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レス263 HIT数 79321 あ+ あ-

ボニータ( ♀ 16kZh )
09/06/07 12:07(更新日時)

私の夢は…

白~い毛の可愛い顔した
マルチーズを飼うんだぁ、、
頭にリボンを付けて
毎日散歩するよ

運命って有るよね?

運命の子と出逢ったら
一緒に暮らすんだぁ…


私と愛犬の
不思議な
実話の物語です。



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No.1159516 09/04/14 02:40(スレ作成日時)

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No.51 09/04/20 14:22
ボニータ ( ♀ 16kZh )

春彦は焦る

私の背中のリボンをほどく手は
少し震えている

少しほどけたドレスを
私は自分で下にずらし
上半身下着姿になった


私の体は約3年の夜型生活で
日焼けも無く真っ白だ

細身の体型では有るが
胸はGカップ有る
子供の頃から胸が大きく
邪魔だった

でもホステス時代
この大きな胸はドレスを着ると
ゴージャスに演出してくれた

ピンク色の上に尖った乳房も
自分では気に入っていた


春彦は私を押し倒し
獣の様に求めて来る…
と思っていたが

…違った


私を抱け無いと言った

No.52 09/04/21 00:43
ボニータ ( ♀ 16kZh )

それどころか私の体を
見る事さえもしない

春彦は
書斎デスクの椅子に座り
『今日のワイン
美味しかったですね』と
話をはぐらかす


私は後戻り出来ない

『春彦さんは何故、
育ちの良く無いホステスだった
私なんかと結婚したいのですか?』

『愛しているからです』と
春彦はやっと私を見るが
上半身下着姿の私に
又、目を反らす

『私の事何も知らないのに?』
私は迫る


私は平凡で良いから
結婚は
大好きな男性と愛犬に囲まれて
幸せに暮らすのが夢だった

なのに私も春彦の事は
何も知らない…

『春彦さんに抱かれて
好きな気持ちを持ちたい私は
間違ってますか?』


無言を続けた春彦は口を開いた

『怖いんです…』

No.53 09/04/21 23:46
ボニータ ( ♀ 16kZh )

春彦は言う
『貴女はきっと僕が
どれ程愛してるか知らない』


知る筈も無い
言葉の足りない私達の関係は
結婚には早すぎる


春彦は言葉を続ける

『もし、今抱いて
嫌われたら怖いんです
でも籍さえ入れれば…
僕は安心して
貴女を抱けるでしょう…』


『籍を入れたら
逃げられないからですか?』
私は突っかかる

『私はデパートで買ってきた人形では有りません
私には心が有るんです』


好きな気持ちには形が無い
模索する私は
春彦を挑発する

『愛してるなら抱いて下さい』



『すぅ…』

息を呑み込んだ春彦は
スーツのジャケットを脱ぎ
ネクタイを外し


私の居るベッドへ腰を降ろした

No.54 09/04/22 00:20
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私は春彦の肩に手を回し
2人はベッドへ崩れた


春彦の肩は広くガッチリしていた

『本当に良いんですか?』
春彦は私に問う

頷く私を確認すると
私の髪を撫でながらキスをした

私のドレスを脱がし
レースの下着の中に手を入れ
次の瞬間
春彦は夢中で私の
体中を吸い付いた

私は気持ち良いのか
気持ち悪いのか鳥肌が立つ
息遣いの荒く成った
春彦はもう止まらない

私の中に固いペニスが入った…



入った瞬間春彦はイッていた

『すみません…自分を
コントロール出来ませんでした』
春彦は焦って言った

『いいえ』
私は一瞬の出来事に
心の整理が出来ない

私はお辞儀してシャワーへ行った

No.55 09/04/22 00:39
ボニータ ( ♀ 16kZh )


シャー…

シャワーを浴びている間にも
自分の心に気付いてしまった

私は春彦を愛していない


女性ならこの感覚が判るだろう

抱かれて尚
気付いてしまう
自分の気持ち…

でも私は婚約をしている

贅沢な生活とはうらはらに
私の心は満たされない


私は例え無一文に
成ったとしても
春彦との婚約を解消して
私とボー、母親と
慎ましく生活した方が
幸せでは無いのか…

そんな事ばかり考える様に成る


でも春彦は違った

この日を境に
私への屈折した愛情は
加速を掛けてしまう事に成った

No.56 09/04/22 01:07
ボニータ ( ♀ 16kZh )

【翌日】

土曜日で春彦は仕事は休み
春彦は
このまま銀座に行って
私にドレスを買いたいと言う


でも私は早く家に帰り
ボーに逢いたくて仕方なかった

『ボーちゃんに逢いたくて
堪らないです』
私は春彦に早く
家に帰りたいと言った

『ボニータに負けちゃいましたね』
春彦は判ったと
家に帰してくれる事に成った

でも
昨日私を抱いた自信からか
春彦は私の腰に
手を回す様に成った

その度私は鳥肌が立つ


私は春彦を好きに
成りたかったのに…


人の心は
好きに成る事をコントロール
出来ないのだと
私はやっと知る

心の整理が出来たら
春彦に今の気持ちを
ちゃんと伝えよう…


その日
私は朝食も食べず
ボーに逢いたい一心で
足早に帰宅した

No.57 09/04/22 01:42
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私の住んでたマンションは
12階と11階が全て
自分達の部屋だった

12階が玄関の階で
チーンと音がすると帰宅が判る

ボーに逢える嬉しさで
私は玄関のドアを
開ける前から笑顔が溢れた
『ただいまぁ』

ドアが開くと
ボーは私を既に待っていた
私を見ると
『アゥア~、キャンキャンキャン…!』

大興奮でオシッコチビリながら
大歓迎する

早送りの動きでボーは私に
抱っこをせがみ
ペロペロペロペロ顔を舐めてくる
大興奮は10分は止まらない
玄関でキャッキャッ
ボーと遊んで居ると
軽くやつれた母が来た

