小島と俺
これは携帯小説で、ヒィクションです。
エリート社員、山崎に新人社員の小島が部下として配属される。呑気で陽気な小島と出会ってから変なやつと思いつつも、山崎は 自分の私生活、生き方、考え方に疑問を感じ始める。そして、小島にはちょっとした秘密があるのだ…
携帯小説初めてです。
誤字、文法、表現おかしいところあるかもしれません。
更新、遅いかもしれません。
頑張って描きますね。
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べっぴんさんは、優しくわしを抱きしめてこう言った。
「ありがとう」
それ以外は何も言わず、ただ優しく頭をなでてくれた。
そのままわしは眠った…
「ありがとう」
の一言でわしを受け入れてくれたものだと思っていた。
しかし、わしが起きた時、べっぴんさんはいなかった。
一通の手紙を残して…
『達弘さんへ』
『達弘さんと過ごした、1年間、とても楽しかったです。私を選んでくれて、ありがとう。でも、あなたは次期社長となる人。私は孤児…違い過ぎます。どうか、次期社長という椅子に座り、会社を益々繁栄させて下さい。それは、きっと風の便りで私の耳にも入るはず…どうか、奥さんになる方とお幸せに…さようなら』
『君子』
わしはべっぴんさん、君子を失った。
君子は会社を辞め、行方はわからない状態…
わしは苦しんだ。自分の生い立ちを呪った。
金も、社長の椅子も、名誉もいらない。ただ君子と一緒にいたかった。
しかし、君子はいない…
わしが悩み、苦しみ、もがき倒した結論。
君子の最後の手紙の通り、見合いを受け入れ、会社を繁栄させる事。見合い相手と結婚し、幸せにする事。
君子がどこかでわしの噂を聞いた時、喜んでもらえるように…
視点は変わって俺、山崎孝弘は驚いた…
清美と小島が兄妹というだけでも驚いたのに…
ということは…
「俺と小島は血の繋がりのある兄弟だったのか?」
「そう言う事です、山崎部長」
「なら、清美と俺も兄妹?」
「いやいや、血はつながっていません。僕が清美と山崎部長と半分ずつつながっているんですよ」
「ああ、そうだよな…」
俺は驚きで、正常な判断が鈍っている。思わず汗をふいた。
そうだ。親父とお袋の子供が俺、親父と君子さんの子供が小島、君子さんと自殺された社長の子供が清美。
俺、小島、清美の順で3人4脚した状態で考えると、俺と清美の足は結束されていない。
「でも、3人で兄妹みたいなもんですよ、部長」
小島が口を開いた。
「ああ、そうだな…」
そうか、小島は俺の兄弟だったのか…清美の兄が小島だから、俺は小島の弟か…
どうせなら、兄の方が良かった。
「部長、一応僕の方が兄貴なんですよ!」
「兄さんとは呼べないな…」
「どっちにしたって、あなたは弟でしょ、3月生まれなんだから…」
3人でわいわいやっていると親父が口を挟んだ…
「あー、盛り上がってる所、悪いのだが、違うんだよ…」
親父は気まずそうに、言った。
「何が違うんだよ?わけわかんねーよ。親父」
「あなたは僕の実の父親じゃないんですか?」
「確かにお母さんの日記にも、書いてあったはずなんだけど…」
口々に質問する俺たちに親父は困惑し、
「んー、わしから言う事ではないんだな…」
「まだ何かあるのかよ!?」
俺は小島と清美の過去、親父の過去の恋愛の末にできた、俺の兄…兄とは呼びたくはないが、小島の話に、驚き、感嘆したというのに、まだ何かあるのか…
しかも、小島も清美も知らない…
まだ何か隠してやがるのか…
「小島君…いや、達也。初めてわしを訪ねてきたのは清美さんと孝弘の結婚が決まってすぐだったね」
「ええ、そうです」
「あの時、わしは達也に言ったよな、時が来るまで素性を明かすな、誰にも。と…」
「僕が40才になる頃にお父さんの会社に入れて下さいと頼んだ時にですよね?」
「ああ、そうだ。それにはわけがあってな…ある人の許可がないと言えないんだよ。」
また俺の知らない会話が飛び交う…
