注目の話題
女です。大食いすぎて悩んでます。
義母との関わり方
考え無しで発言する旦那に疲れた

犬に頬寄せて

レス263 HIT数 79315 あ+ あ-

ボニータ( ♀ 16kZh )
09/06/07 12:07(更新日時)

私の夢は…

白~い毛の可愛い顔した
マルチーズを飼うんだぁ、、
頭にリボンを付けて
毎日散歩するよ

運命って有るよね?

運命の子と出逢ったら
一緒に暮らすんだぁ…


私と愛犬の
不思議な
実話の物語です。



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No.1159516 09/04/14 02:40(スレ作成日時)

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No.101 09/04/29 00:54
ボニータ ( ♀ 16kZh )

…翌朝

『ち~ちゃん、電話よ~』
私は母の一声で起きた

『はぁい、どちら様?』

『○○宝石の佐藤さん』

私は一気に目が覚め
電話の子機に飛び付いた

『はい、私ですが…』
私は心の準備も無く電話に出た

『始めまして、私○○君の
上司の佐藤と申します
婚約者様ですか?』

私は迷ったが正直に答えた
『予定だったのですが
結婚延期と言うか…』

私が言葉を濁すと
佐藤は驚いていた

『差し支え無ければ何故?』

この佐藤と言う男性は
根掘り葉掘り聞いて来た

私は疚しい事は何も無いので
答えるのは別に良いのだが
プライベートの事迄聞いて来る…
私は一通り答えたが
何か違和感を感じていた


『もしかして
警察の方ですか?』

私は思い切って聞いてみた


『…そうです…』

佐藤と名乗る男性は
刑事だった

No.102 09/04/29 11:05
ボニータ ( ♀ 16kZh )


『刑事です…』

私はその言葉に
全身の血液がサーッと下がった

『いや、すいません
お母様が電話に出たもので
○○さんの会社名を名乗らせて
頂きました』

刑事はとても丁寧な口調だ

『あの、春彦さんは
犯罪者なのですか?
何を悪い事したのですか?』

私は取り乱した

『失礼ですが、今
妊娠とか発作的な持病は
抱えてませんか?』

刑事に問われたが、私は
避妊をしてたのでその心配も
発作もない

『はい、大丈夫です』




刑事は事の経緯
今の状況を教えてくれた

『一度お会いして
お話したいのですが…』

刑事に言われた私は
私の家を指定した
話を誰にも聞かれたく無かった
のが理由だ

私は午後に来て貰う様に
お願いした

『では後程…』

…電話が切れた後も
私は暫く受話器を放せず
放心状態だった

No.103 09/04/29 11:43
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『春彦さんが横領…』


心の何処かでは‘ヤッパリ’

心の何処かでは‘嘘だ’


春彦は会社の金を
10年に渡り横領していたという
その金額は億単位だった


そして春彦の両親は
知名人だった為、その頃
一部で大変な騒ぎに成っていた


『春彦さん…何で?』


あんなに優しく私を愛した人が
犯罪者だった

私の不安な予感は
的中してしまった

だけどなかなか
現実を受け止められない


刑事は私に
『逮捕の協力を願いたい』

言った言葉を思い出した



そう、これから私は
春彦を逮捕する為に
彼を騙さなくてはいけない


私はダイニングに行き
『お母さん、‘友達’が
来るからお茶出して欲しいの
それと、お茶出したら
部屋に入らないでね』


母には落ち着いてから
まとめて話そう…

心配させたく無いだけだった


そして午後
刑事は私のマンションにやって来た

No.104 09/04/30 00:04
ボニータ ( ♀ 16kZh )

午後、電話が鳴り
刑事がマンションの下に着いたと
連絡が来て
私は迎えに下った


『どうも、お世話に成ります』

迎えた刑事の印象は
穏やかな人柄では有るが
目付きが鋭かった


『あの、上に母が居るのですが
今日は私の友達が来ると
伝えています
後々事実は話ますが
心配掛けたく無いので…』

私が言いづらそうにすると
『判りました、大丈夫ですよ』

その刑事は‘1’話すと
‘10’判る人だと感じる


挨拶もそこそこで
私は部屋に刑事を招いた




『ふぅ』
刑事は座布団に座ると

『良い天気で
気持ちいいですね』

緊張する私を察してか
他愛ない話をする


『春彦さんの事なんですが…』
私は早く本題に入りたい

すると刑事は
私に警察手帳を見せた後

私と春彦の出会いからを
聞きたいとメモを取りながらの
訊問が進んでいった

No.105 09/04/30 00:47
ボニータ ( ♀ 16kZh )

刑事は表情変えず
ひたすら私の言葉を
メモしていた

一通りの訊問が終わり

『春彦さんの横領は
本当に事実なのでしょうか?』

私が聞くと
刑事は言った

横領は長期に渡る
紛れも無い事実で
横領金額は桁外れ…だと

しかし
春彦単独の行動では無く
春彦を操る‘ボス’も存在し
それぞれが海外に逃亡中…
と教えてくれた


私はスペインでの春彦の
怪しい行動を思い出し
スーツケースのポケットから
春彦の怪しい行動を
記したメモ紙を刑事に渡した

『ああ、この電話の相手が
○○(ボス)だな…
この紙、貰っていいかな?』

私が頷くと刑事は
手帳にメモを挟んでいた

『…で
貴女にお願いが有ります』

『…はい』
私が答えると

『○○(春彦)を
日本に帰国させる様
説得して欲しい
…勿論
警察が動いてる事は内緒だ』

その時既に
私服警官が成田空港で毎日
春彦らを張ってる事を
私に告げた

No.106 09/04/30 01:45
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『判りました
協力させて頂きます…』

私は現実を受け入れるしかない

『で…早速で悪いのですが
○○(春彦)が宿泊してるホテルに
今、電話して貰っても
いいですかね?』


刑事に電話内容の指示を受け
リッツに国際電話をした

‘ポー…ポー…’






電話の内容はこうだ

春彦は偽名で宿泊をしていた

私はいつも春彦と行動し
ルームサービスも春彦のサイン
鍵もフロントへ預けなかった為
一緒に宿泊してた私さえ
偽名と気付かなかった

そして春彦は
私が帰国した日に
チェックアウトをしていた


受話器はスピーカーにした為
電話の内容は刑事も聞いていた

私は愕然とした
偽名を使ってたなんて…

それと同時に
春彦の行方も判らなくなった


『大丈夫ですか?
辛いと思いますが
今度も
捜査の協力お願いします』

そう言い残し
刑事が帰ったのは夕方だった

No.107 09/04/30 02:44
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私は刑事を見送った後
自分の部屋で泣いていた


刑事の前では
気丈に振る舞ったが
私の心は壊れていた

カレンダーは8月に成る…

予定では
7月7日に籍を入れて
8月に結婚式だった

私が出した結婚延期の決断が
人生の矢印を変えていた

刑事が来た日から
1人部屋で考え事が多くなった


そんな時
私の支えはボニータだった

私が部屋で塞ぎ込むとボーは
ドアを前足で
‘開けろ’とコリコリする

ドアを開けるとボーは
心配そうな顔で私の膝に乗り
何時間でも動かなかった

そして私がご飯を食べないと
ボーもカリカリを食べない

そんなボーを心配して
私がご飯を食べると
ボーは私を見ながら
カリカリを食べていた

私は何度ボーに頬寄せて
泣いただろう

過去に傷を負った犬と
心の壊れた人間1人
通じる物が有ったのだろうか…


そんな様子を
母は何も聞かず見守ってくれた

心が痛い…

春彦からの連絡は
待つしかない

電話が鳴る度
心臓が止まる程ドキッとする
そんな生活は暫く続いた…

No.108 09/04/30 04:05
ボニータ ( ♀ 16kZh )

