泥棒女猫(ネコ)
~~修羅場~~
周りにはそう見えたかも知れない。
でも、女は笑っていた…。
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私が汐璃の立場なら、狂おしいほど愛おしくてたまらないなら…心がない男なんて殺してしまうかも知れない。
愛して止まない相手から、『戸籍だけ』なんて言われたら、戸籍を抹消してしまうかも知れない。
汐璃はどれほど耐えただろう…
あんなに惚れて、手に入れた男に、1番美しかった時でさえ触れられず…
どれほど私と言う“過去”を恨んだだろうか。
今現在、男女の関係にあればどれだけよかったか…。
汐璃は海斗の問い掛けに返事もせずに、走って家の中に入って行った。
残された4人…とりあえず、汐璃の姿が玄関先から消えるまで見ていた。
ガシャンッ!
汐璃は乱暴にドアを閉めた。
お母さんが最初だった。
『大丈夫だった?』
少し冷たい手を、そっと私の頬にのせた。
「きれいには入らなかったから平気です」
平手打ちはなかなか難しい。パチン☆と、きれいに頬に入るより、アゴとか耳辺りを叩く事も結構多い。
『ぶたれたんか!?』
海斗が慌てて駆け寄ってきた。
『カイちゃん、ダメよぅ…桃ちゃん、か弱いんだからぁ…』
涙目…いつものお母さんだ。
林さんは黙って遠巻きに見ている。
「あ、私…帰りますね」
『送るよ!』
海斗が言う。
「明日仕事だし。今日は汐璃さんの神経逆なでしない方がいいよ…」
『……わかった…』
林さんが言った。
『これが1番落ち着く光景なんですけどね…』
「海斗……」
海斗は私を見て、私の言葉の先を読んだらしい。
本当は抱きしめようと思ったらしいその腕を肩に置いた。
『頼むから…逢わない方がいいなんて…もう言わないで……』
汐璃よりは幸せだろう。
でも…置かれた状況はあまり変わらない。
愛されているのに、その気持ち以外は望めない私。
愛されてはいないけど、私が欲しかった居場所に一生居られる汐璃。
海斗が1番不幸だと思った。
子供の両手を、両方からそれぞれ引っ張って取り合った時に、先に手を離すのは“本当に愛している方”だと聞いた。
私はそれさえもできない。ずっと…ずっと海斗を不幸にする存在になる…?
汐璃と…他の女となんて幸せになって欲しくない。
けど……
「わかった。また連絡するね」
私の肩に置いてある海斗の手に触れた。
服が邪魔だと感じた。
皮膚が…邪魔だと感じた。
泣きそうになった。
私だって汐璃のように大声で泣きたかった。
海斗が欲しいと暴れ、叫びたかった。
妻ってすごいと思った。
痛い…痛い…
どこが痛いかわからない。
必死で涙をこらえた…
先に海斗が動いた。
『どうして一緒に居られないのかな……』
小さな声で
私を抱きしめながら呟いた。
女は、愛する男を最初の人にしたがる。処女を捧げるってやつ。
でも…愛する男の最後の女になった方が何倍も、何十倍も幸せじゃない?
