さよなら、あなたへ
エキサイトラブを書いている主です
いつも女心で物語を書いてるので、気晴らしに男サイドからの短編小説を書きます
すぐに終わります
よろしければ読んでください
宜しくお願いします
14/11/23 00:20 追記
◆お知らせ◆
もしまだ読んで下さっている方がいらっしゃいましたら、訂正があります
すぐに終わりますなんで、書いてしまいましたがすぐには終わらなさそうです(-人-;)
いつも、訂正ばかりで申し訳ございません
そして読んで下さっている方がおられましたら、ありがとうございます(*´∀人)
15/01/16 19:52 追記
http://mikle.jp/thread/2177109/
感想スレです
よろしくお願いします
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その後、半ば 無理矢理、愛を夜間救急病院へ連れて行った。
ふらつく愛を支えながら病院に入る途中、愛は何度も何度も、ありがとうと消えそうな声で囁いた。
凄くやるせない気持ちだった。
いつもバカみたいなことを言ってバカみたいに無防備に笑う愛を思い描くと、早く元の愛に戻って欲しいなと願った。
愛は一時間ほど点滴をしその間、俺は考えていた。
彩を自殺未遂までに追い込んだこと。
杏に騙されたこと。
正直いい気はしない。
反省もせぬまま、また適当に女を探そうと思っていたが、感情が止まっている。
何故なんだ?
亮介…!どうしたんだ?
自問自答を繰り返すうちに愛が処置室から出てきた。
点滴をしていた右腕を擦りながら。
夜間の看護師が愛と俺の顔を交互に見ながら言った。
「今はあくまで熱を下げる点滴をしただけで、少し落ち着いてもまた熱が上がる可能性があります。なので再度病院へ必ず行ってくださいね」
隣にいる愛は物憂げに看護師の話を聞いていた。
それから病院を後にし車で愛を送る中、愛の顔の血色も良くなってきて、いつも通りの、フニャッとした笑顔と、おっとりした口調で俺に甘えてきた。
もう大丈夫と愛は自宅へ戻り、俺は安定した愛にホッとした。
ただ気になる。
杏の言う愛の大病が。
《愛の気持ち》
杏ちゃんがタクシー代を私の家に借りに来たあの日。
私は遺書も書かずにベルトをドアノブにくぐらせ首を吊ろうとした。
その時にチャイムが止むこともなく鳴りチャンスを逃した。
杏ちゃんは、いつもの汚れた雰囲気じゃなかった。
恋をしてると言っていた。
深いことは聞かなかったけど、私の体調を珍しく心配してくれて氷のうでおでこや脇の下を冷やしてくれたり、飲み物も買ってきてくれた。
杏ちゃんは一生、恋なんてしないと思ってたのに。
恋ってここまで人を変えるんだ。
杏ちゃんの父親も悪い人で殺人未遂を犯している。
母親は父親と離婚し再婚相手と時計屋を経営。
アクセサリーも兼ねて販売し複数のファッションビルにテナントを構え成功している。
私と杏ちゃんのお母さんは商売上手みたいだ。
杏ちゃんはその代わりほったらかしにされていた。
それが原因で汚れた人間とばかり付き合い杏ちゃんも染まっていった…
杏ちゃんも寂しかったんだ。
ただ杏ちゃんの過ちは私と比べたら可愛いものだ。
私は…私は…
杏ちゃんが帰ったあと亮介が来てくれた。
終わるはずだったこの命は尽きることなく、燃え上がっていく……
亮介の顔を見るだけで生き人形の私は一人の人間に変化するようだった。
亮介の中の眠っていた優しさは、誰にも比べられないくらいあたたかい。
それは私が
亮介に恋をしているから。
愛、あなたにさよならを何度したの?
何故、生きたいなんて思うの?
