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🔥理沙の夫婦生活奮闘記😤パート2️⃣😸ニャ~ン

しあわせいろ

レス383 HIT数 44519 あ+ あ-

モモンガ( PZ9M )
10/03/14 06:39(更新日時)

私の前には広がる風景があります


目には見えないけどそれは沢山の線となり形となり私のまぶたの裏で形になります


それが私にとって当たり前の風景だった


ずっとこのまま



この当たり前の風景の中で生きていくのだと思っていたよ



あなたと会うまでは




花の色も
海の色も
空の高さも



みんな知らなかった


音が香りが全てが指先を通って私に世界を



光を見せてくれた




目に見える光はどんな色ですか?




私の心の中にはいつも暖かい色があります



ねぇ




幸せってどんな色で描けばいいのかな…

No.1162024 09/08/31 02:16(スレ作成日時)

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No.51 09/09/08 10:54
モモンガ ( PZ9M )

『えっ


あ~ごめん

はい、これでいい?』



『うん、ありがとね』




ビックリしたが意外にも彼女達はすんなりと足をひいてくれた





何かもっと怖いイメージがあったのに…


店内に入ると望むが言った




『ああいう子ってね


あんまり人を見てないだけで意外と優しい子が多いんだよ



口でちゃんと説明したらわかるときもあるからことりも今度は自分で言ってごらん』



私は黙っていたが心の中では繰り返し頷いていた




しばらく店内を迂回して



『喉が乾いたから僕はアイスコーヒにするけどことりは?』


『私は…



小さい紙パックの野菜ジュースにする』

No.52 09/09/09 00:06
ピュアホワイト ( sHpfi )

>> 51 コンビニから出て、車に乗り込んだ二人


「ことりの硝子ってどんなの?」

ことり
「食器や花瓶、窓や 鏡かな?
冷たくて、落とすと割れやすいかな?」


「まだ、あるよ。
蛍光灯にびー玉、ハードディスク。
実は俺も初めてだったんだ。
ことりが危なくないように、ガラス工房に偵察に行ってきた
。ことりのことは、工房にもいってあるし、心配することないよ。空いてる曜日だから、ゆっくりできる。」

ことりは、心の中を見透かされているような気がして恥ずかしかった

そして、気遣かってくれる気持ちがうれしかった

「ありがとう。
嬉しいよ。」
ことりは、素直な自分に驚いていた

不思議だ
望といると気持ちがやわらぐ
そんな、素直な自分自信を段々と、好きなってきていた

色々なことを体験して、私も好きなことを見つけたい

あっという間にガラス工房に着いた

No.53 09/09/09 00:45
りん ( ♀ wGqSh )

望のサポートで車から降りて、工房へとゆっくり歩き出した……


工房に足を踏み入れると、ことりはびっくりした。


(……熱い?ここはガラス工房なのよね……?)

望のシャツの袖をきゅっとつかむと、望が説明してくれた。


『暑くてびっくりしただろ?ここでガラスを熔かしてるんだからな』


ことりは知らなかった……
ガラス製品がこんなに暑いところで作られているのかを――


ガラスはつめたいもの。

そんな先入観とのギャップに戸惑うことりだったが、やがて一つの疑問にたどりつく……



熱いガラスは触ることができない――。



わたしはどうやって、
ガラス細工を作ったらいいのだろう?

No.54 09/09/09 02:30
モモンガ ( PZ9M )

工房の暑さにびっくりしていると



『あんたがことりちゃんかい』



後ろの方から年配のおじさんの声がした



望くんの腕につかみながら振り向いた



『中村ことりです


今日は硝子作りをしてみたくて体験に参りました



ご迷惑をかけるかもしれないですがどうぞよろしくお願いいたします』



差し出した手におじさんは低い位置から手を差し出してきた



『よろしく、おじさんは尾崎と言います



尾崎のおっちゃんでいいよ



俺も今日はことりって呼ばしてもらうわな



早速だけどことり



おっちゃんはある障害をかかえています、それはなんでしょうか?



1、ブサイク
2、短足
3、貧乏



さてなんでしょう』



あたしはとっぴょうしもない質問に思わず吹き出してしまった



『そんなの障害じゃないじゃないですか



アハハ


それはただのコンプレックスだよ



ね、望くん』



隣で望くんも笑っていた



『なんやぁ笑ってばっかじゃ答えにならんなぁ…



じゃあ答え教えたろっかな~




正解は4番!


車椅子のおじちゃんでした』

No.55 09/09/09 03:32
モモンガ ( PZ9M )

『ことり


おっちゃんも障害者や



何も特別なものなんてもっとらん



あるのは『やる気』と『仲間』と『いい作品を作るぞ!』って気持ちだけや



ことりが思ってる不安ならみんながフォローするからな?



今日はことりにめちゃくちゃ楽しんでもらって硝子を好きになってほしい



OK?』




あたしは黙って小さく何度もうなずいた



『この工房の名前は【りらいふ】



もう一度生活を楽しもう



そんな気持ちで始めた工房なんだって




色んなところネットで探したけど尾崎さんくらい元気で楽しい先生もいなかったよ』




隣から望くんが優しい声で言った




『りらいふ…




素敵な名前ですね』



あたしが言うと尾崎さんの嬉しそうな声を出した




さっきまでの不安はどこにいったのか




あたしは


素直に伝えた




だけど望はこの時どんな気持ちでこの会話を聞いていたのだろうか




まさか



この時には




こんなにしめつけられるような恋も




あんなに暖かい望の手も




まるで砂時計のようにサラサラと



消えていこうとしてたなんて



思いもよらなかった

No.56 09/09/09 23:44
ピュアホワイト ( sHpfi )

尾崎のおっちゃんが
「ことり、じゃあ、何か作ってみるか?」
と声をかける


ことり
「お願いします。
と元気よく返事する

少し不安だったが、
好奇心が打ち消してくれた

おっちゃん
「じゃあ、望はことりを連れて窯の近くまできて。
危ないから、いいって所まで。
二人の好きな色は何や?」

ことり
「この間、行った海と真希くんのりんごの色…」
どんな色なんだろう


「おっちゃん、青と赤にするよ」

おっちゃん
「望は吹き竿を持って、ガラスの液に入れて、色をつけえ。そしたら、窯にいれて回す。
ことりは、竿を吹くんや。
ええか、慌てても怪我するし、遅くてもだめや。
二人の息があわんとな。
ほな、ええか」

望とことりは、おっちゃんに言われるまますると、ガラスは丸く膨らむ。

ガラスを冷やしたりカットする作業は、おっちゃんが手早く行う

No.57 09/09/10 00:07
ピュアホワイト ( sHpfi )

