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㍊( wPNK )
10/07/03 00:53(更新日時)

小説なんて書いた事もないので表現力が乏しい上、読み難いかもです。

最近よく見聞きする【虐待】という行いについて考えるきっかけになれればと思い、主役【城(セイ)】の存在を何かに残したかったので…ですからほぼノンフィクションです。

つたない文章ですが、暇潰し程度に読んでください。

虐待を中心に、同性愛的な内容、精神的な問題等、少々生々しい部分も含まれています。
不快に思われた方は素通り願います。
感想スレは別にありますので、読者の方の邪魔にならないよう、レスはそちらにお願いします。

一度自分のミスで削除してしまい…申し訳ありませんでした。
再度よろしくお願い致します。

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No.1301642 10/04/19 21:10(スレ作成日時)

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No.201 10/05/07 17:35
㍊ ( wPNK )

会社へ着くと
鏡は車のエンジンをかけ
トオルに車が暖まるまで
もう少し乗せといてくれと言い
事務所へ走って行った

トオルは後ろを振り向き
城に話しかけてみる

『鏡さん、君が行方不明になってから変だったよ。出て来てくれて…これでオレらも安心して仕事出来る…ありがとな。』

城は一瞬眉を動かし
上着で顔を隠した
そして小声で返す

『…怒ってた…?』
『いーや。泣きっ放し!』

鏡が毛布を持って戻る

『トオル!色々助かった。1人じゃ限界だった…感謝します!この礼はいつか気が向いた時に!』
『早目に気を向けろ(笑)。』

城を乗せ替え上着を返し
別れた

いーや。泣きっ放し!

この言葉が
ずっと頭から離れなかった
鏡が泣いてくれた…
それだけで胸一杯だった

No.202 10/05/07 18:57
㍊ ( wPNK )

毛布でグルグル巻きにされた城は
鏡の上着を被って
また寝たフリをしていた
体温も少しずつ戻る…

鏡も分かっていたが
あえてそのまま黙っておく

マンションの駐車場に入り
城を抱えようとすると
子供じゃないから
恥ずかしいから
俺は男だぞ
自分で歩けるとごねた

歩く力も無いくせに
恥ずかしいならこうしてろと
毛布を頭からグルグル巻きにする

そんなやり取りが
どこか楽しそうな2人…

部屋に入り城を降ろす
痛々しい傷を背負い
ぎこちなく歩く後ろ姿を見て
また怒りが込み上げる

『城。ごめんな…。』

鏡が謝ると城は振り向かずに
立ち止まる

『もっと早く助けてやれば良かった…1度行ったんだ。出たのはバアサンらしき人だった。通報されてでも無理矢理上がって調べれば良かった…そしたら…そしたらこんな酷い思い…もっと早くによ…!口ばっかで悪かった…本当…もう…俺…。反省してます…。』

声が震えていた

No.203 10/05/07 19:34
㍊ ( wPNK )

『俺、来たの知ってたよ。』
『…?居たのか?』

城は振向いて首を指差した

『首輪…だったから…手錠より変でしょ。俺、犬だったから…見られたくなかったから…黙ってた。』

…首輪?

『あと、その時のご飯が…。』

言葉を詰まらせ躊躇する
鏡だから大丈夫と言い聞かせ
続ける

『犬の…エサ。』

鏡は耳を疑った
首輪と餌?
人の子に…犬の?

城は毛布をまた頭から被り
ソファーに倒れ込んだ

『そう…!だから、見られたくないから…犬だから!ワンて言えって沢山叩かれた後だから!!助けてって言えなかった!!鏡、ごめん…!ごめんなさい…犬でごめん…。』

犬だからと叫んでいた理由が
これで…

あいつらは何を…
1人の人間に何を…!

ソファーに座る
毛布にくるまって
泣顔を見られないようにでもしているのか…
名を読んでも反応しない

腹わたが煮えくり返る…!

No.204 10/05/07 21:50
㍊ ( wPNK )

『城…顔見せろよ…。』
毛布をゆっくりめくる

城も諦めたかのように
黙って起き上がり
鏡の隣に座り直す
虚ろな目

身なりきちんとしたら
イイ男なんだぞこいつは…
それなのに…

髪はまた無造作に伸びて
整える時間も与えず
恐怖ばかりが纏わりついて
成長期にもかかわらず
時が止まったように
あまりにも幼い顔
痩せこけた頬
疲れ切った暗い表情…

首輪の跡
何かの道具で打たれた跡
根性焼きなんか
軽く10ヵ所以上はある
それでドッグフードだと…!

一体…一体
どっちが人間で
どっちが化物だよ…!

殺してと嘆願した気持ちが
痛いほど理解出来る…

ソファーを降り膝をつく
城の目線と同じ高さで
手を取り宣誓する

もう1人にしない
もう苦しませない
お前を助けたい、じゃなく
助けてやる…必ず!

回復したら一緒に行って
家の人と話をつけよう

お前を離したくないから…

No.205 10/05/08 01:57
㍊ ( wPNK )

城は唇を震わせ聞いていた

そして
何かを決意したかのように
初めて自ら鏡に抱き付いた

女の子より華奢で
か弱い体で力無く
鏡の首に手を回した

いつもの城なら
汚い臭いからと
絶対こんなことはしなかった

『城…?』
『鏡、お願いだ…。』

…お願い?
戸惑いを隠せない両腕を
細い体に回しながら
黙って耳を澄ます…

『俺の…父さんになって…!』

小さな小さな声だった

『そしたら【家族】だろ…鏡も俺も1人じゃなくなるよ…お願い…お願い…お願い…。』

唱えるように囁く

また涙が出る
まさか城の口から…

泣いているのを悟られまいと
必死に目を瞬く鏡

ズズッと鼻をすすった瞬間
城が体を離して顔を覗く

しまった…!と思いつつ
もうどうとも思えと
照れ笑いしながら返す

『あ~先に言うなって!俺が先に、息子になれ、ウチに来いって台詞で決めようとしてたのによぉ。本当、可愛い奴だよお前は(笑)!』

本当の血の繋がりのある
父親だと名乗る男と
正反対の台詞

城は今 心から幸せを感じた

No.206 10/05/08 21:07
㍊ ( wPNK )

鏡も1人なんだって
いつの間にか感じ取っていた

彼は1度も
自分の話をしたことは無い

バツイチで1人になったとか
そういう意味でなく
部屋を見回しても
妙に寂しさが漂う空間
違和感を感じていたんだ

鏡なら女が居ても当然なのに
大人の事情ってやつかと思い
突っ込むことはしなかった

仕事仲間と呑みに行くのも控え
俺の世話と家事と仕事で
忙しない毎日

確かに俺は
中1から発育不全に陥った体で
見た目は幼かったし
虐待によって
社会を学ぶ機会を閉ざされ
知能も普通より低かったから
小学の頃は
それでよく馬鹿にされていた

だから中学では
それを知られたり
馬鹿にされるのが嫌で
学校では必要最低限しか喋らず
人を近付けない様にしたが…

鏡の前では素の自分でいれた
彼もその差は分かっていた

俺を子供のように扱う鏡…
褒める時は褒め
叱るべき時は叱り
忍耐強く教え続ける

父親としての役割を
確実にこなしていた

鏡…
鏡のお陰で幸せなんだ
俺の気持ちを
よく理解してくれてるから

だけど俺
鏡のこと何も知らない…

もうそろそろいいだろ
教えてよ

―城―

No.207 10/05/09 02:44
㍊ ( wPNK )

城はそのまま目を閉じ
呼んでも目を覚まさなかった

今がチャンス
城には悪いけど知る必要がある
起きてる時には
絶対見せたくないと言うだろう

泥だらけの体を拭きながら
傷の一つ一つを記憶する

少し気になっていた部分…
破けて汚れたジャージを脱がせ
尻、足の付け根
太股から膝裏辺りを見る

不自然な指跡
無理矢理足を広げさせる様に
抑え付けた跡
腰周りにも付いていた

やっぱり…!
やっぱり糞ッタレ共は…!!

