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ハル

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匿名
13/03/03 10:29(更新日時)


だいぶ寒さも和らいできた4月の初め、家庭支援センターの小山さんと校庭の隅で話をしていた。


たわいもない家での子どもの様子を時々、笑いながら話す。


私たちの横を校舎に向かって、歩く同年齢くらいの女性。


春休みなのに、どこに行くのかな?


後ろ姿を見送りつつ、ふと、そんなことを思った。


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No.1873997 12/11/08 22:25(スレ作成日時)

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No.151 12/12/18 20:01
匿名0 



体育館からまた保健室に戻ると、坂本先生があることを教えてくれた。


一度、校長室に戻った新居先生たちはそのあと、受け持った子どもたちの学年を訪ねてくれるという。


私とコウタはそのまま、クラスの廊下前で新居先生が来るのを待つことにした。


教室では帰りの会だろうか?
机にランドセルが用意してあったが、なぜかざわざわとしていた。


「コウタ。田村さん」


階段の方から新居先生の声。
今日のために切ったのか、髪は短くなっていた。


やっぱりカッコイイ…(笑)。


新居先生は廊下にいる私たちを見て、すぐに教室に入れていないコウタを知り、少し笑って、


「コウタ、先生の学校においで」


今度はもどかしそうに、


「あ~ホントにおいで。コウタをみたい」


それから私に向かって、


「今、特別支援級にいるんですよ。少人数で個々に丁寧に教えてあげられるから、コウタもいたら…と思ってしまいます」


……優しい優しい新居先生、
その言葉だけで、私はとても嬉しいです。

No.152 12/12/18 20:18
匿名0 



コウタは新居先生と握手をして、さよならをした。


保健室に戻り、坂本先生と少し話してから、学校を出た。


コウタがニマニマしながら、


「新居先生、また来るって」


「うん、新居先生、言ってたね。運動会に来てくれるって」


コウタは私の前に回り込み、


「ちゃんとバイバイするとまた会えるね!」


と嬉しそうに笑った。


朝も言ってたけど、それって何かのおまじない?


それが分かるのは、また後日だった。

No.153 12/12/18 22:16
匿名0 



新居先生とお別れしたコウタは、それから少しずつ教室に入れるようになっていった。


登校手帳以外に坂本先生考案の
シール帳を始めた。


教室にいれたら1シールで、朝の会から終わりの会までの学校にいる時間を細かく分けた。


これだと1日8~10シール貼れるのだ。

シール好きのコウタにしてみると、すごーくたまる感覚らしい。


毎日、保健室に行って、頑張った時間分、シールを貼ってもらっていた。


「コウタくん、喜んじゃって😁」


坂本先生がたんまり貼ってある
シール帳を見せてくれた。


「毎日、来れて、終わりまでいるし。おうちではどうかしら」


「はい、朝の行きたくないは今はありません。運動会の練習もあるから、楽しいみたいです」


それから私は苦虫をつぶしたような感じで、


「ただ…教室がうるさいって」


坂本先生に言ってみた。

No.154 12/12/19 18:25
匿名0 



坂本先生は、


「そうねぇ」


と肯定も否定もしなかった。


4月から5月と移り変わる1ヶ月の間に、特定の子たちの私語が多くなり、小さなケンカやトラブルが多くなって、先生の言葉もその子たちに届かなくなっていた。


運動会の練習は3クラス合同ということもあり、何とか成立していたが、他の専科の授業も騒ぎ放題になって、大人がもうひとりいないと学校生活が成り立たなくなっていた。


4月初めのハキハキと明るいいずみ先生からは想像できない。


コウタはそんなクラスの状況でも、特にどうと感じることはないのか?


…淡々と進む授業の合間にたびたび怒号が入って、何も見ない聞かない感じないフリーズな状態になっているのかもしれない。


コウタだけでなく、真面目に勉強したい子どもたちもフリーズに…。


だけど、困っているのは騒ぎを起こす子たちも同じだった。

No.156 12/12/20 02:14
和泉蓮ファン ( 30代 ♂ 4nORnb )

削除?一体何があった

No.157 12/12/20 08:15
匿名0 

>> 156

おはようございます。
匿名0です。

未熟なものを読んで下さって
ありがとうございます。

削除は私です。

自分でスレ違いをしてしまいました。

まだまだ夜はダメですね。
寂しくなります。

早く吹っ切りたいです!


