注目の話題
🍀語りあかそうの里🍀1️⃣0️⃣
自分を苦しませる人
レストランに赤ちゃんを連れてくるな

いつか解き放たれる時まで…③

レス204 HIT数 49877 あ+ あ-

Poinsettia( ♀ oqFMh )
13/09/20 23:24(更新日時)

読んで下さっている皆様ありがとうございます。

③も宜しくお願いします。

No.1920824 13/02/28 21:23(スレ作成日時)

投稿制限
スレ作成ユーザーのみ投稿可
投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.51 13/03/23 00:11
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「そんな事になってたんだね…。」


「まぁな…。やっぱ儲かんないよ。こんな田舎だし。」


「もう翔太の握るお寿司食べられないんだね。」


翔太は何とも言えない笑みを浮かべた。



「俺もわかんねーよ、これからどうすればいいかなんてさ。」


私達はしばらく無言のままだった…。


No.52 13/03/23 00:45
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「ごめんね…、私何も知らなかった…。」


「しばらく会ってなかったからな…。」


「次の仕事…、考えてた?。」


「だからさ…。参ったよ。仕事見つけなきゃな。俺が親父とお袋面倒見なきゃないしな。」


「そういう事になるんだね…。」


「実はさ、うちも兄さんがこの前言ってきたんだけど…。」


「ちぃのお兄さん?。あれ、家に居るんだっけ?。」


「うん…そうなの。それで、結婚するから私に出てけって…。」


「マジかよ…。」


翔太は困惑した。

No.53 13/03/23 00:51
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「当然梨華ちゃんもだよな…。」

「うん。だからマジで本当にやばくて私も仕事始めて家出なきゃないんだ。」


「でもそんなすぐには無理だろ…。アパートの敷金だってないんだろ?。」


「うん。厳しいかも…。私仕事続いたためしないし、お金なんてないよ。」



辺りはすっかり明るくなり、私達はとりあえずコンビニの駐車場を出た。

No.54 13/03/23 00:58
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

お互い仕事が決まって落ち着いたら連絡をしようということになった。


家に着くと案の定母さんに怒られた。


「いい加減にしなさいよ。朝帰りなんてみっともないからやめて。」


何も言い返せず、ただ二階に上がった。


兄さんの冷たい視線…。


梨華の無視。



もう少ししたら出てくから。


梨華もこのままここに居ればいいじゃん。


悲しくて悔しくて泣きたくなった。

No.55 13/03/23 01:06
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

昼過ぎまで私は眠り、それから洗濯機を回して乾いた洗濯物をたたみ、シャワーをした。


台所に行きご飯を温めて鍋にあった肉じゃがをおかずに食べた。


誰とも口をきかないまま支度をして家を出た。


今日も祥子を見て勉強だ。

かろうじて覚えた曲を丁寧にノートに書き写したものを持参した。


今日その曲のリクエストがなければ歌は聞けない。

No.56 13/03/24 00:19
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

その日祥子は凄く機嫌が悪そうだった。

挨拶をしても返してくれなかった。


拓海と何かあったのだろうか…。


にしても仕事にプライベートを持ち込むのは良くないと、祥子を少し見下してしまった。


1回目のステージは客が来なくて流れた。


宮内さんは仕事で関東らしく、今日は居なかった。

まだメンバーとコミュニケーションも取れていなかったから、話し相手は居なかった。


探しても見つからない曲の歌詞や音があった。

それを祥子から借りなければ覚えられなかった。

でも話しかけずらい。


よりによって今日は機嫌が悪そうだ。


しきりに携帯をいじっている…。


「ったく…、どこ行ってんのよ。」


独り言はしっかり聞こえていた。


タバコをふかしながらぶつぶつ言っている。

No.57 13/03/24 00:24
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

仕事は仕事だ。


怖がっているばかりじゃ駄目だ。


「祥子さん…。」


「ん、何?。」


「あの…、どこ探してもこの曲とこの曲が見つからなくて、良かったら音と歌詞を借していただけないでしょうか。」


「これは古い曲だから歌詞ないの。だから耳コピして…。あとこっちは歌詞なら楽屋にあるし、CDは明日持って来るから。」


怒っていたけど意外に親切だ。


「ありがとうございます。」


祥子が歌詞を見せてくれたものは彼女が手書きしたものだった。

No.58 13/03/24 00:32
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「あとわかんないのある?。」