多分間違いなく
性的虐待も受けている…

汚い事もやったと喚いた時
まさかとは思ったが…

一番繊細で難しい部分を…
どこまで化物なんだ…!

簡単に皮膚移植が出来るなら
全て交換して
綺麗にしてやりたい…
あいつら…
会ったらタダじゃおかないと
怒りだけを抱きながら
新しい服を着せ
城を布団に寝かせた

怒りで暫く寝れず
ソファーで横になり
やっと眠りについた

No.208 10/05/09 08:40
㍊ ( wPNK )

翌朝日曜日

『鏡!!』

ソファーから落ちた
開かない目をやっと開けると
城が顔を真っ赤にしながら
癇癪を起している

『見ただろ…!』
『何…何を…。』
『服が変わってる…見ただろ、勝手に…体見ただろ!』
『(あぁ、そのことか)…見たって言うよりお前泥だらけだったし。起こしても起きないから、体拭いて着替えもしといた。感謝しなさい、お父様に。』

重い体を起こして
ソファーに寄掛かる
城の怒鳴り声が頭に響く…

『勝手に見るなよ!バカ!誰が父さんだ!』

そう吐き捨てると
テーブルに頭をついて
大人しくなってしまった

『昨日の今日で親父役クビなの俺(笑)。ジャージ取り替えただけだって。布団汚れるだろ?パンツ見たか。そのままだろ。』

チラッとズボンをめくって確認する

『…本当だ。』
『可哀相な俺(笑)。もう朝か…具合悪くないか?腹減ったろ。何か食おう。』
『…うん。ごめん。』

久々に城の相手をすると
大変だがやっぱりどこか楽しい
目玉焼きを作り出す

内心
こんな癇癪持ちにさせたのは
あいつらのせいだと
城の家庭を恨みながら…

No.209 10/05/09 11:26
㍊ ( wPNK )

『…よく家の奴出て来なかったな。それだけが奇跡だ。』
鏡はしみじみと思い返す

『土曜はジジィ仕事忙しくて遅い。男は夜仕事で早目に出た。ババァは多分買物。』

目玉焼きを冷ましながら
ゆっくりと少しずつ…片側の歯で食べながら答える

『口も切ってんのか。』
『逃げて転んだ。』
『…いつ逃げた?』
『一昨日の夕方。』
『一晩その格好で外に!?』
『…。』

こんな寒い中…
本当によく生きてたと思う

『体が体じゃなくなった。だから鏡にさよならって言ったんだ。心の中で。そこで車の音が聞こえた。鏡だって気付いて起きた。』

鏡は黙ったまま聞く

『鏡がくれた地図は見付かって捨てられた。でも印付けないでって言っただろ。だからここバレてないから安心して。電話しなきゃって分かってたけど、走れなかった。ご飯じゃなくて犬のエサとかもあったからかな…ふざけてるよ、アイツら。』

淡々と語る城

印を付けると
また地図がゴチャゴチャになって
辿り着けなくなるから断れたんだと思っていた

誰に教わった訳でもないのに
何て賢い奴なんだ…!
驚嘆した

『俺のが今殺意湧いてる…。』

No.210 10/05/09 12:49
㍊ ( wPNK )

『ここ出て行ってすぐ見付かったのか?話せよ。心配どころじゃなかったんだ。』

泣きっ放し!の一言を思い出す

『殺そうと思って…ナイフ買って乗り込んだ。でも失敗して捕まった。ジジィと男に沢山殴られて繋がれた。昔飼ってた犬と同じ名前付けて返事するまで殴られた。逆らうとすぐ、タバ…タバコ…タバコを…。』
微かに震え出す…

『…うん。その次は。』
鏡が上手くフォローする

『昼は男が苛めて、夜はジジィが…家に誰も居ない時…おっ、俺を…。』

鏡は祖父が性的虐待をしていたのかと確信した

『…。』
城も黙ってしまった

『どうやって逃げた?』
『臭いから、臭くなるからってシャワー連れてく時…首輪外されるのその時しかないから。その辺の道具で殴って…逃げた…。』

よく話したと言わんばかりに
城の頭を撫で立ち上る

『よし!男の中の男だ。それでいい!でなきゃ俺も助けられなかった。褒美に今日、良いものをやる事にした。』
『…何?』
『部屋(笑)!』
『俺の部屋?マジで?』
『食ったら手伝えよ(笑)!』

城はやっぱり…
やっぱり笑いはしないが
嬉しそうに目玉焼きを平らげた

No.211 10/05/09 17:50
㍊ ( wPNK )

ギターやアンプ、コンポを中心に
服や使わない家具等が
無造作に置いてある部屋

『ここを全て君に与えよう!』
『…本当に?住んでいいの?』
『住んで…は変だろ。使っての間違いだな(笑)。』

鏡は少し屈んで目線を合わせる

『城。お前はもう住んでる。ここは俺とお前の【家】。その中のこの場所がお前だけの【部屋】。今ここの荷物を俺のベッドの横に全て運ぶから。それが終わったら家具屋行って机とベッド買ってやる。』
『俺も行く。』
『…お前昨日死にかけてたんだぞ?具合悪くなられても困るから居てくれ(笑)。』

城は生意気に溜息をついて
鏡に言い返した

『…俺の机とベッドでしょ。俺が選ぶ。鏡は買ってくれればいい。』

鏡は城らしくない態度の大きさに驚きながらも
こいつ相当嬉しいんだなと
城に満面の笑みを向けた

『分かった。そうします(笑)。…だから、もう勝手に出て行くなよ。ここがお前の居場所だからな!』
『分かった。そうします。』

城が心なしか
少し笑った気がした

No.212 10/05/09 18:41
㍊ ( wPNK )

1時間もかけずに荷物を移動し
城に掃除機を渡す

床の寸法を計りメモして
家具屋へ向かうと
日曜で割と混んでいた…

城は少し物怖じ気味で
俺の後ろに隠れる様に歩く

ベッド、机、電気、時計、ラグマットを選ぶ

ベッドと机は後日宅配しますと言われ城は酷く落ち込んだ

じゃあ今すぐ持ち帰れる簡易組立式ベッドにするかとなだめ
机は流石に車に積めないからと
我慢させた

家に帰り休憩して
何だか面倒臭くなり
ベッドは明日やってやると言ったら癇癪弾が炸裂した

大ダメージを受け
瀕死の状態で組み立て設置する

ラグマットも敷き
言われた場所に時計も掛けた

終わった…
一気に疲れが出て
休もうとソファーに腰掛けた途端
城に呼び出された

ベッドを窓際にしてと言う…
またマットを除け
簡易組立式のくせに
重いベッドをせっせと動かす…

飯は出前
風呂に入って城の部屋を覗くと
早速気持ち良さそうに寝ていた

疲れが飛んだ気がして
俺も寝ようと寝室を開けたら…
運んだ荷物に埋もれたベッド…
一気にまた疲れが出る…
もう…ソファーでおやすみだ…

No.213 10/05/09 23:55
㍊ ( wPNK )

朝仕事へ行く準備をする鏡
城が起きてきた

『おぅ!どうだ、眠れたか?』
『うん。…ソファーで寝たの?』
『片付けないとなぁ~俺のベッド周りも…。帰ったらやるさ。』
『俺やってやるよ。』
『(ギターがヤバイ…)いやいやいや!ウン!気持ちだけで充分です!ありがとうございます!』
『…そう。』
『そういや、お前ケーキ種類問わず食えるのか?』
『ケーキ?多分。』
『そうか、ま、とりあえず仕事行くわ。何かあれば電話な。』
『うん。』

