いつか解き放たれる時まで…③
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「飯は食ったか?。」
「ちょっと食べたけど。」
「これ買ってきてやったから食いな。」
兄さんはコンビニでサンドイッチとおにぎりとレモンティーを買ってきてくれた。
「どっか具合悪いのか?。ずっと寝てるって聞いたから。」
「うん…ちょっとね。」
「千鶴あのさぁ、お前に先に話しておくけど…。俺結婚しよっかなって思ってんだ。」
「えっ…。兄さん相手いたの?。」
「うん。ずっと付き合ってるやつね。」
「・・・そうなんだ。おめでとう。」
「ここでお袋や親父と暮らしてもいいって言ってんだ。」
「同居嫌じゃないんだね…、珍しい。」
「お前が今家に居ること言ってないんだ。梨華の事もだけど。」
「・・・・・・。」
「とりあえずそんなとこだから…。じゃあ、お休み。」
「お休み…。」
昼過ぎ私は宮内というその人に電話をかけた。
5回くらい呼び出し音が鳴り、寝起きのような声で宮内さんは電話に出た。
「はい、もしもし。」
「もしもし…。あの…宮内さんの携帯でしょうか…。」
「はい。そうですが。」
「あの…、以前名刺をいただいて…気になってお電話をしたのですが…。」
「ん?、誰かな?。」
「あの…。駅裏のビルで働いてた凪子という名前の…。」
「・・・・・・・凪子?、あぁはいはいわかった。」
「あの、良かったらちょっとお話を聞きたいのですが…。」
「今日バンドメンバーの練習日だから、良かったら店に見に来るといいよ。」
「いいんですか?。」
「4時からやってるから。俺も行くよ。」
「分かりました…。ありがとうございます。」
ドキドキしながら電話を切った。
私、何やってんだろ…。本当に大丈夫かな…。
急に自分のしたことに驚いた。
お金あるのかな…。
拓海が選んだのはアジアンテイストな部屋だった。
拓海は髪が黒くなっていた。
ちょっと冷めたような目つきは変わっていない。
「拓海君は、今日バイトはないの?。」
「ん?バイト?。あぁ…まぁ入ってるけど、別に休んでもいいかなぁ~なんて。」
「どうして?、大丈夫なの?。」
「別に働かなくても食わしてもらえるし。」
「どんな関係なの?。そんな女の人っているんだね。」
「寂しいからひとりでいたくないらしいよ。」
「拓海君は…、誰でも抱けるの?。」
「えっ?。」
「あっ…いや、その女の人を好きならいいの。」
「あんま気になんないかも。」
やっぱり彼の事はよくわからないと思った…。
「ちぃちゃんは、あのハーフみたいな奴とまだ付き合ってんの?。」
「ハーフ?。ハーフって…あぁ。」
翔太だ。
「付き合ってるのかな…。何とも言えないかな…。」
「また振り回してんの?」
「振り回す?。」
「女って怖いよな。何考えてんのかマジでわかんねーし。」
「必ず誰かひとりを好きでいなきゃだめなのかな?。」
「どうだかねぇ…。あんま気分いいもんじゃないよな…。」
ソファに腰掛けながら拓海と話をした。
拓海はタバコをふかしボーッとどこか一点をみつめている…。
少女漫画に出てくるような綺麗な顔だ。
「ちぃちゃん。」
「何?。」
「…いや。会えて嬉しいな…。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
拓海の体には引っ掻き傷のようなものがたくさんあった。
「どうしたのこれ?ひどい…。」
「あぁ…。ちょっと変わった女なんだよね。」
「痛くないの?。」
「痛くないけどずっと消えないんだ。」
傷は全身にあった…。
「どうして一緒にいるの?。別れられないの?。」
「俺もひとりになりたくないしね。」
心の闇は深いと思った。
私と深雪ちゃんのお母さんは廊下で少し話をした。
「そうなんですか?、それは良かったですね。」
「私、うちの姑と合わなくてそれでも今までずっと耐えてきたんですけど、思い切って主人に三人で暮らせないかなって話してみたんです。」
「ご主人は何て?。」
「あまりいい顔はしませんでしたけど、近くに住む事を条件にいいよって言ってくれました。」
「本当に…。それは良かったですね…。」
「私も姑には苦労したから…、なんかほっとしました。」
「ありがとう。」
「中学は勿論一緒なので少し家離れますけど今までみたいに梨華ちゃんと一緒に行ったり出来れば嬉しいです。」
「勿論です。宜しくお願いします。」
帰りは歩きのつもりでいたけど、深雪ちゃんのお母さんが車に乗せてくれた。
「ありがとうございます。助かりました。」
「ではまた~。」
深雪ちゃんのお母さんはニコニコ嬉しそうだった。
姑との同居生活がよほど辛かったのだろう。
「もしもしちぃちゃん。」
「もしもし…。拓海君?、どうした?。」
「今話せる?。」
「いいよ。拓海君は話せるの?。」
「うん。今一人だから。」
「仕事に行ったの?、彼女。」
「うん。2時くらいまでは帰って来ないからゆっくり出来る。」
「きのうはあれからどうしたの?。」
「ん?、あぁ…。結局バイトさぼってパチンコ行った。」
「そっか…。」
