小島と俺
これは携帯小説で、ヒィクションです。
エリート社員、山崎に新人社員の小島が部下として配属される。呑気で陽気な小島と出会ってから変なやつと思いつつも、山崎は 自分の私生活、生き方、考え方に疑問を感じ始める。そして、小島にはちょっとした秘密があるのだ…
携帯小説初めてです。
誤字、文法、表現おかしいところあるかもしれません。
更新、遅いかもしれません。
頑張って描きますね。
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わたくしは、どうしていいかわかりませんでした。
山崎はわたくしとの結婚をいきなり受け入れ、君子さんは失踪してしまいました。
きっと君子さんがそのように山崎に釘をさしたのでしょうね…婚約者のわたくしと結婚するように…
でも、わたくしには宮永がいる。わたくしは宮永を愛していましたし、君子さんの最後の手紙も気になります…
宮永に気をつけて…ともかいてあるし…
悶々とわたくしが悩んでいるうち…だんだんと宮永が冷たくなっていきました。
なぜ?
宮永はわたくしを愛してはいないの?
冷たくなり、最後には別れを告げられました。
プライドの高いわたくしは宮永にすがりはしませんでしたが、ひとつ問題が…
わたくし、妊娠していました。
宮永に別れを告げられるは、妊娠するわで困ったわたくし。
宮永はわたくしを愛していたのではなく、山崎を疎ましく思っていた為、山崎から何かを取り上げようとしたのでしょう。
なんてちっぽけな男…
君子さんは宮永が山崎を良く思っていない事を知りわたくしに忠告してくれたのでしょう…
わたくしは山崎に相談しました。面と向かって話をし、プライベートで会うのは初めてでした。
山崎は優しくわたくしに言いました。
「今まであなたをないがしろにしてすまなかった。結婚しましょう」
山崎からのプロポーズでした。
「家の方に言われたからでしょう。君子さんのかわりなんでしょう」
わたくしが涙まじりに話すと
「いいえ、あなたはあなたです。君子さんの事、正直愛しています。しかし、俺はあなたを幸せにする事。君子さんを愛する前にあなたを愛さないといけないのです。結婚してはくれませんか?」
「でも、わたくしお腹に宮永の赤ちゃんが!」
「その赤ちゃんは俺の子だ!何も心配しなくていい。せっかく授かった命だから、自分の体を大切にして元気な子を生んでくれ!」
もちろん、山崎の子ではありません。宮永の子に間違いないのです。
でも、心配するなと背中をさすってくれる山崎にわたくしは心を打たれました。
山崎はすぐに結婚をすすめました。
家族には結納の前にわたくしに手をだしてしまい妊娠させたと報告しました。
跡継ぎが欲しい両家ですが、順番を間違っては恥だと、結婚するまでは妊娠を隠しました。
それは山崎の思惑どおり…
宮永にわたくしの妊娠を悟られては、いけなかったからです。
宮永はやり手でエリートだが、地位や名誉、金を狙う男。その男の子だと宮永が知ると後で何を脅されるか…
わたくしは予定どおり赤ちゃんを生みました。
が、まわりには早産との報告をしました。両家もそのように振る舞い、まだ保育器に入っているとまわりにもらしたり、皆、自作自演に大変でした。
わたくしはひっそりと山崎が少し遠くに借りてくれたアパートで、赤ちゃんと2ヶ月程過ごしました。山崎は毎日アパートに来て、赤ちゃんをあやしたりして、慣れないおしめを代えてくれたりと、良い父親っぷりでした。
わたくしは涙がでてきました。本当の父親ではないのに…こんなにこの子の事を…
そんなわたくしの心中を悟ってか
「こいつは良く泣くなぁ!俺みたいにやんちゃになるかな!ははは、でも元気が一番!もうすぐ皆で暮らせる。いっぱい遊ぼうな」
と、赤ちゃんに話しかけてくれました。
「こうして孝弘は生まれたの」
お袋は静かに言った。
