注目の話題
娘がビスコ坊やに似てると言われました
コンビニ店員、怖い
一人ぼっちになったシングル母

NO TITLE

レス500 HIT数 261002 あ+ あ-

㍊( wPNK )
10/07/03 00:53(更新日時)

小説なんて書いた事もないので表現力が乏しい上、読み難いかもです。

最近よく見聞きする【虐待】という行いについて考えるきっかけになれればと思い、主役【城(セイ)】の存在を何かに残したかったので…ですからほぼノンフィクションです。

つたない文章ですが、暇潰し程度に読んでください。

虐待を中心に、同性愛的な内容、精神的な問題等、少々生々しい部分も含まれています。
不快に思われた方は素通り願います。
感想スレは別にありますので、読者の方の邪魔にならないよう、レスはそちらにお願いします。

一度自分のミスで削除してしまい…申し訳ありませんでした。
再度よろしくお願い致します。

タグ

No.1301642 10/04/19 21:10(スレ作成日時)

新しいレスの受付は終了しました

投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.301 10/05/24 05:50
㍊ ( wPNK )

『城、話あるから居間に来い。徹来てるし。』

城は鏡を睨み付けた
結局は徹に頼ってたんだろと
軽蔑の目差しだ

『どうでもいい。徹には俺は用事は無い。』
『こっちはどうでもよくないの。立てホラ!』

床に座っていた城を
強引に引き上げる
軽いから楽勝だ

『やめろよ!分かったよ!』

鏡の腕を振り払い
ふてくされながら部屋から出る

徹がニッコリ微笑んだ

『突然ごめんね。』
『…。』
『更に突然だけど、元旦の晩に話した事覚えてる?』
『(元旦?何となく)…。』
『口無いの?』

鏡は徹の
容赦ない口を知ってるだけに
内心気が気じゃない

『少しでも覚えてるならハイ、覚えてないならイイエ。』
『…ハイ。』
『今日はね、俺が勝手に押し掛けて来たんだ。この人今迄プライベート優先して仕事放ること無かったから。』

昨日自分が仕事に行くなと
引き止めたのを思い出す

『昨日なんてね、足場から落ちるわ、休憩時間寝たまま起きて来ないわ、帰り赤なのに交差点突破するわ、明らかに変だったんだよね。いつも変だけど。』

俺の話なの?
余計な事バラすなよ
格好悪ぃ…
鏡はガックリうなだれた

No.302 10/05/24 08:34
㍊ ( wPNK )

徹は好きだけど…どこか苦手
言い返せない部分を突くから

鏡なら思ったり感じたこと
直にぶつけられる
ぶつけても受け止めてくれる
言い過ぎて後悔しても
すぐ優しく笑って許してくれる

こういう話をする時の徹は
…怖い…

要するに
俺が鏡に迷惑かけてるから
優しい鏡に代わって
叱りに来たんだろ

決して徹を見ずに
自然と話を聞き流す

『…だからさ。どう思う?』

(え…聞いてなかった…)
城は鏡を困った顔で見た

バンッ!!
『鏡の顔色は関係ない!話してるのは俺!』

テーブルを叩いて意識を戻す

驚いた顔で徹の手を見て固まる
どうしよう…怒らせた…?
少し額に滲む汗

鏡が口を開く

『あ~徹、あまり脅さないように。城、話聞けよちゃんと。』
『ヒトが真剣に話してるのに。』
『まぁまぁ、頭の中でまとめるのに時間かかるんだ(笑)。』
『目でアンタに縋り突いてか?』
『でもそんな大きい音で脅すこと無いだろ?』
『アンタのそこが甘チャンなんだ。』
『いや甘いかもしれないけど、脅すように仕向けるのは駄目だって。余計話せなくなる。』
『話すまで話す!』
『徹…ちょい強引過ぎ!』

No.303 10/05/24 12:44
㍊ ( wPNK )

鏡と徹の険悪な雰囲気
自分のせいかと動揺する

『強引とかじゃなくて。都合悪くなれば黙るなんてずるいだろ。意思が掴めない。そのくせ、我を通したい時は癇癪?話は話し合わなきゃ前に進まない。』

『そうだけど!好きで癇癪起こしてる訳じゃないだろうし、こいつなりに心で葛藤してコントロール出来なくなるだけで俺がさっき言いたかったのは…。』

徹が鏡の胸をまた一発

『そのくらい知ってる!アンタの気持ちだけを通してるとこの子はいつまで経っても佇んだまま自ら動かない。だから俺は来た!鏡は優しいから許してくれる、城は城なりに考えてるからもう少し待とう、それでいつになったら進行するワケ!?見てて苛々する!』

もう本気か演技か分からない
2人共ムキになる

『じゃあどうしろってんだよ!お前ならどうする!?ずっとずっと傍に居てみろよ!俺の脳味噌なんか俺にしか分からんだろうが!同じ立場に立ってみろよ!散々怒鳴られて殴られて怖い思いしてきた奴に上から圧かけりゃ良しか?そういうモンじゃねぇだろ!話すにもやり方がある!脅すようなやり方は気に食わねぇ!』

城はテーブルに肘を付き
両手で顔を覆って聞いていた…

No.304 10/05/24 15:01
㍊ ( wPNK )

『ああ、それは悪かったよ!そこまで汲んでやれなかった!大体にしてアンタだってもう手の施しようが無いクセに!家の奴らの事、ちゃんと聞いたか!?情報得たか!?やられた嫌な内容までハッキリ思い出せとは言わなくても、それなりの下調べしたかよ!厳しくしてでも追及して準備しろよ!彼の親父に下で初めて会って、どんな奴かも知らずに感情のまま衝突して惨敗!次は祖父だって加勢する…こんな半端でどう闘う!?』

鏡は青ざめた
城には内緒にしておいたのに!

『ちょっ、ちょっと待て…!そこはそれ以上…!』

城を見る
見る見る泣きそうな顔に…
『…アイツに会ったの?』

その言葉に
徹も一旦深呼吸し
気持ちを落ち着かせる
『…言ってなかったのか。』

ビールを呑み干し握り潰す鏡

城が気の無い声で聞く
『衝突して惨敗…?』
『…。』

徹が慌ててフォローする
『惨敗って言い方はないか。急な事で圧倒されたんだよ…。』
『…。』

城の不安がる空気が
痛いくらい伝わる…

任せろ、頑張る、信じろって
あの後散々良い事言ったのに…

『…城…ごめん…。』

合わす顔が無かった
空缶を思い切り壁に投げ付け
黙った…

No.305 10/05/24 16:37
㍊ ( wPNK )

城君をちょっと挑発して
状況を把握させて
動かすつもりが
まさか鏡が余計な所で
首突っ込んでくるなんて…
なだめなきゃならないのは
鏡かよ…

ちょっと酒も呑み過ぎた
本気で言い合ってしまった…

徹はかける言葉を探す
いつもの鏡なら
笑って上手くごまかすのに
何も言わない…

城が気まずい静寂を破る

『鏡が傷付いた。』

2人は城を見た
城の両手の拳が
テーブルを何度も打ち付ける

『鏡が傷付いた!鏡が傷付いた!鏡が傷付いた!』

同じ言葉を繰り返し
テーブルから離れる

あまりの剣幕に
徹は自分を責めた

『城君、俺が悪かった…鏡は一生懸命あの男から君を守ろうとはしてたんだよ…。』

『徹…俺よく分かった、鏡が傷付いた…俺がちゃんとしないから…俺が臆病だから…信じてないから…動こうとしないから…ごめんなさい…!』

『城、それは違う!』

鏡が城の傍に行くと
城が鏡に掴みかかった

『俺が鏡を苦しめてる!俺が我儘だから鏡は1人ぼっちだ!鏡は優しいから何も言わない!俺は何も知らないで鏡を苦しめてる!同じ血のあの男も鏡を傷付けた!』

そう叫び鏡を押し
自分の部屋に走って行った

No.306 10/05/24 18:55
㍊ ( wPNK )

