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悲しい女

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秋子( yuBCh )
12/02/20 07:31(更新日時)

短編小説です…

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No.1698360 11/11/03 02:34(スレ作成日時)

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No.401 12/01/29 20:54
秋子 ( yuBCh )

まさか…

あいつ…

まさか…

あの可愛い園美ちゃんの腕にあんなものを注射する気じゃ?!


園美ちゃん!

園美ちゃん!

俺は頭の中で

呪文のように何度も何度も繰り返し園美ちゃんを呼び続けた

そしていきなり立ち止まると

園美ちゃんに電話をかけていた…


でも…なんて言えばいいんだろう…

俺の妄想?

夢?

こんな昼間に夢なんか見る訳ないだろう

でも…妄想なら

俺は完全に園美ちゃんに嫌われる…

No.402 12/01/29 20:59
秋子 ( yuBCh )


園美「もしもし…」

小村「…園美ちゃん…俺…小村です…」

園美「…あぁ…小村さん?どうしたの?病院分かった?まさか迷子になっちゃったとか?…」

園美ちゃんは呑気に笑っている…

小村「実は…話しがあって…」

園美「…目の話し?結果分かったの?…あっじゃ…昼休みに…会社の近くの…」

俺は園美ちゃんが指定してきたファミレスへ急いだ…

No.403 12/01/29 21:38
秋子 ( yuBCh )

ファミレスへは早く着いてしまった

俺は食欲もなく珈琲だけ頼んだ…


水を持ってきて、注文を聞いたウエイトレスが

俺の顔をじっと見ている…

…あッ俺あわてて眼帯忘れてた

酷い顔してんだろな~俺…


すると…

ウエイトレスが画面に浮かび上がった


ウエイトレスらしき女の子の横にはベッドがあり、酸素マスクをして眠っている人がいる…お父さんだろうか?


俺はウエイトレスに聞いてみた

小村「…あの…もしかしてお父さん病気?…」

ウエイトレスは驚いて…

「…どうして知っているんですか?父と…お知り合いの方ですか?」


小村「…いえ…ちがいます…なんとなく…」

ウエイトレスは困惑顔でやがていなくなった

No.404 12/01/29 21:41
秋子 ( yuBCh )

そして隣のボックスに、2人の男が向かい合って食事をしている


俺を見てニヤニヤしている


話の一部だけ聞こえた


「…パンダ…」

パンダ?

俺のアオアザを笑っているのか?

俺はそいつらを見た

またまた映像が…
二人で船釣りに行って…鯛を釣り上げたところだ…


小村「…おおきい鯛が連れたみたいですね~」


男達は驚いて、ゴホゴホと

食べ物が気管に詰まってむせている…


驚いているのは俺も同じだ…

やっぱり俺は…

見えるんだ…

やがて園美ちゃんがやって来た…

No.405 12/01/29 22:04
秋子 ( yuBCh )

園美「…お待たせしちゃって…」

園美ちゃんはパスタを注文した


俺は何から話そうか頭の中で整理しようとするが…


ただ…黙って園美ちゃんの顔を見ているだけだった


園美「…それでどうだったの?…あのお医者さんはねぇ…すごく優秀でね…弟も……」


何も知らない園美ちゃんは、あんな恐ろしい男を優秀だなどと…


小村「…園美ちゃん!…園美ちゃんの彼氏ってあの先生だったの?…」

俺は苛つきながら言った


園美「えッ?…なんで知ってるの?…」

園美ちゃんの口元は幸せそうに笑っていた…

No.406 12/01/29 22:16
秋子 ( yuBCh )

小村「…あの男は…ダメだよ園美ちゃん…あの男は、園美ちゃんの他にも女はいるし……それに…」


園美「…小村さん…一体なにが言いたいの?先生に女?…まさか…何を根拠に…」


園美ちゃんは顔が見る見るキツくなった…


小村「…俺には見えるんだ…いい先生なんかじゃない…覚醒剤も打ってるし、恐ろしい人なんだってば!…」

あぁ言ってしまった…

No.407 12/01/29 22:26
秋子 ( yuBCh )

園美「…女?…覚せい剤?…」


園美ちゃんはショックだろう


悲し過ぎるよな…

俺だって言いたくなんかない…

だけど…

だけど…

園美ちゃんの為だ…

園美ちゃんを守りたいんだよ…


だが…

苦しい胸の内の俺の期待を見事に裏切って園美ちゃんは言った


園美「…小村さん…私に振られて傷ついたかもしれないけど…なにも…そこまでして…嘘を並べ立てなくても…」


園美は、笑い出した!

