いつか解き放たれる時まで…③
読んで下さっている皆様ありがとうございます。
③も宜しくお願いします。
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「飯は食ったか?。」
「ちょっと食べたけど。」
「これ買ってきてやったから食いな。」
兄さんはコンビニでサンドイッチとおにぎりとレモンティーを買ってきてくれた。
「どっか具合悪いのか?。ずっと寝てるって聞いたから。」
「うん…ちょっとね。」
「千鶴あのさぁ、お前に先に話しておくけど…。俺結婚しよっかなって思ってんだ。」
「えっ…。兄さん相手いたの?。」
「うん。ずっと付き合ってるやつね。」
「・・・そうなんだ。おめでとう。」
「ここでお袋や親父と暮らしてもいいって言ってんだ。」
「同居嫌じゃないんだね…、珍しい。」
「お前が今家に居ること言ってないんだ。梨華の事もだけど。」
「・・・・・・。」
「とりあえずそんなとこだから…。じゃあ、お休み。」
「お休み…。」
昼過ぎ私は宮内というその人に電話をかけた。
5回くらい呼び出し音が鳴り、寝起きのような声で宮内さんは電話に出た。
「はい、もしもし。」
「もしもし…。あの…宮内さんの携帯でしょうか…。」
「はい。そうですが。」
「あの…、以前名刺をいただいて…気になってお電話をしたのですが…。」
「ん?、誰かな?。」
「あの…。駅裏のビルで働いてた凪子という名前の…。」
「・・・・・・・凪子?、あぁはいはいわかった。」
「あの、良かったらちょっとお話を聞きたいのですが…。」
「今日バンドメンバーの練習日だから、良かったら店に見に来るといいよ。」
「いいんですか?。」
「4時からやってるから。俺も行くよ。」
「分かりました…。ありがとうございます。」
ドキドキしながら電話を切った。
私、何やってんだろ…。本当に大丈夫かな…。
急に自分のしたことに驚いた。
お金あるのかな…。
拓海が選んだのはアジアンテイストな部屋だった。
拓海は髪が黒くなっていた。
ちょっと冷めたような目つきは変わっていない。
「拓海君は、今日バイトはないの?。」
「ん?バイト?。あぁ…まぁ入ってるけど、別に休んでもいいかなぁ~なんて。」
「どうして?、大丈夫なの?。」
「別に働かなくても食わしてもらえるし。」
「どんな関係なの?。そんな女の人っているんだね。」
「寂しいからひとりでいたくないらしいよ。」
「拓海君は…、誰でも抱けるの?。」
「えっ?。」
「あっ…いや、その女の人を好きならいいの。」
「あんま気になんないかも。」
やっぱり彼の事はよくわからないと思った…。
「ちぃちゃんは、あのハーフみたいな奴とまだ付き合ってんの?。」
「ハーフ?。ハーフって…あぁ。」
翔太だ。
「付き合ってるのかな…。何とも言えないかな…。」
「また振り回してんの?」
「振り回す?。」
「女って怖いよな。何考えてんのかマジでわかんねーし。」
「必ず誰かひとりを好きでいなきゃだめなのかな?。」
「どうだかねぇ…。あんま気分いいもんじゃないよな…。」
ソファに腰掛けながら拓海と話をした。
拓海はタバコをふかしボーッとどこか一点をみつめている…。
少女漫画に出てくるような綺麗な顔だ。
「ちぃちゃん。」
「何?。」
「…いや。会えて嬉しいな…。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
拓海の体には引っ掻き傷のようなものがたくさんあった。
「どうしたのこれ?ひどい…。」
「あぁ…。ちょっと変わった女なんだよね。」
「痛くないの?。」
「痛くないけどずっと消えないんだ。」
傷は全身にあった…。
「どうして一緒にいるの?。別れられないの?。」
「俺もひとりになりたくないしね。」
心の闇は深いと思った。
私と深雪ちゃんのお母さんは廊下で少し話をした。
「そうなんですか?、それは良かったですね。」
「私、うちの姑と合わなくてそれでも今までずっと耐えてきたんですけど、思い切って主人に三人で暮らせないかなって話してみたんです。」
「ご主人は何て?。」
「あまりいい顔はしませんでしたけど、近くに住む事を条件にいいよって言ってくれました。」
「本当に…。それは良かったですね…。」
「私も姑には苦労したから…、なんかほっとしました。」
「ありがとう。」
「中学は勿論一緒なので少し家離れますけど今までみたいに梨華ちゃんと一緒に行ったり出来れば嬉しいです。」
「勿論です。宜しくお願いします。」
帰りは歩きのつもりでいたけど、深雪ちゃんのお母さんが車に乗せてくれた。
「ありがとうございます。助かりました。」
「ではまた~。」
深雪ちゃんのお母さんはニコニコ嬉しそうだった。
姑との同居生活がよほど辛かったのだろう。
「もしもしちぃちゃん。」
「もしもし…。拓海君?、どうした?。」
「今話せる?。」
「いいよ。拓海君は話せるの?。」
「うん。今一人だから。」
「仕事に行ったの?、彼女。」
「うん。2時くらいまでは帰って来ないからゆっくり出来る。」
「きのうはあれからどうしたの?。」
「ん?、あぁ…。結局バイトさぼってパチンコ行った。」
「そっか…。」
「俺さぁ…、本当はこんな生活やなんだ…。いつもあいつに振り回されてこっから出られなくてさ。」
「どうして今の生活になったの?。」
「たまたま前のバイト先であいつ働いてて、そっから付き合い始めたんだ。」
「好きだったから付き合ったんだよね?。」
「う~ん、どうなんだかね。よくわかんない。ただ俺そん時金なかったしアパートも家賃滞納してたから出なきゃなくて住むとこなかったからね。あいつさ、いちいちうるさいんだよ。茶碗洗っといてとか洗濯たたんどいてとかさ。」
「やってないと怒る?」
「うん…。すげーキレる。そうなるとあいつが満足するまでやんなきゃない。」
「何を?。」
「ん…?。セックス…。」
「まるで彼女の言いなりだね…。」
「情けねーよな。」
「別れたら?。」
「そうしたいけど、あいつに金借りてるし返すまでは別れないって。」
>> 38
「何か食べる?。コーヒーとかは?。」
とりあえず切り出した。
「翔太来るまで何も頼んでなかったから、とりあえず飲み物頼も?。」
「あぁ…そうだな。じゃあコーヒーでいいよ。」
ボタンを押して店員を呼んだ。
「この前は悪かったね。剛志さんちには行ったの?。」
「うん。仁美さんちぃも来ると思ってたみたいでがっかりしてたけどな。」
「ごめんね。」
「ちぃ…、ひとつ聞いていいか?。」
「なに?。」
「俺の事好きか?。」
翔太は冷たい目で私を見た。
見下したような呆れたような何とも言えない目だった。
「わからない。今仕事をきちんとしなきゃって思ってて、あまり考えられないんだ。」
コーヒーを飲みながら少しだけファミレスで過ごし、タクシーを捕まえようと外に出た。
ぽつりぽつりとしかタクシーが見当たらない。
しかも乗車だ。
