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飲み会で言われた失礼な発言が許せない
友達ってなんだろう
この世の中に、そして宇宙にあるものは

ハル

レス372 HIT数 29655 あ+ あ-

匿名
13/03/03 10:29(更新日時)


だいぶ寒さも和らいできた4月の初め、家庭支援センターの小山さんと校庭の隅で話をしていた。


たわいもない家での子どもの様子を時々、笑いながら話す。


私たちの横を校舎に向かって、歩く同年齢くらいの女性。


春休みなのに、どこに行くのかな?


後ろ姿を見送りつつ、ふと、そんなことを思った。


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No.1873997 12/11/08 22:25(スレ作成日時)

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No.301 13/02/13 12:24
匿名0 



「ありがとうございます。それでその日は斉藤先生が代わりで…」



穏やかだった感情が一気に嫌悪に変わる。



「えーと、お休みします。遠田先生がいないなら」



「もう、河合さんと同じことを言わないでください😭」



はぁとため息をついた遠田先生は続ける。



「斉藤先生だって、熱いひとなんですよ?言葉のやり取りのところでストレート過ぎて誤解されやすくて。ホント、優しいんですから」



…知ってる。
好きだもん。



「田村さんなら、分かりますよね?」



分かりますよね、じゃない!
知ってても分かってても、好きでも絶対にやだ。

No.302 13/02/13 12:46
匿名0 



「先生ってそんなことで待っててと言ったり、電話してってメールしたの!?」



何だかムカムカしてきた。



「違う、違う。ちゃんと話を聞くから、田村さんの思ってること話して。ひとりで抱え込まないで。…オレはここにいるから」



ストレートっていうのはこういうことなんじゃないだろうか…



遠田先生の言葉は私の心にまっすぐ届いた。

No.303 13/02/13 13:00
匿名0 



私は黙ってしまった。



「…田村さん?田村さん?聞こえてますか?おーい!」



電話の向こう、小さな声で、



「やだなーオレの声にまた聞き惚れちゃったかな?」



「違うからッ!!」



「何だ、大丈夫なら返事してくださいよ(笑)。
あーごめんなさい。タイムアップ!
守衛さんに睨まれた(笑)。
ホント、どんなことでもいいから話して。電話でもメールでも」



ん、先生、ありがと。
心の中でお礼を言った。










そうなんだよね、思ってることはちゃんと相手に言わなきゃ…伝わらないんだよね。

No.304 13/02/13 18:11
匿名0 



私、遠田先生に助けてもらって、癒やされてる。



どんッと構えて、いつでもいいよ、話してって…何かあるたび不安や心配が出てきてしまう私にはホントにそこにいてくれるだけで安心する。



そう思うのは私だけじゃなくて、頼りにしていて、遠田先生に声をかけてもらっている人はきっとたくさんいるはず。



どうか、遠田先生に元気な赤ちゃんが生まれますように。

No.305 13/02/16 21:09
匿名0 



「…えっ?」



小山さんが私の言葉に驚いた。



「藤原先生が言ったの?」



コウタを通級に送ったあと、久しぶりに家庭支援センターに顔を出してみた。



小山さんはちょっとなら時間あるわと待合い室の長椅子に私と並んで座る。



「だってコウタくんは…」



それから黙ってしまった。信じられないといった様子。



私は小山さんの言葉の続きが容易に想像できた。



「通級の先生は?」



「まだ何も話してません」



私は目を伏せた。



小山さんが私の顔をのぞき込む。

No.306 13/02/17 13:03
匿名0 



「…大丈夫?」



何となく目をそらしながら、大丈夫ですと答えた。



そう?と小山さんは身体を戻した。



「どうするの?このままだってコウタくんにはいいんだよ」



私は軽くうなづいてから、



「私、固定級のことや今のコウタのこと、よく分からなくて」



「苦手な教科はあるのは分かっているし、絶対、満点取ってなんて思ってない。
コウタに好きな教科があってそれが頑張れていたらいいかな」



そして、友だちと遊んで笑って学校に楽しんで通える。



…それじゃ、ダメなのかな?

