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いつか解き放たれる時まで…③

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Poinsettia( ♀ oqFMh )
13/09/20 23:24(更新日時)

読んで下さっている皆様ありがとうございます。

③も宜しくお願いします。

No.1920824 13/02/28 21:23(スレ作成日時)

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No.1 13/02/28 21:38
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「お母さん…起きてる?。」

梨華が部屋に入って来た。


「なに?。」


「授業参観のお手紙きたから。卒業式の説明会とか色々話あるみたいだよ。」


「置いといて…。あとで見るから。」


「ご飯たべないの?。今日おでんだよ。」



梨華はそう言うと下に降りて行った。


人に会いたくないのに参観日なんて行けない。


下で母さんがぶつぶつ何か文句を言っている声が聞こえた…。



所詮私は邪魔なんだ…。



No.2 13/02/28 21:59
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

昼間寝ているからなのか夜は全く眠れない。

胃が小さくなっているから、何か少しつまむだけでお腹いっぱいになった。

部屋のテレビをつけて深夜番組を見るのが日課になっていた。


東京楽しそうだな…。



隠れ家的なお店や、賑わう街を見ていると行きたくなる。


また向こうで暮らしたいな。



「千鶴…、起きてるか。」


兄さんがノックしてきた。

仕事から帰ってきたのかな…。


慌ててテレビを消した。

「入っていいか。」



兄さんが部屋に入ってきた。

No.3 13/02/28 22:13
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「飯は食ったか?。」

「ちょっと食べたけど。」

「これ買ってきてやったから食いな。」


兄さんはコンビニでサンドイッチとおにぎりとレモンティーを買ってきてくれた。


「どっか具合悪いのか?。ずっと寝てるって聞いたから。」


「うん…ちょっとね。」

「千鶴あのさぁ、お前に先に話しておくけど…。俺結婚しよっかなって思ってんだ。」


「えっ…。兄さん相手いたの?。」


「うん。ずっと付き合ってるやつね。」


「・・・そうなんだ。おめでとう。」



「ここでお袋や親父と暮らしてもいいって言ってんだ。」


「同居嫌じゃないんだね…、珍しい。」



「お前が今家に居ること言ってないんだ。梨華の事もだけど。」


「・・・・・・。」



「とりあえずそんなとこだから…。じゃあ、お休み。」


「お休み…。」


No.4 13/02/28 22:16
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

兄が何を言いたいのか分かった…。


私に出ていけと言いたいのだ。


出戻りの小姑はお嫁さんにとっては嫌な存在だ。

梨華を連れて出て行く…。


もう本当にどうにかしなければ…。


また頭が痛くなってきた。


No.5 13/02/28 23:26
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私はここには居るべきではない。

私が出て行けば丸くおさまるのだから…。


梨華の中学入学を認めますという手紙も届き、益々秋田から動けなくなった。


資格も何もない私にはフルタイムで働ける仕事が見付からない。


パートを掛け持ちするしかないのかな…。


財布を整理しながら、私はふとある人の名刺が目に止まった。

この人誰だったかな…。
いつもらった名刺だったかな…。


あっ…。


宏武さんの店に来た客だ。

私に歌わないかと声を掛けてきた人だ。

No.6 13/02/28 23:39
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

宮内和彦。


名刺にはライヴハウスの名前と携帯番号があった。

人前で歌う事には抵抗がある…。


でも今はとにかく稼がなきゃないと思った。


ライヴハウスは夜だし梨華をひとりにさせてしまうけど、パートを掛け持ちしなくても、何とかなるかもしれない。


話だけでも聞きに行こうかな…。

でも今の私が果たしてちゃんと仕事が出来るかな。

それからまた私は布団に潜ってしばらく自分と葛藤した…。

No.7 13/02/28 23:48
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

翌朝、梨華の“行ってきます”で目が覚めた。


兄がきのう買って来たサンドイッチを部屋で食べた。


久しぶりにカーテンを開けた。


まだ雪は残っているけれど春は確実に近付いている。


久しぶりに携帯の電源を入れるとたくさんのメールが入っていた。


メルマガの中に混じって翔太と昌仁からも来ていた。


翔太からのメールを恐る恐る開いた。


“ちぃ、連絡つかないね。どうしてるの?。また会って話がしたい。お互い本音で話したい。”