『ち~ちゃん、ボーを
病院に連れて行ってぇ』
母は一睡もして居ないと
目を擦る

『何で?何で?』
元気満点のボーを見て
私は理解が出来ない

『昨日の晩も今朝も
ボーは何にも
食べてくれないのよ』

母は心配で眠れなかったと言う

私は焦り
ボーを小脇に抱えカリカリを
手であげてみる


『ガブガブ』
ボーは又早送りの様に
カリカリを食べ、もっとくれと
私の手をパチパチ触り
催促していた

それを横で見ていた母は
『ち~ちゃ~ん
貴女が居なかったから
何も食べなかったのよ~』

母は床にヘタり
食べてくれて良かったぁ
と何度も言った

No.58 09/04/22 13:48
ボニータ ( ♀ 16kZh )

犬に一切興味の無かった母だが
その時は既に
『他のワンチャンは可愛いと
思わないけど
ボーだけは可愛いわぁ』

とボーを可愛がっていた

でも犬に不慣れな母は
猫用の猫じゃらしで
ボーと戦ったり

人間の赤子の様に
ボーをおんぶして散歩へ行き
近所の方を驚かせたり

ボーと遊び疲れて
ダイニングのソファ-で母が
昼間すると
ボーは母のお腹の上で
タレパンダの様に一緒に寝ていた


中々味の有るコンビだった


だけど私が居ないと
ボーは御飯を食べてくれない…

いじらしく成った…

『ボーちゃん、
私居なくてもカリカリ食べないと
メ~』
ボーに頬寄せて言うと

『カッハ~』
ボーはシッポをブンブン振って
笑った

No.59 09/04/22 14:19
ボニータ ( ♀ 16kZh )


『ち~ちゃん
この素敵なお花頂いたの?』

玄関に置いた100本の薔薇を
母は見付け
花瓶を探し始めた


私は学生時代
華道(池坊)を習っていた
剣山や花瓶は沢山有る

薔薇を広げて
花を生けようとした時


【プルルルル】

春彦からの着信が
携帯電話に鳴る

『はぁい、春彦さん』

私はボーと会えた余韻で
機嫌が良い


『あ…昨日は素敵な夜を
有難うございました
…愛してます』

春彦は幸せそうに言った


そんな私は…
春彦を…愛していない…

『あの、春彦さん
私、大切なお話をしたく
お時間取って頂けますか?』

そんな春彦は喜び
月曜日の夜に
逢いたいと返答された


電話を切り
私は少し不思議に思った

日曜日は春彦は休みなのに
何故月曜日…?

何時もなら日曜日に
必ず逢いたがる


この時、
私はすぐ話をするべきだった

何故なら
春彦は翌日の日曜日に
犯罪に手を染めてしまう


それは現実には
もう少し後で知る事に成る…



No.60 09/04/23 00:30
ボニータ ( ♀ 16kZh )


【月曜日】

私はこの日
紫色のドレスを纏い
帝国ホテルへ向かった


いつものフレンチで
食事をするデート


でも私は…

出来る事なら
…婚約解消を願いたい…

今の気持ちを
正直に言う事が目的…

愛の無い結婚は
孤独と後悔しか浮かばない

私は後悔したくない


安易に結婚を
了承した私は大馬鹿だ


春彦さんは優しい…

だから私の気持ちを
理解してくれるに違い無い…


タクシーの中で色々想像しては
溜め息をつく…


春彦はその頃
刑事にマークされてた事を
私は知る筈も無かった…

No.61 09/04/23 01:06
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『お待たせしましたか?』

いつもの様に私は
春彦の斜め後ろから声を掛けた

『いえ…』
英字新聞を2つに折り
春彦は私を見つめる…


『あれ?春彦さん
眼鏡を変えました?』

細い純金の眼鏡に
変えたのが判る

春彦は最近お洒落だ


出逢った時は固い
官僚のイメージが有ったが
私と逢うにつれ
服装のセンスが変わっていく
会う度に新しいスーツを着ている


春彦は
良い物を着て
良い物しか食べない
私に湯水の様にプレゼントを送る
…贅沢だ

そんな春彦を
又少しずつ嫌いに成る…

何故贅沢でこんなにも
嫌悪感が沸くのだろう


多分、、私は子供の頃
凄い貧乏だったから
かもしれない


貧乏は苦しかったけど
物の大切さを教えてくれた

その感情はお金では買えない


複雑な気持ちで
フレンチレストランへの階段を登った

No.62 09/04/23 01:32
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『今日のドレスも良く似合う
僕の自慢のフィアンセですよ』

春彦はお世辞も交えて
機嫌が良い

電話の声でも判るが
春彦は私を抱いた日から
大変ご機嫌だ


いつも私達の座る席は
テーブルが少し大きい
正面に座ると少し遠く
密な話は出来ない

レストラン方も皆さん
顔見知りに成ってしまい

只でさえ
私達の席は注意深く
チェックされている

婚約解消の話をしたら
春彦の顔を潰してしまう


この後バーに誘い
私の気持ちは
バーで話す事に決めた


すると春彦は
『プレゼントです』

見るからに豪華な箱を
紙袋から出した


豪華なプレゼントは箱で判る

私は怯えた

私は何も言わず
豪華な宝石箱のフタを開けた

…ダイヤのネックレスだ…

私は背筋が寒くなった

いくら私が
小娘だからと言っても
ホステスをしてた私には
凄い高価な品と悟れる

『春彦さん
失礼ですがこのネックレス
おいくらですか?』

私はフタを閉めて聞いた




『3000万円です』

No.63 09/04/23 14:53
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『貴女と素敵な夜を
過ごした記念です』

春彦は自信に
満ち溢れんばかりに言う


私の心の糸が
切れた瞬間だった


『私は嬉しく有りません』
私は思わず
言葉にしてしまった


春彦の顔色は曇る
春彦の描いたストーリとは違う様だ





私は何故か思い出す

それは私が
小学校1年生の想い出…


私の家は凄く貧乏だった

暗い部屋で寝込む母を横に
私はいつも独り静かに
拾ったダンボールに
絵を書いて遊んでいた

私の書く絵は
誰からも誉められた

そんな私も小学校に入学し
最初の授業はぬり絵だった

でも私には
色を塗る色鉛筆が無い
色鉛筆を買う余裕が無かった

クラスの皆は
先の尖った新しい12色の
色鉛筆を持っている

絵が好きな私は
とてもみじめな気分に成ったが
みじめな思いは慣れっこだった


すると
隣の席の男の子が
色鉛筆の無い私に気付く

『貸してあげるよ!
使って!』

No.64 09/04/23 16:21
ボニータ ( ♀ 16kZh )