No.307 13/02/17 19:57
匿名0 



「そうねぇ‥コウタくんに必要な
サポートや支援って難しいわね」



小山さんはちょっと考え込む。



と、



「小山さん、外線入ってます」



受付の人から呼ばれた。



はい、行きますと元気に答えた小山さんはあっと思い付いたように、



「そうだ💡新居先生!…確か今、特支の先生だったわよね。
先生に話を聞いてもらったらどう?」



小山さーん!とまた呼ばれた。



小山さんはごめんねと立ち上がって、走っていく。



私は小山さんに言われ、初めて気付いた。



…そうだ。新居先生。



そして、運動会の時に見上げたあの空も思い出した。



晴れた空にかかる虹を…。

No.308 13/02/17 22:34
匿名0 



あの頃の私は…なんていうと、もうずいぶんと昔のように感じるけれど、まだ数ヶ月しか過ぎていない。



あの頃はまだ斉藤先生が好きだった。



“幸せな空”



虹がかかる空を同じように感じていたんだと思って嬉しかったんだよ。



………斉藤先生。

No.309 13/02/18 08:12
匿名0 



今日の午後には斉藤先生に会う。


妙な緊張感がだんだん近づいてくる時間とともに高まり、お昼は食べられなかった。



先週のこと、コウタこと…



斉藤先生が担任だった頃は、確かにぷりぷり💨と怒ったことはあったけれど、今みたいな切羽詰まった緊張感はなかった。



どちらが悪いとかいいとか言えない、抱えてる思いからくるすれ違い…。



気まずさじゃなくて、会わねばならない緊張感。



遠田先生のときのように、先生を前にしても、もう💨と怒っていられる気楽さはなかった。



あの人は苦手、、、そんな感じ。

No.310 13/02/18 08:24
匿名0 



好きだったのにね。



ううん、多分、今も好き。



だけど、何か……、穏やかではない。



洗面台の鏡の前で、私はため息ひとつ。



遠田先生や新居先生なら……、小山さんや吉野先生なら…、
坂本先生や久保田先生、
多田さんや村山さんになら、



……こんな私じゃないのに。
















斉藤先生は好きだけど…キライ。

No.311 13/02/18 08:45
匿名0 



「こんにちは。今日は遠田先生の代わりです」



私の張り詰めた緊張はよそに、斉藤先生は普通だった。



ー…何とも思わないんだ。
それとも先週のことなんて簡単にスルーなの?



遠田先生にだったら、文句のひとつも言えるものを、斉藤先生を前にだと怒りや不機嫌さを出してもスルーされ、斉藤先生は淡々と何も感じず、思わず、仕事をしているようだ。



やっぱり、私の好きな気持ちなんてまぼろし…。



ようやく暑い夏から朝晩の涼しさを感じる秋に移り変わる季節。


私のこの想いもハルから移り変わっていってるのかもしれない。

No.312 13/02/18 08:54
匿名0 



「田村さん?」



私は明らかに別の事を考え、斉藤先生の話は聞いてなかった。



名前を呼ばれても、視線は足元のまま、先生を見ない。



私がどんな態度でも、この人は何も思わない。
それは誰にでもなんだろう。



ひと通りの話が終われば、帰ればいい。



私はそう思った。



この人に相手を思う感情など…ないのだ。

No.313 13/02/18 09:02
匿名0 



キライ、好き、キライ…揺れ動く気持ち。


でも、好きだったのは何かの間違いだね。










ハルのあの人って斉藤先生のどこが良かったのかな?



私みたいな気持ちにはならなかったのかな?



それとも特別、優しかったとか?



そうだ。
1年生のときの連絡ノートにコウタと同じ猫シール、嬉しかった。



手裏剣やコウタに対する気遣い、
いたずらっぽく笑ったり、私へのさりげない応援、頑張りを認めてくれたり……やっぱり担任だったからかな。



ハルのあの人にはどんな斉藤先生だったんだろう?



