害妄想も激しい。そんな子の話に真実味なんてありませんよ。』

今度は知恵遅れと来た
あくまで虐待を認めず
言い逃れし続ける気か…

No.363 10/06/04 22:21
㍊ ( wPNK )

城に今の話の深い意味は
理解出来ていないはず…
知遅れや妄想の意味が
まず分からないだろう

『じゃあ彼の言う言葉は信じる必要が無いと?』

『全てとは言いませんがアテにはなりませんね。悪いから叱る。厳しくしないと聞かないからお仕置きとして叩く。要するに、叩かれなきゃ覚えない子です。躾ってのはその家庭によって違う訳ですよ。子供を持たないと解りませんよね(笑)? それが嫌だって勝手に家出して徘徊して、学校も行かずに迷惑かけて。貴方達に保護してもらったって…そこで何を話したかは知りませんが。自意識過剰。被害妄想もいい所です。誰が信じると?喧嘩で負けた腹癒せが、こうやって私達に向けられようと、親だから受け止めますがね!』

子供の育て方云々は
言える立場じゃない…
城が虐待だと騒いだとしても
精神病の子だからで
片付けるつもりか

『そうですか…もしも彼の口から真実を公の場で語られたら…同じ事を言えますかね?』

『真実(笑)?それ自体が意味不明ですよ。城から真実が語られる事は無い。頭弱いんですよ。病気(笑)。』

城が後ろで呟いた
俺、病気…
…我慢…できねぇ…!

No.364 10/06/05 22:16
㍊ ( wPNK )

でも我慢しなければ…
城でさえ耐えてる…

『あのね、シンジさん。息子さん目の前にして、知遅れだの自意識過剰だの、被害妄想、頭弱い、病気だって簡単に言いますけどね。まるで聞いていて、言葉の暴力にしか思えませんわ。俺は長いような短いような期間、城君を見てきましたけど。素直で賢い優しい子という印象しか持ちませんでしたよ。ですから非常に不快ですね。実の親でしょう!そちらの環境に問題あるから、そうとしか捉えられなかったのでは?』

『環境?育て方の事ですかね。それはさっき言ったように、人の家庭それぞれの躾け方の違いですよ。そこは他人に口出されたくないですね(笑)。』

『いや、さっきから、躾、躾って…傍に居なかったでしょう!12年くらい!』

男は口を噤んだ

『その位の家庭環境は聞いてます…両親はいない、祖父母の元にいる、最近になって貴方が現れたってね。躾を語れる程、父親としての役割果たしてやれました?久々に現れて、父親と認識させてやる間も与えず、叩いて暴言吐いて。精神病扱い?貴方の言葉のが真実味薄いですね。子供を持たないと解らない?親だから受け止める?口だけ格好つけないで下さいよ!』

No.365 10/06/05 23:04
㍊ ( wPNK )

父親の役割とか…
まるで自分に言っている様だ

『父さんじゃねぇよ、そいつ…俺は知らない。』

城らしからぬ口調
男の目が吊り上がる
素顔を見せ始めた

『あ?黙ってろ、お前は!神崎さん、お子さんお持ちで?既婚?』

『俺の身の上は今この場では関係無いです。』

苛々した様子で
タバコを取り出し吸い始める
城がタバコを怖がるのを知って
これもワザとだろう…
城の方を向いて
笑みを浮かべやがった

ゴホッゴホゴホッとまた
徹がむせ返る

『気管支弱くて煙ダメだから消してくれる?キツい!客居るなら一言ことわってから吸うのが【常識】なんじゃないの。』

よくやった!
一番離れた場所のクセに(笑)
男はムッとしながらも
仕方なく消す

少々俺らが優勢か…
祖母が口を開いた

『息子がいない間は私達が見てましたけど。城はやっぱり何と言うか、幼い頃から普通じゃなかったんです。全く表情が無いですし。可愛げが無いというのかしら。』

No.366 10/06/06 12:47
㍊ ( wPNK )

『幼い頃から普通じゃない…ねぇ。どんな感じか詳しく知りたいです。』

『シンジも離婚する事になって…何せ淫乱な母親だったものですから。城を連れて3歳の時にここに来ましてねぇ。私達が預かる事になったんですけど、挙動がちょっと。顔色は伺うし、ニコリともしないしねぇ。悪い事したら叱りますでしょ?極端におどおどして、よく分からない言葉を口ずさむんです。気持ち悪いと言うか…あの母親ですから、そもそもシンジの子かどうかも…。可愛がるのは難しいわね。それでも周囲の目もありますし。私達なりに育てましたの。それがこんな…確かに失敗したかもしれませんわね(笑)。』

笑うのかそこで…
あくまで息子に否は無いと?
城は母親を知りたがってもいるのに…今そう話すのか

『…それは息子さん夫婦の養育の仕方、責任の問題でしょう?3歳の幼児が離婚とか環境が変わった理由、理解出来ると思います?それで両親現れないなら、置いていかれた以外に受け止めようがないじゃないですか。様子がおかしいなら息子さんに連絡取って何故こうなったのかと、ちゃんと聞けば良かった。』

『連絡がつかなくて…。』

『単なる育児放棄ですよ。』

No.367 10/06/06 14:33
㍊ ( wPNK )

今度は俺が鼻で笑い
挑発してみる
男の目と合う
俺も逸らさない
男は冷酷な目付きで
ガン飛ばしながら答える

『育児放棄って(笑)。お宅にこっちの事情の何を知ってそんなこと!』

『母さんは?どこだ!』

城がもう待てないという口調で聞き返す…
今の祖母の話もよく理解していなかったようだ
男はニッコリ笑顔を向けた

『何、気になるのか。連絡は今でもたまに取り合ってるよ。会いたいのか?』

返事は聞こえなかったが
頷いたんだろう

『お前の母さんは今、子供2人育ててる。1度見たけど、可愛くて綺麗な綺麗な男の子と女の子だったなぁ。幸せそうだったけど?それでも、会いたいか?電話してやるよ、今すぐにでもよ!種違いでも一応お兄ちゃんだからな(笑)!』

