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マッチングアプリで知り合っていきなりお泊まりを誘われました
子どもができたら
子ありと子なしはどちらが老後安泰?

犬に頬寄せて

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ボニータ( ♀ 16kZh )
09/06/07 12:07(更新日時)

私の夢は…

白~い毛の可愛い顔した
マルチーズを飼うんだぁ、、
頭にリボンを付けて
毎日散歩するよ

運命って有るよね?

運命の子と出逢ったら
一緒に暮らすんだぁ…


私と愛犬の
不思議な
実話の物語です。



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No.1159516 09/04/14 02:40(スレ作成日時)

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No.201 09/05/20 01:30
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母は私に嘘ばかり付く

‘歯医者で歯を入れたいから
お金頂戴’

‘お金落としたからお金頂戴’

‘友達に借りたからお金頂戴’

…3日に1度何か言われる

渡さないと犯罪を起こしそうな
雰囲気を出していた

話し合いは何度もした
その時母は泣いて謝るが
翌日はケロッとしている

母の友達に50万の借金をして
家迄取りに来られたり

家には怪しい電話が
来る様に成った

その頃私の店は
利益が出なく成り始めていた
‘ホ〇トペッパー’と言う
無料雑誌の掲載店から
価格競争、薄利多売の時代
に成りつつ有った

店のストレスと母のストレス…
今までの事が有るから
母に優しくする事が難しかった

優しくすると
又お金をせびられる…
そんな恐怖も有った

ボーは8歳
まだまだ元気と言いたいが
ポメラニアンの平均寿命を調べたら
15歳…もうすぐ9歳に成るボーに
不安を感じる
もしボーが死んだら
私は生きて行けない…

加えて家のマンション25万の家賃は
水商売を上がってから
勿論自分で払っている

貯金を切り崩しての生活

そんな不安から誕生日に
‘結婚しまーす’と言われても

マサ君に寄り添う事が
出来なかった

No.202 09/05/20 10:19
ボニータ ( ♀ 16kZh )

……

誕生会の帰り道
申し訳無さそうに
彼が言って来た

『さっき、結婚する
なんて言ってごめんね』

『何で謝るの?』

『迷惑そうな顔だったから…』

プレゼントに貰った
生花の香りに包まれながら
東京タワーの横に車を停めた

私は今の状態を彼に全て話した



『何で今迄
話してくれなかったの?
俺、そんなに頼りない?
お母さんと俺の家に
引っ越してくればいいよ』

彼の言葉は嬉しいけど
さすがに申し訳無い…

『でもマサ君の
夢の邪魔に成っちゃうよ』

『一緒に成れるなら
いい加減夢なんて諦めるよ
定職着いて幸せにするから』

運転席の彼は
私をゆっくり抱き寄せた

『マサ君、本当にいいの?』

今度こそ幸せに成りたい
彼と離れたくない
…と心の底から思った

こんなに優しく
誠実な人だから
きっと母も気に入ってくれる筈

彼は将来田舎に家を買い
母と同居する事も
快く賛成してくれた

だけど…
やはり母の事が引っ掛かる

胸騒ぎを感じながら

私は経営する店を畳み
マサ君は今契約の仕事で辞めると
事務所に伝え就職活動を始めた

私と彼は未来に向かって
動き出した

No.203 09/05/20 11:00
ボニータ ( ♀ 16kZh )

翌年春

彼は就職が決まり
私は店の整理が着いた

昼間家に居た母に
今住んでるマンションの引っ越しと
マサ君と
結婚を考えてる事を伝えた

『引っ越しするから
お母さんも準備してね』

私の言葉に母の表情が曇った

『お母さん、
同居なんてしないわよ』

ふて腐れた子供みたいに
あっさり拒否された

『お母さん、私もう30だよ
こんな生活するの疲れたよ
私が幸せに成るの反対なの?』

今回は母の思い通りにさせない

『マサ君って
売れない俳優でしょ?
ちーチャンにはお金持ちと
結婚して欲しいわ』

母は信じられない事ばかり
言い出した

『お母さんはね
貧乏人と結婚させる為に
貴女を産んだ訳じゃないのよ
産むの大変だったんだから』

本性を出し始めた

『どうしても引っ越すなら
1人暮らしするから
お母さんに部屋貸りてよ
月に30万仕送りしてくれたら
何とか成るなら』

平然と言った

…お母さん?…

娘のスネを
いつまでかじる気なのだろう

『悪いけど今回はお母さんの
思い通りに成らないから
嫌なら勝手にして
私は1円も出さないから』

私の言葉に母は
部屋に隠ってしまった

No.204 09/05/20 11:48
ボニータ ( ♀ 16kZh )

部屋に隠った母は
ストライキを始めた
心配させて構って貰う作戦だ
でも放っておいた

泣いたり土下座されたり
あらゆる手段を使って
‘同居は嫌だ’
‘結婚しないで欲しい’
と言われたが全て無視した
最後は

『一生のお願いです
お母さん、行く処探すから
引っ越しは1年待って』

泣いてすがられた

しかし途中家賃の更新が有る
5ヵ月なら待つと
最後の願いを受けた
母が自立してくれるなら
それが一番だ

その間『マサ君に会って』
と言っても拒否された

母は私の結婚に全く感心が無い
いつまでも私を母の所有物だと
思っている事を痛感した

でもいい
あと少しで母から解放される…



ボーはマサ君に凄くなついた
部屋に居ると
彼の膝に乗りたがり
マッタリ寝てしまう

会う時は
‘ボーを連れて来てね’
と可愛がってくれる

人生にはタイミングが有る

私はマサ君が運命の人だと思った

季節は巡り
引っ越しまで約1ヵ月
私の31歳の誕生日の事だった

朝、自宅で起き
ダイニングに行った

…母が居ない
昨日深夜は居たのに…

テレビを着けようと
テーブルのリモコンを探すと
手紙が置いてあった

【遺書】

母が書いた
私宛ての遺書だった

No.205 09/05/21 00:03
ボニータ ( ♀ 16kZh )

遺書 〇〇様

刑務所へ入るつもりで
何もかも承知の上での犯罪をしてしまいました。
何を言われようと全て覚悟の上での犯行です。
貴方には本当に辛く悲しい思いを掛けた事は許される事ではありません。
母は死に場所を探します。
貴方の誕生日に許して下さい。
部屋の鍵はドアポケットに入れます。
大丈夫です二度と顔を見なくて済みます。
安心して幸せに成って下さい。
天国から幸福を祈っています。
きっとこの手紙を見る頃は何処にもいないと思います。
今迄の貴方への不幸を許して下さい。
身元が分からない様全部処分して行きます。
部屋のものも処分して下さい。
借金の件は〇〇(私の父)への私成りの復讐です。
元点は全て〇〇から始まったのです。
ピッチ解約して下さい
ありがとうございました。
〇月〇日



私の誕生日に
母は遺書を残した

犯罪って何?…

何で…?何で…?

私はマサ君に電話をして
パニックを起こしてしまった

狂って泣き喚く私に
ボーはずっとキュンキュン鳴いている

どのくらい経ったか
覚えていないが
マサ君が急いで来てくれた

私は遺書を彼に見せた

『警察に行こう』


……

No.206 09/05/21 01:30
ボニータ ( ♀ 16kZh )

彼は泣き崩れる私を抱えながら
駅前の交番に行った

遺書を警察官に見せた処
交番では手続きが出来ない為
捜索願いを出すなら写真を持ち
住んでる区の警察署に
行って欲しいと
優しく教えてくれた

でも消えたのは今日…
本日帰宅が無ければ
捜索願いの手順だった

誕生日の私にマサ君は
ディナーを予約していたが
勿論キャンセルし
母探しが始まった

母の写真をマサ君に渡し
別行動で一日中探した

健康ランド、パチンコ屋、公園…
泣きながら
飲まず食わずで
深夜過ぎても探していた

杉並の和田掘り公園は広い
1つ1つ探しては

『おかあさ~ん』

泣きながら叫んだ

子供の頃
優しい母を探す様に
‘おかあさ~ん’
叫んだ事を思い出した

公園の砂場にへたり
掴めない砂を握り泣いた

…お母さん…

私の事がそんなに嫌いですか?