「あっ、あのデュエットの曲はどれとどれですか?。」


「あたしはこれとこれ沢地くんと歌ってる。」


沢地くんとは男性ヴォーカルだ。


「キー高いから1こ下げてるよ。ナギさんは高いの出る?。」



“ナギさん”


祥子が初めて名前を呼んだ。


「あまり高いのは出ないと思います。」


「今客居ないからちょっと声出ししたら?。あたしのマイク使っていいよ。」


「でも、まだ覚えてなくて…。」


「歌詞見れば歌えるのあるでしょ、とりあえず適当でいいから歌ってみたら?。」


祥子はそう言ってメンバーに声をかけてくれた。

メンバーはステージに上がってスタンバイをしてくれた。


「皆さんすみません、ありがとうございます。」

No.59 13/03/24 00:42
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「はい!。」


祥子が私に自分のマイクを渡した。


四角で銀色のマイクはとても重かった。


「このマイク使ったことあるかないかわかんないけど上のこの部分しか声拾わないから。ちょっと声出してみて?。」


「あっ…、あーっ。」


マイクを通して私の声がライブハウスに響いた。

「いいじゃん。そうそう、そうやって使ってね。」


祥子がとても優しくて戸惑ってしまう。


「ちょっと見せて。」


祥子は私のノートを見た。

「これ歌ってみよっか。じゃあ○○やってくれる?。」


祥子がいきなりメンバーに言った。


「キーは?。祥子ちゃんと一緒?。」


キーボードの榎子さんが聞いてきた。


「一緒でお願いします。」


そう言うとドラムがカウントを出してその曲が始まった。


“どうしよう…めっちゃ緊張する…”


鼓動が早くなった。

No.60 13/03/24 00:50
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

カタカナをふった英語の歌詞をただ歌った。


早くて演奏についていけない。


歌にならない歌に沢地くんや榎子さんはコーラスを入れてくれた。


祥子は客席でじっと見ていた。


あっという間に1曲終わってしまった。


「うん…。当たり前だけど、まだ厳しいね…。ちょっと頑張って歌詞覚えて、あとステップだとか細かいとこもやんないとね…。経験なさそうだからちょっと大変かも。」


「はい。頑張って覚えます。」


2回目のステージ10分前になり、メンバーはまた楽屋に戻った。


一人一人に頭を下げた。


私の初声出しは終わった。

No.61 13/03/24 01:00
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

2回目のステージは5組客が入り、さっき練習した曲のリクエストがあった。


祥子は私に分かりやすいようにいつもより振り付けをオーバーにやってくれた。


私は祥子に感謝した。


嫌な女だと思った自分が恥ずかしかった。



4回目のステージが終わったあとのまかないを、厨房の方のご好意で私もメンバーと楽屋でいただいた。


「そこ座っていいよ。」

祥子に言われた場所に座らせてもらった。


メンバーの会話に加わる事はなかったけど、まかないのガーリックチャーハンとサラダが美味しかった。


「うまいでしょ。琳さんの料理最高だよ~。」


もうひとりの女性ヴォーカルが教えてくれた。

No.62 13/03/24 01:07
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

少しずつ私は店の雰囲気に慣れていった。


メンバーや店の人達の名前も覚えてきた。


最後のステージを終えてメンバーと帰り支度をした。


祥子やメンバーよりも先に帰る訳にはいかない。

私はカウンター席でみんなが出て来るのを待った。

今日は色々経験させてもらえた。


歌うって楽しいかもしれない…。


衣装を来て客の前で歌うって気持ちいいんだろうな…。


憧れの目でステージを見ていた。


「お疲れ様です。」


「お疲れー。」


メンバーが楽屋から出てきた。

No.63 13/03/24 01:16
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「何で帰んの?。」


「タクシー拾います。」

「金かかるじゃん!。毎日来てたらきつくない?。」


苦笑いを浮かべた。


「あんま無理しなくていいよ。私もすぐすぐは辞めないしさ。」


「はい。ありがとうございます。」


祥子と一緒に店を出てエレベーターに乗った。


祥子は携帯を取り出し電話をかけた。


「もしもし…たく?。どこ行ってんのよ~何回も電話したんだよ。」


祥子は私にお構いなしに拓海と会話をする。


「今どこいんの?。迎え来てよ~待ってるからさぁ…。」


一方的?に電話を切る。


「あっ、ごめんね。気にしないで。どうしようもないヒモ彼氏だから。」


エレベーターが1階に着いた。

No.64 13/03/24 01:20
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「あっ、先帰っていいよ。私彼氏待ってるから。」


