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匿名
13/03/03 10:29(更新日時)


だいぶ寒さも和らいできた4月の初め、家庭支援センターの小山さんと校庭の隅で話をしていた。


たわいもない家での子どもの様子を時々、笑いながら話す。


私たちの横を校舎に向かって、歩く同年齢くらいの女性。


春休みなのに、どこに行くのかな?


後ろ姿を見送りつつ、ふと、そんなことを思った。


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No.1873997 12/11/08 22:25(スレ作成日時)

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No.351 13/02/26 17:40
匿名0 



私が戸惑っていると、コウタが投げやりに、



「ぼくの担任だったよ」



と言った。そのまま、私の袖を引っ張り、早く行こ!と歩き出した。



「あの人、さっきぼくたちが話してるときにずっと見てたよ」



ヤダとコウタは不機嫌…。



コウタに言われて、そっと振り向くと彼女の姿は人影に紛れて、もう分からなかった。



…新居先生が担任なのかな?

No.352 13/02/27 08:54
匿名0 



新居先生が異動して、2年…。



在任中のときも学校行事で来てくれるときも、新居先生の人気は高い。だから、きっとこの学校でもそうなのだろう。



「新居先生って人気者だね」



カサをさしてバスを待っているときに、ポツリつぶやくとコウタは、



「また、ぼくの学校に来ないかなぁ」



とカサをくるくる回す。しずくがとんで冷たかった。



「コウタは新居先生がいちばんなの?」



手でコウタのカサを止め、聞いてみる。うーん…と考えてから、



「新居先生も好き。遠田先生も好きだよ」



近代的な街並みの角を曲がって、バスの姿が見えた。



「でも…先生っていなくなっちゃうから」



私たちの前にバスが停まる。カサを閉じ、しずくを払う。
…少しうつむいていて、コウタの表情は分からなかった。

No.353 13/02/27 10:28
匿名0 



この前は斉藤先生の登場で遠田先生と話ができなかった。



週明けの月曜日、コウタの通級日ではなかったけれど、夕方、遠田先生に電話を入れる。



新居先生の学校公開に行ったときの安堵感を忘れないうちに話したかった。



「先生、コウタと一緒に新居先生の学校公開に行ってきました」



明るく報告できるときは声も弾む。



「新居先生ってコウタの担任だった先生ですよね」



「2年生のときです。今、異動されて特別支援級にいます」



「ああ、それで見に行かれたんですね。どうでしたか?」



「はい、良かったです。
子どもたちを暖かく見守ってて、そんな雰囲気を肌で感じられました」



「コウタは?」



「新居先生、かっこいいって(笑)」



「コウタ(笑)」

No.354 13/02/27 10:39
匿名0 



「コウタは新居先生が好きだから」



「そうかー。…田村さん、コウタの固定、考えてるの?」



遠田先生が聞いてくる。



「うーん、正直、まだ考えてません。ちょっと見ておきたいと思って」



…まだ分からない。



ホントにまだ…コウタの今しか分からないから。



「学校の方も少し見に行ってきます。また相談させてくださいね」



「いつでもどうぞ。また通級日に」



「はい、ありがとうございました」

No.355 13/02/27 10:49
匿名0 



電話だと楽だなぁ。



面と向かうと、緊張したり言葉に迷う。



斉藤先生のことも気にしなくていいし。



この前のことを思い出す。



私、もう無理…。
コウタのことを思って言ってくれてるのが分かっていても、心がついていかない。



もうちょっとゆっくり、、、話ができたら違っていたかも。



今は全身で斉藤先生を拒んでいる。

No.356 13/02/27 13:26
匿名0 



その週、藤原先生の許可をもらって、仕事休みのときにコウタのクラスに入った。



教室の後ろから、授業とコウタの様子、また休み時間の様子を見させてもらった。



4年生になったコウタは家では特に何も話さない。



私はぶなんに過ごしているのだろうと思って、何も聞かなかった。



この1日、給食までの時間を教室にいてみて、家の姿のコウタからはまるで想像できなかった。



4年生、10歳。
私の目には、コウタは幼く映った。

No.357 13/02/27 13:43
匿名0 



あれができないこれができないというわけではない。



おしゃべりや不満や苛立ちから何かいじったり、音を出して注意を引こうとしているわけでもない。



コウタはそれなりにそこにいた。



友だちと楽しく話したり、笑ったりふざけっこもしてる。



係の仕事や先生のお手伝い、友だちにも優しく接していた。



ごめんねもありがとうも言えてる。












ただコウタは自信がなく、拠り所がなく、どことなく不安げだった。

No.358 13/02/27 14:00
匿名0 



…コウタ。



算数の時間はそれが顕著だった。


緊張感と怖々が伝わってくる。



分からないより、これでいいのかな?合ってる?と同じプリントやノートに書き込んだ計算の答えや図形を隣をチラッと見ているのが後ろからでも分かった。



回ってくる先生や支援員さんは
コウタのところで足を止めて、OK!と頭を撫でたり、ゆっくりと確認しながら教えてくれていた。



少人数でその子に合わせた単元学習をしていた新居先生の学級を思い出す。



そして、藤原先生の言葉も。
“コウタくんにできた!分かった!という自信を”

No.359 13/02/27 15:23
匿名0 



それから友だち関係。



元気な子、マイペースな子、おとなしい子、はきはきしてる子、甘えん坊、あまり笑わない子…
いろんな子がいるのは分かっている。



コウタは2年生のときに新居先生に言われた自分を出さず、相手に合わせるところは変わっていなかった。



そして、今までも何回かあったこと。私は❓に思いながらも、
コウタがいい?と聞いてきたり、
コソッとしていたこと。

No.360 13/02/27 15:36
匿名0 



例えば、ガチャポンで買っためずらしい昆虫のキーホルダー。



学校に持って行って友だちに見せていた。



スゲーだろ!とか自慢で持って行って見せびらかしているわけではない。



ただ友だちがそれに気付いたり、コウタが仲良しの子にそろっと見せたりしているだけ。



きっと何気ないどこでもある光景…。



だけど、コウタはそれを友だちの中のぼくの存在確認としていた。



私はショックだった。

No.361 13/02/27 15:55
匿名0 




何度かコウタのクラスに行ったり、遠田先生にそのことはまだ言えず、ひとりでもやもやとしていたそんな中…新居先生からメールが届いた。



“今度、出張でそちら近くまで行きます。遅くなったらすみません”



