小島と俺
これは携帯小説で、ヒィクションです。
エリート社員、山崎に新人社員の小島が部下として配属される。呑気で陽気な小島と出会ってから変なやつと思いつつも、山崎は 自分の私生活、生き方、考え方に疑問を感じ始める。そして、小島にはちょっとした秘密があるのだ…
携帯小説初めてです。
誤字、文法、表現おかしいところあるかもしれません。
更新、遅いかもしれません。
頑張って描きますね。
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夜が明け、あたしはなぜかぴたりと涙がとまった。
夜明けと共に騒がしくなる外の音が、やけに静かにすーっと頭に響く…
いつも通り朝食をとり部屋を片付ける。
あたしはかつてこんなに部屋をきれいにした事があったかしら?
夕方近くあたしはシャワーを浴び、化粧をし、洋服に着替える。
あたしが向かった先。
孝弘の自宅。
孝弘の奥さんの顔が見たい…
タクシーに乗り孝弘の自宅付近で止まる。
しばらく停まってもらうように運転手さんに言った。
少し戸惑った運転手さんだけど、自前のすがるような目で…何とかOK。
さて、奥さん見れるかな…
なんて思ってると、タイミングよく孝弘と奥さんが家から出てきた。
何て綺麗な人…
年齢もあたしとそんなにかわらないはずなのに…
なぜか嫉妬は感じなかった。
孝弘の奥さん…
純粋にごめんねと心の中でつぶやいた。
奥さんにしたらあたしは憎い相手…
二人して車ででかけるようだ…
「すいません、あの車追って!つけてるとわからないように…」
運転手さんにお願いする。
「はいはい。つけてどうするの?」
「ただ見たいだけ…もうこれで最後だから…」
「は?」
首を傾げる運転手さん。
本当に最後。
できれば孝弘にもう一度会いたいけど…
奥さんの実家に行ったりして、たどり着いたのは…
でっかい豪邸。
どうやら孝弘の実家のよう…
子供も一緒に降りて行くし…
孝弘の家族が家に入って行くのを見届け、あたしもタクシーを降りた。
さて、どうしたものか…
結局、あたしは孝弘の実家の付近で2時間近くうろついた。
誰か出てきた。
何だかよくわからないおじさんと子供二人…
あれ、おじさん鍵閉めずに出てった…
あたしはおじさんと子供達が立ち去るのを待って、家の中に入った。
勿論、不法侵入。
でも、もうどうでも良かった。
!!!!!!!…★★★
あたしは、皆が集まる部屋にたどり着いて、ドアの外で身を潜めていた。
何やら話をしてるようで一部始終聞いてしまったのだ…
孝弘の実の父親は宮永…
その事実を知り、あたしは呆然とする。
父と息子両方と関係を持ったのね、あたし…
まぁ、いいんだけど…
もういいけど…
会話を聞いてたけど宮永が言うような憎いような人達には思えなかった。
話が終わりに近づく頃、あたしはそっと家を出た。
何て無用心な家…
あのおっちゃん、鍵しめなきゃ…
少しぷっと笑えた。
あたしは実の親に捨てられた。
だから血の繋がり何て何とも思っちゃいない。
でも、あたしの思い描くような、あたたかさがあそこにはあった。
悪いのは社長じゃなくて、宮永じゃん…
いや、途中からわかってた。
でも…初めてふれた父のような存在、宮永…
だから騙されたふりした。
ほんの少しの愛があれば十分だったけど、宮永はあたしにほんの少しの愛もなかった。
今思えば…
さてと…そろそろ行くか…
あたしは、とぼとぼと歩き始めた。
あてもなく…
もうこれで十分だ…
あたしは、何で生まれてきたのかな…
辛い事たくさんあったけど…
何だか今はあたたかいようなさみしいような変な感じ。
ネットカフェで一夜を明かし、次の日 孝弘にもう一度電話をした。
「ねぇ、知りたくない?」
何て言って孝弘を誘う…
でも、どうやらもうあたしと会う気はないみたい。
せっかく、宮永の実態を教えてあげようと思ったのに。宮永の悪事もね。
あの小島さん、復讐するのかしら?
