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もも( ♀ rZLGh )
11/02/14 23:30(更新日時)

~~修羅場~~

周りにはそう見えたかも知れない。

でも、女は笑っていた…。

No.1441088 10/10/12 14:44(スレ作成日時)

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No.101 10/11/01 10:41
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

そこへひょっこり海斗が現れた。

『おばさん、お疲れ様。ありがとうございます』

『あら、いいのよ~。こんな可愛い娘さんと一緒にお茶汲みなんて、滅多にできないわよ』

『桃もありがとな』

「うん」

今日はお互いゆっくり顔も見ていなかった。


『カイくん、少し休んだら?お茶入れるわ』

『すいません』

「何か食べる?」

『そこの最中でいいや』

海斗はどんなに小さな事にもお礼を言う。

「はい」

言われた最中を渡す。

『ん、ありがと』

ほらね。

『はい、カイくん、お茶。熱いからね』

『すいません、ありがとうございます』

やっと一息…悲しむ暇もないね…。

No.102 10/11/01 10:55
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

「今、お客様いないの?お母さんも呼んで来ようか」

『いや、安東さんと話してるよ』

「あぁ…」
ナルホド。


そこへ汐璃が海斗を探しにきた。

『海斗さん、やっと見つけた』

『汐璃さん。何か?』

海斗は空返事。

『あ、いえ…姿が見えなかったから…ごゆっくり』


汐璃は私と妹さんに頭を下げて、そそくさと立ち去った。


『何だい、あの子』

妹さん、フンッと鼻を鳴らした。



後に、汐璃と対面した時に『どっかで見た顔ね』


と言われるのだが…

ここでお会いしておりました。妹とかイトコ程度にしか見えなかったろうね。
まさか制服着た女子高校生と海斗が付き合ってるなんて、思いもしなかっただろう。

No.103 10/11/01 12:46
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗のお父さんの急死からいっときは穏やかな日が続いた。

たまに海斗の家に顔を出したら、お母さんはいつものようにはしゃいでくれた。

海斗がいない時でも、気兼ねなく遊びに行けたのは、お母さんの人柄だろう。


海斗のお父さんは、お母さんとの結婚を後悔していると言っていたけど、それは政治的な話しで、私生活はとても幸せそうだった…とお茶友達のお手伝いさんに聞いた。


お父さんのいなくなった家は少し寂しげだったけど、残った財産等ナドで、とりあえず一生暮らせるようだった。

No.104 10/11/01 12:51
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗も忙しい日々を送っていたけど、なるべく家に帰れるように…と林さんが配慮してくれていた。


『林さん。ホントに先に出馬(で)なよ』

と言う海斗の呼び掛けに、いつも笑顔で

『僕は先生の意志を継ぎたいので…』

と、海斗を先に…と言う信念を曲げなかった。
……林さんは実は超いい人だ。最初は嫌いだったけど…。

No.105 10/11/01 12:54
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

~~肌寒い朝だった…


母が倒れ、意識がないまま病院に運ばれた…

No.106 10/11/01 13:01
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗も病院に駆け付けてくれた。

母は意識が戻らないままだった。
父はずっと母の手を握っている。
完全看護だけど、今夜だけはいい…と了解を得たので、海斗の運転する車で父と私は一度家に帰った。

父はシャワーを浴び、1日分の着替えだけをかばんに詰めた。


自分の車で行く…と言う父を海斗は止めた。

海斗とまた病院まで送って行った。


病院の入り口で
『すまないが…娘を頼むね』
と言い、父は病院へ入って行った。


今夜は海斗の所へ泊まる事になった。

No.107 10/11/01 13:04
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

いつも明るい海斗のお母さんが、泣きそうな顔をしていつものように手を握ってくれた。

『大丈夫、大丈夫』


お母さんの手料理を食べて、海斗の部屋へ行った。


何を話したかも思い出せないけど、海斗はずっとそばにいてくれた。

No.108 10/11/01 13:08
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

意識が戻らないまま、一週間が過ぎた。

父は仕事の帰りに毎日病院に行く。
会社も、残業はさせないように気を使ってくれていたようで、面会時間ギリギリまで病院で過ごしていた。


もうすぐ11月。
クリスマスやお正月の話しもそんなに遠くなくなった頃だった。

No.109 10/11/01 13:12
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

♪~♪
―メール受信中―

春ちゃんからだった。

【桃、どうしよう…出来ちゃった😆❤】


はっ!!!?