これからもよろしくお願いします。

No.158 12/12/21 12:03
匿名0 



匿名0です。
いつも読んで下さってありがとうございます。


この前、自分で間違えたのですが、あれから虚しさが倍増してしまいました。


少し元気になりたいです。


「ハル」のご意見やご感想があると嬉しいので感想スレを立ててみました。


よろしくお願いします🙇🙇🙇。

No.159 12/12/23 08:08
匿名0 



運動会は雨の予想をかいくぐり、少し競技を抑えながら全競技を終わらせることができた。


10時ぐらいに校門に入ってきた新居先生を見つけ、声をかけた。

それからは校庭をぐるりと回る間、たくさんの人たちから声をかけられると立ち止まって、あいさつや話をする。


楽しく談笑や少し真剣な様子で話したり、前に学校にいたときと同じに話をしていて、変わらない新居先生に安心した。


子どもたちの席は不審者対策で保護者や一般の人は近づけないようになっていた。


けれど、新居先生は子どもたちのところへ。


競技の邪魔にならないように、順番ではない子どもたちの席を回り、そこでも人気ぶりを見せていた。


運動会が終わったあと、コウタと話すと、嬉しそうに“新居先生に会った”と言っていたので良かった。


私も会えたし、話せて、気持ちが落ち着いた。

No.160 12/12/23 08:21
匿名0 



この頃の私はあることで緊張状態がずっと続いていて、なかなか安心感が得られなかった。


5月の下旬ともなると、それがピークで、その日になると朝から胃が痛く、何も食べられなかった。

そこに一歩足が入るだけで、気持ちが悪くなる。


それが起こるのはコウタの通級日。


緊張状態がマックスになる日…。

No.161 12/12/23 08:41
匿名0 



自分でもおかしいと思うが、この頃の私は斉藤先生と話してないことがプレッシャーでストレスを感じていた。


毎週、短い時間だけ話していた私と一緒にコウタを見守ってきたハズの斉藤先生が、たった2週間程度の春休みをはさんだだけで、全く口もきかない話もしない人になったことに重圧を感じてしまったのだ。


頼りや支えといつの間にかなっていた人の喪失感…ではなく、あくまで“話ができない”ことにストレスを感じていた。


話がしたいと思うが担任ではなくなった先生は自分とは話をしない…自分から先生に声をかければいいのに、担当の子どものお母さんと話して戻っていく姿ばかりを見送り、先生もこちらを見ない。