笑い事じゃないのに…

No.408 12/01/29 22:39
秋子 ( yuBCh )

小村「…園美ちゃん…園美ちゃんは可愛いから色んな男が言い寄ってくる!でも…いい男だから医者だからって、必ずしもいい人間とは限らないんだよ!…もっと内面を見なきゃダメだよ!…」



あれ?

俺…やっぱり振られた男のヒガミ?

そう思われた?


園美「…もういいわ!…小村さんって…最低ッ!」


や…やっぱり

当たりだった…

園美ちゃんの頼んだパスタ

遅すぎだよ…

園美ちゃんは、後ろ姿に怒りを見せたまま

出て行った…

No.409 12/01/29 23:01
秋子 ( yuBCh )

俺は部屋へ帰ってずっと考えていた…


俺はなんて言い方が下手くそなんだろう…


園美ちゃんにこれ以上なにか言ったら


俺は変態ストーカーで捕まるだろうな~


壁の鏡で顔を見ながらそう思った


だが…

…俺の見えたものが本当なら

園美ちゃんはマジで危ない

どうすればいいんだろう

俺は頭を抱えて、髪の毛をポリポリかきむしった…

No.410 12/01/29 23:26
秋子 ( yuBCh )

俺はなんとなく携帯の写メを見ていた

園美ちゃんの顔があった

いつか園美ちゃんの友達のA子に頼んで写して貰った…

俺はたまにそれをボケ~と眺めてる時があった


いかにも、小心者でモテない男のする事だよな~

そう苦笑いしながら園美ちゃんを見ていたら


…なんと

映ってしまった

また見えてきた!…

写真でも見えるんだ!


それは、園美ちゃんがあのイケメン野郎と車に乗っている映像だった!

No.411 12/01/29 23:35
秋子 ( yuBCh )

二人は楽しそうに話している…

車が走っている所は俺もよく知っている馴染みの街並みだ…

どこへ行くのだろう…

右折した…

あッ…そっちは!ホテル街だ!

園美ちゃん!

ダメだよ!

ダメだっつうの!


俺は部屋を飛び出した!…


No.412 12/01/30 00:04
秋子 ( yuBCh )

俺はただ夢中でタクシーを拾って

そのホテル街へ向かった…

見える…

ホテルの名は

…サクラ…
113号室


小村「……ホテルさくらへ行ってくれ!…頼む急いでくれないか!」

ホテルで、これから二人は一体なにをするのか

ホテルですることといったら…

あぁ!嫌だ!!

俺は園美ちゃんの淫らな姿なんか見たくもない

だが…

俺は携帯の園美ちゃんを

祈るように見た…


やがて…

怪しげな部屋の中へ入って行く

二人の姿が…見えてきた

No.413 12/01/30 00:28
秋子 ( yuBCh )

タクシーはホテルへ着いた


俺の心臓は戦闘態勢に入った

バクバクいってる!

二人はベッドに腰掛けて

イケメン野郎は園美ちゃんの手を握り

耳元でなにか話してる

園美ちゃんの嬉しそうな顔に

俺は苛ついた


やがて…イケメンは園美ちゃんを押し倒した


クソッ!


キスしている…


一分は経過した


な…長すぎるじゃねぇかッ!

俺は携帯をパカッと 閉じた!

No.414 12/01/30 00:36
秋子 ( yuBCh )

もう止めた!

アホらしい!

園美ちゃんがどうなろうが

別に俺の女じゃねぇし

なんで俺がこんな所で

二人のイチャイチャを見てなきゃねぇんだよ!