誰が助けて………
愛には頻繁に連絡をするようになっていた。
あんなにウザかった愛なのによ、隠れブスなのによ。
何だよ。この気持ち。
例えば何が楽しいことや辛いことがあったら真っ先にアイツの顔が浮かぶんだ。
30年間生きてきて、こんな気持ちは二回目だ。
一度目は母ちゃん…
そして二度目が愛だ。
認めたくはないが愛には不思議な抱容力がある。
一見はバカっぽくて薄っぺらなヤツに感じたが、話せば話すほど居心地が良い。
だからと言って彩のように人の顔色を伺ってばかりで受け身なだけでもないんだ。
好きとか嫌いとかそんなものはわからない。
ただ何かを伝えたい。愛にも伝えてもらいたい。
それだけだ。
連絡をすると仕事は休んでるらしいが、何とか生きてるよ…なんて言う。
何とか生きるじゃなくて、しっかり生きてくれよ。
俺はまた愛の自宅へ行った。
熱は下がったみたいだけど随分やつれていた。
賞味期限切れのスナック菓子と、おかわり自由の水道水でもてなす愛がバカみたいで微笑ましかった。
そして、ある日の夜一也から電話が来た。
近々飲みに行かないかと。
俺もそう思ってたからタイミングの良い誘いだった。
文具用品店の営業課で働く一也も土日が休日だ。
なので金曜の夜に一也と大衆居酒屋で飲むことにした。
その居酒屋は、よく一也と来ていて店のすぐそばの薬局の前が俺たちの待ち合わせ場所だ。
20時に待ち合わせ、ちょっきりに到着すると既に一也の姿があった。
「よう!」
「おう…」
俺は明るめに声をかけたが一也の顔はひきつっていた。
オマエは、どんなことがあっても表面上はにこやかで心で泣く男だった。
そんなオマエの顔がひきつるのは、彩から事実を聞いたのだろう。
別に良い。
俺は何も知らなかったし彩から近づいて来たんだから。
俺達は居酒屋に入店し、込み合っていたのでカウンター席に座りビールを注文した。
「…」
「…」
沈黙が流れる。
苦手な雰囲気だ。
俺が一也に話しかけようとした時。
「俺さ、彩と結婚することにした。彩もオッケーしてくれた」
「マジか!…そりゃおめでとう」
めでたいのに暗いのは俺と彩が関係があったからだろ。
「一也」
「ん?」
「彩とはそんな深い付き合いじゃなかったんだよ」
「…深くないのに結婚しようとしたのかよ」
一也の声のトーンが下がる。
「ああ…結婚するには真面目そうで良いかなと思って」
「……ばかやろ。彩を傷つけやがって。一発殴らせろ」
「ここでか?」
「一度、外へ出ろ」
俺は一也に言われるがままビルに入っている居酒屋から出た。
一也が俺の後を追う。
地下に下る階段の側が人気がなくそこに俺は立ち尽くし顔を上げた。
顔を上げた瞬間、左頬にパンチをくらった。
情けないくらい緩いパンチだった。
「……なんだ。しょぼいパンチだな。もっと思いきりこいよ」
「そうしたいけどな。彩が許してやってくれだと。亮介のことを。傷つけられて自殺未遂までしたのにバカだな。だから俺と彩の中間のパンチだ」
なんだよ。一也。ホントに彩が大事なんだな。
「…そっか。好きなんだな。彼女のこと」
「ああ、俺も陰で遊んでたけど、もう卒業だ。アイツを幸せにしてやりたい。アイツが幸せなら俺も幸せだ。そんな風に思える相手ってそうそう居ないと思わね?」
「…ハイハイ。ノロケだね。ごちそーさま」
「…なんだよ」
そのあと俺達はお互いわだかまりから開放されたのか心から笑いあった。
居酒屋の店内に戻り酒を飲み始める。
酒も入り一層気分がほぐれる。
俺は一也と笑いながら話が出来て嬉しかった。
やっぱり一也はかけがえのない親友だ。
「そう言えばよ…」
一也がホルモンの唐揚げを口にしながら言った。
「なに?」
「愛ちゃん。この間、たまたまススキノで偶然会ってちょっと飲んだんだ。…つーか、亮介、愛ちゃんとどんな関係だよ?」
「…適当にたまに会う女だよ」
「ふーん…何かよ」
「ああ」
「ススキノで偶然見かけた時、あの子道路に飛び出そうとしてたんだぜ」
「えっ?」
「たまたま見かけて、引き留めたら愛ちゃんでさ、死のうと思ってたのに邪魔しないでよってかなり乱れた感じで言ってたんだ。だから気になって飲みに誘ったんだ」
「……マジか」
死のうと思ってた?