ことりと望は汗びっしょりになっていた

おっちゃん
「いいできや、お疲れさん。
休憩してな。」

二人はギャラリーの方へ案内され、涼む

風鈴の音がここちよい


おっちゃんが
飲み物を持ってきてくれる

おっちゃん
「あつかったやろ。
ゆっくりして。
今、飲んどるのが、さっきのガラスやで。二人の息がおうとるから、ええ色がでとる。」

二人の顔が赤くなる

ことりの心は、充実感であふれていた

No.58 09/09/10 08:12
りん ( ♀ wGqSh )

『いい作品ができたな』
望がことりに声をかけた。



ことりは両手でその形を確かめるように、愛おしむように撫でた。



『ありがとう望。
あなたのおかげで生まれて初めて人の役に立つものを作れたわ。




ことりの顔が上気している。自分でもそれがよくわかる……



熱気からか興奮からかわからない顔を望の声のしたほうへ向けて、


『ありがとう、
色を見ることはできないけれど、わたしにとっていいものが作れたとおもう。

こんなに楽しかったのは、本当に久しぶりよ。




初めて人の役に立つものを作ったことりは、この経験を通じて《人の役に立つ喜び》を知った。



 (わたしもこのコップのように人の役に立つことができるかしら……)

そう感じたことりは、勇気を出して望にいった。




『わたし、このコップのように人の役に立てる人間になりたい……
これからいろんな経験をして、いつか……』



望は黙って聞いている。



『望くんがいつもそばにいてくれたら、わたし出来そうな気がする……
だから――』



すると黙っていた望がことりの言葉を遮り、口を開いた。



『僕は――』

No.59 09/09/10 08:43
ちと ( ♀ QTTJh )

『僕は…ことりが思ってる程、いい人間じゃないよ』


『でもっあたしは!!』


私の言葉を遮るように
何かが頬に触れた

『冷たっ』


触れたのは

今2人で作ったグラスのコップだった


『冷たい?』

望が聞いてきた

でも

私の返事なんか待たずに望は話し続ける


『ことり、綺麗な色だよ』

『暗くて…冷たい…海の色だ』

コップなんかよりも
ずっと冷たい望の声


こんな声初めて聞いた

生きてきた中でも


初めて…


『の…ぞむ?』


怖い…知らない人みたいだ


怯える私に気付いて


望の肩がハッと揺れる

『ごめん、熱くて逆上せたみたいだ』


椅子から勢いよく立ち上がり



外の風当たってくるよ

と望は私の側を離れてしまった

No.60 09/09/10 09:01
モモンガ ( PZ9M )

あたしが工房の椅子に座っていると尾崎のおじちゃんが声をかけてきた


『ことり大丈夫か?疲れんかったか?』



わたしのほっぺに冷たいものが当たった


『きゃっ?


おじちゃん、びっくりさせないでよ』



『メンゴメンゴ


アイスや、食うか?』


おじちゃんが切れ目を袋にいれてくれた


『ありがとうね
いただきます』



『あれ?そういや望は?』


『あ…外の風に当たってくるって』



『そうか、ならいいんやけどな



なんか顔色悪くみえたからな



のぼせてしまったかなと思うて』



あたしはハッとして立ち上がった



おじちゃんが慌ててあたしの手をひいた


『ちゃうちゃう


ここが暑いからむせたんやろ


大丈夫や大丈夫や』



あたしはホッとしてもう一度席についた


入り口の方から爽やかな風が入ってくる


奥の熱気とは比べ物にならない



体で感じた空気


指で感じた熱気



心で感じた充実感




『歩み寄れば近づく』




それに気がつけただけ私はしあわせなのかもしれないな




ガラスのグラスに入りきらない幸せが


これからも続けばいいのにな

No.61 09/09/10 11:28
モモンガ ( PZ9M )

『それにしても

ことりはこれからどうするんや?


望から聞いたで


なんや家にこもって何もせんのやって?


気持ちはわかるけどそれはあかんよ


おっちゃんもな…

家族養って30年…


あと少しで娘の結婚式



そんな所でへまして現場から転落してしまってな



このざまだ



情けなくてな…


洋子の…あ、うちの娘な


洋子のあんな泣いた顔見るのは式場でって思っとったんやけどな…




それから半年して



うんと頑張ってリハビリも体力作り物したけど


結局これがワシの人生三本目の足になってしまった



でもな



ちゃんとバージンロードも洋子と手を繋いで歩けたし孫もだける



母ちゃんと並んで買い物したり支えてもらえばプールだって温泉だっていける



ことり



お前だってできるんやで



お前の目はみえんかもしれん



でもその代わりもう一個の目はしっかり開いとるはずや』



『もう一個の目…?』



『そや


心の目や



人間の中でいっちゃん綺麗でにごったらいかん目や




それがしっかり開いとれば大丈夫や』

No.62 09/09/10 12:44
りん ( ♀ wGqSh )

……心の目。
ことりは何となく目を閉じてみた。



生まれてから、両親にここまで育ててもらって、
甘えてばかりだったけど
今は感謝できる気がする。



そうやって少しづつ、心の目も育ってきたのかな……



わたしの心の目は輝いているのだろうか?



おっちゃんは”にごってはいけない目”って言ったけど、両親にわがまま言って勝手なことばかりしてきたわたしの目は、にごっているのではないか?



『ねぇ、おっちゃん、
両親に迷惑かけて、家に引きこもって、勝手ばかりしているわたしの目は、にごってるのよ……』


おっちゃんは、

『アホウ、親っちゅうもんは子供が元気で生きていてくれさえすれば幸せなんやで。
そんなちっちゃい事でなぁ、迷惑なんて思っとらんで……
ことりの心の目は、きっと澄んでて輝いとるとおもうで』



おっちゃんの言葉は、

ことりの琴線に触れた。



『ありがとう、おっちゃん。』



ことりはそういうと、

一粒の涙を流した――。



それは綺麗な宝石のような涙だった。

No.63 09/09/10 13:40
放竜痔 ( 30代 y9SM )

横レス申し訳御座いません
楽しく読ませてもらっています
ご質問が。こちらは作者さん数人いらっしゃるリレー小説ですか❓ハンネがそれぞれ異なることに気付きましたので
m(_ _)m

No.64 09/09/10 13:46
モモンガ ( PZ9M )