腰に手を掛け
床に視線を落とす徹
『…知らなかった…のか。』

鏡も頭をかいて視線を落とした
『…怯えるのが目に見えてたからさ…俺がヘマした、しなかった以前に。言えなかった。』

沈黙…

すると
居間のドアを思い切り開け
城が入ってきた

『城…。』

鏡は衝撃を受けた
まるであの日と同じ…
寒風の中 裸で鏡を待ち続け
大好きな鏡に保護された日…

あの時と全く同じ
幼い子供の様に泣きじゃくり
大粒の涙を流しながら

立ち尽くす2人の前に
両膝を付いて

1冊のボロボロのノートを
2人に向けて置いた

両手を祈る様に頭より高く組み
2人に向けて哀願する…

『お願い…お願い…。』

No.307 10/05/24 19:30
㍊ ( wPNK )

鏡 お願い

俺を守ってください
俺を助けてください

ちゃんと伝えるから
勇気を出すから
絶対信じるから
1人ぼっちにならないで

優しい鏡を苦しめません
一生懸命な鏡を困らせません
大好きな鏡を傷付けません

だから勝って…
次は負けないで…
俺を置いていかないで


徹 お願い

鏡と守ってください
鏡を助けてください

他にどうしていいか
全然分からなくて
たくさん考えてみたけど
これしか浮かばなかったから

鏡と一緒に見ていいから
鏡と一緒に守ってください

鏡を1人ぼっちにしないで
鏡の傍にいて

逃げないで話し合うから
考えて動くから
少しでも柱になるから
俺を置いていかないで



鏡と徹 聞いて

次ジジィと男に負けたら
もう逃げ出せないよ

もしそうなったら
死んだ方が幸せなんだ

人間なのに
人間として生きられないなら
人間辞めたい


誓って!
鏡を手助けするんだろ!
俺を助けてくれるんだろ!

あいつらがもう
俺のことを忘れて離れてくれて
ここに居られたら
俺幸せなんだ

誓って…
お願い…

No.308 10/05/24 21:45
㍊ ( wPNK )

哀れな城の姿を目前に
徹は初めて実感する…

この子にとっての救世主
本当に俺と鏡だけなんだ…

虐待なんてよくある話
親を叩けば簡単に片付くさ

…正直その程度の思いで
この2人に関わり出した

でも実際は違う

体の傷は癒えても
心の傷は癒えない

きっと成功しても
この子は死ぬまで
この残酷な15年を
辛い【記憶】として
抱えて行かなければならない…

人間の心はコンピューターじゃない
削除なんか出来ない

未来ある子供に
人間を辞めるなんて言わせる

そんな
悲しくて恐ろしい思考を

これから夢を抱いて
歩いていく筈の子供に
深く植付けてしまった…

イカれた大人達…惨めな外道共!


…徹は片手を口に当てた
涙が込み上げるのを
必死に阻止する

城の気持ちや辛さを知らず
自分の勝手な思いで
刺激しようとした

鏡がどれだけ辛かったかを
今 痛感した…

鏡さん…心底尊敬するよ
俺…口が達者なだけで
賢い訳じゃないんだ

役に立つか分からない
アンタの負担が
少しでも軽減するなら…

ついて行くよ…

No.309 10/05/24 23:04
㍊ ( wPNK )

泣き止まない城
まだ手を組んだまま繰り返す

お願い…!
お願い…!

鏡は足元のノートには触れず
城の正面に座った

突き出された
小さな細い両手を握る

筋張った手の甲
働く男のごつくて長い指
喧嘩の傷跡だらけの
大きくて温かい手

その温もりに反応し
しゃくり上げながら
一生懸命泣き止む努力をする

『俺の目を見て。』

涙でよく見えない…
腕で拭い言う通りにする

鏡はそんな城を愛しく思い
微笑んで頷く

『うん…じゃ、目瞑って。』

よく分からないまま
言われた通り閉じる


たった今
神崎城の許可が下りました

梶谷徹を味方に付けて
俺、神崎鏡矢は
最後の宣誓をします

俺は今から1人じゃないから
もう迷いません
もう負けません

最後に失敗して
大切な1人息子を失う結果…
それだけは
絶対に有り得ません

神崎鏡矢と梶谷徹は
3人一緒に
笑顔でここに戻れること
2人一生
安心してここで暮らせること

その日が来るように
力を合わせて
神崎城を守り抜くことを

父・神崎鏡矢は誓います


『梶谷徹は誓います。』

No.310 10/05/25 14:19
㍊ ( wPNK )

城はゆっくり目を開けた

鏡と徹がいる
鏡と徹が宣誓した
鏡と徹なら
きっと自由にしてくれる!

我に返り
恥ずかしそうに涙を拭く
そう言えば前に鏡が
泣きベソ移ったって言ってた…

『俺は泣きベソな訳じゃない…あまり見るな!』

鏡は笑いながら言う
『誰も言ってねぇだろ(笑)!泣くのは悪いことじゃない。』

いつもの鏡
もう暗い顔はしていない

『明日仕事行っていいから。』
『分かった。ありがとう。』

徹も城の前に屈み顔を覗き込む
『ありがとう。』

黙って頷く…

鏡が手元のノートを取り
開こうとした

城はすかさず鏡の手を抑える

『今見たら駄目。俺が寝てから見て。』
『何で。ラブレターか(笑)?』
『誰がアンタなんかに!』

すぐ立ち上がって部屋へ消えた

『…徹、責任取れよ。口調が似てきた。お前に…。』
『いいんじゃないの。身が引き締まるだろ(笑)。』
『勘弁(笑)!』

ノートをテーブルに置いて
2人はまた呑み直しはじめた

No.311 10/05/26 09:57
㍊ ( wPNK )

鏡が風呂に入っている間に
徹はボロボロのノートを見た

城が布団を運び始める音で
閉じて戻す

『鏡の部屋で寝るの?』
『…夢見たらうるさいだろ。明日仕事でしょ。甘えてるワケじゃない!1人より安心するから…夢見ないだろうから。』
『気にしなくていいのに。』

布団を置いて
自分の部屋へ向かう途中
徹が呼び止める

『城君。』
『…何?』

ノートを指差す

『よく出来ました。本当賢いね。脱帽。鏡泣くよ(笑)。』
『見たの?今…。』
『パッとね。鏡に先に読ませるつもり。』
『それしか…浮かばなかったんだ。難しかった。凄く…でも徹が言うなら良かった。』

安心した顔で立ち去った

No.312 10/05/26 12:10
㍊ ( wPNK )

風呂から上がって
頭を拭きながらテーブルに付く

『城、寝た?』
『寝たよ。』
『そっ、気になって仕方無かったんだ。何書いたんだか。てっきり今まで勉強に使ってるんだと思ってた。見た?見た?』

頬杖を付いて鏡を見る
『見てない。』
『珍しいんじゃねぇの。』

ノートを開けると
隙間無く歪な文字が並べられ
1ページ1ページが真っ黒だ

『あいつ…!』

1冊のボロボロのノート…

下手くそな文字で
城独特の言葉使いそのまま…

途中で
書くのが苦痛になったのか
文字が文字でなくなったり
グチャグチャに書き消したり…

翌日それを書き直すのに
消しゴムで消した跡…

酷いページは
1度破って丸めたのを
また伸ばしてテープで繋げ…

どんな思いで
ノートを買いに行ったあの日から
今日まで書き綴けてきたのか
読まなくても一目瞭然だった…

『鏡。アンタが先に読むべきだと思った。』

鏡は最初の文章を
隣りの部屋の城が起きないよう
小さな声で読み始めた…

No.313 10/05/26 18:38
㍊ ( wPNK )

鏡へ。おれの話をします。おれが鏡にできることだと思います。鏡にだけ話します。とおるに言われたから、鏡を信じてないって。だから、信じてこれをあげます。鏡は他に言わないって約束しただろ。だから、鏡だけ読んでください。家のこと、されたこと、あいつらのこと、思ったこと、ここで全部話します…

…徹を見た

『いつの…間に…。』
『正月。城君に無神経って嫌われた後、いじけて酔っ払って寝ただろ?その時さ。思い出した?』

ヤラシー思い出させ方すんなよと
凹みながらノートに目を戻す

全ての記憶を掘り起こした
3歳からの人生…
あまりにも
普通と掛け離れた記憶力…

でもそれはきっと
日々普通と違う環境で
常に自分を思い存在を問い
常に周囲に対し気を磨ぎ澄まし
1人で歩んで来たから…
それを思うと…

ノートを閉じた

ノートを買うと言って
あの男と遭遇した日から
悪夢に唸され続けてきた

男のせいだけじゃなかった!