「そうですか…、じゃあお先に失礼します。今日は本当に色々ありがとうございました。」


「またねぇー。」


祥子に頭を下げてビルを後にした。



今から拓海が迎えに来る。


会ってはいけない。


急がなきゃ。




“どうしようもないヒモ彼氏”



拓海…。



そんな事ないよね…。

No.65 13/03/24 01:31
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「遅刻じゃん、遅いよ。」

「ごめん。」

「たく何で電話出ないの?。」

「ごめん気づかなった。」

「あたしが仕事してんのに何やってんの?。」


「ごめん。」


「ご飯出来てる?。」


「ごめん作ってない。帰ったらすぐ作るから。」

「今から作るの?、何でちゃんとやってないわけ?。」


「本当ごめん。」




そんな会話をしたのだろうか…。



タクシーの中で思った。


今日は祥子さん優しかったよ…。


拓海君には嫌な女だね。


No.66 13/03/26 23:10
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

拓海…。

祥子さんのとこ着いたかな。



“なんかすんげー落ち着くんだけど…”


あの時の拓海の目が忘れられない。


拓海は本当は女の人に甘えたいんだよね…。


祥子さんはきっと拓海を優しく抱きしめたりとか話を聞いてあげたりとかしてない…。



拓海…。


私が守ってあげられたらいいのにね…。

No.67 13/03/26 23:21
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「たく!、遅いよ~。」
「ごめん。」

「風邪ひいたら仕事になんないっつうの。」

義務的に手を繋ぐ。

繋がないと怒るから。

「ご飯なに?」

「シチュー作った。」

「すごいじゃん。」

「風呂も沸かしといたから…。」

「ありがとう。今日新人に色々教えたから疲れたんだよねー。」


「新しい人入んの?。」
「じゃなきゃ私辞めれないし。」


「しょーこ、いつ辞めんの?。」

「その子が独り立ちしたら辞める。まぁあと1ヶ月ってとこかな。」

No.68 13/03/26 23:30
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「なんか謎なの。その子…。」

「謎?。何が?。」

「何考えてんのかわかんないし、素性を明かさないの…。そんなに若くもないんだけどさ。」


「珍しいね…、しょーこが他人にそこまで興味持つの。」


「なんか影があるのよねー。ひょっとしたらバツイチかも。」


くだらない。


人の事なんてどうだっていいだろ。



歩いて10分。


アパートは近い。


「ただいまー。いい匂いするぅ~。」


しょーこは靴も揃えない。


「たく?、お風呂一緒に入ろう?。」


「あぁ…。」



苦痛な時間が始まる。

No.69 13/03/26 23:42
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「たく?髪洗って?。」

しょーこの髪は黒くて長いから洗いにくい。


髪から体まで、いつも俺に洗わせた。


自分では顔しか洗わない。

「次、たく洗ってあげるから。」


「俺はいいよ、昼シャワーしたから。」


「あっそ。せっかく洗ってあげようとしたのに。」


「先あがるね。」


「一緒に温まろうよ~なんで~?。」




なんでこんなやつといんだろ…。



いつになったら別れられるかな…。

No.70 13/03/26 23:53
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「今日はありがとうございました。また明日お店行きます。宜しくお願いします。」