私が吉野先生を待ってひとりでいても、斉藤先生は私の前を素通りして、お母さんと話をして戻る。


私はその間、ずっと緊張状態なのだ。

No.162 12/12/23 08:53
匿名0 



私自身、これが何なのかまだ分からなかった。


そんな中、同じようにコウタを見守ってきていた新居先生に会って、話ができて、私は安心した。


月曜日は運動会の代休。


火曜日にコウタが学校に行ったら、水曜日は通級…。


新居先生と話して落ち着いたし、前と変わらない新居先生に安心したし…通級の日にはきっと大丈夫!と自分に言い聞かせた。

No.163 12/12/23 10:06
匿名0 



運動会とはまた違って、初夏を思わせるような暑さを感じる日だった。


今日はいつもと違って、少し気持ちがラクだった。


コウタといつものように、家庭支援センターの前に車を停め、小学校の敷地に入る。


と、同時に校舎から出てきた人影が見えた。


斉藤先生だ。


ドキンとして、一気に心拍数が上がる。


「おはようございます」


斉藤先生の久しぶりの声。


私は後ろを振り返った。


私たちにじゃなく、後ろに来た誰かに言ったのだと思った。


先生が私に声をかけるハズがない!と、そのくらい本気で思っていたのだ。


重症だね(・_・;)。

No.164 12/12/23 10:20
匿名0 



後ろに誰もいないことが分かり、私も時間差で、


「…おはようございます」


コウタがてってっと斉藤先生に駆け寄る。


「運動会どうだった?雨、降らなくて良かったね」


斉藤先生が外の暑さに長袖を腕まくりする。


左手の腕時計が見えて、キュンとしてしまった…。


これまでだって何回も目にしてきた姿なのに、今日はいつもよりも新鮮で輝いていた。


「うん、楽しかった!あのね、新居先生に会えたよ。先生が教えてくれたでしょ?
ちゃんとバイバイしたら、また会えるよって」


斉藤先生がにっこり笑う。


「好きだと思う人にはちゃんとお別れするんだよ。また会えるから」

No.165 12/12/23 11:18
匿名0 



その言葉を聞いたとき、一気に、コウタのおまじないと春休みの出来事を思い出した。


コウタのおまじない
“ちゃんとバイバイしないと次に会えない”


春休み、斉藤先生に会いに来た人。


「…春休みの人もそうなんですか?」


私はつい、口にしてしまった…。

No.166 12/12/23 11:51
匿名0 



「…春休み、ですか?」


斉藤先生は何を言われたのか分からない様子で、


「春休みに先生に会いに来た人です。前の学校の保護者の人なんですよね?
もう2年も経ってるのに、どうして先生のところに来たの?」


私は早口に、でも冷静に言った。

斉藤先生は静かに黙って、私を見ている。


コウタは私と先生の雰囲気に何かを察したのか、お母さーんと足に抱きついてきた。


強張った空気が一瞬にして冷め、私はコウタと通級の出入り口に向かう。


私はなぜだか強気で先生に春休みの人のことを言ってしまった。

そのくらい言ってもいいんだと怒りにも似た感情がそのときはあった。


先生は黙ったままだった。

No.167 12/12/23 18:11
匿名0 



コウタを送り、車を停めた駐車場に向かうと、ひと組の親子と斉藤先生が一緒に歩いてきた。


…お迎えのためだったんだ


軽く会釈をし、すれ違う。


子どもの担任だったら、あんな気配りや優しさを見せるんだ。


車に乗り込み、3人の姿が敷地内に入るのを見ていた。


何でこんなに苛立つんだろう?


担任だったから、コウタのことをたくさん考えてくれて、配慮してくれて、私にも頑張ったねって😺シールを貼ってくれて…優しくて…いつも応援や声かけをしてくれて……。


担任だったから、、、。


シートに寄りかかり、窓の外を眺めていると、涙がひとつぶ、落ちた。

No.168 12/12/23 20:35
匿名0 



じゃ、あの人は何なの?
前の学校の人なのに、どうして来たの?


何で担任じゃないのに、優しさを隠してまで、どうして思いやってるの?


担任だから、
優しく接するんでしょ?


気配りや配慮をするんでしょ?


私なんて全然!
全然、担任じゃなくなったら、何もないんだよ!?


変じゃんッ


ずるいじゃんッ





私には何も………。

No.169 12/12/23 21:08
匿名0 



ハルからずっと調子が狂いっぱなしだった。


春休みの人


斉藤先生の先生らしくない態度


私は担任じゃなくなって、先生と話さなくなって……


だから、担任じゃなくなったからだと思おうとしてるのに、春休みの人のことを思うと、何で?とずっと堂々めぐりしてて…。

先生の異動があったのに、
2年も経つのに先生に会いに来るなんて。


私なんか週1で姿は見るけど、何も接点なくて、先生の後ろ姿をいつも見送っちゃうし、気になるし、だけど、全然、話せなくて、変な緊張状態が続くし…。


それなのに、先生が、
“好きと思う人にはちゃんと”なんて言うから、春休みの人のことかと思っちゃうし……。










ああ、私。
先生のこと、、、好きなんだ。


…いつの間にか、好きだったんだ。

No.170 12/12/23 21:57
匿名0 



車の窓から入る日差しに、私は目をつぶる。


いつからなんて、分かんないけど、先生に惹かれていたんだ。


気になっていたのかな?