受け続けてきた虐待の記憶
家の情報
その時の辛い心…
再現された夢の中で
苦しみもがきながら
俺の為にあいつは…!

『徹…。』
『何さ。』

『早く…早く日曜に…ならねぇかな…。』

No.314 10/05/26 19:55
㍊ ( wPNK )

木曜日―

『鏡居ないと何か変だった。』
『居ても変だろ。本人が。』
『だからね、どうして俺ってそういう扱いなの?』
『変人は面白いから…痛!』

サワの頭を叩く
やっぱり仕事は嫌いじゃない
こいつらがいるから和む

『そうそう、会社帰ったら言われると思うけど、明日鏡さんと徹、2人で小さい現場やってもらうって言ってた。』
『ふーん。』
『ふーんって(笑)。アンタと2人なんて…会社戻ったらチェンジしてもらおう。』
『なっ、お前が言うなや!俺が先にチェンジかけてやる!サワ、お前とチェンジ。』
『えー嫌っす。』
『何なんだ、グルかお前ら!』

明日は徹と2人で小回りか
良い事聞いた

せっかくだからこれを機に…
あとは場所だな
遠いと良いんだけど…

何事も無く仕事も終わり
会社で確認すると
明日の現場は遠かった

徹も泊まってるし
会社のワゴンで今日は帰って
明日は真直ぐ現場行こう

『それ乗って帰るのかい。』
『ああ。明日朝楽だろ?』
『まぁね(笑)。ちょっと寄る所あるから行く。晩飯は食べるから置いておくように。』

微妙…男3人住み着く部屋

『華が欲しい…。』

No.315 10/05/26 20:56
㍊ ( wPNK )

帰ると暇していたのか
城が迎え出てきた
今朝は顔を見ずに出た

ノートの件を思い出し
思わずふざけてギューッとすると
痛い!何!?やめろよ!
変態!バカ!!
…と案の定キレられた

今日の俺は
変人変態扱いかと嘆き
着替えて晩飯の準備

ソファーであぐらをかいて座り
TVのチャンネルを何度も変える
面白い番組が無かったようだ

徹が持ってきた
音楽雑誌をパラパラと見る
きっと全く分かってない

手を動かしながら
鏡が話しかける

『掃除洗濯やったら暇だろ。』
『うん…仕事ないかな。』
『無い。明日徹と2人でド田舎の現場入る。来るか(笑)?』

前から鏡の仕事に
興味があったのは知っていた
だからきっと
目茶苦茶喜ぶだろうと
持ち掛けた

興奮した表情で鏡を見る

『行く!いいの?』
『まぁ、来ても俺ら仕事だし構ってやれないから…暇だぞ?ずっと車だし。』
『構わない。行く!』

いつか鏡と働くんだ
鏡みたいな強くて格好良い
筋肉付いた逞しい男に
鳶職人になるんだ
それが城の今の夢だった

反応だけで
喜んでるのが分かる
でも鏡は少しガッカリした

(やっぱり笑った顔は見れなかったか…)

No.316 10/05/27 12:37
㍊ ( wPNK )

晩飯は鏡曰く
鏡矢様特製スープカリー
徹も丁度帰ってきた

『何が特製なの?』
『具がゴロゴロ。』
『雑煮の時もゴロゴロだった。』
『特製ってのは具沢山て意味だからな(笑)!』
『そうなのか。』

徹が入って来る
『また適当に教える!城君、特別って意味。特別に作ったってこと。』

城は鏡を呆れた顔で見る
『全然違うじゃん。』

『俺的には今そういう意味で使ってるからいーんだ。な!』
『な!じゃないって。今まで2人でこんな感じでいたと思うと城君に同情する。社会に出てから恥晒しだな(笑)。』
『本当?それは嫌だ。もう分からないことは徹に聞く!』
『冗談だって。もー、神経質なんだから2人共!』

『何だって?バカ!』
『何だって?バカ!』

面白がって徹を真似る城
まるで徹が2人居るみたいだ

『へーへー。ごめんなさいね!特製がどうより美味いかどうかの感想はねぇの(笑)?』

『美味い。さすが。』
『美味い。さすが。』
『やめろって城!似ないで!もうこれ以上口達者な奴は要らん(笑)!』
『後で鏡を打ちのめすトークを伝授してあげるから(笑)。』
『うん、鏡を打ちのめす。』
『コラ!』

No.317 10/05/27 21:04
㍊ ( wPNK )

徹に明日城を連れて行くと話す

アンタはまた勝手に決める!
この寒い中
変に現場チョロチョロして怪我しても
知らないよと言い放つ

大人しくしてるし
邪魔しないからお願いと
城は必死

その2人の会話が
お前まるで城のオカンだと
腹を抱えて笑う鏡

徹が入って
城が居るだけで
こんなに毎日違うモンかと
またひとつ2人に感謝する

『片付けてくれてどーもな徹。じゃっ、俺、今日はもう寝るわ!』
『寝る?まだ8時だろ。具合悪いの?』

城が心配そうに見る

『いーや。たまに早く寝ないとお肌に悪いからさ(笑)。』
『肌より頭なんだよ、城君。』
『頭?それなら早く寝たほういい。』
『徹…覚えてろ!』
『俺は覚えててもそっちが忘れる。間違いない。おやすみ。』
『間違いない。おやすみ!』

チクショー!
いつもならふて寝だ、ふて寝!
でも今夜は違う

城のノートを読み始める…

読むの恐いんだよな…
でも俺の為に書いてくれたから
俺はきちんと受け止めなきゃ…

どんな家で
どんな祖父母に
何をされてきたんだか…

No.318 10/05/27 21:33
㍊ ( wPNK )

最初の記憶は父さんにやくびょう神って言われて、髪を引っ張ったりけられたりだった。泣いたらまたたたかれるのは知ってたからガマンしてたんだ。母さんは笑ってた気がします。おれの事嫌いなのは分かってた。夜トイレに行きたくなった時、父さんと母さんは離婚の話をしていました。母さんから言ってた。面倒だからあんた育ててって。面倒は意味が今もよくわかりません。父さんも実家置いてくって返事してた。そこもよく覚えてる。うれしかったから。


両親がどう言う理由で
どれだけ簡単に捨てたのか
表面的には分かった

犬の話の部分
犬扱いした発端
犬が嫌いな理由

ガキくさい親…
人格的に成長していない
未熟な親…

小さな城の前で
簡単に死にたいかだの殴るだの
何の躊躇もなく…

両親と離れられて
嬉しかった気持ち…
それなのに…

鏡は食い入るように
読み続けていく…

No.319 10/05/27 22:07
㍊ ( wPNK )

中学生になってもみんなと仲よくなる事できなかった。小学生の時、言葉が通じないとか頭おかしいとか赤ちゃんみたいって言われてたのがまだあって、こわかった。みんなとしゃべれなかった。だから暗いとかこわいとか言われた。話しても赤ちゃんみたいだって言われないように、いつも考えてからしゃべった。勉強も分からないし、体育は体がすぐ疲れて具合わるくなるからさぼったんだ。それなのに女子は話しかけてきて本当嫌いだ。学校さぼるのはジジィたちにばれないようにしないと帰ってからお仕置だってけったりなぐったりするから、気を付けてたんだ。ジジィは他人に分からない俺の体の部分を…


初めて会った城の話し方と
今自分の前での話し方や雰囲気
その違いの理由…

小学から浴びせられ続けた
祖母による言葉の暴力
精神面に与えるダメージの大きさ
今も引きずっている
計り知れない心理的な虐待…

祖父による暴行が
頻繁に始まった中学生時代…

祖父の意識は世間の目が全て
1人の少年より体裁
暴行内容の悍ましいこと
鬼畜とか非道とかじゃ
済まされない人格異常者!