誰もいない深夜の公園で
嗚咽を上げて泣いた




翌朝8時頃
交番から電話が有った

『…まだ帰りません』

昨日の警察官が
心配して電話をくれた

マサ君も私も寝ていない
疲労が少し出て来た

テレビで変死体のニュースを見ると
母かと思い胃が痛く成る

電話で捜索願いを勧められ
警察署に行く事にした

No.207 09/05/21 02:21
ボニータ ( ♀ 16kZh )

目の腫れ上がった私が
警察署に入ると
婦警さんが飛んできた

事情を話すと交番の方が
連絡を入れてくれた様で
すぐ判ってくれた

私しか個室に入れ無いので
その間マサ君は
‘駅を探して来る’
と動いてくれた

取調室みたいな
小さな部屋に案内され
経緯を警察官に話をした

母の写真を提示すると
行方不明者の欄に
名前を書いて下さいと言われ
指示された枠を見ると…

1つの区だけで1日
大学ノート2枚程の
行方不明者が居る事が判る

『こんなに毎日沢山
行方不明者が居るんですか?』

現実を知った私は
自分で探さないと
見付からないと思った

特徴等を詳しく提示する理由は
きっと死体発見時、判る様に
配慮された事だろう…

肩を落とし警察署を出た私は
マサ君に電話をした

『…お母さんの自転車
〇〇駅前に有るよ!』

彼は母の自転車を覚えていた

私も駅に駆けつけ
自転車を確認した

自転車に
母が帰って来るかもしれない…

自転車にチェーンを掛け
マサ君と順番で
張り込みをする事にした

私は家に帰り
行方の手掛かりを探す為
母の部屋に入った

和室の部屋は物で溢れている
買い物依存の山だった

No.208 09/05/21 19:28
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母の部屋には固定電話が有る

部屋の片隅で音を消した電話は
着信で光っては消え
繰り返していた

留守番電話の赤いランプも
不気味に光っている

‘メッセージ86件です’

ボタンを押すと業務的な言葉が
何件も入っていた

その間に電話が鳴った

私が出ると
母から連絡が欲しいと言われた

『母はお金を
借りてるのでしょうか?』

私の言葉に
‘知らない’と言われる
…怪しい

どの電話も内容は同じ

母はきっと金融会社から
借り入れをしてるだろうと
すぐ悟る事が出来た

でも金融会社は徹底している
私に真実を教えてくれない

座る間無くタンスを調べると
昔の手帳が出て来た
その中に元彼かっ君の
住所や生年月日が書かれている

…保証人にした?

母の手帳を見れば見る程
不安に成る事ばかりだった

引っ越しまで後1ヶ月…

行方不明に成った母は
その後1週間音信不通だった

駅に置かれた母の自転車は
交番に事情を話し
撤去を避けてもらい
マサ君は仕事が終わると
毎日協力してくれる
有難い…

私はボーを抱き締めながら
不安な日々を送った

…8日後
終電間際
駅で張り込みしてると
死神を背負った様な母が
改札口から出て来た

No.209 09/05/21 22:58
ボニータ ( ♀ 16kZh )

人混みに紛れ、母は案の定
自転車に向かったが
チェーンを掛けたので動かない。
まごつく母の背後に周り

『お母さん!!』

声を掛け腕を掴むと
一瞬逃げようとしたが
すぐに観念した

初対面のマサ君と
挨拶もそこそこに
母とマサ君を家に連れて帰った


……

『お母さん!
一体どう言うつもりなの?』

私の問い掛けに
母は手の皮を剥いた仕草で
なにも話さない

『金融会社に
借金してるんでしょ?
いくら借りてるの!』

私は責め寄った

『……円』

『は?聞こえない…』

『9500000円…』



母は一千万近く借金をしていた

既に母の居ぬ間に家のポストには
入りきらない位の
督促状が届いている

消費者金融なんて結局サラ金…
手紙の内容は
‘支払い無き場合は依託業者
にて取り立てが始まる’
だった

でも母は
‘元金はとっくに払ってる’
と開き直る

『お母さん…
死ぬんじゃ無かったの?』

殴りたい気持ちを抑えて聞いた

『千葉の海に
飛び込もうとしたら
駅員が着いて来て
死ねなかった…』

そう言うと大泣きを始めた

ただ呆れるしかない

『自分で解決して』

私は母に
自己破産の手続きを勧めた

No.210 09/05/21 23:41
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母の馬鹿さ加減に
慣れてしまった私は
一千万位の借金では
もう驚け無かった

タンスの手帳に何故
かっ君の住所や生年月日等が
有るのか聞くと
やはり保証人にしようと
思ってたそうだが
私が当時、調度別れたので
辞めた事が判った

母は怪しい金融からも
借り入れをしていた

理由はパチンコ

勝つ時に山の様に
買い物してた事も判った

そして遺書の‘犯罪’とは
留守中、私の部屋から
CHANEL等のブランドバッグを盗み
質に入れて
現金にしてた事だった


話を一通り聞いた私は
警察署に電話をして
母の帰宅を報告した

母は
‘今度こそ…今度こそ
心を入れ替える’
と土下座をしていたが
勿論信じられない

一部始終見ていたマサ君は

『お母さん…
無事で良かったね』

と言ってくれたが
私はこんな母で惨めだった

マサ君はこんな母なのに
同居しても良いと言ってくれる
本当に優しい人…
私は彼を絶対裏切らないと
心中で誓った



翌日朝8時から
母の固定電話は
金融会社の催促で
鳴りっぱなしだった

取り立てが来るまで
もう時間の問題…

サラ金に強い
新宿の弁護士事務所に
母を行かせた

No.211 09/05/22 12:36
ボニータ ( ♀ 16kZh )

弁護士事務所に相談するだけで
1時間15000円
300円しか持って無い母に
費用と電車賃を渡した

何するにも私がお金を出す
母は悪びれる事無く
当然の様にお金を受け取った

母を無事発見した事を
喜ぶ感情も持てないまま
次々問題を起こす母に
‘消えて欲しい…’

私の心の何処かに
恐ろしい感情が湧いていた

しかし何もしないと
一千万円の取り立てが
やって来る…

引っ越しの用意をしながら
母の問題…

ボーは私の心労を悟る様に
ピッタリくっついて離れない
あんなに懐いてた母には
全く近寄らなくなった



弁護士に相談した母は
2時間程で帰宅した

借金は10年以上に及ぶもので
元金、利子を
過剰に返済してる事から
自己破産が可能だった

弁護士に支払う金額は
当時合計70万程

調べたら
相場はもっと安く出来るが
時間が無い…
有能な弁護士に
委ねるしか無かった

弁護士費用は分割払いが出来る
分割で払う様母に言い聞かせ
自己破産の手続きを始めると
翌日には
取り立ての電話は鳴らなかった

しかしこれから
裁判で認められないと
自己破産が出来ない


母の本当の裏切りは
これからだった

No.212 09/05/22 15:10
ボニータ ( ♀ 16kZh )