なぜだか涙がポロリと落ちた。

No.314 13/02/18 09:24
匿名0 



あーあ、涙なんて、この人にはいちばん意味の分からない感情なんだろうな…



そう思って、静かに目を閉じるとまたポロリ。



だけど、これ以上はこの人の前で涙をこぼしたくなかった。



斉藤先生を想う涙など、、、
伝わらないのに、ひとしずくも。

No.315 13/02/18 09:30
匿名0 



私は何も言わないで、リュックから
ミニタオルを取り出し、顔を隠した。



涙をこらえ、気持ちをしずめて、ゆっくり、息を吐く。



もう何も言わない先生に一礼をして、そこから離れた。



もういい。



先週、手に入れたあの本と同じ。もう開くこともないまま、棚奥深くしまわれ、私の感情も心の、奥底に。そしてさっさと、



消えて、消えて、消えて…
消えて、消えて、消えて。



泡のようにプチンッと…………。

No.316 13/02/18 16:22
匿名0 



頭がぼーッとして、その夜は何をしたのか、覚えていない。



日常的なことを無難にこなし、お風呂に入って、先に休んだ。



こんこんと眠って、夢も見なかった。

No.317 13/02/18 20:34
匿名0 



斉藤先生に対する叶わない想い叶えてはいけない想い。



届かない
届いてはいけない想い。



だけどその前に何かが違う。



ひとりひとりが抱えた思いからのすれ違いからじゃなく、



斉藤先生が何を考えているのか、全く分からない。



ちゃんと向き合えない。
話ができない。



だから、キライ。
苦手な人…。

No.318 13/02/18 21:02
匿名0 












どうして
好きになったんだろう?

No.319 13/02/18 21:15
匿名0 



翌日、久保田先生のところに顔を出した。



「先生、コウタはどうですか?」



猫のエプロンが新しくなっていて、湯たんぽの可愛いカバー・ひつじやカエルをつけていた。



「田村さん、こんにちは。
コウタくん、さっきまでいましたよ。算数だったかな」



「そうですか…国語とかは?」


「うーん、来てるけど、授業の内容によるみたい」



「音読かな」



「藤原先生に聞いてみたらいいと思う」



確かに、、、聞いてみようかな。

No.320 13/02/18 22:40
匿名0 



5分休みになり、次の授業は何か分からなかったけど、私はコウタの教室に行ってみた。



前扉近くに先生の机があった。藤原先生の姿も見えた。



「先生…こんにちは」



私に気付き、藤原先生が廊下に出てきてくれた。



「お母さん、こんにちは。今日はどうしました?」



「さっきの授業、抜け出したみたいで…」



「ああ、ちょっと新しいところに入ったから難しかったようですね。お家で見てもらえますか?お母さんのご負担がふえてしまいますがお願いします」

No.321 13/02/19 04:05
匿名0 



「はい…あと国語なんですけど
コウタが苦手なのは音読ですか?」



「音読は少し苦手で頑張れるときと頑張れないときがあって、でもクラスの子どもたちはコウタくんに好意的です」



チャイムがなる。



「もし、時間があれば見ていきますか?次は国語で漢字をやります」



私は急に言われ、えっ!?と思い



「あ、いえ。今日はやめておきます」



とお礼を言って、帰ることにした。



「ありがとうございました。いつでも来てくださいね」



藤原先生はにこにこしていた。

No.322 13/02/19 08:12
匿名0 



そっか…学校公開以外でも授業風景を見ていいんだ。



何となく、公開以外の日は入れない気がしていた。



今日はちょっとドキドキしちゃったけど、改めて仕事がない日に入ろう。



コウタの様子が分かるもんね。



家に戻り、ひと休みでコーヒーを淹れた。



コーヒーの香りがマグカップから立ち込める。



少しリラックスしてから、リュックから携帯を取り出し、あることを検索する。



「10/20…」



壁掛けのカレンダーで予定を確認。特に何もなかった。



携帯をマグカップの横に置き、しばらくそれを見つめた。

No.323 13/02/19 19:13
匿名0 



夜、1件、メールを打つ。



“今度ある学校公開にコウタと行きます。よろしくお願いします”



