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ベビーカーの周りに家族が不在
学校休むか休まないか…
彼女になってほしいと思われるには

悲しい女

レス500 HIT数 115593 あ+ あ-

秋子( yuBCh )
12/02/20 07:31(更新日時)

短編小説です…

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No.1698360 11/11/03 02:34(スレ作成日時)

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No.101 11/11/14 13:48
秋子 ( yuBCh )

悦子「いつからなの?」

佐枝子「…夏ごろかな…前から私のことが気になってたらしくて…
夏の懇親会の時アドレス聞いてきたの……」

不倫相手の安西は50歳、既婚者

話しも面白く、包容力があり女子社員には人気があった
だが、まさか不倫する人だとは…

悦子はショックだった

…まして親友の佐枝子と

No.102 11/11/14 13:53
秋子 ( yuBCh )

不倫がばれた佐枝子は、聞いて欲しくてしょうがない様子で
あけっぴろげに言い始めた


佐枝子「ずっとメールだけの付き合いだったんだけどね…
昨日は安西さん、仕事が残業で、誰もいないからおいでっ…会いたいって…そしたら、あんな事になって…
お互い気持ちがおさえられなくなってしまったの…
私も…好きで…嬉しくて、頭の中は安西さんの事でいっぱいになって…おかしくなりそう…」


誰かが言ってたが、不倫する人の頭の中には、チューリップやタンポポが咲いているらしい…その通りだと悦子は思った

No.103 11/11/14 13:57
秋子 ( yuBCh )

会社へ戻り 午後の仕事が始まろうとしている頃

悦子と佐枝子はトイレにいた

佐枝子は手を洗い、化粧直しを始めた
ふと 二人の顔が鏡に映った

オシャレで顔形の整った佐枝子とは違って、悦子は地味で老け顔だった

結婚当初悦子の夫は
悦子は化粧なんかしなくても素顔がかわいい…
なんて言ってくれたのを良いことに、特別な時以外は化粧なんてした事もなかった

No.104 11/11/14 14:00
秋子 ( yuBCh )

自分と佐枝子は会社では常に一緒に行動した

そして、懇親会や、誰かの歓送迎会でも、一緒に並んで座った

特別、悦子は安西を好きという訳じゃないし、佐枝子も安西の気を引くこともなかったように思う

なのに、安西は佐枝子を選んだ


佐枝子は男を惹きつける魅力的な恋する女…

自分は、母、妻
それだけの普通の女

悦子は同じ女として情けなくなってしまった

No.105 11/11/14 14:05
秋子 ( yuBCh )

夜、悦子は洗い物を片付け、風呂から出てきた

旦那の正直は好きなお酒を飲んで
気持ち良さそうにソファーで寝ている…

その姿を見て悦子は思った

メタボのポッコリお腹に、薄くなった頭…

安西と正直は同じ年だが、安西はメタボではなく筋肉質で 営業マンらしく 背広姿はすっきりきまっていた

この違いは、自分と佐枝子との違いに似ているような気がして、

悦子は余計虚しくなった

正直は、名前の通り、ただまじめに人生を歩いてきた人…

悦子は、そこが良くて結婚した

だが今は、ただそれだけの人…と思えてしまう

No.106 11/11/14 14:08
秋子 ( yuBCh )

気がつけば、正直との夜の生活もすでになくなって、二年…

佐枝子のようないい女が相手なら、正直も興奮するのだろうか?

正直が寒いのか体を丸めた

悦子「お父さん、風邪ひきますよ、布団いきますよ…」

旦那がしぶしぶ寝室へ行った

悦子は一人になると、久しぶりに顔のマッサージを始めた…
明日は久々に化粧をしてみようと思った

No.107 11/11/14 14:16
秋子 ( yuBCh )

朝…久々の化粧は照れくさかった

ファンデーションを薄く伸ばし 頬紅も 口紅もやはり薄くした

正直は化粧に気づいているのか 悦子をチラッと見て
「行ってきま~す」と普通に出かけて行った

会社で佐枝子と目が合った 一瞬反応が気になった

No.108 11/11/14 14:19
秋子 ( yuBCh )