1ヶ月後

慌ただしく引っ越しを終え
年末を迎えようとしていた

マサ君は母に8畳の部屋を提供し
家賃も光熱費も
彼が払ってくれると言うのに
全く感謝をしない

そんな母はホテルの
ベッドメイキングの仕事に着いた
フルで働けば月18万円稼げる
月7万円の弁護士費用とマサ君に
5万円の生活費を入れる事を
約束していた

‘マサ君に5万円入れてるから
文句無いでしょ’
と言わん振りの態度で
彼とは会話をしない

それ処か
彼に弁護士の保証人を頼んだ時
必要書類の源泉徴収を見て

‘稼ぎが少なくて情けない’
と言い放った

私は母を心の底から軽蔑し
憎く成っていく

しかし遺伝子なのか
憎く、大嫌いな母を
救うのは私しかいない…と
優しかった母の記憶を繋ぎ
いつか皆で幸せに暮らしたい
と僅かな希望を持つ私も居る…

複雑な気持ちを抱え
マサ君との同棲スタートを迎えた

ボーはもうすぐ10歳
マッタリ穏やかな顔は
誰からも可愛いと言われ
散歩に行くと人が集まって来る

いつもいつも笑っていた

ボーはベランダ近くの
風通し良い場所が気に入り
可愛い笑顔を見せる

私はマサ君の愛と
ボーの笑顔に支えられていた

No.213 09/05/23 00:43
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母が10年以上も消費者金融から
借金をしてたと言う事は
私が水商売に入り
仕送りをしてた頃から…

私は一体何の為に
水商売をしてたのだろう

裁判に記入する
‘借金の理由’は
‘生活費の為’と書かれて有る

親孝行したくて働いてた私は
本当に淋しかった

そんな傷ついた
気持ちなんて母は知らない



クリスマスを祝う余裕も無く
あっと言う間に年が明ける
今年こそは良い年にしたい

部屋をピカピカに掃除し
おせち料理を作り
どうか平和な日々を願った

しかし元旦
破産手続き中の母に
金融会社から
‘お金貸します’と
年賀状が大量に届いた

一体どうやって調べるのか…
まだ前途多難だと予感した

金融からの年賀状を
立ったまま淋しく見る私に
マサ君はボーを抱っこして言った

『お母さんが落ち着いたら
籍入れようね』

抱っこされたボーは
‘カッハー’
これ以上無い笑顔で笑っている

私は泣いて頷く事しか
出来なかった



そして同居する母は
最初頑張ってた
ベッドメイキングの仕事を
2ヵ月で行かなく成っていた

‘人間関係で疲れた’と
自分のベッドで
寝込む様に成ってしまった

No.214 09/05/23 01:41
ボニータ ( ♀ 16kZh )

部屋を暗くして一日中
寝込んでいる母に
夕食を運び問い掛けてみた

『お母さん…働かないと
弁護士の費用払え無いよ』

ベッドの片隅に座り促すも

言われた言葉は


『3万円貸して…』





母は何にも変わらない

きっと一生変わらない

私は母に‘母’を求めていた

でもそれは一生無理なんだ

母が生きているだけで
沢山の人に迷惑を掛けてしまう

私は理性の糸が切れた

『死…んで…』

母は驚き起き上がった

『お願いだから死んで!』

私は拳で
母の顔面を殴り続けた

『マサさん!助けて~』

母が悲鳴を上げると
彼が飛んで来た

『お願い!殺させて!』

私は年老いた母に
馬乗りに殴り続けるも
マサ君は止めず
私の限界を見つめていた

母は口から血を出し
失禁をした

私は本気で殺したかった
今まで我慢した山が
土砂崩れの状態だった

…ハサミ

手芸用のハサミが目に止まった

私は凄い勢いでハサミに飛び付き
母に向かって振り上げた瞬間
マサ君が私の手首を掴んだ

『犯罪者に成るつもり?
俺はどうするの!』

私は聞く耳持たず暴れていた

『ボーにも
会えなく成っちゃんだよ!』

…ボー

No.215 09/05/23 14:12
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『ボーにも
会えなく成っちゃうんだよ!』


……

ボーと出逢った日を思い出した

ガリガリでハゲだらけの
犬種も分からない仔犬…
私は一生守って行くと誓った


マサ君…
貴方にも裏切らないと
誓ったよね



……


『…ごめんなさい…』


力が抜け
握ったハサミは
マサ君に取り上げられた

血だらけの母は
洗面器に血を吐き

『親を殴るなんてな!
アンタは
世界一の親不孝者だよ!』

私と目を合わさず
浴室に逃げる様に消えた

一瞬の出来事に
私は放心状態だった

母を殴った手がジンジン痛い

人を殴るなんて
一生無いと思っていたのに

人間はもろい
理由はどうあれ
暴力なんて最低だ…

母を殴った後悔の嵐が吹いた


地獄絵巻みたいな修羅場から
母は私を避ける様に成った

もう私から
愛情もお金も
引き出せ無いと思ったのだろう

マサ君は
‘暫く静養した方がいい’と
私を休ませてくれた

ボーに構えなかった
時間を埋める様に
多摩川や海、山に半日遠出した

沢山の景色を背後に
ボーに毎日頬を寄せた

私が辛い時は
いつもボーが居てくれた

No.216 09/05/23 23:22
ボニータ ( ♀ 16kZh )



母の自己破産は
手続き開始から約1年掛かる

母はあの件から
私と話さないながらも
弁護士代、生活費
を入れる事も無く
毎度いい加減な生活をしていた

きっと私が助けてくれると
思ったのだろう

あの件から間もなく

(依2)
‘受任事務停止通知

ご依頼の債務整理の件については、貴殿からの送金がないためこれ以上事務を遂行することができませんので、受任事務を停止いたします。よって今後は債務者から全額について直接の取立てが再開されますので、ご承知置き下さい。’


と言う手紙が弁護士から来ても
平然としていた

しかし私は
心が変化している
母と縁を切る考えも有った

『お母さん…
約束守れ無いなら家を出て』

久しぶりの会話だった

『そんな事言って
ここに取立て来たら困るの
貴女でしょう』

母は開き治っていた

『お母さんの住民票抜くから
私には関係無いよ』

そう言うと翌日
母は早朝から出掛けた

友達に嘘を付いて
金策に回ってるのだろう
自己破産出来ないと
困るのは自分自身だ

そんな予感は当たり

友達に借金しては
弁護士代を
返済している様だった

No.217 09/05/24 00:01
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母を信用出来ない私は
部屋に鍵を掛け
貴重品は
目の届かない処に置いた

親子なのに
一番信じたい人を信じられない

母に対して
愛情が消えつつ有る自分にも
将来の不安を感じた


……

母との関係は悪化したまま
裁判の日と成った

やっとここまで来た…
とても長く辛い日々だった

母の自己破産が解決したら
次の事業をしよう…

私の32歳の誕生日を終え
数日後
母の自己破産が決定した


『大変ご迷惑を掛けました』

母は私達に挨拶をし
何か思い詰めてる様だった

マサ君は私の事を気遣い
少し遅れた誕生日プレゼントに
ボーも泊まれる
軽井沢のペンションを
予約してくれた

『お母さん、みんなで
少し家開けるけど良いかな?』

母に話すと
‘楽しんでらっしゃい’と
快く返事をしてくれた

やっとスタートラインだ…
気持ちの整理をして頑張ろう…

2泊3日の荷物を車に積み
久し振りの笑顔に成った

旅行当日

『お母さん、行って来ます』

私はボーを抱え
母の部屋へ挨拶に行った

『行ってらっしゃい』



この笑顔が
母の最後の姿と成る


……

No.218 09/05/24 13:50
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『軽井沢は犬の楽園だねぇ』

移動時間は掛かったけど
自然溢れる大地に
施設や食堂はワンチャンOKが多い

『将来、
犬に囲まれて暮らしたいね』

山道を歩きながら言うと

『いいね!きっと楽しいよ』

犬が好きなマサ君はボーの存在で
もっと犬好きに成っていた

夜はワンチャン連れた宿泊客が
宿の暖炉に集まり
犬同士もハガハガ戯れていた

『こんなに素敵な処に
連れて来てくれて有難う』

私はワンチャンと自然にパワーを貰い
これからの人生に
希望を抱いていた

『マサ君…今まで迷惑ばかり
掛けてごめんなさい』

そう言う私に
‘迷惑なんて思ってないよ’
力強く答えてくれた

やっと幸せに成れるかな…
ありがとうマサ君

……

2泊3日の旅行は
どんな贅沢な旅より楽しかった

長い帰り道
ボーは膝でスコスコ寝ている

母に水晶のネックレスを土産に買い
やっと家に着いた

『あれ?電気ついてないね』

夜この時間、母は居る筈…
サーッと嫌な予感がした

『お母さ~ん。ただいま』

家に入ると真っ暗で
人の気配がしない

『鍵が壊されているよ』

私達の部屋の鍵は壊され
ドアは開いた状態だった

…お母さん?…

No.219 09/05/24 15:16
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私達の部屋に入ると
荒らされた様子は無い

