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匿名
13/03/03 10:29(更新日時)


だいぶ寒さも和らいできた4月の初め、家庭支援センターの小山さんと校庭の隅で話をしていた。


たわいもない家での子どもの様子を時々、笑いながら話す。


私たちの横を校舎に向かって、歩く同年齢くらいの女性。


春休みなのに、どこに行くのかな?


後ろ姿を見送りつつ、ふと、そんなことを思った。


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No.1873997 12/11/08 22:25(スレ作成日時)

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No.101 12/12/04 22:58
匿名0 



月曜日、コウタと中休みに新居先生に会えるように家を出た。


コウタは土日に買った手帳と折り返しに入れた👑シールを手にしていて、今日は少し嬉しそうだった。


職員室に行くと新居先生が待ちわびたように出てきてくれた。


「コウタ、こんにちは」


コウタは今度は逃げずに私の横に立って、手帳をモジモジといじっていた。


それに気付いた新居先生がしゃがんで、手帳をつんつんとした。

コウタは私の後ろにぴょんと隠れた。


「コウタ?お母さんから話してもいい?」


コウタがうなずく。

No.102 12/12/06 10:25
匿名0 



コウタから手帳をもらう。


新居先生は立ち上がって、一緒に手帳をのぞきこんだ。


近い…😳。
ちょっとドキドキ。


「先生、コウタが学校に来たらシールを貼って欲しいんです」


手帳は12月を開き、シールも見せた。

「ぴかぴか✨シール(笑)。👑もかぶって、どうぶつたちも可愛い」


新居先生はふふっと笑う。


「コウタ、このシール、よく見つけたね。乗り物や虫じゃないのがコウタらしい」


「先生、コウタも手を振るだけじゃなくて、シールを貼ってもらうことで先生とふれ合えるし、自分で頑張ってるのが分かると思います」


「…そうですね。いいと思います」


コウタが私の後ろからチョロッと顔を出した。

No.103 12/12/06 10:44
匿名0 



「コウタ、今日はどれにする?」


新居先生は屈んで、コウタにシールを見せた。


「トラ!🐯」


確かにいちばん猫っぽい(笑)。


新居先生がペタと手帳に貼って、コウタに渡す。


コウタがくしゃくしゃの顔をして、嬉しそうに手帳をぎゅっと抱きしめた。


新居先生がホッとしたように静かに微笑んだ。


コウタのくしゃくしゃの顔も新居先生の安心した顔も、どちらも私の心にキュンと響いた。

No.104 12/12/06 11:00
匿名0 



登校手帳に👑シールを張る


コウタが学校に行って新居先生に会う


先生と少しだけ話をする
(私には内緒だそうで2人で頭を寄せて話してる😏)


コウタがちょっとずつ元気になる


コウタに学校に行くエネルギーがたまってきているのが分かる

No.105 12/12/06 11:51
匿名0 



2学期の終業式の日。


子どもたちがみんな帰ったあとでコウタと学校に行った。


だいぶ寒くなり、木枯らしのように冷たい風がピュー🍂と吹くと、つい立ち止まって、身体を震わせた。


「寒いね~」


「寒いね~」


コウタと同じ言葉の繰り返し。2人顔を見合わせて、にっこり笑った。


教室に向かうと、新居先生が部屋を暖かくして待っていてくれた。


「あったかーい🎵」


コウタと今度はふふふっと笑った。

No.106 12/12/06 20:06
匿名0 



新居先生がそんな私たちを見て、笑っている。


…私は急に恥ずかしくなってしまった。


「今日で2学期はおしまいです。コウタ、お手紙と宿題のプリント」


はいっと渡され、コウタはうわぁ😱という顔をした。…笑える。


私にはコウタの成績表の“あゆみ”。今学期はコウタは学校に来ていないから評価はつかないというかもう少しの評価しかつかない。


…仕方がないね。


「田村さん、今学期はぼくの力不足で申し訳ありませんでした。3学期はコウタくんが楽しく通えるよう頑張ります」


新居先生が改まって言い、頭を下げた。


私は小さく首を振って、


「新居先生はコウタのことをいつも考えてくれてありがとうございました。登校手帳も上手くいって、コウタもどの👑シールにしようか楽しみらしくて(笑)ありがとうございます」