材料はあたしが一番持ってるのに…
いきさつはこんな感じです。
不法侵入してしまい申し訳ありません。
本当は本当に愛していました。
孝弘はほんの少しだけ、愛をくれました。遊びでも、ほんの少しは愛、あったと信じています。
この資料は宮永の悪事の証拠。よければどうぞ…
今まで騙してごめんなさい。キャリアウーマンでもなく、宮永の愛人でもなく、ただの…あたしに戻ります。
ありがとう。
さようなら。
早苗
分厚い封筒に全てを詰める。
そして、もう一通の手紙。
孝弘の奥様へ
私、早苗は孝弘さんを誘惑し不倫をさせました。
申し訳ございません。
出すぎた事を申し上げますが…私がどんなに頑張っても孝弘さんは私に本気にはなりませんでした。
それは孝弘さんが奥様を愛しているから…
お詫びのしようもありません。本来なら慰謝料をお支払いしないといけないのですが…
それも出来なくなってしまいました。
もう二度と孝弘さんに近づきません。
本当にごめんなさい。
どうか孝弘さんと末長くお幸せに…
早苗
あたしは最後に孝弘の奥さんへの手紙を入れ、封をした。
郵便局へ行き送ってもらう…
明後日には着くそう…。
明後日か…
「あら~部長さん、先日はどうも!」
満さんは満面の笑みで迎えてくれた。
小島がトイレにいった隙に…
俺はさっそく
「あの、私、誰にもいいませんとか言ってたの言っちゃったんですね」
とつつく…
「すまねぇな、あたい…んふっ、私に手を出そうとしたの腹たって…たっちゃんにちくっちゃった。」
何だか微妙な口調だが満さんらしい。
さて小島の話を聞こうか…
トイレから出てきた小島は俺に
「部長~部長の浮気相手、これ宮永の女っすよ」
「はっ?」
小島はパソコンを開き、宮永と早苗がマンションに入ってる写真を見せる…
どういう事だ…
「はめられましたね、部長」
小島は冷静に言った…
最初から仕組まれたと…
俺のスキャンダルを取る為に…会社の情報を手にする為に…
俺は血の気が引いた…
「さて、どうします?部長…」
どうしたらいい?どうすればいい?わからない…早苗には会社の事も喋ってしまっている…
「どうすればいい?」
俺は弱々しく小島に聞く。
こいつならいい打開策があるかも…しれ…
「僕にもこれはお手上げです」
小島の復讐で…宮永を殺して欲しい…
ふと頭の片隅に浮かんだ…
勿論、小島の復讐は両親のかたきを取る為…
俺の失態とは関係ない…
小島は宮永をどんな風に地獄に落とすのか…
そもそも宮永は俺の実の父親… それを知った小島は復讐すらためらっているかも…
いろんな事が頭をよぎる…
そうだ…思い出した
「小島、ここに来る前に早苗から電話があった。いいことを教えるからと…この前、早苗に別れ話をだしたんだけど、早苗は別れるのが嫌だと…で俺を誘う為にそんな事言ってるのかと気にしなかった。どう思う?」
「早苗は多分、部長の事を本気になってますね…そんな気がします…早苗を見方につければ…打開策があるかもしれませんね」
「そうか…でも…」
清美はどうなる?不倫相手にこびるなど、清美が傷つく…
「清美には僕から話します。そして、決して早苗とは関係を結ばず、金で解決して下さい」
小島は厳しい口調で言った。
俺の考えてる事はお見通しか…
「とりあえず、早苗に連絡を取って会う約束をして下さい。まだ何も言わずに…」
「わかった。今すぐに電話してみる…」
俺は早苗に電話をかける。
が、出ない…
その後何度も携帯を鳴らしたが出なかった…
小島を連れて自宅に戻り、清美に事情を話す。
清美は呆れていたが、
最後には
「とにかく、あなたのスキャンダルを遠ざけて、早苗さんには協力してもらうしかないわね」
と言ってくれた。
早苗には幾度となく連絡を取った。
しかし、電話には出なかった。
というか…
もう会う事もできなくなった。
警察がうちに来た。
早苗が亡くなったと…
河原で遺体になって見つかったと…
調べによると、自分で腹に包丁を刺した自殺によるものとの事。
