泥棒女猫(ネコ)
~~修羅場~~
周りにはそう見えたかも知れない。
でも、女は笑っていた…。
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そこへひょっこり海斗が現れた。
『おばさん、お疲れ様。ありがとうございます』
『あら、いいのよ~。こんな可愛い娘さんと一緒にお茶汲みなんて、滅多にできないわよ』
『桃もありがとな』
「うん」
今日はお互いゆっくり顔も見ていなかった。
『カイくん、少し休んだら?お茶入れるわ』
『すいません』
「何か食べる?」
『そこの最中でいいや』
海斗はどんなに小さな事にもお礼を言う。
「はい」
言われた最中を渡す。
『ん、ありがと』
ほらね。
『はい、カイくん、お茶。熱いからね』
『すいません、ありがとうございます』
やっと一息…悲しむ暇もないね…。
「今、お客様いないの?お母さんも呼んで来ようか」
『いや、安東さんと話してるよ』
「あぁ…」
ナルホド。
そこへ汐璃が海斗を探しにきた。
『海斗さん、やっと見つけた』
『汐璃さん。何か?』
海斗は空返事。
『あ、いえ…姿が見えなかったから…ごゆっくり』
汐璃は私と妹さんに頭を下げて、そそくさと立ち去った。
『何だい、あの子』
妹さん、フンッと鼻を鳴らした。
後に、汐璃と対面した時に『どっかで見た顔ね』
と言われるのだが…
ここでお会いしておりました。妹とかイトコ程度にしか見えなかったろうね。
まさか制服着た女子高校生と海斗が付き合ってるなんて、思いもしなかっただろう。
海斗のお父さんの急死からいっときは穏やかな日が続いた。
たまに海斗の家に顔を出したら、お母さんはいつものようにはしゃいでくれた。
海斗がいない時でも、気兼ねなく遊びに行けたのは、お母さんの人柄だろう。
海斗のお父さんは、お母さんとの結婚を後悔していると言っていたけど、それは政治的な話しで、私生活はとても幸せそうだった…とお茶友達のお手伝いさんに聞いた。
お父さんのいなくなった家は少し寂しげだったけど、残った財産等ナドで、とりあえず一生暮らせるようだった。
海斗も忙しい日々を送っていたけど、なるべく家に帰れるように…と林さんが配慮してくれていた。
『林さん。ホントに先に出馬(で)なよ』
と言う海斗の呼び掛けに、いつも笑顔で
『僕は先生の意志を継ぎたいので…』
と、海斗を先に…と言う信念を曲げなかった。
……林さんは実は超いい人だ。最初は嫌いだったけど…。
海斗も病院に駆け付けてくれた。
母は意識が戻らないままだった。
父はずっと母の手を握っている。
完全看護だけど、今夜だけはいい…と了解を得たので、海斗の運転する車で父と私は一度家に帰った。
父はシャワーを浴び、1日分の着替えだけをかばんに詰めた。
自分の車で行く…と言う父を海斗は止めた。
海斗とまた病院まで送って行った。
病院の入り口で
『すまないが…娘を頼むね』
と言い、父は病院へ入って行った。
今夜は海斗の所へ泊まる事になった。
いつも明るい海斗のお母さんが、泣きそうな顔をしていつものように手を握ってくれた。
『大丈夫、大丈夫』
お母さんの手料理を食べて、海斗の部屋へ行った。
何を話したかも思い出せないけど、海斗はずっとそばにいてくれた。
意識が戻らないまま、一週間が過ぎた。
父は仕事の帰りに毎日病院に行く。
会社も、残業はさせないように気を使ってくれていたようで、面会時間ギリギリまで病院で過ごしていた。
もうすぐ11月。
クリスマスやお正月の話しもそんなに遠くなくなった頃だった。
♪~♪
―メール受信中―
春ちゃんからだった。
【桃、どうしよう…出来ちゃった😆❤】
はっ!!!?