愛が?
一也に詳しく聞いたら色んなことが重なって。と言っていたみたいだ。
俺はぐちゃぐちゃな気持ちになりその日帰宅した。
愛……
何を抱えてるんだよ?
愛……
それからというもの俺の頭の中は愛のことで占領された。
俺は愛と出逢った頃、アイツがウザくて気になることなんて右から左へ流していた。
薄っぺらい軽い女だと思っていたよ。
段々と印象が変わり愛の懐の深さを本能で感じ取るようになっていた。
それでも昔の俺なら最初のように気になることもサッとスルーしなきゃ癪に障る。
でもよ、最近芽生えたこの気持ち。
愛に伝えたい、愛にも伝えてもらいたい。
そして…
一也が言っていたように相手が幸せなら自分も幸せだ。
その気持ちは愛へ当てはまる。
見返りなんて何にも要らない。
ただ、いつも思うけど愛には笑っていて欲しい。
ごめんね、愛。
今更だけど多分俺は愛が好きだ。
悔しいけど誰よりも好きだ。
恋は突然やって来るって本当なんだな…
三十路にして初めて知ったよ。
哀れな男だよな。
大事なことに目を背け適当に遊んできた。
いい歳して親のせいにもしてよ。
愛、俺は杏からの痛手も、もう何とも思っちゃいない。
ただひたすら心の中に
尾崎豊の、ohmy littlegirlが流れるよ。
笑ってくれ。
笑われてもいい。
俺はお前のことが知りたい。
そして俺は愛に連絡した。
今にも消えそうな声だった。
俺は電話より会いに行って状況を確かめたく、また直ぐ様家を出て愛のアパートへ向かった。
愛が何に追い詰められ死にたかったのか、愛を襲う大病はなんなのか俺は聞き出し、どんなに過酷な内容でも受け入れる覚悟を決めていた。
愛のアパートに着きチャイムを押した。
しばらくすると。
カチャ……
ドアが少し開いた。
ドアが少し開いた隙間から、愛の顔半分が見える。
あれ?
長い髪の毛を切ったのか?
愛の髪の毛が顎までのストレートになっていた。
顔の血色も良いじゃないか。
なんだ…
俺は安心した。
やっぱり声だけじゃわからないもんな。
「よう!」
俺は愛の部屋のドアを開けた。
そして隙間から見えていた愛の顔が全開になった。
その愛の顔を見た瞬間、心臓が震えるように早く脈を打ち始めた。
何で?
ふと周りを見渡す。
確かにここは愛のアパートだ。
賃貸アパートで3階建て。
全部で6部屋しかない小さなアパートだ。
ドアの前は殺風景で言っちゃ悪いが貧乏臭さが漂っている。
オートロックでもなく鍵だ。
お向かいさんのドアノブの上には、チラシお断りと書いてある。
愛の部屋に表札はないが、お向かいさんには表札があり〈田原〉とある。
初めて見た時トシちゃんかよ。
アハハ~!!ってよく思ってたよな。
俺は短い時間で脳内がグルグルとしながらアレコレ考えていた。
やっぱりここは確かに愛のアパートだ。
それなのに、何で?