俺は帰る!!…

ホテルを後にして歩き出した

No.415 12/01/30 00:51
秋子 ( yuBCh )

ふと注射器が頭に浮かんだが…

医者が注射器持っていても別に不思議じゃない

誰かに、栄養剤でも打ってやってたのかもな~

女の一人や二人いたって別に、それは金持ちの世界なら普通の事なのかも知れない…

所詮、俺みたいなモテない人間とは住む世界が違うっつう事なんだ…


俺はポケットに携帯を突っ込んで


歩き続けた…

No.416 12/01/30 01:06
秋子 ( yuBCh )

しばらく歩いて…

ポケットの携帯のバイブが振動を伝えている…


着信を見ると

園美ちゃんだ!

あわてて俺は出た
小村「…もしもし…園美ちゃん?」

園美「……」


小村「…どうしたの?園美ちゃん!…」


携帯を耳に押し当てた…

「イヤ…ヤメテ…」

かすかに聞こえる園美ちゃんの声だ!…

「ドタバタ…ガチャン…」

部屋で暴れる音…
どうなってる?


ホテルで一体なにが?

俺は震える指で携帯の園美ちゃんを捜した

見えた!…

下着姿の園美ちゃんはイケメンに羽交い締めにされ


ベッドのシーツには注射器が転がっている


俺は来た道を引き返した!

No.417 12/01/30 01:21
秋子 ( yuBCh )

俺はホテルへ駆け込むと


従業員へ警察へ連絡してくれるように頼んだ


そして俺は115の部屋を探して


ドアを思いっきり叩いた


ドンドン!

ドンドン!

「園美ちゃん!園美ちゃん!…」


ガチャ…


中から下着姿の園美ちゃんが出て来た


そして、なんとこの俺にしがみついて泣き出した


俺はジャンバーを脱いで 園美ちゃんにかけてやった…


小村「…もう大丈夫だよ…大丈夫だよ…」


俺まで泣けてきた…


やがて警察が来てイケメン野郎は捕まった…


イケメン野郎にはもう未来はないだろう


そう俺は思った…

No.418 12/01/30 01:40
秋子 ( yuBCh )

それから俺は、別の眼科へ行った


網膜剥離で手術になった


術後は、苦しい態勢で何日も耐えなければならなかった…


だが…園美ちゃんは、毎日俺に会いに病院へ通って来てくれた


おかげで、俺の視力はドンドン回復していった


いつの間にか、あれはもう見えなくなっていた


園美ちゃんからバレンタインデーにチョコレートを俺は貰った…


そして…

そして…


園美「これからもずっと一緒にいたい…」


そう園美ちゃんは俺に言ったのだ…

俺は世界で一番の幸せ者だ…





…完…

No.419 12/01/30 01:59
秋子 ( yuBCh )

こんばんはヽ(^^)

訂正があります

ホテルさくら113号室

いつの間にか115号室になっていました
(゚Д゚)

ごめんなさい

そして…おやすみなさいませ

(-_-)zzz

No.420 12/02/06 21:59
秋子 ( yuBCh )

…第16章…



…笑う女…

No.421 12/02/06 22:08
秋子 ( yuBCh )

夜…大雪注意報が出ていた

朝…

「おい!すごい雪だぞ!…これじゃ車が出れないだろう!…早くどうにかしろ!…」


夫の靖彦は不機嫌そうに部屋へ戻って行った


幸恵は長靴を履き…ジャンバーを羽織ると


ズボズボと雪をこいで


車庫前の積もった雪をスコップで掻き始めた


時々吹きつける突風に身をかがめて収まるのを待った

「おい!早くしろよ!会社遅刻するだろ……トロトロすんな!…」


痩せた幸恵が、吹雪と除雪に格闘しているにもかかわらず


大の男の靖彦はぬくぬくと、家の中から早くしろと怒鳴っている


やっと車一台通れる位の幅ができあがると


靖彦は幸恵がこいで来た足の穴に皮靴を突っ込み、


バランスをとりながら出て来た…

そして、寒そうに背広のズボンについた雪をはらうと…車に乗り


後輪を左右へ滑らせながら出て行った

No.422 12/02/06 22:18
秋子 ( yuBCh )