話をする場所は家の近くの公園で、だんだん寒くなってきていたけれど、そうしてもらった。



駅近くには喫茶店やファミレスもあったけれど、何となく避けたほうがいいのかな?と思った。



新居先生もそれでいいと言ってくれた。



もし、遅くなるような時間だったら今回は見送ろう。

No.362 13/02/28 08:06
匿名0 



その日、16時前に今から向かいますと連絡がきた。



コウタももう少ししたら、帰ってくる。



私は身支度を済ませ、新居先生に相談したいことを考えた。



藤原先生から言われた固定級の話。
新居先生の特別支援級のこと。
コウタの様子。



あまり話が長くならないようにしないと。



それから、、、泣かないように。

No.363 13/03/01 07:36
匿名0 



コウタが帰ってきて、入れ替わりで私が外に出ることを伝えた。



「どこに行くの?」



「公園。少ししたら、コウタもおいで。新居先生が来てくれてるから」



「新居先生?なんで?」



「お母さんが相談があって、出張がこっちだから、寄ってくれたの」



「ふーん…相談ってぼくのこと?」



え?
リュックを背負い、もう出ようとしていた私はドキリとした。



「…うん、そうだよ」



「ぼく、新居先生の学校に行くの?」



そう言って、コウタは私を見た。

No.364 13/03/02 08:42
匿名0 



私は首を振った。



「新居先生の学校には行かない。けど、新居先生のクラスみたいなところかな。…コウタはどう思った?」



今度はコウタが首をかしげて、



「うーん、分かんない」



そうだよね…私も分からない。



「お母さんも分からないから、新居先生と話してくるね。でも、今すぐ、どうこうってわけじゃないよ?」



うん、とコウタ。



「少ししたら、公園においで。
カギをかけて来てね」



うん。とコウタはもう私を見てなかった。

No.365 13/03/02 11:27
匿名0 



公園に行くと、新居先生が入り口で待っていた。



コウタと話していたタイムロス分…私は慌てて、走り、先生のところへ。


「すいません、お待たせしました」



「いえいえ、大丈夫です。あれ?コウタは?」



「さっき帰ってきて、もう少ししたら来ます」



「そっか…どこで話します?」



あ、ここでってわけにもいかないよね…



「中に座るところがあるので、そこでもいいですか?」



2人で、公園入り口近くの木の
ベンチに座った。
ここなら、コウタが来てもすぐ分かる。

No.366 13/03/02 11:47
匿名0 



「先生、今日はありがとうございます」



「ちょうど、こっちに出張で、意外に早く終わったので、寄れました」



ニコッと新居先生が笑う。
今日はスーツ姿。私服(?)もいいけれど、スーツ姿も似合っていた。



「田村さん、コウタ、支援級を考えているんですか?あ、ここは固定級になりますね」



「まだ、どうしようかは考えていません。というかよく分かってなくて。先生のお話も聞いてから、また考えようかと」



そうですかと新居先生は私から視線をずらした。

No.367 13/03/02 22:16
匿名0 



「ぼくはまだ2年しか経験していませんが、今の学級は好きです。大変なことやまだまだぼくが勉強しなきゃいけないこともありますが、子どもたちは可愛いし、子どもたちからいろんなことを教えてもらってます」



間があいて、



「ぼくの視野はぐんと広くなったと思います。最初はえ?と戸惑うことがありましたけど、小学校から中学校、高校、就職や進学を考えると、小学校なんてまだまだその子が歩き始めた頃ですよね。
