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いつか解き放たれる時まで…③

レス204 HIT数 49879 あ+ あ-

Poinsettia( ♀ oqFMh )
13/09/20 23:24(更新日時)

読んで下さっている皆様ありがとうございます。

③も宜しくお願いします。

No.1920824 13/02/28 21:23(スレ作成日時)

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No.101 13/04/25 17:48
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

うどんだけでは全然足りなかった。


お腹空いたな…。



私はあきひとに電話をかけた。

「もしもし?、千鶴?。何かあったか。」

「あきひと何時に帰ってくるの…。」


「ごめんな、遅くなって。今二軒目なんだけど、まだ帰れなくて。」


「お腹空いちゃった。」


「そっかぁ。冷蔵庫なんもなかっただろ?。なんか買って来て食べていいんだよ。」


「でも、お金使うの悪いし。」

「そんな事気にすんな。大丈夫だから、お菓子とか買って食っていいよ。」


「わかった。」


「なるべく早く帰るから。」


「うん。」



やった…。コンビニに行ける。


鍵をかけて私はコンビニに向かった。

No.102 13/04/25 22:43
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

カップラーメンとデザート、そして缶チューハイを買った。

怒られると思っていたからほっとした。


シャワーを浴びて、ゆっくりテレビを見ながらあきひとが帰って来るのを待った。



でも、あきひとはその夜帰って来なかった…。


何度電話をしても繋がらなかった。


何かあったのかな…。


心配で心配で眠れなかった…。

No.103 13/04/25 23:01
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

ガチャガチャとドアを開ける音で目が覚めた。


「あきひと…?。」


いつの間にか寝ていた私は音に気付いてベッドから出る。


「ただいま。千鶴…、ごめんな。朝帰りしちゃったね。」


「なんで電話に出なかったの?。何回もかけたよ。」


「ごめん…。話込んじゃって。」


「どこかに泊まってきたの?」

「同じ課のやつんとこにちょっとだけ寄って寝かしてもらった。」


思い切り欠伸をする。


適当にシャツを脱ぎ捨てスーツも床に置いたまま、あきひとはベッドに入った。


一言ごめんねと言っただけ。

私がどれほど心配したか…。

あきひとはすっかり寝てしまった。


スーツをハンガーにかけて胸ポケットに手を入れるとそこにはキャバクラの女の子らしき人物の名刺が入っていた。



さぞ楽しかったでしょうね…。


名刺を引きちぎり、ゴミに捨てた。

No.104 13/04/25 23:07
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私は着替えて散歩に出た。

あきひとは寝ているだけだし顔を見るといらいらしてしまう。

気分転換をしよう…。


団地の中を歩いてみた。


新築の家や古い家など様々だ。

途中で犬に吠えられ驚いた。

タバコが吸いたくなって行き当たりばったりの公園に立ち寄ってみた。


缶コーヒーを買ってベンチに座った。

滑り台で子供と遊ぶ男の人が目に入った。


今日は休みなのだろうか。


奥さんに代わって子供みてんのかな…。


No.105 13/04/25 23:19
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとは私が出掛けた事すら気付いてないだろうな。


きっと昼過ぎまで寝てる。



「藍斗~ジュースどれがいい?。ママには内緒だぞ。」


男の人は子供を連れて自販機の前に歩いてきた。


見て見ぬ振りをしつつ、やっぱりちょっと気になって見てしまう。


ああいう子煩悩な旦那さんとどうやったら結婚出来るんだろ。

奥さんが羨ましい。



「パパ、おうち帰りたくない。ママ怖いもん。」


「ママ怖いのか?。藍斗が悪い事すればママ怒るだろ。」


「やだかえらないー。」


子供が泣き出した。



どんな事情があるんだろ。


別居とか?。


私はひとりで色々想像していた。

No.106 13/04/25 23:25
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

こんなイケメンで優しいパパなら何でもしてあげたくなるのに。

男運がない私には羨ましい限りだ。



間もなくしてママらしき人物が現れた。



子供は前にもまして激しく泣き出す。



泣く子供を無理やりパパから引き離し、女の人は子供を連れて車に乗り走り去った。



やるせなさでいっぱいの表情を浮かべて、男の人はポケットからタバコを取り出した。



ライターを何度かカチカチやっているけど火が点かないようだ。



「使いますか。」


私はライターを差し出した。


「えっ…、あっ…いいですか?。じゃあお借りします。」


凄く感じのいい人だ。



「みっともないとこ…、見せちゃいましたね。」

No.107 13/04/25 23:32
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「いいえ。何も見ていませんから…。」