慌てて電話をかけた。


…出ない…

♪~♪
【ごめん💦今、ナオと病院なんだ❗後でTelする】


…了解…

No.110 10/11/01 13:19
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『もしもし、今病院出た。ごめんね!』

「ビックリした!!何、何ヶ月?てか…おめでと~☆産む…よね?」

『もちろん!3ヶ月だって。卒業もできるよ!』

「やった~!よかったね!先輩は?」

『すっごい喜んで、今泣いてる~笑』

「アハハ。先輩らしい」

『今からうちの親に挨拶に行くって。そのあとナオんトコに行くから』

「了解、気をつけてね!明日学校来る?」

『行く、行く!また明日ね~』



あの春ちゃんが…お母さんになる…
自分が、親戚のおばさんになるような感覚を覚えた。とても幸せだった。

No.111 10/11/01 13:20
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

人生、山あり谷あり。

山の次は谷…しかも、大きな山だっただけに…谷も深かった…。





…汐璃に…してやられた。

No.112 10/11/01 13:25
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗がK県に1日泊まりで行くと言った。
林さんも一緒。林さんは日帰りを希望したのだが、あの安東に却下されたらしい。



安東主催の後援会のパーティー。と、称した娘の誕生日ア~ンド婚約発表。

今時あるんだな…的親バカ。
その日…母が…息をひきとった。

No.113 10/11/01 13:33
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

その日は仏滅だったので、次の日がお通夜になった。海斗は慌てて帰ってきてくれた。

その時は、まだ婚約の事は知らなかった。

ただただ…悲しかった。
父親の死を悲しむ暇もなかった海斗を不憫にすら思っていた。


海斗は、父に本当によくしてくれた。
父も海斗を心底信頼していた。


それは…まだ弔問客がたくさんいる中、始まった…。

No.114 10/11/01 13:40
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

安東が来たのだ。汐璃を引き連れて。
いや…汐璃が安東を連れて来た…が正しいのかも知れない。

分厚い香典。

意味がわからなかった。
父も固まっている…。
そんな中、安東が口を開いた。


『娘の婚約者がお世話になった方が亡くなったと聞いて…一大事だと駆け付けました』


娘の婚約者…?
弔問客が騒ぎ出した。

『どなたかと…勘違いをされているのではないですか?』
と、父は眉をしかめた。

そこへ海斗が出た。

『安東さん…』

『海斗くん。やっぱり間違いない』

「…海斗…?」

『安東さん、お帰りください!』

海斗が声を荒げた。


『海斗さん。私はあなたの妻になるの。今のうちから、あなたのお世話になった方には挨拶をしておく必要があります』


汐璃はそう言って、父の前に立った。

No.115 10/11/01 13:50
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

『夏木海斗の婚約者の安東汐璃です。海斗さんとどう言う関係かは存じませんが、この度はご愁傷様でした』

父はまだ固まっている。


海斗が汐璃の手を掴んで、安東の元に引っ張って行った。

『お断りすると言ったはずです。こんな真似して…お帰りください!』

『そうか…帰るぞ、汐璃』

そう言って玄関へ向かう安東。
『本気で断れると思ってる?』
捨て台詞を吐く汐璃。


そこへ大きな足音が近寄ってくる。

『こんな物いらんっっ!政治家風情が!家内が汚れるわっ!!!』

父が安東に駆け寄り、分厚い香典を投げ付けた。


あんなに激しい父は初めて見た…。
玄関にいた安東の秘書らしい女が香典を拾い、安東を見た。
『持って帰れ』
そう言うと、秘書は香典をかばんに入れ、安東と共に外に出た。

