泥棒女猫(ネコ)
~~修羅場~~
周りにはそう見えたかも知れない。
でも、女は笑っていた…。
新しいレスの受付は終了しました
私の家庭は、生活するにも困らない、貯金も出来る、母は専業主婦でも充分やっていける…そんな家庭だった。
ただ、政治的な関係は皆無で…彼は、そんな繋がりを持った妻をめとらなければならなかった…。
――高校教師――
出会った時の彼は、それが仕事だった。
教師になるのが親に対する彼のささやかな抵抗で、それでもゆくゆくは父親同様、政治の道に進むよう、しっかりと根回しがしてあった。
当時から、問題を起こさないように…と、父親の厳しい目がいつも光っていた。
私との関係も知っていただろう…
でも、何故か…そこには父親の介入はなかった。
所詮、遊びだと思われていたのだろう。
それはそうだ。
《教師と生徒》
騒いでも、逆効果だと思われていたのかも知れない。
私と知り合う前の彼は、プレイボーイで、父親もだいぶ手こずらされたようだ。女に不自由しない…女の方から寄ってくる…。
顔はいい。頭もいい。
それに優しい…。
極めつけはお金持ち。
母親がとてもいい人だった。育ちはいいのに、嫌味がなく、彼を真っ直ぐ育て上げた。
ただ…男の部分は父親に似たらしい…。
―――――――
彼と出会ったのは、高校2年の時だった…。
私はいわゆる…表向きは真面目な生徒。
学校にはしっかり行くし、テストの点数も人並み以上。先生達とも仲が良く、友達もたくさんいた。
彼は…新卒の先生で、副担任。
女の子達は騒いでいた。
でも私は…当時、1年の時の担任と付き合っていた。
先生には妻がいた。
1年の終業式の後…春休みに…1度街で見かけた。綺麗で、明るい色が良く似合う人だった。
あれ以来、先生とは何となく気まずくなっていた。
「奥さんと別れて」
なんてよくある台詞、言うつもりもなかったし、先生とのそれ以上の関係を求めていた訳でもなかった。
でも…
『可愛い生徒さんね、薫』先生の妻は綺麗な微笑みを崩す事なく、先生に向かってそう言った。
先生も微笑み、
『自慢の生徒なんだよ』
…と、私を見て少し困った顔をした。
先生の転勤がなかったのは素直に嬉しかった。
でも……
あの後、メールは何度かやり取りした。
電話には出なかった。
会いたい…と言われもしたけど、宿題があるから…と断った。
先生は、また1年生の担任になった。
「また…代わりの子見つけるかな…」
ブブブ…
昼休みに携帯のバイブが揺れた。
【❤先生❤】
特別フォルダ。
【久しぶりに顔が見れてよかった😄担任を希望したんだけど、僕は1年生向きらしいよ⤵⤵
近いうちにまた会おう❗】
メールを見た瞬間…顔がニヤけてしまった。
『おい、神崎。』
「!!ひゃぃっ!?」
驚きのあまり、変な声になってしまった。
クラス中、大爆笑。
『今でも放課後でもいいけど、俺んとこ来い。加藤もな。』
「…はい…」
『元気ないな?どうした』「あ、いや。元気ですよ~放課後行きます!」
『加藤の首ねっこ捕まえて連れてきてくれよ』
「はぁい」
笑顔で去って行く…。
その後、いっとき教室は呼び出しか~、何したんだ?なんて話で笑いが起こっていた。
加藤春海は、私の親友で、2年でも同じクラスだった。
先生との事を知っている。加藤も=…そういう事だ。
加藤……
…春ちゃんがトイレから慌てて戻ってくるなり、耳元で囁いた。
『荻ちゃんが2年の校舎来てたよ』
「今呼び出しくらったよ」『マジ?ここに来たの。』「うん。春ちゃんも…だって。」
『了解。』
春ちゃんは嬉しそうに笑った。
――放課後――
先生のいる第3理科室の準備室は、校門から1番離れた校舎の3階にあった。
1番古い校舎で、3階には第3理科室以外は使われていない教室ばかりだった。
春ちゃんには、1つ上の彼氏がいる。