少し微笑んでそう答えた。



「色々…、ありますね。生きてると。」



「そうですね。」



「今日は休みとかですか。」

「今働いてないんで。」


「ごめんなさい。余計な事聞きましたね。でも、今日はほんとに天気いいですね。」


「外ってこんなに気持ちいいんですね。」



お互いのプライバシーには触れずに私達は世間話をした。

No.108 13/04/26 16:46
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「この辺りに住んでるんですか?。」

「少し歩きますけど、まぁ近いです。」


「よく来ますか…、ここ。」

「いえ、初めてきました。行き当たりばったりで…。」


「あなたは?。」


「俺の話になるんですけど…。月イチで息子に会っていて…。今日はその日です。帰りはいつもああやって泣かれるんで辛いですね。」


「向こうが連れてったんですね。」

「はい…。やっぱ母親にはかなわないですよね。」



とても寂しそうな表情だ。



「俺そろそろ帰ります。ありがとう…、話を聞いてくれて。さようなら。」



「さよなら。」



私もそろそろ戻ろうかな…。


あきひとが寝ているうちに。



No.109 13/04/26 18:00
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとが起きないように静かに鍵を開けた。


「お帰り。どこ行ってきたの?。」

「起きてたんだ。」


「起きたら居ないから心配したよ。」


「ごめん。」


「どこ行ってたの?。」


「ちょっと散歩してきたの。」

あきひとが私をギュッと抱きしめた。


「タバコ臭いよ。吸ったのか?。」


「いけなかった?。」


「タバコ吸う千鶴はあまり好きじゃない。」



ちょっとムッとした。


「朝帰りするあきひともあまり好きじゃない。」


「俺は仕方なかったの。色々あるんだよ。」



No.110 13/04/26 18:08
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「あとさ…。俺の私物勝手に見たり捨てたりすんなよ。」


私の行動はすっかりお見通しだ。


「何もしてないけど。」


とりあえずやってないと言ってみる。


「あのさ、私仕事するね。何でも二倍かかるから。」


「あぁ…わかった。働いてもいいけど、ちゃんと家事とかもやってね。疲れて出来なかったとか、ずっと寝てたりとかなしだからな。」


「わかった。」



あきひとってこんなに厳しかったっけ…。

No.111 13/04/26 18:15
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「きのう洗濯したんだけど、良かったかな…。」


「ちょっと柔軟剤使いすぎじゃない?。こんなに匂いするまで入れなくてもいいよ。」


私は柔軟剤は少し多く入れるのが好みだった。


「ごめん。」


「あとさ、俺のYシャツだけどアイロンかけれる?。」


「アイロン?。」


「うん。まさかやれないとか?。」


私はアイロンがけが苦手だった。


「わかった。やるね。」


あきひとが毎回自分のYシャツにアイロンをかけていたなんて知らなかった。

No.112 13/04/26 18:30
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

アイロンがけと洗濯の事を言われ、荷が重かった。


あきひとと暮らすとなればあきひとに従わなければならないのはわかる。


でも、もっとやさしくしてくれると思っていた。


私の好きなようにしてもいいって言ってたのに。


家事はどちらかと言えば苦手だから、いちいち細かいあきひとに神経を遣うようになった。

一緒に暮らすようになってからあきひとはぱったりと私を抱かなくなった。


それが何故だかわからなかった。

私の事を好きではないのかな。


ずっと疑問だった。



いつも背中を向けて寝ていた。


「あきひと…。寝たの?。」

「まだ起きてるけど。」


そっと体を寄せた…。


私のサインに気付いているはずなのに、振り返ってくれない。

「あきひと…、抱いて…。」

「・・・・・・。」


勇気を出して言ってみた。

No.113 13/04/26 20:38
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

今私にはあきひとしか居ないの。

あきひとと一緒なら幸せになれるって思ってる。


いっぱい抱きしめてほしい。

あきひとでいっぱいにしてほしい。



「私の事嫌いになった?。」

「そんな事ないよ。」



「無理?。」


「ごめん…。今日は寝たい。」



(今日は)って…。


もうずっとしてないじゃん。


いいよ。



もう誘わないから。




No.114 13/04/26 20:50
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私はポスティングの仕事を始めた。