翔太は怒っていなかった。


“ごめん。ずっと部屋にこもってた。今凄く悩んでる。もう少し時間下さい。”


翔太に送った。

No.8 13/02/28 23:56
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

“千鶴~何かあった?。あきひと心配だよー。あきひとがこっちにおいでなんて言ったから余計千鶴悩ませてるのかなって思ってたよ。千鶴大好きだよー。”


昌仁は相変わらずだ。


“心配かけてごめんね。今凄く悩んでる。時間ちょうだい。”


同じ内容のメールを送った。


翔太も昌仁もなんでこんなに優しいんだろ。


2人とも私が自分以外の相手がいるとわかっているはずなのに…。


きっと私はいつか罰が当たる…。


No.9 13/03/02 21:39
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

昼過ぎ私は宮内というその人に電話をかけた。


5回くらい呼び出し音が鳴り、寝起きのような声で宮内さんは電話に出た。


「はい、もしもし。」


「もしもし…。あの…宮内さんの携帯でしょうか…。」


「はい。そうですが。」

「あの…、以前名刺をいただいて…気になってお電話をしたのですが…。」


「ん?、誰かな?。」


「あの…。駅裏のビルで働いてた凪子という名前の…。」


「・・・・・・・凪子?、あぁはいはいわかった。」



「あの、良かったらちょっとお話を聞きたいのですが…。」


「今日バンドメンバーの練習日だから、良かったら店に見に来るといいよ。」


「いいんですか?。」


「4時からやってるから。俺も行くよ。」


「分かりました…。ありがとうございます。」



ドキドキしながら電話を切った。


私、何やってんだろ…。本当に大丈夫かな…。


急に自分のしたことに驚いた。

No.10 13/03/02 21:47
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

シャワーを浴びて、久しぶりに化粧をした。


翔太がくれたワンピースに初めて袖を通した…。

袖の辺りがぴたっとフィットして、でもふんわりとしたスカートの私が好きな形の黒いワンピースだった。


時間をかけてブローをした。



“翔太。素敵なワンピースをありがとう。”



「兄さん…、ちょっといい?。」


起きがけの兄さんに声を掛けて私は出掛けた。



まだ梨華も母さんも帰って来ていない。



3時半過ぎのバスに乗って宮内さんの店へと向かった。

No.11 13/03/02 21:53
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

まだ飲み屋が開く時間ではないため、ほとんどの店は閉まっている。


ビルの中にある宮内さんのライヴハウスの店の前に着くと中からドラムやギターの音が聞こえてきた。


ドアを開けるのが怖かった。


自分から開けられずに立ち尽くしていると、ひとりの女性がエレベーターを降りてやってきた。


一緒目が合う…。


すぐにそらしてしまう。


「お客さんですか?。」

「あっ…、いえ…。違います。」


その女性は首を傾げると店に入って行った。



バンドのメンバーかな…。

No.12 13/03/02 22:05
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

その女性が店に入ってすぐに中から宮内さんが出て来た…。


「なんだ、来てるなら入れよ(笑)。」


「あっ…、すみません。」


宮内さんと一緒に店に入った。


「ちょっと見学させてやってな。」


宮内さんはそう一言バンドメンバーに言うと、私をカウンター席に座らせた。


さっきの女性と、もうひとりの女性、ドラム、ギター、ベース、キーボード…。


メンバーは私を一斉に見た。


No.13 13/03/02 22:13
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

軽くお辞儀をして私はカウンターの椅子に座った。


「凪子って本名じゃないよな?。」

「はい。」


「名前は?。」


「千鶴です。」


「千鶴か…。なるほど…。じゃあステージネームはチィだな。」


「チィ…ですか?。」

「嫌か?。」


「チィって言われてるので他の呼び方がいいです。」


自分でも思ってもみない事を言っていた。


「じゃあ…、そのまま(凪)Nagiにしよう。Nagiでいいか?。」


「はい。」



私はここで働く…。


そう自分に言い聞かせた。

No.14 13/03/02 22:54
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

バンドメンバーはみんな怖いイメージだった。

女性ヴォーカルの二人もきつそうな感じがした。

「とりあえずお前はあの二人を見て振りだとか歌い方だとか勉強してな。」


どこかで聞いた事があるような歌。


でも英語だった。


たまに日本語で歌うのもあったけど、ほぼ英語だった。


英語の歌詞の暗記。

英語の歌なんて果たして歌えるのだろうか…。



「夜のステージは見て行くか?。」


「何時からですか。」


「1回目は8時。」


まだ時計は4時半を回った所だった。

No.15 13/03/02 23:05
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「すみません、今日はこれで失礼します。また他の日にステージを見に来ます。」