刑事からの連絡は
最初の頃1日1回

『何か変わり無いですか?』

と来ていたが、その連絡も
間隔が開く様に成っていた


春彦はどの国で何をしているの
だろう…

マンションの引っ越しも
考えてはいたが
刑事に‘逮捕迄待って下さい’
と言われていた


窓を開けると盆踊りの音が
風に乗って聞こえた夜

春彦から電話が掛かって来た

『もしもし、僕です…
仕事が忙しくて連絡出来ず
すみません』

春彦は緊張しているのが判る
警察の動きを
気にしてたのかもしれない

『春彦さん
お仕事お疲れ様です
今、何処に居るんですか?』

私は心臓の音が
聞こえそうな程ドキドキしていた

『貴女の声を聞くと駄目だ…
貴女に逢いたい…
毎晩貴女を抱く夢を見ます…』

春彦は変わらず私を愛していた

『ねぇ、春彦さん
私、来年の結婚式を
毎日考えているんですよ』

刑事に言われた通り
何も知らない振りをした

私の頬には涙が流れる

でも春彦に
気付かれてはいけない

春彦はフランスに居ると言うが
証拠は何も無い

『お願いです
春彦さんに逢いたい…
早く帰って来て下さい』

私は刑事の指示通り
帰国をお願いした

No.109 09/04/30 12:49
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『そんな事を貴女に
言って貰える僕は幸せ…』
電話は切れてしまった

春彦からの電話は
これが最後だった

私の心は壊れたまま
残暑の生ぬるい風が吹く

窓とカーテンを閉め
刑事に電話をした

『春彦さんから連絡が
有りました…』

刑事は忙しそうだった

話の内容を確認すると

『もうそろそろです
覚悟はしていて下さい』

それだけ言うと
電話は早々に切られてしまった


私は覚悟を決め
ダイニングでボーと遊ぶ母に
春彦の真実を話した

『お母さんごめんなさい…』

私は母に要らぬ気苦労は
させたく無かったが
避けては通れぬ現実を報告した

『…いいのよ
ち~ちゃん、辛かったわね…』

多くを言わないが
娘に襲った事態を
きっと母は不敏に思っただろう


そんな私にボーは
抱っこをせがみ顔をペロペロした

ボーは人間の話が判るかの様に
いつも私を慰めてくれた

‘私の処に来てくれて有難う’

もしボーが居なかったら
私はどれ程辛かっただろう

私の壊れた心を
ボーは治療してくれていた

No.110 09/04/30 13:24
ボニータ ( ♀ 16kZh )

時は9月に入った

私の身辺は慌ただしい

春彦が勤める宝石商の
本当の上司と連絡をしたり

私は不動産をまわり
引っ越しの準備を始めていた

忙しい方が精神的に楽だ
少しだが気持ちが紛れた



春彦逮捕の日は突然やって来た



午前10時頃電話が鳴った

私が電話に出た

『○○春彦、成田空港○○にて
○時○分、身柄確保』

警察からの電話だった

私は外出を控える様
指示される

『判りました…』

心の準備を
してたつもりだったが

…辛い…

私は時計の針を見ながら
今後の展開を待つしか無い

緊迫した空気が私を襲う

そんな時は全てが突然だ

‘ピンポーン’チャイムが鳴る

訪問の相手は

私服警官2人
春彦の会社の上司
不動産屋

…そして手錠を掛けられた
春彦だった




No.111 09/04/30 23:56
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私はこの現実に
従うしかない…

ドアをゆっくり開けると
私服警官に
警察手帳を見せられた

『お話宜しいでしょうか?』

私が頷くと

『オラ!○○さっさと歩け!』

後ろに居た春彦は
私服警官に
呼び捨てにされていた

同行した不動産屋は
靴を脱ぎ忘れる程焦っている


『…春彦さん…?』


逮捕された春彦はやつれ、
いつもキッチリ決めた髪の毛は
見た事無い程ボサボサだった


警官に歩かされる春彦は
何かに繋がれ
手にはジャケットが巻かれていた

私は手元を見た

…手錠だ…


『いやぁぁーーー』

私は
春彦に掛けられた手錠を見て
パニックを起こしてしまった

『大丈夫ですか?』

警官は震える私の
背中を擦ってくれた

『彼女の前だけ
手錠は外してくれませんか?』

春彦が警官に言うと

『家の中だけだぞ』

無言で手錠を外してくれた

私は春彦を直視出来ない

辛すぎる現実だった

No.112 09/05/01 00:49
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私は少し落ち着いた後
自分の部屋へ案内した

春彦は立ったまま離れた場所で
私服警官に押さえられている

私の前には警官1人と
春彦の上司、
少し離れた所に不動産屋が座る

あの刑事から
話が繋がっているのか
警官は私の事にも詳しい

『貴女は被害者です
何も心配しないで手続きだけ
お願いします』

そう言うと警官は
本を朗読する様に
事件の経緯を読んだ

私の知ってる部分だけ
間違いないと確認すると
次に春彦の上司が
宝石のカタログを広げた

『このネックレス
お持ちではないですか?』

指差した先は
春彦からプレゼントと称された
3000万のネックレスだった

私は部屋のクローゼットを開け
紙袋に入ったままの
宝石箱を渡した

春彦の上司は
手袋をしてから宝石箱を開け
ネックレスを丁寧に確認していた

一度も触って無い
ネックレスの状況が判ると
安堵の表情を浮かべた

『このネックレスはカタログの通り
我が社の宝石です。
○○(春彦)が持ち出した
盗難品に成ります
こちらは返却頂きますが
宜しいですか?』

『勿論です
お持ち帰り下さい』

私はやっと
ネックレスを返す事が出来た

No.113 09/05/01 01:37
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『こちらもお持ち帰り下さい』

私は
春彦にプロポーズされた時貰った
200万の婚約指輪を
指から外した

『それは持ってて下さい!』

春彦は離れた場所から叫んだ

『黙れ!』

警官に怒鳴られていた

私は春彦を見ない様
必死だった
声を聞く事も辛い

私は立ち上がり
自分の宝石箱から
春彦に貰った宝石を抜き取り
机の上に約20点並べた

『全て春彦さんに
頂いた宝石です
こちらもお持ち帰り下さい』

春彦の上司は
宝石を見ただけで会社の宝石か
判るらしい

『この中に当社の宝石は
1つも有りません』

プレゼントされた証拠が無いので
引き取れ無いと言う



宝石は怖い

私は何の信仰も
宗教も入ってはいない

でも‘石’には‘力’が有ると
子供の頃から信じてる

春彦から貰った宝石が有る限り
春彦を忘れられない

良くない想いが入ってしまう…


頭を上げない私を見て
暫くの沈黙が有った

春彦の上司は
警官に持ち帰って良いか
確認すると

『判りました』

机に並べた宝石は全部
持ち帰ってくれる事に成った

No.114 09/05/01 02:45
ボニータ ( ♀ 16kZh )

次は不動産屋の話だった

始めて会う不動産の方は若く
来た時からピリピリしていた

不動産屋は私に強い口調で言う

『このマンションの敷金辞退を
お願いに来ました』

不動産屋がわざわざ
その為に来た理由は判らない

私はキョトンとした…

敷金を貰おうなんて
想像もした事が無い

『はい、勿論辞退します』

そう言うと

‘え?いいの?’