月曜日と木曜日。


それ以外は家に居て家事やアイロンがけをした。


慣れてきたらもっと日数を増やしたい。



あきひととはあれから引き続きずっとレスだった。


ただの同居人みたいな感じだった。


あきひとには他に女がいるのかも知れない。


いつも携帯にロックをかけていたし、残業だと言って電話が繋がらない事もよくあった。


私は携帯を買った。


登録しているのはあきひととポスティングの会社だけ。


友達も居ない。


木曜日のある日、いつものように仕事で団地を回っていた。


いつも深めに帽子を被って顔を隠していた。


「こんにちは。」


家主らしき男の人に挨拶をしながらポストにチラシを入れると声をかけられた。

No.115 13/04/26 21:13
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「すいません。うちチラシ要らないんでもう入れなくていいんで。」


普段からあまり人と目を合わせれない私は、一瞬ドキッとした。

「わかりました。すみませんでした。」


そう言ってすぐ立ち去ろうとすると、また呼び止められた。


「あの…、どこかで会いましたっけ?。」


「えっ…。」


その人の顔を見ても何も思い出せない。


「人違いだと思います…。失礼します。」


軽く会釈をしてまた隣の家に向かった。



いきなり話しかけて来ないでよ。

びっくりする…。



No.116 13/04/26 21:24
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

その日の夜私はカレーを作った。

あきひとは7時過ぎに帰って来た。


「おかえり。」


「ただいま。今日はカレーだね。昼にカレー食ったんだ。」


「そうだったの?。作る前にメールすれば良かったね。ごめん。」


「いや、いいよ。千鶴のカレーうまいから食べる。」



あきひとは帰ってくるとまずシャワーを浴びる。


いつもその間にご飯を温め直していた。


あきひとは家ではあまり携帯をいじらない。


その夜珍しく電話が鳴った。



「あきひと、電話鳴ってたよ。」


シャワーから上がったあきひとに伝えると、一瞬動揺したのを私は見逃さなかった。


「あぁ、わかった。」


「今日汗かいちゃって気持ち悪いから私も今シャワーいいかな。」


「いいよ。ゆっくりな。」




携帯いじれるね。



わざとゆっくりシャワーしてあげるよ。

No.117 13/04/26 21:34
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

浮気を容認していた。

ヤキモチは通り越し、どうでもよくなっていた。


ただ、今住むところがないしあきひとのとこに住ませてもらうしかなかったから多少は目をつむった。



私に気を遣っているのか、シャワーからあがるとテーブルにはカレーが準備してあった。



珍しい。


気を遣わなくていいのに。



「千鶴、何飲む?。」


「ビールがいいです。」



「早くパジャマ来てこっちおいで。」



わかりやすい人だ。

No.118 13/04/26 21:52
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

食べ終わったお皿やグラスを洗っていると、後ろからあきひとがいきなり抱きしめてきた。


「ちょっとどうしたの?、びっくりしたぁ。」



「今日しよっか。」


「えっ?。どうしたの?、無理しなくていいよ。」


「なんでそんな事いうの?。あんなにしたがってたくせに。」

胸元に手を入れてきた。


「ちょっと止めて。今手が泡だらけだよ。」



「ベッドで待ってるから。」




ほんとは私とはしたくないくせに…。


浮気をしている後ろめたさかな…。


なんて単純な男なんだろう。




その一週間後。


あきひとは私に内緒で1日有給を取っていた。


スーツで出掛けたけどバックに私服を隠して、おそらく駅で着替えたのだろう。



時々義務でするあきひとのセックスは前と明らかに違っていた。