No.107 12/12/06 20:17
匿名0 



コウタが👑シールと聞いて、すかさず登校手帳を出してきた。


今日は🐰。


ニマニマ🎵して👑シールをなでている。そんなコウタに新居先生は松ぼっくりツリーを見せてくれた。


スプレーでコーティングした銀色の松ぼっくりに、色とりどりのビーズが飾り付けてあった。


「すごい!先生が作ったの!?」


コウタは松ぼっくりツリーに目が釘づけ。


「生活の時間にみんな自分のを作ったのですが、コウタくんはお休みだったので…コウタ、先生のでもいい?」


手のひらに乗せてもらった、松ぼっくりツリーに目が奪われているコウタ。


「先生、ありがとう」


コウタがはしゃぎまくる。


「また、3学期にね。元気で会おうね!…田村さん、3学期もよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします。ツリーもありがとうございました」


私はペコッと頭を下げた。

No.108 12/12/07 21:52
匿名0 



終業式が終わり、子どもには楽しみな冬休み…Xmasとお正月。


Xmasにはコウタが欲しがっていた
ゲームソフト。


年末は夜遅くまで起きている日が続いて、ちょっと寝不足な中、宿題をしたり、私とお正月のお買い物をしたり、大掃除まではいかなくても家のお手伝いをしてくれた。


お年始は近くのお不動さまに家族で初詣。


あとはゆっくり家で過ごし、新年になって初めて降った雪に、
コウタは喜んでいた。


そうして、3学期がそろりそろりと近づいてくる。

No.109 12/12/08 00:17
名無し109 

前から気になってたんですが、旦那さんはどうしてるんですか?

No.110 12/12/08 09:07
匿名0 

>> 109

おはようございます。

旦那さん…、出てきませんね。

それぐらい、子どものそういうことには関わっておりません。

家族としては子どもを可愛がってくれていますし、期待もしております。

No.111 12/12/08 10:16
匿名0 




新年のあいさつで届く年賀状。


その中には、新居先生からも斎藤先生からもコウタ宛てに来ていて、届いた日からずっとコウタが何回も新居先生の年賀状を見ていた。

3学期の始業式前日の夜。


「…明日、学校、、、行こうかな」


コウタがためらいがちにつぶやく。


夜ご飯の片付けをしている私の側に来たコウタの手には、新居先生からの年賀状があった。

No.112 12/12/08 10:59
匿名0 



翌日、朝の光がキラキラ光っていた。少し冷え込み、だけど穏やかな朝だった。


コウタは静かに起きてきて、ゆっくりご飯を食べた。


「一緒に行こうか?」


コウタは首を振った。


「…先生と行く」


家から一本、道を出ると駅から学校までの通り道になる。


駅を使う人たちが使う道でもあり、車道も2車線ある大きな通りだった。


新居先生や養護の坂本先生たちも電車通勤の人には朝の時間が合ったり、帰りの偶然だったりと、、、会うことがある。


先生たちが使う電車の朝の時間は知っているから、コウタも通りに出ていれば、新居先生に会えたりできるのだ。


「先生に会えなかったらどうする?お母さんと行く?」


コウタはそれは考えてなかったみたいで、手にしていたパンを持ったまま、止まってしまった。


新居先生の連絡先は知らないし知っていても、朝から迷惑だ。(学校メールがあり、学校やクラスからの連絡はそこからの配信で、一応、電話連絡網もあるけど、
トップは学校になっている)


それに新学期早々からこんなお願いもできないと思った。


「お母さんも行くよ。先生に会えなかったら、お母さんと行こう?」


コウタはうんとうなずいた。

No.113 12/12/08 12:07
名無し109 

旦那さんの子育て不参加が気になります…

No.114 12/12/08 14:16
匿名0 

>> 113

そうですね。
109さんの言われる通り、育児不参加かな?


子どもが小さいときにはよくケンカの元でしたが、大きくなった今は親子仲は普通で、スポーツ観戦やキャッチボール、休みの日に2人で出かけるのが楽しみだそうです。


子どもの特性についての深い理解はあまりありませんし、旦那さんがコウタにいつも言う根性論だけで特性が解決することでもありません。


また逆に、私が子どもの特性のところで、どっぷりハマり、落ち込んでいても助けてくれるわけでもないですが、コウタはコウタだろ?と普通の子と変わらない対応をしてくれると私も気がラクになるときも確かにあります。