多分、毎週、話をしていて、いつも隣が当たり前だったから、離れてしまって、私にとって当たり前の隣に先生がいないことに腹を立ててた。


先生は私と話をしてたんだよって。


バカだなぁ……。


先生はみんなに優しい。


そして、子どもの先生。


子どもの先生なんだよ。

No.171 12/12/24 05:05
匿名0 



お昼過ぎ、コウタを迎えにいく。


私の気を張った状態はとけ、代わりに、そこの場にいたり、吉野先生と話しているとき、斉藤先生がいると神経が集中してしまう。


斉藤先生を背中いっぱいに感じて、存在を確かめ、戻る姿を見送るのが精いっぱいだった。


ドキドキはするけど、そこから斉藤先生の姿がなくなるとホッとするのだ。


恋、なのかな?


先生を好きなんだと分かったけれど、まるで中学生並みの……幼い片思いの感情だった。

No.172 12/12/24 05:44
匿名0 



コウタが帰りの車の中で、聞いてきた。


「お母さん、朝、斉藤先生とケンカしたの?」


「どうして?」


「んー、斉藤先生のおまじないの話したら、お母さん、怒ったみたいだったから…」


子どもは鋭い…


「怖かったね、ごめんね。もうしないよ」


私は作った笑みでごまかし、でも、コウタを哀しませることはしないようにしようと思った。


「ぼくね、新居先生がいなくなってイヤだったの。いて欲しかった。そしたら、斉藤先生がおまじないを教えてくれたんだ」


コウタは少し元気になって、


「先生もお別れはあるって。ずっとそれは仕方ないと思ってたって。だからいつも何もしなかったって」


コウタは身体の向きを私に向けて、


「でもね、お別れのときに先生と、ちゃんとバイバイしてくれた人がいて、それから、また会えたよって言ってた!」


なぜかコウタが自慢げ(笑)。


「だから、ちゃんとバイバイしたらまた会えるんだって」


「じゃ、また会えてコウタも先生も嬉しかったね」


「うん!新居先生、運動会来てくれた。また来るって」


コウタが嬉しそうに笑った。
私もつられる。


嬉しかった…素直な気持ち。


春休みの人も先生が好きだったんだろうね。


ずっとずっと、私よりも長く。

No.173 12/12/24 05:56
匿名0 



私の片思いの感情はおいといて、斉藤先生はよく子どもたちを見てくれていた。


当たり前だけど、通級に通ってる子たちをちゃんと大切にしてくれてる。


新居先生とはまた違って、少し分かりにくいけど、コウタや周りのお母さんたちから聞いているとそうみたいだった。


だから、私の何もしてくれないと思ってしまったのは、結局、自分の横恋慕な気持ちがあったからで、、、先生は何も変わっていない。


あれから、私は先生と話していない。


自分の先生を慕う気持ちは抑えて、むしろ消していかないといけない。


そう思ってた。

No.174 12/12/24 06:32
匿名0 



運動会以降もざわざわとしたコウタの教室で、事件は起こる。


毎年の組み替えで子どもたちのより良い関係づくりは向上していくハズなのに、コウタのクラスは荒れていた。


いっぺんでダメになるなんて言ったら、いずみ先生に失礼だけれど、ホントにそういう感じだった。


いつもトラブルを起こし、ケンカばかりをしていた子たちのそれに、女の子が巻き込まれ、肋骨を折ってしまった。


また、水の入ったペットボトルが口に当たり、口内を縫うケガや毎回のケンカに身体がぶつかり、もう我慢限界な子どもまで、やり返すようになってきていた。

No.175 12/12/24 14:11
匿名0 



授業は成り立たない
休み時間や移動でトラブル、ケンカ
言葉の暴言、暴力


それでも休む子はおらず、ただ学校でのストレスは家庭で現れていた。


朝、学校に送り出すものの、無事に帰ってくるかを心配し、家では大人しい子ほど、暴れたり、今までなかった暴言があったり、身体の変化でめいいっぱいなのをサインで出して来ていて、安全安心な学校ではないと保護者からも口をついて出た。


