先生…‼
中学3年の4月🌸
新しいクラス、新しい教室、新しい教科書…。義務教育最後の年といえ、やはり学年のスタートは新鮮な気持ちになった。
そして、新しい先生。
ほとんどの先生方が昨年度の持ち上がりの中で1人、新しい先生が教科担任に加わった。
理科の高田先生。
初めて高田先生が教室に入ってきた瞬間、何とも言えない衝撃が走った…!!
私のリアルな経験を、のんびり綴っていきます。
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「おー安藤。お前と2人だけかよー。」
かったるそうに、ナオヤが言う。
「受かっても、あんたしか知り合いがいないなんて嫌だ。」
私も、同じ調子で答える。
「安藤お前受験番号何番だ?」
「△△△番だよ。」
受ける科が違うので、ナオヤとは全然違う番号のはず。
「ちょっと受験票貸せ」
「ん?なに?」
ナオヤは私から受験票を受け取ると、そのまま床にポトリと落とした。そしてあろうことか、上履きを履いた足でグリグリ踏みつけた。
「あ゛ーーっ!!」
ナオヤを突き飛ばして受験票を拾い上げる。
幸い破れてはいなかったが、足跡がバッチリついてしまった。
「何すんのよ!!」
「お前が落ちるように。お前と2人なんて嫌だからな。」
ナオヤはこういうわけの分からない男だ。
私は受験票の汚れを、消しゴムで丁寧に消した。
当日は小室哲哉全盛期。安室奈美恵、TRF、globe… 勉強の合間によく聴いていた。お小遣いは少ないので、CDは買わずにレンタルショップで借りてカセットテープにダビングした。
私が一番好きだったのは華原朋美。太っ腹な友達がいて、ある日突然「カナちゃん聴くならあげるよ~。」とシングル2枚をタダでくれた。
I belive
I'm proud
有名な2曲だ。カセットと違っていちいち巻き戻さなくてよいので、リピートして何度も聴いていたっけ。
中でも、I'm proudは大好きな一曲だった。
『I'm proud いつからか
自分を誇れるように
なってきたのはきっと
あなたに会えた夜から』
愛とか誇りとかよく分からないけれど、大好きな高田先生の励ましが、私に受験に向かう勇気ややる気をくれたこととダブらせて聴いていた。
今でも、歌詞を見ないでフルコーラス歌えそうだ。
いよいよ、卒業式&高校入試がやってくる。
卒業式2日前。
高田先生の授業は今日で終わった。
最後の授業は、教科書の巻末に載ってある『エネルギー資源特集』みたいなページだった。ようやく世の中に『リサイクル』『再利用』なんて意識が定着してきた頃だったのかな?
最後の終業の挨拶を終えて、高田先生が教室から出て行く。
…終わっちゃったな。
ハァーっと、ため息が出た。何だか力が抜けて、私はそのまま机に突っ伏した。ナオヤが何か思うかもしれないけど、どうでもよかった。
やがて、卒業式当日。
卒業証書授与、在校生代表送辞、卒業生代表答辞…
あぁ、義務教育終わるんだな…
やがて『卒業生による、卒業記念合唱』
フィナーレを迎えた。
『過ぎし日 思い出して
涙があふれてきた
いくつもの場面が
心を かけめぐる』
あちらこちらですすり泣きが聞こえてきた。
…三年間、本当にいろいろあったな。 ハルミちゃんとも、離れ離れになるな。
ラストの一年間は、やはり高田先生との思い出がいっぱい。
恋、友情、勉強…
泣いた日も悩んだ日もあったけど、中学校生活楽しかったな…
そして、卒業生退場。
在校生のリコーダーによる『マイウェイ』がBGMだった。
5組からの退場。先頭は、高田先生。
黒の礼服姿が凛々しい。その後ろ姿を目に焼き付けた。
好きで好きで、毎日見つめていた背中も、見納めだな。
泣きながら、高田先生への恋の卒業を思った。
これが、この恋の序章に過ぎないことなど、この時の私には思いもしなかった。
翌日、いよいよ高校入試の日だ。
約束通り、正門横の石碑で担当の先生、ナオヤと落ち合う。
「2人とも、健闘を祈るぞ!!」
体育の先生だけあって、熱いオーラで声援をいただいた。
…いよいよ、この日がきたんだ。
頭の中ではドリカムの『決戦は金曜日』が流れていた。実際は金曜日じゃなかったけれど。
ナオヤとは試験を受ける教室が違うため、さっさと別れて会場に向かった。
歩きながら、カバンの外ポケットに手を当てた。中には、高田先生からの年賀状が入れてある。
…先生、私がんばるよ。応援もらったから、前向きに立ち向かえるよ!絶対合格するから!!
緊張で朝食が少ししか食べられなかった為、席についた途端お腹がグゥ~っと鳴った。
…やばい
試験は順調に進んだ。苦手な英語と社会は勘に頼り、得意な数学と理科はスラスラ解いていく。
…なんか、手応えないな。
入試の問題って難しいと思っていたのに、ポンポン解けていくのが逆に不安だった。どの教科も30分くらいで終わってしまい、残りの20分間はひたすら見直しをした。
合間の休憩時間には、カバンを開けてコッソリ高田先生からの年賀状を見た。
こうして、筆記試験が終わった。
翌日は面接と小論文。
面接は持ち前の物怖じしない性格をフルに発揮してハッタリをかまし、作文は昔から苦手だったから小論文はテキトーに。
試験の合間に他中学の子何人かと仲良くなり、弁当も一緒に食べ、せんだみつおゲームまでして過ごした。
緊張感まるで無し。
試験って、いざ始まると緊張しなくなるもんだと思った。
入試の2日後に合格発表があった。
結果が張り出される前からたくさんの受験生とその親が集まっていた。
しばらく後、窓ガラスに一斉に結果が張り出された。
どよめきや歓声で辺りは騒然となる。この日は雨が降っていたので、前の人の差す傘でなかなか結果が見えない。
徐々に人がはけていき、ようやく見える所まで来た。
三桁ゾロ目のわかりやすい受験番号はすぐに見つかった。
「あった!!」
叫ぶ私。
試験当日に仲よくなった子とも一緒に抱き合って喜んだ。母のもとにも駆け寄り、合格したことを告げた。
しばらくして、雑踏の中からナオヤが現れた。
「お前も受かったなー。」
こいつは私の受験番号を知っているからわざわざチェックしたみたい。 私の母もいるので、いつものような憎まれ口は叩かず、少しの会話の後そのまま去っていった。
「カナの友達?」
母が聞く。
「今のがナオヤだよ。」
「今のがナオヤかー。けっこうイイ男やん♪」
…イイ男か?