先輩は部活があるから、文学少女の春ちゃんはよく、先輩の部活が終わるのを図書室で待っていた。
利用者のいない第2図書室…。古い本がたくさん置いてある、春ちゃんの大好きな場所だ。
職員室からカギを借りて、自由にゆっくり本を読む…。
放課後の春ちゃんの過ごし方。
第2図書室は、第3理科室と同じ校舎の2階にある。2階にはいくつか使われている教室があるけど、人気はほとんどない。
春ちゃんは、私が先生と会う時にも、いつも図書室にいた。
今日もそう…
あったかい… 先生に抱きしめられ、目をつぶった…。 「奥さん、綺麗だね…見惚れちゃった」 『(笑)嫌な事言うなぁ』 そう言うと、先生は少し私から離れて、バックをあさりはじめた。
『あ、あった』
そう言って、私に何か差し出した。
『誕生日おめでとう。
会いたいって言ったのに、宿題の方選ぶから、遅れたけどな(笑)』
…知ってて、あの日誘ってくれたんだ… 先生と妻を見た翌々日… 私の誕生日だった。
『ごめんな。売り場が売り場だけに、1人じゃ恥ずかしくて、嫁さん連れて行ったんだ』
そんなに大きくはない包み…手の平に収まりきるくらいの大きさ。
ワインレッドの包み紙に、黒いレースのリボン。小さな白いバラのアクセントが可愛らしい。
「開けていい?」
『どうぞ』
包みを破らないようにゆっくり開ける。
『相変わらずA型だな(笑)』
出てきたのは、アクセサリーが入っているであろう、紺色の箱…
中には、シルバーに薄いピンクの石がついたブレスレット…。
「可愛い…」
『嫁さんは連れて行ったけど、ちゃんと俺が選んだやつだからな。』
「ありがとう!嬉しい…」
また…先生としばらく付き合うようになった。
まだ、まさか彼と付き合う事になるなんと、そんな気配すらない頃だった。
先生とは…肉体関係はない。
ない…と言うよりは…
できなかった。
最初は…大事にしてくれてるのだと思った。
いっときしたら、不安になった。
魅力がない?嫌いになった?
思い切って聞いてみた。
『…ホテルに行こうか』
経験はある。
処女ではない。
けど…やっぱり、男が変わるたびに、最初はドキドキする。
その気持ちだけは、間違いなく処女だ。
シャワーも浴びないうちに、ベッドに倒された。
突然の驚きに、声も出ず、目を見開いて先生を見つめた。
『俺ね………』
言葉につまる…。
軽くキスをして、私の体を起こした。
向かい合って座り、先生が話始めた。
~~~
先生は、先生の妻と、妻の母親と暮らしていた。
妻の母親は若くして脳梗塞で倒れ、半身不随なのだそうだ。
先生の妻は小学校の教師をしている。
共働きなので、普段はヘルパーさんを雇っているそうだ。
しかし…妻の母親は、汚い言葉を平気で使い、体の自由がきかないのを理由に、先生や妻を足蹴にしているそうだ。
結婚してすぐ倒れ、いっときして妊娠した時も…
『体の不自由な親を放ったらかしにして、子育てなんかするんだね』
と言ったそうだ。
妻はそれでも産もうとしたが、精神的ストレスから………。
どこかの施設に預けようと言う話になった。
母親にその話をしたところ…
『娘夫婦に虐待されそうになっている。助けてくれ』と、電話をされたそうだ。
そんなストレスから、先生もいつの間にか性的不能になってしまったそうだ。
先生にも親はない。
唯一、妻の母親だけが夫婦にとっての親。
面倒を見る義務はあるから、無下にはできないのだと。
そんな中での、癒しが私なのだと言った。
妻とは、確かに不仲ではないけど、性的不能なので、もちろんそんな行為はない。
母親の事で言い合いになる事もたまにはあるし、家には必ず母親がいる…。
『また私の文句か』
『親の面倒を見るのは子供の務めだ』
うんざりしているのだと。
どうして先生と別れる事になったのか…。
どうして………