佐枝子 「ちょっと悦子、かわいい~…でもどうしたのお化粧なんかして?」

どうしたの?お化粧なんか?
その一言は余計だとは思ったが

悦子 「あ~もう年だし、身だしなみだよアハハ」

笑ってごまかした

悦子は佐枝子に対して自分では気付かないが、対抗意識が芽生えていた

お昼また…ランチに行った

食事の最中でも、佐枝子の携帯のバイブはうなっていた

おそらく、安西からだろうか、佐枝子は、返すのに必死だ…

No.109 11/11/14 14:26
秋子 ( yuBCh )

佐枝子の旦那はかなり前から単身赴任で大阪へ行ったきりだった

息子は、国家公務員、娘は、総合病院で看護士として働いていた…

それに比べて悦子の息子は…
県外で就職はしたもののなんだかんだで、今は契約社員

悦子は小さくため息をもらした

佐枝子は気づかない

悦子 「佐枝子~安西さんから?」

佐枝子 「そう、週末、温泉行くかもしれない…」

佐枝子は嬉しさを隠しきれない様子
白い歯が見えた

やめなよ、旦那さんにばれたらどうすんの?!

喉まででかかった言葉だが、悦子は飲み込んだ

野暮な事言って、僻んでると思われたくはなかった

No.110 11/11/14 14:36
秋子 ( yuBCh )

週末になった
今頃、佐枝子は安西と旅行へ行ってるのだろうか?

悦子は気分転換に美容室へ行った

どういたしましょうか?

若い美容師が愛想良く聞いてきた

悦子「どうしようかな?こんなオバチャンだし、よくわからなくて…」

若い美容師は悦子の束ねた髪をほどいて…

「バッサリ切ったらどうです?!絶対似合いますよ!あと白髪も染めましょう!」

ショートはやったことはなかった
だが、佐枝子の不倫発覚以来、悦子は自分の何かを変えたかった


悦子 「お任せします…」

こっくり頭をさげた

No.111 11/11/14 14:44
秋子 ( yuBCh )

しばらくして

悦子は、鏡を見ておどろいた
短くはなったが、頭のボリューム、両脇は薄く短い…
どこかの女子アナがこんなかんじだった
髪型でこんなに顔って違って見えるのか?
もう老け顔はどこにもない


「どうです?垢抜けたでしょう?」

悦子 「はい…とっても気に入りました」
悦子は子供のようにニッコリ笑った

家に帰って ソファーで 寝そべってテレビを見ている正直に


悦子 「ねえ…髪切ったのどう?」

正直はチラッと悦子を見て

「ああ…」と一言、それっきり正直はまたテレビを見始めた

No.112 11/11/14 14:49
秋子 ( yuBCh )

悦子は鏡を見るのが楽しくなった

月曜日…化粧して 新しい髪型で出勤した

みんなの視線は悦子に釘付けだった
会う人会う人に
…悦子さんて美人ですよね~綺麗ですよね…

悦子は…美人・綺麗と言う言葉を久々きいた

素直に嬉しかったし、気持ちも明るくなった


そんなある昼のランチ

佐枝子 「悦っちゃん…まじ変わった」


悦子 「えへへ…」

佐枝子 「人生は一回きり、だから花を咲かせなきゃ~好きな人とかいないの?」


悦子「はぁ?なんでそっち行くかな~?」

佐枝子 「だってもうすぐ50だよ、このままなんにもなく老け込みたいわけ?…」

佐枝子は自信ありげにそう言い放った

No.113 11/11/14 14:52
秋子 ( yuBCh )

悦子 「でも、不倫は嫌だよ…」

佐枝子 「今は不倫かもしれないけど、私は違う、本気だもの…やっと出会ったのよ、本当に好きな人に…」

またお花畑かい?
悦子は心の中で、あざ笑っていた

悦子 「だって離婚とかって?たいへんでしょう?」

佐枝子 「うちの旦那だってやってるよ…不倫…」

悦子 「ほんとに?」

佐枝子 「前大阪の旦那の部屋へ突然行ったことあったけど、赤い歯ブラシあったもん…単身長いから居たって不思議じゃないよ…」

悦子 「…」

佐枝子「悦っちゃんとこの旦那さんだって分からないよ…男だし…」

悦子 「アハハ、ないない!」

悦子は吹き出した

No.114 11/11/14 14:55
秋子 ( yuBCh )

夜 相変わらず飲んで食べてソファーでいびきをかいて寝ている正直

ため息をつきながら、寝室へ押しやると

悦子はマッサージを始めた

そして 携帯の出会い系サイトをアクセスしてみた

初めての事でよくわからない
なかなか登録できないで 諦めかけた時

登録完了になった
年齢は48歳そのままで 名前は適当に変えた

30分もたたないうちにメールが2つまた一つ

20代30代40代

こんなオバチャンに20代の男性からも?