慌てて電話をかけた。
…出ない…
♪~♪
【ごめん💦今、ナオと病院なんだ❗後でTelする】
…了解…
『もしもし、今病院出た。ごめんね!』
「ビックリした!!何、何ヶ月?てか…おめでと~☆産む…よね?」
『もちろん!3ヶ月だって。卒業もできるよ!』
「やった~!よかったね!先輩は?」
『すっごい喜んで、今泣いてる~笑』
「アハハ。先輩らしい」
『今からうちの親に挨拶に行くって。そのあとナオんトコに行くから』
「了解、気をつけてね!明日学校来る?」
『行く、行く!また明日ね~』
あの春ちゃんが…お母さんになる…
自分が、親戚のおばさんになるような感覚を覚えた。とても幸せだった。
海斗がK県に1日泊まりで行くと言った。
林さんも一緒。林さんは日帰りを希望したのだが、あの安東に却下されたらしい。
安東主催の後援会のパーティー。と、称した娘の誕生日ア~ンド婚約発表。
今時あるんだな…的親バカ。
その日…母が…息をひきとった。
その日は仏滅だったので、次の日がお通夜になった。海斗は慌てて帰ってきてくれた。
その時は、まだ婚約の事は知らなかった。
ただただ…悲しかった。
父親の死を悲しむ暇もなかった海斗を不憫にすら思っていた。
海斗は、父に本当によくしてくれた。
父も海斗を心底信頼していた。
それは…まだ弔問客がたくさんいる中、始まった…。
安東が来たのだ。汐璃を引き連れて。
いや…汐璃が安東を連れて来た…が正しいのかも知れない。
分厚い香典。
意味がわからなかった。
父も固まっている…。
そんな中、安東が口を開いた。
『娘の婚約者がお世話になった方が亡くなったと聞いて…一大事だと駆け付けました』
娘の婚約者…?
弔問客が騒ぎ出した。
『どなたかと…勘違いをされているのではないですか?』
と、父は眉をしかめた。
そこへ海斗が出た。
『安東さん…』
『海斗くん。やっぱり間違いない』
「…海斗…?」
『安東さん、お帰りください!』
海斗が声を荒げた。
『海斗さん。私はあなたの妻になるの。今のうちから、あなたのお世話になった方には挨拶をしておく必要があります』
汐璃はそう言って、父の前に立った。
『夏木海斗の婚約者の安東汐璃です。海斗さんとどう言う関係かは存じませんが、この度はご愁傷様でした』
父はまだ固まっている。
海斗が汐璃の手を掴んで、安東の元に引っ張って行った。
『お断りすると言ったはずです。こんな真似して…お帰りください!』
『そうか…帰るぞ、汐璃』
そう言って玄関へ向かう安東。
『本気で断れると思ってる?』
捨て台詞を吐く汐璃。
そこへ大きな足音が近寄ってくる。
『こんな物いらんっっ!政治家風情が!家内が汚れるわっ!!!』
父が安東に駆け寄り、分厚い香典を投げ付けた。
あんなに激しい父は初めて見た…。
玄関にいた安東の秘書らしい女が香典を拾い、安東を見た。
『持って帰れ』
そう言うと、秘書は香典をかばんに入れ、安東と共に外に出た。
汐璃も安東を追うように外へ出た。
父は…魂が抜けたようになっていた。
海斗が駆け寄った。
『すいません…俺のせいで…』
父は海斗が大好きだ。
息子が欲しかった父は、海斗を自分の息子のように可愛がっていた。
父は海斗の肩に掴まって立ち上がって、海斗の肩を叩いた。
『君も大変だな…』
父はふっ…と笑った。
後に海斗は言う。
あの時、突き放されたら…たぶん立ち直れなかっただろう…と。
父は海斗が大好きだったから…。
いや…今でも大好きだ。
年末になっても、海斗は相変わらず忙しそうだった。
それでも、マメに連絡はくれるし、海斗のお母さんもちょいちょい連絡をくれて、ご飯やお菓子を作ったり、服やバックまで作ってくれた。