と言う感じで拍子抜けしている

この高級マンションの敷金は3ヶ月分
165万円だった


この手の事件は
被害者同士の話し合いに成る為
金品の返却や辞退は
両者揉め泥沼化し
裁判に成る事も有る…
と教えてくれた




お金は怖い

春彦の逮捕は数億の横領…
逮捕後はお金の話…


お金や宝石は
人格や運命さえも
変えてしまうのか




私が書類の手続きを終えると
皆、帰る用意を始めた

私の視界の隅には
春彦が居る…

もうこれで最後…
彼に逢えなくなる

No.115 09/05/01 03:34
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『以上…
こちらから連絡する事は
もう有りませんが
何か有りましたら連絡下さい』

警官に管轄の電話番号を貰った

玄関では私に見えない位置で
春彦に手錠を掛けた音が
聞こえた

私は春彦の顔を見ない様に
顔をそむけた

でも春彦はずっと
私を見ているのが分かる



‘何で?…
私を一生幸せにするって
嘘だったんですか?’


本当は叫びたかった

泣きたかった

後を追って

‘横領って…
本当は全部嘘ですよね?’

確かめたかった

私の薬指に
あの婚約指輪はもう光らない

全ては罪の中に有る
おとぎ話だ



『ほら!行くぞ!歩け!』

警官は春彦に怒鳴るが
春彦は動かず私に叫んだ

『僕は騙されたんです!
お願いです!
待ってて下さい!
愛してるんです!
待ってて下さい!』

警官に押さえられた春彦は
必死で私に向かおうとする

『いい加減にしろ!!』

警官は怒鳴りながら
春彦を引きずり
ドアの外へ消え

春彦の声は小さく成って行った

No.116 09/05/01 05:05
ボニータ ( ♀ 16kZh )

…春彦逮捕…
当時私は22才


竜巻みたいな恋と経験は
私の心を荒れ地にした


そしてこの時
未来に起きてしまう
大きな竜巻が
ゆっくり動き始めた事を
私は全く気付かない

私の未来に起きる本当の不幸は
ここがスタート地点だった





逮捕された日が
春彦と最後に会った日に成った

私はこれから
母とボーを一生幸せにする為に
頑張らなくてはいけない


でも、、逮捕の日から
寝つくのにうなされる…

逆に悲鳴を上げて
突然飛び起きる事も有った

その理由は‘手錠’だ

春彦に掛けられた
銀色の手錠を思い出すと
パニックを起こす

吐き気と猛烈な拒絶感で
狂いそうになる

自分でも判らない
手錠が怖い…

そんな精神状態でも
次の引っ越し先を決めないと
いけない

ボーが居る為、絶対的条件は
ペット可のマンションだった

当時はペット可物件は少なく
入居審査が厳しい

保証人の居ない私は
毎日不動産回りをしていたが
中々厳しかった

引っ越しは今月中だ

誰にも頼れず睡眠さえも
充分には取れなかった

No.117 09/05/01 06:27
ボニータ ( ♀ 16kZh )

ボーと一緒に不動産を
何軒もまわった
ボーを内緒にして住むのは
嫌だった

でも現実は厳しい
貸してくれる不動産はいない

そして悪い事は続く


春彦逮捕から
3~4日後の事だった

私がマンションから出ると
写真を撮られた

『キャバクラ嬢○○さんですよね?
億単位で貢がせたって
本当ですか?』

妙なインタビューをされる
一体何処からの情報なのか
なぜ家まで分かるのか怖い

事件に背びれ尾ひれが付き
話が大きく成っていた

私は逃げるしか無かった

何より春彦の事は
名前を聞く事さえ辛い

忘れようと必死なのに…

私は外に出る事も怖く成る

昼間でもカーテンを閉めて
生活した

でも引っ越し期限は…1週間後


そんな追い込まれた状態を
慰めてくれるのはボーだった

『ボーは優しいね、ありがとう
ずっと一緒だからね』

私の話相手は常にボー

ボーに頬寄せて寝ないと
私は夜、眠れない

そんなボーは
絶対に裏切らない…

‘ボーが居てくれるから
頑張るね’

前向きな気持ちに成れたのは
ボーのおかげだった

No.118 09/05/01 12:08
ボニータ ( ♀ 16kZh )

~1ヶ月後~

家賃25万円の東京都内マンションに
私、母、ボーは引っ越していた

ボーは新居に越すと
家の隅々をクンクンとチェックをし
その姿は可愛く私を和ませた


…しかし春彦の事件で
私は全てに疲れてしまい
家で静かに油絵を制作していた

皮肉にも春彦と行った
娼婦の様に妖艶にも美しい
スペインで見た‘カルメン’だ

完成した油絵をダイニングに飾る


この絵はもしかしたら
春彦の思いを引き寄せて
しまったのでしょうか?

私は幸せな恋愛が出来ない…

22歳の体験は
私の精神年齢を上げてしまった

同年代の男性が子供に思い
話すら合わない

スーツの似合う落ち着いた男性を
私は目で追ってしまう

しかし40代の落ち着いた男性は
既婚者ばかりだ

私には絶対的なルールが有る
既婚者は決して好きにならない


私は女性なので
やはり女性の味方だ

陰で泣く愛妻が居るならば
絶対に壊すべきではない

人に恨まれる不幸は
必ず自分に返ってくる

愛情が怖いと言う事は
春彦で学習していた

そして春彦の執着した
愛情を表現してくれないと
本当の愛では無いと
私は勘違いしていた…

No.119 09/05/01 12:39
ボニータ ( ♀ 16kZh )

でも私には守る者が有る
母とボニータだ

ずっと落ち込む時間は無く
私は働かないといけない
家賃だけで
月に25万円消えていく…

あの時、
引っ越し出来る物件が限られた
高い家賃は仕方無かった

落ち着いたら
安い家賃に引っ越そう…
そんな状況だった

私は水商売に戻る決心をする

以前の水商売経験から
自分で面接に行くよりも
スカウトマン経由で入店した方が
時給が良い事を知っていた

池袋は過去の私を知っている…
新宿のキャバクラへ行こう…

当時新宿アルタ横から
コマ劇場への直進は
‘スカウト通り’と言われ
ホステスやAV、ランジェリーパブ…
あらゆるスカウト通りだった

私は決心すると
長い髪をグルグルに巻き
派手な化粧を久しぶりにする

ミニスカートのスーツに網タイツ
靴はピンヒールを履いて
CHANELのバックを肩から掛けた

『お母さん行って来ます』
私の姿を見て
母は水商売に復帰すると
一目で判る

『無理しちゃ駄目よ』

ボーを抱っこして
見送りをしてくれた


『新宿アルタ迄お願いします』

夕方タクシーに乗り込み
私は歌舞伎町に向かった

No.120 09/05/01 23:21
ボニータ ( ♀ 16kZh )

