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匿名
13/03/03 10:29(更新日時)


だいぶ寒さも和らいできた4月の初め、家庭支援センターの小山さんと校庭の隅で話をしていた。


たわいもない家での子どもの様子を時々、笑いながら話す。


私たちの横を校舎に向かって、歩く同年齢くらいの女性。


春休みなのに、どこに行くのかな?


後ろ姿を見送りつつ、ふと、そんなことを思った。


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No.1873997 12/11/08 22:25(スレ作成日時)

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No.251 13/02/08 07:54
匿名0 



運動会前日、
夕方に1件メールが入った。



『ご無沙汰してます。コウタくんからのお手紙、ありがとう。嬉しかったです。明日の運動会、行きます。楽しみにしてます』



新居先生からのメールだった。

No.252 13/02/08 19:45
匿名0 



コウタにそのメールを見せると、大はしゃぎ。



「やった!新居先生来るッ」



素直に嬉しい♪と表現できるコウタがちょっとうらやましかった。



私は………何だか複雑だった。



メールでの返事をもらえて、それだけで嬉しくなってしまう自分がいて、これだけでごきげんになってしまうなんて、、、
今までただ、すねていただけ。



大人なのに……ね。

No.253 13/02/08 20:09
匿名0 



よく晴れた日の運動会。



帽子は必須、薄手の長袖で十分、少し動けば汗をかくくらいの陽気だった。



新居先生は早めの時間に姿を見せてくれ、また人だかりを作りつつ移動する様子は相変わらず。


新居先生の子どもたちからや保護者たちからの慕われ方、人気ぶりは異動して2年経っていても健在だった。



そんな様子を遠くから眺めていると、村上さんが私の身体を思い切り、バンバン叩いてくる。



顔が高揚してた。



「ねぇ、知ってたの!?新居先生来るって!?」



「え?あ、うん…」



「もうッどうして教えてくれないの!?私、日焼け対策でこんな格好だよ😭😭😭」



いえ、、、それでも十分、素敵ですが…ボーイッシュな感じがまた村上さんに合ってます💨💨💨

No.254 13/02/08 20:36
匿名0 



私もそんな村上さんの気持ちは分かった。



憧れの人(年下だけど)と久しぶりに話ができるって…嬉しいよね。



「ミナミの競技までまだ時間あるよね。少しだけ声をかけてくる。
2年目なんて来てくれないと思ってた(^∀^)」



「そうだね。良かったね」



私がにっこり笑うと、村上さんはチロリと横目で見てくる。



「ねぇねぇねぇ、メール、してるの?」

No.255 13/02/08 20:40
匿名0 



一瞬、言葉に詰まる私…



「いいなぁー。いつメアド交換したの?」



「あ、えーと…異動後だよ。でもそんなにしてないし、先生、忙しいから返信ないし」



「えー…それでも、うらやましッ。私も先生のメアド、知りたい」



村上さんはちょっといたずらっぽく笑って、でも、と言葉を続けた。



「やっぱり、知らなくていい。私、憧れだけでさ。ミナミがいるし、旦那も好きだし✨」



とノロケられた。



「だけど、今日は話してくる~♪」



帽子を押さえて、新居先生のところにダッシュしていく村上さんは、やっぱり素敵だった。

No.256 13/02/08 20:52
匿名0 



コウタの競技近くなると、それまで喫煙所(学校の外)にいたお父さんが姿を見せた。



「コウタは次?」



私がうんと頷くと、じゃとビデオカメラとプログラムを手にコウタがよく見れる(撮れる)場所に移動する。



今いる場所でも十分、コウタが見れるけれど、本人にしてみると撮るフレームにこだわりがあるらしい。



こういう場所に夫婦で来ていても、2人一緒にいることはなかなかない。