時々、父もお呼ばれして、みんなでご飯を食べたりもした。
クリスマスもそうやって過ごした。大晦日からお正月にかけては、父も海斗の家に泊まって、みんなでおめでとうを言った。
『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします』
両家とも不幸があったので、お節料理は抜きにした。お雑煮と、バラ寿司。せめてものお祝い…と言う事で。
父も海斗のお母さんもお酒が好きだったので、両家の亡くなった相方の遺影を立て、その前にお酒を添えて…供養を言い訳に(笑)グイグイ呑んでいた。
午後になり、さすがに長居し過ぎたので、帰る事にした。
私と父が帰った後…安東が来たらしい。
普通、自分より目下の人間の家に挨拶に行くものではない。
…汐璃の《海斗捕獲大作戦》の本格的な幕開けだった。
海斗のお母さんは、好き嫌いが露骨に顔や態度に出るようなタイプではないけど、汐璃だけは…生理的に受け付けない…って感じらしい。
《婚約発表》を現実にするために、凄まじい勢いで根回しをしていたらしい。
その報告と、義理の母親になる海斗のお母さんへの初のご挨拶。
それなら安東が出向くのも納得。
しかし、お母さん…
『あら。海斗のお嫁さんになる子と、昨日から年越ししたのよ~。あなたは…海斗の…何になるの?』
天然なのか…それでなければかなりイヤミだ。
お母さん、素敵すぎ✨✨
しかし…政治家も、党の重鎮ともなればかなりの力がある。
海斗のお母さんの実家の会社が…傾き始めた。
すごい、すごい。
トントント~ンと、事は進んだ。
私が高校を卒業する前に…海斗は汐璃と結婚した。
お母さんは泣いて謝った。お母さんは、結婚式には…出なかった。
夏木家の人間は、誰も出席しなかった。
代理でも立てただろう。
式は滞りなく進んだのだそうだ。
私の日常から、海斗が消えた。
汐璃との結婚が決まってから、別れる事にした。
連絡もしない事にした。
好きで好きで堪らなかったから…
連絡しなかった。
父も、海斗の話はしない。2人で毎日楽しく過ごした。
卒業も2人で…と、思っていたら、海斗のお母さんが来てくれた。
お友達のお手伝いさんと、すごいご馳走を作ってくれた。
……海斗からの卒業祝いを貰った。
海斗と汐璃はお母さんと一緒に住んでいる。
海斗の離れの部屋にはカギがかけられたらしい。
結婚してからは、海斗はほとんど家に帰らなくなったそうだ。
結婚初夜から仕事に明け暮れていたらしい。
汐璃は
『父もあまり家にはいませんでしたから』
と、強がっているとか。
父とお母さんはまた2人でお酒を呑みながら、汐璃の愚痴でグイグイやっていた…笑
海斗は家に帰っても、汐璃と寝る事はないそうだ。
それどころか、お母さんの部屋のソファーで寝るか、帰った気配を悟られないように、カギのついた自分の部屋で寝るらしい。
可哀相に…
ご飯も、お母さんが作るらしい。
と、言うよりは、お母さんが汐璃に作らせないとか。『海斗は好き嫌いが多いのよ』
とか言っちゃってるみたい。
…海斗はマザコンではない。が、汐璃からしたらマザコンにしか見えないだろう…笑
お母さんがいてくれてよかった。
お母さんの話を聞きながら、申し訳ないが汐璃の不幸を少し喜んだ。
ところが、急にお母さんが泣き出した。
泣き上戸⁉
前にも言ったけど、お母さんは“可愛らしい”がとても似合う人だ。
汐璃との生活は気が張っているのだろう…
お手伝いさんがなだめている。
父も、あまりにも急に泣き出したので驚いた。
…そういえば、海斗のお父さんが、よく泣くって言ってたな。