自分に言い聞かせながら
時が経つのを待つ城…
糞ッタレ!

No.320 10/05/27 22:43
㍊ ( wPNK )

冬でも冷水でシャワー…
居間の隅が居場所…
空腹との戦い…

学校の教師の対応
虐待されてこうだということに
気付かないのは仕方無い
打ち明けた訳ではないから

ただ偏見による怠慢…
ろくな大人の居ない環境…

そして
初めての性的虐待

途中でグチャグチャと書き殴り
それでも書き綴けた城


寝室なんて呼ばれた事もないのに変だと思った。こっちへ来いってすごい顔で言うから、殺されるんだと思ってあきらめてそばに行ったんだ。ジジィは自分の横におれをひっぱって犬みたいなかっこうさせて、おれをはだかにして、はだかに、して、自分も脱いでおれにこすりつけて、きた。頭がまっ白でこわくて声出なくて、あいつはおれをかわいいって何回も言って、口に入れてきた!汚いってにげようとしたら、お前にもついてるだろうって、頭をつかんで、口に入れて、出して、出して、泣いてはいてるおれを見てまたかわいいって笑ってた、笑ってたんだ!あんなに苦しくて嫌だって言ったのに、ずっと笑って…

No.321 10/05/27 23:12
㍊ ( wPNK )

ダダンッ!!

鏡の部屋から
家中に響く大きな音

『鏡!どうしたの!』
城が叫び立ち上がる

『城君。行ったら駄目。』
『どうして。凄い音だ。壁殴ったんじゃないの。何かあったんだ!』
『…最近疲れてるんだ。夢で壁でも蹴ったんだよ。』
『今まで無い、そんな事。見てくる。』

徹を無視して向かう
瞬時に怒鳴る

『行くな!!』
『…。』
『寝かせてあげて。ね?』

目が座っている…
怖くて反発出来ず戻った

…鏡は口を抑え
声が洩れないようにしていた

文体でリアルに伝わる城の嘆き

鏡の車を見付けて駆け寄った時
我を忘れ
突然自動車が行き交う
大きな交差点に身を投げ
逃げ去った気持ちを理解した

家の奴がいたから…
そう言っていた
理性失うほど嫌いな家の奴…

一番触れられたく無かった
性の悪戯の状況

汚いとかシャワーとか…
点と点が繋がっていく

壁を殴った拳で
ベッドを殴りつける

涙が流れる…

もう充分
この後に熱湯が控えている
手錠も首輪の話もあるんだろ…

辛い…
でも読まなければ…

No.322 10/05/28 05:54
㍊ ( wPNK )

金曜日―

5時に城に起こされた
遠出のドライブ感覚で
興奮して飛び起きたんだろう

一服してから部屋を出る

徹も先に起こされていた
朝の苦手な彼は
座りながらまだ寝ている

何時に出るの?
どこ行くの?
おれは何持ってけばいい?

遠足じゃないんだからと
苦笑いする鏡

なんだか罪悪感…

外は寒いし
組んだ足場に
立たせるワケにもいかないし
殆ど車内待機なのに…

よし!コンビニで
菓子や雑誌買ってごまかそう!

2人、作業着に着替える
徹はまだ意識朦朧としていた

いつもの仕返しするなら
こいつを倒すなら
今がチャンスなのにとか思いながら
防寒を着る

城が早く行こうと急かす

自家用の鍵を探すが無い!
徹がワゴンの鍵を持って
とうとうボケた?と笑う…
チクショー!倒しておけば良かった

『城チャン、行くぞー!』

嬉しそうに部屋から飛び出す

今日はいつもと
違った雰囲気の現場になる

新鮮だ

No.323 10/05/28 12:33
㍊ ( wPNK )

徹の運転で出発
鏡は隣で足を組んで座る
城が後部席で身を乗り出して
2人の間から会話に加わる

コンビニに寄り
温かいコーヒーを買う

暇するだろうから
好きな本選んでこいと勧めると
初めて漫画を選んだ
勿論車の漫画

ジュースや菓子も買ってやる
控え目な城が珍しく
いつもより多めにカゴに入れた

1時間半以上かかる
離れた現場

田舎道に入ると
人が変わったように
爆走しだす徹

『出た出た!走り屋の血が騒ぎ出した(笑)。』
『アンタに言われたか無いね。1番酷かったくせに(笑)。』
『俺なんか今ちゃーんと安全運転だよ?なぁ、城!』
『うーん…。』
『悩むな!』
『変なのいると怒るだろ、前に凄いスピードで追いかけて降りてったことあるし。』
『城君、こんな大人になったら駄目だよ。こういうのを野蛮人て言うからさ。』
『徹!テメェはいつも…。』
『ヤバンジン?意味は何?』
『意味は【神崎鏡矢】。』
『鏡は野蛮人なのか!』
『お前、絶対いつか泣かす!』

また鼻で笑う徹

現場に着いて
責任者と打ち合わせる
頭を下げて去る

城は窓に張り付いて
鏡と徹の動きを見ていた…

No.324 10/05/28 18:52
㍊ ( wPNK )

いつもふざけ合ってる鏡も徹も
仕事だと全然違う

白い息を吐きながら
黙々と作業をこなしていく

お互いの動きを読んで
スムーズに組み立てていく

重そうな鉄の塊を
軽々しく担いで渡し組む

俺でも少しくらいは
持ち上げられるのかな…

触ってみたい!
降りてお願いしようかな
でもきっと徹が怒る…
さっき車から降りる時
勝手に降りてウロついたら
30分説教だって言ってたし
徹は冷たいようで優しいけど
怒らせるときっと鬼以上だ…

諦めて眺め続ける

自由になって
もっと体が丈夫になって
鏡が働いて良いって言ったら
すぐ役に立てるように
動きを覚えよう…!

10時に一旦休憩に入る

近くの自動販売機で
温かいコーヒーを買う

『来ても暇だろ(笑)?』
『暇だけど面白い。近くで見てみたい。』
『…だって、徹サン。』
『ダメダメ。俺達仕事しながら見てる余裕ないし。』
『…だって、城クン。』
『見てなくても大丈夫、中3だぞ!子供じゃない。危ないのは分かってる!』
『…だって、徹サン。』
『学校も行かないで中3だなんてよく言えるよ(笑)。考えが甘い!俺は甘くない。』

No.325 10/05/28 19:27
㍊ ( wPNK )

こいつにとって
今日は特別な日なのに…
本当に鬼だな(笑)
そこを突いちゃうのね(笑)

でも心配する気持ちは分かる…

徹の実家の近くの現場で
忘れた携帯を持ってきた妹
勝手に敷地に入って
兄貴を探してたら
上で作業してた奴が
たまたま手を滑らせて
その妹の上に工具を落とした

幸い大事には至らなかったけど
右腕に傷を残してしまった…

『城、徹は心配性なんだ。お前の事を愛してやまないから(笑)!オカン役だから(笑)!』
『…!』
『そうなの。分かった。ここからでも見えるしね。』

そしてまた2人作業に戻る

徹が母さん役か…
嫌だな…

菓子袋を開け
諦めて漫画を開いた

昼飯は少し離れた定食屋
城を見るなり
女の子みたいねーと
オバちゃんに言われ
本人は酷く凹んでた

午後も飽きもせず
組み上げられる足場を見ていた

『徹。上げてやろうぜ。』
『…まぁ、俺達しかいないしね。流石に可哀相か(笑)。』
『あいつ、俺と鳶やりたいんだって。夢なんだよ、今の。』
『じゃあ終わったらだな。サプライズだ。』

No.326 10/05/28 20:25
㍊ ( wPNK )

作業終了!
2人は片付け始めた

城は満足だった
ダボダボズボンのスーパーマンは
仕事でもスーパーマンのイメージ
そのままだった

ニヤニヤ笑いながら戻ってくる2人
窓を開け嬉しそうに声を掛けた

『終わったの?帰る?』
『終わった。城君、ちょっと降りて。あ、上着。』

訳が分からず上着を着る
城が降りようとする間に
徹が鞄から何か取り出す

寒いはずの空気が
何故か寒く感じず
むしろ気持ち良かった

『帰るんでしょ。』
『徹、ヘルメット貸してやれ。』
『あぁ…。』

城の頭にヘルメットを乗せる
徹はいつも通り
タオルを撒いたまま腰道具を外す

初めて被ったヘルメット
何だかグラグラブカブカで変な感じ

徹が黙って顎紐を合わせ
鏡を顎で指す

『鏡について行きな(笑)。』

鏡はいつの間にか車から離れ
笑顔で手招きしていた

…もしかして…!