その後、入学説明に教科書や体操服の購入手続き。
昼ご飯も食べずに、終わったのは午後3時近く。さすがに疲れた。
帰宅した私は、すぐに中学校に向かった。合否の報告を、可能な限り直にすることになっていた。
「失礼します。」
職員室に入ると、他校に合格した同級生が何人かいた。
担任の先生、他の三年生の先生、教頭先生や生徒指導の先生… もちろん高田先生もいる。
「Y高校合格しましたー!!」
湧き上がる拍手。
同級生とも喜び合う。
次から次へとそんな生徒が来るので、なかなか高田先生に近づけなかった。
しばらく友達や先生と雑談し、帰る頃ようやく高田先生と話すことができた。
「先生、今までありがとうございました。」
月並みな言葉しか出てこない。こうして話せる機会は、明日から無くなるのに…
気になっていたことを聞いた。
「先生、4月から学校変わるの?」
「ううん。来年度もココ。」
そう来たら返す言葉は用意してあった。
「じゃあ、また中学校に遊びに来てもいいですか?」
「おぅ。来いや。」
その言葉を聞き、また高田先生に会えることを楽しみにして私は校舎を後にした。
春休みに入った。高校からは宿題がどっさり出されていたが、憧れの高校に進学できる喜びに心が踊っていた。
両親からは、通学用の自転車を買ってもらった。4月からは、これに乗って片道約10キロの道のりを通うことになる。
暖かくよく晴れたある日、私は高校まで自転車で行ってみることにした。夏休みの高校見学の時は、迷わないよう大通りを選んで行ったから、かなりの大回りだった。
今回の目的は、近道を見つけること。そして…
そう、高田先生の家を見つけること。
おそらく、高田先生の家の前を通るとけっこうな近道になる。
「行ってきまーす!」
「はいー。気をつけてねー。」
母は、私の元気の良さの理由を、半分は分かっていなかっただろう。
私はピカピカの自転車にまたがると、颯爽とこぎ出した。
高田先生の家は、家族でよく行くショッピングセンターから少し奥に入っただけの所なので、土地勘はあった。
地図も頭に入っている。
ショッピングセンターへ向かういつもの大通りを、バイクショップを目印に右折する。
入ったことのない道。大通りと違い、静かな住宅街が広がる。
ドキドキしてきた。
「しばらく道なり。郵便局を目印に左折。三つ目の交差点を過ぎたら三軒目が先生の家…」
頭の中で何度も反唱しながらゆっくり自転車を走らせる。
…バッタリ高田先生に会ってしまったらどうしよう。
そう思うと、このまま違う道にそれようかと逃げたくなった。
でも、勇気を出して進む。
ドキドキドキドキ…
鼓動はどんどん速くなる。
郵便局を曲がる。
あとはまっすぐ行くだけ。
ドキドキドキドキドキドキ…
交差点を過ぎる。
一つ目、二つ目、そして三つ目。
三軒目の家…ここだ!!
そこには、明るいベージュの外壁の、新築のようにキレイな家があった。
姉の言う通り、一階の半分はガレージになっている。ガレージに車は停まっておらず、がらんとしていた。
…ここが、先生の家…!!
胸の高鳴りは最高潮を迎えた。
表札は名字だけ書かれた物ではなくて、家族全員の名前が載っていた。
『高田』の名字は見えたが、名前まで読むには自転車から降りて玄関まで近づかないといけない。
さすがにそこまではできない。
が、4人の名前が書かれていることだけは見てとれた。
…4人家族なんだ。両親と、先生と、あとは…まさか結婚しているわけじゃないよね!? 先生の兄弟でありますように。
ご近所さんに怪しまれないよう、何食わぬ顔してその場を立ち去った。
「おかえりー どうだったー?」
帰宅した私に母が聞いた。
まさか高田先生の家を見つけたことなんて知っているはずもないのだが、「どうだった?」の一言に一瞬ぎくっとなった。
「う、うん。10キロは遠いわ。さすがに往復は疲れたー! でも、わりと近い道を見つけたから。」
当たり障りない返答をして部屋に戻った。
さて…と。
私は机の引き出しからサイン帳を取り出した。サイン帳って今でもあるのかな?1ページずつバラして友達に配れるようになっていて、プロフィールとかメッセージとか書いてもらうやつ。
今みたいにケータイなんて無かったからプロフのサイトなんて存在しなかったのよ。
卒業前にみんなに書いてもらったサイン帳をペラペラめくる。ピンクのウサギちゃんにイチゴが散らばった、女の子すぎるデザイン。
その中に、ちゃんとしまってある大切な一枚。
なまえ★高田 浩之
先生の、やや丸みを帯びたくせのある字が、ウサギイチゴとマッチしている。
生まれた日 4月○日
せいざ☆ ○座
血液型 ○型
すきな子はいる?
白紙
すきなタイプは?
白紙
すきな芸能人は?
△△ □子
・
・
・
好きな食べ物
ハンバーグ
…誕生日まであとわずかだ!好きな食べ物ハンバーグって、なんかかわいい。
あのキレイな高田先生の家で、キッチンに立って先生のためにハンバーグをジューっと焼いている姿を想像して、にやけた。
そして高校の入学式を迎えた。
初対面でも以前からの知り合いのように話しかけられる私は、とりあえず後ろの橋本ミナミさんに声をかけた。
「中学校どこ?」
「家はどのあたり?」
「自転車?それともバス?」
他愛もない会話から、彼女は私とほとんど同じ道を通って通うこと、そして高田先生の近所に住んでいるということが分かった。
その日から、ミナミと私は一緒に帰ることになった。
変な所で小心者の私は、朝は高田先生の家の前の道を避けて通ることにした。
万が一、出勤する高田先生とすれ違ったりしたら大変だ。Y高校に行ける道はいくらでもあるのに、わざわざこの道を選んでいることがバレたら恥ずかしくて消えたくなるだろう。
なので、帰りだけ通ることにした。先生は帰りが遅いので、夕方に通れば出会うことはない。
では高田先生の家の前を通る意味があるのか?
………
好きな人の家なら、たとえ本人が不在でも通るだけでワクワクするものだ。
ミナミとは途中まで一緒に帰る。
「じゃあ私はここで曲がるねー バイバーイまた明日~!」
ミナミと別れ、高田先生の家の前の道に入っていくのがお決まりとなった。
あぁ、面倒くさいので、『高田先生の家の前の道』をこれからは『高田ロード』と言うことにします。
入学して半月ほど経った。ミナミの他に、ユキ、ユカリとも仲良くなり、4人でいることが多かった。
ある日の休み時間、4人でわいわい話していた時だった。
バチン!!
後頭部に衝撃を感じた。 この感覚、身に覚えがあった。すぐに分かった。
「ナオヤこのやろう!!」
確認もせずにそう叫んで振り返ると、予想通り、私の頭を平手打ちした男が立っている。
「おー、カナ、久しぶり。お前英会話の教科書あるか?オレ次古典なんやけど忘れた。貸せ。」
「英会話?残念。今日はありません。」
「使えねーな。」
「私の知ったことじゃないし。」
ナオヤはそのまま廊下へ消えた。
向き戻ると、唖然としている3人。無理もないよなぁ…
「カナ大丈夫?今の男だれ?」
ユキが聞く。
「唯一、同じ中学校から来た奴だよ。こういうの慣れてるから心配しないで。」
はぁーっ とため息が出た。
ナオヤは翌週の同じ時間に同じ要件で現れた。この時は叩かれる前に気づいたので助かったが、
「だから木曜日に英会話は無いの!」
と言うと、また頭をバチン。
その後、ナオヤは自分の担任の悪口やら、同じクラスの面白い奴の話やら、女4人の私達の間に割って入ってきた。
ほんと、ナオヤって変な奴だ。話術は天才的で、ミナミ達3人を一通り笑わせて教室に戻っていった。
それからしばらくは、私は木曜日は英会話の教科書を持ってくるようにした。
ナオヤのため?
