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レス311 HIT数 82419 あ+ あ-

もも( ♀ rZLGh )
11/02/14 23:30(更新日時)

~~修羅場~~

周りにはそう見えたかも知れない。

でも、女は笑っていた…。

No.1441088 10/10/12 14:44(スレ作成日時)

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No.251 10/11/12 22:13
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

お母さんが動いた。

『うぅん…寒いぃ…』

「あ…」


お母さんが体を起こした。

『あれあれ、カイちゃん、おはょぉ』

『はい、おはよ。帰れるか?』

海斗はお母さんに問い掛ける。

『うん』

私は海斗の握っている手を、空いている手でポンポン叩き、手を離すように促した。

理解した海斗はすぐに手を離してくれた。

私はコップに水を入れて、お母さんに渡した。

No.252 10/11/13 05:55
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『あ、ありがとぉ』

まだ寝ぼけている。


時間は9時半を回ったところ。


『帰ろうか?』

『片付けなきゃ』

「大丈夫ですよ。私やりますから。そんなにたくさんじゃないし」


食べながらちょこちょこ片付けてたから、テーブルの上にあるお皿は数えるくらい。


『じゃ~お願いします』


お母さんはペコッと頭を下げた。


「はぁい」


覚束ない足どりで玄関まで歩く。


『また連絡するから』


海斗が振り返った。


「うん。気をつけてね。お母さんも、風邪ひかないでくださいね~」

『はぁ~い♪』


父が起きてきた。

『あ~寝てたな…。早苗さん、また来てくださいね。海斗くん、気をつけて帰るんだよ』


『はい』
『はぁい。また来まぁ~す』

2人は帰って行った。

No.253 10/11/13 10:58
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

私と海斗の過去に、恋愛感情や肉体関係がなければ、一緒に出掛けたり、ご飯を食べに行ったり…なんて、何のやましい事でもなかったんだろうな…。


私は海斗と別れて以降、職場の人に告白された事があった。

何も考えずに、その人を好きになれば…幸せになれたかも知れない。


けど…心はヨソを見ているのに、真正面にいる人と真剣に向き合える訳がない…。
もちろん断った。

No.254 10/11/13 11:03
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

私は、そんなに性に対して欲求がない。

今でも海斗が最後。


では海斗は……?
健全な男。性欲だって人並みだろう。

我慢してる……?
どこかで、誰かと……。




眠れない夜には、いつも海斗の事を考えた。
閉ざされた海斗の部屋と同じように、私の気持ちも開けないまま…。


お母さんから聞いた話し…。私はいつまで心に秘めておけばいいのか。

海斗に貰った指輪を見て、ため息をつく。

「愛って難しい…」

No.255 10/11/13 11:13
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

汐璃からの誘いを断った日曜日。

海斗から昨日のうちにランチのお誘いを受けていた。


♪~♪♪~♪

電話の着信。
知らない番号…
こないだ登録外着信拒否を解除したままだった。

「もしもし…」

『桃花さん?汐璃です』


げげっ💦何で番号…


『あっ切らないでね。用事が入ったって聞いたから。お仕事?』

「いぇ…あの…親戚の法事がありまして……」

『そう。残念。次の日曜日は大丈夫よね?私、早く会いたいの!』

「ちょっとまだわかりません…😓」

『ふんっ…まぁいいわ。また連絡するから、登録しといてね』


「あの、し…ぉ…」

すでに切れていた。

No.256 10/11/13 12:07
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

そうか…海斗の携帯見てるんだもん。番号くらい調べられるか…。


海斗とは、人目につかない場所で待ち合わせをして、よく行った“ビックリ箱”のお店に行った。



前みたいに他愛ない話しをして、ご飯を食べて…



「ねぇ…海斗……」

『ん?どうした?』

「あの…海斗は……その……」


聞けない…。
エッチしたくならないの?どうしてるの?
誰か…いるの?