幸恵は靖彦をろくに見送りもせず

黙々と除雪を続けた


一時間ほどしてどうにか雪を片付け終えると

幸恵の肩も腰も悲鳴をあげ、クラクラとめまいがした

部屋へ入ると

洗い終った洗濯物が、そのまま籠からあふれている…

パジャマ姿の姑の敏子が

加えていた煙草を指に挟んで立っている

姑は55歳

どっぷり脂のついた頬とくっきりした二重顎

煙を吐き出したその口で言った

敏子「幸恵さん雪かきご苦労さま…
でも…私の若い頃は朝早く起きてすませたわ…
あらあら…洗濯物もしわくちゃね…」


幸恵「はい…すみません…」

幸恵はそう言うと

洗濯籠を持ち上げ、洗濯機に放り込み

再びスイッチを入れた…


敏子を見ると

リビングのソファーにもたれて

珈琲を飲みながら韓国ドラマを見ている

No.423 12/02/06 22:30
秋子 ( yuBCh )

家事を終え、二階の窓から街を眺めると

いつの間にか青空が広がり一面の銀世界で眩しかった…


敏子「幸恵さん!ちょっと出かけてきますよ!」

敏子が下から叫んでいる


幸恵「はぁ~い」

昨日はダイエットでスポーツクラブへ行き…

今日は友達とランチに行くらしい…


靖彦の給料はボーナスも含め全て敏子が管理している


それは幸恵が嫁に来る前からの習慣であり

嫁が来たからといって改善される事はなかった

だから幸恵は靖彦の給料の額を未だに知らない

月に、食費・備品・として六万、敏子から渡されるだけだ…


敏子は夫の遺族年金、そして靖彦の給料を自在に扱っている


幸恵が下に降りると敏子が派手な毛皮のジャンバーを着て

車に乗り、出かけて行くのが見えた

…ふと見ると

テーブルには敏子が使った花柄の珈琲カップがあり

飲み残しの珈琲が少し入っている

幸恵はそれを手に持つと

台所のシンクに叩きつけた

花柄の陶磁器は粉々に壊れた…

No.424 12/02/06 22:36
秋子 ( yuBCh )

夜…

なんとなく感じる気配…

隣のベットで寝ていた靖彦が


幸恵のベットへ入ってくる


寝たふりをするが

靖彦「おい…幸恵…」

靖彦にゆさぶり起こされた


靖彦は幸恵の頭を持ち上げると

ひざまづいて自分のそれに幸恵の顔をあてがわせた

幸恵はそれを口に入れる


靖彦「…ァ……ァ…お前は下手だなぁ…もっと舌を使え‥」


お前は?

一体誰と比べているのか

ヘドが出そうな、その行為をしばらく続けると


靖彦「もういい!…お前じゃ満足しない…なんてつまらない女だ………」


そう言うと下着を履き部屋からぷいと出て行った

やがて車で出て行く音が聞こえた

No.425 12/02/06 22:42
秋子 ( yuBCh )

朝…靖彦はまだ帰っていない

ふと外を見ると

昨日ほどではないが雪は積もっていた

敏子に嫌みを言われたくない

幸恵は起き上がった

玄関をゆっくり開ける

外は暗く、完全防備でも寒さが深々と伝わってくる


ガサガサ音がして振り返ると


向かいに住む中畑がいた

中畑は自分の除雪を終えスコップを片付けようとしていた…


中畑「おはようございます…降りますね~」


幸恵「…ほんと毎日ですね~もう終わったのですか?早いですね~」

中畑「…手伝いますよ…」

幸恵「…えっ…そんな悪いですよ…」

中畑「まだ出勤には早いし…」


そう言うと中畑は幸恵の家の前・車庫の前

黙って雪を片付け始めた…

中畑は子供二人と妻との四人家族

休日には車で何処かへ出かけて行く

仲のよい4人の姿を幸恵は二階の窓からよく見ていた

二人はただ黙々と除雪し続けた

No.426 12/02/06 22:49
秋子 ( yuBCh )

やがて雪も片付き

ジャンバーの下から汗が吹き出してきた


幸恵は家の中からコーラを二本持ってきて一本を中畑に渡した

幸恵「…ありがとうございました…助かりました…」

中畑「…あぁどうも、…」


幸恵「…除雪は嫌だけど、終わると気持ちいいですね…」

中畑「ほんと…また降るでしょうけどね…」

中畑はフーっと煙草を上手そうに吐き出した

やがて空に朝日がさしてきた

中畑「…じゃ…」

中畑はスコップを持って自宅へ入って行った

寡黙で優しい中畑…

こんな優しい男性もいるんだ…

私はどこで間違えたのだろう

夫の靖彦は結婚してから、変わったのではない

結婚前からこういう性格だった

それを自分は見破れなかったのだ

中畑の奥さんは幸せなんだろうなぁ…

幸恵は羨ましかった

No.427 12/02/06 23:06
秋子 ( yuBCh )