妻を一生抱かない海斗の最後は、海斗が他の女を愛さない限りは私であり続ける。
海斗、離婚すればいいじゃんと思われるかも知れないけど…離婚は難しいらしい。
最初の関門として、まずは汐璃が首を縦に振らなければ話は進まない。
お母さんが泣いている。
林さんがお母さんをなだめる。
汐璃は家の中から見ているかも知れない。
でも離れられない…。
「ふぇっ…」
涙が溢れてしまった…。
私が泣き出したら、海斗の抱きしめる腕が強くなった。
『どうすれば……』
風が強くなってきた。
今夜は雨が降るそうだ。
『海斗…』
お母さんが海斗の肩を叩いた。
『おじいちゃんの事はいいから、汐璃と話をなさい』
おじいちゃんの事はいい…婚約時の話だろう。
「お母さん!」
『いいのよぅ。どうせ後継ぎもいないし…可愛い孫の為だもの。今は趣味でやってる仕事だし、重機なんかを売れば借金もなくなる。足りなきゃこの家売ればいいだけ。雄一さんもわかってくれるでしょ♪』
お母さんはサラッと言った。もしかしたら、随分前から考えていたのかも知れない。
「けど…!」
『私、桃ちゃんのお母さんになりたいの♪ずっと、ず~っと思ってたのよぅ♪海斗が初めて桃ちゃん連れてきた時からね♪』
「お母さん…」
海斗から離れ、お母さんに抱き着いた。
『あははぁ♪幸せ♪』
そして、その日、海斗は汐璃に離婚話しを持ち出した。
その日の晩は空が荒れた。
台風のような風雨。
隣の犬がけたたましく吠え続けている。
今日は、お互いに連絡は取らない事にした。
結果は明日。
父に、一通りの話はした。
父は一言…
『海斗くんを信じなさい』それだけ言った。
翌日は、昨日の風雨が嘘のように晴れた。
父は朝が早い。私は父の後片付けをして、自分のペースで準備や片付けをしていた。
ピンポ~ン♪
家のチャイムが鳴った。
インターホン越しに海斗が見えた。
慌てて玄関のカギを開けた。
『おはよ』
「おはよ💦どうしたの」
『今日報告するって言ったろ。時間、いい?』
「うん、さっきお父さんは仕事行ったから…上がる?」
もしかしたら上がらない…かも……
『少し、上がらせてもらおうかな』
もしかしたら、私には喜ばしい報告なのかもしれない。汐璃の不幸の上に成り立つ幸せ…。
痛い……最近、痛い事ばっかりだな……。
『夕べね、汐璃さんと話しをしたんだ』
お母さんも立ち会ったらしい。でもお母さんは一言もしゃべらなかったらしい。
最初は離婚を嫌がっていた…。戸籍はくれると言ったのに…父を裏切るの!?と…。私はどうなるの?あなたはあの女と一緒になるつもりでしょ!許さない!!
そんな感じで相変わらずテーブルを両方でバシバシ叩いていた…と。
『とりあえず、実家に帰る事になったよ』
「汐璃さん?」
『他に誰が(笑)』
確かに。
『1、2ヶ月くらい離れて考えたいってさ』
「そっか…」
『前向きに…考えてくれるといいんだけどな』
「……ん……」
自分の幸せの為に、人の不幸を願う…浅ましい女…それは汐璃と変わらないじゃないか……
素直に喜んでいいのか…
海斗が頭をポンポンと叩いた。
学生の頃の記憶が甦る。
海斗はそのまま仕事場に向かった。
約2ヶ月、以前のような穏やかな日が続いた。
そして…季節も冬に移り変わった頃…汐璃が帰ってきた。
2ヶ月間、相変わらず海斗とは逢わず終いだった。
逢わないようにしていた訳ではないけど、結局仕事が忙しくて逢えなかった。
でも、汐璃がいないからこの隙に…と言うのもフェアじゃない。
汐璃が一体、どんな答えを出してきたのか……。
汐璃が帰宅した日に、海斗からメールがきた。
【汐璃さんが帰ってきたらしいよ】
突然の帰宅で、お母さんからの連絡だったのだろう。
【また話しをするだろうから、連絡するよ】
今夜決まるのだろうか…。
その日は落ち着かなかった。メールがきたのが昼過ぎ。それから仕事が終わるのが待ち遠しくて、もどかしかった。集中できず、何度も小さなミスをしてしまった。
しっかりと確認作業を行うので、クライアントに影響はないけど、上司がとても心配していた。
『珍しいな…どうした』
「すいません…」
『怒ってる訳じゃないよ。ただ…具合悪いんじゃないか?』
「大丈夫!元気です」
『気分悪いなら言えよ。』
部長は優しい。社長の弟で、社長には似ても似つかない素直で真面目な人だ。
…社長ゴメン…笑
残業もなく、真っすぐ家に帰る。今日はカレーができついる。
「作っててよかった」
♪~♪
メールの音。
画面も確認せず携帯を開いた。
【今日は早めに切り上げて帰るよ。また連絡する】
時計ばかり気になる。今日に限って父は飲み会が入っていて帰りが遅い。