『桃ちゃ…ん…グス……ごっめ……ね…グス…』
ふぇ~ん…グスグス…
何となく…罪悪感…
そういえば…海斗からのプレゼントを持ってきたって事は…海斗は今日お母さんがうちに来るのを知っていたんだろうな…。
「お母さん、これ、ありがとうございました」
海斗からのプレゼントを持ち出してそう言った。
すると、とても嬉しそうに笑った。
『カイちゃんと2人で買い物に行ったのよ!』
そう言って、バックをゴソゴソし始めた。
『あれ?あれ?』
何か探している。
『早苗さん、外のポケットですよ』
お手伝いさんがお母さんの隣で耳打ちをした。
『あ、そっか』
探し物が見つかったらしい。笑
『桃ちゃん!これは私からのお祝いね』
ピンクの可愛らしい…お母さんの方が似合いそうな包みを私に差し出した。
『早苗さん…すいません。海斗くんからも…』
父が恐縮した。
『すいません…私からも…』
お手伝いさんもプレゼントを出した。
タイミングがよかった…と言うか、雰囲気が一気に和んで、みんなほぼ一斉に吹き出した。
本当に…楽しい時間だった。
お母さん達は、10時頃タクシーで帰っていった。
父はお母さん達が帰った後、片付けをして…すぐ倒れ込んだ。
……呑みすぎ。
毛布をかけて、ストーブを点け、加湿器をつけて、プレゼントの包みを空けた。
お母さんからのプレゼントは意外にも手作りではなかったけど、名前のイニシャルの刻んである、物凄く高級感のある砂時計…。
青い砂の中に…金…!?
メッセージカードに
~素敵な時を~
何だか…とても深いプレゼント。
お手伝いさん…の、由香子さんからのプレゼントは、薄い黄色い和紙で包まれていた。
開けてみると、写真立てが入っていた。
写真立てに紙が挟んであった。
【3月4日 PM6:00 レストラン・ポアレ】
…予約招待状…?
ん~手の込んだ事を…
行くべきだろうな…
そして最後に…海斗からのプレゼント…
手の平に収まるくらいの小さな包み。
メッセージカード…は、後で見よう。
薄いピンクの包みに白いリボン。
包みにもキラキラとした宝石のような装飾が施してある。…捨てられないだろ💦
中には白い箱。
開けて見ると…指輪…
慌ててメッセージカードを見る。
~ I LOVE YOU ~
…痛い…痛いよ…
由香子さんの指定した3月4日。
6時には少し早く着いた。
小洒落たお店だけど、私でも入りやすいあまり畏まらないお店。
お母さんと由香子さんが来るものだと思っていた。
お店の人に招待状を見せると、
『お待ちしておりました。お連れ様は先にお越しですよ。どうぞ…』
と、極上飛び切りスマイルで言われた。
…何て接客向きな人なんだろう…。
お店の人に先導され、ドンドン店の奥に通される。
厨房の横の狭い通路を通り、更に奥へ…💦
『こちらです』
こっ…個室!?
コンコンと部屋をノックして、ドアを開けた。
私の位置からは中にいる人は見えなかった。
『ごゆっくりどうぞ…すぐにお料理、お持ちいたします』
相変わらずな極上飛び切りスマイル…。
お店の人は厨房に入って行った。
部屋の中を覗くと…
「…っ!海斗っ!?」
『…桃…』
「え…あ、元気そうで、お久しぶりです。あれ、何で?あ…お母さん達は?」
人間、慌てると本当に思考回路が逆に回る…と言うか、止まると言うか。
とにかく落ち着かない。
自分ですら何を言ったんだか。
海斗が近付いてくる。
『逢いたかった…』
優しく抱きしめられる。
意味がわからなかったけど…何だか落ち着いた。
ほんの2ヶ月くらい。
彼にはどれだけ長かったんだろう…。
肩が震えている…。
泣いてる…?