中へ入ると敏子はもう起きていた…

幸恵「おはようございます…除雪終わりました…」

敏子はテレビ画面から目を離さずに
敏子「…そう…あなたは子供がいないから…楽よね~」

また嫌みたっぷりにそう言った

…その時…

靖彦が玄関の戸を開けリビングへ顔を出した

敏子「あらヤッちゃん(靖彦)?こんなに朝早くからどこ行ってたの…」

昨夜…靖彦が出かけたのを知らない敏子が不思議そうに聞いた

靖彦「…あッ…ちょっと煙草買いに…」

明らかな嘘だったが、靖彦は二階へ上がって行った

敏子「……煙草ぐらい買い置きしておけばいいのに…やっちゃん寒かったでしょうに…可愛そう…」

敏子は階段を見上げている


可愛そう?


暗いうちから除雪をしている私は可哀想じゃないのか?

結婚した時はあんなにいい夫、いい姑をアピールしておきながら

気がつけば

思いやりの欠片もない、ただのモラハラ親子だった

情けなくて…呆れるが

真紀子は笑顔で言う

真紀子「…はい今度から買い置きしておきます…」


敏子は満タンの珈琲ポットを片手に持ちながら

敏子「…あのカップどこやったかしら…」

ブツブツ言いながら食器棚をあっちこっち探している

No.428 12/02/06 23:09
秋子 ( yuBCh )

それから雪が降った朝は

中畑が幸恵の雪かきを手伝ってくれるようになった

申し訳ないとは思いつつも

幸恵は中畑の優しさが嬉しくて、断りきれないですっかり甘えてしまっていた

そしてそれはやがて二人だけの日課になって行った…

雪かきが終わるとどちらからともなく飲み物を持ってきて一緒に飲み


夜が明けるまでのほんの短い間…

話し込んだ

たいした会話ではなかったが

幸恵にとって楽しいひとときだった…

No.429 12/02/06 23:22
秋子 ( yuBCh )

そんな事がつづいたある日

いつものように二人は除雪を終えて…

中畑が煙草に火をつけようとするが

ライターの火は風で力なく消えた

何度かその仕草を続ける中畑の手に

幸恵の手も一緒に風よけに重ねようと手を添えて…

二人が接近したその時だった

中畑家の玄関が開き

中畑の妻が上着も着ないまま出てきた

幸恵が挨拶しようとして構えた時

妻は…

幸恵の頬を…

ピシャリと叩いた!

あまりに突然の事に驚いてなにがなんだかわからないまま

頬を押さえると

中畑の妻は興奮して言った

「人の旦那に色目使うんじゃないよ!!!…」

強い言葉だった…

中畑が妻の腕を引っ張り

中畑「すみません…こいつは、勘違いしてるんですよ…」

だが妻は怒りが治まらない様子で

「ちょっといい女だと思って…いい気になってんじゃないの?!!…」


予想外の冷たい言葉を投げつけた


幸恵「誤解です!…そんなつもりありませんから…」

中畑は幸恵に何度も謝り…

妻をなだめ…

やがて二人は中へ入って行った…

雪の上には中畑のライターが落ちている

幸恵はショックでしばらくその場を動けなかった…

No.430 12/02/06 23:42
秋子 ( yuBCh )

それから雪が降っても

中畑は夜中に雪かきを済ませているのか

家の周りは整然としており中畑の姿を見る事はなかった…


ふと車の音がした
靖彦が帰ってきたのだ


最近靖彦が不可解な行動をするようになった

いつも通りに会社から帰宅した後

風呂へ入り夕飯を済ませると

何かに理由をつけては出かけて行くようになっていた

No.431 12/02/06 23:44
秋子 ( yuBCh )