新宿アルタ前でタクシーを降りた
ネオンと雑音が交差する場所…
久し振りの繁華街に緊張した

アルタのスクリーンを見上げていると
白いスーツの男性が
私に手を振っている

『○○ちゃ~ん』

池袋の源氏名を呼び走って来た

彼の名前は知らないが
スカウト通りを歩くと会う
顔見知りのスカウトマンだった

『お水辞めたって噂だけど
その格好は
今どこで働いてるの?』

早速声を掛けられた
春彦の事件を知らない様子に
私はホッとする

『働くお店探してるの』

そんな話をしていると
他のスカウトマンも集まって来た

『え!うちの店に来てよ』

名刺を合計3枚貰い
顔見知りのスカウトマンの店から
面接に行く事にした

『凄いついてるなぁ』

スカウトマンは嬉しそうだった

でもきっと
それ以上に嬉しかったのは私だ
タクシーを降りてすぐ
面接に行けると思わなかった

風林会館から割と近い
キャバクラに向かう
私は店の名前だけ以前から
知っていた

店に入ると時間帯がまだ早く
待機席で座ってるホステス達が
‘面接?面接?’
と言う感じで私の方を見ていた

…そっか
私は新人に成るから
このホステス達が先輩に成るのか…

私もチラチラ見て様子を伺っていた

No.121 09/05/02 00:46
ボニータ ( ♀ 16kZh )

その日運良く‘専務’が居た
偉い方に直接
面接をして貰える事に成った

私の事はキャバクラ雑誌等で
知っていた様だ

『お客様は
どの位呼べますか?』

そう聞かれたが
以前の顧客情報は消去していた

『すみません、
一度お水を上がり
お客様は呼べません』

そう言うと専務は頷いた

『まぁ、いいでしょう
池袋と新宿は客層が違います
新規開拓して下さい』

専務は紙に時給を書き

『これで如何ですか?』

基本時給倍額を提示してくれた

それでも池袋の時より
時給は低いが
0からスタートなので好条件だった

『体験入店でも良いので今日
働いて行きませんか?』

常務に顔を覗き込まれた

私はそのお店に入って
15分も経って無いが
お店の雰囲気が気に入っていた

『はい、お願いします』


新宿に着いて1時間程で
働くお店が決まった

新宿での私の源氏名は
‘忍’

待機席に移動すると
常務からホステスに紹介した

『今日から入店の忍さんだ』

そう言うとホステスは拍手をする

私はお辞儀をして待機席に
座った

No.122 09/05/02 02:32
ボニータ ( ♀ 16kZh )



流れる様に
決まったお店は
ホステス同士はとても仲が良く
友達も親友も出来
居心地の良い場所だった

…だけど

私はきっと
水商売に戻るべきでは無かった


‘水商売’とは
酒を注ぎ、夢を売り、嘘を付く

派手に着飾る
高給取りと思うだろう

でも
そのお金と引き換えに

お金で買えない
大切な何かを失っている

春彦の逮捕の意味は
神様が私に教えてくれた
注意信号だった

判らない私は馬鹿だ

その結果
春彦の時よりも
辛い辛い思いをする事に成る

意味のない大金は
幸せにはしてくれない事を

私はこの時なぜ
気付かないのだろう


No.123 09/05/02 03:26
ボニータ ( ♀ 16kZh )

新宿のお店で私はすぐ
ナンバー1に成った

太い客を数人持ち
営業にも苦労しなかった

私が頑張れる理由は
母とボーの存在だ

恋人は出来ない
…と言うか
男性に全く興味が無い

ちょとした出会いが有っても
春彦の様に
異常な求愛が無いと
なんか物足りない

‘お客様はお金’

プロ根性で
理想のホステスを演じていた

そして私の住む25万の家賃は
太客が自ら払いたいと払い
欲しくもない
新車をプレゼントされる
勿論Sexなんてしない


ホステスとしては
きっと成功者だろう

なのに
私の心はいつも満たされ
なかった

贅沢な暮らしをすると
子供の頃を思い出した

春彦の時と
同じ感情が出るのに

この生活から
抜け出せなかった

No.124 09/05/02 11:30
ボニータ ( ♀ 16kZh )

母は口癖の様に

『ち~ちゃん
お母さん幸せよ。有難う』

といつも言っていた

母は勿論、家賃、光熱費、
生活費の心配など要らない

お小遣いは月20万円渡し
働かずボーと家で過ごさせた

私は母親の笑顔を見る為に
働いていた

将来いつか私は母の介護をする
結婚する時が有れば同居
無理なら一生独身でも仕方無い
…そんな考えは常時胸に有った

私の子供はボーだ…
私は母とボーが全て
母とボーが幸せならそれでいい

この暮らしは
水商売位しか出来ない

綺麗に着飾り
微笑む私の心中は
誰も知らない


そんなボーは
私が夕方出勤する事を嫌ってた

私が出勤の支度をすると
『キュ~ウン』
とフローリングに伏せ
化粧する私の横で
淋しそうな顔をする

ボーは本当に頭が良い犬で
話す言葉も理解してる様に思う

お昼、散歩の時間に成ると

自分でリードをくわえ
私のベッドの横に置き
その後ペロペロ攻撃で私を起こす

でも雨の日は散歩に行かない

『ボー、雨降ってるよ
見て来てごらん』

そう言うとベランダの窓へ走り
雨を確認するとボーは納得する

そんなボーに命を助けられた
不思議な事が有る

No.125 09/05/02 12:28
ボニータ ( ♀ 16kZh )

新宿のキャバクラで働き出した
頃だった

私の公休日は月曜日
昔からの大親友が
日比谷にお洒落なカフェを
オープンする事に成った

『おめでとう~
本当に本当に良かったね』

念願掛けた夢を知る私は
店にスタンド花を贈り
開店の手伝いを約束していた

確か飛び入り連休の
平日月曜日…

大切な日の待ち合わせには
車より電車が時間に正確だ

私は普段電車に乗らない

少し早めに千代田線に
乗らないと間に合わない

待ち合わせは
改札口を出た処で8時15分

私は前日仕事だった為
寝坊し、起きたのが7時だった

『きゃ~大変!』

6時に起きて気合いいれて
身仕度する予定が狂った

『ボーおはよう!』

私はボーを抱っこして撫でた

…その日
ボーは様子がおかしい

いつも絶対するペロペロを
ボーはしない

それどころか私に威嚇する

『ヴッ―ヴッ―』

『ボー??』

ボーを床に降ろすと
ボーは玄関にチャカチャカ行った

私はその様子に
驚いたが時間が無い

化粧は時間が有れば
駅のトイレでしよう…
それ位急いでいた

『お母さんボー
行って来ま~す』

玄関に行くと
ボーが唸っている

『ヴ―ヴー』

No.126 09/05/02 12:55
ボニータ ( ♀ 16kZh )

そんなボーを私は見た事が無い

『お母さ~ん!ボーって
狂犬病とか無いよねぇ?』
思わず言うと

『有るわけ無いでしょう』
母は首を横に振り続けた

ボーが可愛い私は
予防接種はちゃんとしている


『ボーごめんね。急いでるの』

私は下駄箱から靴を出した

するとボーは靴の上で
伏せてしまった

『んもー!
ボーちゃんはいけない子』

私はボーを抱っこしようと
手を出すと

『アンギャー!!』

怒り爆発という感じで
発狂している
興奮したボーはグルグル回った

次の瞬間

『キャンキャンキャンキャン!』

ボーは急に動かない

突然の光景に私も母も驚いた

『大丈夫?ボー!』

私は荷物を放り出し
ボーを両手で抱きあげた

ボーは涙を溜めて
『キューンキューン』
言い出した

ボーの右足だけ
プラーンと伸びている
骨が外れてしまった様だ

『ボー大丈夫!?』

私は焦りまくった

待ち合わせを忘れ
動物病院に電話をし
ボーを抱きかかえ私は走った

自宅が動物病院の先生は
すぐボーの右足のレントゲンを取り
写真を見せてくれた

『脱臼ですね…
そんなに心配しなくても
大丈夫ですよ』

取り乱した私を
先生は宥めてくれた

No.127 09/05/02 13:38
ボニータ ( ♀ 16kZh )