『由香子さんからの誕生日プレゼントなんだ』
3月5日は海斗の誕生日。
「そっか…」
『今夜は帰らない』
「……うん……」
その日は…帰らなかった。父には…由香子さんから連絡が入っていたらしい。
帰らない…と電話を入れたら…
『ダメな父親だな…本当は止めるべきなんだろうけど……』
心なしか…父の声は嬉しそうだった。
極上飛び切りスマイルの店員さんは、店のオーナーで、由香子さんの息子さんらしい。
海斗の誕生日と、私の卒業祝いに…とものすごい料理が出てきた。
デザートもでっかいケーキ。
食べる分だけ切り分けて貰って、残りはお持ち帰り…と言うか、明日取りに来ます😅状態。
由香子さんは実はお手伝いさんではなく、本当にお母さんの友達で、お手伝い役は“趣味”らしかった。
この時、初めて知った。
息子さんから、ホテルの招待状を貰った。
『これは僕からです』
県内随一のホテル…しかも…お部屋…スイートなんですけど…。
『あ、気にしないでくださいね。父が社長なんで』
…もう…好きにしてください…。泣
甘い夜…熱くて…愛おしくて……
今後の事を考えた…。
やっぱり…逢わない方がいいだろう…。
だから…今夜は…
時計が12時を告げる。
「おめでとう…」
好きだから抱きたい…それまではよくわからなかった。でも…その日は本当に抱かれたいと思った。
こういう気持ちなんだな…。
ホテルのチェックアウト時間ギリギリまでいた。
不思議と、離れる苦痛は前ほどは感じなかった。
「逢わない方がいい…」
海斗は納得してくれた。
逢おうと思えば逢える距離。でも…仮面とは言え汐璃のモノ。
もしかしたら、海斗は辛かったかもしれない…。
でも笑顔で別れられた。
お互いの道を…別々の道を歩き始めるために。
それから2年が過ぎた。
父とお母さんはとても仲がいい。でも、変な関係にはならない。いつもお互いの連れ合いとのノロケ話しをしたり、汐璃の愚痴を言ったりしている。
由香子さんもよく来る。
あのまま、私と海斗がヨリを戻す事を期待していたようだったけど…笑
感謝は、言葉じゃ言い切れなかったけど…。
成人式には、お母さんが選んだ着物を着て行った。
お母さん、はしゃぎまくり…笑
海斗の妹は、18になってすぐ結婚して、海外で暮らしている。
ただでさえ滅多に戻らない彼女は、汐璃が居座ってからは連絡すらよこさなくなったとか…。
だからお母さんは寂しいのだろう。
海斗がいない日は、ほとんどうちにいるような気が…
汐璃はプライドが高いので、夏木家でのはみ出し生活を安東には話していないのだろう…
そんな事したら多分、安東は乗り込んでくる。
もしかしたら別れろ!まで言うかも知れない。
汐璃は…意地で海斗の妻で居続けていた。
憐れ………。
『妻です』
と、紹介される場もある。それだけが楽しみ、喜び。
結婚して、一度も自分に触れない海斗。
探偵を雇った事もあるそうだ。
女の影もない。
当たり前だ。
…ざまあみろ…。
おっと…失礼…。
海斗には逢わない。連絡もしない。
けど、お母さんは来る😅
そんな生活が当たり前になっていた。
仕事も順調。
責任ある仕事も1人で任せられようにもなった。
もうすぐお母さんの誕生日。社会人3年目の4月…
お母さんの誕生日プレゼントを選びに、ショッピングモールへ行った。
久しぶりの登場の春ちゃんは、もう2人のママ。
チビちゃんとチビチビちゃんを連れて、気晴らしに誘った。
お母さんのプレゼントを選んで、チビちゃんとチビチビちゃんへの玩具のプレゼントを買い、ランチを済ませた。
『変な関係だね~』
食事のコーヒーを飲みながら春ちゃんが笑った。
「お母さん、大好きなんだもん」
『夏やん…桃の事、まだ好きだよ』
春ちゃんは囁くように言った。
「ん?」
『こないだナオと買い物に行った時に、偶然会ったんだ。夏やんと』
「そっか」
『す~~~~んごい、心配してた。桃の事』
「え、私の事?」
体の事とか?仕事の事とか?