鏡が去ると
パンと牛乳を用意し新聞を広げ
TVをつけて食べ始めた
傍らには
国語辞典と漢和辞典

学校へ行かないなら
自分で少しでも文字を覚えろ

そう言って
辞典の使い方を教えてくれた

一見行儀悪いが
新聞とTVのニュースを照らし合わせ
内容を詳しく理解する
城なりの勉強方法だった

分からない文字や記事は
鏡が帰ったら聞く
そうして知識を増やしていった

No.214 10/05/10 08:22
㍊ ( wPNK )

『城君だっけ。どう?』
トオルが持ち掛ける

『どうもこうも土曜の出来事が幻の様に元気だって。俺が付いて行けねぇ(笑)。』

久々に見る鏡の笑顔に
皆が安堵する

『ケーキ買ってやれば?』
『クリスマスとかどうでもいいけどな。ケーキ食った事無いんじゃないかと思うとさ。』
『どこまで酷い家(笑)。』
『そこまで酷い家さ。サワ、虐待してねぇだろうな!』
『してませんよ。信じられない話すよねー。』
『年末年始はどうするんだ?』
『帰らないで一緒に居るさ。年明けて落ち着いたらあいつんちに乗り込む!』
『マジ?』
『…引き取るの?』

『…。そのつもりなんだよ。断固拒否られたらどうすっかなぁって考え中…。』
『どうって…。』
『鏡さんだもんな…。』
『やっちゃうだろ、勿論。』
『やっちゃうな(笑)。』
『俺が?何やるって?』

『乱闘!』

皆が討論し出す

体力馬鹿だから
頭脳戦は無理だろ
口じゃ敵わないし
3分持たずに手が出るな
留置所面会行かないから…

テメェらなぁ!と笑いながら返す
この仲間達にも救われた

いつか城に会わせてやろう
世の中
悪い奴ばかりじゃないって…

No.215 10/05/10 12:51
㍊ ( wPNK )

好きな部分から好きに食えと
鏡は小さいホールケーキを渡す

ユウナの家で食べたケーキとは
全然違う大きさと形
目を丸くして真ん中から食べた

当たり前の事が
当たり前じゃなかった生活

素で驚く城の反応が
いちいち新鮮で
次々と教えてやりたくなる

今年ももう終わる…

12月31日
仕事を早く切り上げ帰る

今年は忘年会も初めて不参加
仲間内の新年会は
城を連れて来いと皆が言う
行けたら行くと返事して
城が待つ家へ向かう

玄関のドアを開けると
届けられた城の机が封鎖し
中へ入るのに苦労する

城が不機嫌そうな顔で
部屋から出て来て言う

奥まで運ぼうとしたから
勝手に入るなよって怒ったんだ

こういう重いのは
直接部屋まで持っていってもらって良かったんだぞと苦笑いし

心で泣きながら
鏡はまた1人でせっせと運ぶ

言われた所に置くと
中学生の部屋らしくなった

城は何度も座ったり立ったり…
感情を出さなくとも
行動ひとつで喜び具合が分かる

そんな姿が
いつも鏡を癒してくれた

No.216 10/05/10 18:07
㍊ ( wPNK )

TVをつけると
カウントダウンまでどうだの
来年はああだの
毎年変わらぬ騒ぎ様

晩飯を食った後
城はお気に入りの部屋から
全然出てこなくなった…

『…寂し過ぎる!』

鏡は我慢出来なくなり
城の部屋を覗きに行く
コンコンと控え目にノックをしてから
ドアを開ける…

『おーい。』

鏡の部屋から持出した車の雑誌
ベッド一杯に広げながら
大の字で天井を見詰めている

『どうした?調子悪いか?!』

慌てて近付き覗き込むと
首を振って起き上がり
口を開く

『鏡。どうしてそんなに優しいの。俺、何も出来ない…何も無いから。』

いつかのやり取りを思い出す…
『まだ気にしてんの(笑)。』

『いつもいつも、何か出来る事探すんだ。鏡は沢山助けてくれたから…。掃除や洗濯は家に居れば当たり前の事だろ。鏡は仕事してるし。体も心も言う事きかないからいつも何も出来ないし返せない…。もう少しで体も良くなって心も落ち着くっていう時に、アイツらに捕まる。またすぐ体を動けなくさせられる…。だから悔しくて自分を…。』

城のベッドに腰を掛け
まだ城が話し終わらない内に
答える

No.217 10/05/10 19:51
㍊ ( wPNK )

『そんな事考えるな。お前が気に入ったんだ。逢う度、泣きながら俺だけを頼るお前が可愛くて喜ぶ顔が見たいから。居てくれるだけでいい。それだけで充分癒されてる。ここに居てくれるならそれがお返しみたいなモン(笑)!』

城はあぐらをかいて
鏡の隣りに座り
うつむいて両手で頭を抱える
何か考えているような…

『…どうしてバツイチなの?どうして家族と離れたの?離れなきゃ1人じゃなかったよ。』

鏡はドキッとした
いつか聞かれるだろうなぁと
覚悟はしていた

『あぁ…まぁ…ウン。そうだなぁ。父親としての役割が果たせなかったって言うのかな。実はお前くらいの息子が居る…。』

城は鏡を見上げた
鏡は本物の
【お父さん】だったんだ…

妙な嫉妬感が生まれた

鏡が本当の
父さんだったら良かったって
ずっと願っていたのに
既に誰かの本物の父さんかよ…
またうつむいて頭を抱える

『俺、鏡の子供の代わりなの?同じくらいだから?それで居て欲しいの?…そんなの嫌だ。』

城には鏡しかいない
いつか鏡の子供が会いに来たら
居場所がまた無くなる

どうしよう…

No.218 10/05/10 20:29
㍊ ( wPNK )

何だかよくある恋愛ドラマの
ワンシーンみてぇだなと思い
誤解される前に打ち明ける

『城は城。確かに俺の子と同じくらいで親近感は湧いたのは事実かもな。でも違うから。ちょっと待ってろ。』

鏡は一旦部屋から出て
自分の寝室へ行き
数枚の紙を手に戻ってきた

溜息混じりの口調で城に渡す

『…見てみ。』

手紙やメモ…
1枚1枚開く…
悲しそうな顔で鏡を見上げた

鏡も何とも言えない顔で
苦笑いしながら城を見る

『鏡…これ子供の字?』
『そう。酷いだろ(笑)。』

手紙やメモに書いてある文字…

お父さんが死にますように
一生呪うからな
嫌い嫌い嫌い大嫌い
仕事でおちてしまえばいい
かえってくるなクソオヤジ
いつも念を送るのに
死なないしぶとい!