《彩の気持ち》
桜
チューリップ
ひまわり
胡蝶蘭
マーガレット
タンポポ……
どの花たちも綺麗に咲くよね…
命は短いのにそれでも綺麗に咲き誇り私たちに優美さを与えてくれる。
私とは正反対…
命を無駄にしようとしたんだから。
私の父は資産家で父自身も大手企業勤務で、何不自由なく育ててくれた。
欲しいものは何でも手に入った。
でも欲しいものは私の意思ではなく母親の意思で決められた。
物だって進学する学校だって。
お金に恵まれてるのは幸せだったけど私には“自分”がなかった。
初めて付き合った一也だって、家族が賛成してくれるから付き合っていた部分も拭いきれない。
だから一度で良いから冒険をしてみたかった。
決められたレールから外れてみたかった。
その外れた先に現れたのが亮介さんだった。
今時の外見とは裏腹に中身も誠実。
初めて自分の意思で恋をし手に入れた人だった。
けど、なんて惨めな結末。
私、見る目ないな。
利用されていただけだったんだ……
凄く好きだったのに。
だから辛くて辛くて仕方なくなってあんなことを。
でもね、今は良い経験したって思う。
恋い焦がれ例え粗末な対応をされても、傍にいれれば幸せだと解釈する人もいれば、私のように苦しくて仕方なくなる人もいる。
結局、温質な家庭で育った私は、安定が一番なのよ。
その私から背伸びをしてみたかったけど、私は私でいんじゃないかな。
決められたレールを真っ直ぐに歩いても外れた道を選んでも、みんな同じ人間。
ただ、自分に合った道を歩けば良い。
一也、ごめんね。
今更だけど一也がたまらなく好きだよ。
一番大切なのは優しさと思いやりなんだ。
何気なく傍にいる人がとっても大切なんだ。
一也がいたから、私は伸び伸びと生きてこれた。
もう刺激なんて求めない。
一也がくれる、私にだけの優しい気持ちに包まれていたい。
私も一也を包んであげれるように頑張るから…
いつか、綺麗に咲き誇る凛とした花たちのように私も咲けますか?
一也見ていてね…
そんな話を聞いてくれた愛ちゃん。
私も愛ちゃんの心の闇を聞いてしまった。
言葉がなかなか見つからなかったよ。
ドアを開けて目の前に立っていたのは、愛ではなかった。
彩……彩が立っていた。
俺はなかなか視点が定まらない。
彩の手首には包帯が巻いてある。
それを隠すかのように手を組み、華奢な肩に今にも泣きそうな表情に良心の呵責を感じた。
「亮介さん……。あ、愛ちゃんに伝えるね。待ってて」
「ちょっ……」
俺が何故、彩がここにいるのかを疑問を投げ掛ける前に、彩はそそくさと玄関から姿を消した。
何でなんだ。
頭の中がアッパラパーだ。
かなりのパルプンテだ。
二人は知り合いだったのか?
愛からはそんなことは一言も……
まさか。
俺に知恵がついてきた。
二人はグルだったのか?
二人で俺を騙し陰であざけ笑っていたのか?
愛…………
愛を想うと心が壊れそうだった。
ヤバイ。俺、こんなに愛が好きだったのかよ。
信じられねぇ。
河内 亮介 30歳。元遊び人。
箸にも棒にも引っ掛からないような、ろくでなし。
好きな漫画はろくでなしブルース。
一番好きな曲は吉川晃司のモニカ。
本当に好きな言葉は酒池肉林。
一番好きな映画は私をスキーに連れてって。
好きな芸能人は、モーニング娘。何でかって言うと人数が多いから。
女は一人より多数の方が良かったから。
AKBは〇元が嫌いだから論外だ。
俺は自分自身を振り返っていた。
すると。
「…だありん」
愛がやつれた顔で玄関に出てきた。
その、やつれた顔は演技とは到底思えない。
全てが真実なら何で二人は一緒にいるんだ。
「おお…愛……調子悪そうだな。大丈夫か?」
「ん?…そうでもないよぉ。入って♡」
愛は俺の腕を引っ張った。
☆主です
更新じゃなくてごめんなさいm(_ _)m
スマホに少し書き貯めしてるので、今日その分は更新させて下さい
その後、少しお休みするかもしれません
いつも、こんな私の作品を楽しみにしてくれている方の言葉が嬉しくて頑張って来ました
本当に感謝しています
昨日ちょっと過呼吸になるほどショックなことがあり、誤解だったにせよ私が傷ついても優しい風は逆方向へ向かい
私には夜の海辺の冷たい風しか吹きません
そう思ったり傷ついたりするのは自己中だとわかっています
ごめんなさい…
素直になったらこんなに見苦しいまるで悲劇のヒロインです
でも私にも感情があり凄く理不尽さを感じています
傷ついてへこへこ謝って私バカみたいです
こんな作者だったのかと残念に思う方もたくさんいると思います
休むなら、ただ休みます
だけでいい。
それなのに、こんなにウダウダ書くのは寂しさや悔しさから来てると思います
朝から暗いお知らせ申し訳ありません
時間がかかっても必ず完結します
もしよろしければ、読んで下さいね
いつも支えてくれてる皆様ありがとうございます
俺はスニーカーを脱ぎリビングに入った。
彩がソファに座り水らしきものが入ったコップを持っている。
おかわり自由の水道水か?