お袋の話を聞き、また俺が視点に戻るぜ。
「じゃあ、俺は本当は宮永の子供…」
ショックだった。ずっと親父の子供だと思ってた。いや、当たり前過ぎて考えもしなかった。
「いや、わしの子供だ」
すかさず親父が言う。
「達也君のお父様だって、本当はこの人の子供なのに、本当に愛して、達也君を育てたのよ。血のつながりだけが、家族ではないわ」
「さて。達也君、あなたも聞いてびっくりでしょう」
お袋の問いかけに
「ええ」
小島は険しい顔で頷く。
なんていっても復讐の相手が俺の実の父親だから…
「復讐をするの?」
さらに問われ
「やはり、気付いてらしたんですね。今はわかりません。複雑過ぎて…」
藤永夫妻も心配そうな顔をしている。
清美も、複雑そうな顔だ。
「わたくしは今はまったく宮永を愛していません、まして孝弘の父親とも思っていません。わたくしがなぜ話したかは、事実のみを知ってもらいたいからだけ」
「俺も宮永が父親とは思えない」
すかさず俺も言う。実際そうだ。
会社の金を横領したり、地位も狙っているだろう…
そんな父親いらない。
小島はうつむいたままだった。
満さんは心配そうに小島を見ていた。
「孝弘、ごめんなさいね。今まで隠してて。でもあなたのお父さんはね、本当にあなたを息子だと思ってるわ。だから、言う必要はないと思ってた」
お袋が口を開いた。
「いや、気にはしてない」
確かに親父と血はつながっていないが、気にはしなかった。驚きはしたが…
宮永の息子というのは気にいらないが…
小島が血の繋がらない父親に愛情を受けて育ててもらったと聞き、感動したが俺は自分の父親もそうだと思うと、感謝でいっぱいだった。
じゃあ、俺は小島と血は繋がらない。
何だか残念な気はした。
ん、なぜ残念なんだ?
俺の中で小島は特別な存在になっていたのか…
「ところで、達也。宮永が会社で悪さをしてるのは薄々気付いていた。確証はあるのか?」
親父は小島に聞いた。
「賄賂をもらっているのは証拠をつかんでます」
あの、初めて小島の家に行った時に見せてもらったものの事か…
「宮永はかなりのやり手だ…会社でも悪さをかくして表面ではかなりの信頼も得ている。得意先の評判もいい。だが、会社で悪さをされては困るな…」
「僕は、父親と母親を自殺に追い込まれて…宮永を地獄に落としたいと思っていました。でも…」
小島は言葉をつまらせる。
小島はどんな復讐を宮永にするつもりなのだろうか…
しかし、俺の本当の父親と聞いてためらっているのだろうか…
宮永がやり手、つまり会社にとって宮永がいなくなると困る事も沢山あるのだ…
宮永の悪さが浮かび上がってしまうと、今まで信頼を得ていた得意先から一気に信頼を失う。つまり、宮永の失脚は会社の信頼も失ってしまう。
小島はそれをふまえ、証拠までつかんでいるのに表沙汰にはしなかったのだろう…
「宮永の事は達也にまかせる」
親父は言った。
藤永夫妻も頷く。
藤永夫妻は小島と清美がどんな目にあったかよくわかっているからか、お義母さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「お兄ちゃん…」
「たっちゃん…」
清美も満さんも心配そうだが、あなたが決めていいよという顔をしている。
「君子さんは本当にいいお友達だった。わたくしも宮永を恨んでいます。でも、孝弘を授かった。複雑だわ…」
お袋は宮永に情のかけらもないものの、俺が生まれた事により宮永との行為は帳消しにはできないようだ。
俺も…
「小島、すべての事実は全部皆わかってる。だから俺やみんなに気にせず、自分で考えたらいい。何も心配しなくてもみんな家族だ。血のつながりがなくてもここにいる全員が家族だ。」
そう言ってやるのが精いっぱいだった…
小島は
「わかりました。」
と静かにこたえた。
はたして、小島は宮永に復讐するのか…
するならどんな復讐か?