コウタはというと、そんな中でも学校にいく。


トラブルやケンカは教えてくれるものの、それに対してどう思うかは言って来なかった。

No.176 12/12/24 14:19
匿名0 



困ってないのかな?と思って聞くと、


「やだよ、静かに勉強したい。だけど、先生が言ってもダメなんだもん。もう仕方ないよ」


「周りの大人はみんな“来年までの辛抱”って言う。今、どうにかしてほしい!」


子どもたちの方が傷ついているのに、子どもたちの方が我慢してる。


子どもたちは学校以外のところで習い事やスポーツをしてストレスの発散、自分の居場所を確保をしているんだろうと思った


大人が子どもたちにしてあげられるのは臨時保護者会とくらいだった。

No.177 12/12/25 14:42
匿名0 



夏休み明けの臨時保護者会。


普段、仕事で来れないお母さんたちも参加できるよう、夜に行われた。


学校側は校長先生、教頭先生、いずみ先生の参加。


クラスの現状とこれからのことを話し合い…インターンや特別支援サポーターではなく、学校に配属の先生たちにクラスに入って欲しい声が多かった。


担任を悪く言う保護者はいなかったけれど、いずみ先生はこのころはホントに追い詰められていて、今日、教員を辞めますというか明日か…という状況にあった。


クラス役員をはじめ、保護者は新任のいずみ先生を応援していた。


が、それでもいずみ先生は“私が悪いですから”と暗い表情だった。

No.178 12/12/25 17:55
匿名0 



子どものクラスに保護者が見守り隊で入るのはどうかの案はあったものの、本来、学校で起きていることだから、


学校側で対策を立ててほしい。


またそれは教員があたってほしい。


家庭では家庭ですべきことを各々していく。


そんな感じで話はまとまった。


そして、1ヶ月間、教頭先生がクラスに入ることになった。

No.179 12/12/25 18:09
匿名0 



2学期が始まって、早々の通級。


お迎えのときに吉野先生が先に出てきた。


「先生、コウタは?」


「今、プレイルームで斉藤先生といます」


え?


「本を一緒に読んでますよ」


斉藤先生と一緒なんだ…。


「どうでしたか?この前、臨時保護者会があったんですよね」


私は保護者会で出た話と教頭先生が1ヶ月、クラスに入ることを告げた。


「良かったですね、少し、持ち直してくれるといいですね」


私は教頭先生を思い浮かべながら、


「どうですかね?コウタは教頭先生が苦手で…」


またひと波乱ありそうな気配があった。

No.180 12/12/25 18:44
匿名0 



話が終わり、吉野先生がコウタを呼ぶ。


コウタがぱたぱたと走ってきた。


「お母さん、帰るの?」


小脇に一緒に読んでいたのか、絵本ミッケ!を持っていた。


斉藤先生は反対の出入り口から出ていく。


コウタと一緒に来て、少し近くで会えるのかな?と思っていたのに、結局は後ろ姿だけ…。


やっぱり、こんなものだよねと小さくため息。


長い夏休みの間、物理的距離ができたら、忘れていくくらいの淡いものだと思っていたのに。


私はいつまでこんなことしてるんだろう…。

No.181 12/12/25 19:33
匿名0 



そんな気持ちでいると、コウタに声をかけてくる人がいた。


「コウタ、ミッケ!面白かったか?」


声の大きな遠田先生だった。


コウタはミッケ!を高く掲げて、面白かった!と言った。


そうかとにっこり笑ったまま、遠田先生が私を見る。


遠田先生とはあいさつをする程度で、特に話したことはなかった。


どんな先生かはあまり知らなくて、他の保護者の人と話しているときに、よく大きな声で笑うことくらいしか分からなかった。


コウタとは話をしているみたいだったけれど、私とはほとんど初対面同様だった遠田先生が、私に初めて言った言葉……。


「田村さん、ぼくのことキライでしょ?」

No.182 12/12/25 19:53
匿名0 



私は一瞬、固まり、それから吉野先生を見、遠田先生をまた見なおす。


「はい?」


「絶対、ぼくのこと、キライだよ!😤」


何か自信満々なんだけど、どこからそんな発想が?