新しい色鉛筆を
貸してくれると言う
隣の席の男の子【オサム君】


でも私は
1度も使った事の無い
新品の色鉛筆を貸りる事は
子供心にも悪いと思った


『有難う。貸りるね』

私は1度オサム君の使った
先の丸く成る色鉛筆を待って
塗っていた

それにオサム君はすぐ気付く

『何で?
好きな色を使っていいんだよ』
オサム君は笑顔で
新品の色鉛筆を貸してくれた

私は嬉しくて嬉しくて
泣きそうだった

私は泣くのを必死で堪えた
そして私が
オサム君から色鉛筆を貸りて
塗ったぬり絵は
黒板の前に貼り出され
花丸を貰った

オサム君は自分の事の様に
凄く喜んでくれた

本当に優しい人は
そんなふとした時に出る
オサム君は私の初恋の人

私は
本当の優しさに敏感だった

…そして
私はどうしても色鉛筆欲しさに
当時道に落ちてる
‘ファンタ’のビンを拾い集めた

商店に空ビンを持って行くと
1本10円お金が貰える

私は学校が終わるとビンを拾う

そしてやっと700円貯まり

私は文房具屋さんで
新品の色鉛筆を買った




私には
3000万円のネックレスなんて
決して似合わない


No.65 09/04/23 21:00
ボニータ ( ♀ 16kZh )


私は現実に返る


『春彦さん
私、このネックレス頂けません
お返しします』

私は箱のまま
春彦にネックレスを返した

春彦の止まらない金銭感覚は
私を精神的に追い詰める


外務省はそんなに
お金を稼げる仕事なのか??…


そんな春彦は
苛々と殺気立つ私に
困惑した様子だった


行き場の無い空気を
上手く埋めるかの様に
次々テーブルにはフルコースが運ばれる


…私は考え続ける…
春彦は…何か…おかしい…

美味しい料理を頂きながら
私は遅いのだろうが
少しずつ春彦に疑問を抱く


春彦は外務省勤務と言うのは
嘘なのではないか?


いくら何でも
ただのプレゼントに
3000万円は尋常じゃない

皇族が持ちそうな
ダイヤの存在感は
3000万円と言う金額が
嘘とも思えない


私は春彦を
試す方法を思い付いた

その私の案には
まず
ボーに会わす事が必要だった


お食事が終わり
この後バーに行く事を辞め

私の家で話をする事にした


『春彦さん
今夜私の家に行きましょう』

食事を終え
私と春彦はタクシーで
私の住むマンションへ向かった

No.66 09/04/23 23:12
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母には電話で
今から春彦と家に行くと伝えた

実は私の母は
春彦がとても苦手だった

始めて母と春彦が会ったのは
私の入院した病院だったが

母は何故だかいつも
春彦を避けていた

電話で春彦が一緒だと言うと
『先に寝てていい?』
と母は言ったが

私はせめてお茶位出して
挨拶して欲しいと頼んだ


タクシーの中で
私はボニータの話をした

ボーの話は
春彦と会う度していたが
春彦の反応をもう1度
見たかったからだ

春彦は犬が大好きだと
私に会った時から言っていた

タクシーの中で春彦は
私の機嫌を伺うかの様に
『犬は大好きで可愛い』
と言っていた



そんな間にも
タクシーはマンションに到着した

春彦はこのマンションの
敷金礼金家賃を払っていた

でも
私と母が引っ越してから
春彦が家に上がるのは
始めての事だった

No.67 09/04/23 23:37
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『ただいまぁ~』
私は家のドアを開けた

すると母は
化粧をして出迎えてくれた

『これはこれは
○○(春彦の苗字)さん
いつも娘が
お世話に成っております』
母が春彦に頭を下げていると


『ヴ~ヴ~!アガガガ!』

ボーは母の横で必死に
春彦を威嚇していた

ボーは当時
犬嫌いの人間には
特に威嚇した

私はすぐ春彦を見た


春彦は焦り、
思いっ切り引きつっている
ボーを抱っこしようとも
ボーに話掛けようともしない

犬好きの人間が見せる行動を
春彦は一切しない


それを見ていた母は
『あら、ごめんなさい。
○○さんは
ワンチャンお嫌いですか?』

春彦に言うと
春彦は大量の汗を掻いていた

母はアガガガ止まらない
ボーを小脇に抱えて
『どうぞ…どうぞ』

春彦をダイニングに通した

No.68 09/04/24 00:11
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母は春彦に珈琲を出した


その間も
ボーはジタバタと母の小脇で
春彦に『アガガガ』
止まらない

母は暴れるボーをあやしながら
離れて話をしていた

他愛ない話の中
母は悪気無く春彦に言った

『○○さん
バッジってお勤め先から出たら
外さなくちゃ
いけないんですか?』


春彦は首を傾げる
『何のバッジですか?』


母は(え?)と言う表情で
『外務省のバッジですよ』
と言った


私は見逃さない
春彦は目が泳いでいる…


すると全く空気を読まない
母が言った
『外務省のバッジ見せて下さい』

母は
‘み・せ・て’と言う感じで
可愛く片手を出して居た


春彦は言葉に詰まる

私は春彦を直視していた


『無くすといけないので
職場に置いて有ります』

春彦は耳を赤くして答えた

その間もボーは
『アンギャー!アガガガ!』
止まらなかった

No.69 09/04/24 00:35
ボニータ ( ♀ 16kZh )