「わかった…。まずゆっくり考えてみて。」


「はい。ありがとうございます。」


私はバンドメンバーにも礼を言って店を出た。


外に出ると雪が雨に変わっていた。


傘もない私は足早に駅のバス停に向かった。


あまり周りを見ていなかったせいかすれ違う人とぶつかってしまった。


「痛っ!!。」


少し背の高い男の人とぶつかった。


謝るでもなく通り過ぎて行こうとしたその人と目が合った。


「あっ…。」


「・・・・・・・。」


「ちぃちゃん?。」


「うん…。」





拓海との再会だった…。

No.16 13/03/02 23:14
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「元気…?。」


「うん…。久しぶりだね。」


しばらく私と拓海はその場に立ち尽くした。



「雨だし、どっか入る?。」


「そうだね。」


私と拓海は近くのファーストフード店に入った。

ホットコーヒーを2つ頼んで私達は少し話をした。


「秋田に居たんだね。」

「ちぃちゃんもね。」


「少し老けた??。」


「どういう意味だよ(笑)。」


「今何やってんの?。」

「何もしてない。無職だよ。」

「実家いんの?。」

「うん。」


「拓海君は?。」


「バイト。女んとこに住ましてもらってるけどね。」


No.17 13/03/02 23:28
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「付き合ってるの?。」
「う~ん…どうかな。俺はそんなに好きじゃないけど、金ないし楽っちゃあ楽かな。」



色んな人間がいるものだ。


「今日なんかあったの?。デートとか。」


「違うけど。どうして?。」


「ただ聞いただけ。」


拓海は以前よりずっと落ち着いた感じがした。


ジャラジャラつけていた頃が懐かしい…。


「ねぇちぃちゃん。」


「ん?。」


「久々だし、これから飲まない?。」


「ごめん。最近体調悪くてあまり飲めないんだ。」


「ふ~ん…そっかぁ。まぁ、とりあえず出よう。」

タバコを消して拓海は席を立った。


コーヒーがまだ飲み終わらないうちに私達は店を出た。

No.18 13/03/02 23:35
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

雨はひどくなっていた。
道はぐちゃぐちゃだ。


拓海は私の腰に手を回し抱き寄せるようにして歩いた。


「ちぃちゃんすげー可愛くなったね。」


至近距離で囁いてきた。

「ちょっと休憩しよ。」


拓海はホテル街に向かって歩いた。



「ごめん無理。私帰らなきゃ。」


「いいから。」


そのまま私は無理やりホテルに連れ込まれた。


No.19 13/03/02 23:40
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

拓海の腕がしっかり私を掴んで離さなかった。


適当に部屋を選んだ拓海はそのまま私を連れて行く。


久しぶりに再会したのにホテルに連れ込まれるなんて…。


No.20 13/03/06 21:01
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

お金あるのかな…。


拓海が選んだのはアジアンテイストな部屋だった。

拓海は髪が黒くなっていた。

ちょっと冷めたような目つきは変わっていない。

「拓海君は、今日バイトはないの?。」


「ん?バイト?。あぁ…まぁ入ってるけど、別に休んでもいいかなぁ~なんて。」


「どうして?、大丈夫なの?。」


「別に働かなくても食わしてもらえるし。」


「どんな関係なの?。そんな女の人っているんだね。」


「寂しいからひとりでいたくないらしいよ。」


「拓海君は…、誰でも抱けるの?。」


「えっ?。」


「あっ…いや、その女の人を好きならいいの。」

「あんま気になんないかも。」




やっぱり彼の事はよくわからないと思った…。

No.21 13/03/06 21:20
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「ちぃちゃんは、あのハーフみたいな奴とまだ付き合ってんの?。」