携帯の履歴から俺のところに来たらしい…
俺は…これ程後悔した事はない…
早苗…
すまなかった。
すまない。
何と言っていいかわからない…
俺は警察で事情聴取を受けた。
すべてを正直に警察に話した。
俺は早苗と不倫関係にあった。それしか言い様がない。
宮永の事も警察に話した。
宮永も事情聴取があるだろう…
事情聴取が終わり、家に帰ると大きな封筒が届いていた。
早苗からだ…
清美は中身を開けず…ただ俺に静かに渡した。
早苗を守れなかったと悔いている自分をあまり悟られないよう、俺は気丈にふるまい清美に接した。
「何だろ、開けてみる」
封筒には長い手紙…それは早苗の一生を綴ったものだった。
そして宮永の悪事の証拠。
清美への手紙…
清美は早苗の生い立ちの手紙を読んで泣いた…
なぜ泣くのか…自分の夫を寝とった女の為に…
やはり清美は優しい女だった…
俺も泣きたかった。
でも泣いてはいけないと思った。
早苗はほんの少しの愛にしがみつき、ただ純粋に愛に欲しがっていただけなのに…
俺は遊びと割りきり、ただの癒しにしか過ぎなかった。
俺だ。
長い間すまない。
というか、俺は悪くない。作者の怠慢だな。
小島と俺 を書いてる間にも夫は不倫して女にはまってたみたいだな…
不倫の小説書いてる割には夫の不倫に気がつかんとは…
俺が言えた義理ではないか…
ちなみに南の離婚はノンフィクションだ。
もう小島なんてどうだっていいや~放置だ~勝手に不倫を想像して書いてたら…リアルに自分がされる側かよ、チクショー
とか思ってたらしい。
ま、南はたくましいからな。私は何もなくしてない。夫がいなくなっただけと強気だ。母は強し。
長い間すいませんでした。
俺がかわりに謝ります。
では続きだ…
早苗がこの宮永の悪事の証拠を俺に託したという事は…
俺が早苗のかわりに宮永へ復讐しろという事か…
それとも…俺を蹴落とそうとする宮永から守る為のものか…
わからない。
復讐は小島がするものだと思っていた。
しかし、早苗が俺に託したものを小島に押し付けるのはどうか…
清美はどう思うのか…
わからない…
「どうするの?」
清美は目に涙は浮かべているものの冷静に聞いた。
「わからない」
だって本当にわからないのだ。
しかし、早苗は小島の存在を知っている。
やはり俺から小島にこの証拠を渡せという事か…
父子で同じ女と寝たのか…そう思うと鳥肌がたった。
決して早苗を悪く言っているのではない。
宮永という男の存在が恐ろしくなった。
放っておけばやりたい放題しかねないが、かなりのやり手。
小島…すまん、
俺は早苗から渡されたものをお前に押し付けるぞ
「やっぱり小島に任せるよ。復讐するにしろ何にしろ、この前小島に任せると言ってたから、この証拠は小島に渡すよ。」
本来は警察に届けるべきだろう…
しかし、俺は小島に託す。
「わかった。お兄ちゃんに相談しましょ」
清美も納得していた。
次の日出勤し、朝礼のあと小島を呼んだ。
宮永は警察の事情聴取を受けただろうが…多分しらをきったに違いない。
証拠は残さないだろう。早苗と連絡を取り合ってた携帯もおそらく早苗名義にしてあるはずだ
しかしな、早苗が残した悪事の証拠があるんだよ。
「小島、すまんな、重要書類だ。目を通しといてくれ。ゴクヒダ…」
小島は何かを感じたのか チラリと俺の目を見て
「了解っす!」
と言った。
今日は午前中会議がある。
早速会議実に向かう。
ボードの『山崎』の欄に会議(第5会議室)と書き込む
30分以上席を外す時は書き込む事になっている
会議室へ向かうと宮永にばったりと出会う。業務部の部長と連れだって来ていた。
「おはようございます」
俺はなにくわぬ顔で挨拶する。
宮永と業務部部長は
「おはよう」
「おはようございます」
と、普段通りに挨拶した。
が、宮永は一瞬俺をチラリと見た。
宮永は勿論俺と早苗の関係を知っている。
警察に事情を聞かれたのもわかっているだろう。
写真を貼ったのも宮永だと思う。