…まだまだある…

『どうして…?子供、どうしたの…鏡。』

眉間にシワをよせ立ち尽くした
鏡の目から涙がこぼれていた…

No.219 10/05/11 07:52
㍊ ( wPNK )

『…ハッ!涙…不覚(笑)!』
城の机からティッシュを2、3枚取り
鼻をブシュッとかむ

『お前と居るから泣きベソ移っちまった(笑)。』

そんな鏡を見て
城は手紙やメモを掻き集め怒る…

『鏡はクソオヤジじゃない!死んだら俺、困る!家族になったのに、また1人になる!鏡は好きだ…鏡の子供のがおかしい!』

掻き集めた物を床に投げ付ける

その様子を嬉しく思いながら
床の紙を拾い
また城の隣りに腰を降ろす

『城。その紙が証明している様に、俺は全然良い親父じゃなかった。』

ゆっくりと初めて
自分の事を話し出す…

No.220 10/05/11 10:51
㍊ ( wPNK )

俺、歳離れた兄貴いてさ…
そいつがまた糞真面目で
全然反り会わなくて

俺の自由奔放な学校生活に
いちいち口出してきて
鬱陶しくてよく喧嘩してた

親も別に嫌いじゃなかったけど
兄貴の肩ばっか持つから
いい加減
家なんてどうでもよくなって

ダチとつるんで
毎晩毎晩
ろくでもない事ばっかやってた

鏡クン格好いいネ!なんて
女の子に言われる度
すぐ調子乗る性格だから
連れ回してエッチしてポイして
次の女と遊んだり

気に食わない奴には
すぐ手足出してたし
警察にチョッカイだしたり
いやもうホント…
若かったから許してください
そう謝りたくなる様な
よくいる10代の糞坊主でした

18歳の時に
遊びで寝た女とデキちゃって
息子が生まれた

仕方無いから籍入れて
鳶ならそこそこ日給良かったし
就職したんだ…

何だかんだ言っても
子供は可愛いと思って
ちゃんと稼いで金入れてた

No.221 10/05/11 11:22
㍊ ( wPNK )

結局遊びで一緒になった嫁だ
愛とかなんてあるワケも無く
ただ子供居たから
割り切って住んでた
金入れりゃいいと思って…

子供は母親寄りに育つモンだし
親父なんて存在薄いだろーし
構いたい時だけ構って
育児は全くノータッチ

仕事で疲れてすぐ寝たり
仕事の同期や昔のダチと
遊びたくて帰らなかったり
そんな毎日で
嫁サンにもよくヤキ入ってた

…え?ヤキ?怒られてたんだ、要するに(笑)

小学校上がったくらいかな…
仕事から帰っても
嫁サン全く家事育児しなくなって
ダチ家に入れてワイワイ騒いで
それがしょっちゅうでさ

俺も仕事終わって疲れてんのに
頭きて文句言ったら…
女ってホント強ぇーよ…

ふざけんなって
アンタに言われたくないって
原爆落ちて致命傷負った

飢え死にさせるワケにいかないし
嫁サンぐうたらしてる横で
飯作って洗濯して世話した

けどお互いストレスも溜まって
限界きて
毎日出て行く出てけの大喧嘩で
子供は2の次にしてた…

今思えば
息子なりに必死に泣いて
止めに入ってたんだけどな
邪魔くせぇって押し退けて
怒鳴り散らしてた…

No.222 10/05/11 12:14
㍊ ( wPNK )

それでも何とか
一緒に住んではいたけど
もう俺も帰るの嫌でさ…

別に作った女の家に行ったり
わざと2人が寝るのを待って
深夜に帰ったり
顔合わさない様にしていた

…この辺までなら
よくある話だろ?

ある時
息子が遅くまで起きててな
俺の所に来て

お父さんもっと早く帰ってきて
お母さん冷たく当たるからって
言いに来た

そこで話を
聞いてやれば良かったんだが…

八つ当たりしてんのかあの女
その程度にしか思えなかった…

話すのも顔見るのも嫌だったし
何も考えず言った…

お前よ、もう高学年だろ
情けねーこと言ってねぇで
そんくらいテメェで解決しろ!
ウジウジしてばっかで
誰に似たんだよ
あいつの話持ってくるな!
ったく気分悪りぃ…
俺寝るからあっち行け!

…名前で呼んでやった事も
そう無かったし
息子の性格も未だに知らない

引き籠ってる根暗な奴で
嫁がそう教育したんだ
俺に責任は無い!
ずっとそう思ってたからさ

で、息子を可愛いとか
大事だとか
そういう気持ちも無くなってた

No.223 10/05/11 14:19
㍊ ( wPNK )

で、朝になって
日曜だし昼前に起きたら
嫁サンが珍しく話しかけてきた

部屋から出て来ないって…

昨夜の事思い出して
そこでも馬鹿な俺は

夜中俺に怒られたから
どうせふてくされてんだろ
放っとけって言って
飯食おうとしたんだ

嫌な予感するからって
しつこく催促するから
苛々しながらドア叩いた

返事も無いし音もしない
この糞ガキって…
脅すつもりでドア蹴破った

寝てんのかよって
出鼻くじかれて
叩き起こそうとして近付いたら

手首血だらけで…

どこから手に入れたのか
睡眠薬まで飲んで…

幸い知識無かったみたいで
睡眠薬も2、3錠だけだったし
…まぁ全部飲んでも
死にはしないんだけどさ
手首もちょっと深かったけど
問題無い程度だったから
手当てして寝かせといた

…反省したさそりゃ

後々聞いたら
学校でも苛めに合ってるって
学校も家も嫌いだって
小学生が言うんだから

気付いてやれなくて
反省して
嫁サンも俺も考え変えて
息子中心で生活する様にした

でもなぁ
やっぱり難しいわ…

No.224 10/05/11 14:44
㍊ ( wPNK )

冷たく当たられようが
いつも傍に居たのは母親で
父親の印象は最悪だったんだ

平気で子供の前で
浮気相手と電話…

帰って来ない…

勉強教えてって言われても
疲れてっから母チャンに聞け!…

休みの日はダチと
車いじってばっかだったから
どこか連れてってと言われても
危ないし邪魔だから居ろ!…

構って欲しくて甘えてきても
TVや携帯見ながら
適当にあしらってた…

嫁サンとは口を開けば喧嘩
息子が見てるのに
1度手をあげた事もあった…

他にも
そんなつもりじゃなかったが
傷付けてたと思うよ

…ハァ…俺って最低…
後悔してももう遅い
深い深い傷だったんだなぁ

3年前 離婚した
息子の要望で…
荷物全部引き払って消えた

そして…
そしてだな…

仕事から帰ってガランとした部屋
テーブルの上に
綺麗に梱包された箱があって
息子の字で

お父さんへって書いてあった…

内心喜んですぐ開けたさぁ…
驚いたなんてモンじゃない…
箱一杯にな…(笑)

No.225 10/05/11 15:18
㍊ ( wPNK )

『これ…。』

鏡の手にはさっきの手紙やメモ
城はまた鏡を見上げた
他にも沢山ある…

何でぼく作ったの
どうして帰ってくるの
お母さんいじめんなよ
さがさないでね?
息子とかいうな
一生反省しろ!

お父さん?なにそれ、そんなのなくてもお母さんいれば育つよ、お母さん大好き!