小島や清美や親父の話を聞いていると、衝撃的過ぎて、俺がエリートで大学も出て…仕事ができ…なんだか、とても馬鹿らしく思えてきた。
「でな、明日…てかもう今日か…もう3時を回っているな。わしの家に皆で来い。清美さん、子供逹も連れてきていいぞ。飛山が喜んで相手するだろう」
ちなみに飛山とは親父の家の執事的管理人のような人だ。年は58。俺の息子、娘を自分の孫のように可愛がり、よく遊んでくれる…
ちなみに飛山はこのストーリーに全く関係ない。
関係ないのにわざわざ名前を出してすまない。
混乱しないでくれ。
「達也は満さんと娘さんと一緒に来なさい」
「何だよ、今言えばいいだろ!」
俺がせかすと、
「わしはもう眠い。寝る。今日は久しぶりの休みだ。皆に会えるのを楽しみにしてる。夕方位に来い。デナーしよう。では、わしは帰る」
「ちょっと、親父!ディナーって…」
(ちなみに親父はディナーとは言わずデナーと言う。)
「お父さん…!」
「義父さん…!」
俺達が呼び止めたのにもかかわらず親父はすたこらさっさと帰って行った。
「僕も帰ります。清美、車貸して」
小島も清美の車を借りて帰って行った。
続きは明日のディナーって事か…
清美と二人になり、しばらく沈黙が続いたが、清美は急に笑いだした。
「何がおかしいんだよ?」
「だって、あの満さんに手を出そうだなんて、あなた無謀過ぎるわよ」
「…血迷ったんだよ…」
「兄さんでもお嫁さんにするまで手を出さなかったのに」
「満さんて、何者?」
「普通の人よ。ただ熱いだけ。どこかにスイッチがあるのかも」
清美は満さんとは随分と親しいようだ。
「兄さんも満さんも今でもラブラブよ。夫婦の絆はかなり強いわ。」
「そうなんだ…」
夫婦の絆と聞いて俺は気まずくなった。
「清美、悪かった…」
俺はもう一度謝った。
どかっ!
俺は突然、清美に殴られた。
また俺はお星さまを見た。
「あなたが繰り返した浮気の事を思えば何てない痛さよね?」
「…ああ…」
俺は鼻血を流しながらこたえた。
何も言えない。
俺が悪い…
「あなた、そういうしゅんとした自分もたまには人、特に妻には見せた方がいいわよ。」
「ああ、これからはそうする」
俺は、今まで人によく見せようと気取り過ぎていたかもしれない。
ひとつ清美に聞きたい事がある。
「そのパンチはまさか…」
「満姉さんから教えてもらったの」
やっぱり…
そして清美は語りだした。
清美という名前は私の母がつけた。
今からの事は母の日記より、捕捉事項として。
夫もイマイチ全ては把握できてないようだから…
私の母は心底好きになった人がいた。母はできればその人と一緒になりたかったけど、政略結婚させられかけていた。
母のところに高級なスーツを着たおじさんが来て、「息子と別れてくれ」と手切れ金を差し出した。
でも、母は手切れ金は受け取らず、
「次に会うのを最後にする」
と約束した。
母は社長子息の彼と駆け落ちしても、きっと幸せにはなれない…心のどこかで何かがひっかかり、ただ逃げてきて身を隠しながらの生活にはきっと亀裂が入る。そう思ったらしい。
それで最後に会った日に、契りを交わした。
たった一度きり…。
でも…母がその人と別れ、少し遠い町で生活を始めた頃、お腹に赤ちゃんができている事に気づいた。
それが私の兄さん、達也。
母は心底愛した人の子を生むことに何のためらいもなく、苦労しながら育てた。
母は再婚し、私が生まれた。幸せだった。本当に。
でも宮永という存在がいたが為に私逹は壊れた。
父も母も自殺した。
母の首を吊った姿を見た私はしばらく動けなかった。何日も何も食べられなかった。
ただ兄さんは私にとって心強かった。兄さんは私に涙ひとつ見せず、励まし続けた。
私は、兄さんが復讐をしようと思ってる事が分かった。
私も宮永が憎かった。
ただ、私も復讐する!と言うと兄さんが止めるのが分かってたから、言わなかった。
私が養女として引き取ってくれた藤永家は私を本当の娘のように育ててくれた。