話の中では出てこないですが、旦那さんはそういう一歩引いたところでコウタの特性と関わる人です。


育児に参加してくれる旦那さんを街中や旦那さんの妹夫婦の義理弟の姿を見ていると、確かにうらやましく感じます。


だけど、私は私で妻として母として家庭を守る部分で至らないところもラクをさせてもらってるところもあるのだろうと最近では思っております。

No.115 12/12/08 22:04
匿名0 



7時45分の電車…最寄りの駅から発車したのが通りから見てとれた。


「あの電車に乗っていたら、もう少ししたら、ここを通るよ」


手袋とマフラーをしてコートも着ているけれど、動かないで待っていると朝の寒さはやはり堪える。


コウタと白い息を吐きながら、待っていると、


「田村さん!おはようございます」


と養護の坂本先生が声をかけてくれた。


「おはようございます」


コウタは私の隣から走り出し、坂本先生が出した手のひらめがけて、軽くパンチ👊をした。


2人の朝のあいさつらしい…。

No.116 12/12/09 20:17
匿名0 



「あの、新居先生は?」


連続パンチ👊を繰り出してるコウタはキャッキャ、キャッキャと喜び、坂本先生は面白おかしく、それを受け止めている。


「新居先生なら今日は早めに行くと言っていたから、もう学校だと思う…コウタくん!おしまい!」


はあ~疲れたと声を出して言う坂本先生。


「新居先生と待ち合わせ?」


「あ、いえ…コウタが新居先生と一緒に行きたいと言ったので」


「そう、じゃ私と一緒に行こうか」


うんとうなずくコウタ。


意外とあっさり。
少し拍子抜け…した。


坂本先生と歩き出したコウタに手を振って、後ろ姿を見送った。

No.117 12/12/11 04:24
匿名0 



その日はコウタが帰ってくるまで、何をしててもソワソワしてた。


普段、何気なくしている家のことも手がつかず、おざなりで、気付けばため息ばかりだった。


コウタは学校へ行くと言ったけれど、教室じゃなくて、保健室や相談室にいるのかもしれない…。


何だか不安…、
何だか心配…。

No.118 12/12/11 07:41
匿名0 



そんな不安な気持ちを抱きながら、欲張りになってしまっている自分に気付く。


コウタが学校に行ってないときは、少しでも学校に行けるといいのにと思うのに、今度は学校に行けるなら、教室にと思ってしまう。


次々とコウタにこうなってほしい思いがつきなくて、コウタへの期待がふくらんでしまう。


ひとつひとつのステップを時間をかけて、、、私は“待つ”ことがあまりできないのだと思った。


コウタの気持ちを待つ、寄り添おうと思っているのに、行動が1つできると次は、次はと……。


なかなか難しいけど、私自身、“それでいい”“頑張ってる”と、コウタのことを見守ろう。

No.119 12/12/11 19:05
匿名0 




コウタが学校から帰ってきた…。


さっき、見守ろうと思った私は何も言わないで、コウタから話してくれるまで待とうかと…。


コウタはランドセルから学級便りの“夢いっぱい通信”や学校からのお手紙をテーブルに置く。


それから自由帳を出して、いつものようにお絵かきを始めた。


私は通信やお手紙を広げ、読み終えてから、お昼を作ることにした。


何だか、、、私だけが気を張ってる…?


コウタの楽しそうに遊ぶ声を背にしても、全然、気が抜けなかった。

No.120 12/12/11 19:50
匿名0 



お昼は簡単にチキンライスを作った。


チキンライスの上にコウタの好きな猫の顔。

スープはなしで、お茶を出した。


コウタがちらりと私を見る。


2人向かい合って食べ始めたけれど、私の気持ちはざわざわしたままだった。


…何で見たの!?
あ~我慢できない!
間が持たない!


「コウタ、学校どうだった?」


「うん」


うん、だけ?


「楽しかった?」


「特に」


特に…ってどっち?


「新居先生と話した?」


「うん、登校シール、貼ってもらった!」


「え!?」


私の驚いた声にコウタが私を見た。

No.121 12/12/11 20:13
匿名0 



「👑シールだよ?学校に行ったら貼ってくれたよ」


「あ、うん。良かったね」


「今日ね、クマ🐻にしたんだ。あとで見せてあげるね🎵」


コウタはまたチキンライスをパクパクッと食べ始めた。


私はいっぺんに気が抜けた。


コウタの中では、学校に行って新居先生から登校シールをもらうこと(先生も👑シールを貼ること)が普通でとても当たり前に続いていたから…。


私は自分の焦りを感じて、自分を諭し、それにも関わらず、力の入ったままの自分をバカバカしく感じた。


うん、これでいいんだよね。


「コウタ。簡単コーンスープ、いる?」


私はもう食べ終わりそうなコウタに聞いた。


「うんッ」


コウタが嬉しそうに笑った。

No.122 12/12/11 21:54
匿名0 





3学期、コウタはたまに休みたいと言いながらも、私があまり気にならないほど、朝から学校に行けた。


2学期、あれほど泣いて力いっぱい抵抗していたのが嘘のように、、、コウタの中で新居先生に対する気持ちや私の気持ちが徐々に落ち着き、コウタも学校生活が楽しみになった。