『まだ彼氏はいないのかな~だって😁』
「!」
『アハハハハ~』
春ちゃんは、散歩がてらナオ先輩の会社まで歩いて行って、一緒に帰るからと、そのまま別れた。
晩御飯の材料を買うのに、海斗の家に近いスーパーに行ったら、お母さんがいた。
相変わらず、私の顔を見るとはしゃぐはしゃぐ…笑。
今夜は海斗は帰ってくるらしい。
汐璃も買い物に来ている…と言う事で、すぐに離れた。
居た…。
お母さんとは別会計。先に帰って行った。
買い物を済ませて外に出たら、お母さんに呼び止められた。
『はい、これ』
お刺身の盛り合わせ…
『お父様に♪』
「(笑)喜びます」
『じゃ~ねぇ~♪』
手を振り振り去って行った。
汐璃は…以前よりかなり太った。
私もそんなに細くはない。
が…間違いなく私より…。ストレスからくる過食症だったのだと、後から聞いた。
そういえば…お菓子とかなんとか買ってたな…。
海斗の収入があるから、仕事はしていない。
知らない土地で知り合いもいないし、出掛けもしない。
食っちゃ寝…な生活。
憐れ…過ぎる…😓
別段会わなくてもいい奴とは結構会う。
が、逢いたい人とはなかなか逢えない…私はそういう人間だ。
行動範囲が決まっているからだろうな。
海斗とも、逢うつもりになればいつでも逢える距離だけど、全然逢わない。
もちろん、汐璃とも会わない。
あの日は…
海斗のお父さんの命日だった。
毎年お墓参りには行っていたけど、海斗に逢う事はなかった。
その年の命日は日曜日…。
勝手にお父さんに似合いそうな色を想像して、花屋さんでお墓参り用のお花の盛り合わせ(笑)を作ってもらった。
淡い色を基調に、白をメインにしてもらった。
昔から、お墓参りは午前中…と言う習慣が我が家にはあり、それは他人様を参るときも一緒だった。
もしかしたら、海斗は汐璃を連れてお墓参りに来るかも知れない…と思い、いない事を確認しながらそそくさと済ませ、ザッとお墓の周りの草を抜き、逃げるように帰ろうとした…
その時…前から海斗が1人で現れた。
隠れる場所もなく、立ち尽くす私に気付いた海斗も、その場で立ち止まった。
もう1度、お父さんのお墓の前まで一緒に行き、お参りをする海斗を見ていた。
その時…駐車場からこちらを見ている汐璃に気付いた。
花は持っていない。
墓参りではないのか…。
今は特にやましい事はない。私は慌てる事もないと思ったが…汐璃はそうは受け取らなかったようだった。
「汐璃さん…一緒に来たの?」
『はっ?いや。あいつは家で寝てたよ』
「ふぅん…」
私の視線に気付き、海斗は駐車場の方を見た。
『はぁ…』
海斗は大きな溜め息をついた。何に対する溜め息だったのだろう。
海斗の視線に気付いた汐璃は、帰って行ってしまった。
「…お墓参りじゃなかったんだね…」
『来た事ないよ』
「ふぅん…」
海斗は私を見た。
『元気そうだ』
「元気だよ。海斗も、元気そう。忙しいんでしょう?」
『林さんがいるからね。楽だよ』
「そっか…」
『…たまには…飯くらい行かないか?』
「…たまに…ならね…」
私は海斗と別れてからも、携帯番号もアドレスも変えていない。
『連絡する…』
と言う海斗に
「メールなら」
と答えた。
「アドレス変わったでしょ?私は変えてないから、メールしててね」
『変えてないよ』
「え…」
私は…心のどこかで海斗からの連絡を待っていた。だから番号もアドレスも変えなかった。
海斗も…同じだった。
携帯のメモりから海斗の名前は消していた。
ただ…
♪~♪
【新着メール受信中】
きた……
【名無しの権兵衛さん】
ん………
………登録しよ………
【またメールできる日がくるとは思わなかったよ…アドレス変えなかったんだな…お互い、連絡待ちだったのかな】
――送信――
【そうだね…✨少なくとも私は待ちだったょ😄今どこ?】
受【今、事務所😄来る?】
送【バカ😜行かないよ】
連絡方法にメールを選んだのにはちゃんと理由がある。
電話では履歴が残る。
メールは消せば残らない。誰に何を送ったのか、誰から受けたのか…個人ではそんな情報まではわからない。