新居先生に送った。



昼間、検索していたのは新居先生の学校のこと。



小山さんに言われて、新居先生のことを思い出して、とにかく特別支援級を見てこようと思った。



何も知らないで、モヤモヤしていたり、コウタを頑張らせてしまうのは良くないように思う。



動いていこう。
偏見なしに。

No.324 13/02/19 20:08
匿名0 



幼稚園時代、コウタの様子を聞いたとき、また家庭支援センターを紹介されたとき、私の中にそれに対する感情はなかった。



詳しく説明を求めることも、コウタの将来への展望を悲観することもなかった。



いちばん最初に小山さんに出会えたことも大きかったのかもしれない。



小山さんは私の小さな質問や疑問にいつも丁寧に答えてくれ、私の気持ちの安定をいちばんに考えてくれた。



“受容のプロセス”というものがある。



私の場合はコウタの発達の受容の
プロセスだ。

No.325 13/02/19 23:08
匿名0 



【受容のプロセス】



・ショック期
事実を知ってショックを受け、なすすべもなく呆然とする。



・否認期
「そんなわけない!」などと強く否定し、認めたくないという気持ちになる。



・混乱期
否認できない事実と受け止め、怒りや悲しみで心が満たされ、強く落ち込む。



・解決への努力期
感情的になっても何も変わらないと知り、前向きな解決に向かって努力しようとする。



・受容期
価値観が変わり、困り感を持って生きる子どもを前向きに捉えるようになる。

No.326 13/02/20 08:56
匿名0 



【受容のプロセス】



事実を知った後はしばらくの間、複雑な感情が激しく噴出する。しかし、その感情を十分に経験した後に、冷静になって現状を受け入れるように変わっていく。



冷静さは、感情を吐き出し、その感情をまるごと受け止めてもらうことで取り戻すことができるのだ。



簡単にまとめるとこうなる…。



小山さんや遠田先生には感情の吐き出しができ、受け止めてもらえ、斉藤先生にはできなかった。



たんに私が斉藤先生を信頼できなかったのか、斉藤先生に複雑な感情を見せることができないくらい私のプライドが高かったのか。



それとも、
解析不可能な恋のメカニムズか…。

No.327 13/02/20 09:36
匿名0 



新居先生にメールした数日後、めずらしく新居先生から返信があった。


“お久しぶりです。来ていただくのは嬉しいのですが、時間を取って話ができないと思います。それでも良かったら、お待ちしてます”


新居先生は私たちが行く理由を聞いて来なかった。
Cメールのときと同じ。
何で?じゃなくて、そのまま受け入れてくれた。



私なんかすぐにコウタに何で?どうして?って言ってしまう。



何も聞かないで受け入れるって案外、簡単なようで難しい。

No.328 13/02/20 09:38
匿名0 



また新居先生は正直に時間を取れないとも書いていて、私もそれは分かっていた。



けれど、近くの固定級のある小学校の学校公開等に行くには、私にはまだまだ勇気がいった。



何となくは分かっていても、やはり、何も知らない。

No.329 13/02/20 09:55
匿名0 



今度、コウタの授業風景や友だちとの関係も見てこよう。



少しのキッカケやアドバイスがあると何となく動ける。



自分で上手く気持ちの切り替えや動くことは難しいけれど、小山さんや遠田先生と少しずつ話しながら、コウタのこと、頑張ってみよう。



あまり人との付き合いや誰かと会うのを避けたりしていたけれど、私の中でむくむくと動いていけるエネルギーが充電されていくのが分かった。



人との出会い・縁は何もプラスなことばかりじゃない。



マイナスなこともある。
(相手と自分の相性や性格などもある)



私にとって斉藤先生との出会いは、負のエネルギーだったのだろうか?

No.330 13/02/20 10:15
匿名0 



10月に入り、朝晩の涼しさに初秋を感じ、家の近くのスーパーに出かけた。



散歩と思って、少し歩く。



歩道にそこだけピンク色が散らばっていて、何かと思い、拾って見ると小さな小さな花。



見上げると、私の背より高い石垣の上にピンクの小さな豆のような蝶形花の萩を見つける。



もう散りかけだったけれど、それはきれいで、私は立ち止まって風に揺れる萩を見ていた。



私はこんな風に季節を感じたり、萩の花をきれいと思う心の余裕もなくしていたことに気付いた。

No.331 13/02/20 10:28
匿名0 



あれから通級は在籍校訪問で、
1週間お休みだった。



遠田先生とはこの前から会わず、3週間ぶりに。



週1の通級はこういうときがタイム
ロスを感じる。



お迎えに行くと遠田先生がニコニコしながら、コウタと何か話していた。


河合さん陸人くんの姿がない。…お休みなのかな?