そういうことにも、月日が経つとだんだん慣れた。

No.257 13/02/08 23:54
匿名0 



「田村さん」



後ろから声をかけられ、振り向くと新居先生が立っていた。



私は数歩、後ろに下がり、新居先生の隣にいく。



「コウタからの手紙ありがとうございました。あと、メールの返信できなくてすみません」



新居先生に言われたのはそれだけなのに、言われたかったことを見透かされたようで、私は畏縮してしまい、小さく首を振った。



「コウタたちの競技、もう少しで始まりますね」



何気なく、新居先生を見上げるとはにかんで笑っている。



ああ、そうか。
私は新居先生のメールに一喜一憂してたんだ。
だからか新居先生からそう言われただけなのに、もう大丈夫になってきてる。
気持ちが落ち着いてくるのが分かる。


と、突然、周りがざわめき出した。

No.258 13/02/09 06:23
匿名0 



ざわざわとした周りを見ると、みんな、空を見上げている。



中には指を差したり、カメラを向けたり…



そのうち、競技待ちをしていた子どもたちまで空を見上げ、幸せそうな顔になった。



「虹だ」



新居先生が小さくつぶやく。



私も空を見上げた。



「…虹」



きれいなの虹色が晴れた青空にかかり、少し小さいけれど、そこには幸せな空が広がっている。



「きれいですね」



私は幸せな空にときめいた。

No.259 13/02/10 09:49
匿名0 



ふと、



斉藤先生とあの人はメールのやり取りをしていたのだろうかと思った。



あの人が斉藤先生に聞いたのかな?



あの人は2年間、メールだけでつながっていたのかな……



会いたかった、よね。ずっと。



私だったら、そんな長く会わないでいて話さないでいて、ずっと想っていられる?



新居先生は、こうして学校行事等に来てくれて会えて話せたりできるけど、それでも、メールの返信がなかったら寂しくてすねてしまって…。



それに一応は私は斉藤先生に会えてる(姿がある?)。



まだ会えているのだ。

No.260 13/02/10 16:00
匿名0 



新居先生にも会え、虹がかかった幸せな空も見れた運動会が終わった。



コウタは少し興奮気味に今年の運動会を思い出深く胸に刻んだようだった。



私は新居先生にも会え、話もできて落ち着いたかのように思ったが、それでもキッチンドリンカーのままだった。



何がそうさせているのだろう?



遠田先生でも
新居先生でも心に空いた穴が埋まらないのか?



それとも私はそこまで斉藤先生が好きなのだろうか?



その想いが叶うことはないのに(伝えることもできないのに)心の寂しさがそこから生まれているのなら、私はこのままずっと…孤独感と虚無感とを抱えて…満たされないままなのだろうか?

No.261 13/02/10 16:09
匿名0 



ただバカな想いだ。



斉藤先生に気持ちを伝えることもなく、まして想い合うこともなく、完全な私の一方通行…。



片想いなのだ。



しかも1年くらい、話していない。先生の後ろ姿を見送るだけ。



これは私が心のブレーキをかけながらしている恋なのか?



それとも執着心…?



何もない相手にずっとずっと想いを寄せている。



あの人は…?
いったいどんな想いを斉藤先生に持っているのだろう?

No.262 13/02/10 16:25
匿名0 



それとも、、、



あの人と先生はお互い想い合っている?



どうして?
どうやって?



私のほうが近くにいるのに、私はダメなの?

No.263 13/02/11 10:33
匿名0 



この前の出来事があってから全校で運動会の練習があり、通級はお休みしていた。



夜に電話をもらってから、2週間ぶりの通級。



午後、お迎えに行くと、校庭に下りる階段のところで遠田先生が座っっていた。



「こんにちは」



私が声をかけると、ああ…といった感じで物憂げで、いつもの元気な様子はなかった。



「お疲れですか?」



「本が…」



?本?



「本が読めなくて…」



読めなくて?