違う違う!!
ナオヤに叩かれないためさ…
5月の連休が明けて、高校生活にも慣れてきた。高校の授業は難しい。中学校とはまるでちがう。生徒に考える余地なんて与えられない。先生がガンガン教えてくることを必死で聞き、とりあえず黒板の内容をノートに写し、理解をするのはその後だった。
私はすぐに、授業について行けなくなった。
英語はもちろん、得意だった数学も分からなくなってきた。英語だけでも英文法、英会話。数学も数学Ⅰと数学Aに分かれている。
そしてこの頃から、私は毎日頭痛に襲われるようになった。(病気ではなく、いわゆる頭痛持ちの体質が、この頃から始まったのです。)
頭痛は決まって、夕方帰宅してから起こった。だから、帰ってくると勉強の前にまず布団で休む日々が続いた。
予習はおろか、宿題もできずに登校するようになった。授業はますます分からなくなっていった。
5月末にあったテストの結果は悲惨だった。クラス内順位は、恥ずかしながら…最下位だった。
高校の勉強は難しいから、みんなこんな感じかと思っていたら、ついて行けないのは私くらいだと知った。
一気に、勉強にやる気を無くしてしまった。
勉強についていけなくなり、夢と希望でワクワクしていた高校生活は、なかなか厳しいものだと思い知らされた。
暗く落ち込む毎日。
頭痛薬が手放せなくなってきた。
…高田先生の声が聞きたいな。
教師としての高田先生にビシッと喝を入れてほしいのか。
好きな人としての高田先生に甘えたいのか。
憂鬱な気持ちを恋する気持ちで紛らわしたいのか。
たぶん、全部。
頭痛と憂鬱な気持ちでベッドに横になっていた体を起こし、机の引き出しからサイン帳を出す。
高田先生のページをめくる。
メッセージ欄には一言
『夢に向かってガンバレ!』
夢…? 見失いそうだよ。 先生、私フニャフニャだよ。なんのやる気もしないよ。先生… 助けて!!
電話の子機を握りしめ、何度も電源ボタンを入れたり切ったりしながら、ついに私は高田先生の家の電話番号を押した。
時計を見ると、子機を持ち出してから1時間以上経っていた。
プルルル プルルル …
受話器を握る手にじっとりと汗を感じた。
プルルル プルルル
緊張しすぎて、息苦しくなってきた。このまま電話を切ってしまおうか…
プルルッ ガチャ
「はい、高田です。」
高田先生の声!
「あっ、 あのっ、第二中学校で高田先生にお世話になった、安藤カナです。」
口から心臓が飛び出しそうだ。
「おぉ。アンカナか。久しぶり。元気か?」
明るい先生の声に、緊張が吹き飛んだ。職員室の『アンカナ』に戻った。
「先生!お久しぶりです。実はあまり元気じゃなくて… 」
私は、なかなか勉強で苦労していること、テストの結果に落ち込んでいること、
すっかりやる気を無くしてしまったことなど話した。 先生は「うん、うん。」と相づちをうちながら聞いてくれた。
「そうか。そういう事よくあるぞ。」
さらっと言う高田先生。
同じレベルの生徒が集まっているんだから、その中で最下位になるのも仕方ない。逆に挽回することだってそれほど難しくないと言ってくれた。
確かにその通りかもしれない。
見失っていた自分は、「ガンバレ!」とか「こんなんじゃダメだ!」とか自分を精神的に攻めることしかできなかったが、こうして理屈で言われると、冷静になれた。
「先生ありがとう。がんばる元気出てきた!」
「ははは、単純なヤツだなー。 がんばるんだぞ。」
最後にお礼を言い、笑って電話を切った。
ずいぶん前向きになり、元気がわいてきた。私って単純だ!
近況を交えて、30分間くらい話していたと思う。
好きな人と電話で話すって、こんなに緊張するもんだなんて初めて知った。受話器が汗で濡れていたのには驚いた!
でも、高田先生と話せて元気が出てきた。気付けば頭痛も治まっていた。
「カナー ごはんだよ。起きられる?」
母が声をかけてきた。
「うん、大丈夫だよ!」
元気な私に母も安心していた。
翌日の学校の帰り、私はミナミに高田先生のことを話した。友達に、高田先生が好きなことを話すのはこれが初めてだった。
「えー、先生が好きとか、マンガやドラマの話だと思ってた。すごーい!カナがんばって。応援するよ~」
ミナミは、私が昨夜先生に電話で話せたことを自分のことのように喜んでくれた。
ミナミはこの先、私と高田先生の恋をずっと応援し支えてくれることになる。三十路を迎えた今でも、無二の親友だ。
ミナミに高田先生のことを話した帰り道、ミナミも高田先生の家を一緒に見たいと言い出した。
2人で高田ロードを自転車で走る。
先生の家の前まで来た。
「ここがカナの好きな高田先生の家かぁ。キレイな家だね。」
「ミナミーっ!声でかいよ!!」
ミナミは普通の声だが必要以上に大きく聞こえてあわてた。
「誰にもきこえないから大丈夫だよ~。」
ミナミは笑いながらさらに続けた。
「表札の名前、浩之のとなりは玲子って書いてあったね。武之と敏子は高田先生のお父さんとお母さんかな。玲子って誰だろ?嫁さんじゃないよね。妹いるのかな?」
…ミナミあんたどんだけ視力いいんだよ。しかも通り過ぎる一瞬でそこまで。
ともあれ、ミナミに感謝したのは言うまでもない。 高田先生のプライベートを知れば知るほど好き度が上がっていく。
私は完全な高田浩之マニアとなっていた。
勉強は相変わらずだったが、友達も増え、高校生活を楽しく過ごしていた。絵を描くことが好きな私は美術部に入った。
初夏の陽気が感じられるようになった頃、コンクールに出品する作品のデザイン画の製作に取りかかっていた。絵を描くことに夢中で、気付けば夜の8時を回っていることもあった。
そんな遅くなった日の帰り、いつもは空っぽの高田先生の家のガレージに、車が停めてあるのを初めて見た。
…あぁ、先生帰宅してる。この家の中にいるんだ。
いつもよりドキドキした。
…ん?でも車が違う!
高田先生の車は黒のスポーツカーで、車高が低めでホイールは赤。でも、停めてあるのはベージュのセダン。暗いので分かりにくいが、何だかオジサンが乗りそうな感じの車。車が好きな高田先生の趣味ではなさそうな気がする。
…先生の車じゃないのかな?それとも車変えたのかな?