メールを見てベッドに携帯を投げた。


「誰から?。」


「新人のなぎこさーん。」


小馬鹿にした言い方だ。

「たく~?、私辞める前にステージ見に来ない?。」


「あぁ…、そうだね。」

「なんか嫌そう…。私に興味ないって感じだし。」


わかってんじゃん。



しょーこのくだらない話を聞きながらシチューを食べた。


No.71 13/03/27 00:09
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

祥子は気付いてないけど俺はため息ばかりついていた。


ここで何やってんだろ。

ちぃちゃんに会いてーな…。


ベランダでタバコを吸っている時だけが至福の時だった。


「たく~、寝るよ~。」


勝手に寝ろよ。



連日腕枕をせがまれた。

勝手にパジャマを脱いで誘ってくる。


「たく?、いい?。」


「ごめんちょっと腹痛いから無理。」


「嘘ばっかり…。最近全然してくれない。」


背中を向けた瞬間祥子は思い切り背中を引っ掻いてきた。


「いてーだろ。なにすんだよ。」


「言うこと聞けよ。居候のくせに。」



「悪かったな。いつでも出てってやるよ。」


「金もないくせに。」




祥子を抱かなくて済んだ。


ちぃちゃん…。


好きだよ…。



ちぃちゃんの顔を思い浮かべながら目を閉じた。

No.72 13/03/27 00:15
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

祥子が寝付いてからひとりでコンビニに向かった。


漫画を立ち読みして時間を潰した。



ちぃちゃん寝たかな。


話がしたかった。



“寝た?”


メールを送った。


“起きてるよ。どうしたの?”

すぐに返事がきた。


“少しだけ話せる?”


“いいよ。かけても平気?。”


“うん。”


ちぃちゃんは彼女が居るからと気を遣ってくれていた。


No.73 13/03/27 00:27
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「もしもし、拓海君?」
「ちぃちゃん、すげー声ききたかったよ。」

「どうしたの?、何かあった?。」

「もう俺無理だよ。あいつと別れたい。」


「どうして?。彼女と喧嘩でもした?。」


「もう本当無理。明日にでも出よっかな。」


拓海は限界のようだ。


「ちぃちゃん、会いたいよ…。」


「わかった…。とりあえず落ち着いて、今日は戻りなさい。明日彼女に別れたいって言ってみて?。」


「無理に決まってんじゃん。別れないって。」


「今どこ?」


「コンビニ。」


「風邪ひくといけないよ。今日は我慢して帰って…ねっ?。」


「そっか。ちぃちゃん実家なんだもんね。ごめんね。」



その後電話は切れてしまった。


かけ直しても留守電になった。


拓海に悪いことしちゃったかな…。


No.74 13/03/31 23:18
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

それからしばらく拓海と連絡が取れなくなった。


居ても立ってもいられず、あの電話を切った事をひどく後悔した。


祥子は仕事を休まずに来ていた。


拓海の事をどうにかして知りたいと、もどかしさでいっぱいになった。


常に彼女の会話に聞き耳を立てていた。


返事は来なくても電話が繋がらなくてもメールは送り続けていた。


どうか…、どうか無事でいて。

今度会えたら抱き締めるね…。


私の中からいつの間にか昌仁や翔太の存在が薄れていった。



祥子が付けていたネックレスが拓海と同じだった…。


それが分かった瞬間物凄く嫉妬し、そして拓海に惚れてると気付いた。



No.75 13/03/31 23:32
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「曲覚えた?。」


カウンター席で考え事をしていると沢地さんが話し掛けてきた。


「はい…、なんとか祥子さんのは覚えたんですけど、まだMCとかは全く無理で…。」


沢地さんは体も割とがっしりしていて日焼けをしていてサーファー系だ。


垂れ目がなんとなく癒し系だ。

「早く一緒にステージ上がろうね。頑張って。」


そう言うとタバコを吸いながら携帯をいじり始めた。



最近私は帰りが遅くなっていた。
母さんの目も厳しくて家を追い出されそうだった。


今日はもう帰ろうかな…。



席を立った時にちょうど宮内さんが店に顔を出した。


「ナギ来てたのか。偉い偉い。」

「はい…。」


「今日はラストまで居るか?」

「すみません、今日はこれで失礼してもいいですか?。」


「了解…。なんか顔が疲れてるからゆっくり休んでな。」


「ありがとうございます。」


そう言うと私は楽屋にも顔を出して挨拶をして店を出た。

No.76 13/03/31 23:44
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

店を出てすぐ私はまたダメもとで拓海に電話をした。


プルルル…。


電話が繋がった。



「もしもし…。」


かすれた声で拓海が電話に出た。


「もしもし?私。今どこ?。」


「ちぃちゃん…?。」


「もしもし?大丈夫なの?。この前はごめんね。」


「ひさびさだな…ちぃちゃんの声きくの。」


「ねっ、今どこ?。」


エレベーターを使わずに階段で下に降りた。



「今ね、店長のとこにいる。」

「店長?、店長ってラーメン屋の店長?。」



「わかる?。今からちぃちゃんも来ない?。」


「えっ…。」



拓海の居場所が分かってほっとしたけど、ずっと会っていない人に会うのは抵抗があった。

「ごめん遠慮するね。ねぇ拓海君、しょっ…、あっ…、じゃなくて彼女のとこには帰らないの?。」



「彼女のとこ?。なんで?。」

「いや…、別れられたのかな…なんて思って。」



「別れたよ。」

No.77 13/03/31 23:51
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「えっ…、本当に?。」