布団に入っても、寝るに寝付けない…。
父の帰ってくる音が聞こえた。顔を出すと父がバツの悪そうな顔をするので、寝たふりをしていた。
夜中、ウトウトしていたんだと思う。携帯の音で目が覚めた。
時計を見たら、2時を少し回った所だった。
海斗からかな……。
携帯を開いた。
【新着メール】
【夏木 海斗】
恐る恐る…メールを開いた。
汐璃の立場になって考えた。
自分が汐璃ならどうするだろう…。
海斗を想って、汐璃のようにならないだろうか…。
なるかも知れない。
同じ男を愛しているから、わかる気持ちもある。
あのまま、素直に結婚していたら、もしかしたら私が汐璃の立場だったかも知れない。
発狂し、喚き散らし、暴れ、暴言を吐き………
嫉妬ほど恐ろしい感情はないな…改めて思った。
結果は呆気なかった。
『お父さんが、もう海斗さんとは別れなさいって言ったのよ』
汐璃はそう言ったらしい。
『ただ、すぐには無理です…。もう少し待ってくださいね』
とても清々しい笑顔で、そう言ったらしい。
何か企んでるような…。
汐璃が手放しで海斗を自由にするわけがない。
あんなに執着していたのに………。
父親に言われたから、
『はい、わかりました』
と諦められるものだったのか…?
わからなくて、逆に恐い…😓
帰ってきてからは、大人しく、お母さんの言う事も聞き、海斗の帰りを何時までも待ち、朝も見送るようになったらしい。
実家で母親に諭されたのだろうか。
妻らしく、謙虚な女性…最近の汐璃はそんな感じらしい。
お母さんも、汐璃がそんな感じなので家を出にくいらしく、最近はあまりうちに来なくなった。
…なるほど…。
そういう作戦か。
やっと気付いた。
反抗的で、威圧的な女王様では疎まれる。
では…
謙虚で、友好的なお姫様なら……?
離婚話しも持ち出しにくい。
汐璃がやっぱり離婚は不服だと裁判所へ駆け込んだら…?
改心しようとした妻を受け入れず、一方的に別れを切り出した海斗の方が不利かも知れない…。
汐璃の演技がいつまでもつか…それが見物だと思った。
汐璃は元々育ちがいい。
汐璃の母親も、愛する旦那様の為に尽くすタイプではなさそうだった。
お手伝いさんが世話をして、家事をやり、旦那様の事もする。
娘は母親を見て、愛する旦那様の世話をする。
やる事に限界があったようだ。
慣れない事をすればボロがでる。
それでも必死に良き妻を演じていた。
汐璃が言った
『もう少し』
の期限は、特に“どれくらい”とは決まっていなかった。
『良い妻を演じる汐璃は健気だけど、腹の底を知っているからな…』
汐璃は毎晩海斗の携帯チェックを欠かさないらしい。やましい事はないから…とロックはしていない。
帰宅のお出迎えをするのは、女の残り香がないかどうか…朝見送るのは、帰ってきた時との変化を見比べるため…。
1度、事務所でコーヒーをこぼして着替えて帰ったら、すごい形相で問い詰められたとか…。
接待でお姉ちゃんのいる店に行った後…
『桃花に会ったんじゃないでしょうね!』
と………。
『根は変わってないよ』
海斗はそう言った。
あれからまた2ヶ月。
汐璃から手紙がきた。
~拝啓~
…から始まった手紙は、
『ぶっちゃけ話しがあるから、一緒にご飯でも食べましょう』
~敬具~
こちらの都合も聞かずに、時間と場所を指定するのは相変わらず。
都合悪かったらどうすんだろ…。
しかもまた修羅場った店。
「恥ずかしくないのかなぁ…」
汐璃は、余計な事を心配させるキャラだ。
「ま、いいか…しかし明日か……」
日曜日に出勤した代休をもらわなければいけなかった。ちょうどいい。
ちょうどいい……。
指定された時間…
やはり少し早く着いた。
店のドアを開けると、以前と同じ場所に汐璃がいた。
少し痩せたような…気のせいかな………😅
前のように正面に立った。
「っっ!!汐璃さん!?」
あまりの事に、つい大きな声を出してしまった。
何なんでしょう…😓💦
どうしよう………
汐璃の正面に座ったのはいいけど、目のやり場に困る……
注意した方がいいかな💧
「あのぅ……💦」
『なぁに?』
汐璃は前と違って、とても友好的だ…。
そして、前とかなり違う点がもう1つ………
「化粧…派手過ぎませんか……?」
『えっそう?』
過ぎます…過ぎますって!ビックリしたもん💦あんなにお化粧上手だったのに💦
「えぇ…っとぉ………塗り過ぎっ(言えたっ😆👍)」
『気にしないで』
んん~バッサリ。
「はぃ😅…それで…お話って…?」
『まぁ、先に何か頼んで。この前のお詫びにご馳走させて』
……どっかで毒でも盛られやしないだろうか…
ってか、何で笑顔!?