上手く息が…出来ない…
その言い方
その顔…
完全に面白がっている

城の…
ふぇっと言う
小さな小さな泣き声が…
そして鼻をすする音…
俺、限界

『まぁ、アレだよね。』

徹が俺の気持ちを読んだかのように突っ込む

『こんな息子に育ったの、よく納得出来た(笑)。』

No.368 10/06/06 18:47
㍊ ( wPNK )

『周囲の目を気にして仕方なく育てたって?育てられる方のがイイ迷惑。そんな恩着せがましく…可哀相、城君。あまり深い事聞くのもなんだけど、シンジさんの子じゃないって確証あっての育て方?DNA検査した?本当の貴女の息子の子だったら?今のその言葉にどう責任取る?そもそも、誰がそんな事言ったの?』

チラッと息子を見たのを
見逃さない徹

『俺達と同じ位の歳だよね。10代で出来た子なんでしょ?まだ遊びたかったんじゃないの?自分の子じゃないかもしれないとかって親に話したの?籍入れざるを得なくて、簡単に離婚出来るよう仕向けたとか!それを間に受けて信じたとか?だとしたら、とんだ自己中と親バカって思う。』

『失礼にも程がある!』

男は声を荒げた

『…もしかして図星?勝手な作り話だけど(笑)。』

おいおい、徹…
その勢い…キレてんな
相手怒らせてどうすんだ…
仕方ない
勢いに便乗して行くか

『失礼かどうかの判断、出来るじゃないですか(笑)。城君に対しては鈍るようですがね!城、泣くな。話作ったり、確認しないで信じたり…お前の母さんの話もアテにならないぞ!』

『…何を仰るの、貴方達!』

No.369 10/06/06 22:16
㍊ ( wPNK )

一時的に場が騒然となる

冷静に答えてるつもりでも
自然と刺を持ってしまう
俺と徹…

自分達の家庭問題だと
あくまで悪行を否定し
城を精神異常扱いする
祖母と男…

相手を怒らせると
逆効果なのは理解している…

この場で
俺達の前でも
堂々と城をイタぶる男が
どうしても許せない…
徹も同じに違いない

それに
まだ偉そうに腕を組んで
眉間に深いシワ寄せて
目を閉じ動かないジジィ
本気で寝てるのか
座ったまま死んでるのか
存在自体が苛つく…

息子に任せっ放し!
いい加減にしろやと思う…

まずは
虐待行為を認めさせないと
引き取る話なんか
切り出せない

突けば言い訳して逃れる

徹が俺にノートをチラつかせた
俺も目で頷く

何よりもジジィ
お前が出てこいや!
話し掛けても無視しやがって

チラッと城を見ると
自分の目の前の床に
両手の指を絡めて
あの時と同じお願いのポーズ
強い力で握り続けているのが
よく分かった…

No.370 10/06/07 01:34
㍊ ( wPNK )

『城、来い。ここ。』

突然、男が城を呼んだ
ジジィも目を開けて見た

指差した先
男の傍…ちょうど俺の右前
城は黙って立つ

後ろで組んだ手の指先が
ずっとカタカタ震えている…

『誰のせいで、赤の他人様にウチがここまで言われなきゃならない状態なんだ?なぁ。』

『…誰…お…俺です。』

『自分は全く悪くないって思って、助け呼んできたのか?』

『…。』

可哀相なくらい蒼白な顔
見ていられない

『シンジさん。城君に絡むのはやめて、話続けましょうよ…。』

『今は私はこいつと話してるんですよ。ちょっと黙ってて頂けます?なぁおい、どうなんだ、馬鹿!』

『…わかり…ません…。』

バチン!と部屋中に響く
平手打ちの音
城はよろめいて俺の方に
倒れ込んだ

『さっきから黙っていれば…!簡単に他人の前で手を上げて、いちいち罵るな!話だけしに来たこっちも気分悪いでしょうが!この子が今、何をした!』

城を抱えて怒鳴ってしまった

『嘘付いたでしょう?知ってて、わかりません。躾(笑)。』

『城、ごめん。車乗ってろ。駄目だここ!』

『人の子を拉致?それはまた問題ですね(笑)。』

こいつ…!

No.371 10/06/07 02:15
㍊ ( wPNK )

『拉致?人聞きの悪い!保護ですね。完全に。』

徹がトイレ貸してと
分厚いファイルを持ったまま
部屋から出て行った

このタイミングで…
でも何故かは知っていた
戻るまで時間を稼がないと

『城…鍵渡すから車、エンジンかけてヒーター付けて乗ってろ。鍵掛けてな。』

『神崎さん、保護を名目にまた監禁するおつもりですか。捜しても見つからなかった筈ですよ、誘拐されてたんですからね!まさに犯罪です。』

『鏡は違う!』

『城はいいから。拉致、監禁、誘拐、犯罪、好き勝手言って構わないですよ。察なりなんなりお呼び下さいよ!』

徹が戻ってきた
目でお互い合図をする

『城、行け。』

鍵を渡すのに受け取らない

『何でだよ、行け!入って来た時から一方的に叩かれっ放しだろ。見ていられないから行け!車で待機!』

『鏡と徹がいるから大丈夫なんだ!警察来たら、鏡と徹は悪くないって言うんだ!』

男が城に掴みかかった
俺も必死で城を渡さない
渡すかこん畜生が!

『痛い!バカ!痛い!離せ、クソシンジ!バカシンジ!』

『ガキ、こら!いい加減にしろや!ブッ殺すぞ!』

No.372 10/06/07 02:55
㍊ ( wPNK )

『痛いと言ってるでしょうが!可哀相に!そういう暴力暴言はやめなさいって!ヤクザじゃあるまいし!』

俺もここぞとばかりに
声を上げる

徹を見ると
周りに見えない所で
親指を立て微笑を浮かべた

必死に俺にしがみつく城
絶対絶対離さん!