学校の前で、車にひかれそうになった生徒をかばったのだとか。
登校時の…学校の前の細い道を信号無視して飛ばしてきた車に………。
私は救急車の音を聞いた。
事故を知らせてくれたのは春ちゃんと先輩だった。
春ちゃんは泣きじゃくり…先輩も、何を言っているのか、言葉にならない…といった感じだった。
『荻野先生…1年の時の担任だったんだってな。加藤が、神崎は先生とすごく仲良かったって言ってた』
「はい…大好きでした…
心配かけてすいません。
明日から学校行きます。わざわざ、ありがとうございました」
少し頭を下げて、玄関から出て行く先生を見送ろうとした。
ポンポン…
頭を軽くたたかれた。
『元気出せ』
…涙が…止まらなかった。慌てる彼をよそに…
先生がいなくなってから…始めて泣いた…。
次の日、学校に行こうと外に出たら彼がいた。
彼…夏木海斗。
「夏やん…」
『一緒に行こうと思って』
優しく微笑み、玄関先まで見送りに出た母に頭を下げた。
「副担任の夏木先生。昨日も来てくれたの」
母は慌てて頭を下げた。
母が見えなくなってから、彼が言った。
『俺、今日腹が痛くて学校休んだんだ。お前も腹が痛くないか?』
声色を少し変えて、今日まで休みます…と学校に電話をした。
海斗は近くの公園に車を止めていた。
『学校とは逆に行かなきゃな』
「春ちゃんには…連絡しとく。今日行くって言っちゃったの」
『俺と一緒だって言うなよ~俺、一応先生だからな』
久しぶりに少し笑った。
気持ちが晴れた。
外に出たら、スッキリした。
海斗は、あえて学校や先生とは関係のない話題ばかりを話した。
海斗が、政治家の息子である事や、いつも違う女を連れている…なんて話しはよく聞いていた。
『夏木先生と結婚したら、玉の輿だね』
なんて、クラスの女子が騒いでいた。
何故かわからないけど…おかしくなって少し笑った。
「子供の恋愛だよ。片思いだしね」
少し嘘をついた。
海斗は知ってたらしい。
唯一ホテルに行ったあの日…海斗もホテルにいたらしい。
でも、海斗もあえて言わなかった。
「夏やんはモテるでしょ」
ハハッと笑い、タバコを出した。
『いい?』
ライターを見せて、火をつけてもいいかを聞かれた。
「いいよ~」
タバコに火をつけた。
一口すぅっと吸い込み、大きく煙りを吐き出した。
『正直、女には不自由しないけどね』
真面目な顔をしていた。
『不自由はしないけど、満たされないよ。
言い寄ってくるうちの何人が俺を本気で想ってくれてると思う?』
「え?」
『玉の輿』
「あぁ…。
先はやっぱり、お父さんと同じ道なの?
『30までだろうね、先生できるの』
「…大変…だね」
海斗が笑った。
『箱入り息子ですから』
「何それ」
私も笑った。
『どこ行きたい?海?山?川?
それとも…男と女ですから…?』
悪戯っ子みたいに笑う海斗。
「海、山、川!」
『全部か?贅沢だな』
「ドライブ!」
『はいはい』
自分が制服なのも忘れて1日はしゃいだ。
海に行って、綺麗な川のある山にも行った。
奥まで歩かなくてもいい所に滝もあって、2人でマイナスイオンを全身に浴びて…帰りは手を繋いでくれた。
『ナイト役が俺でごめんな』
「もったいないくらい」
人気のない山道。
海斗が急に止まった。
次の日、学校に行くと、春ちゃんが一目散に駆け寄ってきた。
『大丈夫?元気?よかった…』
ギュッと抱きしめてくれた。
クラスみんなが心配してくれて、少しくすぐったいような、申し訳ないような…。
朝のホームルーム。
担任が今日1日の話をする。副担任が、職員会議の話をする。
『昨日は休んでごめんな。』
海斗がそう言うと、1人の男子が茶化した。
『夏やん、落ちてるモン食ったんやろ~』
『失礼な。ちゃんと、3秒以内に拾って食べたぞ』
クラス中がドッと笑う。
ホームルームが終わると、担任に呼ばれた。