「寝ちゃったんですよ😭」



「はい?」



「研修課題なのに、1ページも読めなくて、提出期限が迫ってるのに😭😭😭」



「あ~、頑張ってください」



なんだ…💦心配しちゃったよ。いつもの元気ないから。

No.264 13/02/11 10:57
匿名0 



だけど、よくよく話を聞くと、そんな単純なことじゃなくて…



通級に配属されてから、特別支援や発達障害のことをちゃんと勉強しようと思ったらしい。



確かに書籍には必要な最低限のことは書いてあった。



けれど、当たり前だけど、そこにはコウタや他の子たちのことは書いてない。



マニュアルのような本に吐き気がするようになって、読めなくなったという。



無理に読もうとすると、身体も心も受け付けず、シャットアウトしてしまう。つまり、寝る。



「やっぱり、その子を前にして関わって、お母さんたちと話して…、そういうところなんじゃないかな」



特別扱いという子はいない。
みんな、special(スペシャル)。

No.265 13/02/11 11:16
匿名0 



遠田先生をちょっとだけ見直した…(失礼だけど)。



「惚れ直したじゃないの😚」



「惚れてない、惚れてない」



私が笑っていうと、



「今日は元気だね。良かった。何かいいことあったのかな😊」


いいこと…、
新居先生に会ったこと?



「運動会、晴れたし気持ち良かったですね。虹も見ました?」


私は話を変えた。



「あー、見た見た!あんな晴れてたのにな、きれいに出てた。でしたよね、斉藤先生」



どこから来たのか、遠田先生が私の後ろを通り過ぎようとしていた斉藤先生に声をかけた。



私は緊張する間も振り返ることもできず、、、斉藤先生は私たちの横で歩みを止めた。

No.266 13/02/11 12:37
匿名0 



ちょっと不機嫌そうな顔の斉藤先生。



この間のことをまだ引きずっているのかな…。



「同じ日に運動会だったんですよね。自分も虹、見ましたよ。あんなに晴れていたのに、はっきりとした虹色で」



久しぶりの声。少し弾んだ声。
近くで動いて話してる…うわぁ、なんかドキドキしてくる。



「幸せな空ですよね、虹がかかった空って」



ポツリと続けて言った言葉に、私はびっくりして斉藤先生を見た。私と同じ“幸せな空”って言った。


優しく笑う斉藤先生は以前の、私の隣にいて話していたときと全く変わっていない。



私が虹のかかった空を幸せな空と思ってときめいたように、斉藤先生も幸せな空って。



どうしよう……好きな気持ちがあふれ出そう。

No.267 13/02/11 13:53
匿名0 



「…お元気そうですね。遠田先生に心配かけさせない方がいいですよ。
何かあれば自分にも話してくださいね」



え?何…?



「あはは~酔っぱらい💡」




私はカッと顔が赤くなったのが分った。
と同時にコウタが背中にドンッとぶつかってきた。



「お母さん、お話まだ~?」



「あ、うん。もう、行こうか」



斉藤先生がじゃと会釈して、戻っていく。



コウタと一緒に斉藤先生にさよならをした。それも久しぶりだった。


遠田先生にもあいさつしようとすると、そこまでと駐車場の方に向かって歩き出した。

No.268 13/02/11 15:05
匿名0 



「田村さん、河合さん知ってる?河合 睦人(りくと)くんのお母さん」



「河合さん…?」



その名を繰り返してもちょっと覚えがない。



「ううん、分からなかったらいいや」



「もしかして、この前、斉藤先生とモメた人ですか?」



「そう」



泣いてたんだっけ。



「ちょっとこじれちゃって、これからは陸人とコウタ、2人をオレが見ます」



「え?2人?…斉藤先生は?」



「担任外れます…ない話ですけどね。河合さんが落ち着いたら戻りますがそれまで。
よろしくお願いします」

No.269 13/02/11 22:33
匿名0 



私は斉藤先生と話せた余韻を楽しむ間もなく、河合さんと斉藤先生の間で何が起きたのか、気になった。



今まで通級で1人の担任の先生に2人の子どもはなく(コウタの通っていた曜日がたまたまかもしれない)、これからどうなるのか予想がつかない。



家に帰るまでドキドキが落ち着かなかった。



そして、この日を境に私のキッチン
ドリンクは終わりを迎える。



斉藤先生は虹を見たときの私と同じときめきを感じたのだろうか?