私は少し歩いてタクシーを探した。
「あれ、ちぃちゃん?。」
拓海に会った。
「何してるの?。バイトの帰り?。」
「じゃないけど、今から彼女迎え行くんだ。」
「歩いて迎え?。」
「車ないしね(笑)。」
「近いの?。」
「うん。そろそろ終わる頃だよ。」
「気をつけてね。」
「ちぃちゃんもね。」
拓海はフードをかぶり少し足早に去った。
迎えに来させるなんてどんな人なんだろ。
気になった…。
尾行したりするのは卑怯だし、やっては行けないと思った。
でも知りたかった…。
拓海に気づかれないように距離を置いて歩いた。
拓海はコンビニの前で立ち止まりタバコに火をつけた。
私は隠れる場所がなくて焦りながら手前の通りに身を潜めた。
他の人に怪しまれないように出来るだけ普通にした。
彼女が来るのだろうか。
拓海は青白い顔をしていた。
色白だけどちょっと顔色が悪そうに見えた。
ご飯食べてないのかな。
遠くを見るような眼差しがいつも私には気になった。
いきいきとした昔の拓海ではない。
ちらちら拓海を見ては隠れるを繰り返していると彼女らしき人が現れた。
「お疲れ。」
「ただいまぁ~。遅くなってごめんね。最後の客なかなか帰んなくて。」
二人は手を繋いでこちらに向かって歩き出した。
慌てて隠れる。
心臓がバクバクいった。
彼女らしき人の姿を見て私は目を疑った。
間違いであって欲しかった。
きっと人違いだ。
「たくぅ?、ラーメン食べたい。」
「ラーメン?。しょこちゃん本当ラーメン好きだね。この前食ったじゃん。」
二人が通り過ぎると私は逆方向に向かって歩き出した。
仲良そうな二人だった。
あの人あんな風に可愛い声が出るんだ。
拓海の体に引っ掻き傷を付けたり…、気に入らない事があればセックスで満たしたり…。
皮肉にも拓海の彼女は祥子だった。
酒に走る訳じゃないけどそのまま家に帰りたくなかった。
「もしもし翔太。さっきはごめん。あのさぁ、迎えきて?。」
自分が何をしているのかわからなかった。
翔太は断ってきたけど一方的に電話を切った尋常じゃない私を心配したのか迎えに来てくれた。
「どうしたの?、別れたいって言ったのに。彼氏にふられたか?。」
「翔太、ホテル行かない?。」
「何で?。」
恥だと思った。
でも現実を受け止められずにいた。
「何も聞かないで。」
私は翔太に抱かれることで一瞬でもさっきあった事を忘れたかった。
ホテルにつくなり翔太に自らキスをした。
「ちぃ、シャワー浴びなくていいの?。」
「翔太抱いて。」
「何だよ、訳わかんねぇな(笑)。」
私は自ら服を脱いだ。
「翔太触って…。」
翔太の長い指を私の秘部へ持って行く…。
「あっ…💦。」
「どうしてほしい?。」
「もっと…もっと弄って…。」
「こう?。」
「うん…。気持ちいい。あっ…💦。翔太っ…。」
翔太の前で脚を広げて自ら求めた。
「いつからしてないの?」
「翔太としてからしてないよ。」
翔太はわざと音を立てながら指や唇で愛撫した。
下半身が疼いてたまらない…。
「ちぃ俺のも触って?。」
体を交互にして私達は互いに愛した。
拓海もこんな風に祥子にするのかな…。
嫉妬をするだびに翔太にされることで癒やしてもらっていた。
「お前はどうしようもない馬鹿な女だな。別れたらセックスしたくても出来ないよ?。」
翔太に馬鹿にされても構わなかった。
その日祥子は凄く機嫌が悪そうだった。
挨拶をしても返してくれなかった。
拓海と何かあったのだろうか…。
にしても仕事にプライベートを持ち込むのは良くないと、祥子を少し見下してしまった。
1回目のステージは客が来なくて流れた。
宮内さんは仕事で関東らしく、今日は居なかった。
まだメンバーとコミュニケーションも取れていなかったから、話し相手は居なかった。
探しても見つからない曲の歌詞や音があった。
それを祥子から借りなければ覚えられなかった。
でも話しかけずらい。
よりによって今日は機嫌が悪そうだ。
しきりに携帯をいじっている…。
「ったく…、どこ行ってんのよ。」
独り言はしっかり聞こえていた。
タバコをふかしながらぶつぶつ言っている。
「あとわかんないのある?。」
「あっ、あのデュエットの曲はどれとどれですか?。」
「あたしはこれとこれ沢地くんと歌ってる。」
沢地くんとは男性ヴォーカルだ。
「キー高いから1こ下げてるよ。ナギさんは高いの出る?。」
“ナギさん”
祥子が初めて名前を呼んだ。
「あまり高いのは出ないと思います。」
「今客居ないからちょっと声出ししたら?。あたしのマイク使っていいよ。」
「でも、まだ覚えてなくて…。」
「歌詞見れば歌えるのあるでしょ、とりあえず適当でいいから歌ってみたら?。」
祥子はそう言ってメンバーに声をかけてくれた。
メンバーはステージに上がってスタンバイをしてくれた。
「皆さんすみません、ありがとうございます。」
「はい!。」
祥子が私に自分のマイクを渡した。
四角で銀色のマイクはとても重かった。
「このマイク使ったことあるかないかわかんないけど上のこの部分しか声拾わないから。ちょっと声出してみて?。」
「あっ…、あーっ。」
マイクを通して私の声がライブハウスに響いた。
「いいじゃん。そうそう、そうやって使ってね。」
祥子がとても優しくて戸惑ってしまう。
「ちょっと見せて。」
祥子は私のノートを見た。
「これ歌ってみよっか。じゃあ○○やってくれる?。」
祥子がいきなりメンバーに言った。
「キーは?。祥子ちゃんと一緒?。」
キーボードの榎子さんが聞いてきた。
「一緒でお願いします。」
そう言うとドラムがカウントを出してその曲が始まった。
“どうしよう…めっちゃ緊張する…”
鼓動が早くなった。
祥子は気付いてないけど俺はため息ばかりついていた。
ここで何やってんだろ。
ちぃちゃんに会いてーな…。
ベランダでタバコを吸っている時だけが至福の時だった。
「たく~、寝るよ~。」
勝手に寝ろよ。
連日腕枕をせがまれた。
勝手にパジャマを脱いで誘ってくる。
「たく?、いい?。」
「ごめんちょっと腹痛いから無理。」
「嘘ばっかり…。最近全然してくれない。」
背中を向けた瞬間祥子は思い切り背中を引っ掻いてきた。
「いてーだろ。なにすんだよ。」
「言うこと聞けよ。居候のくせに。」
「悪かったな。いつでも出てってやるよ。」
「金もないくせに。」
祥子を抱かなくて済んだ。
ちぃちゃん…。
好きだよ…。
ちぃちゃんの顔を思い浮かべながら目を閉じた。
「もしもし、拓海君?」
「ちぃちゃん、すげー声ききたかったよ。」
「どうしたの?、何かあった?。」
「もう俺無理だよ。あいつと別れたい。」
「どうして?。彼女と喧嘩でもした?。」
「もう本当無理。明日にでも出よっかな。」
拓海は限界のようだ。
「ちぃちゃん、会いたいよ…。」
「わかった…。とりあえず落ち着いて、今日は戻りなさい。明日彼女に別れたいって言ってみて?。」
「無理に決まってんじゃん。別れないって。」