「ハーフ?。ハーフって…あぁ。」



翔太だ。



「付き合ってるのかな…。何とも言えないかな…。」


「また振り回してんの?」


「振り回す?。」



「女って怖いよな。何考えてんのかマジでわかんねーし。」



「必ず誰かひとりを好きでいなきゃだめなのかな?。」



「どうだかねぇ…。あんま気分いいもんじゃないよな…。」



ソファに腰掛けながら拓海と話をした。


拓海はタバコをふかしボーッとどこか一点をみつめている…。


少女漫画に出てくるような綺麗な顔だ。


「ちぃちゃん。」


「何?。」



「…いや。会えて嬉しいな…。」


「・・・・・・・・・・・・・。」



拓海の体には引っ掻き傷のようなものがたくさんあった。



「どうしたのこれ?ひどい…。」



「あぁ…。ちょっと変わった女なんだよね。」


「痛くないの?。」


「痛くないけどずっと消えないんだ。」


傷は全身にあった…。


「どうして一緒にいるの?。別れられないの?。」


「俺もひとりになりたくないしね。」



心の闇は深いと思った。

No.22 13/03/06 21:29
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

拓海は私に甘えてきた。

拓海をほっとけなかった。

拓海を優しく抱き締めて髪を撫でた。


「すげー落ち着くんだけど…。」


「私も…。なんか落ち着く。」



「たまに会ってくれる?。」


「うん。」



拓海の携帯は終始鳴りっぱなしだった。


あまりのしつこさに恐怖さえ覚えた。


拓海をかくまう女の人ってどんな人なんだろう。


No.23 13/03/06 21:37
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

拓海とセックスはしなかった。

ただ一緒にいるだけだった。


支払いは私が済ませた。


「じゃあね、ちぃちゃん。」


「うん…。何かあったら連絡してね。」


ホテルの前で別れた。


拓海はどこに向かったのだろう。


バイト先かな…。

女のとこかな…。



私も駅に向かった。



明日また出直してライヴを見に来よう。



帰り道も拓海がずっと気がかりだった。

No.24 13/03/06 23:02
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

頭の中は今日あった出来事でいっぱいだった…。

母さんに小言を言われても、さほど前より気にならなくなった。


あの場所で歌ってお金を貰う。

そして実家を出て梨華と暮らすんだ。


目標が出来た。


早く実家を出たい。


No.25 13/03/10 23:34
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

翌日は梨華の参観日だった。


教室の後ろの隅に立っていると梨華が私に気付いた。


授業は国語だった。


終わってからの学年懇談会では卒業式の説明や謝恩会などの話があった。

なるだけ謝恩会も出なきゃな…。


仕事との時間調整を考えたら、卒業式が終わってからの方がいいような気もした。


周りはほとんど知らないお母さんばかりだ。


深雪ちゃんのお母さんを探せなかった私は少し心細かった。

No.26 13/03/10 23:41
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「梨華ちゃんのお母さん?」


説明会が終わって帰ろうとすると声を掛けられた。

「あっ…、こんにちは。」


深雪ちゃんのお母さんだった。


「どこに座ってました?」

「前に居ました(笑)。」

「全然わからなかったです(笑)。」


「お変わりないですか?なんか凄く久しぶりですね。」


「色々ありましたけどなんとか…(笑)。」


「深雪と梨華ちゃん二人で先に帰ったみたいですね。」



深雪ちゃんのお母さんは以前より明るくハキハキしていた。


「元気そうですね。体調もいいですか?。」


「おかげさまで…。あの…、実は主人内示が出まして秋田に戻って来ることになったんです。」

No.27 13/03/10 23:52
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私と深雪ちゃんのお母さんは廊下で少し話をした。