「吉野先生、、、遠田先生が何か言ってます😱」


吉野先生は苦笑い。


違うでしょ?
ね、初対面だよ?
何でそんなこと言うの?


「ぼくがコウタの担任になったら、イヤでしょ?」


意味が分かんない😭。


「遠田先生が担任ってなるかどうかも分からないですよね?」


吉野先生、助けて~💦💦。

No.183 12/12/25 19:58
匿名0 



「なったらイヤがるよ(笑)」


「えーと、えーと、…はい?」


「ほら~」


すねてやるとばかり、遠田先生は戻っていった。


私は呆気に取られる。


「吉野先生、私、遠田先生に何かしました?」


「してないと思いますよ」


「ああいう人なんですか?」


「さあ?初めてみました」


やっぱり苦笑いをする吉野先生。

遠田先生の初対面の印象は変わった人としか思えなかった。

No.184 12/12/25 21:42
匿名0 



教頭先生がコウタのクラスに入った日、学校から帰るとコウタはプンプン💢として言った。


「ぼく、明日から教室行かない。坂本先生のところに行く!」


コウタの決心は揺るがなかった…私の予想した、ひと波乱の幕開けだった。


教頭先生とコウタは相性が悪い。


だけど、それはクラス役員をしていない保護者たちですら、コウタと同じだった。


教頭先生はひと言ひと言にトゲがあり、本人は自覚なしで攻撃と怒りをぶつけてくる人だった。


紙面上、記載してあることが正論で、そこからゆずることはなく、逆にあやふやなことには怒り、じゃ、私が間違っているんですね!とこちらが取り付くひまもない。


教頭先生と話していて、場を和ませる話やたったひと言が自分の意にそぐわないと、それだけでそっぽなのだ。


それが同僚先生や保護者、地域の方々でも同じだった。


学校のPTAや地域行事はたびたびそれで滞り、コウタがプンプン💢だったってことは今日、もう何かあったということを意味していた。

No.185 12/12/26 08:23
匿名0 



コウタの保健室登校、再び。


今回はコウタのわがままだから、理由がはっきりしていても、坂本先生に受け入れてもらえるか分からなかった。


ちょっとドキドキしながら、坂本先生に聞く。


「だって、ここがダメなら学校に来ないでしょう?それは私が許しませーん。手がかけられる範囲は限られてるけど、それでもいいかしら」


いつもの笑顔で言ってくれた。


坂本先生は本来の仕事もある中、さすがの裁量と力量を持って、コウタを受け入れてくれる。


有りがたいです。


コウタは坂本先生がOKを出す前から、勝手知ったるで、保健室の長机に自分の勉強スペースを作っていた。

No.186 12/12/26 14:44
匿名0 



教頭先生がクラスに入って数日…。


たまたま学校に行く用事があり、廊下を歩いていると、一階の階段脇から誰かの声が聞こえてきた。


ひょいとのぞくと、奥の非常口にコウタがにじり、にじりと逃げ込んでいた。


その前を教頭先生といずみ先生が並び、コウタに詰め寄っていく。


「さぁ、教室に行くよ」


どうやら、休み時間明けにコウタは保健室に行く途中で、2人の先生に見つかったらしい。


コウタが保健室登校なのは、校長先生、いずみ先生にも許可は取ってあるから、知らないはずはないんだけど…。

No.187 12/12/26 15:01
匿名0 



教頭先生は猫なで声でもう一度、繰り返した。


コウタはイヤッと全身で拒否!