心の余裕が大事


それが分かっていても、先の見通しが立たないことに焦りと不安を感じる。


待つ心の余裕も持てなくなる。


コウタもそんな私に引き合ってしまったり、巻き込まれてしまうこともあったのだと思う。


子どもの成長はらせん状、ぐるぐる回りながら上にのびていく。

子どもが成長するときはジャンプするときと同じように一度、力をため込む。
それから、大きく跳ね上がる。


どの子も大きくなる、成長する。

どの子も変わる、変われる。


どの子も認められたい、愛されたい、ほめられたい。


そう分かっていても、私はすぐに余裕がなくなってしまうのだ。

コップからあふれ落ちる愛情や心の余裕が持てるよう、コウタも私も成長していきたい。


そう思う。

No.123 12/12/12 19:56
匿名0 



3学期の始まりから、順調にコウタは学校に行っていた。


登校シールも行ったら👑シールを貼るだけでは物足りなくなり、コウタが喜びそうなことをプラスしてくれた。


新居先生はたまに行きたくなくなるコウタの姿があったから、1週間、続けて来れたら、週終わりの金曜日、放課後に先生と2人でお話やコウタのしたいことの時間を作ってくれた。


それでコウタが頑張れたり、頑張る力がつきて、休んだりしてしまったけれど、その新居先生との10分あるかどうかの時間を、コウタはとても楽しみにしていた。

No.124 12/12/13 22:11
匿名0 



コウタの登校手帳と新居先生との
フリータイムが慣れてきた頃、家族で近くの温泉施設へ出かけた。


コウタはお父さんと入って、私は
ゆっくりしっとり温泉タイム🎵


コウタと一緒だとサウナに入れないと
ブウブウ文句を言うけれど、男同士たまにはどうぞ(・_・)と思う。

それでも2人して長風呂なのだ。


私は髪を乾かし、お食事どころで2人が上がって来るのを待つ。


お風呂あがりにビール🍺が飲みたい!と思うけど、帰りは運転なので我慢😭。


コウタが先に上がって、私を見つけるとある人の名前を少し興奮気味に言ってきた。

No.125 12/12/14 15:36
匿名0 



「お母さん、新居先生がいたよ。お風呂で会った~」


はい?


「え?新居先生がいたの?」


「うん、お父さんも会った」


お風呂で?
なんか想像したら、笑えた。


温泉施設近くの住まいなのは知っていたけど、意外なところで会って、コウタは嬉しそう。


火照った身体を冷ますように、頼んだレモンスカッシュを私が飲んでいると、グラスの中の🍒をコウタに食べられてしまった。

No.126 12/12/14 15:47
匿名0 



翌日、めずらしく朝にコウタが行き渋りを見せた。


「帰ります する~😭」


帰ります とはコウタが一度、学校に行って、新居先生に会って帰りますとひと言、言ってそのまま帰ることで、2学期の小山さん作戦の名残りが残ったものだった。


あとになって知ったことだけど、これは早退扱いになるそう。


私はずっと休みなんだと思っていた…。


時間割りを見て、新居先生の空き時間を確認する。


2時間目が空き時間だった。

No.127 12/12/14 16:04
匿名0 




匿名0です。


最近のことですが、話の中より大きくなったコウタから久しぶりに「帰ります する」と言われました。


新居先生からあとは全く使ってなかったのですが、あれは有効手段としてコウタの中に残っていたことになります。


担任の先生が変わっても親や子どもは変わりませんから、コウタにしてみれば、当たり前のことなのかもしれません。


それだけ、コウタは頑張って学校に通っていたんですね。
ただ、私はびっくりしました。


当然、担任・養護の先生からは引き止めがあり、これにはコウタがびっくりしてました。


コウタには有効手段なので、帰りますで帰りましたが…。


すいません、脱線です。

No.128 12/12/15 06:01
匿名0 



コウタの行き渋りは休み明けの月曜日だから?