顔も見えない相手なのにドキドキした…

40代の関東に住む落ち着きのある男とやり取りが数回続いた

気がつくと 午前一時になって

慌てて、電気を消して寝室へ行った

No.115 11/11/14 14:59
秋子 ( yuBCh )

朝起きて携帯を見ると、大量なメールに驚いた

登録を解約したいけどなかなかできない

正直が起きた気配に驚いて、携帯をバイブにしてエプロンのポケットに入れた…

まるで不倫しているみたいな変な気分だ…

会社の帰り、携帯ショップへ駆け込んだ

恥を忍んで、サイトの登録の取り消しをお願いした

恥ずかしかった

…私一体なにやってんだろ…

悦子は落ち込んだ

No.116 11/11/14 15:03
秋子 ( yuBCh )

そんなある日曜日
電話がなった

悦子 「もしもし…」

有香 「有香です…」

佐枝子の娘だった
悦子 「えっ有香ちゃん…久しぶりね~…」

有香 「ちょっと母の事で相談が…あるのですが…」

人気のない静かな喫茶店で有香と待ち合わせた

有香は佐枝子と似て色白でかわいい子だった

No.117 11/11/14 15:05
秋子 ( yuBCh )

挨拶もそこそこに有香はいきなり白い封筒を出した

有香 「これ、見て下さい」
数枚の写真を取り出し
裏返しにそっと悦子の前に出した

悦子は写真を見て慌てて伏せた…

どれも佐枝子と安西の二人が映っていた

ホテルへ入る二人
ホテルから出てくる二人

車の中での熱烈キスも…

そうか佐枝子、ばれたんだ いつまでも花なんか咲いてないよねぇ…
悦子は、内心いい気味だと思った

No.118 11/11/14 15:10
秋子 ( yuBCh )

有香 「…うちの母が不倫をしてるんです、最近おかしいと思って私、興信所へ依頼したんです…そしたら…間違いないみたいで…」

悦子とは違って有香の必死さと深刻さが伝わってくる

有香「母はなんで不倫なんか、汚らしい!…なんにも知らないお父さんが可哀想!」

キレイな頬から涙が一筋流れた

可哀想に、誰にも言えず一人で苦しんできたのだろうか…

佐枝子の馬鹿!
娘がこんなに悲しんいるのに…
なにがたった一度の人生だ?!

悦子は腹が立った

No.119 11/11/14 15:57
秋子 ( yuBCh )

悦子 「有香ちゃん、ごめん、私知ってたのよ…
おばちゃんだってお母さんに目をさまして欲しい…でも…人を好きになった気持ちって誰にも…どうにもならないみたいなのよ…」

有香 「好きになったら?なにをしてもいいんですか?!平気で自分の旦那を裏切れるんですか?!」

有香は、張り詰めていた心の糸が切れたみたいに興奮して唇は震えていた

悦子 「ね~あなたが知ってしまった事佐枝子には?…」

有香「まだ言ってません…私も夜勤とかあるし、母とはすれ違いが多いので…今日も朝から…いい年をして派手な格好で朝早く出かけました……。」

No.120 11/11/14 16:02
秋子 ( yuBCh )

いい年をして派手な格好か…
なるほど有香の年代から見れば、私達がオシャレをして化粧すると、そういう風にみられるのか…

悦子は寂しい気持ちになった


有香 「私、父の所へ何度か行ったんです…でも忙しそうで、優しい父に母の不倫の事なんか、とても言いだせなくて…」


悦子 「お父さん真面目な方なのね…でも佐枝子がお父さんの部屋で…その…赤い歯ブラシがあったって…」

有香 「あっ?あの赤い歯ブラシですか?…あれは…去年、看護士仲間と大阪旅行した時、一晩父の部屋へ私だけ泊まったんです、私の置き忘れですよ…また来て欲しいから捨てられないって父が…」

No.121 11/11/14 16:06
秋子 ( yuBCh )

なんだ 佐枝子の勘違いか…
悦子は佐枝子はつくづく馬鹿だと思った…

悦子 「なんか私にできる事あるかな?」


有香 「いえ、もういいんです…なんか話したらスッキリしました、そのうち母には…娘の私から話します、分かって貰えるまで…」

有香は深々と頭をさげると、喫茶店を出て行った

ところがその夜の事だった…

No.122 11/11/14 16:12
秋子 ( yuBCh )

メールが届いた
佐枝子からだった

佐枝子↓
・とんでもないことになった・

佐枝子にしては、絵文字もなく、短い文章だった

悦子↓
・どうしたの?