自分本位のセックスだったのに優しく時間をかけるセックスに変わっていた。


不思議なのは彼女にしているようなセックスを好きでもない私にすることだった。


私は全くあきひとのセックスに感じなくなった。


ただ目を閉じて感じたふりをした。

No.119 13/04/26 22:08
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

いつものように仕事で同じ団地を回っていた。


チラシを入れないでくれと言われた家を抜かして配り歩いていた。


その日たまたま私は帽子を忘れて髪を下ろして歩いていた。


「あの…、すいません。」


振り向くと前に話しかけてきた男の人がわざわざ家から出て来て声をかけてきた。


「思い出しました。公園で会いましたよね。」



「公園…?。公園なんか行ったかな…。あっ…。」


今頃私はその人の事を思い出した。


「そうでしたね。やっとわかりました。先日は失礼しました。」


何故か嬉しそうな表情をしている。



「これからお仕事なんですか。」


スーツ姿のその人は重役なのだろうか。


今から出勤は遅い。



「はい。割と時間自由なんで…。チラシ配ってるんですね。」


「はい。」



「良かったらお茶でもどうですか?。」


「ありがとうございます。でもまだ仕事途中なので。」


「ですよね…。あの、良かったら連絡下さい。いつでもいいんで。」



一方的に名刺を渡して来た。


彼は会社を経営している人だった。



全くそんな気はないのに。



彼は私に名刺を渡してすぐ車で出掛けてしまった。



ポケットに名刺をしまうとまた仕事を再開した。

No.120 13/04/26 22:17
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとの浮気はエスカレートしていった。


たまに名前を呼び間違えた。

ただ苦笑いをしてスルーした。


あたしはみゆじゃねーよ(笑)。

あきひとのバカさ加減に呆れ心の中でいつも笑っていた。


あきひとのどこがいいんだか。

私も人の事言えないけど…。



“良かったらお茶でもどうですか”




悪くないかも。



あきひとも浮気してるんだし、私も適当に遊ぼうかな。



水曜の夜、私は密かな野望を抱いていた。

No.121 13/04/26 22:24
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとを見送って、いつもより少し丁寧に化粧をして出掛けた。


彼の家の近くにくると一気に胸が高鳴った。



車はある。



実は私は全てのチラシを配り終え、最後に彼の家に向かったのだ。


まだチラシが残っていると思わせるように肩からトートバッグを提げていた。



私を待っていたかのように彼はリビングの窓から私を見ていた。


私は彼に向かって微笑んだ。


今日はこれくらいにしておこう。


じわじわ彼を落としていく。


あきひとへの仕返し。



既にバッグは軽いけど、まだ仕事のふりをした。



やった…。成功。


また月曜日に。




それからずっと私は彼の事で頭がいっぱいになった。

No.122 13/04/26 22:30
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

夜はあきひとが寝静まると彼を思って密かにいやらしい事を考えていた。


あきひとに気付かれないように自分を慰めた。



彼としたい。彼に抱かれたい。


子供がいる包容力のある男性に憧れていた。



私は自分の中から過去を捨て去り女に戻っていた。



思わず声が漏れてあきひとが目を覚ました。


「ん、みゆ~、みゆ~。」



起きてない。寝言だ。


一瞬焦った。気をつけなきゃ。



彼は私からの連絡を待っている。


彼をじらすのが楽しかった。

No.123 13/04/26 22:46
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「千鶴、今日遅くなる。ご飯いらないから。」