ボーは痛み止めの注射と
小さな添え木を足にしてもらい
錠剤の痛み止めと粉薬
そして大きな粒のカルシウム系の
お薬を貰った

その時ボーはいつもの優しい
タレ目の愛らしい表情に戻り
心配する私をペロペロした

慌ててた私はボーだけ連れて
財布一式家に置いたままだった

『お金は診察時間に
持って来ます』

先生に何度も頭を下げて
病院を出た


まずい、、
開店のおめでたい日に…

ボーの足に少し安心すると
友達の約束時間に焦り出した

8時20分…
待ち合わせ時間を過ぎている

私はボーを抱え家に走った


『ボー大丈夫?』

家で待つ母は心配で動物病院に
行こうとしてた処だった

『うん、、ちょ、
ちょっと待ってて』

私のバックの中の携帯が
ずーっと鳴っている

慌てて電話に出た

『ごめんね、ごめんね、
ボーが…』

私が言うのが早いか
友達が早いかのタイミングで

『無事なの?平気なの?』

興奮する友達は早口だった

『公衆電話、凄い並んでるの
長く話せ無いけど今どこ?』

私は簡単に事情を話すと

‘電車で来ないで、
店に戻ったらすぐ電話する…’
と言われ
ガチャンと切られた



地下鉄サリン事件の日だった

No.128 09/05/02 15:40
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私は幽霊、UFO、宗教、
占いや血液型占いさえ信じない

現実しか信じないのは
子供からの性格だ

…でも…

ボーは何か
不思議な力が有る様に思う

ボーは眠くて
機嫌悪かっただけかもしれない

足の調子が元々悪く
苛々してのかもしれない

真実は判らないが

ボーが私の危機を
回避してくれたのは
現実だった

もし…
あの時家を出ていたら

私は許せ無い歴史的事件の
被害者の1人に成っていた

私は毎年
3月20日花を買う

他人事に思え無い事件は
時が過ぎても
哀しみと怒りが込み上げる

そう…私達は
いつも危険と隣合わせに
生活をしている





ボーの右足は日々良く成ったが

‘ポメラニアンは足が細いので
気を付けて下さい’

先生にそう言われ
関節を強くするカルシウムの薬は
よくボーに与えた

『ずっとずっと一緒だからね
長生きしようね』

そう言いながら
膝にボーを乗せて
カルシウムをカミカミさせるのが
私の幸せでもあった

No.129 09/05/03 01:01
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私は23歳に成った


春彦の事は
まだ後を引いていた

長袖シャツの袖口から
シルバーのブレスレットが見えると
手錠に見えパニックを起こした

忘れたいのに
まだ私の心を乱していた

私は男性を好きに成れない…
彼氏も好きな人も居なかった



そんなある日の
新宿歌舞伎町金曜日だった

店が終わり帰宅するにも
タクシーが掴まらない

私は職安通りを歩き
新宿2丁目まで探していた


『はぁい、
そこの綺麗なお姉さん』

横目で見ると
今時の若い男が声を掛けて来た

…非常に危ない
こんなのは無視に限る

私はツカツカ早歩きした

『ね~ぇ、
僕をかってくれませんか?』

…変な事を言う男だ

『あのね、うちには可愛い
ワンワン居るの!間に合ってます』

歩きながら答えた

『マジうける~お姉さん天然?
違うよ、僕をお金で
買ってくれませんか?』

私は足を止めた
ケラケラ笑う男はジャニーズ系の
可愛い顔した少年だった

『お姉さん綺麗だから
泊まりで1万でいいよ』


…売春?、、。

No.130 09/05/03 01:55
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『1万円?』

私は何言ってるか判らず
聞き返した

『え~僕、
本当はロング3万なんだよ』

私は2丁目の世界を知らない

つい話をしてしまった彼は
‘ウリセン’で
働くボーイの男の子だった
‘ウリセン’とは
男性相手の売春らしい…

私は知らない世界に驚いた

『お姉さん、お願い!
お金が必要なんだ』

手を合わせてお願いされた

タクシーは暫く
掴まらなさそうだし
仕事で話のネタに成ると思って
しまった

『ホテルは無理だけど
タクシー掴まる迄…お茶なら』
私が言うと

『まじ?やった!
それなら5千円でどう?』
男の子は嬉しそうだった

私は化粧ポーチから
お客に貰ったチップ5千円
渡した

『有難う、お姉さん
僕どこでもオッケーだよ』

私の腕に絡み付いてきた

『やめて!
お客様に見つかったら
困っちゃうの』

私は男の子を振り払い
5メートル離れて着いて来る様
お願いした

『はぁ~い』

男の子は私に
敬礼のポーズでニコニコする

…若い男はヤッパリ苦手だ

そんな事を思いながら
靖国通り沿いのバーに向かった

No.131 09/05/03 10:33
ボニータ ( ♀ 16kZh )

バーに到着し
カウンター席に座った

‘お茶’とは言え5千円で
男の子を買ってしまった

夜の世界は何が起こるか
判らない

ウリセンで働いてると言う彼
名前は‘タクト’年齢は22歳
若いと思ったら
私と1つしか違わなかった


知らない2人が
深夜ビールを乾杯する
ウリセンのボーイとキャバクラ嬢
変な組み合わせだ

『知らない人に
‘僕買って’って普通駄目よ』

私は説教染みた事を言うが
買った本人なので強く言えない

タクトはウリセンで働く理由
お店に買いに来る芸能人の話
過去の恋愛を話してくれた

知らない人にだと
友人に出来ない話が出来る

『私ね辛い恋をして今でも
思い出しちゃうの
早く忘れたいのにな』

つい言葉に出てしまった

するとタクトは
『無理すると
余計忘れられないよ
早く好きな人出来るといいね』

そんな簡単な言葉だけど
嬉しかった


『タクシー掴まると思うから
もうそろそろ…』

1時間経った頃言うと

『友達に成りたいんだけど
又会ってくれる?
お金は要らないから』

タクトは携帯番号を差し出した


こんな変な出会いの彼と
‘友達’に成った

No.132 09/05/03 11:46
ボニータ ( ♀ 16kZh )

‘無理すると
余計忘れられないよ…’

この言葉は
私を救ってくれた

春彦を思い出し戸惑う時でも
‘これが私だから…’
そう受け入れて
前に進めた様な気がする

言葉…って大切だ

私もお客が求める‘言葉’を
言わなくちゃ…

そんな事も思わせてくれた



その頃母は
‘パートに出たい’と言った

何不自由無く
生活させてるつもりだったが
母は外に出て気分転換したい
と言った

でもボーを家で
1人にさせるのは可哀想

母は朝から夕方
私は夕方から深夜
家を出て働く事にした


でも本当の理由は違う

母の異変に
私は全く気付かなかった

No.133 09/05/03 12:49
ボニータ ( ♀ 16kZh )