虹がかかった幸せな空…



ー…などと考える余裕はなかった。



恋のパワーはアルコールには勝てたが、親が子どもを思う気持ちのほうがはるかに強かったのだ。

No.270 13/02/12 08:28
匿名0 



夕刻、家の電話がなる。



「田村です」



在籍校の担任、藤原先生だった。


「今、お時間ありますか?」



18時過ぎ、コウタはDSをしていた。夕ご飯はできていたが、お父さんの帰るコールが普段より早かったから、平日、久しぶりにみんな一緒に食べようと思っていた。



時計を見て、まだ大丈夫と確認した。



「はい」



と返事する。

No.271 13/02/12 08:41
匿名0 



「コウタくんのことでお話がありまして、どうでしょうか…来週、学校の方に来れますか?」



来週、、、



「通級の日だったら、大丈夫です」



「良かった。じゃ16時くらいにお願いしてもいいかしら」



藤原先生の落ち着いたはきはきした声…だけど私は不安になる。


「はい、16時ですね…あの、コウタの話って?」



「デリケートなことなので、お会いしてからにしましょう」



デリケートな…
コウタのこと
私に話



それだけで、ざわざわとしたものが胸いっぱいに広がっていった。

No.272 13/02/12 16:54
匿名0 



藤原先生の話、いったい何だろう?