No.116 10/11/01 13:56
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

汐璃も安東を追うように外へ出た。

父は…魂が抜けたようになっていた。
海斗が駆け寄った。

『すいません…俺のせいで…』

父は海斗が大好きだ。
息子が欲しかった父は、海斗を自分の息子のように可愛がっていた。


父は海斗の肩に掴まって立ち上がって、海斗の肩を叩いた。

『君も大変だな…』

父はふっ…と笑った。




後に海斗は言う。
あの時、突き放されたら…たぶん立ち直れなかっただろう…と。

父は海斗が大好きだったから…。
いや…今でも大好きだ。

No.117 10/11/02 11:23
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

それから約1ヶ月。父も少しは元気になり、仕事も前のようにこなすようになった。

12月半ば…就職試験を受け、1週間後には合格通知がきた。


もうすぐクリスマス…。

No.118 10/11/02 13:00
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

年末になっても、海斗は相変わらず忙しそうだった。

それでも、マメに連絡はくれるし、海斗のお母さんもちょいちょい連絡をくれて、ご飯やお菓子を作ったり、服やバックまで作ってくれた。
時々、父もお呼ばれして、みんなでご飯を食べたりもした。


クリスマスもそうやって過ごした。大晦日からお正月にかけては、父も海斗の家に泊まって、みんなでおめでとうを言った。

『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします』

No.119 10/11/02 13:09
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

両家とも不幸があったので、お節料理は抜きにした。お雑煮と、バラ寿司。せめてものお祝い…と言う事で。

父も海斗のお母さんもお酒が好きだったので、両家の亡くなった相方の遺影を立て、その前にお酒を添えて…供養を言い訳に(笑)グイグイ呑んでいた。


午後になり、さすがに長居し過ぎたので、帰る事にした。



私と父が帰った後…安東が来たらしい。
普通、自分より目下の人間の家に挨拶に行くものではない。

…汐璃の《海斗捕獲大作戦》の本格的な幕開けだった。

No.120 10/11/02 13:19
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗のお母さんは、好き嫌いが露骨に顔や態度に出るようなタイプではないけど、汐璃だけは…生理的に受け付けない…って感じらしい。


《婚約発表》を現実にするために、凄まじい勢いで根回しをしていたらしい。


その報告と、義理の母親になる海斗のお母さんへの初のご挨拶。
それなら安東が出向くのも納得。


しかし、お母さん…
『あら。海斗のお嫁さんになる子と、昨日から年越ししたのよ~。あなたは…海斗の…何になるの?』

天然なのか…それでなければかなりイヤミだ。
お母さん、素敵すぎ✨✨

No.121 10/11/02 13:25
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

しかし…政治家も、党の重鎮ともなればかなりの力がある。



海斗のお母さんの実家の会社が…傾き始めた。



すごい、すごい。



トントント~ンと、事は進んだ。

私が高校を卒業する前に…海斗は汐璃と結婚した。
お母さんは泣いて謝った。お母さんは、結婚式には…出なかった。
夏木家の人間は、誰も出席しなかった。
代理でも立てただろう。
式は滞りなく進んだのだそうだ。

No.122 10/11/02 13:33
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

私の日常から、海斗が消えた。

汐璃との結婚が決まってから、別れる事にした。
連絡もしない事にした。
好きで好きで堪らなかったから…
連絡しなかった。


父も、海斗の話はしない。2人で毎日楽しく過ごした。
卒業も2人で…と、思っていたら、海斗のお母さんが来てくれた。
お友達のお手伝いさんと、すごいご馳走を作ってくれた。
……海斗からの卒業祝いを貰った。


海斗と汐璃はお母さんと一緒に住んでいる。
海斗の離れの部屋にはカギがかけられたらしい。

結婚してからは、海斗はほとんど家に帰らなくなったそうだ。
結婚初夜から仕事に明け暮れていたらしい。
汐璃は
『父もあまり家にはいませんでしたから』
と、強がっているとか。

父とお母さんはまた2人でお酒を呑みながら、汐璃の愚痴でグイグイやっていた…笑

No.123 10/11/02 13:39
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗は家に帰っても、汐璃と寝る事はないそうだ。