「お久しぶりですね」



私に気付いた遠田先生が言った。


「こんにちは」



私も久しぶりだに思った。
遠田先生とここでこうやって話をするのはどれくらいぶりだろう?



私もニコニコしてしまった。

No.332 13/02/20 11:01
匿名0 



「奥さん、お元気ですか?」



「元気元気。久しぶりの実家なんで、ゆっくりしてるみたい…毎日、電話するけど、食べたものに厳しいチェックが入って😭」



「先生のこと心配なんですね。優しい奥さんですね」



「もう、自分にはできた嫁さんでありがたいです😂」



奥さんに頭があがらない様子で話すけど、だけど、ちゃんと愛しい感じが伝わってきて、幸せそうだなと思った。



「あ、そうそう。おみやげ」



え?



ポンと渡されたのはデコポンのハイチュウだった。



「向こうで買った😤(スゴイだろ)」



え!?

No.333 13/02/20 11:13
匿名0 



デコポン味…確かコンビニで見たなぁ。黙ってよ😏。



「ありがとう、先生。…コウタ。
コウタ!」



校庭に下りてたコウタを呼び、ハイチュウを渡した。



「先生からおみやげだって。良かったね」



「デコポンだ♪コンビニにあー…」



「あーッ…と。コウタ、もう少し、先生と話すね」



慌てて、コウタの背中を軽く押し、遊んでおいでと言う。



うんとコウタはまた校庭に下りていった。

No.334 13/02/20 12:11
匿名0 



遠田先生を前に改めて、6月に藤原先生に言われた話を最初からしようと思った。



「先生、あのね…」



と言いかけたとき、通級用昇降口に斉藤先生の姿が見えた。



一瞬で、私の身体に緊張が走る。


あれ?私、大丈夫になったんじゃなかったっけ?



そのまま、斉藤先生がまっすぐこっちに歩いてくる。



私は言いかけたまま、遠田先生の背中越しに見える斉藤先生を見てしまっていた。



「田村…」



遠田先生が黙った私を不思議に思い、声をかけたそれと同時に、斉藤先生が



「田村さん」



と私を呼んだ。遠田先生が振り返る。

No.335 13/02/20 12:25
匿名0 



「斉藤先生…どうかしましたか?」



遠田先生が軽めにそう言うと、斉藤先生はちょっとと私を見る。


目をそらしたくなるけど、頑張って強く、斉藤先生を見返した。


「田村さん、ちゃんと話しませんか?」



私は何も言わず、口をつぐんだ。



「…話してください」



その声には強い語尾は感じない。私は斉藤先生を見たまま…。



何で“今”なんだろう?



そして、何て不器用な人なんだうと思った。

No.336 13/02/20 12:42
匿名0 



「ちょっと待ってください!」



遠田先生には話が見えないけれど、斉藤先生と私の様子がおかしいのは読み取れたらしい。



「話すって何のことですか?コウタのこと?」



「…私は遠田先生に話します。斉藤先生にじゃない」



「田村さん、前にも言ったけど、現場にいる自分たちがよく分かるんです。だから、ちゃんと話しましょう」



この人、私の言ったこと、聞いてた!?