「今どこ?」
「コンビニ。」
「風邪ひくといけないよ。今日は我慢して帰って…ねっ?。」
「そっか。ちぃちゃん実家なんだもんね。ごめんね。」
その後電話は切れてしまった。
かけ直しても留守電になった。
拓海に悪いことしちゃったかな…。
「曲覚えた?。」
カウンター席で考え事をしていると沢地さんが話し掛けてきた。
「はい…、なんとか祥子さんのは覚えたんですけど、まだMCとかは全く無理で…。」
沢地さんは体も割とがっしりしていて日焼けをしていてサーファー系だ。
垂れ目がなんとなく癒し系だ。
「早く一緒にステージ上がろうね。頑張って。」
そう言うとタバコを吸いながら携帯をいじり始めた。
最近私は帰りが遅くなっていた。
母さんの目も厳しくて家を追い出されそうだった。
今日はもう帰ろうかな…。
席を立った時にちょうど宮内さんが店に顔を出した。
「ナギ来てたのか。偉い偉い。」
「はい…。」
「今日はラストまで居るか?」
「すみません、今日はこれで失礼してもいいですか?。」
「了解…。なんか顔が疲れてるからゆっくり休んでな。」
「ありがとうございます。」
そう言うと私は楽屋にも顔を出して挨拶をして店を出た。
店を出てすぐ私はまたダメもとで拓海に電話をした。
プルルル…。
電話が繋がった。
「もしもし…。」
かすれた声で拓海が電話に出た。
「もしもし?私。今どこ?。」
「ちぃちゃん…?。」
「もしもし?大丈夫なの?。この前はごめんね。」
「ひさびさだな…ちぃちゃんの声きくの。」
「ねっ、今どこ?。」
エレベーターを使わずに階段で下に降りた。
「今ね、店長のとこにいる。」
「店長?、店長ってラーメン屋の店長?。」
「わかる?。今からちぃちゃんも来ない?。」
「えっ…。」
拓海の居場所が分かってほっとしたけど、ずっと会っていない人に会うのは抵抗があった。
「ごめん遠慮するね。ねぇ拓海君、しょっ…、あっ…、じゃなくて彼女のとこには帰らないの?。」
「彼女のとこ?。なんで?。」
「いや…、別れられたのかな…なんて思って。」
「別れたよ。」
バスは夜が明けてから東京に着いた。
久しぶりの東京。
いつ以来だろう…。
「あきひとおはよう。今着いたよ。」
「遠かっただろ…、疲れたね。高速バス着くとこ今探して歩いてたからもう少し待ってて。」
「うん。」
あきひとに会える…。
半分泣いていた。
いっぱい甘えたい。
涙枯れるまで泣かせてほしい。
遠くで私に手を振る人がいた。
駆け足で私に向かってくる。
あきひとかな。
あっ、あきひとだ。
私も手を振る。
「千鶴~、お待たせ。」
朝から爽やかだ。
「あきひと花粉症なの?、またマスクだね(笑)。」
「今年花粉すげーんだよ、マジできついって。」
「なんだ、千鶴またやつれたな…(笑)。」
あきひとを見上げる目が涙でいっぱいだった。
「泣くな。もう大丈夫だよ…、お帰り。よく頑張ったな…。もう何も考えるな…。」
そう言ってあきひとは私を抱き寄せた。
「俺今日年休取ったから休みなんだ…。ずっと一緒にいるからね。」
「うん…。」
あきひとの手は温かい。
「メガネかけてないね。見えるの?。」
「今コンタクト入れてる。マスク曇るしな(笑)。荷物かして?、持つよ。」
「いいの?。ありがとう。」
「なんだ、やたら軽いな。覚悟を決めて来た割には(笑)。」
私が涙でぐしゃぐしゃだったから、電車を使わずにタクシーであきひとの家まで直行した。
「懐かしい…。」
「だろ?。また千鶴連れてこれて嬉しいよ。」
早くあきひとと二人きりになりたかった。
タクシーの中でもずっと手を握りあっていた。
「買い物はきのうのうちにやっといたから大丈夫。部屋も掃除したよ(笑)。」
「わざわざありがとう。いつも通りでいいのに。」
あきひとのアパートに着いた。
「朝飯食おうか。あきひとが作ってやる。」
「一緒に作ろう?。その方が楽しいし。」
上着を脱いだ。
「可愛いね。黒のワンピース。似合ってる。」
慌てて着て来たのは翔太がクリスマスにくれたワンピースだった。
「あきひと病院は行ってるの?。」
「いや特に行ってないよ。薬も飲んでないし。ただ毎朝血圧は測ってるよ。」
「気をつけてね。」
「うん。ありがとな。」
野菜サラダにトースト、あとポトフを作った。
「さぁ食おう。ひさびさの再会にウーロン茶で乾杯だ。」
「休みなら飲んでも平気じゃない??。」
「そしたら一日中飲み続ける事になりそうだからやめておこう(笑)。」
「二人の再会を祝って乾杯!」
「乾杯…。」
「梨華ちゃんは元気か?。確かもう中学生じゃない?。」
「うん…。」
「中学生の子供が居るようには見えないなぁ~千鶴若いから。」
「あきひとの子供達は元気なの?。」
「あいつら?。うんとね~娘は元嫁の店で働いてるらしい…。息子は最近ずっと連絡取ってないけど元気なんじゃないの?」
「たまに奥さんに会うの?」
「なんで?、会わないよ。」
「あっ、ごめん。」
「なんだ?、ほら食べなきゃ。益々やせちゃうぞ。あまり痩せたら抱いても気持ちよくないからやだな(笑)。」
「痩せたかどうか確かめる?。」
「こらこら、おじさんをからかってはいけないよ(笑)。」
私はあきひとの手を自分の胸元に持っていった。
「千鶴…。」
「あきひと…。」
私は自らあきひとを求めた。
あきひとは細くて切れ長の目で私をじっと見つめた。
胸を優しく揉みながら耳元で囁く…。
「したくなっちゃった?。ん?。」
「あっ…。んっ…。」
胸の鼓動が速くなる…。
あきひとが私の耳元に舌を這わせてきた。
「あぁっっ…。」
ずっと…、ずっと一日中あきひとにしてほしい。
何も考えたくない。
「ここもっとお肉あったのになくなったね(笑)、つまめないよ。」
裸で触れ合いながら会話をするのは妙にいやらしい。
あきひとは少し汗ばんでいた。
脚を絡めたり抱き締めあったり私達は肌の感触を味わった。
あきひとは私の下半身に自分のをこすりつけてきた…。
「こんなになったのひさびさかも。」
誰かとしたのかな…。
「そろそろいい?、我慢出来なくなってきた。」
「うん…。」
あきひとのも愛した。
ちょっと苦しそうな切ない声で感じている様子をみて嬉しくなる。
「なんでこんなにうまいの千鶴って…。」
上から私を見下ろし髪を撫でる。
背が高いあきひとのをするのは小さい私にはちょっと苦しかった。
「もっと俺見て…。そう…。」
あきひとがいいと言うまで私は続けた。
顎が外れそうになった。
「千鶴…好きだよ。」
あきひとが私の中に入った瞬間…、頭の中は真っ白になった。
用意周到なあきひとの部屋にはちゃんと用意してあった。
いつでも女の子を抱けるようにしているんだと思うと嫉妬した。
それから私はあきひとの所に住み始めた。
あきひとが仕事に行っている間に洗濯をしたり掃除をしたりした。
食費として私に預けてくれたお金で毎日朝昼晩の食事を作った。
ただ家事が終わると何もする事がなくなって、考え込む時間もあった…。