誰にもわからないが、この雰囲気からして、宮永がどんな目に合おうが、ここにいる全員が黙認する事。
たとえ死んだとしても…
そんな雰囲気だった。
「さて!話は終わりだ!今日は来てもらってありがとう。」
親父が重い空気をどうにかしようと切り出した。
「ここにいるみんなが家族だ。何も心配ない。わしは皆が好きだ」
その言葉に皆はほのかに笑った。
ただ一人小島は、らしくもなく作り笑いをしているように見えた。
食事会は終わり、皆解散の時間となった。
「また、明日から仕事だな。大変だけど頼むぞ」
親父は俺の肩を叩いた。
「親父…」
「何だ?」
「ありがとう、すまん、育ててくれて…」
俺は本当の父親でない父親に礼を言った。何となく照れくさかったが…
「実の息子を育てて何も礼を言われる必要はないぞ。今さらこんな話しても仕方ないと思ったが、母さんと話し合って今日は話した。何もそれは重要ではない。ほんの小さな事だから別に隠す事もなかったんだよ」
ほんの小さな事…
そういう親父が大きく見えた。
皆で挨拶を交わし、家路についた。
「お兄ちゃんと血の繋がった兄弟ではなかったわね、残念」
帰りの車の中で清美は呟いた。
「いや、別に…」
本当に別にどうだって良かった。小島が、育ての父親にどれだけ感謝し、自分が努力をしたか…
今になって本当によくわかった。
社長子息の立場が嫌だとか、自分がエリートだとか傲慢になっていた。
エリートなのは勉強する環境がすべて整えられ、まわりがそれに気を使う…
俺は恵まれていたのだ…
いつの間にか、自分が偉いと信じ込み部下の気持ちや立場を汲み取ってやった事があるだろうか…
あの精神科行きになった奴に「大丈夫か?」の一声もかけななかった…
思いやりに欠けていた。
次の日、俺が出社したら、みないつもと態度が違っていた…
え?
なんで…?
何が起こったのだ…?
何と、早苗とホテルへ入る写真が通路の掲示板に貼られているではないか…
変な噂が流れてると親父は釘をさしたが、誰がこんな事を…
俺は人だかりをかきわけ、写真をはぎとった。
俺は心臓がバクバクしていた。
噂ならごまかせる。
がこのように証拠をさらされると、ごまかす事は不可能だ…
俺は冷や汗をじっとりとかいていた。
後ろを振り向けない…
人だかりは俺が登場したのをきっかけに去って行くのがわかる…
俺は動けない…
浮気なんてばれなきゃいいとたかをくくり、やってきた罰か…
でも一体誰が…
呆然と立ち尽くす俺に話かけた奴がいた。
小島だ…
「おはようございます、部長!」
いつもの小島の声だ…
「…」
「な~に沈んでんすか?あのいかつい部長はどこに?」
「…」
俺は何も言えずにまだつったっていた。
「すいません、僕がもう少し早く来たら先にそんなやらせ写真はがしてたんですがね」
もちろんやらせじゃない。知ってる写真だ…だって、事実だから。
もう、信頼も、面目もない…
穴があれば入りたい…
「部長、自分が被害者と思わないで下さい。傷ついた清美の為にも…今こそ堂々としてたらどうなんです。いつもは必要以上にえらそうなくせに…」
小島はへらへらした口調で胸に突き刺さる言葉を吐いた。
「てめ…」
「ああ、そうだな。どうせ部下から嫌われてるんだ。気にする事もないか」
俺はそう言って気をとり直す。そうだ。いつも俺は堂々としてた。
何も気にする事はない…
「よし、朝礼の時間だ。いくぞ!小島!」
「はい!」
営業部に足を向けた。
「部長、その写真、拝借していいですか?」
「は?」
なぜ俺が自分の失態写真を小島に渡さなければいかんのだ?
しかし、小島は意味のない事はしない。
俺は小島と目を合わさずにさっと渡した。
朝礼が始まり、今週の予定を読み上げる。
小島のお陰で、自分を取り戻す事ができた。
えらそうと人に指摘されたのは初めてだが、みんな多分そう思ってんだな…
いいか…ヒールで…
朝礼が終わり、みな自分の業務に就く。
小島が俺のデスクに来てこっそり言った。
「部長、いい事…いや悪い事かな?教えますんで、一緒に帰りましょう。家まで送って下さいね。晩飯はうちで食べて下さい…んじゃ、ちょっと得意先に用事あるんで出てきます!」
小島は去って行った。
いいこと?悪い事?