ボーは今にも
空中を泳ぎそうな勢いで
春彦に向かってジタバタ
『アガガガ』している

しかもそれは
小さく可愛いポメラニアンだ

もし本当に犬好きなら
可愛くて可笑しくて
堪らない処なのに
春彦は終始
ボーの事に触れなかった



『お母さん珈琲有難う
私達、お部屋で少し
お話するね』

私が口火を切ると
春彦はホッとした表情をした

春彦は母に頭を下げ
ダイニングを後にした



私の部屋に移動し
私は春彦に言った


『春彦さん
何で嘘を付くの?』


春彦は暑くも無いのに
ハンカチでずっと汗を拭く
そして
春彦は無言を続ける…

私は言った
『春彦さん
犬が好きなんて嘘でしょう?』

春彦は
‘嗚呼その事か…’
と言った感じで

『すいません…
子供の頃は好きだったんです』
取り繕った言い訳をする


私は続けた
『ねぇ…
まだ嘘付いてますよね?』

No.70 09/04/24 01:25
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私はさっきの会話で
春彦は外務省勤務では無い…と
もう確信していた

でも私は春彦の口から
どうしても嘘の訳が
聞きたかった


なのに春彦は
『何の事ですか?』
と認めない

それなら私にも考えが有る

『春彦さん、結婚式
延期にしましょう』
私はハッキリ言った


春彦は赤い顔が白く成る
『何故ですか?
僕の事嫌いですか?』


…私は正直に答えた
『私も春彦さんを愛そうと
抱かれました
でも結婚迄は愛してない
自分の気持ちに気付て
しまいました。。
それに春彦さんは私に
取り返しの着かない嘘を
付いてますよね?
信用出来る迄
結婚は出来ません』

私はどさくさに紛れて
意味深な事も言った


春彦は必死に成る

『じゃあ、今別れるとか
ずっと僕と結婚しない訳では
無いですよね?』


私の心はこの時複雑で
これ以上春彦を
嫌いに成る事も嫌だった

『今日は帰って下さい
そして結婚式は
延期にしましょう』

私が言うと
私が限界と判ったのか

『判りました…』
春彦は素直に帰って行った

No.71 09/04/24 01:57
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母と一緒に
玄関で春彦を見送った後

私はダイニングのソファー横に
春彦の忘れ物を見付けた

それはあのダイヤのネックレス
の入った紙袋だった

でも私は
絶対受け取らないと
心に決めていた

…次会った時に返そう…

部屋のクローゼットに紙袋ごと置き
ダイニングに戻った

すると母の小脇から
解放されたボーは
キュンキュンと私に抱っこをせがみ
2本足でジャンプしていた

私はボーに頬寄せて
抱き締めた後
高い高いをして遊んだ


私は結婚式を延期出来た
解放からか
心に余裕が出来た

でも…
それと同時に春彦の正体が
気になる




この結婚式の延期が
私の人生の
分かれ目でも有った


春彦の逮捕は
本来私達の結婚式予定
8月を1ヶ月越えた
9月に逮捕される事に成る



No.72 09/04/24 02:42
ボニータ ( ♀ 16kZh )

【翌日】

私は朝10時、椿山荘に
結婚式のキャンセルの電話をした

電話に出た担当の女性は
えらく焦っていた


私が電話を切った
10分後位に
春彦のお母様から電話が来た

『困っちゃうわぁ
結婚式キャンセルって本当なの?』

私は
『すいません』と謝った

『理由はなあに?
喧嘩でもしちゃったの?』
春彦のお母様は
優しく聞いて来た


私は‘そうだ’と思い
『春彦さん、
私に本当の仕事を
教えてくれないんです』
と言った

すると春彦のお母様は

『春彦?仕事?
あの子は宝石商ですよ。
何の仕事って言われてるの?』

…あっさり
仕事が判ってしまった


『あ…私には春彦さん
外務省って言われてます』
私が答えると

『いやぁねぇ…本当?
酔っ払ってたんじゃ無いの?』
春彦のお母様はそう言った…


『すいません
今後の話し合いが固まったら
又御挨拶します』

混乱する私は
早々に電話を切ってしまった



その日を境に
毎日有った
春彦からの連絡が
急に無くなってしまった

No.73 09/04/24 04:04
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私から春彦に
連絡する気分にも成れず

私は色々考える


そして私は母に言った

『ねぇ、お母さん…私、
春彦さんと結婚解消して
貰ったプレゼント全部返して
この生活
出来なく成っても良い?』

すると母の
1番最初の言葉は
『ボーは?
お母さん、ボーだけは
絶対返したく無いわよ』

咄嗟に出た言葉だった

私は嬉しかった

『お母さん、
ボーは私が働いたお金で
買ったから大丈夫だよ』

そう言うと
安心した母は
しみじみ言った

『人はね、やっぱり
身分相応って有って
私達にこの生活は贅沢過ぎる
お母さんはち~ちゃんと
ボーが居ればそれで
充分なんだから』


それを聞いた私は
母に悪いと思いながらも
ドッと肩の荷が
降りた思いだった


…自分の貯金は
春彦に出会う前
幸いな事に定期預金していた
残高は引っ越しても
少し余裕は有る…

私は春彦との別れを
いつ切り出すか考え出す…




この後

現実に有った
サスペンス劇場を私は
体験してしまう

時間が経った今でも

この先は

思い出すのがとても辛い


No.74 09/04/24 15:34
ボニータ ( ♀ 16kZh )


連絡無い日々は約3週間…

春彦との関係は
自然消滅なのかも知れない…

あれ程までに
私を愛してると
唱えた歌は聴こえない

きっと連絡無い日々が
答えなんだと

私は自分に納得させる


…でも人の想いとは
不思議だ

突然居なく成ると
淋しく思う事も有る

春彦とこのまま別れても
私への想いだけは
本当だったと

ただ
信じたい自分も現れる…


正にそんな頃だった…


静かな部屋に電話が鳴った
‘プルルルル’

それは春彦からだった

『はい』
私は両手で電話を耳に当てる


『ずっと声が聞きたかった』
春彦は思い詰めた声だった


でも私は複雑な
自分の気持ちを殺す…

『サヨナラの前にネックレスを
お返ししたい』

これはケジメだから
言わなくてはいけない


そんな春彦は
『ただ、ただ
愛してるだけなんです一生…』

沈黙が流れる中…
電話は切れてしまう


久し振りの電話は
お互いに一方通行だった

No.75 09/04/24 21:06
ボニータ ( ♀ 16kZh )