携帯電話はあきひとの意向で解約をした。
梨華の入学式の日。
もう桜は散り始めていた。
向こうはまだ蕾になるかならないかくらいだろうか…。
拓海や翔太は私が居なくなった事知っているのかな…。
深雪ちゃんのお母さんも戸惑っているかな。
母さんや父さんには、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
あきひととの約束は、辛くなったらすぐメールすること。
ひとりで考え込まないこと。
勝手にいなくならないことだった。
少しだけたまった洗濯物。
何かしなきゃ申し訳ないからこれも洗った方がいいのかな。
でもまとめて2日おきに洗っているって話してたから、勝手に洗ったら怒られるかな…。
私がきのう履いた靴下と下着。
そのままにしておくのも気になって洗濯機を回した。
外は少し汗ばむ陽気で、気持ちがいい。
寂しい。
あきひとが居ないと何もすることがない。
早く帰ってこないかな…。
洗濯が終わって、あきひとが干していたようにカーテンレールにハンガーをかけて乾かした。
あきひとの私物がしまってある押し入れがどうしても気になって仕方がない。
絶対勝手に見ちゃいけない。
見たっていいことないから。
私の心と裏腹に、私の手は押し入れの戸を開けようとしていた。
押し入れにはジャケットやダウン、スーツ。靴や雑誌など色々なものがぎっしり入っている。
奥に積まれたダンボール。
何が入っているんだろ。
あきひとの知りたくない一面を知ってしまったら、この先一緒に暮らせないかもしれない。
いきなりあきひとが帰ってきたらどうしよう。
やっぱりやめておこうかな。
ガムテープでとめてるわけでもなかった。
一個目のダンボールには色々な書類が入っていた。きちんとファイルに整理されている。
二個目のダンボール。
少し重くてガムテープでとめてある。
本とかアルバムなのかな。
剥がしたら絶対ばれる。
私は開けるのをやめた。
あきひとにはあきひとの過去がある。
私に知られたくない過去だってあるはず…。
ガチャガチャとドアを開ける音で目が覚めた。
「あきひと…?。」
いつの間にか寝ていた私は音に気付いてベッドから出る。
「ただいま。千鶴…、ごめんな。朝帰りしちゃったね。」
「なんで電話に出なかったの?。何回もかけたよ。」
「ごめん…。話込んじゃって。」
「どこかに泊まってきたの?」
「同じ課のやつんとこにちょっとだけ寄って寝かしてもらった。」
思い切り欠伸をする。
適当にシャツを脱ぎ捨てスーツも床に置いたまま、あきひとはベッドに入った。
一言ごめんねと言っただけ。
私がどれほど心配したか…。
あきひとはすっかり寝てしまった。
スーツをハンガーにかけて胸ポケットに手を入れるとそこにはキャバクラの女の子らしき人物の名刺が入っていた。
さぞ楽しかったでしょうね…。
名刺を引きちぎり、ゴミに捨てた。
アイロンがけと洗濯の事を言われ、荷が重かった。
あきひとと暮らすとなればあきひとに従わなければならないのはわかる。
でも、もっとやさしくしてくれると思っていた。
私の好きなようにしてもいいって言ってたのに。
家事はどちらかと言えば苦手だから、いちいち細かいあきひとに神経を遣うようになった。
一緒に暮らすようになってからあきひとはぱったりと私を抱かなくなった。
それが何故だかわからなかった。
私の事を好きではないのかな。
ずっと疑問だった。
いつも背中を向けて寝ていた。
「あきひと…。寝たの?。」
「まだ起きてるけど。」
そっと体を寄せた…。
私のサインに気付いているはずなのに、振り返ってくれない。
「あきひと…、抱いて…。」
「・・・・・・。」
勇気を出して言ってみた。
私はポスティングの仕事を始めた。
月曜日と木曜日。
それ以外は家に居て家事やアイロンがけをした。
慣れてきたらもっと日数を増やしたい。
あきひととはあれから引き続きずっとレスだった。
ただの同居人みたいな感じだった。
あきひとには他に女がいるのかも知れない。
いつも携帯にロックをかけていたし、残業だと言って電話が繋がらない事もよくあった。
私は携帯を買った。
登録しているのはあきひととポスティングの会社だけ。
友達も居ない。
木曜日のある日、いつものように仕事で団地を回っていた。
いつも深めに帽子を被って顔を隠していた。
「こんにちは。」
家主らしき男の人に挨拶をしながらポストにチラシを入れると声をかけられた。
その日の夜私はカレーを作った。
あきひとは7時過ぎに帰って来た。
「おかえり。」
「ただいま。今日はカレーだね。昼にカレー食ったんだ。」
「そうだったの?。作る前にメールすれば良かったね。ごめん。」
「いや、いいよ。千鶴のカレーうまいから食べる。」
あきひとは帰ってくるとまずシャワーを浴びる。
いつもその間にご飯を温め直していた。
あきひとは家ではあまり携帯をいじらない。
その夜珍しく電話が鳴った。
「あきひと、電話鳴ってたよ。」
シャワーから上がったあきひとに伝えると、一瞬動揺したのを私は見逃さなかった。
「あぁ、わかった。」
「今日汗かいちゃって気持ち悪いから私も今シャワーいいかな。」
「いいよ。ゆっくりな。」
携帯いじれるね。
わざとゆっくりシャワーしてあげるよ。
食べ終わったお皿やグラスを洗っていると、後ろからあきひとがいきなり抱きしめてきた。
「ちょっとどうしたの?、びっくりしたぁ。」
「今日しよっか。」
「えっ?。どうしたの?、無理しなくていいよ。」
「なんでそんな事いうの?。あんなにしたがってたくせに。」
胸元に手を入れてきた。
「ちょっと止めて。今手が泡だらけだよ。」
「ベッドで待ってるから。」
ほんとは私とはしたくないくせに…。
浮気をしている後ろめたさかな…。
なんて単純な男なんだろう。
その一週間後。
あきひとは私に内緒で1日有給を取っていた。
スーツで出掛けたけどバックに私服を隠して、おそらく駅で着替えたのだろう。
時々義務でするあきひとのセックスは前と明らかに違っていた。
自分本位のセックスだったのに優しく時間をかけるセックスに変わっていた。
不思議なのは彼女にしているようなセックスを好きでもない私にすることだった。
私は全くあきひとのセックスに感じなくなった。
ただ目を閉じて感じたふりをした。
いつものように仕事で同じ団地を回っていた。
チラシを入れないでくれと言われた家を抜かして配り歩いていた。
その日たまたま私は帽子を忘れて髪を下ろして歩いていた。
「あの…、すいません。」
振り向くと前に話しかけてきた男の人がわざわざ家から出て来て声をかけてきた。
「思い出しました。公園で会いましたよね。」
「公園…?。公園なんか行ったかな…。あっ…。」
今頃私はその人の事を思い出した。
「そうでしたね。やっとわかりました。先日は失礼しました。」
何故か嬉しそうな表情をしている。
「これからお仕事なんですか。」