なんじゃそら?
しかし、小島の言う事は大概約にたつこと…
聞いてやろうじゃね~か
仕事が終わったのは夜の8時…
俺は車で小島を待っていた。
その時、着信が入る…
早苗だ…
すっかり、忘れていた。いや、もう忘れたい…
って今度また話をしようとか言ったっけ?もう蹴りをつけたいが…やっかいだな…
電話に出ないといくらでもかかってきそうだ…
早苗からの着信はあの喧嘩して別れ話をした時から何件もあったが…無視していた。
もうめんどくせぇ!今から出て、うざい別れると言ってやる。
「あーもしもし!」
俺は勢いよく電話に出る。
「もしもし、この前はごめんなさい。私、わがままだったわ…」
いつもならなかなか電話に出ないと、何で電話の一本もしてこれないの!
と怒鳴るくせにやけにしおらしい…反省したのか…いやいや…
同情は禁物。もう別れるんだから。
「この前も言ったように、お前とはもう別れる。妻にも本当の事を言ったんだ…」
「だから…あたしはまだあなたが好き。一方的過ぎるわ」
そら来た。がんとして動かない。
「もう、早苗には飽きたんだ。そもそも、俺は好きじゃない。ただ癒しだからいただけだ。やはり、妻が一番なんだ」
「奥様、綺麗だものね…」
「知ってるのか…?」
早苗が清美を知ってる?あとをつけた事があるのか?
「ええ、知ってるわ。ねぇ、知りたくない?色々と…」
「何の事だ…」
「知りたかったら今からきて…」
「おい、だからなん…」
電話は切れた
一体、小島といい早苗といい、どちらもどうしたんだろう…
小島の言い分はまだ分かる。小島は無意味な事はしない。何かあるから俺を誘ったんだろう…
早苗は…俺と繋ぎ止める為か…何かあるのか…?
しかし、この後、小島との約束がある。先約だ。
早苗の件はもうしばらくほっておこう…
「部長~!」
小島が俺の車に乗り込んだ。
「お疲れ」
「お疲れ様です。誰かと電話してたんですか?」
「ああ、いや、たいした用事じゃない。行くぞ。」
この時、小島に 早苗とこんなやり取りをした。と正直に話すか、もしくは早苗に会えば良かったと後で後悔する事になるとは…
思わなかったんだよ
あたし、木下早苗。
みんな知ってるだろうけど、「俺」山崎の愛人。
この中じゃ 我が儘で傲慢な女になってるけど、実はそうじゃないの…
一途で純粋な女…
あたしの事知ってもらわなくちゃ、「小島と俺」の話が進まないから…
語らないとね…
あたし、キャリアウーマンって事になってるけど、違うのよね。
生い立ちは…
両親が、私を置いて出て行っちゃって、5才の時からひとりぼっち。とりあえず両親帰って来るの待ってたんだけど…何日待っても帰って来なくて…
ついにお隣のおばちゃんに「お父さん、お母さんが帰ってこない。お腹が空いたので何か食べさせて下さい」
って泣きついて、その後は施設で育った。
両親なんて知らない。家族なんて知らない。
施設ではいじめ、一部の職員からは虐待され、あたしは完全に人間不信になってた。
もう、誰も信じない。
施設では食べ物には困らないからいたけど、15才になって中学を卒業した時に施設を飛び出して働き始めた。
仕事…っていうか援交。
大人はあたしを捨てた。愛はいらない。お金があれば生きていける。
あたしは身体を差し出す事に抵抗はなかった。あたしなんてもともと捨てられたゴミ同然。
抱かれる間、死んだと思えばいい。
警察に捕まったってよし、相手が悪い奴で殺されてもよし。
あたしは自分を捨ててた。
命があるから生きてるだけ。命をとられたら、死ねばいい。
援交をしてても不思議と警察には捕まらなかった。
あたしは、援交をするとき必ず相手に要求する事がある。
避妊。
自分でも病院へ行きピルは処方してもらっていたが…万一と病気を考えていた。
病院の先生の言う事を素直に聞いた。ピルだけをあてにしてはいけない、病気の心配もあるからと…
今思えば、10代。人の言う事を聞く素直さが残っていたのかしら。
命を宿すのが怖かった。
命を宿して、殺す…それは自分がされた事と同じ。
もちろんだけど、この頃あたしに家はなかった。未成年だし。病院で出した住所名前もでたらめ。
保険証もなし。
援交して、お金もらって、安いホテルに泊まる。
そんな毎日。
そんなのが2年続いて、あたし18才。
運命が訪れる。
ある日の援交の相手。
おじさん。
まぁ、普通のサラリーマンのような中堅クラスか少し上の…
おじさんはホテルに入ってもあたしに触れてこない。
「…」
なんで?