永久にさようなら鏡矢

『…鏡…。』

No.226 10/05/11 18:18
㍊ ( wPNK )

『べっ…別に泣いてないからな、俺は!』

顔を上げて
心配そうにジッと見る城に慌てて反応する

『…子供は嫌いじゃないんだ。ただやりたい放題やり過ぎたんだよ。親父になった自覚が無かった。愛も無い嫁とやってくのも難しかったし…まぁこれは言い訳だな(笑)。』

城は手紙を何度も読み直しながら聞いている

『自殺計った後、反省もして考えたんだけどさ。あんなんで死のうとする根性が気に食わねぇって気持ちもどこかにあって…根暗な性格、叩き直してやるって違う方向に行ったんだ。苛めもそれが原因だって。甘やかしたら駄目だなって。余計酷い事してたかも。躾し直しだ何だって…。その結果がソレ。』

鏡は城のベッドに仰向けになり
また思い返す

相当怨恨招いたなぁ俺
小学生なのに
人への憎しみ恨み
学習させちまった

『こうやって時間が経って色々考えて考えて…やっと過ちに気付くけどもう遅い。あの時は何が悪かったのかもいまいち分からなくて別れたから…箱に手紙はショック…人生最大のショックだった…丁寧に包装して喜ばせて…突き落とす…一番俺にショック与える方法…考えたんだろうな…。』

No.227 10/05/11 18:52
㍊ ( wPNK )

鏡の声が震え出す…
泣きそうな顔を見られたくないから横になったんだと
城は気付いていた

『俺もいつか分かるかな。何で嫌われてるのか。』

鏡は返す言葉が見付からず
黙っていた

『鏡はさ…また子供に会いたいって思う?自分の子供だろ?』
『…いやぁ…もう…ここまでされたら諦めるし。俺を嫌っただけで、支障無くどっかで元気にしてんならいいかな。今更。』

城が振向いて鏡を見る
泣いてはいないようだ

『俺、居るしね。寂しくないだろ?1人で嫌なこと考えなくて済むよ。』

鏡は起き上がって笑う
こいつに励まされるなんて…

『そんな事で引きずってた所にお前が現れた。何かを背負いながら1人で一生懸命生きてる感じがして…放っとけなくて絡んだ。息子と同じくらいなのに、突っ張って大人びて生意気で…1度会っただけなのにずっと気になってた。』

『…誰もいなかったから。』

『2度目偶然見付けた時は喜んださ。なのに余計ボロボロになってて。不思議と悲鳴が聞こえた。助けて欲しいって。だから追った。』

No.228 10/05/11 19:45
㍊ ( wPNK )

『ここに連れ込んで、知れば知るほど…酷い内容だけど手助けしたくなった。いつも1人で泣いて走って。そして結局、こんな俺だけど…信じて頼って鏡!鏡!って名を呼んで…放っておけるワケが無い。お前が居ないと頭の中でそればかり響く。だから…。』

鏡もあぐらをかいて
城の前で向き合う

『何もしなくていいから。居てくれ。傍に。な?それだけでいい。城。お願い…お願い…お願い…(笑)。』

唱えるように囁く

『真似すんなよ…!』
城の耳が瞬時に赤くなり
初めて叩かれた…

このままでは
城はいつまで経っても
堂々と外を歩けない
捕まる心配をし
虐待行為にひたすら怯え
生きて行かなければならない

だから年明け早い内に闘うんだ
…糞ッタレ共とな

城 俺に教えてくれ
大人が無慈悲に付けた傷
大人の手によって癒せるか
お前達はそんな大人達を
許してくれる日が来るのか
俺に機会をくれ

絶対奪ってやるよ…!
お前の笑顔を見たいから…

No.229 10/05/11 21:39
㍊ ( wPNK )

除夜の鐘が響く…

『もうそんな時間か?』
鏡が手紙を片付ける

『鏡は頑張ったんだよ。』
手伝いながら城が言う

『頑張った(笑)?』
『アイも無いヨメサンと10年も居たから。それは子供の為でしょ。ヨメサンが育児しなくなった時はちゃんとご飯や洗濯したし。自殺しかけた時は手当てしてあげたし。方向間違っても、何とかする気だった。鏡はお父さん役が下手くそなだけだったんだ。』

…手を止める

『俺は知ってる。鏡が良い父さんだって。今は俺の父さんなんだから、この紙は気にしなくていいんだ。もう勝手に出て行かないし。ずっと居るから。嫌な話聞いてごめん。』

抱き締めたくなる
こいつは…
でも嫌がりそうだから
やめておこう…

『…肩の荷が降りた。良い息子を持って幸せです。ありがとうな。』

『家に行くの、いつ?』
『3~5日あたりかな。』
『何て話すの。』
『考え中だよ(笑)。虐待内容についてがなぁ…。切り出しも。ま、その場で上手くやる。心配すんな。』

城は少し考える

『後で紙と書く物貸して。』
『…?分かった。』

No.230 10/05/12 05:42
㍊ ( wPNK )

元旦
特別何かやる予定も無い
城が外へ出たがらない以上は
どこへも行く予定も無い
9時くらいかな
もう少し寝ていよう…

鏡がまたウトウト寝入りそうな時
着信が入る

『…ぁい…。』
半分寝ぼけながら携帯に出る

『鏡さん?寝てた!?オレ!』
『(オレって)誰だよ…。』
『トオル。あ、やっぱ寝てた(笑)!?悪りぃ。』

朝からテンション高い
昨夜呑み遊んだんだろう

『今日どうせ暇だろ?遊びに行っていい?サワも実家帰らないって言うし(笑)!』

暇って決め付けんなよ
暇だけど
ちょっと待て何時に?

『や…今日?い…居るけど…。何…。』
『良かった!じゃあ夕方。ついでだから泊めてもらうかもしんない(笑)!じゃあな。』

『いやオイ、待てっ…まっ…。』
切られた携帯にまだ話し掛ける

ああそぅ
夕方ならいいけど
酒持ってくるの忘れんなよ
…って

『え?今日?!』
目が覚める

毎年の事だし
来るのは構わないけど…
城が居るんだぞ今年は!

起きて居間へ行くと

城が寝癖の酷い頭で
TVを見ながらパンを食べていた

No.231 10/05/12 08:27
㍊ ( wPNK )

『おはよう!カワイコチャン!』
『カワイコチャン?何?』
『…いや、何でもない(笑)。』

ここ数年1人だったし
新年年明けというのもあって
妙な新鮮味を感じる

城の隣りに腰掛けて
一緒にTVを見る
タバコは城の前では絶対吸わない

何気に城を見る
細い細い首や手首、足…
傷跡は少々薄くはなったが
見ただけですぐ分かる…

腕を取り袖をめくる
『何!?』
『チェック。』

アームカットの跡
新しい傷は無いようだ
『やってないから!』
『あ、そ(笑)。』

少しふてくされて
腕を引っ込め背中を向ける城
幅の無い小さい背中…

『お前って体重何キロ?』
『知らない。覚えてない。』

確か体重計あったよな
探し出して埃を払い
乗ってみろと置く

42…
男の160cmで42kg…

じゃああの日
外で見付けた時は30キロ後半…

『痩せ過ぎ?』
『ちょっとなぁ~…沢山食って太れよ(笑)!』
『うん。』

朝飯もなるべく
作ってやらねぇとなぁ

『鏡は何cm?』
『178。あと2cmで180行ったのに…畜生ッ!!』
『180がいいの。』
『別に。何となく…。』
『…。』

No.232 10/05/12 11:28
㍊ ( wPNK )

城は鏡の腕を見る

『どうやればそうなる?』
『そう…?』
『俺の体、いつか男っぽくなる?力無いし、汚いし、全然男っぽくない…。腕、貸して。』

鏡はシャツの袖を肩までまくり
城のあぐらの上にドンと置く

自分の2倍はある
引き締まった腕

鏡はわざと肘を曲げ力を入れる
力こぶが盛り上がる

『凄ぇ…!』

叩いたり突っついたり
両手で抑えたり…
小さな子供と同じ反応

思わず両腕と片足で締め付ける
痛い!バカ!痛い!と喚く城

反応を楽しみながら
ゆっくり力を抜く
『何すんだよ!痛かった!』

…本気で怒られた
でもどこか照れて嬉しそうな顔
鏡の顔付きも穏やかだ

『今日夕方、トオル来るって。』
『ここに?』
『新年のご挨拶をしたいらしいよ(笑)。』
『トオルだけ?』
『あー…分からん。来てもお前を知ってる奴だけだから。』
『…部屋に居る。』
『(やっぱりなぁ…)けどな、城。お前を探した時に俺らを手助けしてくれたのはトオルだから。礼は言えよ。それからなら部屋にいてもいい。』
『…分かった。』