「ぁの……やっぱいぃ」

『何だよ』

ふっと笑う。
その顔を見たら、何だか本当にどうでもいい話しに思えた。
私達は今、恋人同士な訳じゃない。
私だって彼氏を作っても、海斗は文句は言えない。
私が他の男に抱かれても、海斗は………

No.257 10/11/13 12:15
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『桃…男……できた?』

「えっ、うぅん」

『何か…色っぽくなったかな…って』

「もう大人ですから」

『ハイハイ』

2人で見つめ合って笑った。
海斗が言った。


『俺ね、辛抱強いんだ♪心配しなくていい。なんなら右手もあるしな(笑)』


そこまで聞いてないけど💦笑
気持ちは通じていたみたいだ😅

「そっか」

『桃は…俺なんて忘れて幸せになってもいいんだぞ。お袋だってわかってくれるよ』

「大丈夫。私、辛抱強いの。右手は使わないけど」


『ハハハ(笑)そっか、そっか…ごめんな…待っててな……』

「ん?」

『いんや、何でもない』


“待っててな”
あの事かな………。

No.258 10/11/13 12:28
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

ご飯を食べて、話しをして、どこか行く?と聞かれて「帰ろ」と言った。
笑って言えた。

海斗も笑って『そうだな』と言った。



車に乗って、ドアを閉めた瞬間、腕を引っ張られて抱きしめられた。


『好きだ。すげー好き。………好き………』


驚いた。
汐璃と結婚してからは、そんな事口にはしなかった。どちらに対しての罪悪感なのだろう…。
そして、何故今なんだろう…。


「海斗…?」

『桃は?ごめんな。まだ好きか?』


海斗は真剣な顔をしている。私の頬に手を当てて、真っすぐに私の目を見ている。


「好きよ」


海斗の顔がほころんだ。
私の大好きな笑顔。


海斗も…不安だったんだ…。少し、心が暖かくなった。そして、家に帰った。

No.259 10/11/13 12:52
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

たまたま好きな人に奥さんがいただけ。

よく聞く不倫の常套句。


恋愛は愛の数だけ。結婚は早い者勝ち。

そう。たまたま海斗は私より早く汐璃と結婚して、たまたま他の女の旦那(モノ)になった。


開き直ってしまえば、元は海斗は私の男。汐璃がいなければ私と結婚していたかもしれない。
それに、取ったのは汐璃の方。



たまたま…が重なり、たら、ればの世界が広がる。

私は敗者だ……。
勝ち負けはないかもしれない。けど…海斗は私のモノではない。
それだけで十分…。

No.260 10/11/13 13:15
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

最近は汐璃から遠慮なしに電話がくる。


水曜日だけ電話がなかった。


次の日曜日は仕事になった。
汐璃から電話がきた時にそれを伝えた。


代休はないの?約束したじよない!私に会いたくないのね!海斗さんを自分だけのものにしようとしてるんでしょ!!


ヒスは相変わらず…な感じもある。会いたくない…は当たってる。


『あっ海斗さん…』


平日昼間に海斗が家に?


『またかけるわ』


もういいし💦💦


……切れてるし。

No.261 10/11/13 13:19
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗が昼間家にいる事はまぁまずない。