クローゼットの宝石や時計
ブランド品も異常ない…

…まさか…

私は金庫にお金を入れて有る

銀行が合併を続けるうち
預けるタイミングを失っていた

閉じた金庫に手を伸ばした

…開いてる

四桁の暗証番号は
判らない筈なのに
時間を掛けたのだろうか

金庫に入れた
今まで貯めた私の現金は
全て無くなっていた

お金だけ無くなり
置き手紙も無い

母の部屋はそのままで
唯一、判子と通帳
身分必要な物だけ無かった

『警察に電話する?』

状況を察知したマサ君は
携帯電話片手に言った

『いい…』

私は悟ってしまった

これが母との
永遠の別れなんだ…と

何かの自縛から解放された様に
力が抜けてしまった

もう、一生
母は私の前に現れない

私には分かる

大金を失った事よりも
母から解放された
気持ちが大きかった

でも…お金が無くなった私は
次の事業が出来ない
暫く彼に迷惑を掛けてしまう

『マサ君…私…』

言葉を探していると

『お金の心配は大丈夫だよ
俺、ちーチャンの為なら
もっと頑張って働くから』

彼は
‘1から2人で頑張ろうと’
言ってくれた

No.220 09/05/25 00:49
ボニータ ( ♀ 16kZh )


‘ピンポーン’

そんな最中チャイムが鳴り
出ると隣の住人だった

『鍵がドアに
差さってましたよ』

母に渡した鍵だった

慌て過ぎて鍵を差したまま
逃亡したのだろう

『有難うございます
いつ見付けて
下さったんですか?』

『おとといの夕方ですよ』

私達が旅行した日に
消えた事が判った

でも…もういい

母を探す気は無い
裏切られた現実だけを
受け止めていた


……

季節は年末

私は車を売り
暫くの現金を手にした

しかし、心配な事が有った

ボーの老化が気になる

ボーはもうすぐ11歳

なんだか
寝てばかり居る様な気がする

モコモコだった毛も細く成った

漠然とした不安に襲われる

…まだ天国行かないよね?

嫌な胸騒ぎがした

『マサ君…
ボー長生きするよね?』

『大丈夫だよ!
あと10年生きるよ!』

無責任な励ましで
落ち着く自分もいた

…ボー
これから皆で
幸せに暮らすんだよ

私を置いて天国に行かないでね

急に老化したボーに
不安ばかり募る

母に裏切られ
大好きなボーが消えたら
私は独りぼっちだよ…

胸騒ぎは止まらなかった

No.221 09/05/25 02:43
ボニータ ( ♀ 16kZh )

ボーの不安を抱えてはいたが
早く母の整理をしたかった

母と二度と会う事は無い

母宛ての手紙を止め
住民票を抜いた

残した荷物は大量に捨て
使える物はフリマで売った

荷物を見ると辛い
名前も見たくない

私の中で
母は死んだ事にした

そんな思い詰める私を
マサ君は心配している…

成るべく明るく振る舞ったが
笑っているのに涙が出たり
思っていないのに
母を殺す夢ばかりを見てしまう

自分には
時間が必要だと思った

彼は
‘いつまでも待つから大丈夫’
と私の隣で支えてくれた

でも
不幸ばかり背負う私は
彼に迷惑ばかり掛けている

『私と居たら
マサ君を不幸にしちゃうよ』

不安な気持ちを確認した

『俺の一番の幸せは
ちーチャンと出会えた事だよ』

彼は出逢った時から
愛情が変わらない

‘好き’とか‘愛してる’より
もっと深い物を感じた

彼と早く幸せに成りたい…



大晦日

母の荷物は全て無くなり
母宛ての郵便物は来なく成った

少しずつ傷も癒え
私達も前進していた

『来年、指輪を買いに行こう』

彼の言葉に頷いた

そんな時
私の幸せを見届ける様に
いつもボーは笑っていた

No.222 09/05/25 03:29
ボニータ ( ♀ 16kZh )

年が明け
ボーは11歳に成った

‘ポメラニアンの寿命は15歳’

本の平均寿命を見た時
短か過ぎると思ったけど

この時は
…まだ4年大丈夫…と
自分に言い聞かせた

何故ならボーは寝てばかりいる
老化が一気に来た感じで
動きも遅くなった

上手く言えないけど
お迎えが近い気がして成らない

私はただ焦るばかりで
不安は日々募った

抱っこしたボーを
写真に撮っては
泣いてる自分が居た

‘ボーはもうすぐ
天国に行ってしまう’

そんな予感が私を襲うからだ

私は年が明けても
仕事をしないで
1日中ボーと過ごす生活をした

マサ君は私が家事する事を
望んでるので甘えさせて貰った



3月

『熱海にペットOKの
温泉貸し切り旅館が有るよ』

マサ君は旅行雑誌を見ながら
予約をしてくれた

…これがボーと
最後の旅行かもしれない

ふと頭を過った

でも、ボーと
さよならなんて考えられない

だって私とボーは
ずっと一緒なんだよ?

私、やっと幸せに成れるのに
ボーが居ないと意味無いんだよ

ボーに話し掛けては泣いていた
そんな私の涙をボーは
ゆっくりペロペロする

…ボー…ずっと一緒だよ…

No.223 09/05/26 02:03
ボニータ ( ♀ 16kZh )

3月10日晴天

友達に車を貸り
熱海に向かった

1時間半程で旅館に着き
ワンチャンOKの部屋の入口には
‘ボニータ様’
名前が書いてあった

私達にとってはボーが主役

小綺麗な和室に入ると
ボーは座布団にチョコンと座り
ずーっと笑っていた

『嬉しいね。嬉しいね。』

老化が気に成ってた体は
嘘の様に元気だった

『ボー、調子良さそうだから
海に散歩に行こう』

マサ君はボーを抱っこして
お散歩セットを持った

海沿いの宿は信号を渡ると
すぐ海の歩道が有る

ヨチヨチ歩くボーは尻尾を振り
少し歩いては私を見て
少し歩いてはマサ君を見た

そんな可愛い姿を見て
私は涙が止まらない

『…大丈夫だよ。
ボーは長生きするから』

マサ君もボーに不安を
感じながらも
私を慰めてくれた

『…うん』

私が泣くとボーと彼が心配する
折角来た旅行を楽しもう…

私の気持ちを察してか
ボーはまるで
最後の思い出を作る様に
仔犬みたいにはしゃいでいた

最近、寝てばかり居たボーは
この時ずっと笑っていた

この笑顔が消えるなんて
考えられない

だってボーは
私の全てなんだよ…



神様

ボーをまだ天国に
連れて行かないで下さい

No.224 09/05/26 02:57
ボニータ ( ♀ 16kZh )

熱海ではボーの写真を沢山撮り
時間を忘れる位遊んだ

夜二組並んだ布団の真ん中で
ボーはイビキをかいて寝ている

私とマサ君は
ボーの下で手を繋ぎ

『一生ボーと居たいね』

そんな事を話ながら
眠りについた


……

翌日

昨日はしゃぎ過ぎたのか
ボーはずっと寝ていた

『今日はまっすぐ帰ろうね』

チェックアウトをすると
東京方面に車を走らせた

『見て、大きなショッピングセンターが
出来たよ』

海沿いを眺めていたら
新しい建物に気が付いた

私の声でボーが起きると
オシッコがしたそうだった

『ボーのオシッコに寄ろう』

ショッピングセンターに車を置き
歩道の電信柱にオシッコをさせた

『ペットショップも有るみたいだよ
ボーにオヤツ買おうか』

マサ君はショッピングセンターの
案内看板を見付けると
気候も良いので
ボーを車で寝かせ
店に入る事にした

新しい店内は広く
その奥に大きなペットショップが
入っていた

可愛い仔犬も沢山売られ
賑わっている

私はボーに
ピコピコ鳴るオモチャを見ていた

『ちーチャンの事呼んでるよ』

マサ君はガラス越しの
仔犬の前で私を呼んだ

No.225 09/05/26 03:20
ボニータ ( ♀ 16kZh )