恐い……違う意味でこの前より恐い………泣
お店の人が選択のしようがないように、汐璃に先に注文させ、同じ物を頼んだ。
あ…持ってくるのはお店の人だからそんな事しても一緒か…。
『桃花さん』
「はい」
『この前は、ごめんなさいね。水かけたり叩いたり。大人気ない事して』
「…いぇ…(恐っ)」
『海斗さんから、私が帰ってる事聞いてた?』
「どちらか行かれてたんですか?」
実家に帰った事も、こっちに帰ってきた事も知らない事にした方がいい…
『あ…いいの。気にしないで』
「………」
『それで…ね……』
汐璃は…照れてる……?
モジモジ…モジモジ…。
フッと視線を感じた。
カウンターを見ると、この前の店長さんらしき人。(…いや、確認したら、はっきり店長さんだったんだけど…)が、こっちを心配そうに見ていた。
少し頭を下げたら、変わらない笑顔を向けてくれた。
『あのね』
汐璃の声で、また汐璃の方を向き直す。
『私、考えたの…』
「(何を………恐)」
『ここ何ヶ月かで気付いた事があってね』
相変わらず笑顔…
「はぃ……」
『あっお料理がきた』
タイミング悪いな…店長さん…💧
『美味しそう!先に食べちゃいましょう。話しは後でね』
美味しく食べれる訳ないじゃん…
味は美味しいけどね…
雰囲気と相手が微妙です。
食後にデザートまでついてきた。
んなに食えるか…
汐璃はパクパク食べている。
それをぼ~っと見ていたら、その視線に汐璃が気付いた。
『あっごめんね』
「いぇいぇ…」
『でね。』
汐璃は改まってケーキのフォークを置いて背筋を伸ばした。
『私、気付いたの。海斗さんは、私を嫌いなんじゃなくって、あなたを好きなんだって』
「………ん?」
『だ~か~らぁ』
意味わかりません。
『海斗さんは、私の事嫌ってる訳じゃないのよね』
「はぃ」
『でも、好きなのはあなたな訳よ』
「……はぁ……」
『だからね、私、あなたになろうと思って』
「………はっ?」
あぁ………無理っ!今までで1番わからん💧💧💧
汐璃はとても満足そうにしている。
言いたい事、言い切った感じなんだろうけど…
言われた私はさっぱり…。
『まずは、あなたくらいに痩せなきゃね。次に髪型とかお化粧とか』
あぁ…そういう事!!