書類を忘れた…?汐璃に用事……?
何だろう。

今日は木曜日。

あ、帰りにスーパーで卵買わなきゃ♪

No.262 10/11/13 13:26
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

その日の夕方…汐璃からまた電話がきた。

ため息をつき、一呼吸おいてから電話に出た。


「もしも…」


『あんたね!!海斗さんに変な事吹き込んだの!!』


懐かしい怒号が響く。
そして、サッパリ意味がわからない。


「何の話しですか」


『とぼけるなっっ!私に男がいるなんてデタラメ海斗さんに吹き込んでっっ!そんなに私が憎いっ!?嫌いっ!!?』


はい!!嫌いです😆👍
いやいや……


「私じゃありませんけど…何の話しですか?」


『あんた、よくも……』


汐璃の顔が目に浮かぶ。
私は知っていた。
いや、みんな知っていた。汐璃に男がいる事……。

No.263 10/11/13 13:29
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

相手に愛情はなかったかも知れない。寂しさを埋めたかっただけ……。

そういう気持ちだったんだろうと思う。



けど…それを弱みに付け込まれる可能性があるんだから、行動には細心の注意を払うべきだった。


相手は例の探偵。

海斗は探偵を探偵に探らせた。


事の発端はあの日…汐璃が実家に帰ると言った日…。

No.264 10/11/13 13:35
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

汐璃は実家には帰らなかったそうだ。

ずっとあの探偵と過ごしていたらしい。
汐璃の行動は全て探偵の入れ知恵。



そりゃそうだ。
いつの間にか、あんなに大きくなり、旦那の不貞騒動で里帰り…なんてシャレにならない。
お父さんの面汚し。
そうでなければ、あの安東の事だから、乗り込んで来ると思っていた。



お母さんに聞いた話し。

『汐璃ね、男がいるの。今、海斗が調べてる…』


私は、敗者復活戦に臨むような気持ちだった。

「とうとうはじまったな」

No.265 10/11/13 13:50
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

私は当事者ではない。

汐璃に責め立てられても、本当に関係ない。


黙って事の行く末を見守るしかなかった。




水曜日。
それが汐璃と探偵の愛欲の日だったらしい。

探偵には妻がいた。
汐璃は探偵の事務所やホテルで寝泊まりしていたらしい。


海斗の事を調べてもらううちに…探偵は汐璃が可哀相になったのだろう。
家にまで出入りしていたあの頃から、何かしらの関係があったらしい。

No.266 10/11/13 13:58
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

最初に気付いたのはお母さんだったらしい。

出入りするには、あまりに頻度が多過ぎる。


小一時間もしたら、そそくさと帰って行く。



当時はほぼ毎日。



お母さんは聞き耳を立てた。
息を荒げる2人の声。
汐璃を求める探偵の声。


…って、それだけで十分なんだろうけど……
完璧に離婚に至るまでの、たくさんの証拠を海斗は集めた。

だから、私は知らないフリをしなくてはならなかった。汐璃に気付かれたら終わりだから。

No.267 10/11/13 14:03
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

実家に帰っていたとされる2ヶ月間。
毎日探偵に張り込ませていたらしい。


それが1番の証拠。写真もたくさんある。…あったらしい。(私は見てない💦)


汐璃は『知らない、私じゃない!』と言い張ったとか。



汐璃は…海斗を本当に愛していたのだろうか。
捨てられないように…プライドが邪魔をしていたのでは……。

No.268 10/11/13 14:07
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗は汐璃に言ったそう。