「うん。」


「彼女、わかってくれたんだ…。」


「俺ね、はっきり女いるから別れてって言ったの…、泣かれたけどね…。」



祥子は普段と変わりなかった。

まさか別れたとは思わなかった。


「ちぃちゃん…、好きだよ。」

「やだ、店長いるんでしょ。」

「寝てっから心配ないって。」

「お酒飲んでるの?。」


「うん。」




なぜか私は少し冷めた…。

No.78 13/04/01 00:00
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「またね…。」


電話を切るとタクシーに乗った。


男と女はわからない。


二人が簡単に別れられた事をなぜか素直に喜べなかった。



“ちぃちゃん、一緒に寝たいな…”

拓海からメールだった。



拓海はやっぱりまだ考えが幼いのだろうか。


私がおかしいのかな…。



No.79 13/04/01 00:06
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

それから数日後…。


宮内さんから祥子はしばらくまだ店を辞めないと連絡が入った。


拓海と別れたからなのだろうか…。


“ナギが気が向いた時でいいからまた見に来てな…”



今は必要なくなったって事か。


悲しいを通り越し、悔し涙も出ない。



誰にも怒りをぶつけれない。


理由を聞かなくとも私はなんでこうなったかわかっていた。



神様なんかいない。



私には味方になってくれるものなんかない。




やっと、やっと何か出来そうな事をみつけたのに…。

No.80 13/04/01 00:15
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

誰かと話をしたかった。


何も私の近況を知らない昌仁に突然電話をした。



「もしもし。」


「あきひと?、あたし。」


「久しぶりだなー、元気か?」

「うん、元気だよ。あきひとは?。」


「なんとかやってるよー。なんも変わってない。急に電話してきてなんかあったのか?。」


「なんもないよ。ただちょっと寂しくなったから。」


「なんだ?、カレシとうまくいってないのかー?。」


「カレシなんかいないって。」

「あきひとにそんな事言っては駄目だ。」



「・・・・・・。」



「もしもし?千鶴、聞こえるか。」



「あきひと…。」



「なに?。」



「会いに行っていい?。」

No.81 13/04/01 00:21
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

こらえていたものが溢れ出した。


「千鶴泣いてんのか?、おいおいどうした?大丈夫かよ。」


あきひとの優しさに益々泣けてきた。



「いいよ。おいで。」



「ありがと…。あきひとありがと…。」




私にはやっぱりこの人なのだろうか…。


この人にしか甘えられないのだろうか…。



一週間部屋にこもり死ぬほど考えた。





“梨華をお願いします”




母さんに置き手紙を残し、私は家を出た。



No.82 13/04/01 00:40
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

お金は底をついていた。


梨華のために取っておいたお金を使い、高速バスで東京に向かった。


小さな旅行カバンに財布と携帯と化粧品と時計。


あと少しの洋服と手帳を入れた。


今の私には梨華を育てていけるだけの力がない。


梨華を連れ戻した事は間違いだった。



母さんごめんね…。


私やっぱり駄目だ…。


母親やれないね…。



梨華ごめんね。



何もしてやれないねお母さん。



梨華に声をかけずに黙っていなくなった。



二回も同じ事をした。



逃げる事しか頭になかった。


誰もあきひとの連絡先を知らない。


秋田を離れたかった。




No.83 13/04/01 00:58
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

バスは夜が明けてから東京に着いた。



久しぶりの東京。



いつ以来だろう…。



「あきひとおはよう。今着いたよ。」


「遠かっただろ…、疲れたね。高速バス着くとこ今探して歩いてたからもう少し待ってて。」


「うん。」



あきひとに会える…。



半分泣いていた。


いっぱい甘えたい。


涙枯れるまで泣かせてほしい。




遠くで私に手を振る人がいた。

駆け足で私に向かってくる。


あきひとかな。




あっ、あきひとだ。



私も手を振る。




「千鶴~、お待たせ。」


朝から爽やかだ。


「あきひと花粉症なの?、またマスクだね(笑)。」


「今年花粉すげーんだよ、マジできついって。」


「なんだ、千鶴またやつれたな…(笑)。」



あきひとを見上げる目が涙でいっぱいだった。


「泣くな。もう大丈夫だよ…、お帰り。よく頑張ったな…。もう何も考えるな…。」



そう言ってあきひとは私を抱き寄せた。

No.84 13/04/01 01:10
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「俺今日年休取ったから休みなんだ…。ずっと一緒にいるからね。」