私が声をかけようとあの…と言いかけると、私の声よりも大きな声で教頭先生が、


「私がイヤなの!?」


それにコウタも負けじと、


「先生がヤダ!」


と言い返した。


コウタがはっきりと自分のイヤだという気持ちを、相手に向かって言ったのは初めてだった。


私はびっくりした。


「分かりましたッ。コウタくんは私がキライなんですねッ」


教頭先生は怒り心頭のまま、クラスへと階段を上っていく。


いずみ先生も後に続くが、私の姿に気付き、会釈をしていった。

私は2人を見送り、コウタの側に行く。


コウタは泣いていた。

No.188 12/12/26 15:28
匿名0 



コウタの側にしゃがみ込んで、


「大丈夫?」


コウタはうんとうなずいた。


「坂本先生のとこ、行こうか」


またコクンとうなずく。


手をつないで保健室に行った。


私は今回のコウタの保健室登校はちょっと迷いがあって、○○先生がイヤだからって理由で教室に行かないなんてダメなんじゃないかと思っていた。


だけど、さっきの様子を見ていて、大人 vs 子どもではあまりにも差がありすぎて、また教頭先生の物言いにこれでいいのか?と思ってしまった。


教頭先生は1ヶ月…


コウタは保健室登校のままでいいと思った。

No.189 12/12/27 07:48
匿名0 



教頭先生が入って、そろそろ1ヶ月が過ぎようとしていた頃、コウタのいない休み時間に坂本先生と保健室で話をしていた。


「20日ですよね…1ヶ月期間が終わるの」


「そうね。私が心配なのは、コウタくんが教室に戻るかよね」


私もその懸念はしていた。


「ここが気に入ってますよね(笑)」


「私につつかれながら、あれやれこれやれ言われて、頑張ってやってる(笑)」


大きな窓から校庭を眺め、坂本先生は言った。


「ま、戻らないって言っても戻すけどね」


私は坂本先生の冗談ともつかない言い方が好きで、子どもたちも先生の切り返しにユーモアを含んでいるのを知っていて、よくなついていた。


コウタもそのひとり☺。

No.190 12/12/27 08:06
匿名0 



20日の夜、コウタはいつも通りの夜。

宿題をやり、明日の準備。


明日からはいずみ先生だけのクラスになる。


教頭先生が入っていたクラスはそれなりに落ち着いたようだった。


が、いずみ先生の指導の課題や問題点を子どもたちの前で言っていたらしい。


自分たちの担任の先生が教頭先生に怒られている姿はあまり見たくないだろう。


先生、可哀想の同情とダメ先生のレッテルを教頭先生が作ってしまった。


いずみ先生のこと、決してキライではない子どもたち。


ぼくを見て、私を見てのメッセージやサインにいずみ先生が上手く満たす対応や返しができなかっただけ。


今になるとそう思う。

No.191 12/12/27 08:30
匿名0 



翌日、坂本先生に電話をして、
コウタのことを聞いてみると、


「それはそれはもう、あっさりでした😁」


と返答。


朝、一緒なって学校に行き、職員用と児童用で入口が異なる昇降口の別れ道で、じゃ!と手を上げてスタスタと行ったそう。


それっきり、保健室には姿を見せなかったという。


「ありがとうもなかったわ(笑)。休み時間には元気いっぱいにいつも通り友だちと遊んで…ホント、見事よね」


コウタの分もお礼を伝えて電話を切った。


坂本先生が言った“見事”は私も同感だった。


きれいなまでに教頭先生のいなくなった途端に、教室に戻ったコウタ。


坂本先生と私の懸念はコウタの見事さに苦笑で終わった。

No.192 12/12/27 12:36
匿名0 



ある日の水曜日。


この頃になると、私は水曜日だけ気持ちが落ち着かなかった。


他の曜日はコウタや家のこと、仕事等で気持ちは紛れ、斉藤先生との接点はなかったから、妙に安心していた。


火曜日の夜、夕ご飯の片付けをし、コーヒーを淹れるまったりな時間になると、明日は斉藤先生、いるのかな?と思うくらいだった。


いつも後ろ姿を見送るだけだから、進展も発展もない。


私が先生を慕ってることも誰も知らなかった。


時々、こんなことしてても仕方ないじゃないかという思いと、ただ先生と話したいという思いが強く、夜、布団の中で泣いたりしてた。

No.193 12/12/27 12:59
匿名0 



今日は出張だったのか、斉藤先生はいなかった。


寂しいような、ホッとしたような…。


吉野先生と話して、コウタと一緒
に帰る。


今日は秋晴れで、気持ちのいい風が吹いていて、通級の部屋の窓は開いていた。


多田さんと遠田先生が面談をしている。


私をつと見つけた遠田先生が立ち上がって、窓越しに声をかけてきた。


「田村さん、今日はいい天気ですね」


きた!と思った。
私は身構える。

No.194 12/12/27 13:03
匿名0 



私はなるべく普通に


「そうですね」


「これから、どこか行くんですか?」


「行きません。うちに帰ります。ね、コウタ」


コウタがピクっと立ち止まって、


「お母さん、今日、本屋さんに行くでしょ」


えっ?