「そうなんですか?、それは良かったですね。」

「私、うちの姑と合わなくてそれでも今までずっと耐えてきたんですけど、思い切って主人に三人で暮らせないかなって話してみたんです。」


「ご主人は何て?。」


「あまりいい顔はしませんでしたけど、近くに住む事を条件にいいよって言ってくれました。」


「本当に…。それは良かったですね…。」


「私も姑には苦労したから…、なんかほっとしました。」


「ありがとう。」


「中学は勿論一緒なので少し家離れますけど今までみたいに梨華ちゃんと一緒に行ったり出来れば嬉しいです。」


「勿論です。宜しくお願いします。」



帰りは歩きのつもりでいたけど、深雪ちゃんのお母さんが車に乗せてくれた。



「ありがとうございます。助かりました。」


「ではまた~。」




深雪ちゃんのお母さんはニコニコ嬉しそうだった。


姑との同居生活がよほど辛かったのだろう。



No.28 13/03/11 00:01
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

最終の駅行きのバスの時間を見て帰った。


今日ステージを見に行けたらいいな…。


なるべく足を運ぶように宮内さんに言われ、時間があるなら店に通いたいと思った。


たとえ8時からのステージが間に合わなくてもその後のステージを見れたらいい…。



とりあえず私はみんなと夕飯を済ませ、片付けをして梨華が寝るまでは出なかった。


気持ちは行きたくても9時を過ぎるとさすがにそれからはタクシーを呼んで行くのが億劫になってくる。


化粧をして着替えて出るのが面倒だ。


迷っていると突然拓海から電話が来た。

No.29 13/03/11 00:21
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「もしもしちぃちゃん。」

「もしもし…。拓海君?、どうした?。」


「今話せる?。」

「いいよ。拓海君は話せるの?。」


「うん。今一人だから。」

「仕事に行ったの?、彼女。」


「うん。2時くらいまでは帰って来ないからゆっくり出来る。」


「きのうはあれからどうしたの?。」


「ん?、あぁ…。結局バイトさぼってパチンコ行った。」


「そっか…。」


「俺さぁ…、本当はこんな生活やなんだ…。いつもあいつに振り回されてこっから出られなくてさ。」


「どうして今の生活になったの?。」


「たまたま前のバイト先であいつ働いてて、そっから付き合い始めたんだ。」


「好きだったから付き合ったんだよね?。」


「う~ん、どうなんだかね。よくわかんない。ただ俺そん時金なかったしアパートも家賃滞納してたから出なきゃなくて住むとこなかったからね。あいつさ、いちいちうるさいんだよ。茶碗洗っといてとか洗濯たたんどいてとかさ。」