『お父さんには、言わないから。離婚は自分から言い出したと言ってもらっても構いません…』


汐璃は最後の最後まで離婚には応じなかった。

私にも何度も電話がきた。

『あんたさえいなければ。あんたのせいだ!あんたが…あんたに…あんたの………………』


私はずっと聞いていた。
汐璃の悲痛な叫びを。

No.269 10/11/13 14:11
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

息つく暇もないほどに文句を言ったあとに呟くように言った。


『最初から…わかってたけどね…』

No.270 10/11/13 15:04
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

「私も思ってますよ。あんたさえいなけるばって…」

『お望み通り、いなくなってあげるわ』


最後まで強気な人…。



「ねぇ、汐璃さん…海斗を愛してた?」


ガシャッ!ツーッ…ツーッ


これが答えだったんだろうな。
汐璃の性格からして、愛していたら、その愛の全てをぶちまけてきただろう。

No.271 10/11/15 03:27
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

その電話から2日後…事態はまた汐璃の思惑により、複雑になっていく。


汐璃が私を嫌いなのはわかっている。


妻と愛人が分かり合えるはずもない。
ただ…汐璃が私を嫌いなのは、“海斗の事”だけではない気がしてならない。

No.272 10/11/15 04:36
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

汐璃から電話がきた。

『明日(日曜日)は休み?』

「休みですよ」

『今夜うちに来て』

「嫌です」キパッ😆

『いいから来なさい!』


すぐに声がデカくなるのは相変わらずだなぁ…


「理由は?」

『来てから話します』

「私は関係ないですよね?」

汐璃がだんだんイライラしているのがわかる。

『あんたにも関係があるから呼ぶんでしょ!いいから黙って来ればいいの!いちいち面倒臭い女ねっ』


…百歩譲っても汐璃だけには言われたくない…

「人に来てもらおうって態度ですか?」

『うるさいっっ!!』


ガシャッ!ツーッ…ツーッ…ツーッ…ツーッ…


はぁ………

No.273 10/11/15 04:40
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

一体、何をどうしたら私まで出張らなきゃならないんだろう…
夫婦の問題だろうに。


何時になるかわからないから、父にはメールを入れた。

【今夜は出掛けま~す😄ご飯とおつまみは用意しとくね😆✋】

【了解。あまり遅くならないようにね。】



そういえば何時に行けばいいのかな……😓
ま、7時くらいが妥当?
お母さんいるだろうし…そのくらいでいいかな…

No.274 10/11/15 04:50
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

とりあえず、7時着。

海斗はまだ帰って来ていない。
早かったかな…

車の音に気付いたお母さんが玄関から顔を出した。


『あれ、桃ちゃん!?どうしたの??』

「ん?汐璃さんに呼ばれて……」

『汐璃に?』

「は…い……。??」

お互い、不思議な顔をしている。

『車の音がしたから、カイちゃんかと思って…まっ、汐璃が呼び出したなら、上がって♪』

家に上がるのはいつぶりだろう…懐かしい匂いがする。お母さんはお香をたく。その香りがとても懐かしい。

No.275 10/11/15 04:58
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

お母さんがお茶を入れに行った隙に、汐璃が自分に宛がわれた部屋から出てきた。


『早かったのね』

「時間を指定されなかったもので」

『ふんっ、海斗さんに早く会いたかっただけでしょ。残念ね。まだ帰ってなくて』

「ところで何のご用なんですか?」

『話しは海斗さんが帰ってからよ』


お母さんがお茶を持ってきた。


『あら、あんたももう出てきたの』

『すぐ下がります』

『そう。はい、桃ちゃん。熱いからね』

「あ、ありがとうございます」


その光景を見て、またふんっと鼻を鳴らして部屋に戻って行った。

No.276 10/11/15 09:09
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

お母さんが汐璃の出て行ったドアを見つめながら言った。


『海斗の嫁じゃなければ、あの子ももっといい人生があったろうにね…』

「お母さん…」

『海斗が、桃ちゃんを先に連れて来てなければ、あの子の事受け入れられたと思うのよ…』


お母さんは鬼ではない。
汐璃が私を嫌う別の理由…それは“お母さん”だ。
私はそう思った。

No.277 10/11/15 09:31
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

お母さんは海斗のお父さんで結婚は2度目…。

最初の結婚は散々だったそうだ。
相手の親から猛反対された挙げ句に結婚して、お母さんに子供ができる前に、相手が他の女を妊娠させ、離婚。

海斗のお父さんは、結婚前に言い切ったそう。

『俺は浮気する。でも、他の女に本気になったりしない。帰るのはお前の所だけだ』


えっ…それがプロポーズ⁉と驚いた。
お母さんは笑っていた。

『あんなにはっきり浮気するなんて言うからビックリよぅ。でも、どんなに女の匂いがしても毎晩帰ってきたわよ~♪最初のうちは、やっぱり喧嘩してたけどねぇ~(笑)』

さらに笑いながら続けた。

『だからカイちゃんは、あんな風にならないように仕込んだの♪』


仕込まれたんだ(笑)

No.278 10/11/15 09:39
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

~回想終了~
現在に戻る………



『悪い子じゃないのはわかってるんだけどね』

「汐璃さんには伝えたんですか?」

『何を?』

「お母さんがそういう風に思ってる事…」


お母さんが困ったように笑った。


『桃ちゃん…前にも言ったけど、私は海斗が選んで連れてきたあなたのお母さんになりたいの』

「お母さん……」


痛い…久しぶりに痛い。


『海斗も雄一さんと同じで女好きだったからね。もしかしたら、誰にも本気になんてならないかも知れないって思ってたのよ』

親なりの心配…

『それはそれでいいんだけどね。でも…初めて桃ちゃん見た時、嬉しくて嬉しくて……』


お母さんは少し目が潤んでいる。

No.279 10/11/15 09:47
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

お母さんの携帯が鳴った。


『あら、噂をすればね』


海斗からだ。


『もしもし……』




汐璃にとって、私は目の上のたんこぶ。
いくら何でも、結婚したら海斗も諦めると思っていたんだろうな。
もしかしたら、海斗は抱こうと思ったかも知れないけど…最初の頃に触れていないのに、タイミングがなくなっただけかも知れない。