素直に育ったモンだと
勝手に自分を褒め
部屋へ着替えに移動する

No.233 10/05/12 14:28
㍊ ( wPNK )

引籠ってばかりもどうかと
近所のスーパーは嫌だろうから
ドライブがてら隣り町の店へ
買出しに連れて行く

酒や肴、惣菜を買いレジに並ぶ
城がさり気なく
カゴに車の雑誌を入れる

『そんなに車好きか(笑)?』
『うん。バイトしてたし。いつか買う。』

鏡の部屋の雑誌は
気付けば全て持ち出されていた
城の机に並べてあったのを
思い出す

家に帰って
トオル達が来る前に掃除する

城の表情がどんどん暗くなる…
話しかけても反応が薄い

まぁ嫌なら部屋に籠るだろうと
割きってそっとしておいた

トオルとサワの2人なら
その内慣れるだろ…

5時
『鏡さん今年もよろしくー!』
トオル達がやって来た

鏡は引いた…
トオルとサワだけだと思ってたのに

いつも一緒のメンバー2人も来た
更にはサワの妻子まで…

『ここはお前らの実家じゃねぇんだぞ!元旦くらい帰れ!』
と冗談混じりの様で
本気で言う

(6人…あー…嫌な予感…。)
『お邪魔しまーす!』

ワイワイガヤガヤ
一気に賑やかになった

No.234 10/05/12 22:50
㍊ ( wPNK )

居間に通すと
ソファーで寝ていた城が
起きて固まっていた
蒼白な顔をして…

『おっ、城君こんにちは。』
『ちぃーす!』
『こんにちは~。』
『鏡さんコレ酒置いとくよ!』
『セイ君ていうのか!初めまして!オレは知ってるけど!』

急に人口密度が高くなる

何…?何で?
こんなに来るなんて聞いてない
見るな…見るなよ…!

皆が見ている
段々パニックに陥る…

鏡は申し訳なさそうな顔で
城に謝る

『あー…城。すまん。』

皆は何故謝るのか分からない
適当にコートを置き
城の隣りや床に座り出す

鏡には城の表情が変わり
汗が滲んでいるのが見えた
睨んでいる様にも見える

『城君、元気そうだな。』
トオルが声を掛ける

『セイ君、よろしくなぁ。』
『セイ君てどうゆう字?』
『城だよ城。なぁ鏡さん!』

袖を伸ばし襟を立て
傷を見られない様に
小さくなる

見んな…見んなよ…
俺の体は汚れてる…
近付くな…臭いから…

自然と植付けられた
否定的な感情が甦る

No.235 10/05/13 07:56
㍊ ( wPNK )

全員酒を手に乾杯する
鏡が惣菜をレンジで手早く温め
テーブルに並べた後
すぐに城の隣りに座る

皆が仕事がどうだの
誰々がああだの騒いでいる時
小声でトオルを責める

『…多過ぎだって馬鹿野郎!』
『スーパーで会っちゃって…。』

懸命に手首の傷跡を隠し続ける
その様子が辛い

サワの子供が奇声を発する
1歳くらいだろうか
とにかくよく動く

城の関心は
そっちの母子に向いたらしい

そういえば
城の母ちゃんの話も知らないな
知る由も無いけど
消えたままみたいだしな…

何かあったらあった時だ!
呑もう!

鏡も話に加わり盛り上がる

純真無垢で
愛情一杯注がれた子供
人懐こいのかニコニコしながら
玩具を振り回したり舐めたり
真っさらで汚れの無い肌
皆の周りをおぼつかない足取りで歩き回っては
母親に呼ばれ
抱き締められる光景

何かドス黒い気持ちが
沸き上がる…

トオルの方を向き
この前ありがとうと
早口で一言述べると

『退けよ!』
鏡の足を思い切り押し退け
部屋へ消えて行った

No.236 10/05/13 11:21
㍊ ( wPNK )

『痛い…。カカトで爪先踏んで行きやがった…。』
『城君どしたの?』
『何かヤバかった?』
『気にすんな(笑)。人が苦手なだけだから…。』

トオルが気まずそうな顔をする
『仲間内の新年会でも、店だと城君来ない気がしてさ。だからここに来たってのもある。やっぱ気になるって…色々見てきたしなぁ。』
『そ。鏡がどう面倒見てるかなとか(笑)。変な事してないかとか!』
『何だよ、変な事って。大体なぁ、お前らも来るなら来るで電話の1本でも入れろよ!俺今年1人じゃないくらい知ってるだろって。』
『10秒かけて練りに練った驚かそう作戦だったから。』
『短ッ。要らねぇしそんな作戦(笑)。練るな!』

城はベッドに座り窓を開けた
部屋が一気に冷え込む

考えても仕方無いことだけど…
俺も生まれた時は
少しでも喜んでもらえたのかな

自分の体が
あんなに綺麗だったことはない
あんなに笑ったこともない
どうして同じ人間なのに
こんなに違うのかな

母さんに大事にされて
…羨ましい

些細な事で心がドロドロになる…
自分が嫌になる…

いつか俺の
体も心も
綺麗になる時が
いつか…来るのかな…

No.237 10/05/13 14:32
㍊ ( wPNK )

城の話になる

『鏡さん、どうすんの?』
『どうって…。』
『養子にすんのかい。』
『それしか無いだろ。俺もあいつ無しじゃ無理。寂しいモン!』
『モンって…(笑)。』
『相手の家に何て言うんすか?虐待してるだろよこせって?』

そうなんだよ…
どう切り出せばいいんだ
いつもそこで悩む

『郵便受けに手紙とか考えたんだけどな…城君は預かってます、会いたければ…。』
『完全誘拐犯だろ(笑)!』
『会いたければ100万用意しろ!…か(笑)。』
『ただでさえ見た目ろくなことしそうにないのに。』
『テメ…スーツがいいかな!?』
『娘さん、嫁にください!みたい(笑)。』
『スーツより超ロン。』
『スーツと超ロン。』
『スーツとメット。』
『スーツに腰道具。』

皆一斉に笑い出す
ヒトが真剣に悩んでんのに…
でもこいつらと話すと
自分1人じゃないって
プレッシャーが軽減する

…ありがたい

『虐待って信じられない。城君、細かったよね…。手も首も。服着てるからあまり目立たないけど。びっくりしちゃった。』
サワの嫁が
悲しそうに自分の子を見る

『さっき怒ったの、ウチら見てかもね。』

No.238 10/05/13 17:52
㍊ ( wPNK )

『ま、母親とか自分より小さい子と関わった事ないから(笑)!感情的にもなったりはするさ。しゃあない。』

空気が重くならないように
笑ってごまかす

『そういや菓子買ってきたんだけど食べるかなー。何も口にしてないんじゃないの?』

すっかり忘れてた

『私行ってみようかな。』
サワの嫁が笑う

それもアリかもと皆が賛成する
鏡は反対する…

『言ったろ?人、駄目なんだ。受け付けない。あの腐れた家のせいで普通の15歳じゃない…感情コントロール出来ないし小学生くらいだから。酷い言葉浴びせられるかも…やめた方がいい。俺が行くわ。』

『そうなんだ…。今それ聞いたから大丈夫(笑)。何かあったら鏡さん助けに来てください。ちょっと話すだけ。』

サワには勿体ないくらい
しっかりした嫁だと
皆が感心する

『じゃ、ハイ。鏡さん、ウチの子よろしく!』
『旦那じゃなくて俺なんだ!』

子供を預け
城のもとへ向かった

No.239 10/05/14 08:19
㍊ ( wPNK )