スーツ姿のその人は重役なのだろうか。
今から出勤は遅い。
「はい。割と時間自由なんで…。チラシ配ってるんですね。」
「はい。」
「良かったらお茶でもどうですか?。」
「ありがとうございます。でもまだ仕事途中なので。」
「ですよね…。あの、良かったら連絡下さい。いつでもいいんで。」
一方的に名刺を渡して来た。
彼は会社を経営している人だった。
全くそんな気はないのに。
彼は私に名刺を渡してすぐ車で出掛けてしまった。
ポケットに名刺をしまうとまた仕事を再開した。
「千鶴、今日遅くなる。ご飯いらないから。」
「わかった。行ってらっしゃい。」
今日もみゆと会うのね。
そんなに大好きなんだ(笑)。
私は今日は仕事が休みだった。
アイロンがけを早めに終わらせて、彼に会うつもりで電話をかけてみた。
「もしもし。小椋さんですか。」
「もしかして、ポスティングの彼女ですか。」
「はい。」
「待ってたよ。」
「今日私休みなんです。良かったらお会い出来ませんか。」
「勿論。迎えに行くよ。どこがいい?。」
私は彼と会う事にした。
あきひとに対する後ろめたさはない。
あきひとは私が浮気に気付いているとわかっているくせに開き直っている。
あきひとより大人な彼と遊んで楽しもう。
内緒でこの日のために買った新しい服と靴で私は出掛けた。
彼の車はとても綺麗だった。
そして彼のスーツ姿は素敵だった。
「嬉しいよ。君名前何ていうの?。」
「千鶴。」
「千鶴かぁ…。あまり聞かない名前だね。今日何時くらいまで大丈夫なの?。」
「何時でもいいです。」
「ほんと?。じゃあとりあえずドライブしようか。」
私の浮気初日だった。
小椋さんは都会から離れた静かな山あいにあるレストランに連れて行ってくれた。
景色を眺めながらゆっくりランチをした。
彼は色んな話をして私を楽しませてくれた。
「笑った顔最高に可愛いね。千鶴ちゃんは笑ってなきゃ駄目だよ。公園で会った時正直柄悪い姉ちゃんにしか見えなかったよ(笑)。」
「小椋さんは見た目そのままの素敵な方ですね。」
ある程度食事を終えて私達は店を出た。
「どこ行きたい?。行きたいとこあったら言って。」
「どこでもいいです。」
「じゃあ俺の別荘に連れてくよ。ここから近いんだ。」
どんだけ金持ちだよ。
「楽しみです。」
別荘に着く間に彼の携帯には時々仕事の電話が入っていた。
社員に慕われているような印象を受けた。
「ごめんね、せっかくのデートなのに。」
「気にしないで下さい。忙しい時間を私に費やして下さって逆にごめんなさい。」
携帯のメモリを消して、小椋さんの存在を消した。
嘘をつくのは慣れっこだ。
あきひとの部屋の明かりが見えた。
本当ならあきひとが帰って来る前に戻って何もなかったように振る舞うつもりだった。
「ただいま。」
「お帰り…。なんだその格好。新しい服いつ買ったの?。化粧も濃いね。」
「ひさびさだね、私の事きちんと見てくれたの。」
「はぁ?、いつも見てるよ。お前さぁ今日休みだったの?。」
「うん…。あきひとは何で帰ってきたの?、具合悪いってどうかしたの?。」
「風邪気味だったから、早退したの。てっきりお前仕事終わって帰って来てると思ったら居ないし参ったよ。」
「そういえば…。あきひとが仕事行ってから変な電話がきたの。」
「電話?。」
「ずっと黙ってて気持ち悪かった。でも何となく女の人みたいな気配がしたけど。」
あきひとの目が泳いだ。
「誰なんだろう…。うちの番号知ってる人いる?。」
「間違い電話かなんかだろ。気にすんな。」
「そう…?、あきひとに用があるんじゃないの?。」
「ていうかお前電話出たのか?。」
「出たよ、あきひとだと思ったし。出ちゃいけなかったの?。」
「いや…。別に。」
あきひとがバツ悪そうな顔をした。
馬鹿だ。
私の話を鵜呑みにするなんて。
電話なんか来てねーよ。
その夜あきひとはそれから私に何も問い詰めて来なかった。
私はうまくかわすことが出来た。
「やっぱ熱ちょっと高いね。」
あきひとは背が高いからベッドに座らせてパジャマを着せた。
あきひとと目を合わせたくなくて目線を気にしないようにした。
でもあきひとは私をじーっと見ている。
「何?、どうかした?。」
「お前浮気してんのか?。」
「何、急に…。するわけないでしょ。そういうあきひとはどうなの?。」
急にあきひとが私を押し倒した。
「ちょっとびっくりするじゃない。やめてよ。」
「お前を外に出したくないんだよ。」
「はっ?。」
「俺のものだ。」
「よく言うよ…。浮気してるくせに…。」
「もう別れる。だから、お前も浮気するなよ。」
随分勝手な言い分だ。
私の浮気を疑うようになったら急に私が気になるんだね。
自分が決めてあきひとの側に来たけど、それが失敗だったと認めたくなかった。
あきひとなら素の自分で居られると思ったし、私を守ってくれると信じていたから…。
全てを投げ出してあきひとの所に来たけど、互いに浮気をして別れる事になるなんて…。
私の覚悟ってなんだったんだろう…。
あきひとの事、本当はそんなに好きじゃなかったのかな…。
あきひともそんなに私を想ってなかったのかな。
茶碗を洗いながらふさぎこんだ。
神様、私はどうすればいいの?。
やっぱり間違いだったの?。
この部屋で命を絶ったらあきひとに迷惑がかかる。
死ぬなら誰にも気付かれない所じゃないと。
私が死んでも悲しむ人は一人もいない。
でも私を憎む人はたくさんいる。
なんでこんな風になってしまったのかな…。
私はその場にしゃがみこんでただただ泣いた。
「千鶴…、千鶴…、大丈夫か?。」
「ん…、あれ?、どうしたの?。」
「こんな所で寝てたら駄目だろう。どうしたんだ。」
目を開けるとあきひとがいた。
「仕事は?。」
「午後は年休取ったんだ。千鶴とゆっくり話がしたかったから帰って来たんだよ。」
「あきひと…。」
「ん?。」
「私達…、別れるの?。」
「なんで?。」
「彼女と結婚するんだよね?。」
私はあきひとにすがって泣いた。
「千鶴…。」
「嫌っ…。彼女の所に行かないで…。私を捨てないで。」
あきひとは私を抱きしめた。
「千鶴を捨てたりなんかしないよ。」
「あきひと…。」
私はキスを求めた。
自らあきひとの手を胸元に持って行く…。
「いや…?。」
「嫌じゃない…。久々燃えてきた(笑)。」
「触って…。」
あきひとの手をスカートの中に持って行く…。
「千鶴、大胆だね…。」
あきひとを仰向けに寝かせ、またがった…。
彼女なんかどうでもよくなるくらい、あきひとを私でいっぱいにしてやる…。
「なに?、千鶴がリードしてくれんの?。」
自ら服を脱ぎ、下着だけになる。
「それも取っちゃえば?。」
言われた通りにブラも外した。
「いやらしいな…。」
私の乳房が髪の毛で隠れるたびに、あきひとは後ろに払う。
私の乳房を眺めながら指で悪戯する。
あきひとの下半身に私の局部をこすりつけ前後に動かしあきひとの上で自慰をしてみせる。