「おじさんはね、援交なんて初めてなんだ」
「そうなの?」
だから何?さっさと済ませてお金ちょうだいよ。
「今日はお話しようか」
「はぁ、でも」
「お金は渡すから…」
話だけでお金もらえるのか…だったらラッキー。
「君はどうしてこんな事をしてるのかな?」
「お金欲しいから」
何あたり前の事聞いてんだか…
「違う、君はね、あ、早苗ちゃんだったかな。お金じゃなくて、愛に飢えてるんだよ」
「は、何言ってるの?」
愛って…恥ずかしげもなく…
親の愛情も知らない。
友達の友情も知らない。
施設では同情すらなかった。
異性の愛情なんて、援交やってて何だけど汚らわしいだけ。
「じゃあ、私は君をお金で買った。話してくれるかな?お話してお金渡す。OK?」
お金もらうんだからいっか…
あたしは生い立ちを話した。
おじさんに話していくうち、嫌な事や悔しい事がよみがえり、普通の女子高生や、幸せそうな家族連れ、若いカップルを見る度に腹がたつことまで語ってしまった。
おじさんはただ聞いていた。
そして、
あたしの目から涙が溢れた。
あたしはもう泣かない、涙はでないと思っていたのに。
本当はもう嫌。
誰かに優しくされたい、包みこんで欲しい。あたしの体ではなく心を求めて欲しい。
誰でもいい。大人でも子供でも、男でも女でも…いっそ宇宙人でいい。
あたしを包んで欲しい。
おじさんは泣きじゃくるあたしの頭をなでてくれた。
大きなあたたかい手。
そしておじさんは言った。
「おじさんが、早苗ちゃんを守ってあげよう。まずは住むところだね」
「えっ?」
「おじさんは何千万もするマンションは買えないけど、アパートを借りる位はできるから」
「いいの?」
「いいよ。今までつらい思いをしてきたし、頑張ってきたからこれくらいのご褒美はいるだろ?」
このおじさんとの出会いがきっかけで、あたしは愛に生きる女になる。
おじさんは本当にあたしに賃貸マンションを借りてくれた。
しょっちゅう様子を見に来てくれた。
毎月お小遣いもくれた。それは1ヶ月十分生活できるお金。
あたしは援交しなくてよくなった。
おじさんも、「もうやめなさい」と言ってくれた。
おじさんは、あたしに手を出さなかった。
よく見るとおじさんは結構ダンディーで素敵だった。年は40過ぎた頃。
いつしか、あたしはおじさんを「パパ」と呼んでいた。
それは世間一般でいう、父親意外の役割を示す呼び名と一致。
でも、あたしは頭をなでてくれたり、手を握って優しい言葉をかけてくれるパパに父親のような錯覚もあった。
父親の愛情なんて知らなかったけど…
あたしは初めて人を愛した。
パパ…
あたしから誘ってパパに抱いてもらった。抱かれて初めて幸せだと思った。
パパにはもちろん家庭がある。
でもかまわない。愛人だって、なんだって…あたしが愛してるからそれでいい。
あたしは初めて自分に優しさをくれたパパの為なら何でもしようと思った。
あたしはパパを愛してた。
パパはある日あたしに言った。
「パパはね、嫌いな奴がいるんだ」
「誰?」
「…社長だよ。俺の欲しいものみんな持ってるんだよ」
「パパの欲しいものってなあに?」
「パパは昔好きな女がいてね…でもその、社長と付き合って女の人捨てたんだよ…ひどい振り方して女の人自殺したんだよ」
「え~ひどい」
パパの好きな人と聞いてもあたしは傷つかない。パパが好きならあたしも応援する。あたしは2番目でも3番目でもいい。
ほんの少しでも愛してくれたら…
「それに、仕事もいまいちなのに親が社長だからそいつも社長になったんだ。」
「ふ~ん、パパは社長になりたいの?」
「社長は無理だね。でも、ちょっと痛い目にあわせたいだけだよ」
そう言ってパパはあたしの頭をなでた。