あー殴ってやりてぇ …
俺の拳ならこんな上にばかり高く伸びた 蕎麦みてぇな男
一発なのに…

オロオロし出す祖母
やっと少し動いた祖父

『いい加減にしてくれや!』

俺の力に適うかボケが!
という気持ちで突き放す

『聞いたでしょう!?貴方の事を本人がどれだけ嫌がってるか!大人気ないことしないで、座ってちゃんと話しましょうと言うんです。城君はここに座らせますから!そんな、事あるごとに軽々しくバンバン叩いてるのなんか、もう見たくも聞きたくもねぇわ!見ろ、真っ赤に腫れ上がって…!』

俺と徹の1人掛けソファーの間の床に座らせた

思いの他
上手くいった…

息を切らせながら
諦めて腰を掛ける男
ビシッと決めたスーツも
乱れきっている

城は俺の居るソファーに
安心した顔で寄り掛かる…
手はもう震えていなかった…

ここでジジィがやっと
声を発した…

No.373 10/06/07 20:46
㍊ ( wPNK )

『あなた達は、機関絡みの者なのか?』

『イワオさん、俺らは違います。関係無いですよ…。』

『フン…口調からして、それもそうか。』

空気が変わる
俺も気を張り詰め
一言一言に集中する
やっとここからが本番だ…

俺と徹の顔を交互に
ジッと見合い
組んだ腕を下ろし
身を乗り出す様に
膝に肘を付き前屈みになって
話しを進める…

『城。こっち見なさい。』

俺と徹の間の城の正面は祖父
俺のソファーに背をもたれ
徹の方に体を向け
両手はダラリと両脇に下ろし
顔は祖父を決して見ないよう
左を向いて動かない…

ダンッ!!とテーブルを叩く
城はビクッと体を動かした
強張った顔で向く

『城。2人とは最初どういうきっかけで?』

知り合った経緯を
聞いたんだと思うが…

『…鏡は…父さん…徹は…兄貴…。』

『意味がわからん。本当に恥ずかしい奴め。』

また左を向いてしまった
俺が変わりに説明する

『最初に会ったのは去年の夏…仕事を終えて仲間達と車でコンビニに寄った時です。彼が歩いてるの見えなくて、接触事故を起こしたかと思い…当たってないのに酷く痛がるんで、車に乗せ、背中を見ました。』

No.374 10/06/07 22:20
㍊ ( wPNK )

『シャツにこびり付いた血と…火傷でただれた皮膚、無数の傷や痣が印象的でしたよ…病院を拒否したんで、市販の薬を買いまして応急処置。』

表情ひとつ変えずに聞く祖父

『2度目は確か夏の終わりくらい。偶然見付けたんですがね…前回会った時と同じ場所…背中にまた火傷。そして手錠…。これも俺が手当てしました。』

祖母がソワソワし出す…

『3度目は教えた俺の携帯番号に助けてって連絡が入って。路地裏で過呼吸で倒れていた所を見付け、保護しました。タバコの焼痕が新たにいくつも…ね。』

男を睨みつけると
顔を逸らし知らないフリ

『そして12月の…最初に述べた通り、上半身裸でガリガリになって…首輪の跡らしきものを首に新しく付けながら…家の付近から泣きながら出てきたのを…保護しました。』

静まり返る一室

『最初に会ったのはそんな感じでしたが、その後もこうやって、何度も何度も傷を背負いながら彷徨っているのを俺は見てきたんですよ…!』

まだ言いたい事があった
なのにこいつは…
ニッコリと笑いながら…

『神崎さん。いくら払えば良いのかな。』

思わず徹と顔を見合わせた

No.375 10/06/08 08:17
㍊ ( wPNK )

『いくら…とは?』

『城が世話になった分ですよ。薬代、飲食代、燃料代…他にもあるならお返ししますが。余所様に迷惑を被り、こんな騒ぎになるなんてね。誠にお恥ずかしい!お詫び分としても少し色付けます。充分でしょう?』

『…イワオさん。金の話じゃない。ここまで話してまだご理解頂けませんかね…迷惑だなんて一言も言ってません…要するに…』

『あんたらには関係の無いことだろう!』

『…関係の有無じゃなくて。城君自身から話も聞いて、虐…』

『帰れ!!』

言うなと言わんばかりに
立って腕を振り
追い払う仕草をしやがった
何て奴だ…話すら聞かない

『話があるから、今日来ると言うから黙って聞いていれば!機関や警察でもないのに、我々が城に対して何かをしていると確信した口をきく!無礼極まりない!うちは取り調べ室か?不愉快極まりないですな!城を置いて、今すぐお引き取りください!さあ!帰れ!』

帰れ…少々流れがヤバい

『帰るなんて出来ません。まだ途中です。まだ本題にすら入ってませんから。』

『我々も忙しいんでね!』

居間のドアを開けた…

No.376 10/06/08 11:15
㍊ ( wPNK )

帰れの一点張り
警察を呼ぶと言われると
面倒なことになる

…城が走り出す
祖父を押し退けドアを閉めた

『聞けよ、糞ジジィ!卑怯なんだよテメェが一番!俺が頼んだ!お前らのせいで体中汚くなって、人が怖くて、自分が嫌いで、帰るのが嫌で…誰もいなくなって、1人で泣いてた!鏡が見つけてくれた!一番最初に、心配して、俺を助けたいって言ってくれた!怪我も治してくれたんだぞ!だから話したんだ!』

物凄い剣幕で食ってかかる
また殴られるかもと思って
俺も傍に寄った

『お前が俺の心と体をダメにした!お前が俺をいじめて笑うから、俺はおかしくなった!どうしてそんなことしたんだよ!どうして認めないんだよ!お前が悪いんだろうがよ!鏡の話聞けよ!逃げるなよ!』

男の方を振り向いて
食ってかかる

『嘘つき!喧嘩なんかしてない!お前がやったんだ!ジジィと笑ってやったんだ!鏡の話、聞けよ!どうして父さんなのに、父さんじゃないことする!鏡は父さんだけど、お前なんか知らない!息子って呼ぶな!』

そして祖母の方へ…

『お前がジジィと2人にしたからおかしくなった!俺は気持ち悪くない!テメェだ!』

No.377 10/06/08 19:05
㍊ ( wPNK )