………馬鹿だ。。。
汐璃はケーキを食べ終わるとお腹を押さえて言った。
『甘い物食べ納め』
本気でやるんだ…💧
『お母さんに聞いても、海斗さんの事わからないだろうから、元カノのあなたにいろいろ聞きたいの!』
「海斗の事?」
『そ!好きな音楽、好きな映画、好きな事。あと…好きな食べ物とか好きな場所とか…海斗さんの事なら全部!私達、交際期間がなかったから…ねっ?』
ねっ…て言われても💧
「今から自分で調べてもいいんじゃないですか💧彼の好みも変わったかも知れないし💧💧」
『いいの♪それはそれ。昔の海斗さんも知りたいの。だって私は妻なんですから。知る権利があると思わない?』
「…思いません💧」
汐璃の顔が強張った。
「昔の、私と付き合っていた頃の彼との時間は私の大事な思い出ですから。あなたには未来がある。今からその時間を作ればいい」
悔しかった…過去にしかしがみつけない自分が。
惨め…だから強気な態度で言った。
『そう…それもそうね。ごめんなさい。ほら…今更デートに誘うのに、海斗さんの好きな事何も知らないから…どこに行けばいいかもわからなくて』
妻ってすごい…。
また思った。
いや…妻と言うより
“汐璃ってすごい”
『でも、私はあなたになるの。海斗さんが好きなあなたに。だから、海斗さんと付き合ってた頃のあなたじゃなきゃ意味がないと思うの』
「あの…私になるって事自体が無意味だと思いますけど…」
『どうして?』
「汐璃さんは海斗から嫌われている訳ではないんですよね?」
『えぇ。そう思う』
「だったらありのままの汐璃さんを愛してもらえるような努力をした方がいいんじゃな…」
『それじゃダメなの!』
私の言葉を遮った。
『もうあなたと別れてどれくらい経つ?なのに、彼は一向にあなたを忘れようとしない。うぅん。逆に気持ちが強くなってるんじゃないかと思うくらい』
汐璃がヒートアップする。
『私、前は浮気って体の関係だとばかり思ってたから、全然気づかなかったの。海斗さんの中にあるのは、純粋な愛情。だから私、あなたになるの。あなたになって愛されたい』
汐璃の気持ちはわかった。けど……
「言いたい事はわかりました。でも…あなたは私じゃありませんよ。違う人間ですから……」
汐璃が冷静だと、話しやすい。前よりはいい女になった。…化粧はすごいけど…😅
「海斗に聞いてみるといい…汐璃さんが私になったら愛してくれるかって」
汐璃は黙ってしまった。 諦めたかな……?
すると……
『まぁいいわ。とにかく、また会ってね』
「……え。」
『あなたのお化粧の仕方とか教えて欲しいの』
え~っ!わかってない💦
「汐璃さん💦💦」
『今日はありがとう!また連絡するから』
そういうと、伝票を持ってサクサク1人で会計を済ませて出て行ってしまった。
んん~……
店長さんがこちらに歩いてくる。
『ご無事で何より』
「アハハ、ホントに💧」
『ごゆっくらなさってください。コーヒー入れ直しましょうか?』
ご飯でお腹いっぱいだったから、ケーキとコーヒーにはまだ手をつけていなかった。 今なら食べれそう。
「いえ、大丈夫です」
『猫舌ですか?』
「あっいえ全然…(?)」
そういうと、コーヒーカップを取り
『入れ直してきますね』 と、笑顔でカウンターに戻った。
続いて女性の、以前タオルをくれた店員さんが、汐璃の分の片付けにきた。
『無事でよかったです』
みんな心配してくれてたんだ😅
『うちの人が、また水でもかけられたら今度はすぐ警察呼べって言うから、ずっと目が離せなくて』
「ご夫婦なんですか?」
『はい』
女性店員さんは少し恥ずかしそうに笑った。
それからこの店は、私のお気に入りの店第1位になった。
ま、余談ですけどね。
次の日の朝、海斗からメールがきた。
【汐璃さん、桃と似た髪型になってたんだけど…】
最初に髪型にしたのか。
【切ったんだ⤴⤴長い髪、綺麗だったのにね✨】
あえて知らん存ぜぬを通す事にした。