初夏の事だった

私のお客でコテコテの関西人がいる
彼は金融屋で遊びが上手く
良いお客様、名前は『要サン』

『なぁ~忍チャン
いつアフターしてくれるん?
お兄チャン一緒に行きたい処
あるんやけどなぁ』

普段アフターはしないけど
要サンは一緒に居て苦痛では無い

『行きたい処って何処ですか』

ニッコリ答えると

『の・み・や・さ・ん』

耳元でふざけて言った

『良いですよ今日如何ですか』

私は勢いでアフターをOKした

仕事が終わり風林会館の
喫茶店で待ち合わせして
アフターへ繰り出す

『要サンのエスコート
期待しちゃいますよ』

そんな言葉に要サンは笑う

『期待したらあかん
ホストクラブやで』

遊び人の要サンは顔が広い
新しい店がオープンし
社長が知り合いだと言う

『ベッピンさん連れな
格好悪いやろ?』

昔、愛本店行ったなぁ…と
春彦を思い出しながら歩いた

バッティングセンターに近い場所に
新しいビルが建っていた

歌舞伎町は狭いけど
一本違う道は
知らなかったりする

新築の匂いするエレベーターに乗り

ドアを開ける

…チリン

『いらっしゃいませ~』

No.134 09/05/03 13:47
ボニータ ( ♀ 16kZh )

綺麗な店内には
胡蝶蘭の鉢が並び
時間帯が早く
ホスト達がたんまり居た

愛本店をイメージして居たが
年齢層が若い
ホストの系統はバラバラ

聞くと色んな店から引き抜いた
ホストが集結しているらしい

暫くすると社長さんが出て来て
要サンに挨拶した

『狭い店にわざわざ
ご来店有難うございます
隣のお嬢さんは?』

要サンは

『ぼくたち、結婚します』

標準語を使って笑わせたり
ホストより楽しい

『なぁ忍チャン
好みのホスト居たら教えてな…
シバキ倒すから』

そんな冗談を言いながら
楽しく飲んでいたが
要サンの携帯が鳴り
店の外へ行ってしまった

その時1人のホストが席に着いた
名前は‘沢田’

ポスターで見る昔のジェームスディーン
みたいな顔をしている
外人かハーフかと思った

『いらっしゃいませ』

私に名刺を渡す
…ん?

『貴方も関西の方?』

イントネーションに気付いた

『判ります?』

沢田も関西人だった
要サンとは180度違う
落ち着いた人だ

私の携帯が鳴った気がして
バックに手を入れてると
沢田は煙草かと思い
ライターで火の用意をしていた

『私煙草吸わないの。有難う』

No.135 09/05/03 22:08
ボニータ ( ♀ 16kZh )

沢田はゆっくり顔を上げると
まっすぐ目が合った

フワッとした栗色のオールバックに
肌は白く、瞳は茶色い

『煙草いつから吸わないん
ですか?』

沢田は私に聞く

『吸った事がないの』

答えた時要サンが帰って来た

『いや~明日のおうまさん
忘れてたわ~』

明日競馬に行くらしい
着席すると馬の話に花を咲かせ
私と要サンは
1時間位でお店を出た

『忍チャン、今日はありがとな
今後は寿司いこな』

そう言うと要サンはタクシーに乗り
窓を開けて手を振った

昔はホストを知らず嫌っていたが
話をしてみると
同業者として通じる部分が有る

ホストは彼氏には難しいけど
話相手なら調度いいな…
と思った

そして要サンの
関西弁もいいな…

そんな事を
帰りのタクシーの中で考えていた

No.136 09/05/03 23:00
ボニータ ( ♀ 16kZh )

7月のお店は忙しい

ボーナス時期は
‘パーティ券’のノルマと
浴衣祭りのイベントが有る

私は毎日忙しく過ごしていた

そんなある夜



『忍サンご指名です』

指名が入ると一度フロントに
呼ばれ指名客の
時間振りを相談する

『ホストじゃ無いのか?』

店長に言われ
客席モニターで確認した

…沢田クン…?

私は店長に頭を下げ
沢田の席に座った

『ご指名有難うございます』
私は手を出した

この店はテーブルに着く時に
握手をする決まりだった

『…いきなり握手は
恥ずかしいよ』

断られてしまった

指名目的の営業に来たのか…
私は当然そう思う

『キャバクラって凄いね
ボーイさんがホストみたいだし』

沢田はキョロキョロしていた

『わざわざ来てくれて
有難うございます』

今回は沢田がお客なので
私が敬語を使う
水商売に有りがちなパターンだ

『忍チャン凄いね
No.1なんだって?』

そう言われた私は
益々ホストの客引きだと思う

『何の目的で
来てくれたんですか?』

私は営業の最中だ
可愛く首を斜めにして聞いた

『デートのお誘い』

真剣な顔で沢田は頬杖をついた

No.137 09/05/04 00:37
ボニータ ( ♀ 16kZh )

ホストは本当に凄い
ここ迄してお客を増やすなんて

私は感心してしまった

『大丈夫ですよ
又要サンと
お店遊びに行きますね』

話をすり変えてみた

すると沢田は

『実は2回ここに来たんだけど
要さん居るの見て帰ったんだ』

入口を気にしている

沢田は標準語を関西弁の
イントネーションで話す
落ち着いた感じだ

でも年齢を聞くと沢田は22歳
私より1つ年下
タクトと同じ年だった

すると急に沢田は
敬語に成ったが
ややこしいので
お互い敬語は辞める事にした

『連絡先教えて』

沢田はしつこい

『ごめんなさい…
ホストさんの営業が苦手なの』

正直に言った

『プライベートだよ
悪いけど客には困って無いよ』

ホストの暇潰し程度に
遊びに来たのかもしれない

メールアドレスを
名刺に書いて渡した


当時の携帯はauではなく
‘IDO’と言う会社名だった

メールの文字数は全角500文字程度

絵文字は少なく
画面は白黒時代だ


『悪いけど要さんと
うちの社長には来た事内緒ね』

要さんと私は
社長の知り合いだから
気まずいと言った


沢田は若くて格好良いが
全然惹かれない

私はまだ心の何処かで
春彦の想いが
生きていたのかもしれない

No.138 09/05/04 01:27
ボニータ ( ♀ 16kZh )


仕事が終わり家に着くと
外から母が起きてるか
電気で判る

『お母さん、ただいま~』
ドアを開けると
まずボニータが大興奮する

私のハイヒールの音が聞こえると
玄関にへばりついてるらしい

『ボー、お土産だよ~』

私はよく歌舞伎町の
‘エニィ’で
ボーにササミを買って帰った

ボーはフサフサに毛が生え
夏はサマーカットをしている

短いカット姿は豆柴犬みたいで
凄く可愛い

私は帰宅するといつも
手と顔を洗いボーと遊ぶ
口紅や化粧品を
ペロペロさせたくなかった

私が顔を洗っていると
元気の無い母が

『ち~ちゃん
話が有るんだけど…』

テレビを消し、正座をしている

『お母さん、何か有ったの?』

スッピンに成った私も座る

『10万円…貸して下さい』

母は思い詰めた様に言う

でも私は
毎月20万円小遣いを渡している

何故お金が無いのか聞きたいが

子供の頃知ってる
情緒不安定な雰囲気を
母は醸し出す

私は怯えてしまう




No.139 09/05/04 01:58
ボニータ ( ♀ 16kZh )