つーーか!
何で彩が?な・ん・で・だ・よ。
「…亮介さん、ご無沙汰してます」
彩が完璧に他人行儀で声をかけてきた。
しかし緊張した面持ちで肩もすくんでいる。
…どうやら、彩は彩だ。
俺の知っている、どこかおっかなびっくりな彩だ。
「…ああ久しぶり。何でここに?」
やっと聞けた。
そのあと。
「だありん……彩ちゃんに酷いことしたのね!ダメよ」
愛が少し怒った口調で言った。
やっぱりグルだったか?
これから二人に責められるんだな。
俺のテンションはこれ以上さがれないほど下がっていた。
そのあと彩が口を開き、何故一緒にいるのかを伝えてくれた。
その内容は……
今日の昼間、愛はさほど体調が悪くなくそしてお腹が空いたが家に食べる物がなかった。
ふと、元旦に俺と行ったラーメン屋〈食べてMITEYO〉を思い出し歩ける距離だったので一人で向かったそうだ。
一方、彩は有給を消化するため平日の今日は休日だったが一也も仕事で友達とも予定が合わず、昼間に大好きなラーメン〈食べてMITEYO〉へ一人で車で向かった。
このラーメン屋は彩の弟、敬太が美味しい店だと彩に教え、それを彩は俺に教え、俺は愛をこのラーメン屋に連れていった。
口伝てに知った店で彩と愛はカウンター席で隣になったらしい。
そこからが問題だった。
彩は豚骨醤油、愛は昔ながらの醤油を頼んだらしいが店員が間違って二人に逆を渡した。
何度か来店してる彩はすぐに気付き、店員に言った。
その直後、愛も匂いで気付いたらしく二人のラーメンが逆だったことがわかる。
まったく口をつけてなかったので交換したその時!
二人の間の空気が固まったそうだ。
無理もない。
愛の店でも偶然に会っているし、初詣でも合った。
愛から話しかけたみたいだ。
俺の知り合い…ですよねと。
彩は愛の冷静さと人の良さそうな表情に複雑な心境はほぐれ、すぐにすーっと愛に馴染めたようだ。
それから二人の会話が弾み、彩は俺を悪いヤツだとわかってるから愛を心配し騙された事実を話した。
愛はショックで上を向き深呼吸したという……
ラーメンを食べ終え二人が席を立った時に…愛が倒れたらしい…
驚いた彩や店員は、愛に近寄り大丈夫?と声をかけた。
愛は軽い貧血だから大丈夫だと立ち上がったみたいだが、彩は心配で愛を車で愛の自宅まで送ったとのこと。
愛の自宅についても愛がふらついていたため、彩は愛の部屋にお邪魔し愛をベッドまで運んであげた。
ベッドに入った愛は亮介の愛が欲しかった…と泣き出したという。
なんてこった。
世の中狭すぎる。
更に愛、彩共に傷つけてしまった。
二人が何故一緒なのかを彩は話したあとこう言った。
「愛ちゃんを大事にしてあげて……知ってるんでしょ?愛ちゃんの病気を……」
愛の病気……
大病のことだな?
「…いや、知らない。愛…教えてくれ。どんな病気なんだ?」
愛と出逢ってから初めて聞いた。
“教えてくれ”と。
野次馬根性でもないしドラマみたいに悲劇に酔ってるわけでもない。
ただ……
純粋に愛が心配なだけだ。
「…やだなぁ。彩ちゃんなんのこと?」
突然、愛は血相を変え彩に強い口調で言った。
愛は彩の目を反らすことなく、まるで彩の瞳の奥までを鋭い目付きで見つめていた。
「…ああ、えっと。病気…貧血のことよ。うん!」
彩が気まずそうに答えた。
二人とも誤魔化しが下手だ。
愛は視線で彩に口封じだよって伝えてたんだろ?