知らず知らず早足で駆け寄る…

『いいの?』
『せっかくだからな(笑)!』

No.327 10/05/28 20:58
㍊ ( wPNK )

一仕事終えて暖まったのか
防寒を脱いだ鏡の後ろ姿…

肩幅があり逆三角形の広い背中
細身なのに
強靱な筋肉で固められた腕…

絶対鏡みたいになる!

慣れないヘルメットを押さえ
子鴨のように付いて歩く

足場まで行くと
お前先に行けと言って下がる鏡
足を滑らせて落ちないように
後ろから見守り一緒に上がる

普通の階段だろ?と笑うと
全然違うと答える

鏡と徹が2人で組んだんだ
1度上がってみたかった
鏡達が働く目線で
1度一緒に見てみたかった景色

徹は上らなかった
下で笑ってる

頭や肩を軽くぶつけながら
やっと最上階まで辿り着く

小さな現場で
そんな大きくも高くもない足場
自分の部屋のが
よっぽど高くて空に近いのに…

城は心から喜んだ

『凄い!何も無かったのに!重そうなのばっかりだったのに!1日かからないで出来上がったね!鏡、凄い!全然揺れないよ!鏡と徹だけで作って、俺は初めて上がった!凄い!凄い!』

あまりの興奮状態に
大した事ないサイズなんだけどと
内心照れながら
鏡の顔も綻びる

徹が下で2人を呼んだ
顔を出して鏡と城が見下ろす

カメラを構えた徹が
シャッターを押したのが分かった

No.328 10/05/28 22:40
㍊ ( wPNK )

徹も上がって来た

端からカメラを構えると
よせって、照れるだろ~
と言いながら
変なポーズをとる鏡
面白がって見ている城

カメラの写し方を教えてもらい
俺が撮ると交替した

鏡の変なポーズを真似て
徹も変なポーズをする

外側にぶら下がったり
掴まったり…
どっちがどれだけ
危険な構えができるかと
競い出す

撮れ!撮れ!と催促する2人
一生懸命カメラを構え直す城

どっちが子供か
分かったもんじゃない

鏡がもう寒い無理!と言うので
降りることにする

今度は鏡が先に降り城が後ろ
その後から徹

3人共
日曜の堅苦しく重い1日の事は
今全く頭に無かった…

この時間は
本当に心から楽しんだ
悩みなんか無かった
自由だった

帰りは会社に寄って
鏡の車に乗換え帰る

家の近所のラーメン屋で
晩飯を済ました

家に帰ると
徹が鏡の部屋に籠った

『鏡と徹と働きたい。』
『もっと食って力ついたらだな(笑)!弟子にして欲しけりゃ体作るんだ。』
『分かった。俺が1番弟子になる。約束して。』
『俺の1番弟子だな。約束。』

拳と拳を合わせて
2人だけの約束を交わした

No.329 10/05/29 08:32
㍊ ( wPNK )

徹は居間から流れる
2人のやり取りを聞きながら
鏡の部屋でノートを読んでいた

鏡と違って冷静な彼は
感情を剥き出しにする事も無く
ただひたすら読み耽る…

勿論 感情移入し難い彼でも
流石に心が痛む

性に関する虐待の部分は
どこも支離滅裂な文体…

暴行された後の自分の気持ち
痛かった 怖かった
そういう簡単な心理じゃない

生への希望 死の選択
己を励まし 己を呪い

結局は
自分を全て卑下し恥じ
人間であることすら
否定し続けている

話が上手くいったとしても
精神面での完全復旧は難しい
きっと…

子供らしい綴り方
大人びた綴り方

クラスの男子生徒への異常な怒り
教師への失望
先輩との亀裂
ユウナの悪意無き裏切り

鏡への想いや期待…
日中見た城のはしゃぎ方…

気になるのは
どんなに楽しんで喜んでも

笑顔が無い
1度も…

2時間かけてじっくり読み
ノートを閉じた

『鏡に見せてやれるかな。笑顔…俺も見たい。』

No.330 10/05/30 21:51
㍊ ( wPNK )

鏡の部屋から出る

『徹、先に風呂入る?』
『いや…城君、疲れただろ。先入って早く休みな。』

城が居間を出るのを見て
鏡の隣に溜息をついて座る

『酷いね。想像以上。』
『…だろ?』
『よく最後まで書いたよ。』
『毎晩の夢、納得だ。』
『ある程度の内容と家の人の雰囲気や環境を知りたくてカマかけたんだけど…完璧だ。』
『完璧?』
『決定的な証拠が残った。これ一冊あればかなり相手を押せる。彼の体の傷跡も充分な証拠になる。写真も撮っておいた方いいかも。それに…。』
『いや、徹、だからさ…俺としては…。』

慌てて徹の話を遮り
困った顔をする鏡
それをまた強い口調で遮る徹

『ちゃんと分かってる。介入させたくないのは。できる所までは粘る。でも相手もどう出るか分からない。最悪の場合は即機関を挟む以外に無い。失敗しても城君を渡す訳にいかない…あの怪物に。意地で城君を納得させるしかない。そこは俺がやる。覚悟しといて。』

頭を抱えて鏡は頷いた

『どう出るか…だよなぁ。あの時の余裕で馬鹿にした笑い方、怖えーよ…。』

『鏡!来て!』

突然風呂場から城の叫び声…
2人の会話を引き裂いた

No.331 10/05/31 08:19
㍊ ( wPNK )

『どうした!』

勢いよく立つと同時に
テーブルにスネを強打し悶絶する…

『早く!早く来て!』
『何やってんだか(笑)。俺見てきてやるよ…。』

急かす城と呆れ顔の徹
情けない事にすぐ立てない

『鏡、アホやって立てないから俺が来た(笑)。どうしたの?』

濡れて裸のままの城は
脱衣場にうずくまっていた
もう傷跡とはいえ酷い皮膚…
顔色ひとつ変えることなく
声を掛けた

徹を見てギョッとするが
もうかなり慣れたもので
仕方なく打ち明ける

『体洗う石鹸が無い…探してきて…。』
なんだ大袈裟なと思う

『鏡!ボディソープ無いって!』
『そこの棚にある!』
『無い!』
『あれ?じゃあ無い(笑)!』
『石鹸も?』
『無い(笑)。』

鏡が足を引きずりながら来る

『切らしたな。城、シャンプーか手洗い石鹸で洗え!同じ同じ!』
『嫌だ!!』
『仕方ねぇじゃん。無いもんはよー。ったく。』
『嫌だ!!いつものじゃないと落ちない!他のは駄目だ!』

うずくまったまま我を通す…

『城君、我儘。』
徹が口を挟むと城は立った

『ちゃんと、ノート読んでくれたの?徹!』

No.332 10/05/31 12:32
㍊ ( wPNK )

顔付きが
いつもの城じゃない…
鏡も驚いてただ聞いていた

『さっき読んだんだろ?俺の全て!徹が出した問題…俺のこと知りたがってると感じたから書いた。徹がこれでいいって言った。だから安心してた。なのに解ってくれないのはどうして?手洗い用は手洗い用、シャンプーは頭用。体洗っても落ちた気がしない。』