切れた電話から
暫く次の着信を待つが
電話は鳴らない

私は春彦からの
連絡が無い事も有り
引っ越しを考えていた

でも

今切れた電話には
まだ春彦から愛情を感じる

私は出来る事なら
今の真実を知り
嘘の理由も知りたい

私から切り出した
さよならのキッカケだけど

お別れの時は
最後に会ってお別れしたい

それが情なのか愛情なのか
自分でも判らない


春彦の携帯は圏外

春彦のお母様も
春彦の居場所判らず
逆に教えて欲しいと
取り乱していた


そんな3日後

春彦から
国際電話が入る

『誰にも行先は言わず
明日成田発の飛行機で
スペインに来て欲しい』

チケットはカウンターで
受け取れると言われた

春彦に会える方法は
今それだけ

私は
『判りました』と答え

春彦の指示をメモした

No.76 09/04/24 22:24
ボニータ ( ♀ 16kZh )

その頃
私の母は何となく
行方の判らない春彦の連絡を
私は待っていると知っていた

でも私に気遣ってか
多くを私に聞かない

そんな生活の中で私達の
唯一の癒しはボーだった

ボーはとても可愛い
ゴムまりの様に
部屋中を飛び跳ね
フローリングをチャカチャカ走る

突然の夜鳴きと
足に噛み付く癖は
まだ抜け無いが

母からもカリカリを
食べる様に成った

でもカリカリを母があげる時
『おいちぃね』
と言いながら1粒ずつ
手であげないと食べない
変な癖が付いたが
母はカリカリタイムを楽しんでいた


私はダイニングに行き
母に言った
『明日から少し
旅行に行ってくるね』

母は深く聞かず
『は~い、ボーにお土産
忘れないでね』
と返事をしていた

私は部屋に戻り
スーツケースに洋服を詰め込む

スペインは最近迄
留学した場所
ペセタも少し残ってる…
…パスポートも入れて

飛行時間は約12時間…

…私は何故
この時必死で
春彦に逢う為に
用意をしていたのだろう

愛情が無いからと
結婚を辞めたのは私なのに…

私はこの時
心の何処かで春彦の犯罪に
気付いていたのだろうか…
犯罪を予感する気持ちで
愛情を認める事が
怖かったのだろうか


No.77 09/04/24 22:50
ボニータ ( ♀ 16kZh )

【翌日】

私はタクシーで成田空港へ向かう

用意されたチケットは
今回もファーストクラスだった

1人で機内へ入り
広い座席に座る

スペインは遠い
乗り継ぎも時差も有る

春彦とはマドリッド空港で
待ち合わせだった


でも何故スペイン…

私が好きな街だから?


時間の有り余る私は
悪い想像で
押し潰されそうに成る


春彦は日本には
もう居れないのか…?

指名手配されているのか?

3000万円のネックレスは
何か関係有るのか?

私の考え事は
途切れる事無かった




とてもとても
長く感じたフライトを終え


私はやっと春彦と
待ち合わせする
空港に到着した

No.78 09/04/24 23:29
ボニータ ( ♀ 16kZh )

スペインの空港は
日本人が少ない
すぐ春彦を見付けた

春彦は
スーツ姿で私を待って居る

私は春彦に
聞きたい事が沢山有る

春彦は私に駆け寄ると
私を強く抱きしめた

『不安にさせてすみません』

暫く春彦は私を離さない


何故だろう…私は
涙が出てしまった

『あの、春彦さん
私、話たい事が沢山…』

春彦は頷くと
‘リッツ’と言うホテルに
宿泊してるから
話は部屋で…と言った

この逢った
一瞬でも判る…
春彦は私を
変わらず深く愛している

そして私達は
タクシーに乗りホテルに向かった

その間春彦は
私の腰と手を触り
何かを重く考えている


私はもう春彦と
日本でこんな風に
会えないのでは無いか…と
予感してしまう

No.79 09/04/24 23:44
ボニータ ( ♀ 16kZh )


リッツと言うホテルに到着した

古いホテルだが
格式の有る高級なホテルと
すぐ判った

部屋は豪華と言うより
良い家具が上品に揃っていた

観光に来た気分では
決して無かったが
私は部屋1つ1つを
見て回った


お風呂場がとても広い
白い足の付いたバスタブは
お姫様が入る様な
お風呂だった


『婚前旅行と言ったら
怒りますか?』

春彦は私の肩に手を置いて
言った


私は春彦の正体が判らない…

私は春彦の手を引き
椅子に座らせた


『春彦さん
私に本当の事を話して下さい』
私の長い質問が始まった

No.80 09/04/25 00:14
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『貴女は怒った顔も綺麗だ』

春彦は映画みたいなセリフを
私によく言っていた

しかしキザなセリフに
私は慣れてしまって居た



『春彦さん、外務省と何故
嘘を付いたのですか?』


春彦は言う
『外務省と言えば
まず僕に
興味を持って貰えると
思ったんです…』


私は質問を続ける
『何故今、
スペインに居るのですか?』

春彦は考えた嘘を付く
『スペイン金の彫り物を
買い付けに来ました』


私も偶然スペインの彫金に
興味が有り知っていた

宝石商なら仕入れも
あり得る話…


『春彦さんは何故突然
1ヶ月も私と
距離を置いたのですか?』

春彦は言う
『結婚延期のショックと
仕事の嘘が貴女に判り
会わす顔が無かったんです』



最もらしい言い訳を
春彦は答えた

No.81 09/04/25 00:47
ボニータ ( ♀ 16kZh )

そして私は
一番聞きたい質問をした
『3000万するネックレスを私に
何故プレゼントしたのですか?』


春彦は
言葉を溜めて言った

『貴女の喜ぶ顔が
見たかっただけなんです』

この言葉は本心だと感じた


私はハッとする

私は子供の頃
寝込んでばかりの
母の笑顔が見たくて
親孝行ばかり考えていた


春彦との結婚は
母を楽に出来ると思ったから…
母の笑顔が見たいから
だった…


私も春彦も
大切な人の笑顔が見たくて
無理して頑張ってしまう…

でも結局
私も春彦も
お互いを傷つけていた…


ネックレスの件は
春彦ばかりを責められない
私も同じだ


私は言った
『あのネックレス
1度も触ってもいません
新品です
返品して下さい』


『判りました
負担を掛けて
すみませんでした』
春彦は言った


でも私も
春彦に謝らなくてはいけない…

No.82 09/04/25 01:06
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『ごめんなさい
春彦さんとの結婚…
私も母の笑顔が見たかったのが
理由なんです』