「もう大丈夫です。身近な人が亡くなるの初めてで…ご心配おかけしました」
『元気ならいいよ』
と、軽く肩をたたき、担任は笑った。
海斗も担任に続いた。
『神崎さん、無理はしないようにね~』
「はい、ご心配おかけしました」
と、頭を下げて海斗の顔を見て舌をペロッと出した。
私のクラスの廊下からは、大職員室が見える。
大職員室…先生達が一同に集う場所。校長とか、教頭とか…お偉もいる。
フッと見ると…
黒いスーツに身を固めた綺麗な女性…
一礼をして大職員室に入って行った。
――先生の妻…――
校長に挨拶にでもきたのだろう…。
以前見た時よりやつれた感じがした。
遠かったからかな…。
…違うな。本当にやつれていたんだろうな…。
可哀相…
心の底からそう思った。
妻から奪うつもりはなかった。当たり前だ。
自分がまだ子供なのは充分理解していたし…何より、先生が別れるつもりがないことはわかっていた。
同じ痛み…私以上の痛みを抱えた妻…
無意識に、私は大職員室に走っていた。
次の授業の事なんて、すっかり頭にはなかった。
妻はまだ校長室にいるみたいだ。
私は大職員室の近くの階段で待った。
《予鈴》
「あ…授業…」
その時、
『失礼しました…』
『お気をつけて、頑張って下さいね!』
…来た…
コツコツ…
足音が近づいてくる。
妻の前にバッと立ち、頭を下げた。
顔を上げた私の顔を見て、妻は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに思い出したようだった。
『あ、この前ショッピングモールで…』
「はい!あのっ…私…あの…」
何て言えばいいんだろう。頑張って下さい、なんて子供が言うのはおかしい。
ご愁傷様…有り得ない。
『ありがとう』
妻を見ると、あの綺麗な微笑みを浮かべた。
『心配してくれてるんでしょう?荻野がよくあなたの事話してた。あなたの事、好きだったのね。すごく優しくて、いい子だって』
妻の余裕…ではなく、本心から話している。そう思った。
『授業、いいの?』
「あっ…いえ…姿見たら夢中で…戻ります」
急に恥ずかしくなった。
『家、知ってる?』
「…はい…」
知らないって言うべきだったかな…
『今度、来てやってね。お通夜であなたの顔見なかったもの…お線香、あげてやってね。』
妻の勘…だろうか。
お通夜には確かに行かなかった…。
けど、たくさんの生徒が焼香しに行ったはずなのに…。私を覚えていたなんて。
「あ…教室戻ります」
頭を下げて、来た時より急いで走った。
…そういえば…
1限目は海斗の授業だ…
先生の事を忘れた訳ではないけど、生きてる人間は腹も減れば眠くもなる。
元気と言えば元気だ。
そんなこんなで、夏休みになった。
海斗には携帯のメールアドレスつきの暑中見舞いを出した。
翌々日にはメールがきた。
【明日、空けとけ😄】
1行!?しかも軽やかに命令口調!?
ハガキ届いたよ、ありがとう
…とかないの!?
♪~ブブブ…♪~
【忘れてた⤴暑中見舞いありがと✋】
…聞こえた!?
…明日ね…了解…。
―――
「せっかくの休みに、生徒誘うなんて、今はモテ期じゃないんだね」
『まぁいいじゃないか!どうせお前も暇だろ~』
「失礼な。学生時分は勉強が忙しくてよ」
『はいはい。ほら、どっか行きたいとこないか?』
「予定なしに誘ったの?」
『当たり前だろ』
最近、2人の時はほぼ敬語は使わない。
『サファリパークでも行くか』
「…ガキ…」
『動物はいいぞ~』
「(笑)じゃ、行こう」
さらに人目もあまり気にしない傾向が…
パーク内の食堂でご飯を食べる事にした。
食券を先に買うシステム。
『何食うか?』
「ん~…」
『ん~俺、無難にカレーかな』
「一緒でいいや」
『カレー2枚…』
『4枚、夏やん♪』
!?