「だから!遠田先生と話します!」



私はありったけの勇気を出して言った。



「斉藤先生は確かに通級でのご指導は長いでしょう。今まで、見てきた子どもの数もたくさんで、先生のお言葉もごもっともだと思います。…けど!」

No.337 13/02/20 13:40
匿名0 



「相手の心を動かすのは経験やその現場の長さじゃない。
言葉に寄り添うことや相手を思いやる気持ちでしょう?」



私は興奮しきっていた。



「先生はたくさんの親子を見てきてる。だけど、私はコウタが初めてで、コウタの親を10年してきただけです。4年生だって初めて。同じような悩みや考えが親や子どもから出るかも知れない。けど、その人たちだって、初めてなんです。
…いつだって、ちゃんと話を聞いて欲しいのはこっちですよ」



涙声になって、鼻をすする。

No.338 13/02/20 14:04
匿名0 



「…田村さん、」


遠田先生が何か言おうとするが、斉藤先生が手で制した。


「田村さん、見立てができるのは経験です。そんな甘いものじゃない。その子のこれから先に続く人生を考えたら、強く伝えないといけないこともある。
嫌われたり恨まれたり、そんなこともたくさん。
だけど、その子が頑張んなきゃいけないときに何でも親が肩代わりするの?」



「ぼくは今の話をしているんじゃない。子どもたちの何十年後を考えて話をしてる」

No.339 13/02/20 17:57
匿名0 




「泣いたって怒ったっていい。それをどれだけぶつけてもいいから、、、話すことをやめないで。ひとりで抱え込まないで」



いつか聞いた言葉…。



“…ちゃんと話を聞くから、田村さんの思ってること話して。ひとりで抱え込まないで”



夜に遠田先生と携帯で話したときだ。



ストレートに私の心に届いたあのとき、私は暖かいものを感じた。



今日は…?
斉藤先生の言葉は……



ただ、ただ衝撃的だった。

No.340 13/02/22 09:04
匿名0 



10月20日、新居先生の学校公開日。



しとしとと雨が降っていた。



先生の学校には電車で1時間近くかかり、最後はバスに乗る。



雨の車窓から流れていく見慣れない街並みや幹線道路に圧倒され、私は少し落ち着かなかった。


コウタは新居先生の学校ということもあって、私とは反対にウキウキ♪していて、時々、鼻歌が出たりしていた。

No.341 13/02/22 09:28
匿名0 



コンクリートの塀に囲まれたいかにも古めかしい学校で、建物の壁には窓をよけながらいくつもの配管やチューブが蔦のように這っている。


学校はL字型の造りで、校庭は小さく、外の体育倉庫やプールも端に寄せて作られ、何とも不思議な感じがした。


教室の中は木の優しい雰囲気で、後ろの壁は黒板になっており、恐らく、担任の先生による全然似てないドラえもんが書いてあって、なんだかほんわかする。


ロッカーも一見、手作り?と思うような木の箱が3段ほどで横並びし、誰が塗ったの?と笑ってしまうような塗り方で優しいパステルカラー。



車窓から見えていた圧倒されてしまうくらいの都会化された街並みからは想像できず、近代的なものは後からくっつけたような学校だった。

No.342 13/02/22 09:40
匿名0 



受付近くの壁に、校舎内の見取り図があり、新居先生のいる学級の場所を確認した。



学校公開だけあって、たくさんの保護者や地域の人が来ている。


私とコウタはあちこちの教室を廊下からちらちら見ながら、歩き、ようやく新居先生の学級についた。



教室は3つあり、その1つにみんな集まっていた。



全学年の子どもたちが20人ほどだろうか?