それどころか、お母さんの部屋のソファーで寝るか、帰った気配を悟られないように、カギのついた自分の部屋で寝るらしい。
可哀相に…

ご飯も、お母さんが作るらしい。
と、言うよりは、お母さんが汐璃に作らせないとか。『海斗は好き嫌いが多いのよ』
とか言っちゃってるみたい。


…海斗はマザコンではない。が、汐璃からしたらマザコンにしか見えないだろう…笑


お母さんがいてくれてよかった。
お母さんの話を聞きながら、申し訳ないが汐璃の不幸を少し喜んだ。

ところが、急にお母さんが泣き出した。

泣き上戸⁉

No.124 10/11/02 13:45
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

前にも言ったけど、お母さんは“可愛らしい”がとても似合う人だ。
汐璃との生活は気が張っているのだろう…
お手伝いさんがなだめている。

父も、あまりにも急に泣き出したので驚いた。

…そういえば、海斗のお父さんが、よく泣くって言ってたな。


『桃ちゃ…ん…グス……ごっめ……ね…グス…』

ふぇ~ん…グスグス…


何となく…罪悪感…

そういえば…海斗からのプレゼントを持ってきたって事は…海斗は今日お母さんがうちに来るのを知っていたんだろうな…。

No.125 10/11/02 13:54
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

「お母さん、これ、ありがとうございました」

海斗からのプレゼントを持ち出してそう言った。


すると、とても嬉しそうに笑った。

『カイちゃんと2人で買い物に行ったのよ!』

そう言って、バックをゴソゴソし始めた。

『あれ?あれ?』

何か探している。

『早苗さん、外のポケットですよ』

お手伝いさんがお母さんの隣で耳打ちをした。

『あ、そっか』

探し物が見つかったらしい。笑


『桃ちゃん!これは私からのお祝いね』

ピンクの可愛らしい…お母さんの方が似合いそうな包みを私に差し出した。

『早苗さん…すいません。海斗くんからも…』

父が恐縮した。

『すいません…私からも…』
お手伝いさんもプレゼントを出した。

タイミングがよかった…と言うか、雰囲気が一気に和んで、みんなほぼ一斉に吹き出した。

No.126 10/11/02 14:01
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

本当に…楽しい時間だった。
お母さん達は、10時頃タクシーで帰っていった。


父はお母さん達が帰った後、片付けをして…すぐ倒れ込んだ。

……呑みすぎ。


毛布をかけて、ストーブを点け、加湿器をつけて、プレゼントの包みを空けた。

お母さんからのプレゼントは意外にも手作りではなかったけど、名前のイニシャルの刻んである、物凄く高級感のある砂時計…。
青い砂の中に…金…!?

メッセージカードに
~素敵な時を~


何だか…とても深いプレゼント。

No.127 10/11/02 14:09
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

お手伝いさん…の、由香子さんからのプレゼントは、薄い黄色い和紙で包まれていた。

開けてみると、写真立てが入っていた。
写真立てに紙が挟んであった。
【3月4日 PM6:00 レストラン・ポアレ】
…予約招待状…?


ん~手の込んだ事を…
行くべきだろうな…


そして最後に…海斗からのプレゼント…

No.128 10/11/02 14:17
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

手の平に収まるくらいの小さな包み。

メッセージカード…は、後で見よう。


薄いピンクの包みに白いリボン。
包みにもキラキラとした宝石のような装飾が施してある。…捨てられないだろ💦

中には白い箱。
開けて見ると…指輪…

慌ててメッセージカードを見る。




~ I LOVE YOU ~




…痛い…痛いよ…

No.129 10/11/02 14:28
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

由香子さんの指定した3月4日。
6時には少し早く着いた。

小洒落たお店だけど、私でも入りやすいあまり畏まらないお店。


お母さんと由香子さんが来るものだと思っていた。


お店の人に招待状を見せると、
『お待ちしておりました。お連れ様は先にお越しですよ。どうぞ…』
と、極上飛び切りスマイルで言われた。
…何て接客向きな人なんだろう…。


お店の人に先導され、ドンドン店の奥に通される。

厨房の横の狭い通路を通り、更に奥へ…💦

『こちらです』

こっ…個室!?


コンコンと部屋をノックして、ドアを開けた。
私の位置からは中にいる人は見えなかった。

『ごゆっくりどうぞ…すぐにお料理、お持ちいたします』

相変わらずな極上飛び切りスマイル…。

お店の人は厨房に入って行った。

部屋の中を覗くと…

「…っ!海斗っ!?」

『…桃…』

No.130 10/11/02 14:37
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

「え…あ、元気そうで、お久しぶりです。あれ、何で?あ…お母さん達は?」


人間、慌てると本当に思考回路が逆に回る…と言うか、止まると言うか。
とにかく落ち着かない。


自分ですら何を言ったんだか。

海斗が近付いてくる。


『逢いたかった…』

優しく抱きしめられる。
意味がわからなかったけど…何だか落ち着いた。


ほんの2ヶ月くらい。
彼にはどれだけ長かったんだろう…。
肩が震えている…。

泣いてる…?