車から降りる靖彦に

真紀子「…お帰り…」

そう声をかけると

靖彦「旦那が朝帰りしても、なんとも思わんのか?…呆れる…」

そう言うと靖彦は雪の上に

ぺッ…とツバを吐いて中へ入って行った…


幸恵は中畑の家の玄関をチラッと見て

玄関の戸を閉めた

No.432 12/02/06 23:59
秋子 ( yuBCh )

家へ入ると敏子がいつものパジャマ姿で靖彦を見上げ

敏子「やっちゃん…夜いつもどこへ行っているの?」

最近の靖彦の行動に疑問を持ち、思い詰めていたのか敏子がそう聞いた

すると靖彦は幸恵を見ながら

靖彦「…こんな陰気臭い家になんかにいられないよ!…俺だって楽しい所に行きたいからね…」

さも敏子に同調して欲しそうに言ったが


敏子「…そんな、やっちゃんまさかあなた…………?」


まさかあなた…浮気でも…と言いたかったのだろうか?…

だが、敏子は幸恵を見て言葉を飲み込んだ

靖彦は二階へ上がった

幸恵は靖彦の後ろ姿を見ながら

顔を両手で覆い泣き出した

敏子「ゆ…幸恵さんなに泣いてるの?…あなたが陰気だから…靖彦だって…」


靖彦だって?…浮気の一つや二つと言いたいのだろうか…


幸恵「…お義母さん…やっぱり…靖彦さんは不倫してるのでしょうか?…ウッ…」

幸恵は泣き続ける

敏子「あなたねぇ…浮気は男の甲斐性よ…妻なら黙って耐えなさい!!」


江戸時代か明治時代の話しじゃあるまいし

笑い出したい腹の中を必死で堪えながら幸恵は続けた

No.433 12/02/07 00:06
秋子 ( yuBCh )

幸恵「…もし…離婚とかって…ウッウッ…私はどうすればいいんですか?慰謝料…頂だけるのでしょうか?……お義母さん!!…」


敏子は唇を震わせながら

敏子「…慰謝料?慰謝料貰って靖彦と別れるつもり?…なんて怖い人なのあなたは!!…!」

敏子はそう言い切ると、逃げる様に自分の部屋へ入って

バタンとドアを閉めた


幸恵は…

ニヤリと笑って、朝食の支度にとりかかった

No.434 12/02/07 00:15
秋子 ( yuBCh )

そして…

ある昼下がりの買い物での事だった…

スーパーの中に中畑の、あの妻がいた…


幸恵に気がつくと一瞬たじろぎ、目が丸くなっている

その妻の顔をまじまじと見ると

顔の真ん中でアグラをかいたような大きな鼻…

やたら小さい目…

スタイルもいまいちだった

幸恵「…こんにちは中畑さん…先日は失礼しました」

意外に陽気な幸恵に

呆気にとられたのか

妻は素っ気なく通り過ぎようとした

その背中に幸恵は言葉を突き刺した

幸恵「…その顔じゃ旦那さんが私に言い寄るのも仕方ないわね~ぷっ…フフフ…」

怒り顔で振り返った妻に…

幸恵は髪をかきあげわざと色っぽい顔をして見せた

妻の小さい目はつり上がりまるでキツネのようだ…


「あ…あなたは…なんて…失礼な人なの?!」

幸恵は含み笑いを浮かべた…

そして頭を下げて立ち去り…

スーパーを出て大通りでゲラゲラ笑い出した…

No.435 12/02/07 00:40
秋子 ( yuBCh )

申し訳ありません

また眠くなりました…

また明日書き込みます

読んで下さって
とても、とても、嬉しく思います

ありがとうございます…

では…では…

また明日✋

オヤスミナサイませ

m(_ _)m💤

No.436 12/02/07 18:19
秋子 ( yuBCh )

お詫びです

一部 幸恵の事を真紀子と記載してしまいました

真紀子は登場しておりません


ごめんなさい

m(_ _)m

No.437 12/02/07 18:24
秋子 ( yuBCh )

そんなある日…

幸恵は久しぶりに美容院へ出かけた…

美容院の鏡はどうしてこんなに大きいのだろう


その道路をはさんで向かい側には

高級料亭『牡丹』があり

その入り口が鏡にはっきり映っている…

そこに一人の中年の女が派手な毛皮のジャンバーを着て

誰かを待っているのか…

寒そうに右を見たり左を見たりしている


それが姑の敏子だと気がついたのは

幸恵がこの鏡の前に座り…

美容師がロッドを巻き終わって

持ち場を離れた時だった…

No.438 12/02/07 18:28
秋子 ( yuBCh )

友達と買い物へ行くと言って出かけたはずの敏子は

いったい誰を待っているのか

幸恵が敏子に気がついてから

かれこれ10分は経過していた…

やがて、敏子は誰かに手を振り

ここ… こっち…
そう叫んでいるようだ


待ち人…それは…

若い男だった…


年頃は…靖彦と同じくらいかそれよりもっと上だろうか?