ガレージは車一台が停められるほどの広さしかない。謎は深まる。
真相を確かめたくなった私は、翌日から朝の登校の時も高田ロードを使おうと決心した。明るい中なら何か分かるかもしれないと思った。
登下校がより楽しみになってきた。帰りも部活で遅いので、ひょっとしたら行きか帰りに偶然高田先生に会えるかもしれない。
でも、私が高田先生を好きなこと、本人にはバレたくない。だから私がここを通っていることを知られたくない。
かなり複雑だったが、このドキドキ感がたまらなかった。
「カナー!やるねぇ!高田先生に会えるといいよね!!」
朝も高田ロードを通って来ることをミナミに話すと、励ましてくれた。
「先生に好きなのバレてもいいやん。それより会えることの幸せのほうが大切じゃない?」
ミナミなかなかナイスなことを言う。単純な私はその通りだと思った。
…高田先生に会いたい!登下校の時にすれ違いますように!
それからというもの、私の研究が始まった。帰宅時刻はまちまちだが、出勤する 時刻はだいたい決まっている。
すれ違うチャンスは、家から大通りに出るまでの道だけ。車で走れば、時間にすれば1分あるかないか。
その時間を狙って通るのは至難の技だった。
早くだとまだ車が停めてある。
遅くだとガレージは空っぽ。
毎日、「今日こそ高田先生に会えますように!」と祈りながら走った。
研究の結果、私が7時22分に家を出ると、先生の(ものと思われる)車がある時と無い時の割合がほぼ半々であることを突き止めた。
しかし…
結局、一度も高田先生とすれ違うことなく夏休みに入ってしまった。ベージュのセダンは誰の車か分からずじまいだ。
夏休みに入った。私は部活と補習で毎日学校へ通っていた。
その日の朝も、いつも通り高田ロードを自転車でゆっくり走る。
その時、向こうから見覚えのあるベージュのセダンがやってきた!
…あっ、高田先生かな!!!?
どんどん近づいてくるセダン。
運転席を見つめる。
逆光にメガネのシルエット…
見覚えのあるヘアスタイル…
…高田先生にまちがいない!!
私は、恥ずかしいやらドキドキするやら、暑くて心臓バクバクでとにかくもう息をするのも大変な状況で、全てを開き直って運転席に向かって手を降った。
この時、セダンは私の先20mくらいの所へ来ていた。
先生は減速し、
ニッコリ笑い、
手を振ってくれた。
うれしいぞー!!!!!
車と自転車がすれ違うほんの数秒間が、私にはドラマに感じた。
「高田先生好きーっ!!」
自転車をこぎながら朝日に向かって叫ぶ日焼けした女子高生が一人、そこにいた。
こうして、ベージュのセダンの持ち主が高田先生本人であることが判明した。
人間とは勝手なものである。ベージュのセダン=オジサンと思っていたのに、それに乗る高田先生には大人の魅力を感じるようになり、ますます高田先生が好きになっていった。
高田先生とすれ違ったことをミナミに報告すると、とても喜んでくれた。
不思議なことに、一度すれ違うと、それから度々高田先生とすれ違った。
もちろん、いつも笑顔で手を振ってくれる。嬉しくて、幸せで仕方なかった。
やがて8月もお盆にさしかかる。地元では有名な花火大会があり、ミナミと一緒に見に行くことになった。
「カナ、どうせなら高田先生の家に行こうよ!」
「ほんと!?ミナミ付き合ってくれるの!?」
花火大会の会場へは電車で行くが、そこから高田先生の家へは歩いて行ける。
どうせなら浴衣で行こうということになった。
花火大会の日がやってきた。朝からソワソワしっぱなしだった。
ミナミとの計画はこうだ。
まず、私とミナミで高田先生の家の最寄り駅で待ち合わせる。
そこから高田家へ行く。
高田先生の車があれば、インターホンを押す。車がなければ、そのまま花火大会へ行き、帰りにもう一度訪問。
運良く高田先生に会えた時は、ミナミの家が近くだから、そのついでにちょっと寄ってみましたという小細工を忘れない。
今思えばアポ無しで何て迷惑なプランだと言いたいが、頭にお話咲いてる女子高生には分からなかったんだろうなぁ。
ともあれ、どのような結果になるかは状況次第。私は母に浴衣を着せてもらい、夕方家を出た。もちろん母にはミナミと行くことしか言ってない。
駅まで歩く。慣れない下駄に動きにくい浴衣、息苦しいのは帯だけのせいじゃない。
…高田先生に会える。直接話ができる。浴衣カワイイって思ってもらえるかな。
電車の中は花火のお客さんでいっぱいだった。目的の駅まで2つ。あっという間だった。
先に着いていたミナミと合流。花火までは時間があるし、まだ明るい時刻だった。
「ミナミぃー!!ドキドキするよぉおぉーっ!!」
「カナー、私も自分のことのようにドキドキする!」
2人で呼吸困難になりそうで、顔を真っ赤にしてハーハー口で息をしながら歩いた。
ほどなくして、高田家に到着した。
ガレージに先生の車が停めてあった。
…よし!先生いる!
しかしそれとは別に、白い軽自動車が玄関前に停めてある。
…お客さんかな?
このままインターホンを押すものかどうか…
予想外の展開に、ミナミと顔を見合わせた。作戦練り直しだ。
とりあえず様子を見ることになった。お客さんだとしたら、すぐに帰るかもしれない。
……30分経過……
すぐに出てくる気配は無い。きっとこれは、セールスマンとかの類ではない。だいたいお客さんかどうかも分からない。
日が暮れてしまわぬうちに、私達はインターホンを押すことにした。
ミナミは隣の家の塀の影で見守ってくれた。
ゆっくり玄関前まで行く。
インターホンを押すには階段を二段上らなくてはいけない。
勇気が出ない!!
階段前まで来ては、「やっぱりダメだー」と言ってミナミのもとへ引き返してしまう。
…次こそ!
階段前まで来る。
勇気が出ない。
引き返す。
何度それを繰り返しただろう。さらに30分ほど経った。
その時だった。
『ガチャリ』
玄関のドアが開いた!!
驚きのあまり、急いでミナミと塀の影に身を潜める。
塀の隙間からうかがっていると、玄関から2人の女性が出てきた。ひとりは60歳くらいで、もうひとりは30歳くらいに見える。
…先生のお母さん!?それと、正体わからないけど玲子さん!?
2人は玄関前まで出てきて、怪訝そうな表情で辺りをキョロキョロしている。
きっと、私たちがキャアキャア言って騒がしくしていたので、それに気付いて出てこられたのだろう。
もう、腹を決めるしかないと思った。
私は塀の影から出ると、2人に近づいた。
2人の女性は、近づく私を不思議そうに見ていた。
思い切って話しかけた。
「こんばんは。突然すみません。私、第二中学校で高田先生にお世話になった安藤と申しますが…。」
ここで詰まった。
『高田先生にお会いしたくて。』
が、恥ずかしくて言えない。
すると、お母さんと思われる方が、
「ちょっと待ってね。」
と言って、玲子さんと思われる女性と2人で家の中に入っていった。
ついに…
ついに…
ここまで来てしまった!!
もう緊張しすぎて心臓バクバク、全速力で走ってきたかのように息が上がっている。
玄関ドアを見つめる。
ここからもうすぐ高田先生が出てくる!