『カイちゃん、急いで帰るって♪』

「何の話しですかねぇ」

『ん~何だろね~?』


お茶を飲みながら、海斗の帰りを待っていた。

No.280 10/11/15 09:53
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗が帰ってきた。


『ただいま…桃…』

「おかえり」

『お帰りぃ~♪』


『汐璃さんは?』

『お部屋よぉ』

『呼んでくるわ』

海斗は汐璃の部屋へ行った。


『離婚はしないと思ってたのよ。正直な話し…。海斗が政界に出るから…とかじゃなく……でも汐璃から言い出したの』

「えっ…」

『何でかなぁ…』


海斗は離婚は自分から切り出した風な言い方だった。

海斗が戻ってきた。


『すぐ行きますだって。着替えてくる』


海斗は私の頭をポンポンと叩いて、部屋を出て行った。

No.281 10/11/15 10:05
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

テーブルを囲んで座る。

普通はどう座るかわからないけど、真四角のテーブルに、海斗と汐璃さんが向かい合って座り、私とお母さんが向かい合って座った。


誰も口を開かない。
私が率先して話すのも変だ。


『で、何の話しなの』

お母さんが口を開いた。



汐璃は持っていた紙を広げて、テーブルの上に出した。
“離婚届”

もう1枚…
“婚姻届”………?


『私と別れてください』


ひぇ~超強気……

『ただし、私の受けた屈辱は言葉では言い表せないものです。でも…慰謝料はいりませんが、これからも、ここに住まわせてもらいます』


『…はっ!?』


お母さんビックリ。
いや、みんなビックリだけど……💦


『それから、これ(婚姻届)はあなた達の分です。結婚するんでしょ?一緒に住むんだから、これからも仲良くしてね』


汐璃さぁん…💦何言ってんのよ~😱

No.282 10/11/15 10:17
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

汐璃の実家には、もう兄夫婦が住んでいる。汐璃は兄嫁と仲が悪いらしい。
だから帰りたくないのかな……。


『さ、海斗さんは2枚書かなきゃいけないのよ。明日には両方提出するんだから、早く書いて』


『汐璃さん💧意味わからないんですけど💧💧』


『わからない?私が選んだ、皆が幸せになれる方法なんだけど』


汐璃はニコニコと話しを続ける。

『私はあなたと離れたくない。でも、私のした事は許されない…離婚は当然でしょ?』

ここまでは理解できる。

『だから、籍は抜くけど、ここで暮らすの』

こっからまったく意味がわからん😓💧

『海斗さんと桃花さんは愛し合ってる。私と籍を抜けば結婚できるでしょ。海斗さんの妻になるんだからここで暮らすのは当然でしょ』


何故お前が決める😆✋💦
そして何故明日⁉
日曜だから手続き面倒じゃん💦💦離婚届はいいけどさ…ってそんな話しじゃな~いっっ😱‼

No.283 10/11/15 10:25
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

「汐璃さん💦落ち着いて考えてくださいね😅」

『私は至って冷静よ』


うそぉ~ん💦


『愛し合ってるって事は…私はお邪魔なんだろうけど、どうせ元々いない存在って感じだったものね』


いやいや…もっすげ~存在感でしたけど…😅


『気にしないで』


何かやっぱり汐璃さんペース…
やっとお母さんが口を開いた。


『汐璃さん』

『はい?』

『離婚するなら、この家は出てもらいます。ここは夏木家です。関係のない人間を住まわせる訳にはいきません』

『お義母さんは、どこまでも私がお嫌いなんですね…私、いい嫁になろうって努力すらさせてもらえなかった…』

汐璃が泣きだした。



あぁ…帰りたい…泣

No.284 10/11/15 10:37
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『あなたの努力って何だったの?料理にしたって、私が作ると言っただけで、手伝うなと言った覚えはない。掃除にしてもそう。ここは広いから、まずはあなたの部屋だけ綺麗にしときなさいと言っただけ』