コウタのことで思い当たることはないんだけど、デリケートなことって言ったらやっぱり、、、。



ため息が出た。



今日、会ったばかりなのに、私は遠田先生に会いたくなった。



話したい。



この不安な気持ちを落ち着かせたい。



遠田先生の声が聞きたい。



私は深呼吸をするように大きく息を吸って、ゆっくり吐いた。

No.273 13/02/12 17:44
匿名0 



待ちに待った通級日…



大した話じゃないかもしれない、でも…と思いながら、家でも仕事先でも悶々としながら、平静を装っていた。



1日1日、我慢させていた。
押し寄せる不安の波を誰かに聞いて欲しいのを。



それを我慢してた。



…我慢って表現はおかしいかも。


耐えてた、かな。



大した話じゃないかもしれない、だから聞いてもらわなくても大丈夫…と繰り返して。



私は遠田先生に私の不安な気持ちを聞いて欲しかった。

No.274 13/02/12 18:11
匿名0 



私がコウタのお迎えに行ったとき、私の見た光景は遠田先生と河合さんが2人で話してる姿だった。



雑談でもしてるのか、何だか楽しそう。



遠田先生の笑い声が続く。



河合さんもこの前、泣いてた人?と思うほど、リラックスして柔らかな表情をしていた。



私は2人の話が終わるのを待つ。



…待つ。



……待つ。



なるほど、こういうことなんだ。担任1人に2人って…。



ため息が出る。



20分ほど待って、、、なんか、どうでもよくなってきた。



「コウタ、帰ろうか」



私も話したかったな…少し気持ちが弱くなっていたね。涙が、目がうるうるしてくる。



私は涙をこぼすまいと唇を噛みしめた。

No.275 13/02/12 18:45
匿名0 



職員室に顔を出して、藤原先生に声をかけた。



「今日はありがとうございます。教室で話しましょう」



きびきびと動く藤原先生について教室まで行く。



教室の大きさは変わらないのに、少し大きくなった机と椅子。



子どもたちがいなくなった教室だとそれがしみじみ分かる。



2つの机をくっつけ、藤原先生が私をどうぞと促した。



「運動会はどうでしたか?コウタくん、頑張ってましたね」



「4年生になってできることが増えて、どの子も頑張ってましたね。ご指導ありがとうございました」



頭を下げてお礼を言う。



「今日、来ていただいたのは、
コウタくんのお母さんだからお話をしようと思いまして……
コウタくん、固定級はどうでしょうか?」

No.276 13/02/12 19:24
匿名0 



夜、遠田先生から電話がかかってきた。



面倒見がいいなと思った。



「今日はすみませんでした。話ができなくて。ずいぶん、待っていたんじゃないですか?」



「大丈夫です…先生1人に2人って大変ですね」



大丈夫ですよと遠田先生の声。



前のときはふわふわと気持ちが良くなった。
けど、今日はならないみたい。


そうだよ、私は大丈夫。
頑張らなくていい
無理しなくていい
焦らなくてもいい



だから、
遠田先生はいなくて、平気。

No.277 13/02/12 19:39
匿名0 



私は藤原先生の話は保留にした。


今はまだ、その話を受け止められない。



だけど、頭には入れて置いた。



新居先生がこの学校にいたら、また話ができて、雑談しながらでもコウタことが話せたのに。






あれから通級も6月が過ぎて、7月も半ば、1学期の最終日。



相変わらず、河合さんと遠田先生が話し、笑い声が聞こえて来ていた。



順番に、と遠田先生は言ってくれたけど、陸人くんが待てず、やはり私が後だった。



話をせずに帰るようになったのは、そうなってから1ヶ月したくらい。



遠田先生は夜に電話をくれたけれど、私は忙しいからと早々にに切る。



コウタのことをしっかり見てくれているならそれでいいと思った。

No.278 13/02/12 19:55
匿名0 



2学期に入る…。



学校に行く用事があり、ついでに久保田先生のところに寄った。


坂本先生の次に来られた養護教諭。



坂本先生がベテランなら久保田先生は若かった(笑)。



ホントに保健室のお姉さんという感じ。そして坂本先生に怒られそうだが華がある感じ。



「久保田先生、最近、コウタ、来てますか?」



1学期に藤原先生に固定級を勧められ、その一因にはコウタは苦手教科あるいはやりたくないと思ったときには保健室に行くという。


新学期が始まってどうだろう?と思って尋ねに来たのだ。

No.279 13/02/12 20:17
匿名0 



可愛い猫のエプロンをつけた久保田先生がくるりとこちらを向いた。


「コウタくん、来てないですよ。まだ2学期が始まったところですから」