伝われ…
城の思い…城の苦悩…

『鏡に会って、色んな事教えてくれて、色んな所見せてくれて!分かったんだ、俺もお前達も普通じゃなかったんだって!なんで!?なんで嫌いなの!?俺、何したの!?生まれた時は俺は綺麗だったんだ!なんで汚くしたの!洗っても消えないんだぞ!クソジジィ!クソババァ!クソシンジ!死ねよ、お前達が死ねよ!死ね!死ね!死ね!!』

もういいだろうと思って
城の口を押さえた…

極度の興奮状態に陥って
死ねと連発した後は
何を喋っているのかも
誰も解らなかった…

思っていた通りの発作
城のポケットから紙袋を取り出し
徹の座っているソファーに
寄り掛けて落ち着くまで待つ

長い沈黙が続く

あんなに言い聞かせたのに
城の震えは止まらず
口からは

死んじゃう…
死んじゃう…
死んじゃうよ…
死にたくないよ…

『死なないから。大丈夫。俺も徹も居るから。な…。』

徹がティッシュを取りに立ち
城の涙を拭き始める…

No.378 10/06/08 19:48
㍊ ( wPNK )

『ミツエさん、どう思う?検査もしないで突き放したこの子、正真正銘、貴女の血が通う孫だったらさ。やっぱり気持ち悪い?小学校の時、沢山浴びせた腐った言葉、また言える?大切な一人息子の本当の子でもさ…言えるか?答えなよ。』

徹が冷静に見据える

『私には…あまり…よく分からないわ…。』

言い逃れか
俺が続けて聞いた

『貴女も子を持つ母親。何故あんな扱いが出来るんです?』

『…あの嫁の子だから…ねぇ…。生まれた時は可愛いとは思ったの…。でもあの淫乱な派手な嫁の顔そっくり。シンジに似る部分は何ひとつ無いから…違う男との子って信じたのよ。城は来た時からおどおどしてハッキリしないし…外に出しても恥ずかしくない様に厳しくすると嫌がって反発するし…丁度この人も呑み歩いてばかりで帰って来なくて…どうして私だけがって気持ちも…あって当たったかも…しれないわね…。』

思い込みによる偏見
子供のペースに合わせられない無理な教育
夫婦同士の問題によるストレスからくる捌け口

こんな所か…

『さっきも言いましたけど…来た時から怯えていたのは、両親の接し方に問題があったんだと思いますよ…。』

No.379 10/06/08 20:38
㍊ ( wPNK )

城の呼吸が落ち着く
あとは徹に任せた

俺は立って
祖父にもう一度言う

『帰るなんて出来ません。この子の為に今日、何時になってでも話をつけたいんです。座ってください…まだ途中です。』

渋々と席に着く

良かった…
城…ありがとな…
お前の勇気のお陰だよ…

徹が城の口に
チョコレートを入れた

今朝俺が預けたチョコ
城は甘いの好きだし
神経鎮静効果があるとか聞いたことがあるから…

城はまた無気力に
今度は右を向いて
祖父を見ないようにしていた
チョコレートを食べている口だけが
僅かに動いていた…

『本人から全て聞いています。3歳あたりの記憶から、事細かにね。…虐待の疑いがあります。事実を知りたくて俺達は来ました。』

祖父と男の目の色が変わる

『…ハッ(笑)。虐待(笑)。』

『演技だろ、今の(笑)。』

祖父は軽くあしらい
男は信じられない言葉を放つ
俺も口調が強まる

『…演技!?』

伝わらないのか…
こいつらには…
全てが無駄に思えてくる

『シンジさん。城君の涙が見えないのか?』

『頭おかしい子だ、アテにならないって話したんですよ?信じる方が理解不能。』

No.380 10/06/08 21:33
㍊ ( wPNK )

もう…駄目だ俺…
無理…無理です…

『じゃあね、聞くけどな!頭おかしけりゃ、暴力振るったり、傷だらけの体にタバコ焼き付けて笑ったり!犬のような扱いをして!真冬に暖房も何も無い部屋で裸にして!汚いと、恥ずかしい息子だと罵る!頭おかしけりゃ、やっていいことなのかい!え!?犬の餌が飯だぁ!?人間以下の扱いしてもいいのかい!俺からしてみればな、貴様のが人間以下の扱い受けるべき存在だよ!同じ事されたらどう思うよ!どうなんだ!答えろ!』

『きっとションベン漏らして鼻水垂らして泣くよそいつ。最悪自殺するかもね!城君と違って芯の強さのカケラも無いファザコンだからさ!だろ?親父いるから気も口も大きいんだ。笑えるよ!笑い過ぎて腹痛い。俺、内に溜めるタイプだからね。胃腸パンパン!トイレ貸して(笑)。』

そう言って腹立たしげに
ドスドスと居間を出た徹

悔しさがMAXなのか
突然立ち上がって城の方へ…
俺もすかさず立ち上がり
怯えた城の前に立つ

『座ってくださいよ!』

『退け!城!よくもこんなカス連れてきやがったな!』

『城に当たるな!俺にかかって来い!』

No.381 10/06/09 02:24
㍊ ( wPNK )

本当にかかってきやがった!
でもなクソ野郎!
ガテン職をナメんなよ!
ハッキリいってもう邪魔だ!
ジジィと2人で話したい!
そっちのが手っ取り早い!
早くにケリつけられる!
いちいち面倒臭せぇこいつ!
失神させとくか!?