「うん…。」


あきひとの手は温かい。


「メガネかけてないね。見えるの?。」


「今コンタクト入れてる。マスク曇るしな(笑)。荷物かして?、持つよ。」


「いいの?。ありがとう。」

「なんだ、やたら軽いな。覚悟を決めて来た割には(笑)。」


私が涙でぐしゃぐしゃだったから、電車を使わずにタクシーであきひとの家まで直行した。


「懐かしい…。」


「だろ?。また千鶴連れてこれて嬉しいよ。」



早くあきひとと二人きりになりたかった。


タクシーの中でもずっと手を握りあっていた。



「買い物はきのうのうちにやっといたから大丈夫。部屋も掃除したよ(笑)。」


「わざわざありがとう。いつも通りでいいのに。」



あきひとのアパートに着いた。

No.85 13/04/01 01:20
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「お隣はいるの?。」


「この前出てった。上はいるけどね。」


「どうぞ。」


「おじゃまします。」


「狭くてごめんな(笑)。」

「ハハハ(笑)、相変わらずちっちぇーな。」


「うっさい馬鹿!。」


「でも…やっぱ可愛い。千鶴…おいで。」



「やっと二人きりになれたね。」


「寂しかったんだぞ。俺は。」

「ごめん。」



狭い玄関で抱き合った。

No.86 13/04/01 01:30
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「朝飯食おうか。あきひとが作ってやる。」


「一緒に作ろう?。その方が楽しいし。」


上着を脱いだ。



「可愛いね。黒のワンピース。似合ってる。」



慌てて着て来たのは翔太がクリスマスにくれたワンピースだった。


「あきひと病院は行ってるの?。」


「いや特に行ってないよ。薬も飲んでないし。ただ毎朝血圧は測ってるよ。」


「気をつけてね。」


「うん。ありがとな。」


野菜サラダにトースト、あとポトフを作った。



「さぁ食おう。ひさびさの再会にウーロン茶で乾杯だ。」


「休みなら飲んでも平気じゃない??。」


「そしたら一日中飲み続ける事になりそうだからやめておこう(笑)。」


「二人の再会を祝って乾杯!」

「乾杯…。」

No.87 13/04/01 01:46
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「梨華ちゃんは元気か?。確かもう中学生じゃない?。」


「うん…。」


「中学生の子供が居るようには見えないなぁ~千鶴若いから。」

「あきひとの子供達は元気なの?。」


「あいつら?。うんとね~娘は元嫁の店で働いてるらしい…。息子は最近ずっと連絡取ってないけど元気なんじゃないの?」


「たまに奥さんに会うの?」


「なんで?、会わないよ。」

「あっ、ごめん。」


「なんだ?、ほら食べなきゃ。益々やせちゃうぞ。あまり痩せたら抱いても気持ちよくないからやだな(笑)。」


「痩せたかどうか確かめる?。」

「こらこら、おじさんをからかってはいけないよ(笑)。」



私はあきひとの手を自分の胸元に持っていった。



「千鶴…。」



「あきひと…。」




私は自らあきひとを求めた。

あきひとは細くて切れ長の目で私をじっと見つめた。


胸を優しく揉みながら耳元で囁く…。


「したくなっちゃった?。ん?。」


「あっ…。んっ…。」



胸の鼓動が速くなる…。


あきひとが私の耳元に舌を這わせてきた。


「あぁっっ…。」



ずっと…、ずっと一日中あきひとにしてほしい。


何も考えたくない。

No.88 13/04/01 01:51
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

ほとんど食事には手をつけなかった。


あきひとの手がじかに私の胸を触り、下半身にも手がのびる…。


ストッキングを破かれ、無理やり下着に手を入れてきた。



「凄い…、どうしたの?。」

細くて長い指で上から下になぞる。


気持ち良くて声が出る。



翔太とはまた違う、ちょっと意地悪な触り方…。


あきひとはじらすのが好きだ。

No.89 13/04/01 02:00
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「カレシとどっちが感じる?」