汐璃がどこまでの女なのかわからない。
海斗だって、家でお風呂に入る事もあるだろう。
そんな時に、浴室まで携帯を持って入る訳がない。
そのすきに携帯を見ないとも限らない。
受【会えてよかった…】
送【私も…でも、汐璃さんは大丈夫?】
受【あいつの事は気にしなくていい】
送【そういう訳にはいかないでしょ…😓】
受【いいから…俺の事だけ考えて】
…海斗の事考えるから、もれなく汐璃がついてくるんですけど……
送【了解😄海斗の事だけ考えるよ✨✨】
受【指輪…してくれてたね😄】
貰った日からずっとつけてる。1日だって外してない。左手の薬指…には少し大きくて…右手の薬指にはめていた。
送【ありがとね💓ずっとつけてる✨】
受【今度は左手だな】
あれ…左手にはまらないの知ってたんだ。
てか…左手は結婚指輪では…
この時から、海斗はどうにかして汐璃と別れる手段を探していた。
汐璃は、お父さんの命日からこっち、必死に“私”を探していた。
探偵を雇っても、早々に見つかる訳はない。
現在進行形な関係ではない。あれからメールはするようになったけど、お互いの忙しさも重なってまだ逢う事はできていない。
そこで“元カノ”の線に切り替えたのだろう。
ビンゴ❗やっと“私”にたどり着いたらしい。
ただ…浮気の証拠がない。この前のお墓の一件も、ほんの偶然だったのだから…さすがに探偵もお手上げだっただろう。
日頃の私は…
家と会社の往復以外には、夕飯の買い出しか、春ちゃんの家に行くか…会社の人達と飲みに行く程度。
趣味は特にないし、今は仕事が恋人だ。
海斗にも、携帯のデータは消すように言ってある。
が…やましい話はしない。毎日の出来事や会社の愚痴、父の話やお母さんの話など…愛を囁いたのは最初の日だけだった。
着信履歴は個人が取得できるデータには残らない…と聞いたので、たまに私から電話をかけた。
愛はそこで育んだ。
離婚を望んだ訳ではない。ただ、海斗と何かが繋がっているのが嬉しかった。
ある日…海斗から着信があった。
…海斗には電話はしないように言ってある。
怪し過ぎる………
海斗が私を何と登録しているかわからない。
一か八か…
「はい、お待たせしました。どうしました?夏木さん」
当たり障りなく、名乗らないように出た。
ら、切れた。
…汐璃だな………
海斗はお風呂だろうな。
汐璃がかけてきた…と言う事は、女の名前で登録してあるんだろうな…本名かな。
私は海斗を“名無しの権兵衛”扱いにしていたのに…笑
その後は着信はなかった。女の名前、全員にかけているのかな…ご愁傷様な事だな…
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小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
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🍀語りあかそうの里🍀1️⃣0️⃣
アザーズ🫡 ここは楽しくな〜んでも話せる「憩いの場所🍀」となっており〜ま〜す🤗 日頃の事…
416レス 3816HIT 理沙 (50代 女性 ) 名必 年性必 -
店員が水分補給してたら怒りますか?
サービス業で店員です。 水分補給というのは、もちろんお客様の前で堂々と飲むとかではなく、手の空いた…
22レス 643HIT 匿名さん -
友達ってなんだろう
友達に恋愛相談をしていました。 僕は人間関係が苦手な面があるので脈ナシで相手にされずなところがあり…
33レス 697HIT 匿名さん -
20代のお姉さん
さっき買い物帰りにフードコートでかき揚げそばを頼み、タイマーが鳴ったので取りに行くと 頼んで無い海…
6レス 240HIT 匿名さん -
自分から距離置きたがったくせに
浮気関係にありました。 些細なことで喧嘩したり嫌な空気になったと性格的に合わないんだと思います。そ…
7レス 263HIT 匿名さん (40代 女性 ) - もっと見る