私は寝込んでばかりの
精神の弱い母を見る事が
子供の頃、凄く嫌だった

お金が無くて
食べ物も無く
電気も灯らない

私に遠足が有っても
学校に払う遠足代と
持たせるオヤツとお弁当が無い

私は遠足に行けなかった

私が泣いていると
母は

‘産むんじゃなかった’

何度も言う

もっと泣く私は水を掛けられる

だから私は外で泣いていた

すると母が私を探す
私を見付けると抱きしめて

『ごめんねごめんね』

泣いて母は謝る

そして父親の悪口を言い続けた

ある時、
担任の先生が給食費を立て替え
私に給食を食べさせてくれた

私はパンや持ち帰れる物を
母に食べさせたくて
給食袋に自分の分を入れる
それを見ていた男子に

『お前んち
貧乏だからかぁちゃんに
持って帰るんだろう』

苛められた

悔しかった

絶対大人に成ったら
お金持ちに成り見返してやる…

と思ってた

どんな事をされても
母が大好きで
いつも

『お母さん、
私が大人に成ったら
毛皮のコート買ってあげるね』

口癖だった


私が働く様に成ってから
今迄知らない
優しい母に成る

私はその為だけに働いている

だから…

母の情緒不安定が
…一番怖い


No.140 09/05/04 02:15
ボニータ ( ♀ 16kZh )


『10万円貸して下さい』

母は昔の表情をする

『お母さん大丈夫だよ。
だから元気出して』

私は引っ越ししてから
金庫を買い
そこにお金を入れていた

10万円は自分の部屋から
すぐ出せた

金庫の理由は当時
‘銀行が潰れる’
と噂が凄かった為だ

10万円を母に渡すと

『良かったぁ~』

母は泣いていた

理由は聞かなかった

私は母の為に働いている
だからそれで良かった

…しかし

パートを始めたと言うけど
仕事の話をしない

でも朝8には出掛けている


謎は多々有ったけど
母が幸せならそれでいい



私はまだ本当の母を知らない

No.141 09/05/04 03:08
ボニータ ( ♀ 16kZh )

そんな母への不安以外は
全て順調だった

可愛い過ぎる愛犬と
お店の友達、仕事も順調だった



‘メール’

沢田にメールアドレスを教えてから
メールが毎日来る

でも最初に返すタイミングを逃し
何となく返信しなかった

そんなある日

【電話下さい
‘030-****-****’】

沢田からのメール…

私はしつこいのが大変苦手だ

放置しよう



翌日、店の近くで
偶然に会ってしまった

『俺の事嫌い?』

何か怒っている

『ごめんなさい
母の事で心配事が有って…』

言い訳がこれしか無かった

すると
急に心配されてしまった

そんな罪悪感から
映画‘ミッションインポッシブル’
を見に行く約束をした

偶然にも公休日が月曜日

次の月曜日に約束をした

…男の子とデートかぁ

全く気乗りしない

嘘付いて断る事も考えたが
仕事場が近いので
それも気まずい

恋愛感情はマイナスの状態だ



断れず
あっと言う間に
月曜日が来てしまった

No.142 09/05/04 04:10
ボニータ ( ♀ 16kZh )

夕方渋谷で待ち合わせをした

18時にモアイ像

黒革スーツミニスカート
網タイツにピンヒール、髪を縦ロールし、GUCCIのサングラスを掛け
待ち合わせ場所へ向かった

沢田はもう到着していた

『何を撃ちに行くんですか?』

第一声がこれだ
私を見た沢田は笑っていた

そう言う沢田は
ジーパンに今時の服だった

『不二子ちゃんみたいやな』

…関西弁だ

『関西弁使うの?』

『関西人やからな』

今度は私が笑い出した

外人みたいな容姿で
関西弁ペラペラって…ツボだった

私は関西弁に興味を持った

『今日、関西弁でお話して』

『ええよ』

苦痛なデートが
意外と楽しく成って来た

『足不安定やろ?腕組む?』

私のピンヒールを心配してか
言ってくれた

『有難う、大丈夫』

でも渋谷の街は人混みが凄い

『ほら…』

沢田はそう言うと
手を繋いで来た

私は男性と手を繋いだ事が
殆んどない

春彦とは一度も無かった

普通男性として意識するの
だろうが

私は
‘父親の手って
こんな感じかなぁ‘
そんな事を思っていた

No.143 09/05/04 12:13
ボニータ ( ♀ 16kZh )


沢田とはその日のデートから
少しずつ距離が縮まった

でも…恋愛感情は無い

男女に友情が有るならば
それに似た感情だった

相手はホスト
未来に何のメリットも無い
恋愛するのは時間の無駄

私は一目惚れや簡単な感情等
持ち合わせて無い

そんな彼からは
毎日メールが来た



8月に入り新宿の
‘花園神社’から
お祭りの音が聞こえて来た

明治通り沿いに有る
小さな神社には場所柄か
水商売、ヤクザ、ホモ…
そんな人種が楽しく集う

神社は店から徒歩5分程
店の女の子と出勤前に
遊びに行った

沿道には屋台が所狭し並ぶ
出勤前の私みたいなホステスも
すれ違う

…あれ?沢田だ…

女性に腕を組まれ歩いていた

狭い沿道に
沢田も私に気が付いた
…何だか気まずそうだ

私は軽く会釈をして
平然としていた

その夜

仕事が終わり
沢田からメールが届いている

‘電話下さい’

『はぁい、お仕事終わったよ
どうしたの?』

帰りのタクシーから電話した

『今日の神社の女、客やねん』

…それがどうしたと思う

『そっか、
お祭りで何か買った?』

そう言うと
沢田はキレた

『なぁ、俺が女と腕組んで
気にならへんの?』

No.144 09/05/04 13:00
ボニータ ( ♀ 16kZh )

『何で気に成るの?』

逆に聞くと
電話は切れてしまった



半月程連絡が無かったが

仕事が終わると沢田から
携帯が鳴った

『今から花園神社来て』

うん…
と返事をすると電話が切れた



祭りの無い
深夜の花園は静かだ

『どうしたの?』

私は沢田を見付け駆け寄った

『お店、忙しかった?』

そう言うと
神社の隅の策にもたれた



『忍チャンの事好きなんや』

突然告白されてしまった

『本気で
付き合って欲しいんや』

沢田は真剣に言う

…でも無理だ
ホストと付き合っても
将来母を幸せに出来ない

『ごめんなさい
ホストしてる人と付き合えない』

『何で?』

『ホストは信用出来ないから』

私の答えはNOしかない


『ホストが本気で好きに成ったら
あかんのか?』

沢田はそう言うと

『ホスト辞めたら
付き合ってくれるんか?』

でも沢田はきっと
ホストを辞めれる筈が無い

彼はホストをする為に東京に来た


『うん、辞めたら考えてみる』

私は答えた

『考えてみるじゃあかん
答えを聞いてんねん』

迫る沢田は真剣なのが判る

『ホスト辞めたら
お付き合いしましょう』

私が出した答えに
沢田は判ったと
店に戻って行った

No.145 09/05/04 13:37
ボニータ ( ♀ 16kZh )

9月末で沢田はホストを辞めた


ラストの日も
店に来ないで欲しいと言われ

標準語を店で使う沢田を
見る事無く
本当に水商売を上がった

9月の私達は
本名で呼び合う様に成っていた

‘ちーチャン’
‘かっ君’