先過ぎて、将来を遠く感じますが、今も大事にしながら、やっぱり、その先の社会に出て、周りから可愛がられるような子になってほしいです」



「というか、可愛がられる子をめざしてでしょうか…」



新居先生は優しく笑う。それは私も好きな笑顔だった。

No.368 13/03/03 08:35
匿名0 



コウタがひょっこり、公園入り口に姿を見せた。



私は手招きする。



コウタが歩いてくる間、私はひとり言みたいに、



「コウタが学校公開の帰り道、
“先生はいなくなる”と言ってました」



新居先生は少し笑って、歩いてくるコウタを見つめながら、



「確かに、いなくなってしまいますね。
だから、地域でつながる、人同士がつながる、いいものは残す・受け継ぐでしょうか。
そういうつながりや人との出会いを大切にしたいですね」



私は新居先生の言葉に静かにうなずいた。

No.369 13/03/03 08:58
匿名0 



それから………。



私はいまだにコウタのことは考えてる。



コウタが弱音を吐くと、支援級の方がいいのかな?とも思うが、少し順調になると大丈夫と思ってしまう。



心の振り子が揺れたままで、何かあればいいことでも悩むことでもその揺れが大きくなる。



しばらくすれば、また落ち着く。その繰り返し。



親はずっと子どもが心配なのだ。親が子どもを思う気持ちは海よりも深く、けれども、子どもが親を思う気持ちは更に深い。



ずっと以前、養護教諭の坂本先生に言われたことがある。

No.370 13/03/03 09:10
匿名0 



コウタのことで悩んでいたとき…



“結局は何を取るかだと思う。
コウタくんに何を求めるか。コウタくんはそれに応えようと一生懸命なんだと思うよ。お母さんのこと、大好きだから”



“選択をするのは保護者、私たちは何も言ってあげられない。苦しかったり悩んだり、毒出しや気持ちを吐き出したいよね。そういう話を聞くくらいしかできないけど、いつでも話して”



私はまだ揺れてる。
…それはこれからも同じかも。



たくさんの人の出会いや支えや言葉を大事に、コウタのことも家族のこと、周りの人たちも大切にしていきたい。



出会えた多くの人たちに
支えてくれた人たちにたくさんの感謝の気持ちでいっぱい、
本当に、ありがとう。

No.371 13/03/03 10:03
匿名0 



春休みにあの人が来た年は、桜は遅咲きで、入学式頃でも満開にはならず。



4月も半ば、満開な桜が急ぐように風に花びらを舞させていた。



コウタのお迎えで吉野先生を待っていたとき、また優しい風が吹いて花びらが……。



「今ごろ…」



話を終えた斎藤先生が戻りかけていて、それを目で追いながら、何気につぶやき…私はどうしたのか尋ねてみた。



「いえ、ここの桜を見たいと言った人がいたから」

No.372 13/03/03 10:29
匿名0 



今にして思えば、斎藤先生を訪ねてきたあの人が言っただろう。


そして、そのとき斎藤先生も桜を見て、思い出した。



あれから、斎藤先生は東日本大震災の被災地への派遣要請に応え、1年間の出向ののち、昨年、異動となり…いなくなった。



今年もまた桜が咲くだろう。



ハル、心弾む季節。
そして、ちょっとセンチメンタルな心模様。



あの人と斎藤先生がいつか同じ桜を見れたらいいな。



……そんな願いをこめて……




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