5・6分して返事がきた

佐枝子↓
・娘が安西さんの自宅に行って、写真 ばらまいた・

悦子は、おどろいた!

有香ちゃんが安西さんの家に乗り込んだらしい!!

No.123 11/11/14 16:16
秋子 ( yuBCh )

悦子↓
それで?どうなったの?どうするの?


返事はそれっきりなかった…

携帯へ電話をしても佐枝子は出なかった

朝、悦子は会社へ急いだ…

だが佐枝子の姿がない

安西はいた…普通だった 特に変わった様子もない

佐枝子は無断欠勤らしい

会社が終わると悦子は佐枝子の家へ向かった

No.124 11/11/14 17:24
秋子 ( yuBCh )

インターホンを押したが…

音沙汰なし、ドアに手をかけると開いた

悦子 「佐枝子~佐枝子~いるの?上がるわよ~」

部屋の窓はカーテンをかけて薄暗い

佐枝子はソファーに寄りかかったまま、動いうごかない…

悦子「佐枝子!」

佐枝子「悦っちゃん~」

佐枝子は悦子にしがみついて泣き出した

化粧っ気もなく泣きはらしただろう佐枝子の顔には
いつもの華やかさなど微塵もない…

No.125 11/11/14 17:27
秋子 ( yuBCh )

しばらく泣いていた佐枝子は、握りしめていた携帯を開いて

安西からの受信メールを悦子に見せた


安西↓
・別れたい、今までの事はなかった事にしてほしい、短い間だったけど楽しかったさようなら・

だった

佐枝子 「それで終わり、送信できないの、アドレス変えたみたい、電話しても拒否されてて…う、う、」

途中から涙声に変わった

No.126 11/11/14 17:39
秋子 ( yuBCh )

佐枝子 「あんなに愛してるって一生放さないって…死ぬまで一緒って…」
佐枝子は号泣している

悦子は、なんて言葉をかけていいやらわからなかった

昨日、有香との話し合いがこじれたのだろうか?

有香はずいぶん思い切った事をした…

でも、不倫は、誰かが何かを壊さなきゃ 終わらないものなのだろう…
そう悦子は思った

悦子は、佐枝子の泣き顔を見ると、
哀れで悲しくなった…

今まで佐枝子が羨ましいと思った気持ちは

何処かへ消えていた…

No.127 11/11/14 17:44
秋子 ( yuBCh )

悦子 「佐枝子!もう目をさましなよ!…安西さんは、佐枝子をそのときは愛していたかもしれないけど、結局家庭を壊したくないんだよ!
悦子も家庭大事にしなよ、いい旦那さんがいるじゃないの!」


佐枝子 「なに言ってんの?恋愛もしたことない、男と女の事…知りもしない、あんたに何がわかるの?!!…あの人は、奥さんにいいようにされてんのよ、あんなババァより私の方がいいに決まってるでしょう!…携帯も没収されたに違いない!あ~腹が立つ!!」


佐枝子は髪を振り乱して悦子の腕に掴みかかった

悦子 「…狂ってるよ…」


悦子は佐枝子の手を振り払い

佐枝子の家を後にした

No.128 11/11/14 18:01
秋子 ( yuBCh )

次の日 佐枝子はいつも通りの華やかさで出勤してきた…


だが悦子には目も合わせない


悦子も無視をした…


昼間も悦子は会社の食堂にいた


佐枝子も外にはいかず、食堂の隅に一人で座っている

時より安西が通りかかると、佐枝子の安西を追う鋭い視線が気になったが…


悦子は、無関心を装っていた…

No.129 11/11/14 19:24
秋子 ( yuBCh )