「じゃあ、あたし協力してあげるよ。」
「本当かい?じゃあ時がきたら頼むよ」
パパは抱きしめてくれた。
あたしはパパが喜ぶなら何でもするよ…
さて、ここらへんで…わかったかしら。
あたしのパパは宮永専務。当時は部長。
あたしは宮永専務の愛人として生きていた。
馬鹿なあたしは、宮永のほんの少しの愛に酔いしれ週に1度マンションにやってる宮永を待ちわびた。
今思えば、本当に馬鹿なの…
宮永の言いたい事はよくわかった。
つまり…自分の嫌いな相手を陥れたいとの事だ。
その為に協力して欲しい…
と言いたかったんだろうけど、宮永に酔ったあたしは自分から
「パパの嫌なものはあたしが排除してあげる。できる事があれば何でもするよ!」
なんて言った。
「ありがとう。いいこだね…愛してるよ、早苗…」
愛してる、嘘か誠かわからなくても…その言葉だけでいい。
あたしは宮永の人形でも便利屋でも良かった。
あたしは宮永に言われた通りに、会社の取り引き先の男をくどき落とし、裏の情報を聞き出したり、あるいは書類を盗んでとんずらしたり…
などかなり宮永に貢献した。
宮永の
「よくやってくれたね」
「いいこだ」
極め付けの
「愛してる」
の言葉だけを頼りにし、ただひたすら宮永に尽くした。
宮永と出会い、十数年たった昨今…
宮永からある男を口説いて欲しいと言われた。
まさに宮永の会社の社長子息。
山崎 孝弘…
山崎孝弘は簡単におちた。
酔っぱらいのフリをして、からんで自分ちまで引っ張り込み、ふられてかわいそうな女を演じた。
すぐに孝弘はあたしを抱いた。
作戦成功。
宮永は孝弘とあたしを不倫させ、会社のスキャンダルにしたかったらしい。
あほくさいけど、社長子息の孝弘と社長にとったら 痛手よね?
最初は計算通りにあたしと不倫関係になろうとする孝弘がおかしくて仕方がなかった。
しかし、孝弘は意外に好い人だった。
あたしのウソっぱちに真剣に耳を傾けてくれた。キャリアウーマンを気取りすぎえらそうな事を言うと諭す。
勿論、孝弘はあたしに対して遊びだとは知っていた。
本気にはしてないだろうし、本気になられても困る。
適度にわがままを言いイラつかせ、はまらないようにはした。
宮永に聞いた孝弘は…
傲慢、だらしない、いい加減、すかたん…
の割にはいいやつで…
でもあたしは宮永一筋…
宮永の為に尽くす。
何がなんでも。
そう思っていた。
孝弘をはめる為の不倫…
でもいつの間にか…
あたしがはまっていた。
宮永の事は愛してる。これに間違いはないわ。
でも純粋にあたしと不倫をする孝弘を悪くは思えなかった。
孝弘をはめる事に抵抗を感じつつ、孝弘にも愛情が芽生えていた。
孝弘、仕事の合間に来てくれる。あたしに安心し、会社の情報まで話す。
あたしに癒しを求める孝弘にいつの間にか愛しさが込み上げてきた。
あたしの中で宮永と孝弘の板挟みになった…。
宮永に捨てられるのは嫌。でも孝弘といるのも心地よい。
どちらをとるかというと宮永だ。生活の基盤も…お金も…
あたしはふと気づいた。
今のあたしは身の回りの生活の為に宮永といるのかと…
宮永はあたしを愛してるのではなく、ただ利用しているだけだ。
あたしを人形に育てあげたのだ。
愛ではない…と分かってはいたが、客観的にとらえられるようになった。
あたしは孝弘を愛しはじめている事に気づいた。
孝弘から会社の情報を仕入れても、宮永に全てを話さず、どうでもよさそうな情報を報告した。
勿論、宮永もあたしが孝弘に本気になってるのを気づいただろうが…そもそも孝弘や孝弘の親、社長にギャフンと言わせればいいのだからあたしが本気になって相手の家庭を壊せばよいのだ…
何て考えは甘かった。
宮永は独占欲の強い男。