私は立ち上がって頭を下げた


すると春彦は
優しい顔で言った

『いいんですよ
僕に心が無い事位判って
ましたからね
結婚をOKしてくれた時
本当に嬉しかった』



私は春彦を
好きに成りそうに成る

もしかしたら
この時
好きだったのかもしれない…

でも
私は流されたらいけない


『春彦さん…』
この先の言葉が中々出ない…

私の目から
涙が落ちてしまう

『自主して下さい…』


No.83 09/04/25 16:07
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私は春彦に自首を勧めた


私は飛内や
乗り継ぎの待合時間
そして今迄もずっと
春彦の行動を思い返していた


行方を家族にも報せぬ事…

誰にも行先告げず
此所に来て欲しいと
私に告げた事…

突然切れた電話…

圏外の春彦の携帯電話…


もし
春彦が私に愛が無いのなら
それも判る話だった



でも春彦は私を愛している

今言われた言い訳も
私には嘘と判ってしまう



なのに春彦は
表情1つ変えて居なかった

春彦は私に嘘を認めない

No.84 09/04/26 11:25
ボニータ ( ♀ 16kZh )

春彦は言う
『僕は捕まったりしない
だから…
泣かないで下さい』


春彦は私の涙を見て
どんな気持ちだったのだろう


時過ぎても私は思う事が有る
この時にもし
自首をしていれば…

罪から逃げた幸せ等
有る訳が無い…

歯車が狂ったまま
春彦は私に
真実を話してはくれなかった



この時スペインは夜だ

春彦は朝から
毎日数時間
仕事で外出し
明日はお昼前後には
ホテルに戻れると言う


そんな嘘も
私は春彦の言葉が全部
本当なら良いのに…
と微かに思ってしまう
自分も居た


真実が判らない
私の疑問は闇の中…


『今夜、貴女は疲れている
今日は休みましょう』

春彦はそう言うと
バスタブに湯を張り

順番に入浴し
今夜は寝る事にした

No.85 09/04/26 12:02
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私は荷物の整理が有る…

先に入浴して貰った


私はシャワーの音を確認すると
耳を立てなら
春彦の荷物をチェックした

ドキドキした…

人の荷物を見るのは
悪いと思いつつ
目当ての春彦の手帳を探す

何か証拠が隠されてるかも
しれない


春彦のスーツケースに手を伸ばす
…鍵が掛かっていた

仕方ない
私は裸足に成り部屋中走る

次は春彦のジャケットの内ポケットに
手を入れてみた


財布と名刺入れが有った

私は名刺入れを手を取り
そっと開けてみた

その名刺入れには
私がホステス時代
春彦に渡した名刺が
一番上に有った

暫く眺めてしまった


……キュッ…

シャワーを止めた音が聞こえた
焦る私は名刺をパーッと見て
同じ名刺を1枚抜き取り
胸に隠した

名刺入れに付いた私の指紋を
服で拭き取り
元の場所に名刺入れを返した

財布を確認するには
時間が足りない

私は急いで
自分の荷物の場所に戻り
胸に入れた名刺を
私のスーツケースの底に隠した


…カチャ

『お待たせしました』

シャワーから出た春彦は
次どうぞ…と言うジェスチャーで
バスローブを着て出て来た

私はスーツケースに鍵を掛け
『有難う』
何事も無い様にお辞儀をして
お風呂場へ行った

No.86 09/04/27 00:32
ボニータ ( ♀ 16kZh )

浴室は10畳程有り
隣の部屋と段差が無く
ワンルームの様に広い

‘ポチャン’
私は湯船に浸かる

静かな夜だ


部屋でテレビを付けた音が
浴室にも聞こえて来た

私はその小さな音を聞いて
ボーッとしていた

すると

『…早…しか…
だか……ま…』

春彦の話声が聞こえる
電話の感じだ

…でも
聞き耳立てても
全く内容が判らない


そんな私は
旅と心労で疲れていた…

春彦の電話の声も曖昧に
熱いシャワーで疲れを取るが
次は春彦の鍵の掛かった
スーツケースが気に成る…


私もそうだが
疚しい事が無いとスーツケースに
鍵は掛けないだろう…

春彦を疑う私は
全てが疑問に感じてしまう

そんな事を考えながら
私は長い髪を洗い
ガウンを着て浴室を出た

No.87 09/04/27 01:05
ボニータ ( ♀ 16kZh )

浴室から出ると
春彦も同じガウンに着替えて居た


微笑む春彦に言った
『先程、話声が聞こえた
気がするんですけど』

でも春彦に
『それはテレビの声ですよ』
と返されてしまった


春彦の言動は
こんな小さな事だけど
‘怪しい…’
と思う事が多い


一方春彦は
そんな私の想いを知ってか
気丈に明るく努め
私に不安を与えない様
一生懸命に振る舞うのが判る

そして何よりも
私に優しい…


あんなに
春彦を愛そうと努力して
愛せないと
思っていたのに


私への優しさと愛情で
今頃
傾きそうな自分も居る…



誰か教えて下さい

好きな気持ちとは
いつ、どこから
やって来るのでしょうか?