久しぶりの 帰ります 。


子どもたちが移動したあとの教室を訪ねた。


新居先生にはあらかじめ電話してあったから、私たちの姿を見ると、すぐにドア近くまで来てくれた。


「コウタ~」


めずらしく先生がコウタをぎゅっとした。あまりスキンシップをとる人ではないから少しびっくりした。


「おはようございます。。。帰ります」


コウタ、早ッ💦


「コウタ、昨日、お風呂で会ったじゃないか」


コウタは照れ笑い…


先生から離れて、私の方にぴったりくっついてきた。


「裸の付き合いしたのに(笑)」


入り口付近で寄りかかっていた私と同じように先生も立って、
コウタは小さくて私の影に隠れ、廊下からは見えなくなる。


ふだんとは違う距離の近さで、そんなセリフ。


ちょっと恥ずかしかった。

No.129 12/12/15 06:33
匿名0 



新居先生はたまにドキッとするようなことを言ったり、やったりする。


たまにだから、あまり気にはしてなかったし、コウタがいるときのことだから、コウタと仲良しなんだと思っていた。


それが少し違うらしいのは、クラス役員の村山さんと話していたときだった。


私からしてみると、村山さんと新居先生はフレンドリーな感じで、冗談を言い合ったり、ふざけあいもあって仲良さそうで、楽しそうだった。


「そんなことないよ。先生は先生だし、私の調子に上手く合わせてるだけ。私より田村さんのほうが仲いいよ」


「仲がいい?そうかな?コウタのこともあるから話してるだけだと思う」


「確かにね。だけど、違うよ」


ニンマリ笑った村山さんにそんなことないよ💧と私。


村山さんが笑った意味が私にはよく分からなかった。

No.130 12/12/15 09:07
匿名0 



2月末、最後の保護者会。


3学期の子どもたちの様子から始まり、“あゆみ”の説明、春休みの過ごし方、新学期の始業式の連絡等。


それから出席した保護者からのひとりひとりの話。


ほとんどの人たちが、子どもがこの1年楽しく過ごせた新居先生の感謝とお礼で、その評価は高かった。


中には“もう1年持ってもらいたい”という人も。


保護者会が終わり、解散していく中、先生とまだ話したり、来ているお母さん同士、雑談したりして残っている人たちもいた。

私も幼稚園から一緒だったお母さんと話をしていた。


年賀状の話をしていたかな?