宮永は俺をどうしたいのか…
小島の母親を手に入れられなかったからというだけの理由で、俺達父子に恨みを持っているのか…
へどが出る。
しかも血も繋がっているのか…
宮永は俺の元上司だ。
新人の頃、宮永の俺に対する態度は他の新人とは違った。
俺が社長の息子だから…
と言っておだてるわけでもなし。
かと言って直接的な攻撃もなかった。
宮永の攻撃はまるで大奥の女の戦いに出てきそうなネチネチしたものだった。
早い話、俺には何も教えなかった。
社長の息子とはいえわからない事は沢山ある。
わからずに聞くと…
「いや~、社長子息だからね、知らないとは思わなかったよ。そっか、お父さんになーんにも聞いてなかったの?」
と嫌味を言われた。
新人研修があるのを教えてもらえなかったのだ。他の新人には1週間前にプリントを配っていた。
俺は新人研修時に発表する課題ができなかった。研修で発表できなかった。
しかし、知らせてもらえませんでした。
とは言えなかった。
「仕方ないね。明日にでもレポート提出して」
研修に担当となった課長はとりたてて何も言わなかった。俺が社長の息子だから…責める事も、深くなぜできていないのかも聞かなかった。
しかし、社長息子つってもたいした事ねーな と心の中で思われてると肌で感じた。
悔しかった。
しかし、俺は絶対負けないと思った。
最高のレポートを出して うならせてやる。
俺のできない新人にレポートを出すようにいう起源はここにある。
いわゆるチャンスだ。
人間には表には出せないが、課題を与えるとなかなかの能力を発揮する奴もいる。
次の日俺はレポートを出す。そしたら担当の課長はとても感心して、流石だなと言ってくれた。
多分、お世辞も含むものだろうが…俺はめいっぱい自信のあるものを提出したつもりだ。
しかし宮永は
「聞いたよ。立派なレポート提出したんだって?やるじゃない。ま、レポートなんて紙の上に書いたもんだからね。君は営業。相手は人で紙じゃないからね。ま、頑張ってくれよ」
馬鹿にされた。
他にもまだまだ…
俺がやっと取ってきた商談。
しかし、なぜか担当は宮永になった。新人には任せられない。いつの間にか宮永の手柄になっていた。
明らかに、俺を嫌っているのを肌で感じた。
俺も宮永が嫌いだった。
技術開発部へ研修に回された時はのびのびと仕事ができた。田辺という打ち解けて仕事ができる奴にも出会えた。
今思えば、親父は気づいていただろう。
宮永が俺にどう接していたか。俺は宮永の嫌がらせを親父にちくる事はなかった。宮永も他の皆に俺をいびっている事を感じさせる事はなかった。
しかし、親父は配慮したのだろう。だから俺を他部署へ回し勉強させた。
勿論、勉強の意味もあるが…、信頼できる相手を見つける事、人間関係を築く事…。また宮永から遠ざけ、仕事の良さをわからせる為だったのだろう…
宮永から離れ、俺は猛勉強した。
宮永は俺を認める事はないだろう。しかし、宮永以外の人間全員に認めてもらえるように…
おかげで、会社の内容は一通りは把握できた。
宮永に教えられた事は一つ、どんなに努力しても認めてもらえるとは限らない事だ。
宮永…
ここ数年でだいぶ頭がはげた。
たれ目でいつも笑みを浮かべている。それは笑顔の面を顔に張り付けたように、一定である。
感情的にはならず、女のように穏やかに話す。勿論、嫌味も…。
しかし、話術には長けていた。人を騙すのがうまいというか、どう言えば相手の心が動くか常に考えているかのように思えた。
どうすれば商談が成立するか…
どうすれば俺が傷つき、悔しい思いをするか…
どうすれば、早苗を自分に従順な女に育てあげられるか…
全て計算ずくだろう
会議も終わり、皆それぞれの持ち場に帰っていく。
後ろの方で聞こえた、宮永と業務部長の声。
「今日は仕事が早く終わりそうだ。いい店知ってるんだがどうだい?」
「いいですね~お供します」
早苗が死んだのに…
自分の為に散々利用され死んで行ったのに…
何でそんなに明るいのだろうか?