「彩……本当は知ってるんだろ?愛もどうしても言いたくないのか?俺は…スゲー心配してる。でも言いたくないなら聞かないよ。帰る。当分来ない。彩、愛をよろ……」
「やだぁ!!」
俺はやっぱりズルかった。
どうしても愛の内情が気になり、わざと突き放した。
愛が自分にすがるのを待って。
最低かもしれない。
けど、こうでもしないと愛はずっと心の中の闇をさまよい一人で病気に苦しむ気がして、それだけは避けたかった。
《杏の気持ち》
愛にタクシー代を借りに行ったあの日、愛のアパートでアイツにばったり逢うなんて。
亮介……
まさか、愛がらみだったとは。
不特定多数で色んな女に手出し女のストックも多そうだとは何となく予想していたけど。
愛がその一人なのね。
ふーん。
好きにすればいいわ!
…あの子、そのうち死ぬから亮介が最期の男なのかしら。
派手に仕立てる外見とは裏腹に、恋も男遊びも怖いくらいしないもんね。
寄りによってチャラいアイツが最期なんて切ないじゃない。
・・・・・・・・
・・・・・・・・
と、言いそうだけど、亮介。
あなた愛に本気ね。
数えるのは無理なくらい男を知ってる私にはわかるのよ。
あなたのあんな真剣な顔、初めて見た…
これが今までの私なら、笑えるわってにやけていたんだと思う。
でも、私…最近変なのよ。
亮介が紹介してくれたチャラい敬太。
ただのチャラいお子ちゃまだと思ってたのに…
やたらと親身で、そして…
チャラいけど純粋な部分がベースなのね。
一緒にいると心が洗われるのよ…
この私が……
しかも話の流れでうっかり借金の話をしてしまって、その借金も肩代わりで全て返済してくれた。
親が大金持ちで上手く言ってお金を手に入れたと。
これもまた今までの私なら、ただただラッキーとほくそえむでしょうね。
でも何かが違うのよ。
罪悪感があるの。
敬太の純真を利用したみたいで。
何でこんな風に思うの?
もしかしたら答えは簡単なのかもしれない。
私…
敬太に……
愛は俺にしがみついた。
今日は……グッチエンビィの甘く爽やかな香りがする…
俺の腕を組みもたれ掛かる愛の体は、とても柔らかい。
俺の首もとに触れる髪の毛も幼い子供のように柔らかい。
杏とは違う柔らかさだ。
俺はあの女からエロスと危険な偽りの恋の予感を感じていただけだ。
何故なら俺は馬鹿野郎だからだ。
心に遊びしかなかったからだ。
ごめんね、愛。
どうしようもない男だろ?
でもな、愛の柔らかさには切なさを感じるんだ。
心に遊びしかなかった俺がオマエのこと守りたいって思うんだよ。
「…愛、病気って?」
俺はしがみつく愛に顔を向けて静かに聞いた。
「…」
愛は黙りながら首を横に悲しい表情で振った。
「彩には言えても、俺には言いたくない?」
「…」
次の俺の言葉に愛は黙った。
その時、彩が俺達に近寄り目の前に立った。
いつになく真剣な顔をしている。
「…彩ちゃん?」
愛は不安そうな声で言った。
彩はしばらく黙る。
俺達も黙り、愛のため息だけが聴こえる。
彩?
どうしたんだ?
もしかして重大なことを言うのか?
彩のそんな真剣な顔、見たことがないよ。
俺にだからか。
この重たい静寂は、誰も居ない夜道の静寂の雰囲気に似てる。
早くこの暗闇を越えたい、早く明かりが欲しいと孤独を抱えながら静かに歩くんだ。
もう少しでつくとひたすら思いながら。
そして。
「…愛ちゃんね、悪性リンパ腫って病気なのよ。……亮介さんお願い…愛ちゃんを守ってあげて…」
俺は暗闇の中を歩いていた。
もう少しで明かりが見えると目を凝らしながら。
だけど、明かりは見えなかった。
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