『城君、お菓子買ってきたんだけど食べて欲しいなぁ。』

ノックしながら話しかける
返事は無い

『城君?お腹空いたでしょ?他にも色々持ってきたから。開けるね。』

居間で聞耳を立てる男性陣
とりあえず潜入成功かと
盛り上がる

鏡が落ち着かない様子で
立ち上がると
トオルが引き止めた

もう何をやり取りしているのか
聞こえない…

城は机に向かって
何か書いていた様子で
彼女の姿を見た途端
瞬時に紙を裏返した

幼い雰囲気の少年とは全く別の
冷たい表情
目付きも鋭くなる

『あ、勝手にごめん。反応無いし心配で開けちゃった。これ美味しいから食べて。』

警戒心を少しでも和らげようと
笑顔で近付く

裏返した紙にペンを置き
椅子で片膝を立てたまま
菓子を机に並べる彼女を
睨み付ける

『早く出ていけ。』
『え?』
『早く出ろっつってんだよ。』
『そう、怒らないで。さっきはごめんね。私達見て嫌な気分になったんだよね…。』

(そんなのもういいから出ろよ…早く…向こう行け…俺の部屋だぞ…)

フンと壁の方を向く
彼女も負けずに話しかける

No.240 10/05/14 11:56
㍊ ( wPNK )

『サワ、ドア少し開けて来い。』
鏡が子供と遊びながら
顎で城の部屋を差す

『鏡さん心配しすぎ(笑)。』
『心配だってそりゃ。お前ら城を知らないからそんな余裕なんだよ。』
『じゃあジュース取って。』

そう言ってジュースを持ち
すぐ行動する
ノックして返事もしない内に入る

『これも飲みなぁ。ハイ!』
ドアを半端にしたまま戻る…

車や趣味の話をしている
城の返事は曖昧だ

子供が突然
ママー!ママー!とグズり出した
慌てて鏡があやすが
泣き出す始末

『今行くからー!』
『あぁいいよー!こっちで俺見てるから!』
鏡が慌てて返事する

…それが良くなかった

城のドロドロの気分が
また沸き起こり
口に出る

『取られた…。』
苛々した様子でペンを転がす

すぐに嫉妬してると
分かった彼女は
城の傍に寄り屈む

『じゃあさ、私が城くんと一緒に居るからもっと話しよ?』

大人の女の人なんて
こんな近付いたの初めてだ
鏡とは違う独特の優しい笑顔
1人の子供の母親なだけに
ユウナ達とは違う
母性溢れた穏やかな雰囲気

城の顔が赤くなる…

No.241 10/05/14 18:56
㍊ ( wPNK )

母親の記憶なんて殆ど無い
気にもならなかった

しかしいざ目の前に
接近されると動揺する
でも所詮赤の他人だ

一応鏡の知り合いだしと思い
仕方無く反応する

『俺話す事なんかねぇし。』
意地で突っ撥ねる

それでも話を繋げようと
何でもいい
知っている事でも
わざと話題を振る

『ねぇ、これは何?』
『…ルームミラー。』
『車の?外しちゃったの?』
『…鏡が新しいの買ったから貰った。』
『鏡さんとはよく出掛けたりするの?』
『…たまに。』

何を話したいんだよと
段々苛々し出す
取り留めの無い話題を振る彼女

…ウザい…

『子供の所行けよ、泣いてんだろ、大事にしろよ。呼んでんだよ。』
『あっ、そうだね…。』

それを言われたら…
彼女が諦めて立つと
城が呼び止める

『なぁ。』
『?』
『放置するくらいなら生むなよ。迷惑。』

『そんなつもりは…ちょっとグズっただけだから…。』
『ちょっとでも呼んでんだろ!行けよ!出ろよ!俺の部屋だぞ!』

突然の爆発に呆然とする
城も立ち上がって詰め寄る

『声を無視するなら生むな!他人に預けるくらいなら殺せ!迷惑なんだよ!!』

No.242 10/05/14 21:10
㍊ ( wPNK )

鏡が城の癇癪声を聞いて
ホラやっぱりな?と
凹んだ顔を向け
子供をサワに返そうとする
すると子供も癇癪を起こす

『あらら。鏡さんの事気に入ったんだわ(笑)。』
『城君、怒ってるな。』
『鏡、早く行け!』
『殺せって…。』

子供を抱きながら
様子を見に行く

『こらこら城。そんな言い方無いんじゃないの、か弱い美女に向かっ…。』

目を疑った
城は彼女の胸倉を掴んで
ベッドに叩き付ける様に倒す
キャッと悲鳴を上げて倒れる

『人に預けるなら殺せ!だから俺みたいに化物になるんだ!捨てるなら生まなきゃいいんだ!女なんてクソだ!!』

居間にいた皆も来る

『城!手ぇ離せ!』
鏡が片手で城の肩を引く

城の憎しみに満ちた目は
鏡と抱かれた子供を捕らえる
もう手に負えない…

彼女から手を離し
鏡に食ってかかる

『何やってんだよ!』
『なっ、何が!』
『何がじゃねぇよ!何も分かってない!バカ!鏡のバカヤロウ!』

細い体からこんな力があるとは
鏡すら想像していなかった

突然不意を突かれ
突進してきた城の力で
バランスを崩して倒れる
子供は上手く庇った…

No.243 10/05/14 21:53
㍊ ( wPNK )

サワが泣く子供を受け取り
居間に行く

『大丈夫?鏡さん…(笑)。』
『いや、笑う所?痛ぇよ結構…。城!何すんだ。危ねぇだろ、小さい子居たのに。』

今度はトオル達に矛先を向ける
『俺の部屋だ!あっち行け!』
『…城。』
『どうせ俺を見に来たんだろ!可哀相だって見に来たんだろ!帰れ!帰れよ!俺の家だぞ!』
『…城!』
『母親なんてクソだ!お前も行けよ!帰れ!』
『城!!いい加減にしろや!』

鏡が立ち
初めて一発…
加減はしたが…
頬を叩いてしまった

やっちまった!と
自分でも驚く
でも今回は他に無い!
そう言い聞かせ話す

『誰も言ってないだろ?そんな事…。な?違うか?』
『…。』

悲しそうな鏡の顔
泣きそうな城の顔

サワの嫁が起き上がり
立ち尽くす城を抱き締めた

改めて体の細さに内心驚く

『触るな…。』
『そう思っちゃうほど酷い人達に沢山傷付けられてきたんだもんね…。無神経な大人達で、ごめんね。』

背中が温かい…
鏡を睨みながら答える
『無神経…分かってない。』
『(俺?俺が原因なの!?)…ごめんな。』

城は必死に涙を堪えて
睨み続けていた

No.244 10/05/14 22:23
㍊ ( wPNK )

『城君、私達帰るから。決して見たくて来た訳じゃないから。城君の事を聞いて、もっと知って、鏡さんのお手伝いしたかっただけ。城君の気持ちもまだよく知らずに、突然邪魔してごめんなさい。』

城は鏡から視線を外し
彼女の腕を振り切り
ベッドに横になった

『城君、許してくれる…?』
…黙って頷く

『また皆で来てもいいかな。』
…暫く考えて頷く

『じゃあ、鏡さんの反省会を開いてきまーす(笑)。すぐ帰るから。ありがと。』
『…やっぱ俺なの!?』

そう言って皆を部屋から出した

居間に戻ると
皆が一斉にサワには勿体ないと
騒ぎ出す

鏡が肩を落として聞く
『城に睨まれた…なんで?』
『多分、ヤキモチ妬き。城君、鏡さんしかいないでしょ?ウチの子と一緒に現れたから。でもそう言えないし、自分でも分からない感情なのかな。私を子供の所に戻して鏡さんを離して…そう考えてる内に過去の事が甦ってあんな感じになったのね。』
『俺悪くないだろ。なぁ?』
『その感じが無神経って。』
『嫌われたなぁ(笑)。』
『えぇ!?』