だからあえて、養女という事も公開しなかった。
私は父の会社の元請け先のパーティーで、ある人を好きになる。それが孝弘だった。
好青年でとても感じが良かった。
もちろん、孝弘が宮永の勤める会社の御曹司とは知っていたけど…
パーティーでたくさんの取り引き先に挨拶し、好感を見せる。
しかし、会場を離れひとりで煙草を吸っている孝弘を見かけた時、孝弘はただ一点を見つめぼんやりとしていた。
一目見て、私は孝弘はうつ病ではないかと思った。
御曹司として縛り付けられた人生…
私は孝弘が心配で仕方なかった。
孝弘を気にかけているうちに好意へとかわっていった。
藤永家の両親に頼み、孝弘と見合いをセッティングしてもらい、結婚する事ができた。
目的は孝弘と幸せな家庭を築く事。
兄さんの復讐に協力し、見守る事…
でも、不器用でなかなか家事もできないし、孝弘は浮気をしてしまうし…
私はよく兄さんに相談していた。
でも兄さんには 「僕の素性はあかすな」
藤永家の両親からは「私逹は本当の娘だと思ってる。養女だなんて言わなくていい」
って言われてたもんだから、孝弘には内緒で兄さんと連絡をとってたし、孝弘も私が養女だなんて気がつかなかったみたい。
宮永の情報といっても、しょせん私が勤める会社ではなく、孝弘は仕事の話も愚痴も一切話してくれない。
おまけに、私が浮気してると疑われて…
宮永への復讐は私の中では継続している。兄さんは私にどんな復讐をするか、話さない…
きっと殺したりはしないと思うけど…
「だから、浮気の件は本当に悪かった。早苗とも別れてくれと告げた…」
俺は清美の話を聞き終えた後言った。
「もういいの…でも兄さんと仲良くなれそう?」
「ん…ああ…」
俺は曖昧な返事をした。いきなり小島が俺の腹違いの兄と言われてもしっくりこない。
「仲良くなってくれるといいな…」
清美はなんだか子供みたいに言った。
「まぁ、普通だよ。でも小島への嫉妬は薄れた」
「兄さんに嫉妬してたの!?」
俺は清美に初めて心の中の正直な気持ちを述べた。
人への嫉妬などカッコ悪くて誰にも言えなかったが、言えた。
「嬉しい、あなたがそんな事口にするなんて…」
「もっと早くに言えば楽だったかな…」
「これからは何でも話して…」
「ああ…」
「殺してもいいかな?」
急に清美が呟いた。
殺したいのはもちろん、宮永だ。俺は清美の顔をじっと見た。
美しい整った顔。口元に少し髪がかかり、色っぽい。上品さが漂う…しかし、美しい悪魔にも見えた清美の真剣な表情に俺はぞっとした。
あのおとなしい清美がこんな事を言うとは…。
清美が幼い時に見た、母親の首を吊った現場は衝撃的で今も脳裏に焼き付いているのだろう…。
でも、
「それだけは駄目だ…」
「嘘、冗談」
急に清美は笑顔を作り言った。
「当たり前だろ」
俺も笑顔で言った。
「清美、辛かったな…お前…清美も何でも話せばいい。俺に甘えればいい…きっと、藤永家の人はいい人で、でも清美は気を使ってずっと過ごして来たんだな…。俺には気を使うな」
俺は清美を抱きしめる。
今になってようやく、清美が愛しくて守ってやりたくなった。
「ありがとう」
「そろそろ寝るか…もう日が上りかけてっけど少しは寝ないとな」
俺が目が覚めたのはもう昼前だった。俺がリビングに行くと清美は先に起きて昼食の準備をしていた。
「おはよう」
「おはよ、」
挨拶をかわす。
何だかいつもの会話が照れ臭い。
俺は40才を出前にして、甘い恋をしているような気分がした。
今まで社長の息子として恥ずかしくないようにと、努力して努力して、プライドが高く、負けず嫌い…
浮気を繰り返したものの、本来の癒しはこんなに近くにいた。
「私の実家に行って、子供を迎えに行って義父さんの家に向かう。今日の予定ね」
清美に言われ、
「ああ、そうだった。まだ何か隠してやがるからな親父。」
「本当に何かしら?」
清美と小島が兄妹。
俺と小島が兄弟。
でも違う…?
何なんだろう…?