おやおや…?汐璃さん……嫁の何たるかを、実家では教わって来なかったのかな……😓


お母さんの話しは続いた。汐璃には嫁としての選択権がたくさんあったのに、自分から気づかずに放棄していたのだ…。


『私は努力すらさせなかった覚えはない。あなたが努力しなかったのよ』


汐璃は…ぐぅの根もなかった…。

No.285 10/11/15 13:17
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『私は、夏木の家に嫁いで来て、義理の母から自主的に何かを教えてもらった事はありません。自分で見て、盗み、主人に聞き、それでもわからない事は初めて母に聞きました』


海斗は黙って聞いている。お母さんはバツイチだったので、義母に嫌われないように…と必死だったらしい。


『教えてくれれば…教えてくれればよかったじゃないですか!私はわかりませんでした。海斗さんだって何も言ってくれなかったし……』


『嫁としての心得は、自分の母親から学ぶものです。誰かに教えてもらう事ではありません』


『それでも私は、海斗さんと離れたくないんです!』


私は…いない方がいいんじゃないか…?

No.286 10/11/15 13:23
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『とりあえず、離婚も結婚も、ちゃんと話そう』


海斗が切り出した。


汐璃はわんわん泣いて話しにならない。

いっとき経って落ち着いてから汐璃が言い出した。


『みんなが幸せなんだもの!いいじゃない!私はどうしていつも邪魔者扱いなの!?』


その前に…常識的にどうなんだろう…とは考えないのだろうか。
汐璃の気持ちはわからなくはないけど…。

No.287 10/11/15 13:30
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

例えば、汐璃の言うような生活をしたとして…
汐璃の立場は何になる?

私はお母さんともうまくやっていける。海斗とも愛し合っていけるだろう。


汐璃さんに対して、どう接すればいい?



…それが狙い?
汐璃がいる事での、ぎこちない夫婦関係。ぎこちない嫁姑。ぎこちない生活。
結局は破綻…なんて…
考え過ぎかな。

No.288 10/11/15 13:36
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

「汐璃さん。私も結婚はそんなに軽々しくはできません」


『ほぉら。聞いた?海斗さん。これが桃花さんの本音よ。あなたを愛しているフリをして、いざとなったら結婚はできませんって』


汐璃は海斗に叩きつけるように言った。


『汐璃さん。俺もあなたと離婚したから、すぐに桃花と結婚とは考えませんよ』

汐璃の動きが止まった。


『愛し合ってるんでしょ?一緒になればいいじゃない。別れてあげるって言ってるのに…』


私は海斗を見た。
海斗もこちらを見て、汐璃に向き直した。

No.289 10/11/15 13:44
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『汐璃さん。あなたは何故俺と結婚したんですか?』

『それは、海斗さんが好きだったから…』


汐璃は困ったように答える。


『では、何故離婚を?』


『それは…私が…他の男性と…………』


汐璃は下を向く。


『汐璃さん…俺………』










結局、話し合いで離婚はしない事になった。

No.290 10/11/15 13:46
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗が選挙に出られる年になった。


選挙の当選発表の日、私は海斗のいる会場に出向いた。

No.291 10/11/15 13:52
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

“当確”が出た瞬間、会場が湧いた。


壇上で万歳をする人達の横で、当選者の妻が涙ながらに頭を下げていた。



私は会場の隅でそれを見ながら拍手をしていた。


私の隣に1人の男性が立った。

No.292 10/11/15 13:56
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『遅かったね』