「わかった。行ってらっしゃい。」


今日もみゆと会うのね。


そんなに大好きなんだ(笑)。


私は今日は仕事が休みだった。

アイロンがけを早めに終わらせて、彼に会うつもりで電話をかけてみた。



「もしもし。小椋さんですか。」


「もしかして、ポスティングの彼女ですか。」


「はい。」



「待ってたよ。」



「今日私休みなんです。良かったらお会い出来ませんか。」


「勿論。迎えに行くよ。どこがいい?。」





私は彼と会う事にした。




あきひとに対する後ろめたさはない。



あきひとは私が浮気に気付いているとわかっているくせに開き直っている。



あきひとより大人な彼と遊んで楽しもう。



内緒でこの日のために買った新しい服と靴で私は出掛けた。



彼の車はとても綺麗だった。

そして彼のスーツ姿は素敵だった。


「嬉しいよ。君名前何ていうの?。」


「千鶴。」


「千鶴かぁ…。あまり聞かない名前だね。今日何時くらいまで大丈夫なの?。」



「何時でもいいです。」


「ほんと?。じゃあとりあえずドライブしようか。」





私の浮気初日だった。

No.124 13/04/26 22:52
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

する事なんて最初から決まっている。


お互い寂しい者同士。



「千鶴ちゃんは一人暮らしなの?。」


「一人ではないです。」


「彼氏と同棲してるとか?。」


「なんで分かるんですか。」

「適当に言っただけだよ。」



「俺の事はいくらか分かるよね。今一人であの家に住んでるんだ。離婚して出て行ったからね。」


「わからないです。あんな素敵な家と旦那さんがいて出て行くのが。」


「ん?、今素敵って言った?。そんな風に言ってくれるのは千鶴ちゃんだけだよ。」


No.125 13/04/26 23:02
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

小椋さんは都会から離れた静かな山あいにあるレストランに連れて行ってくれた。


景色を眺めながらゆっくりランチをした。


彼は色んな話をして私を楽しませてくれた。



「笑った顔最高に可愛いね。千鶴ちゃんは笑ってなきゃ駄目だよ。公園で会った時正直柄悪い姉ちゃんにしか見えなかったよ(笑)。」



「小椋さんは見た目そのままの素敵な方ですね。」



ある程度食事を終えて私達は店を出た。



「どこ行きたい?。行きたいとこあったら言って。」


「どこでもいいです。」



「じゃあ俺の別荘に連れてくよ。ここから近いんだ。」



どんだけ金持ちだよ。



「楽しみです。」



別荘に着く間に彼の携帯には時々仕事の電話が入っていた。



社員に慕われているような印象を受けた。



「ごめんね、せっかくのデートなのに。」


「気にしないで下さい。忙しい時間を私に費やして下さって逆にごめんなさい。」



No.126 13/04/30 14:33
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

バッグの中の携帯が鳴った。

着信はあきひとだ。



「出ていいよ、俺に気は遣わないでね。」


「大丈夫です。」



こんな時間に何だろう…。


普通に見送ったのに。


あきひとは浮気が始まってからほとんど昼は電話をかけてこないのだ。


楽しいはずのデート。一気にテンションが下がる。


私は着信を無視し続け、音を切っていた。


いつもかけて来ないくせに何なのよ…。



「もう着くよ。大丈夫?。」


「あっ、はい…。」



No.127 13/04/30 14:54
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「最近来てなかったから、家も冷え切って寒いけど、あがって?。」


「お邪魔します。」



「コーヒーでいいかな。」


「はい。」



あきひとからメールが入って来た。


私は小椋さんがキッチンに行った際にメールを見た。


“具合悪いから帰ってきた。どこ行ってんの?。早く帰って来いよ。”


ふざけんな。


みゆに面倒みてもらえばいいだろ…。



「彼氏から?。」


「えっ?、あっ、違います。友達でした。」



「コーヒー飲んだら帰ろうか。そのうち二人で泊まろう。」

そういう彼には全く悪気はないようだった。



むしろ、彼氏がいても構わないといった感じだった。


No.128 13/04/30 21:51
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「またタイミングあえば会おう。」


小椋さんと別れて、あきひとへの口実を考えた。


仕事着ではないし、確実に遊びに行ったと分かる格好だ。


友達もいないしごまかしがきかない。


とりあえず私はあきひとに電話をした。



「もしもし、ごめん、電話気付かなかった。」


「今どこ?。嘘つかなくていいから正直に言って。男と遊んでたのか?。」


「どうして?、そんな人居る訳ないじゃん。」


「んじゃあどこ行ってたの?。」


「ちょっとウィンドウショッピングしてた。」


「今どこ?、とりあえず話するから帰ってこい。」



あきひとは電話を切った。



No.129 13/04/30 22:09
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

携帯のメモリを消して、小椋さんの存在を消した。


嘘をつくのは慣れっこだ。



あきひとの部屋の明かりが見えた。


本当ならあきひとが帰って来る前に戻って何もなかったように振る舞うつもりだった。


「ただいま。」



「お帰り…。なんだその格好。新しい服いつ買ったの?。化粧も濃いね。」


「ひさびさだね、私の事きちんと見てくれたの。」


「はぁ?、いつも見てるよ。お前さぁ今日休みだったの?。」

「うん…。あきひとは何で帰ってきたの?、具合悪いってどうかしたの?。」


「風邪気味だったから、早退したの。てっきりお前仕事終わって帰って来てると思ったら居ないし参ったよ。」



「そういえば…。あきひとが仕事行ってから変な電話がきたの。」


「電話?。」


「ずっと黙ってて気持ち悪かった。でも何となく女の人みたいな気配がしたけど。」



あきひとの目が泳いだ。



「誰なんだろう…。うちの番号知ってる人いる?。」


「間違い電話かなんかだろ。気にすんな。」



「そう…?、あきひとに用があるんじゃないの?。」


「ていうかお前電話出たのか?。」


「出たよ、あきひとだと思ったし。出ちゃいけなかったの?。」


「いや…。別に。」


あきひとがバツ悪そうな顔をした。


馬鹿だ。


私の話を鵜呑みにするなんて。


電話なんか来てねーよ。



その夜あきひとはそれから私に何も問い詰めて来なかった。



私はうまくかわすことが出来た。

No.130 13/05/03 00:11
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「食欲はある?。」