「いないよ。そんなのっ…、いないっ…。」


「いつしたの?。最近?。」

「してないってば…。」


「しょうたにしてもらったのはいつ??、答えて。」



あきひと、翔太の名前何でわかってるの…。


あっ、温泉で携帯見たから…?。


心の中で自問自答した。



「しょうたの指とあきひとの指どっちが気持ちいい?。」


あきひとは中に指を挿れてきた。

気持ち良すぎて声が出ない。


「もっと…、もっとして…。」


床に寝転がり自ら脚を開いて私はあきひとにおねだりをする。

翔太がくれたワンピースを着て…。

No.90 13/04/01 02:06
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「俺としちゃって平気なの?。」

「そんなこと言わないで…。」


あきひとは舌を這わせる。


「千鶴はいけない子だな…。あきひとがお仕置きしないとね。」


「あきひとは…。あきひとはしてないの?。」


「ん?、どうかなぁ…。内緒。」


私にだけしてほしい…。



「ベッドいこう…。床は冷たいから。」


あきひとはお姫様抱っこで私をベッドに運んだ。


No.91 13/04/01 02:29
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「ここもっとお肉あったのになくなったね(笑)、つまめないよ。」


裸で触れ合いながら会話をするのは妙にいやらしい。


あきひとは少し汗ばんでいた。

脚を絡めたり抱き締めあったり私達は肌の感触を味わった。

あきひとは私の下半身に自分のをこすりつけてきた…。



「こんなになったのひさびさかも。」



誰かとしたのかな…。



「そろそろいい?、我慢出来なくなってきた。」


「うん…。」


あきひとのも愛した。


ちょっと苦しそうな切ない声で感じている様子をみて嬉しくなる。


「なんでこんなにうまいの千鶴って…。」


上から私を見下ろし髪を撫でる。


背が高いあきひとのをするのは小さい私にはちょっと苦しかった。


「もっと俺見て…。そう…。」

あきひとがいいと言うまで私は続けた。


顎が外れそうになった。



「千鶴…好きだよ。」



あきひとが私の中に入った瞬間…、頭の中は真っ白になった。

用意周到なあきひとの部屋にはちゃんと用意してあった。


いつでも女の子を抱けるようにしているんだと思うと嫉妬した。


No.92 13/04/05 08:45
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「やっぱ千鶴が一番いいかも。」


「一番て…、誰と比べてるの?。」


あきひとは私の問いかけに答えずに腰を振り続けた…。


「千鶴気持ちいい?、ん?。」

「うんっ…。」



ベッドをギシギシさせながら私達は久しぶりの互いの感触を味わった。



心の中は罪悪感でいっぱいだ。


今まであった事をなかった事にしたい。



これから私はどうしよう。



「千鶴…、もうどこにも行くなよ。あきひとのそばに居ろよ。」


「うん…。」



もう起こしてしまった事を今更悔やんでも仕方ない。

No.93 13/04/05 08:57
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

目を覚ますと電気が点いていた。

“あれ?ここって…どこ?”