「さすがに途中から混んでたからね」

『そっか。ご飯は?』

「まだだよ」

『この後、林さん達と祝賀会なんだ。一緒に行くだろ?』

「もちろん。あなたの妻ですからね、海斗」

『にしても、やっぱり林さんが出馬(で)てよかったな~俺なら落選だ(笑)』

「奥さんも嬉しそうね」

No.293 10/11/15 13:59
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗は選挙には出なかった。
そして私達は去年、結婚した。
今は、左手の薬指にリングが輝いている。
右手にも、もちろんはめている。





あの後どうなったのか…

No.294 10/11/15 14:03
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『汐璃さん…俺………』

海斗が覚悟を決めたように話しだした。


『俺、教師に戻るつもりなんです』


皆初耳だった。
もちろんお母さんすら知らなかった。


『どうして…父はあなたを信じてるのよ!?あなたの将来をっ!あなたは立派に父の後を継げるって…』


汐璃は海斗に縋り付く。


『お願い、やめて!そんな事絶対に許さない!じゃなきゃ私が残る意味がないじゃない!!』


『やっぱり…』


汐璃がハッとした。

No.295 10/11/15 14:10
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『汐璃さん…あなたの人生はあなたのモノですよ?どうしてお父さんの犠牲になるんですか?』


『父は絶対なの!あなたは父が認めた人だから…父が後継者にしてみたいって言った人だから結婚したのにっ!』



結局、汐璃は…安東のコマにすぎなかった。
自ら進んでコマになったとは言え……
父親が認めた男だから惚れたのだろうか…そこは定かではなかったけど、とにかく汐璃は納得しなかった。

No.296 10/11/15 14:14
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『とにかく、離婚の話しは待ってください。一緒に安東さんに会いに行きましょう…』


『嫌だってば!お父さんに嫌われてしまう!こんな体だし…行きたくないっ!』

『じゃあ、俺1人で行ってきます』


『やめて…やめて…やめてっ!!』


汐璃はうずくまって、耳を塞ぐ。



私はいたたまれなくなった。
汐璃は…海斗に父親を重ねていただけだったのか…。海斗自身を愛していた訳ではなかったのか……。


「私…帰ります…」

誰に…ともなくそう言って部屋を出た。

No.297 10/11/15 14:33
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

玄関で靴を履いていると、海斗が追いかけてきた。


『桃花』

「何か…あれだね。イロイロ…難しいね」


涙が溢れてきた。




私が…好きで好きで諦めた想いは何だったんだろう。痛い、痛いと削った気持ちは…。
水をかけられても、叩かれても…変わらなかった気持ちが初めて揺れた…。

No.298 10/11/15 17:33
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗に対する愛情が揺らいだ訳ではない。

“愛”と言うもの自体が不安になった。



あんなに海斗を愛していると思ってたのに…海斗を通して父親を見ていた?
その為にあんなにも周りを巻き込んで……


『明日、安東さんに会ってくる』

「うん……」

『桃…泣くな……』

「うん…」

必死に涙を止めた。涙を止めるのと同時に息も止めていた。

苦しい……💦

「プハッ」

『馬鹿💦💦何やってんだ💦💦』

ふふふ…久しぶりに笑いが込み上げた。

「いってらっしゃい」


海斗はものすごく抱きしめたかったらしい…
でも私は、振り向かずにまっすぐ帰った。


明日は我が身だ💡

No.299 10/11/16 02:30
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗から朝一で
【いってきます】
メールがきていた。

結局、1人で行ったらしい。
何を話しに行ったのか…それは今でもわからない。
私もあえて聞かない。
それは、海斗と汐璃、安東家の話しだから。


昼前に
【もうすぐ安東さんの家に着く…緊張してきた…💦】
【喰われるかもよ…】

【それは大変だな😄ありがとう】

【頑張れ】


それからメールが途切れた。

No.300 10/11/16 02:35
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

夜になって電話がきた。

『今大丈夫?』

「いいけど、家には電話したの?」

『まだ』

「家が先でしょ。お母さん心配してるだろうし、汐璃さんだって落ち着かないはずだよ」

『わかった。とにかく…声聞きたくて…』

「待ってるから」

『はいよ』



道理に背いてはいけない…そう思ったから。
本当は嬉しかったけど、私はまだ1番に話せる身分じゃない。

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