『良かったら藤永夫妻もお招きしなさい』
親父からメールが入った。
親父は簡単な用で俺相手ならメールで伝えれ。
「清美の(義理の)両親も良かったら来て下さいって」
「じゃあ、向こう着いたら誘ってみる。」
うちの両親と清美の両親は仲がいい。お互い企業ぐるみの付き合いから始まっているのもあるが…。
清美の作ったオムライスを食べ終え、身支度をし俺逹は出掛けた。
俺はけじめの為、ある事を決心していた。
藤永家へ着くなり、俺は出迎えた藤永夫妻の前で土下座した。
「申し訳ありません。僕は、清美という妻がありながら浮気をしました。清美を傷つけてしまいました。大事な娘さんを傷つけてしまいました!」
いきなりの俺の行動に、藤永夫妻も清美もびっくりしていた。
清美のお父さんは
「孝弘君、頭をあげなさい。正直に言ってくれてありがとう、清美は心が広い。きっと許してくれる。後は君次第だ」
清美のお母さんは
「知っていましたよ。今噂になってるから…でも、孝弘さんの頑張り次第で悪い噂も消えるでしょう」
そう言ってくれた。
二人とも器が広い。
自分の浮気の噂が予想以上に大きい事も知った。自分が自信ありげにバレやしないとたかをくくっていた罰だ…
宮永夫妻と俺達の子供2人を誘い合わせ、親父の家へと向かった。
親父とお袋が出迎えた。
「まぁよくいらして下さいました」
「いえ、お招きありがとうございます」
両家の親同士は丁寧に挨拶を交わした。
大広間には豪華な食事が並んでいた。お袋は料理が好きで今日も腕をふるったのだろう…
「どうぞ召し上がって下さい」
お袋の合図で食事会は始まった。
わいわいと楽しく盛り上がる。
しかし、俺は内心親父が言っていた「違うんだよ…」が気になって仕方がなかった。
皆いつもどおりに見えた。
俺だけが嫌な胸騒ぎがしているのか…
俺も皆に混じり、会話を楽しむ素振りをしたが、何を聞いて何を話ているのか…よくわからない。
やっと食事が終わり、お袋がお茶を入れ始めた。
飛山が子供逹に
「よし!おっちゃんとショッピングセンターへ行こうか!二人とも勉強に習い事に頑張ってるって聞くから、何かおっちゃんがプレゼントしよっかな!」
と誘いをかけた。
子供逹は嬉しそうに飛山についていった。
いよいよあの話か…
さて、メンバーは…
俺。
清美。(俺の妻)
小島。(俺の部下、俺の兄…でも違う?)
満さん。(小島の妻)
親父。(社長)
お袋。(もちろん親父の妻)
義父さん。(清美の育ての父親)
義母さん。(清美の育ての母親)
お袋がお茶を入れ終えた。
親父は切り出した。
「今日集まってもらったのはある話をする為なんだ。妻から話がある」
え?お袋から…
わたくしはこの物語で初めて登場しますね。やっと出番が来ました。今さら…ですが失礼しますね。
名前は 『山崎 京子』といいます。
わたくしは某車メーカーの下請け会社の娘として育ちました。言えば、夫、山崎と同じ規模の会社です。
わたくしは、お茶にお花、ピアノにバイオリンなどお稽古事漬けで育ちました。
別にストレスなどは溜まりません。それが当たり前と思ってましたので…
わたくしが山崎と結婚する事は、見合いをする5年も前から親同士の話し合いで決まっていたようです…
どうやら、お互いに協力会社として手を結びたかったようで…
と、いうわけで…わたくしは親の会社ではなく、山崎の会社に入社致しました。
山崎の会社の受付をしておりました。
もちろん、社長息子である山崎の事は入社した時から知っています。
両親からは
「将来は社長婦人。品よくしなさい。良い印象を与えなさい」
そう言われました。
親の言う事を忠実に守り、親の敷いたレール通りに走る…わたくしはただの純粋な娘でした。
もちろん、将来のお婿さん。山崎を意識しました。好きとか、恋とかそういう感情が生まれるかと思いきや…
山崎の評判は悪く、将来社長になるのがわかりきってか仕事には不真面目。遅刻はする…まだ社長でもないのに社長出勤…
しゃきしゃきとは歩かず、いつもポケットに手を突っ込んでだらだらとしていた。
極めつけは女性にだらしが無いこと…
自分が気に入った女性は手当たり次第声をかけていました。
わたくしも…研修を終え、受付に立たされた時
「あれ、新入社員?きれいだね。よろしく!」
と電話番号の書いた紙を渡された。
わたくしは腹が立ちました。
入社初日、すれ違った時に山崎に会釈をし、
名前を告げ、自己紹介し今日からお世話になりますと挨拶をしたのに…
屈辱でした。
この人は将来わたくしが妻になるのを知らないのかしら?