「欲しいの?。」
「うんっ…。欲しい…。」
思い切り淫らになってみる。
「雨だ…。」
暑くて窓を開けると久しぶりに雨が降っていた。
「雨の匂いってあるよね…。」
「ん?、匂い?。あんま気にした事ないけど…。」
「あきひと…。」
「ん?。」
「私怖いんだ…。」
「怖い?、何が…。」
「明日が来ることも、生きてく事も…すべて怖い。」
「俺もだよ…。明日死んじまうかもしんねーし、わかんねー事だらけだし。」
「私ここにいて迷惑じゃない?。」
「迷惑?、何で…。居なきゃ困るよ。」
「ほんと?。」
「本当だよ。」
「とりあえずパンツぐらい履くか(笑)。」
「そだね(笑)。」
もうしてしまった事を悔やんでも仕方がない。
ただ、たくさんの人を悲しませた事を今更ながらに悔やんでいた。
あきひとは結局みゆという女と別れなかった。
でも私を邪魔者扱いする事もなく出ていけとも言わなかった。
開き直って私に時々相談まで持ちかける事もあった。
聞くに耐え難い事を言われた時は話題を変えたりもした。
あきひとはどこまで無神経なんだろう…。
彼女とうまくいっている時ほど私も耐えられず浮気に拍車がかかった。
だけど、忙しそうな彼には連絡しにくくて我慢をした。
“お疲れ様です。早く会いたいです。”
精一杯のアピール…。
“ごめんね。なかなか時間なくて。また連絡するから。”
しつこいと嫌われるから、もうメールは控えよう。
「千鶴…?。」
「なに?。」
「今度うちに彼女連れて来たいんだけど…。」
「…。あぁ、私が邪魔なんだね。わかった、どこか行くから安心して…。」
「どうしたの?、その荷物。」
「追い出されちゃいました。」
「えっ?、何、彼氏のとこ?」
「はい。」
「とりあえず乗って。」
小椋さんの車はエアコンが効いていてとても涼しかった。
「今日も暑いね。千鶴ちゃん白いから焼けるでしょ?。」
「はい。夏は嫌ですね。」
「髪切ったんですか?。」
「うん。なかなか忙しくて行けなかったんだよ。やっとこの前切ったよ。」
助手席に座る私を時々見ながら小椋さんは言った。
「追い出されたって事は、行くとこないって事?。」
「まぁ…、そんな感じです。」
「何があったか知らないけどひでー奴だな(笑)。」
「もう、お互いに気持ちなかったから。いつかこうなると思ってました。」
「もう好きじゃないの?。」
「はい。」
「じゃあ俺の女にしてもいい?。」
そう言うと彼は私に触れてきた。
買い物を済ませて別荘に向かった。
「夜も雨降んないといいんだけどな…。」
「どうしてですか。」
「夜の散歩。星がめちゃくちゃ綺麗なんだよ。あと夏には蛍も見れるんだ。」
「蛍…。最近は見なくなりましたよね。」
「うん。だから千鶴ちゃんに見せたいな。」
小椋さんは少し浅黒い。
痩せているほうではないけどでもおじさんぽくもない。
でも父親というだけあって落ち着いていて包容力がある。
「こんな事聞いたら失礼だけど。今日って朝までいいのかな?。」
「……。」
一瞬ドキッとしてしまった。
「はい、大丈夫です。」
「わかった…。」
小椋さんはチラッと私を見るとスカートから見える脚に目線が行った…。
下心が丸見えだった。
この人も所詮普通の男なんだな…。
「タバコ吸っていいからね。気を遣わないでね。」
「はい…。」
「いいな…。千鶴ちゃん。結婚したら楽しいだろうな。」
結婚て言葉は今の私には重すぎる。
「恋愛してるほうが幸せです、きっと…。そのほうが、ずっと相手に優しく出来るし愛せると思う…。」
「千鶴ちゃんは幸せな結婚じゃなかったの?。」
さり気なく聞かれた言葉に返す言葉はなかった。
「まっ…、でも本当そうかもな。実際俺も失敗してるから。」
「きっと結婚したら、自分のものにしたくなるから…。自由にやりたいことも出来なかったり、そうすると優しく出来なくなったり愛せなくなったり…。よくわからないけど、我慢の方が多いような気がします…。」
「千鶴ちゃんも色々あったんだね…。今は…、楽?。」
「楽?。う~ん、わからないです。男の人見抜けないみたい(笑)。」
小椋さんが笑った…。
ご飯が出来上がった。
木のテーブルに、木のベンチ。
カレーとサラダを並べて、グラスを置いた。
あまり使っていないのか、カトラリーはピカピカだ。
「じゃあ、乾杯しようか。」
「はい。お腹空きましたね。」
ずっと冷蔵庫で冷え冷えだった瓶ビールを小椋さんは持ってきた。
「お疲れ様。今日はゆっくりしてね。」
男の人にグラスに注いでもらうのは初めてだった。
「すみません、ありがとうございます。」
マニキュアが少し剥がれ気味で恥ずかしかった。
「お疲れ様でした。」
彼のグラスにも注ぐ…。
小椋さんはいつも私から目線を外さない。
普段から人と目を合わせるのが苦手な私はあまり小椋さんの目を見れなかった。
「好きだよ。」
突然何を言うのだろう…。
どんな顔すればいいの…。
心臓がバクバクした。
「あれ?、千鶴ちゃんていくつだっけ…。」
「34です…。」
「じゃ、俺の6つ下かぁ…。」
小椋さん40なんだ…。
「若く見られるでしょ。」
「ん~、どうですかね。」
「何飲む?。」
「じゃ、同じのいただきます。」
「酒強いの?。」
「最近そんなに飲まないのでわかりませんけど、嫌いではないです。」
「それにしても、君色白だね。」
ノースリーブのマキシワンピースは腕がもろに出ていた。
「なんか透き通って血管まで見える(笑)。」
「あまり見ないで下さい…。」
「言葉悪いけど、雪女みたいだね(笑)。雰囲気的に…。」
「雪女ですか…。」
「うん…、目も細めだし、でも唇は色っぽい。」
「雪女なんて見たことないですから(笑)。ていうか小椋さんはちょっと熊っぽいですね。」
「あぁ、最近腹も出て来たしね(笑)。」
「なんか手が小さくて可愛い…(笑)。ちょっと黒いし本当熊みたい。」
「千鶴ちゃんも笑うと益々不気味な笑みだぞ。」
この人とセックスは出来るのだろうか…。
ちょっと滑稽に見えてきた。
「映画でも観る?。気になって買ったけど観ないまま置いてあるやつあるんだ。」
「映画、最近全然観てないですね…。是非観たいです。」
おつまみはチョコとナッツ。
字幕にするか日本語にするかでちょっと悩んだ末、日本語になった。
洋画のサスペンスだった。
「こっちおいで…。」
小椋さんに言われ、彼の肩に寄りかかった。
「好きだよ。」
「どうしてそんなに好きだって言うんですか。」
「好きだから。」
「私の事あまり知らないくせに…。」
「キスしていい?。」
小椋さんの顔が凄く近くなる。
初めてのキス。
私にとってキスはセックスよりも特別だった。
抵抗するわけでもなく、私は黙って彼を受け入れた…。
その時の私には感情がなくなっていた…。
どうあがいてもあきひとの所へは戻れないのだ。
小椋さんのことは好きになれそうにもなかった。
キスのやり方、愛撫…。
マメだけど私には長すぎた。
“気持ちいい?”