やっと会える!直接話せる!
嬉しすぎて、ジッと立ってられない。下駄を履いた足でチョコチョコ足踏みしてしまう。
「カナ、やったね。もうすぐ先生に会えるね。」
いつの間にか、ミナミが側まで来てくれていた。
『ガチャリ』
ゆっくり玄関ドアが開く。
そこに現れたのは、まぎれもなく高田浩之先生本人だった。
「おー、よく来たな。」
高田先生はニッコリ笑いながら玄関から出てきた。
目の前にいる高田先生は、小麦色とか浅黒いとかいうのだろうか、日焼けした肌に白い歯がまぶしい。松岡修造みたいなのをイメージすると分かりやすい。
しかも、学校とは違い、白いポロシャツにジーパンというラフな格好。
ズキューン…!!
何かに胸を射抜かれた。はぁ~、カッコよすぎる。
「先生。 お久しぶりです。今日花火大会で、友達のミナミの家が近いから、ちょっと寄ってみようと思って…」
さっそく言い訳から入る。素直に「先生に会いたくて」なんて言えない。
それからしばらく、立ち話を続けた。
高校の勉強のことや、コンクールにむけて部活動に勤しんでいること。
先生も、自分の高校時代の話をしてくれた。
同じように勉強で苦労し、がむしゃらに頑張ったこと。野球部だったこと。
その他いろいろ…
今は夏休みの部活動(野球部)の指導で、毎日グランドへ出ているせいで、日焼けしたらしい。左手はグローブをはめているせいで、手首から先は白い。ミナミも一緒に笑っていた。
「あのー、先ほど出てこられたのは先生のお母さん?」
「そうだよ。あと妹。」
先生の話では、妹さんは隣町にお嫁に行き、今日はお子さんを連れて実家である先生の家へ帰省していたらしい。先生の家のベランダから花火が見えるので、一緒にみるのだと。
「家族だんらんの時に、ごめんなさい。」
「いやいや、かまわないよ。」
そして、失礼しようとした時に先生が言った。
「帰りにもう一度寄って行きな。家まで送ってやるよ。」
願ってもない展開に、先生の家を後にしてからミナミと抱き合って喜んだ。
この日の花火のことは、まるで覚えていない。花火大会は盛大で、決してしょぼいものではないのだが、もっと眩しくきらびやかな何かが胸の中ではじけてたから、記憶に残らなかったのかも。
花火大会が終わり、駅へ向かう人の流れから外れて2人で高田家を目指して歩いた。 ミナミとは途中で別れた。ミナミの家はそこからすぐ。
「じゃあ、カナがんばってね。送ってもらえるなんてホントに良かったね。また学校で聞かせてね。」
ミナミにありがとうをいっぱい言って、私はひとり高田家に向かった。
時刻は9時半になろうとしていた。暗い住宅街の道は少し怖かったが、これからまた高田先生との時間が待っていると思うと心は躍っていた。
ほどなくして高田家に到着した。妹さんの軽自動車は無くなっていた。今度は迷わず階段を上り、インターホンを押した。
パッと玄関灯がつき、すぐに先生が出てきた。
「よろしくお願いしまーす!」
「おう、乗れや。」
ドキドキしながら助手席のドアを開ける。浴衣で動きが制限されて、車に乗るのに一苦労した。
バンッ!!
先生の車のドアはうちのより重く、力を込めたら勢いがつきすぎて大きな音が響いてしまった。
「おいこら!もっと優しく閉めんかい。」
指導が入る。
あちゃー
そのまま車は走り出した。いつも自転車ですれ違う道を、反対に自動車目線で走る。不思議な感じ。
「先生、甘えちゃってすみません。本当にありがとうございました。」
「こんな夜中に、女子生徒をひとりで帰すわけにいかないからな。」
…そういうことね。
ちょっと彼女気分だった自分が恥ずかしかった。たぶん、今日の訪問が私でなくとも先生は送り届けただろう。 我が家へは10分ほどで到着した。
先生の車を見送りながら、中学生の時の、心のブレーキの感覚が蘇った。
夏休みが終わった。私は7時22分に家を出る癖がついていた。
それから、たびたび高田先生とすれ違うようになった。この頃には、先生か私からかどちらともなく手を振るのが当たり前となっていた。
…あの隣に乗せてもらえたんだよね。
すれ違う先生の車の助手席に目をやり、花火大会の暑い夜のことを思い出していた。
あの日のことを思い出すと、何度でも幸せ感で胸がいっぱいになることができた。
まだ残暑厳しい9月、ミナミに好きな人ができた。同じクラスの中田くん。
中田くんは私の前の席なので、いつも彼の背中が私の目の前にあった。
「カナいいなー。いつも中田くんの背中見てられて、うらやましいよぉ。」
嘆くミナミ。
私も中学生の時、いつも高田先生の背中を見て、後ろからそっと抱きつくのを想像していたから、ミナミの気持ちは痛いほどよく分かった。
私は、今までに高田先生のことでミナミに感謝したいことがいっぱいあったから、ミナミの恋に協力したかった。
授業中、中田くんを監視し、ミナミに情報提供した。
その一例を挙げると…
消しゴムを使った回数
カッターシャツから透けて見える中のTシャツの柄
首筋にあるホクロの位置
そんな感じである。
バカな高校生の私たちは、そんなちっぽけなことでソワソワしてキャーキャー行ってテンションを上げていた。
ミナミと私は似たような考えがあり、好き→告白→付き合う ということは願っていない。ただ、本人に気付かれないように胸を焦がしていたいタイプだった。
朝は高田先生に会えたか会えなかったかの報告に始まり、授業の合間は中田情報の提供が私たちの日課だった。
あと、お昼休みは中田くんはちがうクラスへ行ってしまうので、ミナミは私の机で一緒にお弁当を食べた。もちろん、中田イスをちゃっかり拝借するのが狙いだった。
ユキやユカリとも恋バナをしたが、ミナミは2人には中田くんへの気持ちは話さなかった。私は高田先生の話を少しだけしていたが、これが大きな間違いだった。
「そういえば、最近ナオヤが教科書を借りに来ないな…」
ふと、気が付いた。 ちょっかいも出しに来ない。
やっと教科書を持参するようになったか。話す友達もできたか。やれやれ。
ホッとしたのと同時になんだか寂しかった。すぐに寂しい気持ちを否定したけど。
…ホント、来なくなってありがたい。
と安心していたが、裏でまずいことが起きていた。
ナオヤはユキとくっついていた。
「あ、カナ、でも気にしないでねー」
と言いながら、ユキは続けた。
ユキによると、2人は付き合ってはいないそうだが、ナオヤは私の所に来るうちにユキを気に入ってしまい、仲良くするようになったそうな。
「カナのナオヤとっちゃってごめーん!」
「別に私のものじゃないし、ナオヤのこと好きでもないし。いいよー。」
「あ、でもナオヤの方から私の所に来るの♪」
得意気に話すユキ。
…ふーん、そう。