「やってないと怒る?」

「うん…。すげーキレる。そうなるとあいつが満足するまでやんなきゃない。」


「何を?。」


「ん…?。セックス…。」


「まるで彼女の言いなりだね…。」



「情けねーよな。」



「別れたら?。」


「そうしたいけど、あいつに金借りてるし返すまでは別れないって。」


No.30 13/03/11 00:26
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

拓海の彼女ってどんな人なんだろ…。


拓海はキャッチが入ったからと言って電話を切った。


出ないと浮気してると疑われるようだ。


私の存在がばれたらまずいはず…。


拓海には履歴は削除するように念を押した。


9時半を過ぎて私は今夜は行くのをやめた。



拓海が気になって仕方なかった。


今夜は彼女からどんな仕打ちを受けるのだろう。


前はあんな拓海じゃなかったのに…。


No.31 13/03/11 00:35
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

土曜日…。


やることをちゃんと終わらせた。


部屋の掃除もして家族の朝昼夜のご飯を作った。


母さんから外出許可をもらい、私はあの店に向かった。


今日はカジュアルな格好だ。


歌を録音するためにレコーダーを持った。


本当はダメなんだろうけど覚えるには必要不可欠だった。



宮内さんに電話を入れて8時からのステージを見ることが出来た。


ステージ衣装に着替えたメンバーがスタンバイをした。


女性ヴォーカルはふりふりのワンピースとウェスタンの衣装を着ていた。

お客さんは3組だ。


私はカウンターの椅子に座ってステージを見学した。

No.32 13/03/11 00:38
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

気付かれないように録音をした。


女性ヴォーカルは合間合間のMCも上手かった。


常連のお客さんと初めてのお客さんをうまくのせていた。


どこかで聞いた懐かしい音楽に私はすっかり酔いしれてしまった。


あっというまにステージが終わり、30分の休憩時間になった。

No.33 13/03/11 00:45
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

宮内さんに呼ばれ、私はバンドメンバーの楽屋に案内された。


「いいんですか?。」


「入って。」


「失礼します。」


メンバーはタバコを吸ったり携帯を見たりしていた。


「祥子の代わりに今度からステージにあがるナギだから。みんな可愛がってやってな。」



「・・・・・・・。」



無反応が怖かった。



「宮内さん?、あたしが教えるの?。」


祥子らしき人がきつい口調で言った。


「あぁ頼むな。」


「経験あるの?。」


「なし。だから1から教えてやって。」



かったるそうな表情の祥子は私と目を合わせなかった。


No.34 13/03/11 00:49
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

ステージではあんなにニコニコして可愛いキャラの祥子だったのに、楽屋では全くの別人だった。

もう一人の女性ヴォーカルが私に話しかけてきた。

「覚えんの大変だよー。祥子さんの歌難しいのばかりだし、最低10曲は出来ないとステージ回んないからね。」



「はい…。わかりました。」


誰も優しい言葉をかけてくれるメンバーは居なかった。

No.35 13/03/11 19:24
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私は軽くお辞儀をして早々に楽屋を出た。

カウンター席に戻って曲のレパートリーを見たり した。


宮内さんが隣に座った。

「色々大変だと思うけど、お金もらうって事は楽じゃないからな。ナギも歌って客からお金もらうわけだから、一生懸命やってな。ナギの頑張り次第でステージにあげるから…。」



「はい…。」




今から歌詞を覚えたり、振り付けを覚えたりするのが自信なかった。


でもこんな私を宮内さんがスカウトしてくれた事が嬉しかった。


No.36 13/03/16 22:38
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「ステージ上がるの?。」

宮内さんが席を外した時お酒を作りながら音響をやっている男の人に話しかけられた。


「あっ…はい。上がれるようになりたいです。」

「顔良くても実力ないとメンバーから相手にされないよ。」



グサッときた。


顔がいいなんて思ってもいない。


そんな甘い考えなんかしてない。


「何か飲む?。」


「いいえ。いらないです。」



次のステージの時間になってメンバーがスタンバイに入った。


お客さんは5組になった。

男性ヴォーカルのバラードからステージは始まった。


どこでコーラスが入るのか、どのタイミングでステップをするのか細かくメモを取った。

No.37 13/03/16 22:44
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

このステージが終わったら今日は帰ろう。


しばらく連絡をしていなかった翔太からまたメールが来ていた。


“ちぃ今日会えないか?。話したい。”


“少しならいいよ。今駅前にいるから来れないかな?。”


“わかった。これから行くよ。”


翔太と待ち合わせをした。

話って何だろう。



今日もレコーダーにはたくさんの曲をおとす事が出来た。


メモも3ページ分書いた。

あまり時間がないから早く覚えなければ…。

No.38 13/03/16 23:04
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

翔太とファミレスで待ち合わせをした。


私の方が早く着いて翔太がくるまでレコーダーを聞いていた。


祥子の歌を中心に聞いた。


翔太が来たことに気がつかず、肩を叩かれようやくわかった。


「何聞いてんの?、珍しいな。」


「あぁ、ちょっとね。」

「何か用事あって出てきたのか?。」


「うん。」


「何か話あった?。」


「ちぃ…。」


「何?。」


「俺達ってどんな関係なんだろ。」


「えっ…。あぁ…そうだね…、なんて言ったらいいのかな。」


「はっきりさせようよ。」


「そう…だね…。」


まともに顔が見れない。

No.39 13/03/17 05:39
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

>> 38 「何か食べる?。コーヒーとかは?。」


とりあえず切り出した。

「翔太来るまで何も頼んでなかったから、とりあえず飲み物頼も?。」


「あぁ…そうだな。じゃあコーヒーでいいよ。」

ボタンを押して店員を呼んだ。


「この前は悪かったね。剛志さんちには行ったの?。」


「うん。仁美さんちぃも来ると思ってたみたいでがっかりしてたけどな。」


「ごめんね。」


「ちぃ…、ひとつ聞いていいか?。」


「なに?。」


「俺の事好きか?。」



翔太は冷たい目で私を見た。

見下したような呆れたような何とも言えない目だった。


「わからない。今仕事をきちんとしなきゃって思ってて、あまり考えられないんだ。」

No.40 13/03/17 05:48
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

翔太はしばらく黙っていた。


「はっきりしなくちゃいけないのかな…。」


「あのさぁ…ちぃは何人いんの?。」


「えっ?。」


「何人と付き合ってんだよ。」


翔太が怒り出した。


「いないよ。特定の人なんて…。」


「俺みたいな奴がゴロゴロいんの?。」


「ゴロゴロって…、そんなわけないじゃん。」


「翔太さ、あまり私に固執しないでくれるかな?。」


「はっ?。」


「私あまり縛られるの好きじゃない。」


「俺ちぃの事縛ってる?。」


「う~ん…。縛ってるっていうか、今は翔太の相手が出来ないから、それに対してどうなのとか好きなのとか聞かれるとちょっと困る。」


No.41 13/03/17 05:57
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「今は向き合えないの。自分の事でいっぱいだから。」