No.88 09/04/27 12:28
ボニータ ( ♀ 16kZh )


私の揺れる気持ちは切ない

好きに成っては駄目だ…と
理性がブレーキを掛ける度
私の胸は針が刺さる様に痛い



『もうこんな時間ですね』

春彦に促され
寝室に移動し
3m有る白いキングベッドに
横に成った


春彦は何か話をしたそうな
雰囲気だったが
私は背中を向けて
‘おやすみなさい’
と小声で言うと

春彦は
『明日の夜はカルメンでも
見に行きましょう…』

と私の頬にキスをして

‘おやすみなさい’
と電気を消した


私は疲れていたらしい…

すぐ眠ってしまった




No.89 09/04/27 13:06
ボニータ ( ♀ 16kZh )


私は泥の様に眠ってしまい
夢も見ない程熟睡していた…

【翌日】

春彦の姿は無く
春彦の言う‘仕事’に
出掛けた様だ

時計を見ると
もうam10時を過ぎていた

私はボーッとしながら
浴室へ行きシャワーを浴びると
やっと私は目が覚めた

服を着るのに
スーツケースを開ける…

昨日スーツケースに隠した
春彦の名刺を思い出し
スーツケースの奥から名刺を
引っ張り出した

【○○宝石 ○○春彦】

立派な名刺には
春彦の勤め先が印刷して有る

会社の住所を見た

私に用意したマンションから近い
車で15分位の距離だろう


何故、本当の事を
教えてくれなかったのか…

1つ嘘を付くと
嘘を取り巻く現実も嘘に成る…

私は哀しさで一杯だった


春彦の名刺は
私のスーツケースのポケットに隠した

私は身支度を初め
ドレッサーで化粧をしていた

‘コンコン’

軽いテンポでドアを叩くと
鍵が開き
春彦が入って来た

『早く貴女と居たくて
仕事切り上げました』

息を切らし
笑顔で帰って来た


『お仕事お疲れ様でした』
私は
名刺の事は聞けなかった…

No.90 09/04/27 13:54
ボニータ ( ♀ 16kZh )

化粧をしてた私に
春彦は背中から抱き付いて来た

鏡に写る春彦は
さっきの笑顔とは違い
切ない顔をしている

『春彦さん…』

私が振り返るとキスをされ
窓から降り注ぐ日射しを
受けながら
2つの影は1つに成った


すると春彦は
理性が無くなったかの様に
私の胸に手を入れた


私は抵抗しなかった


春彦は私の胸を長い時間
揉み上げ吸い付くと

私をお姫様抱っこして
ベッドへ運ぶ…

あんなに嫌だと感じた
春彦とのSexを
すんなり受け入れてしまう
自分が居た


春彦はネクタイを外し服を脱ぎ
私の恥ずかしい部分を広げ
‘アァ…’
春彦はセクシーな声をだして
舐め尽くした

私は発情した…と言うより
愛情が有ったから
Sexを受け入れられた


『中に入りたい…』
春彦が私に確認すると
固い春彦のペニスがゆっくり
入って来た

『愛してる』
そう言う春彦は泣いていた

切ないSexは心を痛くする

私は又、胸が痛い…

だって…
この人はきっと
捕まってしまうだろう…


私のそんな想いは知らずに
春彦は私の体へ嵌まっていった


No.91 09/04/28 10:44
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『貴女を最初に抱いた男人を
殺めたい…』

春彦は私を抱いた後
私の過去にも嫉妬した

春彦の愛情は深く
そして…時に怖くも有った


2人乱れたベッドは
時間を忘れさせていた

昼間青く照り射した日射しも
穏やかな夕暮れに色付いている

私は1日の早さをを感じる…


『春彦さん、私、
帰国日を決めないと…』
そう言うと

『もう少し待って下さい』
春彦は慌て

『仕事の目処が立ち次第
帰国日は決めましょう…』

一泊何十万するであろう
この部屋に泊まり
何泊でも滞在しようと
言うのだ

そんな時
私の気持ちは
又…不安へと
愛情は振り出しに戻っていく


No.92 09/04/28 11:33
ボニータ ( ♀ 16kZh )


スペインの酒場は
店主人の気分で店が開く

真面目な日本人が
始めてスペインに行くと
時間のルーズな感覚に
戸惑うだろう

マドリッドの高級住宅街は
夜に電気が半分程しか
灯らぬ理由は住人が不在だ

彼らは半年働き
半年は海外旅行等で遊ぶのが
普通である


私と春彦は体を交わした夜
そんな住宅街の石畳を歩き
カルメンを見る為
酒場へ繰り出した


レティロ公園の出前で
私に手を振るおじさんが居る

私はすぐ判った

留学した時、毎日1本
私はこの花売りのおじさんから
花を買っていた


スペインは英語が殆んど通じない
早口でスペイン語を話す花売りが
話す意味は判らないけど
いつも私に言う言葉が有った

『ボニータ!ボニータ!』

スペイン語で‘可愛い娘’
の意味だ

物売りのお世辞だろうが

私はこの発音と言葉の響きが
とても大好きだ

なので運命の愛犬に
♂♀関係無く名付けたのだ

ボーの名付けの切っ掛けである
花売りのおじさんだ

久し振りの再会に私が駆け寄る

『オー!ボニータ!』

おじさんはエプロンのポケットから
手を出し
私と再会の握手をした

No.93 09/04/28 12:30
ボニータ ( ♀ 16kZh )

それを見てた春彦は
『どの花が欲しいですか?』

私は真っ赤の薔薇1本
お願いした

花売りおじさんに手を振った後
薔薇を見つめた



カルメンには赤い薔薇が似合う

私は酒場のカルメンが
見たい理由が有った

よく有る日本人向けの
‘闘牛見てカルメン’の
観光のダンサーは
私の目当てでは無い

留学時
1人でその酒場に来たかったが
若い女性1人は危ないと
止められていたのだ



噂で聞く酒場に到着した

店内は映画の様に
異国人が集い
煙草と酒の匂いで
酔いそうに成る

女性客は少ない上
日本人の私はジロジロ見られた

でも春彦が居るので
私はお構い無しで
ダンサーの登場を待っていた

前ぶれも無く
店内が暗く成った

カルメンの踊りが始まる…

ギターの音色に合わせ
黒髪のカルメンが出て来た

カルメンは踊りながら
金持ちそうな夜の相手を探す

その高飛車な態度と
娼婦に似た妖艶な色気は
観光ダンサーと全く違う


愛想も笑顔も無い
生活の為に
夜の相手を探す

私が見たいカルメンが
美しく踊る

私が薔薇の花を1本差し出すと
胸に差し踊った

私は目に焼き付けた

私は油絵に
娼婦の様なカルメンをずっと
描きたかったのだ

No.94 09/04/28 12:59
ボニータ ( ♀ 16kZh )