少なくともわたくしは山崎を意識していたのに…
将来この人の妻になるのかと思うととてもやりきれない気持ちでした。
親の敷いたレール…忠実でしたが初めて泣きついて、山崎の妻になるのは嫌だと言いました。
が…即却下されました。
もう決まっているから…でした。
「夫をうまく立ててやる気を出させるのも妻の役目」
終了。
わたくしは今やけばけばしいマダムとなりましたが、当時は若かったし、それなりに美人だったと思います。
なのに…受付で電話番号の書いた紙を渡して以来、わたくしには興味を示してもくれませんでした。
気合いを入れてお化粧をしてみましが山崎が受付を通る時
「化粧、濃いねぇ~気合い入れて嫁ぎ先でも探してるの?」
キィィィィ~!
何ですって!?許せない。
わたくしは次の日から化粧をせず出勤しました。
あなたと結婚する位なら生涯独身で結構!
まわりからかなり怒られ化粧はまたするようになりましたが…
入社して3年が過ぎた頃…わたくしは山崎の許嫁という噂が流れはじめました。
噂というか事実なのですが…
と同時に山崎が取り引き先の事務員の女性に熱を入れているという噂も流れました。
噂というか事実なのですが…
わたくしは立場がなかった。
許嫁がいるというのに他の女性に夢中だなんて…
わたくしは特に山崎を愛してたり、結婚に期待を持ったりはしていませんでした。
結婚すると同時にわたくしは墓に入るのだと思っておりました。
が、いくら何でもわたくしだってプライドがあります。
話を聞くと山崎が熱を入れている女性は山崎に興味を示していないとか…
そりゃそうでしょ!
あんないい加減な糸の切れたタコを誰がまともに相手しますか!
相手したら、ただの淫乱女ですわ。あんなのと付き合ったら脳ミソ溶けて耳から出てきて、おかしくなってしまいそうだわ。
上品だったはずのわたくし…身も心も清らかだったはずのわたくしはいつの間にか、こんな下品な事を心の中で思ってしまうようになるなんて…
わたくしが嫁に入った暁には、ご飯に鼻くそ混ぜてやるわ!靴底にガムでも着けてやるわ!
日々、山崎への嫌がらせを想像していました。
しかし、ある日を境に山崎は変わった。
朝、山崎が受付の前を通る時、
「おはようございます」
嫌々ながら挨拶をするわたくし。
いつもの山崎なら
無視。
声がかかるとすれば…
「今日はすっぴん?寝坊か?」
(社長出勤のあなたに言われたくはないわよ!)
「受付さん、いい女いたら紹介してね」
(いい加減、名前ぐらい覚えたらどうなの。誰が紹介しますか!わたくしのこけんにかかわる)
こんな感じなのに…
「戸川さん(わたくしの旧姓)おはようございます。朝早くからご苦労様です」
は?
何が起こったのかしら…?
わたくしは大変、山崎が…不気味でした。
そろそろ地球が滅亡するのかしら…?
山崎が豹変した謎はすぐにとけました。
例のお気に入りの事務員に本格的に腰を入れたようでした。
山崎は一人の女性にみそめてもらうため、魂を入れかえたようでした。
人間が変わってもとことん分かりやすい男でした…
しかし、山崎は仕事に無我夢中になり、人一倍…2倍も3倍も努力し、成功を修めていきました。女性へのふしだらもなくなり、女の影もなくなりました。
ただ一人の女性をのぞいて…
山崎が豹変し、わたくしは見る目がかわりました。
仕事の為、必死で駆けずり回る山崎がとても素敵に見えてきたのです。
例え、わたくしではない誰かの為であっても…
わたくしはついに山崎に恋をしていました。
朝、受付で挨拶すると、
「今日も頑張りましょう」
とか
「戸川さんは品があり対応が良いと評判ですよ」
とか
いつの間にかわたくしを誉めたり、やる気にさせる言葉に変わっていました。
例え、社員にやる気を出させる為の言葉だとしても…
わたくしは朝、山崎が受付を通るのが待ち遠しくて…
わたくしは山崎の慕う女性がとても気になりはじめました。
『滝川君子』
山崎が熱を入れている女性の名前はすぐにわかりました。
何て言ったって有名ですもの…許嫁のわたくしそっちのけで、下請け会社の事務員に熱を入れていると…
わたくしは君子さんに嫉妬していました。
どんな女性なのかしら…?