放竜痔さん🌱


ありがとうございます😺



はい


おっしゃる通りこちらは五人でのリレー小説になります



よかったら最後までお付き合いくださいね



ちなみに


しあわせいろ🌱感想レス



がありますので

よろしかったらそちらにもご意見くださるとうれしいです🌱


ちなみに参加作者は

りんさん
ピュアホワイトさん
ちとさん
ももんが

あとはインフルエンザでお休み中の

砂の城さん🌱です

No.65 09/09/10 14:41
ちと ( ♀ QTTJh )

ぐしゃぐしゃ

尾崎のおっちゃんが私の頭を乱暴に撫でた

『泣かんとアイス食べ』

こくっとひとつ頷いて私は一口アイスを食べる

モナカだ

冷たいバニラアイスに包まれる最中にさえ優しさを感じる

『おいひぃ』

また次から次へと涙が溢れてきた



望に嫌われたかもしれない…


私はきっと望に頼り過ぎてた


尾崎のおっちゃんの
いう第3の目を


心の目じゃなくて


望を

私の目にしようとしてたのかもしれない


『人はな、生まれてからぎょうさん間違いを起こす』


『でもな、何べんでも人はやり直せる』

『考える力も、時間もことりちゃんには沢山ある』

『何度転んでしまっても…考えて、立ち上がって』

『人として生きることを諦めたらいけん』



『おっちゃんなんて間違いだらけやぞ』
『デタラメでよぅ奥さんに怒られる』

がははっ!と大きく笑い
尾崎のおっちゃんは私の涙をタオルで拭いてくれた


『あ゛り゛がどぅ』


『顔ぐちゃぐちゃや』
尾崎のおっちゃんも泣いているのか笑い声が微かに震えている


望が帰って来る前に泣き止まなきゃ


私は上を向いて

アイスを一生懸命口に入れた

No.66 09/09/10 22:14
ピュアホワイト ( sHpfi )

望の足音がきこえる

ことりは、声とは反対側を向き、ハンカチで顔を慌ててふく


「ことり、一人にしてごめん。
ガイドヘルパー失格だな。」

おっちゃん
「そうや、お姫さんほっといて、どこ、ほっついとったんや。ことり、望に何かおごってもらい。」

ことり
「えっ
そんな…
気にしないで望くん
おかげで、おじさんからいろんな事を教わったの
おじちゃん、ありがとうございました。」
おっちゃん
「ことり、また、きいや。いつでも、 待ってるで。心配いらん、ことりなら、大丈夫や。望、頼むで。」
望がことりの手にふれ、ことりも立ち上がる

車にことりを乗せると、望は工房の中へおじさんと入っていく

望が車まで走ってくる

かちゃっ、ばん


「おじさん、お世話になりました。」

車は走り出し、手を振るおじさんが段々小さくなっていく

No.67 09/09/10 22:49
ピュアホワイト ( sHpfi )

車の中で、二人は違うことを考えていた


「ことり、希望の陶芸ではなかったけど、どうだった?」

ことり
「うん…
ガラスのイメージが変わったっていうか、いろんな事が見えた気がした。」

ことりは、幼い頃に初めて触った物の感動を懐かしく思いだしていた

望への新しい気持ちも加わり、ドキドキしていた

信号で車がとまる

「ことり、今日はごめん。」

ことりの手に小さな包みを渡す

「家に帰って開けてみて。」
望は恥ずかしそうに、頭をかいている

ことり
「ありがとう。大事にするね。」
と微笑んだ

信号が変わり、車は動き出す

ことりは、工房での望の暗い声を思いだしていた

No.68 09/09/11 07:59
モモンガ ( PZ9M )

『ただいま~』


玄関を開けると思いがけず明るい声が出迎えてくれた



『お帰りなさい!ことり、どうだった?』


『あれ?お母さん?
仕事は?今日はいつもより早いんじゃない?』


『だって今日はことりの作品が見れる日なんだもの


お母さんいてもたってもいられなくてね


早く早く

見せてちょうだいな』



お母さんがめずらしくあたしをせかしている



何だかおかしいな



『はいはい

ちょっとまっててね』




あたしは靴を脱ぐとリュックをおろしてそのまま後ろに倒れ込んだ



『まぁ

ことりったら』



お母さんがクスクス笑いながらあたしの腕をとった




『…お母さん』


『ん?なぁに』


『…ありがとう


今まだ…自分に自信がなくて…


どうしたらいいのかわからない気持ちがくすぶっていて…




でも

あたし





強くなるから



目が見えないなんて事に負けたりしたくない




本当は一番くやしいのはあたしじゃないもの…



お母さん


ごめんなさい…』




お母さんは黙っていたけれど


握った手には暖かい涙がいくつもあたっていた

No.69 09/09/11 08:10
モモンガ ( PZ9M )

『ことり…

ちょっと強くなったね…


お母さん嬉しくて涙がでちゃったわ』


そういうとお母さんはゆっくりと抱き締めた



何にもいわなくても伝わってくる



見えるよ



お母さんの気持ちが




まぶたの裏には暖かい景色がゆっくりと映っていた




それから少ししてリビングに移動するとあたしは『深い海の色』のグラスをお母さんに見せた



『素敵ねぇ、お母さんも通おうかしら…



綺麗な海みたいな明るい青



空の色ね



とっても爽やかよ




ことりの好きなサイダーみたいにシュワシュワしたイメージかしら』




『…そうなの?』


海の底のような暗いイメージをしていた望くん



あれは…何だったのかな?



望くんの色と私の色が違っていただけ…?



それとも…




『あら?



これはなぁに?

もうひとつ小さな紙袋があるけど』



『あ…それは…



いいや
お母さん開けてみて


それはお土産なの』


『あら素敵ねぇ


何かしら?』



お母さんの言葉が待ちきれなくてほほがにやついてしまう



友達の

それも男の子からなんて


はじめてのプレゼントだった

No.70 09/09/11 08:22
モモンガ ( PZ9M )

『あら可愛らしい』


明るいお母さんの声が更にはずんだ



『何?なんだった?


お母さん教えて』



その時縁側の風と一緒に綺麗な音がした


『チリン…チリン…』



『わかった!風鈴だ!!』



『正解~!


でもねとっても可愛いモティ―フよ



さわってみて?




ここが鐘のなる丸い形ね



その上に…



ほら、わかる?


『…なんだろう?


ん…鳥…?


二つの羽…?かな』



『さすが!!


丸い胴体の上にね小さなことりが一匹とまってるの



ちなみに胴体の絵付けは四葉のクローバー



ことりは透明なブルーで


さながら『幸せの青い鳥』ってところかな?