周りを見回すと男の人の部屋。

「よく寝たか?。」


「あきひと…。」


「鼾かいてたぞ(笑)。」


「うそ…っ、恥ずかしい。」




そうか。私はあきひとの所に来たんだ。



「よっぽど辛い事でもあったのか?。寝言言ってたぞ…。やめてっ、そうじゃないのとかって。」


「本当に(笑)。」


「腹減らねーか?。俺温めて先に食っちゃったぞ。」



「あきひとは寝たの?。」


「千鶴の事ずっと見てたよ。ここに千鶴が居るのがまだ信じられないよ。」


No.94 13/04/06 00:24
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

「もう何も考えるな…。」


そう言って頭を撫でてくれた。

「あきひと…。私って重い?。」

「重い?、何で?。」


天井の一点をただ眺めていた。

涙がポロポロ流れる…。


「そんな風に思った事なんて一度もないよ。千鶴が俺の前に現れてくれた事は奇跡だよ。俺は千鶴が好きなんだ。だから絶対離さない。」



「あきひと…。大好きだよ。」

「泣いちゃだめだ。千鶴は俺に助けて欲しかったんでしょ?。だから俺のとこにきたんだよね?。」


「千鶴を養うくらい何てことないさ。まっ、あまり贅沢はできないけどな(笑)。」




あきひとの微笑む姿はとても頼もしかった…。

No.95 13/04/06 00:36
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

それから私はあきひとの所に住み始めた。


あきひとが仕事に行っている間に洗濯をしたり掃除をしたりした。

食費として私に預けてくれたお金で毎日朝昼晩の食事を作った。

ただ家事が終わると何もする事がなくなって、考え込む時間もあった…。



携帯電話はあきひとの意向で解約をした。



梨華の入学式の日。



もう桜は散り始めていた。



向こうはまだ蕾になるかならないかくらいだろうか…。



拓海や翔太は私が居なくなった事知っているのかな…。



深雪ちゃんのお母さんも戸惑っているかな。



母さんや父さんには、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。



あきひととの約束は、辛くなったらすぐメールすること。


ひとりで考え込まないこと。

勝手にいなくならないことだった。


No.96 13/04/06 00:41
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

あきひとの部屋には電話があった。


あきひとは携帯からよく電話をかけてきた。



「もしもし千鶴、何してた?」

「ぼーっとしてた。」


「また何か考えてるな。だめだよ。」


「うん。」



「今日さぁ、新入社員の歓迎会あるんだ。だから遅くなるけど平気か?。」


「大丈夫だよ。」


「ごめんな。終電までにでは帰るから。戸締まりしっかりしてな。」


「うん。」




今夜はひとりだ。

No.97 13/04/06 00:47
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

夕飯はうどんを茹でて食べた。

一本一本を噛み締めながらゆっくり食べた。


冷蔵庫の一本だけ残っているビールには手をつけないようにした。


今はあきひとに食べさせてもらっている身だから、もっと食べたくても飲みたくてもひたすら我慢をした。



No.98 13/04/07 09:33
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

お菓子が食べたいな…。


そんな風に思っても、預けてもらったお金を使う事に酷く抵抗があった。


働いて自分もお金を持っていないと、やっぱり厳しいものがある。


でも働きたいと言ったらあきひとは何て言うかな。



私はコンビニに行った。


お仕事情報誌をもらって、あとは街を少し散策することにした。


携帯電話がないからあきひとと連絡が取れない。


家にちょくちょく電話をかけてくるあきひとだからなるべく早く戻らなきゃ。


道に迷っても大変だし。



No.99 13/04/25 17:05
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

少しだけたまった洗濯物。

何かしなきゃ申し訳ないからこれも洗った方がいいのかな。
でもまとめて2日おきに洗っているって話してたから、勝手に洗ったら怒られるかな…。

私がきのう履いた靴下と下着。

そのままにしておくのも気になって洗濯機を回した。


外は少し汗ばむ陽気で、気持ちがいい。



寂しい。


あきひとが居ないと何もすることがない。


早く帰ってこないかな…。



洗濯が終わって、あきひとが干していたようにカーテンレールにハンガーをかけて乾かした。


あきひとの私物がしまってある押し入れがどうしても気になって仕方がない。



絶対勝手に見ちゃいけない。


見たっていいことないから。


私の心と裏腹に、私の手は押し入れの戸を開けようとしていた。

No.100 13/04/25 17:29
Poinsettia ( ♀ oqFMh )

押し入れにはジャケットやダウン、スーツ。靴や雑誌など色々なものがぎっしり入っている。

奥に積まれたダンボール。


何が入っているんだろ。


あきひとの知りたくない一面を知ってしまったら、この先一緒に暮らせないかもしれない。

いきなりあきひとが帰ってきたらどうしよう。


やっぱりやめておこうかな。

ガムテープでとめてるわけでもなかった。


一個目のダンボールには色々な書類が入っていた。きちんとファイルに整理されている。


二個目のダンボール。


少し重くてガムテープでとめてある。


本とかアルバムなのかな。


剥がしたら絶対ばれる。


私は開けるのをやめた。


あきひとにはあきひとの過去がある。


私に知られたくない過去だってあるはず…。

投稿順
新着順
主のみ
付箋
このスレに返信する

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