許せねぇ。
小島の両親を自殺に追い込み、早苗を利用し、俺を陥れようとする。表では良い顔をし裏では賄賂をもらい、会社の金も懐に入れている…
俺は怒りで爆発しそうだ。
午後は得意先からクレームがあり、対応に追われていた。
出荷部門がラベルをはり間違えたとの事で…
単純なミスだが、顧客にとっちゃ、たまったもんじゃない。ややこしいし、時間や手間もかかる。
こっちにしたって悲惨だ。顧客の所へ一目散に走っていき、代替えの商品を渡す。ひたすら謝りまくる。
散々文句を言われたが、最後は「クレーム対応としてはなかなか早い方だ」と言って貰えた。
胸をなでおろし、会社へ戻る。今から会議だ。そして対策書などの指示をせねば…
結局、なんだかんだで帰宅は夜の10時…
これでも早く帰れたなと思ったくらいだ。
ヘトヘトだった。なのに今までよく不倫なんかできたな…
清美は
「お疲れ様」
と笑顔で迎えてくれた。
夕食をあたためてくれる…
ウゥーンというレンジの音を聞きながら、思った。
俺が不倫する為、急に「仕事が忙しいから会社で寝るわ」と連絡した日、清美は俺の為に用意した夕食をどうしていたのだろうか…
ふとそんな事を考える…
「今日はさ、クレームが出てさ、大変だったよ。」
「そうみたいね。お兄ちゃんが言ってたわ。今日は電話があったの」
小島はまめに清美に連絡してるようだ。俺が遅いと不安になるからか…
「でも、何とか対策書もできそうだし、顧客にも誠意は伝わったかな」
「そうなんだ。クレームって大変なんだね。」
「ま、慣れてる。」
と俺は笑った
清美は俺のこんなたわいない話をいつも待ってたかもしれない…
なのに俺は清美をかえりみず不倫してた。
最低だな…
涙がでてきた…
俺は人前で泣くようなまねはしない…
子供の頃にも泣いた記憶がない…
泣かない子供だった
清美は俺の涙を見ても驚きもせず
「疲れているのね」
と静かに言った。
「ああ、少し…」
自分に対する自己嫌悪、清美に対する申し訳なさ、早苗を助ける事ができなかった不甲斐のなさ… 宮永への憎悪…
いろいろな感情が押し寄せてきた。
こんな感覚は初めてだった…
早苗が死んでも何も変わらなかった。
警察では早苗の自殺はただの自殺と判明したし、新聞でも大きく取り上げられた。
「河原で女性、自殺」
内容は
親もいない、一人ぼっちの人生に悲観した女性が河原で自殺した…
そう書かれていた。
世間では早苗は悲劇のヒロインとして噂されるだろうが、暫くたてば噂も消え誰もが忘れていく…
しかし、俺は一生忘れないでおこうと思う。
俺を懸命に愛してくれた事。俺は早苗を愛さず、ただの癒しにしか過ぎず守る事もできなかった罪悪感。
一生背負っていかねば…
小島は「早苗の残したもの」に目を通しただろう…
「小島」
昼休みに小島を呼んだ。
皆、ぞろぞろと昼食へと向かう。
「はい、部長~何でしょう」
へらへらと寄ってきたが、皆がいなくなるのを確認すると
「昨日頂いた早苗が残した証拠の事ですね」
「ああ…」
「早苗さんにはびっくりしますよ。多分、山崎部長が本当に好きだったんでしょう…」
「それはどうだか知らないが…」
小島に聞きたいのはそこではない…
「早苗さんは、多分いずれにせよ、死ぬ事を選んだでしょうね」
「なぜ?」
「僕には分かります」
「きっともう自分を汚したくはなかったのでしょう…早苗さんは人の命も奪っていますからね…」
「は、どうゆう事だ」
まさか、早苗が…
「10年前、ある会社の社員が亡くなったんです、宮永が一緒に悪巧みをしようと誘ったが断られた。気は弱いからつけ込んだものの思いな他、真面目な社員で宮永の悪事をばらすおそれがあったようです」
「じゃ、そいつを早苗が…」