『シンジ!座れ。』

もう少しで殴る所だった…
ジジィの怒号で
男は城を睨みながら戻る
徹も戻ってきた

『シンジさん、あんたね!自分が不利になったからって、城にすぐ絡むんじゃねぇよ。俺が話してんだからさ!』

『城、こいつら帰ったら…分かってんな!?』

『何てガキくさい…時間が無駄だ。城、徹の傍から離れるなよ。イワオさん、続けましょうよ。』

城が口を開く

『鏡…さっき俺が言った質問…答えさせて…。』

『…だそうです、覚えてますか。何故、虐待したのか知りたいそうです…。』

男が先に答える

『虐待って決め付けんな。我が家の教育方針だ。俺も親父にはコテンパンにやられて育ったからな。甘ったれてんだよ。強くなるよう鍛えてんだ。確かに12年前、離婚して他の女と消えたよ俺さ。でも全て上手くいかなくて戻って来た。戻った理由なんてその程度さ。』

No.382 10/06/09 03:17
㍊ ( wPNK )

『借金抱えた事で一杯だったけど、一応城の事も気には掛けてたよ。それが戻ってきたらさ、不良と付き合って、家出繰り返してばっかで困ってるって言うからさ。自分らのせいでもあると思って、親父としての役目果たそうと思ったのに初対面から無視こきやがってよ!可愛くもねぇ態度!ずっと反抗的だから親の言うこと聞けって躾けたワケ。犬のが従順で賢いぞ、見習えってな!犬と同じになれば分かると思って首輪使っただけ。虐待にもなんねぇよ。何となく冗談でワンッて言えって言ったら本当にワンワン言った(笑)。馬鹿。』

『…喧嘩の跡だって言った怪我は…!』

『喧嘩は喧嘩でないの?根性焼きは俺だけど。その通り根性試しただけだし。あとお仕置きとしてだね。城!聞いてるかよ!お前、可愛く思える部分もあった。怖がった時。ベソかいて謝れって思いながらお仕置きして、その通りになった時!可愛く思えたぞ(笑)!』

度合いは分からないが
被虐体験から自分と重ねて接したんだろうか…
私生活や経済面でのストレス
躾や教育への認識の誤り
苦しむ姿をどこか楽しむ…子供の気持ちを理解出来ない未熟さ

笑いながら語る男
こいつは救いようが無い

No.383 10/06/09 11:49
㍊ ( wPNK )

『…聞けば3歳…物心付いた時から暴行を受けているそうで…躾以外に理由は?』

『すぐ泣くんだそいつ。ベソベソ。面白い顔して。生まれてから金にツキもねぇ。金欠。ベソは今も変わらねぇけどな(笑)。』

城が床を両手でバンッと叩き
徹のソファーの後ろに
隠れるように移動した
こっち側に背を向けて…

『子を持てばそれなりに金も掛かる。もういい。これ以上、話聞くだけ無駄。次。』

放っておこうこいつは…
城が余計傷付くだけだ…

『イワオさん。城の質問に答えてやってくれませんかね。』

『虐待なんてしていないし答えようがないな(笑)。』

『全て聞いています。白切らないでください。何故…心と体をこんな風にしたのか…何故この子をそこまで蔑み嫌うのか…この子に分かり易く説明して下さいよ。』

『あんたもしつこいな!どこぞで作った傷だし、城は心の病だ!障害持ちを面倒見るのは大変なんだ。口などアテにならん!』

『笑わせるな。答えになってない。あくまで非は全て城にあると?』

『あぁ!そうだ!』

『話が進まねぇな。徹。』

徹に手を差し出す
ファイルからボロボロのノートを出し
俺に渡す…

No.384 10/06/09 13:47
㍊ ( wPNK )

『サッとでもいい。目を通して下さい。』

目の前にバサッと
ノートを叩き付けてやった

何だこれはといった顔で
手に取る…

『誰の字かは言わなくてもお分かりでしょう。』

余裕ブッこいていた表情が
見る見る曇り出す
パラパラと捲り…
多分 城の体を弄んだ部分…
目を留めて読む

祖母が隣から覗くと
肘を上げノートを少し閉じ
見られないようにした

『口がアテにならないと言われる子が、自分と戦いながら形にして残した一冊です。本人が記した、本人の人生の全てです。』

男も祖父の手元を見つめる
祖父の手が震えだした

『城の記憶力はズバ抜けていますね。貴方達のお陰で(笑)。普通なら思い出したくない過去を忘れようと、記憶力低下する可能性のが高いんです。文体からどんな思いで綴ったのか…理解くらいは出来るでしょうよ。貴方達がしてきた事…浴びせ続けたた暴行や暴言。それに対する思いや苦しみ、葛藤…心情。全てその一冊に記されてます。』

『俺も読んだ。何度も何度もね。頭の中にしっかり叩き込んだよ。作り話でそこまで鮮明に【知恵遅れ】の子が書けると思う?城君は知的障害なんかじゃない。』

No.385 10/06/09 14:44
㍊ ( wPNK )

『そもそも知恵遅れだなんて、差別用語じゃないの。障害持った人を見下す人間だってよく分かったけどね。だから城君のこと、恥ずかしいって表に出したくなかったのもあるんだろ。まぁ俺にとってはそっちのそんな情報、要らないけどさ。城君のが余程、利発的だよね。やっぱり味噌汁にすら出来ない糞不味い味噌しかお持ちじゃないようで。期限切れてんじゃないの。あ、城君チョコあげる。気にするなよ。君は誰かと違ってまともだから。』

徹が脚を組んだまま
毒舌を並べる

何をどう書いてるのか
気になっている男

祖父は今きっと
どう切り返そうかで
頭の中は一杯だろう

妻と息子の前で
性的虐待をしていたこと
どう屁理屈並べて
ねじ曲げるつもりだ

額に汗するジジィ…
ざまぁみろ…
それが立派な証拠になる

認めたら次は本題
城を嫁にくれ交渉だ

さぁ どう出る!