何度も聞いてきてうざいと思ってしまった…。
「ごめんなさい…、ちょっと痛いです。」
「えっ?、どこが?。ごめん気持ち良くないね…。」
すっかり渇いているのに刺激されても痛いだけ。
寝室にしまってあったのか、引き出しから何やらゴソゴソ持って来て私に無理矢理使おうとした。
奥さんとの時に使ったものなのだろうか。
気持ち悪い…。
「ごめんなさい、もうやめていいですか。」
「やだ?。嫌ならやめるね。ごめんね…、満足させられなかったね。」
嫌な空気が流れた。
小椋さんの目玉焼きは半熟で、私が好きな目玉焼きだった。
ベーコンをカリカリになるまで焼かないのも私好みだった。
コーヒーも私が好きなものだった。
偶然なのだろうか…。
美味しい朝食をいただいて、私は身支度をした。
小椋さんが喜ぶ事がしたくて、何がいいか考えた末、別荘を掃除する事に決めた。
ラジオを聞きながら、掃除をしたり食器を洗う。
天気がいいので、勝手に洗濯をした。
別荘の周りに咲いている花に目をやると、とても癒された。
蝉の声も聞こえてくる。
ここで毎日暮らしていたら何も考えなくていいのかも…。
そんな生活もいいな…。
窓を全て開けて風を入れた。
半日かけて掃除機や窓拭きをやった。
意外と別荘は汚れていて、掃除に時間がかかった。
高い掃除機なのか、持ち運びが楽で吸引力も良く掃除が捗る。
モップもかけてピカピカになった。
バスタオルや枕カバーも、風と太陽で昼過ぎにはほぼ乾いていた。
食材はほとんど買ってないために、何も作れそうになかったけど、買い置きのパスタとソースを見つけた。
勝手にあちこち物色するのも失礼かな…。
携帯がなり、着信を見ると小椋さんだ。
「もしもし?。」
「もしもし千鶴ちゃん?。」
「はい。」
「何してたの?。ご飯は食べたかい?。」
「はい、いただきました。とっても美味しかったです。」
「それなら良かった~。あのさ千鶴ちゃんいきなりで悪いんだけど、今夜うちのチビ連れて帰っていいかな。」
「あっ、はい。大丈夫です。」
「ごめんね急に。今日預かってほしいって連絡来て…。迎え行って買い物してから帰るから6時くらいになるけど。」
「わかりました。気をつけて…。」
ちょっと動揺した。
という事はお泊まりだ…。
「パパゲームしたい。」
家に入るなり藍斗君が言った。
「ちゃんとご飯食べて風呂に入らないとゲームは無理だよ。」
藍斗君はちょっと不満そうだ。
「あの…、ご飯どうしましょう。」
「俺さっと炒飯でも作るよ。風呂は…、それからにしようかな…。」
「ご飯私作ります。お風呂入って下さい…。」
「本当?、ごめんね。じゃあ飯お願いしようかな。」
小椋さんは微笑んだ。
「藍斗君の着替えって…。」
「多分リュックに持たせてあるはずなんだけど。」
「分かりました。小椋さんのは二階ですよね。」
「うん、ベッドのとこのタンスに入ってる。」
「準備しておきますね。」
「ありがとう、千鶴。」
小椋さんが私を呼び捨てにした。
私は奥さんになった気分だった。
こんな風に子供とお風呂に入ってくれるパパっていいなと思っていた。
藍斗君のリュックには着替えが何枚か入っていて、あとはゲーム機が入っていた。
適当に詰めたような感じだった。
藍斗君はどこか表情が暗い。
笑った顔が見たいな…。
出来るだけ野菜を細かく刻んで炒飯を作った。
思い鉄鍋を使って作った炒飯は割と美味しそうに見える。
サラダとスープも作ってテーブルに並べた。
「千鶴~。」
バスルームから小椋さんが呼ぶ。
「ごめん、藍斗の体拭いてくれるかな?。」
ちょっと驚いたけど、言われた通りに藍斗君のお世話をする。
「気持ち良かった?。」
黙って頷く。
「お腹空いた?。」
ちょっと首をかしげた。
まだ私の様子をうかがっているようだ。
「藍斗ね、今日ひろみ先生と折り紙したんだ。」
パジャマを着せていると突然しゃべりだした。
「ん?、ひろみ先生?。」
「ひろみ先生ってわかる?。」
「う~んわかんないなぁ…。藍斗君はなにぐみさん?。」
「くま組だよ。」
「くまさんかぁ…。パパもくまさんみたいだよね。」
藍斗君が笑った…。
「藍斗ねぇ~パパとママと飛行機乗ったんだよ。」
「へぇ~すごいね~。」
「藍斗、お姉ちゃんと何話してるんだ?。」
小椋さんも出てきた。
藍斗君は私に慣れてくると色んな話をした。
片言な所や、テレビのCMを見て一緒に歌ったり、突然戦いごっこを始めたり…。
私は男の子を育てた事がない。
だから藍斗君がとても可愛く思えた。
「藍斗、そろそろ歯磨きして寝ないと明日幼稚園だぞ。」
「あしたようちえんやすみたい。」
「だめだよ、ママと約束しただろ。」
「‥‥‥。」
「あいと、お姉ちゃんとあそびたいもん。」
私達は目を合わせた。
「ちゃんと幼稚園行かないとパパもママに怒られるんだよ。」
小椋さんがちょっときつく言った。
泣きそうだ。目に涙を溜めている。
「あいとくん?、お姉ちゃんあしたお仕事なの。だから遊べないんだぁ。ごめんね。」
藍斗くんは涙を拭いながら頷いた。
「やっと寝たよ~。」
30分くらいしてから小椋さんが二階から降りてきた。
「すみません、ゆっくりしてました。」
「千鶴、色々ありがとね。」
ソファに腰掛けるなり小椋さんが手を握って来た。
「改めてなんですか、気にしないで下さい。」
「君さ…、子供いるの?。」
「えっ…。」
「なんか扱い慣れてるし、もしかしたらそうかなって。」
「います…。もう中学生です。」
「うそっ?、本当に?。いやぁ…、驚いたよ…。」
「私、実家が秋田なんです…。」
「秋田?。なんでまたこっちに?。」
「好きな人諦めきれなくて…。」
「……………。」
「置いてきたのか…。」
「はい…。」
それ以上、小椋さんは私に何も聞かなかった。
「これからどうするか考えてるの…?。」
「考えてはいます。でも何から始めたらいいのかもわかりません…。もう何もないんです。明日行く場所も、何も…。」
「千鶴。お願いがあるんだけど。」
「お願いって…。」
「俺の家に居てほしい。」
「どういう意味ですか…。」
「あの家に藍斗を連れて帰りたいんだ。そしてあの家から幼稚園に通わせたい。でも今の俺の状況じゃ、藍斗の事ずっとみてやれないから。千鶴さえ良かったら、藍斗と俺と三人で暮らしたい。」
「小椋さん…。」
私にとってはありがたい話だった。
涙が出るほど嬉しかった。