わたくしはとても気になり、ついに会いに行ってしまいました。
君子さんの会社まで行き、君子さんを直接呼びつけました。
わたくしは初めて会った君子さんを見て、びっくりしました。
何て綺麗な方…
いやいや、人は容姿だけではないわ…。山崎は容姿だけを見て惚れ込んだに違いないわ…
「いつもお世話になっております。滝川でございます」
君子さんは丁寧に挨拶した。
「戸川です。はじめまして」
わたくしは少々高飛車に挨拶してしまったかもしれません。
「この近くになんやらかんからという喫茶店がありましたわね?わたくしそこでお待ちしておりますので…お仕事が終わり次第、来て頂けるかしら?」
「あの…只今1時半ですので…業務が終わるまで4時間程ありますが…」
はっ!しまったわ!わたくし焦ってこんな時間に来て何て事を…ただ少し顔を見て適当に業務内容を見学させて頂けるかしら?で済ませるはずだったのに…
君子さんが綺麗過ぎて、ついあら探しをしてやろうと変な事を言ってしまったものの…
あとにはひけず
「いいえ、4時間でも何時間でもお待ちしてますので…残業などあってもかまいませんので、業務が終わりましたらおいで下さいね」
と言った。
わたくしはプライドが高かった。
君子さんは
「わかりました。業務が終わり次第行かせて頂きます」
と、あっさり答えた。
まぁ!やっぱり!せっかく訪ねてきた人間に4時間も待たせるだなんて…根性悪いのね!
自分で言っておいて、君子さんを悪い人だと決めつけた。
「では、確かにお待ちしておりますので!」
わたくしは喫茶店に入りコーヒーを注文しました。
あと4時間は待たないといけない…
そう思っていると君子さんがやってきました。
「今日の業務は終わりましたので…お話とは何でしょうか?」
君子さんはすぐにやって来た…業務は終わっただ何て嘘ばっかり…
わたくしに気を使ったみたいだけど、かえって気にくわなかったのを覚えているわ
「わたくし、山崎の許嫁と言えばお分かりになるでしょうか?」
単刀直入にわたくしは切り出した。
「ええ、でも私、山崎さんとお付き合いはしていません」
「知ってます」
「ではどんなご用件でしょうか?」
「…」
わたくしは言葉につまった。
そうよ!よく考えたら、わたくし特に用はないのよ!
ただ君子さんがやたら綺麗だったからつい呼びつけてしまって…今日は物色するつもりで…
わたくしが悶々としていると…君子さんが口を開いた。
「山崎さんからは何度か交際の申し込みがありましたが…私、断ってますし、お付き合いするつもりもありません。誤解なさったなら謝ります」
「あなた山崎の事どう思ってるの?」
「いえ、山崎さんとはすむ世界が違います」
「そうじゃなくて、男として好きかどうかという事!」
わたくしは君子さんがもどかしくてついきつく言ってしまう。しかし、
「好きです」
「なっ…!」
君子さんははっきりとこたえた。
「でも、先ほど言ったように住む世界が違います。素敵な婚約者がいるのに、私には出る幕はありません」
わたくしは何て言ったらいいかわからなくなりました。君子さんの瞳は澄んでいて、そして少し悲しげでした。
「戸川さんは山崎さんがお好きなんですね」
君子さんはにっこりと笑った。わたくしは君子さんが羨ましかった。
山崎が必死になり駆け回っているのは君子さんに振り向いてもらう為。素敵な笑顔。美しい顔…わたくしが勝るものは何もない…
わたくしは悲しくなり、
「失礼するわ」
席をたってしまいました。
「ちょっ…戸川さん!」
わたくしは喫茶店を出て走りました。
悔しい!もっと根性の悪い女を想像してたのに!わたくしでは勝てないわ!
わたくしは走ったものの、すぐに息をきらし、歩道にへたりこんでしまいました。
涙が出てきました。
すると、
「戸川さん!」
君子さんが追いかけて来てくれました。
「何よ!あなたは何もわかってない!わたくしより綺麗で、山崎はあなたに夢中で…同情してるんでしょ!あなたはどこのいいお嬢様だか知らないけど、いい人ぶるのはやめて!」
わたくしは君子さんに言い放しました。
「戸川さん、私の家近くなんです。いらして!」
君子さんはわたくしの手を無理に引っ張り、自分の家まで連れて行きました。
何、自分の家の自慢かしら!