それから2、3日たった
それは、夕方だった

悦子は台所にいた

正直は風呂へ入っていた

悦子は、携帯のバイブに気づいた


佐枝子からだった
悦子 「もしもし…」

佐枝子「………」

悦子 「佐枝子?どうしたの?」

佐枝子 「やって…し…まった…」

佐枝子の異様さに悦子は嫌な予感がした…

佐枝子 「あの人を刺した…」


悦子 「どこ?!今どこ?!佐枝子!」

佐枝子 「彼の家…前…」

悦子は全身ガクガク震え出した

ジャンバーと車の鍵をとると

風呂の正直に

「用事が出来てでかけます」
そう言うと、正直の返事も聞かないまま…

悦子は玄関を抜け、車に飛び乗った

体の震えはずっと続いて、悦子はハンドルにしがみつきながら、やっと運転していた…

No.130 11/11/14 19:28
秋子 ( yuBCh )

安西の家の近くまで来た時

すでに家の前には人だかりがあり

救急車、パトカーもいた

担架で運ばれる安西…

警察官に両脇をはさまれた佐枝子の姿が見えた

悦子「佐枝子!佐枝子!!佐枝子~」

どんなに大きい声を出しても佐枝子はうつむいたままパトカーに乗り込んだ

悦子は声をあげて泣きながら冷たいコンクリートに座り込んだ

No.131 11/11/14 19:33
秋子 ( yuBCh )

そんな悦子の肩を抱えて立たせてくれた男がいた

悦子は泣きながら振り返ると

それは正直だった

悦子 「どうしてあなたここに…」

そういいながら悦子は正直に抱きついて、また大きな声をあげて泣き出した

正直 「帰ろう…」

悦子の車は近くの空き地に止めて

正直の車の助手席に悦子は乗った

No.132 11/11/14 19:52
秋子 ( yuBCh )

正直はタバコに火をつけ
ふ~~と吐き出すと、悦子にポツリと言った

正直 「お前じゃなくて良かった…」

悦子「え?…」

正直 「浮気してたと思ってたよ…」

悦子 「まさか、私が?」


正直 「だって最近きれいになったし、携帯持ち歩くし…さっきだっていきなり飛び出して…男に会いに行くんだと思って…後をつけて来た…」

悦子はおどろいた

正直は悦子になどまるで感心がないと思っていた

悦子 「私になんか全然感心ないと思ってた…」

悦子は鼻水をすすりながら言った


正直 「自分の奥さんに感心が無いわけないだろう…キレイになったなんて…この年で恥ずかしくてそんな…言えないし……自惚れて浮気でもされたらな~」


悦子は正直の横顔を見た…

悦子の目から嬉しい涙が溢れ出し幾つ幾つも流れた


安西が声をかけたのが、もし…自分だったら、佐枝子は悦子だったかもしれない…

自分の馬鹿さ加減に呆れた…

悦子は心の中で何度も正直に詫びた

…ごめんなさい…

正直 「今度いつか旅行でも行くか?…」


「うん…」

悦子はそう、うなずいた



…完…

No.133 11/11/19 21:10
秋子 ( yuBCh )


第五章

…利用された女…

No.134 11/11/19 21:14
秋子 ( yuBCh )

朝になったらしい…

カーテンの隙間から陽が漏れている

外から、車の通り過ぎて行く音が頻繁に聞こえる

ここはどこだろう

ノリのきいたシーツと枕カバー、その肌触り

ホテルのようだ

男が加奈の顔を覗きこんでいる

だが にぶい頭痛と、目を開けるとひどい吐き気がして…

加奈はまた目を閉じた

No.135 11/11/19 21:17
秋子 ( yuBCh )

この状況はなんだろう

どうして自分はホテルなんかに…

まして、正人以外の男と…

ぼんやりした頭の中で記憶をたどってみた

昨日 恋人の正人と二人で焼き鳥の美味しい居酒屋に行った

そこを出て めずらしく、もう少し飲もうと正人が言うので、酒の苦手な加奈だったが、たまには付き合う事にした

ジュテームという、カウンターとボックスが2つだけの小さい飲み屋に入った

着物姿の愛想のいいママさんがカウンターの中にいて
「あら~正人さん、よくいらしたわね~さぁこっちへ」

正人と加奈はそのカウンターの椅子に腰掛けた

No.136 11/11/19 21:22
秋子 ( yuBCh )

正人は、よくそこを会社の接待で使っていたらしく、ママさんとは馴染らしい

ママさんに加奈を紹介して、客のいない店内で三人は、話しをしながら静かに飲んでいた

そこに現れたのが森田だった

森田、そうだ!