「俺さぁ…、本当はこんな生活やなんだ…。いつもあいつに振り回されてこっから出られなくてさ。」
「どうして今の生活になったの?。」
「たまたま前のバイト先であいつ働いてて、そっから付き合い始めたんだ。」
「好きだったから付き合ったんだよね?。」
「う~ん、どうなんだかね。よくわかんない。ただ俺そん時金なかったしアパートも家賃滞納してたから出なきゃなくて住むとこなかったからね。あいつさ、いちいちうるさいんだよ。茶碗洗っといてとか洗濯たたんどいてとかさ。」
「やってないと怒る?」
「うん…。すげーキレる。そうなるとあいつが満足するまでやんなきゃない。」
「何を?。」
「ん…?。セックス…。」
「まるで彼女の言いなりだね…。」
「情けねーよな。」
「別れたら?。」
「そうしたいけど、あいつに金借りてるし返すまでは別れないって。」
>> 38
「何か食べる?。コーヒーとかは?。」
とりあえず切り出した。
「翔太来るまで何も頼んでなかったから、とりあえず飲み物頼も?。」
「あぁ…そうだな。じゃあコーヒーでいいよ。」
ボタンを押して店員を呼んだ。
「この前は悪かったね。剛志さんちには行ったの?。」
「うん。仁美さんちぃも来ると思ってたみたいでがっかりしてたけどな。」
「ごめんね。」
「ちぃ…、ひとつ聞いていいか?。」
「なに?。」
「俺の事好きか?。」
翔太は冷たい目で私を見た。
見下したような呆れたような何とも言えない目だった。
「わからない。今仕事をきちんとしなきゃって思ってて、あまり考えられないんだ。」
コーヒーを飲みながら少しだけファミレスで過ごし、タクシーを捕まえようと外に出た。
ぽつりぽつりとしかタクシーが見当たらない。
しかも乗車だ。
私は少し歩いてタクシーを探した。
「あれ、ちぃちゃん?。」
拓海に会った。
「何してるの?。バイトの帰り?。」
「じゃないけど、今から彼女迎え行くんだ。」
「歩いて迎え?。」
「車ないしね(笑)。」
「近いの?。」
「うん。そろそろ終わる頃だよ。」
「気をつけてね。」
「ちぃちゃんもね。」
拓海はフードをかぶり少し足早に去った。
迎えに来させるなんてどんな人なんだろ。
気になった…。
尾行したりするのは卑怯だし、やっては行けないと思った。
でも知りたかった…。
拓海に気づかれないように距離を置いて歩いた。
拓海はコンビニの前で立ち止まりタバコに火をつけた。
私は隠れる場所がなくて焦りながら手前の通りに身を潜めた。
他の人に怪しまれないように出来るだけ普通にした。
彼女が来るのだろうか。
拓海は青白い顔をしていた。
色白だけどちょっと顔色が悪そうに見えた。
ご飯食べてないのかな。
遠くを見るような眼差しがいつも私には気になった。
いきいきとした昔の拓海ではない。
ちらちら拓海を見ては隠れるを繰り返していると彼女らしき人が現れた。
「お疲れ。」
「ただいまぁ~。遅くなってごめんね。最後の客なかなか帰んなくて。」
二人は手を繋いでこちらに向かって歩き出した。
慌てて隠れる。
心臓がバクバクいった。
彼女らしき人の姿を見て私は目を疑った。
間違いであって欲しかった。
きっと人違いだ。
「たくぅ?、ラーメン食べたい。」
「ラーメン?。しょこちゃん本当ラーメン好きだね。この前食ったじゃん。」
二人が通り過ぎると私は逆方向に向かって歩き出した。
仲良そうな二人だった。
あの人あんな風に可愛い声が出るんだ。
拓海の体に引っ掻き傷を付けたり…、気に入らない事があればセックスで満たしたり…。
皮肉にも拓海の彼女は祥子だった。
酒に走る訳じゃないけどそのまま家に帰りたくなかった。
「もしもし翔太。さっきはごめん。あのさぁ、迎えきて?。」
自分が何をしているのかわからなかった。
翔太は断ってきたけど一方的に電話を切った尋常じゃない私を心配したのか迎えに来てくれた。
「どうしたの?、別れたいって言ったのに。彼氏にふられたか?。」
「翔太、ホテル行かない?。」
「何で?。」
恥だと思った。
でも現実を受け止められずにいた。
「何も聞かないで。」
私は翔太に抱かれることで一瞬でもさっきあった事を忘れたかった。
ホテルにつくなり翔太に自らキスをした。
「ちぃ、シャワー浴びなくていいの?。」
「翔太抱いて。」
「何だよ、訳わかんねぇな(笑)。」
私は自ら服を脱いだ。
「翔太触って…。」
翔太の長い指を私の秘部へ持って行く…。
「あっ…💦。」
「どうしてほしい?。」
「もっと…もっと弄って…。」
「こう?。」
「うん…。気持ちいい。あっ…💦。翔太っ…。」
翔太の前で脚を広げて自ら求めた。
「いつからしてないの?」
「翔太としてからしてないよ。」
翔太はわざと音を立てながら指や唇で愛撫した。
下半身が疼いてたまらない…。
「ちぃ俺のも触って?。」
体を交互にして私達は互いに愛した。
拓海もこんな風に祥子にするのかな…。
嫉妬をするだびに翔太にされることで癒やしてもらっていた。
「お前はどうしようもない馬鹿な女だな。別れたらセックスしたくても出来ないよ?。」
翔太に馬鹿にされても構わなかった。
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