ふと見上げた先には
小さな仔犬が
2本足で立ち上がり
前足でペチペチとガラスを叩き
必死で私を呼んでる様だった

『や~よ。見ない…』

犬は大好きだけど
今はボーの事で頭が一杯…

他の犬を見る余裕が無かった

私はボーに
オモチャとオヤツとオシッコシートを買い
マサ君は暫くその仔犬を見ていた

『…マサ君~帰るよぉ』

私の声で来ると

『アイフルのクゥちゃんみたいに
ガラスをペロペロ舐めてたよ』

彼は珍しく
他の犬の話をしていた

『そうなの?可愛いね~
何犬だった?』

『…あれ?何犬だったかな?』

そんな会話をしながら
車に戻った

『ボーただいまぁ』

車のドアを開けるとボーは起き
眩しい位の笑顔で
私達を迎えてくれた



これが

私の大好きなボニータの

最後の笑顔だった

No.226 09/05/26 04:02
ボニータ ( ♀ 16kZh )

車に戻り
ボーにお水をあげると
またすぐに寝てしまった

『沢山遊んだから
疲れちゃったのかな?』

心細く言う私に

『沢山寝て元気に成るよ!』

彼はいつも
前向きな言葉で励ましてくれた




でも


ボーは旅行から帰ると
丸2日寝ていた

生きているか不安に成る程
寝てばかりいる

そのうちご飯も食べなく成った

病院の先生には
言葉を選ばれながら
‘お迎えが近い’と言われた

ボーの老化は急に進み
目の色がうっすら白い

無理やりスポイトで食べ物を入れ
水を飲ませた

旅行から1週間後にはとうとう
私を誰だか
判らなく成ってしまった

…ボーおいで…

この言葉にも反応しない

抱っこしたら必ずしてくれる
ペロペロもしてくれない

歩く事も出来ない程
横に成ったままだった

それなのに
オシッコだけは倒れながら
トイレでしようと歩いた

『ボー、いいんだよ
オシッコシートでしなくても
いいんだよ』

私はボーを抱え
頬を寄せて毎日泣いた

こんな姿でも

私の事が
分からなくてもいいから
生きてて欲しい

ボーの下に
大きなオシッコシートを引き
心臓の音を確認しては
涙の海に溺れた

No.227 09/05/26 12:22
ボニータ ( ♀ 16kZh )

‘涙が枯れるなんて嘘だ’

いくら泣いても涙は出てくる
ご飯を食べないボーは
痩せてしまった

『やだよ。ボーが死んだら
私なんて生きて行けないよ』

死の恐怖で狂いそうに成る

もう食べてくれないササミを茹で
もしかしたら急に元気に成って
食べてくれるかもしれない…

『ボーちゃん。ご飯ですよ』

声を掛けても動いてもくれない



『ボーを病院に連れて行こう』

マサ君は泣き尽くす私に言った

『点滴しないとボー…死ん…』

彼だって辛い
夜、私に隠れて泣いてる事を
知っている

私達は大切に大切に
ボーを抱え病院に行くと

『今日が峠です。
お辛いですが
心の準備をして下さい』

涙で目を腫らした私に
先生は辛そうに言った

…え…?

私は心の準備なんてしていない

だってボーと私は
ずっと一緒なんだよ?

言葉の出ない私を抱え
マサ君は先生に何度もお辞儀をし
ボーを委ねた

ボーの居ない部屋は淋し過ぎる

私はいつもボーが居るベットに
顔を埋めて泣いた

ボーの匂いがする…
落ち着く…

マサ君は何も言わず
私の背中をトントン擦ってくれた

全然寝てない私は
眠りに誘われる

ボー…
元気に成ったら何して遊ぶ?…

No.228 09/05/26 12:59
ボニータ ( ♀ 16kZh )



……

どれ位寝たのだろうか

『ちーチャン…起きて…』

目を開けると
マサ君が泣いている

『ボー…
天国に行っちゃったって…
迎えに行こう…』

……

3月20日20時20分
ボーは天国に行ってしまった

昔ボーが地下鉄サリンから
私を救ってくれた日

私達は全速力で病院に向かった

亡骸になったボーは
まだ暖かい

『ボー!ねぇボー!
早く起きてよぉ!
天国に行くなんて嫌だよぉ!』

口から舌を長く出した
ボーを強く抱き締めた

『ちーチャン…』

マサ君も涙が止まらない

病院の先生も
私達の姿を見て泣いていた

‘プスー’

魂が抜ける様に
ボーの体から空気が抜けた

『ボーは幸せだったんだよ』

亡骸に成ったボーは
赤ちゃんが
寝て居るみたいに見えた



家に帰り
いつも居たベットにボーを置いた

その姿はまだ寝ているみたいだ

私はボーに
一番似合う服を着せた

ボー…
さよならなんて言わないよ
私とボーは
ずっと一緒なんだから


これから
辛いペットロスが待っていた

No.229 09/05/26 23:37
ボニータ ( ♀ 16kZh )

‘ボーおかえりなさい’

まだ柔らかい
亡骸に頬を添えて
ボーとの想い出を振り返った



仔犬のボーは
ガリガリだったけど

すぐ
運命の犬だって分かったよ

始めて会ったのに
一瞬で大好きに成ったんだよ

小さな目
低い鼻
真っ黒な肉球

ゼンマイみたいに
ピョンピョン跳ねて
私を追い掛けて来たよね

可愛くて
愛しくて
大切な存在

私が辛い時いつも
慰めてくれたのに
私は何にも
ボーにお返ししてないよ

私を守る為に来てくれたの?

マサ君と出会い
安心して
天国に行っちゃったのかな…

でもね

私はボーが居ないと
何にも出来ないんだよ

天国に行かないで
私の元に帰って来て…





柔らかいボーの体は
2日後には
硬く成ってしまった

『ちーチャン…
ボー可哀想だから
骨にして貰おうね』

マサ君はペットの火葬に電話をし
午後に亡骸を取りに来て貰った

病院の先生や友達から
ボーに贈られた花で
部屋はいっぱいに成った

私は何で花が有るのか
納得いかない

だって
ボーは死んで無いんだよ?

姿は見えないけど
私の横にピッタリ居るんだよ?

私はボーの‘死’を
受け入れられなかった

No.230 09/05/27 00:14
ボニータ ( ♀ 16kZh )

その日の夕方

火葬屋は焼けたボーの骨を
そのまま持って来た

私達は小さな骨壷に
ボーの骨を入れた

でも私は
現実を受け入れられない


犬の縫いぐるみに
ボーの服を着せ
カリカリを食べさせようとしたり

骨壷に入った
ボーの骨を食べようとした

『ボーは死んだんだよ…
そんな事してたら
ちーチャン頭おかしく成っちゃうよ…』

マサ君は
私を抱き締め揺さぶった

私はもう
自分の居場所が
無いと思ってしまった

ボーが居ない私なんて
何の価値も無い

私の20代…
今までの過去はボーが主役

私にとって
一番大切な者はボーだと
分かってしまった





ボーが死んで1週間

私は一切食べ物を
受け付けなく体重は7キロ痩せた

外にも行きたく無い…

散歩してるワンチャンが羨ましい

眠れ無い合間にも
疲労で睡魔が来る

でも何か物音がすると
ボーが帰って来たと思い
飛び起きては部屋中を探した

精神的にも肉体的にも
限界が来ていた

『俺はずっと
ちーチャンと一緒だから…
独りにしないから』

そんな彼の愛情にも
応える事が出来ない位

私の悲しみは
深い闇に包まれてしまった

No.231 09/05/27 13:53
ボニータ ( ♀ 16kZh )