「先生への年賀状って学校宛てだから、ちょっと寂しいよね」


クラスや学校行事連絡等はメール配信で済んでしまうし、また先生たちの住所等は個人情報で守られ、表には出ていない。


そういう時代なのだから、仕方ないんだろうけど… 。

No.131 12/12/15 09:21
匿名0 



「ぼくもそう思います。住所くらいはいいんじゃないのかな」


ひょいと私たちが話していた話題に入ってきた新居先生。


学校に兄弟が通ってるお母さんたちの話は、以前は住所等が載った電話連絡網がどのクラスにも一応、あったという。


若い女性先生は仕方ないにしてもベテラン先生たちまで、個人情報だからなのか、学校トップの校長先生のお考えなのか、この2年ほど一切なしになってしまったらしい。


「子どもたちとのつながりは大事にしたいです」


私は新居先生は子どもたちが大好きで大切に思ってくれるんだと思った。

No.132 12/12/15 09:51
匿名0 



そろそろ帰ろうと教室を出る。


靴をはこうとしていると、後ろから村山さんが声をかけてきた。

「ね、仲いいのよ」


最初、何のことか分からなかった。


「私も2学期末に年賀状を出したいからって住所を聞いてみたんだ。そしたら、学校にお願いしますって」


村山さんも靴をはき替えて、私と一緒に歩き出した。


「さっきも先生、他の人との話が終わったら、すいって田村さんの隣だよ?」


「え?そうだった?でも、住所はさっきも特に言ってないし、私も知らないから」


「先生、異動かもね」


村山さんは前を見たまま、表情はかたく、ポツリと言った。


寒くて吐く息が白い。


「田村さんだったら、教えてくれるかもよ。住所や異動のこと」


私の身体をポンとたたいて、村山さんはじゃねーと早歩きで行ってしまった。


村山さんにそう言われても、私はやっぱりどう受け止めていいのか分からなかった。

No.133 12/12/15 10:21
匿名0 



あとからこっそり村山さんから聞いた話は新居先生に惹かれていたと。


ファン的に先生が好きで、クラス役員で話す機会はあったけれど、新居先生は先生らしい対応で、それは崩れることはなかった。


そんな中、私と話す新居先生が自分とは違う顔なのに気付いたらしい。


好きだったから、新居先生をよく見ていたからこそ、気付いたこと。


私は自分と話すときの新居先生はみんなと変わらないとずっと思っていたし、今も子どもたちへの愛情深さと思っている。


村山さんの気持ちも分からなくなかった。


新居先生はそれだけ、先生としての魅力があり、とても一生懸命で頑張ってる姿が印象に残る人だったから。


私も村山さんと同じように、そんな惹かれてしまう気持ちに…。

それはハルから始まった。

No.134 12/12/15 10:58
匿名0 



コウタは最後の日まで学校に行き、無事、2年生も終わり、春休みに小山さんの作戦成功の話をしようと思っていた。


だいぶ寒さも和らいできた4月の初め、家庭支援センターの小山さんと校庭の隅で話をしていた。


たわいもない家でのコウタの様子を時々、笑いながら話す。


私たちの横を校舎に向かって、歩く同年齢くらいの女性。


春休みなのに、どこに行くのかな?


後ろ姿を見送りつつ、ふと、そんなことを思った。

No.135 12/12/15 12:43
匿名0 



女性は学校の昇降口辺りをウロウロ…何か困っているようだった。


こちらに向かって、戻ってきて、私たちに声をかけてきた。


「こんにちは」


会釈をすると、彼女は


「すいません、通級の斉藤先生を訪ねてきたのですが、どこが受付か分からなくて…」


今日は平日といっても、春休み。学校は休みだ。


学校への出入り口はどこも鍵がかかっているし、受付もカーテンが閉まっていた。


小山さんがインターフォンのある場所を告げた。


「中にいる人に声をかけて、先生を訪ねてきた旨をお伝えください」


彼女はお礼を言って、また校舎に向かった。

No.136 12/12/15 16:16
匿名0 



「面談かな」


小山さんが少し笑った。


「違う学校の人みたいだけど、、、じゃ、田村さん、またね」


小山さんは家庭支援センターに戻った。


私は校庭で遊んでいたコウタに声をかけた。


「お母さん、ちょっと来てー」


コウタが私を呼び返す。


私たちがいたところのちょうど校庭の向かい側にコウタはいて、桜の木をじっと見上げていた。


今年はまだ寒いせいか、桜はまだ、つぼみのままだ。


今週末に入学式があるけれど、桜は咲くだろうか?


歩いていくとき、さっきの彼女を見た。


校舎の中に無事に入れたようだった。

No.137 12/12/15 16:29
匿名0 



近くに来た私をコウタが手招きして、見て!とそれを指さした。


見ると、1つだけ咲いた桜の花。


きれいなピンク色。まだ暖かいとはいえない春の日差しに負けないよう咲いている。


「桜!きれいだね」


私は嬉しそうなコウタの顔を見ながら微笑んだ。


遠くで通級側の出入り口から、斉藤先生が出てくるのが分かった。


「あ、斉藤先生」


コウタが気付き、ちっちゃく、つぶやいた。

No.138 12/12/15 22:17
匿名0 



「じゃ、帰ろうか。帰りに買い物していこう」


コウタと手をつなぐ。


私たちが校門に向かって歩き始めると、歩いていた斉藤先生が急に走り出した。


え?


何となく目で追ってしまう。


なんで走るの?
…あの人が見当たらないから?


………………………………


なんで?
面談だったら、約束でしょ?


胸がざわついた。


私はいつの間にか立ち止まって、先生を見ていた。


鼓動が早くなる。


いつも冷静沈着な斉藤先生が急いでる。…あの人の元に行く。


ただ、それだけなのに、私はとっても哀しくなった。

No.139 12/12/16 20:50
匿名0 



「…お母さん?」


コウタが不思議そうに私を見上げた。

私はハッとして、


「ごめん、ごめん。行こう」


自分の胸の痛みが残ったまま、私はまた歩き出した。


スタスタと早足で歩く斉藤先生の少し後ろを、彼女が遅れまいと急いでいる感じで、、、通級側の出入り口に戻ろうとしている。


彼女が声をかけているのに振り向きもしない、立ち止まりもしない斉藤先生に少し違和感を感じた。


…もしかして初対面?