栗色のツヤツヤした前髪をたらし垢抜けた横顔…



ホスト風だ…


二人は料亭『牡丹』へ入って行った…

No.439 12/02/07 18:40
秋子 ( yuBCh )

それから一時間ほどして幸恵は美容院から出た


二人が牡丹から出た様子はない…

幸恵は隣りの本屋で立ち読みをして
牡丹を見張っていたが


諦めて、文庫本を一冊買って本屋を出ようとした時


遭遇した…

不釣り合いに腕を組み歩く二人

その後を幸恵はつけて行った…


やがて二人が何処かへ入って行き

その姿は消えた


その建物はホテルだった…


やっぱり…

敏子は…幸恵が見ているなどとは夢にも思っていないだろう


…偶然とは怖ろしいものだ…

幸恵はそう呟いてニヤリと笑った…

No.440 12/02/07 18:45
秋子 ( yuBCh )

そしてある夜の事だった…

また靖彦が何処かへ出かけて行った…

幸恵はそれを窓から見送った…


敏子「…靖彦も寂しいのね…楽しみぐらい持たないと…」


幸恵「…お義母さんも…お楽しみがありそうですものねぇ…」

意味あり気に幸恵は敏子に言った

そして反応を伺った

敏子「…楽しみ?私の?…」

敏子はあいかわらず高飛車だが…

幸恵「…お義母さんも…お寂しいのですよね…」

敏子の顔色が ガラリ変わった

No.441 12/02/07 19:51
秋子 ( yuBCh )

敏子「…なにを馬鹿な事言ってるの?!……あなたとなんか話したくもないわ!…」

話しを終わらせたい敏子は立ち上がり

自分の部屋へ行きかけたが…

幸恵はそれを止めるように言った

幸恵「…見ましたよ!…牡丹……それから…フフフ」

敏子は立ち止まり体中が固まったようだ


幸恵「…いえ…いえ…お義母さんは靖彦さんとは違って、独身ですもの…」


敏子「な…なにが言いたいの?」

幸恵「…やだ…大丈夫ですよお義母さん…中高年女性と、息子ほど年が違う男の人と愛し合うのは…今時全然ありですよ…なんにも悪い事じゃありません…」

敏子「…」


幸恵「……ただね…」

No.442 12/02/07 19:55
秋子 ( yuBCh )

敏子「…ただ?…ただ…なんです?!!」


怒りと不安が入り混じって混乱した敏子だった

幸恵「…お義母さん…靖彦さんは?知ってるんですか?……あぁ…靖彦さんは公認だったのですか?…」


敏子「いえ…知らないわ…靖彦には…靖彦には…言わないで!…」


高飛車な天狗は鼻が折れ

幸恵にすがるようにそう言った

完全に今までとは立場が逆転した

断然有利な幸恵は味わった事のない快感に酔いしれていた…

No.443 12/02/07 20:03
秋子 ( yuBCh )

幸恵「…あぁ…やっぱりね……分かりますよお義母さん……息子には知られたくないですよね~」


敏子「…止めて…もう止めて…」

幸恵「…お義母さん…もし靖彦さんが知ったら…ショックでしょうね…靖彦さんお母さん大好きですもんね…」

緊張した沈黙の時間が流れた…

やがて大きく敏子は深呼吸すると


敏子「…幸恵さん…靖彦に黙っていてくれたら…私…なんでもします…」


幸恵「やだ…なにを仰るのお義母さん!………」


横目で、鋭く幸恵を睨むと

敏子「…で?…いくら欲しいの?……」


真剣にそう言った…

No.444 12/02/07 20:12
秋子 ( yuBCh )