「ナオヤに言っておくわね。カナが寂しがってるって。カナの所にも行ってあげるようにって♪」
…ムカつく。
「あ、でもカナが好きな人は高田先生だっけ?ナオヤにどんな先生か聞いたよ。」
「はぁ!!!!?ちょっとやめてよ!!なんでナオヤに話すんだよ!!」
私はユキに対して本気で腹が立った。
確かに、口止めをしなかった私もいけないが、まさかユキとナオヤに繋がりができると思っておらず、ガードの甘さを後悔した。
帰り、ミナミは、
「私、いまいちユキのこと…信頼できないというか… 悪い子じゃないんだけど、なんか、前から『うーん』と思う所があったんだ。」
だから中田くんの事、ユキのいる前では話さなかったんだ。
モヤモヤした言い方だけれどミナミの気持ちはよくわかる。
「うん。私もさすがに今日のユキにはムカついた。ナオヤのことと、高田先生のことも。」
表面では仲良しでも裏で悪口を言っている気持ち悪さに、2人で言葉が少なくなる。
かと言って、明日からユキと話さないとか、絶交するとか、そこまでしたいわけじゃない。
とりあえず、ユキの前で高田先生のことを話すのはやめよう。 あとは、ナオヤとどう接するかだ。
ナオヤは中学生の時から、私が高田先生が好きなことに気づいていたが、これで確定してしまったわけで…
はぁー…
乙女の悩みは深刻だ。
それからしばらくは、何事もなく過ぎていった。
結局、それ以来ナオヤは私の所へ来なかった。顔を合わせないので、特に高田先生のことでいじられることもなかった。
ユキにはちょくちょく会いに来ていたそうだが、何とも思わなかった。
それよりも、ミナミと中田くんの話をしている方が楽しかったので、自然とユキと距離ができていった。ユキと仲良しのユカリともあまり一緒にいることがなくなった。
「そうだミナミ、2人で中田くんの家に行ってみようよ。」
「ええーっ、カナ本気で言ってくれてるの!?うれしー!! ありがとー!!」
だって高田先生の家までついて来てくれたもん。お安いご用だ。
なぜ私たちが彼の家を知っているかというと…
入学式の次の日くらいに、個人調査書を提出した。氏名、保護者名、住所、電話番号など、学校が管理する個人情報満載の書類だ。
たまたまミナミは、机上の中田くんの調査書を見たそうな。特別中田くんを意識する前だったので、ホントまたまた目がいったらしい。
調査書には自宅周辺の地図を描く欄があった。その地図がミナミの目を留めさせた。
中田くんの地図には道路が一本と、建物を表す四角形が2つ。片方の四角形に『自宅』と書いてあった。
たったそれだけ。
しかし、『自宅』の隣の四角形は、この辺では誰もが知る有名な繁華街の有名なデパートだった。
…ふざけてんのか?
と思ったミナミは、それが強烈に印象に残っていた。
「○△デパートって… あんな街中に人が住む住居あるの?」
不思議で仕方ない。
行ってその目で確かめなくちゃ。
私たちは、その日の帰りに中田家の捜索をすることにした。自転車通学の成せる技である。
○△デパートは、私たちの自宅とは真逆の方角だが、恋する気持ちをエネルギーに変換できる高校生には関係なかった。
学校を出発し、ウキウキハイテンションで○△デパートを目指す。
「あーもうどうしよう!!息が苦しいくらいドキドキするよー!」
と叫ぶミナミ。
うんうん、ミナミの気持ちはすごーく良く分かる。
私たちは何がおもしろいのか、ゲラゲラ笑いながら街中を疾走した。
20分くらい走って、○△デパートが見えてきた。地図によると、この東隣が中田家のようだ。
じわじわと○△デパートに近づく。西側から走ってきた私たちは、デパートの建物が大きくその向こうがなかなか見えない。
ドキドキ ドキドキ…
2人並んで、無言でデパートを通り過ぎる。
見えた。
……!!!?
>> 84
今回の作戦はこうだ。
まず○△デパートを目指す。そのまま中田家の前を通り過ぎる。
視力の良いミナミは表札チェックを、私は洗濯物チェックを担当する。
洗濯物の中に、うちの高校の体操服とか干してあったら確実だからね。
決して、家の前で騒いだり立ち止まったりしないこと。家の人が見ていたら困る。
今回の目的は中田家を見つけることに絞ってある。
で、いざ本番。
○△デパートを通り過ぎ、東隣の家を2人無言で通り過ぎた。
さらに50mくらい過ぎた所で自転車を停め、ミナミと顔を見合わせた。
「今の…?」
「えっ…あそこが?」
2人で言葉を失う。
デパートの隣は、茶色の古いビルだった。
住居なのか、店舗や会社などのテナントが入っているのか、それすら不明。 表札もなければ看板もない。もちろん洗濯物も見える範囲には無かった。っていうか干すスペースあるのかな?
「もう一度行ってみようか。」
今度は東側から。先ほどと反対から行けば、何か新しい発見が…
無かった。
「なんか…よく分からないね。」
「うん…帰ろうか。カナ付いて来てくれてありがとう。」
「何もできんかったね。ごめん。」
「カナがいてくれたからここまで来れたんだよ。一人じゃムリだった。」
私たちは自宅方向へ走り出した。
結局中田家はよく分からずじまいで終わった。
中田家の謎は謎のままだったが、お互いに高田先生と中田くんの話題で盛り上がる毎日を送っていた。
私は毎朝とはいわないが、一週間に2~3回は高田先生とすれ違っていた。すれ違う時に、お互いバイバイをするだけで、その日1日は幸せだった。
そのため、雨の日ももちろん自転車である。本当は道路交通法違反になるそうだが、傘を差しながら自転車をこいだ。
40分間こぐのだから、学校に着く頃にはスカートはずぶ濡れである。もちろん帰りも。見かねた親が車での送迎を提案したが、丁重にお断りした。
1日たりとも、高田先生と会えるチャンスを減らしたくなった。
こうした努力のおかげで、玄関を出た所へ私がやって来るというベストタイミングが生まれることもあった。
(手を振りながら)
「先生!」
「おはよう~」
こんな感じで、言葉を交わせたこともあった。
高田先生
部活動
勉強
この頃の私が一生懸命だったものの順位である。
やがて冬がやってきた。この地域はそれほどたくさん雪は降らないが、時々積もることがあった。
雪が積もってしまっては、さすがに自転車では通えない。
私は雪が嫌いになった。
年末近くのある日、高田先生が車を変えた。ベージュのセダンから、白いクーペのスポーツカーに変わった。
今度の車はかっこいい!
以前はいていた赤いホイール、後部座席窓ガラスにはスモーク、ごつ過ぎないエアロ付き。サスペンションもいじってあるっぽい。
いかにも車好きな先生が乗る感じだ。
高校生でサスペンションまで見抜けるのも珍しいかもしれないが、私も車好きだったから…
…これに乗りたい!また高田先生の車に乗れる機会あるかな?