『由香子さんからの誕生日プレゼントなんだ』


3月5日は海斗の誕生日。

「そっか…」

『今夜は帰らない』

「……うん……」




その日は…帰らなかった。父には…由香子さんから連絡が入っていたらしい。

帰らない…と電話を入れたら…
『ダメな父親だな…本当は止めるべきなんだろうけど……』
心なしか…父の声は嬉しそうだった。

No.131 10/11/02 14:45
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

極上飛び切りスマイルの店員さんは、店のオーナーで、由香子さんの息子さんらしい。


海斗の誕生日と、私の卒業祝いに…とものすごい料理が出てきた。
デザートもでっかいケーキ。

食べる分だけ切り分けて貰って、残りはお持ち帰り…と言うか、明日取りに来ます😅状態。


由香子さんは実はお手伝いさんではなく、本当にお母さんの友達で、お手伝い役は“趣味”らしかった。
この時、初めて知った。


息子さんから、ホテルの招待状を貰った。
『これは僕からです』


県内随一のホテル…しかも…お部屋…スイートなんですけど…。


『あ、気にしないでくださいね。父が社長なんで』


…もう…好きにしてください…。泣

No.132 10/11/02 14:50
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

甘い夜…熱くて…愛おしくて……





今後の事を考えた…。





やっぱり…逢わない方がいいだろう…。


だから…今夜は…

時計が12時を告げる。
「おめでとう…」



好きだから抱きたい…それまではよくわからなかった。でも…その日は本当に抱かれたいと思った。
こういう気持ちなんだな…。

No.133 10/11/02 14:54
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

ホテルのチェックアウト時間ギリギリまでいた。


不思議と、離れる苦痛は前ほどは感じなかった。


「逢わない方がいい…」

海斗は納得してくれた。


逢おうと思えば逢える距離。でも…仮面とは言え汐璃のモノ。



もしかしたら、海斗は辛かったかもしれない…。
でも笑顔で別れられた。



お互いの道を…別々の道を歩き始めるために。

No.134 10/11/02 14:58
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

それから2年が過ぎた。
父とお母さんはとても仲がいい。でも、変な関係にはならない。いつもお互いの連れ合いとのノロケ話しをしたり、汐璃の愚痴を言ったりしている。

由香子さんもよく来る。

あのまま、私と海斗がヨリを戻す事を期待していたようだったけど…笑
感謝は、言葉じゃ言い切れなかったけど…。

No.135 10/11/02 15:01
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

成人式には、お母さんが選んだ着物を着て行った。
お母さん、はしゃぎまくり…笑


海斗の妹は、18になってすぐ結婚して、海外で暮らしている。
ただでさえ滅多に戻らない彼女は、汐璃が居座ってからは連絡すらよこさなくなったとか…。

だからお母さんは寂しいのだろう。
海斗がいない日は、ほとんどうちにいるような気が…

No.136 10/11/02 15:08
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

汐璃はプライドが高いので、夏木家でのはみ出し生活を安東には話していないのだろう…

そんな事したら多分、安東は乗り込んでくる。
もしかしたら別れろ!まで言うかも知れない。



汐璃は…意地で海斗の妻で居続けていた。
憐れ………。


『妻です』
と、紹介される場もある。それだけが楽しみ、喜び。

結婚して、一度も自分に触れない海斗。
探偵を雇った事もあるそうだ。

女の影もない。
当たり前だ。


…ざまあみろ…。
おっと…失礼…。

No.137 10/11/02 15:20
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

海斗には逢わない。連絡もしない。
けど、お母さんは来る😅


そんな生活が当たり前になっていた。
仕事も順調。
責任ある仕事も1人で任せられようにもなった。


もうすぐお母さんの誕生日。社会人3年目の4月…

お母さんの誕生日プレゼントを選びに、ショッピングモールへ行った。



久しぶりの登場の春ちゃんは、もう2人のママ。

チビちゃんとチビチビちゃんを連れて、気晴らしに誘った。



お母さんのプレゼントを選んで、チビちゃんとチビチビちゃんへの玩具のプレゼントを買い、ランチを済ませた。


『変な関係だね~』

食事のコーヒーを飲みながら春ちゃんが笑った。


「お母さん、大好きなんだもん」


『夏やん…桃の事、まだ好きだよ』


春ちゃんは囁くように言った。

「ん?」

『こないだナオと買い物に行った時に、偶然会ったんだ。夏やんと』

「そっか」

『す~~~~んごい、心配してた。桃の事』

「え、私の事?」

体の事とか?仕事の事とか?