No.386 10/06/09 19:50
㍊ ( wPNK )

『あっ…、ちょっ…なっ、何するんだ!!』

『ふざけるなって!』

俺は立ってテーブル越しに
祖父の腕を掴もうとした
徹も腕を伸ばす…

真っ二つに裂いて
更に拾って裂く

冗談じゃないこいつ!
4等分にされたノート…
各ページがバラけて
テーブルや足下に落ちて散らばる

男はそれを数枚拾い
読んでみる…

『あんた、何てことする!人の物だぞ!?ふざけるのも大概にしてくれや!』

もう怒りが収まらない…

『くだらん!くだらな過ぎる!むしろ侮辱罪として裁判起こしたいくらいだ!』

顔を真っ赤にして怒り
ノートの一部を自分の後ろに
放り投げやがった…

徹が祖母を押し退け
散らばった紙を拾い集める

『あんたが裁判を引き出すな!どうして冷静になれない?不利だから破いたんだろうが!ノートの内容を認めたってことだな!』

『認める?何を!おい、生ゴミと一緒に処分しろ!』

男に手元に残ったノートを渡す
徹がキッチンへ向かう男を追い
掴み掛かって制止させる

俺もジジィの周りの紙を掻き集めるのに撤する…

もうウンザリだ…

No.387 10/06/09 20:34
㍊ ( wPNK )

頭が真っ白になる…

城がどんな思いをしながら…
どれだけ苦しみながら…
どれだけの期間をかけて…
書き綴ったと…

オロオロする祖母に部屋に引っ込んでろと言うジジィ

ソファーの後ろで
ノートの残りを奪い合う男と徹

『疲れる…。』

知らず知らず呟く俺

ふと気付くとあいつが居ない
悲鳴と共に振り向く

城の服を掴み
怒鳴り付けてる祖父と
声が出せず怯える城

慌てて
城を抱いて祖父を引き剥がす

話すら出来ない奴らなのか…
もう…もう…

『もううんざりだってんだよ馬鹿共が!!!座れ!!』

…静まり返る居間
右腕の中の城が
一番驚いていたと思う…

『座れや!!』

祖父の服を引っ張り
ソファーの方へ放つ

『てめぇも座れ!!立つな!!わかるか日本語!!』

男の方へ行き胸倉を掴み
ソファーの方へ放つ

頭がクラクラする…
唖然とした男の手から
瞬時にノートを奪う徹

全員 席につく
溜め息を露骨に吐き出す

『ハァー…。あのね…俺らね…争いに来た訳でもさ…警察に突き出す為に来た訳でもないんだわ…。事実と実態を知って…城への謝罪が欲しくて来たんだよ…本題は別だけどよ…。』

No.388 10/06/11 03:27
㍊ ( wPNK )

『あんたら虐待じゃない、躾だの病気だのアテにならんって主張するけど、このノート…こんな…ビリビリに破いたって…後で復元するけどね…書かれている内容…城の体の傷のひとつひとつ、いつどこで誰がどうやってこんな風にしたかって説明ついてるし…今、聞いた理由の中にも充分虐待だって言える行為が含まれてる訳だよ…。』

『どこが?そこを説明してくださいよ!』

男が言う
本当に分からないのか…
自覚すら無いのか…
タチ悪いな…

『…虐待は4種類に分けられると言います。身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトと言いますが育児と保護の怠慢。シンジさん、あんたがさっき自分で言った根性焼きみたいに度が行き過ぎたやり方は、充分な暴力行為。首輪や手錠をしてお前は犬だからと罵る…ブッ殺すと脅迫する、これも充分、心に傷を残す言葉の暴力。俺が発見した時の体…体重は160cmにして40弱…今日まで定期的に測定して俺のメモに記録してあります。充分な食事を与えない、怪我しているのに病院に行かない…これがネグレクトってやつです。そして…。』

祖父の顔を見る

No.389 10/06/11 04:23
㍊ ( wPNK )

城の前では言いたくないけど

『イワオさん自身、ノートを読んでお分かりでしょうけどね…城の体に何をしたかは。』

城が徹の後ろで耳を塞ぎ
足でダンダンと床を打つ…
汚い汚いとブツブツ言いながら
ウェッ…ウェェッ…と
何かを必死に吐く仕草…

『…徹。少し外の空気吸わせてやって。』

『城君、行こう…。』

無理矢理立たせて連れ出す
祖父の顔を見る
動揺しているのがよく分かる

男は無表情で
城と徹を目で追っていた

『城の言動からまさかと思い、寝込んだ時に調べたんです。爪を立てた跡、押さえつけた跡が、腰、尻、太股、膝裏に。今の様子を見てどう思いますかね。やってない?』

男は祖父を見た
軽蔑しているようにも見える

『城を…ヤッたの?』

『…。』

『せめて…触るか見せる程度だろ…?』

『…。』

『まさか…抱いたの?親父…!アレ…ガキだし男だし…。』

『その部分に関しての詳しいことはノートでの告白のみですけどね。間違い無いでしょう。』

汗だくのジジィ
さっきまでの威勢は?
口を開けて見る男

…終わったな(笑)

No.390 10/06/11 19:40
㍊ ( wPNK )



鏡に言われ城君を連れて
気分転換に玄関を出る

外はもう真っ暗
当たり前だけど寒い
でも平気だった
あの家の人間と同じ空気を吸い続けていた中での
ありがたいリフレッシュタイムだ

鏡 とりあえず
1人で頑張れ(笑)

城君は玄関からは出ず
俺を見て

話聞かなきゃ戻らなきゃと
ずっと囁いている

『何でさ(笑)。息抜きしたっていいじゃん。』

『鏡、1人だ…徹は鏡を助けなきゃ…ここにいたら駄目なんだぞ。俺が駄目だから徹が一緒に付いて来た…戻って。』

『やだよ(笑)。鏡はタフだからあの空気でも大丈夫だろ。城君駄目じゃないし。』

流石に寒いから
玄関に入り腰掛け
小声で話す

『城君、来てくれて良かった。むしろ俺達が感謝する。』

何が?という顔
説明面倒だし
笑ってごまかしておいた

『勝てる?』
『鏡見てどう思った?』
『怖かった。初めてあんなに怒ったの見た。』
『あぁ、そこか(笑)。必死だろ。君が苦しみながら書いたノート、証拠隠滅しようとするんだ。キレるさ。話すらまともに聞かない。幼児より悪い。どうしてあんな奴らの所に君が居たのか不思議。君が一番まともでしっかりしてるよ。あいつらアホ。』

No.391 10/06/11 21:31
㍊ ( wPNK )

『うん。あいつらアホ。』
『鏡もアホ。』
『鏡もアホ…じゃない。何言ってるんだよ!』
『引っ掛かった(笑)。』

息苦しい空間にいたせいで
俺、ちょっとテンション高いかも…

今の鏡達のことを考えて
うつむいてる城君を励ます

『流れをよく見てる。時間掛かっても、上手く進行してる…大丈夫。短腹でも頼れる奴だから。ちょっとヤバかった時、君が勇気出したお陰で、また波に乗れた。俺だったら口で倒す事しか考えないから、相手の心理考えて進行なんて出来ない。感謝だよ。』