勝手に想像がふくらんでウキウキした。
やがて白クーペに乗った高田先生とすれ違うようになるのだが、それからは以前よりカッコ良さが三倍くらいアップした。
時は師走。教師も改造スポーツカーで疾走する時代らしい。
そして私の高田浩之中毒は進んでいく。
今現在、この型の車はずいぶん姿を消してしまいましたが、それでもまれに見かけることがあります。そんな時、全力で高田先生に恋をする気持ちが未だにブワァーっと蘇ってきます。
冬休みに入った。今年も高田先生に年賀状を書くつもりである。
もちろんプリントゴッコで(笑)
…来年は寅年か。思いっきりかわいいイラストにしよっ!
さらさらさら~っと思いつくまま描いた一枚がなかなか可愛く描けたので、そのまま年賀状に採用。
雄トラと雌トラが、それぞれ着物を着て、火鉢を囲んでお餅を焼いている構図である。
…このトラが高田先生と私だったら…ぐふふ。
気持ち悪い笑いと共に妄想が膨らんだが、年賀状にはまともな言葉で文を添えた。
『夢に向かってがんばります!』
すごくすごく悩んだけれど、長々ダラダラ書くよりは、簡潔な言葉でサクッと書いた方が印象が良いと思った。
根底には常に『好きだと気づかれたくない。うっとうしいとか思われたくない』という考えがあった。
だから、あくまでアッサリと。
あとで後悔することになるんだけどね。
この冬休みは、ミナミと郵便局でアルバイトをすることになっていた。
うちの高校はアルバイト禁止である。いわゆる進学校なので、バイトしないで勉強しろという理由だ。
が、場合によっては認められる。いくつかの条件があったが、そのうちのひとつが『定期テストでクラス内順位が真ん中より上であること』だった。
勉強の得意なミナミは何の問題もない。常にクラスで5位以内だ。私は…(汗)
話は遡るが、11月にあった中間テストの結果でバイトの可否が判断されるので、必死だった。どうしても、バイトしてお金を稼いでみたかった。
12月の三者懇談で結果が知らされた。
40人中18位。
ギリギリセーフ!!
得意な化学は1位
苦手な英語は40位
母は絶句していたけれど、まぁいいや。自分の中では想定内だ。
で、堂々と学校の許可を得てバイトを申し込んだのである。
私たちが働く郵便局は、学校へ行く途中にある郵便局だ。一番近い所にある局なのでここに決めた。
そして、この局が管轄する地域に、高田家があった。
にやり。
冬休み初日から、郵便局に通い始めた。
同じ高校生のバイトでも、男子は配達、女子は年賀状の仕分けと分かれている。
私たち高校生は、局員の方が『○○町△丁目』まで分けた年賀状の束を、家ごとに分けて輪ゴムで束ねていく作業を任された。
ミナミとは班が違うため勤務中は会えない。 休憩時間にはどちらかの所へ行き、いろいろおしゃべりをした。
この年頃の女子って、会話のネタが尽きないのが不思議だ。
仕事にも慣れてきたある日の休憩時間こと。
「ねえミナミ… 私… すごく誘惑と闘っているんだけど。」
「高田先生の年賀状が見たいんでしょ?」
お見通しのミナミちゃん。
「でもさすがに、そんなプライベートな所、見ちゃいけない気がするんだよね。」
「そうだよね。さすがにねぇ…」
「………」
「………」
ひょっとしたら、配属が高田家エリアだった可能性だってある。何も高田先生宛ての年賀状を取って盗んでしまえというものじゃない。私が見たこと、高田先生は知るわけではない。
さんざん正当化して、ついに高田先生宛ての年賀状を覗き見することにした。
年賀状仕分け作業は、同じフロアをエリアごとに棚で仕切ってあるだけなので、自分の担当でないエリアの棚を見ることは容易だった。
私は高田先生の家のある○○町一丁目の棚を探した。
「○○町一丁目は…と、あった!この棚だ。」
高田先生の住む○○町一丁目は住宅街なため、家がたくさんある。並べられた年賀状の束の数も膨大である。
「一丁目五番地の13だから…」
記憶している住所を頼りに、棚に書かれた番号を確かめながら探す。
「10、11、… 13 あった!」
いくつかの年賀状の束を棚からそっと取り出した。
その2つ目に、高田家の束があった。束の一番上は家主の名前にしておくのが決まりだったため、一番上の年賀状は先生のお父様宛てだった。
周りを見渡すと、少し離れた所に局員さんがいたが、こちらに気を留めている様子はない。
多少の罪悪感と共に、そっと輪ゴムを外す。
上から一枚ずつ見ていくと、『高田浩之様』の年賀状が次々と出てきた。
私の知らない人からばかりの中で、時々生徒からと思われるものも混ざっていた。
その中に、見覚えのある名前を見つけた。
『山内 陽子』
『森下 和則』
2人とも、中学校の同級生で中三の時は高田学級だった。
ちなみにこの2人、私とは幼稚園からずっと同じで、森下君とは一緒に学級委員をやったこともある。
しかも2人は今、同じ高校に進学していた。トップ校のF高校だ。学年を代表するような模範生徒だった。
そんな2人の年賀状が、立て続けに出てきたのである。ビックリしたというか、あの2人なら恩師に年賀状を出すことくらい常識なのかと思い妙に納得した。
…あの2人が揃って高田先生に年賀状!?見たいじゃねぇかー!!