目の端で斉藤先生の姿を追いながら、自分で感じた虚空感が大きく、心は落ち着かないままだった。


斉藤先生が誰に会ったって仕事なんだし、私が哀しくならなくたって……だけど、走って迎えに行くのにあんなそっけない態度。


校門を出るときにもう一度振り返ったけれど、そこには2人の姿はすでになかった。


…斉藤先生らしくない。

No.140 12/12/16 21:05
匿名0 



コウタ、3年生がスタート。


クラス替えがあり、担任は新任の若い女性先生。


村山さんが言った通り、新居先生は少し遠い市の小学校に異動になっていた。


人気のある先生だったから、異動を残念がる人も多く…その中でも村山さんは、いつも明るい人なのに、元気がなかった。


…通級のコウタの担任は吉野先生になる。


斉藤先生は担任じゃなくなった。

No.141 12/12/17 09:55
匿名0 



新学期が始まってすぐにどちらの学校も保護者会があった。


今年は通級の方が早く、私は春休みの一件から斉藤先生に会いたかった。


自分の胸のざわつきや先生があの人の元に走っていったときの哀しみ、斉藤先生らしくない様子やあの人のことが、全部、知りたかった。


校庭の桜は七分咲きといった程度…満開までにはいかないけれど、学校の風景が心弾む色に染まっていると、気持ちがワクワクドキドキと嬉しい気持ちいっぱいになる。


その気持ちのまま、通級の保護者会に顔を出すと、資料を並べていた斉藤先生にいきなり会った。


「田村さん、おはようございます」


ドキッとした。


いつもと何ら変わらない斉藤先生は、今日はスーツ姿。


保護者会の資料を渡され、私はちょっと戸惑いながら、声をかけようとすると、


「井上さん、おはようございます。多田さん…」


次々に来る保護者の人に資料を渡す先生。


私は声をかけるタイミングを失い、
スゴスゴと席についた。


保護者会は校長先生のあいさつから始まり、新しい先生の紹介とこれからの活動の報告があった。


斉藤先生の司会進行だった。

No.142 12/12/17 10:28
匿名0 



ひと通り保護者会の内容が終わり、最後は受け持ちになる担任ごとに集まり、曜日で変わる保護者たちが顔を合わせた。


コウタは真ん中の水曜日…学校に2日行って通級、また2日行って土日の中日タイプ。


吉野先生は20代後半くらいの可愛らしい感じのする女性で、新設通級時からいた先生。


吉野先生の隣に作ったグループは声の大きな新しくきた30代前半の男性で遠田(おんだ)先生という。


この遠田先生の声が大きすぎて、私はたびたび振り返っていた。

斉藤先生も少し離れたところに
グループを作り、同じように話をしている。


朝、会ったときにこそドキッとしたけれど、今は落ち着いていて胸のざわつきはなかった。

No.143 12/12/17 13:03
匿名0 



帰りのときに斉藤先生と話そうと思っていると、私たちより、斉藤先生のグループのほうが早く終わり、斉藤先生は遠田先生グループにいた多田さんに声をかけていた。


「帰りに職員室に寄ってください。学校に行く日を決めましょう」


斉藤先生はそれだけ言うと部屋を出て行った。


…話、できなかった。


ため息が出た。


春休みの一件にこだわる必要もないのかな?


またコウタの通級日に来たら、先生にも会えるし、いいか…。


だけど、担任が変わっても斉藤先生が学校に行くんだ。
何かあるのかな?


これから帰りに、斉藤先生と話せる多田さんをちょっとうらやましく思った。

No.144 12/12/17 17:20
匿名0 



学校の保護者会は翌日に行われ、新任でホントに若いお姉さん先生で、はきはきと明るく、名前は近藤いずみといった。


若さと熱意のあるいずみ先生の言葉から、コウタたちのクラスを応援したくなる。


が、コウタは数日行くと、教室に入れなくなった。


けれども、ここでも登校手帳が役立った。


登校👑シールを貼ってもらったあとは、坂本先生のいる保健室に向かって、1日を過ごした。


「新しいクラス、先生だから、様子をみているんじゃない?」


坂本先生はそんな風に言った。

No.145 12/12/17 18:33
匿名0 



うーん、人見知り?