『春彦さん
付き合ってくれて
有難うございました』

私は店を出てお礼を言った

春彦は小汚い店内が
余り好きでは無さそうだったが
『貴女が楽しければ
僕も楽しいですよ』
と言ってくれた


でも私はここでも
春彦が怪しい…と
思う事が有った

それは
店内で何度か春彦は席を立った

そのタイミングで
私もトイレに後から行くと

少し離れた公衆電話で
春彦は話をしていた

煩い店内なので
春彦の声は大きい

そして春彦の表情は怖く
大きなジェスチャーで手を振り
凄く怒っていた

私は隠れて春彦の
そんな行動を見ていた…

『春彦さん
さっき電話してました?』
私が聞くと

『してませんが…なぜですか?
』と春彦は返す

小さな嘘が増える度
又私は淋しくなる


そして春彦の行動は
日々怪しく成って行った

No.95 09/04/28 13:44
ボニータ ( ♀ 16kZh )


ホテルに戻り
シャワーを浴びベッドに入ると

私の足に
春彦は足を絡ませてきた

『今日したばかりですよ』
…私は
怪しい春彦に不信感も有り
Sexの気分では無かった

しかし春彦の欲情は止まらない

私の手を引っ張り抱き寄せた後
私の胸を夢中で
揉みながら吸い上げる…

『春彦さん、許して…』

私は解放を願うが
春彦は欲情に激しさを増し
止まらない

『貴女は僕のものだ…』

私の体中を散々吸い付いた後
春彦は私の中に激しく挿入する

中に入ると安心するのか
急に優しく成る…

春彦はきっとこの時
捕まる不安で情緒不安定
だったのだろう


穏やかで優しかった春彦は
この時は何時も難しい顔で
考え事をする時が多かった

何か不安に襲われると
私の体に逃げた気がする

『一緒に日本へ帰りましょう』

私のこの言葉には
いつも返事は返って来なかった

No.96 09/04/28 15:48
ボニータ ( ♀ 16kZh )

人によると思うが
恋心を抱いた人とSexすると
‘愛が深く成る人’と
‘冷静が戻る人’
に分かれると思う

春彦は前者で
私は後者だった

抱く事によって
愛情の距離が開くとは
春彦には皮肉な話だろう…

私は春彦の居ない時間、彼の
怪しい行動と時間をメモに残し
スーツケースのポケットに隠していた

私はどうしても
真実が知りたかった


そんなスペイン
4日目の夜の事だった

春彦の言う‘仕事’に出た彼は
夕方顔色も悪く
疲れてホテルに帰って来た

椅子に座る余裕も無いのか
春彦は部屋でウロウロし
窓から外を眺めて私に言った

『一緒に
ドイツに行きませんか?』


私は首を横に振り
『ごめんなさい』

そう言うと
春彦は暫く春彦は外を眺め

『判りました…』



私の帰国は早々にも
翌日に成った

No.97 09/04/28 17:44
ボニータ ( ♀ 16kZh )

明日私は日本に帰国出来るが
春彦は暫く海外で
仕事が有ると告げられた


『春彦さんはいつ
日本に帰国出来るんですか?』

私が春彦に問うと
10日後かもしれないし
数ヵ月掛かるかもしれない…
と言う

何とも言え無い
長い長い沈黙が流れた



『来年、
貴女の好きな季節に
盛大な結婚式を挙げよう…
そうだ
僕の留守の間は
エステに行けばい…』

春彦は言葉に詰まる

私に背中を向けた春彦は
泣いていた


『春彦さん…』

私はこんな切ない婚約は嫌だ…

そして私はこの人を
これ以上
好きに成ってはいけない

『春彦さん…お願いです』


『一緒に日本へ帰って
自首して下さい』

No.98 09/04/28 18:02
ボニータ ( ♀ 16kZh )

立ち尽くす私に
春彦は抱きついた

『だから…
僕は捕まったりしない…
必ず帰って来る』

春彦は最後の最後迄
私に真実を教えてくれなかった


私達はその夜
朝迄寝ないで話をした

今迄出来なかった
話をしたり

お互いの好みや趣味
好きな音楽、昔話…

そんな普通の恋人同士の会話を
私達はした事が無い


いつも春彦は先を急ぎ
私に夢中で一生懸命で
私は春彦の何も知らなかった

やっとスタート地点に立てた

なのに
傾き始めた私の恋は
もう終わりに近付いていた

この日が
私と春彦…2人で過ごした
最後の日だった

No.99 09/04/29 00:00
ボニータ ( ♀ 16kZh )


用意された帰りのチケットも
ファーストクラス

私は1人席に座り
春彦との出会いから
今迄を振り返っていた

…切なかった

春彦の愛情を思い出すと
胸が痛い




長いフライトを終え
やっと成田空港に着いた


私は母に電話を入れた
『あ、私。』
そう言うと

『どこ行ってたの?
毎日毎日ち~ちゃんに
電話が有ったわよ』

母は私の居場所を
探していた様だ


良くない予感がした

『お母さん
電話の相手は誰?』
咄嗟に私が言うと

『○○宝石の佐藤さん』


春彦の会社の人だ

私が春彦から1枚抜き取った
名刺と同じ会社名だ…


『何か伝言有るの?』
私が聞くと

『居ないなら明日掛けますって
毎日電話が来たのよ』
と母が言う

『判った、お母さん有難う』

私は急いで家に帰る事にした

No.100 09/04/29 00:24
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『お母さん、ごめんなさい
只今帰りました』

家のドアを開けると

ボーが私を待ち構えていた
『キューンキューンキューン』

ボーは私の膝を駆け上がり
抱っこの体勢に成ると
ペロペロしながらキュンキュンした

『ち~ちゃんの事
ボーは毎日玄関で待ってたのよ
お母さん、可哀想で
涙出ちゃったね~。ボー』

母は私からボーをはぎ取り
ボーにチュッチュッしていた


何とか家は平和の様だった

ボーが居るお陰で母は
性格が明るく成った気がする

私だってスペインで
ボーを忘れた事なんて
1日も無い


ボーは家に来てから
恩返しをしてくれてる様な
気がしてならない時が
多々有った



私はその夜
久し振りにボーと頬寄せて
深い眠りに着いた

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