「あまりない。でもなんか食わないとな…。」


「お粥かうどん作ろうか?。」

「お粥食いたいな。」


「わかった。出来たら言うから寝てて…。風邪薬も飲まなきゃね。」


「なぁ…。着替え手伝ってよ。」


「えっ?、着替えも出来ないの?。」



嘘だと思ったけど、やらなきゃやらないで不機嫌になるから手伝う事にした。

No.131 13/05/03 00:22
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「やっぱ熱ちょっと高いね。」

あきひとは背が高いからベッドに座らせてパジャマを着せた。

あきひとと目を合わせたくなくて目線を気にしないようにした。

でもあきひとは私をじーっと見ている。



「何?、どうかした?。」


「お前浮気してんのか?。」

「何、急に…。するわけないでしょ。そういうあきひとはどうなの?。」



急にあきひとが私を押し倒した。


「ちょっとびっくりするじゃない。やめてよ。」


「お前を外に出したくないんだよ。」


「はっ?。」



「俺のものだ。」



「よく言うよ…。浮気してるくせに…。」



「もう別れる。だから、お前も浮気するなよ。」




随分勝手な言い分だ。



私の浮気を疑うようになったら急に私が気になるんだね。


No.132 13/05/03 00:29
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとは別れると言ってたけど、女がしつこいのかなんとなくイライラしたり、携帯をうざそうに見たりする日々が続いていた。



私の前では開き直り、こんな事を口にした。



「嘘か本当かわかんねーけど生理遅れてるってさぁ…。」


疲れ切った表情だ。



「避妊しなかったの?。」



あきひとは無言だった。



もし彼女が妊娠していたら、どうする気だろう…。

No.133 13/05/08 16:25
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私には一切関係ないし、巻き込まれるのは嫌だった。


「好きなんでしょ。だったらいいんじゃない?。二人で分かっててしたことだよね?。」


「そんな見捨てたような言い方すんなよ。」


「だって、私には関係ないから。あきひとが浮気してHしてたとか知らなかったし。」



「やべぇな…。参ったよ。」


「心当たりはあるの?。」




あきひとは何も言わなかった。


No.134 13/05/09 19:46
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「もし妊娠が本当なら、どうするの?。」



「う~ん…。どうすっかなぁ。」


「いくつなの?、彼女って。」


「28…。」




私より若い。



私にはきちんと避妊しても、彼女にはしないんだ…。



「ごめん、ちょっと出てくる。遅くなると思うからカギかけて先に寝てていいからな。」



あきひとは出掛けた。



彼女に呼び出しくらったのかな…。


No.135 13/05/09 19:54
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私は小椋さんにメールをした。

あきひとが居たら出来ないから絶好のチャンスだった。



“こんばんは。まだお仕事中ですか…。”



10分位してから返事がきた。


“メールありがとう。今日は会社の連中と飲んでるよ。”



“そうなんですか。お疲れ様です。”


“今度一緒にご飯でもどう?。君が都合いい日に連絡ちょうだい。”



“わかりました。”




嬉しかった。


あきひとの事なんかどうでもよかった。



早く会いたい…。



No.136 13/05/09 19:59
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

彼を想ってシャワーを浴びた…。


この身体を彼に愛してもらえると思うと自然と熱くなった。


彼の別荘で、思い切り彼に抱かれたい。



私はあきひとのバスルームで彼を想って自分を慰めた。



彼はどんなキスをするのだろう…。


どんな風に愛してくれるのだろう…。



No.137 13/05/09 23:14
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

12時過ぎ…。


電話もよこさずに、あきひとが帰ってきた。


酷く疲れた様子だった。


もうすぐ寝付けそうだったのに起こされてしまった。



「お帰り。思ってたより早かったね。大丈夫だったの?。」


「あぁ…。」



財布や携帯をテーブルに置いてあきひとはパジャマに着替えた。



「疲れたから寝る…。」



「おやすみ。」




あきひとは3分もしないうちに深い眠りについた。



No.138 13/05/14 23:08
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとより少し早く起きて朝ご飯の支度をした。