でも私達は純愛だった
キスもしていない

‘本気だからケジメつける
信じて欲しい’

かっ君の口癖だった

その頃私は
真剣な態度に心が動いていた

‘好き’

ただ漠然とそんな感情が
芽生え始めた


かっ君は
新宿6丁目に住んで居る
私の店から歩いて10分
家賃はワンルーム8万円

10月一杯ゆっくりして
11月から仕事を始めると言った

10月中私は
仕事が終わると
かっ君の家に行く

始めての泊まりの夜が来た

『ちーチャン、シャワー浴びる?』

煙草が苦手な私は
自分に付いた煙草の匂いが臭い

『有難う』

始めて
かっ君の部屋のシャワーを使った

緊張する

緊張する…


狭いユニットバスのカーテンに
シャワーの音が響く

かっ君との
初めての夜だ…

No.146 09/05/05 03:11
ボニータ ( ♀ 16kZh )

このドアを開けたら
私は抱かれる



腰迄有る長い髪をアップに束ね
バスタオルを体に巻いた


ドアをそっと開けると
月明かりが
部屋を灯している


薄暗い部屋で
彼はベッドに腰掛け
私に手を差し伸べた


『ちーチャン… 来て』


呼ばれるまま頷いた

『かっ君…』


彼の隣に腰掛けると

長い長いキスの後
優しく私を抱き締めた

『こんな
苦しいの初めてや…
…俺の事好きか?』


彼の瞳に私が映る


『…好きよ』


確認すると
彼は私のバスタオルをほどき

私の体を見つめた…


狭いベッドに崩れ
体を絡ませる

彼の手が私の胸を這い
全身を愛撫した


女は抱かれる時
愛の重さを知る


1つに成った時

私は無意識に
彼と春彦を比べていた…

全く感じる事無いSexと
春彦を想う罪悪感が襲う

涙が一粒…枕に染み込んだ

彼は私の涙に気付かなかった


No.147 09/05/05 12:47
ボニータ ( ♀ 16kZh )

私は不感症なのかと思う位
かっ君とのSexが感じなかった


彼の事は好きだけど
漠然とした‘好き’で
かっ君の思いが重く
負担にさえ感じてしまった

でも…
彼は私の為にホストを上がり
人生を掛けて愛してくれてる
後戻りは出来ない

抱かれる度
春彦を思い出すなんて…
そんな自分も嫌だった

でも何故だか判らない

そんな私の気持ちを知る事無く
仕事が終わり家に行くと
毎日私を求めた



公休日

『仕事決まったよ』

彼の家に行くと
抱きつかれ嬉しそうに言った

『凄いねぇ、
もう決まったの?』

私はバーテンか
飲食店かと思っていた

『‘左官’って知っとぅ?』

かっ君は壁を塗る
ジェスチャーをした

『さかんって
どんなお仕事なの?』

私は知らなかった

左官とは壁にコンクリートを塗る
職人さんのお仕事だった

『ちーチャンと
ちーチャンのおかんも
将来養わないとな』

私は母の事を話していた
でも彼は長男

『かっ君は長男だし
両親面倒見なくちゃ駄目よ』

私が言うと

『将来みんなで仲良く
一緒に住んだらええやん』

彼は将来を考えていた

『ありがとう…』

私は嬉しくて泣いてしまった

No.148 09/05/05 13:53
ボニータ ( ♀ 16kZh )


翌日

かっ君はホストで着てたスーツを
ベッドの上に並べ
ゴミ袋に入れ始めた

『洋服まだ着れるのに
勿体ないよ』

私はゴミ袋からスーツを出した

『ええねん、邪魔やし
客のプレゼントが部屋に有るの
ちーチャン嫌やろ?』

彼はまたゴミ袋にスーツを入れた

『私は大丈夫よ』

そんな言葉を無視し
ゴミ袋5つを
マンションのゴミ置き場に捨てた

午後は彼の携帯を解約しに
西新宿迄付き合った

当時携帯は通話料が高く
水商売で7~10万円の
維持費だった

『これでホストの過去はサヨナラや』

私達は西新宿を手を繋いで歩き
中央公園のベンチに座った

『そこまでしてくれて
…ごめんなさい』

一生懸命な彼に
申し訳ない気持ちに成った

『何で謝るん?
俺、幸せやで?』

1つ年下の彼は頼もしくも
生き生きしていた

『俺なぁ
ちーチャン、一目惚れやねん』

『要さんと行った時?』

かっ君は恥ずかしそうに言う

『ちーチャンが
‘煙草吸った事ない’って
言った時には
惚れてたんやろなぁ…』

…煙草?
私は思い返していた

すると彼は
意外な過去を話してくれた

No.149 09/05/05 14:33
ボニータ ( ♀ 16kZh )



彼は兵庫県で産まれた

生粋の関西人で両親は日本人

子供の頃
喘息で体が弱く、その上
色素の薄い髪の毛や目の色
肌の白さで‘外人外人’
言われるのが辛かったそうだ

その体の弱さは
母親の妊娠中の喫煙が原因だと
親戚から母親は相当責められ
自分の体の弱さや外見を悲観し
母親を恨んだ事も有ったと言う

だが
成長するうち喘息は良く成り
外人の様な容姿は
‘格好良い’と見られ
今は母親を恨んで無いが

将来決めた女性は
絶対に煙草を吸わない人がいい
…と
子供の頃から
自然に思ってたそうだ


彼は学校を卒業すると
トヨタで就職

でも
‘ホストでNo.1に成りたい’
と言う野心が止まらず

地元に戻り‘左官’のバイトで
お金を貯め
新宿目指し上京した

最初‘ニュー愛’で働き
大バコの中No.3迄登り詰めたが

派閥や人間関係のストレスから
小バコに移りNo.1に成った処を
私達が遊びに行った店に
引き抜かれたと言う事だった




『煙草吸わないだけで
私に決めちゃったの?』

そう言うと

『んな訳無いやん
これ以上言わすなや』

『いつか
俺の実家に遊びに行こな…』

お日様の下で軽くキスをされた

No.150 09/05/06 00:42
ボニータ ( ♀ 16kZh )



しかし全てが順調では無かった


かっ君と交際を始めてから
正直私の体はヘトヘトだった


店の出勤時間は17時
1時~2時迄働き彼の家へ行く

ご飯を食べないで待つ彼と食事

シャワーを浴び
ベッドに入ると体を求められる

若いからか一晩5回程…
私は眠れない

でも
昼は必ず家に帰宅した
理由はボーに会いたい事と

ボーがちゃんと
ご飯を食べているか
心配で仕方無かった



ある日

私はお昼に帰宅すると
母が深刻な顔で出迎えた

‘…もしかして…’

私が予感する時は大抵当たる

母がお金を貸して欲しい…
と言う時だ

『お母さん
お金渡してるのもう無いの?』

私のこんな質問には
元気無く頷くだけ

私はこの
空気が本当に嫌いだ

『お母さん
お金大切に使ってね』

お金の要求を言われる度
渡す様に成った

でも、、
私は気付き始めていた事が有る

でも認める事が怖くて聞けない


そんな私は物欲が無い
高い物には興味が無い

だから尚更
母の金銭感覚が怖い

‘お金貸して’

この言葉を母が言う度
人格も変わった様に思っていた



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