…神様

お願いです
私からボーを奪わないで下さい

お金も親も要りません

だけどボーだけは
私の支えなんです

お願いです

私にボーを返して下さい




……


ボーの骨壷を抱き
リビングで倒れる様に
疲労で寝てしまった


…気持ちいい…


私はハッキリとした夢を見た




透明な四角い箱の中で
小さな犬が私を呼んでいる

‘僕はここに居るよ
早く迎えにきて’

キュンキュン鳴く仔犬を
抱き上げたくても
その箱には出口が無い

『ボーだよね?ボーだよね?』

その仔犬は
透明な箱の中で
ペロペロして笑った

‘ずっと一緒だよ
ちーチャンを置いて
天国に行けないよ…’




……


目が覚めると
骨壷は暖かい

生きてたボーみたいに
存在感を感じる

時計を見た


AM3時…


…あ…

熱海帰りのワンチャン…

あの日の事を思い返した


…ボーだ


マサ君がずっと見てた仔犬…

私を必死で呼んでた仔犬は
命絶えるボーが
引き合わせた仔犬かもしれない


朝が来るまで
骨壷を抱いたまま
ずっと考えていた



『おはよう』

起きて来たマサ君に夢の話をした

No.232 09/05/28 05:52
ボニータ ( ♀ 16kZh )



『そうだよね!
ボーかもしれないね!』

記憶を辿ると彼は
笑顔で同意してくれた

しかしあの仔犬が何犬か
全く思い出せず
‘行けばきっと判る’と言った

私はボーの円形ベッドと
大好きだった
ピコピコ鳴るオモチャを抱え
胸にボーの写真を忍ばせた

会いたい気持ちは先走る

その日マサ君は公休日

近所でレンタカーを貸り
目的地の湯河原へ向かった


ボー…待っててね


ボーだったらペロペロして
‘ただいま’って言ってね

そんな期待を胸に秘めるも

‘あの仔犬が
売れてたら諦めよう…’

あんなに人懐っこい
可愛い仔犬なら
もう居ないかもしれない

渋滞する道中
冷静に考えていた

『…ボーに逢えるよ。信じて』

会話の無い車内で
想いに耽る私を励ましてくれた

『うん。ありがとう』

見上げた空は
私の涙顔に似合わない晴天

サービスエリアで買った
冷たいお茶を
泣き腫れた目に当てた

…ボーに逢えるかもしれない

春風に吹かれて
西湘バイパスを走ると
海が見えて来た

…もうすぐ

キラキラ光る波間に目を細め
ボーの最後の笑顔を
思い出していた

No.233 09/05/28 06:46
ボニータ ( ♀ 16kZh )

昼前

海沿いのショッピングセンターに着いた

あの時停めた
同じ場所に車を置き
ボーがオシッコした
電信柱を振り返りながら
店内に急いだ

ペットショップは
‘春のセール’で賑わっている

…あれ?

私達の目的する仔犬の
ガラスケースは空だった

『あの時の仔犬
この位置だったよね?』

私の言葉にマサ君は
店員さんを呼んだ

『この中に居た仔犬は
売れてしまいましたか?』


『はい。昨日売れました』


…売れちゃったんだ…


その言葉を聞き
車にひき返すと
マサは追い掛けて来た

『待って。仔犬の場所は
固定されて無いんだって』

半月以上前の仔犬が
まだ居るなら違うガラスケースに
移動してると言った

私は小走りで
ペットショップに戻るも
立ち眩みがして来た

何も食べてないからか
めまいがする

店員さんは私達に
椅子を用意してくれた

マサ君が説明したのか
そんな私に
仔犬を一匹ずつ
抱っこさせてくれる事になった



最初に連れて来たのは
ポメラニアンだった

モデル犬の様に愛らしい姿は
ボーの時とは
比べ物に成らない位
フワフワでキュートな仔犬だった


違う…ボーじゃない

No.234 09/05/28 08:05
ボニータ ( ♀ 16kZh )

店員さんは次々に
仔犬を連れて来てくれた

…でもヤッパリ…

ボーは居ない

私の都合いい解釈だったのか
次々仔犬を抱っこする度
ボーとは違う現実を
確認してしまう

もう20匹以上
抱っこしただろうか

ボーが引き合わせてくれた
仔犬には逢えないと諦めていた

『ちょっと…見て!』

マサ君は次に連れて来られる
仔犬を指差した

…あ

その小さな仔犬は
今までとは違い
私を見ると店員さんの手の上で
空中をジタバタ泳ぎ始めた

『キュン…ヒューン、ヒューン』

私の前に来ると
小さな腕を私に伸ばしている

…ボー?

ゆっくり手を伸ばし
仔犬を受け取ると
ヒュンヒュン言いながら
凄い勢いで私の顔を舐め始めた

この感触…

ボーと同じだ…

『その仔犬だよ!
まるでボーみたいだよ!』

マサ君は笑顔で仔犬の頭を撫でた

仔犬は私の顔を舐め尽くすと
膝の上でお腹を見せ
私の指をカプカプ甘噛みしては
カハカハ笑っている

頭の匂いを嗅いでみた

セキセイインコみたいな
夏のトウモロコシ畑みたいな
匂いがする…

ボーと同じ匂いだ…

ボーだ…

運命ってあるよね?

あなたがきっと
ボーが引き合わせてくれた
運命の仔犬だよね

No.235 09/05/28 08:48
ボニータ ( ♀ 16kZh )

ボーに逢えた…

私は涙が止まらなかった


『この仔連れて帰ります
いくらですか?』

マサ君は立ち上がり
その仔犬が入っていた
ガラスケースを店員さんに聞いた

その場所は中央の上段だった

『…ちーチャン!来て!』

手招きで呼ばれると
仔犬を抱いたまま
ガラスケースを見上げた

…え…?

‘ロングコートチワワ♂(雄)
1月1日生まれ’

ボーと同じ誕生日だ…

しかもセール中で
25万が×に成り
18万が×に成り
15万に成っていた

…こんな事ってあるの?

ガラスケースの前で
立ち尽くす私達に店員さんは

『今、セール中です。
もう少しお値下げ出来ますよ』

この仔犬は健康で
何の問題も無い
でも他のチワワに比べると
値段が安い

なぜ安く出来るのか
聞いてみた

『その仔は
健康でお勧めなんですけど
‘柄’で皆さん
敬遠されるんですよ』

…柄?

全く気に成らなかったが
じっくり顔を見てみた

よく見ると
そのチワワは焦げ茶色の体で
背中に沿う毛並みの黒い毛が
‘1’の数字に見える上

口の周りは一周
カールオジサンみたいに黒い毛で

眉毛はチョンチョンと黒く
怒り顔みたいな柄だった

No.236 09/05/28 09:23
ボニータ ( ♀ 16kZh )

…うわぁ…かわいい

じっと見るつぶらな瞳は小さく
鼻は低い
ロングコートと書いてあるけど
スムースより短い気がする

なるほど…
この仔犬が何犬だか
マサ君が分からないのも判る

何故だか分からないけど
一瞬で好きに成った

『現金で買います!
12万円に成りませんか?』

ボーの時と
同じ金額を交渉すると
店員は少し考えて

『是非お二人の
家族にして貰いたいんで
…いいですよ!』

『やった!』

マサ君と私はチワワを抱いて笑った

そのペットショップは
これから午後に
掛かり付けの獣医さんで検診し
シャンプーセットしてから
引き渡してくれると言った

『分かりました!』

私達はすぐ近くの日帰り温泉で
時間を潰す事にした

私は安心したのか
お腹が空いて来た

『本当に良かった…』

マサ君は何度も呟いた

私は彼に沢山心配を掛けた…

今まで見えなかった事が
少しずつ見えて来た

…ボーありがとう
運命の仔犬に逢えたよ

でもボーの事は
1日だって忘れないからね…

今逢えた仔犬を
ボーと思いたい気持ちと

ボーを亡くした現実を
受け入れようとする自分が
半分ずつ居た

No.237 09/05/29 00:03
ボニータ ( ♀ 16kZh )