二合だけご飯を炊いて、お味噌汁を作り、目玉焼きを焼いた。

「あきひと、朝だよ。」


食べ物をテーブルに並べながら起こした。



まだ付き合ったばかりの時はキスをして起こしたり、優しく叩いたりして起こしていたのに今は声を掛けるのも面倒になってしまった。


奥さんでもないのになんで飯作って起こさなきゃないんだよ。

そんな感情さえ湧く事がある。


「遅刻するよ。」



あきひとはまだ眠そうだ。



No.139 13/05/14 23:15
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとは味噌汁に少しだけ口をつけただけだった。



「んじゃあ…行って来ます。」


「気をつけてね…。」



「お前今日仕事か?。」


「そうだよ。なんで?。」


「いや。ただ聞いただけ。」


「あきひと…?。」


「ん?。」


「彼女と何話したの?。」


「……………………。」



「妊娠は本当なんだね…。」


「一緒になりたいって言われた。」


「そうなんだ…。」


それ以上言葉が見つからなかった。


私はただあきひとの背中を見送った…。



No.140 13/05/14 23:23
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

もったいなかったな…。


ほとんど食べなかったし…。


さすがに朝から目玉焼きを二個も食べられなかった。



あきひとは固い目玉焼きが好きだ。


私は半熟が好きだ。



彼女の子供を認知するのかな。

あきひとは今から父親になれるのだろうか…。



私とは当然別れてこのアパートも引き払うんだよね…。



コーヒーを淹れてひとり色々考えていた。



No.141 13/05/23 22:56
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

自分が決めてあきひとの側に来たけど、それが失敗だったと認めたくなかった。

あきひとなら素の自分で居られると思ったし、私を守ってくれると信じていたから…。

全てを投げ出してあきひとの所に来たけど、互いに浮気をして別れる事になるなんて…。


私の覚悟ってなんだったんだろう…。


あきひとの事、本当はそんなに好きじゃなかったのかな…。

あきひともそんなに私を想ってなかったのかな。


茶碗を洗いながらふさぎこんだ。


神様、私はどうすればいいの?。

やっぱり間違いだったの?。

この部屋で命を絶ったらあきひとに迷惑がかかる。


死ぬなら誰にも気付かれない所じゃないと。


私が死んでも悲しむ人は一人もいない。


でも私を憎む人はたくさんいる。

なんでこんな風になってしまったのかな…。


私はその場にしゃがみこんでただただ泣いた。


No.142 13/05/23 23:24
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「千鶴…、千鶴…、大丈夫か?。」


「ん…、あれ?、どうしたの?。」


「こんな所で寝てたら駄目だろう。どうしたんだ。」


目を開けるとあきひとがいた。

「仕事は?。」


「午後は年休取ったんだ。千鶴とゆっくり話がしたかったから帰って来たんだよ。」


「あきひと…。」


「ん?。」


「私達…、別れるの?。」


「なんで?。」


「彼女と結婚するんだよね?。」


私はあきひとにすがって泣いた。


「千鶴…。」


「嫌っ…。彼女の所に行かないで…。私を捨てないで。」


あきひとは私を抱きしめた。

「千鶴を捨てたりなんかしないよ。」


「あきひと…。」



私はキスを求めた。


自らあきひとの手を胸元に持って行く…。


「いや…?。」



「嫌じゃない…。久々燃えてきた(笑)。」


「触って…。」


あきひとの手をスカートの中に持って行く…。


「千鶴、大胆だね…。」


あきひとを仰向けに寝かせ、またがった…。


彼女なんかどうでもよくなるくらい、あきひとを私でいっぱいにしてやる…。


「なに?、千鶴がリードしてくれんの?。」


自ら服を脱ぎ、下着だけになる。


「それも取っちゃえば?。」

言われた通りにブラも外した。

「いやらしいな…。」


私の乳房が髪の毛で隠れるたびに、あきひとは後ろに払う。

私の乳房を眺めながら指で悪戯する。


あきひとの下半身に私の局部をこすりつけ前後に動かしあきひとの上で自慰をしてみせる。


「欲しいの?。」


「うんっ…。欲しい…。」


思い切り淫らになってみる。

No.143 13/05/30 21:44
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私の声が外に洩れないように、あきひとは私の口を塞いだ…。

私は声を押し殺した。


ベッドでするのとはまた違って特別感じてしまう。



私は初めて生のあきひとを受け入れた…。


駄目だとわかっていたけれど言葉にならない気持ち良さにたまらなく感じた。



「千鶴、いいのか?。」


「うん、続けて…。」



彼女にもしているなら私にもして…。


あきひとと彼女を否定していたのに、同じ事をしてしまった。

No.144 13/06/14 21:58
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとが起き上がりキスをしてきた…。