城君は黙って2回頷いた
あとテンション高い理由
もうひとつある

『俺、いつの間にか兄貴になってたんだな。』
『あれは…兄弟いないから分からないけど、徹みたいな兄貴がいいって思ってたから…。』

耳を真っ赤にする城君に
初めて鏡と同じ思いを抱いた

『俺、妹いるんだ。でも男兄弟に憧れた時もあった。でも今日、弟が出来た。こんな芯のある弟、最高だね(笑)。』

本心だから
笑わずにはいられない
城君を見ると顔まで赤かった

鏡を悔しがらせるネタ掴んだ
妬くぞ(笑)

その時
祖母が部屋から出てまた居間へ入って行った…

No.392 10/06/11 22:30
㍊ ( wPNK )

ふいに思い出した

『城君。手錠で繋がれていた物置、あそこ?』
『…うん。』

音を立てない様に
静かに廊下を歩く…

城君の視線を背に浴びながら
トイレの隣の物置に手を掛け
静かに静かに開けた…

片付けられていたら諦めた
だけど証拠品は
今でもちゃんと生々しく
時が止まった様に残っていた

薄暗い物置から
不気味に垂れ下がったロープ…

城君がここに繋がれ
泣きながら
手錠を外そうと暴れたという
リアルな壁の壊跡…

携帯のカメラを構え
スピーカー部分を手で防ぎ
数ヶ所撮る…

時計を見て
城君の所に戻る

『何したの?』
『証拠。話付いたとしても、後々あいつらなら何言い出して来るか分からない。ノートと君の傷と照らし合わせたら完璧だ。』

2階も行きたかったが
そろそろ戻らないと…
やらなきゃならない事がある

城君はすっかり落ち着いて
さっきの会話も
忘れている様だった

居間の方へ耳を傾けて
性虐の話が終わってたら
中へ入ろう…

No.393 10/06/12 00:02
㍊ ( wPNK )



男はソファーに背を付き
片手で顔を覆った
孫を…犯したのかよ…
天を仰いで呟く

『…城は貴方達による暴行の中でも、性の事に関しては精神的に深く追いやられ、立ち直れる傾向は全く見受けられません。体の傷と…体に入ったモノ…全てを…洗浄…したい一心で…。』

初めて家に入れた時から
シャワー貸してと言っていた…
そんな前からこのジジィに
弄ばれ彷徨い続けていたんだ…

シャンプーで洗えと済ました時
解ってくれていないと睨んだ
あの目を思い出し
声が自然と詰まる…

『…毎日欠かさず…風呂風呂って…長い時は1時間…ひたすら洗い続け…時には風呂から上がれば両手を突き出し…ねぇ綺麗でしょって…小便もかけられた記憶…臭くないよね俺って…嗅いでって言うんですよ…。嗅がないと自分はまだ汚いんだって癇癪起こして…分からないですよね、あんたらには…。汚いのは…貴方ですよ…もう認めて本心からの謝罪…して下さいよ…。城はもう、この傷と死ぬまで向き合っていかなきゃならないんですよ!!』

バラバラになったノートを
ジジィに思い切り叩き付けた

まだ ゴネるか?
もう いいだろ…?

認めろ

No.394 10/06/12 14:24
㍊ ( wPNK )

『…まぁねぇ、神崎さん。一方的にそんな風に責められてもね…(笑)。証拠となる写真でも?私が城を犯したと言う映像でもありますか?どうして認めないとならないんです(笑)!』

俺は睨み続けた
どこまで強情なんだ
身を乗り出して俺を指差す

『家族の前で…!息子の前で!やってもいない卑猥な罪を着せるのか、あんたは!ノートだ?こんなモノ、アテにならないと言っただろう!息子の軽蔑の視線、見ただろう!失った信用はどう回復してくれる?中途半端に偉そうに突き付けて、何様だ!…神崎鏡矢さん。私は貴方を訴えます。何年かかってでも、戦いますよ。我々のした事が、行き過ぎた暴力だと言うならそれでもいい…だが今のは許せませんな。城を置いてお引き取り下さい!嫌なら写真を今すぐ提示して証拠見せて下さい(笑)。』

城を置いて…
脅して口を封じるんだろう

やっぱりそう来たか…
でも帰れない
男がニヤリと笑う

『裁判に関しては我々も無知ですからね。調べてからになりますから、ご自宅で首を長くしてお待ち下さいよ(笑)。』

No.395 10/06/12 19:22
㍊ ( wPNK )

『言ったでしょうが。帰らない。今日、話をつける。どうぞ裁判官、警察、軍隊、何でも呼んで下さいよ。』

どうせ脅しだ
証拠は無いが今集めている…
勝ち目はある

祖父に並んで身を乗り出す男

『お宅も馬鹿だね(笑)。証拠無しのイチャモンだったのかい。誰がそんな不利な話、認めるんだ?』

『反抗して家出して、犬みたいにフラついてるから変態にでもレイプされたんだろう(笑)。それを一番厳しく当たった私に濡れ衣着せてきたに決まってる。知的障害持つと苦労しますわ(笑)。そういう事だけは能が活発になるんだなぁ(笑)。』

よく…そんな事を!
悪魔とか鬼畜とかじゃない
こいつらは…
生きる価値なんかねぇ…!