日帰り温泉オオキジマ
の食堂に入り定食を頼んだ

久し振りの食事…

味噌汁をひとくち含むと
味噌、鰹、昆布…
全ての味を感じる

生きてるって実感がした

『チワワの名前は何にする?』

マサ君に聞くと

『え?ボーじゃないの?』


2人で相談した結果
ひらがなで‘ぼー’に決めた

『だって
‘ぼー’って顔してたよね』

『うん。してたね、してたね』

胸に忍ばせた写真は
ボーが笑っている

『これからぼーと3人で
頑張らないとね』

マサ君の言葉に大きく頷いた

…ボー
私、強く成るからね

私のスタートラインは
この日だったのかもしれない



……

温泉に浸かり
ペットショップの店員に
‘閉店間際に来て大丈夫’
と言われたけど

早くぼーに会いたい

でもマサ君を休ませたい

仮眠室で横に成るマサ君をおいて
私は2階の広間で
そっと海を見ていた

熱海の歩道を歩く
ボーを思い出す

やっぱり涙が出ちゃうけど

ボーが大好きだから許してね

命の尊さを
教えてくれてありがとう

お味噌汁が
あんなに美味しいって…
私、生きてるんだね

ボー…心の底から

あなたが愛しいよ

No.238 09/05/29 01:05
ボニータ ( ♀ 16kZh )

少しするとマサ君は
私を探しながら広間に来た

『電話したら迎えに行って
大丈夫だって。行こうか!』

早くぼーに会いたい気持ちは
彼も一緒だった

『うん!』

元気に返事をして
ペットショップに戻る事にした

ぼーは‘売約済’と貼られた
ガラスケースの中でソワソワしていた

頭には小さい
青のリボンをしているのが見える

遠い距離から
ぼーも私達に気付くと
二本足で立ち上がり
前足でガラスを叩いている

…あの時の仔犬だ

その姿にあの日の仔犬が甦る

『やっぱり
あの仔犬で間違い無いね』

マサ君も同じ事を思っていた

そう、間違い無かった

さっき居なかった店員が
マサ君を見ると

『1ヶ月位前
この仔見てましたよね?』

話掛けて来た

『何で知ってるんですか?』

マサ君は目を丸くした

『マンチェスターユナイテッドの
ジャンパー着てましたよね?』

サッカー好きの店員は
その日見ていた事を
話してくれた

『それにこの仔
凄い連れて帰ってアピール
してましたよねー
覚えてますよ!』

指差した
ガラスケースの位置も同じだった

世の中には
不思議な事が有る

でも

神様からのプレゼントは
もう少し続く

No.239 09/05/29 13:16
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『ぼー、お家に帰ろうね』

手続きが終わり
ペットショップの方にお辞儀をして
車に乗り込んだ

ボーが使っていたベッドを
膝の上に置き
その中にぼーを入れてみた

ぼーは大興奮で
私にペロペロしては
体をベッドに擦り付けた

大運動会をして疲れたのか
一瞬止まると
プリリ…とヘビ玉みたいな
可愛いウンチをした

『やだ~。ぼーは』

私とマサ君は
久し振りに心の底から笑った

命は繋ぐ

それを支えに私は生きている

…ぼー

私達の処に
来てくれてありがとう

頬を寄せるぼーは暖かい

そう

生きてるって
こんなに嬉しい事なんだね

命は時に
息絶えてしまう事が有る

残された者は
時間が止まってしまう

途方に暮れ、重い扉を開けた時

見える景色が違ったりする

人は傷付きながらも
成長するんだね

…ボー

私の全てだった
一匹の仔犬

今でも大好きで大好きで
思い出すと
温かい涙溢れちゃうよ

でもね

ボーと出逢えた事
本当に感謝しているよ

もし生まれ変わって

今までの人生
同じ苦しみを味わうとしても

ボーと出逢えるなら
何だって乗り越えるよ

…ボー…

頬寄せた日々

私は本当に幸せでした

No.240 09/05/29 13:26
ボニータ ( ♀ 16kZh )

家に着き
ぼーを部屋に放してみた

チャカチャカチャカ…

ボーに置いてある
お水を迷わず飲みに行くと

いつもボーが座っていた
場所に腰を降ろした

見守る私達にまるで

‘ただいま’

って言ってる様だ



‘おかえりなさい’




No.241 09/05/29 21:15
ボニータ ( ♀ 16kZh )



……


数年後





2009年4月13日


私はそんな
今までの過去を振り返っていた



『ぼ~。桜、綺麗だねぇ』


満開の桜並木に
私は、ぼーと頬を寄せている


これから
仕事が終わるマサ君と
待ち合わせだ


あれから犬の神様から
不思議なプレゼントがあった


焦げ茶色だったぼーの毛色は
ボニータみたいな
綺麗なクリーム色に成り

顔の黒い眉毛とヒゲは
跡形も無く消えてしまった

‘ボニータそっくりだね!’

ボーを知ってる友達からは
神様のイタズラだと驚かれる

‘ボー’と‘ぼー’
2枚の写真を並べると今では
全く区別が付かない

犬種の違う犬だけど

まるで生き写しの様に
ぼーは今日も微笑んでいる





私はあれから
沢山の事に気が付いた


貧乏だった過去

母の娘として産まれて来た事

全て私にとって
意味があったんだ

春彦と出逢い

もし、あの時
私がお金に溺れたなら

もし、3000万のネックレスに
欲が出たならば

私の人生は
もっと険しく辛い事が
有ったかもしれない


春彦さん…元気ですか?

罪を償った彼に

違う景色が
見えている事を願っている

No.242 09/05/29 22:54
ボニータ ( ♀ 16kZh )

お母さん

元気ですか?

あれから
何年も経ちましたね

あの過去…

私は無理をしていました

親孝行するつもりが
貴女を甘やかせてました

無理を続ける生活に
本当の幸せは続かない事を
私は悟れませんでした

そして貴女に
‘母親’を求め過ぎてました

母親である前に
1人の人間だと接したら

貴女に手を挙げなくても
良かったと
悔やんでいます

人に何かを諭す時は
その中に愛情が無ければ
意味がない

自分の正論ばかりを
押し付けても
心に届く事はない

私は大好きな母が
壊れて行くのが
怖かった弱虫でした

憎んだり

恨んだり

嫉妬したり

羨やんだり

沢山の感情が生まれました

でも

そんな思いには
何の意味も無い事を
知りました

お母さん

きっと二度と会う事は無いけど

貴女がお腹を痛めて
私を産んでくれた事

感謝出来る様に成りました

……

ボニータ

あなにだけは

‘さよなら’も
‘元気ですか’も言わないよ

だってボニータは
私の心の中で永遠に生きている

何年経っても

本当に大好きです

……

ぼー

あなたは不思議な天使だね

私とマサ君の大切な家族です

No.243 09/05/30 01:28
ボニータ ( ♀ 16kZh )

……


『ち~チャ~ン!』


仕事の終わったマサ君が
野川に沿って
歩きながら手を振っている

『キュンキュンキュンキュン』

甘えん坊のぼーは
いつも‘キュンキュン’と
鼻を鳴らしながらお迎えする

『桜、満開だねぇ。
…イヌフグリの花が
ぼーの鼻に付いてるよ』

『本当だぁ』

…パシャ…

笑い声に包まれて
写真を撮った

ぼーを抱っこするマサ君は
出逢った時から
優しいまま何も変わらない

マサ君は私の運命の男性

何年経っても
深い愛情で満たしてくれる

毎日まっすぐ帰る彼は

‘今夜のご飯はなあに?’