私はコウタの苦手な教科のときには取り出しかひとり付けて欲しいことを学校側にお願いしてきていた。



“毎回はひとがいないから難しい”とは言われていたから、絶対にとは思っていない。



コウタからも何曜日には○○先生と言っていて、週2回ほどクラスに学生ボランティアさんや支援員の人が入ってるらしかったし。



私はそれで十分だと感じていたけれど…。

No.280 13/02/12 20:26
匿名0 



藤原先生は、コウタが頑張って努力してもできないよりは、少し頑張ったらできた・分かった体験を積んで自信につなげていったほうがいいのでは?と言うのだ。


今のそのサポートや支援が十分ではないし(コウタに合っているかも疑問)、また高学年に向けて学習も難しくなっていく。



藤原先生自身もコウタのところには付くけれども、なかなか思ったようには付けないし、申し訳ないけど、コウタだけにも付けない。



そんな話を面談でされ、私も藤原先生の言いたいことも分かる…けれど、私は、コウタにここで頑張って欲しい。



そう、私が久保田先生に尋ねているのは、教室でコウタが頑張れている裏付けを探してるようなものだった。

No.281 13/02/12 21:21
匿名0 



9月に入ってすぐに通級も始まる。


いつも通り、朝にコウタを通級に送り、この曜日は仕事を入れてないから、買い物したり家のことをしたり、たまに自分のリラックスタイムにしていた。



藤原先生に固定級では?と言われた6月の頃よりざわついた気持ちは落ち着いていて、キッチンドリンカーだった頃よりは更に人とのつながりは拒絶していた。



拒絶していたというか、誰にも声をかけられない、かけないといったことで、仕事先で少し誰かと話をするだけで十分に思えた。



遠田先生と河合さんを拒絶していたかもしれないけど、、、。

No.282 13/02/12 23:32
匿名0 



今日は本屋さんで探していた本を見つけ、私はご機嫌だった。



つい嬉しくて、コウタの好きなタンタンの冒険シリーズも一緒に購入する。



そのまま通級のある学校に向かい、コウタを出迎えた。またいつものように河合さんが遠田先生と話し出して、私は会釈して帰ろうとした。



「田村さん」



名前を呼ばれて、振り向くと斉藤先生が私を手招きする。



斉藤先生?



遠田先生が河合さんと話すようになってから、斉藤先生は帰りのときに顔は出していなかった(なので私の斉藤先生の後ろ姿を見送る儀式もなかった)。

No.283 13/02/12 23:44
匿名0 



私はご機嫌だったからか、あまり緊張せず、斉藤先生のところに行く。



「何ですか?」



「遠田先生が話があるんだって。だから、ちょっと待っててもらえる?」



「帰ります。遠田先生たち、話、長いから待ちたくないです」



斉藤先生が笑う。



「じゃ、ぼくが一緒にいる。コウタくん、さっきの本、読む?」



コウタはやった!とまた部屋に戻った。



くつをぬいで、私も斉藤先生の後に続く。



斉藤先生と一緒なんて、どれくらいぶりだろ…ちょっとウキウキ♪した。

No.284 13/02/12 23:58
匿名0 



コウタたちグループが使う部屋に通され、斉藤先生は椅子を出してくれた。



「田村さんと話をするの、ずいぶん久しぶりだ」



斉藤先生にそう言われると照れてしまう。ずっとずっと話したくていた私からしたら、今日は何て素晴らしい日だろう!



コウタは別部屋で本を読んでいるらしい。



「田村さん、コウタくんのことで困ってることないですか?例えば、担任の先生から何か言われたとか…」



何か言われた…?
何だろう?固定級のことかな?



私は首をかしげた。



私、困ってるかな?
確かに最初に言われたときは、心がざわついたけど、今はどうしていこうか考えているし。
いや、考えてないかな?

No.285 13/02/13 07:55
匿名0 



私は静かに口を開いた。



「…6月に藤原先生に固定級はどうか?って言われましたが、実際、実感がわきません。コウタは今のままでも大丈夫に思うし、固定級もよく分からないです…」



「…聞いたときには胸のざわつきや不安があったけど、今は落ち着いてます」



斉藤先生は間を開けずに、



「どうしたいですか?」



と聞いてきた。



どうしたいってまだよく分からないよ……。

No.286 13/02/13 08:09
匿名0 



私は下を向いて、



「まだ分かりません。決めてないです」



「うん、コウタくんはそんなに急ぐことはないだろうけど、やっぱり現場の先生たちがよく分かっているからね。
検討委員会の日は決まっているから、早めに答えを出した方がいい。
藤原先生もコウタくんを見ていて、田村さんに伝えたのだと思うから。コウタくんにとって大事なことだよ」



矢継ぎ早にいっぺんに言われた。


「誰かに相談した?」



…相談?
誰に?