海斗がこれからどういう反応をし始めるか…。
【まぁ…髪型似てても、見間違える事はないしな😄】
痩せるらしいしな…後ろ姿くらいなら間違えるかもしれないな…。
【そうだね⤴⤴】
汐璃の本気が恐くなってきた…。
【桃⤴今度、飯食い行こうな】
【うん😄】
【じゃ、仕事頑張って】
【海斗もね⤴⤴】
髪を切った。次は化粧だろうか…。
次の赤紙召集はいつ来るのか…。
断ったらダメかな😅
今日は祝日…
赤紙召集が届いた。
今度の日曜日に……コンスタントだな…。
都合悪ければ…とか言う言葉は、手紙のどこにも書いてない。
都合悪い時は、店に電話する…?海斗の自宅に電話する……
お母さんが出たらいかんな…
ピンポ~ン♪
『こんにちわぁ』
「ん、お母さん?」
『はぁ~い』
急いで玄関に行き、ドアを開けた。
両手にたくさんの買物袋やらケーキの箱などを抱えている。
『はぁ~疲れたぁ』
一体どこから来たんだろう💦💦
『んふふ♪久しぶりだから、いっぱい買っちゃったの♪これとこれと…これも、これも…はいっ😆』
と、大量の荷物を差し出された。
「はいって…全部!?」
『そう♪久しぶりにお買い物に出たら、桃ちゃんに似合いそうなものがたっくさんあったから♪』
えぇ~💦💦そんな勢いでホントに買っちゃうんだ😅
『こっちは桃パパに♪』
「すいません💦こんなにたくさん😅」
『うぅん…なかなか来れなくて…寂しかったぁ…』
寂しかった?じゃなくて、お母さんが寂しかったんだ…
『ケーキ買ってきたの!食べよ~よ~♪』
いつもに増してハイテンション。
何かあったな…今までの経験からそう感じた。
お母さんは…昔、苦労してるから、人の顔色や行動を見て、相手が何を考えてるのかを見抜くのが得意だった。
あんなキャラなのも、他人から自分を守る為に身につけた最終手段。
浅く広く…ニコニコしてれば敵は少ない。
相手は隙を見せるようになるから、そこからイロイロ探るのだと言っていた。
世間知らずのお嬢様かと思っていたので、お酒の勢いでそれを聞いた時には驚いた。
ケーキを食べながら先に問い掛けた。
「どうしたんですか?」
『ふぇっ?ぬぁみ~?』
(へっ?なぁに~?)
ケーキを口いっぱいに頬張っている。
取らないからゆっくり食べてください💦笑
「何か話しがあるんじゃないですか?」
お母さんの動きが一瞬だけ止まった。
『……ばっでね……』
(……まってね……)
コーヒーを飲んで一生懸命ケーキを食べている。
「ふふふ…ゆっくりでいいですよ」
ハムスターを連想させる食べっぷり。
口の中のケーキを飲み込まないうちに次を入れる…を繰り返して、口いっぱいになるらしい。
昔からそう。
話しかけるタイミングを間違えた。
飲み込んでから、コーヒーを一口飲んだ。
『あのね…』
お母さんが話し始めた。
「でも…」
『カイちゃんには口止めされてるから、知らないフリしててねっ♪』
お母さんは相変わらずなテンションになった。
「わかりました…」
少し俯き加減な私を見て、お母さんが言った。
『今夜はここでご飯食べてっていいかなぁ~?』
「はい!お父さんも喜びます」
『よし♪じゃ~いっぱいおつまみ作んなきゃね♪』
最近は海斗に話せない事が多い。
体が1つじゃ足りないな…。
父の仕事の事はよく知らないけど、父は結構上役っぽい人で、休日出勤はザラ。今日もそう。
お母さんが、汐璃からの召集令状(笑)を発見した。
『こないだも、汐璃に呼び出されたでしょぅ?』
「えっはい」
『珍しくめかし込んでだから、出て行く前に呼び止めたら、桃花ちゃんとランチなんですってしゃあしゃあと言うもんで』
「ハハ😅」
『したら帰ってきたら髪バッサリ切ってるからね』
「ハハハ…」
『何があったの?』
「ハハ……ハ…💧実は…」
この前の事をお母さんに話した。
『変わった子ね』
あぁ…言っちゃった😅
『馬っ鹿じゃないのぉ』
あぁぁ…まだ言うか…
『馬と鹿に失礼ねっ』
そうですね~💦💦