「俺はさ、ちぃが好きで美砂と別れたんだ。確かにあいつの借金が嫌で別れたのも理由だよ。でも今ちぃとこうなるなんて思ってなかったし、フリー同士堂々と付き合えると思ったよ。」


「うん…。確かにそうだったね。でもあの時とは状況も変わってきてるの。今はなかなか翔太に会う時間もないし、寂しい思いさせてるなら無理に付き合ってなくていい。」



私ははっきり伝えた。


翔太がしつこいと感じたくらいだった。


「わかった…。もう連絡しないから。」



そう言って翔太はコーヒーに口も付けずに居なくなった。

No.42 13/03/17 06:05
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

男と女って面倒だ。

もう恋愛の駆け引きとかどうでもいい。

翔太の事はもうきっと好きじゃなくなっていた。
優しくて頼りがいがあって、私を不安にさせたりしなかったし、彼氏には最高な人だと分かっていたけど。


きっと私には物足りなかった。


でもそれを認めたくなかったし、傷つけたくなかった。


はっきり好きじゃないからなんて言えない。


No.43 13/03/17 06:16
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

コーヒーを飲みながら少しだけファミレスで過ごし、タクシーを捕まえようと外に出た。


ぽつりぽつりとしかタクシーが見当たらない。


しかも乗車だ。


私は少し歩いてタクシーを探した。


「あれ、ちぃちゃん?。」


拓海に会った。



「何してるの?。バイトの帰り?。」


「じゃないけど、今から彼女迎え行くんだ。」


「歩いて迎え?。」


「車ないしね(笑)。」

「近いの?。」


「うん。そろそろ終わる頃だよ。」


「気をつけてね。」


「ちぃちゃんもね。」


拓海はフードをかぶり少し足早に去った。


迎えに来させるなんてどんな人なんだろ。


気になった…。



尾行したりするのは卑怯だし、やっては行けないと思った。



でも知りたかった…。

No.44 13/03/17 06:52
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

拓海に気づかれないように距離を置いて歩いた。

拓海はコンビニの前で立ち止まりタバコに火をつけた。


私は隠れる場所がなくて焦りながら手前の通りに身を潜めた。


他の人に怪しまれないように出来るだけ普通にした。


彼女が来るのだろうか。

拓海は青白い顔をしていた。

色白だけどちょっと顔色が悪そうに見えた。


ご飯食べてないのかな。

遠くを見るような眼差しがいつも私には気になった。


いきいきとした昔の拓海ではない。


ちらちら拓海を見ては隠れるを繰り返していると彼女らしき人が現れた。

「お疲れ。」

「ただいまぁ~。遅くなってごめんね。最後の客なかなか帰んなくて。」

二人は手を繋いでこちらに向かって歩き出した。

慌てて隠れる。


心臓がバクバクいった。

彼女らしき人の姿を見て私は目を疑った。


間違いであって欲しかった。


きっと人違いだ。


「たくぅ?、ラーメン食べたい。」


「ラーメン?。しょこちゃん本当ラーメン好きだね。この前食ったじゃん。」


二人が通り過ぎると私は逆方向に向かって歩き出した。


仲良そうな二人だった。

あの人あんな風に可愛い声が出るんだ。


拓海の体に引っ掻き傷を付けたり…、気に入らない事があればセックスで満たしたり…。



皮肉にも拓海の彼女は祥子だった。

No.45 13/03/17 07:00
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

私はショックだった。

拓海の彼女だと分かってどうやって店に行けばいいのだろう。


せっかく見つけたのに…。

この仕事を頑張るって決めたとこだったのに…。

祥子はいづれ店を辞めたら拓海と結婚するのかな。

何で店を辞めるんだろ。

悔しいようなやり場のない怒りでグチャグチャな感情が湧いていた。


神様は私が何かを始めようとすると必ず行く手を阻むんだ。


やっと歩き出したのに…。


泣きながらしばらく歩いた。



やっぱり私は何をやってもうまく行かない。



このまま死んじゃいたい。

No.46 13/03/17 07:32
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