と思いきや…
ボロいアパートに着きました。
「ここ…?」
わたくしは唖然としました。
ここに本当に人が住んでるのかしら…?
「さあ、入ってください!」
…
…
…
わたくしと君子さんはお友達になりました。
君子さんは孤児でした。わたくしは大変君子さんに失礼な事を言ってしまい、詫びると、
「忘れました」
とにっこり笑ってくれました。
二人で山崎のだらしなかった頃の悪口をいったり、仕事の愚痴を言ったり…
楽しくおしゃべりしました。
わたくしは初めて心を許せる親友に出会いました。
この人になら、山崎を譲ろうと思いました。
君子さんとは手紙のやり取り、一緒にご飯を食べに行ったり…本当に楽しかったわ…
ずっとお友達でいたい、初めて心許せる友達に出会ったと思った。
でも…
わたくしと山崎の結婚がついに間近に迫りました。
両親がわたくしと山崎の結婚をすすめていたのです。
山崎はもちろん君子さんにぞっこん。わたくしは君子さんに山崎をゆずるつもり…
しかし、両家はわたくし逹の結婚をすすめるばかり…
わたくしがもやもやしているところ、ひとりの男性に告白されました。
その男、宮永 という男でした。
宮永は営業部の社員。若手ではよく仕事もできるエリートでした。シブイ感じが若い女性社員に人気でした。
山崎を君子さんにゆずるつもりなわたくしは、宮永の告白に少しときめきました。
宮永どわたくしが付き合えば、君子さんも心おきなく山崎と…
そうゆう気持ちもありました。
わたくしは宮永とお付き合いする事にしました。
そして、君子さんに 宮永と付き合ってる事を告げ、
どうか、山崎と付き合ってあげて!山崎を幸せにしてあげて!
と言いました。
君子さんは
「ありがとう」
と涙まじりに言い、山崎と付き合いました。
わたくしは二人の幸せを願いました。例え両家の圧力があっても、きっと君子さんなら成就できると信じていました。
わたくしはわたくしで宮永と付き合い、初めて男性と付き合うという事にときめいていました。
宮永は優しく、わたくしを包み込むような感じ…
初めて交わしたキスや抱かれた事、一つ一つに幸せを感じていました。
しかし、幸せは長くは続きませんでした。
わたくしと山崎がなかなか結婚に応じない事から両家はしびれをきらし始めたころ…
山崎は君子さんを連れて失踪したものの、じきに帰ってきたようです。
そして、わたくしに君子さんから一通の手紙が…
『私はあなたが好きでした。お友達になれて良かった。山崎以上に好きでした。ありがとう。私はやはり、あなたは山崎さんと結婚すべきと思うのです…。お二人の幸せをずっと祈っています。』
『追伸…宮永に気をつけて』
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皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 151HIT 永遠の3歳 -
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酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 164HIT 小説家さん -
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1414HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 527HIT 旅人さん
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50代バツイチ同氏の恋愛
50代バツイチ同士のお付き合いです。 彼を家に招待したり、泊めたりするのは世間的にどうなんでしょう…
74レス 2823HIT 通りすがりさん (50代 女性 ) -
ピルを飲んで欲しい
ピルについて 女性の方にお聞きしたいです。 お付き合いしているすごく好きな人に、生でしたいからピ…
26レス 1022HIT 社会人さん (20代 女性 ) -
真剣に悩んでいます。
初めましてこんにちわ。 私のお話しで申し訳ないのですが聞いてください。 私は文章を書く事や文字に…
24レス 775HIT 通りすがりさん -
家の鍵をかけない人いますか?
私はいつも出かける時に家の鍵をかけません。単純にめんどくさいからです。 帰って来るとき、荷物持…
82レス 2233HIT おしゃべり好きさん -
離婚後の手当について教えてください
旦那の不倫が原因で離婚に向けて動いているところです。0歳の子どもが1人います。 養育費の件で弁…
6レス 291HIT 結婚の話題好きさん (30代 女性 ) -
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30歳実家暮らし女です。 最近そろそろ出会わないとヤバいと思いマッチングアプリを始めました。 マ…
10レス 346HIT 結婚の話題好きさん (30代 女性 ) - もっと見る