「タンタンの絵本~😢」


あ、忘れてたッ。


「うん、本屋さんね💦。行こうね💦」


遠田先生がニヤニヤしている。


「わ、忘れてませんよ😠」


「お母さん、忘れてた~」


コウタのひと言で、遠田先生も多田さんも笑ってる。


また、やられた~😫。

No.195 12/12/27 15:41
匿名0 



「田村さんからかうと面白い」


遠田先生の目的はこれなのだ。


「また、コウタから聞いていたんでしょ!?😤」


ぷんとふくれて、私はコウタと駐車場へ。


初対面のときから、ちょこちょこと私をからかってきていた。


私のほうが年上なのに!

No.196 12/12/27 16:15
匿名0 



遠田先生にからかわれて、ぷんとふくれてみても、寂しさが残ったりする。


斉藤先生とは、ちっとも、、、


やっぱり、話したい。
もう無理なのかな?


ハルに話したとき、私、失礼だったよね😔。


私には全然関係ない、あの人の話だったもの…。


冷静な口調と言いながらも、感情はとても高ぶっていたし…、今、思えば、かなり恥ずかしいし、バカなことをした。


だから、よけい先生と話せない。

けど、すごく前みたいに話したくなる。


先生と話したいなぁ。

No.197 12/12/31 20:02
匿名0 



ずっとずっとこんな気持ちを持ったまま、3学期の学校公開日を迎えた。


コウタもあれから落ち着いていたし、クラスも小さなトラブルはありつつも、3年生も後半に差し掛かると、変わらないのだろうと慣れに近い感覚になってしまっていた。

諦めモードというのか…
誰かが悪いと言ってたら、先には進めないからというと聞こえはいいかもしれないけど、手を打っても、手を尽くしても変わらない現実の前に、頑張りが利かなくなる感じ。


1日1日、頑張らせて、ごまかして、すかして、なだめて、励まして…そうして迎えた3学期。


いずみ先生も頑張っているのは分かっていたけれど、ここまでのように思い、逆に誰も何も言わなくなっていた。

No.198 12/12/31 20:11
匿名0 



学校公開日には懐かしい新居先生の顔もあった。


教室の後ろの扉付近で、じっといずみ先生の授業を見ていた。


その真剣な眼差しに、私はいくばかりか緊張を持ち、久しぶりでも声がかけられなかった。


「新居先生、…怖いね」


村上さんがそっと耳打ちしてきた。

No.199 13/01/01 11:40
匿名0 



教室の中にいた私たち。


小さく、うんと頷いて、新居先生をちらっと見た。


しばらくすると、新居先生はそこから離れ、違う教室に向かう。

私は今の新居先生が斉藤先生と重なった。


何となく、話ができない雰囲気…加えて冷たさを感じるって私が勝手に思ってるだけなんだけど、斉藤先生と話したい気持ちが新居先生にも重なる。


ただ、普通に話したいだけなのに。


前みたいに、コウタのことを話していたときのように。


たくさん話して、コウタのことを乗り越えてきたのに。

No.200 13/01/01 11:52
匿名0 



……………………………


メール、できるといいな…。


たまにコウタの話ができたら、それだけでいいんだし……。


Cメールだったら、携帯番号だけでいいんだけど、携帯会社どこだろう?
(注:このころはまだ同じ携帯会社からしかCメールはできませんでした)


新居先生の携帯番号は以前、公開連絡先でクラスの保護者はみんな知っていた。


Eメールのアドレスじゃなくて、Cメールだったら聞いてみてもいいかな?

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