素敵なお土産ね



よかったわね

ことり』




風がふくたびにチリチリとなるその音は



まるで望くんが


『ここにいるよ』って励ましてくれてるみたいだった



またくる月曜日がとてもまちどうしく感じた




目に見えなくても




心の目




ちゃんと見えてるよ




優しい気持ちが耳から


体から



全部を通して伝わってきた

No.71 09/09/11 22:17
ピュアホワイト ( sHpfi )

から~ん

シュワーッ

海の色のグラスに透明なサイダーを入れて、母が持ってきてくれる


「ことり、グラスを持って。
はい、どうぞ。」


ことり
「あっ、さっきのグラスよね。触ってすぐわかったよ。うん、おいしい。お母さんも飲んでみて、ほらっ。」


「本当、グラスでちがうわね。」

ことりは、サイダーを飲みながら、考えていた

冷たくて、壊れやすいとだけ思ってた
ガラス

そんなガラスに温もりを感じてた

私も、心があたたかくなるような、人に喜んでもらうような物を作りたい

ことりは、ワクワクしていた

窓から、やさしい風がふき、ことりの頬にあたる

風鈴の音がいつまでも響いていた

No.72 09/09/11 23:43
ちと ( ♀ QTTJh )

ねぇ…神さま


もしも私の目が見えていたら


青い空を見れますか?

白い雲を見れますか?

緑色の草木を眺め


赤く染まる夕日を見ることはできますか?

神さま…


もしも私の目が見えていたら


お母さんの顔を見れますか?

お父さんの顔を見れますか?



私は…

私の顔を見れますか?


私は…
大切な
大切な
彼の姿を
見たいのです




『望~!!』

聞きなれた車の音に
私は二階の窓から大きく手を振った

冷たい風が部屋に入り頬をかすめる

部屋の窓では
望からもらった風鈴が揺れていた


『ことり…のりだすと危ないよ!』


『だいじょーぶ』

窓を閉めて
リュックを背負い
急いで階段を降りる


月曜日と金曜日

望は忙しい日でなければ
私の所に来てくれる

色々な所に行った

時には家でたわいのない話をして過ごした


そんな
かけがえのない日々を過ごして
時は流れる…

12月

季節は秋から冬へと変わろうとしていた

No.73 09/09/12 03:49
モモンガ ( PZ9M )

『おい、ことり本当にいいのか?今ならまだ間に合うんだぞ?



やっぱりお前だけを置いていくなんて…』


『そうよ~
気持ちは嬉しいけどお父さんもお母さんも気になって旅行なんて楽しめないわよ

ねぇ~ことりも一緒に行きましょうよ』



12月もX'mas一週間前

私はあれから精神的にも経済的にも自立するために土日だけあのガラス工房でアルバイトをすることにした




とは言っても発送する商品の梱包やかかってくる電話の対応など簡単な雑務だけれど




私にはちいさいながらもとても大きな一歩だった



勤め初めてちょうど1ヶ月


送り迎えなどに協力してくれた両親に気持ちだけながらプレゼントを渡すことにした



生まれて初めて私が自分で得たお金はけして多くはなかったはずなのに



『さぼらずによう頑張ったな


えらいぞことり


電話の対応も凄くいいしことりはうちのマスコットやな



これからも頑張ってや』



そう言って手渡された封筒の中にはお給料とイチゴ味の飴が1つ入っていた

No.74 09/09/12 03:58
モモンガ ( PZ9M )

私はその中から2万円を引き出すと望くんに頼んで一泊の格安ツアーを探してもらった



初めてのプレゼントに何がいいのかずっと悩んだけれど



やっぱり旅行しか思い付かなかった



私が生まれてから


特にお母さんは片時も私の側から離れる事はなかった



つまづいては気をもみ


ぶつかってはかけより



出かける時はいつも手をつないで…


季節が変わるたびに

洋服のサイズが変わる度に



お母さんの手を離さなくちゃいけないのに



お父さんに寄りかかっちゃいけないのに



私は二人から離れる事ができないでいた



だからこれは両親への感謝の気持ちと同時にわたしにとっても小さな自立の始まりでもあった

No.75 09/09/12 23:11
ピュアホワイト ( 30代 sHpfi )

両親の旅行の日
バタバタ
母「火の元ok、お金、戸締まり、あっ、ことりが、いるんだ。ことり、大丈夫ね。何かあったらお隣りにも言ってあるから、着いたら連絡するわ。」心配そうに出掛けていく。ことりは、両親を見送り、家に入ろうとすると、望が現れる
「ことり、お待たせ。お父さん達は出掛けたみたいだね。じぁあ、出かけよう。」
ことり「どこに行くの?」
望「クリスマスの予行練習だよ。僕について来て。」電車や地下鉄を乗り継ぎ、ある建物に入る。中に入ると、床がやわらかく、大勢の人の声がする「ことり、コンサートは、初めてかい?中に、入ったら静かにね。階段や狭い所があるけど、僕がエスコートするからね。心配しないで。」2階の最前列にすわる。しばらくして、演奏者があらわれ、静かに力強い、ピアノを弾く音が聴こえる。聴いていて、心地好い。

No.76 09/09/12 23:20
ピュアホワイト ( 30代 sHpfi )

ことりは「確か、ショパンの曲よね。あとは、知らない曲。やっぱり、上手。」
演奏がおわるころに望が囁く。
「今日は、ことりが、一人前になったご褒美だよ。今までの曲を演奏してた人が、全盲だって信じるかい?」
ことりは、衝撃を受ける。しばらく、考えていた。
コンサートが終わり外に出る。
ことりは、何かを決心したような顔をしていた。

No.77 09/09/13 03:19
モモンガ ( PZ9M )

コンサートが終わりいつものように望くんの腕に捕まって家路に急ぐ



お母さんから『旅館についたよ』からはじまり『今からお風呂だよ』


お父さんからは『今なにしてるんだ?』
『料理もいいけどお酒もうまい』など


着信とメールで私の携帯はずっとコンサート中もブルブルしていた



私の親離れも問題だけど二人の子離れも大問題だな…



私は何だかおかしくなって電車を待つホームでクスクス笑った


『どうした?めずらしいよね、思い出し笑いなんて』



『ううん、何でもないよ


ごめんなさい


ねぇ、望くん


聞いた事なかったのが意外なんだけど望くんて何でボランティアなんてやっているの?



真希くんのお母さんの話だと高校生くらいからもぅ始めてるんだよね?



何か思うところがあったの?』



わたしの質問に望くんはすぐには答えなかった



望くんの体に緊張が走った気がした



触れてはならない話題だったのか…?