『まだ彼氏はいないのかな~だって😁』

「!」

『アハハハハ~』

No.138 10/11/02 15:33
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

春ちゃんは、散歩がてらナオ先輩の会社まで歩いて行って、一緒に帰るからと、そのまま別れた。
晩御飯の材料を買うのに、海斗の家に近いスーパーに行ったら、お母さんがいた。


相変わらず、私の顔を見るとはしゃぐはしゃぐ…笑。


今夜は海斗は帰ってくるらしい。
汐璃も買い物に来ている…と言う事で、すぐに離れた。

居た…。
お母さんとは別会計。先に帰って行った。

買い物を済ませて外に出たら、お母さんに呼び止められた。

『はい、これ』

お刺身の盛り合わせ…

『お父様に♪』

「(笑)喜びます」

『じゃ~ねぇ~♪』

手を振り振り去って行った。


汐璃は…以前よりかなり太った。
私もそんなに細くはない。

が…間違いなく私より…。ストレスからくる過食症だったのだと、後から聞いた。
そういえば…お菓子とかなんとか買ってたな…。

海斗の収入があるから、仕事はしていない。
知らない土地で知り合いもいないし、出掛けもしない。
食っちゃ寝…な生活。
憐れ…過ぎる…😓

No.139 10/11/02 15:38
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

別段会わなくてもいい奴とは結構会う。
が、逢いたい人とはなかなか逢えない…私はそういう人間だ。
行動範囲が決まっているからだろうな。


海斗とも、逢うつもりになればいつでも逢える距離だけど、全然逢わない。
もちろん、汐璃とも会わない。



あの日は…
海斗のお父さんの命日だった。
毎年お墓参りには行っていたけど、海斗に逢う事はなかった。
その年の命日は日曜日…。

No.140 10/11/02 15:41
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

勝手にお父さんに似合いそうな色を想像して、花屋さんでお墓参り用のお花の盛り合わせ(笑)を作ってもらった。

淡い色を基調に、白をメインにしてもらった。



昔から、お墓参りは午前中…と言う習慣が我が家にはあり、それは他人様を参るときも一緒だった。

No.141 10/11/02 15:45
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

もしかしたら、海斗は汐璃を連れてお墓参りに来るかも知れない…と思い、いない事を確認しながらそそくさと済ませ、ザッとお墓の周りの草を抜き、逃げるように帰ろうとした…