たとえ、偽りの愛だとしても自分の飼い犬が自分より他の人間になつくのは許せなかったようだ。
あたしが隆弘に好意を持ってる事を宮永は悟った。
宮永はあたしを殴った。
「お前には俺がいりのだから、他の男なんていらないよ」
優しく言い放つ割には…
何度も殴った。
「俺の言う事だけ聞いてたらいいからね…」
今度は蹴り…
痛みに耐えながらあたしは
じゃあなぜあたしを他の男に抱かせるように仕向けたの…?
あたしはあなたを愛してたのに…
本気で…
隆弘は遊びと割りきりつつも…あたしの嘘話にも真剣に応え、うなずき、嘘話の時に出る涙をふいてくれた…
もう戻れない。
宮永はあたしを愛していない。
だって、愛してたらどうして痛い目にあわすの?
殴られるのは初めてではない。
会社の情報をうまく聞き出せないといつも暴力をふるった。
あたしは完全に宮永の人形。
痛みを抑えながらあたしは孝弘に電話を入れた。
最近は会っていない。
何度も孝弘に電話するがでない…
今日は約束してあったのに…
仕事で遅れるから、待っててと言っておいた後から連絡が取れない。
もちろん、仕事ではなく宮永が家にいるから待っててもらったんだけど…
宮永はあたしを殴るだけ殴り、そして優しく抱きしめた後帰って行った。
やっと連絡が取れたのは夜遅くだった。
会いたい…
会いたい…
それだけだった。
やっと孝弘から着信が入り、あたしはワンコールで出る
「ちょっとどういう事!?」
あたしは全てをぶつけるように孝弘に怒鳴る。
でも孝弘は仕事で忙しいとか悪かったとだるそうに返す…
孝弘は遊びと割りきってあたしと関係を持ってるのはわかってる。あたしもそんなフリをしてたけど…
好き…
本当に…愛してる…
しかし、孝弘からでた言葉は別れだった…
あたしは必死で孝弘にすがる。
でも孝弘はもううざいと言った感じだ…
とりあえずまた連絡するからという事で電話を切った。
偽物でもいい。形だけでいい。宮永に愛情がない自分は愛の対象が必要なの。
でも、もう宮永にすがって生きるしかない自分。
あたしは長年宮永に頼り生きてきた。今逃げ出せば、命の危険すら感じる。
会社の情報や宮永の実態を知り尽くしたあたし。
「一人でやってく」
なんて許されるわけがない…
あたしは泣いた。
一晩泣き続けた。
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私は男で妻と子どもがいます。子どもは現在6歳です。子育ては大変ですが自分も手伝ってます。妻は専業主婦…
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母親は離婚しシングルになり私は母親に引きとられました。 母親は実家に依存し私の子育てもほとんど祖母…
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自然消滅?ご意見お願いします!!
返信がない彼氏。 お互いアラサーです。付き合って3ヶ月の彼氏がいます。 GW明けにLINEで…
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まだ子どもいない新婚ですがこれからの時代子ども作っても損しそうで心配 昔は子育てにお金かけず子…
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神社仏閣珍道中・改
【神社仏閣珍道中】 …御朱印帳を胸に抱きしめ 人生いろいろ、落ち込むことの多い年頃を迎…
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