さっき加奈の顔を覗き込んだ男

それは森田だった
でも、なぜ?
私はどうして森田とこんなホテルにいるのだろう

正人はどうしたのだろう?

そして加奈は自分が裸であることに気がついて血の気が引いた…

No.137 11/11/19 21:26
秋子 ( yuBCh )

なんで! どうして!…

そして、残酷な記憶が鮮明に目をさました


ゆうべ加奈はかなり酔っていた

森田にここに連れ込まれて

このベッドに倒された

必死で抵抗したが、強いお酒でも飲まされたのか

力も入らず

森田のなすがままだった

加奈の体中を好きなようにもてあそび

加奈の体の上で森田の荒い息

ハァハァ…ハァハァ…

その息づかいのたび体は上下へ揺らされた

森田の、肉付きのいい脂ぎった頬と、口元の盛り上がったホクロ…

はっきりと蘇ってきた…

No.138 11/11/19 21:32
秋子 ( yuBCh )

正人に知られたくない…

正人…ごめん

早くこんな所から出よう


我に返った加奈は半身を起こし 服を椅子から引っ張り取った

ヨロヨロしながら着始めた


森田は起き上がった加奈に気づき

森田「加奈ちゃん…怒ってるのか?…悪いことしたな……」

加奈はなにも聞きたくない
そう否定するように夢中で服を着ている

森田「加奈ちゃん…俺…一度だけ加奈ちゃんを抱いてみたかったんだよ…そんなに俺が嫌いか?…」


加奈「嫌いです!誰があんたなんか!…汚らわしい!!」」

加奈は吐き捨てるように言った

そして出口へ向かった

すると森田は

森田 「この事は正人も承知だ!…」

No.139 11/11/19 21:44
秋子 ( yuBCh )

「え??」

加奈は一瞬意味がわからなかった

正人も承知?
なんの事?
耳を疑った…

加奈を呼び止めるための、口からでまかせだろう

そう思って、また歩き始めようとした時

森田が強い口調で言った

森田 「正人は自分の会社をつぶさない為に、やったんだ!」

加奈は固まってしまった

森田が近寄ってきて

森田 「まぁ聞け…」

加奈の肩を押して椅子へ座らせた

No.140 11/11/19 21:47
秋子 ( yuBCh )

森田は、森田整備会社の社長 55歳

森田 「…正人の工場も、もう危ないよな~もちろん正人も頑張ってはいるが、俺のとこも不況の煽りで…」

正人は従業員20人足らずの、小さな板金工場の社長をしていた

父親が脳溢血で突然亡くなって、正人は東京から帰ってその後を継いだ
五年前の事だ

加奈も事務で三年前から働き…

二人が社内でつき合うようになってもう二年

正人は27歳
加奈は25歳

森田の会社は正人の会社の親会社だった

No.141 11/11/19 21:50
秋子 ( yuBCh )

森田 「不景気でよぅ…俺のとこも苦しいんだよなぁ…子会社は正人んとこばっかじゃないし…みんな次々倒産して行くからな~…正人も辛かったんだよ
それでだいぶ前に正人に、加奈ちゃん抱かしてくれたら、おまえんとこは絶対見捨てない…なんていっちまって…なに、酒呑んだ上の冗談だったんだよ……正人、それを間にうけたんだろうな…なんたって従業員の生活がかかってっからよ…」

信じられない話しだった

森田に抱かれたのもショックだが

それ以上に正人の加奈に対する気持ちが信じられなかった

私は、正人にとってなんだったのだろう…

私はモノか?

情けなかった…

裏切られた…

涙も出なかった…

森田 「俺も大人気なさすぎた…昨日は完全に調子にのりすぎた…ごめん加奈ちゃん…」

森田は頭を下げた

No.142 11/11/19 22:02
秋子 ( yuBCh )

送って行くという森田の言葉に返事もせず加奈はホテルを出て、歩き出した

一人になりたかった

タクシーを拾い
行き先を告げると
タクシーは動き出した

昨日、ママさんがカクテルを作ってくれた、ピンクや赤、紫…

みんなが
飲め💦飲め💦

飲まされた…

加奈が、お酒に弱い事を知っている正人まで、止めなかった…

そして、こっそり居なくなった正人…

あの三人はグル?!