突然の声に振り返ると、春ちゃんと先輩。
「春ちゃ~~ん!」
『夏やんとデートか~?』
夏休みになってから、春ちゃんは部活を引退した先輩と出かける事が多くなったみたいだから…と気を使って(?)あまり誘わないようにしていた。
手を握ってはしゃぐ2人。
「夏やん、カレー4枚!」
『へいへい。大人はツライね…』
「先輩、1食分浮いたね」
先輩は笑った。
『何~?ホントにデートなの?桃と夏やん』
「違うよ」
『違うぞ』
声がハモる。
しかし…世間的にデートじゃなければ何だと言うんだろう…。
……謎……
後半は春ちゃん達と4人で回った。
生徒3人なら、もし誰かに見られても海斗は保護者的な…。
春ちゃんと先輩はバスで来たと言う事で、帰りは海斗の車に乗った。
『いいの~?邪魔じゃない?夏やん』
なんて、冗談言いながら。
春ちゃん達は、まだ買い物したいからと、商店街の近くで降りた。
翌日、春ちゃんと遊ぶ約束をした。
春ちゃんの独壇場になっていた車内は、2人になって沈黙が続いていた。
『まだ時間いいか?』
「うん、大丈夫」
『ちょっと寄り道な』
商店街から山手の方に走り、民家を抜けて、段々薄暗い細い山道になった。
「…夏やん…?」
どこに連れて行かれるやら…。
『大丈夫、間違ってないよ』
ふふふ…と笑う。
「きれ…」
1番奥に滝が見える。虹が架かっている。流れる川も、水がとても澄んでいる。
心が吸い込まれそう…息をするのもやっとなくらいの絶景。
ガードレール越しに見下ろす…
スッ――と後ろに海斗が立つ。
頭のてっぺんに息がかかる。
「夏やん?」
『俺さ…女ここに連れてきたの初めてだわ』
「そうなの?こんなトコに連れて来られたら、女はイチコロだよ」
『お前も?』
「私は……まだ……」
海斗がまた、ふふふ…と笑った。
『夕暮れがまたきれいなんだ』
心臓が…飛び出すかと思った。
次の日、春ちゃんと出掛けた。
ショッピングモールで、映画を観たり、買い物したり…ランチの時に、春ちゃんが海斗の事を聞いてきた。
『夏やんと、付き合ってるの?』
「いや、全然」
嘘じゃない。
『よく一緒に出かけるの?』
「2回目かな」
『夏やんは…ダメだよ』
「ないない。同情してくれてるだけだょ。荻ちゃんの事」
『そうかな…昨日、何もされなかった?』
「(笑)される訳ないじゃん」
これは嘘だ。
海斗とは何度か出掛けた。プレイボーイなのは知っていたけど…あまり女の影を感じない。
「夏やんは、今ホントにフリーなの?」
『気になる?』
「少しね」
『フリーだよ』
「ふ~ん。あ、夏やん…」
話しかけようと、顔を海斗の方に向けると、海斗もこちらを向いた。
……近い……と感じた瞬間
キス……してしまった。
事故…だと言えば、そのくらい近かった。
「あっごめんね!」
慌てた私はとっさに謝ってしまった。
『新鮮な反応だね』
「何言ってんの!?わざと!?バカっ!意味わかんない!」
私の今の慌て様の方が意味わかんない…だろう…
『ごめん、ごめん。俺が急にそっち見たからな』
ふふふ…また笑う。
最初に出掛けた時は、こんなに穏やかに笑う人じゃなかった。
――2年の終わり頃…
海斗のお父さんと言う人を初めて生で見た。
ポスターとかはよく見るし、たまにテレビにも出る。学校に何の用事かは知らないけど、《秘書》っぽい人が引っ付いていた。
校長はご丁寧に校門まで見送り、見えなくなるまで頭を下げていた。
『授業始めるぞ~』
期末テストも近い。
真面目に勉強しなきゃ。
テスト期間中は、海斗も忙しいらしく、普段よりはメールの量が幾分少ない。
テスト情報は当たり前だけど聞かない(笑)聞いたら嫌われちゃうかも…
ん…?嫌われちゃう…?