朝学活のようだ。



何となく、教室に入りづらく、廊下から見ていた。

No.343 13/02/22 13:18
匿名0 



と別室から出てきた人がいて、私を見つけると、中にどうぞと扉を開けてくれた。



ひゃー😫
ドキドキと心臓が大きく早く動いた。



中にも学校公開を見にきた保護者の方は何人もいて、教室の後ろから、朝学活の様子を見ていた。



私とコウタもその並びに立った。



窓際近くに新居先生がいたのを見つけた。



コウタがちっちゃく、胸の前で手を振る。



新居先生はニコッと笑って、会釈してくれた。



ものすごく久しぶりに、新居先生の“先生”をしている姿に会った。



何だか、くすぐったい。

No.344 13/02/23 11:20
匿名0 



朝学活、



今日の予定とその質問。
お休み調べ。
また、給食の献立。



それが終わると全体国語で、全学年で学習。



次の時間は3つのグループに別れて、算数だった。



私とコウタはよく分かっていないから、新居先生の指導グループのところに移動した。



まずは今日の算数は何をやるかから始まり、バラバラな学年の子たちが6人ほどいて、学習に入った。



大筋の目当てはあり、個々に合わせた学習段階でプリントをしている。



プリントが終われば、新居先生が確認して、その次のステップ。
分からないところや上手く行かないところは新居先生がその子について、丁寧に指導していた。

No.345 13/02/23 11:33
匿名0 



時間がゆっくり流れている感じ。


横目でコウタを見ると、新居先生の姿を見ていたり、プリントの内容を後ろからコソッと見ていたり…。



お母さん、ぼくアレ、できるよと小さな声で耳打ちしてきた。



だいたいの子がその日のめあてを達成した頃、チャイムがなる。



当番の子が終わりのあいさつをして、中休みに入った。



休み時間なので、中で見ていたお母さんたちのところに子どもたちが来たりしていたけど、授業中はちらちら後ろを見たりせず、集中して学習に取り組んでいたのが印象的だった。

No.346 13/02/23 11:45
匿名0 



次の授業の準備をした新居先生が来てくれた。



「今日はありがとうございます。どうでしたか?」



「ありがとうございました。
先生の指導されてる姿は久しぶりでした。なんか嬉しかった」



「(笑)こちらも照れてしまいますねー」



「1時間目の国語のときは雰囲気よくて、先生たちも子どもの言葉に素直に笑っていたり、いいね!ってほめていたり良かったです。
2時間目の算数は個々でプリントが違って、でも新居先生がひとりひとり丁寧に見られていたのがすごいなぁって」



「コウタはどうだった?」



「先生、かっこよかった♪」



ニコニコ元気にコウタが言うから、新居先生も私も笑ってしまった。

No.347 13/02/24 13:30
匿名0 



新居先生と少し話して、先生は仕事に戻った。



私とコウタは雨で外では遊べないから、教室内で静かに本を読んだり、おしゃべりをしたり、先生たちと話したりしている様子を見ていた。



暖かい優しい雰囲気に私の緊張もとけ、笑いのある穏やかさに安心感が持てた。



…自分の肌で感じるって大事だわ。



今回の目的はもう達成したように思えた。



「コウタ、帰ろうか」



うんとうなづくコウタと2人で新居先生にあいさつをして、廊下に出る。



さっきより、廊下には人があふれていた。

No.348 13/02/24 13:44
匿名0 



帰りかけて、新居先生に相談したいと伝えてなかったことを思い出した。



コウタに待っててと言うと、私は人の間をぬって戻る。



教室の中に新居先生を見つけると、先生は保護者の人と話していた。



ニコニコ笑って、話す新居先生。
子どもに声をかけられ、今、話しているからね、待っててと答える。



保護者の人と話が終わると、さっきの子どもに声をかける。



そんな様子を見ていて、新居先生は1つ1つのことを丁寧に対応していると思った。



私も少しの間、待つことにした。

No.349 13/02/25 13:08
匿名0 



子どもとの話が終わり、新居先生が私に気付く。



スッと私の隣に来た。



「田村さん」



「すいません…あの、相談がありまして、できたら新居先生に相談にのっていただきたいのですが」



「いいですよ。今日ですか?」



「今日はお忙しいと思いますので、改めて…先生のご都合で構いません」



新居先生はちょっと考えて、



「すいません…ちょっと今は分からないです。あとから連絡しますね」



「ありがとうございます。よろしくお願いします」



私は先生にお礼を言って、教室を後にした。

No.350 13/02/25 13:31
匿名0 



コウタが遅いッと怒っていた。



「ごめんごめん…さ、帰ろう」



と歩き出すと、メガネをかけた可愛らしい女性があのう…と声をかけてきた。



私はドキリとする。



「この学校の人ですか?」



うわ😫何か怒られちゃうのかな。


「えと、いえ。違います💦」



私は慌てていて、しどろもどろになる…。



「新居先生の前の学校の人?」



…え?



私は驚いて、相手の女性をじっと見てしまった。

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