ひとつになったままするキスは好きだ。


「千鶴…、腰振って…。」


「こう…?。」


「うん…、いいよ。あ~、すげーいい。」




もうどうなってもいいと思った。


なくすものもない…。



私の心は空っぽだった。


明日は何をして過ごせばいいか、どこにいたらいいのか…。


誰と居ればいいのか…。


考えたら怖くて怖くてたまらなかった。


No.145 13/06/14 22:22
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「雨だ…。」

暑くて窓を開けると久しぶりに雨が降っていた。


「雨の匂いってあるよね…。」

「ん?、匂い?。あんま気にした事ないけど…。」



「あきひと…。」


「ん?。」


「私怖いんだ…。」


「怖い?、何が…。」


「明日が来ることも、生きてく事も…すべて怖い。」


「俺もだよ…。明日死んじまうかもしんねーし、わかんねー事だらけだし。」



「私ここにいて迷惑じゃない?。」


「迷惑?、何で…。居なきゃ困るよ。」


「ほんと?。」


「本当だよ。」



「とりあえずパンツぐらい履くか(笑)。」



「そだね(笑)。」




もうしてしまった事を悔やんでも仕方がない。


ただ、たくさんの人を悲しませた事を今更ながらに悔やんでいた。


No.146 13/06/15 23:19
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとは結局みゆという女と別れなかった。

でも私を邪魔者扱いする事もなく出ていけとも言わなかった。
開き直って私に時々相談まで持ちかける事もあった。

聞くに耐え難い事を言われた時は話題を変えたりもした。


あきひとはどこまで無神経なんだろう…。


彼女とうまくいっている時ほど私も耐えられず浮気に拍車がかかった。


だけど、忙しそうな彼には連絡しにくくて我慢をした。


“お疲れ様です。早く会いたいです。”


精一杯のアピール…。


“ごめんね。なかなか時間なくて。また連絡するから。”


しつこいと嫌われるから、もうメールは控えよう。


「千鶴…?。」


「なに?。」


「今度うちに彼女連れて来たいんだけど…。」


「…。あぁ、私が邪魔なんだね。わかった、どこか行くから安心して…。」

No.147 13/06/18 22:50
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「女と住んでる部屋に来たいなんて子も変わってるね…。嫌じゃないのかな。」


「千鶴のこと、言ってない。」


「・・・・・・。」



「あっ…、あぁそうなんだ。私は内緒な存在なんだね。じゃあ私物とことん隠さなきゃね。」


それを聞いたとき、私は酷く傷ついた。



隠す。ではなく、消えなきゃ…。

そう思った。



結局は私よりみゆを取ったって事。

みゆの方が好きだったって事。

「邪魔ならはっきり邪魔って言って?、余計傷つく。」


蚊のなくような声しか出なかった。


あきひとは何も言わない。



私の荷物は旅行カバンひとつ分。

荷造りなんて10分あれば終わる。


No.148 13/06/18 22:58
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

何も言わずに部屋を出ようとした。

もう訳が分からなくて頭もぐしゃぐしゃだった。


きちんと靴も履かずにドアを開けた。


「千鶴…。」


私を呼ぶ声がした。



「元気でな…。」





こんなにあっさり…。



本当に悲しいくらい、私に気持ちなかったんだね。



No.149 13/06/18 23:36
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

行く場所がない事を分かっている癖に…。

わざわざ秋田から呼び寄せておきながらいらなくなったらポイだもんね。

あきひとを信じた私も馬鹿だった。

思い切って飛び込んだ胸は違った。


外は暑くてフラフラする。

重いバッグを持ちながらただ意味もなく歩いていた。


どこに行こうかな…。


暑さを凌ぐために公園の日陰のベンチに座る事にした。


自販機でお茶を買った。



No.150 13/06/19 14:40
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

偶然にも小椋さんから電話が来た。

「もしもし。」

「もしもし、今大丈夫?。」

「はい…。」


「ごめんね、なかなか連絡出来なくて…。」

「いいえ。大丈夫です。」


「良かったら迎えに行くけど会える?。」


「お願いします…。」



あきひとは迎えに来なかった。

もう本当に終わりなんだ。


心底疲れ果てた私は、ただ空を見あげていた。



小椋さんの車が見えた…。



私は椅子から立ち上がった…。

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