『桃ちゃんはぁ…カイちゃんが選んで紹介してくれた、正真正銘、最初で最後の子なのにぃ♪』
お母さんは海斗の女遊びを咎めた事はなかったそうだ。
ただ、遊ぶなら“彼女”は作らない事。
“彼女”ができたら一筋に。遊びたいなら別れなさい。
家には絶対に女は連れ込まない事。紹介する女は、一生添い遂げる覚悟をした女だけ。
他の女は見たくもない。
そういう約束をしていたらしい。
だからお母さんは、私をこんなに大事にしてくれるのか…
それを聞いて、やっと理解した。
『汐璃と会うのはやめなさい』
真剣な顔…。
「大丈夫ですよ」
『お願い…』
「…けど……」
汐璃の誘いを無下に断ると後が恐い…ような気がする。
『次はいつ?』
「日曜日…」
『都合が悪いって電話があった事にしとくから』
「…わかりました…」
♪~♪
メール……
【夏木 海斗】
「海斗からだ」
『あらま♪あ、ついでに迎え頼んでてくれる♪?』
「(笑)はい」
メールBoxを開いた。
【日曜日空いてる?】
そう…人を誘う時はまず相手の都合を確認するのよ、汐璃さん。
【空いてる😄】
さっき空きました😆笑
【やった❗また連絡するわ😄】
【あっ💦今夜、お迎えよろしく😆✋】
【おふくろ?】
【うん😄】
【おふくろはいいな…自由に桃に会えて⤵】
【今夜、待ってる✨】
【了解👍】
『んふふ♪カイちゃん、貸し1つねっ♪』
お母さんがニタニタしている。
わざとか…笑
「お母さん、なかなかの策士ですね」
『んふふ♪まぁねぃ♪』
それから、今宵の宴の準備が始まった。
父は帰宅後、お風呂に入ってすぐにお酒を飲んだ。
2人の時はあまり飲まない。私もあまり飲まないから。
お母さんがいる時の父は無敵だ(笑)
お母さんもここぞとばかりに飲んで…潰れた😅笑
海斗はお母さんがいない時は家で夕飯は食べない。
今夜もそうだ。
海斗が来た時には、父もほぼグロッキー状態。
久しぶりだったからな。
お母さんも泊まれるなら泊めてあげたいけど、明日はあいにく平日だ。
家の前に車が止まる音がした。
私は玄関先に出て海斗を迎えた。
「もうダウン」
『ひぇ~まだ8時だぞ』
顔を見合わせて笑った。
「ご飯食べてないんでしょ?」
『何かある?』
「おつまみの残りと…何か軽く作るね。上がる?」
『飯だけね』
冷蔵庫な有り合わせで、炒飯を作って、おつまみをおかずに(笑)食べさせた。
『美味い!』
そう言って、作り過ぎたかな…と思った炒飯をペロッと平らげた。
「わぉ…完食」
『腹いっぱい』
海斗は満足げにお腹を叩いた。
『ごちそうさま』
「お粗末さまでした」
海斗はお母さんの方を見た。
『汐璃さんが帰ってきてからさ…お袋、何かすげー気が張ってるんだよね』
「何か疲れた顔してる」
『俺も汐璃さん、何か企んでるんじゃないかって、気が気じゃなくて…気をつけてな』
「汐璃さんは、海斗に愛されたいだけだよ」
少し強がって笑って言ってみた。
海斗がこっちを見た。
『ばぁか。桃がそんな事言ってくれる事ないよ』
海斗が優しく笑った。
私もつられて笑った。
「いつも何時くらいに帰るの?」
『11時とか。今夜はお袋いるし、早めに帰……』
「?」
海斗が話すのをやめた。
お互い無言で見つめ合って…自然に顔が近づいて…キスをした。
いけない事だとハッとして、お互いワタワタした。
『早めに帰るよっ』
「うん💦」
久しぶりの唇は…気持ち良かった。
その後はお互い黙ったまま手を握っていた。
テレビをつけててよかった…文明の力は、勝手にしゃべってくれる。
強く…強く握った手を離したくなかった。
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迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 510HIT 旅人さん
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