鏡を睨み付ける

『体用のじゃなきゃ嫌だって、落ちた気がしないって…一番汚れてるのは、体だからだよ!解らない?見ろよ、俺の体!』

両手を広げて徹に近づいた…

『よく見ろよ!俺がされたこと、全部見ろよ!見せてやるよ!ホラ!全部残ってるよ!?火傷も、痣も、切傷も擦傷も、手錠、首輪、他にも…犯された時に爪立てられた跡!こんな所にも!ここにも!』

『城…分かったから。もういいから。俺と徹が悪かった…。買ってくるからさ、今すぐ。』

鏡が徹の前に出て
置いてあったバスタオルを
城に羽織る

『自分でも我儘なのは分かってるんだ!でも、気の持ちようでも体用じゃないと安心出来ないんだ!理由はそれだけだよ!他は嫌だ!徹!読んだなら、解って!その為に徹にも見せたんだ!我儘って言わないで…!』

No.333 10/05/31 12:52
㍊ ( wPNK )

『1日の中で、風呂が一番大事なんだ!徹!お願い、我儘って言わないで!知ってて嫌だって言ってるんだ!だから俺、悪い子供で、嫌われて仕方ないかもしれない…あぁ、だから捨てられたのかもしれない…犬…人間は犬を捨てたり殺したりもするんだろ…動物だって命なのに、普通に生きてるのに、急に虐待されるんだろ…俺、人間か犬かわかんない…鏡、鏡…俺、我儘だ…シャンプーでいい…我慢するから…捨てないで…また、頭の中が色々揉め合う…徹、呆れないで…俺が悪いんだ…ごめん、ごめんなさい…。』

またしゃがんで
小さくなってしまった…

『俺が買ってくる…。』

徹はそれ以外何も言わず
【いつもの】ボディソープを
鏡に詳しく聞いて出て行った

『一旦拭いて、服着ろよ。風邪引くから…。』

鏡は落ち込んだ城を立たせて
居間へ連れて行った

No.334 10/05/31 19:07
㍊ ( wPNK )

城は鏡に背を向けて座った

『徹はそんなつもりで言ったんじゃないのに!』
『そうだな…。』
『これ以上言う必要無いって分かってるのに、心が言うこと聞かない!』
『それは徹も理解できてる…大丈夫。』
『さっきまであんなに楽しくて、ずっとこのままがいいって思ってたのに…自分で自分を駄目にしてる…自分が皆を駄目にしてる…鏡、心がおかしいんだ…。』

鏡は深呼吸して話し出す

『虐待は体だけじゃない。心への虐待もあるから。ノートを読んでよく分かったんだ。お前は家の奴にずっとずっと心も傷付けられてきたんだよ…心がおかしいんじゃなくて、心が傷だらけなんだ。俺と徹が、話し合いが終わってから…心の傷も治してやるから。な。癇癪起こしても、俺を嫌っても、俺は絶対見放さない。絶対。絶対だからな!』

小さな背を向けたまま頷いた

『徹が帰ってきたらどうしよう…。』
『抱き付いてゴメンナサイしてやれ(笑)。お前の顔に弱いみたいだから!』
『顔?よく分からない…徹、気にして帰って来ないかも…。』

今日は膝をバシッと叩いて笑う

『あいつが気にするタイプに見えるかよ(笑)!』

No.335 10/06/01 08:31
㍊ ( wPNK )

あまり気にしていなかった…

それより
そんなつもりのない言葉に
驚くくらい過剰反応する
受けた傷の重さを改めて認識

気を付けないと…
今のところ日曜は本人も来る気はあるみたいだし

今回の話の本人であり証人であり、そして生きた証拠だ

居てくれた方が助かる
下手に刺激しないようにしないといけないな…

ただ
感情の起伏の激しい彼を
困った顔をしながらも
上手く対応してやれる鏡
俺には無理だ
一緒にいる時間が違うのも
それはあるかもしれないけど

本当 よくやってるよ…

マンションに入ろうとする…
見覚えのある男
城の親父

また?
またって言うより
まだウロついてんのかこいつ!

明後日会うって話だろ?
待てないのか?

例え今城君が出てきたとして
捕まえて
連れ帰って何をしたいワケ?

危機感を感じての
証拠隠滅?口封じ?
気色悪い男だ…!

この前と違って私服だし
鏡と一緒に居た奴だとは
分からないだろう…

堂々と目の前を通り過ぎ
マンションに入ろうとすると

男は声を掛けてきた

No.336 10/06/01 12:35
㍊ ( wPNK )

『今晩は。』
『…。』

怪しまれないようになのか
それだけだった

徹は一旦無視するが
足を止め振り返る

『ここに立ってるの何度か見掛けたけど何かありました?』
『あ、いや、ちょっと知り合いが中にいまして。』

意味不明な嘘
顔や態度が意味なく腹立つ…

『そうですか。それならいいですけど。ただ、貴方の顔…家に回ってきた回覧板で不審者リストに掲載されてた気がして。立ってる背格好が写真とそっくりだし。似顔絵も何となく似てる。違うなら知り合いの人の部屋で待ってた方がいいんじゃないですかね。最近ここの町内変な奴多いし。こんな時間、こんな所で何度も立ってたら通報されますよ。困るでしょう?』

二度と来るなと言う気持ちで
少し大きな声で話す

男は少し驚いた顔で
笑顔を見せることも無い

『あっ…そうなんですか…いや、用事は終わったんです。すみません、親切に。』

ペコリと頭を下げて
そそくさと消えて行った

日曜 自分の顔見たら
どんな反応するのかが
楽しみだ…

鏡の部屋に戻ると
抱き付きはしなかったものの
城が遠巻きに謝ってきた

『俺こそごめん(笑)。ハイ、菓子付き。許してね。』

No.337 10/06/01 14:06
㍊ ( wPNK )

鏡に話すと怒り出した
大きい声出すなよ
城君に聞こえるだろと
一喝する

『でもよ、一件一件回って城捜してたのに、不審者リストって変だろ(笑)!』
『そこまで考えてなんかいないさ。勧誘か集金だと思って居留守使う家の方が多いんだし。』

鏡は腹立たしげに肴をバクバクと口に入れる

『明日の夜、俺降りてみるかな!んで、会ったら…!』
『止めろよ、頭回んないくせに。また会って引き渡せって逆に通報されたらどうすんの?一応アンタも犯罪者みたいな状態なんだから勘弁して。俺2人も一気に救えない。しかも次こそ手出しそうだし!大人なんだから大人しくしてろよ。』
『あ、そうですか、スンマセンね、ケッ!どうせ俺なんか!え~え~、失敗しましたからね!フン。』
『本当、手掛かる。真面目にやってよね!』

今一番日曜が恐怖なのは
間違いなく俺だな…

鏡への信頼はあるが
こういう態度が
余計な不安感を膨張させる
徹はテーブルに伏せた

『何もそこまで…ごめんて(笑)。真面目にやります。』

No.338 10/06/01 19:16
㍊ ( wPNK )

徹は頭を上げて鏡を睨む

『俺は神崎鏡矢の手助けに来ただけだ。進行は鏡、アンタだよ。あの男に、私、神崎鏡矢は貴方の息子をずっと連れ回してますって暴露してしまったんだ。こっちからふっかけた喧嘩だ。俺がメインになって話しても、アンタより遥かに短い時間でしか城君の事を知ることが出来なかったし、説得力に欠ける。城君をどうこうしましたよねとか、言えない。違う部分からしか攻められない。分かってんの?そこ。いつまでも甘えないでよね。』

ビールを置いて徹を見返す
さっきまでのふざけた顔は
すっかり消えていた

『…分かってる。本当に助かってるよ…この一週間、俺1人じゃ今頃どうなってたか。こんなんでも色々イメージトレーニングはしてる。知っておかなきゃならない所も調べてるし。俺なりのやり方で他にも準備はしてる。気はしっかりしてるつもりだ。徹、俺はこういう話し合い…仕事ほど器用にはできねぇけど、本番の間だけでもいい。信じてくれ。頼む。』