「お父さんや他のお母さん、小山先生や遠田先生とか」



私はうつむいたまま、小さく首を振った。



斉藤先生は私に聞こえるくらいのため息をついた。



ホントは小さな小さなため息だったのかもしれない。
だけどそれは“困ったもんだ”とつかれたため息に聞こえた。

No.287 13/02/13 08:27
匿名0 



さっきまで、ご機嫌な日。



素晴らしい日だとも思った。










だけど…………最低最悪な日。










斉藤先生はコウタのことを思って言ってるのだろうが、私はとてもそうは受け止められない。



「もう、やだ。……たくない」



私がボソッと言った言葉に、斉藤先生はえ?と聞き返す。



「もう話したくありません!」



あの日、河合さんが口にした言葉だった。
そして、あのとき泣いていた理由も分かった。

No.288 13/02/13 08:52
匿名0 



しばらくの沈黙の後、斉藤先生は静かに部屋から出て行った。



涙をふいて、コウタのいる部屋に行く。



「コウタ、終わったよ」



コウタは私を見て、それから部屋から外を見た。



「先生、あそこにいるよ?」



と河合さんと話してる遠田先生を指差す。



「ううん、もう斉藤先生と話したから」



コウタは分かったと読んでいた本を棚へしまった。

No.289 13/02/13 09:02
匿名0 



「今日ね、本屋さんで探していた本があったの」



「空の写真集?良かったね」



斉藤先生が担任だった頃に比べ、背が高くなったコウタ。
私の胸あたりの身長。これからもどんどん大きくなっていくんだろうなぁ。



「空のいろんな表情があるんだよね。虹もでしょ」



そう。
5月に見た晴れた青空にかかる虹がもう一度、見たかった。



斉藤先生も同じように言った
“幸せな空”が見たかったんだ。


だけど、それももういい。
私は目を伏せた。



「コウタにはタンタンを買ったよ」



「やった!ありがとう。お母さん、ご機嫌だね♪」



残念、ご機嫌だったのはさっきまでだったよ。

No.290 13/02/13 09:19
匿名0 



くつをはいていると、ようやく遠田先生が戻ってきた。



いつもこんなに話しているんだ…やっぱり待てないなぁ。



「え?田村さん、帰っちゃうの?まだ話をしてないよ」



私は座ったまま、遠田先生を見上げて、コウタがそこにいても少し乱暴に言い放った。



「固定級の話でしょ。もう斉藤先生と話しました。終わったから帰ります」

No.291 13/02/13 09:24
匿名0 



「ちょっと待って。斉藤先生は…?」



私は立ち上がって(遠田先生は関係ないのに)、いちべつして



「知りません。それから、もう自宅に電話しないでください。ここで話ができないと意味がないでしょ」



完璧、八つ当たり…それは分かったけれど、自分の気持ちは止められなかった。



「田村さん、ホント、待って。話をして」



私はコウタも置いてきてしまいそうな勢いで、駐車場まで走った。



さっきまで私はご機嫌だったんだよ、ホントに。
どうしてくれよう、この感情。

No.292 13/02/13 09:36
匿名0 



お父さんにメールする。



『今日、頭痛くて早くに休みます。悪いんだけど外でご飯を食べてきてもらえる?』



少しすると、『了解』の文字。



私は携帯を放り出して、ベットにもぐり込んだ。



頭が痛いのは嘘ではない。
ガンガンしていた。



気持ちの修復も回復も今は無理。


コウタに少し眠ると伝えて、私は身体を丸めて、眠りに落ちた。

No.293 13/02/13 10:03
匿名0 




♪~トゥルル、トゥルル、トゥルル…





身体のスイッチが切れたように眠り、目が覚めたときは閉め忘れたカーテンの向こうに月が見えた。



ん、何時?