『あんたらの…たった1人の孫であり息子だろ…可愛くないのかい…。』

『可愛いよ?さっき言っただろ(笑)。』

『どうせ今ここで聞いてる訳じゃない。傷付く事もないじゃないか(笑)!』

徹…頼む…早く来い…
俺を…俺を抑えてくれ…

徹…早く…

願いが届いたのか
ガチャッとドアが開いた…

No.396 10/06/12 22:35
㍊ ( wPNK )

ヤバいと思った
頭に血が昇るんじゃなく
逆に血の気が引いて
理性ブッ飛びかけた…
徹が必要だったのに

入って来たのは祖母だった…
突然ジジィが怒鳴り出す

『部屋に行ってろと言っただろう!』

『そうは言っても落ち着かないの。私も関係者ですから。』

冷たい表情と声
そのまま席へつく

性的虐待の話の真最中
そりゃ困るよな…【妻】だし

『どこまで…今は何の話をしているの?』

男が答えた
俺を顎で差す

『こいつが親父を…証拠も無しに城を抱いたって…犯したって言うから。だから裁判起こしてでも謝罪させるって話。』

祖母は俺の顔を見た
3対1か…
少々面倒になりそうだと
何を言ってくるかと構える

彼女は口を開け
信じられない様な顔をして
俺の次に祖父を見た

『まさか…嘘だと思ってたのに…本当だったの…?』

『いやだから母さん、戯れ言だ。親父はやってないって…。』

『城が…ずっと前…旅行しに行く日に怒りながら…ジジィの性欲処理機じゃないって…私が相手しないからだって…言った時があって…まさか…あなた、本当だったの…!』

何てタイミングの証言
まさかの追い風だ!

No.397 10/06/12 23:21
㍊ ( wPNK )

『ミツエさん、本当ですか?城本人から?』

『えぇ…あの時は聞き流しましたけど…。』

『いつ頃?』

『よく知人と旅行するから…はっきりいつだったかは…でも手錠を外そうと必死だった時かしら…あなた…本当なの!?』

今度は俺の口元が緩んだ
男の顔色がまた変わる…
親父とお袋
どっちにつく(笑)?
祖父の顔色も一変

『お前は黙ってろ!余計な…証拠なんか無い。』

『だって城から直接聞いたのよ!あなたがそんな事やるはずがないって思ってたのに…汚らわしい!』

汚らわしいの一言で黙った
もう証拠証拠言うだけで
惨めになるから諦めれば?

『うるさい女だ!…城に聞けばわかる(笑)。あいつがここで皆の前で言えば認めよう(笑)。言わなければ法に任せる!』

…大きな自信だな
認めてるようなモンじゃねぇか
その言い回し

城と徹が戻ってきた

徹は一旦席に付いてから
携帯を忘れたと
ファイルを持ってすぐ立ち上がり
また出て行った

『城、大丈夫か?気分悪いなら無理するな。』

俺の隣に立ちながら
うん平気と答える

徹がすぐ戻ってきた
全員が…揃った

No.398 10/06/13 06:07
㍊ ( wPNK )

『お前ちょっと立て。』

男を避けさせ城を笑顔で呼ぶ

『城、座りなさい。もう叩かないから。』

俺の腕を掴んだ城
徹が咄嗟に口を出す

『行くことない。そこに居な。信用出来ない。散々手を出しといてさ。』

『お前が引き起こしたことで、お前の話で、お前の為にこういう場になっている。真剣な話だ。座りなさい。』

流石長くいただけあって
城の動かし方を知っている…

俺の腕から手を放し
恐る恐る隣に座る
俺も念を押す

『手…上げたら…分かってますね…。』

『叩かないと言っている!』

祖父から少し距離を置き
ソファーの隅に座った
祖父を見ないように…

すると突然城の肩を抱き
自分の方へ引き寄せた

悲鳴を上げる城
俺と徹が立ち上がる

『何もしないと言っているじゃないか!落ち着いて(笑)。城にちょっと聞くだけです。』

祖父と密着する体…
硬直したまま黙った

『城。お前が連れてきたこの方々が、私に対して…お前にいやらしいことをしたと言ってくるんだが!私がお前に何をしたかな?覚えがあるなら今ここで皆にちゃんと話してごらん!』

『何を…話せる訳がないだろ!手を話せ!』

No.399 10/06/13 16:10
㍊ ( wPNK )

『お前がその口で、私がやったと証言するなら私は謝ろう。本人が言いもしないことで、私がこんな扱いを受けるなら私は神崎さんを許さん。誰にどういう事をされたんだ?なぁ城。【事細かに】話してごらん(笑)?』

膝の上に手を置き
厭らしくさする祖父
硬直どころかまるで石像だ…

城は大きな目を見開いて
左手の男を見上げた

祖父をまたいで覗き込む
祖母の顔も見る

次は徹を見て
口元が微かに動いた

皆が城に注目する
城にとって恐怖でしかない
最悪な状況

俺を見る…
俺も真っ直ぐ城を見て
目で頷いた

城なら大丈夫
強くて賢い子だから
俺も徹も知っている

状況を把握して
間違いなく
有利な証言をするだろう…

奴らの笑みを覆してくれる

城が俺らを
信じてくれているように
俺らも城を信じている

徹が何か言ったが
俺は城と祖父の僅かな動きを
見逃さないのに必死だった

城の証言で決着がつく
静寂…

祖父は城の顔を
ずっと見続けている…

静寂を破ったのは
城でも祖父でもない

…徹だった

No.400 10/06/13 17:04
㍊ ( wPNK )

『鏡!どうした!言わせんのか?なぁ、何だよこの状況…何してんだよ!ボケッとすんな!こんな時に!城君を守れよ!!』

『痛ッ…!』

左腕に正拳を食らった

『何!』

『何じゃないだろ!さっきから呼んでる!』

城を見た
首を左右に振りながら
鏡…鏡…鏡と俺を呼んでいた
聞こえない声量で…

徹を見て
徹に言ったんじゃなく
俺の名を呼んでいたんだ…
震えているんじゃなく
無理だと首を振って
俺に伝えていたんだ…

馬鹿だった!

『言わないのか?言えるはず無いよな!私はやっていないから(笑)!決まったな(笑)!』

『…ハハ。驚かしてくれるよ、全く。』

祖父と息子が
勝ったと言わんばかりに
腹の底から笑い出す

祖母もどこか
もどかしい様子で
少し安堵の表情を浮かべた

馬鹿だった…俺!
徹に感謝
うん、もういい…
完璧に治めたかっただけで
完璧ではなかったけど…

完全勝利には間違い無いから

ゆっくりと立って
祖父の腕を払い退け
城の手を取り連れ戻した

『城。終わったから。もういいよ。ごめんな。』

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