鏡を激励しながら
皆は帰っていった
笑顔だったのが救いだ
トオルは残ったが…

No.245 10/05/14 22:54
㍊ ( wPNK )

『オレ泊まってくわ。』
『あー結構。是非そうしてください!酒呑も。相手しろよ。』

静かになった居間で
呑み直す

『いきなり押しかけてこんな事に…悪ぃ。』
『来るとは伝えてたんだけど、お前とサワくらいかと思ってた。以後気を付けるように!』

鏡が沈んで行く

『暴行されて泣いてる奴に…手を…手を…俺…絶対…手出さないって決めてた…のに…。』

顔を伏せ声を震わす

『やったもんは仕方無い。泣くなって…。』
『いや泣いてない。あのさ、出前取っていい?』
『泣いてないのかよ!紛らわしいんだアンタ(笑)!』

城は放心状態だった

突然の人口密度の上昇
鏡に対するドロドロの気持ち
女の人独特の不思議な空気
感情を剥き出したら
もう止められず
皆が不快な状況になる…

一気に疲れ切った

鏡の一発…
優しい鏡が本気で怒った…

ごめんなさい…
嫌わないで…
追い出さないで…
謝らなきゃ…

謝らなきゃ…

No.246 10/05/15 06:24
㍊ ( wPNK )

暫くして出前が届き
鏡の代わりに
トオルが受け取りに行く

一応城の部屋のドアを叩き
出前取ったからおいでと
一声掛ける

酔いが回って
ソファーに転がる鏡を起こすと
城が出てきた

トオルに警戒しながら座り
出前のカツ丼を食べる

城チャンごめんなごめんなぁ~と
いきなり抱き付いて
泣き真似をする鏡を
やめろバカ!酔っ払い!と
本気で振り払う城

トオルはその様子を
笑いながら見ていた

いじけてソファーで寝込む鏡の横で
トオルを気にしながら
黙々とカツ丼を食べる…

『城君。赤くなってる。』
トオルが頬を指差す
『…知らね。』
『ハハ。鈍い奴だから大変だろ。今、ずっと反省しまくってたから。許してやってね。』
『…。』
『後で部屋見せて貰っていい?車の雑誌、見たいから。』
『帰らないのかよ。』
『ウン、泊まる。』

鏡と同じくらいなのか?
正反対のタイプか…
妙に冷静で何を言い返しても
効きそうにない…
そんな気がした

No.247 10/05/15 16:57
㍊ ( wPNK )

食べ終えて部屋へ戻る
許可を出してもいないのに
トオルが勝手についてきた

少しふくれながらも
鏡と初めて会った時から
近くで何度か話したり
免疫があった為まだ平気だった

ドアを閉める

トオルは遠回しに話さない
単刀直入に遠慮なく聞く

『もう体何ともないの?』
『…雑誌見るんだろ。』
『後でね。鏡から話は聞いてるんだ。全部。』

全部?俺の話?
誰にも言わないって言った…
しかも全部かよ…
鏡も所詮…

握り拳に変わるのを見て
すぐ悟る

『鏡もね、苦しんでんだ。アレで。城君命だから。』
『…。』
『虐待ってさ、世間一般的に大変だね、可哀相だね、酷い話だね…それで終わってるけど、関わってしまった当事者達はそうなんですで笑って流せない苦労してる。君は勿論、鏡もさ。アレは自分から首突っ込んだんだけど(笑)。』

鏡も…それは…分かってる
ベッドに座るとトオルは城の正面
床に座った

髪は茶髪で後ろに流し額は全開
シルバーとブラックで統一したアクセが
首、手首、指、耳…
どこか中性的な雰囲気で
鏡とはまた違うタイプだが
口から出る言葉は
想像以上にストレートだ

No.248 10/05/15 17:38
㍊ ( wPNK )

『オレらね、仕事でもプライベートでも仲良いんだ。鏡はその中で、会社からも現場に関わる他業者からの信頼も厚い男でさ、オレら皆、何かと助けになってる。ミスも無いし正確だし、周囲のフォローも忘れない。そんな奴が君の行動、発言ひとつで毎回怪我の絶えないボケた泣虫のオッサンになるんだ。』

ベッドであぐらをかいて
また頭を抱え込む

『どれだけ君の事を大事にしてるか分かるよね?』
『…ハイ。』
『どんな理由があるにしても、家出して帰れない少年1人を養うのは容易じゃない。法律ってのも関わる。今の時点で警察や探偵が嗅ぎ付けて相手と話が通らなければ犯罪者になる危険性もある。それでも鏡は1人で、周囲に知られたくないという君の気持ち最優先で誰にも相談せず闘ってる。だからオレらは来た。今迄も見てきたし。君を知って鏡の手助けしたいから…サワの嫁も言ってたけど。そこは解って欲しいな。』

自分が居ても居なくても
鏡は苦しむんだろ
一瞬口に出しそうになる

トオルの言いたい事…
そうじゃない…

それを言うと自分はただの
捻くれ者な気がする

返す言葉が無い…

No.249 10/05/15 23:43
㍊ ( wPNK )

『城君を責めてるんじゃないよ。鏡がどれだけの覚悟で守りたがってるか知って欲しい。鏡みたいに毎日君と関わってないから、君の気持ち理解せずに今こうやって一方的に話してるけど。もっと信用していいよ、あいつの事。』
『信用…してる。』
『してないね。』

沈黙が続く
城の表情が冷めていく…

『明後日あたり話しつけに家に行くんだろ?』
『…。』
『人様の子を横取りするんだ。一方的に喧嘩吹っ掛ける状態だ。半端無いプレッシャーだよ。ハッキリ言って未だに悩んでる。家での君がどうだったか、家の人がどんな人なのかなんて知らないし。君を助けてやるなんて格好付けても、肝心の場所に肝心の支えがない。第3者のオレらが支えられるのは所詮両側。1番太い柱にならなきゃならないのは誰?』

城の回答を待つ

『分からない?』
『…俺…です…。』
やっと笑顔を見せたトオルは城の隣に移動する

『支柱がしっかりしてくれなきゃ、鏡は立ち続けられない。鏡に助けて欲しかったら、グラつくな。揺るがない君からの信用があいつの力になる。どうしたらいいかは賢い君が自分で考えろ。オレ、鏡ほど甘くない。上辺だけの信用は無意味。』

No.250 10/05/16 00:54
㍊ ( wPNK )

信用を掛けて
自分がやる事…何だろう

『話逸れるけど。何書いてたの?あ、オレ遠慮無いから(笑)。』
突然机の紙を見る

トオルには逆らえない…
そんな偏見が生まれ
止めもしない

『そっか、もう少しであいつ誕生日か!喜ぶわコレ。涙だけじゃなく鼻水まで垂らしそう。』

そう言ってまた紙を伏せ
城を見る

『城君。オレ鏡と付き合い長いけど…どんなイイ女捕まえた時より、君と居る鏡のが生き生きしてる。頼むよ。鏡が君を助けるには君の助けも鏡には必要。』
『…ハイ。』
『あと体の傷。火傷の跡も、もっと薄める事できるからさ。日に当てない様にしなよ。君は化物じゃなくオレらと変わらない人間。好き勝手言わせてもらったけど、オレは君の事、好きだよ。鏡が阿呆やって嫌になったらオレに言いな。泣くまで説教するから。口じゃオレのが上なんだ。じゃ、酔っ払いの相手してくるわ(笑)。』

鏡より強い人は
いないと思っていた…
トオルが上かな…

難しい課題出されたけど
心の暗雲は消え去っていた

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