……嫌われても……平気だよ。聞かないのは当たり前だからだよ。
何となく自分で自分に言い訳してるのがおかしくて笑ってしまった。
「夏やんの事…好きなんだ…」
しかし、今はテスト期間中。邪念はとりあえず置いといて…
「夏やん、ホントにフリーなのかな…」
いか~ん!テストテストテストテストテスト…
大きなため息をついた。
「卒業したら…言おう」
しかし、チャンスは意外な形で早くきた。
いわゆる《離任式》で、何故か海斗が檀上にいる…。
転勤の先生達の挨拶なんて耳に入らない。
もしかして、メールに書いてあった?授業中に言った?何で…何で…
海斗の挨拶の番だ。
『え~…多分、先生方も驚かれてると思いますが…家庭の事情で、教師職を辞める事になりました。……………』
それ以上はもう聞いていなかった。
昨日もメールしたのに。
こないだ好きって気付いたばっかりなのに…
もう会えないなんて…。
新しいレスの受付は終了しました
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
わたしとアノコ55レス 585HIT 小説好きさん (10代 ♀)
-
また貴方と逢えるのなら0レス 81HIT 読者さん
-
おすすめのミステリー小説はなんですか?6レス 145HIT 小説好きさん
-
日々を生きています。31レス 343HIT 小説好きさん
-
私たちの恋0レス 114HIT さとこ (40代 ♀)
-
神社仏閣珍道中・改
(曹洞宗の葬儀についての続き) ※葬儀についてのレスとなります。…(旅人さん0)
146レス 4261HIT 旅人さん -
Journey with Day
リリアナは、そっと立ち上がり、壁のモザイクを指でさわった。 「この白…(葉月)
74レス 892HIT 葉月 -
西内威張ってセクハラ 北進
何がつらいのって草こんな劣悪なカスクソ零細熟すべてがつらいに決まってる…(自由なパンダさん1)
57レス 2159HIT 小説好きさん -
日々を生きています。
変わりたいと切実に願う(小説好きさん0)
31レス 343HIT 小説好きさん -
マントラミルキー
マントラミルキーは改めて感じました。牛様、お釈迦様の元にご案内しましょ…(小説好きさん0)
22レス 533HIT 小説好きさん (60代 ♂)
-
-
-
閲覧専用
今を生きる意味78レス 468HIT 旅人さん
-
閲覧専用
黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 894HIT 匿名さん
-
閲覧専用
勇者エクスカイザー外伝 帰ってきたエクスカイザー78レス 1750HIT 作家さん
-
閲覧専用
神社仏閣珍道中・改500レス 14753HIT 旅人さん
-
閲覧専用
真田信之の女達2レス 363HIT 小説好きさん
-
閲覧専用
おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1365HIT 檄❗王道劇場です -
閲覧専用
今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 468HIT 旅人さん -
閲覧専用
神社仏閣珍道中・改
この豆大師についての逸話に次のようなものがあります。 『寛永…(旅人さん0)
500レス 14753HIT 旅人さん -
閲覧専用
黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて
『次の惑星はファミレス、ファミレスであります~』 「ほえ?ファミレス…(匿名さん)
25レス 894HIT 匿名さん -
閲覧専用
勇者エクスカイザー外伝 帰ってきたエクスカイザー
「チェンジ!マッドキャノン!!三魔将撃て!!」 マッドガイストはマッ…(作家さん0)
78レス 1750HIT 作家さん
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
八方塞がり。賃貸入居審査に落とされ続けてます。。
私は40代独身女子です。 一人暮らしに向けてお部屋探しをしていますが、過去に自己破産してる事、随分…
64レス 3086HIT 相談したいさん -
低学年でもOKな酒類を開発できないの?
私がハイボールを飲む時に、うちの娘から”これ飲んでもいい?”と聞かれて、まだダメよと答えたけど、“な…
49レス 1592HIT おしゃべり好きさん -
車中泊で職質されますか?
私は節約のために遠出してもホテルではなく、車中泊します。 大体、他の車もいる道の駅が多いですが、道…
23レス 681HIT 社会人さん -
昭和時代ってとんでもないことが頻繁だったの?
例えば、見知らぬ男性(おとな)が見知らぬ女性(おとな)を強制的に連れ去ってレイフとか強盗とか昭和時代…
8レス 341HIT 教えたがりさん -
考えてる事言わない人
内容しょうもないですけど、どう思います? スレ1に内容載せます。
19レス 567HIT 匿名さん (30代 女性 ) -
他人と自分の子を比較する内心誰もがマウントを取っている
本心では誰もが周りと比較している 自分の子にはスクールカースト上位で容姿も良く圧倒的に輝いて欲…
23レス 496HIT 育児の話題好きさん (30代 男性 ) - もっと見る