幸恵「お金?…まるで口止め料みたいじゃないですか?…」


敏子「…はっきり言いなさい!…いくら欲しいんですか?」


幸恵「…仕方がないですね~お義母さんのお願い…最後に聞いてあげないと…」


幸恵は人差し指を一本立てた

敏子「…一千万!?…」

幸恵「これで、靖彦さんに知られずに済んだら…安いものですよ…ねぇお義母さん…」


敏子「…分かりました…でもあなた靖彦からも慰謝料とるつもり?」

幸恵「…靖彦さんの不倫?…全然気になりません…私…靖彦さんを愛してませんもの…フフフ…
それに私は…出て行きますから…あとの事はもう関係ありませんので…」


やがて、話しが終わり幸恵が二階に上がると


唸るような敏子の泣き声が聞こえてきた…

No.445 12/02/07 20:18
秋子 ( yuBCh )

やがて…

ある日、幸恵の銀行口座に振り込みがあった…

確かに一千万…敏子から振り込まれていた…

幸恵の結婚生活に対する精神的慰謝料…


幸恵は銀行から外へ出て

笑い出した

笑いが止まらなかった…

あはははは~

あははははは~


その時…

幸恵の後ろ、右わき腹に激しく熱い痛みが体を突き抜けた…


振り返るとあの中畑の妻が

刃先が真っ赤に染まった刺身包丁を持って立っていた…




妻「…いくら…いい女でも…死んだら…終わりだよねぇ……フフフ…あははははははは…」


幸恵は血で染まった雪の歩道に


ゆっくり倒れた…


…完…

No.446 12/02/07 22:16
秋子 ( yuBCh )

秋子です✋

読んで下さってる方へ…

物語の殆どが妄想でありフィクションです
これが小説と呼べるほどのものかどうか

本当は自分でも恥ずかしい限りです
色んな女を書くたびに、まるで自分がその女達に生まれ変わり、魂が乗り移るような、ハラハラ・ドキドキする感覚を味わいました

とても楽しいかったです(*^_^*)

それで…

今回はこれで終わりにしたいと思っております

読んで戴きまして心から感謝いたします

皆様も風邪などひかれませんようにお体に気を付けて下さいませ


では…では…

またいつかどこかで…

m(_ _)m

  • << 450 主さん😃 いつも楽しく読ませて頂いてます😃 出来れば 悲しい女2も書いて頂いたら嬉しいです😊

No.447 12/02/08 08:47
秋子 ( yuBCh )

残りのレスを使い
悲しい女 全16

レスを解放いたしましたので
どんな事でもかまいません
感想をお寄せ下さいませ


m(_ _)m

No.448 12/02/08 08:52
あい ( 30代 ♀ CmnXh )

>> 447 いつも楽しみに更新待ってました。終わってしまうなんてとても寂しいです。是非また近い将来にでも書いて下さいね。待っています。

  • << 451 あいさん ありがとうございますm(_ _)m また書いてもいいですかね? あまり自信がなかったのでとっても嬉しいです ありがとうございました(*^_^*)

No.449 12/02/08 08:59
恋歌 ( 40代 ♀ uU5Ah )


今、『そこまで書いといて放置かい😥』の方がほとんどの中、主様の物語は、短編でありながらも、内容が色濃く、本当に、面白かったです😃

いつも、半身浴をしながら、ハラハラ💖ドキドキ❤して読んでました😃

楽しみしていたスレが終わってしまって、淋しいです😢


  • << 457 恋歌さん お礼が遅くなってごめんなさい なるべく早く読み切れるようにと短編にしました ただ、私自信経験もなく想像だけの文章なので どういう風に伝わるか心配でした 読んで戴いて、本当にありがとうございました m(_ _)m

No.450 12/02/08 09:27
ふぅ ( 20代 ♀ lkTPh )

>> 446 秋子です✋ 読んで下さってる方へ… 物語の殆どが妄想でありフィクションです これが小説と呼べるほどのものかどうか 本当は… 主さん😃
いつも楽しく読ませて頂いてます😃
出来れば 悲しい女2も書いて頂いたら嬉しいです😊

  • << 458 ふうさん お礼が遅くなってごめんなさい また書きたいと思ってしまいました 読んで戴いてありがとうございましたm(_ _)m
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