酷い!酷すぎる!許せない!

No.143 11/11/19 22:06
秋子 ( yuBCh )

耐えきれず加奈は声を上げて泣き出した

タクシーの運転手が驚いて

『どないしました?大丈夫ですかぁ?』

心配して声をかけたが
加奈は泣き続けた

そして加奈は涙をふくと、思いつめたように、運転手に言った


加奈「行き先を変えたいのですが……」

やがてタクシーが止まった

そこは正人のアパートだった

No.144 11/11/19 22:08
秋子 ( yuBCh )

いつも幸せに満ちたりていた、正人の部屋のドアだった

だが、今日は怒りに震えながらチャイムを鳴らした

正人が出てきた

「あッ…か…加奈…」

加奈 「ふざけないでよ!馬鹿にしないで!!💢人をなんだと思ってるの!!」

加奈は思いっきり正人の頬を殴った

No.145 11/11/19 22:12
秋子 ( yuBCh )

正人は土下座した

正人 「ごめん加奈……」

加奈 「なんで?!どうして…私がこんな目にあわなきゃないの?!」

正人は加奈の膝にすがりながら

正人 「許してくれよ!…ああでもしないと、この工場は…やっていけないんだ…分かってくれ加奈!」

加奈 「私の気持ちはどうでもいいの?!」

正人 「だから…謝るよ、お前のおかげで工場はもちなおした…さっき森田さんから電話があって…だから…これから加奈と結婚して、二人で工場やって行こう…」

No.146 11/11/19 22:16
秋子 ( yuBCh )

加奈 「結婚?…」

そうだ…加奈は正人からのプロポーズを待ち望んでいた…

だが、人の気持ちを散々に傷つけておいて…

こんな時に、こんな形で結婚の話しなど聞きたくはなかった…

加奈の未来の幸せはボロボロに崩れて行く…

許せない!

加奈は台所へ行き

包丁を握って正人へ向かって行った

No.147 11/11/19 22:18
秋子 ( yuBCh )

「あなたと森田とママは、グルなんでしょう?三人とも殺してやる!!」

おどろいた正人は狭い部屋の中を逃げ回った

正人「加奈!止めてくれ!!」

加奈 「私が殺人犯で逮捕されたら、洗いざらいぶちまけてやる!!あなたの工場も森田の会社もジュテームも、みんななくなってしまえばいい!!!」

No.148 11/11/19 22:21
秋子 ( yuBCh )

加奈の怒りは止められない

正人は壁際に追い詰められた…


加奈は正人の顔を見た…

恐怖に怯え、頬に流れた涙の後が光っている…

これが、私の愛した人、一緒に幸せになるはずだった人
今でも、その腕の中に飛び込みたい、甘えたい…

だけど、この心の傷を抱えたまま、この人との未来はない

加奈は両手で握った包丁を一気に突き刺した!

No.149 11/11/19 22:27
秋子 ( yuBCh )

正人 「あッーー!」

正人は目を固く閉じた…

だが、包丁は…壁に突き刺さった

加奈は、わざとはずした

正人は力が抜け、ヘタヘタ座り込んだ

加奈 「…くだらない…もう嫌だ……もういい…」

静かに言うと、加奈は涙をこらえて正人のアパートから出た


雨が激しく降り出している

情けなさと喪失感で力が抜けた

駐輪場の柱に寄りかかって、あたりかまわず声を上げて泣いた…

No.150 11/11/19 22:36
秋子 ( yuBCh )


そんな時

涙と雨でずぶ濡れた加奈を誰かが、そっと傘に入れた

『大丈夫かぁ?様子がへんやったから、ちょっと待っとったんですわ、乗っておくれやす…』

さっきのタクシーの運転手だった

加奈は煩わしかったが…早く帰りたかった

見ず知らずの運転手に支えられて、タクシーに乗った

自分の部屋の近くで、タクシーから降りようとした時

加奈はよろけて、転んでしまった

タクシーの運転手が、駆け寄り

『ねぇちゃん、だいじょうぶか?』
そう言って加奈の肩に手をかけた時

加奈「やめて!」

一瞬森田の顔がよぎった

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