携帯を手探りで探し、見ると19時だった。3時間くらい寝たらしい。



ぼーっとしながら、ベットに座り込み、ほの白く光る携帯がまぶしかった。



さっき電話がなったように思ったけど、、、耳を澄ましてもかすかなTVの音だけ。

No.294 13/02/13 10:11
匿名0 



♪~
メールの着信音。



見るとCメールだった。



多分、遠田先生…。
いいや。

No.295 13/02/13 10:16
匿名0 



また携帯を放り出すと、ベットから抜け出し、リビングに向かった。


そこにはコウタがいて、アニメ番組を見ていた。



「お母さん、起きた?頭痛いの大丈夫?」



「うん、寝たら少し楽になった。おなかすいた?」



「うん、簡単なものでいいよ」



小4の男の子のセリフだろうか?
ちょっと笑ってしまった。



「さっき、遠田先生から電話があったよ」



手を洗う水の音と重なり、それは聞こえづらかったけれど、、、ちゃんと心には響いていた。



「……そう」



ただ流れ落ちる水を見つめ、しばらくして、それを止めた。

No.296 13/02/13 11:02
匿名0 



私は簡単にラーメンを作り、きっとそれだけじゃ足りないから、おにぎりも作った。



「お母さん、タンタンの本は?」



「カバンの中だよ」



コウタが私のカバンをがさがさとあさり、本を取り出す。



タンタンの本を片手に、コウタは席についてラーメンを食べ始めた。



「ねッ!お行儀悪いよ!」



「え~、早く読みたい」



「本が汚れる。食べてから!もうテーブルに置いて」



しぶしぶ、コウタは本を置いた。



「お母さん、機嫌悪い~」



コウタがぶーぶー😚言った。



違うよ、コウタ。
ほんのちょっぴり、ご機嫌が直ったんだよ。
ほんのちょっぴりだけどね。

No.297 13/02/13 11:25
匿名0 



コウタが食べ終わり、私は洗い物を済ませ、ソファに座ってひと息ついた。



コウタはさっき私に言われたのがイヤだったのか、本を持って自分の部屋に逃げ込んだ。



もう少ししたら、お風呂だよって言わなくちゃ。
またコウタ、ぶーぶー言うのかな?



不意にさっきのCメールを思い出した。



私は寝室に取りに行く。



♪~
またメール着信音。



ディスプレイ画面が明るくなり、携帯番号が表示される。



携帯を手に取り、Cメールの受信ボックスを開いた。



2件来ていて、どちらも遠田先生だった。

No.298 13/02/13 11:40
匿名0 




1件目/今日はすみませんでした。まだ学校にいるので、何時でもいいから電話してください



2件目/身体の具合、大丈夫ですか?すみませんが帰宅します。携帯の方に電話ください



私は時計を見た。
もうすぐ21時。
こんな遅くまで、学校にいたんだ。



私はその場で携帯から通級に電話した。



いつまでも続く呼び出し音。



…もう、帰ったよね。
そう思い、電話を切る。



遠田先生の携帯にかける?



でも、やっぱりそこまではできない。



小さく息をはき、コウタにお風呂だよって声をかけようとすると手の中の携帯が鳴った。

No.299 13/02/13 11:56
匿名0 



「はい」



「通級の遠田です。さっき電話してくれましたか?」



「しました。遠田先生、帰ったんじゃないんですか?」



「くつをはこうとしたら、電話の音が響いて…夜、廊下にまで聞こえる電話って怖いんですよ。びっくりしました」



私はちょっと笑って、



「恐がりですねぇ(笑)」



「えー😫田村さんも真っ暗な中、電話が鳴り響いていたら絶対怖いですって!」



「あはは。先生、もう帰るでしょ?また、明日とかでいいですよ」



「うん、21時半までに出ないと守衛さんに怒られる」



慌てて時計を見ると、もう、22分だった。



「怒られるんだけど、田村さんと話しないと。…ずっと話してないから」



その言葉に私も、んとうなづいてしまった。

No.300 13/02/13 12:11
匿名0 



携帯から聞こえてくる遠田先生の声は静かで心地よく…ふわりとした気持ちになる。



「今日はすみませんでした。お待たせもしちゃったのに話ができなくて。
それから斉藤先生からも話を聞きました。それもすみませんでした」



遠田先生が謝る。



「実は今日はその話ではなく、来週の通級日、嫁さんを実家に届ける予定がありまして、お休みをいただくんです」



「あ、里帰り出産?」



「そう」



「どちらに?」



「四国です」



四国…また遠い。



「そっか。元気な赤ちゃんが生まれますように…」

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