「あの…。小椋さんは奥さんと離婚なさったんですか。」
「してない。藍斗をどうするかで揉めてる…。」
「まだ離婚なさってないのに上がりこむ訳にはいきません。勝手にそんな事出来ないです。」
「藍斗を行ったり来たりさせたくないんだ。もう俺が育てたほうがいいと思うんだ。あいつろくに幼稚園行かせないで平気で休ませたり、飯も適当だし藍斗が可哀想でみてられないよ。」
翌朝、小椋さんは藍斗君を幼稚園へ送りながら仕事に行った。
“お姉ちゃん、今日も遊ぼうね。”
藍斗君は不安な顔をしてそう言った。
“とりあえず今日はここに居て?。後で電話するから。”
今日は落ち着かない1日になりそうだ。
ある程度掃除も終わると暇になってしまう。
テレビもつまらなかった。
私は庭の雑草が伸びている事に気付いて、草取りをする事にした。
草の中から藍斗君のおもちゃが出てきた。
枯れた向日葵を抜くと、土の中からダンゴムシが出てきた。
ゴム手袋の中は蒸れてきて、汗もかいて気持ち悪くなった。
広すぎる庭の草取りはなかなか終わらない。
もうそろそろ終わりにしようかと思った時、一台の車が別荘に向かって来るのが見えた。
小椋さんではない。
まずい、隠れなきゃ…。
私はベッドの下に隠れていた。
汗まみれのまま、埃だらけになり不快でたまらない。
早くここから出たい。
二人が階段をあがって来る音がした。
やばい。本当にやばい。
もうおしまいかも…。
そう思った時、二人は藍斗君の部屋の前を素通りして、奥の夫婦の寝室らしき部屋に向かった。
きのう小椋さんが寝ていた部屋。
その部屋に男を連れ込む…?。
嘘でしょ…、あり得ないよ。
部屋のドアが閉まり、かすかに鍵をかける音がした…。
今だ…、今のうちに下に降りて家から出なきゃ。
慌てた私は柵に頭をぶつけた。
そっと部屋を出て静かに階段を降りた。
カウンターに置いてあるバッグを持ち出し、靴をもったまま家を出た。
鍵もかけて見つからないように裏を回って家から離れた。
私は疲れていつの間にか眠っていた。
藍斗君のベッドが一番落ち着いた。
携帯の音に起こされ、慌てて出ると小椋さんだった。
「千鶴、今どこ?。」
「あぁ…ごめんなさい、別荘にいます。ちょっと寝ちゃってて。」
「大丈夫か?、何回も電話したよ。」
「大丈夫です。それより、どうなりましたか…。」
「今日あいつと連絡取れなくてさ、藍斗も預けっぱなしのくせに電話1本よこさないで、何やってんだか…。」
「奥さんて、車運転されますか?。」
「するけど、なんで?。」
「あっ…、ただ。幼稚園お迎え行くのかなって気になったから…。」
「今日どうしようか…。そこにいても不便だし、家来るか?。」
もし今日来た人が奥さんなら、何も遠慮はいらないかな…。
「はい…。行かせていただきます。」
「じゃ、今から迎えに行くからある程度支度しててくれる?。あとしばらくまた行かないかも知れないから戸締まりとか元栓もお願いしていいかな。」
「分かりました。」
ゴミをまとめ、水回りも綺麗にした。
まるで、コテージをチェックアウトするかのような気分だった。
「お姉ちゃん!、行かないで!。」
藍斗君が追いかけてきた。
「帰っちゃやだ。帰んないでよぉ!。」
「ごめんね…、お姉ちゃん藍斗君ちには行けないんだ。」
「お菓子食べようよ、ゲームしようよ~。」
「またね…。お利口にして待っててね…。」
小椋さんも外に出てきた。
「千鶴…。一緒に居てくれないか。」
「無理です。そんな資格ないですから。」
「藍斗の母親になってくれないか…。」
「はっ?…、何言ってるの?。」
「わかってるよ…。当たり前だよな…、でももう気持ち固まってんだよね…。千鶴とずっと一緒に居れたらいいなって、最近ずっと考えてたんだ。」
私は動揺した。
「ちゃんとけじめつけるから。だから、ずっと俺達のとこに居てくれないか。」
「小椋さん。私…、私今自分がこれからどう生きてったらいいかわかんなくて悩んでるんです。頭ぐちゃぐちゃだし、自分がしてきた事も悔やんでも悔やみきれないし、あなたに甘えてしまう事で、益々駄目な人間になってしまいそうで…。なんでそんな事言うんですか?。」
私は泣いた。
小椋さんはそれから何度か奥さんと話し合いを重ね、1ヶ月後に離婚した。
藍斗君は小椋さんが引き取った。
奥さんが私物を取りに来るという日、私は家に居ないようにした。
何時に来るかも分からないし、夜まで戻らないようにした。
藍斗君は幼稚園を休み、小椋さんは仕事を休んだ。
小椋さんは私にお金を渡した。
「好きなように使っていいから。行きたいとこに行っておいで…。落ち着いたら電話するよ。」
「ありがとうございます。」
「千鶴?、もう敬語は使わないで…。俺の事も名前で呼んで欲しいな…。」
「名前…、小椋さんてなんて言うんですか(笑)。」
「あれっ、言ってなかったっけ??。」
「多分…。」
「雅樹だよ(笑)。」
照れながら言った…。
「雅樹…、雅樹さん?。」
「千鶴に言われると照れるな。名前で呼ばれたのも久しぶりだな…。」
「じゃあ…、行ってきますね…。」
今日は秋晴れで気持ちがいい。
「ただいま。」
「おかえり~、大丈夫か?。」
「うん。ちょっとお腹張ってきたから今日はもうやめるね。」
「あまり無理するなよ。」
「うん…。そういえば…、なんかちょっと気になったんだけどね、うちのアパートじっと見てる女の人がいたの。」
「いつ?。」
「30分くらい前かなぁ。なんかここに何か思い出でもあるのかな…。様子がおかしかったんだ。すぐにいなくなったけど。」
「変なやついっぱいいるからな。」
「あきの元カノとかじゃないよね…。」
「はっ?。元カノって…?。そんなやつ忘れたよ(笑)。」
「だよね。もう昔の事は忘れたよね(笑)。あっ、今ここ蹴った!。」
「どれ…?。」
「ほら、ここ(笑)。」
「なんでか俺触ると動かないんだよな。」
「パパだといやなのかな(笑)。」
「なんだよそれ(笑)。」
「みゆ?。」
「なに?。」
「キスしよっか。」
「えっ?。」
「愛してるよ。」
「うん…。赤ちゃんさぁ、あきに似てるかな。」
「あたりまえだ。イケメンに決まってるよ。」
「もうお昼だね。ご飯作らなきゃ。」
「俺なんか買ってくるよ。」
「ありがとう。お願いしちゃおっかな。」
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