「実際はそうではないかと…多分宮永は早苗さんに色気仕掛けで口説き落とすように言い、睡眠薬を渡した。しかし、それは青酸カリだった。」
宮永はそこまでしていたのか…
「早苗さんは罪悪感にさいなまれていたと思います」
「小島はなぜそこまで知っているんだ…」
「僕をあなどらないで下さい」
小島はうっすら笑い窓の外を見た。
「僕は誰より宮永を憎んでいるのです、宮永の事は自分の事のように知っていますよ…それから…」
「それから…?」
「いや、何でもありません」
「その殺された人は僕の友人でした」
「は?」
「僕は大切な人を3人も宮永に殺されたのです」
「小島…」
なぜ、小島はその事を今まで告げなかったのだろうか…
「僕は宮永が殺したのを知っていました。でも警察には言わなかった。僕が復讐するまで、警察には渡せませんよ」
聞くまでもない…多分小島は宮永に復讐する
「小島」
「はい」
小島は視線を窓から俺へと移す
「俺をどう思う…」
「部長は部長です」
「俺は宮永の…実の…」
俺が言い終わらないうちに
「部長は社長の一人息子だと聞いてますが、何か」
俺は自分の実の父親が宮永である事で小島から少しでも悪く思われるのがこわかった。
この俺が…部下からどう思われようとも気にもしなかった俺が、小島にどう思われているか気にするとは…
「すまん」
「何を謝るんですか~部長らしくもない。謝られる事は何もないですよ、あ、満に手をだそうとした事は…ね。ま、ミラクルパンチでちゃらにしときますよ」
と言ってへらへらと笑った。
いまいましかった小島の笑い顔がやけに今はほっとする。
小島はどんな復讐をするのだろうか…
「ちなみに、早苗さんがくれたものですが、残念ながらほとんどもう手に入れてある証拠が多いです。が、おおいに役にたつものもありました。早苗さんにはお礼を言えないので、部長にお礼を言います。ありがとうございます」
小島は軽く頭を下げた。
小島は今まで何を考えて生きてきたのだろう。
ただひたすらに蛙や蛇だけを研究する博士のように宮永の事を調べあげ、家庭を守りつつも…宮永への復讐を考えていたのだろうか…
宮永が小島の両親を自殺に追い込まなければ、小島は立派に会社を継ぎ、多くの人に信頼を得て、幸せに本当に幸せに暮らしていたに違いない…
ただ一つ、小島の両親が自殺しなければ…
俺は小島とは接点はなかったと思う。清美とも結婚には至らず、俺の傲慢な性格に悔い改める事もなかったかもしれない。
ふと、変な事を考えてしまった。
運命とはこわい。
それから…暫く何もなかった。
日常が流れていった。
小島も宮永の事は何も話す事もなく…俺も聞く事はなかった
小島は何も宮永に復讐しないのか…
このまま野放しにするのか…全く分からなかった
それとも…強烈な復讐を考えているのだろうか…
何もない日常…
確かに宮永のやってる事は会社としては見過ごせない…が悪事が公にでるのは信頼問題に…
何もなければ、日常は何ともなく…今まで通りだ
こんな日々が3カ月続いた
何もしなければ何もない 、それもいいかもしれない…
そう思えるようにもなってきた
小島、殺ったのか…
お前、殺したのか…
それだけはしないと思っていた
「おい、聞いてるのか!?」
宮永の死を知ったのは親父からの電話だった。
「ああ、聞いてるよ」
冷静にこたえたつもりだが、心臓がバクバクと鼓動をうち、手がふるえ、汗がでる。
出勤前だった。
「なぜ…………」
…死んだと聞きそうになったが、口ごもった。
小島が殺したであろうと思ったからだ…
「自殺だよ」
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