「だけど、保健室にいても、いずみ先生がどんな人かは分からないんじゃ…?」


「そんなことないよ。よく顔を出してくれるし、クラスの子も声をかけてくれてる…コウタくんは新居先生が好きだったから、まだまだ時間はかかるかもね~」


からかうように笑う坂本先生に確かにそうかもしれないと納得の私。


「…離任式はいつですか?」


「25日よ。新居先生、来るって言ってたわ」


25日…私は窓の外を見た。


桜は風に花びらを舞いさせ、緑の葉が見え隠れしている。


今はハル、心弾む穏やかな季節。

No.146 12/12/17 19:42
匿名0 



通級も始まっていた。


吉野先生はこの前、ご結婚されたばかりで、前は関西地方に住んでいたようだった。


その地方のイントネーションがあり、物腰も柔らかく感じる。


「コウタくん、可愛いですねぇ」


3年生になった息子をつかまえて可愛い…最近、男の子っぽくなってきたんだけどなぁ。


私は少し苦笑いしながら、そうですかと相づちをうった。


コウタのお迎えにきていて、吉野先生からの今日の報告を聞いていた。


離れた場所で、同じように斉藤先生、遠田先生が子どもの様子について話している。


斉藤先生とは全く話していない。

私は…何となく先生の姿を目で追っていた。

No.147 12/12/17 19:58
匿名0 



斉藤先生が戻っていく。その後ろ姿を見送りながら、小さくため息をついた。


担任じゃなくなると、全然、話なんてしない。


前みたいに、先生が近くに来て話をしていたなんて遠い夢のようで、寂しかった。


コウタのこと、一緒に見守った2年なんて、まるでなかったみたい。

何でこんなに切なくなるのかなぁ…。


「吉野先生…」


「はい?」


「春休み、斉藤先生を訪ねてきた人って誰ですか?何か、初対面みたいな、それか面談?…よく分からないけど」


吉野先生は春休み…と小さくつぶやき、それから思い出したように言った。


「ああ、あの人!私もその日いたんですけど、初対面でも面談でもなかったですよ。
斉藤先生に会いに来たみたい」


会いに来た…?


「誰だったんですか?」


私の声は震えていただろうか?

No.148 12/12/17 20:45
匿名0 



離任式、当日。


コウタは分かっているはずなのに、めずらしく行き渋りをした。


分かっているからこそ、行きたくないと行ったのだろうか?


コウタは下を向いたままいたけど、


「ちゃんとバイバイしないと、次に会えないんだよね…」


ひとりごとのようにつぶやいて、行くと言った。


離任式のある5時間目に間に合うように、学校に向かった。

No.149 12/12/17 22:14
匿名0 



教室には行けないから、保健室に行くと、坂本先生がいらっしゃいと言ってくれた。


コウタがふにゃと長椅子に座る。


とそこに、新居先生と退職された田中先生と校長先生が体育館に行くため、通りかかった。


新居先生は私を見つけ、すぐに
コウタも見つけた。


コウタは狭そうな長椅子の下に慌てて逃げ込んだ。


「コウタ~、来ないのか?寂しいじゃないか。こっちは夢も見るくらいなのに」


コウタをこちょこちょとくすぐって、校長先生に促された新居先生はそのまま、体育館に向かう。


「私も先に行ってるわよ」


坂本先生は私たちに声をかけて、保健室から出ていく。


長椅子の下から出てきたコウタの洋服を直しながら、


「体育館に行こうか」


と言うと、コウタも静かにうなずいた。


大好きな新居先生とのお別れ。ちゃんとできるかな?


夢にまで見るって…ホント、子どもたちのこと、大好きなんだね。

No.150 12/12/18 18:45
匿名0 



体育館に行くと、さすがに子どもたちの数が多くて圧倒される。

後ろの壁にちょこんとコウタと並んで立っていると、隣に村山さんが来てくれた。


軽く会釈。


校長先生からのあいさつののち、子どもたちからの手紙、異動や退職された先生たちからのあいさつが順々に進んでいく。


最後の別れのとき、全校の子どもたちが作った花道を通り、子どもたちの歌う校歌が響き渡る。

体育館いっぱいの歌声に混じり、すすり泣く声も聞こえてきて、私はもらい泣きをしてしまった。


村山さんを見ると、2人して泣いていて、恥ずかしくなって照れ笑いをする。


新居先生は最後にコウタのとこに来てくれた。


「コウタ~ッ」


髪をくしゃくしゃにする。私の隣にいた村山さんに気付き、


「村山さんもお元気で」


「先生も。ありがとうございました」


村山さんは最後のあいさつを笑顔で返した。

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