くっきりとした二重の目は
全く濁りが無い

徹の目元が笑う…

『俺、神崎鏡矢を尊敬してる。鏡が望むなら、鏡の為に、鏡の傍にあの子を置きたい。』

No.339 10/06/01 20:20
㍊ ( wPNK )

城が風呂から上がり
珍しく徹の隣りに座った
髪も濡れたまま
そして腕の匂いを嗅ぐ…

『今日は臭くない。でも起きたら明日また汚れる。今はいい匂い。小便臭くないでしょ俺。』

徹に腕を差し出す
嗅ぐ事なんか出来なかった…

『元々君は匂わないよ。本当悪い人間だよね。あいつらがそう思わせてしまったんだ。』
『嗅いで。』

両腕を徹に突き出す…
はぐらかすなよと
言わんばかりに…

『ちゃんと調べて!』
『城。』
鏡が低い声で呼ぶ

『何で嗅いでくれないの!』
『城。止めろ。』
『汚いって思ってるんだ!』
『城!』

鏡は城の方へ行き
徹から引き離した
また癇癪を引き起こす…

『鏡は言ったら嗅いでくれたぞ!徹は嗅いでくれない!何で!何で!何でだよ!』

半ベソ状態
鏡は城の口を手の平で塞いだ

『うるさいって、もう真夜中だぞ!城、徹は父さんじゃない、お客だ。失礼だろ!』

その言葉で
徹は諦め鏡にねだる…

『父さん、嗅いで…。』

差し出された手を握って嗅ぐ

『臭くないッ!凄ぇいい匂い!食っちゃいたいくらい(笑)!ゴチでした(笑)!』

城はおやすみなさいと
部屋へ入って行った

No.340 10/06/01 20:51
㍊ ( wPNK )

もう風呂入って寝るかと
徹を見ずに片付け始めた

きっと込み上げる物も
あるだろう…

『嗅いで…やれば良かった…のかな…。よくああなるの?』
『たまにな…。』
『対応出来ない…ごめん。』
『いいんだ。俺は慣れてるだけだって(笑)。』

片付けを手伝い始める徹に
いいから風呂入れと促す

『城君を引き取っても終わりは無い…メンタルケアに追われ続ける…一番心配だ。』
『だからって…もう嫌だって、拾っておいて見捨てられるかよ…城を奪うってことはそう言うことなんだよ…。ボスを倒しに行くってことは…無傷じゃいられないんだって…(笑)。』

作った笑顔の奥は
泣いている様にも見えた

『明日俺休みだ。2連休だった。仕事頑張れ。日中は用事あるから城君1人にしちゃうけど、昼飯と晩飯は作ってやる。』

徹は鏡の肩を軽く叩いて
風呂に入った

長い長い1日が終わった…

No.341 10/06/02 08:16
㍊ ( wPNK )

土曜日―

鏡が起きると
徹も寝ボケ顔で起きていた

『…城君の飯、俺が作ってやるからいいよ。』
『あ、ホント?助かる。』

洗面所で支度をし始める
城の部屋から窓を開ける音

少し気になって入ると
相変わらず寝癖の酷い頭で
ベッドに座り外を見ていた

『サブッ!早起きじゃん。』
『もう行くの。今日は早く帰ってくる?』
『着替えたらな。多分普通に帰れる。徹休みだから、言うこと聞けよ。』

悲しそうな顔で振り向く

『徹、嫌ってるよ、俺のこと。だって、困ることばかりしたから。早く帰ってきて。』

そう言うとまた外を見た
鏡も近づいて外を見る
スズメやカラスが飛び交う

『明日で自由になれるぞ(笑)。徹はお前が凹んで引くと、逆にどうしていいか分からなくなるんだ。オコチャマだから。いつも通り、俺と居る時みたいにしてみ。知れば知るほど面白い奴だから(笑)。』
『また心が変になるかも。』
『ぶつけても、今日は俺居ない。ちゃんと受け止めるさ。でもお前も、カッとならないで深呼吸してまず話聞け。徹は悪いこと言ってる訳じゃないから。』

頭にポンと手を乗せ部屋を出た

No.342 10/06/02 12:17
㍊ ( wPNK )

『誰がオコチャマだって?』

本人が洗面所で聞いていた
睨みながら突っ込む

『えっ?あ、俺(笑)!』
笑ってごまかし
さっさと着替えて出る

鏡が居なくなって
徹と城 2人の1日…
今度は徹が城の部屋へ…

『おはよう。城君。』
『…よぅ。』

窓の外を見ながら
小さい声で反応
徹は城のベッドに腰掛けた

『俺今日休みなんだけど、用事あるから出掛けるよ。』
『…俺が嫌なんだろ。』

さっきの鏡との話を
思い出して答える

『何で。嫌じゃないよ。嫌になる理由が無い。』
『嫌だから出るんだろ。』
『違う。用事があるから出掛けるって言ってる。』
『何時に帰る?』
『ちょっと分からないな、それは…。』

窓を閉めて徹を見た
顔が既に怒っている

『嫌なら嫌って言えよ!いいよ行って!俺が困らせるから嫌で出掛けるんだろ!』

思い込んだら話が通じない
突然の起爆
ホント正直…
どうしていいか分からない

まぁ、俺は鏡じゃないし
鏡みたいに優くなんて
出来ないしさ…

冷めきった目

『ホント、困る。その癇癪。』

No.343 10/06/02 19:57
㍊ ( wPNK )

城の顔色が変わった
徹は続ける…

『鏡みたいに上手く対応してあげられなくてごめん。俺、こんな言い方しか出来ないし。明日の為に、俺もやらなきゃならない事があるんだ。準備したい。こう言えば良かった。昨夜の事もあったのに気が利かないな。反省します。昼には帰ってくるようにするからさ。そんな事言わないで、待っててくれないかな(笑)。』

明日の為に…
自分の為だったのか…
城は自分を恥じる

『ごめんなさい。鏡にまず話聞けって言われてたのに…うん。分かった。』
『朝飯はちゃんと作るから、しっかり食べて体作りな。城君が入社したらビシバシ鍛えてやるから。』
『ビシバシは嫌だ…ちゃんと洗濯するから止めてよ。』

徹は笑顔を向けて
キッチンへ立つ

心のどこかで
まだ信用していない自分

ノートを見て自分を知って
気持ち悪がってない?
面白がってない?
本当に助けてくれるの?

徹はきっとそんな奴じゃない
徹をもっと知って安心しよう

いよいよ明日だから…
俺も行くんだから…

No.344 10/06/02 21:51
㍊ ( wPNK )

言った通り徹は昼には戻り
マンションの入口に車を停め
城を外へ連れ出した

勿論、あの男が居ないか
確認してからだ

徹は城の自分に対する警戒を
取り除いてやりたかった

そうしてやらないと
城が明日奴らを目前にし
蘇る恐怖に堪え続けるには
心の支えが鏡1人だと
非常に難しいだろうと感じたからだった

車が大好きな城…
人気の無い港の敷地で
運転席に座らせる

シートを調整し
シートベルトも万が一の為に
掛けさせた

ブレーキの踏み込み具合を
徹が直接見て確認して
シフトをPからDへ…

足離してみなと徹が言う
ゆっくりと動き出す車…
動いた!進んだ!と
興奮しながら
前方から目を逸らさない

アクセル踏め!と声を張り上げる
20…30…40…
スピードが上がる

顔を強張らせ
怖い怖いと慌てる城

ゆっくり踏めと言ったのに
力加減が分からず
ほぼ急制動

おわっ!と叫んで
瞬時に構えるが
ダッシュボードに膝を打つ

痛がる徹を構うことなく
また発進させ
スムーズに敷地を走り回る

先輩にも教えてもらったな…
意外と簡単だ
自由になったらまた
会いに行ってみよう…

No.345 10/06/03 04:24
㍊ ( wPNK )