私は慌てて話し出した

No.78 09/09/13 03:31
モモンガ ( PZ9M )

『あ…ごめんね


ちょっと思ったもんだから、ごめんなさい…


理由なんてどうでもいいよね?人のために何かしたいって…気持ちが優しいんだよね』


あたしが言うと望くんは わたしの手を腕からはずしそっと手を握った




望くんの大きな手のひらからあったい音がする




このドキドキする気持ちはわたしのものなのか…




それとも…


望くん…?




まわりにいた電車待ちの人達が一段と増えてきた



人の声と電車の交差する音が間近に迫る




そのなかではっきり聞こえた望くんの声は穏やかで



そしてはっきり力強く私には聞こえた




『ことり…



僕はね優しくなんかないんだ



『人の為に何かしたい』



勿論そう思う気持ちに嘘はない



でももっと深いところで僕は



僕はね…『自分の価値』を見つけるために『証』を探しているんだと思うんだ』



『望くんの…証…?』




『そう


僕は本当は卑怯な人間なんだよ


ことり


がっかりさせてごめんね』




握った望くんの手にだんだん力が入ってくる



あたしはもう1つの手をそっと合わせて言った

No.79 09/09/13 03:40
モモンガ ( PZ9M )

『望くん



あたしだって凄く弱いよ



支えてくれる人を無意識に探してしまう



ダメなんだって思いながらも気持ちのどこかじゃ『だってしょうがないよ…』ってあきらめてしまう…




いつも強い完璧な人間なんていないと思う




だからみんながいるんだよ




望くんだけじゃないよ…?



きっとみんなが


少なからずどこか弱いよ



だから『卑怯』なんて言わないで?




本当に弱い人間は自分自信を『弱い』なんて認めないよ



私は



望くんが私のヘルパーで本当に本当に幸せだよ?



これから先も一緒にいたいよ




『私の目になる』



そう行ってくれたよね?』



私は話すだけ話すと不覚にも涙が止まらなくなっていた




理由はうまく言えないが



望くんが今どんな顔でどんな思いをかかえているか



わからない自分がくやしいのかも知れない…



そんな私の頭を望くんはポンポン撫でてくれた



それは今までで一番あったかい




優しい手だった…

No.80 09/09/13 03:53
モモンガ ( PZ9M )

しばらくして私の涙が止まるのを見計らい望は意外な言葉を口にした




『ことり…今から予定変更して


家じゃなくて海に行きたいんだけどいい?



この間、真希と遊んだ海




僕のはじまりの海…



今日はことりに聞いてほしい話があるんだ…』




お父さんとお母さんがいない日に…




ちょっと胸が痛んだけど



『私に話したい』



その言葉に期待と不安が膨らんだ



『うん…いいよ


連れていって?あの海に』



私が答えると望くんは海にいくよう電車を2つ乗り換えて




途中にバスにも乗った




おりたたみのはくじょうを持っていたが


握った手のひらの暖かさを話したくなくて私はあえて何も持たずに望くんについて行った




どれくらい移動したかな…




まわりに人の気配は感じなかった



バスが私たちの横を真っ直ぐと走っていく音がした



『気を付けてねことり


疲れてない?


海まであと100Mくらいかな



時間は今ちょうど夜の9時位



結構かかったね』




望が自分の首にまいていたマフラーを私の首にかけてくれた



『…あったかいね


ありがとう…』



私は望の方を見ながらお礼を言った

No.81 09/09/13 04:09
モモンガ ( PZ9M )

砂浜についた時にはもう海の匂いと波の音が静かに


力強く響いていた


昼間と違い砂も水も驚くほど冷たい



私は体操座りをしながら手をこすり合わせていた



『はぁ―っ…』



『こうすると空気が白くなるんだよね?』



私が言うと望が笑った



『ことりは物知りだな



ことりといると楽しい




元気になる




もっと早くことりに会っていたらよかったな』




そう言うと望くんは私の隣に腰をおろした



指先が自然に合わさって胸が暖かくなる



『望くん…?』




『…ことり



僕ね今の真希と同じ年の頃病気してたんだよ』


望くんがゆっくり語り出した



『それが初めてわかったときに僕はまだ9歳だった



体育の授業中突然体がだるくなって倒れてね




最初はただの貧血かと思っていたけどある日決定的な診断が下されたんだ』





押し黙るあたしをせかすように波の音が大きく聞こえた




『…なんだったの?』




望くんが沈黙の後少し明るい声で答えた


『ガンだったんだ



極度に免疫が後退しててね



ずくに入院だった



家族もしばらくは面会謝絶



凄くつらかったよ


よく覚えてる…』

No.82 09/09/13 11:22
りん ( ♀ wGqSh )

 『急性骨髄性白血病っていう病気になってしまったんだ』と望が言った。

『この病気はね、血液のがんって言われてて、死ぬ人も珍しくないんだ。
僕は抗がん剤治療をやって、必死に闘った。
でもそれでも寛解を迎えることが出来ずに、骨髄移植を受けることになったんだ――。


僕の場合は、幸いにも親類に骨髄提供者がいてくれて《骨髄移植》を受けることになったんだけど、そのときに行う抗がん剤治療は致死量を超える抗がん剤を投与するんだ。

そうして骨髄の中を空っぽにして、移植を受ける……。


ねぇ、そんなのって信じられるかい?』


ことりは望の気持ちを想像してみた。
健常者に生まれ育った望が、命の危険にさらされた時に何を考え、何を望んだのか?


でも目が見えない以外は健康そのもののことりには、望の辛さなんてわかるわけもなかった……。


 ただ人間は、自分にしかわからない悩みや辛い思いをそれぞれに抱えて生きている


『わたし自分だけが不幸で辛い……
そう思っていたの……

真希も望も、わたしの本当の気持ちなんてわからないって――。

でも、それが間違いだって気付いたの。』

No.83 09/09/13 22:07
ピュアホワイト ( sHpfi )

沈黙の中、波の音だけが聞こえる

ことりが、ゆっくり話しだす
「望のこと、全然わかってなかった。ごめん。私、自分の事しか考えてなかった。両親にも、甘えすぎてた。
今まで、卒業して、無駄な時間を過ごしてた事が恥ずかしいよ。
望や真希くん、尾崎のおじさん、色々な人に出会えて、しあわせだよ。
今まで、自分が一番不幸だって、思ってた。
当たり前に思ってきたけど、生きていくことの大切さが、痛いほど伝わる。」

望の目から涙がおちる

ことり
「望どうしたの?」

望は涙をぬぐう
「ことり、寒くなってきた。風邪を引いたら大変だ。もう、帰ろう。
ことりの人生だ。納得いくまで考えて、答えをだせばいいよ。
ぼくは、ことりが自分の足で歩きだせるよう手助けをする。
それが、僕の仕事。つまり、生きてる証なんだ。」
望はことりの手を取り、寄り添いながら、砂浜をゆっくり歩きだす

No.84 09/09/14 12:28
モモンガ ( PZ9M )

>> 83 帰りの電車の中望くんは言葉少なげだった



繋いだ手は相変わらず暖かいけれど私には望くんの表情が見てとれない



望くん…


今何を考えているんだろう…



ガンなんて…


いくら9才の時の話だからって



これからは…

再発の可能性はないんだろうか…



私は怖くてその言葉を口に出すことができなかった



口にだしてしまったら



望くんが私の手の届かないところへ消えてなくなってしまいそうな不安からだった




無意識に繋いだ手に力をこめる



『ん?ことりどうした?