酒に走る訳じゃないけどそのまま家に帰りたくなかった。


「もしもし翔太。さっきはごめん。あのさぁ、迎えきて?。」



自分が何をしているのかわからなかった。



翔太は断ってきたけど一方的に電話を切った尋常じゃない私を心配したのか迎えに来てくれた。



「どうしたの?、別れたいって言ったのに。彼氏にふられたか?。」


「翔太、ホテル行かない?。」

「何で?。」


恥だと思った。


でも現実を受け止められずにいた。


「何も聞かないで。」


私は翔太に抱かれることで一瞬でもさっきあった事を忘れたかった。


ホテルにつくなり翔太に自らキスをした。


「ちぃ、シャワー浴びなくていいの?。」


「翔太抱いて。」


「何だよ、訳わかんねぇな(笑)。」


私は自ら服を脱いだ。


「翔太触って…。」


翔太の長い指を私の秘部へ持って行く…。


「あっ…💦。」


「どうしてほしい?。」

「もっと…もっと弄って…。」


「こう?。」

「うん…。気持ちいい。あっ…💦。翔太っ…。」

翔太の前で脚を広げて自ら求めた。


「いつからしてないの?」

「翔太としてからしてないよ。」


翔太はわざと音を立てながら指や唇で愛撫した。

下半身が疼いてたまらない…。


「ちぃ俺のも触って?。」


体を交互にして私達は互いに愛した。


拓海もこんな風に祥子にするのかな…。


嫉妬をするだびに翔太にされることで癒やしてもらっていた。


「お前はどうしようもない馬鹿な女だな。別れたらセックスしたくても出来ないよ?。」


翔太に馬鹿にされても構わなかった。

No.47 13/03/19 23:28
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

翔太の舌は温かい…。


色んな私を知っているから、翔太となら何も苦労はしないのに…。


拓海…?。


祥子と私とどっちがいい?。


私なら拓海をいっぱい包んであげるのに…。


翔太に抱かれながら頭の中は拓海の事を想っては切なくなった。


今私の中に入っているのが拓海なら…。



翔太は気付いていたのかな…。


どこか機械的だった。


No.48 13/03/19 23:54
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「翔太…、どうして抱いてくれるの?。」


「どうして?。どうしてかな…。」


「あぁっ…。もっと突いて…。」


「ちぃが好きだからだよ。」


「嬉しいな…💦。こんな女なのに好きなんだ…?。」


「そんなに締め付けたらだめだよちぃ…。」


「だって…凄くいいんだもん。奥まで当たってるっ💦💦。」


「ちぃの彼氏とどっちがいい?。」


「翔太かも…💦。」



翔太は今度は私を寝かせ覆い被さると、自ら腰を激しく振ってきた…。



「ちぃは俺のものだよ。」


No.49 13/03/20 00:04
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

明け方ホテルを出た。


まだ外は薄暗い…。


セックス疲れで眠かった。


「なんか買うか?」


気づいたら車で寝ていた。

目を開けるとコンビニの駐車場だった。


「うん。」


翔太は迷わず缶コーヒーとタバコを買った。


私はレジ横のホットレモンを買った。


「また現実が始まるね。」


「そうだね。嫌だ?。」

「うん。」

No.50 13/03/23 00:06
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「吸うか?」


「ありがと…。でもやめとくね。」


「禁煙してるの?」


「うん…。なるべくね。」


「ちぃは謎が多いな…わからない事だらけだよ。」


翔太はため息をついた。


「ごめんね。振り回して最低だよね私。」


「まぁ…いいさ。そんなんでもお前好きだから。」


「翔太…。」


「家帰ったらちゃんと寝ろよ。」


「翔太これから魚市場だよね?、ごめんね、こんな遅くまで…。」



「あぁ…。いや、いいんだ。ちぃには言ってなかったけど、もう俺んち寿司屋閉めるんだ。」



「えっ?、そうなの?」

「お父さんが決めたの?。」


「うん。親父と話し合って決めたんだ。」

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