待ちきれず
電車の中からメールをしてくる

こんな平凡な幸せが
やっと私にもやって来た

でも私にとっては

この幸せが
一番の幸せなんだと感じている

あれから
お金を失った私は
初心に返り事業を考えた

這い上がる事は
どうやら得意みたいだ

色鉛筆欲しさに
ファンタのビンを拾った過去が
私を強い人間に
していたのかもしれない

二束三文の仕事から始め

現在は自営業で
いつも隣に居るぼーは
毎日カハカハ笑っている

そして今

私は夢に満ち溢れている

No.244 09/05/30 15:59
ボニータ ( ♀ 16kZh )

夢の向こうには
沢山の犬が私を待っている


保健所等で
命消えそうな犬を
出来るだけ引き取り

運命の飼い主に
命を繋ぐ
夢の架け橋に成りたい

勿論
お金や寄付は受け取らない

何故なら‘お金’が怖い事は
身を持って体験している

偽善じゃ無い

慈悲じゃ無い

私達の幸せの為に頑張れるだけ


無理をしないで
進んで行きたい

ボニータ

そんな私達の夢に
尻尾を振り笑ってくれますか?



その夜

マサ君が寝た後

物置みたいに
積まれた荷物を整理すると

昔の通知表などが出て来た
…懐かしい

小学生の時に書いた作文だ


‘【私の夢】

私の夢は犬とくらす事です。
犬が大すきだけど
家には犬がいません。
白ーい毛のかわいい顔したマルチーズにリボンをつけて
まいにち散歩したいです。
きっと運命ってあると思います。
一緒にくらせる日を楽しみにしています。’



大丈夫

夢は叶うよ

でも‘運命の犬’は
犬種じゃ無かったんだよ

懐かしさに微笑みながら
作文を2つに畳むと

私にピッタリ寄り添う
ぼーを抱き上げ頬を寄せた

…ぼー

私は今、幸せだよ

1日でも長く一緒にいようね

No.245 09/05/30 16:41
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私の過去達に


‘ありがとう’

‘さようなら’


これからは
前を向いて歩いて行こう


スペインで見た
カルメンの絵を捨て


かっ君に貰った指輪は
もう開けないアルバムに閉まった


…もう過去は辛くない…


私のつまらない
人生の通過点だったけど


何かを感じてくれるかな…


09/04/14


02:40


……


私は過去達を綴りました







私の夢は…

心に傷負ったどんな犬でも
引き取りたいんだぁ、、

沢山お話して
元気に成るまでお世話するよ


運命って有るよね?

私は誰かの
運命の架け橋に成りたいん
だぁ…




きっと私と愛犬の
不思議な現実の物語は

これから永遠に続いて行く


今日も何処かで

私とぼーは頬を寄せている


‘犬に頬を寄せて’



これからもずっと

命繋ぐ
運命の犬と伴に歩いて行く


私は幸せです




09/05/30


ボニータ



《おわり》

No.246 09/06/01 10:12
ボニータ ( ♀ 16kZh )

《あとがき》



最後迄読んで下さり
本当に有難うございました



小説に書けなかった想いを
ここに綴りたいと思います




No.247 09/06/01 10:46
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私の拙い文章に最後まで
お付き合い下さり
本当に有難うございました

落書きみたいな小説ですが
私の執筆目的は
‘ボニータの一生’の中で
体験した私の気持ちでした。

‘携帯小説’は初めてで
横書きの文章の作成に戸惑いながらも
最後まで書けるか不安でした。

そしてこの小説は
5月31日を目標に
書き綴りました

その理由は
最後に記したいと思います

小説を書く時
昔の手帳とボニータの写真を置き
マサ君の就寝後や出勤中に
執筆しました

なので睡眠時間を削り
約1ヵ月半の間
昔の私にタイムスリップしました。

精神を統一し雑音を消し
昔の私に戻るのに
10分程掛かった後
携帯電話を手にしました

その瞬間から
まるで催眠術に掛かった様に
小説の中に昔の私が居ました。

不思議と21歳の私は文章も幼く
現在の私に成る迄の
成長を感じます。

小説の21歳
ボニータとの出逢い
とても嬉しかったです

もう1度
ボニータに出逢えたからです

しかし良い事ばかりでは無く
春彦さんと出逢い
恋心を抱き

マサ君に悪いと思いながらも
春彦に恋をしてしまいました

現実の世界に戻っても
春彦を思い出してしまい
最初の挫折感が有りました

No.248 09/06/01 11:34
ボニータ ( ♀ 16kZh )

そんな私は
現実と小説の世界を
浮遊してしまいました

ボニータはいないのに
ボーにオヤツを買おうと思ったり
春彦を想ったり…

覚めない催眠術に苦しみました

それが辛く
現在の自分に戻りたくて
小説を書き急ぐ事が
出来た様に思います

しかし
思い出は想像以上に多く
昔の手帳を開いては
一語一句思い出してました

催眠術に掛かる私は
小説に入り

ドレスを惑い
昔の香水の匂いまで
嗅覚を刺激しました

だんだん春彦の逮捕に
近付くと辛く悲しく
体重が減りました

同じ思いを2度体験しながら
小説を書き進む事が出来るか
不安に成りましたが

そんな私の支えは
小説の中の‘ボニータ’と
今横に居る‘ぼー’でした

それが無くては
小説の中で飛行機に乗り
逮捕前の春彦に会いに行く事は
困難だったかもしれません

スペインに着くと
すっかり忘れていた
景色が広がりました

空港の広さ、大きなカート
空港独特の匂い

レティロ公園の前にいつも居た
花売りのおじさんの顔まで
ハッキリ思い出しました

全て実話なので
春彦の逮捕に至る迄
書けない事も有りました

No.249 09/06/01 12:16
ボニータ ( ♀ 16kZh )

しかし不思議なもので
春彦が逮捕され
小説の中で月日が経つと

春彦への思いは
自然に消化され
前に進む事が出来ました

しかし小説を振り返ると
春彦の頁が100頁以上も有り
過去の思いの大きさを感じます


次は引っ越しをして
また水商売に戻り

ボニータは歴史的事件から
私の命を救ってくれました

あの時ボニータの脱臼で
ボーの命が短く成ってしまった
のでは無いかと心痛めています

ボニータの命の短さは
私を守る為に
命を削ってしまった気がして
なりません…

そして次はタクトが出て来ます

タクトの事は
小説に書こうか悩みました

考えた末、書いた理由は

‘ボニータの一生の中で
体験した私の気持ち’

のテーマの1つ

‘命の大切さ’

から書くことにしました

数年後のHIV検査を書き
HIVは身近だと言うことを
記したかったからです

そんなタクトはあの彼女と結婚し
現在は二児の父親で
とても幸せに暮らしています。

タクトと出会う頃は
母の問題が次々出て来ます

過去の私はこの問題が辛く
殺したい位憎んだ事も有るので
どんな感情に成るか不安でした

No.250 09/06/02 13:06
ボニータ ( ♀ 16kZh )

お母さん…

母を思い、小説に入ると
お金の事ばかり考えていました

私の人生において‘お金’は
全く無くても沢山有っても
苦労する物でした

夜の世界は
贅沢な生活と引き換えに
厳しい現実と戦う日々だった
様に思います

新宿歌舞伎町

本当に
‘夜も眠らない街’です

次はホストの沢田と出会います

‘ホストとキャバクラ嬢’

よく有る話ですが私達にとって
青春みたいな恋愛でした

小説に入り込む私は
当時流れていた音楽を耳に感じ

かっ君の関西弁に
また恋をしました

そして思い出辿る私は
また別れを迎えます

今更ですが母の問題と
キャバクラ嬢を続ける私は

あの時、恋愛をしてる場合では
無かったと気付かされます

愛してからこそ
別れを決断する気持ちは
時が経っても辛い事でした

小説には書きませんでしたが
彼の両親との別れも
残酷な程悲しく

彼の母からは復縁を願う
連絡が暫く有りました

あの関西の風景
関西の方の情の深さ
さよならする心残りが
沢山有ったからでしょうか

後に綴りますが
未来に続く道に‘偶然’が
待っています

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