一応、年賀状の裏面は見ないでおこうというギリギリブレーキを用意していたが、そんなものいとも簡単に破られた。
山下さんのから裏面をチラリ。
『高田先生、お久しぶりでございます。昨年度は大変お世話になりました。先生のご指導のお陰で、今は充実した高校生活をうんぬんかんぬん… 』
…なるほど、彼女らしい。国語の教科書の抜粋のような美しい字と文章でつづられていた。
続いて森下君。
……… ………
内容は忘れた。というか読む気が失せるほど細かい字で、一面ビッシリと近況報告がなされていた。トラの絵はあったかな?それすら記憶に無い。
…なるほど、彼らしい。彼のノートはいつも、虫めがねが必要なほど細かい、アリンコの字で埋め尽くされていた。
ちょっと面白かった。
で、次に出てきた年賀状の差出人は
『安藤カナ』
裏面をめくれば、
アホッぽいトラさんに、『夢に向かってがんばります~!』
まるで小学生だ。
…しまった…
次の日、私は職場にボールペンを持参した。もちろん、高田先生宛ての年賀状に書き加えるためである。
夢に…の文の前に、
「勉強、部活、苦手なことも好きなことも一生懸命の毎日です。」
と、追加しておいた。
…あまり変わらないか。
山内森下組にかなうわけないが、張り合う必要もない。 とりあえず何か手を打たないと気持ちが済まなかった。
余談だが、ミナミは自宅に届く束を見つけ出し、自分宛ての年賀状をフライングして見てから、出していない人宛に書いていました。
そして正月を迎えた。1月1日の朝、出勤すると棚はがらんとしていた。私の年賀状をはさんだ束は無事に高田家へと配達されていったようだ。
ちなみに裏事情です。
年賀状の仕分け作業に休日はありません。年末は28日くらいから一気にワッと増えて、31日の夕方までがんばっても消化できません。
年明けは元日からです。持ち越した年賀状+その日にポストに投函される分をザクザクさばいていかないと、山のようになります。
局員さんも大忙し!バイトが間に合わない時は、局員さんもバイトの手伝いをしてくれました。
(あ、31から2日までは、交代でお休みがもらえました。)
皆様、年賀状はお早めに✋
1月3日、高田先生から年賀状が届いた。
今では当たり前の、パソコンで作成された年賀状だった。トラのイラストも、ネットかCDから引用したものだと思う。しかし、当時はまだインクジェットはがきも見かけない時代。(あったのかもしれないが、見ていない。)私のまわりは手書きや既成の年賀状が多かった。
パソコンで作成してあるだけで、いちいち高田先生がカッコ良く感じてしまう。
が…
『自分の目標に向かってファイトだ!』
先生からも、サラッとしたコメントだった。
…なんか、がっかり。
いつものパターンだ。じゃあ何て書いてあったら嬉しいか、聞かれても思いつかないけれど、この、当たり障りない感じが物足りなかった。
自分だってアッサリコメントで出してるのに勝手だよな。
…山内さんや森下君のように丁寧な年賀状には、もっと違うこと書いて送ってるんだろうな。
せっかく高田先生から年賀状がとどいたのに、いまいち嬉しくなかった。
ミナミにも、この気持ちを話した。
「そうだよね。高田先生の中ではカナはただの教え子の一人なんだもんね。カナはこんなに好きなのにね。」
でも、『高田先生が好きです』アピールがしたいわけじゃない。
想いを伝えたり、付き合ったり、具体的な行動に移したいわけじゃない。
ただ、好きでいたいだけ…
先生と結婚して、お嫁さんになる妄想はしょっちゅうしてたけど。
先生に料理を作ったり、先生の服を洗濯したり、「お帰りなさ~い。お疲れさま!」って出迎えたり…
この先、この恋がどうなっていくのか、この時の私には想像ができないでいた。
それからは、特に何事もなく平穏な毎日を過ごした。登校中、高田先生とすれ違ってバイバイするのは続いていた。
やがて、春休みに入った。3月の末に、新聞で教職員の人事異動が載る。
どれだけ探しても高田先生の名前が無いので、来年度も残留することが分かった。
…はぁー 高田先生と話がしたいなぁ。
と思いつつも、勇気が出なくて、遊びに行くことも電話をかけることもできなかった。
モヤモヤと春休みをすごし、4月を迎えた。一年生の時に同じクラスだった女子のほとんどが文系へ進み、理系に進んだ私は新しいクラスでほぼ全員初対面というスタートだった。ミナミとも離れた。
理系クラスは女子が少ないため、3日かからず全員と仲良くなった。この、後腐れないタイプの女子の集まりは、大人になった今でもよく遊ぶメンバーだ。
仲も雰囲気も良すぎた女子メンバーのお陰で、私はすっかり男子と仲良くなる必要が無くなり、男子ばかりの理系クラスにもかかわらず男子と話した記憶が無い。
高校生活が楽しく、友達にも恵まれ、やがて私の頭の中から高田先生への思いが薄らいでいった。
それでも高田先生が好きな気持ちはあったため、高田ロードの通学は続いていた。
会えたら会えたで嬉しかった。
二年生の夏が、高校生活で一番楽しかったかもしれない。この頃の私は『今しかできないことを。』をテーマに生きていた。
美術部と理科クラブの兼部、某テレビ局主催高校生クイズへの出場、実は趣味だった服とアクセサリーの制作…
勉強なんて来年になりゃ嫌でもやるんだから、とにかくこの時期は楽しむ事に全力だった。
クラスで男女一名ずつ選出する体育祭の応援団も買って出た。
応援団の練習は夜遅くまで続き、学校の門が閉まってからは近くの公園で練習した。近隣から学校へ苦情がきて叱られたり、夜のパトロール中のパトカーがやってきて、なぜか皆で一目散に逃げたり。
とまぁ、朝から晩まで楽しかった。
そして、あんなに高田浩之中毒だった私が、一緒に応援団をやっていた三年生の戸倉先輩に恋をした。
戸倉先輩は、やんちゃな感じが集まる応援団の中で異色な、真面目で物静かなタイプ。小柄で優しい雰囲気の先輩だった。
心の中で高田先生に操を誓っていた私には、他の人を好きになるなんて自分が絶対に許せなかったが、やはり好きになっちゃったものは仕方ない。
でも、この時も、先輩と付き合いたいとか告白したいなんて思ってなかった。
そんなある日。
休み時間にエリコ達と恋バナで盛り上がっていると、
「安藤さんいるー?」
と、戸倉先輩が教室にやって来た。
…戸倉先輩が私を呼んでる!?
急いで先輩のもとへ駆け寄る。
要件の内容は忘れたが、応援団の連絡だったことは覚えている。
「カナー、今のが気になる戸倉先輩?」
「優しそうでカッコイいいじゃん!」
「高田先生みたいなオジサン諦めて、先輩に乗り換えなよ~!!」
エリコ達に冷やかされた。
その日の放課後の練習でも、つい、目で戸倉先輩を追ってしまう。
団長が、私と一年生2人を指で指し、
「お前ら、ちょっと『白虎隊コール』の振り付けやってみろ!」
と指示を出した。
…あれ~?なんかおかしな所あったかな?
不思議に思いながら、団長の笛に合わせて踊る。
「おい安藤!!ズレてるんだよ!」
3人で顔を見合わせた。実は3人とも『安藤』だ。
「団長ー、どの安藤ッスか?」
一年生の安藤君が聞く。
「お前ら全員だよ!!」
誰かのフリがズレてるとかじゃなく、団長はただこのギャグをやってみたかっただけなのだそうだ。
くだらなさすぎてツボにはまる私達応援団員。戸倉先輩も大ウケしている。
…キャー!笑う先輩も素敵!!
戸倉先輩への片思いが急上昇していった。
その日の帰りのこと…。
その日は天気が下り坂で、空は今にも雨が降り出しそうになっていた。そのため、練習を早く切り上げて帰ることになった。
「解散~!お疲れっしたー」
皆でカバンを持って歩き出したその時、1人の女子生徒が戸倉先輩のもとへやって来た。
そのまま体をくっつけるようにして校門に向かう2人。
…戸倉先輩、彼女いたんだ…。
私はあっさりと恋に敗れた。
しょんぼりとしながら自転車をこぎ出した時、ポツリポツリと雨が降り出した。
それから10分もしないうちに雨は本降りとなり、傘を持っていない私はずぶ濡れになった。
カッターシャツは濡れて、ブラジャーが透け透けである。
バチバチと地面を叩きつけるような強い雨が、失恋の痛みを紛らわせてくれた。
ちょっと恥ずかしい透け透けブラのまま高田先生の家の前にさしかかった。もちろん高田先生の車は無い。
…もしここでバッタリ会って高田先生がこの姿を見たら、先生だってドキドキしてくれるのかな?
40分間の雨に戸倉先輩への熱はすっかり冷まされ、乾いていた高田先生への想いがふたたび息を吹き返したようだった。
家に着き、玄関でびしょ濡れの制服を脱ぎ、ブラとパンツだけの姿で風呂場に向かった。
再び高田先生へ熱を注ぐように、頭から熱いシャワーを浴びた。
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