眠い?

いいよ、もう乗り換えも終わったし


寝ていいよ

ついたら起こすからね』



優しい望くんの声に体が甘えてしまう




電車の心地よい揺れと



安心感から



私は望くんの肩に頬を少し寄せた



まわりのひとから見たら私達はどんな風に見えるかな?



仲のいい友達?


それとも兄妹?


それとも…



考えると顔が熱くなってきた




望くんの肩から顔をはずす



『どうしたの?重くないよ?』



『うん…でも』

No.85 09/09/14 12:38
モモンガ ( PZ9M )

『あ…だって

誤解されちゃう


ごめんね、気がつかなくて』



私が言うと望くんの声が明るく上がった



『ご心配なく


焼きもちやいてくれる彼女なんかいませんよ



そんなにモテないしね



どうすることり



ぼくが眉毛の繋がった髭だらけの男なら』


『えっ?望くんて眉毛がつながってるの?



冗談…だよね?』



望くんが声を上げて笑った



『さわってみる?


つながってるかどうか』




そういうと私の右手を自分の顔に近づけた



『これが頬


これが目



これが眉毛




どう?わかる?』



『…フフ



繋がってないね


普通の眉毛だった~』



二人して向き合って笑った



やっぱり望くんといると楽しい



優しい気持ちになれるもの

No.86 09/09/14 15:27
モモンガ ( PZ9M )

『ちなみに頭はこんな感じ』


触った手の感触は以外にも短くてちくちくしていた


『驚いた?昨日ちょっと切ったんだ


短いの今はやってるんだよ



エクザイルみたいな


知ってるエクザイルって』


『うん勿論


凄く綺麗な声の二人組でしょ?


お菓子のCMや歌謡曲で聞いたりするよ



あの声の人もこんなに短いんだね』



私は調子に乗って望くんの頭を撫でた



『こら、はずかしいから』


『だって…以外で可笑しいんだもの』


笑う私の前髪を望くんが器用に上げた


『綺麗なストレート


ことりのは、さらさらしてるよね

ことりはスタイルもいいし髪も肩くらいで綺麗だし



うちの大学だったらサ―クルにひっぱりだこだな



あ、そうだ


ことり


嫌じゃなかったら写メとってもいい?


うちのクラブの連中がことりを見たいってうるさくてさ



嫌なら勿論断って?無理強いするつもりはないからね』



『嫌…じゃないけど私一人でとるの?


電車の中だからはずかしいな』




そういうと望くんは私の頭を抱き寄せるようにした



『いくよ、せ―の』

No.87 09/09/14 17:45
りん ( ♀ wGqSh )

”カシャッ”

シャッターの音がした。


『わたし変な顔で写ってない?』

ことりは望に聞いた。


『大丈夫、大丈夫。
かわいく撮れてるよ』
と望は答えた。


淡い恋心を抱いていることりは、顔が赤くなるのを感じながら望の肩に身を委ねていた。



『ねぇ、わたしが見る夢ってどんな風に見えるかわかる?』



『えっ、夢?』


望はその質問の意味も考えずに、少しおどけるように答えた。




『うーん、そうだな……

僕がイケメンになって、ことりに告ってるとか。


そういって、ことりの方へ目を向けると、ことりは悲しい表情を浮かべていた……



『ん?どうした?』


望は事態が飲み込めずにいたが、ことりが口を開くことによって質問の意味を知ることになる。



『みんなの夢がテレビなら、わたしの見る夢はラジオなの……

こんなこと誰にも聞いたことがないんだよ。


望が好きだから……

好きだからわたしの嫌な部分も知って欲しかったの。

それなのに茶化すような言い方して――』



ことりは今にも泣き出しそうになり、望のシャツの端をにぎりしめていた。

No.88 09/09/14 18:06
りん ( ♀ wGqSh )

ことりの声が思いのほか大きかったのか、他の乗客が一斉にこちらをみる。



望は

『ゴメンな、ことり。
そんな意味があったなんて知らなかったんだ。
傷付けたなら謝るよ、ホントにゴメン』


と、ことりの両手を挟み込むようにして自分の顔の前に上げた……



するとことりは、

『……ぷっ』と吹き出して、可愛い笑顔を見せて望の方へ顔を向けた。



『怒ってなんかないわよ、ちょっとふざけてみただけ。

でも夢の話は本当よ。

望の声がわたしの夢に出て来たこともあるわ』



『それで?
僕の事が好きだって事は、ウソ?・ホント?』

望はホッとした面持ちで、ことりに質問した。




『内緒!
今は教えてあげない』

ことりは子供のような無邪気な笑顔でいった。



『お家の前まで送ってくれたら教えてあげる』


ことりはそういうと前に向き直り、何事もなかったかのように装う。



周りの乗客のほほえましい視線に全く気付くことなく……

  • << 90 『思ったよりいいおじさんで助かったな ことり大丈夫だった?』 『うん、ちょっとびっくりしたけど平気 ありがとうね 頼りになるヘルパーさんで自慢だね』 『いえいえ どういたしまして』 二人で笑いあう空気が何だか柔らかい 望くんといると自分がよく見える 弱いとこも強いとこも 意外と調子の良いことも これからもずっと一緒にいられたらいいのにな… 『あれ?望? 望じゃない?』 停車した駅から明るい声の女の子が声をかけてきた 『おっ、遥じゃんか なんだよお前こんなとこから』 『バイトだよ 今日からこっちの方でやることにしたんだ ケ―キ屋さん クリスマスまでのかけこみ需要かな? ってごめん 彼女…じゃないよね 『ことりちゃん』かな 昨日言ってた子だよね? はじめまして 私、井上遥 望と同じ福祉大学の一年です よろしくね』 そういうと私の手に自分の手を重ねてきた 『あ…はじめまして 中村ことりです 遥さん…ですよね よかったら座って下さいね』 あたしは空いている左側に手をおいた