運転の仕方ならヨウヘイに聞いた
実際動かすのは初めてだ
大満足な城

飽きるまで運転させてくれた

朝の一件で
徹が気を遣ってくれたのも
よく分かっていた

帰りは徹が好きそうな
洒落た喫茶店で
初めてパフェを食べる

帰りは見事な夕日

直射日光は駄目なんだと
サングラスを掛け
海沿いをひたすら走る

海に反射する夕日
窓を開けて波の音を聞く
感動したあの日を思い
ヨウヘイの話を持ち出す

悪気が無いのに
城の心を汲めずに失敗した
ヨウヘイに親近感を持つ徹

会いに行けばきっと喜ぶ
ノートの内容や話を聞くと
城君の事が気に入っていて
何とかしてやりたい一心で
城君の気持ちが理解出来ないまま失敗しただけだからと
真剣に相談に乗る

心を開けなかった自分
確かにそうだと納得し
背中にまた鷹を彫りたいと
鏡は反対しそうだと話す

徹もあまり良い顔はしない
でもやったモン勝ちだ
怒られたら説得してやるよと
簡単だと笑い出す

心に引っ掛かっていた事が
少しずつ解決されて行く

兄貴がいたらこんな感じ
落ち着いて頼れる人がいいな


城の理想の家族像に
徹も加わった

No.346 10/06/03 05:42
㍊ ( wPNK )

夕方6時
鏡はまだ帰って来ない

徹が晩飯を準備する間も
城は居間に座って
鏡と同じ接し方

玄関から物音がして
鏡が帰ってくる

城は目を丸くして
黒い、黒いと興奮した

染め直したの?と笑う徹
あんな奴に赤い頭の男とか言われたくねぇ!
とイキリ立つ

晩飯を食べ終え
やること済ませて10時前

晩酌を始める2人を前に
部屋から出てきた城が
暗い顔で話し出す…

『明日、お願い。俺を渡さないって結果になっても1人、置いてかないで…あそこに。死んじゃう…次は死んじゃうよ…。』

手の甲の根性焼きの跡を
押さえながら声を震わせる

奴らと共にする明日を
想像するだけでも
相当の恐怖なのが伝わる

こっち座れと
自分と徹の間に誘う

『明日、来れるか?お前の精神状態を優先したいから、無理矢理は連れて行くつもりはない。行く間際になって行けない、行きたくないって感じたら言えよ。嘘はつくな。そんな嘘は必要無いし、本番で迷惑掛かるだけだ。』
『…はい。』
『話の流れの中で、君に聞く事もあるかもしれない。その時は俺ら寄りの返答じゃなく、正直にありのままの事実を話すんだ。頼むよ。』
『…はい。』

No.347 10/06/03 09:12
㍊ ( wPNK )

城はまた震えていた

ギリギリになって姿を現す
父親の行動
薄気味悪い程に静寂な祖父

親子3世代に渡る
加害と被害の連鎖

鏡と徹は空いた時間で
何度もノートを読み直してきた

城は四六時中記憶の中でも
奴らに付きまとわれ
心で泣きながら歩んできた

『今日寝たら明日が来る…2人を信じていても怖いんだ…失敗してもいい…失敗しても置いて帰らないでね…。逃げられないんだ…鏡、徹、凄く体中が痛いんだ…。』

またボロボロと涙を零す

自分の手首…
手錠の跡を見てから
顔を覆い歯を食いしばる…
前屈みになって
小さく小さくなる…
呪文を唱えるように
泣きながら呟く…

熱湯は嫌だ熱湯は嫌だ
あんな奴に犯されたくない
気持ち悪い気持ち悪いよ
触らないで笑わないで
タバコを近づけないで
それならそれだったら
殴られる方がいい
犬でもいい餌のがいい
ご飯無くてもいいから
帰りたくない…
会いたくない…
あそこは家じゃない…
家族じゃない…
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…

しゃくりあげながらゴホゴホッと咽せ出し呼吸が乱れ始める…

徹が近くにあった袋を
鏡に渡した

No.348 10/06/03 10:10
㍊ ( wPNK )

…無理だな…
2人は顔を見合わせた
それならそれでいい
何とか出来る…

呼吸が落ち着いて
2人の空気を察知したのか
話し出す

『でも行くから…行って、どうして俺を普通と違う心と体にしたのか、直接聞くんだ…何がダメだったのか聞くんだ…あと、母さんのことも…知ってるかもしれない…1人で留守番も嫌だ。鏡と徹がいるから俺も行ける。直接全て聞いてやるんだ。どうして虐待なんかしてきたのって、どうして酷いことして笑えるのか、どうして鏡のが本当の父さんみたいなのか、全部、自分の目で、耳で、あいつらの顔見て、聞いてやるんだ!』

鏡は肩をグッと抱いた

『お前強いわ。』
『だね。俺なら行かない。』

『城。話の流れがどうなるかなんて皆、分からない。奴らが俺達にどういう措置を取るかも読めない。あの頭じゃあな。直接会って話して、その場で考えて返して行くしかないんだ。他に最善なやり方もあるかもしれない。ヘタレなコンビはヘタレなりに頑張るからな。』
『ヘタレはアンタだろ!一緒にしないでよ。』
『感染性の強いヘタレ菌だ!既に移ってる!』
『参るよ(笑)。』

城の目元が
笑っているように見えた

No.349 10/06/03 10:41
㍊ ( wPNK )

城が部屋に行った後
2人はまた喋りだす

『鏡。何か柵は見つけた?』

『無いッ(笑)!何も浮かばないし。イメトレしてても、段々腹立って気付いたらボコボコにしちゃってるワケよ。悪いな徹、明日フォローしてくれよ(笑)。』

『野蛮人どころかケダモノだな。フォローなんかしないよ、また察に連れて行かれりゃいい。』

『またって言うな(笑)。昔々の話です!お前こそどうだよ?』

『虐待の知識得るのに調べただけ。時間取れなかった(笑)。』

『ハッハッハ(笑)。』
『ハッハッハ(笑)。』

もう考えて悩んでも
どうにか出来る訳じゃねぇ
流れだ、流れ!

まぁね
城君をここに置く許可さえ
取れたらいい

いやいやでもさ
原因だけは聞いてみようぜ!
あの黒ずんだ脳味噌見てぇよ

見たって味噌汁すら作れない
あんな宇宙人

上手いッ(笑)!口達者vs口達者!笑ったらゴメン!

城君に謝るべきだね(笑)


さっきの城を見てたら
俺達は一体どれだけ
重い物を背負ったのかと
息苦しくなる
1人の少年の人生を託された
明日の数時間…

ふざけ合わずにはいられない

さぁ 今日は もう寝よう…

No.350 10/06/03 17:44
㍊ ( wPNK )

当日―

ここ最近で一番冷え込む1日
気分が重い…
快晴なのが救いだ

少し遅めに起きた鏡
朝の弱い徹は早起き

『そう言えばさ、相手今日だって分かってんのかな!?行ったはいいけど、居なかった、忘れてましたじゃ話にならねぇ。』

徹が何を今更という顔をする

『携帯番号のメモ貰ったんだろ?かけて確認取れよ。』
『いや、すぐ捨てたし。』
『そう。』

(ん?捨てた?)
徹は顔を上げる

『どこに!』
『貰ってその場で。』
『…呆れる!何かあったらどうしたワケ?本当、短腹!連絡出来ないじゃん。』
『…そうだよな(笑)!番号すらあいつの顔に見えてさ!まっ仕方ない(笑)!』

返す言葉も出ないよ…
どうして肝心な所抜けてんだ
ほら、段々不安が蘇る…
どうしてくれんだよ…

『最終確認していい?』
『どうぞ!』
『…大丈夫?本当に。』

あまりにも真面目な顔付きで
心配されてしまい悲しくなる

『何、大丈夫って。問題ないって(笑)。』
『あぁそう…。城君朝食べた。アンタだけだよ。』

投稿順
新着順
主のみ
付箋

新しいレスの受付は終了しました

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