その時…前から海斗が1人で現れた。


隠れる場所もなく、立ち尽くす私に気付いた海斗も、その場で立ち止まった。

No.142 10/11/02 15:48
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

不自然な距離…


「1人?」

『お袋は後から1人で来るよ』

私は汐璃の存在を聞いたのだけど…

『親父に?』

「うん」

『ありがとう』

ふっと笑った。


その笑顔に…距離が縮まった。

No.143 10/11/02 15:51
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

もう1度、お父さんのお墓の前まで一緒に行き、お参りをする海斗を見ていた。


その時…駐車場からこちらを見ている汐璃に気付いた。



花は持っていない。
墓参りではないのか…。

今は特にやましい事はない。私は慌てる事もないと思ったが…汐璃はそうは受け取らなかったようだった。

No.144 10/11/02 16:11
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

「汐璃さん…一緒に来たの?」

『はっ?いや。あいつは家で寝てたよ』

「ふぅん…」

私の視線に気付き、海斗は駐車場の方を見た。


『はぁ…』

海斗は大きな溜め息をついた。何に対する溜め息だったのだろう。

海斗の視線に気付いた汐璃は、帰って行ってしまった。


「…お墓参りじゃなかったんだね…」

『来た事ないよ』

「ふぅん…」

海斗は私を見た。

『元気そうだ』

「元気だよ。海斗も、元気そう。忙しいんでしょう?」

『林さんがいるからね。楽だよ』

「そっか…」

『…たまには…飯くらい行かないか?』

「…たまに…ならね…」


私は海斗と別れてからも、携帯番号もアドレスも変えていない。

『連絡する…』
と言う海斗に
「メールなら」
と答えた。

「アドレス変わったでしょ?私は変えてないから、メールしててね」

『変えてないよ』

「え…」

私は…心のどこかで海斗からの連絡を待っていた。だから番号もアドレスも変えなかった。
海斗も…同じだった。

No.145 10/11/03 19:53
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

携帯のメモりから海斗の名前は消していた。
ただ…

♪~♪
【新着メール受信中】

きた……

【名無しの権兵衛さん】


ん………
………登録しよ………



【またメールできる日がくるとは思わなかったよ…アドレス変えなかったんだな…お互い、連絡待ちだったのかな】

No.146 10/11/03 20:10
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

――送信――

【そうだね…✨少なくとも私は待ちだったょ😄今どこ?】

受【今、事務所😄来る?】
送【バカ😜行かないよ】



連絡方法にメールを選んだのにはちゃんと理由がある。
電話では履歴が残る。
メールは消せば残らない。誰に何を送ったのか、誰から受けたのか…個人ではそんな情報まではわからない。

汐璃がどこまでの女なのかわからない。
海斗だって、家でお風呂に入る事もあるだろう。
そんな時に、浴室まで携帯を持って入る訳がない。

そのすきに携帯を見ないとも限らない。



受【会えてよかった…】

送【私も…でも、汐璃さんは大丈夫?】

受【あいつの事は気にしなくていい】

送【そういう訳にはいかないでしょ…😓】

受【いいから…俺の事だけ考えて】


…海斗の事考えるから、もれなく汐璃がついてくるんですけど……

No.147 10/11/03 20:23
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

送【了解😄海斗の事だけ考えるよ✨✨】

受【指輪…してくれてたね😄】


貰った日からずっとつけてる。1日だって外してない。左手の薬指…には少し大きくて…右手の薬指にはめていた。

送【ありがとね💓ずっとつけてる✨】

受【今度は左手だな】


あれ…左手にはまらないの知ってたんだ。
てか…左手は結婚指輪では…


この時から、海斗はどうにかして汐璃と別れる手段を探していた。

No.148 10/11/03 20:33
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

汐璃は、お父さんの命日からこっち、必死に“私”を探していた。

探偵を雇っても、早々に見つかる訳はない。
現在進行形な関係ではない。あれからメールはするようになったけど、お互いの忙しさも重なってまだ逢う事はできていない。


そこで“元カノ”の線に切り替えたのだろう。
ビンゴ❗やっと“私”にたどり着いたらしい。


ただ…浮気の証拠がない。この前のお墓の一件も、ほんの偶然だったのだから…さすがに探偵もお手上げだっただろう。

No.149 10/11/03 20:40
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

日頃の私は…
家と会社の往復以外には、夕飯の買い出しか、春ちゃんの家に行くか…会社の人達と飲みに行く程度。

趣味は特にないし、今は仕事が恋人だ。



海斗にも、携帯のデータは消すように言ってある。
が…やましい話はしない。毎日の出来事や会社の愚痴、父の話やお母さんの話など…愛を囁いたのは最初の日だけだった。

着信履歴は個人が取得できるデータには残らない…と聞いたので、たまに私から電話をかけた。
愛はそこで育んだ。


離婚を望んだ訳ではない。ただ、海斗と何かが繋がっているのが嬉しかった。

No.150 10/11/03 20:47
もも ( 20代 ♀ rZLGh )

ある日…海斗から着信があった。


…海斗には電話はしないように言ってある。

怪し過ぎる………

海斗が私を何と登録しているかわからない。

一か八か…

「はい、お待たせしました。どうしました?夏木さん」

当たり障りなく、名乗らないように出た。
ら、切れた。

…汐璃だな………
海斗はお風呂だろうな。


汐璃がかけてきた…と言う事は、女の名前で登録してあるんだろうな…本名かな。
私は海斗を“名無しの権兵衛”扱いにしていたのに…笑


その後は着信はなかった。女の名前、全員にかけているのかな…ご愁傷様な事だな…

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