No.89 09/09/15 09:32
モモンガ ( PZ9M )

>> 88 電車に揺られ何分位が過ぎただろうか



最終電車に近いからかお酒の匂いをさせた人達が沢山乗り込んできた



わたしが辺りを見上げていると一人の乗客が声をかけてきた


『よぉ可愛らしいお姉ちゃん

帰りの電車の仲間で彼氏とおててつないで仲良しだね~



おじちゃんともつないでくれない?』



酔っぱらいだ

どうしよう…



私がこまっていると望が答えた


『おじさんごめん


俺の彼女だからおすそわけはできないなぁ



悪いね』




そういうと望くんは私の体をわざと引き寄せて肩を抱いてみせた




顔から火がでるかと思った



心臓が




ドキン
ドキンと



波打っている




近づいた望くんからは



微かに爽やかな匂いがした



香水…?


整髪剤かな…




甘い匂いじゅないけどいい香り…



『あはははは…


ごめんな兄ちゃん

大丈夫だよ


彼氏の前じゃ手もだせないなぁ』



そう言うとおじさんは別の少し離れた場所に移動していった



『よかったね


これで安心』




望くんが優しく肩から私の頭をはずした



今望くんはどんな顔してるのかな…

No.90 09/09/15 10:08
モモンガ ( PZ9M )

>> 88 ことりの声が思いのほか大きかったのか、他の乗客が一斉にこちらをみる。 望は 『ゴメンな、ことり。 そんな意味があったなんて知らなかっ… 『思ったよりいいおじさんで助かったな


ことり大丈夫だった?』



『うん、ちょっとびっくりしたけど平気


ありがとうね



頼りになるヘルパーさんで自慢だね』





『いえいえ

どういたしまして』



二人で笑いあう空気が何だか柔らかい



望くんといると自分がよく見える



弱いとこも強いとこも



意外と調子の良いことも



これからもずっと一緒にいられたらいいのにな…




『あれ?望?



望じゃない?』




停車した駅から明るい声の女の子が声をかけてきた



『おっ、遥じゃんか

なんだよお前こんなとこから』



『バイトだよ



今日からこっちの方でやることにしたんだ



ケ―キ屋さん




クリスマスまでのかけこみ需要かな?



ってごめん


彼女…じゃないよね


『ことりちゃん』かな



昨日言ってた子だよね?




はじめまして

私、井上遥



望と同じ福祉大学の一年です



よろしくね』




そういうと私の手に自分の手を重ねてきた



『あ…はじめまして

中村ことりです



遥さん…ですよね



よかったら座って下さいね』




あたしは空いている左側に手をおいた

No.91 09/09/15 22:21
りん ( ♀ wGqSh )

『それじゃあ』
と遥は”右側”に座った。


(えっ?どうして右側に座るんだろう……
もしかして遥さんも望の事が好きなのかな?)


ことりは不安な気持ちになりながらも、そのことを遥に言い出す事ができなかった……



望と遥さんは、わたしの知らない話題を話していた。



まだまだ知らない望がそこにいた……



やがて降りる駅が近づいてきた。



望が
『ことり、次の駅で降りるよ。』
といって網棚からリュックを取ってくれた。


『ありがとう。
お母さんに迎えに来てもらうから、望は帰ってもいいよ。
わたしよりも遥さんを送ってあげて』

とことりは言ったけど、もちろん本心ではない。



望は心配そうにしていたが、そこに遥が口を挟む。



『ことりさんもああ言ってくれたから、せっかくだから送って行ってよ』


ことりは笑みをたたえて二人を見送り、電車のドアが閉まる音が聞こえると電車に背を向けた。



ことりの目から涙が溢れる。



力なく歩く後ろに立っている望の姿には気付いていなかった……

No.92 09/09/16 02:06
モモンガ ( PZ9M )

>> 91 …どうしよう


ああは言ったもののお母さんもお父さんも旅行中だったのをすっかり忘れていた…



『しっかりしろ


一人だって帰れるでしょ


もう子供じゃないんだから…』




涙を拭いながらとりあえず駅の改札口まで降りてみた




通いなれた駅のはずなのに傍らに誰もいないのはやはり怖い



特に今から誰もいない家に帰るのだ




不安じゃないわけない…



『意地なんかはるんじゃなかった…』




そう呟きながら駅員さんにタクシー乗り場までの誘導を申し出た



『お客さん、残念だけどタクシーではらっちゃってるわ



ほら、今ボーナスの時期だからタクシーにのって帰るおじさんばっかなんだよ



でもないと困るもんね~



お家の人は?
電話しましょうか?』



『いえ…大丈夫です


タクシー待ってますから



ありがとうございます』



丁寧に頭を下げると駅員さんは『外は寒いから』と暖かいお茶のペットボトルを差し入れして下さった




何だか嬉しい…




タクシー乗り場のベンチに座ると携帯を開いた




お母さんとお父さんに連絡しなくちゃね

No.93 09/09/16 02:14
モモンガ ( PZ9M )

携帯のリダイアルを押したが反応がない


困った



ひょっとして充電が切れてしまったんじゃないかな…



『どうしよう…

正真正銘大ピンチだ…』



手に持ったペットボトルで暖をとるも時間と一緒にだんだんと手の冷たさと変わらない温度まで変わっていった



『こないのかな…



どうしようかな…』



そうこうしているうちに駅の方からシャッターを下ろす音が聞こえてきた



まずい



駅に人がいなくなったら何かあった時に本当にどうにもならない




私は立ち上がるとはくじょうをカバンから出して道を確認した




『確かこっちの方から…』




棒をふりながら点字ブロックを探す



『こつん』



杖の先が何かに当たった




物なのか


それとも人なのか



一瞬たじろくも勇気をだして言った



『あの、ごめんなさい




もしもどなたかいらとしゃいましたら駅員さんの場所まで連れて行ってくれませんか?



…あの、私


目が不自由で…』

No.94 09/09/16 02:25
モモンガ ( PZ9M )

しかし相手からは返事かない



やっぱり物なのかな…



そう思いもう一度はくじょうをふった



『こつん』




やっぱりまた当たる



私はそこを避けて歩き出そうとした



その瞬間嗅いたことのある香りがした



(何の匂いだったっけ…)



立ち止まった瞬間に前から誰かに抱きすくめられた



何がおきたかわからず思わず手から杖を離してしまった



『やめて…!』



相手の腕を振りほどこうとするが力が強くてなかなか離せない



半泣きになっている私にその手は優しく頭を撫でてくれた



『この感触は…』



はっとして顔をあげると思わず頭を撫でた




ちくちくした坊主頭



『望…くん…?』



頬をさわると物凄い汗が吹き出していた



『まさか…走って引き返してきてくれたの…?



遥さんは?』




私はカバンから小さなミニタオルを取り出すと望くんの額からゆっくり汗を拭った



『…なんか喋ってよ


不安になるじゃない…』




私がそう言うと望くんはもう一度私を抱き締めた



さっきよりも


ちょっとだけ強い力で…

No.95 09/09/16 02:37
モモンガ ( PZ9M )

『ごめん…



ごめんな


ことり…』



喋らなかったんじゃない




喋れなかったんだ





望くんは息を乱して言葉を繋ぎながら荒々しく話した



『気になって…



やっぱり次の駅についてことりに電話したんだ…




でも携帯も通じないし…




いてもたってもいられなくて…』




そう言った望くんの背中は雨がふったかのかと思うくらい濡れていて




呼吸する肩は



全身で私を心配していた




どうしたらいいのかな…




こんな場所で


こんな場面で




神様ごめんなさい




私…うれしくて


幸せなんていったらバチがあたりますか…?



望くんが私の為に走ってきてくれたなんて



たとえヘルパーの責任感からだとしても嬉しい…



『ありがとうね…



でもそのままじゃ風邪ひいちゃうよ?』



巻いていたマフラーを望くんの首にそっとかけた




回した手を首にかけた時に望くんが不意に言った



『ことり



ごめん、俺もうことりのヘルパーできないや



こんなに




こんなに優しくて大切な子を




俺はもう『利用者さん』として見れない



ことりが好きだ



こんなこと言ったら困らせちゃうのにな



…ごめん』

No.96 09/09/16 07:14
砂の城 ( 30代 ♀ 5ECQh )

ことりは、嬉しかった。
凄く、凄く、ドキドキして嬉しい気持ちになった。


それと同時に、健常者と付き合えるわけない。
そう思う気持ちがグルグルした。


でも、今は…


望の『好き』という言葉で



ことりの全身は喜びに満ちていた。

No.97 09/09/16 12:41
りん ( ♀ wGqSh )

ことりは望と並んで歩けるこの瞬間がずっと続けばいいと思っていた。



望がわたしの事を好きだって言ってくれたこの瞬間が……



そんな事を感じながら歩いているうちに、皮肉にもあっという間に家に着いてしまった。



もっと一緒にいたい……
望と一緒にいたい。



でも……

望はどんなわたしが好きなんだろう……



『はい、玄関の前に到着しましたよ。
ことり様』

望がおどけるように言った。



ことりは勇気を振り絞って望に向かい合うと、


『今日はどうもありがとうね。それじゃあ約束通り内緒の話を教えてあげるから、耳を貸してくれる?』

といって、両手を宙に浮かべるようにした。



望がことりに近付くと、ことりの手に触れるように顔を寄せた。



ことりは望のチクチク頭から耳を探し当てると、顔を近づけ……



『望の事が好きよ』
というと、素早く望の頬にキスをした。



ことりにとってみると、
ものすごく大胆な行動だった。

顔を真っ赤にしたことりは、もう一度礼をいうと玄関を開けて中に消えた。



ことりは玄関のドアを背にして、緩む口元を両手で挟み込むようにした。

No.98 09/09/16 13:06
モモンガ ( PZ9M )

背中に望くんの姿を想像しながらそのままヘタヘタと背中から地面に腰をつける



生まれてはじめての告白に




生まれて初めてのキス…




一体いつから望くんの事が好きだったんだろう…



押さえた口元から言葉がもれる



『わかんないよ


わかんないけど…』



そのままヒザに顔を埋めて足をばたつかせる



神様




人を好きになるってこんな気持ちなんですね




お父さんやお母さんや




学校の先生や友達なんかとは全然違う




恥ずかしくて
嬉しくて
やるせないような
不安な気持ち…




こんな気持ちを『好きになる』って言うんですね



望くんも今こんな気持ちなんだろうか…



『コンコン』




背中越しにノック音がする



望くんだろうか




新聞受けをのぞくと向こう側からフ―ッ と息がかかる



笑い声の向こうから望くんの優しい声がした

No.99 09/09/16 13:21
モモンガ ( PZ9M )

『ことり


そのままでいいから聞いてて



中村ことりさん




僕はしがない福祉大学の一年生です




家族はサラリーマンの父とばあちゃんの三人に柴犬が一匹



名前はハナです



母さんは今別居中で中学の時から会っていません



僕はこれから四年間


福祉の勉強をしたあとに老人ホ―ムでリバビリを手伝ったりしながらこれからの人生を人のためだけじゃなくて



自分の為にも頑張って生きていきたいです




病気については正直再発するかどうか今の僕にはわかりません



だけど




早かれ遅かれその時が僕に迫ったときに



僕には戦う覚悟と


生きぬきたいと思う目標ができました



ことり




僕が君の目になるかわりに



君は僕の明かりになって下さい





君が側で笑ってくれていたら



僕は今よりきっと強く



強くなれます




僕は今のことりが好きだ



目が見えても見えなくてもきっとことりを好きになったと思う




ことり




生まれてきてくれてありがとう』





ドアの向こうの望くんの絞り込んだような声が胸の奥に優しく響いた…

No.100 09/09/16 13:39
モモンガ ( PZ9M )

ドアの向こうで望くんのハァ―っという声が聞こえてきた




緊張したのかな…





私は体勢を変えて新聞受けの向こうに声をかけた



『あの



加藤望くん




私は中村ことりです



サラリーマンの父と母の三人暮らしです



生まれてからずっと目が見えなくて


それが当たり前の中で生きてきました



自分が他の人とは違う『しょうがい者』なんだとわかったときに



みんなには『色』があると知って



外の世界に憧れる反面



生きにくいその『道』に涙もしたしくじけもしました



でも



でも…私も生きたい



みんなみたいに普通に道を歩いたり


手を繋がずに走ったり



『赤色』がリンゴの色だって見てみたい



望くんの顔が見てみたい…



ひっく…



ひっ…




何で…私なの…?




何で私は…好きな人の顔も見れないの…?



ひっく…



うっ…うっ…』


思わず声をあげて泣いた私に心配そうに望くんが声をかけてきた





『…ことり?



ちょっと開けて?』



私は黙ってドアを開けた



外には冷たい手の望くんが立っていた




思わず抱きついたその腕には冷たい粉雪がいくつかついていた

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